大学分科会(第176回) 議事録

1.日時

令和5年12月22日(金曜日)15時~17時

2.場所

Web会議

3.出席者

委員

(分科会長)永田恭介分科会長
(委員)後藤景子、橋本雅博、古沢由紀子、湊長博、吉岡知哉の各委員
(臨時委員)相原道子、多忠貴、大野英男、金子晃浩、小林弘祐、志賀啓一、須賀晃一、髙宮いづみ、曄道佳明、濱中淳子、福原紀彦、益戸正樹、両角亜希子,吉見俊哉,和田隆志の各委員

文部科学省

(事務局)池田高等教育局長、西條大臣官房審議官、伊藤文部科学戦略官、氷見谷主任視学官、小幡高等教育企画課長、古田大学教育・入試課長、井上国立大学法人支援課長、髙見高等教育政策室長、花田高等教育企画課課長補佐、疋田高等教育政策室室長補佐ほか

5.議事録


【永田分科会長】  こんにちは。第176回の中央教育審議会大学分科会を始めさせていただきます。
 御予定の方は、お一方以外は、皆さん、おそろいということです。
 それで今日はウェブと現場のハイブリッド会議でございます。ユーチューブでライブ配信をしています。そのことを御理解いただいた上で、皆さん、自由な発言ができる環境にいらっしゃるという前提で始めさせていただきます。
 それでは、事務局から連絡事項をお願いいたします。
【花田高等教育企画課課長補佐】  本日はハイブリッド会議及びライブ配信を円滑に行う観点から、御発言の際は挙手ボタンを押していただき、分科会長から御指名されましたら、お名前をおっしゃってから御発言ください。また、御発言後は再度挙手のボタンを押して、表示を消していただきますようお願いいたします。また、発言時以外はマイクをミュートにしていただくなど御配慮いただけますと幸いでございます。
 また、本日の会議資料は次第のとおりでございますが、特に本日の議題でございます「人文科学・社会科学系における大学院教育の振興方策」に関して、資料の1-1で審議まとめ案、1-2で概要、1-3で関連データ集、1-4で学部学生へのアンケート調査結果を配布するとともに、資料2以降にその他議題の関連資料を配付してございます。確認いただければと思います。
 以上でございます。
【永田分科会長】  ありがとうございます。今、御説明ありましたが、今日の議題を見ていただきますと、人文科学・社会科学系における大学院教育の振興方策についてとその他になっております。その他は資料のほうを見ていただくとお分かりいただけると思いますが、最近の高等教育に関わる動向ということについて、皆さんと議論をさせていただこうと思います。
 それでは、最初に「人文科学・社会科学系における大学院教育の振興方策について」です。昨年8月に中間取りまとめを行って、その後も議論を続けていただきました。今回、大学院部会で審議まとめ(案)が取りまとめられたということで、皆さんと議論させていただこうと思います。
 それでは、大学院部会長の湊委員、それから事務局から説明をお願いしたいと思います。湊委員、どうぞ。
【湊委員】  それでは、御説明させていただきます。
 今、お話しのように大学院部会では、この令和3年の7月から継続的に人文科学・社会科学系、これからは人社系と言いますが、これの大学院の在り方について議論を行ってまいりました。
 令和4年8月に議論の中間取りまとめをまとめて、本分科会でも報告があったと承知をしておりますが、その後もヒアリングや議論を続けてまいりました。
 また、資料1-4にあります、後で説明させていただきますが、人社系の学部4年次学生の大学院進学に関する意識調査を行い、人社系の学生約1万3,000名、それから、理学、工学、農学等の自然科学系で約3,000名の学生から回答をいただき、人社系と理工農系の学生の比較を含めて分析を行うなど、さらに検討を進めてまいってきたところであります。
 こういった経過を経て、大学院部会において最終的な審議まとめを取りまとめましたので、本日、本大学分科会において御審議をお願いいたしたく、提出させていただくものであります。
 まず、初めに、資料1-1、これは審議まとめ案の本文ですが、この表紙をめくって1ページ目の目次を御覧いただきますと、大きく5つの章に分けております。1章は「はじめに」として、今回の検討の背景等について紹介させていただいた上で、2章では、人社系の大学院の現状について、3章では、今後の大学院の在り方として、人社系大学院の振興の意義、改革の方向性を示し、第4章では、その具体的な方策を記載しております。最後の第5章で、大学院教育改革に向けた今後の取組についても記載するという構成になってございます。
 審議まとめの中身につきましては、本文は、また改めてお目通しいただくとして、今回はその概要の資料に沿って説明をいたします。
 概要資料は資料1-2でございますので、それを御覧いただければと思います。まず、項目1の「はじめに」というところでございますが、近年、人文科学や社会科学に対する社会の期待は非常に高まっており、若者が研究に安心して打ち込める学修環境の構築や、修了者が多様なフィールドで活躍し、適正に評価される社会の実現が欠かせないと記載をしております。
 項目2の人文科学・社会科学系大学院の現状についてでございます。まず、人社系では、大学院進学の問題意識がより具体的で明確であり、学部から直接進学する学生や社会人の修士課程への満足度が高い。それから、満足度が高いのは、自らの関心への適合度や裁量・主体性の高さによるところが大きいということを記載しております。
 他方で、人社系大学院は、主に研究者や大学院教員志望者のための進路だと考えられている傾向がまだ多いこと。学位取得までの期間が他分野、特に自然科学系分野に比べて比較すると長いこと。それから、修了者の社会での対応の活躍の場と機会が必ずしも可視化・定着していないことなどについて、審議まとめ本文ではデータを含めて記載をしてございます。
 項目の3、これは今後の人社系大学院の在り方についてでございます。今後の人社系大学院の在り方について、課題と改革の方向性について、ここでは整理をしております。まず、社会の要請も踏まえつつ、高い付加価値を生み出す人材の育成・活躍に向けて、大学院への進学者の増加を目指す必要がある旨、記載をしております。
 その上で、課題の1として、社会的評価や認知の不足に関する課題を改善するための取組を進めていく必要があること。課題の2として、大学院教育そのものが持つ課題への改革を進めていく必要があることについて記載をしております。
 そして、改革の方向性として、この2つの課題はそれぞれ相互に密接に関連しており、並行して対応を進め、全体としての解決を目指していくことが肝要であると記載しています。
 1枚おめくりください。4番の項目の具体的な方策でございます。具体的な取組として、今ほど申し上げた社会的な評価の向上と認知の拡大という出口の取組と、幅広いキャリアパスを念頭に置いた教育研究指導の強化という大学教育そのものの取組、この2つに大きく区分して記載をしております。
 まず、最初の社会的な評価の向上と認知の拡大に向けての6つの取組の必要性について述べてございます。具体的には、まず大学が育成する人材像の明確化。2つ目に、社会が求める人材像の明確化として取り組むべき視点を明記しております。3つ目では、社会の様々な分野での活躍促進として、公的機関でのロールモデルの充実に加え、URAなど多様なマネジメント人材のキャリアパスの充実についても、その必要性を提示しております。4つ目には、大学間・企業等とのネットワーク型教育の推進として、大学院が連携してチーム型の教育研究や組織的な就職支援体制への転換を促進することについて記載をしております。6つ目には、リカレント教育やリスキリング教育の推進として、社会人の多様なニーズも踏まえた学修環境の整備を推進するとともに、大学院生と社会人との交流機会の増加についても触れております。
 1枚おめくりいただいて、次に、2つ目として、幅広いキャリアパスを念頭に置いた教育研究指導の強化に向けて、ここでも6つの取組の必要性について述べております。
 1つ目として、教育課程・研究指導の質保証について触れた上で、2つ目に、これまでも大学分科会の類似の答申等で指摘されたことでありますけれども、改めて円滑な学位授与の促進についても述べております。その上で3つ目ですが、博士課程はあくまでも学位授与に向けた一連の教育課程であることなど、指導教員の共通理解の徹底を図る必要についても記載をしております。4つ目には、このような共通理解の徹底を実効性のあるものにするためには、組織的な対応が必要である旨を記載しております。さらに5番目として、人材の多様性と流動性の確保として、いわゆるアカデミック・インブリーディングを抑制するなど、多様な人材が切磋琢磨する環境を整備することが必要であるという旨を記載しております。6つ目に、学部と大学院の連携・円滑な接続においては、例えばゼミを合同で実施するといった大学院や大学院生を知る機会を設けるなど、円滑な接続のための取組についても具体的な方策を示しております。
 また、第3の情報公開の促進につきましては、学位を取得するために要する平均年数です。これはdegree acquisition periodと言いますが、この標準修業年限期間が満了した時点での修了者、在学者、退学者の数と割合等々、情報の公開、ディスクロージャーの必要について触れるとともに、学校教育法施行規則にこれらの事項について位置づけることを含めて検討を進めるべきであるとしております。
 最後に、5番目、大学院教育改革に向けた今後の課題でございますが、今後の課題として、大学院と社会との接続の在り方やリカレント教育推進の在り方、大学における基幹教員や質保証システムの在り方等について、引き続き審議を進めていくことが必要であるということを書いております。
 私の説明は以上でございますが、続きまして、事務局のほうから今回行いました意向調査の結果等について説明をさせていただきたいと思います。
【髙見高等教育政策室長】  それでは、高等教育政策室長、髙見ですけれども、先ほど湊部会長から説明にもございましたが、大学院部会におきましては、人社系大学院の振興方策を検討するに当たっての参考とするために、学部学生における大学院進学の意向調査を行っております。
 私からは、お手元の資料の1-4に基づきまして、この調査結果の概略について御説明します。
 まず、初めに2ページ目の調査概要を御覧ください。本調査ですけれども、人社系の学部4年次の学生の大学院進学に対する意向について、理工農学系の学生との比較も含めて分析し、今後の検討に活用することを目的としたものでございます。
 調査対象ですけれども、人文・社会科学系の大学院を設置している国公私立の289大学と、これらの大学から無作為抽出した100大学のうち、理工農学系の学部学科を持つ27大学の学生であり、本年の5月末から7月末にかけて、インターネットを通じたアンケート調査を行いました。
 3ページを御覧ください。回答数でございますけども、ここにございますように人社系で約1万3,000名、理工農系で約3,000名となっております。以降ポイントを絞って説明します。
 8ページ目を御覧ください。8ページ目でございますけども、現時点での大学院進学に関する考えですが、左のグラフを御覧いただきますと、理工農系の学生の約60%が進学を希望している一方で、人社系の学生は約15%にとどまっていることが分かります。
 一方で、今は進学しないが、いずれ大学院で学びたいと回答した学生は、人社系では約10%程度いることが分かります。なお、以降のデータでも同様ですが、左側は人社系と理工農系、右側は人文社会という形で、さらに個別のデータも併せて御確認いただければと思っております。
 9ページ目を御覧ください。大学院への進学を希望していると回答した学生のアンケートでは、人社系では約4割の学生が学部3年で大学院へ進学するようになったと、進学を希望するようになったと回答する一方で、理工農系では、約4割の学生は大学入学より前に進学を希望していたと回答しています。
 また、下のグラフにあるとおり、人社系の学生の約4割が、自身が所属する大学以外の大学院への進学を希望しており、理工農系の学生と大きな違いが見られます。
 15ページを御覧ください。大学院への進学を希望していると回答した学生に理由を聞いたところ、「良い仕事や良い収入を期待できるから」という点について当てはまると回答した学生は、理工農系が約85%であるのに対し、人社系は50%にとどまっています。
 特に次の16ページにおいて、人文科学系と社会科学系の結果を示していますが、「良い仕事や良い収入が期待できるから」と回答した学生は、人文科学系が約36%にとどまっていることが分かります。
 21ページを御覧ください。大学院への進学をするかどうか迷っていると回答した学生の質問では、大学院への進学をちゅうちょする理由・難点として、「大学院に進学すると卒業後の就職が心配だから」と回答した学生が、理工系が約41%であるのに対して、人社系の学生では約63%となっています。
 27ページを御覧ください。大学院に進学するつもりはない、検討していないと回答した学生のうち、人社系の約54%の学生が大学院への進学を「そもそも考えたことがない」と回答しており、理工農系の学生と大きく異なった結果となっております。
 続いて30ページを御覧ください。大学院や大学院での教育研究イメージについて、これは対象者全員に聞いたところ、研究者や教員志望の人が行くところと回答した人文・社会科学系の学生は約68%となっており、理工農系の約36%と比較して高くなっています。
 また、「大学院に進学すると、社会で幅広く役立つ能力やスキルが身につく」と回答した学生は、人社系が約52%と理工農系の73%と比較して低くなっています。さらに「大学院卒は、学部卒よりも就職に有利だ」という回答につきましても、人社系は約43%であり、理工農系の85%と比較して低くなっています。
 32ページを御覧ください。どのような取組があれば大学院進学者が増加すると思うかという点につきましては、経済的支援、雇用条件の向上と回答した学生が、人社系、理工農系ともに約8割を超えています。
 以上、ポイントを絞って駆け足で説明しましたが、今回の学部学生の意向調査を通じまして、人文・社会科学系と理工農系の学生の大学院進学に関する様々な示唆が得られました。この分析結果を踏まえ、先ほど湊部会長から御説明いただいた審議まとめ案が大学院部会において取りまとめられたものとなっております。
 私からの説明は以上でございます。
【永田分科会長】  ありがとうございました。湊委員と事務局から御説明いただきました。これについて御質問あるいは御意見等をお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。益戸委員、どうぞ。
【益戸委員】  益戸です。すばらしい審議まとめだと思いながらお話を聞いておりました。
 民間企業でのマネジメント経験に基づいて、少しコメントをさせていただきます。
まず、大学院や博士課程ご出身の方の企業における採用ニーズはますます高まっています。このタイミングで、 このようなまとめが出たことは、企業にとっても学生にとっても頭の整理にとても役立つと思います。ありがとうございました。
 企業における大学院生の雇用では、理系と人文・社会系では若干人事評価のタイミングが違うということをお伝えしたいと思います。理系ご出身の方は即戦力になります。一方で、人社系の皆さんは、マネジメント職に近づけば近づくほど、その実力を発揮していただけるという印象があります。やはり学部での勉強は、 卒業に必要な単位を取ることだけが目標になっているのではないかと思います。
 それに対し大学院での生活では、ステークホルダーのためにはどのような研究をしていけばよいのか、 どんなアプローチをしていけばゴールできるのか、 といったことを考える訓練が非常になされています。したがって、 理系企業ではそのような経験に基づいて、特に研究分野などではすぐ企業側のニーズにフィットする戦力となります。しかし、人文・社会系のご出身の方は、 文系企業においては、 学部卒も大学院卒もほぼ同じような仕事からスタートをします。したがって、大学院で学んだことがすぐ役に立つというようなことはありません。しかし、今お話ししたように取りまとめる力であるとか、関連する人たちとの距離感の持ち方であるとか、プレゼン能力などは非常にたけているという印象を受けますし、最終的に、 どうでしょう15年ぐらいたつと、明らかに評価に差が出てきます。せっかくの機会ですから現実をお伝えした方が良いと思い発言させていただきました。
 以上です。
【永田分科会長】  大変参考になりました。ありがとうございます。
 橋本委員、どうぞ。
【橋本委員】  橋本です。大学院部会における取りまとめ、ありがとうございます。
 社会的評価における課題と大学院教育そのものの課題に対する具体的方策について、分かりやすく取りまとめていただいたと思います。経済界、私も経済界の人間なんですけども、やはり社会的課題の解決に資するイノベーションというのが今すごく重要視されていまして、その他のイノベーションを実現するためにも、やっぱり多様な人材が活躍する、そういう場面が必要かと思います。
 博士人材を含む高度専門人材という、こういう存在は今の益戸委員のお話にもありましたけども、不可欠かなと考えています。まさに今、経団連の教育・大学改革推進委員会においても、博士人材の育成、活躍に向けた検討というのは集中的に進めております。経団連の会員企業に対して、博士人材の育成あるいは活躍の現況についてのアンケート調査というのを行っておりまして、その結果を踏まえて、年明けには提言を取りまとめるという予定をしております。これは経団連としても博士人材を正面から取り上げた提言という意味では初めての提言でございますので、また、いろいろ御参考にしていただきたいと思います。
 提言の検討状況については、また、その発表を待っていただきたいんですけども、今もお話がありましたけども、やっぱり今現在、企業で活躍している大学院卒業の方は理系の方が中心になっているんです。人文科学とか社会科学系のいわゆる文科系の方の博士人材の雇用というのは、正直言って極めて限定的というのが現状だと思います。この指針、今回の審議でも取りまとめで指摘されておられますけども、企業側も理系、文化系という分け方ではなくて、求める人材像の明確化とか、あるいは入ってくる方が安心して働くようなキャリアパスを提示するとか、あるいはそのインターンシップを強化充実して、院生の方が企業などを志向する気持ちになる、あるいは選んでいただきたいものを様々な材料を提供すると、こういった努力が必要かなと今思っています。
 一方、大学院におかれても、これは前々から言われていることかもしれませんけども、大学院教育において、専門知識はもとより、やはり課題設定解決能力であるとか、あるいは論理的批判的思考であるとか、あるいは今はやりのデータ分析活用能力であるとか、産業界で活躍する上での重要な能力、これは汎用的能力と言っていいと思うんですけども、そういったものが身につくような教育にも、ぜひ志向していただいて取り組んでいただければと思います。また、こういった能力を身につけるということを大学院として取り組んでいただいているということについて、幅広くアピールしていただければますますいいのではないかなと考えております。
 この博士人材の育成とか活躍というのは、教育と雇用の接続に関わる課題と思っていまして、教育界だけではもちろん不十分ですし、あるいは経済界とか産業界のみでも不十分だと思います。やはりしっかりそれぞれの教育界、経済界、産業界が役割を果たしながら、連携・協働していくということが極めて大事かなと。これはこれまでも努力をしてきたわけですけども、これまで以上の努力をして、もう少しこういった形の人材の活躍の場面を広げていきたいなと思います。
 また、リカレント教育の在り方なんかも今日は詳しい説明はなかったですけども、こういうところを含めまして、ぜひ経済界としても、今後教育界の各方面と連携・協働させていただきたいと思います。
 以上であります。
【永田分科会長】  ありがとうございます。吉見委員、どうぞ。
【吉見委員】  ありがとうございます。大変詳細な意識調査、意向調査のデータありがとうございました。これを丁寧に見ていくと随分いろんなことが分かるような気がいたしました。まだざっと、さっきお話を聞いた限りでございますので、断片的なことしか申し上げられませんけれども、3点、私の視点から断片的な細かいことですけど、申し上げたいと思います。
 まず、第1点ですけれども、これは概要まとめのところの3ページの下のほうに出てくるんですが、よく知られているように、博士課程修了者の標準年限超過率が人文・社会科学系の場合に非常に高いということです。これは周知の事実でございますけれども、私が申し上げるのは、人文・社会系の中でも多くの人文学、社会学、政治学、人類学等で歴史学等で当てはまることで、一部の心理学や経営学はちょっと違うと思うんですけども、それ以外の人文・社会科学は確信を持って当てはまると思うんですが、これは標準修業年限という設定そのものが全く理に合っていないという、人文・社会系の場合はですね。本気でどんなに真面目でどんなに優秀な博士課程の学生でも、最低限まともな博士論文を書こうと思ったらば5年はかかります。ですから、この超過率のことを問題にするのであれば、人文・社会系の標準修業年限を5年にしない限り不可能だと思います。無理に3年にすればろくでもないものしか出てこないというか、国際的に見ても標準修業年限3年で人文・社会系で博士の論文が書けるというリアリティーは世界的にないと思いますので、日本のこの基準のほうが根本的におかしいと私は思います。
 これはかなり確信を持って言えることで、人文・社会系の先生方の大部分はそう思っていると、まともな先生はそう思っていると私は思いますので、これは標準修業年限の設定がちょっとおかしいということです。5年にすれば、プラスアルファプラスマイナスで大体一定のリーズナブルな枠に収まるんじゃないかと私は思います。これが第1点です。
 第2点ですけれども、同じ概要のところですが、確かにキャリアパスが描けないんです。だから行かないんですが、これはすぐには企業の中で理解を得るというのはそう簡単ではないので時間のかかることですけれども、まず、すぐに手をつけられるといっても簡単ではないんですが、人文・社会系と理系がちょっと混ざったような形での専門職というのがほとんど、国際的には確立しているものがたくさんあって、これが日本では全く確立していないというものがあります。
 例えば、ライブラリアン、アーキビスト、それからリサーチャー、それからあとキュレーターとか、つまり、やや文系寄りの専門職が国際的には社会的にかなり地位を確立しているにもかかわらず、日本だけが全く低賃金、非安定的労働にしかなってないという例が随分ありますので、そこら辺りの専門職の確立という問題とこの問題、人文社会系の専門教育の問題が非常にくっついているという話を指摘しておきたいと思います。
 最後に、意向調査の10ページのことですけれども、理系と人文系の違いで進学を希望する10ページの1-2の回答についてですが、進学を希望する大学院は、現在在籍している大学の大学院かというので顕著な違いが出ていると。これは理由はかなり説明が容易で、理系の場合には自分の大学院の先生方が優秀な学生を自分の研究室に上げていくという流れが一つある。悪く言えば縦割りですけれども、大学院課程と学部後期課程が縦割りになっているケースが結構あるということだと思います。
 それに対して、もっと悪く言う言い方になるんですけれども、文系の場合には、大学院進学がある種の学歴ロンダリングとして使われているということだと思います。つまり、学部のときには入れなかった大学でも、大学院の修士課程ならばワンランク上の大学院に入れるということが、理系もあると思うんですけども、理系でも文系でもそういうことで、一般的に言って修士課程1年の学力よりも、学部4年生の学力のほうが高いという傾向が見られると思います。
 これがかなり根本の問題で、そうすると大学院に行くということは、学部では入れなかった大学の大学院に行くということを若者たちの間では意味するということになっているということが現実だと思います。
 ただ、悪いほうにとるだけではなくて、分離しているということは逆に言えばリカレントなんかで人文・社会系を使っていく、大学院をかなり使える可能性があるという縦割りとは違う原理で動いていますから、使っていくというか、大学院が有効にリカレントの中で活用できるという可能性を、かなり文系の大学院は秘めているという面もあるということを申し添えておきたいと思います。
 以上です。
【永田分科会長】  ありがとうございます。東北のほうの大野委員、どうぞ。
【大野委員】  東北のほうの大野でございます。今回、人社系の大学院の現状や課題、あるいは今後の方向性について非常に広く見ていただいて、かつ社会と大学院との関係も明らかにしていただきました。大学院部会の委員の皆様に敬意を表したいと思います。
今後の検討について、2つほどコメントさせていただきたいと思います。
 人社系の分野においては法科大学院であったり、公共政策大学院であったり、あるいは会計、教職など専門職大学院が一定の役割を果たしているわけです。専門職大学院の現状と課題も含めて、包括的な議論をぜひ期待したいなと思います。
 もう1点、これはもっと対象が広がるんですけれども、理工系も含め、大学院においては、研究科ごとの縦割りではない、その時々の社会のニーズであったり、社会の流れであったりを踏まえたテーマ設定による学位プログラムを柔軟に提供するということも必要になってきていると考えています。
 各大学がそのような取組を促進できる、事務的な手続等の大きなバリアを感じずに、新たな大学院プログラムを組める、そういった大学院制度の在り方についてもこの分科会で御検討いただければ大変ありがたいと思います。
【永田分科会長】  ありがとうございました。吉岡委員、どうぞ。
【吉岡副分科会長】  ありがとうございます。非常によくまとまっていると思いますし、大変面白いいろんなヒントが、これから考えるヒントがあると思います。それから、特にこの意向調査は非常に重要な調査で、これからの基盤だろうと思います。
 それを踏まえた上で、今後これを実装していくというか、社会に具体化していくときのことを考えて何点か申し上げたいと思います。
 一つは、まとめの最初の注のところに書いてありますけれども、この人文・社会科学というまとめ方自体の問題というのはやはりあるだろうと思うんです。意向調査の場合は人文系と社会科学系と分けている調査はもう出ていて、それはそれで確かに非常に面白いんですが、そこにも表れていることなんですが、例えば日本の古典文学を勉強するということと経営学をやるということでは、多分人文・社会科学とまとめたときの先の見え方も含め、あるいはその大学院の教育カリキュラムの在り方も含めて非常に大きな違いがあると思います。
 ですので、やっぱりこれを実装していくというか、具体化していくときにその辺をやや丁寧に見ていく必要があるかなと思いました。それが1点目です。
 2点目はこれまでのお話にもありました、やはりキャリアパスの問題で、大学院への進学というのは、理工系は随分昔に比べると修士まで行くのが当然という感じは強まっていると思いますけれども、文系にとってみれば非常に不安の大きな進路選択だろうと思います。それは果たして自分が研究を続けられるのか、自分の能力は十分かということがもちろん非常に大きな不安だと思いますし、それは裏では、大学院のカリキュラムがそういういろんなところに細かくきちんと配慮したカリキュラムがまだ人文系はできてなくて、割と徒弟制度的なものが多分残っているということとも結びついていると思いますが、不安の源泉としてやっぱり例えば学位が取れるのかということ、さらにその先に道があるのかということ、それから学位が取れないで、途中で進路変更が可能かということも非常に大きな不安の要素だろうと思います。
 うまくいったら、賃金プレミアムがあるということが分かっていてもこれは非常に大きな問題なので、それをどういうふうにしていくのか。これはカリキュラムの問題もありますし、就職の問題、キャリアパスの問題も含めて考えていく必要があるだろうと思います。
 3番目はそれを踏まえて、やはりぜひ産業界の方に、この会議に出ておられるような皆さんは非常によく理解されているということだと思っておりますけれども、ただ、やはりその大学院教育、あるいは大学院で勉強した、特に文系の学生に対する理解であるとかその評価というものをもう少しシステマティックにしていっていただくというか、あるいはそれを見える化していくということをもっと進めていただければなと思います。
 もう一つ、今後やっぱり先ほどもありましたけど、例えば3年で論文書くのは大変ですけれども、就職して社会に出てから、最終的に博士論文と博士の学位を取るというようなそういう道の取り方をとっている人、最近は明らかに増えていると思います。
 広い意味でのリカレントやリスキリングの問題だと思うんですが、実際にやはり能力を伸ばしていくというためには時間とお金が非常に必要で、やはり企業の方がぜひ社員に研究のための、あるいはその学位を取るための時間であるとかその費用の補助であるとかということを積極的にやっていただければなと思います。
 ただ、恐らくそのリカレントが本当に実を結んでいく一番中心的な年代は多分30代ぐらいで、これは企業にとっても一番重要なところで、その30代ぐらいの優秀なやつが休み取って研究しているというのは非常になかなか背中を押すのは難しいだろうと思いますし、現場はきつい話だと思いますけれども、やはりそういう道をつくっていく。これは多分その個々の企業の問題というよりも、社会全体の考え方だと思いますけれども、そういうことをみんなで考えていく必要があるのだろうなと思います。
 以上です。
【永田分科会長】  ありがとうございます。もうお一方の多委員、どうぞ。
【多委員】  東京の多でございます。よろしくお願いいたします。
 多岐にわたる検討、それから詳細な説明をいただきまして、誠にありがとうございました。大変勉強になりました。その上で振興方策についての概要の1ページ目のところで少しというか、1点だけ意見を述べさせていただければと思います。
 ローマ数字の3のところで、今後の人文科学・社会科学系大学院の在り方というところに課題が2つ提起されておりまして、一つが社会的評価や認知の不足、もう一つが大学院教育そのものの課題という形になっています。ここの改革の方向性のところには並行してと書かれているので、課題1と2は、まるっきり並列という考え方もあろうかと思いますけれども、原因と結果という観点から言うと、課題1と2というのは逆じゃないかなと思いました。
 と申しますのは、「はじめに」のところの2行目にも書いてあるとおり、今後の振興方策に向けてはということになるんでしょうけれども、研究活動に安心して打ち込める学修環境の構築というものと、それを経て修了者が多様なフィールドで活躍し、適正に評価される社会の実現が欠かせないと書かれています。
 加えて、2のところの一番最後、4番目のポツのところにも、修了者のキャリアパスが見えにくいということがあって、社会での多様な活躍の場と機会が可視化・定着していないということが書かれていると認識しました。
 そういったことを考えますと、まずは大学院教育そのものの課題というものが課題の1にあって、それを解決することによって社会的評価や認知が上がっていくということにつながっていくと、私としては理解をしました。
 そういった中で、改革の方向性の下線のところで言いますと、まず、大学院において幅広いキャリアパスを念頭に置いた教育・研究指導を進めるとともに、社会における人文科学・社会科学系高度人材の価値認知を進めることによって、魅力的で開かれた教育研究環境の構築を進めるとまとめたほうが分かりやすいのではないかと自分自身は思ったところです。
 すいません、論点がずれていたら申し訳ありませんが、私としての意見でありました。よろしくお願いします。
【永田分科会長】  ありがとうございます。髙宮委員、どうぞ。
【髙宮委員】  ありがとうございます。大学院分科会の皆様の詳細なおまとめと、それからアンケート調査を含めた調査、誠にありがとうございました。非常に示唆の多い内容になっておりますし、まとめ案としては、非常に包括的ですばらしいものだと思っております。
 特に、私、実際に人社系の教員なんですけれども、一番大変よかったと思ったところが課題1として挙げられております社会的評価や認知の不足について考えていこうという姿勢でございます。長年いろいろなところに悩んでおりましたが、どこをどうすればよいのかというところについて、ここでかなりクリアにされており、やはりお互いの移動の社会の中でのコミュニケーションを経て、何が分かっていなくて、何がお互いに知らせ合うべきかというところから始めようというポイントは非常に賛同できる部分でございました。
 特に、私どもとしては、企業のニーズが今後どういうところにあり、そしてまた、これまであるいはこれからの文社系大学院生が実際に企業の中でどのように評価しているのかということも、もっと詳しく今後見られたら幸いだと存じます。
 その上で、2点申し上げたかったんですけれども、一つは既に大野先生が言及しましたので簡単に申し上げますが、専門職大学院のシステムとそのほかの人社系大学院のシステムについてどう考えるかと、非常に絞ってある専門職大学院に対して、そのほかの大学院ではどこを求めていくのかということについて、少し御議論していただけましたら幸いです。
 もう一つは、やはり社会連携あるいは産学協働、あるいは企業とのネットワークという言葉がたくさん出てまいりますけれども、従来の人社系は非常にアカデミズムを追い求める方向でまいりましたので、このような社会連携のところは少し人材不足といいますか、力が弱いところなのかなと思います。
 これを何らかの形で外側からも補助していただくようなシステムができると、非常にこの部分が勢いをよくするのかなと思って提言させていただきました。
 以上でございます。ありがとうございました。
【永田分科会長】  ありがとうございました。私からも一言御意見を申し上げますが、湊委員、おとりまとめ大変だったと思います。それは吉岡委員がおっしゃった人文と社会科学というのは、ひょっとしたら分けなければいけないような差がある可能性があるという中で、よく取りまとめられていると思います。
 それでそれがゆえに逆に言うと、ポジティブな展望として言いたいのですが、理系とか社会科学は極端に言えば、あるいは誤解を承知で言えば、ある程度発見などに根差して学問の中で、人文はそれだけではなくて解釈という部分があると思います。高度に解釈をするということを大学院で行ってと思います。だからこそ、実は社会に一番近いのではないのかという考え方をしたほうがいいのではないかと思います。
 人文は先ほどの日本の古典がどうのというお話がありました。それも極めて発見もあるでしょうが、解釈という部分が大きいときに、それこそ現代社会の問題というのは発見だけではやはり解決できなくて、解釈をすごく広い、そして、ディープな解釈をしないとできないという観点があると思います。それこそが人文の価値だと思うし、大学院は先鋭化されているでしょうから、働き場所はたくさんあると思います。
 問題は、先ほどの課題解決のところにもシステムですか、マネジメントというか教育の制度を各大学における内容で頑張らなければいけないと言うのですが、古い先生は変わらないだろうと思って、そこの部分は変えないで何とかする方策をやはり考えないといけないと思います。人文でもお若い方々はだんだん変わってきてもいて、いろいろな理解を示されている中で、誤解を恐れず言っていますが、変えにくい教育システムの部分、多くは教員に主なる原因があるような気もしますが、それをどうするかということも本気で考えないといけないと思います。
 その先生たちも立派な研究者であって、昔から続いてきた研究者としておやりになっているわけで、それをいけないと言っているわけではなくて、今ここで議論しているような社会に求められる人文や社会を卒業した学生たちということを考えると、やはり少し改善が必要だろうと思います。
 私はばりばりの理系なので、どうしたらいいかは分かりません。皆さんでやはり考えないと、人社と言ってもやはり簡単に一くくりにできないという思いはいたしました。
 そのほかいかがでしょうか。湊委員、何か皆さんから出てきた意見で何か湊委員のほうから、実は部会でもこんな話もあったということがあれば御紹介いただければと思います。あるいは湊委員の御意見をいただいてもいいと思うので、いかがでしょうか。
【湊委員】  ありがとうございます。委員の先生方の意見、どれも非常にもっともでありますし、我々も、それについてお伺いする中で議論を進めた上での今回のまとめであります。
 少しスペシフィックにお話をしておきますと、吉見委員から修業年限のことが話題になりました。これは確かにその傾向があるのは事実で、その背景には一般的な人文学、社会科学、専門職等は抜きにするにしても、そういう領域でなかなかこのエンドポイントというものが明確にできないような領域であるというのは、それはそのとおりであると私は理系ですけど、一応理解はできますと言いつつも一方で、これはあくまでも教育課程であるということを考えると、修業年限という標準的な年限というものをどうするとか、ある種、別途にしちゃうのかというのはかなり大きな議論になると思います。これはアメリカでも、いわゆるdegree acquisition periodというのは、メジャーの大学では大体公示されていると思います。学生は学生の目線から見れば、少なくともそういうものは公示されるべきであるということが前提になるんじゃないかと思っています。
 それを反映するのかもしれませんけれども、このアンケートを見ますと、人社系の学部学生に非常に特徴的なのは、このルート、つまり大学院へ進学する以降のルートは基本的には研究者であるとか、教育者のルートであるというような意識を持っている方はいまだに結構な割合でいらっしゃるんです。それがそういうことなのかどうかも含めて、ここは少し慎重に議論をすべき点ではないかという気がしています。ここは実は、ここ10年ぐらい大学院の一部でずっと議論されてきたことなんです。ここについては、そういったことも含めてもう少し議論が必要ではないかということが、委員会でも議論にはなっております。
 それからもう一つは、ポジティブなところで言うと、このアンケートでも非常にクリアなんですけども、人社系の学生が大学院に行きたいと思う時期が、学部の3年とか4年、つまり学部のどこかで人社系の学生が課題を見つけて、これについてやりたいということを思うのが多いんです。これはデータとしてそうです。これは理学とか工学とか農学みたいに大学院がちゃんとあって、大体その大学院が何があるかが分かっていて自動的にそういうところへ行くというのとかなり違うと思うんです。
 そうなったときに、よほど大きな大学ではない限りはそういう新たに学生の時代に、私はこういうことをやりたいという課題が出てきた意識的な学生、人社系に多いというのは僕は非常にいいニュースだと思うんですけども、それに見合うような指導体制を持つ、あるいは教員がいるような大学院がたまたま彼、彼女がそこにいる大学院講座があるかどうかというのは、実はなかなか難しいんで、広い領域をカバーするものですから、そういう意味である大学院はいるけども、こういうことをやりたいとある時点で思ったときに、これを本当に大学院としてやるとすれば、ここにはあまりそういうのにフィットする部門がなくて、外へということはあるんだろうと思うんです。これは単に学歴ロンダリングというのと僕はちょっと違うんだろうと思うんです。
 そういうところも強化してやらない、そういうところをどう学生に実際にもう一段引き上げるような体制をつくっていくかということも、大事な観点ではないかと思って議論を始めているところです。
 それから、最後の髙宮委員ですか、教員、メンター側のメンタリティーの問題もあって、やはり学問の真意を究めるみたいなところと、こういったところが取りあえずエンドポイントであると、教育課程としてのエンドポイントであるということをある程度、標準化して客観視するような努力も必要であって、それが学生から見えるということが学生にとっては壁が随分低くなって、じゃあ、私もここまでやってみようと、その上で、その知識をもってもっと広い社会に出たいと。単に研究者になるとか専門家になるということではなくて、そういったものがいろんな社会のセクターで、その能力あるいは培ったものを展開できるのではないかというようなマインドを大学側で育てるような努力をすることが、これもどなたから御指摘あったように、そのことが社会がそれを広く受け入れられるというようなことにつながるということではないかということも感じました。
 いずれにしても、これはまだ完全なあれではありませんけれども、いかに実効化しながらその中で解決策を探していく。その中で私自身は今、永田さんも言われましたけども、大学側の、教員側の個人を含め研究課程、組織の大学院生に対する立ち位置といいますか、指導の方針とかそういうものはもう少し議論されてもいいのではないかという気がしました。
 以上です。
【永田分科会長】  ありがとうございます。そのほかの大体意見は出たと思います。追加であれば一、二お受けしますが、いかがでしょうか。かなりよくまとまっていて、この大規模なアンケートはかなり面白いと思っています。ここからまだ出てくるものもあるでしょうし、大きな変更は多分もうまとめですからないのですが、最後の展望に一、二行加えるとかは可能だと思います。よろしいですか。福原委員、どうぞ。
【福原委員】  すいません、もう、皆さん方の御意見で尽きているところかと思うんですけれども、二つ加えさせて下さい。一つは、いろんなこれまでの制度改革の中で、人社の場合、学部の改革と大学院の改革が常に別途に議論されて、特に専門職大学院などができましたので、それらの連携の必要性という観点です。教員がどちらかに属するというような形になっておりますと、連携が十分でありません。大学が大学院を持っていることが学部の教育の質を向上させることになり、そして、学部の専門教育の場やそういったところに大学院生が教授と一緒に参加しているゼミや研究会があると、そこで学部学生がこういった大学院でさらに自分の学問をもっと究めようという気持ちにもなってくるということがありました。先生で大学院のほうの指導に当たっている人が学部の授業を持たない、学部の先生方がそこで完結する、また、制度もそこで分かれてくるので、就職活動なんかの接続がちょっと取りにくくなっているんじゃないかなと思います。私は、永田先生と違って一生ずっと人社分野にいたものですから、改革が細分化され、高度化されたものだから、それぞれの連携という意味では、この大学院の改革が、少人数化してきている学部の教育の質も上げるものだぞという発信も必要かなというのが思ったのが一つでございます。
 もう一つは、出口の関係で言えば、いろんなものを調べてみますと、大学院を修了したというキャリアがどのような給与の張りつけになっているのかと心配があります。2年間余計に行ったから2号俸だけ上がっているというよりも、ほとんど1号俸としか違わないところも実はあって、公務やそれに準ずる立場でおいてさえ、社会は、大学院を修了して2年研さんを積んでいるんだけれども、給与体系からは1号俸しか評価していないということは、これはすごくネガティブな発信になってしまっているのではないだろうかと思います。
 大学院を出て学位を取っていたら3号俸上がっているんだよというだけで、すごく経済的な効果があるんですけど、しかし、それだけの価値を大学院教育や大学院での研さんがつけているかと逆に問われると、これまた疑問が生じかねませんが。後半申し上げたいことは、社会に向けてそういった人たちの待遇や、教員になりますと退職年齢も遅くなるんですよ、大学院出ていると定年は普通なら60歳ぐらいだけど、それが65歳とか70歳になるんですよとの発信はあっても、教員や研究者にならないと、大学院でせっかく訓練を積んでも後ろの実働年数が限られてしまうので、早く学部を出てキャリアパスに就いていかないと、将来的なポストに得られないという不安も学生たちの中にはあるように思います。
 それと、最近は、優秀な学生が目標が明確である専門職のほうに流れてしまうということもありますので、そういった私が経験しているところから見ていただくことは必要かと思います。総論的なことや振興方策の方向性はもうしっかり書き込んでいただいているので、これを実装するというか、これを実現する政策の段階で、これをより生かすためにそういった観点での政策立案の対応が取られることを希望するということです。今回の答申案、これはもう全く大賛成ですので、そういうことだけちょっと付け加えさせて、失礼いたしました。
【永田分科会長】  ありがとうございます。そのほか、よろしいですか。
 それでは、御意見、質疑応答、ここまでとさせていただきたいと思います。この部会の取りまとめ、最終的には大学分科会として取りまとめることになります。本日、御議論いただいた内容、もう一度私もそれから湊委員もいろいろと確認しまして、変えざるを得ないと思えば、変えるところもあるかもしれません。
 その件につきまして、私と湊委員に御一任いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【永田分科会長】  それでは、湊委員を中心にご確認いただいて、私もチェックに入らせていただいて、最終的なまとめ、今日の議論を生かしたまとめということにさせていただきたいと思います。それでは、どうもありがとうございました。
 それでは、残りの時間、たくさん御報告して、御質疑を受けたほうがいいと思うことが幾つかありまして、ここから順番に事務局のほうから御説明を差し上げたいと思います。一個ずつ議論はさせていただこうかと思いますが、よろしいですか。
 それでは最初に、大学分科会に設置された特別部会の進捗状況です。
【髙見高等教育政策室長】  それでは、初めに前回の大学分科会におきまして設置された高等教育の在り方に関する特別部会について、進捗状況を御説明します。お手元の資料の2-1を御覧ください。
 こちら、前回の10月25日の大学分科会において決定された内容でございますが、急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方について、専門的な調査審議を行うために、高等教育の在り方に関する特別部会が設置されました。
 続きまして、資料の2-2を御覧ください。中央教育審議会令第6条におきまして、部会に属すべき委員というのは、分科会長が指名するということにされたことに基づきまして、永田先生にも相談の上、特別部会の委員を名簿に記載のとおりお願いしているところでございます。
 続きまして、資料の2-3を御覧ください。こちらの特別部会について日付入ってなくて恐縮ですが、11月29日に高等教育の在り方に関する特別部会の第1回が開催されました。当日は濱中国立教育政策研究所高等教育研究部長と、吉見委員から、今後の高等教育の在り方についてヒアリング、御発表いただきまして、その後、高等教育の在り方について、特別部会の委員の皆様より、具体的かつ専門的な見地から御議論いただきました。
 主なポイントのみ申し上げます。1ページ目の「はじめに」に記載のとおりでございますけども、少子化の中でも「知の総和」を維持・増加していくこと、さらに大学進学者数と入学定員のギャップ、留学生に選ばれるための教育研究力の強化、リカレント教育における人材育成の在り方などについて御意見がありました。
 また、濱中国立教育政策研究所部長からは、高等教育政策について質・アクセス・規模の3つの観点や、質的展開に伴う教育コストの上昇、教育の質の向上を促す大学間競争の在り方について説明がありました。
 また、吉見委員からも18歳人口減への対策、大学を取り巻く課題ということで様々御説明いただいたところでございます。
 これらの議論を踏まえまして、その部会の中では、3の(1)2040年以降の我が国の高等教育が目指すべき姿ということで、次の2ページになりますけれども、ノーベル賞を取れるような研究者養成から社会人育成まで全てのレイヤーを視野に入れる必要があること。
 また、高大接続の観点からは、偏差値中心主義や学年制度の在り方、そして社会との接続の観点からは、大学、大学院での学びのスピード感が社会と合っていないこと。
 さらに、次の3ページの(2)今後の高等教育全体の適正な規模を視野に入れた地域における質の高い高等教育へのアクセス確保の在り方としまして、進学率をどこまで上昇させるかという視点が重要であること。また、地方大学においては、地域における質の高いアクセス確保というミッションがあること。週複数回の授業やクオーター制の導入に関する効果、課題。さらに、研究力低下や大学教員の研究活動時間の減少の関連。大学等連携推進法人や地域連携プラットフォームの重要性。
 さらに次の4ページなりますが、(4)の高等教育の改革を支える支援方策の在り方として、授業料や奨学金、また、教員給与の在り方等について御意見をいただきました。
 本部会については、年明け以降も月1回ペースで議論を進めていく予定であり、随時大学分科会にも検討状況をお諮りしながら、議論を深めていただきたいと考えているところでございます。
 私からは以上でございます。
【永田分科会長】  ありがとうございます。資料の2-3のところをかいつまんで御説明いただいたと思います。私の印象では、やはりかなりの問題意識を皆さん共通に高くお持ちで、比較的今まで聞いたことのないような意見もきちんと出てきています。始まったばかりなので、進展を期待しているところです。
 この部会についての御質問等はございますでしょうか。よろしいですか。もう最後のほうを見てみると、いきなり学費をどうするのかという話もいきなり出てくるような会議なので、大変期待できるのではないかと思っております。
 それでは次に、これも期待したいと思いますが、文部科学省の中のタスクフォースでございます。
【髙見高等教育政策室長】  続きまして、お手元の資料3を御覧ください。
 こちら、御報告になりますけども、博士人材の社会における活躍促進に向けたタスクフォースの開催についてという紙でございますが、先月11月30日に、文部科学大臣を座長とする博士人材の社会における活躍促進に向けたタスクフォースを新たに設けました。
 このタスクフォースですけれども、博士人材の能力が社会で正当に評価され、多様なフィールドで活躍することを後押しするために、文部科学省として取り組む具体的な施策を集中的に検討するために立ち上げたものでございまして、盛山文部科学大臣を座長、あべ文部科学副大臣、今枝文部科学大臣を座長代理とし、関係局長、高等教育局長ですとか科学技術・学術政策局長等の関係局長が構成員として参画するものとなっております。
 主な検討事項でございますけれども、社会において博士人材が活躍するための方策という出口の視点と、大学院教育の充実や学生への支援方策という大学院教育のそのものの視点、この2つを中心に議論を進めていく予定となっております。11月30日の第1回では、民間企業やスタートアップ関係者との意見交換を行いました。
 また、ここに日付書いてございませんが、12月25日、来週でございますけれども、経団連の方々との意見交換を行うといった予定がございます。
 また、年明け以降も大学の視察ですとか博士課程学生との懇談を行いまして、4月頃までにタスクフォースとしての取りまとめを行いたいと考えております。本日御審議いただきました人文科学・社会科学系大学院の振興方策、これもしっかり踏まえながら、本タスクフォースへの施策の具現化に向けて、しっかり検討を進めていく予定でございます。
 以上でございます。
【永田分科会長】  ありがとうございます。大変すばらしいタスクフォースだと思います。いかがでしょうか。福原委員、どうぞ。
【福原委員】  髙見室長から最後に御指摘されました博士人材といったときに、これは通常、自然科学系のオーバードクターとかこういったイメージ、こういう方々のすばらしい人材を社会がどのように受け入れ、活用していくかという問題意識とともに出てきた議論でありましたけれども、その場合に博士人材といったときに、やはり人社のこの学位取得者というものも視野に入れて論じていただくと、今日のすばらしい審議まとめが大変力を発揮するんじゃないかと思いましたので、分野ごとにいろいろ活躍場面といったようなものを御議論いただいて、社会の方々に御理解いただくという方向をとっていただくことがありがたいなと思いました。
 意見までです。
【永田分科会長】  ありがとうございます。多分そのおつもりだろうと思います。
 こちらはまだ始まったばっかりなので、内容の御報告はありませんが、本当に粛々と進めていただきたいと思います。
 次に、令和5年度補正予算について御説明いたします。
【髙見高等教育政策室長】  続いて資料の4を御覧ください。こちらですけども、11月29日に成立しました令和5年度の補正予算のうち、高等教育関係の主要事項でございます。
 内容としては、1ページ、2ページに主な内容を記載してございます。具体的には、まずは大学・高専における教育研究基盤の強化としまして、国立大学におけるイノベーション創出に資する教育研究基盤設備を支援するといったものですとか、エネルギー価格が高騰する中でも、常時稼働を要する施設を多く所有している国立大学がその活動を維持・継続していくための緊急的な激変緩和策としまして、研究活動の継続や設備の省エネ対策等に対する支援、さらには国立高専における設備支援等を行うもの。そして、高度医療人材養成としまして、大学病院における医学生の教育研究環境の充実等を図るための最先端医療設備整備への支援、また、さらにその下でございますけども、奨学金業務システムですとか大学入学共通テストのためのシステム改修などを計上してございます。
 また、2ページ目を御覧ください。私立学校施設の耐震化・防災機能強化対策、基盤環境整備としまして、建物の耐震化や空調設備の導入等の支援、さらには、その下のほうでございますけども、ASEAN諸国からの留学生受入、定着促進のためのシステム構築等支援としまして、令和5年の日本ASEAN友好協力50周年、これを契機としまして、大学あるいは学生間の交流を一層活発化させるためのオンラインプラットフォーム、JV-Campusというのがございますけれども、こういったもののさらなる充実・強化に係る経費などを計上してございます。
 また、ちょうど本日なんですけれども、夕方に、令和6年度予算案が閣議決定される見込みで、まだ少し、今の時点では閣議決定されていませんので、お配りできておりませんが、予算案が決定した次第、委員の皆様にも、関連資料をお送りさせていただきたいと思っているところでございます。
 私からの説明は以上でございます。
【永田分科会長】  この補正予算について、御質問等ございますか。
 閣議決定が今日の午前中であれば令和6年度を出す予定でしたが、間に合いませんでした。中途半端な資料は出せないので、今回は令和6年度予算の資料はありません。補正予算のほうはこれでよろしいかと思います。ありがとうございました。
 次に、奨学金制度です。資料5を基に御説明を願います。
【吉田学生支援課長】  学生支援課長の吉田でございます。よろしくお願いいたします。
 資料の5でございますけれども、令和6年の4月から高等教育費の負担軽減につきまして、新たな仕組みを導入いたしますので、概要を御説明申し上げます。こちらも夕方の予算案と関連しておりますので、こちらとしても考慮させていただきます。
 まず1つ目が学部段階の高等教育修学支援新制度の中間層への拡充でございます。現行、図にございますように、3段階の380万円までの支援を行ってきているところでございますが、令和6年度からは、この緑色の部分でございますけれども、多子世帯の支援と理工農系の支援を世帯年収600万円まで拡充する予定でございます。支給の水準は資料にございますように、多子世帯支援につきましては、全額支援の4分の1の支援、理工農系の支援につきましては、特に私立の大学の授業料に着目いたしまして、文系との授業料の差額を支援する予定でございます。
 それから、2点目が真ん中でございますけれども、修士段階の大学院生向けの授業料後払い制度の創設でございます。こちらにつきましては、授業料につきまして、在学中につきましては支払いをせずに、就職した後に支払いをしていただくというような仕組みを設けるというものでございます。
 こちらも授業料の上限につきましては、国公立につきましては国立の標準額、私立につきましては、授業料の平均水準を予定しているところでございます。卒業後の納付につきましては、所得に応じて納付が始まる仕組みにするということでございまして、本人の年収基準は300万円程度から納付が始まるような仕組みにしておりますけれども、子育て期に配慮いたしまして、例えば子供が2人いる場合には400万円まで引き上げるというような形で配慮するような形を考えているところでございます。実際の納付につきましては、課税所得の9%を予定しているところでございます。
 それから、3点目が一番下でございますが、今現在返還をしていただいている方向けの制度の柔軟化ということでございます。一つが減額返還制度、これは様々な事情で返還が非常に苦しくなっているような方々向けに、現行でも減額返還制度というものを設けておりますけれども、これまでの利用可能な年収の上限が本人年収の325万円以下だったんですけれども、それを400万円まで引き上げるとともに、子供がいらっしゃる方につきましては、2人の場合は500万円、3人の場合は600万円までさらに引き上げて、この制度が柔軟に使えるような仕組みにしていこうということでございます。
 併せて、返還の割合の選択肢も増やしまして、これまでは2分の1、または3分の1だけだったんですけれども、3分の2や4分の1も加えることによりまして、さらに柔軟化をしていこうということでございます。
 併せて、所得連動返還方式を採用している方々につきましても、子供がいる世帯につきまして配慮できるような形ということで、33万円の所得控除を上乗せすることによりまして、対象になる方々を増やしていくというような仕組みを考えているところでございます。
 それから、2枚目の裏、資料で裏でございますけども、さらに、修学支援新制度につきましては、2025年度、令和7年度から、さらに拡充をしていくということが本日の予算と同時に決定をされる予定でございます、こども未来戦略に記載をされる予定でございます。こちらも11日に出された資料、今日は配付させていただいております。
 内容につきましては、真ん中の加速化プランでの対応というところにございますように、多子世帯の授業料・入学金につきましての実質無償化ということでございます。対象につきましては、現行制度と同じでございますけれども、所得制限を設けずに授業料・入学金の支援を行うということでございます。金額につきましては、全額支援と同様に国公立約54万円、私立約70万円が授業料の上限、入学金についても同様でございます。
 この多子世帯の考え方でございますが、これは令和6年度のスタートから同じ考え方でございますけども、扶養される子供が3人以上いる世帯を対象にしていくということでございまして、こちらも、本日の閣議決定の内容でということで御紹介をさせていただきます。今後につきましては、詳細は学生支援機構とも、きちんと相談をしながら詳細を詰めていこうということでございます。
 御説明、以上でございます。
【永田分科会長】  ありがとうございます。御質問等あればお受けしますが、いかがでしょうか。多子世帯については、まだ決まってないですが、決まったつもりになってご説明いただきました。新聞等でもいろいろと出ていると思いますので御理解もいただいているということでよろしいでしょうか。福原委員、どうぞ。
【福原委員】  これは6年度の制度を新しくつくっていくときの検討会の座長を私、務めさせていただき、吉岡先生等々と御一緒に検討させていただいて、今会長おっしゃったように、この多子世帯という定義がまだ不明確ですよね。多子のところだけでいいのかと、3人目の一番上の子が扶養を外れてしまった途端に、やはり3人育てて大変だったんだけれども、その支援が打ち切られるということになっていいのかとか、2人と3人を区別する合理的な理由付けができているかとか、この時点で、多子世帯の問題が議論されたんですけども、今回、全額支援の多子世帯の支援がこれだけ財政措置されればということですけれども、広がるということになりますと、ここの部分の理解がしっかり得られないといけないなと思います。
 ある意見では、養子縁組すればいいんじゃないかとか、全部長男の子供に次男以下にしてしまえば無償化なのかとか、こういう新しい制度が走り出すといろんなことをおっしゃる方々もいらしたように記憶しておりますので、そういったところの社会の理解が得られるように、そして、この制度が本当にそういう加速化というか、少子社会の改善に役立つように運用をしていただきたいなと思いました。先行した議論に携わった者の一人として申し上げました。よろしくお願いいたします。
【永田分科会長】  ありがとうございます。よろしいですか。
 それでは次は、国立大学法人法の一部を改正する法律についてです。資料6を御覧ください。
【井上国立大学法人支援課長】  失礼いたします。さきの臨時国会で成立をいただきました法改正の概要につきまして、紹介を申し上げます。
 事の発端となったのは、国際卓越研究大学に係るガバナンスの強化という観点からの議論でございましたけれども、こちらの議論も踏まえつつ、この概要、真ん中の箱にございますような内容で今般の改正案がまとまったということでございます。
 大きく分けると3点ございまして、1点目がガバナンスの強化、2点目が規制緩和、あと3点目が、ずっと両大学、協議を精力的に続けていただいていましたけれども、東京医科歯科大学と東京工業大学が統合なさって、東京科学大学となると、この3点がその概要になっております。
 1点目のガバナンスの強化につきましては、いろいろなその財源を外から取り込みながら大型の共同研究ですとかスタートアップ等、そういったものを成長させていく大学ということで、その大学という、そういう運営方針を大きく安定的にやろうということで、この運営方針会議ということを設置するというのが1つ目でございます。
 その権限としましては、1ポツにございますように中目・中計等についての決定する権限が有するということ。2でございますけれども、その決定した内容に基づいて運営が行われてない場合には、改善というものを求めるということができるということ。また、長期的な、安定的な発展の運営の方針という観点から、学長の選考に関する御意見ということも述べていただくことができるという権限を規定しております。
 (2)ですけれども、組織につきましては、法律上は3人以上と学長ということ。また、任命については学長にしていただきますけれども、そのプロセスで文部科学大臣の承認を経るということで規定をさせていただいております。
 (3)は、どういった法人にこういった会議を設置していただくかというところですけれども、さきに申し上げたその趣旨を踏まえまして、1にございますように、特に大きな規模の法人ということで、5つ想定していますけれども、政令で指定させていただくことにしておりまして、具体的には東京大学、京都大学、東海国立大学機構、東北大学、大阪大学ということになりますが、ここにはこの運営方針会議を設置していただくこと、また、2は規模はそこよりも小さいけれども、方針としては同じような方針で大学を発展させたいという大学もあるということを想定しておりますので、そういった大学も設置いただけるように文科大臣の承認を経て、設置することができるという仕組みにしております。
 2ポツにつきましては、これまで法人のほうから御要望いただいておりました長期借入ですとか、債券発行の対象範囲につきまして、ハードのみならずソフトについても広げるということ。
 また、2につきましては、既にいろいろな大学に御活用いただいておりますけれども、当面使わない土地等への第三者の貸付けの手続を一つ一つ、認可を取っていただくのではなくて、複数ある場合に一つの計画にまとめてもらえれば、個別の貸付けごとの認可はもう要らなくて、届出で結構ですという手続の緩和を盛り込んでおります。
 3点目が、医科歯科大学と東京工業大学の統合ということでございます。こちらの衆参両方で非常に審議を深めていただきまして、附帯決議という形で13、16、それぞれ衆参いただいております。効率的なその運営方針会議の運用ですとか、また、大学の自治との関係等々いろいろ留意すべき点というのをつけていただいておりますので、そういったことも踏まえながら大学と丁寧にコミュニケーションしていい形で、使っていただけるように努めてまいりたいと思います。
 以上です。
【永田分科会長】  ありがとうございます。この件、国会は通りましたが、御質問等ございますか。法律の本文もついていますので、後で御覧になってください。
 一応用意しているは終わりました。若干時間があってお正月の宿題を皆さんに出さなければいけないので、少し議論して頭に残しておいていただきたいと思います。それは長く今日議論するということではなくて、先ほどの部会のほうで始まっている、少子化に向けてというところの資料を見ながら、御意見をいただけるとありがたいと思っております。
 先ほどの資料2-3をお手元に開きながら見ていただきたいです。それでいろいろなことが語られています。留学生がどうのというような具体的な話の前にいろいろな話を今しています。話としては、やはりその人が減っていくが、我が国としては、何とかこの知的レベルの高いまま維持あるいは向上させたいという前提です。加えて、そのようなことを考えるということは基本的に、教育システムそのものももっと高度化しないといけない、あるいは向上させないといけない。ただそれでも圧倒的にやはり人が少なくなってしまうのも事実で、埋め切れないという問題が出てきます。
 それで、皆さんの頭の中を少し整理していただきたいのですが、国公私立関係なく、その地域と都会部というのは同じようにはなかなか議論できないと思っています。地域から大学が消えてしまったら、その地域は消えてしまうというか、非常に機能が下がるでしょうから、ある一定のことを考えなければいけない。
 都会のほうも実は2040年になると東京ですら、流入する分も入れても定員割れをするということなので、都会でも、人口減少の影響はやはり出てきます。私としてやはり地域、もちろん全体像としては一緒に話しているのですが、出口として一通りになるかどうかということは皆さんに御意見を伺っておきたいと思って、今急遽申し上げております。もちろん部会のほうでどんどん詰めてはいきますが、こちらは本会ですから、こちらの大学分科会のほうでも、今後あちらで話す予定の内容の一つにそのようなポイントがあるので、今のうちに御意見をいただけるといいのではないかと思っております。
 文章にも書いてあったと思います。地方がなくなってしまうと、もうそれ自体で高等教育を受けるチャンスが減ってしまうから何とかしなければいけません。そのとおりではありますが、少子化のボディーブローが効いてくるのは地方からだと考えます。東京、都会地区は学生の流入場所です。つまり流出する場所は地域なので、ここをうまく考えないと非常にアンバランスな結論になりかねません。
 どこかで、やはり地域と、それから都市部というのは、何らか施策として全く同一にならないような気が現在はしています。それでよいのかということを聞きたいわけです。どういう施策を変えるかという問題は部会で話すとしても、どう考えてみてもなかなか一律でできないことがあるのではないかと思っております。
 教育力の向上ということに関しては、ある程度一定的に皆さんに理解をいただいて、どこもかしこも地方であれ都会部であれ、世界中を使ってうまくやっていただきたいと思うのですが、地域の問題というのは、国公私立の機能分担問題以上にやはりシリアスだろうと思っていて、協力し合わないといけないのではないか。国立が、私立が、公立が、ということではないと私は思っています。
 一言でも二言でも御意見をいただけると、大変に部会での議論がやりやすくなるということです。いかがでしょうか。考えていただいて、次にある部会に参加される先生は部会で意見を述べていただきたいし、その後また持って帰ったときに、そのような話をしていましたという頭の体操をしていただけるのではないかと思って今話しております。いかがでしょうか。どんなささいなことでも結構です。吉見委員、どうぞ。
【吉見委員】  すいません、全く細かいことなんですけど、今、永田先生がおっしゃった地域と都会ということに関して申し上げれば、都会でも、東京圏とそれ以外の大都市圏はやっぱり分けて考えるべきだと思います。大阪ですら2000年代以降、人口が減少しています。つまり福岡、広島、大阪、あるいは名古屋はそんなでもないかもしれんけども、仙台とか札幌とか大都市圏ですけれども、しかし、東京圏とは相当事情が違うと思います。したがいまして東京圏特有の、つまり逆に言えば東京圏が問題なんですけれども、日本の問題は、東京一極集中の問題が地方を非常に弱らせているという問題が大きいと思いますので、やっぱり今地域で分けるならば、東京圏と大都市圏、それから地域というか、それ以外の地方というのは3段階でちょっと分けないといけないのではないかと思いました。
【永田分科会長】  ありがとうございます。志賀委員、どうぞ。
【志賀委員】  多分そういう環境の一人だと思うので、ひとまず手を挙げてみましたが、趣旨としては、今、吉見先生が言われたのと類似するんですが、かなり前に都市部の定員の増加を制限するというのが出て、直前に駆け込み定員増の申請をして、ざるのように通ったというふうな記憶があるんですけれども、それはさておき、要はこれまでも地方と都市部と分けたときには、割と地方のほうは一定の配慮のあるような政策は出てきて、効果があるかどうかは別として、そういった政策が出されてきたんですけれども、今、大学協会、短大協会等で一番苦労されているのは、東京周辺の県、あるいは東京都内の小規模大学、短期大学というのも大規模なところであったり、あるいは留学生ばっかり入れるところが学生を確保する一方で、きちんと真面目に学修成果が建学の精神を提示し、3つのポリシーもしっかりとしているところほど、あんまりそういった理解がないまま定員がどんどん充足率が減っていって、厳しい目に遭っているというふうな話であります。
 今回、部会に大野博之先生、3人目の大野先生ですけど、短大協会におられる方がちょうど埼玉の方で、そういった実態なども、だから実は都市部と地方と分けてしまうと、埼玉や千葉や、筑波はどうなんですかね、地方扱いですかね。
【永田分科会長】  そうだと思います。
【志賀委員】  とか、でも筑波大学と鹿児島大学と役割がどう違うかといったらちょっと私も分からない部分があります。ですので、やはりまずはその機関別といいますか、その役割というものを明確にした後、そのそれぞれの事情というものを掌握した上で、その在り方を本当に分けるべきか分けないべきか。
 あともう一つはやっぱり大きな問題としては規模の規模別です。小規模であって、でも各種資格等でカリキュラムがぎゅうぎゅうになっていて、そういったものを含めて、いろいろな多様な教育といってももうカリキュラム120単位以上、150単位ぐらい取らなきゃいけないという大学もあるにもかかわらず、そういったものばかり提示して、自前でちゃんとやっているというところに対して、何か連携しなきゃ駄目よみたいなことだったりそういったことまで出てくるようであれば、それはいろいろな選択肢の一つとして残すという方策をまとめていただければなと思うところであります。
【永田分科会長】  ありがとうございます。もう一つのキーワードで規模、重々それは部会でも理解されているとは思います。金子委員、どうぞ。
【金子委員】  ありがとうございます。この観点、以前にこの分科会の中でも少し申し上げたところと近いものとなりますが、自由意見をお話しできる機会のようですので、発言させていただきます。今、文科省の大学分科会として、大学を核として、少子化もしくは都会と地方との差についての観点で話されていますが、結局、日本の人口減少社会だとか地域との人口も含めたこの格差の拡大と、ニアイコールの課題だと思っています。
今後の大学の在り方として、当然この高等教育に向けた発信地としての機能は変わるものではありませんが、それに加えて、地方におけるそれぞれの地方のニーズに合ったこの役割といったものを考えていく必要があるのではないかなと思っています。産官学において、その地域と結びつけて、そこにある大学といったものがどういう役割を果たせていけるのかといった観点からの論議というものも、一つ考えてもいいのではないかと思っております。現役の学生だけでなく地域の住民の皆様だったり、社会、企業に勤めている社会の人、いわゆるリカレントだけにとどまらず生涯教育の観点も含めた、そういった幅広いところでの役割ということを一つの角度として検討してはどうかと思っています。
 以上です。
【永田分科会長】  まだ書くか書かないかは決まっているわけでも何でもありませんが、先ほど申し上げたように、大学というのはその地域の核であるというのは、文科省もここの分科会の方々も間違いないポイントだと思うので、地域の存亡は大学にありみたいなところはもう当然だと思うのです。それは必ずしも教育だけではなくて、いろいろなことを大学はやらなければいけないと思うので、それはきちんと議論に出てくると思います。
 今申し上げたように、前のところの御意見というのは東京と、あとは都市部と地域と東京のスカートの部分というのがやはりあるということと、場所によってだけではなくて同じ場所でも規模というのはあるというお話は出てきています。福原委員、どうぞ。
【福原委員】  今日は度々発言させていただいて。私ども私学事業団では、学校法人のいろんな経営相談等も承っておりますけれども、大学分科会でこういう議論がなされ、また、諮問がなされたということは、学校法人関係者、ものすごく身にしみて感じております。急に私どもの事業団の仕事が増えまして、全国からどうしたらいいんだろうかという相談も増え、お仕事を増やしていただきました。ありがとうございます。
 本当に、連日、募集停止を無視したらどうなるだろうかとか、これに向けた方法はどうだろうか、あるいは設置している学校種、こういったようなものについて選択とこれまで有しているリソースをどう集中していくのかということを、皆さん真剣に考え出しているという現状を、まず皆さんに御紹介したいと思います。
 そういったときに、会長おっしゃったように、やっぱり地域において、ある大学が学生募集を停止したときに、都道府県の県庁所在地だとか中規模都市で複数のまだ大学があるところは、総合知と知へのアクセスがまだ代替できるわけです。しかし、小都市でそこが一個の、しかも国公立はなく私学だけの一つがそこを担っており、そこが、その地域のいろんな地方公務員や、そこの商店を経営する人たちを支えているというところが少なくありません。ただ単に定員充足率が80%だ60%だといって、もうこれ単独では経営をやっていけなくなってきているというときに、今まで果たしてきた機能が少子化のときに代替できるのかどうか。大学がどこにあるかというのと、適正な規模というのもありますけど、もう一つ、そういう機能的な質的な意味で、そこの大学が果たしているものがやっぱりあるように思います。しかし、大学として知を創造し、知性を鍛えるような、そういう教育の質を確保していけないのであれば、いろんな高度情報通信技術を使って、そういったようなものと代替していくということはできると思います。その辺の、そこがせっかく公私のリソースを教育や研究に蓄積してきたところを、単に定員充足率が芳しくないから経営ができないから、はい、募集停止だ、そこの機能をやめてしまうという結論に行くことを、私はたいへん心配をしていると、こういうことでございます。
【永田分科会長】  ありがとうございます。そのような御意見も出ておりましたが、何といっても数学的ダイナミックスでいくと、何が何でも絶対足りなくなるので経営は不可という状態になります。それは今回の2-3のところでも最後のほうに書いてあります。教員の給料を下げてでもということは違うのではないか。教育をディスカウントするようなことはいけないのではないかという意見もあるわけです。述べられていることはよく分かって、地域の中にとにかく何らかの形で国公私立関係なく何としてでもやらなければいけないし、そのときには、国公私立にとってどこにとっても都合のいい法律ができなければいけないわけです。それでも足らないという現実はあります。とにかく事実は事実でどんなに頑張っても20から25%は足りなくなります。ですから、この部分については、何らかの手を打たないともういけないだろうと思います。
 それでは、相原委員、最後にお願いいたします。
【相原委員】  ちょっと視点が違うのですけれども、「地域の大学」と言われるとその地域からどれだけ学生を集められるかとか、地域にどれだけ就職させるかという視点で語られることが多いのですけれども、日本全体の発展という視点で見れば、どこにあろうとその大学にオンリーワンの特色があれば、日本中から学生を集めて日本中に就職していくことが理想という視点もあっていいと思います。その地域の課題は他の地域でも課題であることの方が多いわけで、少し言いにくいのですけど、地域の課題解決のために地域の学生を集めて地域に就職させるという狭い視野ではなくて、日本全体として発展するために何がこの大学の特色で、そういうことをやっているから、北海道から沖縄まで学生がその大学に集まるのだということを進めるということも大事なことかなと思いました。
 以上です。
【永田分科会長】  ありがとうございます。大変結構な御意見だと思います。現実はとても離れています。各地域の大学はみんな地域の大学の学生ばかりになっています。東京大学ですら中央の人が多く入ってくるようになってきています。それは先ほど言ったように教育の質の向上、あるいは今以上のとにかく教育のシステムを開発して、先生がおっしゃるようにやっていかないといけません。
 一方で、地域で、これを教えてくださいという人たちのためにもあるわけです。そのような意味ではやはり地域にもないといけない部分もあるのだろうと思います。これは難しいのですが、先生がおっしゃるように、自由に流動性豊かにできるようにしていけばいいとは思います。
 ただ、それでも、アメリカの州立大学ですら、自分の州と外の州でお金を変えて、学生を集めるみたいなことまで行っているわけなので、地域特性を何かしらはやはり考えないといけない。教育については今言ったように、それぞれが地域だけではなくて得意とする分野で、日本中あるいは世界を対象にこれから伸びていっていただかないといけません。今日は留学生の話もまだ全然出ませんが、当然、その学生から選ばれる大学に皆さんならないといけませんというのは、もう既に部会でも話しています。
 部会のほうでも始まったばかりなので、ヒントとして、御意見を伺いました。随時いろいろなものが起こると思います。なかなか激しいけんけんがくがくの議論になるのはもう目に見えておりまして、皆さんのお知恵をまたお借りしたいと思っております。今後ともよろしくお願いいたします。
 それでは、全体通じまして、何か委員の皆さんから御意見、御質問等ありますでしょうか。よろしいでしょうか。
 よろしければ、事務局のほうから今後の予定などについて、お話しいただけないですか。
【花田高等教育企画課課長補佐】  本日も活発な御議論をいただきまして、誠にありがとうございました。次回の大学分科会の日程につきましては改めてお知らせいたします。本日、御発言できない内容等ございましたら事務局までお寄せください。
 以上でございます。
【永田分科会長】  ありがとうございました。
 年を取ると1年が早いのですが、今年は、とても早く感じました。何また、来年もどうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、お開きにさせていただきます。ありがとうございました。
 
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