資料1-4 「地方大学の振興、東京における大学の新増設の抑制、地方移転の促進」等に関する中央教育審議会大学分科会における主な意見

平成29年4月18日
中央教育審議会大学分科会


「地方大学の振興、東京における大学の新増設の抑制、地方移転の促進」等に関する中央教育審議会大学分科会における主な意見


  昨年12月に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生総合戦略(2016改訂版)」において、「地方大学の振興、地方における雇用創出と若者の就業支援、東京における大学の新増設の抑制、地方移転の促進等についての緊急かつ抜本的な対策を、教育政策の観点も含め総合的に検討し、2017年夏を目途に方向性を取りまとめる」との記載が盛り込まれたことを受けて、中央教育審議会大学分科会においても、教育政策の観点からこれらの論点に関して議論を行った。
これまでの主な意見は以下の通りである。


1.地方大学の振興について

(1)地方大学の意義等

  ○ 今後の日本の発展にとって、人材育成とイノベーションが核であり、大学は地方再生にとって非常に重要な存在。

  ○ 地方と都会を分けて単純に考えることはやめた方がよい。地方の大学でも特色があれば学生募集に苦労しておらず、都会の大学でも定員割れをしている大学は多い。

  ○ 地方の大学はその地方の産業のために地方の学生を教育すれば良いといった地域の中で閉じこもる議論ばかりになることを懸念している。グローバルに活躍する人材育成を目指す地方大学もあってしかるべき。

  ○ 学生のキャリアの多様化の機会を作っていくことが必要である。また、地方を含めた我が国全体の人の流動性を高めることも重要である。従って、地方の学生が地方の大学に行って地方の企業に就職するということをモデルにするのはやめた方が良い。

  ○ 東京の大学についても、東京出身者が7~8割にもなるのは、多様性の観点からも問題がある。

  ○ 地方大学は、地方に残る人々を地域を支える中堅職業人に育てるため、地元高等学校や都市部の大学とも連携した教育の充実を進めるべき。

  ○ 地方における国立大学については、志願倍率などに鑑みても、高いレベルでのニーズがある。また、個々の国立大学は地方の活性化に向けた様々な取組を推進しており、さらにその取組を進めるべきである。

 (2)地域特性を生かした取組への支援

  ○ 地方大学も、必死に改善のための取組を行っているが、各大学がこれまで以上に地域の特性を生かして地方創生に取り組むためには、もっと大学がイニシアティブをとれるよう、新たな交付金の構築なども含めた支援策の検討を進めるべき。

  ○ 地元企業の業種に対応した教育研究に関しては、地元からも資金を支援してもらうなど、産学官が連携して進めていくことが重要。

  ○ 東京に出たいという進学者を地元にとどまらせるのは無理があるが、すでに地元で学びたいというマインドを持っている高専・短大・専門学校の卒業生が学士課程に進む道を作ることは、地方の産業を強くし、新たな魅力を作り出す上で有効。専門学校で学ぶ学生は家庭の年収が低い者が多いため、大学編入のためのバウチャーを交付するなどの措置は有効だと考える。


 (3)地域を超えた大学間連携の強化、学生の流動性向上の支援

  ○ 国公私立の枠に捉われず、地方と大都市の間で大学同士のネットワークを作り、相互のリソースを生かしてさらに交流を進めていくことが双方の大学生にとって有意義。すべての卒業単位を入学した大学で取得するということを前提に考える必要はない。

  ○ 現在は、大学の規模に関わらず、一定の教員数が必要だが、地方の小規模の大学を活性化するためには、一部の授業については、放送大学を活用するなど、教育の質を維持しながら、効率化する取組を進めていくことも必要。

  ○ 現在も複数の大学間で協定し、地域を超えて一定期間学生が他の地方の大学で学ぶ取組を行っている。これにはきわめて大きな教育効果があるが、住居費などの負担がネックとなっている。寮の整備やアパートの借上げなどの面での支援が必要。

  ○ 地方自治体、企業、大学が三位一体で取り組むことが重要。地方の大学生が東京に、東京の大学生が地方にというインターンシップは双方に利点があり、さらに進めていくべき。


2.東京における大学の新増設の抑制について

  ○ 東京23区内の大学の新増設を抑制してしまうと、教育内容の新陳代謝が働かなくなり、東京の大学のみならず、大学全体が社会の変化に応じて自己変革を進める阻害要因となる。

  ○ 学生が東京の大学への入学を希望するのであればそれを止める必要はなく、東京における大学新増設などの抑制はするべきではない。人口減少の著しいところに大学を作ってもやっていけない。

  ○ まずは、大学は地域への貢献をしっかりと行うという方向性をしっかり示すべき。東京の大学の新増設を制度的に制限することについては、必要性・実効性ともに疑問。ハードな制限ではなく、インセンティブにより誘導することを考えるべき。

  ○ 仮に東京23区の大学新増設を抑制しても、地方に万遍なく大学が増えるのではなく、東京周辺など特定の地域だけが増加するという結果になるのではないか。

  ○ 東京への大学進学時の流入は、主に私立大学への入学で増えていることを考えると、それぞれの建学の精神を尊重しつつ、どうガイドしていくかを考えることが必要。

  ○ これから我が国の18歳人口が大幅に減少する中で、東京に若者が流入すると地方は厳しい。東京圏の人口集中を是正するため、東京での大学の新増設、あるいは入学定員数の抑制を始めるべき。一方で、地方に優位性を持たせる措置、たとえば定員超過の制限についての緩和や、設置基準の運用、予算配分などについて検討するべき。


3.地方移転の促進

  ○ 大学の地方移転を進めるべき。その際は、大学進学者収容力が低い地域への移転を優先すべき。

  ○ 若い人が増えれば地域は活性化するし、大学の地方移転は経済効果があるが、その際、地方自治体や企業と一体となって新しい産業を創出するとともに新しい高等教育機関を創るという発想が重要。

  ○ 東京の大学のサテライトキャンパスの移転などが中心に語られており、地方の中小規模の大学の目線には立てていないところがある。地方大学の振興においては、地方の目線から検討してもらいたい。


4.地方における若者の雇用機会の創出

  ○ 大学卒業後の就職に伴う転入者数も多い。東京一極集中の是正を検討する際には、就職時の問題を切り離して考えるべきではなく、大学に関する議論だけでは効果は少ないのではないか。○ 東京の大学が、就職相談窓口などにおいて出身県等への学生の回帰を促進するよう、本腰を入れて取り組むべき。

  ○ 企業としても本社一括採用を再検討し、地域限定の採用も増やしていくべき。

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