大学分科会(第170回) 議事録

1.日時

令和4年12月21日(金曜日)10時~12時

2.場所

Web会議

3.出席者

委員

(分科会長)永田恭介分科会長
(副分科会長)村田治,渡邉光一郎の各副分科会長
(委員)越智光夫,熊平美香,後藤景子,村岡嗣政,吉岡知哉の各委員
(臨時委員)相原道子,麻生隆史,安部恵美子,大野英男,大森昭生,金子晃浩,川嶋太津夫,小林弘祐,小林雅之,清水一彦,須賀晃一,髙宮いづみ,千葉茂,曄道佳明,長谷川眞理子,古沢由紀子,松下佳代,吉見俊哉の各委員

文部科学省

(事務局)池田高等教育局長,伊藤文部科学戦略官,茂里私学部長,山下高等教育企画課長,齋藤大臣官房文教施設企画・防災部計画課長,大江基金PTサブリーダー,川村総合教育政策局政策課教育企画調整官,柿澤高等教育政策室長,田井私学経営支援企画室長,中村大学教育・入試課課長補佐,髙橋高等教育企画課課長補佐,岸良高等教育政策室室長補佐ほか

5.議事録

【永田分科会長】  おはようございます。定刻になりました。第170回の大学分科会を始めます。
 相変わらずコロナでハイブリッドの状態になっています。また、ユーチューブでライブ配信しております。
 
【髙橋高等教育企画課課長補佐】  本日は,ウェブ会議及びライブ配信を円滑に行う観点から,御発言の際は挙手のボタンを押していただき,分科会長から指名されましたら,お名前をおっしゃってから御発言ください。また,御発言後は,再度,挙手のボタンを押して表示を消していただきますようお願いいたします。また,発言時以外はマイクをミュートにしていただくなど御配慮いただけますと幸いでございます。
 本日の会議資料については,事前にメールでお送りしておりますとおりでございます。
 以上でございます。
 
【永田分科会長】 ありがとうございます。
 本日は,報告を基盤に議論をするというのが4点あります。1点目は,大学振興部会で,文理横断・文理融合教育というところからスタートして,「出口における質保証」,それから最近では「学生保護の仕組みの整備」について議論していますが,その状況を御報告いただいて,議論します。
 2点目は,次期教育振興基本計画ですが,これは部会において審議経過報告の案ができているということなので,その内容をご説明いただいて議論します。
 3点目は,改正独立行政法人大学改革支援・学位授与機構法が成立しました。成長分野への学部再編などの取組を支援するための基金を設立するということなので,御報告いただいて,質疑応答等をしたいということです。
 4点目は,大学設置基準の中の教育課程等の特例制度です。大学分科会の下の運営委員会で,審査のスケジュール,進め方等について議論されました。御報告いただいて,御意見をいただくということです。
 それでは,最初に,大学振興部会における議論の経過について,御説明をいただいた後に意見交換をさせていただきます。
 事務局から御説明をお願いいたします。
 
【柿澤高等教育政策室長】  高等教育政策室長の柿澤でございます。よろしくお願いいたします。
 それでは,資料の1-1と,資料の1-2,そして後ほど参考資料の2にも言及するところがございますので,よろしければ,資料の1-1と1-2,そして参考資料の2をお手元に置いていただければと思います。
 まず,資料1-1でございます。これまでの大学振興部会の審議経過ということでございます。
 この1枚目は,論点やメンバーのほうは皆様よく御案内の内容かと思います。
 1枚めくっていただきまして,この5月に設置を分科会で決定していただいて以降,毎月開催してまいりまして,この資料1-1の最後のページになりますけれども,前回大学分科会以降の流れとしましては,この9月,10月,11月,12月と4回を開催してきたというところで,その間にも,企業からのヒアリングですとか大学関係者からのヒアリング,大森委員からのヒアリングなどもさせていただいたというところでございます。
 具体的な審議の内容になりますけれども,それが資料1-2になります。こちら資料1-2,一部網かけの部分がございます。これは,前回の大学振興部会からの主な修正点のところを網かけにしておりますけれども,振興部会に参画されていない先生方からしますと,この「はじめに」と,あと「出口における質保証」の部分は,初見の内容になるという形でございます。
 まず,この「はじめに」のところでは,そもそものこの大学振興部会の設置あるいは審議テーマの経緯のところを述べております。グランドデザイン答申で示された我が国の高等教育が目指すべき姿を確認するとともに,その後,グランドデザイン答申で様々提言された改革事項については順次実施がされてきているという流れを1枚目で確認してございます。
 また,2枚目のところでございますけれども,1つ目の丸としまして,「このようなグランドデザイン答申以降の高等教育改革の状況を踏まえて,本分科会の下に大学振興部会を設置し,本年度の検討課題として,主として学士課程教育を念頭に,主専攻・副専攻制の活用等を含む文理横断・文理融合教育の推進,「出口における質保証」の充実・強化,学生保護の仕組みの整備の3点について審議を進めてきた」ということでございます。
 3ページ目からが,この「文理横断・文理融合教育の推進」というところのパートでございます。こちら,9月7日の大学分科会の中でも御意見をいただいたところを踏まえまして修正をしております。見え消しをするとちょっと赤が多くなって分かりにくくなってしまいますので,網かけをしている程度になりますけれども,前回の議論の中では,ここの「推進が求められる背景等」というところで,いろいろ過去の答申等の抜粋等もしておりましたが,少し内容がごちゃごちゃして分かりにくくなっておったというところもある中で,求められる人材像,それに対して社会経済の変化という中から,単独の専門分野のみでは様々な社会課題に対応することはできないよねという,そういう流れが分かるような形で再構成する必要があるのではないかということがございましたので,3ページのところは,将来像答申での「21世紀型市民」,また,学士課程答申での学士力,グランドデザイン答申における「2040年に求められる人材像」というものを確認した上で,4ページ目のところになりますけれども,4ページ目の網かけの部分でございます。「我が国の学士課程教育は,特定の学問分野に基づき学部・学科等が組織され,所属する学生に対して初年次から専門教育を実施する形が一般的であるが,分野を超えた専門知の組み合わせが必要とされる時代にあっては,従来の学部・学科等の組織の枠を超えた文理横断的なカリキュラムの実施や主専攻・副専攻の活用等により,専門知の深さと併せて俯瞰的・横断的な視野,異なる複数の学問分野のアプローチを用いて思考することができる,いわば「文理複眼」的な思考力等を涵養することが求められる」というふうにしてございます。
 次に,この資料のほうで言いますと16ページのほうを御覧いただければと思います。16ページが「「出口における質保証」の充実・強化」ということで,こちら,大学振興部会における4回にわたる議論をまとめた内容になっております。
 まず,「出口における質保証」が求められる背景といたしまして,「我が国の高等教育の質保証システムについては,質保証システム部会の審議結果を踏まえて,大学の裁量を高め,先導的・先進的な取組を促すための見直しが行われている」と。
 2つ目の丸でございますが,「こうした教育のプロセスにおける大学の裁量の向上は,一方では,その結果に対する責任,すなわち「出口における質保証」に対して,今後,大学が一層の責任を果たしていくことを要請するものであると言える」と。
 また,「グローバルな人的交流,移動が加速化する中,学位の国際通用性の確保や相互承認に向けた国際的な高等教育の質保証の取組においても,大学教育のアウトカムに着目した評価に基づく質保証が重視されており,高等教育のグローバル化に伴って「出口における質保証」に対する要請が高まっていると捉えることができる」というふうにしてございます。
 また,この点につきましては経済団体等からも要望が来ているところでございますので,そうした動向も入れております。
 次の16ページの下の大学教育の指導者をめぐる近年の取組と現状につきましては,グランドデザイン答申以降の取組,「教学マネジメント指針」ですとか,質保証システムの見直しについて言及をしてございます。
 一番下の丸になりますけれども,「こうした中,内部質保証体制の確立や教学マネジメントの改善等に取り組む大学は,十分とは言えないながらも確実に増えている」というふうに述べてございます。
 次のパートでございますけれども,ちょうどこの大学振興部会の審議の間に全国学生調査の第2回試行実施がまとまり,公表されました。この振興部会のほうでは,こうした全国学生調査の結果も,とりわけ学修時間等について分析をして,議論を行ったところでございます。その内容が17ページ以降になりますけれども,こちらは本文のほうで御覧いただくよりも参考資料2のほうを御覧いただくほうが分かりやすいかと思い,参考資料2を御覧いただければと思います。
 参考資料2,学生の学習時間,卒業論文等に関する関連データでございます。
 こちらの,スライド番号で言いますと3枚目でございます。今回,大学,短大合わせて739校が参加いただいた調査になりますけれども,この中で,学習時間に関する傾向ということで明らかになったことを概要的にスライド3にまとめております。
 まず,全般的な傾向としまして,大学2年生は,授業への出席時間が長い一方,予習・復習・課題など授業に関する学習時間が短いと。これは,キャップ制が十分に機能しておらず,学生が過剰な単位登録をして,結果として密度の濃い学習が行われていない状況を表していると。
 また,4年生以上(最終学年)の学生は,大学2年生に比しても,授業への出席時間,授業に関する学習時間ともに短い傾向にあるほか,卒業論文等に多くの時間を費やしている学生がいる一方で,これらにほとんど取り組んでおらず,実質的に学習時間が極めて短い学生も一定数いることがうかがえるとしてございます。
 また,今回,分野別の状況も見てございますけれども,人文,社会は,授業に関する学習時間が短い傾向にある。また,予習・復習・課題以外の学習時間についても短いことから,全般的に学習時間が短い傾向にあると。また,4年生以上でも,卒論等に取り組む時間が短い学生が比較的多いという状況でございます。
 一方,理学・工学,農学は,2年生は授業への出席時間,授業に関する学習時間ともに他分野に比してやや長い傾向,4年生以上は,授業への出席時間は短いが,卒業論文,卒業研究等に費やす時間が長いという傾向にございます。
 また,医学,歯学,薬学,保健は,2年生,4年生以上ともに授業への出席時間が長い。授業に関する学習時間も比較的長いと。また,最終学年については,予習・復習・課題以外の学習時間,これは読書,実技の練習,資格試験の勉強等の自習時間になりますけれども,これも長い傾向があると。特に医学において顕著であるということでございます。卒業論文等については,医学,歯学で取り組んでいる学生は少ないが,薬学,保健は,卒業論文等について人文,社会と同程度に取り組んでいると,こういった状況がございました。
 なお,この調査結果は令和3年度の状況を回答していただいたという形になりますので,コロナ禍の影響というものもまだある,オンライン授業等も一定程度行われているという状況の中での調査結果となってございます。
 こうした学習時間に関する傾向あるいは課題というところを踏まえまして,先ほどの資料1-2のほうに戻っていただければと思います。資料1-2の19ページを御覧いただければと思います。この2.「出口における質保証」の充実・強化に向けた方向性というところでございますが,「ディプロマ・ポリシーに定める資質・能力を学生に確実に身に付けさせるためには,3つのポリシーに基づいて個々の授業科目等を超えた大学教育全体としてのカリキュラム・マネジメントを確立し,体系化・構造化された教育課程を学生にわかりやすく示すことが求められる。その際,「出口における質保証」の徹底という観点から,ディプロマ・ポリシー等において,修得単位数以外の学修成果に関する卒業要件を規定することも考えられる」としてございます。
 また,20ページを御覧いただければと思います。こちらも部会で多く意見が出たところになりますが,ちょうど網かけの部分になりますけれども,「GPAの活用は成績評価の信頼性の確保等の上でも重要であり,学部段階では約98%の大学が導入しているが,その運用方法を見ると,進級判定の基準や卒業判定の基準に用いている大学はいずれも1割台に留まっている。キャップ制についても,密度の濃い主体的な学修を可能とする教育課程の編成・実施のためにはその実質化や授業科目の精選・統合等が重要であることはこれまでも指摘されてきたが,95%の大学がキャップ制を導入しているにも関わらず,上述の通り」,というのは,まさに第2回試行実施の結果を踏まえたということでございますが,「単位の過剰登録に起因すると考えられる学修時間に関する課題が生じている。各大学においては,形式的・表層的な対応に終始することなく,それぞれの取組の目的を踏まえた実質化を図ることにより,質保証の強化,学修者本位の教育の実現につなげていくことが極めて重要」というふうにしてございます。
 また,20ページ,その下のところになりますけれども,卒業論文・卒業研究やゼミナール教育の充実等についても議論を行ったところでございます。この点については,本日の参考資料2の後半のところで,ヒアリングを行った京都橘大学の西野毅朗先生のヒアリング資料も入れてございますので,またお時間あるときに御覧いただければと思います。
 この部分ですけれども,「我が国の大学教育の特長として挙げられる卒業論文・卒業研究やゼミナール教育(ゼミ)は,学生にとっても研究的な側面を持った行動が求められる取組として,多くの大学で学位プログラムが提供する教育の集大成的な位置づけで実施されており,「出口における質保証」においても重要な役割を担う」と。
 「一方で,ゼミや卒業論文・卒業研究については,学生の成長実感の低さや教員と学生との間での認識のずれ,評価基準のあいまいさ,卒業論文の質の低さ,大学や学部の教育方針が与える影響の少なさなど様々な課題があり,必ずしも期待通りの成果を上げていないとの指摘もある」ということでございます。
 21ページ,御覧いただければと思います。1つ目の丸,「ゼミや卒業論文等を「出口における質保証」において有効に機能させるためには,教育課程改善のための組織的な取組の一環として,その学修目標や評価基準について,ディプロマ・ポリシーに定めた資質・能力を踏まえて規定し,学生に周知していくことが必要」としてございます。
 また,次の丸のところでございますが,「ディプロマ・ポリシーに定める資質・能力や適切な評価方法等は大学のミッションや分野の特性等に応じて多様であり,当然ながらゼミや卒業論文等の取組が全ての学位プログラムに適しているものではない,そうした多様性は前提としながらも,「出口における質保証」に資する教育課程の改善方策の一つとして,高学年次においてディプロマ・ポリシーに定める資質・能力を総合的・客観的に評価する必修科目を設けることは効果的であると考えられる」としてございます。
 また,21ページの一番下の丸でございますが,「なお,」ということで,「こうした議論は,例えば,国際的な認証の必要性等から分野別質保証の取組が進展し,OSCE等を活用した卒業論文等によらない卒業時の質保証が行われている医学分野などには必ずしも当てはまらない。また,人文・社会科学分野においても,学問分野によってゼミや卒業論文等の必修化の状況や取り組んでいる学生の割合が相当程度異なる実態があることが明らかになっている」というふうにしてございます。
 次に,資料22ページを御覧いただければと思います。こうしたゼミや卒業論文等の取扱いに加えまして,振興部会の「出口における質保証」の議論の中ではST比も議論に上ったところでございます。
 22ページの一番上の丸のところですけれども,「教育未来創造会議第一次提言は,「出口における質保証」の強化を図る具体的な取組の一つとして「設置基準の見直しを行うなど,ST比の改善等による教育体制の充実を図る」ことを挙げている」と。「一般的に,教員一人当たりの学生数が少ない方が,一人ひとりの学生に対してよりきめ細かな教育,支援を行うことが可能となる」ということでございます。
 2つ目の丸のところでございますが,「一方,大学設置基準において,各大学が遵守すべき基準としてST比を規定することは課題もあり,慎重な検討が必要と考えられる。例えば,ST比の算定において用いる教員数について,基幹教員数とするのか,基幹教員数のうちでも「専ら当該大学の教育研究に従事する者」とその他の者についてフルタイム換算で算定するのか,基幹教員以外の非常勤の教員等も含めて算定するのかなど,算定方法によって大きく数値が異なる」と。「こうした数値はあくまで教員の頭数に着目したものであるが,世界に伍する研究大学を目指す大学から地域の担い手となる人材育成を担う中小規模の大学まで多様なミッションを有する大学が存在する中で,教員が教育に割くエフォートは大学間・学部間等で相当程度異なり,必ずしも学修者目線での教育体制の充実度を正確に表す指標とは言い難い面がある」ということでございます。また,「オンライン授業の普及・拡大など多様な教育方法の実践が進んでいる中,例えば,知識の教授が中心となる講義をオンライン授業による配信としつつ,教員の適切な指導の下,TAやSAなどの指導補助者がディスカッションや協同学習の指導等を行うハイブリッド型の教育も実践されているが,こうした教育上の工夫もST比という指標の中で捉えることは難しい」としてございます。
 次,23ページを御覧いただければと思います。23ページの1つ目の丸のところ,「これらを踏まえれば,現段階においては,ST比を教育の質保証における遵守すべき基準として用いることができるかについては国際的な動向等も含めた更なる研究・知見の蓄積を要する課題としつつも,当面は,質保証システム部会審議まとめを受けて導入された基幹教員制度や指導補助者等に係る改正が大学の教育研究体制等にどのような影響を及ぼしているのかについてデータエビデンスに基づいた分析や評価・検証を行うことが適当と考えられる。その上で,ST比が一定の制約はありつつも,大学の教育研究体制を表す一つの重要な指標であることも踏まえれば,各大学における積極的な情報公表を促していくことが重要である」というふうにしてございます。
 また,次の丸のところでございますけれども,各大学においては,この情報公表に当たりまして,「単なる人数比のみならず,例えば開設科目のうち学生数を20名以下に設定している授業の割合といったクラスサイズに関する情報や指導補助者の活用状況等に関する情報を併せて公表するなど,各学位プログラムの教育の全体像がつかめるようなきめ細かな情報公表に努めることが求められる」というふうにしてございます。
 「現状ではST比を公表している大学は63%にとどまるが,今後,質保証システム部会審議まとめの提言も踏まえて,認証評価において,ST比に係る情報公表状況の確認や情報公表の好事例の普及を進めていくことが重要である」というふうにしてございます。
 最後にもう2点ございまして,23ページの下のところ,産業界等からもヒアリングを行いまして,また,その連携・協力の在り方についても議論が行われたところでございます。
 23ページ目の一番下の丸,「学修成果や学業への取組状況を適切に評価することが求められる」。また,産業界において,「求める人材のイメージ,資質・能力や技能等について具体的に示していくことや,大学における学修成果を重視しているとのメッセージを学生に対して積極的に発信することが求められる」としてございます。
 また,24ページのところ,2つ目の丸になりますけれども,「就職・採用活動の日程等の遵守徹底,学事日程への十分な配慮が必要であること」。
 また,3つ目の丸になりますけれども,「企業においては,「出口における質保証」に向けた大学の取組により積極的にコミットすることも期待される。プロジェクト学修や業務体験等を含む企業と連携した教育は学生のキャリア教育においても重要であり,大学での学修の社会的意味を学び,理論と実践の往還を通じて,論理的思考・批判的思考を身につける優れた教育の機会にもなる。また,例えば,ゼミや卒業論文等において連携・協力を行うとともに,その過程や様々な機会を捉えて,大学教育の在るべき姿や産学連携の深化等について大学と積極的に対話することなどが考えられる」としてございます。
 また,その下の網かけの部分ですけれども,質保証に関する国際的な潮流を踏まえた対応ということで,地域レベルでの質保証の基準やガイドラインが定められているといった状況ですとか,我が国においても東京規約を締結しているといった状況も踏まえた取組が求められるというふうにしてございます。
 最後に,この資料1-2の26ページ以降のところですけれども,学生保護の仕組みにつきましては大学振興部会のほうでまさに議論を始めたところでございまして,26ページ目以降はこの主な課題・論点といったところで,こうした課題・論点に基づいて今議論を行っているということの参考でございます。
 以上でございます。
 
【永田分科会長】  ありがとうございます。
 詳細に御説明いただきましたので,お分かりいただけたと思います。それでは,御質問や御意見があればお受けします。
 麻生委員,どうぞ。
 
【麻生委員】  麻生でございます。よろしくお願いいたします。
 今回のたたき台に関しましては,よくできていると思いますが,せっかく全国学生調査をやられて,その中で第2回では短期大学も含めてその結果が分かっていると思います。その傾向は若干大学と違うと私は感じております。その中で今回書かれているたたき台につきましては,高等教育機関というのが前面に出てきておりながらも,ほぼ大学の学部のことで,短期大学のことが全く述べられていないと思います。これについては,この部会におきまして,全国に300校ほどある短期大学の特性をぜひ御理解いただいて,ここに入れていただくことを望みます。
 以上でございます。
 
【永田分科会長】   ありがとうございます。麻生委員がおっしゃるのはそのとおりです。卒検や卒業ゼミというところはスタイルが違う可能性があって,おっしゃるとおりです。今後考えていきたいと思います。
 
【永田分科会長】  大野委員,どうぞ。
 
【大野委員】  ありがとうございます。東北大学の大野です。
 適切に取りまとめていただいて,分かりやすくお示しいただいたことを感謝申し上げます。2点あります。
 海外大学との質保証の組合せ,あるいは整合性についても,さらに表現を工夫して検討を深める方向性を出されるとよろしいかと思います。教育未来創造会議でも教育のグローバル化ということが議論されていますし,それを踏まえると,他国との対話の場の設定であったり,あるいはヨーロッパでの質保証の動きに対して我々がどのように貢献できるか,対話をするかといったものもあり得るのではないかと思いますので,ぜひスタンダードをつくるという立場でより書き込んでいただけるとよろしいかなと思います。
 2点目は,既に書き込まれていますけれども,出口の質保証というところと就職活動の在り方は密接に関連しています。そういう意味で,これまでもインターンシップのさらなる活用など経済界との対話が進んでいるわけですけれども,それをさらに深めて,これまでのいわゆるガクチカを超えたシステム全体としての変容が必須だという視点をさらに強調していただけると大変ありがたいと思います。
 私からは以上です。ありがとうございました。
 
【永田分科会長】  ありがとうございます。渡邉会長もいらっしゃいますから,インターンシップのところは一緒に話しているわけです。
村岡委員,どうぞ。
 
【村岡委員】  ありがとうございます。山口県知事の村岡です。
 取りまとめをいただきまして,本当にありがとうございます。
 まず,様々な社会の課題が複雑化する中で,時代のニーズに合った教育を提供していく,そのために大学教育の多様性とか先導性,先進性,これが必要だと思います。そうした中で,県内の大学におきましても,様々な人材のニーズに応じまして新しい学部や学科の設置,また学部の再編を予定しているところもあります。大学の新設も含めて様々な大学が時代の要請に対応できるようにしていくということが,今後一層必要になってくるのかなと思っているところです。
 その一方で,少子化がどんどん進んでいまして,令和3年の出生数は81万人と戦後最少を更新しているわけですね。これから先,ますます高等教育機関にとっては厳しい環境が続いてくるのだろうと思っています。
 そうした中で,学生保護の仕組みの整備の議論も始まっているところです。今後想定される大学の経営破綻等の状況から学生を保護すること,このこともしっかりと検討していかなければいけないと思っています。教学マネジメントが機能して教育の質保証がしっかり行われている大学であることが大前提になるとは思いますが,学生の保護に備えて,平時から大学間で教育課程のすり合わせですとか,単位に対する考え方の整理を行う,そんなようなことも重要であると考えております。また,当事者間だけではそうした対応が難しいということが現実だろうと思いますので,そうした意味では,例えば調整機能を担う,そうした機関を別に設けるですとか,そういう仕組みをつくっておくということも大変重要ではないかと,今後検討していく必要があるのではないかなと思っています。そういう際には,実効性を高めるためにも,地方の中小大学の声も反映したものとなるように進めていただければなと思っております。海外の学生保護の仕組みですとか,そうした情報もあればぜひ教えていただきたいと思いますし,議論の参考に御提供いただければありがたいと思っております。
 以上です。よろしくお願いします。
 
【永田分科会長】  ありがとうございます。今御指摘の部分は実は12月6日の会議から始まった議論で,何とか外郭だけでも2月までにつくろうということなので,踏み込んだ内容にはならないかもしれませんが,今後の議論に役立たせていただこうと思います。ありがとうございます。
 清水委員,どうぞ。
 
【清水委員】   ありがとうございます。今回のたたき台を検討するに当たって,改めて4年前のグランドデザインの答申を読ませていただきました。やはり大変すばらしい内容を持っている答申だなと思いました。特に量的平等性から質的な多様性への移行という改革の方向性をしっかりと打ち出していました。その後の分科会の審議のまとめとか,あるいは「教学マネジメント指針」や関連する基準の改正に伴う制度改革が行われ、これによって,このグランドデザイン答申が狙いとしてきた学修者本位の教育とか学修成果の把握,可視化という基盤が今回のたたき台でしっかりと築き上げられ,制度設計の基盤がつくられたと評価しております。一言で言いますと,アウトプットからアウトカムへの移行をこのたたき台できちっと打ち出しているのは大変評価できると思います。
 今日のたたき台の19ページの最後の3行,網かけの部分,これは私は非常に重要な指摘ではないかと思っております。ぜひこれは,例えば大学の設置基準とか,あるいは認証評価に関わる省令項目などに,明記して,この考え方をしっかりと実行していけば,日本型のすばらしい大学教育のシステムが出来上がると考えております。
 以上です。
 
【永田分科会長】  ありがとうございます。19ページのところは本当に有効な御指摘で,今つくっているものというのは,最小公倍数というか,最大公約数というか,いろいろな大学でやってくださいと。ただ,これに加えて大学ごとの個性があるので,この部分に生かされるわけです。ほかの部分は,言ってみればそれぞれが努力というか,ガイドラインというか,ここまでやりましょうということです。各大学の個性を加えるというのは実はここの部分にありまして,修得単位数は設置審のときに言っているわけですが,学修成果に関する卒業要件というところは個性が必要で,それがないとどこの大学も同じではないかとなってしまう。そこを今御指摘いただいたのは大変価値ある内容かと思います。ありがとうございました。
 金子委員,どうぞ。
 
【金子委員】  自動車総連の金子です。発言の機会ありがとうございます。
 非常に短手番の中でここまで体系的に取りまとめられたことに,まず敬意を表したいと思います。
 ちょっと各論の部分で恐縮ですけれども,たたき台の12ページの上段のところですね。文理教育推進体制のところの12ページの上の丸の部分に,「各大学においては,こうした様々な制度や」云々という地方大学に関する記述があるんですけれども,申し上げたいことを一言で言えば,地方大学が地域において果たす役割について全体的にもう少し積極的な記述があってもいいのかなという意見になります。文中にもありますけれども,地域連携プラットフォームというのは,大学などの高等教育機関と地域住民,そして地域の産業界をはじめ産官学金労言,様々なところとの協働によって機能するものだと思っています。そのガイドラインにおいては,地方における高等教育機関というのは,地域の人材を育成し,地域経済・社会を支える基盤と位置づけられていると認識をしています。これは,まさに大学が地域に所在しているということがその地域の活動に資するものであると考えています。また,同時に,プラットフォームの場での協働を通じて必然的に文理横断の考え方が芽生えてくるんじゃないかなというところも期待をしているところであります。
 そこで,リカレント教育やリスキリングとも関係するところなんですが,教育機関と地域社会との敷居を低くすることというのが地域の活性化につながると考えております。そして,そのために,地域住民の生涯学習などに資する活動などの身近な取組も重要だと思っているところです。積極的な社会人受入れというのは,例えば文理どちらかを学んできた方々が,その学び直しの際,コースの選択を通じて文理融合教育の推進にも資するものと期待しておりますので,こういった観点,要は教育機関と地域社会との敷居を低くすること,こういった観点をぜひ織り込んでいただきたいと思っております。
 以上になります。
 
【永田分科会長】  ありがとうございます。
 相原委員,どうぞ。
 
【相原委員】  相原でございます。
 私も表現のことについて1点だけなんですけれども,5ページの「新たなリテラシーとしての数理・データサイエンス・AI」という項目の最初の丸のところです。ここに書かれていることを読みますと,企業が求める技術と習得の重要を羅列されていて,その習得の重要性がすごく目につきます。このままでは,大学ではなくて単なる専門学校の高度化にすぎないように私には読めてしまいます。これらの手法を統合して使いこなして,新しい社会をいかにつくり出すかを教えるのが大学教育ではとても重要なので,それが分かるようなというか,それが感じられるような表現にしていただければと思います。
 以上です。
 
【永田分科会長】  ありがとうございます。少し偏り過ぎた表現かもしれません。
 吉見委員,どうぞ。
 
【吉見委員】  ありがとうございます。
 まず,先ほど清水委員もお話しになられましたけども,今回の振興方策についての資料,グランドデザイン答申を受けて全体として重要な論点がきちんと盛り込まれた,かなり既にレベルの高いといいますか,完成度の高いものを作っていただいておりますことを深く感謝したいと思います。
 特に,1つは,文理横断のところでポイントが専門知の組合せにあるということを明記していただきましたこと,今後も重要なポイントになってくると思います。そして,そのために主専攻・副専攻あるいは文理複眼という,文理融合というよりもむしろ文理複眼なのだということをはっきり書いていただきましたのは,大変感謝申し上げます。
 それからもう1つ重要なのは,キャップ制が必ずしも出口の段階での質保証として機能してなくて,むしろ出口の質保証のためには,授業科目の精選・統合化,そのための科目数削減がきちんと進められなければならないということ,この点についてもきちんと御指摘いただきましたことを感謝申し上げます。
 その上で2点,意見を申し上げたいのですけれども,1つは,ST比が質保証にうまくつながっていないという指摘,私もそう思うのですが,そこでポイントは,やっぱりST比に相当するデータをもっときめ細かく見ていく必要があることです。つまり,学位プログラムにおける助教の位置づけ,基幹教員の位置づけ,非常勤講師の位置づけ,そして何よりもTAの位置づけを明確にする必要がある。若手の教育研究職のキャリアを,大学を越えて標準化し,それに応じてST比の実質的な中身をもう少し精密にというか,分節化して定義し直していく必要があると思います。これが第1点です。
 もう1点は,ゼミや卒業論文の価値,それらを出口の質保証と関連して再評価しようという方向性が見えます。これについては,基本的に賛成です,私は。そのとき,重要なのはなぜゼミや卒論が出口の質保証になるのかという理由です。
この理由は,2つあると思います。1つは,このゼミや卒業論文というのは,すっかり広く浅くになってしまった日本の大学教育の中で,わずかに少なく深くという,どちらかというと欧米型のカリキュラムに近いものを維持しているわけです。実際, 1科目が6単位とか非常に大きな単位数の科目になれば,そこでの授業は限りなくゼミに近づき,その科目の最終レポートは卒業論文と近くなるわけです。そうした重い科目では,成績評価のために最終論文を書かせますから,そういう意味では,卒論は日本独自というよりも,むしろゼミや卒業論文のほうが国際標準の教育に近いという認識を持つべきです。
 もう1点ですけれども,なぜゼミや卒業論文がそういう国際標準的な価値を持ち得るのかというと,これは19世紀にドイツでフンボルト原理で新しい大学の仕組みができたときに,研究と教育の一致,つまり,大学というのは知を単に教育するところだけではなくて,むしろ知を創造するところなんだという再定義がなされたわけで,この考え方に最も近いのがこのゼミや卒業論文だったわけです。ですから,この話は近代以降の大学の根本である新しい知の創造ということに非常に深くつながる話なのですね。
そして今日,21世紀の未来の大学のためには,フンボルト原理が言っていた研究と教育の一致だけでは十分ではなくなってきている。つまり,大学が少なく深い学びを通じて新しい知を創造し続けるためには,研究と教育に加えて社会的実践、つまり社会の現場での苦闘、挫折や成功の経験を一致させていく必要がある。そして,これらのすべてが日本の大学教育の仕組みにおいては全然できておらず,状況はさらに悪くなってきた。こういう長い高等教育の発展史の中での位置づけも、文書の中に盛り込んでいっていただくと,なぜゼミや卒論が出口の質保証と結びつくのかという、歴史的な理由がよりはっきりするんじゃないかと思います。
 以上でございます。
 
【永田分科会長】  ありがとうございます。
 かなりの方の手が挙がっております。大学振興部会の委員はそちらで10回以上議論しているので,極度に短く御発言をいただきたいと思います。
 曄道委員,どうぞ。
 
【曄道委員】  コンパクトにまとめさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
 非常に分かりやすくまとめていただいて感謝を申し上げたいと思います。通して読んでいますと,文理横断あるいは複眼的な学びについて非常に強力に主張していただいていて分かりやすいんですが,例えば9ページのところで大綱化に伴って生じた課題としての教養教育が取り上げられていて,教養教育についてより進展が望まれるようにもちろん書かれています。一方で,8ページには,文理横断教育が教養教育と同一視されることに関する懸念というものが書かれていて,この教育という言葉が使われている中で,読み手にとっては,階層というか,例えば総合大学の中では専門教育があり,教養教育があり,語学教育等があるというのが一つの捉え方だと思うんですが,その中にこの文理横断教育というものがどこにかかっているのかということについて,もう少し明確にしていただいたほうが誤解を招かないかなと思っております。
 以上でございます。
 
【永田分科会長】  ありがとうございます。確かにおっしゃるとおりかもしれません。
 安部委員,どうぞ。
 
【安部委員】  ありがとうございます。すばらしいおまとめになっていると思います。長崎短期大学の安部です。
 先ほど最初に麻生委員が言われたことの繰り返しになるかもしれませんが,このまとめは,学士課程を中心とした議論でありまして,学士課程教育の振興方策に対して,多様な課題に対する審議でその方向性は示されていると思います。しかしながら,4年の学士課程ではない,2年,3年の短期大学士課程や準学士課程がこの振興策をどのように準用していくのかとか,さらには,学士課程ではない,別の言い方をすれば,いわゆる非大学型の高等教育の振興方策についての言及が欲しいなと思います。特に最近はデジタルグリーン分野などの成長分野の人材のリテラシーやリスキル開発のリカレント教育の充実が図られる方向性ですが,そのためには専門学校を含めて短期の高等教育機関やその課程の活用と充実が今後ますます必要となると思いますので,学士課程ではない大学の振興策についても言及していただくとありがたいと思います。特に短期大学関係者としては,短期の高等教育の内部質保証について,先ほど学生調査の結果にもありましたが,随分大学教育とは違うところもございますので,それについても言及していただくとありがたいと考えております。
 以上です。
 
【永田分科会長】  御指摘ありがとうございました。
小林雅之委員,どうぞ。
 
【小林(雅)委員】  ありがとうございます。私も,短時間に非常に詳細な検討を加えていただいて,大枠としては特に異論はございませんが,むしろ細部の設計が重要だという点で,このまとめは非常にいろいろ考えられていると思います。その一つの例として,吉見委員も言及されましたが,ST比のことについて少し詳しく述べたいと思っております。
 「教学マネジメント指針」では,学修成果の可視化からスタートしたわけですが,これは非常に難しいということがまず委員の間から合意がありまして,特に安易な数値化ということに関してはかなり警戒がありました。そうしますと,今まで使われているプロセスの評価として例えばST比というものが使われているわけですけど,これについてやはり非常に問題があるということは広く知られているわけです。この点について,こういった政策文章で書かれたのは初めてではないかと思いますけれど,教員の担当のこま数とか母数となる教員のカウントの仕方によって全くST比というのは変わってしまうわけですから,非常に問題が大きい数値なわけです。この点についてかなり詳細に言及していただいておりまして,アメリカなどでは現在は少人数クラスの割合とかそういうような指標のほうがよく使われるわけですから,その点についても言及されております。
 さらに言えば,同じ学修成果であれば,ST比は高いほうがむしろ効率的だという考え方もあり得るわけです。これはオンラインの教育方法とか,あるいは通信教育というのはそういう性格を持っているわけです。ただ,残念なことに肝腎の学修成果が可視化できていないので,この問題というのはまだ正解がないというのが現状だと思います。その場合,ですから,現状としては,やはりこういった公表の仕方を画一化する,数値化で表すということが非常に問題をはらむということが,「教学マネジメント指針」では広く合意されたと思います。そのために,様々な,指針は全て例示であるという言い方をしているわけです。中退率とかほかの数値についても同じようなことが言えると思います。
 最後に,認証評価でST比に関わる情報公表の確認とか,好事例について出すというようなことが書かれておりますけれど,どうしても認証評価になりますと非常に外形的・画一的になりやすいという問題があります。ですから,この点は十分留意していただきたいと思いますし,この点については文章を少し修文していただければと思います。
 以上です。
 
【永田分科会長】  ありがとうございます。何となく心は読んでいただいたかと思う内容で,御指摘のように考えておりました。
 熊平委員,どうぞ。
 
【熊平委員】  ありがとうございます。丁寧な取りまとめありがとうございます。
 その中で1点だけ,文理横断・文理融合教育についてコメントをさせていただければと思います。社会課題が複雑性を増す中で,この文理横断・文理融合教育はとても重要なものに今後ますますなっていくと思います。しかし,一方で,やはり大学の特性としまして,専門性を超える教員のコラボレーションというのはなかなか想像以上に難しいというのが現実ではないかと感じております。ですので,各大学が,例えば社会課題をテーマとして選定し,学部を超えてチームになって,教育と,そして研究をしっかりと取り組んでいけるような環境整備というものも,各大学に任せるのだけではなく何かしら支援が必要ではないかと感じております。多くの大学で成功体験,社会を変える,あるいは社会に貢献していくという成功体験をたくさん持っていただけるようなところまでぜひ支援をしていただいて,こちらに書いてある内容が現実のものになるためにぜひ支援策を考慮していただければと思います。
 以上でございます。
 
【永田分科会長】  具体的な案を御提示いただきましてありがとうございます。
 吉岡委員,どうぞ。
 
【吉岡委員】  2点申し上げたいと思います。
 1つは,5ページのリテラシーのところに関わることで,先ほどの相原委員の御発言もありましたけれども,ここで,新たなリテラシーとしての数理・データサイエンス・AIというふうになっているわけです。その前に数学や哲学のことにも言及しておりますけれども,例えば社会科学系の人間としては,例えば歴史のリテラシーみたいなのは非常に重要だと考えます。そういう意味では,この3つの数理・データサイエンス・AIというのだけが突出して出てくるというわけではなくて,例えばその背景となるほかの様々なリテラシーというのがあるので,少しその辺のところは考えておいたほうがいいと思います。そうなると少し文章が変えられるかなと思いました。
 もう1点は,吉見委員もおっしゃっていたように,学位プログラムの考え方がなじんできたということに伴って,それぞれの学位プログラムが,非常に明確な人間像であるとか教育課程というものを示すようになってきたと思います。このことはこれまでの議論の中でずっと考えてきたことなんですけれども,同時に,学生の立場からすると,大学に入ってみたら自分がやろうとしたこととは違うことを発見して道を変えていくとか,あるいは大学の方針といいますか,教育でやろうとしていることと違う道を歩むということが出てくる。つまり,多様な選択肢が増えてくるということがあるだろうと思います。そういう意味では,移動の自由といいますか,学生がある大学に入って,ほかの大学に移るであるとか,もちろん学部の変更もそうですけれども,大学を替わる,あるいは就職した人間がまた戻ってくる。リカレントにも関わるわけですが,そういう出たり入ったりする自由あるいは立ち止まる自由のようなものですね,留年したり。これは,例えば留年であるとか浪人であるとかというのは,最近非常に難しいといいますか,意識としても難しくなっているわけですが,制度的にそういう移動とか出たり入ったりする自由ということを,ここで書き込む必要があるかどうか分かりませんけれども,今後考えていったほうがいいのではないか。これは,単位というものをどういうふうに考えていくかということにも関わると思いますけれども,今後の課題ということも含めて考えておいたらいかがかと思いました。
 以上です。
 
【永田分科会長】  ありがとうございます。
 古沢委員,どうぞ。
 
【古沢委員】  ありがとうございます。手短に述べさせていただきます。私のほうでは,卒論・卒業研究・ゼミの充実というところで,各大学の情報公表を促すというのはそのとおりで,重要なことだと思うんですけれど,やはり大学の外から見ると実態はよく分からないということは否めないのであって,論議の前提となることでありますが,大学によっても,学部によっても,相当取組がまちまちということがあるかと思います。それで,今回,たたき台の中で,玉川大学の先生の興味深い調査であるとか,参考資料で河合塾と朝日新聞の調査,卒論やゼミの必修率など紹介されているところではありますが,国としても,あるいは大学の団体でということもあるかもしれないんですが,一定の実態把握が必要であることに言及してもよいのではないかと思いました。
 もう一つは,新たな課題として,オンライン授業の実施状況についても質の保証が必要であることを少し書き込んでもいいかなと思いました。
 以上です。
 
【永田分科会長】  ありがとうございます。
 松下委員,どうぞ。
 
【松下委員】   ありがとうございます。非常に包括的な大学振興策をまとめていただきまして,感謝申し上げます。
 私のほうからは2点申し上げたいと思います。1点目は,文理横断・融合,文理複眼,それから総合知とかSTEAMも書かれているんですけども,少しずつ意味合いが違うようにも思いますので,その辺りを少し説明していただきたいなということを思いました,注でも結構ですので。
 例えば総合知については,令和3年版の科学技術・イノベーション白書などを見ますと,いろいろな専門家が集まって,例えばウェルビーイングを実現できる社会について議論しているような,そういうイメージが描かれているんですね。つまり,それぞれの専門知を深め,その専門知を持った人たち同士が協働することで総合知をつくり出していくという,そういうイメージがあると思うんです。そうしますと,大学教育では,一方でやはり専門知を深めていくということもとても重要になってくると思います。今回も9ページのところで,専門教育の希釈を意味するものではないということは書かれているんですけれども,では,専門知,専門教育と文理横断・文理融合教育あるいは総合知というのがどういう形でカリキュラムの中で具体化されていけばよいのかということですね。幾つか方法の例も出されていますけれど,やはりそこは非常に難しいなと思います。というのも,今の大学生の多くは,例えば1年生の最初,初年次教育を受けて,3年生の後期ぐらいからもう就活をやって,卒論をやる学部はいいんですが,4年生は割と自由でという感じで学んでいます。つまり,専門知をまずどこで深めるかという,それすら難しい状況があります。その上,自分の足場がしっかりしていないうちに文理横断・文理融合というふうになると,結局,何も自分の芯となるようなものがないままに文理横断・文理融合教育に入ることになるんじゃないかという,そういう危惧があります。そこは本当にカリキュラムをかなりきちんと組まないと,理念はとてもいいと思うんですけども,具体的には何を学んだんだろうかというふうになりかねないところがあるのではないかなと思いました。
 もう一点ですが,今回の案の中で,高大接続,初等中等教育についても述べられているところはとてもよい点だと思います。というのも,文理横断・融合についていえば,大学入試が,文理で分かれて学部や学科ごとに行われていたり,私学ですと本当に入試科目が少なくて2科目とか3科目に絞られていたりするために,高校生は,文理選択を大体高校1年の終わりぐらいにやってしまっています。その上で大学で文理横断・文理融合をやるというところにかなり難しさがあるわけですよね。したがって,初等中等教育とも連携しながら,大学教育で文理横断とか文理融合を考えていかなければいけないという,そのことがきちんと書かれている点は,とてもよいと思いました。
 ただ,一方で,今,初等中等教育でも,総合的な学習あるいは総合的な探究の時間があり,新しい学習指導要領では,例えば理数探究みたいな科目もあって,文理横断,教科横断ということがかなり言われてきていますよね。STEAMも初等中等のところでもよく耳にします。そうなりますと,初等中等・高等教育全体のこれからの改革の方向を見据えながら,じゃあ大学教育はどう変わっていけばよいのかというのを同時並行で考えないといけないということになります。難しいところではあるんですが,この振興方策の中に書かれているように,初等中等教育といかに連携しながら高等教育でこのような理念を具体化していくかというところが一層重要になってくるのではないかなと思いました。
 以上です。
 
【永田分科会長】 ありがとうございます。総合知に関する御意見は大変重要な観点で,錯覚してもらっては困るので,後で少し意見を述べさせていただきます。
 
【後藤委員】  全体に読ませていただいて,必要な事項が系統的に分かりやすく整理されているかなと感じました。3点述べさせてください。
 まず1点目は,目標設定ですが,成績評価や卒業認定が厳格過ぎると,全ての高等教育機関での対応が困難になると感じました。ディプロマ・ポリシーの設定とも関係すると思いますけれども,学修者本位の教育の実現には,一人一人の学生の学力や意識レベルがかなり違いますので,その辺りの対応も必要になってくるかなと思います。
 2点目,3点目は,先ほど松下委員がおっしゃったこととかなりかぶるんですけれども,高等教育ですので,専門性を身につけるというのが基本です。広く浅くにはならないように,軸足について何を身につけたかを保証することが必須ではないかと思います。幅を広げるためのコンテンツは,分野にもよりますが,単位互換,自学・自習, 読書などを含めて,いろいろ工夫していけるのかなと感じております。
 それから3点目は,13ページにもございますように,高校での文系・理系のコース分けというのが,文理横断・文理融合教育のある種の妨げになっていると感じております。これはやはり,高校での学習というのは大学受験のための対策という側面が大きくて,大学入試科目のかなりの偏りがあるところにも起因しているかなと感じております。
 以上でございます。
 
【永田分科会長】  ありがとうございます。
 須賀委員,どうぞ。
 
【須賀委員】  今,松下委員,それから後藤委員がおっしゃったところとかなりかぶりますが,4の「文理分断からの脱却に向けた高大接続改革」は,非常にきちんとした内容のところだと思います。こういう書き方をしていただいて感謝したいと思います。
 初等中等教育の改革が進み,高等教育についても,学習指導要領の改正から,総合的な学習とか探究の活動といったようなものが非常に重要視されるようになってきていて,そこでの成果を大学としてどのように受け止めて結びつけていくかが問題です。その間にあるのが恐らく大学入学者選抜,いわゆる大学入試ですね。その大学入試のところを何らかの形で変えていかないと,実はせっかくそれぞれが考えてやってきたことがうまく接続できないということになるんだろうと思っております。
 ということで,ここでも,大学入学テストの活用や個別学力検査による適切な方法で入学選抜者を選ぶべしという形では書かれておりますし,また,一番最後のところは,入学者選抜の改善を図る上で参照すべき指針となるよう,「教学マネジメント」について,入学者選抜の改善等の観点からの記述を盛り込んだ追補をするというふうな形で書かれておりますけれども,もう少し積極的に,大学入学テストの改革の方向であるとか,それぞれの大学での入学者選抜の方向を明確に打ち出せないものだろうかということを疑問に思いました。こういったことがないと,やはり学生確保の観点から入試の仕組みは今のままであると思います。そして高校で探究の授業が進んで,そこで文理融合型の教育へ進む準備は高校ではやろうとしていても,結局,大学入試のために科目を限定して学修を進めていくということになります。,せっかくやったことが効果を発揮できないまま大学に入学するのでは本当にもったいないことだと思われます。そういった部分をもう少し最後のところで明確に書いていただいて,今後の入学者選抜の方向づけまで行きますとはっきりするかなと感じています。
 ここの中でも国際化の話が出ておりますので,大学入学者選抜に関する国際比較のようなものももう少し明確にしていただくと,我が国のような特殊な入試をやっているところをそんなに正当化できるものであるとはなかなか思えないので,先を見越した入学者選抜の方式についての改革をもう少し強く打ち出していただければありがたいなと思いました。
 以上です。
 
【永田分科会長】   ありがとうございます。今御指摘の部分は,結局,出口の保証はアドミッションのところから始まるということでの議論はもう十分されているのですが,今回どこまでここで書き入れるかというのは悩んでいたところなので,今後,大きな課題としてディスカッションできるように書いておくことが今回必要だと思います。重々承知で,3ポリシーの議論が相当にあった上でここに絞って書いたという経緯です。須賀委員がおっしゃる,可能な限りもっと大きな議論ができるように書きぶりを考えたいと思います。
 以上,皆さん,とても活発に御議論いただきました。大変重要なまとめなので,大変ありがたく思います。
 最後に一言だけ私の意見を言わせていただきたいと思います。先ほどの松下委員,後藤委員とも関係あるのですが,このまとめの全体が,専門知を得ると社会ですぐ専門が生かせるように書かれていることに,若干,私は不安を感じています。大学4年間で知識を得るのですが,その大学4年間の専門知がそのまま社会で役に立つ専門知であるかどうかということを随分書いてしまっている気がするのです。一方で,多分欧米はもう少し違っていて,専門知というのは知恵の知になっていて,その専門を構築している基盤であって,知識の量は,それを習った後,自分で勉強してくださいという形式になっています。そこの部分が随分違うから,少し偏っていて,大学がやるべきは知恵の知のほうだと思っています。若干ということで,実は最後に国際を入れることでそこのところは調整できないかと思って作っておりました。
 なぜこのようなことを言うかというと,この部会が次に話すのが教育振興基本計画部会の大学の部分についてだからです。ここでまとめた上に,さらに今度,次の5年間の全体像を今話し合っている部会もあるからです。次の議事に入る前に1つだけ申し上げます。実は,夏から秋にかけて,シュミット財団というところが新たに始めたQUADフェローシップというものの審査等を行ってきました。これはQUADですから,例の4か国の学生100人,およそ25人ずつにアメリカでPh.D.を取らせるということで,経済的支援をしっかり行いますというプログラムです。その4つの国からかなりの数の応募があり,100人が採択されています。日本国籍を持った方は26人,日本の大学に在籍している方はそのうちたったの5人でした。つまり,これがある意味での世界基準です。ここにいらっしゃる方も含めて熟達した人の面接を全員経て選ばれているわけです。そのときに,各国から平均25人を選ぶわけですが,今言ったように,日本から選ばれた人のうち,国内で学んでいる人は僅か5人です。残りは全部諸外国で学んでいる方々だということです。このデータは出口の質保証上どう考えるか,つまり,そのようなステージに立ったときに全然戦えていないのです。これは社会に出すのと同等に厳しい問題で,決して知識を争う面接をやっているわけではありません。もちろんプレゼンテーションはしっかり書いてもらっているのですが,全世界の審査員が一人一人丁寧に面接をしていくわけです。そのような中で,ショックな出来事であり,今申し上げています。今週の初めに100人の名前が全部ホームページに出ていますので,申し上げています。本当に我々はもう一度考えなければいけないことがたくさんあると思って見た結果でした。それ以上は申し上げませんが,今,このような出口の質保証の話もあるということを感じながら実は思っておりました。
 次に,それも含めて初中・高・大学全部の次の5年間どうするかという,教育振興基本計画部会の議論もまとめができつつあるということなので,御説明いただいて,皆さんでまた意見交換したいわけです。今度は,細かいことではなくて,大まかにこのような方向に行かなければいけないのではないかというまとめです。
 それでは,御説明お願いいたします。

【川村教育企画調整官】  失礼いたします。総合教育政策室の川村と申します。
 次期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過について,報告の素案を12月12日の基本計画部会でお示しさせていただきましたので,こちらの審議経過報告の素案について御説明をさせていただきます。資料の2-1,2-2を御覧いただければと存じます。
 2-2から御覧いただければと存じます。
 この次期教育振興基本計画については,今年度が第3期の最終年度でありまして,年度内の答申に向けまして,現在,計画部会において審議を進めていただいているところでございます。こちら,政府の閣議決定になるものでございますので,最終的には各省との協議を踏まえて政府の合意文書になるという性格のものでございます。この大学分科会では,9月7日に基本的な考え方に向けての審議状況を御報告させていただきまして,御意見を頂戴しました。その御意見を計画部会でも御報告をして,現在,こういった形で素案の概要,それから本文ということで本日御説明させていただければと存じます。
 資料2-2でございますけれども,こちらは報告の概要でございまして,上のグリーンの部分,現状認識等は,前回も御説明させていただきましたけれども,次期計画のコンセプトということで,2つのコンセプト,そしてその下にある5つの基本的な方針ということで,現在,取りまとめをいただいております。
 まず1つ目,2040年以降の社会を見据えた持続可能な社会の創り手の育成ということで,将来の予測が困難な時代において,自らが社会の創り手となり,持続可能な社会を維持・発展させていくということで,そのために社会課題の解決と経済成長を結びつけたイノベーション,また,生産性の向上に向けた「人への投資」が必要である。Society5.0で活躍する人材の育成という観点。こういった持続可能な社会の発展というものを通じて,日本社会に根差したウェルビーイングということで,多様な個人それぞれの幸せや生きがいの実現に向けてという教育,また,その内容として,幸福感はもちろんでありますけれども,学校や地域でのつながり,利他性といった協調的な幸福感,また,自己肯定感,自己実現といった獲得的な幸福感,このバランスが重要ではないかという考え方。そして,こういったことについて,日本発の調和と協調あるウェルビーイングとして国際社会に発信していくべきではないかと,こういった御議論をいただいております。
 それに基づきまして5つ方針を掲げておりまして,1点目,グローバル化する社会の持続的な発展に向けて学び続ける人材の育成。2点目,誰一人取り残さず,全ての人の可能性を引き出す共生社会の実現に向けた教育の推進。3点目,地域や家庭で共に学び支え合う社会の実現に向けた教育の推進。これら3つを支えるものとして,丸4の教育デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進と,丸5の計画の実効性確保のための基盤整備・対話でございまして,次のスライドでございますけれども,目標の1から16ということで各論を列記したものでございます。先ほどの5つの方針に基づきまして,この目標1から16,それぞれ目標と,それにつながる基本施策ということでお示ししております。
 本文2-1を使いまして,高等教育の関係箇所を中心に御説明をさせていただければと存じます。
 まず,2-1の7ページでございますけれども,先ほど申し上げた2つのコンセプト,持続可能な社会の創り手の育成,そして日本社会に根差したウェルビーイングの向上ということで,このウェルビーイングの概念整理も含めまして7ページから8ページにかけまして記載をしております。
 そして,9ページで5つの基本的な方針,先ほど申し上げた5点ということでございますが,特に高等教育に関することで申しますと,丸1のグローバル化する社会の持続的な発展に向けて学び続ける人材の育成ということで,9ページから10ページにかけまして,10ページの中段では,本日御議論ございました総合知,文理横断・文理融合の関係,また,探究・STEAM教育,こういったところを記載しております。
 また,10ページの下のほうからは,初等中等教育から高等教育にかけて「正解主義」への偏りからの脱却ということを前提として,学修者を主体とした教育を初中・高等で図っていくという観点。
 また,11ページでは,グローバル人材育成ということで方針としてお示ししております。
 また,12ページにおきましては,地域・産学官連携,職業教育ということで,特に3つ目の丸,高等専門学校,また専修学校,大学,大学院と,それぞれにおけるこうした観点での教育の推進という方針を記載しております。
 次の13ページのところでは,生涯学習ということで,リカレント教育も含めまして,高度人材育成的な観点も打ち出しながらその方針をお示ししております。
 14ページ以降,誰一人取り残さない,こちらは初等中等教育が中心になりますけれども,15ページの中段のところで,大学や専門学校等における障害のある学生・生徒の支援ということも記載をいたしております。
 ページ飛びまして,18ページ,19ページのところでは,丸4ということで,教育DXの推進ということに関する記載をしております。こちらも初等中等教育から高等教育まででございますが,特に高等教育段階では,19ページの下のところから各段階における教育DXの推進ということで,コロナ禍における遠隔・オンライン,またハイブリッド型というようなことも記載をしておりまして,こちら,それぞれの学校段階におけるDXに関する記載,こちらは次期計画の一つの柱になると考えております。
 丸5のところでは,21ページでございますけれども,教育の実効性確保でございますが,少し各論に参りまして,24ページを御覧いただければと存じます。24ページ以降で,目標16それぞれについて記載をしております。
 25ページのところ,目標1でございますけれども,今回,初等中等,高等,また社会教育,生涯学習まで含めてということでの計画でございますので,目標1では,初等中等教育から高等教育まで含めて,確かな学力,また幅広い知識と教養・専門的能力・職業実践力の育成ということで,一つの目標の中で記載をいたしております。特に26ページの下のほうから大学入学者選抜改革,また,27ページ,学修者本位の教育の推進,文理横断・文理融合教育の推進,キャリア教育・職業教育の充実ということで,これまで大学分科会での御審議,また審議まとめ,答申等のエッセンスをこちらで記載させていただいているところでございます。
 そして28ページでありますけれども,それぞれの目標に指標というものを示しておりまして,この指標,目標を全てはかることができるというものではないことに留意が必要でございますけれども,この目標の達成状況を一定把握するものとして,28ページの下のほう,現行の計画でも指標としておりますが,学生の授業外学修時間の充実でありますとか,また,新たにPBLの実施状況ですとか,次の29ページでいきますと,4学期制,また学修成果の把握,それから就職先等の進路先から卒業生の評価を聞く機会を設けている大学等ということで設定をしております。
 それ以降,ページを進んでいきまして,34ページでございますけれども,34ページ,グローバル社会における人材育成ということで,目標4,こちらも関わりがございます。グローバル社会における人材育成ということで,海外留学の推進,そして外国人留学生の受入れ,また,高等学校・高等専門学校・大学等の国際化ということ。
 さらには,36ページでは,外国語教育の充実ということで大学入学者選抜における取組推進,3つ目のポツに記載しております。こちらにつきましては,37ページに指標がございますけれども,国際交流の関係,米印で打っておりますが,教育未来創造会議等の議論もございますので,こちらを踏まえて指標を設定予定でございます。
 目標5は,イノベーションを担う人材育成ということで,そのページ,探究・STEAMから,38ページにかけまして大学院の教育改革,また,科学技術イノベーションを担う人材育成,そして高等専門学校,大学・専門学校における専門人材育成,39ページのほうでは,理工系分野をはじめとした人材育成・女性の活躍,優れた才能・個性を伸ばす教育,起業家教育,大学の共創拠点化ということで,こちらは高等教育に関わる内容が多く含まれております。
 40ページでは,その指標ということで,修士・博士への入学者の割合の増加ですとか,それの経済的支援,また企業からの評価等ということで,こちら,指標候補として設定をしているものでございます。
 続きまして, 44ページのところにつきましては,多様な教育ニーズへの対応ということで,様々な特別な支援を必要とする子供たちへの支援の中に大学等における学生支援の観点も盛り込んでおります。
 それから47ページにつきましては,大学等と産業界の連携によるリカレント教育の推進ということで,生涯学習の観点で,こちら,働きながら学べる環境整備ですとか,48ページにかけましてはリカレント教育のための経済支援・情報提供,こういったことも盛り込んでおります。
 49ページはその指標でございます。
 それから, 53ページでございますけれども,53ページはデジタルの関係の目標の部分になります。高等教育においては,特にデジタル人材の育成,また教育環境のデジタル化の促進,この2つの観点を盛り込んでおります。初等中等教育段階から通じてDXというのを柱の一つに据えております。
 それから,56ページでございますけれども,56ページは基盤整備ということでありまして,教育研究の質向上に向けた基盤の確立ということで,国立大学運営費交付金,私学助成の確実な措置ですとか,めり張りある配分といったこと,また,その下のところでは高等教育機関の連携・統合に関する記載,現行の計画も踏まえて記載をしております。
 そして,次の57ページの下のほうから58ページにかけまして,経済支援ということで,給付型奨学金,授業料減免等の拡充の方針,3つ目のポツのところで58ページに記載をさせていただいております。
 60ページから61ページにかけましては,学校の施設の整備ということで,国立大学,また私立学校における教育研究基盤の整備ということで,こちらも記載をしております。
 駆け足で恐縮でございましたが,説明は以上でございます。
 
【永田分科会長】  御説明ありがとうございました。
 それでは,質問や御意見,お伺いいたします。いかがでしょうか。川嶋委員,どうぞ。
 
【川嶋委員】  ざっと読ませていただきました。大きな考え方としては,持続可能な社会に貢献できる人材とか,一人一人の幸せを実現できるような社会に貢献できる人材を育成するということは理解できるのですけれども,教育というのは人を相手にする営みです。そこで今後の教育のあり方を考える上で最も重要な課題は,やはり急激な我が国の少子化ですが、これにどう中央教育審議会あるいは文部科学省として対応していくのかということが全然書かれてない。少子高齢化という言葉は数回出てきますけれども,子どもが減る,児童が減る,生徒が減る,学生が減るというマイナスの連鎖の中で,文部科学省としては,教育については縮小均衡でよいというふうに考えておられるのか。つまり,子供が減る,学校が減る,教員も減る。学校は地域社会・コミュニティの基盤を形成するというのは書かれていますけれども,少子化が進み、すでに多くの地域では、小学校が統廃合されて,子どもたちは生まれ育った地域から遠い場所にある学校に通わざるを得なくなっています。この急激な少子化に対して,文部科学省,繰り返しますが、教育というのは人を相手にする営みですので,これについてどういう大きな方針を持って対応していくのか。縮小均衡でいいのか,これをピンチでなくてチャンスと捉えて質の向上をさらに図るのか,先ほどの高等教育で言えばSTの話が出ましたけれども,そのまま教員も学生も減らしていくのか。小学校で言えば少人数学級をさらに進めていくのか。こういうことについて,基本計画であればぜひその方向性,文部科学省としての方針を示していただきたいと思います。
 以上です。
 
【永田分科会長】  ありがとうございます。
 熊平委員,どうぞ。
 
【熊平委員】  ありがとうございます。私のほうから,2040年以降の社会を見据えた持続可能な社会の創り手の育成という観点から2点申し上げたいことがございます。
 1点は,まず,非認知能力についての言及をどこかで入れていただいてはどうかということでございます。やはり社会課題の解決につきましては,多様な利害関係を,あるいは対立を乗り越えて課題解決を進めていかなければならず,感情を扱うという部分が非常に重要になってまいります。ですので,情報処理だけではなく,この非認知能力についても大事にしていただいてはどうかと思いました。
 それからもう一つは,若者のエンパワーメントでございます。今,少子高齢化の話がございましたけれども,世界では15歳から29歳の若者が大体25%ぐらいいると伺っていますけれども,日本では16%程度だと認識しております。日本は年功序列でもありますので,そもそも若者は弱者です。同時に,数の上でもマイノリティーになっています。社会課題の担い手として彼らをエンパワーしていくということに我々はより注力していかなければ,知識や能力は高まっても,なかなか行動に移せないということになるのではないかと思いますので,その辺りも言及していただいてはどうかと思いました。
 以上になります。
 
【永田分科会長】  有益な御助言です。ありがとうございます。
 髙宮委員,どうぞ。
 
【髙宮委員】  ありがとうございます。これだけ膨大な量になるので,これからも大変かと思います。ありがとうございます。
 1点,7ページにございます「今後の教育政策に関する基本的な方針」についてコメントさせていただきたいと思います。
 こちらで総括的な基本方針として,持続可能な社会の創り手の育成及び日本社会に根差したウェルビーイングの向上を掲げると,2つ挙げてございます。現実的に,現在,非常に重要な観点であると思います。
 そして,特に後半の日本社会に根差したウェルビーイングの向上についてですが,ウェルビーイングの概念をきちんとおまとめいただいた上で,その価値観が日本社会に根差しているというところを明確にしたところは大変よかったのではないかと思います。一般に西洋的な価値観からのウェルビーイングが述べられることが多いかと思いますけれども,ここで改めて日本に根差したということを挙げているところは評価されるのですが,他方で,ウェルビーイングの価値観については,西洋,日本だけではなくて,様々な地域それぞれのものがございます。日本を強調するあまりに,ほかの様々な価値観に根差したウェルビーイングとそごが生じるような場合について表現に配慮が要るかなと感じました。これは,その次にグローバリゼーションの話が書いてございますので,十分意識としては配慮していると思うんですけれども,表現につきまして,それでは,日本型のウェルビーイングと,例えばグローバル社会に出かけていったときに別のウェルビーイングの価値観とかがぶつかったときに,そこはどうするかといったような配慮について一言盛り込んであると,基本方針としてすばらしくなるのではないかと思いまして,ここでコメントさせていただきました。
 以上でございます。ありがとうございました。
 
【永田分科会長】  ありがとうございます。
 村田委員,どうぞ。
 
【村田委員】  ありがとうございます。先ほども,大学振興部会のところで申したほうがいいのか,この教育振興基本計画部会の議論のところで言ったほうがいいのか,少し悩んだんですが,実は大学入試,接続に関わることですので,こちらでお話をさせていただきます。しかしながら,一方で,教育振興基本計画部会のこの議論,非常に大きな議論ですので,ちょっとちゅうちょいたしました。全体として非常によくまとまっているんだなと思うんです。私が申し上げたかったことは1点だけでございます。
 1つは,この基本計画部会の議論で言いますと,いわゆるDX人材を育てるというところでありますけれども,例えば,当然,情報1というのは必修になってきておりまして,それを入学試験でやるといった場合に,恐らく各大学で入試科目をつくるのは難しいと思うんですね。そうすると当然,そこはいわゆる共通テストでやっていく必要があると。しかしながら,ここは非常に技術的な問題なんですが,実は本質的な問題なんだろうなというのは,共通テストでそれをやった場合,私学が使えないんですね。時期の問題がありまして,試験の時期の問題で使えないと。そうすると,まさにDX人材のところで,大多数,8割,今,大学の私学に行っているわけですが,そこでそれが使えなくなってしまうということで,本当にそれがテクニカルな問題なのかというと,少し本質的な問題であるような気がいたします。
 先ほど大学振興部会のところでと申し上げたのも,実は文理横断のところもそうですね。数学教育といった数学のテストのときに,例えば各大学が理系以外のところで数学の入試をやるというのは非常に難しいわけで,むしろ,共通テストを利用してそれをやっていくほうが,より効率的であるし,より標準化されたテストができるわけですから,極めて技術的,テクニカルな問題ではあるんですけれども,より本質的な問題であるだろうというので,特に高大接続の観点から考えて,共通テストの時期,これ,いつも大学側は早めてほしい,高等学校側は教育を完成していないので今の時期がいいんだと,抜本的に考えないといけない問題で,実はここのテストの時期がどうなるかによって非常に大きな影響をいろいろな意味で与えていくのではないかと思いますので,書き込むことはできないだろうと思うんですけれども,課題みたいな形で少し,脚注でもいいですので,考えていただかないと,今後この大きな問題,結局どこでも議論をせずじまいで終わってしまわないかという危惧をして,発言させていただきました。
 以上でございます。
 
【永田分科会長】  ありがとうございます。
 改編した入試実施するまでに相当の年限がかかります。後に置いて解決する問題ではないので,少し考えさせていただかないといけないと思うので,この部会のほうに申し上げたいと思います。
 千葉委員,どうぞ。
 
【千葉委員】  ありがとうございます。
 私は,今後の教育政策に関する基本的な方針の丸1のところになるかと思います。丸2,誰一人取り残さず,丸3,地域や家庭ということはちょっと省いてお話をさせていただきますけれども,次期計画のコンセプトの2040年以降の社会を見据えた持続可能な社会のつくり手の育成という,この「つくり手」というのはどういう人だろうということを考えたときに,恐らく,将来のことを考えると,これは日本人だけではないのではないかと思います。また,18歳,高校を卒業して大学に入った人たちだけでもないと思いますし,男性だけではない,また,障害者の方たちもここに入ってくるのではないかと思います。そういうような人たちが共に学んで,そして,外国人の方,障害者の方も含めて平等に社会参画できる,こういったことが実現してこそ,それぞれの人たちにとって魅力のある教育機関になり,選ばれる国になっていくのではないのかなと思います。
 また,先ほどの調査にあったような,入試に熱心で,大学ではあまり学ばない大学生たちが構成しているような教育機関では,なかなか,こういう方たちから選ばれないということになるのではないかと思いますので,つくり手ということについては,今後は少し広範に見ていく必要があるのではないかと思います。
 以上です。
 
【永田分科会長】  ありがとうございます。
 長谷川委員,どうぞ。
 
【長谷川委員】  2つ,ちょっと漠然としたことですけど,先ほど髙宮委員がおっしゃったことともかぶるんですが,グローバル化を進めていくとか,日本を世界で発言の位置が高くなるような国にするという話と,日本的ということをどう守るかということは,かなり微妙なことだと思います。ですので,日本社会に根差したこととか日本的ということは,日本が人口が1億人以上いるような大きな国で,中に閉じていたときにはうまくいったかもしれないけれど,今のグローバル化でいろいろなところで混ざり合わなければいけないときには,この日本的のある要素はマイナスになるかもしれない。そういうところをすごくきちんと両面評価した上で,何の日本的がいいのか,その日本的はどうやったら本当に世界のスタンダードにもなれるのかというようなところは結構慎重に書かないといけないかなと思いました。それが一つです。それは千葉委員がおっしゃった,つくり手にはいろいろな人が入るだろうということとも関係しますよね。
 それと,もう一つはDXのところで,GIGAスクール構想ですかね,子供たちにスマホとかiPadみたいなのを配るということは,まだ脳みその出来上がっていない子供たちの欲望に擦り寄った技術を与えるということは悪い面もいっぱいあるので,子供に対して,デジタルないろいろなものをどう見せて使わせていくかということに関しては,もっと慎重な検討が必要だと思っております。
 以上です。
 
【永田分科会長】  ありがとうございます。
 ただいま11時半を過ぎまして,あと,大きい話題が2つあります。それを前提に御発言をコンサイスにお願いいたします。
 小林弘祐委員,どうぞ。
 
【小林(弘)委員】  小林でございます。
 3点ほどありまして,先ほど川嶋委員が,やはり少子化の問題が一番大きいということをお話しして,まさにそのとおりだと思います。それで,どういうふうにして学生を集め教育していくかということについては,1つは留学生を受け入れるほうをもう一つ強調していただきたいのと,あと,リカレント教育はいろいろ言われているのですけれども,それに対するサポートとか,あるいは質の担保とか,その辺があまり議論されていないように思うのですね。つまり,普通に入学した学生に対する質保証はありますけれども,リカレントについても質の保証が必要ですし,あるいは私立大学にとっては(リカレント教育用の)施設も必要なので,補助金も必要になるかと思います。それが1点目です。
 それからもう一つは,入試の問題がいろいろ話されていたのですけど,2020年に大学入試の大変な混乱がありましたね。記述式問題が取りやめになったり,英語の資格試験の採用が取りやめになったり,その後に大学入試のあり方に関する検討会議というのが28回にわたって,2020年の1月15日から始まって翌年の6月30日に最終提言を出していて,これは非常によくまとまっていますので,まずそれを読んでいただいてから議論をしたほうがいいと思います。大学の入試改革は中教審では非常に理想的な内容ではあったのですけれども,最終的にそれが現実のやり方になったときに,とても無理だということになって取りやめになったという経過も,ちょっと考えていただければ幸いだと思います。
 最後にもう一つは,総合型選抜と学校推薦型選抜で既に5割超えているのですね。一般入試は5割以下になっているという現状を踏まえた上での入試の議論もしないといけないと思います。
 以上です。
 
【永田分科会長】  ありがとうございます。
 松下委員,どうぞ。
 
【松下委員】  1点,簡潔に申し上げます。先ほど髙宮委員もおっしゃったことですけれども,日本社会に根差したウェルビーイングというところです。ウェルビーイングというのは,もともとGDPでは生活の豊かさとか幸福といったようなことが測れないということで,新しい指標として出てきたという経緯がありますよね。そのときには個人のウェルビーイングと社会のウェルビーイングの両方が言われているわけですけれども,今回のこの記述を見ますと,かなり個人のウェルビーイングに偏っている感じがします。それが,川嶋委員がおっしゃった少子化に向けた条件整備というか,その辺りが非常に弱いということにもつながっているように思います。目標7と13あたりはそれに関わるものですが,全体の中でいうと位置づけが低いように思いますので,その辺りをもう少し,てこ入れしていただければと思いました。
 以上です。
 
【永田分科会長】  ありがとうございます。
 小林雅之委員,どうぞ。
 
【小林(雅)委員】  ありがとうございます。
 私は先ほど川嶋委員からありました少子化対策のことですが,修学支援新制度の法律の目的は少子化対策ということになっておりますので,その辺をもう少し言及していただければと思います。ただ,実際にどの程度効果があるかということはこれから先の話ですので,エビデンスを出すのは,なかなか難しいと思います。ただ,それでもそういうことを書き込んでいただくことは重要だと思います。
 それから全体として,それに関連して言えば,こういった振興計画をつくるときには既存の政策の評価というのは不可欠なわけでありまして,それに基づいて計画を立てていくわけですが,今回,エビデンスの提示というのは一切なかったので,その辺のプロセスが分からなくて,これは部会ではやっておられると思いますけれど,部会の中だけではなくて,こういった資料の中でも,そういったエビデンスを提示して計画目標を出すようなことをしていただければと思います。先ほど申し上げましたように,指標についてもいろいろ問題がありますので,例示が出されておりますが,それらについても,今までどの程度のことができているかというエビデンスを示していただければと思います。
 以上です。
 
【永田分科会長】  ありがとうございます。
 資料はお送りするなり何なり,関連したものがあれば対応します。
 吉見委員,どうぞ。
 
【吉見委員】  ありがとうございます。
 発言しないつもりだったのですが,先ほど村田委員が入試に関してとても重要な御指摘をされましたので,それに触発されて一言,個人的な意見を申し上げたいと思います。
 私も共通テストの時期は大変重要だと思います。私個人の意見では,共通テストを前年の7月にやるべきだと思っています。つまり,思いっ切り早めるということです。そうして夏休み期間に採点と結果通知をして,9月までに受験生が大学に提出可能にすれば,現在よりもはるかに私立大学が共通テストの結果を使いやすくなります。そうすればその共通テストによって基礎学力を測定できますから,もっといろいろな入試形式を大胆に導入していくことができるようにもなります。さらに将来的には,共通テストが高校3年生の7月に実施されてしまえば,高大接続にとってとても大きな意味を持ってきます。実質的に秋から高等教育段階になってしまうのですね。当然,高校は反対するでしょうが,私は中等教育の後期段階は根本からの再検討が必要だと思います。高校は,本当に中等教育なのだろうかということですね。さらに,秋から実質的に高等教育になっていけば,東京大学も文科省も挫折してきた9月入学が実現する非常に重要なステップになるはずです。この案は,高校も受験産業も反対でしょうけれども,将来的には,共通テストを前年の7月に思いっ切り早く持ってきてしまうことは,様々な中等・高等教育の改革にとってブレークスルーになるはずで,ぜひ引き続きご検討いただければと思います。
 以上です。
 
【永田分科会長】  ありがとうございます。
 後藤委員,どうぞ。
 
【後藤委員】  一番最初に不易流行を掲げていただいたのは非常にいいかと思います。令和の日本型学校教育等を構築するために本質的に必要なことかなと感じております。
 あとは,ちょっとピンポイントになりますが,38ページの高等専門学校の高度化のところですが,高等専門学校の大学との違いというのは,正規の授業に加えて,オプション的な社会実装活動が高専教育を補完してきたという現状がございます。したがいまして,例えばコンテスト系大会などを通じた社会実装の場の提供というような文言を追記していただければ,実情に合ったものになるかなと思いました。
 それから,39ページの理工系分野における女性の活躍推進,これは非常に大きな課題かなと思っております。その中で,ロールモデル,シンポジウム開催,女子を対象とした入試等が書かれていまして,これらを推進していく必要はありますが,もう少し踏み込んだ内容を加筆するというか,追加することが必要かなと思います。例えば,理工系分野というのはかなり広いですので,女子の興味・関心,得意分野に合ったような切り口,そういうものを提示していく必要があるかなと感じました。
 以上です。
 
【永田分科会長】  ありがとうございます。
 様々に御意見を伺いました。渡邉会長も聞かれているので,多分,この振興計画部会の議論に接続すると思います。
 本音を申し上げると,初等中等障害教育がとても強くて,高等教育はこの基本計画のところでは物すごく弱い立場にあります。当然ながら,全体の論調の中に小・中・高・大を語らずに語り始めているので,このような記述が多くなっていて,高等教育のところは御不満の部分もたくさんあるかもしれません。また,こちらの上の振興計画部会でもませていただきます。御意見どうもありがとうございました。
 次は3番目の議題,大学・高専の機能強化に向けた基金の創設についてということで,まず事務局から御説明いただいて,簡単な質疑,討論を行います。
 
【大江基金PTサブリーダー】  よろしくお願いいたします。高等教育局基金PTの大江と申します。
 それでは,資料3に基づきまして御説明差し上げたいと思います。
 本件でございますけれども,令和4年度の第2次補正予算で措置されました成長分野を牽引する大学・高専の機能強化に向けた基金でございます。本件は今年5月10日に取りまとめられました教育未来創造会議の第1次提言の提言内容を踏まえて検討してきたものでございます。
 資料の左上にございます背景でございます。ここに記されているとおりでございますけれども,デジタル化の加速度的な進展あるいは脱炭素の世界的な潮流は,これまでの産業構造を抜本的に変革するだけではなく,労働需要の在り方にも根源的な変化をもたらすと予想されていること。
 2点目でございますけれども,一方,我が国では大学で理工系を専攻する学生がOECD平均より低い上に,OECD諸国の多くが理工系学部の学生数を増やしている中,日本はなかなか変わっていないという課題がございます。
 3点目でございますけれども,こうしたデジタル化,脱炭素化のメガトレンドを踏まえた上で,教育・人材育成を図っていく上で大学を後押しする必要があるのではないかということで,こういった分野に意欲があっても,初期投資等で費用がかかってしまうものですから,ここを予見可能性を持って,ある程度の予算を複数年度にわたって使えるという仕組みが必要ではないかというのが背景でございました。
 こうしたことを受けまして,右上でございますけれども,本年10月28日に閣議決定されました政府の総合経済対策でも,成長分野の大学・高専の学部再編等の促進を進めていくということで決定されたところでございます。
 事業内容でございますけれども,こうしたことを踏まえまして,真ん中より少し下でございますけれども,デジタル,グリーン等の成長分野を牽引する高度専門人材の育成に向けて,学部転換等の改革に予見可能性を持って踏み切れるような基金を創設いたしまして,機動的かつ継続的な支援を行うということで,右上,複数年度の基金としての予算でございますけれども,今年度の補正予算で3,002億円の予算を確保することができたところでございます。
 細かい事業内容,丸1,丸2と2つございますけれども,大きく分けまして,丸1がいわゆる学部再編等の転換等支援でございまして,デジタル・グリーン等の成長分野への転換を図るための御支援をさせていただくメニューでございます。支援対象は私立と公立の大学と多少考えてございます。
 丸2でございますけれども,高度情報専門人材の確保に向けた機能強化支援ということで,特に,こうした高度な情報を扱う人材が足りていない,あるいは今後また足りなくなるということでございますので,情報科学系学部・研究科を有する大学の体制強化に必要な経費,高専における情報系学科・コースの新設・拡充に必要な経費ということで,対象は国公私を通じての大学(大学院を含む),高専ということで考えてございます。
 資料の右下のところに事業スキームがございますけれども,今回,基金でございますが,こうした大学の組織再編なりを支援するような基金というのは今回初めてできたものでございますので,基金を置く場所といたしまして,大学改革支援・学位授与機構に,今回,法改正を行った上で基金を置かせていただくことにさせていただいたところでございます。
 そちらの資料の2枚目,2ページ目を御覧いただければと思います。独立行政法人の大学改革支援・学位授与機構法の一部を改正する法律の概要ということでございますが,今月12月2日に国会の審議を経まして,参議院本会議で成立したものでございます。概要は大きく3つポイントがございます。概要の欄を御覧いただければと思います。
 1点目でございますけれども,機構の目的及び業務の追加ということで,今回このような補正予算で,先ほど入れさせていただきました新たな業務を追加するということと,業務の追加に伴って,機構の目的業務に若干の変更を加えさせていただいたということでございます。
 それから,この助成業務を行うに当たりまして,文部科学大臣が基本的な指針を策定するという規定を設けているところでございます。ポツのところでございますけれども,文部科学大臣は,支援対象とする教育研究の分野等について,助成業務の実施に関する基本指針を定めることというのが1点でございます。
 また,機構は,基本指針に即して,助成金の交付対象となる学部等の設置等の選定方法等について助成業務の実施に関する方針を定め,文部科学大臣の認可を受けるという規定を設けたのが2点目でございます。
 そうしたことを起こして業務を行うための基金を設けるというものが3点目でございまして,大きなポイントがこの3つでございます。
 今申し上げました今回の法のスキームを3ページ目にイメージ図として記させていただいてございます。丸1から丸8ということで順を追って書かせていただいておりますけれども,大きくは基金を文部科学省から大学改革支援・学位授与機構に置きまして,先ほど申し上げました指針,方針を踏まえながら公募を行い,大学等からの申請を受けて審査を行い,助成を行っていくというものでございます。
 ここで丸2のところを御覧いただきたいんですけれども,先ほど申し上げました文部科学大臣が策定いたします基本的な指針については,法律上,審議会の意見聴取と財務大臣協議ということになってございますので,これから関係政令を策定していくことになりますけど,この審議会,中教審ということで想定しておりますので,改めまして,指針の策定の際には先生方の御意見を頂戴したいと考えているところでございます。
 大変雑駁な説明でございますけれど,以上でございます。
 
【永田分科会長】  ありがとうございます。
 御質問があればお受けいたします。
 越智委員,どうぞ。
 
【越智委員】  ありがとうございます。
 大学・高専の機能強化に向けた基金に関しては,高等教育に関わる者としては,大変ありがたいと思っております。私もこの方向性は正しいと思っておりますけれども,一方で,これがうまく機能していくためには懸念する点もあるかと思います。
 まず1点は,現在の私立の理系の定員充足がどうなっているのかという分析は多分できていると思いますけれども,この点はいかがでしょうか。
 そしてもう1点は,これは質問というよりも意見ですけれども,先ほどから議論がございました大学振興部会の中での文理融合・文理横断のことです。既に初等中等教育の段階で分離の分断が起こっています。これは入試とも深く関わると思うんですけれども,理系に興味を持たせる教育を初等中等教育でいかに推し進めていくかというところが定員充足にも大きく関わってくると思いますので,どのようなことを考えておられるのでしょうか。
 また,探求学習とかDXの学習というのが既に行われておりますが,私はこれだけで十分な印象は持てません。最終的には高大接続,先ほどからお話があるように,入試のところに戻ってくるのではないかと思っています。
 この2点,よろしくお願いします。
 
【永田分科会長】  では,先に質問を全部お伺いします。
 金子委員,どうぞ。
 
【金子委員】  自動車総連の金子です。
 質問というよりは,同様に少し,進めるに当たっての懸念と,それに向けた要望をお伝えしたいと思います。この基金を創設するということ自体は必要だと考えておりますが,裏面にある実施スキームでやった場合に,ややもすると,どうしても首都圏もしくは大都市圏の大手の大学中心に助成されるのではないかというような懸念も少し感じております。
 議題の1でも申し上げたように,地方大学というのはその地域における重要な役割を占めていますし,いわゆるデジタル田園都市国家構想の中でも,デジタルを活用した地方創生ということがうたわれているとも認識しております。地域でも高度人材の育成が急務だと考えているところです。そういう意味で,その地域の学生の地元への定着に資する観点とか,地方大学自らが地域の中で果たす役割,地方大学の役割,先ほど川嶋委員が言われた少子化に向けても,地方の少子化対策の観点でも非常に重要だと思っていますので,ぜひこれを実施するに当たっては,地方の大学・高専がこの基金のスキームを活用できるように,しっかりとサポートをお願いしたいと思っています。
 以上です。
 
【永田分科会長】  ありがとうございます。
 大森委員,どうぞ。
 
【大森委員】  ありがとうございます。
 今,金子委員がおっしゃってくださったこととほぼ同じことを言おうと思っていたんです。地方大学代表みたいな形で言うと,まさにそのとおりだと思っています。私,今,前橋にいますけど,デジ田TYPE1,2,3,全て前橋で採択を受けて頑張っていくという中で,やはり地方の私立大学がほとんど文系ですので,そこから転換していこうといったときに,例えば学部単位とか学科単位とかというと結構大事な話だし,必ず大学設置・学校法人審議会を通さなければいけなくなると思います。文系からいきなりというのは届出は無理だと思うので,そういった中で,もう少し緩やか,要はそういう人材が育てられるということが目標だということを踏まえたときに,より小規模なところや地方でも使いやすい指針,スキーム,そんなことができたらありがたいなと。これから御検討いただくところだと思いますけれども,ぜひその辺り,よろしくお願いしたいと思っております。
 以上です。
 
【永田分科会長】  ありがとうございます。
 先ほど御説明があったように,これは,中教審に戻ってきますので,またそこで詳細は話すとして,答えられるところだけでいいので,事務局から,今の御質問等にあった解答を簡潔にお願いします。
 
【大江基金PTサブリーダー】  承知しました。ありがとうございます。
 まず,越智委員の御質問2点でございます。私立の理系の充足率,これは当然,大学によってまちまちでございますが,近年,理系分野の人気がかなり高まっていることもあって,平均するとそれなりに充足していると,我々,分析しているところでございます。
 また,2点目でございます。文理融合・文理横断,まさに先ほども御議論いただいたところだと思いますけれども,この基金はこういう成長分野の人材を育成するということでございますが,まさに文理融合・文理横断,文理複眼的な視点をしっかり重視しながら,そういったところも支援の対象にできるようにということで,現時点では検討を進めておるところでございます。
 また,小中段階での連携,まさにおっしゃるとおりでございますので,こちらは初等中等教育局とも,小中段階における理系の興味・関心を高めるような取組等々,連携しながら,しっかりやっていきたいと思ってございます。
 また,金子委員,大森委員の御指摘,ごもっともと思ってございますので,御意見を踏まえて,しっかり検討を進めてまいりたいと考えております。
 
【永田分科会長】  以上で,あまり御満足いただけないかもしれませんが,これから,この指針の細かいところをつくるときに,また生かしたいと思います。
 基本的に,昭和の時代に理工系振興というのがありました。そのときに,実はやはり影響は大きくて,高専などもありますが,今よりももっと文系に偏っていた時代ですが,ここで私学の規模が巨大化しています。つまり,物すごく高等教育が拡充されたという深い意味がありまして,今回も文部科学省は,昭和の時代の理工系振興のときにうまくできたことをよく生かしてやられるといいと思います。
 それでは最後の議題ですが,教育課程等の特例制度について,これは説明だけにさせていただきます。
 大学教育・入試課課長補佐,お願いいたします。
 
【中村大学教育・入試課課長補佐】  大学教育・入試課の中村と申します。
 資料4に従って御説明いたします。
 令和4年10月1日に施行されました大学設置基準等の改正で新設しました教育課程等の特例制度について,本分科会の下に設置された教育課程等特例制度運営委員会での御議論を経まして,具体的な要件,手続,申請書類などを定めて公表しまして,現在,申請の受付を行っておりますので,その状況を御報告します。
 1ページですが,さきの大学設置基準等の改正の全体像となっておりまして,赤枠で示した部分が新たに位置づけた特例制度となっております。
 2ページを御覧ください。本特例制度の基本的な考え方です。設置基準は最低基準として全ての大学が遵守することとなる法令ですけれども,本特例制度は,大学の創意工夫に基づく取組を促進し,今後の大学設置基準の改善につなげるため,内部質保証等の体制が十分機能していることを前提に,特例対象規定の全部または一部によらないことができる特例を認めるというものです。
 特例対象規定は,大学設置基準第19条第1項の授業科目の自ら開設の原則や,第32条第5項の遠隔授業の60単位上限をはじめとして,御覧のような規定が対象となります。
 3ページを御覧ください。この制度の申請・認定スキームのイメージです。この特例制度の活用を希望する大学の学長から文部科学省に申請するといった形になります。
 4ページを御覧ください。こちらは認定基準の具体的な内容でして,認定基準は大きく,機関としての要件と先導的な取組に係る要件で構成されているところです。
 5ページを御覧ください。認定後のスキームのイメージになっております。認定後には,年1回の実施状況報告や認定期間終了後の検証報告を求めることとなっております。
 6ページを御覧ください。先導的な取組に係る審査の方法についてです。こちらは,例えば遠隔授業を活用した先導的な取組など,一定のモデルケースを文部科学省があらかじめ示した上で,それに沿った申請については,あらかじめ設定したチェックポイントを満たしているかどうかを確認するなど,より簡易な審査(確認)により認定を行うこととしております。
 他方で,モデルケース以外についても,型にとらわれない,各大学等の創意工夫による多様で先導的な取組を対象に申請を受け付け,審査を行った上で認定の可否を判断することとしております。
 なお,簡易な審査の対象となるモデルケースについては,あらかじめ運営委員会での審議を経た上で公表することとしていまして,今回の申請では,次に御説明します2つのモデルケースを用意しております。
 7ページを御覧ください。モデルケースの1つ目は,同時双方向型オンライン授業を活用した先導的な取組ということで,規制緩和の対象となる特例対象規定は,遠隔授業の60単位上限となっております。
 想定される取組の1例として,日本国内の複数地域や長期海外留学中でのフィールドワーク等を通じて,国際性と地域性を基盤とした課題発見,解決力を持った人材を養成するケースを挙げております。
 その際に,資料にある丸1,丸2のルーティンを繰り返しつつ,大学のメインキャンパスで行われる講義等の授業も同時双方向型のオンラインで受講するために,遠隔授業について60単位を超えて卒業に必要な修得単位として認めるといったことを想定しております。
 8ページは,このモデルケースの1つ目に関して,この特例を活用する場合における設置基準の規制である60単位上限を超えて遠隔授業を認めるための条件をイメージしたものです。このモデルケース丸1に沿った内容と言えるためには,60単位を超えて修得単位として認める授業形態については同時双方向型である必要があります。
 9ページを御覧ください。モデルケースの2つ目は,学習の多様化・進化×大学間連携の組合せということで,特例対象規定は授業科目の自ら開設の原則となります。具体的には,各大学の強みを生かして,質の高い多様な教育環境を提供するようなケースにおいて,大学等連携推進法人などの枠組みによらず,連携大学の授業科目を連携開設科目として位置づけ,協議会の設置などの一定の条件の下で,単位を卒業要件となる修得単位数に算入することを可能とするというものです。
 10ページを御覧ください。先導的な取組を構想する際には,様々な内容,方法が考えられるところですが,例えばグローカル人材育成といったことをテーマとして,ミネルバ大学のように海外展開することは難しいけれども,国際的視野を育みつつ,既存の国内サテライト施設なども活用して,国内の複数地域を回りながら,同様の取組ができないかといった検討をされる際に,遠隔授業の60単位上限の緩和を活用して,モデルケース丸1に沿って構想を膨らませるといったことなどが考えられるところです。
 11ページ,今後のスケジュールですが,現在,申請を受け付けているところでして,年内を第一次期限,年度内を第二次期限としております。
 最後,12ページですが,この申請の受付と並行して,大学等に意向調査も実施しております。また,申請に向けたウェブ相談も受け付けているところです。今後,第一弾の認定の際など,節目節目で本分科会にも御報告したいと考えております。
 私からは以上です。
 
【永田分科会長】  大変簡潔に御説明ありがとうございました。
 これは既に動いているものですので,あえて,ここで質疑,討論はしません。もし,どうしても御意見等あれば,事務局にお知らせいただきたいと思います。次回以降のときに,それに関して回答や議論ができるかもしれません。
 すみません,私の不手際で時間を5分ほど超過してしまいました。議題は以上です。
 では,次回以降につきまして,事務局から御説明願います。
 
【髙橋高等教育企画課課長補佐】  まず,2点おわびいたしたいこととしまして,本日,接続が非常に悪くて,オンラインの方々が非常に音が聞き取りづらかったということと,もう1点,ユーチューブの配信でトラブルがございまして,最初の30分が配信できていないという状況でございました。今,別のURLで配信する形にしましたが,情報保障の観点から,本日の会議,途中からですけれども録画させていただいておりまして,それを流すことをお認めいただければと考えているところでございます。また後ほど改めて,正式にはメール等で御連絡をさせていただければと思います。
 次回の大学分科会は,令和5年1月25日水曜日の10時から12時の開催を予定しております。実施方法等は改めてお知らせいたします。
 本日,時間の都合上,御発言いただけなかった内容等については,事務局まで御連絡ください。
 以上でございます。
 
【永田分科会長】  以上です。
 今年最後になりました。よいお年をお迎えくださいということで閉めさせていただきます。御協力ありがとうございました。
 
―― 了 ――
 


 

お問合せ先

高等教育局高等教育企画課高等教育政策室

(高等教育局高等教育企画課高等教育政策室)