アジア・ゲートウェイ構想(平成19年5月16日 アジア・ゲートウェイ戦略会議)-高等教育関係抜粋-

1.「最重要項目10」

 (略)

3.アジア高度人材ネットワークのハブを目指した留学生政策の再構築-新たな国家戦略策定に向けた関係者の力の結集

  • アジア、世界の優れた人材を積極的に迎え入れ、また、世界で活躍できる人材の育成において中心的な役割を担い、いわば「アジアにおける高度人材ネットワークのハブ」を目指していくことは、日本経済の持続的な成長を実現し、日本のソフトパワーの強化する上でも、極めて重要である。
  • 中でも、留学生交流の拡大は、そうした人材ネットワークの構築に向けた将来への大いなる投資であり、産業界や地域社会を含め、外国人に魅力ある環境を社会全体で創っていく上での試金石でもある。将来の日本やアジアのイノベーションの担い手、日本の魅力の理解者・発信者、日本のサポーターを育てるという意義を踏まえ、国家戦略的課題として再認識すべきである。
  • こうした観点から、「10万人受入れ計画」策定から四半世紀が経過し、国内外の状況も大きく変化したことも踏まえ、産学官の力を結集して、下記の「新たな留学生戦略策定に向けた基本方針」を踏まえ、今後の取り組みを早急に具体化し、新たな留学生戦略を策定する。
  • なお、外国人にとっての日本留学の魅力(強み・オリジナリティ)を評価・再認識し、高めていくことが、留学生獲得に向けた様々な取組みの大前提であり、特に、大学の研究・教育を国際的に魅力あるものにしていくことが重要であることは、言うまでもない。(次項「世界に開かれた大学づくり」参照)

新たな留学生戦略策定に向けた基本方針

(1)留学生受入シェアの確保

 世界の留学生市場の急拡大(2015年には500万人、2025年には700万人規模との試算もあり)を踏まえ、世界への知的貢献・影響力を維持するため、質の確保との両立を前提に、今後とも、少なくとも現行の受入シェア(5パーセント程度)の確保を目指す。

(2)日本人の海外学習機会の拡大

 世界で活躍できる日本人を育てる観点から、大学のオフショア・プログラムや短期留学プログラム等の開発、若手研究者の派遣制度の充実、青少年交流の拡大、戦略的に重要な国への派遣等を推進する。

(3)キャリア・パスを見据えた産学連携等の推進

 日本企業における就業機会は、日本留学の極めて大きな魅力であり、日本経済にとっても、優秀な留学生を育成・獲得するメリットが大きいことを踏まえ、アジア人財資金構想の推進をはじめ、産学連携によるプログラム開発やインターンシップ等の更なる充実、就業支援等を図る。また、留学生の就職・起業を促進するため、在留資格制度等についても、引き続き直しを検討する。

(4)海外現地機能の強化(日本へのゲートウェイを世界各地に)

 事前相談から帰国後のフォローアップに至るまで、重要性が増す海外現地の留学生獲得・支援機能を先進諸外国並みに強化し、日本へのゲートウェイ機能の充実を世界各地で推進する。そのため、大学の国際展開(ダブル・ディグリー・プログラムの提供など)や海外の大学との協力・連携、渡日前入学許可等の取組みを促す。また、在外公館、日本学生支援機構、国際交流基金等の関係諸機関について、大学・民間等との協力関係強化を進めるとともに、既存の役割分担の見直しを含め、機能強化・連携強化を図る。日本語教育については、フランチャイズ制度の導入により、海外拠点数の飛躍的増大を図る。

(5)日本文化の魅力を活かした留学生獲得

 ポップカルチャーをはじめとする日本文化への関心が、日本留学(専門学校等を含む)の主たる動機の一つであることを踏まえ、日本語教育と日本文化発信と同一拠点での留学生支援の実施など、ジャパン・クリエイティブ・センター(仮称、後述)の活用も含め、文化産業戦略と留学生戦略を一体的に推進する。

(6)国費外国人留学生制度の充実

 大学としての人材獲得インセンティブがより発揮されるよう、大学の留学生教育の実績を踏まえ、戦略的な留学生受入れプログラムに対する国費留学生の優先配置を一層充実する。また、知日派・親日派のエリート育成を目的とするため、ヤング・リーダーズ・プログラム(YLP)の充実を図る。

(7)短期留学生受入れ促進

 数週間~1年未満の短期交換留学の拡大が、欧米先進国を中心に世界的な潮流となってきていることを踏まえ、大学の短期留学プログラム開発や留学生用宿舎整備・確保を支援する。

(略)

4.世界に開かれた大学づくり-大学国際化に向けた競争的な資金配分と評価の充実

  • 21世紀は、知識・情報が最も価値を持つ時代であり、知識・情報が集積し、創造されるところに、人、モノ、カネも集まる。そうした中で、日本の大学を、日本のみならず、アジア、世界の「知の拠点」としていくことは、日本がアジアと世界のゲートウェイとなることを目指す上で、極めて重要な課題である。
  • そのためには、各大学が、国際的に魅力のある質の高い教育・研究を生み出していくことが重要であるが、その手段として、学生や教員等の国際交流の拡大や、海外の大学との教育・研究両面での連携等を促進し、大学の国際化を進め、海外の活力を日本の大学に取り込んでいくことが、多くの大学にとって有効である。大学の国際化は、イノベーションの創出拠点としての大学を活性化し、日本全体のイノベーション力を高めることにもなる。
  • こうした観点から、以下の取組みを進める。なお、大学の国際化は、学生や教員等の国際交流の拡大、キャンパスの多言語化・多国籍化、ダブル・ディグリー・プログラム等の提供、国際共同研究の実施・参画、海外拠点の設立・運営、国際的な認知・評価の向上などを含む多様な概念であり、全ての大学が一律に志向すべきものではなく、各大学が、自らの特色を踏まえて、自主的に取り組むべきものである。

(1)大学の国際化の状況に関する調査の実施・公表

 大学の国際化を促し、優れた事例の普及を図るためにも、既存の調査結果の活用にとどまらず、全国的な調査を、改善を図りつつ継続的に実施するとともに、結果について積極的に公表を行う。

(2)大学の国際化に向けた競争的な資金配分の抜本的な拡充

 大学の海外の大学とのダブル・ディグリーやジョイント・ディグリー等の国際的なプログラムの開発、英語による体系的な教育プログラムの開発、国際的な大学間ネットワークへの参加等、大学の国際化に向けた多様な取組みを促進するため、競争的な資金配分を抜本的に拡充する。

(3)各大学及び第三者機関による大学の国際化の評価の充実

 明確な理念・目標設定、それに基づく計画策定、実施、結果の自己評価・第三者評価、評価結果を踏まえた改善計画の策定、実施…という大学の自主的な自己改善プロセスの中で大学の国際化が促されるよう、各大学や第三者機関による大学国際化に関する評価の充実・発展を図る。
 その際、国際化の評価指標策定やベンチマーキングに関する諸外国・地域の動向を踏まえるとともに、外国人研究者等による国際的な評価や、学生や産業界といった「市場」による評価も含め、多面的な評価が、可能な限り具体的なデータに基づいて実施されるよう配慮する。

 (略)

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高等教育局高等企画課高等教育政策室

(高等教育局高等企画課高等教育政策室)

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