令和8年7月16日(木曜日)15時00分~17時00分
ハイブリッド(対面・Web)開催 ※傍聴はWebのみ
(分科会長)吉岡 知哉分科会長 (副分科会長)和田 隆志副分科会長 (委員)安孫子 尋美、伊藤 公平、田中 マキ子、冨永 悌二、廣津留 すみれ、古沢 由紀子、森 朋子の各委員 (臨時委員)上田 悦子、大竹 尚登、大野 博之、加藤 映子、金子 晃浩、北畑 隆生、栗本 博行、志賀 啓一、杉村 美紀、髙宮 いづみ、中村 和彦、濱中 淳子、本間 敬之、益戸 正樹、松下 佳代、吉見 俊哉の各委員
(事務局)合田高等教育局長、森友私学部長、先﨑大臣官房審議官、松浦大臣官房審議官、安井高等教育企画課長、石橋大学振興課長、松本専門教育課長、佐藤高等教育局参事官(国際担当)、寺坂高等教育政策室長、鈴木大学設置・評価室長、平尾高等教育企画課課長補佐ほか
【吉岡分科会長】 それでは,所定の時刻になりましたので,中央教育審議会大学分科会第191回を開催いたします。御多忙の中,御出席いただき誠にありがとうございます。
本日も対面とウェブのハイブリッド会議として開催し,その様子をYouTubeライブ配信にて公開いたします。
それでは,事務局から連絡事項をお願いします。
【平尾高等教育企画課課長補佐】 事務局でございます。会議を円滑に行う観点から,御発言の際は挙手のボタンを押していただき,指名されましたらお名前をおっしゃってから御発言いただきたいこと,また,御発言後は再度挙手のボタンを押して,表示を消していただくようにお願いいたします。
本日の会議資料は事前にメールでお送りしているとおりでございますが,会場のiPadには本日の会議資料をチャットにてURLをお送りしておりますので,紙の資料と併せて御活用くださいませ。
以上でございます。
【吉岡分科会長】 ありがとうございます。本日の審議事項として,認証評価機関の認証に関する議題がございます。その後,報告事項として,AX時代に求められる人材像について,高等専門学校の機能強化の方向性について,連続課程特例認定制度についての3件を御説明いただきます。
まずは,1,認証評価機関の認証についてです。大学教育質保証・評価センター及び専門職高等教育質保証機構の2機関から文部科学大臣に対して認証評価機関としての申請があったことから,中央教育審議会大学分科会にお諮りするものです。具体的な審査につきましては,本分科会の下の審査委員会において行っていただき,その審査結果をもって後日,本分科会で審議を行うことといたします。まずは,事務局から説明をお願いします。
【鈴木大学設置・評価室長】 大学設置・評価室長の鈴木でございます。資料1-1に基づきまして,御説明させていただきたいと思います。
認証評価機関の認証につきましては,2団体から申請がございましたので,学校教育法第112条第1号の規定に基づき,文部科学大臣より中央教育審議会への諮問を行うものでございます。令和8年6月30日付で一般財団法人大学教育質保証・評価センター及び一般社団法人専門職高等教育質保証機構から,学校教育法第110条第1項の規定に基づく認証評価機関の認証に係る申請がございました。
資料1-1の1ページ,2ページでございますけども,これは大学教育質保証・評価センターでございますが,機関別認証評価機関として,大学を対象とした認証を受けておりまして,今回は短期大学を対象とした機関別認証評価を行うための申請がございました。
また,資料3の3ページ,4ページでございますけども,これにつきましては,専門職高等教育質保証機構でございまして,分野別認証機関として10分野の認証を受けており,今回は専門職大学の美容健康分野を対象とした分野別認証評価を行うための申請がございました。団体の概要実績等につきましては,資料の記載あるとおりでございます。
最後,5ページの今後の手続でございますけども,先ほど分科会長からもありましたように,これらの審査内容を大学分科会の下に設置しております,認証評価機関の認証に関する審査委員会において専門的な調査審議を行うこととしまして,結果を取りまとめた上で,本年11月末以降に大学分科会へ報告いただく予定でございます。
説明は以上でございます。よろしくお願いします。
【吉岡分科会長】 ありがとうございます。
今の説明につきまして,御質問,御意見のある方は御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは,本申請に係る審査につきましては,審査委員会へ付託するということにいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。
続きまして,(2)AX時代に求められる人材像についてです。AIのあらゆる領域に浸透し,社会変革が加速するAX時代における高等教育機関で育成されるべき人材像について,御議論をお願いしたいと思います。
こちらは事務局より御説明いただいた後に,有識者として御出席いただいている株式会社PKSHA Technologyの上野山代表取締役より,AIの社会実装を第一線で牽引されているお立場から御発表いただき,最後に質疑応答の時間を取りたいと思います。なお,上野山代表取締役におかれましては,15時40分頃にミーティングにより退室されることになっておりますので,御発表後は上野山代表取締役への御質問から優先的にお願いいたします。
それでは,最初に事務局より説明をお願いします。
【寺坂高等教育政策室長】 それでは,資料2-1を御覧いただければと思います。1ページおめくりいただきまして,2ページのところでございますけれども,AX時代に求められる人材像に関しまして,これまでも審議会の答申や政府方針で人が果たすべきことを果たすための力を育成するために,文理の壁を越えた普遍的な知識や能力を備えた人材育成等についてお示しをしてきてございます。また,この間,経済界からも、今後求められる人材,また,高等教育の在り方に関する提言をいただいているところでございます。本日,先ほど分科会長からもございましたけれども,これらの状況を御紹介するとともに,AIの実装を進めていらっしゃるPKSHA Technologyの上野山代表取締役からも御発表いただきながら御議論いただきまして,今後,決定される骨太の方針や日本成長戦略等を基に施策の具体化を進めていきたいと考えております。
2ページの下側でございますけれども,昨年おまとめいただきました,知の総和答申でございます。主体性やリーダーシップ,創造力,課題設定・解決能力等々の人が果たすべきことを果たせる力や,その基盤としての志,人間力等についても御提示をいただきまして,分野横断,文理融合教育を通じた課題解決力等の涵養に重点を置いた学位プログラム等に取り組む重要性を御提言いただきました。こうした力につきましては,テスト等で測れない非認知的な力もございまして,ルーブリックを活用した行動や状態に基づく評価でございますとか,学生,企業からの評価などを通じて可視化を図るといった取組が進んできているものと考えてございます。
また,3ページでございますけれども,人工知能基本計画,また,今後決定をする日本成長戦略といった政府の方針におきましても,AX時代において人間力の向上でございますとか,予測困難な時代においても変化を構想し,機動的に対応できる人材育成を進めていくという旨を規定してございます。
4ページ以降に経済界からの提言を載せてございます。日本経済団体連合会からは,仮説を立てて検証し,新たな価値を創出する力,あるいは産業や企業においてAI・デジタルを最大限使いこなせることが必要不可欠とされておりまして,20歳前後を想定した学生像からの脱皮や高度専門人材,多様なバックグラウンドを持つ人々との共働でございますとか,5ページにございますように,分野横断による探究力,創造力の涵養,成長分野への学部再編の支援,また,産業に近い学部での経済界の実情やニーズ等への対応,また,人間や社会を多面的に捉える人文科学や社会科学などの自然科学以外の学問の蓄積の重要性も提言されてございます。
6ページは経済同友会からの提言でございまして,自ら問いを立て課題を発見し,多様な知識や技術を組み合わせて新たな価値を生み出す力,構想力や意思決定力が重要になり,「学習と実践の往復」を通じて自律的に学び続けられる力が中核的な資質になるとされてございます。
事務局からの説明は以上でございます。
【吉岡分科会長】 ありがとうございます。よろしいでしょうか,今の点につきましては。
それでは,上野山代表取締役,Zoomに入っていただけると思いますので,よろしくお願いいたします。
【上野山代表取締役】 よろしくお願いします。
【吉岡分科会長】 よろしくお願いいたします。それでは,御発表をお願いいたします。
【上野山代表取締役】 よろしくお願いします。お手元の資料を見ていただきながらかなと思っています。10分ほどで,20分ディスカッションということですけれども,私からは起業を通じて感じているAI時代において重要になっていく教育とはということで,知識教育から価値創造力を育む教育への転換ということで少しお話しできればと思います。先ほど5分前に入ったんですが,読み上げられている能力を,ほぼかなり重なる部分の話にはなるとは思っているんですけれども,お話しできればと思っておるというところです。
もう既に出ている議論だと思うんですけれども,環境が変化しているということなので,教育も変化する必要があるということが前提なのだと思っておりますけれども,2ページ目に飛ばしていただいて,まず,前提として,環境は何が変わったのかという観点で申し上げますと大きく3点だと思っておると。AIによる知の高速道路が実現したと。ただ,やる気ある人だけが使えるツールになっていると。2点目が,不確実性が高まっておるので,環境変化能力であるとかが重要になってくると。ですので,改善やオプティマイゼーションではなくて変革する力が重要になると。さらに,AIにより異分野が融合して,その中で何をつくるのかということになりますので,分析して何かを切り刻んでいくという力よりも越境して組み合わせていくであるとか,ある種,矛盾をすり合わせていく力が重要になっていくと。こういうような環境変化がまず,前提になっているんだと思います。
AIも使った資料なので,あまり政府の会議では出てこない絵とかが出てくるんですが,御了承いただければと思いますけれども,まず,前提の2としましては,これ題材として起業というものを挙げさせていただいています。累計1,000人ぐらいの起業家に会っており,その中でうまくいくケースから抽出すると,AI時代の教育のヒントが出てくるんじゃないかなと思っています。この絵,あまりこのようなビジュアライゼーション,ないと思うんですけども,非常に重要だと思っていまして,人間の脳があって,その下に情動をつかさどる扁桃体や報酬系があり,その下に身体があると。脳の上にいろんな専門知識が乗っかってくると。さらに,その上にインターネットやウェブみたいなものが乗っかってきていると,このような階層構造が基本的にはあると思っています。起業においてのほとんどのスキルは,専門スキルとして事前学習することが基本的にはできないということで,ほとんどの起業の成否を分ける能力というのは脳の認知の領域とモチベーションを高く保ち続けるという下の領域の2つの能力が非常に重要になってくると。いわゆる起業のスキルというのは,事前に学習することができなくて,起業した後に高速習得するしかないということです。ですので,環境に働きかけて何かを試してフィードバックを回していくような能力というものが重要になってくるということで,点線で書かれている領域がまず,重要になっていると思います。これは起業家ならではの能力では恐らくなくて,よくよく見ると多くの分野で活躍している人に共通する能力であるということと,あと,AIによる環境変化により,ほとんどの人にこの能力がより重要になってしまうということを意味していると思うので,この前提を紹介させていただいています。
この2つのファクトから論を展開すると,AI時代に育成すべき能力の階層というものは,図の中のより低次の下の階層に移っていくということが必然的な帰結として導き出されると思っています。上中下と書いていますけど,上が専門知識,専門技能です。ここはモチベーションを強く持って,かつ学習能力が高い人間がAIを活用すると高速に学習できるようになってきているということで,上位部分がAIにより,環境が変わってきていると。だとすると,中間領域にある脳の位置づけ,課題を設定したり学び続けるような力,あるいは,学び方を学ぶような能力というところが非常に重要になり,かつ,下の情動系,主体性,好奇心,挑戦意欲などをいかに内発的動機づけとして育成していくのかというような低次の領域に教育の重心がシフトしてきているということなんだと思っています。これ,またディスカッションのところで補足できればと思いますけれども,ですので,専門知識の教育よりは,下にある領域をいかに拡張していくかという話になってくるということです。
次のページは,もう一つなんですけども,先ほどは,上より下が重要になるということですけど,続きまして,右から左と書いていますけど,今までの教育というのはいろんな認知能力を上げるということで,教科でいうと国語,算数,理科,社会のような何かを認識するような学問というものが多かったわけですけれども,今後,不確実な環境にインパクトや価値を創造すると考えると,複雑な社会を認知するだけじゃなくて,認知した後に現実世界に働きかけることで何かしらの価値を創造していくということで,これ利き腕の逆腕を使うような感覚というのが,私も起業した当初あったんですけれども,科目で言うと,体育,図画工作,実験のような試行錯誤を伴うような能力です。ですので,より認知から実行へ重心が移ってくるということになると思っています。ここも非常に大きな変化だと思っておると。
次が,さらに深堀ってしまうんですけど,先ほども問いを投げる力とかいろんな話がありましたけれども,そういう力はどうすれば育成することができるのかということでして,ここはあまり教育の世界で,私が詳しくないのかもしれないですけど,あまり言われていないので載せているんですけれども,恐らくAI時代,知性の定義を拡張する必要が出てくると思っています。何かを問う力,動機,モチベーションというものはそもそももどこから来るのかということでして,これは何かしらを認知する能力では十分に説明ができないと思っています。実際に,今後求められる知性というのは,認知する力×実行能力×環境に適応するというような能力の掛け算になっていくということで,基本的にはそれを駆動する情動モチベーションはどこから来るのか,これを育むことができるのか,教育可能なのかという話になってくると思っています。ですので,今後の教育では,こういった,これの問いを生む力の根源は,恐らく感情の記憶や体験からしか来ないということでして,これはAI時代において,AIはいろんなものを最適化することを導き出すわけですけれども,それに対して,こうじゃなくてこうあるべきなんじゃないかというような最適化に対して何かしら問いを投げる力,あるいは異を唱える力というのは,過去の感情記憶や体験からしか出てこないということになると,今後,教育すべきことはスキルというよりは感情記憶をいかに扱うのか。挑戦したくなる感情をいかに育てるのかという,ここら辺のものをどのように教育可能なのかということが非常にAI時代の人間の育んでいく力を指し示しているんじゃないかなと思って御紹介しています。
もう一つ,教育の目的を再確認するという7ページ目ですけれども,これもいろんな話があるものの,教育っていろんな目的がそもそもあると思っていまして,2:6:2の,これ能力と呼ぶのか分からないですけども,2:6:2で申し上げると,そもそも家庭環境等々が整備されていない方々に対しての社会的なセーフティーネットとして供給を捉えるという考え方が丸囲み数字1。丸囲み数字2はそうじゃなくて,社会全体を安定化させて効率的にオペレーションするために大部分の人にとって社会産業を支える人材を育成していくというマスの領域。最後,丸囲み数字3がある種イノベーションの領域で,新たな何かを創造しクリエイションしていく領域,2:6:2の3つの意味合いが教育には併存していると思うんですけれども,環境変化を鑑みると,3の重心が上がっていくということかと思います。セーフティーネットが一定整備されていき,前提の学習というものが整備されていくと,上の2の部分のインパクトをどのように大きくしていくのかということに教育の重心が移っていくので,知識を学習させるのではなくて価値を創造させて,創造するような能力をいかに育むのかということが環境変化に伴って,教育の目的に影響を与えているところかと思います。
時間が少ないのでもう割愛しますけれども,教育の本質は「豊かなワールドモデル」を育むことと最後書かせていただいていますけれども,ワールドモデルというのは今AIの領域でコアのコンセプトになっている,世界をどのように圧縮して脳内に持つかということになります。文理融合,リベラルアーツ,多文化理解,よくある言葉ですけれども,こういったものを脳に入れることで,世界モデルを脳内に形成し,そこに対して何かしらインパクトを与えていくと。豊かなワールドモデルプラスモチベーションを持った人間というものが不確実な環境下において正しい問いを持ち,何かしらに働きかけ,価値を創造する人材そのものの定義になると思っていますということです。
最後に,教育のパラダイムが移行していくということで,先ほど人間力を鍛えるという言葉がありましたけれども,育てるべきものは知識ではなく問いになると。問いの根源にあるのは何かというと,成績ではなく挑戦したくなる感情みたいなものになり,専門性の形は専門性自体ではなくワールドモデルの汎用性になっていくということになってくると思います。IQの指標も,何かしらの評価指標も,IQではなくて実行できる力とセットで能力になってくるということなので,非常に広い話をさせていただいてしまっていますけれどけれども,10分なので割愛させていただきつつ,ただ,先ほどおっしゃられたような話とも大分が整合するなと思っておるというところでございます。
一旦,お戻しさせてください。
【吉岡分科会長】 ありがとうございます。
それでは,今の御発表につきまして,まず,上野山代表取締役のお時間が限られておりますので,直接上野山代表取締役への質問からお受けしたいと思います。どなたからでも結構です。それでは,伊藤委員,どうぞ。
【伊藤委員】 慶應義塾の伊藤公平です。非常にまとまりのある,しかも先見性のあるお話ありがとうございました。
最後のところの挑戦したくなる感情という部分で,結局のところ,大学または学校の目的というのは一番評価される点があるとすれば,そこにいる生徒や学生が将来に可能性を感じ,希望が持てるということがすごく重要だと思うんですが,そういう環境をつくる。それが今,今回の議論のスタートもそうですけど,このままではまずいという雰囲気からどうすればいいだろうという形で進んでいるところが多いと思うんですけども,上野山さんから御覧になって,社会全体としてもう少し挑戦したくなる感情をつくっていかないと教育もそうなっていかないのか,それとも,もう若者からそれはもうできている,今,若者たちは,ある意味,社会のそういうのからうまいこと分離されて,しっかりこういった教育ができる体制になっている,するべきだというようにお考えですか。以上です。
【上野山代表取締役】 ありがとうございます。
【吉岡分科会長】 よろしくお願いします。
【上野山代表取締役】 ちょっと待ってください。完全に問いを理解できるかあれなんですけれども,まず,挑戦する感情がどこから来るかという話で申し上げると,一つは当然小さな成功体験みたいなもので,その手前にある何かしらの不快感というか,何かしら脳に対する圧があって,それを克服して小さな成功体験を積んで,それを繰り返すことで中にある情動のエネルギーを増幅していくということが基本的には起きていると思っています。ですので,例がいいか分からないですけど,起業家とか,それは事業がうまく伸びると,その成功体験が増幅するので,ある情動エネルギーも大きくなっていくということ。ですので,いろんな若者たちの情動の何かしらの好奇心や成功体験や傷つきみたいなものを,成功体験として増幅していくということに蓋をせずに,エンパワーするような環境が非常に重要になってくるということ。
あと,もう1個あるとすると,私は最後のほうに内テーマを書いているんですけど,異文化に身を置くということが,それを増幅する装置になるとは思っていまして,同質的な環境下においては,自己認識みたいなものがあまり揺さぶられないので,自分と矛盾する環境の中で,何かしらをやり,成功体験を積むということは,ワールドモデル自体を汎化させるというか,より世界認識が広い脳内と成功体験をつくるということにおいては,異文化の中に放り込まれることが教育装置としてなっていると思いますし,日本ってそこは同質性が高いので,多様性というものは,あくまでワールドモデルを汎化させるための手段として機能しているはずなんです。なので,質問と異なっているかもしれないですが,そういう環境下をどう整備してあげるかというのが非常に重要なんじゃないかと思っています。
【伊藤委員】 意図通りのお答え,ありがとうございました。
【吉岡分科会長】 ありがとうございます。それでは,杉村委員,お願いします。
【杉村委員】 オンラインから失礼いたします。上野山様,大変分かりやすく,また,ポイントをまとめた御説明をありがとうございました。
一つ質問です。本当におっしゃることはそのとおりだと思うのですが,実際の教育現場では、そうした力をどのようにして学生が身につけたか,いわゆる学修成果の可視化が課題になると思います。その点に関する議論として、こうした点が大事であるとか,あるいは課題であるということがありますでしょうか。現在、学校現場では,初等・中等教育においては探究学習が,また大学においては,コンピテンシーペースのアプローチが議論されていますが、それらはまさにご指摘の点と合致する流れだと思っております。国際的にもユネスコ,OECDがコンピテンシーを重視し,特に今日お話のあった文理融合や異文化対応が大事であるということを、表現は様々ですが議論しています。ただの最後にはいつも,そうした学びの評価をどのように行うか,学生たちは学びを通じて何を身につけたかを把握することが求められることが課題として取り上げられています。その意味で、関連する御議論や御関心があったかどうか,あるいは調査などから教えていただけることがありますでしょうか。
【上野山代表取締役】 すみません,教育現場の解像度があれなんですけども,どっちかというと,社内の若者みたいな話で申し上げると,AIによる環境変化で,いろいろ私もしゃべりましたけど,一言で言うと,モチベーションの総量をいかに増やすかという議論に近いと思っていまして,なので,1個は結局,どれぐらいのモチベーションといっても広義になりますけれども,モチベーションの総量をいかに上げるかというのがそもそも教育の定義になってしまうのではないかと。モチベーション掛けるメタな理解力みたいなものがあれば,いろんな領域が学習していけるわけなので,一つ,計測する観点でいうと,ここに今,映っているような情動やモチベーション,やる気みたいなものをいかに継続するかというのは非常に重要なんじゃないかなと。すみません,ちゃんと答えになっていないですけど。
【杉村委員】 いえいえ,ありがとうございます。事前事後で図っていくということでしょうか。私自身でも考えてみたいと思います。ありがとうございました。
【吉岡分科会長】 ありがとうございます。松下委員,お願いします。
【松下委員】 本当に御説明ありがとうございました。2点御質問があります。
一つは,専門性とワールドモデルの関係です。ここでは多分,多面的な世界認識と書いてあるので,また,文理融合とか異文化での体験とかそういうことをおっしゃったので,1人の中でいろいろ多面的なワールドモデルをつくるというような感じで説明されたと思うんですけども,専門性もある意味では,専門性から見たワールドモデルをつくっているんだと思うんですよね。そういう複数の専門性を持った人たちが共同して多面的なワールドモデルをつくるのでは駄目なのか,1人の中で多面的なワールドモデルをつくる必要があるのかどうかということが質問の1点目です。
もう一つは,スライド5で国語とか算数とか体育とか図工とかいう言葉を使われたんですが,これって初等中等教育,特に小学校の教科の名前が並んでいるんですが,小学校,中学校,高校,大学で割合といいますか,ここのところというのは何か変化していくというようにお考えなのかどうかということをお聞かせください。
【上野山代表取締役】 ありがとうございます。非常に難しい問いで,2個目からお答えしようかなと思っているんですけど,もちろん高等教育になればなるほど,情動部分から上のレイヤーに徐々にシフトしていくということが一つだと思います。
あと,もう一つの質問は認知と行動みたいな,そこのバランスということでいうと,難しいですね。ただ,結局,教育を離れてしまっているかもしれないですけど,結局の右と左の回転,環境があって自分がいて,物事を認識して何か働きかけてそこで成功体験を積みながら専門性を熟達させていくという行為を大学を出た後もやり続けられている人,能力というのはもう生涯学習になっているわけなので,基本的には生涯学習のサイクルにテークオフしないといけないということなんだと思うので,そこは地続きなグラデーションをつくる必要があるんじゃないかというのが2個目の問いへの御回答です。
1点目は非常に難しいんですけれども,もちろん1人が全てのワールドモデルを持つなんてできないので,やはりスペシャリスト,ジェネラリストみたいな感覚,観点は多分あるんだと思います。ただ,人が協働するときに,ベースとなるレイヤー,共通レイヤーというのが多分あるはずで,それは人間観とか社会観みたいな,専門家であっても一定のワールドモデルを形成するレイヤーがあって,そこは共通化されてないといけないんじゃないかと非常に思っていると。
最後,蛇足ですけど,私,大学の教授の方々,多く本当にお世話になって本当に恩師みたいな人が複数いるですが,専門性が高い先生方の私の感じる共通項は,結構籠もって研究していたはずなのに,妙に人間観や教育観みたいなものが熟達していてすごくリスペクトできるという感覚を持っている人がなぜか妙に多いということは希望なんじゃないかなと思ったりもしていますが,その2つのレイヤーの協働なんだと思っています。
【松下委員】 分かりました。ありがとうございます。
【吉岡分科会長】 ありがとうございます。残り10分で今4人の方が挙手されているので,取りあえずここで,4名で質問を閉じたいと思いますけれども,では,北畑委員,お願いいたします。
【北畑委員】 中学,高校の教育現場で言えば,受験勉強よりも部活を奨励したほうがいいということになるのかなという気がいたしました。それから,大学受験の主要5科目ではなくて,図工,音楽,美術,こういったものを大学受験の中に取り入れていかないといけないのかなと思いました。
今の受験制度は知識の量と忍耐力の勝負です。AIには忍耐力で,人間は勝てませんし,知識の量は圧倒的に負けるわけですから,感性とか挑戦したい感情というのを養うためには,部活,とりわけ運動部の部活で小さな成功体験,失敗体験があるということが重要だということになると,受験制度の大改革,あるいは中学,高校からの教育の大改革をやらないと,AI時代には沿った人間が養成されないと理解したんですが,それでよろしゅうございますでしょうか。
【上野山代表取締役】 そうですね。方向感としてはそういう感じ,そうだなと私は思っています。もう一つ踏み込んでお話すると,私も結構好奇心でいろんな領域をずっとやっているんですけど,情動の領域の科学みたいなものが今後見直されるんじゃないかなと思っていまして,感情みたいなものも地勢の一部なんじゃないかというのが私の最近の結論でして,それはなぜかというと,モチベーションってどこから来ているかというと,恐らく幼少期の痛みとか傷つきみたいな負の感情,そこを克服しようとした行動が成功体験になったみたいなパターンがほとんどだと思っていまして,ですので,ここの感情教育というか,そこの痛みが大き過ぎると再起不能になってしまう,そこをセーフティーネットとして教育が支えるみたいなことが非常に重要だと思っています。受験の話と離れてしまうんですけど,でも,いずれにしろモチベーション,情動を扱う教育,道徳みたいな授業の横に感情みたいな教育があるという世界が来るんじゃないのかなと私は思っているところです。
【吉岡分科会長】 ありがとうございます。髙宮委員,本間委員,中村委員,冨永委員までということにさせていただきます。髙宮委員,よろしくお願いします。
【髙宮委員】 ありがとうございます。私も非常に興味深い発表を聞かせていただきまして,参考になりました。かぶっているところもございますので,手短に質問申し上げますと,私も伺いたかったのは,このような新しい価値創造力を育む教育というのが,年齢的にどのように,小中高,あるいはそれよりも前まで含めて,どのようにプログラムしていく可能性があるかということをお伺いしたかったところです。
高等教育は大分後のほうになりますので,それ以前の段階からきちんと段階的に踏んで教育プログラムというのができてこないと,多分大学に行って今さらというようなことが出てしまうかもしれないということで,今後プログラミング,若いときからのプログラミングの可能性というのをどのくらいあると考えかお教えいただけませんでしょうか。
【上野山代表取締役】 私も感覚値のお答えになってしまうんですけれども,大学からでも遅くないと正直思っていて,もちろんより前にやっていったほうがベターではあるんですけれども,大学だとよくないみたいな話は絶対ないと思っていますというのがまず,1個。
年齢により,どういうグラデーションなのか。ただ一定,より早いところからやるべきではあるんですけど,すみません,何も意味あることを言えていないんですが,ただ,一定座学で何かを理解する能力を,一定の詰め込みというのが私,重要だと思っていて,いわゆるインターナショナルスクールと言う必要があるか分からない,いわゆるインタラクションに振り過ぎて,座学のそっち側のインプットとのバランスが取れないみたいになって,結構友人の親からよく聞く話で,この2個をいかにバランスさせるのかというのが今のプログラムの論点に非常になるだろうなと思っています。すみません,お答えになっていないんですけど。
【髙宮委員】 ありがとうございました。
【吉岡分科会長】 では,本間委員,お願いします。
【本間委員】 御説明ありがとうございました。今の髙宮委員,それから北畑委員の御質問にも関連するのですけれども,私自身も大学分科会ではありますが,初等中等教育といいますか,大学みたいにある程度,知識を身につけた学生さんとかが,さらにそれをどういうふうに強化していくかというところの手前の,それこそ生まれた子供が真っさらなところから知識を身につけていくというところで,AIというのがどういうふうに関わっていくのかなというところに非常に今,興味があるのですけれども,先ほどの,例えば5ページの図のところで,国語,算数,理科,社会と,松下委員も御指摘されたところですが,先ほどのお話でAIをこのように使うというところは何となく理解できたのですけども,使うときの中身というか,コンテンツといいますか,カリキュラムといいますか,そこは,例えば今でいう国語なり,算数なり,理科なり,社会になり,いろんな分野のものを分野別に整理して並んでいるんだと思うんですけど,そこはそのようなベースラインがあって,それに対してAIを援用していくというようなことになるのか,あるいは全くそういう区分けではなくて,それが一緒くたというになったような形での教育の仕方というのができていくのか,そういったところについては,いかがでしょうか。
AIを使いますと,例えばこういう科目の分け方ではなくて,全然違う進め方のほうがよい,そういうのが出てくるということになり得るのか,その辺につきまして,少し御意見を伺えればと思います。
【上野山代表取締役】 ありがとうございます。AI時代に必要な能力,例えば情動モチベーションの例があって,その上にメタ認知スキルというのがあると。メタな認知スキルを育むために,数字と言葉と社会と現象という4つに分けているだけであって,別に中のコンテンツというよりは,認知能力のフレームワークを題材により分けているということだと思うんですよね。
AIとかは,よりその専門知識とか,つまり情動モチベーションと認知フレームワークを持った人がAIをレバレッジすると,いろんな専門性が高速,初動高速についてラボに入っていくみたいな話のレイヤー構造になると思うので,国語,算数,理科,社会を何だと捉えるかという,社会のネームを覚えることが目的じゃないわけなので,認知能力を鍛える手段としての科目という色合いがより強くなっていくんだろうなと思いますということ。
あと,これはセンシティブな話かもしれないですけれども,私,小学生とかはあまりデジタル,今は使わないほうがいいと思っていて,情動を育てる,体験として刻み込む,体験として,体験に言葉が振られていくという順序論だと思うので,あと,デジタルは脳をハッキングしていきますから,今,結構危険なので,体験にひもづいた知識が育ち,そこからレバレッジ,知識をレバレッジするときにAIを使うという感じなのかなと思っています。
【本間委員】 ありがとうございます。そうしますと,情動のモチベーションですとか認知のフレームワークですとか,そういうところがある程度しっかり固まった状態から,AIを援用していくと,そのようなイメージとおっしゃっているという理解でいいですか。
【上野山代表取締役】 はい,順序論ではそうだと思います。あまりぱきっと分け過ぎるかどうかはあります。
【本間委員】 分かりました。ありがとうございます。
【吉岡分科会長】 ありがとうございます。では,中村委員,お願いします。
【中村委員】 山梨大学の中村でございます。先程もお話がありましたように,総合的な学習とか探究の段階からこういった能力をつけていくということは非常に大事だと思っています。山梨大学では、PBLというプロブレムベースドラーニングをやっているんですけども,課題を出せば,それを何とか解決しようという能力はあるのですけど,課題を見つけられないという,問いが分からないという学生が多いところが,結構課題なところかなと思っています。
もう1点は,先ほど成功体験に関するお話がありましたが,私は面白さがないと人間は探究しないし,そこに求められることはないと思っています。多分そこには裏返すと失敗する体験があって,成功体験もあってということになると思いますが,その辺について2点,お聞かせいただければありがたいです。
【上野山代表取締役】 ありがとうございました。いや,本当に問題を提示されたら解けるけど,問題を提示できないという人は結構いて,それって多分情動のエンジンが育っていないということなんじゃないかと僕は思っていて,なので,6ページ目が私は一番重要な話だと本当に思っているんですけど,要は問いを立てるって何かというと,AIが言っているような答えみたいなものじゃなくて,こうなんじゃないのとか,そうじゃないんじゃないのということ,シンクディファレントに近いものなわけですよね。それってどこから来ているのと考える,さっきの情動的な運動なわけです。それはどこから来ているかというと,恐らく過去の感情記憶以外からは来ていないんです,一切。と考えると,過去の悔しかった経験,それを乗り越えたうれしさ,あるいは何か感覚的に持つ違和感みたいな感情の累積側からしか問いを出そうという情動は生まれ得ないというのが,これは全然スピーチのような話じゃなくて,現象論としてそうなんだということだと思っており,ですので,例えば,東大の起業家教育なんかをやっているみたいな議論のときに,雑談で恐縮なんですけど,起業の方法論を教えに行っちゃうんです。それはやめましょうと話していて,社会の不条理や大きな社会課題に直面させる体験学習が多分一番記憶を育てるはずだと言っているんです。なので,感情レイヤー,扁桃体と報酬系に働きかけるような行為が恐らく問いを生むエネルギーをつくるという感じかなと思います。
【中村委員】 ありがとうございました。
【吉岡分科会長】 では,冨永委員,最後にお願いします。
【冨永委員】 どうもありがとうございます。非常にすばらしい話ありがとうございました。髙宮委員の話とも少しダブるんですけども,身体に刻まれた感情記憶がエンジンになるというお話ですが,それは物心がついてから高等教育に来るまでのインテグレーションがもう既にエンジンとしてできていると考えてよろしいんでしょうか。大学に入っても体験を積むことができると。そして,我々,高等教育としては,そのエンジンを大きくしたり,それを呼び覚ましたり発動させたりすることが役目と考えてよろしいんでしょうか。そして,このエンジンにはかなり個人差があると考えていいのか,あるいは時代が,その時代の記憶として刻まれるものとか,そういったものを想定したほうがいいのか,その辺を教えていただければと思います。
【上野山代表取締役】 ありがとうございます。非常に重要な問いで,個体差もあるかもしれないんですけど,どちらかというと環境差だと思っていて,幼少期や家族形態や思春期に起きた出来事などで,かなりこれは形成されるとまず,思います。ということと,ただ,大学に入った後も十二分にここに影響を与えられると思っていますし,正直,大学を出た後も,生涯学習としてここは,本当は全然大きくなっていくものだと思っています。
これ,個人的な話で恐縮なんですけど,例えば私が今,何かを事業でつくり出したい欲求って,創業した時を1だとすると,今は10とか20とか大きくなっているんです。これが何で起きているかというと,何かしらの行動をやり,お客さんに価値を提供できて喜ばれるみたいなもので,その情動の記憶が大きくなっていくということが現象として起きていると思っていまして,なので,教育観ということで大きくなっていくものだということなんだと思うんですよね。
あと時代によってどうなのかとかは,私,正直あると思っていまして,これもスタートアップ界隈の議論で申し訳ないんですけど,例えばユニコーンの数が足りないとかいろんな議論あるじゃないですか。ただ,あれは正直思うのは,幼少期に食らった痛みや不快感の総量と,事業としてつくり出す事業の総量はかなり比例すると思っています。戦後,日本人がつくってきた事業,あのときにあった痛みの大きさと,今の若い人は,平均値を見るとやはり小さくなっていると思うんですね。例えば,ただ,イーロン・マスクが持っている痛みの総量は幼少期を見ると普通じゃないんです。だから,ある種,僕はユニコーンが出ないのは,日本の豊かさの裏返しでもあると正直思っていて,ですので,最後のほうのうちに書いているんですけど,今,世界でグローバル化していて,教育で極めて重要と思っているのは,大学1年生に不快感を与えるような海外への体験とか,神経系を揺さぶることで発達するわけですから,同質,安定の中で感情系を駆動せよと言われても無理なんです。だと思っている,そういう人口機能じゃなくて生命リテラシーみたいな話に今後,教育はなっていくんじゃないかなと非常に強く思っています。
【冨永委員】 どうもありがとうございました。
【吉岡分科会長】 ありがとうございました。大変刺激的なお話で,特に質疑のときのお話も非常に刺激的だったと思います。実は今日,この後,高専の問題を扱うところがあって,そのことに関しても,多分に刺激的なお話だったと思います。今日の話の中で,これは私の個人的な関心ですけど,例えば技術であるとか手仕事というものの持っている意味というのは見直されるべきだということかなと思いました。それから,ボランティアなどに学生を連れていくと一気に変わったりするというのは,多分どの大学の教員も実感しているところだと思います。そういう意味で,さっきおっしゃった,不快というのかどうかは分かりませんけど,異なるものに触れるというのはとても大事だと思いました。
本当にお忙しいところ, お時間を取っていただきまして,ありがとうございました。何か最後におっしゃることがあれば。よろしいでしょうか。
【上野山代表取締役】 ありがとうございましたということと,あまり何の会議が分からずしゃべってしまっているんですけど,たくさんの方がおられて,私もいろいろ勉強していきたいなと思っていますので,引き続きよろしくお願いします。
【吉岡分科会長】 ありがとうございます。そのほうがよかったと思います。ありがとうございました。それでは,本当に上野山様ありがとうございました。この後,少し我々の中で議論させていただきます。どうもありがとうございました。もしもお時間があれば,もちろんそこにいらっしゃってくださっても構いません。ありがとうございました。
【上野山代表取締役】 ありがとうございました。失礼します。
【吉岡分科会長】 どうも失礼します。
ということで,時間がまだあと20分弱ぐらいは取れますので,今の議論を踏まえて御意見があればと思います。益戸委員,お願いします。
【益戸委員】 ありがとうございます。民間企業にいる者としては,そのとおりと思うことばかりでございました。昨晩、第191回中教審大学分科会でAX時代に求める人材像について議論する予定だが,どんな発言したら良いかAIに聞いてみました。あっと言う間に回答がでました。ほとんどの事が網羅されています。このAI回答を越える発言をしないといけない,プレッシャーを感じながら発言させて頂きます。
改めて思ったことを幾つか申し上げると,初等中等教育と高等教育のブリッジは絶対必要であるということです。合田高等教育局長が得意な分野でもございますので,次の学習指導要領におきましては,小、中、高、大、のスムーズな教育の連続に更に努める事。分断は絶対避けなければいけないということです。しかも,小学校でも中学校でも高校でも大学でも,スタートするところはどこでも大丈夫だとのご意見をお聞きしましたが,実際,私は31歳のときに日系金融機関から異文化の外資系の世界に飛び込みましたが,経験の全くない世界へどこから飛び込みスタートしても,努力次第で結果につながる事を経験しました。
もう一つは,入試をもう一度考える必要があると思います。今日の上野山代表取締役のお話は,社会の中で一番進んでいる分野の話です。今私たちが考えなければいけないのは,少子化の中で国力を落とさずに、全ての層にどのような教育のアプローチをする事ができるかです。大学に入る事がゴールではなく学び続ける事を習慣とするマインド形成や目標に応じた選抜方法など再考が必要です。実際,会社の中で感じるのは,これから社会をリードする若い方々とすでに頑張っている経営層は同じ様な改革や向上意識を持っていますが,中間層というのはかつての一括採用,年功序列型終身雇用の世界の中でののんびりした知識での働きぶりが残っている方もいらっしゃいます。そこに学び直しというものがあるんだろうということを改めて感じました。
そして,もう一つは,キャリアパス向上の為に新しい知識をどの様に吸収したら良いかわからずに立ち止まってしまっている社会人も多数いると思います。首都圏では上野山さんのような方々から様々な形での発信があるかもしれませんが首都圏以外のところで,企業も行政もばらばらで一体どうしたら良いか分からない所もあると想像します。今年度更に予算がつきました地域連携プラットフォームのような形で,行政と企業,金融機関と教育機関が地元の意見を統一して考えていくことがとても大切です。ここは更にきっちりねじを巻かなければいけないと思いました。
そして最後に,異文化の中に飛び込む,ないしは飛び込んでもらうという厳しくも楽しい経験です。私も語学で非常に苦しんだほうですから,しっかりした語学力を育てていかなければいけないと実感しています。コミュニケーションの充実は、新しい成長に必ずつながります。
以上です。
【吉岡分科会長】 ありがとうございます。廣津留委員,お願いします。
【廣津留委員】 ありがとうございます。大変面白く拝聴しておりました。AI社会で,私からは文化芸術の力を忘れるべきではないというところを,この空間で唯一の音楽家,かつ,教育者として申し上げたいなと思います。
皆さん御存じのとおり,STEMという言葉にAを足したSTEAM教育という言葉もありますけれども,AIが出てくる前に,私の尊敬するヨー・ヨー・マさんというチェリストがハフィントンポストにSTEAM教育についておっしゃった言葉がありまして,コラボレーション,フレキシビリティ,イマジネーションとイノベーションを教えるのに最も有効な方法はパフォーミングアーツだとおっしゃっています。これができれば,バイオサイエンスだろうが,エンジニアリングだろうが全てに活用できるということをおっしゃっているんです。
私も音楽をやっていて実感するのは,コラボレーションはもちろん異なるバックグラウンドを持つ人とのコラボをやって音楽をつくる力であったり,フレキシビリティというのは毎回違う人との音楽をつくっていくですとか,環境が変わっても,そういうパフォーマンスができる力。イマジネーションというのは,この音を出したらほかの演奏者がどう思うかなとか,この音を出したら楽器はどういうふうに鳴るかなというのを想像する力と,イノベーションは楽譜から何かをつくる,0から1をつくる力ということだと思うんですけれども,先ほど上野山さんは今後の時代は認知と実行と環境適応能力というようにおっしゃっていましたけど,全くそのとおりだなと思っております。かつヨーヨー・マさんがもう一つおっしゃったのは,もう一つ大切なのはエンパティー(Empathy)共感力で、つまりパフォーミングアーツを通して,相手が何を考えているかを想像する力がつくとおっしゃっています。これは,なかなかタイパとかコスパ時代に反しているようですけれども,時間をかけて文化芸術の面にしっかりと取り組んでいくことで身につくことだと思います。具体的に言うと,例えば現実の作品を見て,違う解釈をそれぞれの意見をぶつけ合って議論することであったりとか,難しい楽器に自分から挑戦してモチベーションを引き出して,そこで自分の力で主体的に作品をつくる力であったりとか,いろいろとあると思うんですけれども,そういう学力として数字に出ないところではあれ
,経験しないと身につかない能力とか体験の学びが文化芸術にはあると思っております。これは特に環境によらず,学校環境でも誰でもできることだと思っていますので,文化芸術心の持つパワーをぜひ,これからも大事にしていくべきなんじゃないかなと思います。
以上です。
【吉岡分科会長】 ありがとうございます。安孫子委員,お願いします。
【安孫子委員】 企業でDXに取り組んできた経験で,前段でWhyや,Whatを突き詰めずデジタル化や省力化を進めた結果,人員削減などコスト削減の形式的価値に偏重し,仕事として得られるやりがいとか生きがいといった意味的価値が薄れてしまうという結果に陥ってきた反省があります。
ですので,AXによっては,なすべきことが理系人材の数などの単純な形式的価値に偏重しないことが大事だと思っていますし,トランスフォーメーションとして何をどうするのかという意味をきちんと考える必要があると思います。仕事や教育の目的や,人と組織の関係や,そして社会に生み出す価値,これをどのような望ましい姿へと変えていくことをどう描くのかが最も大事なプロセスだと感じます。
さらに,先ほどの貴重な情報提供から,若い頃から様々な修羅場,これを経験することが非常に重要であるという提言がありましたけれども,これは側面,DXの結果,修羅場を未然に防ぐことが結果として考える力の後退を招いてしまうということも事実で,ある意味,学びの場で,こういったタフアサインメントの学習をあえて取り入れていくということがこれからますます必要になると思いました。
以上です。
【吉岡分科会長】 ありがとうございます。吉見委員,お願いします。
【吉見委員】 ありがとうございます。2点,第1点は先ほどの上野山さんとのやり取りについての感想と,それから第2点は,文部科学省のほうから,事務局のほうから提示された資料についてのコメント,2点を申し上げたいと思います。
先ほど上野山さんとの話合いの中で,彼が言っていたことを私が理解する限り,最も重要なことは,つまり養成すべき能力がコグニティブな能力からパフォーマティブの能力に転換しつつあるということだと思います。比喩的にというか,国語,算数,社会,理科から,体育,図画工作,実験,音楽もここに含められるべきだと思いましたけれども,ここに転換すると。これは国語,算数,理科,社会というのはどちらかというとコグニティブな目を動かすという知ですよね。それに対して,体を動かす,パフォーマティブな知という,こういう変化のことを言おうとしていたんだと私は理解しました。
そうだとするならば科目を変えるということではなくて,国語の中に,あるいは算数の中に社会や理科の中にどういうパフォーマーというような能力を養成するトレーニングを入れていくのかということがポイントであって,例えば私はもう演劇を昔やっていた人間ですけれども,国語を演劇に近づける。つまり,相手と実際に舞台の上でやり取りする。言葉には方向性と距離がありますから,そういう言葉が持っているマテリアリティーというものを身につけさせるということは小学校から有効ですし,算数を建築に近づける。あるいは,理科や社会をもう少しフィールドワーク的なものに近づけるという,この一つ一つの中にパフォーマンス性を入れていくと,そういう改革の報告になるんだと思います。
そうなってくると,先ほどの芸術という話に非常に近くなりますけれども,重要なのは時間だと思います。逆にAIだから早くなるんじゃなくて,AI時代だからこそ教育に時間をかけるというか,一つ一つの,例えば国語,さっと読んで理解するのは早い,AIになったって頭のいい子だったら早くできてしまうんです。だけど,それを演劇にしてみて,劇にしてみたらめちゃくちゃもっと時間かかるわけです。それから,算数で三角関数だとか,小学校,中学校ですぐ理解するとあっという間にできちゃうけども,そうじゃなくて,それで実際に建物の模型をつくってみようと思うと,ずっと時間がかかるわけです。だから,より時間がかかることに価値を見いだしていく,教育の価値を見いだしていくという,そっちに逆にシフトしていくAI時代だから,教育モデルとしては有効になってくるということを言おうとされていたんじゃないかと私は思いました。これが感想です。
それから,もう一つ,資料の2-1の先ほど幾つか出していただいたものに関して一つコメントしたいことがあって,これは一言で言えば,僕はAI時代において一番重要なのはAIリテラシーが必要だと思っています。どういうことかというと,例えば,先ほどの2-1の資料の2ページ目のところで,真ん中辺のところで,AIをはじめとしたデジタル等の最先端の技術を使いこなし,持続可能な社会の担い手やつくり手として真に人が果たすべきことを果たせる力が必要だと,これはそのとおりなんですけど,これは主体性,リーダーシップ,創造力,課題設定云々かんぬんと出てくるんですけれども,ここに論理の飛躍があって,人が果たすべきことを果たせる力をどうやって育成するのかと言ったらば,我田引水になりますけれども,ちゃんとAIに問い返し,AIを批判し,つまり,AI時代で一番よくないのはAIが言うことを信じてしまうことです。これが一番悪いわけです。一番考えるということをスキップさせてしまうから,一番人間を劣化させるわけです。
次に,単純にAIを使いこなす能力だけを身につけさせればいいのかというと,そんなことはなくて,どんなに使い捨ての力を発達させたってそれが本当の意味での学びにはつながらない。むしろAIが出してくる答えとか回答を問い返したり批判したり疑ったりするリテラシーだと思いますけれども,AIリテラシーを若い子たちに身につけさせることによってこそ主体性とかリーダーシップというのが出てくるということだと思います。
次のページにも,一々読みませんけれども,想像力とかいろいろ能力が出てくるんですけども,これを身につけさせるときにはAIをうのみにしないというか,AIに対して問い返したり批判したり疑うということ,こういう能力が人間の能力として必要で,そのためには,レベルがいろいろあるけども,人物,知的,哲学的とかそういうリベラルアーツ的な能力がないとそれはできないと私は思います。ですから,AIと向き合う能力にとって,人文知的,あるいは,リベラルアーツ的な能力がなぜ必要なのかというと,それはある種,本当に我田引水になってしまうんですけども,AIと戦う能力を身につけさせるためであり,AIと戦う能力を若者たちに身につけさせることは,現代において物すごく重要だと私は思っていると,そういう次第です。
以上です。
【吉岡分科会長】 栗本委員,お願いします。
【栗本委員】 ありがとうございます。安孫子委員と吉見委員のご発言を受けてコメントします。
資料2-1のAX時代の人材育成に関する経済界からの提言等にある,AX時代に人が果たすべき力としての主体性,リーダーシップ,想像力,表現力,粘り強さ,対話力,これら多くは人の非認知能力の部分でありまして,いわば水平移動の力といえます。一方で,私たちはどちらかというと,より高い偏差値,高い大学ランキング,高い学歴,難易度の高い就職先,高いポジションといった,上を見て合理的に意思決定する垂直移動に慣れ親しんでいます。水平移動の能力を高めるためには隣接領域に興味を持ち,そして越境し,自分の興味関心を模索し,自ら見つける,そういった学習体験に価値を見いだすべきだと思います。時代の変化に伴って新たな教育コンテンツを追加し続けるのも大切ですが,心を揺さぶられるような,学問横断型の教育であったり,国境を越えた修羅場学習であったり,そういったものが奨励されてよいと思います。
私も海外ビジネススクールがAIに関連してどのような教育を提供しているのか?マネジャーやリーダーに対してどのような教育を行っているだろうか?といった視点で現地を訪問してきました。例えばハーバードでは,自分が経営する会社において,人件費に対するトークン費は何%まで許容できるか?といった問いかけを参加者に行うのです。もしくは,AIは従業員のモチベーションを高めるだろうか?といった問いかけを通じて,参加している人間の感性や理性を揺さぶるのです。こうした教育を私たちも行う必要があると感じています。
一方で,経済界や専門家に話を伺えば伺うほど,あれをしたほうがいい,これをしたほうがいい,というコンテンツを追加する趣旨の答申が多くなりがちです。仮に何かを追加する時は,しないこと,やらないことも同時に考えていく必要が大切ではないでしょうか。行うことを増やすことは戦略ではなく,行わないことを増やすことが戦略です。確かに経済界という雇用市場の声は大切です。教育市場にとって最も重視すべきステークホルダーであります。しかしながら,雇用市場と教育市場の間には常にミスマッチが存在します。今はAIが話題ですが,思い返すと直前まではDXだったはずです。その前はSDGsだったと記憶しています。さらにその前の2010年頃は起業家育成,2005年は情報化,そして2000年頃は国際化,当時のミスマッチはまだ今も継続案件として積み重なっています。AIの話題を否定するつもりはありませんが,過度に一つの事象に話題が収れんし過ぎないほうが良いと思います。
教育行政の戦略としては,コンテンツ主義で時代時代の経済界の声に耳を傾けることも大切ですが,先ほど吉見委員のご発言の趣旨にある,人としてどのような行動特性が大切なのか?に軸足を置くようなコンピテンシー主義のほうが良い教育になると思います。教育現場に解釈のレイヤーを与えることが重要だと考えておりまして,昨今のように,変化の激しい時代こそ重要な視点だと思います。
以上,コメントとなります。
【吉岡分科会長】 金子委員,お願いします。
【金子委員】 金子と申します。よろしくお願いします。私も今日のお話を伺って,特に資料の2-1を中心に発言をしたいと思います。
今日の上野山さんの話も踏まえますと,資料にあります,AX時代に求められる人材像は,総論として,おおむね理解できるところ,また共感できるところが多いなあと改めて感じたところです。AX時代というのは,ある意味,「AI vs 労働者」的な対立構造にもなりがちなのですが,私ども働く者の立場からしますと,働く者がAIを活用して,いかに自らの,また,社会,チームの付加価値を高めていけるかが非常に重要ではないかなと思っております。社会や産業が急速に変化する中で,活躍を続けるために必要な知識と能力というのは,若い学生だけでなくて,既に社会に出ている幅広い年代の方も同様に身につけていく必要があるのではないかなと考えています。
資料の中でも,4ページや6ページに,20歳前後を想定した学生像からの脱皮とか,学習と実践の往復を通じて自立的に学び続けられる力が必要といった記載もあり,そこは非常にいいなと思っております。今日の上野山さんからのお話の中でも,生涯学習が重要であり,地続きのグラデーションであるべきということも言われて,そこは非常に賛同するところでもあります。そのための施策の一つの例として,高等教育機関などで容易に学び直しができるようにするということが不可欠でありまして,カリキュラムやアクセスをそれに対応し得るものにしていくということが重要と思っておりますので,そうした観点も改めて意識しながら,今後の論議,整備やルールづくりについて,議論を深めていただければと思っております。
意見として申し上げました。よろしくお願いいたします。
【吉岡分科会長】 ありがとうございます。では,上田委員,お願いします。
【上田委員】 ありがとうございます。上野山さんのお話をお聞きして,すごく刺激がありました。私は,特に経験し実践する力が非常に大事だというところに物すごく共感しておりまして,そういう部分から今の学生を見てみますと,いつもと違うことへの挑戦するのをすごく怖がっているというような学生が多いと思っております。よくいろいろな教育機関で行われます初めの一歩を踏み出す力というようなところを,どのように整えていくか,そういう環境,一歩踏み出してもいいんだという,一歩をたくさん踏み出そうみたいなこと,そういうことができるような教育環境をつくっていくということが我々にとって大事なんだなと感じております。本当に地域,企業との共同活動等を例えば単位化するなど,学生が経験と実践から逃げられないような教育環境を意図的に整えていくということも大事なのかなと思いました。
以上です。
【吉岡分科会長】 ありがとうございます。和田委員,お願いします。
【和田副分科会長】 ありがとうございます。先ほど上野山先生のお話を伺いまして,改めて初等中等教育との連携,接続が重要な鍵を握っているということを感じました。
その中で小中高大,大学院へとつなぐ大きな枠組みが重要であり,そこには連続性と流動性がもちろん大切です。この流動性そのものも立派な異文化体験だと思います。その際,今までお話しいただいている,AIとどう共存するかという問題もあるかと思います。人から学ぶということも大事なのではないかと思っています。体温を感じる,あるいはチームワークというのも人ならではだと思います。
先ほどのスライドの中でも,情動の専門スキルという言葉が出てまいりました。また優れた専門性を持つ先生は優れた教育感を持っているというお言葉も非常に印象的でした。こういった方々と初等中等教育の段階でどうめぐり合うのか,それも実は大きな体験なのだろうと思います。この体験の中で社会の矛盾に直面する体験というのも大切だということも言われました。恐らくそれは,AIなどですぐに答えが出ないもの,そのもどかしさみたいなものを体験することが含まれるのかなと思って伺っていました。先ほど吉見先生も言われましたけれども,俯瞰的な視点,高い視座を持つためにも,やはり思想哲学や人間社会を多面的に整える人文社会科学の知も一層重要になってくると感じています。いずれにしても,横割の部分として今後ますます重要な位置づけが必要だと感じていました。
以上です。ありがとうございます。
【吉岡分科会長】 ありがとうございます。田中委員,お願いします。
【田中委員】 田中でございます。非常に感性を大事にする、情動を育てるというところに感銘を受けまして,私もそのような教育がしたいとずっと思っておりました。現状を考えてみますと,今,幼児教育と小学校のスタートカリキュラムとか架け橋プログラムということで文部科学省もすごく力を入れておられます。小さいときからの感性とか,あるいは、その子の個性を御家庭から,幼稚園や保育園という集団教育の中で育てていく。泥遊びをする,水遊びをする中で発見があったり喜びがあったり,友達とのいざこざがあったりというところで育っていく,それが小学校にもつながっていくというところで,教育課程においてはこういう感性とか情動とかを大切にしながら人間を育てる,考える力を育てる,発見する力を育てるということがカリキュラムとして落とし込まれていると思うんです。それが小学校で十分育っていき,中学校で,高校で,大学でというように実際つながっているのか。あるいは,小学校段階で、もうそれはほぼ基礎として固まっているので,それからはもっと高度なものを入れ込んでいけばいいのか等、こうした分析等をしっかりしていけば,高等教育機関において,そういったベースにある力を十分引き出せていないということなのか,あるいは,新たに違ったものとして吹き込んでいかなくてはいけないのかというところの答えが見えるのかなと、聞いていて思った次第でございます。
【吉岡分科会長】 ありがとうございます。いろいろ意見がありましたし,もともとの御発表が非常に刺激的だったので,議論も非常に面白い議論ができていると思います。
私から少しだけ申し上げると,一つは,ここの議論で一つ重要なのは学校制度,大学,高等教育まで含める学校制度がやるべきことというのと,社会全体がやるべき教育というものがもちろんある。社会が持続していくという話と,その中で学校という制度,学校教育制度というものが担うべきものというのはどういうものなのかというのを考えていく必要があるだろうと。つまり,個人的な感覚で言うと,特に初等中等教育だと,もう本来なら地域がやっていることが全部学校のほうに来てしまっているとよく言われることですけれども,そういう中で,教育制度というのが果たすべき役割というものをどのようにするか,ある程度,分析的に考える必要があるかなというのが1点です。
もう一つは,これは最近の学生が本を読まないということとつながっているんですけれども,一方で,変な言い方で言うと,要するに知識というのは,もうAIに聞けば分かるようになったので,知識というのはどんどん外出ししていくことができるようになってきているときに,知識というものを持っている価値が,ある意味では下がってきているのかもしれません。要するに,学校で知識を学ばなくたっていいということになっているかもしれないんですが,でも,知識そのものというのは外に出せるかもしれないですけども,知識を獲得するプロセスというのは非常に重要で,多分,大学に限ってでも、学生に何を教えているかというと、知識を獲得するプロセスを教える。別の言い方をすると解釈の力とか,批判的能力というやつです。先ほど吉見委員がおっしゃったみたいに,例えばそれを演劇に変えるということは,つまり新しい解釈を加えることであると。解釈が一つということはあり得ないので,その能力を高めていくということ,読解力と言ってもいいですけども,それを考えなくてはいけないんだろうなと思った次第です。それは時間の問題みたいなことですよね。時間をどう組み込むかということだと,抽象的に言えばそうだと思います。
ありがとうございました。引き続きこの議論は続けていければと思います。よろしいでしょうか。例によって予定の時間をオーバーしているんですが,すみません。
それでは,3の高等専門学校の機能強化の方向性についてでございます。こちらも事務局より説明いただいた後に,有識者として御出席いただいている独立行政法人国立高等専門学校機構の中島理事長より御発表いただき,その後,質疑応答の時間を取りたいと思っております。中島先生,お待たせしております。
事務局から説明をお願いいたします。
【松本専門教育課長】 事務局のほうから説明させていただきます。資料3-1を御覧ください。後ほど中島理事長のほうから具体の御説明がございますので,20ページまでを簡単に,駆け足で御説明したいと思います。
資料の3ページを御覧ください。こちら,高専の経緯でございますけども,高専は戦後の復興の際の技術者の需要に応えまして,経済界の求めもあり,昭和36年に制度化されて,翌37年度より設置されたものでございます。
4ページを御覧ください。近年では成長分野の高度人材育成や地域課題の解決に貢献する人材の育成が期待されています。学校数については,国公私合わせて58校,学年数は1学年当たり約1万人で15歳人口の約1%を占めるという状況です。
5ページを御覧ください。高専の目的は学校教育法に規定されておりまして,深く専門の学芸を教授し,職業に必要な能力を育成することとなっております。また,教育課程は一般科目と専門科目をくさび形に配当して,5年一貫で教育を行っている点が特色でございます。卒業者には準学士の称号が付与されます。
6ページを御覧ください。学校教育体系上の高専の位置づけを他学校との比較で示したものでございます。
7ページを御覧ください。高専の設置状況です。未設置県は5県ございまして,埼玉,神奈川,山梨,滋賀,佐賀ですけれども,現在全国的に新設検討の動きが活発化しております。なお資料の右肩のところに柱1などと書いてありますが,この後,20ページ以降で御説明をする政策のパッケージの中でどの柱に該当するかの数字でございますので,後ほど適宜振り返って御覧いただければと思います。
8ページを御覧ください。学科としては,工学系の機械系,材料系,電気・電子系,情報系で半数以上が占められております。今の存在する高専は基本的に全て工学系という仕分けになっております。
9ページを御覧ください。高専の本科卒業生は約4割が大学や専攻科に進学しまして,約6割が就職します。希望者はほぼ全て進学,または就職ができておりまして,産業構造の変化に伴って就職する業種も変化しており,情報通信業が増えるなどといった変化がございます。令和6年度,本科卒業者の求人倍率は約30倍ということで非常に極めて高い数字になっております。また,地元就職率が21.6%ということになっておりまして,こちらは三大都市圏への就職が多いということで課題とされております。
10ページを御覧ください。国立高専では,企業や自治体,大学と連携をして,教育の質の向上を図るとともに,AIやIoTなど先端分野をカリキュラムに取り入れて次世代の人材育成を進めているという事例でございます。
11ページを御覧ください。高専では共同研究や科研費の獲得,また,受託研究を進めておりまして,件数や金額は増加傾向にあり,研究面における社会的なニーズも高まっているものと考えております。法令上は高専の目的に,先ほど申し上げたように研究が明記されていない現状があり,詳細は後ほど触れたいと思います。
12ページ御覧ください。国際関係でございます。グローバル化の進展に伴って海外交流ですとか,日本型の高専教育システムの導入支援,海外への導入支援というところを積極的に行っているところです。高専生,卒業生が国際的に活躍できる環境整備を行っていくことが重要と考えております。
12ページが行き来をしている事例で,13ページが高専システムの導入例です。直近ですとエジプトに昨年日本型の高専ができた事例がございます。
14ページを御覧ください。学位,学士の称号の状況でございます。高専卒業生には称号として準学士が付与されている状況です。また,グローバル化が進む中で,こちらの取扱いが課題になっているというところで後ほど御紹介をしたいと思っております。
15ページ,こちらがNQF,教育資格枠組みにおける高専の準学士の位置付けです。レベル5ということになっております。また,こういった形で,国際的にも高専での学びを評価する枠組みについての議論を今後していく必要があるかと認識しております。
16ページを御覧ください。先ほど申し上げたとおり,全国で高専新設の動きが活発化しております。公立高専の設置を中心に議論が進められております。高専の新設については,成長分野転換基金で設立の際の支援を行っており,このような動きに関して,17ページ,18ページでございますが,いわゆる骨太の方針ですとか,日本成長戦略の案文といった政策文書においても,高専の新設や機能強化等について記載がしっかりとなされています。
20ページを御覧いただければと思います。これまで御説明してきたところで,高専の機能強化をどうするかという議論を省内で始めているところで,そのきっかけが,こちらの20ページで御覧いただいております,6月に政策パッケージとして松本文部科学大臣のほうから提示されたものでございます。柱が3つございまして,一つが高専の量的な拡大として,高専の新設に向けた支援や工学以外の領域拡大等についての検討。それから,質的向上が2つ目の柱でございまして,運営費交付金の拡充ですとか教員確保に向けた取組。また,3つ目の柱として,国際通用性の確保として,高専本科卒業生への学位の授与についての検討,学びの成果をどういう形で位置付けるかといった複数の観点から工学の高度化に向けた取組をどのように総合的に検討し実行していくべきかについて,省内に検討会を立ち上げて議論を始めている状況です。
21ページから24ページが,検討会の模様でございまして,既に2回にわたり,議論をいただいております。
25ページですけれども,検討会では幅広い論点について御議論いただいておりますけれども,本日こちらの分科会では,特に後ほど御意見をいただきたいと思っておりますのは研究と国際通用性に関わるところです。
25ページ,26ページで将来的な教員確保,質の担保とのバランスの重要性,また,領域拡大については,具体的な人材像や産業ニーズ,高専が担うべき具体的役割の明確化の必要性,また,27ページ,28ページでは,いただいた御意見として,法改正により,研究を高専の役割に位置付けてはどうかといった点,また,高専での研究は社会課題を解決するための研究の意味合いが強いといった御意見をいただいております。
国際通用性の確保,29ページ,30ページですけれども,いただいた御意見として高専卒業生への学位授与は早急に実現すべき課題ではないかという指摘,それから実際に学位授与を検討する上では,学びの成果を国際通用性が担保された形で適切に評価するスキームとして,NIAD(独立行政法人大学改革支援・学位授与機構)から学位授与していただくことが考えられるのではないかといった御意見をいただいたところです。
本日御議論いただきたい論点は32ページでございますけれども,先ほども触れましたけれども,現状,法制面では,学校教育法における高専の設置目的には研究が明記されておりませんが,実態として研究が実施されていることは,こちらの資料でお示ししているところでございます。最新の研究成果を教授できるよう,高専の研究機能を高度化するためにはどのような措置を講じるべきか,また,高専における研究の在り方について御議論いただいてはどうかと考えております。
また,33ページ,34ページを御覧いただければと思いますが,高専本科の卒業者については,先ほど申し上げたとおり,称号の付与という形になっております。学位を授与することに関しては,平成28年に高専に関する有識者会議が議論を行っていいましたが,高等専門学校は大学と異なり,15歳からの早期教育を特徴とする高等教育機関であり,大学体系に位置付けることで高専としての良さが失われるおそれがある等とされまして,これらの論点は高専制度の本質に関わる問題であり,今後も引き続き慎重に議論を行っていく必要があるとされたところです。一方で,34ページに記載のとおり,称号が学位ではないことに関して,進学や就職,ビザ取得等において支障が生じているということがございまして,これらを踏まえて国際通用性が担保された形で,高専での学びの成果を適切に評価されるにはどのような措置を講じるべきか,また,短期的に何に取り組むべきかに関しても議論いただければと考えております。
事務局からの御説明は以上です。
【吉岡分科会長】 ありがとうございます。
それでは,お待たせいたしました。中島理事長,御発表をお願いいたします。
【中島理事長】 この4月に理事長を拝命しました中島と申します。よろしくお願いします。本日は資料3-2に基づきまして,国立高等専門学校の研究と国際の通用性について,現状を御報告申し上げたいと思います。
まず,ページをめくっていただきまして,2ページ目ですが,これは先ほど松本専門教育課長から説明ありましたように,高専における研究の位置付けです。まず,高専の位置付けは,学校教育法第115条の中にあります,丸囲み数字2のところです。「高等専門学校は,その目的を実現するための教育を行い」というところです。その下に参考が書いてありますが,大学に関しますと,そこの部分が教育研究となっておりまして,その研究の部分が学校教育法の中では,高専の場合はないというのが現状です。
その下にあります高等専門学校設置基準の中に教育についての記述がありまして,2番目のところですが,「その教育内容を学術の進展に即応させるため,必要な研究が行われるように努めるものとする」というところで,この設置基準の中で,我々高専は教育の内容を学術の進展に即応させるという目的のために,研究をしっかり行うということを基準の中でうたわれております。
3ページ目ですが,こういう研究の位置付けですが,現在,国立高等専門学校は研究と産学官連携におきまして,このような取組を行っております。まず,地域イノベーションの創出を目指してというところで,産学官連携に取り組む高専の使命と役割というところで,まず,高専の使命ですが,職業に必要な実践的かつ専門的な知識及び技術に関する創造的な人材を育成するということを大きな目標にしておりまして,産学官連携の役割は,教育内容を科学技術の進歩に対応させるというところで,研究を教育のほうにフィードバックをかけるというところで実際に行っております。そういうものを目的としまして,既に各高専に地域共同テクノセンターというのを設置しておりまして,そういうところで,この場で,地域,それから異業種交流会等を行って,高専教育の高度化を進めているという状況です。
4ページ目ですが,高専機構では,産学連携の活動促進に当たり,以下の8つの事項を設定しているというところで,産学官連携の活動ポリシーというものをここで明記しているところです。常に学生の教育及び人材育成に還元するということを常に心に銘じているというところがあります。
5ページ目ですが,そういうポリシーを各高専,今現在,国内に51高専あります。以前は55高専あったんですが,現在は51高専です。各51高専,各高専において,5ページ目にありますように,長野高専の例ですが,こういう研究活動に関する基本方針というのを設定しまして,研究活動を通して地域に貢献する,あるいは重要な知見,情報の発生源とする,教育の質を保証する上での重要な手段とするというところへ研究を位置付けております。
実際に6ページ目に科研費,共同研究,受託研究の獲得状況を示しております。右上ですが,科研費は平成16年が独法化した年ですが,その後,2倍,3倍近い科研費の獲得になっております。左下,共同研究ですが,同様に順調に増えております。それから受託研究も増えているという状況で,こういう科研費,基礎研究,それから共同研究,地域との共同研究等も含めた形の研究を実際に実施しているというのが実績になります。
どういう内容の研究を行っているかというのが7ページですが,1番目,科研費A,B,Cの例を示していますが,まず,一番上の例ですと,「検出器の高精細化と背景事象の除去機構で実現する世界最高感度のアクシオン探索」というような,そういう技術に関する研究を行っているというのが実績です。
8ページ目は,これは秋田高専の増田教授の例ですが,地下水をうまく利用して,酒米の培養に使うと。その酒米を収穫しまして,お酒を醸造すると。秋田の特徴でありますお酒をつくるというところの地域と連携した研究を行っているという例です。
それから9ページ目ですが,これは和歌山高専の例ですが,和歌山は非常に海に恵まれた地域ですが,マリアナ海溝に住む極限環境微生物,こういうものをうまく使いまして,一番下にあります藻場を再生するためのバイオセメントを作っているというところです。この研究を行うに当たりましては,民間企業として三井化学,それから地方自治体としまして,和歌山高専の近くの日高町と連携して研究を行っているという実際の例です。
こういう例ですが,実際,高専には専攻科というのがありまして,5年間の本科が終わった後に2年間の専攻科というのを設置されております。ここでは現在,2,700名強の学生で運用しておりまして,ここで研究を行うというところがあります。その研究を行うに当たりまして,教員に関しましては,大学改革支援・学位授与機構のほうから審査を受けまして,研究業績の審査を受けているという状況です。
そういう審査を受けている教員の例としまして,11ページですが,大分高専のM教授の例です。こういう方が教員になられています。大分高専を卒業した後に豊橋技術科学大学に進学しまして,修了して,その後,文部科学省の内地研究員,名古屋大学,それから大分大学のほうに戻りまして,奉職して,その後,海外のノースウエスタン大学,あるいは国内の産業技術総合研究所の研究員,それからさらに大分高専の教授に戻りまして,その後,つくばにありますNIMS(国立研究開発法人物質・材料研究機構)の客員研究者になっているというような略歴を持った教員がいます。こういう教員もいます。この先生の研究テーマは,材料工学でして,水素エネルギー材料等の研究を行っているという状況です。
この先生の下で12ページですが,こういう例として2名の学生さんの若者が育ったという例です。大分高専に入学した後に,そこで勉強しまして,その後,大阪ガスのほうに入社したという例です。F君の場合には大分高専から九州大学の大学院に行きまして,修士課程,博士課程に行きまして,その間ネイチャーサイエンスという論文にレポートを書いたということで,その成果を基に日本学術振興会の特別研究員,DC1に採択されたと。現在はNIMSのほうで研究を行っているという若者です。こういう若者が育っているという実績があります。
さらに13ページですが,高専機構では,GEARと呼ばれる研究に関する大きなプロジェクトをつくっておりまして,各年それぞれ,例えば2021年ですと農林水産,介護・医工,それからエネルギー・環境の3分野,それから2022年度ですと,マテリアル,防災・減災,そういうものを分野,柱として,各点で行われていた研究を51高専あります面に展開するということを行っております。
そういうGEARの例が14ページに示されておりますが,実は高専ではCOMPASSというプロジェクトもやっておりまして,これは研究成果を,そこに書いてありますように次世代基盤技術教育のカリキュラムに展開するというプロジェクトです。この例からも分かりますように我々が研究を行ったものをカリキュラムに転換していくと,要するに教育のほうにフィードバックをかける,あるいはフィードフォワードをかけるということで教育を実施し,ある一定レベルに保つということをやっております。
15ページですが,これは高専機構本部のほうでの研究推進,産学連携体制でありまして,こういうものを本部に設置しまして,研究,産学連携を遂行しているという状況です。
次に,国際通用性に関しての状況ですが,17ページありますように,先ほど松本専門教育課長からありましたように,準学士の学位ではなくて称号であるということで,幾つかの不利益が発生しております。まず,17ページに書いておりますけれども,それから18ページに書いているのが例ですが,海外へ進学する際の学習歴の評価の実態として,そこにありますように,学位ではないというところで一つ,学年を落として単位を余分に取らないといけないということが発生したという例です。
それから19ページは,海外労働市場への参入時に本科卒の評価が得にくいという実態から,欧米企業での人事部門において,高専生は学位なしという経歴に相当するということで,理解が得られなかったということが起こっております。
それから20ページには,海外労働市場への参入時に,本科卒の評価が得にくいという実態がありまして,下に英語で書いてある部分は,就労ビザの申請フォームですが,そこに学位がないというところに該当するということで不利益が発生しているという状況です。
それから高専は現在,日本初の高専システムが海外に展開しつつあります。現在,モンゴル,タイ,エジプトでそういう展開が行われているわけですが,モンゴル,タイにおきましては法整備されておりまして,学位というものが制定されています。準学士です。エジプトに関しましては,高専高等専門士という形の学位になるというところで,海外ではそういうことが設置されているという状況です。
そういうことが起こりまして,22ページですが,モンゴル,タイの受験生から,日本に留学しようとする受験生ですが,学位が授与されない点を忌避して,日本の高専への受験を控えた事例があるというところで,そういう不利益も発生しております。
こういう状況を我々,本部としても非常に懸念しておりまして,そういうものに関しまして,高専機構ホームページのほうに,NQFのレベルとしては,こういう位置にありますよということをホームページのほうで展開している状況ですが,称号であって学位ではないというのは,根本的に非常に大きな障害になっております。
最後ですが,最後のページに表がありますが,これは国立高専の学生さんの海外派遣の実績を示しておりまして,令和7年度では,合計4,737名の学生が海外でのインターンシップや留学を経験しているということを行っておりまして,海外経験を積むというところも我々,機構本部としては推奨しているという状況です。
以上です。
【吉岡分科会長】 ありがとうございました。
これから御質問,御意見の時間を取りたいと思いますけれども,司会の不手際で15分ほどタイムテーブルより遅れておりまして,質問される方も手短に,それからかぶっている質問については御配慮いただければと思います。まず,国立高専機構の理事でもいらっしゃる上田委員から一言いただければと思います。よろしくお願いします。
【上田委員】 ありがとうございます。本日は高専教育に対する高い評価と期待を示していただいていることを,私自身高専OGであり,また,現在現場で教育に携わる者として大変心強く感じております。今回示された設置目的への研究の追加と,それから高専卒業生の学位授与の検討については,いずれも賛成であり,ぜひ前向きに進めていただきたいと思います。その上で,3点意見申し上げたいと思います。
まず,研究の位置づけについてです。高専教育の質を支えているのは,先ほどの説明にもありましたように,教員の教育力でありますが,その基盤となっているのが,教員が行っている研究です。しかし,設置目的に研究が明記されておりませんので,研究活動の位置づけが曖昧で,研究がどうしても後回しになりがちな面があります。また,大学と同等の紹介であっても処遇面に差があり,裁量労働制の適用なども含めて課題が残っております。こうした点は,研究が制度上,明確に位置づけられていないことも無関係ではないと考えております。高専教育の質を今後さらに高めていくためには,優秀な教員を継続的に確保することが不可欠であり,設置目的への研究の追加はその大きな後押しになるものと期待しております。その際,高専の研究は,従来の大学の基礎研究とは異なって,地域企業や大学と連携した社会実装型,課題解決型の研究に強みがございますので,特例適用専攻科の認定における審査も含め,今後の高専における研究の評価に当たっては,その特色を踏まえたものとなるよう検討いただきたいと思っております。
また,高専の教員は大学教員と比較して授業担当コマ数が多い上に寮の宿直,それから部活動への指導,また,学生指導などにも従事しており,研究時間の捻出に非常に苦労しております。そのため,研究環境への充実への配慮,支援も併せて検討いただきたいものと思っております。
次に,学位授与についてです。説明にもございましたように,高専本科卒業生には現在準学士という称号のみが付与されておりますが,このこと自体,一般の方々にはあまり知られておらず,高専教育の実態や成果が社会に十分理解されていない面もあるのではないかと思っております。高専での学びの成果が国内外で適切に評価されるよう,学位授与の実現に期待しております。一方で,SNSなどでこの議論が,大学卒業者と同じ学士の授与を意味するものと受け止められているコメントも見受けられます。私の理解では,今回の趣旨は,高専教育の成果を国際的に適切に評価するための制度整備であり,学位授与の議論とは分けて考えるべきものです。制度の趣旨については,誤解や混同が生じないよう丁寧な発信をお願いしたいと思っております。
最後に,高専の量的拡大についてなんですが,単に5年の課程をつくればいいというだけではなく,現在の高専教育がどのような内容になっているかという実態を十分理解した上で量的拡大を進めていただきますよう現場を担う1人として強くお願いをしたいと思っております。
以上となります。ありがとうございます。
【吉岡分科会長】 ありがとうございます。現在10人ほど挙手されておりますが,先ほど言いましたように,手短にということと,質問については幾つかまとめてお答えいただくということをさせていただきたいと思います。北畑委員,お願いします。
【北畑委員】 資料3-1の6ページですけれども,短期大学,専門職短期大学,高等専門学校,専門学校と同じレベルで書いてあります。2019年にスタートした専門職大学制度の中でも短期大学が3校あります。これは専門職大学は大学であるので研究をやるということと,卒業のときに学位が出るということでスタートしたわけでありますけれども,高専も同じように研究をやり,学位を出すということになると,専門職短期大学と高等専門学校はどこに差があって,どういう役割分担になるのか,ぜひ御説明をいただきたいと思います。静岡の農業大学校は専門職短期大学のほうを選びましたけれども,愛知県のほうは高専のほうを選んでいる。設置者のほうから見て,どう違うのかということを御説明いただきたいと思います。
それから,新しい認証評価制度の議論が進んでいますけれども,これは大学に適用されるので,高専には適用がないんだろうと思うんですが,学位授与にふさわしい質保証というのはどういう仕組みで,どう担保されるのかということが2番目の質問です。
それから,先ほどの説明の中で,高専の卒業者でも,大学改革支援・学位授与機構から個別に審査を受けて学位をもらっている例があるということでした。これは今後どうなるのかということです。高専の卒業生が原則,学位をもらえるというように大幅に増えるのか,大学改革支援・学位授与機構の審査というのが何らかの形で残るのか,この辺についてお伺いしたいと思います。
それから,最後ですけど,専門学校と高専の共通点というのは変な言い方ですが,大学の入り口のところの試験を受けていないというところでは共通であります。したがって,大学入試を受けていなくても学位がもらえるということになると,この議論は,専門学校,専修学校だって学位を授与してもらいたい。専門士という日本独自の制度が海外で通用しないという意味では,専門学校のほうがもっと深刻でありまして,そういう議論に発展をすると思うのであります。その点について,将来の課題としてでも検討いただけるのかどうか,お伺いしたいと思います。
【吉岡分科会長】 ありがとうございます。今の質問,むしろ事務局に向けてということでよろしいでしょうか。
【北畑委員】 はい。
【吉岡分科会長】 あと,すみません,ほかの質問と重なることがあると思いますので,今の点については,後ほど事務局のほうでまとめて御発言いただければと思います。大竹委員,お願いします。
【大竹委員】 大竹でございます。中島理事長,御説明ありがとうございました。私も上田委員の意見に近くて,2点とも賛成したいと考えます。
教育に加えて研究をやっているのは自明でもありますし,研究を通じた教育ということは既に実践なさっているので実態を伴っていると思いますし,これから大学と高専の流動,教員の流動というのも進んでいくとすると,これは研究を入れていただくのがいいかと,大学の教員としても思っています。
称号付与についても似たところがありまして,既に本学の場合でも高専の修了生が3年生に編入しているということを考えると,実態として,あるいは実力として,準学士の実力を有していると,これもまた自明だと思います。実態に即して学位を付与するということについては賛成したいと思います。
以上です。
【吉岡分科会長】 ありがとうございます。濱中委員,お願いします。
【濱中委員】 よろしくお願いいたします。御説明ありがとうございました。国際通用性を確保するために,高専本科卒業者に学位を授与する方向で検討を進めること自体には賛同いたしますし,必要な対応と理解しております。
その上でお伺いしたいのは,先ほど大学改革支援・学位授与機構の名前も出ましたけれども,同機構を学位授与主体とする案は,高専を現行の大学体系に位置づけないまま,まず,国際通用性の問題に対応するための暫定的な措置なのか,それとも今後も恒久的に教育課程を編成し,教育を行う高専と,その学修成果を認定して学位を授与する機構とを分離する制度として想定されているのかどうか,ということです。後者であるとすれば,教育課程の設計や教育の実施,学修成果の評価,先ほども出ました質保証,そして最終的な学位の妥当性について,それぞれどの機関が責任を負うのかを明確にする必要があるのではないかと思います。学位の名称をつけるだけではなくて,その学位がどのような教育と質保証に基づいて授与されたものなのかということを海外に説明できて初めて国際通用性が確保されるものと思います。その辺りどのようにお考えなのか,お聞かせいただきたいと思います。お願いいたします。
【吉岡分科会長】 ありがとうございました。今の点,北畑委員の話と重なるところがありますので,後ほど事務局からお願いいたします。金子委員,お願いします。
【金子委員】 ありがとうございます。20ページにあります改革の方向性については,おおむね賛成の立場です。
その上で,1つ目の高専と研究の関係については,設置目的に研究を明記することは,高い意識と関心を持って入学する高専生にとっても非常にメリットがあるのではないかなと思っておりますので,明記することに対しては妥当だと考えています。ただ,その前提として,既に研究が行われているという実態があるにしても,研究を明記することによって,研究の分野がより感化され,総体的に教員の業務が増えて余裕がなくなり,結果,教育の質の低下だとか,指導がおろそかになっていくということが懸念されます。こうしたことがないように,業務量の増加に対応するための人的加配や予算増についても併せて検討をお願いしたいと思います。
2点目の高専卒業者への学位授与については,学位がないことに伴う不利益が既に生じているという実態に鑑みると,学生にとってのメリットも大きいと感じておりますので,学位を授与するという見直しについては,適当と考えています。
以上です。
【吉岡分科会長】 ありがとうございます。志賀委員,お願いします。
【志賀委員】 ありがとうございます。皆さん前向きな発言も多いですし,私も結論としては前向きなのですが,あえて懸念点を申し上げたいと思います。
まず,先ほど御説明いただきましたが,高専は学校教育法第115条以下に規定されていますが,第83条の大学や大学の一種である第108条に規定された短期大学とは,設置基準も含めて根本的に異なる教育機関であります。ですので,資料3-1の33ページに,短期大学だけ学位を取り一方で高専は付与されずとありますが,これは根本的な法令の相違によるものであって誤解を与える内容であるので,そこは御留意いただきたいと思います。
その上で,実は事前説明で質問にある中で,今後設置基準を改正するのかどうかということもしたのですが,どうやら今後も大学改革支援・学位授与機構の審査による授与の議論が進めているということを伺いまして,それはそれで結構なんですけど,先ほど来の話,説明資料,今日の全体を見ますと,高専のすばらしい実績は私も理解するんですけれども,その上で国際的に不利益があるというような内容ですが,では,なぜ今,学位が出せないのか,現体制との穴を埋めるにはどうすればいいかという法令上の懸念点の説明が非常に少ないまま学位について考えてほしいと述べているように見えます。
評価もやっている私の立場からしては,学位を出し国際通用性を持たせるならば,あらかじめ定められた学位獲得のために必要な学習内容を明らかにして,査定可能な質保証を担保してくださいねとしか言いようがないです。だから幾らいい事例があっても,それが基準に合っているかどうかということを定めなくてはいけないわけです。失礼な例えかもしれませんが,今日の話は,例えばF1などのレーシングカーの性能がすごいです。ですから車検ください,あるいは要件を簡略化してくださいと言っているように感じました。
ですので,まず,懸念事項としては,皆さんが言っているとおり,学位を出すなら研究機関の整備が必要だと思います。それ以外では,現行教授,准教授,講師の設定は設置基準にありますが,それに研究が入っていないということもありますし,教授会の設置も必置ではないので,教育マネジメントの観点からも,組織としての研究機関の在り方をどこまで整備するか,それから,あとは教養教育についての取扱いというのを高専においてはどうするか。カリキュラムポリシーとかを入れるとかどうかとか,そういった制度上の話を御検討いただきたいと思います。これらを現行制度の解釈次第としながらも,大学改革支援・学位授与機構の審査要件として整理するのか,それとも設置基準改正まで行うのか,そこまではここでは断定的には申し上げませんが,委員会があるのであれば,そこで専門家を交えて御検討をお願いしたいと思います。
それから,少し外れますが,これを含めて学位とは何ぞやという議論をする過程においては,大学,短大等の教育機関の法令についても逆輸入的な改正も必要かもしれないと思います。例えば,先ほど33ページにあった件,本来,短期大学の学位も準学士にしたかったんですが,現行の準学士と区別のために短期大学士になったというのを,私は伝聞でしか聞いていませんけど,そう伝え聞いております。ですから,今となっては賛否あるかもしれませんが,短期大学士と準学士というのを,どっちも学位として準学士として統一し,それで,高専は大学改革支援・学位授与機構の認定によって取れるという制度設計も,別管轄かもしれませんが,よろしく御検討お願いしたいと思います。
それから最後に,先ほど出ていました資料3-1の15ページのNQF,日本の教育資格の枠組みについてなんですけれども,私これが以前,この会議に上がってきたときに,各レベルで身につける能力の記載を進めてほしいと申し上げました。ヨーロッパのEQFやアメリカのUSQFには,どんな能力をこのレベルでは身につけるかという記載があるのに,NQFは学位,称号,あるいは卒業した機関の列挙にとどまっていて,これではどんな能力を身につけたか分からないということを言いました。これも国際通用性がないと判断される一因になっているんじゃないかなと思います。これは大学改革支援・学位授与機構が定めた定義になっているようですので,今後,評価制度も学習成果に焦点を当てるように変わるようですし,ほかの国際機関に倣ってこれらの記載も改めるよう,これはこことは違う議論かもしれませんけど,大学改革支援・学位授与機構にきちんと求めていただくようお願いしたいと思います。
私からは意見でした。以上です。
【吉岡分科会長】 ありがとうございます。栗本委員,お願いします。
【栗本委員】 ありがとうございます。高専の改革の方向性につきまして,強く賛同いたします。実際にIT市場,もしくはAX市場のニーズを敏感に酌み取った新しい教育を提供できる優れた教育プラットフォームだと認識しております。ぜひ国際通用性の確保と研究力の向上,これらを改革の両輪として進めていただくことに大賛成です。
加えて,この議論の中において志賀委員もご指摘されました,ディグリーとは何か?について検討してはいかがでしょうか,ディグリーに類似した言葉としてディプロマやサーティフィケートも存在します。大学院レベルにもディプロマやサーティフィケートが存在しますので,国際通用性の観点で,何がディプロマで,何がディグリーなのか,少し整理されるとよろしいのではないでしょうか。
以前,海外から人材を招く際に,ポストグラデュエートのディプロマとは何か,を議論したことがあります。学位ではなく,ポストグラデュエート・ディプロマ(PgDip),もしくはポストグラデュエート・サーティフィケート(PgCert)といった称号を持つ優秀な人材が日本に入ってきているためです。また,海外では教職を目指す多くの人材が大学院レベルのディプロマやサーティフィケートを取得していると理解しています。
ぜひとも,高専の国際通用性もしくは研究力のみならず,ディグリーやディプロマとは何か?という議論が行われると良いのではないかと感じております。以上でございます。
【吉岡分科会長】 大切な視点だったと思います。ありがとうございます。加藤委員,お願いします。
【加藤委員】 簡単に質問いたします。準学士を授与する大学改革支援・学位授与機構の制度との関係は今後どのように整理される予定なのかということが質問です。
以上です。
【吉岡分科会長】 ありがとうございます。古沢委員,お願いします。
【古沢委員】 ありがとうございます。今,御説明を伺っていて,高専への期待が高まる中,国際通用性を確保する必要性というのは私もよく理解したつもりです。その上で,一般の人から見ると,そもそもじゃあなぜもともと設置されたときに称号で,今学位が必要なのかということは,もう少し説明が必要じゃないかと思っていまして,恐らく時代とともに高専の在り方とか評価が変わってきて,研究の面が非常に拡充されたということはあるのかもしれませんけれど,その辺りは整合性のある説明が必要ではないかと思います。
先ほど不利益ということで,海外での就職とか大学の編入に不具合が,不利益が生じるという御説明があったんですけれど,その前の資料にもあったと思うんですが,留学生の派遣とか受入れについては,今カウンターパートとしては,どういうところと交流があるのかというのを伺いたいと思いました。アジアの,今いろいろ設置されている高専以外にどういうところと留学生受入れ派遣をしているのかと。以前に高専の授業を拝見,見学させていただいたときに,学生の方々がなかなか留学に挑戦する人が少ないという話をされていて,それでちょっと英語も苦手だというような話をされていて,もしかしたら背景として,そういう留学しにくいとかそういうものがあるのかもしれないと今思ったんですけど,そうだとしたら,そういった面も改善していかなければいけないのかなと思いました。
以上です。
【吉岡分科会長】 ありがとうございます。最後,吉見委員,お願いします。
【吉見委員】 ありがとうございます。まず,学位の件,それから研究の件は当然ながら私も賛成です。その上で協調しなくてはいけないことは,なぜ今,高専がこれだけ注目されるのかという,その根本がどこにあるのかということだと思います。
3点,高専には極めて大きな可能性があると私は思います。第1点は,要するに16歳から21歳という本当に人生を決める,先ほど情動という話が出ましたけれども,情動という意味では最も重要な時期に,日本の多くの高校生は受験勉強のために,2年,3年,すり合わせしているという情動を密着する方向に皆さん動いているわけです。ただ,高専というのは,16歳から21歳という一番重要な時期に5年間一貫教育をできるという,この点がまず,極めて大きいということです。
第2点は,16歳から高等教育ですから,学習指導要領に縛られていない。ですから,中等教育の学習指導要領に縛られない自由な教育ができるという仕組みの中に,そもそも制度的に高専があるということのメリットも極めて大きいと思います。
そして第3に,そういう意味でいうと,日本の中等高等教育というのは1949年以来,基本的にアメリカモデルで6,3,3,4の単線型の教育がずっと,いまだに生きているわけですけども,高専だけが例外なんですよね。だから高専だけが単線型の教育から外れた複線的なシステムに行く芽になっているということで,これは高専の問題を考えるということは,1949年以来の日本の中等高等教育の仕組みの根本に関わるような問題点を高専は含んでいるということなんだと思います。だからこそ高専というものを重視し,そこから考えるということは,単に一つ高専の問題だけではなくて,戦後の日本,つまり,1949年以降の日本の中等高等教育の根本に関わる問題を高専という制度は含んでいると私は思っています。
その上でお聞きしたいと思いますのは,先ほどの研究の話は分かるんですけれども,教員集めに苦労していると思います。教員集め,地方に分散ということも一つあると思うんですけれども,なかなか質のいい先生たちを集めるには僻地,結構大変だと思います。そういうところで,本当に研究の問題が何とかなれば教員集めは苦労しなくなるのかと言ったら,そうでもないような気がするんです。そういう問題を解決するのはどうしたらいいのかということ。
それから2番目は,少し出ましたけれども,リベラルアーツの問題というか,高等教育の中で教養教育とかリベラルアーツ教育とか英語教育とか,その辺の方がどうなのかということです。私立の高専ですごく面白いプロジェクトがたくさんやられている,代表は石川の国際高専と,それから徳島の神山まるごと高専ですよね。この2つです。それで,石川のほうは国際科というところでチャレンジしていて,神山のほうはITというところでチャレンジしているわけですけれども,でも,どこまでやれるだろうかという心配もあるわけです。ですので,もう一歩上に行くときに足りないものは何だろうかという,教育課程としてということがあると思います。このことは第3の国際通用性ということに関しても,学位だけの問題なのかという気がやはりしていて,国際的に海外のカレッジなりユニバーシティーに入っていけるようになるためのハードルがほかにもあるんじゃないかという気がするので,その辺りも教えていただければ幸いです。
【吉岡分科会長】 ありがとうございます。事務局に答えていただくべきことと中島先生に答えていただくことと両方あるような気がしますが,その前に,今日欠席の多委員からの意見がありますので,まず,多委員の意見を代読するなり,事務局のほうで出していただいて,それをまとめて,次に事務局からお答えいただけることをお答えいただいて,それから中島先生から御意見いただければと思います。よろしくお願いします。
【平尾高等教育企画課課長補佐】 事務局より代読させていただきます。
政府の成長戦略,「KOSEN」システムの海外展開,国際通用性に係る課題,知の総和答申における高等専門学校の役割(高専教育の高度化・国際化の推進)等を踏まえ,高等専門学校卒業者に授与される準学士を学位とすることは有効的であり,特段の異存はありません。一方,既存制度の枠内でも実現が可能な取組として,「高専教育の質の高さ」を直接証明するために,公式な証明書として「ディプロマ・サプリメント」を卒業証書に添付することを検討してはいかがでしょうか。これによって,卒業証明書や成績証明書だけでは伝わりにくい,「高専で具体的に何を学んで,何ができるようになったのか,どのようなスキルを身につけたのか」といった高専教育はもとより,個人の学修成果が正確に評価されることもつながるものと思慮します。
一方,今回の論点からは外れてしまいますが,学校教育法上の高等専門学校の目的である「職業に必要な能力の育成」は,専修学校の高等課程及び専門課程においても同様の目的を有しています。こうしたことから,例えば専修学校の高等課程と専門課程の有機的な接続を促進し,後期中等教育以降における一貫した実践的な職業教育を構築することは,多様な進路・学びの選択という観点からも必要ではないかと考えます。また,日本の教育制度の修了資格の国際通用性を高めていくことも重要な論点であり,その点において,学位だけではなく専門学校修了者に付与される「専門士」,「高度専門士」等の称号の通用性をいかに高めていくかについても今後検討すべきと考えます。
これらの論点については,大学分科会ではなく,まずは専修学校の質の保証・向上に関する調査研究協力者会議で議論すべきテーマではありますが,AX時代における職業教育の体系をいかに確立していくかという観点を踏まえた高等専修学校と専門学校の接続を通じた専修学校制度の機能強化策や,称号「専門士」,「高度専門士」の国際通用性について考えるべきであることは申し添えておきたいと存じます。
以上です。
【吉岡分科会長】 ありがとうございます。制度上の問題と,それから質保証絡みの内容の問題,研究絡みの話ということと,幾つかの論点,国際通用性を実際どうするかという話と,論点が幾つかあったと思いますけども,事務局のほうで整理してお答えいただければと思います。
【松本専門教育課長】 たくさんポイントがございましたので,全部拾い切れているかどうか難しいですが,まず,北畑委員のほうからありました専門職短大との相違については,これは自明ですが,当然,学び出すタイミングが違うところと,あと教育手法に関しても,高専は実践と理論を基本的に学校の中で完結させて教育していきますが,専門職短大はインターンシップのような形で外に出ていって,現場で学ぶといった組合せが必ず入っておりますので,そういったところが相違点と考えております。
また,新しい認証評価制度の対象に高専がなるかというところですが,これは対象になります。現行ももちろん認証評価にかかっておりますけれども,今,議論いただいております新しい認証評価制度の対象にもするということです。
また,御質問のあった,学位を授与する場合にどれだけの者を対象にするのか,全員すべからくするのか,希望者のみになるのかといったところですが,これは今,制度の設計を詳細に検討しておりますので,ここに関しては,できるだけ網羅的なのが望ましいとは思っておりますけれども,今後の制度面での議論と思っているところです。
また,専門学校や専修学校の国際通用性もというところですが,これはまた別の,そちらの学校種のほうの議論で進めていただくべきところとは思いますけれども,高専と専門学校・専修学校は一義的には認証評価の有無ですとか,一条校かどうかというところで線引きがあると考えております。高専は一条校に位置付けられる高等教育機関であって,その上で認証評価も受け,文部科学大臣が設置認可を出している学校種であるのを前提に今回の議論はさせていただいております。
また現行,準学士を学位として授与できるかというお話があったかと思うんですが,こちらに関しては今,現行,NIAD(独立行政法人大学改革支援・学位授与機構)の授与できる学位の中に準学士は入っておりませんので,NIADがこちらを審査して授与できるようにするためには,法制的な整備が必要になります。その上で,NIADのほうで準学士と,名前は仮称ですが,高専本科の教育内容について準学士について,これを授与できるだけの大学,短大と同等の教育内容があるかというところに関し,基準等も設けて見ていくというお話になると思います。
また,教員集めに関して,今後どう考えるのかというところの御指摘で,今,検討会で議論しようとしておりますのは,高専からの編入を前提につくられております技術科学大学,こちらのほうで,高専教員の養成をするシステムをつくっていくべきではないかという議論をしておりまして,これに対して,国としてどう支援できるかを議論していきたいと考えております。
リベラルアーツについては中島先生からお答えいただければよろしいかなと。取りあえず,事務的にお答えできる範囲,これでよろしいでしょうか。
【吉岡分科会長】 ありがとうございます。では,中島理事長,お願いします。
【中島理事長】 先生方,高専の教育をよく御存じのように,高専教育は実践をして,その理論を学ぶ,実践をして学ぶ,この繰り返しを何度も何度もいろんな分野でやる。今日,AI時代に,要するに頭のどの部分に刺激を与えるかというときに,実践で経験を積む感覚で,そういう感覚で覚えて,それを理論に展開していくというその繰り返しをずっとやってきたというのが,高専の教育の基本的な理念でして,この形を工学で機械系,電気系,化学系,建築系,いろいろ展開してきたわけですけども,リベラルアーツというのは,当然そういうものの非常に根本的なところに関わる問題だと,学術的な問題だと,場所だと思っていまして,そういうところをきっちり高専としてやるということは常に心がけているところです。
それから,今日,海外展開の話をいただきましたけども,確かに現在,高専システムというのがアジアに展開されているという状況なので,アジアのほうに高専生が行く,それからアジアの学生さんがこちらに日本に来るというのが多くなっているんですが,最初の1回目,海外に出るのは,まず,アジアが最初にそこで挑戦して,2回目,3回目,最後,4年生,5年生の研究レベルになったときにはアメリカに行ったり,欧米に行ったり,ヨーロッパのほうに行ったりしています。そういう意味で,そういうところでの進路というんですか,ルートを確保するという意味でも,ある意味,学位が必ず必要になってくると思っていまして,そういうルートづくりをきっちりしていこうと思っています。
そのために,日本で生まれた高専というシステムをアメリカ,ヨーロッパでもきっちり理解してもらうと,その作業が必要だと思っておりまして,その部分は本部のほうで,これからきっちり展開していきたいと思っている状況です。
【吉岡分科会長】 ありがとうございます。高専の問題というのは学位とかをどうするかという問題と,先ほど吉見委員もおっしゃっていたみたいに,要するに,5年一貫という形を取っていて,しかも基本的には中学卒業してからという仕組みで,一方で,我々は大学と大学院の5年間連続みたいな議論をしてまいりましたけど,またそれとは違う層で,かなり大きな問題といいますか,議論の焦点があるだろうと思います。学位をどうするかとかという問題に絡むんですけれども,要するに,義務教育を終えた15歳の子がこれから先,どういう人生を選択していくかとか,教育という、いろんな技術を身につけたり,学問的な能力を身につけたりしていくというところにどう位置づけるかということを考えないとならないのだと思うのです。大きな話ですので,それをやらないと先に進まないというわけではないのですけれども,そこの部分を手放してしまうと,また新しい制度が出てきて,その関係がどうなったか分からなくなっていくだけだと思うのです。
したがって,高等教育という面からいっても幾つもの,先ほどいろんな御質問がありましたけども,専門職短大や専門職大学,大学まで含めてですけれども,専門職の問題,あるいは,高専だけではなくていろいろな技術を学ぶような形の専修学校であるとか,専門学校とかというものをどのようにするのか,さらに中卒という段階から考えると,いろいろな専門高校もあるわけです。これは文部科学省の直接の管轄ではないですけれども,そういうところを視野に入れて議論しないとぐちゃぐちゃに,制度が複雑になっていくだけで,学生とか生徒たちが困るだけじゃないかと思います。その辺を文部科学省のほうで整理をするということを考えていただければと思います。
よろしいでしょうか。ということで,既に15分過ぎているんですけれど,まだもう一つやらなくてはいけないことがありまして,今日の点はこれで,また,この点,今の点につきましては高等専門学校の機能強化に関する検討会での議論というのがございますので,また大学分科会で御報告いただければと思います。よろしいでしょうか。
それでは,続きまして,もう少し急ぎたいと思います。連続課程特例制度についてです。連続課程特例認定大学としての認定に係る審査結果につきまして,事務局から説明をお願いします。
【石橋大学振興課長】 ありがとうございます。先ほどお手元にお配りした資料4を御覧いただければと思います。連続課程特例認定大学としての認定に係る審査結果についての御報告でございます。
令和8年3月25日付で申請がありました大学院設置基準第42条に規定される認定大学として,以下の1件の審査を行った結果,結論を得ましたので御報告申し上げたいと思います。これがまさに,学士,修士の5年一貫という形で,昨年11月,今年2月に大学分科会で御議論いただいたものとなります。申請については東京大学から出てまいりまして,審査の主な経過に関しましては,3回させていただきました。審査結果におきましては,連続課程特例認定大学として認定することが適当ということになっております。
次のページを御覧いただきますと,認定と附帯条件ということになっておりまして,認定に関しましては,一応10年という形で認定期間とさせていただいております。留意事項3点ございまして,まずは新しい仕組みですので,しっかりと社会に対してその理解を得るように努めていただきたいということ。それから2つ目でございますが,今回デザインということが掲げられているわけですけども,これに関しても教育研究の成果を通じて積極的な情報発信を行って,社会に定着してほしいということ。それから3つ目,広義のデザイン学の学術的発展及び教育体系の充実に貢献を期待されると,この3点を附帯条件として認定させていただければと思っております。
最後に東京大学の概要をつけさせていただいております。
説明は以上でございます。
【吉岡分科会長】 ありがとうございます。連続課程特例認定大学という形での東京大学からの申請があって,これを認めるという結論が出されたということでございます。何か御質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。一つのモデルになるということですので,今後を見守っていきたいと思います。ありがとうございました。
17分,遅れてしまいました。以上で本日の議題は終了ということになります。
次回の開催日程等について,事務局から説明をお願いします。
【平尾高等教育企画課課長補佐】 本日は活発な御議論いただきまして,誠にありがとうございました。次回の分科会については,改めて日程調整の御連絡を差し上げます。本日,御発言できなかった内容等ございましたら,事務局まで御連絡ください。
以上でございます。
【吉岡分科会長】 ありがとうございます。
これで本日の議事を終了いたします。どうもありがとうございました。遅くなって申し訳ございませんでした。
―― 了 ―
高等教育局高等教育企画課高等教育政策室