中央教育審議会大学分科会(第184回)議事録

1.日時

令和7年7月4日(水曜日)13時00分~15時00分

2.場所

Web会議

3.出席者

委員

(分科会長)吉岡 知哉分科会長
(副分科会長)橋本 雅博副分科会長、和田 隆志副分科会長
(委員)伊藤 公平、田中 マキ子、冨永 悌二、廣津留 すみれ、古沢 由紀子、森 朋子、両角 亜希子、山口 祥義の各委員
(臨時委員)上田 悦子、大野 博之、大森 昭生、小野 悠、加藤 映子、北畑 隆生、栗本 博行、志賀 啓一、杉村 美紀、髙宮 いづみ、中村 和彦、濱中 淳子、本間 敬之、益戸 正樹、松下 佳代の各委員

文部科学省

(事務局)伊藤高等教育局長、浅野私学部長、森友大臣官房審議官、奥野大臣官房審議官、松坂文部科学戦略官、吉田高等教育企画課長、石橋大学振興課長、中安生涯学習推進課長、廣田大臣官房文教施設企画・防災部計画課長、佐藤高等教育局参事官(国際担当)、鈴木大学設置・評価室長、髙見高等教育政策室長、花田高等教育企画課課長補佐、太田高等教育政策室室長補佐、宮沢医学教育課課長補佐ほか

4.議事録

【吉岡分科会長】  所定の時刻になりましたので、中央教育審議会大学分科会第184回を開催いたします。御多忙中、御出席いただき誠にありがとうございます。
 本日も、対面とウェブのハイブリッド会議として開催し、その様子をユーチューブライブ配信にて公開いたします。会議資料、音声など御準備はよろしいでしょうか。オンラインの先生方、よろしいでしょうか。
 それでは、事務局から連絡事項をお願いいたします。
【花田高等教育企画課課長補佐】  失礼いたします。
 本日は会議を円滑に行う観点から、御発言の際は挙手のボタンを押していただき、御指名されましたらお名前をおっしゃってから御発言いただきたいこと、また、御発言の後は再度、挙手のボタン押して表示を消していただきますようお願いいたします。
 本日の会議資料は、事前にメールでお送りしているとおりでございますが、会場のiPadには文字の会議資料をチャットにてURLでお送りしてございますので、紙の資料と併せて御活用ください。
 以上でございます。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。
 本日は、大学設置基準の改正案、認証評価機関の認証、学校教育法施行規則の改正、「Global×Innovation人材育成フォーラム」最終まとめに関する案件の後、大学分科会審議事項に関して、各部会における議論の状況について御議論いただく予定です。
 また最後に、その他として第6次国立大学法人等施設整備5か年計画(令和8年から12年度)策定に向けた中間まとめや、政策文書における高等教育関係の主な記載についても御報告いたします。大変盛りだくさんになっておりますので、要領よく進めたいと思います。
 それでは、1、医学部臨時定員増に係る大学設置基準の一部改正についてです。
 事務局から説明をお願いいたします。
【宮沢医学教育課課長補佐】  医学教育課の宮沢でございます。資料1-1を御覧ください。
 令和8年度医学部入学定員増についてというものですけれども、1ポツ、これまでの経緯というところにございますが、医学部の入学定員は、これまで将来の医師需給の観点から過去の閣議決定に基づいて原則として定員を抑制してきたところでございます。一方で地域における医師の不足ですとか、医師偏在の課題が顕在化してきたことから、平成20年度より臨時的に入学定員を増員しておりまして、平成22年度以降はこちらの資料の2ポツにあるとおり、(1)(2)それぞれの枠組みで毎年度増員を臨時的に認めてきたところです。
 具体的に申し上げますと、(1)ですけれども、いわゆる地域枠と呼ばれております地域の医師確保の観点からの定員増という枠組みがございます。こちらは都道府県が作成する医療に関する計画に基づいて奨学金を設けまして、大学が地域医療を担う意思を持つ者を選抜し、地域医療等の教育を実施するというものでございまして、卒業後、一定期間、特定地域での従事を求めるですとか、そういった取組がなされております。
 次に(2)ですけれども、研究医枠と呼ばれている枠組みがございまして、研究医養成のための定員増についても臨時的に認めております。こちらは複数の大学と連携をしまして、研究医要請の拠点を形成しようとする大学で研究医の養成・確保に学部・大学院教育を一貫して、例えば特別なコースを設けるですとか、そういった取組を行う各大学に対して3人以内で定員増を認めております。こちら、(1)(2)の取組について令和8年度、来年度についても措置する予定となっております。
 4ポツのところを御覧ください。今、申し上げたとおり(1)、(2)の取組について、来年度も継続して臨時的に認めることとなりましたので、これに伴って大学設置基準等の所要の改正が生じてまいります。具体的なものは技術的な改正ですので割愛させていただければと思いますけれども、例えば臨時定員の増に当たって、学則変更に際して特例を設けておりますので、その特例の期間について、医学部6年生ですので令和12年度まで設けていた措置を1年間延長して令和13年度まで伸ばすですとか、そういった内容になっております。
 私からは以上です。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。今の説明について、何か御意見、御質問のある方がいらっしゃいましたら挙手をお願いいたします。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは次に、大学設置基準の改正に関わる事項につきましては、大学分科会の議決をもって中央教育審議会の議決とすることとされておりますので議決を行いたいと思います。
 事務局は定足数について報告をお願いいたします。
【花田高等教育企画課課長補佐】  大学分科会の委員及び臨時委員の数は32名であり、現在24名に御出席いただいておりますので、中央教育審議会令第8条第1項に定める過半数を充たしております。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。
 それでは、お諮りいたします。
 先ほどの内容について御了解いただくということでよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。それでは当該諮問については、これを適当と認め、文部科学大臣に対して答申することといたします。今後の取扱いは、私に一任とさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
 続きまして、(2)認証評価機関の認証についてです。
 一般社団法人専門職高等教育質保証機構から、文部科学大臣に対して認証評価機関としての申請があったことから中央教育審議会の大学分科会にお諮りするものです。
 具体的な審査等については、本分科会の下の審査委員会において行っていただき、その審査結果をもって、後日、本分科会で審議を行うこととします。
 事務局から説明をお願いいたします。
【鈴木大学設置・評価室長】  
大学設置・評価室長の鈴木でございます。資料2-1と資料2-2を御覧いただければと思います。
 令和7年の6月27日に一般社団法人専門職高等教育質保証機構から、学校教育法第110条第1項の規定に基づいて認証評価機関の認証に係る申請がありましたので、文部科学大臣より中央教育審議会への諮問を行うものとなっております。
 諮問につきましては、資料2を御覧いただければと思います。
 資料2-1をまず、申請のありました専門職高等教育質保証機構の概要を1ページ目にまとめてございます。当該申請機関は、専門職高等教育に関する教育研究及び実践に関する第三者評価等を行う機関として、平成24年7月31日に専門職大学院のビューティビジネス分野、令和3年5月10日に教育実践分野、令和5年11月6日に専門職大学のリハビリテーション分野、ファッションビジネス分野、並びに専門職短期大学の動物ケア分野の3分野、令和7年1月31日に専門職大学の情報工学分野、経営ビジネス分野、農林環境分野、アニメ・マンガ分野、並びに専門職短期大学の農林環境分野の5分野について認証を既に受けているところでございます。
 今回、同機構から新たに専門職大学の芸術文化観光分野、食ビジネス分野、美容健康分野、専門職短期大学の観光分野についても、認証評価機関としての評価を行うための認証を求められているところでございます。
 周期と評価手数料、併せて評価対象として想定される専門職大学、専門職短期大学については記載のとおりでございます。
 今後の手続につきましては資料2-1の7ページを御覧いただければと思いますけれども、先ほど分科会長からご発言がありましたように、申請内容は大学分科会の下に設置しています認証評価機構の認証に関する審査委員会において専門的な調査審議を行うこととしまして、本年10月以降に大学分科会で報告させていただく予定でございます。
 私からは以上です。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。今の説明について御質問、御意見等ございますでしょうか。
 それでは北畑委員。
【北畑委員】  専門職大学の元学長でございます。一言申し上げたいと思います。
 2ページ目にありますように評価手数料200万円、短大で180万です。これは、専門職大学は名前見ていただくとお分かりのように細かく分野別に設立が認められていまして、小さな大学ばかりでございます。したがって、この200万、決して安い金額ではないんで別途いろいろ申し上げておりますけれども、これに加えて機関別の認証評価も受けなきゃいけないということで、この辺は、負担感はぜひ御検討いただきたいということでございます。内容について疑義、異論はございません。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。
 ほかに御意見ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、本申請に係る審査につきましては審査委員会へ付託することにいたします。ありがとうございました。
 続いて、3、学校教育法施行規則等の一部を改正する省令についてです。
 まずは、事務局から説明をお願いいたします。
【中安生涯学習推進課長】  お時間をいただきましてありがとうございます。専修学校制度を所管しております、総合教育政策局の生涯学習推進課でございます。
 資料3でございますけれども、資料3のタイトルは学校教育法施行規則等の一部を改正する省令案という形で出させていただいておりますけれども、これは令和6年の学校教育法の一部改正、改正概要は2ページ目に置いておりますけれども、これを受けたものでありまして、大学分科会にお諮りをしております主たる理由は、専修学校の適格専攻科について大学院入学資格の付与に関わる事柄であります。
 資料上は資料3の1つ目の白い丸のところに、学校教育法施行規則の主な改正事項とありますけれども、そこの1つ目のポチのところに、大学の専攻科または大学院の入学資格に専門課程における教育との連続性に配慮した教育課程を編成していること、そのほかの基準を満たす専攻科で文部科学大臣が別に指定するもの(適格専攻科)を修了した者を追加する(第155条第1項)とありますけれども、このことになってございます。
 本件につきましては令和6年3月12日、10月16日、また、令和7年1月28日の大学分科会あるいは特別部会との合同会議におきまして状況を御報告させていただき、御意見を賜ってまいりました。本日は4回目になります。
 過去3回御議論いただいた中では、適格専攻科の質保証をどう行っていくのかということを議論の主題としていただいてまいりました。1度目の議論では、文部科学省による認定について、要件の明確化や認定の省内体制についての御意見、2度目の御議論では評価の観点からの御意見をいただきまして、この点、本年の1月28日の大学分科会でお示しした資料3ページに再掲しておりますけれども、この緑枠の部分にありますとおり、文部科学省が基準に基づき認定すること、独立した第三者による評価を5年に1回義務づけすること等をもって質の保障させていただく方向性をお示しさせていただいたところでございます。
 少々細かくて前回までの繰り返しになりますけれども、もう1ページ進んでいただいて4ページでは今回の専攻科の指定に当たって、従来から大学院入学資格を認めていた4年制専門学校の要件と同等のものとさせていただくことをお示しさせていただいたところです。
 これらについて直近の3回目の議論では、最初に見たときとは随分変わってきてしっかりとしたものになっていると一定の御評価をいただきつつ、その上で第三者評価について、大学等で認証評価を行えているところ、専門学校については学校教育法ではそれが求められていないので、総合教育政策局の判断であるが、評価について客観性を確保する方策を検討されたい旨の御意見をいただいております。
 最後6ページにまとめておりますけれども、専門学校に関する評価のガイドラインというものを整理させていただいておりまして、これをもって専門学校に取組を求めていくということを考えてございます。特に本分科会で御指摘いただいてきた事項としては2ポツの第三者評価の実施の赤字のところですけれども、評価を実施する者の専門性・中立性に関する要件を満たした者による評価とすること、また3ポツの赤字のところですけれども、大学入学資格が付与される専門課程及び専攻科を有する学校等については、令和8年4月1日からの第1期間において第三者評価の実施を求めること、また、4ポツの赤字のところですけれども、5年に1回実施すること等とさせていただいております。
 このほか、1ページ目に戻っていただいて、こちら前回御質問いただいたこととも関わる部分ですけれども、一つ目の白い丸、学校教育法施行規則の主な改正事項の4つ目のポチのところでありますけれども、大学院等の入学資格に関する文部科学大臣の指定を受けた専修学校の専門課程または専攻科を修了した者は、高度専門士と称することができることとする(第186条の3)としておりまして、また、2つ目の白い丸、専修学校設置基準のところの2つ目のポチですけれども、専門課程を置く専修学校について、教員及び事務職員等に必要な知識及び技能を習得させ、並びにその能力及び資質を向上させるための研修及び専修学校の授業内容及び方法を改善するための組織的な研修等を行うものとするという規定を整備させていただく案としております。今後、8月上旬以降の公付を予定し、準備を進めさせいただいております。
 以上になります。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。それでは、御質問、御意見のある方は御発言をお願いいたします。よろしいでしょうか。ありがとうございました。
 それでは、これはこのような形で次に進めさせていただきたいと思います。
 続いて、4、「Global×Innovation人材育成フォーラム」最終まとめについて、事務局から説明をお願いいたします。
【佐藤参事官】  
高等教育局の国際担当参事官でございます。よろしくお願いいたします。
 資料4を御覧ください。前にも中間まとめの段階で一度御報告させていただいておりましたが、Global×Innovation人材育成フォーラムということで、事務次官決定で有識者会議を設置して、留学機運を醸成するためにすべきこと、そして安心して留学にチャレンジできる環境整備の在り方等について御議論いただいてきました。こちらにもいらっしゃる吉岡分科会長をはじめ、伊藤委員、廣津留委員には、こちらにも委員として入っていただきましてありがとうございました。計7回の議論を6月の末に終えまして、大学、それから自治体等からのヒアリングを行いました。
 2ページ目を御覧ください。最終まとめの概要として、本体は全8ページですけれども、こちらに簡単にまとめさせていただいております。前文のところにあるように、日本の若者の留学の現状や外国人留学生の比率は主要国と比較してもまだまだ明らかに不十分というところで、この留学モビリティを促進することに全力を挙げることが必要であるとして、産官学がなすべきことについてまとめていただきました。
 1番、日本人の海外派遣のところですけれども、これは中間まとめで御報告したとおりでございまして、若者の多様な成長を支える留学機会の提供、留学の機運醸成、そして給付型奨学金の大幅拡充をはじめとする経済的支援、それから民間企業・団体等からの支援の継続・拡充というところが御提言いただいたところでございます。
 3ページ目を御覧ください。優秀な外国人留学生の受入れというのが後半の御議論いただいたところになっておりまして、高等教育段階においては多様な国・地域から優秀な外国人留学生を受け入れる必要があり、現状は特定の国や地域からの比率が高く、多様性確保という観点からはまだ課題があるという御指摘もいただきました。
 また、大学等が国際ゲートウェイとして、特に地方大学等において、優秀な外国人留学生の受入れ及び地域への定着促進を担う機能が非常にますます今後重要になるであろうということ、それから初等中等教育段階では外国人留学生の受入れ体制ですとか日本語指導体制の整備、そして外国人研究者や企業で働く外国人のお子さんたちの教育環境の整備というのも不可欠であるという御指摘もいただいております。
 これら留学モビリティの拡大、大学の国際化を支える環境・体制整備としまして、初等段階では全国で取り組めるよう政府が集中的に支援すべきであることですとか、大学等においては留年や休学することなく留学できる環境の実現、それから、そういった現場で業務を支える専門職員の育成・確保を進めることも必要であること、外国人留学生の授業料の増額や手数料の徴収等によって持続的・安定的な学内国際体制の自律的構築というのは不可欠であろうというお話もいただいております。加えて、留学が不利益にならないような採用活動の展開、多文化共修の場や生活環境の充実の必要性を提言いただいておりました。
 こういったことを受けまして、昨今でいきますとアメリカの政策の影響等も実際にいろいろと起こっているところではございますけれども、私どもとしましては、この留学ですとか国際経験というのをより多くの若者、子供たちにそのチャンスを与えることができるように、この提言を受けまして引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと思います。ありがとうございます。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。それでは、今の説明に対して御質問、御意見のある方は御発言をお願いいたします。
 はい、栗本委員。
【栗本委員】  栗本です。優秀な海外の研究者を国内に招き入れることが高等教育の国際化につながるものと理解しています。その実現には、研究者の家族の対応をどのように考えていくかが鍵で、特に研究者の子弟の教育の受け皿となる初等中等教育の充実です。この教育の国際化が重要な課題であり、最終的には初等中等教育の教員免許をどのように考えるかに行き着くと思います。このような視点もあると良いかと思いました、よろしくお願いします。
【吉岡分科会長】  よろしいでしょうか。
【佐藤参事官】  御指摘いただいてありがとうございます。その点も留意しながら取り組んでまいりたいと思います。ありがとうございます。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。
 ほかに御意見ございますでしょうか。
【伊藤委員】  伊藤でございます。今回、この取りまとめに私も関わらせていただいて、まとまったものとなったと自負しています。ありがとうございました。
 その一方で、例えば最近のいわゆる大学ファンドの10兆円ファンド、国際卓越ファンドの中のSPRINGという、大学院の博士課程を、研究の支援をするものの中で最近の報道によると、留学生に関しては、研究費は支給するけれども生活支援は支援しないというものが出ています。このようなものがいろいろな形で出てくると、文部科学省としては統一したメッセージに欠けるんじゃないかというのを危惧しているところであります。
 もちろんSPRINGというものは、もともと日本で育った人の博士課程への進学率を上げる目的というプログラムであることは私、重々承知していますので、その本来の姿に戻るという説明は理解できるのですが、その説明がなかなか報道はされませんし、それが逆に来年度から、例えば今まで生活支援された博士課程の留学生はもうこれから生活支援はできませんということになり、でも、その一方で今回のメッセージのように、報告書のようにできるだけ優秀な研究者を外から来てもらいましょうというような形になってくると、分かりにくいメッセージとしてなると思いますので、その辺のところは説明をしっかりとした上で正しいメッセージが伝わるようにお願いしたいと思うところでございます。
 以上です。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。よろしいですね、事務局、何かありますか。どうぞ。
【佐藤参事官】  ありがとうございます。それぞれの事業において、いろんな役割や目的があると思いますけれども、しっかりと文部科学省としてもそれぞれの中で丁寧な説明をしていきながら国民の皆様に御理解を得ていきたいと思っております。ありがとうございます。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。
 オンライン、髙宮委員、お願いします。
【髙宮委員】  ありがとうございます。このような非常に優れた最終まとめを作成くださいました委員の皆様と文部科学省の方々に厚く御礼申し上げたいと思います。このようなまとめが出ることによって、今後速やかに国際化に向けての政策がスピードアップして進むことを心より願っております。
 このうち、特に私が関心を持ちましたのは留学生の送り出しでして、このところの円安傾向のために急速に留学生数、減っている部分があるかと思います。そのことを想定し、さらに進めていく上でも早急なる対策が必要だと認識されていたところではないでしょうか。
 もう1点、私が大学に関して付言したいところがございます。それは一応、ここは大学分科会であるということもあって、高等教育部局がおまとめになったものですけれども、広く小学校以降の国際協力や国際的なイノベーションについて述べていらしたかと思います。その中で、ともすると海外で学位を取る場合、これは、私は非常に重要で望ましいと思うんですけれども、大学との間でコンフリクトする場合も少なからず生じるかと思います。
 例えばですが、途中で日本の大学を退学して海外大学で学位を取りたいとなったときに、それは日本の大学を退学という経歴が残ってしまうことによって、大学としてはあまり積極的に進めるにはシステム上に向かないかもしれません。この辺りは、大学にとしても海外大学で学位を取りたい学生を喜んで送り出すような何らかのシステム整備が今後進んでいくといいかなと思っております。
 例えば、今、各所で退学率とかの公表が求められておりますけれども、このように海外留学で中途退学する場合には、退学者の中に数を含めないとか、あるいは在籍年数、留学によって1年延びた分は、それを長期の在籍と認めないような、今のカウントの方法から即刻これらの大学の不利益を何とか軽減する方法というのはいくらでもあるのかと思いました。今後もっと大きなことも含めて、積極的に海外に出て行く若者の応援が進んでいくといいなと思っております。
 以上です。ありがとうございました。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。
 では事務局、今の件につきましてどうぞ。
【佐藤参事官】  
御指摘、御質問ありがとうございます。
 最初の点につきましては、まさにこの円安、それから海外における物価上昇において、留学の費用が非常に倍増していることを受けまして、実は今回のこのフォーラムで御提言いただいた前段の、昨年1回中間まとめで御提言いただいたことを受けまして、私ども、予算要求をさせていただいて単価の増というのを実現させていただきました。本当にこのフォーラムを開いていただいたおかげだと思っています。日本人の学生の要は派遣の単価の増、それが一定程度できました。
 それから2点目の、まさにその学位取得型と大学との間にコンフリクトという点については、おっしゃる点はあると思うんですけれども、最近は学生のモビリティだけではなくてプログラムのモビリティですとか、いろんな形のモビリティがあるかと思います。ぜひ多様な形態のモビリティを実現していく中で、いい意味でのグレインサーキュレーションというのを日本の中で、それから日本が世界と一緒に起こしていくということが望ましいかなと思います。
 最後の点についての留学すること、場合によっては日本の大学を退学してからアメリカなり、諸外国に留学することが不利益になる場合があるのではないかという御指摘については、改めて私どもも検証させていただいて、仮にそういうことがあるようであれば扱いについて留意していくとか、検討してみたいと思います。御指摘ありがとうございます。
【吉岡分科会長】  髙宮委員、よろしいでしょうか。
【髙宮委員】  はい、ありがとうございました。
【吉岡分科会長】  ありがとうございました。
 では、益戸委員、お願いします。
【益戸委員】  益戸です。どうもありがとうございます。
 この最終まとめの2ページのところの1点目の日本人の海外派遣という中に、若者の多様な成長を支える留学機会の提供という中で、中学校や高等学校段階からという表現が出てまいります。このまとめというのは基本的には大学が中心のものだと思いますが、昨今は小学校、中学校段階からの海外への留学をなさる子供たちもいます。そうしますと、これ、教育委員会によっては義務教育違反になりますよというような警鐘を鳴らしたり、ないしは、海外の学校は大体6月の初めには学年が終わりますから日本に帰ってきます。そうすると、まだ小学校、中学校の授業をやっておりますので、そこに地元の学校に入ろうとすると拒否されるケースも出ております。逆に、受け入れてくれる学校もあるやに聞いています。
 この辺は、きちんと文部科学省からこういう方針でやっているんだということを徹底していただいて、地方自治体においても、そういった子供たちの送り出し受入れがスムーズにいくようなしっかりした御指導をいただきたいなと感じました。
 以上です。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。義務教育段階の非常に大きな問題だと思います。事務局どうぞ。
【佐藤参事官】  ありがとうございます。
 御指摘いただいた点について、確認させていただいて、また文部科学省としてとれる対応を検討させていただきます。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。
 ほかに御意見、御質問等ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。それでは今の課題も含めて、事務局もよろしくお願いいたします。
 続いて、5の第13期大学分科会審議事項に関する議論の状況についてです。
 「知の総和」答申を受け、大学分科会の各部会で議論が進められておりますが、本日は質向上・質保証システム部会と大学院部会における議論の状況について、事務局から御紹介いただき、それについての議論を進めたいと思います。
 では、事務局から説明をお願いいたします。
【髙見高等教育政策室長】  高等教育政策室の髙見です。私からは、第13、今期の大学分科会審議事項のうち、質向上・質保証システム部会と大学院部会の議論状況について概要を説明します。
 前回4月23日の本大学分科会開催以降、分科会の下に設けられた質向上・質保証システム部会では2回、大学院部会では1回議論が行われております。資料5-1を御覧ください。
 質向上・質保証システム部会第1回では、1、今後の高等教育政策の方向性として、現在の延長線だけでなく非連続的な改革をしていくことが重要であること、高等教育だけでなく、それ以前の教育段階を踏まえた検討が必要であること。
 さらに2ポツ、認証評価制度の見直し、情報公開の改善として丸の1つ目ですけれども、設置認可から認証評価、情報公表というシステム全体の設計が求められること。
 丸の2つ目、評価の設計に当たっては人や組織を伸ばす視点が重要であること。
 丸の3つ目、質向上・質保証への関心が低い大学に対して厳正に評価を行う一方で、内部質保証が十分に担保されている大学には裁量を与えるなどメリハリが必要であること。
 丸の5つ目、データベースが整備され、データに基づいた大学の魅力の可視化が行われると、多様な視点から大学を選択する環境が整えられること。
 2ページに移りますけれども、丸の2つ目、現場では評価疲れ、評価負担を感じており、負担軽減が重要であること、学生の成長を測る際には間接評価といった評価を加えることを検討する必要があることなどの御意見をいただきました。
 また、2ポツ、学士・修士5年一貫教育の制度の在り方として、丸の1つ目、就活時期の問題にも焦点を当てる必要があること。
 丸の2つ目、学生の学習量を測る適切な基準について議論する必要があること。
 3ポツ、通信教育設置基準等の見直しとして、丸の1つ目、従来と異なり18歳の若年層も通うようになった中、質について議論することが重要であること。
 3ページ目に移って4ポツ、学生が主体的・自律的に学習するための環境構築の促進として、丸の1つ目、学生参画は世界的なトレンドであり、学生がいかに質向上・質保証システムに貢献できるかといった観点が必要であること。
 5ポツ、出口における質保証として丸の5つ目、マイクロクレデンシャルやオープンバッジでの質保証も課題であることなどの御意見をいただいたほか、6ポツ、その他として留学生、AIなどに関する御意見もいただいております。
 続いて、資料の5-2を御覧ください。質向上・質保証システム部会の第2回では学士・修士5年一貫制度の事例について説明があった後、意見交換の中では(1)学士・修士5年一貫制度の意義として、10代、20代における学ぶ力をつけ、志を醸成する必要があること、効率的に学士・修士を取るものではなく質保証が重要であること。
 (2)修業年限の配分や卒業論文、修士論文の位置づけとして、修業年限のため論文の質が落ちないようにする必要があること。
 (3)教養教育と専門教育との関係として、丸の1つ目、専門教育が教養教育を圧迫することにならないようにする必要があること。
 (4)魅力的なキャリアパスの実現として、丸の2つ目、修士を取ることによって自分の専門性を生かせる仕事に就けるなど、社会貢献やキャリアパスの広がりに期待を持てるようにすることなどについて御意見をいただきました。
 続いて、資料の5-2の2ページ目を御覧ください。この日には、もう一つの点として、有識者2名の方からアカデミック・アドバイジングに関するヒアリングを行った後、意見交換では(1)アカデミック・アドバイジングの位置づけとして丸の1つ目、アカデミック・アドバイジングも教育の中に位置づけること、教職員が理解することが重要であること。
 (2)アカデミック・アドバイザーの役割・確保・育成として、丸の1つ目、機能の異なる大学ではアカデミック・アドバイザーの役割が異なること。
 3ページに移りまして、(3)アカデミック・アドバイジングの方法といたしまして、丸の1つ目、アドバイザーだけでなく学生スタッフやAIも組み合わせた体制を整える必要があることなどの御意見をいただきました。
 続いて資料の5-3を御覧ください。大学院部会第118回では、(1)社会の多様な場での活躍、社会との接続の在り方として、丸の3つ目、博士人材が研究とエンジニアリングで行き来するような流動性を実現することが求められること。
 (2)大学院教育の質向上・評価の在り方としては、丸の1つ目、国際的な質保証の枠組みと相互の補完性を持たせる必要があること。
 (3)大学院組織の基盤強化の在り方としては、丸の2つ目ですけれども、学問の枠を超えた分野横断的な組織構築、人材育成が重要であること。
 (4)学士・修士5年一貫制度の在り方としては、丸の2つ目ですけれども、博士まで行きたいと思わせる学部教育が重要であること等の御意見をいただきました。
 最後に参考資料1を御覧ください。本日はこの参考資料1におきまして、前回の説明をいたしました第13期大学院分科会の審議する事項、それと併せて2ページ以降には今期の資質向上・質保証システム部会と大学院部会の主な論点を添付しております。これらの論点を中心に、本日は今後の高等教育の在り方について多角的な観点から御意見をいただけたらと存じます。
 私からの説明は以上です。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。
 それでは今日、これをメインに時間をとってございますので、どなたからでもと思いますが、当然ですがこの部会のメンバーの方々も当然参加されていて、今の事務局からの説明に加えて、何かまず部会のメンバーの方から追加の何かあれば御発言いただければと思いますが、よろしいですか。
 では、自由に議論を進めたいと思います。
 それでは、まずはオンラインで益戸委員が挙手されております。益戸委員、どうぞ。
【益戸委員】  ありがとうございます。益戸です。部会での活発な御議論の御報告、ありがとうございました。
 ついつい「知の総和」答申と呼んでしまいますけれども、答申のフルネームは最後に波線で高等教育システムの再構築となっています。どんな観点から御議論いただいても必ず結果に結びつくものと確信しておりますので、今後さらなる部会での活発な議論に期待をしております。どうぞよろしくお願いします。
 さて、質向上・質保証システム部会の御報告の中でアカデミック・アドバイジングということについての御報告がありました。これについては、とても重要性を感じておりましたので一言意見を述べさせていただきたいと思っております。
 従来から質の高い情報公表には専門人材が必要だということの意見が大勢であったと思うのですが、もちろん教育分野や研究分野についても教員の皆さんを中心に学習者をリードしていらっしゃると思います。ただ、今後の課題というのは、初等中等教育から卒業後の社会人までの連結をも含めた質の向上であると確信をしておりますし、私たちも、そういうつもりで議論をしていると思います。
 とすると従来、教育や研究、就職など、それぞれ専門分野として学内でのアドバイスは行われてきたのではないかと思うんですが、実はそれをつなぐのが、このアカデミック・アドバイジングなのかなという印象を受けました。
 そして、これは失礼な意見かもしれませんけれども、民間側から見ますと学内でのことだけではなくて、学外でのことをよく知っていることがこのアカデミック・アドバイジングでは非常に重要だと感じています。高等教育機関と民間企業の両方で勤務経験のある方というのは、まだまだ少ないのが現状ではないかなと思います。
 ですから、ぜひ民間企業出身の方が学内に入っていただいて、アカデミアの教職員の皆さんがサポートして学習者の学生生活や将来選択、そして履修のプログラムアドバイスなど、積極的に学内で連携する仕組みを定着していくことが重要だというのが第1印象として感じましたので、この点については、もう少し今後深く御議論いただいたらよろしいのではないかと思いました。
 以上です。ありがとうございました。
【吉岡分科会長】  益戸委員、ありがとうございます。
 何か、伊藤委員、どうぞ。
【伊藤委員】  部会長を務めてあります伊藤公平でございます。御意見ありがとうございました。
 アカデミック・アドバイジングというのは今回議論した結果として、いろいろなレイヤがあることは本当に明らかになりました。実はこの間、私学の在り方部会というところで浅野私学部長の下で早稲田大学を尋ねたんですけれども、早稲田大学も幾つかのレイヤを用意しているのに私は感心したんですが、まず、全面で学生が学生に対応する、学生がしっかりとトレーニングを受けて、その上で学生の質問に答えている。でも、その後ろにはしっかりと職員の人たちが控えていて、学生がちょっとでも戸惑う、または分からないことがあると職員にすぐ相談をすると。恐らく益戸委員が今、おっしゃったようなことは、それプラス、社会人の方のような方がそのような形で控えるような形でつくっていくような、幾つものレイヤがあることが実は重要なのかなということが、非常に私自身も勉強になりました。
 1人のアカデミック・アドバイザーで万能的に全てのアドバイジングをこなすことはできないということが、この間の部会で分かったことでございます。もちろん様々な履修の内容も分かっていないといけませんし、今のお話のように社会でのどのような方向性があるのか、または留学をしたときにどのような可能性が広がっていくのか、その一つ一つに関して、どのようないくつものレイヤを用意するかというのが大切であって、この時に学生の力を使うといった、いろんな工夫があるんじゃないかということとともに、今、御指摘いただいたような社会人の方々の知恵を使わせていただくのも一つかなと思った次第でございます。
 以上ですが、よろしいでしょうか。
【吉岡分科会長】  ありがとうございました。確かにアカデミック・アドバイザーの問題は、既存の教員、職員、学生という大学の枠組みをかなり変えていく要素があるだろうと伺っていて思いました。
 では大森委員、お願いいたします。
【大森委員】  ありがとうございます。大森でございます。今日はオンラインから失礼します。御議論ありがとうございます。非常に重要な御議論いただいていると理解をしています。
 今日の資料の5-1の2ページのあたり、認証評価の見直しのところで、これまでの御意見のところで、共通性と多様性の調停ということを考えていきたいという御意見があったということを拝見していて、これに共感しますという意見を申し上げたいと思って手を挙げました。
 学生の成長をしっかりと測りながら横と比較して見ていけるような形とか、それの重要性も十分理解した上で、それを否定するものではないんですけれども、教学マネジメント指針以降、各大学それぞれが定めたDPに即して、そのDPの達成というものを学修成果の可視化として、いろいろな工夫をしながら今、頑張って学修成果を可視化しようとしている、どこまで学生が達成したかということを明らかにしようとしている。教学マネジメント指針をつくったときの理念で言えば、DPがそれぞれの大学で異なるのであるから、その可視化の方法であるとか、そういったものは、どうしてもそれぞれの大学が工夫をしながらしっかりとやっていかなきゃいけないだろうという議論の下に指針ができていたと理解しています。
 そのことも大事にしないと、何かDPはもういいよと、それで、これからどういうふうにしてというのはこれから御議論があるんだと思うんですけど、例えば学生調査の結果さえよくなればいいんだよということでは、違うのかなとも理解はしているので、それぞれの大学がどういう目標を持って、そこからバックキャストしてカリキュラムをつくってという教学マネジメントの理念もきちんと位置づいていくというか、息づいていくというか、そういったこともあることが結構重要なんじゃないかなとは思っているものですから、その共通性と多様性の調停ということに賛同しますという意見でした。
 以上です。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
 それでは、本間委員、どうぞ。
【本間委員】  本間でございます。一つ前のお話になります。伊藤先生からちょうど早稲田大学の件を御紹介いただきましたので、少しフォローさせていただきます。
 実はアカデミック・アドバイザーとかの、学生さんが自分が学びながら、さらに教えるというところの、非常に両方にとって、何というんですかね、効果が高くて。例えば先生から質問をされて答えられなくて、もうごめんなさい、勉強が足りませんでしたなのですが、自分が教えているときに教えられている人から質問されて答えられないと、なかなかそれでは、ごめんなさいじゃ済まないというところもございまして。
 そういうようなところもあって、非常に教えられる側は先生よりも距離の近い方から教えていただくというところもありますし、教えている側も自分が成長するところに非常に良い循環があります。
 ただ、伊藤先生おっしゃられたように、そこの教える側の質保証といいますか、そこをどうやってキープしていくか、保っていくかというところが、また、これもなかなか課題ですし。
 また、もう一つ、学生さんは何しろ年々、年々卒業して入れ替わっていくものですから、既に入れ替わっている学生さんを教える側としたらアカデミック・アドバイザーが質保証するところもなかなか課題ではございますけれども、いろいろ試行錯誤しながらやっているところでございます。ありがとうございました。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。
 では、橋本委員お願いします。
【橋本副分科会長】  前回もコメントしましたが、今、学生も多様化しているし、大学も多様化している。そうした多様化の中で新しい発見やイノベーションが出てくるわけですから、多様化自体はすごく歓迎するべきだと思いますが、一方で評価をするということになりますと、一律の基準で評価することは多様化が進めば進むほど難しくなり、利益相反みたいなことも起こると思うんですね。また、評価結果は行動変革につながらなければ事務作業の負担だけ増えてしまうということになりますので、そういう意味でも非常に難しい。
 参考になるのか分かりませんが、私は保険業界の人間ですので監督官庁に金融庁というのがありまして、かつては形式的な基準やチェックリストによる適合性確認を重視して検査とか監督をしていたんですが、今は、大分変わってきました。金融機関や保険会社に対して守るべきプリンシプルを提示して、その実現手段については各金融機関なり保険会社なりの創意工夫や状況に応じた判断を尊重して、各金融機関は説明責任をしっかり果たすという、いわゆるプリンシプルベースアプローチに変わってきているんですね。
 これを、そのまま大学の問題に結びつけるのはなかなか難しいと思いますが、一つの考え方として、プリンシプルベースの評価というものを使っていくことによって変わることができるんじゃないかなと。すなわち各大学がそれぞれのミッションに応じて、どんな考え方で教育とか研究の質の向上に取り組んでいるか、あるいは、それぞれの大学の多様なガバナンスや教育の質保証の方法を認めながらも、その運用の中では大学に透明性あるいは説明責任を求めるような制度設計を考えていくことも一つの有効な方法じゃないかと思います。
 プリンシプルベースの評価への転換ということを目指すということであれば、大学の質保証の在り方も自らが自らの質をどう定義して、どんなふうにそれを保証して、しかもそれをどう高めていくかという形の評価へ転換していくという流れができるのかなと思います。
 以前にも御意見があったと思うのですが、大学側の負担軽減ということも大事な要素でして、例えば毎度網羅的な評価を行っていくんじゃなくて、十分な評価結果を得られた大学については、次回以降の評価については新たに取組を開始したものに限って、あるいは進捗に遅れが出ているものに限って、特定のテーマに絞って評価を行うといった、省力化といいますか、そういう工夫もしていくことができるのかと思います。
 大事なことは、外部評価を受ける側が義務として受けているようではなかなか進歩がなく、一種の健康診断といいますか、それぞれの体質転換とか体力づくり、いろんな自己変革の機会として活用できるような制度がうまく設計できればいいなと思います。そして、その中で大学内部の文化づくりができていけば、それが質の高い大学経営とか教育に結びついていくのではないかと考えています。
 専門外の意見ですけれども、そのように感じましたのでお話したところでございます。以上です。
【吉岡分科会長】  貴重な御意見ありがとうございます。非常に重要な御指摘だと思います。
 それでは続けて、古沢委員が先に挙手されていたので、古沢委員、お願いします。
【古沢委員】  ありがとうございます。古沢です。多岐にわたる部会の御報告ありがとうございました。特に出口における質保証というのは長年の懸案であり大きな課題で、解決の具体策はなかなか出てきにくいのかなと思うんですが、非常に期待しております。
 また、学生が主体的、自律的に学習するための環境構築については、確かにZ世代という要件もありますけれど、不登校の小中学生が34万人と激増している中で、高校生で通信制に通っている方も非常に増えていて、そこから一般大学に進む方も非常に多いので、その辺りも含めて大学でどのように、そういう方の力を引き出していくかということが大切だと思います。
 それで、この4番と5番に密接に関わると思うんですけれども、高大接続の視点というのがどこかで必要ではないかなと思いまして、高大接続といってもいろいろな視点があると思うんですけれど、高校生の学力が多様化していて、高校1年生の秋から文系、理系を選択している高校が多い状況もあまり変わっていませんし、一方で大学入試の在り方は非常に大きく変化しております。
 高校教育無償化で今、高校の在り方というのが大きく見直される機運も出てきているので、ぜひ高大接続をどうするか、入試の在り方も含めて、どこかで議論する機会があればいいのではないかと思います。
 以上です。
【吉岡分科会長】  大変難しいことだと思います。ありがとうございます。
 では栗本委員、お願いします。
【栗本委員】 栗本です。ありがとうございます。質向上・質保証システム部会における議論を全て拝見させていただきました。ありがとうございます。
 今回、質の保証のみならず向上という2文字が入ってきたことを受け、大学が主体的に教育と研究に関する環境面や成果面に関するKPIを、ディプロマポリシーに基づいて設定し、次回の5年、7年後の認証までに改善する取組を導入する視点は、国内外の認証を比較しても重要だと思います。
 現状の機関別認証は、どこか他人ごとになってしまいがちです。学内で国内認証のことを議論し合う教員は稀だと思いますし、事務局に一任ということになりかねません。学部別であったり学問領域別であったり、もう少し各部局の特徴が浮き彫りになるような形や仕組みに修正することが大切ではないでしょうか。そうすることによって、教員の認証評価に対する距離感が近くなると思います。
 公表方法に関しても議論があるようです。現在は大量の文章で報告書が出ますが、もう少しシンプルな公表の方がよいのではないでしょうか。例えば、国際的な認証では、認証期間に差をつける方法もありますし、それ以外にも英国であれば、教育成果を確認しながら数段階の評価を行う、そのような手法も存在します。国際的な事例も参考に検討されてもよいのではないでしょうか。
 以上が認証評価に関してで、もう1点、5年間の学部大学院一貫制度についてコメントしたいと思います。
 確かに、英国やフランスには学部3年+修士1年、もしくは3+2という制度が存在します。しかしながら、前提として雇用環境が日本とは全く異なることを理解しておかなければならないと思います。
 もともとフランスは英国と同様に学部教育が3年間の国です。そして学部の上に1年もしくは2年間の大学院が続く教育制度です。背景としては、3年間の学部教育のみでは満足のいく就職ができず、実際、就職率は大学卒業後半年経過しても7割程度です。そこで、1年もしくは2年間、修士課程で学びながら、期待している就職先に進路を得ていくように制度設計されています。大学院の中にはインターンシップもしくは海外で就学体験を行う仕組みも用意されています。
 そう考えると、国内の現状4+2で制度設計された教育課程を単純に圧縮して社会に送り出すことが、果たして私たちの雇用環境に照らし合わせた場合に、社会や当該学生の利益につながるのだろうか、もしくは高校生の時点で5年後の自分が想像できるのだろうか、あるいは、国際学生を招き入れる上で魅力的な制度なのか、を考えるべきです。一貫教育で短縮するのであれば、大学入学後に修了年限の選択を認める制度運営のほうが、実態に合いやすいとも思えます。
 ちなみに、日本と同じ4+2の米国でも、近年では修士課程を短縮した1年制の修士課程が幾つか存在します。例えば領域特化型の場合やフルタイム型の場合は1年間で運用される場合もあります。そういった2年制と1年制の位置づけがあってもよいかと思いますし、戦略的に博士課程の在籍者数を増加させる手段にもなります。突然、博士課程の数は増えてきません。先に修士課程全体のボリュームが増えることが大切ですので、一度そのような議論があっても良いのではないでしょうか。英国であれば修士1年間、博士3年間です、参考にされてはいかがでしょうか。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。
 それでは、北畑委員、お願いします。
【北畑委員】  北畑でございます。2ページの学生の成長を測るというところでございますけれども、6月10日にワーキンググループで各大学からヒアリングを受けまして専門職大学の考え方、詳細に申し上げました。そこは繰り返しませんけれども、全体の中で大学の教育力は、要するに学生の成長力のところで測るということなんだけれども、その成長力を測る尺度というのは非常に難しいんだという議論がありました。
 ワーキンググループの先生方から、逆に、学生の成長力を測る尺度があったら教えてもらいたいと言われて、それで大学側から、いや、それはあなたのほうで考えていただくことでしょうというやり取りがあったんですが、そういうやり取りで見られるように、大学の多様性を踏まえながら公平公正で納得感のある評価基準をつくるのは大変難しい作業かなと思います。
 それで私どもの大学に戻って何か知恵がないかということなんですけれども、専門職大学というのは企業内実習600時間というのが特色で、定性的な感じでは、この企業に出すことによって学生は物すごく伸びます。学習意欲も高まりますし、それから職業意識も高まるということで、これを何とか評価基準で入れる項目はないのかなという議論をしてまいりました。
 実習で鍛えられるのは思考力、それから判断力、表現力という社会で必要とされる能力、これは目に見えて増えるんですけれども、これを客観的な尺度にできないかということで、ごく一部なんですけれども表現力の中のコミュニケーション能力ですね。これは民間企業の社員に対して、コミュニケーション能力を測るという調査機関みたいなのがあるんで、これを大学で一遍入れてみようかということで、そういう試行錯誤を始めました。
 取りあえず1年生のコミュニケーション能力をまず測ってみて、4年生のときにどこまで伸びたかというのをやれば成長度の一つの確度ですけれどもできる、こんな細かな工夫を、たくさん知恵を出していくということかなと思いました。
 2つ目は、1ページに書いてあります評価というのは人や組織を伸ばすための評価でしょうと書いてある。全くこのとおりでありまして、評価に対応するということは重要なんですが、評価をきっかけにして大学の教育力を高めていかなきゃいけないというのが本来のことだと思います。
 それで、いろんな大学が試行錯誤をしておられると思いますので、そのベストプラクティスをぜひ文部科学省さんで集めていただいて公開していただいて、我々が参考にするということで全体の大学の教育力が上がっているんじゃないかなと思いました。
 それで、文部科学省さんで学生のキャリア形成支援活動の表彰制度というのがあるんです。これは学生の能力伸長に寄与するいろんな教育をやっている方のグッドプラクティスを表彰すると書いてありますので、こういう制度が少し拡充していただければ、いろんな大学が他の大学のいいプラクティスを参考にして教育力を高めていくということになりますので、こういう表彰制度をぜひ御活用というか、普及させていただきたいと思います。
 以上でございます。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。
 まず、いろいろ手があがっているので、御意見を伺っていきたいと思います。
 森委員、お願いします。
【森委員】  ありがとうございます。今、いろいろと御意見をいただいております。部会の副部会長を拝任しておりまして、その下で今、実際に認証評価をどうするのかというワーキンググループの長を務めさせていただいております。
 いろいろと今までワーキンググループでも皆様、ウオッチしていただいていると思いますけれども、各種ヒアリングをさせていただく中で本当にどうやったらこの共通性と多様性を担保できるのかと、みたいなところを今、ワーキンググループでも考えているところでございます。
 そのときに今、御指摘ありましたようにプリンシパルベースドアプローチですかね。大変すばらしい考え方ですので、ぜひ大学分科会の中でもこういったようなものはどうかといったような御意見をいただきまして、ワーキンググループにまずは持ち帰りたいと思っておりますので、また、御意見をいただければと思います。
 また、その中で多様性というのは非常に重要だと思っておるんですけれども、先日も昨日ですかね、イギリスのTEFの事例の中で質の保証をした上で向上を図っていくと。質の保証のところはナショナルスタンダードなものというものが存在するだろう。私どもも日本の大学といたしまして、各指針を出すようなところに関しましてはスタンダードなものがあってしかるべきと思っておりますし、資質能力のところに関しましても学習力と少しアップデートしなければいけない必要性があると思いますけれども、そういったようなものも考えていかなければならないのかなと思っております。
 その上で多様性といったようなもので、それぞれの皆様のグッドプラクティスを集めていって、そういったようなものを公開していくことが重要と思っておりますし、それらが先ほど御指摘ありましたように高大接続の中で、または大社接続の中で、大学がこういうことをやっている、こういうことをやっている大学だからといったようなところの特徴がつまびらかになったらいいなと思っているということでございます。
 あともう1点だけ、申し訳ありません、これはワーキンググループ長とは全く関係なくて資料5-1の2ページのところの学士・修士5年一貫教育のところで、部会でも私から意見を申し上げたところでございますけれども、まず、これはストレートマスターを育てるには非常に良いシステムであるということを申し上げたいと思っております。
 なかなか視野が狭い学生たちに、この先、何があるのかといったようなものは制度として見せるということは重要、一方で部会でもお話ししましたように、例えば分厚い中間層を育てている大学の中で、大学の中でようやく意識が芽生えて、そして大学院進学を考えると、こういったような学生が少なからずともいると私は認識しております。
 その場合に、先ほどの大学院生をもっともっと増やそうといったときに、外の海外からだけではなくて中の学生たちの掘り起こしをするためにも、5年間一貫だけではどこに入ったらいいのかなということ。これは学士入学なのか、修士での入学なのか分かりませんけれども、日本の大学同士の連携といったようなものも考え得るのかなと思っております。
 今、ハイエンド人材を育てておられる多くの大学の大学院の中では、他大学からの進学者が非常に多いのではないかと思いますので、そういったような学生たちにも、ぜひぜひ学びのホッピングができるようなシステムができたらなと思っているということでございます。
 以上でございます。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。
 では、ごめんなさい、田中委員お願いいたします。
【田中委員】  田中でございます。遠隔から失礼いたします。
 先ほどからの学士・修士5年一貫の内容についてなんですけれども、学問の固有の条件というか、固有の性格というものがあると考えていて、全てのジャンルにストレートマスター的な考え方が適用できるのかというところで、一つ例を挙げさせていただきたいと思います。
 看護系の大学院ですと4年間で学士を取るということなんですが、その4年間で学んだ後、現場を知ることによって修士、博士で学ぶための課題とか、そういったことを見つける、見つけたことを修士の2年、博士のさらに3年というところで深めていって、それを現場にフィードバックするという、その学びの構築のプロセスというものの過程において臨床現場を知ることが重要な動機づけであり、学問の深化に寄与するものとして位置づくところがあるんですね。
 なので、学問のジャンルによっては、ここでは人社系に限ってなのか、そこが議論のところとして私がよく理解できていないところがあるんですが、例えば理系のものづくり系もそうなのかなと考えたりするんですけれども、現場に出向くことによって学んでいかなくてはいけない、学ぶ必要性を感じる、あるいはみんながそういう機運の中で高め合っていく。そういうところを考えると、この一貫制度は、制度にマッチする学問領域もあれば、継続的に学ぶことで進化する学問領域もあるという点も考えていかないといけないというところを思いましたので、発言させていただきました。
 以上でございます。
【吉岡分科会長】  では、濱中委員お願いします。
【濱中委員】  濱中でございます。資料の5-1、最初の1の3つ目の丸についてです。今後、人口減少、人手不足の中で全員がどこかには就職できるようになったとき、学位の価値が問われる。日本は過度の年齢主義だが大学の人材の流動性をいかに高めていけるかは大きな課題と書かれています。とても大事な観点です。
 「知の総和」答申にも引き続きまして、人口減少を柱とする今後の在り方の検討は大きな課題であり、特に過度な年齢主義をどう打破するのか。もっと具体的に言うと、社会人にとってのキャンパスというものをどうするのかということはもっと強く議論していくべきではないかと考えています。
 ただ、今回の資料5-1、5-2、5-3につきまして、現状ではまだ扱っていないだけだということなのかもしれませんが、流動性とか、社会人だったりとか、過度な年齢主義の問題といった観点が十分に含まれていないように見受けられます。前回の中教審の大学分科会のときも結局、社会人学生の問題は十分に議論されなかった印象を受けております。
 先ほどから高大接続の話は出てはいますが、高校生のみならず、社会人の観点をもっと意識していくべきではないかと考えています。社会人がキャンパスに多くいることを前提にすれば、既に挙がっている観点に関しても、見直しが必要になると考えられます。追加すべき切り口も出てきますでしょうし、また、本日の議論にもっと引き付けますと、先ほど挙がったアカデミック・アドバイジングについても、「社会からの視点からのアドバイジングも大事」ということであれば、社会人学生のありようによって、アドバイジングのありようも変わってくるように思われます。社会人学生が多ければ、学生同士の関係性の中にアドバイジングを組み入れることもできるはずです。
 いずれにしましても、社会人だったりとか、流動性を高めるためにやらなければならない制度整備というのはまだ多く残されているはずで、今回の大学分科会では、そうした視点についても積極的に取り上げていただけたらなと考えております。
 以上です。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。
 それでは山口委員、お願いいたします。
【山口委員】  佐賀県知事の山口です。そうですね。今日は悩みを聞いていただこうかなと思っています。佐賀県で高大断絶です。簡単に言うと、佐賀県から四大には毎年3、500人ぐらい行くわけですけれども3、000人が県外に出てしまいます。うちの高校生、大学でそれぞれどんな勉強しているのかな、佐賀県とのいわゆる産業界とはまた、これは断絶をしているわけでありまして、だから高大連携というのはすごく大切だなと思っております。佐賀県にある今の大学と今度つくろうとしている佐賀県立大学というものを、この地方、佐賀というところから新たな価値を生み出すためには、どうしてもこの大学というのが中核になりたいと思うわけなんです。
 先ほどお話に出ていた、今、高校でも私学が無償化という流れになってくると、何が起こるかというと大体、地方というのは県立上位なんですよ、都市部と違って。みんな県立に行こうと思っているんだけれども、県外の私立がこれで、行きやすくなるわけなんです。そういう意味での危機感もあって、我々は県立大学が同じような教育をするんじゃなくて、私学と同じようにそれぞれ唯一無二の、もう個性を持ったような県立高校にならなければいけないということと、そこと併せて佐賀県の大学群との高大連携を進めていくところが大きなポイントになって。そこに、しかも教育の断絶ではなくて、高校の時代からもう自発的な学びというものが取り入れられるようにという中で、新たな県大に高校の教育現場にも行ってもらうという、そこの連動性を高めていきたいと思っているのが1点。
 それから、要は佐賀県の産業界とのアクセスを強い大学にしたいと思うわけなんです。それが非常に大きな強みでありますし、そういった意味で、新たな産業界で働いている皆さん方が大学と行き来するという、そこの部分を大切にしたいと思っていて。そうしたときに、この今日、何か認証評価の制度設計も議論しているということなんですけれども、我々、そういった意味では伝統的な学部構成という形にはならないと思っていて、新たな価値を生むためには新たな学びをしなければいけませんからという、そこの想定をしたときにこの評価ってどうやってやってもらえるのかな、いや、要は新たな挑戦をする、そういう学びをどう誰が評価していくのかなというところが、何か若干、今もやもやしているところなので、そういう観点も含めて議論いただけるとうれしいと思います。
 地方からの悩みでございました。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。
 では廣津留委員、お願いします。
【廣津留委員】  ありがとうございます。制度的な制度設計的なお話については皆さん、御専門の方がたくさんいらっしゃいますので、少し別の視点で国際的な競争環境下で活躍できるようにという言葉もありますようにという点で一つ、自分の大学の時の経験をお話ししたいと思うんですけれども、簡潔に言うと、もう少し成果をアピールしたほうがいいんじゃないかというお話でして。
 私が大学の時に世界中から米国の大学で人材が集まってきていたわけなんですけれども、まず、分野横断的な組織構築という言葉もありますけれども、まず、食堂とかで勉強していると全く分野の違う学生たちが同じところに集まって、自分たちの研究している内容をしゃべっているわけです。そこで共有した内容が後々自分の分野のコラボレーションですとかにつながっていくことが多々あったんですけれども、何より私がその環境で優秀な学生を見ていても思うことが、必ず顔を合わせると自分のアチーブメント、自分の達成したものについて必ず自慢じゃないんですけれども、達成したことについてアピールしてくることがありました。
 私も自分の音楽的な機会をいただいたときに、ずっと憧れていたミュージシャンとの共演についてお話をしたときに、私よりも周りの学生のほうが喜んでくれたということがありました。それは、私は日本で育った身としてかなり驚きがありまして、恐らくそれは皆さん、自分の分野でそこに立つまでにたくさんの努力があって、そこを違う分野であるにせよ、ほかの分野で極めている人へのリスペクトがすごくあって、そこを喜んでいるという雰囲気がありました。
 何が言いたいかといいますと、まず、この自分の成果をアピールする雰囲気が日本にいたときはあまりなかったように感じまして、これは海外の人材が集まった場ですともう必須というか、これがないとせっかく成果があっても全く伝わらないところがあると思います。
 これは個人レベルでももちろんそうなんですけれども、大学レベルでもたとえ大学内での成果ですとか質が向上したところで、その成果を周りに発信するという力がないと海外、国際競争力を上げていくという中で、なかなか伝わりづらいんじゃないかなと思います。この感覚が恐らく各大学さんも発信はしているよとおっしゃると思うんですけれども、この感覚の差といいますか、アピールレベルがもう全く違うと感じています。
 例えば音楽界にしても、これまでアカデミアと同じ部分と重ならない部分とあるかもしれませんけれども、音楽界もこれまでだと、例えばうまく演奏ができていれば、それで仕事が来て安泰という世界ではあったんですけれども、それがもう今では待ちの姿勢では仕事は来ないですし、どれくらい自分にどういう個性があって、どういうところがアピールポイントかというところを自分の世界の中だけではなくて外にも発信していかないことには、これは全く認められなくて仕事もない状況に変わっています。
 なので恐らく、全く同じではないかもしれませんけれども、アカデミアの世界でもこれまでと同じようにやっていてはなかなか伝わりづらいところがあると思います。今回も質向上・質保証という点で御議論されていますので、せっかくここで大学の中、また、日本の中でできた功績、成果について海外にどんどんアピールしていくという点が、あと、大学側、教える側がこれをロールモデルとなって示していく視点が大事なのではないかなと思いまして、経験を共有させていただきました。
 以上です。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。
 それでは中村委員、お願いします。
【中村委員】  中村でございます。2つお話ししたいんですが、一つは学生の主体的知的な学習をするための環境につきまして、先ほどの古沢委員、および山口委員とかなり似ているんですけれども、高大連携は、本当に必要だと思います。さらに言うと小中高大連携で、いわゆる義務教育の段階から例えば総合的な学習であるとか、あるいは探究型であるとか、その延長上で大学でもPBLを中心、課題を基にしながらの学習をしていくということが、これからの姿かなと思っていますし、そのことによって学生が主体的に学んでいくと思っています。
 例えば大学の中で学ぶよりも、先ほどもお話に出ていますが、社会に出てインターンシップで2週間、3週間ではなくて、先ほど御発言された大森委員の大学のように、もう少し長く、例えば3か月とか半年ぐらいの実習を行いながら力をつけていく。その中で、実際にその場に学生たちが入って考えていくことがこれから大事なのかなと思いますし、そういう意味では産官金と大学との連携、非常に大事になってくると思います。
 2つ目のお話は、学士・修士の5年一貫制度なんですけれども、私は、これはすごく大事だと思っていますし、濱中委員も先ほどおっしゃいましたけれどもリカレント、リスキリングを考えたときに、ストレートマスターもですが、この場合でも1年制というのは大事になってくるのかなと思っています。社会に出ていますので、ある意味、人間としての素養を持っていますから、その上で本当に専門的なものの実態を兼ねて学んでいく。そういう意味では、私は、例えば1年制でいろんな資格や、もちろん学位も、あるいは免許も取るということもポイントになってくると思います。中教審の中でも話題になりましたけれども、例えば教員免許を1年制で取ってみる、教職大学院でということも非常に大事だと思っていますし、この点は、先ほどと同じように学び直しの部分でもこれから先、産官学金の連携というのは本当に大事だなと思っております。
 以上でございます。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。
 では、和田委員、お願いします。
【和田副分科会長】  ありがとうございます。金沢大学の和田でございます。私自身は大学院部会の会長を拝命しております。御覧いただきました資料の5-3について、大変活発な議論が行われたということを申し上げたいと思います。
 この中でも時間軸、特に中長期の時間軸も含めて大局に立った議論がされたと思っております。さらに先ほどから議論されております質向上・質保証システム部会と重要なところは一致しております。その辺も重ねながら議論が進んでいることも申し添えます。ありがとうございます。
 その点で2つほどお話をしたいと思います。一つは大学院を考えるということは、入り口と出口を見通したトータルな俯瞰的な視点が必要だということを感じています。先ほど来、学部からどのような形でつなげていくのか、高大接続をどうするのか、議論されています。ちょうど今、中村委員からも初等中等教育という話が出ました。少子化になりますと初等中等教育からの俯瞰した視点というところでの教育システム、ここは重要なんだと思います。
 そして出口を考えますと、これも先ほど来、議論が出ています出口の質保証、あるいは社会の認知、それを踏まえて、先ほど来から出ています社会人の大学院とつながっていく、こういった俯瞰的な流れも必要なんだと理解をしています。
 2つ目に関しましては、博士課程までどうつなげていくのかという点なんだろうと思います。この中で、学士・修士5年一貫教育制度が議論されています。例えば自然科学系であれば4プラス2プラス3、このどう枠組みを考えていくのか、特に2プラス3の大学院のところをどうつなげていくのか、例えば留学をしても留年しない仕組みをどうやって取り入れていくのか、こういったところも議論の対象になってきています。
 ここまでで出てきていませんが、6年制の学士課程に接続する4年間の博士課程があります。これをどのような形で研究力を上げるかも含めてつなげていくのかの議論も今後必要になるだろうと思っています。
 以上でございます。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。
 では松下委員、お願いします。
【松下委員】  ありがとうございます。私は質向上・質保証システム部会の委員でもありますので、もう個々に意見は反映されているんですが、今日は皆さんの御意見を伺っていて新しくまた申し上げたいことが出てきたので意見を述べさせてください。
 大きく3つあります。1点目は先ほど田中委員も少しおっしゃったんですけれども、5年一貫を考えるというときに分野による違いというのがあるんじゃないかということです。例えば卒業論文とか卒業研究がかなり重要な位置づけを持っているような分野、あるいは実習が重要な重みを持っているような分野ですと、なかなか3年プラス2年というのはやりにくいのではないかなと思います。
 一方で、先ほどお話があったように、社会人としてかなりの経験を積んでいる方が、それを何らかの形でアウトカムとして認められるような仕組みがあれば、修士が2年でなくて1年で大丈夫ということもあるかもしれません。ですので分野による違いとか、あるいは、もともと入ってくる段階での経験とか能力をどう評価するかということによって、5年一貫ということがどれだけ質向上・質保証ということと相反するものではなくて、質向上・質保証しながら、なおかつ年限を短くすることが可能なのかなということを考えないといけないかなと思います。
 2点目は、北畑委員がおっしゃったコミュニケーションの測定、評価というのは可能なのかという件です。これについては日本でも海外でも様々な標準テストも考えられています。そういったものは大体、分野を問わず使えるということになっているんですけれども、ただ、これも分野による違いというのも考える必要があるかなと思います。
 医療系ではOSCEのようにシミュレーション場面を設定して、そこでの患者さんとのやり取り、まさにコミュニケーション能力を見るような、そういう評価方法も開発されていますけれども、それぞれの分野によってどういうコミュニケーション能力を求め、評価しているのか、いくのかということです。まさに共通性と多様性ということで、共通する部分もあると思うんですが、分野の違いというのもあるのではないかという感じがします。
 それから3点目ですけれども、これは先ほど廣津留委員が、それぞれが卓越性を求めて競い合い、そのアチーブメントに対して、みんなが喜び合うような風土があるというお話をされたんですけれども、そういったものを評価として考えていくときに、どなたか先ほどおっしゃった、誰が評価をするのかということです。これまでは教員だったり、あるいは外部評価だったり、あるいはインターンシップ先の方だったりということが結構あったんですが、学生自身が評価するということも非常に重要になってきます。
 アピールするというのが日本では何となくやりにくいようなところもあるんですが、これは大森委員の前橋国際大学が進んでやっておられるポートフォリオ評価などは、まさに自分が大学で学んできたことをずっとためていって、それを例えば就活で使ったりというような形でまさにアピールしていると思います。
 その場合は学生自身が評価の素材を集め、自分で評価をし、また他者に対しても開いていくという、そういうやり方をとっているわけで、そういうことも考えることで、日本でもアメリカとは違うかもしれませんけれども可能になるんじゃないかなと感じました。
 以上です。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。
 小野委員、お願いします。
【小野委員】  ありがとうございます。私からは大学の一研究者、そして一教育者として、特に大学院生の教育と博士人材育成について2点コメントさせていただきます。
 1つ目は、大学院生の教育に携わる研究者の置かれている環境を改善しなければ、質の高い教育はそもそも実現できないのではないかという点です。私自身もそうですが、任期付きの不安定な雇用の中で、研究・教育の時間を十分に確保できない状況があります。教育は評価されず、研究は短期的成果を求められる中で、より良い教育を目指すことが難しくなっています。解決方法はいろいろ考えられますが、バックオフィスの充実や役割分担の明確化などによって改善を図る必要があると考えます。
 また、大学教員は研究者だと思われがちで、教育者である側面が社会に十分理解されていないという現実もあります。研究者が劣悪な環境にあることはニュースなどで取り上げられる一方で、大学で学生を教育している立場が厳しい状況にあることについても、社会的な理解を得ていく必要があると考えています。
 2点目は、研究者個人が獲得する外部資金に依存するのではなく、教育機関が研究教育用の予算を十分に研究室へ分配し、大学院生が質の高い教育を受けられるようにすべきだという点です。大学院教育は主に研究室で行われますが、その運営は大学からの運営費交付金と教員個人が獲得する外部資金に依存しています。ところが、運営費交付金は年々削減され、外部資金を獲得できなければ十分な教育が行えないという状況にあります。
 加えて、競争的資金は申請コストが高く、採択率も低いため、獲得できるかどうかは直前まで分かりません。中長期的な視点が求められる教育においては、そもそも競争的資金と教育は相性がよくないのではないかと考えます。大学院教育が研究室で行われている現状を踏まえ、社会的理解を得つつ、そこに安定的な予算を確保していくことが重要ではないかと思います。
 私からは以上、2点となります。
【吉岡分科会長】  では、杉村委員、お願いします。
【杉村委員】  ありがとうございます。今日は冒頭、遅れて参加させていただきまして大変失礼いたしました。私からは、大学院部会でも取り上げさせていただいた資料の5-3の一番最後(5)の個所につき、発言させていただきたいと思います。
 コロナ禍で世界の高等教育における地政学的な変化とその影響が顕著になっております。現在、留学生の送り出しや受入れは、日本においても、送り出しも受入れもほぼコロナ禍前に戻っております。しかしながら、今後より重要な課題となるのが、地政学的な変化というてんではないかと思います。コロナ禍とは関係なく、政治や経済の動きによって、今日では高等教育をめぐる動向も大きく変化しております。先日参加いたしました全米の国際教育協議会NAFSAにおいても、国際関係の変化により留学生の動きが大きく変動するなかで、各国とも、送り出しや受け入れの数よりも、今はいかに教育の質を重視し、自国の教育政策の中で高等教育を維持していくかということに懸命になっている様子が見てとれました。
 特に技術の流用、知識の転用、デュアルユースの問題などは、多くの国際共同研究が行われる中で、気に留めなくてはならない問題となっています。これらの問題は、かつて国際化が議論し始められた頃にはあまり気にされていませんでしたが、今では非常に大きな課題になってきていると思います。
 本問題に関しましては、文部科学省をはじめ、内閣府、外務省、経済産業省などが非常に注力されているかと思います。ガイドラインの作成の準備も進んでいるように伺っております。今後は、日本人の海外留学あるいは海外からの受入れを促進する一方で、教育研究をめぐるリサーチセキュリティーやリサーチインテグリティの問題に、どのように対応していくかということが非常に大きな懸念事項になってくると考えます。ありがとうございました。
【吉岡分科会長】  では、髙宮委員、お願いします。
【髙宮委員】  ありがとうございます。質向上・質保証部会の先生方、また大学院部会の皆様もいろいろおまとめありがとうございました。かなり有益な意見がたくさん入っていて感嘆するところが多くありました。
 そのほか本日の会議資料を見ておりますと、先ほどのグローバル化の話であるとか、認証評価のところとかで、いろいろな議題によっていろんな緻密な話し合いが行われていることが分かって、本日はどうしようか考えていたところなんですけど、漠然と今後どういう問題に焦点を当てていったらいいのかというのがかえって悩ましくなった次第です。
 最後に2つだけ本日は申し上げたいんですけれども、一つは、1点目は全国学生アンケートが今度、このたび本格的に稼働するという話がありました。学生目線からの学生の自主的な学習を進めていくことは次なる課題になっておりましたので、このアンケート結果というのを非常に注視して、どういうことが学生に望まれており、どういうことが学生、課題として考えているのかということを、ここから読み取りつつ、あるいは今後ここに何かしら、こちらが教育方針を決める上で知りたいことがあったりしたら、少し疑問を提示するような方法で有効活用して教育方向性を考えていくのはいかがだろうと思いました。
 あと、もう1点に関しましては今までのディスカッションの中で、区切りをつけて例えば大学院と大学であるとか、高校と大学であるとか、そういう枠組みを持った上で、その中でどうしたらいいかと話合いが進んできているわけですけれども、どちらかというと今回の話合いの中では、その枠組みの境界の部分についての揺らぎが大変問題になっていて、焦ってこの枠組みを大前提として考えるよりも、もう少し大局的な視点から枠組み全体のありようというのを考える必要があって、その視点というのが今後検討の中でもっと積極的に盛り込まれてよろしいのではないかと思った次第です。
 以上でございます。ありがとうございました。
【吉岡分科会長】  ありがとうございました。
 志賀委員、お願いします。
【志賀委員】  ありがとうございます。本日、急遽オンラインになりまして失礼します。私から認証評価の在り方について、繰り返しになるかもしれませんが1点だけ申し上げます。
 これまでも私、現在の認証評価機関は器を測っているにすぎないとか、あるいは教育のシステムを測っているにすぎないとか、いろんな表現で同じような趣旨のことを申し上げましたが、改めまして今日の資料や議論にあって表現を変えさせていただきますと、現在の評価機関というのは大学という組織の質保証しているのであって、学生の質向上というのは、それにつながってはいるけれども別案件であることを認識した上で今後議論をしていただきたいと思います。
 例えば、よその評価機関は分かりませんけど、大学・短期大学基準協会では評価基準の一つとして、学習成果の獲得状況をGPA分布とか単位取得率とか進学率とかいった量的、質的データを用いて測定する仕組みを持っている観点はあるんですけれども、そのデータがいいデータだからといって記述としては高く評価すると書くこともありますけれども、段階的評価として高いといったことまで踏み込んだことはしていません。あくまで各大学が学習成果とか三つのポリシーを定めて、それに基づいた教育をしているかどうかということのシステムを見ていると。それに伴って学生がどうなるかということは、良いデータが出ていれば記述としては優れた取組と書けるかもしれませんが、それを定性的、定量的に判断して段階的評価というのは極めて困難であることを繰り返し申し上げさせていただきます。
 正直、いろんな議論を詰めていっても今の多様な分野でいろんな事情があるとか、そういう御意見もある中では、これ以上を評価でできるかなと、つまり自分で各大学が決めたルールを自分で動かしているか以上のことがどこまでできるかというのは、今日の議論を話していても大変だなと思いましたが、もし進めるのであれば、それらも明示しないと混乱が出るんじゃないかと思ったので、趣旨は繰り返しになりますが発言させていただきました。
 以上です。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。現在、挙手されている委員の方は以上だと思いますが、発言されてない方等で今、発言されたい方があれば挙手していただければと思いますけれども、取りあえずよろしいでしょうか。
 私からも一言。2つの部会、大変大きな課題を議論されているということで、ありがとうございます。事務局がまとめてくださった主な意見というのを見ただけでも次の一歩になった途端に方向がかなり調節するのも難しいといいますか、かなり根本的に違う方向を向きかねないといいますか、それは悪いことではないと思いますけれども、そういう議論をはらんでいるということで、これからの議論を詰めていただければと思います。
 学士・修士の5年制のお話なんかにも関わることですけれども、一つ非常に重要なことは、これは認証評価にももちろん関わるんですが、日本社会における学位というものの実質化というんでしょうか。日本で学位というものがきちんと評価されていないという言い方をしてもいいかもしれません。
 大学院を出ても、修士持っていても、博士持っていても給料が上がらないのは一番分かりやすい話ですけれども、そうでもなくても文系等でも、要するに学位というのが何であるのかについてのコンセンサスが必ずしもできていなくて、結局のところ、卒業した大学であるとか、日本の大学、入学すれば卒業できる仕組みであることを前提にすれば結局、入学した大学というのがずっとあとをついて回るような、そういうことがあって、それを変えていくことは非常に重要だろうと伺っていて思いました。
 それは別の言い方をすると大学間の学生の流動、あるいは、もちろん国際的なものを含めても、その流動性というのをどういうふうに確保していくのかということが一つの課題だろうと思います。
 それから学士・修士についてのところでもう一つ考えたことは、日本は、これは大学だけではなくて、要するに学校制度全体の問題に関わっていて、つまり高大接続ということで言われている議論でもありますけど、ここでいうと全体の問題で、これ、日本の大学って名前自体が小中高大となっていて、何か大学は大きい学校というような、そういうイメージが付きまとっているということかもしれませんが、実は高校までと大学のところにかなり大きな断絶がある。
 先ほどの議論にありましたけど、幾つかの国の話が出てきましたけど、それぞれの国、大学の社会的な位置づけというのはかなり変わって、違っているわけですね。よく欧米ではと言いますけれども、例えばヨーロッパとアメリカとでは大学の仕組みは実はかなり違っている。それから例えばフランスなんかだったら高等教育は大学だけではなくてグランゼコールのような、幾つもの制度が複雑に絡み合ってできている。ドイツもそうですね。ヨーロッパは割とそうです。
 それで言うと、5年制にした場合に例えば教養教育の圧迫にならないかという議論が、意見があったということですけれども、例えばフランスなんかだったらバカロレアというのが高校段階の試験で、あれは本当に教養教育というか、教養教育の成果を測る、ほとんど哲学問題のような問題が出るということで有名ですけれども、そういう仕組みがあって、その上に専門教育があるわけで、要するに専門性と教養教育とか、リベラルアーツというものの在り方というのは国によってかなり違うということだと思います。
 さらに言えば、日本では皆、大学という名前にしていますけれども、設置審をやってきたときにかなりいつも議論になったことですが、英文名称がいろいろで、実は日本はあまりチェックされてはいないわけです。基本的にはヨーロッパだったら、アメリカでもいいんですけど、英語圏であればユニバーシティとインスティテュートが、これは基本的には違う要素を持っていますし、ヨーロッパだったらドイツのホホシューレとか、それからフランスのグランゼコールという、そういう幾つもの仕組みが絡み合って高等教育全体ができていて、それぞれの役割が違う。
 また、よくヨーロッパは学費がただだというけど、例えばグランゼコールは別に全然ただじゃなくて、むしろたしか高いはずです。そういうふうに考えると大学というか、高等教育の在り方をどういう方向に我々持っていかなくちゃいけないのかということと、それから高等教育だけではなくて高等教育も含めた学校、学校制度でどういうふうに人を育てていくのかという、そういう視点から見ないと大学だけ切り取っても、もうにっちもさっちもいかないかなという気がしています。
 もう一つ、今の議論のところで非常に重要だけれども難しいと思ったのは、直接は評価とか指標の問題ですけど、独自性とか、これは革新性というのにも多分結びついていくでしょうし、イノベーションの問題にも結びつくと思いますが、そういう独自性の問題と、それから共通性とか、あるいは客観性というものの、これは指標の立て方に直接関わってきますけど、そこをどういうふうにバランスをとるといいますか、どういう、場合によっては複数の指標を立てていくのかというのが議論の要だろうと思いました。伺っていて、どれもとても大変な問題ですけれども、これからの部会の議論に期待したいというと無責任ですが、これから議論を進めていただければと思いました。
 どなたか、御意見ございますでしょうか。オンラインの委員の方々、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。様々な御意見ございましたので、これ、事務局でまたまとめてくださると思いますので、次回の議論につなげていきたいと思います。ありがとうございました。
 それでは続きまして、次の第6次国立大学法人等施設整備5か年計画策定に向けた中間まとめについての御報告をお願いします。
 事務局より説明をお願いします。
【廣田計画課長】  失礼いたします。資料6に基づきまして、国立大学施設の整備に係る検討状況につきまして御説明を申し上げたいと思います。説明の前に国立大学の施設キャンパスというのが教育研究、社会貢献など、大学が背負うミッションを果たすための基盤でありまして、大学が有している機能を最大化していくためにも施設環境を含めて機能強化を図っていくことが重要となります。
 この国立大学等の施設については、平成13年度から5次にわたりまして科学技術・イノベーション計画を受けて策定されました施設整備の5か年計画、これに基づきまして整備、充実を図ってきているところでございます。現在第5期、第5次の5か年計画期間中でございますけれども、現在、大阪大学の西尾前総長を主査といたしまして有識者会議を設置して、次期5か年計画の在り方について議論をしているところでございます。本分科会との関係におきましては、委員となっております両角委員にも有識者として参画いただいておりまして、また、7月から和田委員にもこの有識者会議の委員として御参画いただく予定でございます。
 先般、本年の4月ですけれども、この有識者会議の中間まとめが取りまとめられましたので、こちらについて御報告をさせていただきます。1枚目に概要資料、2枚目、3枚目が中間まとめの要旨、以降が本文でございますが、前の3枚の資料を使いまして御説明を申し上げます。
 概要資料1枚目の上部に記載しておりますけれども、国立大学等の施設の現状と課題ということでございます。左側、老朽化の進行が著しいと。安全面、機能面、経営面でも大きな課題を抱えている状況がございます。
 ただ右側、過去様々な災害が発生した際には、国立大学等も地域の応急的な避難所として避難者、帰宅困難者を受け入れて貢献してきた状況がございます。
 こうした状況も踏まえながらですけれども、真ん中ほどに次期計画におけるコンセプト、目指すべき方向性というものを2つ示しております。
 左側ですけれども、地域とともに発展するキャンパス全体のイノベーション・コモンズ、共創拠点の実装化という視点でございます。このイノベーション・コモンズという視点は現行の5か年計画から示している概念でございまして、知と人材の集積拠点である国立大学等において、その特色あるいは魅力を最大限発揮し、社会の様々なステークホルダーが集って新しい価値を生み出していこうと、そのための場、拠点をつくっていこうという発想でございます。地方創生2.0などの政策の動向などを踏まえて、老朽化対策をしっかり行いながらも地域課題の解決、新産業の創出などにつなげていけるような共創拠点を広げていく、そんなコンセプトが打ち出された状況でございます。
 例えばですけれども、既存の施設のリノベーションを行いまして自治体ですとか産業界と連携したキャンパスを再整備すると、地元企業と共同研究、開発を進める中で地域の産業の振興とか活性化の拠点として活用していくとか、あるいは既存の体育館をリノベーションいたしまして産学官の異業種の交流、あるいは異分野間の共創活動に可能な空間を設けると、スタートアップの拠点をつくっていく、そんな事例などもございます。様々な形がそれぞれの大学において違いますけれども、そうした共創拠点を広げていく発想でございます。
 右側が地域の防災拠点の実現とありますけれども、国土強靱化をより一層進めていく観点で対災害性の強化、あるいは避難所としての防災強化ということで、防災拠点の実現を果たしていくという視点がコンセプトとして示されている状況です。
 一枚おめくりいただきまして配付資料上は裏面でございますけれども、中間まとめの要旨がありまして、その次、ごめんなさい、3枚目、戦略的な施設マネジメントの推進と上に書かれてあるところでございますが、整備を進めていくに当たってはこのマネジメントという視点が重要であることが示されております。
 全学的な施設マネジメント体制の構築・運営とありますけれども、学長等のリーダーシップのもとで大学としてどのような姿を目指すのかというビジョンをしっかりと策定し、それに基づくキャンパスマスタープランをつくり、全学的な視点で取り組んでいくような視点でございます。
 次の2つ目が施設総量の最適化とありますけれども、急速な少子化が進行していく状況でございますので施設のトリアージの実施によって施設総量を抑制していくとか、あるいは利用頻度の低いスペースを転用、集約化していくことも含めて、施設総量の最適化の議論、検討が必要であろうと思っております。
 右側に保有施設を最大限活用した戦略的イノベーション、性能維持改修とありますけれども、戦略的イノベーションというのはしっかりと安全安心を図るための老朽化対策をやりながらも、加えて施設の機能強化を図っていくような、そんな整備をすることでございますし、性能維持改修という部分は、ライフサイクルコストを長寿命化へのライフサイクルに展開していくために、老朽化する手前の段階で少し手を入れる、それによって耐用年数を上げていくような、そういう方法ですけれども、こうした手法も加味しながら、しっかりとマネジメントをしていくということ。また、施設整備に係る財源の多様化ということについてもしっかりと取り組んでいただくことの方向性も含めて、施設マネジメントというものを打ち出している状況でございます。
 その下に次期計画における整備目標と書かれていますけれども、これは引き続き有識者会議におきまして精査をしていくことになりますけれども、中間まとめの段階での目安を記載しております。冒頭に申し上げました大量の老朽施設がありますので、これの戦略的リノベーションなどを図っていくことを考えたときに、基本として老朽改善整備を中心と据えながら、5か年期間中には必要整備量として約360から740万平米の老朽改善整備が必要であると示されております。
 このほかにもライフラインの更新や新増築整備、附属病院の整備とありますけれども、全体、国費のみならず、様々な多様な財源も含めて5年間で1兆300億から1兆4、000億程度の予算が必要と試算されている状況でございます。この有識者会議におきましては引き続き議論を進めまして、12月頃に最終まとめを取りまとめまして今年度中に文部科学大臣決定となる第6次の5か年計画を策定する考えでございます。情報共有といたしまして報告をさせていただきました。
 以上でございます。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。御質問等はよろしいですね。
 では次に、政策文書における高等教育関係の主な記載について、これも事務局からお願いします。
【髙見高等教育政策室長】  お手元の資料7を御覧ください。政策文書の高等教育関係の主な記載事項として、先月ですけれども6月13日に政府において閣議決定されました骨太方針2025、新しい資本主義のグランドデザイン実行計画、地方創生2.0基本構想に掲載された高等教育関連の記述を抜粋しております。
 1ページ目は骨太方針2025の抜粋です。この中で左にあるとおり、アドバンスト・エッセンシャルワーカーの育成、大学、高専、専門学校の機能強化、さらには右にあるとおり、国公私立を通じた大学の連携、再編・統合による機能強化や縮小・撤退による規模の適正化、教育の質の高度化、留学生の派遣受入れ促進に向けた官民一体での支援促進、さらには物価上昇等も踏まえた運営費交付金や私学助成の基盤的経費を確保することが盛り込まれております。
 続いて2ページ目、新しい資本主義のグランドデザイン実行計画の抜粋を御覧ください。この中では左にあるとおり、近年の物価・人件費の上昇等も踏まえた運営費交付金等の基盤的経費の確保、多様で優秀な外国人留学生の誘致、国内定着、多文化共修環境の構築や質保証を伴った大学間交流の強化について記載がなされているほか、右側3ポツの部分でございますけれども、産業人材育成プランとして「知の総和」答申でも提言された地域構想推進プラットフォーム構築が明記されるとともに高専教育の高度化、複数の大学、高専等の産業界ネットワークを生かした人材育成の充実などの記載が盛り込まれております。
 最後に3ページ、地方創生2.0基本構想の抜粋を御覧ください。この中では地方大学による人材育成機能の強化、大学、短期大学等におけるエッセンシャルワーカーや地域の担い手となる人材の育成を関係機関と連携しながら進めること、大学等を核とした地域の産学金などの連携基盤の整備、地方私立大学の取組に応じた重点的な支援等について記載がなされております。今後、2月に取りまとめいただいた「知の総和」答申や、これらの文書等も踏まえながら、必要な制度の見直しや予算要求を行っていく予定でございます。
 私からの説明は以上でございます。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。何か御質問等ございますでしょうか。
 最後のところは、これは予算にも関わりますし、大きな方向性にも関わりますが。
 栗本委員、どうぞ。
【栗本委員】  取りまとめありがとうございます。2ページ目の留学モビリティの拡大は、国内に来日する学生に、そして海外に渡航する学生にも言えることですが、優秀な人材育成のため、そして定着のための住環境の整備は大切な課題だと思います。4年、2年ではなく、1年、半年という比較的短期で留学生を受け入れることもあり得ます。そのために大学運営としてできることは何か?と考えると住環境のインフラ周りの話になります。そういった側面も、可能な範囲で御考慮いただけると良いのではないでしょうか。住環境は留学モビリティを高める上でボトルネックになりやすく、留学先として選ばれない理由になり得る要因だと思います。
【髙見高等教育政策室長】  ありがとうございます。委員おっしゃるとおり、住環境の確保は非常に大事な視点だと思っております。なかなかこれ、文部科学省だけではできない取り組みではありますけれども、こういった政府全体の閣議決定の中でこういった記載が盛り込まれたことは、政府全体で取り組んでいくということになると思いますので、こういった文書もしっかりバックグラウンドにしながら、今後関係省庁と連携してさらに取組を進めてまいりたいと考えております。ありがとうございます。
【栗本委員】  ありがとうございます。
【吉岡分科会長】  ほかに、この際聞いておきたいということがあれば、と思いますがよろしいでしょうか。
 ちょうどいい時間帯になりました。本日の議題、以上となります。
 最後に報告と次回の開催日程について、事務局から説明をお願いいたします。
【花田高等教育企画課課長補佐】  本日は活発な議論をいただきまして誠にありがとうございました。
 次回の会議は、9月3日水曜日12時30分からハイブリッド形式での開催を予定しております。本日御発言できなかった内容がございましたら、事務局まで御連絡ください。
 なお、本日の参考資料2のとおり、「知の総和」答申の内容が分かる動画コンテンツを文部科学省ホームページで配信しております。吉岡分科会長をはじめ、大学分科会から伊藤委員、大森委員、中村委員、両角委員に御出演いただいておりまして、全体概要、事例発表、座談会と体系的なコンテンツを努めておりますので、ぜひ御覧いただければと思います。
 以上でございます。
【吉岡分科会長】  ありがとうございました。
 それでは、本日の議事を終了いたします。皆様、どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――

お問合せ先

高等教育局高等教育企画課高等教育政策室

(高等教育局高等教育企画課高等教育政策室)