社会総がかりで教育再生を・第二次報告-公教育再生に向けた更なる一歩と「教育新時代」のための基盤の再構築-(平成19年6月1日 教育再生会議)-高等教育関係抜粋-
はじめに
1.第二次報告のとりまとめに当たって
教育再生会議は、本年1月の第一次報告に続いて、ここに、第二次報告を取りまとめました。第一次報告で提言した「4つの緊急対応」は、現在、全て政府において実現が図られています。他方、第一次報告において提言したものの中には、更に議論を重ねるべき課題も多く、引き続き具体化に向けた検討を行っています。
今回の第二次報告では、第一次報告の柱であった公教育再生を更に一歩進める観点から、まず「学力」向上のための「ゆとり教育」見直しの具体策を提言します。
真の「学力」は、個々人の人格形成につながるものになることはもとより、実社会で必要とされる知識や能力とならなければならず、とりわけ高等教育の先に広がる社会の要請や将来動向を見据えた検討が不可欠です。また、「人格」は、学校はもとより、家庭のしつけ、地域との触れ合いなどによって培われる生活習慣、豊かな情操、善悪の判断など心と体の調和があってこそ高められるものです。そこで、今回は、「ゆとり教育見直し」の具体策とともに、徳育、大学・大学院の改革、そして、それらを実現するための教育財政基盤の在り方について重点を置いて提言しました。
なお、第一次報告で提言した教育委員会の評価、教員の資質向上等、また、今回十分に取り上げられなかった大学入試改革、6‐3‐3‐4制の在り方などについての具体策は、今後、第三次報告に向けて議論を深めていきます。
2.公教育再生のねらい―「教育新時代に向けて」―
60年ぶりに改正された教育基本法を踏まえ、社会総がかりで、公教育を再生し、「教育新時代」を切り開いていくことが求められています。
公教育の再生のため、まず乳幼児から社会に巣立つまで子供たちの年齢や発達段階に応じ、一貫した教育を切れ目なく行うことを目指しました。また、全ての子供に基礎学力と規範意識を身につける機会を保障し、教育格差が固定化されないようにしなければなりません。その上で、個を重視した教育や地域の特性を活かした教育を推進し、教育現場が切磋琢磨しながら創意工夫し、多様な教育を実現させ、教育の質を高めていく環境を整備することが重要です。また、子供や保護者、社会からの信頼に応えるため、学校現場や教育委員会の責任体制を確立することが必要です。
提言に際しては、特に、重要な課題へ重点を絞ること、「いつの時代も全ての子供が身につけるべきもの」と「多様性や個性の尊重」のバランスをとること、教育界への信頼を保つこと、現場教員をはじめ教育関係者、そして国民一人ひとりの皆様との協働という視点に立つことを重視しました。
3.目指す人間像―子供たちに身につけて欲しい力―
私たちは、全ての子供たちが、高い学力と規範意識を身につけ、知・情・意・体、すなわち、学力、情操、意欲、体力の調和の取れた徳のある人間に成長すること、一人ひとりが夢や希望を持ち、社会で自立して生きていくために必要な基礎的な力をしっかり身につけた人になることを望んでいます。そして、子供たち一人ひとりがその可能性を最大限伸ばし、開花させ、幸せな人生を送れるようにするとともに、その上でグローバルな大競争時代に必要な最先端の「知」を生み出し、イノベーションを起こせる人材の育成や、国際社会で活躍できるリーダーを育成することにも力を注がなければならないと考えています。
このような人を育成するため、就学前から大学院までの年齢段階を視野に入れ、以下のような力を身につけることが必要だと考えます。
第一に、学びの基礎となる、基本的生活習慣、学習習慣、読書習慣、体力
第二に、基礎的・基本的な知識・技能、知的好奇心、豊かな情操、学ぶ意欲・態度、忍耐力、チャレンジ精神
第三に、基礎・基本を応用し、課題を発見。自ら考え、判断・解決する能力、志、公共心、社会性、他者を理解し思いやる心
第四に、それらを実社会や職業生活で生かしていくための行動力、協調性、コミュニケーション能力、思考力、創造力、リーダーシップ
第五に、イノベーションを生み出すための高度な独創性、専門性、国際性
3.地域、世界に貢献する大学・大学院の再生‐徹底した大学・大学院改革‐
<改革の視点>
- グローバルな「知」の競争の激化、18歳人口の減少による大学全入時代の到来、社会人の再教育への要請など、社会の構造やニーズが変化するなか、大学・大学院に求められる役割も大きく変わりつつあり、新時代にふさわしい大学・大学院への改革が急務です。
- 知識基盤社会である21世紀において、我が国が成長力を高め国際競争に打ち勝っていくためには、次の3つの視点からの徹底した大学・大学院改革が必要です。
- 競争力の基盤となる数多くの優れた人材の育成
- 社会において指導的役割を果たすリーダーとなる人材の育成
- イノベーションを生み出す世界トップレベルの教育研究拠点としての大学・大学院
例えば、今後10年以内に、定評ある国際比較において、我が国の大学・大学院が、世界の上位10校以内を含め上位30校に少なくとも5校は入ることを目指す。
<大学・大学院の機能>
- 各大学は競争的環境の中で切磋琢磨し、自らの選択に基づき、世界的教育研究、幅広い職業人養成、総合的、国際的な教養教育、地域密着型、さらには地域の生涯学習など、機能別に分化し、特色を出していくことが求められています。
- また、これからの「知識基盤社会」の大学・大学院は、幅広く深い教養と専門分野に関する高度の知識を修得する場でなければなりません。このような教養は生涯を通じて涵養されるものですが、大学学部段階においては、高校までの学習成果の上に、様々な分野で活躍する人材が基本的な素養として備えるべき幅広く深い教養の修得が期待されます。そのため、文系・理系の区分にとらわれない大きな「知の体系」を俯瞰した充実した教養教育が重要です。あわせて、専門分野に関する基礎的な教育や、社会で自立して生きていくための基礎的能力の教育を行うことが求められます。大学院段階では、その上に立って、専門分野に関する高度な内容の教育研究を行う「最高学府」として、将来、イノベーションを生み出す世界トップレベルの研究者や高度専門職業人として活躍し得る人材の養成を目指すことが求められます。
- なお、個々の学生の力を最大限に伸ばすためには、所属や学年等にとらわれず、それぞれの能力、進度等に応じ、多様な形で教育研究を行うことができる柔軟な仕組みとすることが重要です。
今すぐ取り組むべき5つの改革
提言1 大学教育の質の保証
【卒業認定の厳格化、外部評価の推進、大学入試の抜本的改革の検討、意欲のある勉強する学生への奨学金拡充や学費免除、教員の教育力の向上】
教育の質の保証
- 国は、大学が行う次のような教育の質の保証のための取組を強力に支援する。
- 卒業認定を厳格にするGPA(grade point average)制度(注1)の導入など、単位・進級・卒業認定厳格化の取組の強化
- (注1)GPA制度
授業科目ごとの成績評価を、例えば5段階(A、B、C、D、E)で評価し、それぞれに対して、4、3、2、1、0のようにグレード・ポイントを付与し、この単位あたりの平均を出して、その一定水準を卒業等の要件とする制度。
- 社会や経済の動向を踏まえたカリキュラム改革や、学生の認知と学習スタイルの多様性に応じた教育の実施
- 最新の研究成果を踏まえた教科書・教材や、多様なメディアを活用した自学自習用教材の開発、公開
- 関係団体や大学が行うコア・カリキュラム(注2)や標準教材の開発
- (注)コア・カリキュラム
大学や学部単位において、習得すべき知識、技能、態度等を明確にし、到達目標やそのために必要な授業単位数を定めたもの。
- 大学間の連携により他大学の優れた講義を学生が受講できるようにする等多様で柔軟な履修形態
- 外部評価の推進(多元的評価の推進、評価体制・手法の確立、情報公開の徹底
- 専攻分野以外の分野の授業科目を体系的に履修させるダブルメジャーの推進
- ボランティア活動体験の大学教育への導入
- 大学は、学生による実効性ある授業評価の実施を促進する。
- 国は、教員の教育力の向上のため、次の取組を行う。
- 全大学へのファカルティ・ディベロップメント(FD)(注3)の義務付け
- (注3)ファカルティ・ディベロップメント
教員が授業内容・方法を改善し、向上させるための組織的な取組の総称。
- 教育手法に関する研修プログラムの開発を支援し、大学において、教員の採用・昇任の際の活用を進める。
- 国は、民間機関による試験等により、学生の大学卒業程度の学力を認定する仕組みを検討する。
大学入試の抜本的改革の検討
- 大学は、AO(アドミッション・オフィス)入試の活用と厳格な運用等により、大学の個性・特色を明確化し入試の多様化を図る。
- 国は、大学入試の多様化、弾力化のための措置をはじめとした抜本的な改革について検討する。その際、初等中等教育に与える影響等も考慮する(大学入学年齢の弾力化、国立大学の入試日分散・複数合格、大学入試センター試験の資格試験化や年複数回実施、高卒程度認定試験の在り方等)。
意欲のある勉強する学生への支援
- 国は、優秀で意欲ある学生に対する奨学金を拡充する。特に、経済的に恵まれない優秀な若者に高等教育への道を開くため、例えば国立大学における特別枠(学費免除)の設定、学費減免を行う私学に対する補助の拡充等を検討する。
提言2 国際化・多様化を通じ、世界から優秀な学生が集まる大学にする
【9月入学の大幅促進、教員の国際公募、英語による授業、国家戦略としての留学生政策、企業・社会との連携】
9月入学の大幅促進
- 国は、海外からの帰国生徒や海外からの留学生の要請に応えるとともに、日本版ギャップイヤー(注4)などの導入による若者の多様な体験の機会を充実させる観点から、大学・大学院における9月入学を大幅に促進する。
- このため、国は、大学・大学院の4月入学原則を弾力化する(学校教育法施行規則の改正)。
- さらに、国は、海外からの帰国生徒や留学生の希望に応じられるよう、国立大学について、次期中期目標策定の際、ガイドラインを示し、9月入学を積極的に受け入れる大学・大学院を支援し、全国立大学での9月入学枠の設定を実現する。私立大学においても9月入学枠設定を促進する。9月入学枠を設定する大学について、運営費交付金、私学助成等により支援措置を講ずる。9月入学と合わせて、セメスター制(半年間の学期ごとに授業が完結し、単位の修得認定を行う仕組み)の導入を促進する。
- (注4)日本版ギャップイヤー
3月末までに入学を決定した学生に、9月からの入学を認め、その間、ボランティア活動など多様な体験活動を行う猶予期間を与えるもの。また、4月に入学した学生に、9月までの間、多様な体験活動を認め、このような活動を評価して一定の単位を認める仕組み。
大学・大学院の国際化のための環境整備
- 大学・大学院は、世界水準の卓越した教育研究拠点を形成するため、教員の国際公募、任期制の大幅な拡大などにより、世界トップレベルの教員の採用を促進する。
- 大学は、外国人教員比率の増や、女性教員の採用に努める。
- 国は、外国人教員の採用や留学生受入れ拡大のため、地元自治体や関係機関等の協力を得つつ、家族を含めた住環境・生活環境の整備など、都市インフラの強化を図る。
- 国は、アジアを含めた国際的な相互連携プログラム(「大学・大学院グローバル化プラン(仮称)」)を策定し、これにより、海外大学との国際連携を推進する(単位互換、ダブルディグリー・プログラム、国際的な大学間ネットワークへの参加、サマースクール等多彩な国際交流プログラム等)。
- 大学は、英語による授業や、英語のみで卒業可能な体系的教育プログラムを拡大する。
- 国は、各大学や第三者機関による大学国際化に関する評価の充実・発展を図る。
国家戦略としての留学生政策の推進
- 国は、新たな留学生政策を、教育政策のみならず、産業政策、外交政策を含めた国家戦略として再構築し、積極的に推進する。
- 国は、現地でのリクルーティング支援体制の強化や、渡日前の選考・入学許可及び奨学金支給の決定、在学中の相談・支援、卒業後の就業を見据えた産学連携の強化等を図る。
- 国は、戦略的・機動的な留学生政策のため有効活用する観点から国費留学生制度の改善を図るとともに、ODA予算の活用などにより、アジア諸国等からの優秀な留学生の受入れを促進する。
- 国は、日本人留学生について、大学生の短期留学や若手研究者の長期留学促進、中学高校生のホームステイ、交換留学等の機会の拡充を図る。
企業や社会との連携の強化
- 大学は、企業や社会等のニーズに応じた学際的研究分野の創出やカリキュラムの再編等企業・社会との連携を強化する。
- 大学や企業等は、企業や社会が求める人材・能力を明確化し、人材ニーズ等について、大学と企業等が意見交換する場を設定する(「産学人材育成パートナーシップ」)。
- 大学・大学院は、企業との人事交流を拡大する。また、長期インターンシップ等を導入する。大学・大学院は、政策立案と学術研究を連携させる観点から、行政機関との交流を進める。
- 国は、高等専門学校が地域の企業等と連携し行う実践的な専門教育の取組を積極的に支援する。
提言3 世界トップレベルの教育水準を目指す大学院教育の改革‐「国際化」、「個性化」、「流動化」‐
【体系的・組織的な大学院教育の徹底、国内外に開かれた入学者選抜、世界トップレベルの大学院形成、学生に対する経済的支援】
大学院教育制度の改革
- 大学院は、学部の延長ではない体系的・組織的な教育を徹底し実施する。博士前期(修士)課程はコースワークの確実な修了と個別研究指導で充実させる。
- 研究者養成を行う大学院を中心に、学部3年修了時から大学院に進学する早期卒業制度を積極的に活用する。
- 国は、分野の特性に配慮しつつ、博士前期課程を3年、博士後期課程を2年とする等制度を弾力化する。
- これからの大学院は、従来にも増して、自大学出身者だけでなく広く真に有能な人材を求め、教育研究の成果を通じ、世界的な「知」の競争の場で力を発揮していく必要がある。そのため、大学院は、教育目標、内容、入学者選抜に関する情報を予め明らかにするとともに、各大学の主体的な判断により、例えば論文・研究計画書の重視、学外試験委員の参加、英語による試験実施など様々な工夫を通じ、他大学・海外出身者にも公正で開かれた入学者選抜を行う。
世界トップレベルの大学院形成
- 大学院に重点化した中核的大学は、自主的な選択により、国際公募による第一級の教員の採用と国内外問わず優秀な学生の獲得によって、世界各地の優れた外国人学生が在籍し、同一大学の同一分野出身の大学院生が最大多数とならない(最大限3割程度)多様性ある環境を目指し、国際競争に勝ち抜く世界トップレベルの大学院を形成する。国は、このような大学院の努力を強力に支援する。
学生に対する経済的支援
- 国は、国内外を問わず、優秀で意欲のある大学院学生への経済的支援を充実し、大学院において、TA(注5)、RA(注6)やフェローシップとして積極的に採用を行う。特に、他大学の大学院に進学する優秀な学生に対する支援を強化する。
- (注5)TA(ティーチングアシスタント)
優秀な大学院生に対し、教育的配慮の下に、学部学生等に対するチュータリング(助言)や実験・実習・演習等の教育補助業務を行わせ、大学院学生への教育訓練の機会を提供するとともに、これに対する手当の支給により、大学院学生の処遇の改善の一助とすることを目的としたもの。
- (注6)RA(リサーチアシスタント)
大学院等が行う研究プロジェクト等に、教育的配慮の下に、大学院学生等を研究補助者として参画させ、研究遂行能力の育成、研究体制の充実を図るとともに、これに対する手当の支給により、大学院学生の処遇の改善の一助とすることを目的としたもの。
国は、ポスドク(注7)が新しい領域の開拓等に挑戦できる機会を提供する等の人材育成の仕組を構築する。
- (注7)ポスドク
主に博士課程修了後、研究者としての能力を更に向上させるため、引き続き研究機関などで研究事業に従事する者。
提言4 国公私立大学の連携により、地方の大学教育を充実する
【国公私を通じた「大学地域コンソーシアム」や大学院の共同設置】
- 大学は、自主性・自律性をもって、社会の変化や時代の要請に応じた学部学科の再編、他大学との連携協力、組織運営改革等に取り組む。
- 国は、地域の人材育成や地域経済の活性化のため、国公私を通じた地方における「大学地域コンソーシアム」(注8)を形成することを支援する。
- (注8)大学地域コンソーシアム
特定の事業を目的として、大学間又は(複数の)大学と地域等で構成される連携組織。
- 国は、国公私を通じ複数の大学が大学院研究科等を共同設置できる仕組みを創設する。
- 国際競争に勝ちうる大学共同利用機関への徹底的な支援を行う。
提言5 時代や社会の要請に応える国立大学の更なる改革
【大胆な再編統合の推進、一つの国立大学法人による複数大学の設置運営、人事給与システムの抜本的改革】
- 国は、次のような国立大学の自主的な取組を促進する。
- 国立大学の学部の再編等
- 国立大学の大胆な再編統合等
- 18歳人口の減少を踏まえた国立大学の学部入学定員の縮減
- 一つの国立大学法人が複数大学を設置管理できる仕組みを作る
- 国立大学は、教員人事給与システムを抜本的に改革し、教育・研究両面における能力・業績の評価と給与への反映、一律年功序列型給与システムの打破を具体化する。また、優秀な研究者を集めるため、「学長より給与の高い教授・研究者」など業績に連動した柔軟な給与体系の導入を促す。
- 国立大学は、法人化の趣旨を踏まえ、大学全体の経営に関することについては、教授会に任せず、学長のリーダーシップにより意思決定を行う。
- 国立大学は、法人化の趣旨を踏まえ、学長選挙を取りやめるなど、学長選考会議による学長の実質的な決定を行うこととする。
- 国立大学は、大学事務局の改革を進め、事務職員の一層の資質向上と合理化等、経営の効率化を行う。
以上、大学・大学院改革については、経済財政諮問会議、総合科学技術会議、イノベーション25戦略会議、アジア・ゲートウェイ戦略会議、規制改革会議の各会議の代表も交えた合同会議も経て、教育再生会議において取りまとめたものですが、残された課題については、今後、必要に応じ適宜連携し、教育再生会議において検討を進めることとします。
また、これら関係会議とも連携し、大学・大学院改革に向けた推進・検討状況のフォローアップを行うこと等により、改革を着実に前進させることとします。
4.「教育新時代」にふさわしい財政基盤の在り方
天然資源に恵まれない我が国の将来は「人材」にかかっており、教育の成否が国家の存立を大きく左右します。60年ぶりの教育基本法の改正を受け、教育振興基本計画の策定が急がれる中、中長期的な見通しと明確なゴールをもって教育再生の歩みを確実なものとすることが、私たち教育再生会議の責務であると考えています。
もとより教育再生は、国、地方、学校、家庭、地域社会、経済界、メディア等がそれぞれ「当事者」として、「社会総がかり」で、それぞれに前進しなければ実現しない課題です。その意味でも、国は関係府省の垣根を越え政府一丸となって取り組む必要があります。
教育再生は、内閣の最重要課題であり、社会総がかりで、教育の基本にさかのぼった改革を推進し、「教育新時代」を開くためにも、教育予算の内容の充実は重要です。
このため、教育予算については、効率化を徹底しながら、メリハリを付けて教育再生に真に必要な教育予算について財源を確保する必要があります。
教育再生のため必要な政策に対しては、メリハリを付けた重点的な財政投資を行うことを期待します。
大学・大学院改革実現のための3つの具体策
高等教育財政においては、次の3本柱を基本とします。
- 「選択と集中による重点投資」
- 「多様な財源の確保への努力」
- 「評価に基づく効率的な資源配分」
必要な施策については、できる限り効率化を図りつつ、適正な評価に基づき、真に実効性のある分野への「選択と集中」により必要な予算を確保します。基盤的経費については、確実に措置します。
各大学の努力と成果を踏まえた高等教育関係予算とするため、基盤的経費と競争的資金の適切な組合せと、一律的配分から評価に基づくより効率的な資金配分へのシフトを図りつつ、必要な教育財政基盤を確保します。
経済活動に短期的・直接的に結びつかない、人文社会科学、基礎科学や、世界的な課題である環境・エネルギー・食料等の分野についても、優れた教育研究が長期的・安定的に行われるよう留意します。
具体策1 競争的資金の拡充と効率的な配分
- 競争的資金を拡充し、間接経費を充実する。
- 研究と教育の両面における国公私を通じた競争的資金を拡充する。
- 競争的資金の審査システムを公正性、透明性、国際性の観点から高度化する。若手研究者への配慮等、評価手法を改革する。
- 私学も含めイノベーションの基盤となる研究施設設備に対する支援を拡充する。
- 競争的資金からの学生奨学金を可能とする新たな仕組の構築、競争的資金から人件費を支給できる研究者の対象を拡大する。
具体策2 大学による自助努力を可能とするシステム改革
- ODA予算等、多様な財源確保の在り方を検討する。
- 民間からの教育投資を促進するため、民間企業や個人等からの寄附金、共同研究費等に係る優遇税制の充実・強化等を検討する。
- 各大学の自助努力による民間からの資金獲得を後押しするため、1国立大学への民間寄附金の投資信託への運用を可能とする等の運用の弾力化、2民間との共同研究資金の教員等給与への充当を可能にする、等の支援を実施する。
- 大学による出資の対象範囲を拡大する(大学発ベンチャーなど)。
具体策3 国立大学法人運営費交付金の改革
- 国立大学法人運営費交付金で教育研究の基礎的な部分をきちんと支えると同時に、競争的資金を大幅に拡充し、各大学が切磋琢磨し、多様なインセンティブ・システムを導入しやすい環境を整備する。
- 国立大学法人運営費交付金は、次期中期目標・計画(平成22年度~)に向け、各大学の努力と成果を踏まえたものとなるよう、新たな配分の在り方の具体的検討に着手する。
- 運営費交付金の配分については、1教育・研究面、2大学改革等への取組の視点に基づく評価に基づき大幅な傾斜配分を実現する。その際、第三者評価たる国立大学法人評価の結果を活用する。
- 正規職員の給与の一部を競争的資金の直接経費に積算できるようにする。競争的資金を財源とする任期付職員の人件費に関しては、既に国立大学法人等の総人件費削減の外枠になっているが、競争的資金を財源とする正規職員の人件費も同様に外枠とする。
第三次報告に向けての検討課題
教育再生会議では、今後「教育新時代」にふさわしい「社会総がかりの教育再生」の在り方について、12月の第三次報告に向けて、更に検討を進めることとします。
その際、今回の第二次報告の取りまとめに向けた検討の中で、引き続き検討することとされた次に例示する事項を含め、検討を行うこととします。
- 学校、教育委員会の第三者評価制度
- 教員養成、教員採用など教員の資質向上
- 6‐3‐3‐4制の在り方
- 「教育院(仮称)」構想
- 小学校での英語教育の在り方
- 省庁総がかりで、子供の教育と成長発達を保障する体制の在り方
- 教育バウチャー制
- 学校の適正配置など、効率的な予算配分の在り方
- 育児支援や幼児教育の在り方
- 大学入試の抜本的改革
- 大学学部教育の在り方、大学・大学院の教育と研究の在り方、及び財政支援の在り方
4つの対応
4.国際化を通じた大学・大学院改革
― 教員の国際公募、外国人教員比率の増、英語による授業、国家戦略としての留学生政策を推進。
また、大学の4月入学原則を一層弾力化する。大学の取組を支援し全国立大学の9月入学枠設定を表現(9月入学枠の大幅促進)
平成19年度中に学校教育法施行規則の改正、国立大学の中期目標策定時のガイドライン、運営費交付金等で支援
効率化を徹底しながら、メリハリを付けて教育再生に真に必要な予算について財源を確保