資料9 学校教育法の改正の方向について(高等教育関係)

 教育基本法改正及び中央教育審議会答申等を踏まえ、学校教育法の規定を次のとおり改めることにしてはどうか。

(1)学校種の目的及び目標の見直し等関係

1.大学に関する事項

  • 教育基本法に大学の基本的役割に関する規定(第7条)が置かれたことを踏まえ、以下のとおり現行学校教育法の大学の目的に関する規定(第52条)を改める必要があるのではないか。
  • 大学の目的に関しては、例えば、教育研究活動の成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するといった趣旨を規定してはどうか。

2.高等専門学校に関する事項

  • 大学の目的に関する規定が改正される場合には、高等専門学校の目的に関する規定(第70条の2)についても同様の改正を行ってはどうか。

(2)学校の評価及び情報提供関係

  • 初等中等教育段階の学校種について、例えば、学校は、当該学校の教育活動その他の学校運営の状況に関し、保護者、地域住民その他の関係者に対して情報を提供するものとするといった趣旨が規定された場合、大学等についても同様の改正を行ってはどうか。
    (※ 学校の評価については、既に第69条の3において規定。)

(3)大学等の履修証明制度の創設関係

  • 大学等における教育研究成果を広く社会に提供する手段の一つとして、履修証明の制度化を図ることとし、例えば次のような趣旨を規定してはどうか。
    • 大学は、文部科学大臣の定めるところにより、当該大学の学生以外の者に、教育課程を提供することができること。
    • 大学は、当該教育課程を修了した者に対し、履修証明を行うものとすること。

 ※ このほか、所要の規定の整備を行うことについても検討中。

教育基本法における大学に関する規定

教育基本法(平成18年法律第120号)

(大学)
第七条 大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。
 2 大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない。

(参考:現行の学校教育法の規定)

【大学】
 第五十二条  大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。

【大学院】
 第六十五条  大学院は、学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥をきわめ、又は高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培い、文化の進展に寄与することを目的とする。
 2.大学院のうち、学術の理論及び応用を教授研究し、高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培うことを目的とするものは、専門職大学院とする。

【短期大学】
 第六十九条の二  大学は、第五十二条に掲げる目的に代えて、深く専門の学芸を教授研究し、職業又は実際生活に必要な能力を育成することをおもな目的とすることができる。

【高等専門学校】
 第七十条の二  高等専門学校は、深く専門の学芸を教授し、職業に必要な能力を育成することを目的とする。

大学の社会貢献に関する主な提言(抜粋)

「我が国の高等教育の将来像(答申)」平成17年1月28日中央教育審議会

第1章 2 高等教育の中核としての大学

  • 大学は教育と研究を本来的な使命としているが、同時に、大学に期待される役割も変化しつつあり、現在においては、大学の社会貢献(地域社会・経済社会・国際社会等、広い意味での社会全体の発展への寄与)の重要性が強調されるようになってきている。当然のことながら、教育や研究それ自体が長期的観点からの社会貢献であるが、近年では、国際協力、公開講座や産学官連携等を通じた、より直接的な貢献も求められるようになっており、こうした社会貢献の役割を、言わば大学の「第三の使命」としてとらえていくべき時代となっているものと考えられる。
  • このような新しい時代にふさわしい大学の位置付け・役割を踏まえれば、各大学が教育や研究等のどのような使命・役割に重点を置く場合であっても、教育・研究機能の拡張(extension)としての大学開放の一層の推進等の生涯学習機能や地域社会・経済社会との連携も常に視野に入れていくことが重要である。

「21世紀の大学像と今後の改革方策について―競争的環境の中で個性が輝く大学―(答申)」平成10年10月26日大学審議会

第2章 2(3)地域社会や産業界との連携・交流の推進

 大学は、今後、その知的資源等をもって積極的に社会発展に資する開かれた教育機関となることが一層重要となる。
 各大学が地域社会や産業界の要請等に積極的に対応し、それらの機関との連携・交流を通じて社会貢献の機能を果たしていくため、リフレッシュ教育の実施、国立試験研究機関や民間等の研究所等との連携大学院方式の実施、共同研究の実施、受託研究や寄附講座の受入れなど産学連携の推進を図っていく必要がある。
 企業と大学が共同した教育プログラムの開発や、本校以外の教育研究の場の設定などを通じて、社会人が企業と大学を往復して学習するための環境の整備を図っていくことが必要である。その際、テレビ会議システム等により大学の授業を社会人が企業の会議室等で受講できるようにするなど、発展の著しい情報通信技術を効果的に利用する試みも大学の授業の将来的可能性を広げるものとして積極的に推進する必要がある。
 また、インターンシップ制度の積極的な導入や、学生のボランティア活動等地域社会に貢献する活動の促進に積極的に取り組むことも重要である。

大学の情報提供に関する主な提言(抜粋)

「我が国の高等教育の将来像(答申)」平成17年1月28日中央教育審議会

第2章 4(5)評価結果等に関する情報の積極的な開示及び活用

  • 教育内容・方法、財務・経営状況等に関する情報や設置審査等の過程、認証評価や自己点検・評価の結果等により明らかとなった課題や情報を当該機関が積極的に学習者に提供するなど、社会に対する説明責任を果たし、当該機関自身による質の保証に努めていくことが求められる。
  • 具体的には、例えば、ホームページ等を活用して、自らが選択する機能や果たすべき社会的使命、社会に対する「約束」とも言える設置認可申請書や学部・学科等の設置届出書、学則、自己点検・評価の結果等の基本的な情報を開示することが求められる。
  • また、当該機関による情報開示だけでなく外部からの評価結果も併せて提供されることが学習者の便宜のために重要であることから、認証評価機関による評価の結果も開示することとされており、当該機関の質の確保・向上のために積極的に活用される必要がある。

「21世紀の大学像と今後の改革方策について―競争的環境の中で個性が輝く大学―(答申)」平成10年10月26日大学審議会

第2章 3(2)大学情報の積極的な提供

 大学入学希望者などの直接の利用者や一般の国民が必要とする大学情報を分かりやすく提供することは、公共的な機関としての大学の社会的な責務である。このため、大学が、その教育研究目標・計画(例えば、将来計画など)、大学への入学や学習機会に関する情報、学生の知識・能力の修得水準に関する情報(成績評価方針・基準等)、卒業生の進路状況に関する情報、大学での研究課題に関する情報を広く国民に対して提供するものとすることとし、それを制度上位置付けることが必要である。また、大学の財務状況に関する情報についても公表を促進することが必要である。

大学等の履修証明に関する主な提言(抜粋)

「我が国の高等教育の将来像(答申)」平成17年1月28日中央教育審議会

第2章 3(3)学習機会全体の中での高等教育の位置付けと各高等教育機関の個性・特色

(イ)高等教育と生涯学習との関連
  • 「人々が、生涯のいつでも、自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が適切に評価される」ような生涯学習社会を構築するためには、各種の主体により多様な学習機会が豊富に提供されなければならない。そのうちで、公開講座をはじめとする各種の大学開放を通じ、質的に高度で体系的かつ継続的な学習機会を提供する者として、高等教育機関やそのコンソーシアム(共同事業体)が重要な役割を果たすことが期待される。
  • また、今後は、生涯学習の意識の高まりに対応して科目等履修生や聴講生等の履修形態の多様化がさらに進むものと考えられる。また、一定のコースないし科目(群)を学んだ成果としての履修証明として、学位以外の方法が社会的に定着することも予想される。

第5章 2(2)中期的に取り組むべき重要施策

2.高等教育の多様な機能と個性・特色の明確化についての関連施策

  • 学習者の多様なニーズに対応した教育サービスの提供を支援するため、履修形態の弾力化を一層進める必要がある。
  • 社会人の学習意識の高まり等に対応して、学位以外の履修証明の方法の普及や社会的な定着を促進する必要がある。

「再チャレンジ可能な仕組みの構築(中間取りまとめ)」平成18年5月30日 「多様な機会のある社会」推進会議(平成18年3月29日設置、議長:内閣官房長官)

2.1.(2)学び方の複線化(いつでも学び直しを可能に)

職業能力向上や再チャレンジに資する教育
  • 大学等における社会人の「学び直し」の推進
     大学・短期大学等における、社会人のキャリアアップや再就職等に役立つような、ITや会計等の正規の授業外の教育プログラムの開発を支援し、その普及を図るとともに、社会人が科目等履修生、聴講生等として一定の科目群を学んだ成果に対し学位以外の履修証明を与える取組の普及を図る。

「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」(平成18年7月7日閣議決定)

第4章 2.再チャレンジ支援

(1)人生の複線化による柔軟で多様な社会の仕組みの構築

(学び方の複線化)
 大学等における実践的な教育コースの開設等の支援、再就職等に資する学習機会を提供する仕組みの構築等、社会人の学び直しを可能とする取組を進める。

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高等教育局高等教育企画課高等教育政策室

(高等教育局高等教育企画課高等教育政策室)

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