中央教育審議会大学分科会(第183回)議事録

1.日時

令和7年4月23日(水曜日)15時00分~17時00分

2.場所

Web会議

3.出席者

委員

(分科会長)吉岡知哉分科会長
(副分科会長)橋本 雅博副分科会長、和田 隆志副分科会長
(委員)安孫子尋美、伊藤公平、田中マキ子、冨永悌二、廣津留すみれ、森朋子、山口祥義の各委員
(臨時委員)上田 悦子、大野 博之、大森 昭生、小野 悠、加藤 映子、北畑 隆生、栗本 博行、志賀 啓一、杉村 美紀、髙宮 いづみ、中村 和彦、濱中 淳子、平子 裕志、本間 敬之、益戸 正樹、吉見 俊哉の各委員

文部科学省

(事務局)伊藤高等教育局長、浅野私学部長、森友大臣官房審議官、松坂文部科学戦略官、吉田高等教育企画課長、桐生学生支援課長、中安生涯学習推進課長、小野大臣官房文教施設企画・防災部計画課企画官、遠藤専門教育課専門職大学院室長、石川地域大学振興室長、髙見高等教育政策室長、花田高等教育企画課課長補佐、太田高等教育政策室室長補佐ほか

4.議事録

分科会長の選任等について
中央教育審議会令に基づき、委員の互選により吉岡委員が分科会長に選任された。
副分科会長については、吉岡分科会長から橋本委員、和田委員が指名された。

大学分科会の運営について
吉岡分科会長から、大学分科会の会議及び会議資料の公開並びに審議参加の制限等について説明があり、資料2の原案のとおり決定された。
また、中央教育審議会大学分科会運営規則に基づき、この時点から会議が公開された。

【吉岡分科会長】  よろしいでしょうか。
 それでは、改めまして、第13期初回の大学分科会の開催に当たり、分科会長に選任いただきました私から一言御挨拶をさせていただきます。先ほども申しましたが、大変緊張しておりますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。
 中教審が今年の2月に、「我が国の『知の総和』向上の未来像~高等教育システムの再構築~」という答申を出しました。今期の大学分科会はこの答申を前提に議論していくということになると思います。この知の総和答申の作成プロセスについては、先ほど大森委員から御紹介ございましたけれども、私はそのときの高等教育の在り方に関する特別部会に所属しておりまして、その前には質保証システム部会という部会のメンバーでした。この間、一連の議論を通じて、大変多くの論点を検討してきたわけですけれども、その根底には、あるべき社会の姿、それから、その中での高等教育の役割、あるいはそもそも大学とは何かといった非常に根本的な議論があったと思っております。たいへん多岐にわたる議論をしてまいりまして、あの議論は、永田分科会長のリーダーシップと、それから、事務局の努力がなければとてもまとまらなかっただろうと思っております。
 そこで提示された課題は、答申にも書かれていることですけども、時にはトレードオフの関係にあるような課題もたくさん出てまいりました。今期の大学分科会は、その知の総和答申を踏まえてより具体的な方策を構想していくという課題といいますか、そういうミッションを負っております。したがって、様々な課題の再整理あるいは重要度のレベル分け、それから、スケジュール的な順番といいますか、順序付けということをしていかなければなりません。しかも、昨今の状況の変化というのは非常に激しくて、あのときの議論、ついこの間議論していたときの前提すら変わってきているというところもあるだろうと思っております。これは非常に大きな問題で、我々だけで考えられる問題ではない、あるいは考えるべき問題ではないのかもしれない。まさに、本来、知の拠点であり、知の現場である高等教育機関、それぞれが主体的に考えていくべき問題であると。しかも、その場合にそれぞれの教育機関が自分のところをどうするかという、そういうことだけではなくて、先ほどちょっと申しましたけども、社会の中での大学の在り方ということを考えていくというそういう視野を持って議論していく、そのことが必要だと思います。
 ここの分科会での議論というのは、そのための環境をつくる、あるいはそのための議論の核になるものを提示していくという、そういう側面があるだろうと考えております。非常にいろいろなことを議論しなくてはいけないなと思いますけれども、どうぞよろしくお願いしたいと思います。
 続きまして、文部科学省を代表して、伊藤高等教育局長から御挨拶をお願いします。
【伊藤高等教育局長】  文部科学省の高等教育局長、伊藤でございます。第13期の大学分科会の初回の開催に当たりまして、文部科学省を代表いたしまして、一言御挨拶を申し上げます。
 皆様におかれましては、第13期中央教育審議会大学分科会の委員をお引き受けいただき、また、本日は大変御多忙の中、御出席をいただきましたことを深く感謝申し上げます。
 この大学分科会でございますが、大学等における教育の振興に関する重要事項を調査審議することを主な所掌としておりまして、第12期には人文科学、社会科学系における大学院教育の振興方策、また、大学設置基準等の改正などについて、専門的な知見から御審議をいただいたほか、ただいま吉岡分科会長からも御紹介をいただきましたが、本年2月には、「我が国の『知の総和』の向上の未来像~高等教育システムの再構築~」として、大変骨太の答申を頂戴したところでございます。この答申を受けて、文部科学省として速やかに実行すべき施策については実行に着手したいと思ってございますが、大きな方針をいただいた後、さらに実行に当たっては、具体的な制度設計について、もう少し大学関係者の御意見も丁寧に聞きながら実行に移していかなければいけない課題もたくさんあると承知してございます。
 今期の大学分科会では、そうした先般の答申を受けまして、その具体的方策の実現に向け、新たな質向上・質保証システムや大学院教育改革の方策の在り方について調査審議をお願いしたいと考えてございます。委員の皆様方におかれましては、より深掘りした観点から、皆様方の知見を踏まえた活発な御審議に御期待を申し上げ、私からの挨拶とさせていただきます。何とぞよろしくお願いいたします。
【吉岡分科会長】  伊藤高等教育局長、ありがとうございました。
 それでは、議事を進めていきたいと思います。(3)の第12期大学分科会の審議状況、第13期大学分科会の審議事項等について、事務局から資料の説明をお願いいたします。
【髙見高等教育政策室長】  高等教育政策室長の髙見です。資料の3-1に基づきまして、第12期の審議状況、また、第13期の審議事項について説明します。
 初めに、資料3-1の1ページを御覧ください。第12期における審議実績につきまして、大学分科会におきましては、5つの部会、委員会を設け、高等教育に関する様々な課題について御審議いただきました。
 まず1つ目、高等教育の在り方に関する特別部会についてです。令和5年9月、急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方について検討するため、大学分科会におきまして、高等教育の在り方に関する特別部会を設置し、集中的に御議論いただきました。
 本年2月には、知の総和答申を取りまとめていただき、答申いただいたところでございます。答申の取りまとめに当たりましては、おおむね2040年以降の社会を見据えた、目指すべき高等教育の姿やそれを実現するための方策などの高等教育の在り方について総合的に御検討いただいたところです。
 2点目、大学院部会では、人文科学・社会科学系大学院につきまして、令和5年12月に、人文科学・社会科学系における大学院教育改革の振興方策について、審議まとめを取りまとめていただきました。
 審議まとめを踏まえ、大学院教育改革を推進し、社会に開かれた質保証を実現するための情報公表の促進について御審議いただいたほか、大学院の在り方や質の高い大学院教育の推進等についても御審議いただいたところです。
 続いて、2ページ目を御覧ください。法科大学院等特別委員会では、法科大学院制度が発足して20年を迎え、これまでの成果や残された課題を整理した上で、法科大学院教育のさらなる改善・充実に向けて必要となる方策について、包括的に御審議いただいたほか、令和元年の法改正により導入された諸制度に関する状況等について把握・分析を行い、本年2月に審議のまとめとして取りまとめいただきました。
 この取りまとめにつきましては、本日配付の参考資料として添付しているところですので、後ほど御覧いただけると幸いです。
 また、その下ですけども、認証評価機関の認証に関する審査委員会におきましては、認証評価機関からの申請について審査を行っていただいたほか、認証評価機関が行う自己点検評価について確認をいただきました。
 さらに、教育課程等特例制度運営委員会では、令和4年9月の大学設置基準等の改正によって創設された、教育課程等に係る特例制度について、大学からの申請に基づき、審査を行っていただいたほか、今後の申請や審査等における課題の検討を行っていただきました。本件については、後ほど議題(4)で説明をいたします。
 このほか、大学等を取り巻く状況の変化等に速やかに対応するため、高等教育政策全般について御審議をいただきました。
 以上が、第12期における大学分科会の審議実績です。
 続いて、3ページ目を御覧ください。今期に審議いただく事項として、5点掲げております。
 本年2月の知の総和答申を踏まえ、まずは制度改革や財政支援の取組や、今後10年程度の工程を示した政策パッケージを夏頃まで策定し、具体的方策の実行に速やかに着手する予定としています。特に質の更なる高度化に向けては、設置基準や設置認可審査、教学マネジメント、認証評価制度、情報公表等を一体とした新たな質向上・質保証システムについて御審議いただきたいと考えております。
 また、大学院制度と教育の在り方において、質の高い大学院教育の推進と幅広いキャリアパスの推進に向けた具体的対応方策について御審議をいただきたいと考えております。さらに、前期に引き続き法科大学院等の教育の改善・充実や、認証評価機関の認証、教育課程等に係る特例制度の審査も行っていただきたいと考えております。
 なお、この4ページ目以降につきましては、第12期に取りまとめていただいた答申や審議まとめの概要を添付しておりますので、後ほど御覧いただければと存じます。
 そして、続いて、資料3-2を御覧いただければと思います。「第13期大学分科会における部会等の設置について(案)」という資料でございますけども、こちらは先ほど資料3-1の3ページで説明いたしました第13期で審議いただく各事項につきまして、専門的な調査審議を行っていただくため、本大学分科会の下に、ここに掲げる5つの部会、委員会を設置し、それぞれ記載の所掌事項のとおり御審議いただいてはどうかと考えております。この点についても併せて御審議いただければと思います。
 簡単ではございますが、私からの説明は以上でございます。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。
 何か御質問ございますでしょうか。よろしいですね。
 それでは、今の御説明にありました12期に取りまとめた各種審議まとめ、それから、第13期の審議事項等についての説明を踏まえて、部会の設置についてお諮りしたいと考えております。資料3-2のとおり、ここには5つの部会が出ておりますけれども、このとおり部会を設置したいと思いますけれども、よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。それでは、今期はこれらの部会等を設置し、部会等において具体的な議論を進めていただくということにいたします。
 それでは、ただいまの説明も踏まえ、今期の審議事項や高等教育のお考えについて幅広く各委員から一言ずつ御意見をいただければと思います。初めての委員の方もいらっしゃいますので順番に進めたいと思いますが、こちらから指名させていただきますので、時間もありますし、お一人、一、二分ぐらいをめどに御発言いただければと思います。
 それでは、あいうえお順を基本に行いたいと思いますが、大森委員が途中で退席される予定があるということですので、最初にお願いしたいと思います。
 大森委員、オンラインでよろしくお願いします。
【大森委員】  共愛学園前橋国際大学の大森委員でございます。すみません。最初に御指名いただいて恐縮です。今日、学内で今年度最初の全学教授会があるので、学長としていないわけにはいかないかなと思って、すみません。途中で失礼させていただきます。
 改めまして、引き続き大学分科会に参画させていただきまして、ありがとうございます。今期、グランドデザイン答申、そして、知の総和答申を踏まえてのさらなる議論が展開されるのかなと思っています。特に私は、知の総和答申を議論した特別部会で副部会長を仰せつかって取りまとめの議論をしてきたということで、思い入れもございます。この答申、今、大学を取り巻く本当に危機的状況の中で考えなければいけないこととか取り組まなきゃいけないことというものの一覧を提示した答申かなと理解していて、今期はそれを具体的に、今、局長からもお話があったように、政策制度にしていくという重要な役割を担っているというふうにも理解しています。
 具体的な議論の内容としては、今、承認された内容、質の向上と保証というようなこと等々が中心になっていくようになるかなと思っていますけど、同時に、知の総和答申では、規模とアクセスの問題、これも大変重要なテーマとしておりましたので、そのことも忘れずに議論していけたらありがたいなと思っています。その意味で、私立大学に関する会議体が立ち上がったり、あるいは地域大学振興に関する会議が立ち上がったりというところでありまして、私は両方に属しながら、特に、地域大学振興に関する有識者会議の座長を仰せつかっておりますので、この後、その会議体についても報告があるかなとは思いますけれども、今週、第1回地域大学振興の会議を開きました。特別委員として、地方で学ぶ学生たちにも来てもらって、その意見を聞くというようなこともやっているところです。
 当事者の意見を聞きながら、日本の大学の多くは地方にありますので、まさに地域における高等教育へのアクセスのとりでが地域大学ということになるので、そこが衰退してしまうと、子供たちの学びが地方からなくなるという大きな問題に加えて、地域人材の育成ができなくなるというようなことも起こってきますし、地域産業界を牽引する人材とか生活基盤を支える人材が育たなくなるという大きな問題があって、地域インフラである地域大学に関して、しっかりと議論して、その成果をこの分科会でも御報告、共有させていただけたらなと思っています。
 半数以上の若者が大学に進学する時代なので、本当に多様な学生がいろいろな大学で学んでいます。大学も多様で、それぞれ工夫や、地域ニーズを踏まえてしっかりと教育活動を展開しているところなのですけれども、大学の在り方自体が一律にもう語れなくなっているというふうにも思っていて、なんだけれども、ちょっと外からは、相変わらず古い大学観をベースにした一元的な言説が聞こえてきたりもしますので、大学観のアップデートを国全体に促すような議論も必要だなと感じています。
 学生たちが幸せになることを第一義に、大学ということを皆さんと一緒に考えていけたらと思っています。よろしくお願いします。
 以上です。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。
 それでは、委員のほうから進めたいと思います。安孫子委員、お願いします。
【安孫子委員】  ニトリホールディングスの安孫子と申します。このたびの答申における、教育研究の「質」の更なる高度化に企業として貢献できることに大変感謝しております。私どもは、教育部というのは、職能分類においてサービスに属しております。これは営業全体で出した利益によって教育活動ができるという構造です。したがって、育成した人材が業務の中で問題を発見し、解決し、労働生産性を上げて、利益を生み出すための仕組みづくりと、さらには企業文化づくりが最大の教育の目的となっています。そのためにOFF-JT教育は、聴講して覚えることがゴールではなく、学びの中で得た共感を仲間との討論で深め、仮説につなげ、現場での実践と体験を繰り返すOJT教育と結びつくことで、数字と状態を変え続けることができていると思っています。
 私たちが求めるのは、大学までの長い学びの道のりが社会貢献につながる、仕事と結びつくためには、多分覚えるだけではなくて、共感し、議論し、考え、答えを出す力と、行動し、諦めずに結果を出す力を体験的に学べるカリキュラムが多く構築されることだと考えます。どうぞよろしくお願いいたします。
【吉岡分科会長】  安孫子委員、ありがとうございました。
 それでは、伊藤委員、お願いします。
【伊藤委員】  伊藤公平です。私も知の総和答申に関わりましたので、私は、そこで特に強調したのは質の向上です。人数が減っていくということは、一人一人の能力や志が上がっていかないと知が増えないということで、質の向上を特に強調しました。その中において、もともと、例えば大学というのは、もう学びに飢えた人、志が高い人が集まる場所であったわけですけども、今、60%近くが4年制に進み、さらに、様々な形の高等教育に進む人が85%を占めるときになると、みんながそのような学びに飢えているかというと、必ずしもそうでもなく、結果的にはキャリアパスというものを皆考えるようになってくる傾向もあります。
 また、学びに飢えている学生を相手にしていれば、厳しいことも相当言えたわけでありますけども、今どちらかといえばテーマパーク化している傾向もあります。アルバイトだと休まないのに学校なら休む。これはアルバイトなら自分はお金をもらっているけど、大学だと自分はお金を払っていると、全く逆に考えていて、それに対して厳しく言うと、何でそんなに厳しくするのかという傾向も多く見られるようになっているのではないかと思います。
 その中においてどうやって一人一人としっかりと、鍛えることも必要ですし、また、時間を与えるか。若いときこそ、例えば語学でも何でもそうですけど、吸収できるので、その若いときに蓄えたものが人生100年の全てにつながる。学び方を学ぶことによって100年間、100年間じゃないですね。その後ずっと学び続ける力をつける。それには時間がかかるので、だからこそ、学部、さらには大学院といったところで、一見無駄があったとしてもしっかりとした時間を使う教育の場をつくっていくのが必要ではないかと思っています。
 今、大学2年生対象のアンケートでは、1週間でどれぐらい勉強するか。学校の授業時間以外。これが、5時間未満が50%です。これは大学の問題であります。これでは若いときにしっかりと学んだとは言えません。就職活動も早まっていますから、そのような形になっていくと。これを何とか変えないと、恐らくこれが失われた30年の一つの要因だと私は思っていますので、そういう意味で、皆様と一緒に高等教育を反転させるということをしたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【吉岡分科会長】  伊藤委員、ありがとうございました。
 続けて、田中委員、お願いいたします。
【田中委員】  田中でございます。12期の中央教育審議会から13期ということで一緒に参加させていただきまして、大変恐縮に思っております。
 本学は、地域にある小規模大学ですけれども、地域活性化人材ということでSPARC事業を進めさせていただいております。その中で、連携開設科目等々を使いながら、基礎、教養から専門科目というところで他大学と一緒に運用しておりますが、メリットとデメリットも踏まえて、運用上の課題というようなものが出てきました。こういった点も、これからの知の総和答申を受けての具体化にあっては、重要になってくるのではないかと思います。どういうふうに解決していけばいいのか、あるいはどのように解決しなくてはいけないのかというところを掘り下げていけたらなと思うところでございます。
 あと、附属高校を持つということもしており、高大接続あるいは連携あるいは文部科学省の区分でいうと、コーディネーター型教育というところを展開しておりますので、そういったところからの学びというものを、本分科会の議論の中に反映させていただければ幸いかと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【吉岡分科会長】  よろしくお願いします。ありがとうございます。
 それでは、冨永委員、お願いします。
【冨永委員】  東北大総長の冨永でございます。今期より委員を務めさせていただきます。私どもは昨年度、御承知かもしれませんが、国際卓越研究大学の第1号に選定されまして、現在、体制強化計画を鋭意進めているところではございます。本日、私はこの会議は初めてですが、今まで様々な課題を話されて、我々教育現場にある者として、一々思い当たるところもありますので、微力ながらぜひお力になれればと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。橋本委員は副分科会長ですので、後ほど御挨拶をお願いいたします。
 それでは、廣津留委員、お願いします。
【廣津留委員】  新しく大学分科会に参加させていただきますヴァイオリニストの廣津留すみれと申します。ヴァイオリニストが本業なのですけれども、2大学で教鞭を執っていることですとか、大分市、自分の故郷の大分市で教育委員を務めていることもありまして、おととしの教育未来創造会議から幾つか会議に出席させていただいております。音楽家は恐らく私一人ですので、芸術文化の面からもコメントさせていただければなと思っております。
 分科会は初参加ですので、全体を通して大学に期待することを2点ほどお話しさせていただこうかなと思うのですけれども、まずはリーダーシップを鍛えるということです。大学として、学生だけでなく、やはり教員、そして、大学という組織自体がリーダーになる努力をすること、これが今の日本には必要だと思っています。リーダーになるというのは、決して人の上に立って命令をするという意味ではなく、自分から率先してアクションを取ることですとか、人に共感する力を持つことだと私は思っています。今、アメリカの教育業界は大変なことになっておりますけれども、私の学部時代の母校、ハーバード大学が今、教育と政治の境界で、教育の自由のために必死に闘っています。それを私はとても誇りに思いますし、リーダーを育てる学校のあるべき姿勢かなと思います。このAI時代に、日本の未来をつくる次の世代が主体的に動いて、自分の自らの力で考えて行動すること、それを鍛えるリーダーシップ教育を私は大学には期待したいと思っています。
 もう一つは、そのために必要な多様性、そして、国際性の強化です。例えば私が今教えている国際教養大学では、全ての授業が英語で行われるため、交換留学生も多いですし、あと、寮生活で、海外の留学生との日常での交流も多く、多角的な視点を得る機会が本当に多くあります。英語で単位が取れる大学を増やして、海外からの学生を多く受け入れることは、国力の成長だけでなく、国内学生の成長に直接的につながると思っています。世界のステージに立ったときに、堂々と渡り合える議論を深められるような人材を育てるために具体的な方策を打ち出せること、それを期待しています。
 これからどうぞよろしくお願いいたします。
【吉岡分科会長】  廣津留委員、よろしくお願いいたします。
 続きまして、森委員、お願いいたします。
【森委員】  桐蔭横浜大学の森でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 大きな時代の変化のある中で、大学の社会的役割というのは随分注目を集めているのかなと思いまして、そのときに、皆様とこの第13期で議論させていただけるということに関しましては、大変大きな喜びを感じているところでございます。
 社会的役割というところに申し上げますと、学術研究に貢献するということは非常に重要なことだと私も思っておりますけれども、それにプラスアルファはやはり人材育成といったところを本気でかかっていかないと、社会的意義といったものの貢献度が薄れてくるのかなと、非常に危機感を覚えているところでございます。
 そのときに、先ほど安孫子様もおっしゃいましたけれども、単なる人ではなくて、やはり地域や、社会や、また、自分自身にしっかりとキャリアパスがつくれるような人材を育成するということに関しては、これは大学がしっかりと担っていかなければならないと。先ほど伊藤委員からも出ましたけれども、もう60%以上の若者が大学に進学するという中で、大学がどのような役割を担っていくのかということに関しては、今こそやはり人材育成といったようなものをしっかりと見据えていかなければならないのかなと思っております。
 そのときに、ハイエンドだけではなくて、そういったような知見をしっかりと社会に実装するような、分厚い中間層の若者たちの教育といったものに関しても私は考えていきたいと思っておりますので、そういう意味では、私は今の大学数は割とポジティブに考えています。でも、そのためにはしっかりと本当に真剣に大学を伸ばす大学になっていかなければならないと思いますので、今期の質の向上、質の保証といったようなものには、皆様と議論しながら深めてまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。
 それでは、山口委員、お願いいたします。
【山口委員】  佐賀県知事の山口祥義です。佐賀県庁の特徴として、中途採用が今、17%超になっていて、足元で40%を超えているので、これがますます増えていって、今でさえ47都道府県で圧倒的に日本1位ですけれども、これはなぜかというと、やはり人材が同質化するというのが最も我々が恐れることで、多様な人材が存在しているということが我々の成長のエンジンになっております。
 今回、初回なので、感じている点を2点申し上げたいと思います。
 1つは、地方における大学の重要性です。我が国は都市部に多くの大学があるわけで、地方は大学の数、少ないです。アクセスが弱い。しかしながら、教育や産学連携、エッセンシャルワーカーの育成など、一つ一つの大学の役割というのが地方で圧倒的に大変大きいものがあるということを皆さんで共有いただきたいと思います。そして、地方というのは、食の問題だったり、防災やエネルギーの供給だったり、人口減少など、地球規模で、そして、今、我が国が抱えている大きな解決策、課題解決が必要だという場所でもありますし、学生にとっても、そういった面で、トランスファラブルスキルを磨くことができるフィールドワークに適した地域だと思っています。
 2つ目ですが、一つ一つの大学、既存の大学も新しい大学も挑戦して成長していかなければならないと思っています。そして、その挑戦、成長を正しく評価して、国が支援する仕組みも重要だと思います。お互いが切磋琢磨して、時代の先を読んでより高みを目指していくという姿です。もちろん残念ながら、これからの大学としてアップデートされないなど硬直化から脱せない、いわゆる持続可能性がない大学も出てくることも一定やむを得ないものだと認識しております。
 もう1点、佐賀県の取組ですが、佐賀県は、4年制大学が2つしかないのです。47都道府県で、こちらは最も少ない県になっております。もうこれはどうしても大学が必要だということで、我々は今ある大学が持つ頭脳研究力を地域課題の解決に生かす県独自の支援制度、これはTSUNAGIプロジェクトと言っていますけれども、お互いの学長が集まって、それぞれ予算化して、県の課題にそのまま政策反映するようなネットワーク化のシステムがあります。そして、それでも足らないので、4年後の改革を目指して、佐賀県立大学という大学の設立準備をしています。圧倒的なこれからの変革時代に向けて、チェンジメーカーを多く生み出すような大学にしたいと思っております。
 最後にもう1点だけ。やはりこれからの時代は、一人一人が単に知識ということではなくて、知見を身につけて、自分の人生に生かしていくという環境づくりが必要だと思いますので、何といっても、誰かに倣うのではなくて、自己思考力、自己決定力というものに結びつけていくような教育が何としても必要と思いますので、そういった議論をこれから皆様方とできていければいいなと思っております。
 以上です。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。よろしくお願いします。
 それでは、上田委員、お願いいたします。
【上田委員】  初めて、今回、審議会に参加させていただいております、鹿児島工業高等専門学校の校長と、それから、国立高等専門学校機構の理事も併任しております上田と申します。よろしくお願いいたします。
 高専での現場の仕事を長くやっておりました。高専は、もう皆さん御存じのとおり、15歳から入りまして、5年間の一貫教育ということで、設立当時は、中堅の技術者育成だったのですけども、今はグローバルな社会的な問題を解決できるイノベーティブな人材育成ということで、随分高専も教育が変わってきております。その中で、やはり学生の気質も随分変わってきておりまして、そこになかなか先生方が追いついていけていないのだなというところも感じるところです。
 大学、高専でも、やはり18歳ぐらいのときに、ちょっと途中で勉強、ちょっとしんどいなという子が、学生がやめて、もう1回戻ってくるということがなかなかしにくいというような状況をよく目にしておりまして、12期の答申を拝見させていただきまして、そういうアクセスというところで、そういう部分もいろいろ御検討されていたのだなと思っております。
 本当にこれからいろいろな、何といいますか、今までは私は目の前のことでしか考えてこなかったところが多うございましたけれども、これから日本全体、それから、高専だけではなく、大学全体、日本全体の教育のところを御議論させていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【吉岡分科会長】  よろしくお願いします。
 それでは、大野委員、お願いいたします。
【大野委員】  国際学院の大野でございます。今期からお世話になりますが、よろしくお願いいたします。
 特別部会でも参画させていただきましたが、議論を通じて、ショートサイクルの短期の高等教育。今、我が国では、短期大学、私学の置かれている現状は大変厳しいものがございますが、これまで女子教育の普及、それから、実践的な職業ということで大いに役割を果たしてきた短期大学、この制度を何とか、世界に目を向けたときにショートサイクルの高等教育というのは非常に多様な役割を果たしているということから、「知の総和」向上にはぜひ短期の高等教育機関というのがまだまだ役割を果たせるのではないかと思ってございます。世の中がどんどん変化しますので、それに対応した職業教育や、それから、今お話ございました、地域に密着した人材育成というのは大変重要と考えます。さらには、人生100年時代を見据えて、生涯学習ということの課題もたくさんあると思います。
 あと、多様な学習機会を提供するということで、18歳だけでそれが決まるのではなく、学びたいときに学び返せるような社会の実現等々、たくさんございますが、Higher Education for Allで、全ての国民のために高等教育を、短期大学、短期高等教育がその足がかりになればと考えている一人でございます。
 一つ一つの短期大学というのは大変規模も小さくて、資源も限られていて、なかなか社会にいろいろなものを提供するというのは限りがあるのですが、今、シェアリングエコノミーというような概念で、幅広でいろいろな分野横断でできていますので、ぜひそういった考え方を活用して、この仕組みで、我が国の「知の総和」向上に資する短期高等教育機関、プレゼンスを高めていきたいと考えておりますので、何とぞよろしくお願いいたします。
【吉岡分科会長】  ありがとうございました。
 続きまして、小野委員、お願いいたします。
【小野委員】  豊橋技術科学大学の小野と申します。私も今期からお世話になります。
 日本学術会議若手アカデミーの代表をやっておりまして、科学技術学術審議会のほうではいろいろお世話になっているのですけども、今度はこちらでお世話になります。
 私は、豊橋技術科学大学という地方の大学で研究者をしておりまして、若手というほどでもないのですけども、比較的あるキャリアの研究者という現場の視点からコメントをこれからさせていただきたいなと思っております。
 今回、資料を拝見して、2点ほどコメントさせていただきたいなと思っています。
 1つが質の向上に関するところですけども、やはり教育の価値というところで、どういう人材を多様な各高等教育機関で育成していくのかというところをもっと社会に明示するということが大事じゃないかなと思っています。特に予測不可能な時代、不透明な時代において解決策がないどころか、問うべき問題すらなかなか分かりづらいような社会において、問うべき問題を見つけて、それに対するアプローチを試行錯誤しながらトライしていくという、そういうことができる、まさに先ほどリーダーシップというお話がありましたけども、そういった社会を引っ張っていけるような人材を育成していくのだということが、社会で大学の役割として認識されていくというのが非常に重要じゃないかなと個人的に思っております。
 それから、もう1点目のアクセスに関してですが、これは私の都市計画という専門の観点からになるのですけども、やはり人口減少して、国土全体の管理というのが非常に難しくなっていく中で、やはり大学というのは教育研究だけではなくて、様々な産業とかインフラ、医療といったことに直結する部分です。ですので、大学の在り方というのは、一方で、全国一律ではなくて、やはり地域には、地域に合ったそれぞれの多様な専門人材というのが必要ですので、そこも非常に柔軟に大学の在り方というのを検討していく必要があるかなと考えています。よろしくお願いいたします。
【吉岡分科会長】  よろしくお願いいたします。
 続きまして、加藤委員、お願いします。
【加藤委員】  大阪女学院大学、短期大学学長の加藤と申します。文部科学省の仕事としては、大学設置のほうの委員を4年ほど務めさせていただき、今回初めて、中央審議会の委員を拝命いたしました。
 私は、先ほど大野先生が既に短期大学のことを申されたので、短期大学のことはちょっと置いておきまして、やはり私の関心事というのは質の保証だと思います。私はよく学生に、みんな信じないかもしれないのだけど、私、勉強、大嫌いでしたと。小学校、中学校、高校、受験勉強というのが大嫌いでした。私はほとんどアメリカで高等教育を受けた中で、一番自分がよかったなと思うのは、学ぶことが楽しいと思わせてくれた、調べることが面白いと思わせてくれた、それを表現する、発表することが楽しいと思わせてくれた。それが一番大きかったように思います。ですから、今、日本の大学の先生を見ていても、何か今の18歳と、その人たちの間にすごくギャップがあるのではと感じています。ですから、その人たちが大学に進学した時代と、今の世代がかけ離れていて、そこのところがちょっと問題なのかなというふうに。だから、教員の指導力というところも、FDとかそういうところで学ばなければいけないことが教員側にもたくさんあるのではと思っています。
 それからもう一つ、私のもう一つの関心事はAIですね。今後、AIがどういうふうに大学教育に影響を及ぼしてくるのかということを考えておかないと、いや、もう既に課題とかをAIで出してくるというのは始まってきているので、では、AIとどのように大学が共存していくかということは、大学教育にとっては大きな課題だと思っています。
 以上です。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。
 続きまして、北畑委員、お願いいたします。
【北畑委員】  北畑でございます。経済産業省で36年おりまして、事務次官を最後に退官した後、母校の同窓会長から、学校の再建をしてくれと言われました。
兵庫県の私立の中高一貫学校なのですが、ここで理事長を6年、校長の成り手がなかったので、校長も1年兼務して、再建をいたしました。その成果を評価されたと言いたいところですけれども、新潟の友人が専門職大学という新しい大学をつくるので手伝ってもらいたいと言われまして、大学の企画構想から、文部省の認可申請までやりまして、認可後、そのまま学長になって、5年間、学長を務めました。
 新設大学ですので、知名度が低くて、専門職大学という制度の理解も少ないものですから、応募のほうは苦労しております。合格の偏差値でいうと50を割るという水準なのですけれども、出口は大変な成果を上げています。就職実績がない新設大学ですけれども、1年度、2年度、就職率100%であります。慶應大学の大学院に行った学生もおります。その成果はやはり専門職大学制度の狙いどおりでありまして、600時間の企業内実習の効果にあります。学生は職業意識に目覚めて、大学でしっかり勉強しなきゃいけないという意識を持ちます。制度上も、実習が3分の1で、必修科目を落とすと自動的に落第ですので、学生はウイークデーにアルバイトをする余裕がありません。伊藤先生がおっしゃったとおりです。それで土日にアルバイトをせざるを得ないので、したがって、うちの大学は部活がありません。サークル活動だけであります。学生は、入学時のレベルは高くないのですけれども、ぐんと能力が伸びる。教え方の問題だと思います。教員の4割以上、私どもは5割ですけど、企業から来た実務家教員なので、授業の内容がアカデミックだけではなく、最新の産業事情などが聴けて面白いということが理由だと思います。
 新潟の大学ですけれども、県内からの入学者が7割、事業創造学部は7割、県内に就職しました。情報学部は売手市場で、東京に取られまして、地元は4割です。学生に聞いてみますと、企業内実習で地元の企業に行った。いい企業が地元にもあるということが分かったとか、生意気なことを言う学生は、経営者が気に入ったとか言って就職先を決めます。保護者も地元に就職することを歓迎しているので、地域にも貢献できる大学になっていると思います。
 産業界はやはり実践力、即戦力を求めております。そういうニーズがあるということ、それから、学生のほうも、先ほど50年と言われましたが、人生100年で、50年間は職業人生を歩まなければいけない。そのときにやはり頼りになるのはプロフェッショナルなスキル。せっかく大学に行ったのだからやはりスキルを身につけないと、ということだと思います。大学経営の観点からみても、2040年までに16万人も入学者が減るというのは非常にショックことなのです。しかし、高専が1万人、商業高校、工業高校などの専門高校が17万人、そして、専門学校が24万人、併せて42万人もいるわけですね。これらの高等教育機関からの大学進学率が高まれば良いのですが、専門学校からでは18%ぐらいなのです。理由はやはり保護者の経済事情。早く働いて稼いでもらいたいという事情があります。本人たちは頭がよくて、勉強、学習意欲もあるというのがたくさんいるのであります。したがって、奨学金制度の充実と、私ども大学側はやはり授業料の減免等に取り組んで、この42万人の中から数万人、大学生を増やしていけば活路が開けるのかなと思います。私どもは職業教育に特化した大学なので、この層をぜひ狙いたいと思っております。ただ、小さな大学ですから、高いレベルの研究と職業教育、両方やるというわけにいきませんので、世界と戦う高度な研究は、ほかの大学にお任せをして、我々は職業教育のほうに専念をしていきたい。
 その中でお願いが一つあります。これから始まります大学教育の質の向上と、そ認証評価の検討に当たっては、研究も職業教育も両方やる大学、それから、研究に特化した大学、そして、私どもですけれども、職業教育に特化した大学は、それぞれ別個の評価基準をつくっていただかないといけないと思いますので、その辺をぜひお願いしたいと思います。
 以上でございます。
【吉岡分科会長】  よろしくお願いいたします。
 続きまして、栗本委員、お願いします。
【栗本委員】  第13期の委員を拝命いたしました名古屋商科大学の栗本でございます。今回の知の総和に向けた教育システムの再構築、その答申を拝見いたしまして、非常にバランスよく、分かりやすく取りまとめていただいており、感謝申し上げます。
私は25年ほど、いわゆる国際認証の分野で活動してまいりました。またビジネススクールとして、社会人大学院の発展に尽力してまいりました。その経験を踏まえて、今回の答申に対して3点ほどコメント申し上げます。
 1点目は、質の向上に向けての一丁目一番地と言われる認証評価。海外と国内の現状を比較しますと、国内認証は設置基準を満たしているか否か、という議論に時間が割かれやすく、改善の余地が多く存在すると感じております。欧州、英国、および米国の国際認証では、前回の認証から3年もしくは5年が経過した時点で、前回からどの程度改善が図られたか、その改善の進捗状況が評価の中核として位置づけられております。そして、その評価結果も単に可・不可ではなく、認証期間を3年または5年とするなど、段階的な評価制度が導入されています。認証期間が最大で5年の場合、改善が不十分であれば3年の認証となり、次回までに更なる努力を求めるインセンティブを与える仕組みが存在するのです。そのような世界に20年ほど携わってきた経験上、日本の認証評価も改善の余地が多分に残されていると考えております。
 2点目は、規模の適正化に関する話題でございます。我が国は特殊出生率が1.2という厳しい状況で、さらに低下するのだろうと思いますが、アジアには既に1を切っている国も存在します。そうした0.8や0.7の国や地域と比較すると日本はまだ一定の余裕がある状態といえましょう。1を切っている国々の大学では、高等教育の主役は大学院だという認識が広がっています。また、教育課程の言語も英語による提供が主流となります。優秀な人材を世界中から集めて国際的な教育研究環境を整備するのです。そして、実務経験を有する社会人を対象とした、いわゆる18歳人口以外の教育市場に積極的に進出することも求められます。ただし、そこは厳しい競争の場です。社会人が自分の稼いだ資金で学校に通うので、社会人教育はいわば投資としての色彩が強く、費用対効果が厳しく問われる市場原理の強い環境であるといえます。しかしながら、その市場で競い合っていくことが大学の競争力を高めることに直結すると考えております。
 最後にアクセスの確保について、答申でも指摘されている学生寮の整備について一点申し上げます。大学が都市部から離れた地域に位置している場合や、世界中から学生を受け入れるためには、学生寮や国際寮の整備が不可欠と考えております。私たちも国際寮をいくつか運営していますが、多文化共生の教育機会としても非常に価値のある体験だと捉えています。学生は日々様々なものをシェアするわけです。部屋をシェアしますし、食べるものもシェアする。そうして、様々な文化をシェアし、時には対立しながら、協力して相互理解を深めるのです。もっとも宿題までシェアされては困りますけどね。このように、世界75カ国から学生を迎えながら、日々、様々な学びを得ております。
簡単ではございますが、私からのコメントは以上となります。よろしくお願いいたします。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 続きまして、志賀委員、オンラインでお願いいたします。
【志賀委員】  ありがとうございます。学校法人志學館学園で理事長を務めております志賀と申します。今回で2期目になります。改めてどうぞよろしくお願いします。
 私から3点あります。まず私は、2年前のこの場にて、今後は安易に定員充足率を指標にしないでいただきたい。そうしないと、地域社会に絶対に必要な分野というものがなくなってしまい、社会構造に深刻な影響をもたらすおそれがあるという趣旨のことを申し上げました。果たしてこの3年間で50以上の短期大学が募集停止を決定し、また、4年制大学においても教育等の学科募集停止が相次いでおり、多くは社会に必要なエッセンシャルワークの分野です。おかげさまで本学も福祉専攻の募集停止を判断しました。淘汰、撤退を推進した方はさぞかし御満足のことと思いますと嫌みの一つも言いたくなります。
 改めて2年前と同じことをもう一度言いますが、今後は地域ごとに必要な業種等を他省庁と連携して調査研究し、足りない分野は、たとえ定員割れしていても支援する。むしろ供給過剰の業種であれば定員100%でも削減を促すかしないと、本当に日本の社会構造はずたずたになってしまうのではないでしょうか。
 社会に必要な人材育成については、この知の総和答申にも理念としては大分盛り込んでいただいていることは感謝しますが、現行の具体的政策においては、いまだに定員未充足だと質が保証できていないなどという、何だか相関関係はまだしも、因果関係が不明な根拠によって潰そうとするような、そんな政策が多数あります。このようなことばかりしていると、今後の人材、そして、研究する分野に著しい偏りが出てきます。我々が決めた方針はこういった事態をもたらしているので、吉岡分科会長も言及されましたとおり、答申が出てからも大きく情勢が変化しているわけですから、常に現状を見直しながら臨機応変に現実的な政策を検討していただきたいというのが1点。
 それから次に、認証評価及び質保証の在り方について、私も認証評価に関わっている者ですから申し上げさせていただきますと、先日、財務省が、一部私立大学を義務教育のようだと批判して、質の低い学校は予算を減らすという報道がありました。文部科学省の方も反論してくださっていたようでありがたいのですけれども、私はこの議論は、中身云々以前に、財務省とか世間一般もそうなのですけど、質保証の定義そのものが分かっていないのではないかというのが感想です。
 認証評価機関は、私は以前、器を測る機関にすぎないという表現をしましたが、要は、教育の質保証のシステムが機能しているかどうかをメインにチェックしているものでありますが、どうも財務省も世間も、あるいは一部の有識者の方も、都合よく教育内容のよしあしを判断することを期待しているようです。今日は時間がないので省きますが、多様化の時代、そんな教育内容の優劣というのは、評判レベルではランクづけもできるでしょうが、法的に基準をもって決めるのはほぼ不可能です。こちらに関してはワーキンググループも組成するようですので、ちゃんと認証評価の現状と質保証の定義を理解した上で議論していただきたいと思います。
 最後に、これまで大学分科会ではあまり触れられていなかったこととして、でも、さっきいろいろな方が言及していただきましたが、今後は、意欲の乏しい学生、学力の乏しい学生をどう育てていくかということについて、初等中等教育に任せきりにせず、高等教育機関でも議論しなくてはいけないかと思います。よくSNS等では、有識者も含めて、大学は高度な研究をするところで、小規模大学はFラン大学であると、そんなさげすみの言葉で行く意味がないと言う人もいます。ですが、進学率60%を超えていて、それでも世界的には日本の進学率、まだ低いほうという現状では、もう大学はエリートの行くところという考え方自体が古いと思います。
 令和5年に策定された教育振興基本計画には、誰一人取り残さないという言及があり、何かきれいごとを言っているのですけど、一方で、修学支援制度をはじめ、国としては、やる気のない学生や学力のない学生は何も支援しないような感じの政策を推進しているように見えてなりません。仮に、Fラン大学とみんながやゆする大学がなくなったとして、では、やるべきことを迷っている人たちが高卒で就職してうまくいったり、資格だけ取ったりするだけで充実した人生が送れるかどうかは疑問であります。
 私は、学習者本位の教育とよく言われるこの言葉は、全ての学生に選択肢をそろえるものであると思っております。今後、社会が多様化、複雑化する中で、これまで中卒、高卒でもある程度の仕事が就けたのが、その仕事がどんどんなくなっていくからこそ、地方小規模大学は、迷っている学生を受け入れて、底上げをできるような科目を整備し、個性を磨いて、社会に有用な人材を輩出しているわけです。ところが、そういう取組を幾らしても、さっきの財務省とか、あるいは世間や政治家や一部の有識者は、極端な事例を取り上げて、それをさげすんで評価してくれないというふうに強く感じております。
 今後、大学は、この複雑な社会を生き抜くために多くの人が進学し、知識と教養、そして、何よりも学び続ける姿勢を育てる機関であるという認識を持っていただきたいですし、それを世間にも周知していくような、そういった議論をしていただきたいと思います。
 以上、答申は出たのですけど、臨機応変に対応していただきたいこと、認証評価や質保証はちゃんと定義を理解した上で議論していただきたいということ、それから、誰一人取り残さないというのであれば、あらゆる学生に対する支援について検討していただきたいこと、3点申し上げました。
 淘汰だ、撤退だとネガティブな言葉が前期はよく挙がっていましたけれども、今後は、日本に有為な人材を輩出できるような前向きな議論ができるよう、よろしくお願いします。
 私からは以上です。
【吉岡分科会長】  志賀委員、ありがとうございました。
 続きまして、杉村委員、お願いいたします。杉村委員、オンラインですね。
【杉村委員】 上智大学の杉村美紀と申します。今回初めて参加させていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は本務校の会議の関係でオンラインでの参加させていただく失礼をお許しください。
 私はこれまで、中央教育審議会に関しては、教育振興基本計画の時に臨時委員を務めさせていただきました。専門は比較教育学、国際教育学です。本分科会には専門とする国際高等教育の観点も含めて議論に参加させていただくとともに、今般、大学の運営を担う立場にもなりましたので、いろいろと学ばせていただくことができればと思っています。
 今回の答申は、「知の総和」向上の未来像ということを示した大変バランスの取れた内容となっており大変興味深く拝見しております。少子高齢化が進む中で、日本の高等教育が行われている位置づけは大きく変化しておりますが、あわせてコロナ禍以降の高等教育を取り巻く国際情勢の変化に伴う変化などにも留意したいと考えます。
 日本の高等教育の状況については、既にほかの委員の先生もおっしゃっているとおり、地方創生、人材育成、そして、知の創成などさまざまな課題があります。一方で、海外に目を向けますと、今の日本の高等教育が担っている役割あるいは責任というものも大きいと思います。特に今日、高等教育は地政学的な影響を強く受けており、大きな課題となっております。
日本の教育全体との関連も重要だと考えます。初等中等教育において行われている教育改革と高等教育がどのように連携しているか。特に学びの変化や、先ほどからも議論に出ている学習者主体の考え方、あるいはそこで特によく議論されているコンピテンシーをどう考えるかといった点について、高等教育と初等中等教育の連携といったことは大変重要であると考えます。
さらに、高等教育では、今日、様々な連携やネットワークが国内、国外共にオンラインやバーチャルも含め、いろいろな形で実現しています。課題もたくさんありますが、しかしながら、そこには高等教育の新しい可能性もあるように思います。答申が示している質の向上、規模の適正化、そしてアクセスの確保のいずれにおいても、連携や協力を通じて知や資産を共有していくという考え方は有効であり、高等教育の大きなビジョンを描く中では大事な論点であると思っております。
 最後に、「知の創成」という言葉、あるいは「知の総和」という表現ですが、大変魅力的であるとともに、この「知」にどのような意味を込めるかということが課題であると考えます。未来社会を担う人材の育成と知の創生を担う高等教育は、どのような未来像を描くべきかというテーマを、御一緒に考えさせていただければと思っております。
【吉岡分科会長】  杉村委員、ありがとうございます。
 続きまして、髙宮委員、お願いします。
【髙宮委員】  ありがとうございます。近畿大学の髙宮と申します。前期、第12期に引き続いて委員を務めさせていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。
 前回出しました答申、知の総和についても私は関わらせていただきました。非常に総花的に問題点と向かうべき方向をうまくまとめた答申であったかと思います。そして、今期の目的の一つは、それにのっとってということで、幾つかの部会の設定も検討されておりました。その中で、ここは努力したいなと思っているところの一つが、まず、答申を出したときと、先ほど分科会長からも御指摘ありましたように、またさらに社会がかなりのスピードで変わっておりますので、決して細かいところを詰めるという視点ではなくて、今後も先に開くような形の視点を常に取り入れつつ、前からの課題をこなせていけたらなというふうに考えております。むしろ広がりのほうも忘れてはならない視点というのが持っておきたいところだと思っております。
 それから、やはり非常な少子化にまつわる話として、いろいろ暗い世の中の予測が出されているために、どうも近頃の若い方々は、縮こまってしまう、非常にストリクトに考え過ぎてしまうという傾向があるような気がします。もっと若者が自ら生き生きと、ちょっと前向きな気持ちになって、何でもチャレンジしてみようという、そういう明るい展望を持てるような何か教育の提言を出せていけたらなと。それこそもう少し、きつ過ぎないものも明るく提示できたらなというのがひとつ、学生に対して思っているところでございます。
 それから、3番目になるでしょうか。ここで質向上・質保証システム部会と大学院部会、その他部会が設定されておりますけれども、これは縦割りにせずに、大学院であるとか、あるいは地域創生であるとか、リカレントとか、切り離して考えるよりも、それら全体がうまく兼ね合って、日本の方々が1回、大学を卒業しても、最初の大学は地域にいても、都市部にいても、いつでもリカレントをできて、そして、それがぐるぐると回って正の転換を遂げていくような大胆なシステム改革を考えたほうがよいのかなと思いまして、部会の枠にとらわれない、もっと大胆な提言みたいなアイデア、あるいは枠を外すといったような措置をお話合いすることができたらいいかなと思っております。
 以上でございます。よろしくお願いします。
【吉岡分科会長】  よろしくお願いいたします。
 では、中村委員、お願いいたします。
【中村委員】  山梨大学の中村でございます。私のほうは、先ほど田中委員からお話がありましたが、山梨大学と山梨県立大学、設置は違いますが、令和3年3月に大学等連携推進法人をつくらせていただきました。現在、教養共通科目、約95%、190科目を連携開設科目としております。今年中には両大学の教養科目は全部一緒にすると。これは決して2大学だけでやるわけではなくて、できれば国立、公立、私立の枠を超えた、もっともっと広い連携をしていきたいと思っていますし、ある意味、県内にとどまらず、他の都道府県とも連携しながら、ということも考えております。
 私も特別部会の委員をさせていただきましたので、今回の方向性と具体的な方策つきましては、先ほどお話が出ていますが、質の向上とアクセスの確保、それから、これからの大学の規模におきましては、これは決してバラバラではないと思うのですね。やはりお互いが関係性を持ちながら、調整をしていくということが非常に大事だと思います。特に大学は、各大学によって事情が違うと思っています。山梨というのは非常に小さな県であり、しかも、首都圏に非常に近いため、首都圏にどんどん学生が入ってしまうのです。高校生、大学進学の高校生のうち、山梨大学内の12大学に残る高校生は4分の1しかいません、という状況があります。このような場合はやはり、先ほどからお話が出ていますが、産官学金の連携を密接にするということが非常に大事だと思っています。今日、石川室長が、来られていますが、地域大学振興室が今度、高等教育の中にできましたので、そちらと連携を取らせていただきながら、早速、私どもの大学では、企画課の中に地域振興のための企画室をつくりました。これを基にしながら、産業界と、自治体と、それから金融界、それらと一緒に組んで、できれば常置の機構をつくっていきたい、このような機構をしっかりつくっていきたいなと思っております。
 そのために、今、準備を進めている段階ですけが、たまたま先週の4月17日の木曜日、18日の金曜日、全国の経済同友会セミナーが広島でございました。行かせていただきまして、非常に勉強になりました。地域づくりという分科会に入ったところ、地方創生のことでして、必ずここは産官だけではなく、学と金が入ってくるということを実感しました。やはりこの4者が、連携を持ちながら進めていくことが非常に大事だと思っております。具体的な質の向上の面で言いますと、先ほど大森委員が最初にお話になりましたが、私も地方創生、地域大学の振興のための有識者会議に入らせていただきまして、やはり学生自身が自ら課題を持つようなPBLが絶対必要だと思っています。そのためには、大学に入って急にはできないので、基本はやはり小学校、中学校で行われているような総合的な学習の時間とか、あるいは高校の探究の時間など、それらをベースにしながら積み上げていくという教育システムが非常に大事になってくるのかなと思っています。そういったところをやはり学生自身が面白く学べるような教育制度をつくっていきたいなと思います。
 もう一つ、加藤委員が先ほどおっしゃったAIは非常に大事だと思います。たまたま広島県知事の湯﨑知事と話ができまして、広島県では、AI特別チームを5人つくったというお話を聞きました。私も早速、大学側の資産があまりないものですから、いっぱいいるAIとかDXが大好きな学生を集めて学生チームをつくりたいと思っております。それを根底にし、大学の業務も、あるいは地方創生のいろいろなことも含め、AI、DXを利用しながら今後進めていくということも非常に大事だなと考えております。
 以上でございます。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。
 では、濱中委員、お願いします。
【濱中委員】  早稲田大学の濱中でございます。よろしくお願いいたします。
 知の総和答申の最後のほうで、高等教育機関の必要なコストを算出するという点について言及されていたかと思います。大学分科会には、前期にも参加させていただきましたが、その際の締めくくりで、教育には資源が必要であって、このような算出は重要な作業であるということを申し上げた記憶がございます。本日は、この必要コストの算出というのももちろん大事ですけれども、それに加えて、今、実際にどれだけのコストをかけて、それによってどのような教育が提供されているのか、提供できているのか。そういった実態を検証する視点も欠かせないということをお伝えできればなと思っております。
 前期ですけれども、質、規模、アクセス、この3つの観点から議論を進めてまいりました。これら3つの中で、とりわけ質の問題を取り上げますと、その保証や向上につきましては、評価制度とかFD、グッドプラクティス、IR、可視化とか、これまでにない施策を足して示すという形で取り組んできたと捉えております。しかし、既に二、三十年にわたって改革が重ねられてきたにもかかわらず、その成果が十分に実感されていないと、できないというような声もあります。中には疲弊という言葉すら聞かれるようになっています。本日、コストの検証に言及したのは、こうした足し算の取組が重要である一方で、引くとか、整理し直すとか、そういったアプローチも今後は必要になってくるのではないかということを申し上げたかったからです。引くとか整理をするというふうに申し上げますと、近年では何か大学の淘汰や削減といったネガティブな文脈で受け取られるかもしれませんが、私が申し上げたいのはそうした方向ではなくて、例えば現場レベルで言えば、無理に選択科目を増やしていないかとか、オンデマンドで十分対応可能な内容を全て対面で行っていないかとか、一定の標準化が望ましい科目であっても標準化を避けたためにかえって教員の負担が増えていないかとか、可視化のための作業が本来の目的を超えて過剰になってしまっているのではないかとか、そういった現状の体制を維持するにしても、少し立ち止まって整理し直すことが必要ではないかなと感じております。こうした整理が進めば、大学教員にある程度の余裕が生まれて、結果として、一つ一つの授業、教育活動により力を注ぐことができるようになる。そうした状況が、現状を打破する、質を向上させる糸口になるのではないかなと考えております。
 今、述べましたのは現場レベルの話ですけれども、整理し直すという視点では、カリキュラムとか授業に限らず、学部、大学院の関係性、また、専門学校、短期大学、専門職大学、4年制大学の制度的役割や接続関係、さらには修士、博士の構造的整理にも関わってくるものになります。制度全体が今もう複雑化して混迷化しているというふうに見られる中で、改めてその関係性を整えることが求められているのではないかなと感じています。さらに申し添えれば、授業内容の一定の標準化や教育システムの整備が進まなければ、今後重視される機関間とか、設置者間の連携、この連携も現実にはなかなか進まないことが予想されます。今期も既に多くの課題を抱えておりますけれども、こうした引くとか整理し直すといった視点も今後の議論の中に位置づけていただければなと思っております。
 以上です。
【吉岡分科会長】  濱中委員、ありがとうございます。
 続きまして、平子委員、お願いします。
【平子委員】  ANAホールディングスの平子と申します。特別部会にも参加させていただきまして、いろいろな議論ができました。私は航空業界に携わってきましたので、教育問題を航空業界に当てはめて考えてみようと思いました。若干無理なところはありますが、航空会社の命綱は実はアクセスです。言い換えると、ネットワークをどのように張り巡らすかが常に経営課題であり、日本の現状を見ると、人口減少に伴って地方への需要が急速に減少する中でネットワークをどうやって維持するのかが毎年のように大きな課題になっています。
 ネットワークはその地域だけに限定すると先詰まりになってしまうのですが、例えば海外の路線と繋がると、外国人が日本の地方にやってきます。現在の日本は、訪日旅客で大にぎわいしているわけで、こういった相乗効果が生まれてくるのですね。つまり、ネットワークを拡大することで相乗効果が生まれ、それは規模にも質にも影響してくる。お客様の質というのはなかなか定義が難しいのですが、例えば、定期的に乗っていただけるお客様が増えるといったことも含めて、先ほど中村委員おっしゃったように、質と規模とアクセスというのはそれぞれ独立変数ではなくて、連関していることが航空業界でははっきりと言えるということを皆様とは共有したいと思っています。それから、先ほど廣津留委員がハーバード大学のお話をしていただきましたが、大学のオートノミーも大事だと思っています。つまり、ガバナンスとかコンプライアンスをあまりにも強調し過ぎると、オートノミーが失われることになる、これは避けなければならない。ガバナンス、コンプライアンスとオートノミーをどう両立させるのかという問題、これも非常に大事なことであります。2月の答申では、2040年には18歳の人口が3割ぐらい減るというショッキングな状況になるのですが、そんな状況下で、大学同士のネットワークを強化することで、このような問題は解決できるのではないかという期待感を持っています。人口減少が単一の変数であるのではなく、それ以外にも幾つかの変数があるはずで、そのようなことをこれから先、考えていけるような部会にできたらと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。
 【吉岡分科会長】  よろしくお願いします。
 本間委員、お願いします。
【本間委員】  早稲田大学の本間でございます。今回から参加させていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。
 私もこの12期の答申、それから、13期に予定されています部会を拝見いたしまして、非常に重要な課題がたくさん並んでいると存じます。特にこの中で、大学院関係にフォーカスしていきますと、やはり大学院の教育をどういうふうにしていくかというのはものすごく大きな課題の一つだと思っております。もちろん大学院自体は、かつてはというか、研究者養成、学術を進展させていくという、それはそれで非常に重要な課題なのですけれども、やはりそういう学術ということだけでなくて、実社会でいろいろ、そういうような知識を、専門知識を身につけた人材が求められてきているというところがあるかと思います。
 言うまでもありませんけれども、かつては、学部を卒業して、あとは企業さん等々でオン・ザ・ジョブ・トレーニングで、それぞれの業務でスキルを磨いていくという経験を積んでいくというところから、今、世界的にも非常に多くの課題が複雑化してきておりますし、スピードが速くなってきております。ですから、例えばデータサイエンスを使った何かのアプローチが必要というときに、なかなかオン・ザ・ジョブ・トレーニングですと、そこが効率よくタイムリーに身につけられない。そういうところはやはり大学がそういうところを提供する。それから、あるいはそういう学生さんを世の中に送り出すだけではなくて、実際に企業等々でいらっしゃる方に対してもそういうような知を効率的に提供するというような、そういう機能も非常に重要になってくるかと思います。
 もう一つ大事だと思いますのが、前期の12期のところで、人文・社会科学系の大学院のお話をいろいろ検討されていると拝読いたしましたけれども、そこのところも非常に重要だと思っております。今の流れでいきますと、とりわけ人文・社会系の大学院の方というのは、企業さんがこれまであまりこう、求めてこられなかったところがあるかもしれませんけれども、今申し上げたようなところで課題が重要になってきているところで、そういうような専門的な知識が非常に重要になってきていると思います。
 私自身は、専門が化学ですので、簡単に言うと、いかによいものをつくるかということでずっと学生の教育をして、社会にも送り出してきたわけですけれども、あるときから、博士で何か出ていった子が、いや、自分はそういうつもりでやって、いいものをつくってきたんだけども、必ずしも、いいものをつくっているだけで当然済まないという時代がなってきているわけですね。そうすると、やはり技術だけではなくて、その横もちゃんと見る、世の中にそれをどういうふうに実装していくかというところはやはり人文・社会系のような幅広い知識が必要になってくると思います。
 要するに、これも文部科学省様が卓越大学院、それから、その前のリーディング大学院等々で、産業界で活躍する、アカデミアでということでなくて、産業界で活躍できるような博士人材の育成というプログラムの御支援をいただいてきておるわけですけれども、そういうようなところというのは非常に重要になってくると思います。
 では、そういう博士人材、大学院教育をするときにやはりその質保証をどうするのだというのは非常に重要になってくるわけです。恐らく学部のように、3ポリシーでどうこうということではなくて、もうちょっと別の物差しというか、観点で考えないといけないと。ただ、質保証というか、何か決まりがあって、そこにはまって、どれだけの達成度というのではない。何かもう少し違うというか、別の観点からのそういう質の保証の仕方というのも重要であろうと思っておりますので、そういうところも私自身も考えていければと思っております。
 あとはもちろん多くの皆様がおっしゃられましたように、国際的な中でどういうふうにやっていけるかですとか、そういう多面的なところも含めて、どういうような人材を大学院で育てていけるかというところが重要かと思います。
 あと最後に1点。逆向きの、大学に入る前の、中学、高校と来る、そこの接続も、これも多くの先生方おっしゃられましたけども、非常に重要だと思っております。私どもも附属・系属の中学、高校を持っておりますので、そこの方々ともいろいろ話をしますけれども、やはり大学に入ってくるときには、もう何というか、決まっちゃっているというか、固まっちゃっているといいますか、そういうようなところも多々ございます。ですから、そこはなるべく若いうちからいろいろ興味を持って、それを伸ばしていけるような仕組みというのも非常に重要だと思っております。
 以上でございます。どうぞよろしく願います。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。
 益戸委員、お願いします。
【益戸委員】  ありがとうございます。益戸です。グランドデザイン答申から昨年度の知の総和答申まで、約8年間、大学分科会や特別部会での議論に参加させていただいておりました。私の歴史を振り返りますと、日本の大学を卒業して、メガバンクの前身である都市銀行に入って、人事部や市場部門を経験致しましたが、1987年に当時、銀行が始めた金利のリーディングが面白そうだと、金融工学に引かれて、何もバックグラウンドがないのにもかかわらず、外資系の金融機関に飛び込みました。当時、80年代に外資系に行くというのは極めてまれで、一体、益戸、何が起こったというふうに言われたのですが、そこから約40年弱、苦労の連続でありまして、今風に言えば、学び直しの連続、商品を考える際の勉強、マネジメントの勉強、そして、組織としてどうあるべきかの勉強、その連続でありました。この経験に基づいて感じることは、日本の教育を通して、どうしたら一人一人の能力を向上させていく仕組みができるのだろうかと、それをちゃんと社会実装できるのだろうかという事です。
 私が一緒に働いていた世界各国の仲間たちというのは、何か当たり前のようにその力を持って臨んでくるのですね。もちろん学部卒と院卒とドクターでは明らかに差があって、給料も違いますし、能力も違っていました。私は学部卒ですから、そういう意味ではたたき上げの外資系生活を送ってきたのかも知れません。
 知の総和答申作成を通して様々な議論を重ね、たくさんの改革プランが誕生して、現実のものとなりつつありますが、実装のスピードはさらに加速していかないと、今後の少子化加速やAIなどの技術発展には追いつかないと思います。
 今の世の中は、エコノミストやアナリストが考える以上のスピードで進行していく。大体これが世の常で、どんどんそのスピードは速くなっています。この「知の総和」向上答申ではっきり向かう方向性を出しました。具体的には、各高等教育機関がそれぞれの固有のミッションを再認識して、それを実行に移し、かつ、それを国がしっかりと支援をしていくべきだという結論を出したわけです。
 スピードアップをしながら今年度も議論に参加させていただきたいと思っておりますが、先日、ニュースを見ておりましたら、上場企業でも、まだ大学卒と大学院卒の初任給の給料が同じ会社がございました。これはどうなのでしょうか。どちらがどうというわけではないと思うのですが、やはり学部と大学院の接続を改めて見直して、より多くの学部生が大学院へ進む魅力を感じるプログラムをつくる、そして、それを担保する制度をつくるということも大切だと改めて思いました。これは理工系の話ではなくて、特に人文社会系では非常に重要なことだと思っております。今年度もどうぞよろしくお願いしたいと思います。
【吉岡分科会長】  よろしくお願いいたします。
 では、吉見委員、お願いします。
【吉見委員】  吉見でございます。私も、2017、2018年のグランドデザイン答申のときからこの大学分科会の議論に参加させてきていただいております。前回の知の総和答申でございますけれども、私はやはり最も重要な点というのは、2035年に59万人の大学進学者が2040年には46万になる、27%減るという、この数字は大変重いのですね。この状況にどう対処できるのかを全力で考えるべきです。しかも、この現象は空間的な偏りを持っていまして、首都圏と地方で状況は全く違う。地方は今の日本の高等教育が抱える難しさに集約的に直面していきます。これをどう考えるかということだと思います。
 しかし、他方、私は、この前回の分科会でも発言をさせていただきましたけれども、地方はすごく大きなポテンシャルを持っている。それを3つほど挙げさせていただきますと、1つは空間的な豊かさだと思います。人口減の中で、自由にいろいろな形で使っていけることのできる空間、空き家とか施設が増えてきている。
 2つ目は時間的な豊かさだと思います。能登半島地震で被災した珠洲市に視察に行ったときに、ある20歳ぐらいの女の子がそこに移住し始めていて、彼女が言ったことが刺さりましたけれども、「珠洲には珠洲の時間があります。それは東京とは全然違います」、これはいい言葉だと思いました。確かにそうだと思います。東京の時間で測ってはいけないということはとても痛感します。
 そして3つ目は、人間関係の豊かさだと思います。高校ですけども、離島留学が結構展開していますけども、離島留学に行ってきた子たちの話を聞くと結構いいのですね。やはり人間関係が本当に東京では味わえないような豊かさがあって、その豊かさの中で彼らが育っていることを実感します。そういうふうなことを、では、どういうふうに未来の大学の形として展開していくことができるのか。
 3つ、これも手がかりがあると私は思っています。
 一つはやはり社会実践だと思います。19世紀以来、フンボルト原理で言ってきたような研究と教育の一致だけでは、もうどうにも日本はやっていけない。研究と教育プラス、やはり社会実践ということがある。この3つのトライアドな構造をどういうふうに生かしていくかということだと思います。
 2つ目は、オンラインというか、デジタルに媒介された流動性だと思います。デジタルを使っていくことで、地方のいろいろなところに半ば移住しても大学の授業に参加できる。地方にいたままでもいろいろな授業に加われます。デジタルをうまく使えば、学生たちが地方でいろいろなことをできるし、地方の中に入っていけるわけです。ですので、このオンラインによる流動性にも新しい可能性があると思います。
 3つ目は、あえて申し上げますけれども、私はやはり大学は自由というか、知的自由というか、何というか、フリーダムなのか、リバティなのかはいろいろありますけれども、これだけ全世界でポピュリズムが席巻しているというか、もう唖然とする状況です。アメリカなんかを見ていて本当に危機的ですけれども、そうした唖然とするような状況が世界に広がっていく中で、やはり自由、大学は知的自由の場なのだということをあえて言っていく。自由のために闘う姿勢がやはり大切なのではないかと思います。
 最後に一言だけ。先ほど加藤委員、中村委員もおっしゃいましたけれども、人口減の問題は大きいのですけれども、それと並ぶぐらいに大きな問題はAIだと思います。学生たちもChatGPTでレポートを書いています。一見、結構出来がいいんですよね。だから、学生たちが自分で書いたよりも、ChatGPTにお願いして書いたほうが評価が高くなりかねない。しかも、見分けることがほとんど難しい。こういうAI社会、学生たちが普通にAIを使うようになった状況の中で、大学教育はどういうふうに可能なのかというのは、これはまだここに入っていないですけど、やはり本気で考えたほうがいい問題だと思います。
 以上です。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。
 それでは、副分科会長のお二人に御発言をお願いします。
 橋本委員、お願いいたします。
【橋本副分科会長】  橋本です。前期から引き続き、大学分科会の議論に参加させていただきます。よろしくお願いします。
 私、今期は総会の会長も拝命しておりますので、各分科会との接続や連携といった面も意識をしながら、参加させていただけたらなと思っています。
 今期は、前期の議論を踏まえて、新たな質の向上、質保証のシステムの構築というのが大きなテーマになってきているわけですが、これについて2点ほど、私自身の問題意識も含めてお話をしたいなと思います。
 1点は、やはり評価を何のためにするのか、そして、その評価はどんなふうに反映されて、どのように活用されて、そして、誰にどのような効果をもたらすということを期待しているのかということについて改めて整理して、その上で制度設計を行っていくことが大事なのではないかと思っています。そして、それらをしっかりと分かりやすく発信していくということも非常に大事かなと思っています。
 評価をして、それが評価された主体の次の行動変革につながっていくということが大変重要ですので、評価疲れとか、評価のための評価といったようなことに陥らないような制度にする。そのためには何のための評価なのかという大きな視点を意識した議論を行っていくことが大事かなと考えています。
 もう1点は、多様性の時代と言われておりますし、前回の答申でもそういう可能性についての言及がございましたけども、各大学が今後、大学の特色を出していくために、多様性ということを大変重視をされていくと思うのですが、その場合に、多様な大学が存在して、多様な教育で研究がされるということは大変いいことで、我が国の高等教育の質が高まって幅が広がっていくと理解しているのですが、一方で、それをどう評価するかということになりますと、一定の基準で評価することについて困難性が増しますし、他方で、多面的に評価をするということになりますと、評価軸が細かくなって、評価する側、される側の双方の負担が増大してくると思います。これは二律背反するようなことなのですけども、この評価の効果と大学の負担のバランスといったものもしっかり考えた上で、評価の目的に合った制度というのをどうつくっていくかという議論をする必要があるかなと考えております。
 今期もどうぞよろしくお願いいたします。以上です。
【吉岡分科会長】  よろしくお願いいたします。
 では、和田委員、お願いします。
【和田副分科会長】  ありがとうございます。金沢大学の学長をしております和田隆志でございます。第12期に引き続きまして、今回もお世話になります。先ほど副分科会長にも御指名をいただきました。もとより微力ではございますけども、精いっぱい務めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 先ほどからお話が出ております知の総和答申、これに関しましても、さらなる活力ある社会に向けて、この教育研究の質の向上、高度化ということが求められているのだと思います。その中でも高度専門人材の活躍は必要だと感じます。特に大学院、これは人文・社会系をもちろん含めて、大きなテーマだと感じます。今回議論されます質の保証、向上も重要な要素に当然なってくると思います。
 私どものところは、先ほど吉見委員もお話をいただきました、昨年1月に能登半島地震がございました。9月には奥能登豪雨もございました。もともと過疎地というところに今回、復旧、復興、再建という課題が加わったと思います。私どものところでも、高等教育機関の在り方、初等中等教育機関との連携、在り方というのをずっと考え続けています。その復旧、復興、再建の中でも、殊に希望とか明るさとか、あるいは、先ほど加藤委員もお話しされました、わくわく感とか面白さみたいなものが改めて必要だということを痛感しております。未来の有為ある若者、その豊かな未来に資する議論が少しでもできればと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 それでは、私からも一言御挨拶させていただきます。最初に御挨拶させていただいたので、ダブらないようにしたいと思います。
 一つは、この分科会は大学分科会という名前ですけれども、この大学はもちろん狭義の大学ではございませんので、本来なら、役所用語だったら多分、「等」がついて、大学等という言い方をされるようなところですし、広く高等教育機関、高等教育全体を見据えていく議論を進めていくべきところだと。そういう意味では、短大はもちろん、高専、専門学校の委員の方も含まれています。
 私自身、専修学校の質の保証・向上に関する調査研究協力者会議という長い名前の会議のメンバーをしておりまして、そこで専修学校の現状も含めて、今後どういうふうにやっていくかという議論に参加させていただいて、大変勉強になりました。技術教育であるとか技能を身につけるということがどういうことなのかというのを改めて考える機会でした。そういう意味では、ここでもそういう問題を考えていく必要があるだろうというふうに思っています。
 一方で、大学等ですが、もちろんこれは大学院が入るわけですが、大学院だけではなくて、もうちょっと広く、広い意味では研究機関がもちろん視野に入るわけで、研究と教育というのはやはり切り離せないものですので、その研究との接続であるとか、その関係を考えていくということが大学分科会という、大学等分科会の課題だろうと思います。
 今のことにつながりますけども、これは多くの委員がおっしゃっていましたけども、初等中等教育との連携といいますか、接続の問題というのは非常に大きな問題で、学修者本位というふうに言いますけれども、一人一人の学生といいますか、一人一人の人間は、小さいときからずっと一人の成長のプロセスの中にいるわけで、教育の段階というのはもちろんあると思いますし、その機関が区別されているのは当然だと思いますけど、そこをどういうふうにつなげていくのかということは、やはり人間の成長という点から常に考えていかなければならないと思っております。
 もう一つ、高等教育機関というのは、やはり知識の伝授といいますか、授与ということが非常に重要な役割だと思いますけれども、単にその知識を授与する場所ではなくて、今言ったことで言うと学生の成長と言いますか、人間的成長というふうに言われるような、そういう成長の場であると思います。知的にはもちろん、広い意味での人間的な成長、倫理的な成長、そういう視野の広がりといったことで、そういう意味では、課外活動であるとか課外教育であるとか、あるいはアルバイト、それから、趣味の世界というものがかなり自由に行われる空間というのがやはり大学で、まあ、大学等ですけれども、その部分というのがやはり非常に重要なものだろうと。例えばキャンパスの問題ということにもつながると思います。
 もちろん授業を中心とする教育の部分というのが重要ですが、それはそういう学生生活という広い環境の中にあるわけで、ここで学生生活一般の議論をするということは多分ないと思いますけれども、しかし、視野には常に入れておくべきだと思っております。
 その環境の問題というのを考えたときに、大学を構成している職員という、要するに、大学の教育環境をつくっていく職員の問題というのは非常に重要で、これは例えばすぐ思いつくのは、大学等の国際化といったときに、やはり国際化のプロセスを担える職員がいるかどうかというのは決定的なことだと思うのですね。そういう意味では、職員であるとか、地域連携の話で言えば、コーディネーターという、そういう人たちを育てていくということ自体も大学の役割だと思っております。そういうことも、どの部分に重点を置くかということは別にして、視野に入れながら、議論していくことが必要だなと考えているところです。問題は非常に大きいと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、皆様から御意見を伺いました。今回欠席されている方もいらっしゃいますけれども、今後、議論の中で御意見を伺えると思っております。
 それでは、残りの議事に移りたいと思います。議題(4)教育課程特例認定大学等としての認定に係る審査結果、議題(5)地域大学振興に関する有識者会議、議題(6)博士人材の活躍促進に向けた取組について、まとめて事務局から説明をお願いいたします。
【石川地域大学振興室長】  まず、資料4、5につきまして、大学振興課長の代理で、地域大学振興室長の石川から説明いたします。
 まず資料4、教育課程特例認定審査結果でございます。こちらは1月から2月、教育課程等特例制度運営委員会を経て、大学分科会の書面審査で3月6日に承認いただいたものです。そちらにつきまして、こちらは、その後、初の対面分科会でございますので、報告いたします。
 特例制度の概要でございますけれども、1つ目にございますように、大学設置基準等で、その質の担保の観点から、授業科目につきまして、自ら体系的に開設する原則等が定められているところでございます。
 〇の3つ目でございますけれども、そういった大学設置基準等の特例につきまして、先導的な取組を行おうとする場合に、文部科学大臣が認めた範囲におきまして、上記基準等を緩和する制度でございます。
 こちらは2番でございますけれども、全国で4大学が指定されております、教員養成の関係のフラッグシップ大学であります大阪教育大学と、地域の私立大学であります札幌大学から申請がございました。申請内容でございますけれども、札幌大学が、大阪教育大学が開設するフラッグシップ大学で実証研究しております先導的な授業科目を自大学の教職課程科目と位置づけるため、特例制度の認定を受けようとするものでございました。併せて、生徒指導、進路指導に関する科目についても同様に認定を受けようとするものでございました。
 申請結果でございますけれども、大阪教育大学のフラッグシップ大学としての先導的な教職科目の広域的な普及・発信、また、地域での質の高い教員養成課程の維持等の趣旨を踏まえまして、特例制度の活用は適当と判断していただきまして、大学分科会でも認めていただいたところでございます。
 諸手続を経まして、令和8年度から実施予定でございます。
 続きまして、資料5でございます。地域大学振興に関する有識者会議でございます。こちらは趣旨でございますけれども、知の総和答申の提言等を踏まえまして、地域アクセス確保や地方創生など、地域大学の振興の在り方について総合的に議論するために設置したものでございます。
 協議事項は御覧のとおりでございますけれども、構成員は、本分科会からも、大森委員、田中委員、中村委員に御参画いただいております。委員、特別委員、併せまして、地域の産官学金労言、また、学生も6名含めまして、地域大学振興のステークホルダーに参画いただいておるところでございます。
 併せて、オブザーバーにも、総務省、経済産業省をはじめ、幅広く参画いただいているところでございます。4月21日に第1回の会議を開催いたしまして、委員、オブザーバー、また、一部の特別委員からも御発表等いただきまして、地域での高等教育の学びの場の在り方等につきまして、意見交換いただいたところでございます。
 今後、策定予定の政策パッケージに関する議論を優先的に実施しながら、地域大学振興の在り方について順次議論し、具体的な施策につなげる予定としております。
 以上でございます。
【髙見高等教育政策室長】  続きまして、資料6を御覧ください。博士人材の活躍促進に向けた取組について説明します。
 文部科学省と経済産業省におきましては、令和6年3月に取りまとめました博士人材活躍プランを踏まえまして、昨年の夏から、博士人材の民間企業における活躍促進に向けた検討会を開催してきました。人口100万人当たりの博士号取得者、これは韓国、英国、ドイツ、また、米国に比べて、日本は3分の1ということで、これを2040年に向けてしっかりと博士人材を増やしていくと。今、大きな目標を立てて取り組んでいるところです。
 この検討会では、博士人材の活躍について取組を進めている企業あるいは大学の担当者にヒアリングを行いまして、博士人材の民間企業の就職を進めるための大学による支援、あるいは企業が採用のために工夫できる事項について検討を行い、博士人材の民間企業における活躍促進に向けたガイドブック、企業で活躍する博士人材ロールモデル事例集、そして、博士人材のファクトブック、この3点について、3月末に取りまとめたところです。QRコードをつけておりますので、またお時間があるとき、御確認いただければと思いますけども、このガイドブックにおきましては、企業の採用担当者や経営者、あるいは大学関係者において取り組むことが奨励される取組を具体的に分かりやすくまとめるとともに、学生へのメッセージを掲載しております。特に大学への手引としましては、博士課程を有する大学が考えるべきことや、本格的なキャリア支援のための具体的な取組を記載しております。また、ロールモデル事例集については、実際に企業で活躍する博士人材が自身の専門に関連する分野、研究開発にとどまらず、汎用的な能力を生かして、研究開発以外の分野あるいは専門分野と異なる分野で専門性を身につけて活用している事例につきまして、就職後、数年から20年、30年ぐらいまでの幅広いキャリアを持つ方々の活躍事例ということで掲載しております。さらに、ファクトブックですけども、こちらについては業種別の博士人材の初任給、先ほど議論もございましたけども、初任給あるいは企業別の博士人材の採用数などの就職四季報等の情報に基づく具体的なデータというのを掲載しているところです。
 文部科学省としましては、引き続き経済産業省と連携しながら、こうした文書の普及、展開等を進めまして、博士人材がアカデミアのみならず、多様なフィールドで活躍できる社会の実現に向けて取り組んでまいりたいと考えているところです。
 私からの説明は以上でございます。
【吉岡分科会長】  ありがとうございました。
 何か質問ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、議題(7)大学等における修学の支援に関する法律の改正等について、説明をお願いします。
【桐生学生支援課長】  学生支援課長の桐生でございます。資料7の大学等における修学の支援に関する法律の改正等について御報告いたします。
 次のページの1ページを御覧ください。この法律は、もともとですけども、おととしの12月に、こども未来戦略というところで、少子化が非常に進んできている中で、特に子供の教育費の負担、その中でもとりわけ高等教育費は負担が重いということもありまして、多数の子等の教育費を負担している世帯に関しての負担軽減を図る方策を講ずるといったことが、この未来戦略に盛り込まれました。こちらの閣議決定に基づきまして、昨年の夏に文部科学省としても概算要求をしまして、今、開催されています今国会において、予算も審議をかけさせていただきました。併せてこの内容を法律として、国会に提出させていただいたのが2ページ目になります。
 こちらの法律でございますけども、詳細を次の3ページで御説明させていただきたいと思います。3ページを御覧いただきたいと思います。真ん中の4の公費による支援というところを御覧いただきたいと思うのですけども、横軸が世帯年収になりまして、右に行けば大きくなるのですけども、現行制度では、これまで、昨年度まではこの青い部分の低所得世帯を中心としたところに対しての授業料減免等、その下のほうの緑のところを御覧いただきたいのですけども、返済不要の給付型奨学金と、この2つの2本柱で、公費による支援というのをやっておりました。これは高等教育の修学支援新制度というものでございます。
 今回、新たに黄色い部分、赤枠で囲われています多子世帯と申しますけども、年収制限なく、多子世帯であれば、この授業料減免のこれまでの規定の上限額いっぱいまで、国立大学であれば約54万円、私立大学であれば70万円、こちらの最大額までを、新たに41万人の方々が対象となりますけども、これを対象とすると。これまでの青の部分しかなかったものに対して、授業料減免の多子世帯分、の黄色の部分を追加するといった法律を今回お認めいただきましたといったものでございます。こちらは合計で2,600億円の増となりまして、これは消費税財源、消費税の8%から10%に引き上げるときの財源を活用して、こちらの財源とさせていただいております。
 これが今回、3月31日に参議院本会議にて成立しまして、当日、公布いたしまして、今年、今月の4月1日から施行となっておりまして、今まさに申込みが始まっているところといった段階になってございます。
 続いて、4ページを御覧いただきたいのですが、この法律改正に合わせて、政省令の改正もしております。2に書いてありますけど、資産要件とありますけども、年収制限と別に、資産をたくさん持っていらっしゃる方は制度の対象外となりますといった規定がございました。これまでは、低所得世帯では2、000万円が条件、基準だったのですけども、今回、それを引き上げまして5、000万円としておりますし、多子世帯に関してはこれを3億円にしております。それぞれの区分で約0.2%ぐらいのみ対象となるといった資産要件の大幅な引上げといったことをさせていただいております。
 また、併せて、3番目の学業成績の要件に関しては、昨年、有識者会議を開きまして、こちらの適正化を図ると。これは今年度から適用するといったものとなっております。
 また、4の機関要件でございますけど、これは来年度からの適用になりますけども、12期における本大学分科会の議論の中でも、知の総和答申の中でもありましたけども、地域における大学の高等機関の重要性と、エッセンシャルワーカーを特に活用されているような、養成されている大学等もあることから、そういった地域社会にとって重要な人材育成を行う機関であると認める場合には、一定の確認、取消しの猶予をするといったことを今年度の手続から入れまして、来年度から適用するといったことも新たな仕組みとして導入することとしております。
 多子世帯の無償に関しては、かなりお問合せも多いところですので、我々としても該当される方が、皆さんがちゃんと受給ができるような形での周知や広報をちゃんと進めていきたいと考えております。
 御報告は以上です。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。
 先ほどの4から含めて、7までの議題につきまして、何か質問、御意見ございましたら、御発言ください。オンラインの方々もよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。それでは、何か細かい御意見等ありましたら、事務局のほうに御連絡いただければと思います。
 これで本日の議題は全て終わったことになります。今期、新委員12名含めて、分科会委員は全部で32名、小学校の30人のクラスぐらいの大きさで、ゼミを考えると議論するにはちょっと多いかもしれませんけれども、それでもできるだけ活発な議論ができるようにしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、最後に、今後の大学分科会の日程等について事務局から説明をお願いいたします。
【花田高等教育企画課課長補佐】  本日は活発な御議論をいただきまして、誠にありがとうございました。
 次回の日程、開催方法等につきましては、現在調整中でございますので、決まり次第、またお知らせさせていただきます。
 以上でございます。
【吉岡分科会長】  ありがとうございます。
 それでは、本日の議事を終了いたします。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

── 了 ──

お問合せ先

高等教育局高等教育企画課高等教育政策室

(高等教育局高等教育企画課高等教育政策室)