大学分科会(第169回) 議事録

1.日時

令和4年9月7日(水曜日)14時~16時

2.場所

Web会議

3.出席者

委員

(分科会長)永田恭介分科会長
(副分科会長)村田治,渡邉光一郎の各副分科会長
(委員)越智光夫,熊平美香,後藤景子,日比谷潤子,湊長博、村岡嗣政、吉岡知哉の各委員
(臨時委員)相原道子,麻生隆史,安部恵美子,大野英男,大森昭生,川嶋太津夫,小林弘祐,小林雅之,清水一彦,須賀晃一,髙宮いづみ,千葉茂,曄道佳明,長谷川眞理子,古沢由紀子,益戸正樹,松下佳代,吉見俊哉の各委員

文部科学省

(事務局)池田高等教育局長,伊藤文部科学戦略官,鈴木文部科学戦略官,茂里私学部長,山下高等教育企画課長,川村総合教育政策局政策課企画調整官,古田大学振興課長,齋藤大臣官房文教施設企画・防災部計画課長,柿澤高等教育政策室長,草野大学設置室長,平野大学入試室長,髙橋高等教育企画課課長補佐,中村大学振興課課長補佐,佐藤私学助成課課長補佐,岸良高等教育政策室室長補佐ほか

5.議事録

【永田分科会長】  第169回の大学分科会を始めます。
 ウェブと現場でのハイブリッドでの開催ということになります。この会議の様子は,ユーチューブでライブ配信されます。
 それでは,事務局から連絡事項をお願いいたします。

【髙橋高等教育企画課課長補佐】  本日はウェブ会議及びライブ配信を円滑に行う観点から,御発言の際は挙手のボタンを押していただき,分科会長から指名されましたら,お名前をおっしゃってから御発言をください。また,御発言後は,再度挙手ボタンを押して,表示を消していただきますようお願いいたします。また,発言時以外はマイクをミュートにしていただくなど,御配慮いただけますと幸いでございます。
 本日の会議資料は,次第のとおりでございます。事前にメール等でお送りしておりますので,御確認ください。
 また,事務局側,文部科学省に人事異動がございましたので,御紹介をいたします。7月1日付で大臣官房審議官に西條正明,文部科学戦略官に伊藤学司が着任しております。また,9月1日付で高等教育局長に池田貴城,私学部長に茂里毅,文部科学戦略官に鈴木敏之がそれぞれ着任しておりますので,併せて御紹介させていただきます。
 以上でございます。

【永田分科会長】  ありがとうございます。
 議事次第を御覧いただければと思いますが,本日,大きな話題は3つです。1点目は,大学設置基準等の改正に係る諮問についてです。パブリックコメントが終わりましたので,これについて審議をしたいということです。
 2点目は,大学振興部会における議論についてです。文理横断・文理融合教育について議論が進んできました。ここまでの審議まとめを皆さんに御披露して,御議論いただきたいということです。
 3点目は,教育振興基本計画部会における議論についてです。こちらのほうも議論が進んできました。御報告して,御意見を賜りたいということです。
 その他の中では,教学マネジメント指針の改正,概算要求の概要等,時間があれば御説明を申し上げたいと思っております。よろしいでしょうか。
 それでは,議事に入らせていただきます。大学設置基準等の改正に係る諮問について,事務局から御説明をお願いいたします。
 
【中村大学振興課課長補佐】  事務局の大学振興課の中村と申します。
 資料1のシリーズについて御説明させていただきます。大学設置基準等の改正につきまして,大学分科会で5月と6月に2回御説明させていただいていますけれども,パブリックコメントを経まして,今回,諮問という形でお願いしたいと思っています。
 6月22日の分科会からパブコメを経まして,大きな内容の変更は予定しておりません。ですので,今回は資料1-1,1-2というところで,諮問,答申をつけていますけれども,内容としては,1-3のところのパブコメの概要のところを中心に御説明したいと思っています。
 まず,1-1,おさらいということですが,諮問の内容ですけれども,理由のところについては説明を割愛させていただきまして,1ページのところに骨子になる部分を書いておりますけれども,ポイントとしましては,一のローマ数字2の教育研究実施組織というふうなところ,それから,2, 基幹教員という制度を導入するというところ,それから,2ページ飛ばしまして,3ページ,6というところで教育課程等に係る特例制度を創設するというところ,それから,7でその他が幾つかありまして,最後,三,施行期日については,令和4年10月1日からを予定しているということと,必要な経過措置等について定めることを考えております。
 それでは,資料1-3のほうを御覧いただきたいと思うんですけれども,大学設置基準についてパブリックコメントを1か月間実施したところですけれども,意見の総数としては200件ございました。主なものを8つほど取り上げさせていただいています。
 簡単にポイントを御説明しますと,まず,1つ目のカテゴリーで,教育研究実施組織の関係について2つです。1つ目,教員組織と事務組織を廃止して新たに教育研究実施組織を設立することは,結果として教育研究の質の低下につながりかねず,組織の再編による一時的な業務量の増大の懸念もあるといった御意見をいただいています。
 文部科学省としての考え方として,右に書いていますように,大学の組織機能の明確化,教員と事務職員等相互の協働を前提とした役割分担,責任の明確化等を目的としたものでありまして,必ずしもこれに対応する新たな組織を設けることを求めるわけではないということを記載しております。
 それから,2つ目,改正により,教員組織,事務組織それぞれの役割・必要性が曖昧となるのではないか。現行規定でも,教員・職員の協働・協力関係を進めることは可能であるといった御意見です。
 これにつきましては,今回の改正により,条文上,適切な役割分担の下での協働や組織的な連携体制の確保を明記しつつ,教員と事務職員等の関係を一体的に規定することで,教育研究活動から厚生補導まで含めた教職協働の実質化が促進され,より一層の教育研究活動の質向上といったものを期待するものというふうに記載しております。
 それから,次のカテゴリーの基幹教員の関係です。3つ取り上げております。1つ目,現在でも既に人手不足に陥っている大学教員が,さらに人員削減される可能性があるので見直すべきといった御意見です。
 これにつきましては,文部科学省として,人員削減を意図したものということで考えているものではありませんが,教員が十分に養成されていない成長分野等において,民間企業からの実務家教員の登用や,複数大学等でのクロスアポイントメント等による人材確保を期待して導入するものでありまして,今後その趣旨も含めて,適切に周知等を図ってまいりたいと思っております。
 それから,次のページに行っていただきまして,基幹教員を導入することにより,従来の専任教員数の4分の1は事実上非常勤教員に置き換えられることになり,教育の質の低下は免れないので,反対であるといった御意見です。
 これに対しましては,4分の1の範囲内で必要最低教員数に算入することができる基幹教員につきましても,教育課程等の編成等に責任を担うことを要件としております。このため,単に授業科目を指導するという非常勤の教員については,基幹教員とならないということを記載しております。
 それから,1つ飛ばしまして,次にカテゴライズされています教育課程等の特例制度の関係です。御意見としては,1つ取り上げております。内容として,各規定に具体性がなく,恣意的に運用される可能性が高いといった御意見です。
 文部科学省としての考え方ですが,右の下線を引っ張っていますところです。特例の認定に当たっては,大学設置,大学教育等に見識を有する者から構成される有識者会議の公正な審査等を経ることとしており,恣意的な運用にはならないものと認識していますというふうに書かせていただいていますけれども,本日,資料1-4のほうに準備して記載しておるところですけれども,この有識者会議に対応するものとして,本分科会の下に教育課程等特例制度運営委員会といったものの設置についても,本日,併せてお願いできればと思っているところです。
 なお,回答のところに最後書いていますけれども,この認定された後も,年1回の実施状況報告や,万が一,運用に問題点等が疑われる場合の報告徴収や認定取消しの規定というのを設けております。
 それから,また,次のページですけれども,その他として2つ取り上げさせていただいております。まず1つ目,単位の授与は,試験だけではなく,大学が定める適切な方法によって単位の取得を認める改正が盛り込まれているが,これは大学が入学は難しくて卒業は簡単,だから大学教育に中身がないと批判される日本の大学の現状を,国が追認してお墨つきを与えるものであるといった御意見です。
 これに対しましては,従前,単位の授与に係る試験には,レポートなど多様な学修評価方法を含むと解釈してきているところでありまして,今回,こうした解釈に即して,多様な学修評価方法により単位を与えることを明確化したものということです。それから,教学マネジメント指針においても示していますとおり,単位の授与に当たっては,各大学における厳格な成績評価が求められるところでありまして,引き続きその趣旨の周知を図ってまいりたいと思います。
 それから,最後の御意見ですが,パブリックコメント締切日から施行日までの期間が短すぎる,拙速であるといった御意見です。
 これに対しましては,現に設置されている大学等に対する基幹教員,校舎及び研究室に関する各規定の適用については従前の例によることができることとするといったことなど,経過措置を設けておりまして,大学の準備が整ってから適用することも可能というふうにしております。
 パブコメとしては以上ですけれども,本日御出席いただけなかった金子委員のほうから幾つか御意見をいただいていますので,私のほうから代わって御紹介させていただきたいと思っております。金子委員からは大きく2つ,基幹教員の関係と教育課程等に係る特例制度の点,この2点について御意見をいただいています。
 まず1つ目,基幹教員の関係については,その導入について,運用の際に,基幹教員が本当に学部の運営の責任を担っているかどうか。財政上の理由から,教員の待遇引下げの方便となっていないかなど,事前事後のチェック体制を厳密に実施していただきたい。とりわけ事後チェック体制については,認証評価が設置から7年以内,あるいは5年以内に1回というタイミングで行われるけれども,短期でのチェックや柔軟な対応が必要なのではないか。それから,各大学に対して,基幹教員に関してどのような項目の情報の公表を求めるのか。省令や通知等でどのように規定されるのかといったことがまず1つ目の御意見です。
 これにつきましては,簡単にですけれども,今,こちらのほうで考えていますこととしては,まず,事後チェックの在り方につきましては,全体に関わるところでもありますので,質保証システム部会の審議まとめも踏まえまして,必要な検討を進めてまいりたいと思っております。
 それから,基幹教員に係る情報公表につきましては,現行の学校教育法施行規則の教員に係る情報公表の規定も参照することとなることと考えておりますけれども,例えば,基幹教員数や年齢構成,職別の人数,個々の基幹教員の学位や教育研究の業績等を公表することが考えられるところです。
 それから,御意見いただいている2点目の件は教育課程の特例制度に関係してですが,これについては,チェック体制が極めて重要だというふうに考える。認定後の実施状況報告,または報告徴収,認定取消しについてはどのように規定されるのかと。それから,実施状況報告は年1回というふうなことであるので,その際の内容と併せて情報公表内容もチェックして,基幹教員制度の運用実態についても把握し,適宜,本分科会とも情報共有されたいといった御意見です。
 これにつきましては,まず,特例制度の具体的な中身については,本日の資料でいいますと参考資料の1-1と1-5のほうにつけているんですけれども,6月22日の大学分科会でお配りした省令骨子案等をつけております。ここに具体的な規定ぶりを記載するところですけれども,具体的に特例の認定に関する告示を定めることとしております。この告示において,認定後の実施状況報告については,毎年度終了後3か月以内に報告書の提出をすると。報告の徴収等については,文科大臣が必要があると認めるときにはこれを行うことができるということ。それから,認定の取消しについては,認定された特例の円滑かつ確実な実施が見込まれなくなったときなどに行われることをそれぞれ定めているところです。
 そして,特例の認定に係る審査を行う有識者会議,本分科会に置いていただきたいと思っているこの有識者会議についてと,あと,大学分科会,こちらの分科会との情報共有についても,今後,その対応についても検討してまいりたいというふうに思っております。
 説明は以上です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。諮問の概要とパブリックコメント中心に説明いただきまして,大体はお分かりいただけたかと思います。
 御質問,御意見等ございますか。今のところお手は挙がっていないようですが,よろしいでしょうか。
 それでは,御質問,御意見ないようでしたら,大学設置基準の改正に関わる事項は,大学分科会の議決をもって,中央教育審議会の議決とするということになっております。したがいまして,ここで議決を行いたいと思います。
 併せて,先ほど御説明があった教育課程等特例制度運営委員会,特例をチェックするところですが,その委員会もまとめて設置をお願いしたいと思います。併せて諮問の内容となりますので,全体を合わせて議決を取らせていただきます。
 それでは,定足数を御確認ください。

【髙橋高等教育企画課課長補佐】  大学分科会の委員及び臨時委員数は30名でございますけれども,現在,26名の御出席をいただいているところでございます。中央教育審議会令第8条第1項に定める過半数を満たしているということになります。

【永田分科会長】  定足数を満たしております。
 お諮りをいたします。先ほど御説明いただきました大学設置の基準の改正に関わる答申,並びにその中で述べられている教育課程等特例制度の運営委員会の設置,いずれもお認めいただけますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)

【永田分科会長】  ありがとうございます。それでは,ここまでとさせていただきます。
 新しくできる委員会はまだどなたに委員にご就任いただくか決まっておりません。これから事務局とも相談して,先生方に御協力を仰ぐことになるかもしれませんので,その節はどうぞよろしくお願いを申し上げます。
 それでは,2番目の議題ですが,大学振興部会における議論についてということで,議論の状況の御説明を事務方のほうからさせていただきます。よろしくお願いいたします。

【柿澤高等教育政策室長】  高等教育政策室長の柿澤でございます。よろしくお願いいたします。
 それでは,お手元の資料のまず,2-1を御覧いただければと思います。大学振興部会でございますけれども,5月17日の大学分科会で設置が決定されたものでございます。こちら,資料の2-1の1枚目左下にございますとおり,論点としては3点,文理横断・文理融合教育の推進,また,出口の質保証,3つ目として,大学の強みと特色を生かした連携・統合,再編等による学修者のアクセス機会の確保や学生保護の仕組みの整備,高等教育の規模の在り方という3点が,論点として定められております。
 2枚目御覧いただきまして,これまでの審議経過でございますけれども,6月17日に第1回の会議を開催いたしまして,第2回,7月11日の部会におきましては,九州大学,金沢大学,東洋大学,大正大学から,それぞれ大学の取組のヒアリングを行ったところでございます。また,第3回大学振興部会においては,経済団体等からのヒアリングということで,日本経済団体連合会,また,SMBCバリュークリエーションからもヒアリングを行っているというところでございます。
 次に,資料の2-2を御覧いただければと思います。先生方にも,直前ではございますけれども,事前にお送りしている資料でございますので,ごくかいつまんでポイントのほうを御説明させていただきたいと思います。
 資料の2-2,審議経過メモでございますけれども,1枚目から2枚目にかけましては,これまでの中教審答申等における文理横断・文理融合教育の必要性に関する指摘等を紹介しております。
 こちら,2ページ目の1つ目の丸のところでございますけれども,社会状況の急速な変化が進む現代社会においては,社会経済の課題の多様化・複雑化が進み,単独あるいは少数の専門分野の知による課題解決がますます困難になっていると。こうした中,文理横断・文理融合教育の取組は,知識や情報を組み合わせた新たな価値を創出する人材,多様な他者と協働して社会における課題を発見・解決する人材を育成するという観点でも一層重要性が増しているといった指摘がございます。
 また,産業界の動向ですとか,あるいは第6期科学技術・イノベーション基本計画におきましても言及されている総合知の創出・活用の重要性といったことも触れられているところでございます。
 次に,3ページを御覧いただければと思います。こちらも部会のほうで大分御意見があったところでございますが,文理横断・文理融合教育における「文」と「理」というところでございまして,1つ目の丸のところでは,学生が学ぶべき「文」と「理」とは何か,これはディプロマ・ポリシーに定める学生が身につけるべき資質・能力等を踏まえて検討するべきものと。また,人文・社会科学,自然科学のどの学問分野であっても,各学問における固有の理論を深く学び,これに基づき仮説を立て,推論や実験・実証等によって解や結論を得る方法を見つけることなどを通じて,課題発見・解決力等の修得につながるものと。
 このことを前提としつつも,本部会においては,文理横断・文理融合教育とは単に種々の学問分野の知識を広く浅く身につければよいといった誤解を招かぬよう,哲学及び数学の重要性を指摘しておきたいということで,哲学及び数学の重要性といったところが部会でも多く御意見があったところでございます。
 次の2つの丸は,それぞれ哲学,そして数学の学問的な特性について触れているところでございますが,その下の丸,このような特性を持つ哲学及び数学に関わる学修でございますが,これが人間としての在り方や生き方に関する深い洞察,物事の本質を捉える力の涵養に資するものであると。とりわけ社会経済の変革を牽引するリーダーの育成に取り組む大学においては,こうした哲学や数学に関わる学修の意義にも十分留意することが期待されるというふうにされております。
 次に,4ページを御覧いただければと思います。4ページで,文理横断・文理融合教育の方法論というところがございます。文理横断・文理融合教育の具体的な方法論については,大学関係者においても必ずしも具体的な取組のイメージが共有されていないが,例えば,次のようなアプローチに大別することができるということで,4つ示されております。
 1つ目は,リベラルアーツ教育を中核に据えた学位プログラムということで,いわゆるレイトスペシャライゼ―ションの考え方に立つもの,また,ダブルメジャー,メジャー・マイナー制を導入している取組も見られるというふうにしております。
 次に,5ページになりますけれども,文理横断・文理融合教育を通じた課題解決力等の涵養に重点を置いた学位プログラムということで,文理横断的な思考・手法等により,課題を解決する力を育成することを目的とした学位プログラムとして,この部会においては,九州大学の共創学部などの取組についてヒアリングを行ったところでございます。
 3つ目としまして,文理横断・文理融合的な学問分野に基づく学位プログラムということで,ここでは例としまして,例えば環境学,あるいはデータサイエンス学部ということで,人文・社会科学系の学問と自然科学系の学問の知見を組み合わせた学問分野に基づく学位プログラムということでございます。
 4つ目としまして,一般教育・共通教育における文理横断・文理融合教育の取組というところを御意見としては入れております。
 6ページを御覧いただきまして,1つ目の丸のところになりますけれども,文理横断・文理融合教育のアプローチは,一定の型にはまるものではなく,各大学において自らの強みと特色を生かした質の高い教育を展開することが期待されるというふうにされております。
 その上で,3ポツ,文理横断・文理融合教育の推進に向けた方向性というところでございますが,ここで一番初めのところは,一般教育・共通教育,教養教育をめぐる課題と文理横断・文理融合教育について触れております。文理横断・文理融合教育には多様なアプローチがあり得るが,ややもすると,一般教育・共通教育のカリキュラムに関する事柄であるという狭い範囲の捉え方がなされる,あるいは教養教育と同一視されるという傾向があり,このことが大学設置基準の大綱化以降の一般教育・共通教育,教養教育をめぐる課題と相まって,我が国の大学において文理横断・文理融合教育が必ずしも十分に進展しているとは言えないことの背景にあるものと考えられるということで,そこ以降,一般教育をめぐる導入の経緯ですとか,あるいは教養教育をめぐる課題といったことについて,6ページから7ページにかけて記載をしているところでございます。
 8ページを御覧いただければと思います。8ページ目の一番上の丸のところで,一般教育・共通教育,教養教育をめぐる経緯や課題,これは文理横断・文理融合教育を進めるに当たっても留意する必要があると。どのような資質・能力を持った人材を育成するのかといった明確な目標や目的意識を持たずに,一般教育・共通教育において,単に個々の教員の研究分野に基づく幅広い授業科目が開設されていることをもって文理横断・文理融合教育の実践を標榜しても,教員の積極的な取組や教育方法・内容の改善,学生の学修意欲の喚起等につながらず,期待される教育成果につながらないといった指摘がございます。
 次に,こうしたことを踏まえまして,8ページ,文理横断・文理融合教育の質保証に向けた取組というところでございまして,ここの部分では,教学マネジメント指針を踏まえた取組ですとか,あるいはディプロマ・ポリシー,これを起点とした内部質保証の取組などについても記述があるところでございます。
 その中で,8ページ一番下の丸のところになりますけれども,このような文理横断・文理融合教育の検討・実施のプロセスにおいては,多様な専門性を有する教員が自由に意見を交わし,数理・データサイエンス・AI教育の実施にとどまらない文理横断・文理融合教育の在り方,リベラルアーツ教育の価値は何かといった大学教育のあるべき姿について議論を深めるなど,学部・研究科等の教育研究組織を超えて教員が積極的に関わり合う仕組みを取り入れることが望ましいといった指摘もされているところでございます。
 次に,9ページを御覧いただければと思います。9ページのところで,引き続き教学マネジメント上の工夫に触れておりまして,一番上の丸になりますけれども,学生の授業時間以外の学修時間が短い,密度の濃い主体的な学修を行うことができていないといった課題を踏まえまして,学生の学修の幅を広げることを意図した文理横断的なカリキュラムの編成・実施が単なる足し算,広く浅くの履修となり,こうした傾向に拍車をかけることがないよう,授業科目の精選・統合や,同時に履修する授業科目数の大胆な絞り込みを進めることも必要といった指摘。
 また,次の丸のところですけれども,学生の学修意欲の維持・向上も重要な課題としておりまして,例えば,一般教育・共通教育のカリキュラムにおいて,幅広い学問分野の授業科目が開設されていても,学生自身が文理横断的な学修の意義やそれを通じて身につけるべき資質・能力等の必要性に関する理解がなければ,自らを文系であると認識している学生が数理的素養や自然科学的な物の見方・考え方を積極的に学ぶことは期待できないだろうということで,少し下のところになりますけれども,少人数のゼミ形式の授業等において実社会における課題を取り扱うプロジェクト学修,イシューベースの学びを取り入れることを通じて,学生自身が,単一の学問分野における知見や手法のみを用いて多様化・複雑化が進む社会の課題を解決することは困難であり,文理横断的に様々な学問的方法を組み合わせることが必要であることを実感できるような教育課程上の工夫を行うことが求められるとしております。
 このほか,アカデミック・アドバイジングですとか,学生への支援といったところも言及がされているところでございます。
 10ページを御覧いただければと思います。10ページでは,文理横断・文理融合教育の推進体制等ということで,1つ目の丸のところでは,学部等の組織を超えて学内資源を効果的に活用する観点から,学部等連係課程制度を活用することも有効。
 また,次の丸のところでは,教教分離の導入というところも,柔軟な学位プログラムの機動的な編成や複数専攻制,主専攻・副専攻制の導入等に資するものといった指摘もございます。
 また,一番下の丸のところですけれども,特に地方大学や小規模な大学等にあっては,コンソーシアムや大学等連携推進法人を組成して共同の教育プログラムを実施するなど,人的・物的リソースの共有を図ることも有効ということが指摘されております。
 11ページに行きまして,11ページの一番上のところ,文理横断・文理融合教育の推進に向けた国の取組として,国における支援の必要性についても指摘をしているところでございます。
 次に,11ページの4ポツ,文理分断からの脱却に向けた高大接続改革でございます。この部会の中でも,初等中等教育における文理分断に関する指摘というものは様々意見がございまして,初等中等教育段階における文理分断の状況や高大接続の改善が求められるとする意見が根強いというふうにしております。
 その上で,11ページ目の一番下の丸になりますけれども,高等学校教育段階においては,大学入学者選抜を見据え,3分の2の高等学校が文系・理系のコース分けを実施しているが,文理選択は高校1年次の秋頃,文系・理系コースの開始時期は2年次の4月からであることが大半であり,あまりに早い時期に文理選択を迫られ,特定の教科について十分学習していない傾向があるとの指摘があるというふうにしております。
 12ページに行きまして,一番上の丸でございます。一方で,こうした文理分断の状況は,大学入学者選抜の在り方が変わらなければ解消されないとの意見もあると。特に私立大学の一般入試において,出題科目が限られており,人文・社会科学分野の中で,入学後の学修に必要となる数学の素養が必要となる学部において数学が課されないなど,大学への入学段階で入学者に求める能力・適性等を評価・判定していないといった文理の分断とも言える状況が生じているということでございまして,このポツの一番下のところ,高等学校における文系・理系のコース分けも,こうした大学入学者選抜に対する高等学校教育の適応化であるとも言えるという指摘もされております。
 次に,文理分断の解消に資する初等中等教育における取組ということで,12ページ,この大学分科会のほうでも,CSTIのほうで取りまとめられた政策パッケージについても御紹介があったところでございますけれども,初等中等教育段階における課題の解消に向けては,様々な施策,取組が進展しつつあるということで,教員の養成・採用・研修の一体的な改革を通じた教師の資質・能力の向上ですとか,あるいは高等学校段階におきましては,様々なモデル授業の実施ですとか,あるいは学習指導要領の改訂,また,高等学校設置基準の改正といった動向もございます。
 13ページを御覧いただければと思います。13ページで高大接続の改革に向けてということで,各大学においては,こうした初等中等教育段階における諸改革も踏まえて,大学入学者選抜の改善,そして,入学後の教育において文理横断・文理融合教育の推進に取り組むことが期待されると。
 入学者選抜の改善に向けて,各大学においては,まずもって入学者受入れ方針(アドミッション・ポリシー)を卒業認定・学位授与の方針,教育課程編成・実施の方針と一貫性・整合性のあるものとして定めた上で,入学志願者の実態も踏まえつつ,適切な出題教科・科目や入試の在り方について検討することが求められると。
 検討に当たっては,高等学校において情報Ⅰが必修科目とされ,大学においても文理を問わない共通的な素養として数理・データサイエンス・AIに関する教育が進展していることなど,大学教育を取り巻く状況の変化にも留意しつつ,大学入学者選抜に求められる原則的な考え方である,当該大学の学修・卒業に必要な能力・適性等の判定,高等学校教育と大学教育を接続する教育の一環としての実施の観点も踏まえることが重要であり,各大学への入学後の教育に必要な入試科目について,大学入学共通テストの活用や個別学力検査により適切に課すことが第一に考えられる選択肢となると。
 こうした役割分担が円滑に行われるよう,日常的に大学と高等学校が意思疎通できる機会を設け,高等学校での指導や初年次教育の改善に生かしていくことが重要と。また,高校生,高等学校関係者に積極的に情報発信していくことが求められるというふうにしております。
 また,13ページの一番最後のところですけれども,高大連携による教育プログラムの実施や,こうした学習を通じて養われた資質・能力を入学者選抜において多面的・総合的に評価・判定する取組が拡充されることも期待されるというふうにしております。
 14ページ,一番最後のところになりますけれども,国においては,「大学入試のあり方に関する検討会議 提言」を踏まえ,入学者選抜の改善に関する各大学の取組を適切に把握し,他大学の模範となる先導的な取組を推進することが重要と。積極的な取組を促進・評価する観点から推進策を講じる必要があると。具体的には,定期的な実態調査に基づく好事例の選定・公表や優れた取組に対するインセンティブの付与等を行うとともに,各大学が入学者選抜の改善を図る上で参照すべき指針となるよう,教学マネジメント指針について,入学者選抜の改善等の観点からの記述を盛り込んだ追補を作成することが求められるというふうにされております。
 以上でございます。

【永田分科会長】  ありがとうございました。
 ただいま大学振興部会における議論の経過,途中の報告でございました。皆様から御質問,御意見等をお受けいたします。この部会のほうは,この大学分科会からもたくさんの委員に御参加をいただいております。
 それでは,御質問,御意見等お伺いいたします。いかがでしょうか。麻生委員,どうぞ。

【麻生委員】  ありがとうございます。麻生でございます。
 文理横断・文理融合の観点からよく議論されており,幅広く議論されていると思いますが中身を拝見しますと,一般の4年制大学の中での議論のような気がします。できましたら,要素としては同じような内容がたくさんあると思いますが,短期大学や専門職大学,専門職短期大学のように,様々な大学の種類があるわけですから,これに対応した論点を,1番のほうで入れていただきたいと思いますし,今後議論されるであろう論点の3番目に,強み,特色,再編,それから連携という大学の議論がありますので,ぜひそこには短期大学や専門職大学等の内容を入れて議論していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。先生御指摘のとおりで,とりわけてだんだん3つ目のポイントのあたりに向かって,議論の幅が広がると思います。吉見委員,どうぞ。

【吉見委員】 ありがとうございます。大変お疲れさまでした。
 3点ほどコメントをさせていただきたいと思います。まず,文理横断・文理融合教育という,この言葉の中身がいまひとつはっきりしないと思うのですね。なぜそれが問題なのかというと,中身をはっきりさせたおかないと,どうしても昨今、声高に世の中で言われている数理・データサイエンス・AIという,その教育が必要なんだという,そっちのほうの流れにこれが引っ張られちゃうということを若干危惧します。
 私はこれまで,文理融合ではなく,文理複眼だと申し上げてまいりました。その趣旨は,文系は文系で,理系は理系で,それぞれの専門でちゃんと柱を立てる。立った柱をそれぞれの学修者や研究者がつないでいくことはすごく大切なんだけれども,それを単純に融合してしまえばいいということではないと言ってきたつもりです。機会がございましたら,ここでも横断・複眼ということを強調していただければと思います。
 それから,2点目です。哲学と数学ってなっていましたが,哲学も数学も両方リベラルアーツですね。中世からの大学の歴史を考えてみれば,いずれもリベラルアーツ,数学もリベラルアーツの一種ですから,そのリベラルアーツの概念が近世以降になると哲学の概念になったわけで,根底にある知はやっぱりリベラルアーツです。そこのところのポイントを外さないことが大切だと思います。
 最後,3点目です。それでは文理横断・文理融合って一体何なのかというふうに考えてみると,ここではリベラルアーツ,課題解決,新分野,一般教育などが出てきますが,これらはそれぞれ結構ばらばらだと思うのです。結局,言っていることは,私の理解では,既存の縦割りの学問分野では,単線的な教育ではどうも限界に来ている。それを超えるものを指し示そうとして,文理横断・文理融合と言っているのではないかと解釈します。ですが,もうちょっとこれをポジティブに統合的、総合的に言う必要があると思います。単に課題解決ということではなく,私の理解では,地球社会の新たな価値を創造する。つまり,課題解決と価値創造はちょっと違うんですね。既存の価値体系に基づいてすでに言われている課題を解決することも大切ではありますが,もっと大切なのは、人類史的な視野で世界の人々から共感を得られる新たな価値を創造するということです。そこに向けての様々なリベラルアーツや,それから新分野や,ゼネラルエデュケーションが必要になってくると思うのです。そういうふうに,もうちょっと教育の方向性について,中身を明示的に示す必要が,この言葉に関してあるのではないかというふうな気がいたします。
 以上でございます。

【永田分科会長】  ありがとうございます。最初に言われた部分は非常に重要で,このまとめにうまくまだ反映できていないかもしれません。文は文,数理・データサイエンス・AIをもってして理だというふうに,実は経済界の方々は結構おっしゃいますが,それを文理問わずというふうに文章で述べています。文理問わず基本的に英語と同じであるというような考え方を,ようやく人前で披露したというところです。
 哲学と数学になってしまったのは,数理・データサイエンス・AIが理だと思い込んでいられると困るので,わざわざ数学と哲学が書き込まれてきたということです。
 いずれにしても,やはり文理横断や文理融合というのは,そんな簡単なことではなくて,複眼ということが一番近いのかもしれません。
 実は産業界の方からのプレゼンの中に極めて良いプレゼンがありまして,今さらながら,文理融合といったとしても,文理が何かという議論がようやく芽生えたということです。後半部分については,表現の仕方を工夫しながらやっていきたいと思います。後藤委員,どうぞ。

【後藤委員】  失礼します。大学振興部会での御審議,それから,経過のおまとめ,ありがとうございます。
 文理横断とか文理融合教育,それからSTEAM教育,これ,今,私どもが所属しています高専教育の大きな課題になっておりますが,これは極めて重要だと思います。ただ,やはり聞いていて,軸足をどうするかとか,バランス的なものは非常に重要かなと思いました。
 それから,文理融合人材に対する産業界等からのニーズや評価について,少し触れてはあるんですけれども,もう少し具体が分かるといいかなと思いました。
 ちょっと観点は違うかもしれませんが,やはり科学技術立国ということを考えますと,理工系人材やDX人材の養成というのを強く打ち出す時期になっているのかなと思います。専門教育に加えてリベラルアーツ教育は必要だとは思いますが,その辺りとの兼ね合いをどう考えておられるかということと,あと,最後に学生保護という言葉があったんですが,この学生保護の仕組みとは一体何を言っているのか。もし学生支援ということであれば,就学支援,キャリア支援,生活支援,メンタル支援等,非常に幅広の内容があるかと思うんですが,その辺りを少しお伺いしたいなと思っております。
 以上です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。

【柿澤高等教育政策室長】  事務局でございます。学生保護,先ほどの資料2-1の論点の(3)のところかと思います。こちら,資料の2-1のところを御覧いただければと思いますけれども,横の紙でございます。ここの中で,大学振興部会立ち上げに当たっての現状・課題の認識というところでございまして,現状・課題の左下のところでございます。令和3年度の私立大学入学定員充足率は初めて100%を下回り,定員未充足の大学も増加といったこと,また,新設大学・学部の状況を見ても定員未充足が多くということで,教育の質に関わる指摘も多いというところがございます。
 右のところに行きまして,社会人や留学生の受入れというものは当然重要ではございますけれども,やはり今後,大学進学者数が相当程度減少することは避けがたいという中で,特に地方の大学は,大学進学者数減少の影響をより強く受けることが想定されるが,経営難に陥る大学が増大することになれば,教育の質保証や学生保護等の観点から問題が生じることが懸念されるというところでございまして,まさにここで言う学生保護というところは,大学があるいは法人が経営難に陥ったというようなときに,そのことが結果として学生に不利益が生じることがないようにという観点での用語でございます。

【永田分科会長】 まだそこまで議論は行っておらず,1,2,3の文理融合・横断のところまでです。御理解いただければと思います。松下委員,どうぞ。

【松下委員】   ありがとうございます。大変興味深い議論がなされていると思いました。
 私のほうからは3点,御質問いたします。まず1点目は,文理融合・文理横断というのが,いろいろな学校段階で言われていますね。特に高校教育でも言われるようになってきています。また,STEAMなども,先ほど後藤委員が言われたように,いろいろな段階で言われるようになってきています。
 その中で,大学ならではの文理横断・融合というのが何なのかというのを,専門教育との関係でもう少し明確化していただきたいなというふうに思います。学生たちは,大学入学までのところで各教科を学んできていますけれども,学問分野を本格的に学ぶのは,大学の1年,2年生ぐらいからなわけですよね。なので,まだ専門分野の学びというのもしっかりできていない中で,文理横断・文理融合というのがどういうふうにしてできるのか。下手をすると,本当に何かはっきりとそれぞれの学問も分からないままに,何となく浅い,ぼわんとした曖昧なものを学んでしまうということになりかねない。先ほど吉見委員も文理複眼という言い方をされたんですけれども,専門教育と文理横断・文理融合との関係を考えたときに,専門を学びながら何ができるかという視点をもう少し入れていただければというふうに思います。
 それから,2点目ですけれども,哲学と数学について言及されていたのは,とても面白いなと思って伺っていたんですけれども,ただ,一方で,哲学や数学そのものが非常に細分化していて,注で学術会議の参照基準が挙げられていたんですが,哲学の参照基準などは,中身は哲学系諸学という形で書かれているんですね。結局,哲学全体としてまとめるというのは非常に難しかったわけです。
 そういうことを考えたときに,文理横断・文理融合の基盤となるような哲学や数学というのはどういうものなのかというのをもう少し明確化する必要があるのではないかと思います。哲学,数学というのは分野を越えて重要だというのは分かるんですが,一歩踏み込んで,具体的にどんな哲学,どんな数学って考えたときに,はたと困るというようなことになるのではないかという気がいたしましたので,ここももう少し詰めていただければなというふうに思います。
 3点目は,レイトスペシャライゼ―ションのことが言われていて,これも重要なことだと思うんですけれども,もう一つ,ダブルメジャーとかメジャー・マイナーの話も書かれていました。さらに言うと,高校から大学のときに一応進路は決めたんだけれども,いろいろな分野を学んでみて,やっぱり自分はこれじゃない,もっと違う専門に進みたいというときの転学部とか転学科,そういう仕組みも,もう少しそれがやりやすいように,流動的に柔軟性を持って進路選択ができるような,そういう仕組みというのを大学が整えていくということも重要なのではないかなというふうに思いますので,その辺りも言及いただければありがたく思います。
 以上です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。最後のところは,具体的なシステムなので,大変示唆に富んだ御意見だと思います。
 前半部分は,煮えていないのは当たり前で,まだ出てきたばかりですが,少しだけ私見を述べると,基本的に大学なので,各大学の水準で異なると思います。数学や哲学と言っているのも,実は議論があって,そのようなことを言われたらうちはできないなどの意見もあったぐらいです。数学といっても,それが念頭にあった上での物理学でもいいし,ほかの自然科学でもいいと思います。出ているのは,根本議論としての数学や哲学ということが出てきたところに価値があります。
 それから,哲学も諸学で,別に何の哲学をやらなければいけないのではなく,哲学というのは,解釈もあり,議論もあり,その上,行動まで含んだものであるという前提の上で,その下の法学であっても障害科学であっても構わないものであり,それは大学の選択ではないかと思います。
 ただ,そのような念頭に置いて,それぞれの大学が特徴を持って文理というものを考えてもらうために,わざわざあのような単語が出ました。まだ煮え切っていないので,少し格好悪いのですが,そのような意味です。
 曄道委員,どうぞ。

【曄道委員】 ありがとうございます。私も振興部会での議論に加わらせていただいておりますけれども,現段階で,やはり先ほどから先生方御指摘されているように,文理融合あるいは横断,さらに吉見委員の御指摘の複眼といったような言葉の使い分けがまだ十分共通認識に至っていないかなという気もいたします。例えば,教育の立場,あるいは社会分析のような立場の方々がビッグデータを使って解析をするといったような,そういう学びを得ようとすると,それは果たして文理融合なのか。そういった区分けについて,あるいはそれが必要かどうかもそもそも議論の対象になるかもしれませんが,永田分科会長がおっしゃるように,文と理が何を指しているかといったような理解も含めて,もう少し整理が必要なのかなと思います。
 その上で,この議論をするときに,まだこの次のステップかもしれませんが,大学院の教育がどうあるべきなのかということを併せて考えていかないと,やはり高等教育の像がしっかり見えてこないかと。例えば,学部の学生に対する文理融合のこういうプログラムが整備されていったときに,大学院の教育は変わらなくてよいのかといったことも含めた議論も今後必要になってくるのではないかな思っております。
 以上でございます。

【永田分科会長】 ありがとうございます。先ほどの転学部と同じように,もっと全体として流動性のある形で教育システムをというのは,これからこれを具体的に実装するためには,きちんと議論しないといけないポイントだと思います。須賀委員,どうぞ。

【須賀委員】  ありがとうございます。私からは,高大接続の観点から2点,そのほかちょっと1点,感想を述べたいと思います。
 まず,文理融合とか文理横断ということを言う場合に,ある程度の基礎的な素養は重要だろうと思うんですが,そういったものに関わる様々な教科については,高校までしっかり学んでいるものだというふうに思います。
 それに対して実際には何が起こっているかというと,先ほどの議論に遭ったように高校2年生ぐらいで文系・理系が決まってしまい,そこから先はほとんど一方の科目はやらなくなるとかといったようなことが起こってきている。さらに,私立大学を受験するというようなことになりますと,相当に長い時間にわたって,例えば,私立文系であれば,理系の科目はやっていない。それが大学に入って急に文理融合とか横断と言われても,これではほとんど先へ進めないような状況になってしまうだろうと思います。
 ということは,高校の教科がしっかりと学べるような仕組みをつくっておくということが前提となるのではないかということです。その辺りをしっかりと考えていただかなければいけないだろうということで,とりわけ大学入学者選抜にもう少し注目をしていただきたいということが1点。
 それから,2点目は,大学入学共通テストのようなものをうまく利用することができるようになれば,私立大学でも,大学に入ってからの文理融合に向かって進むことができるような基礎科目についての試験が可能になるかもしれません。今のような仕組みですと,ただ共通テストの点数が最終的に私立の大学に届くのがかなり遅いということもありますので,私立大学が大学入学共通テストを使いやすくなるようにテストの実施時期をどういうふうにすればいいのかということも併せてお考えいただきたいと思っております。
 それから,1点,感想ですが,哲学と数学。こういう言い方をしていただいて,私は経済学が専門なんですけれども,経済学の哲学的な基礎とか,経済学の数学的基礎といったようなものをすぐに念頭に浮かべてしまうんですが,それぞれの学問にそういったものの基礎づけというのはある。そこに共通性を見いだすことができれば,学問間の横断というのは比較的やりやすくなるのではないか。そういった視点で専門を見直すということが可能であれば,この議論,もう少し深められるのかなというふうに思いました。
 以上です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。最後に言われたところがもっと練れた言葉で書かれていると分かりやすいのでしょうが,そのような言葉が出てきて,本質的に文理とは何かという話がようやくできて,まだこれからだと思います。参考にさせていただきます。千葉委員,どうぞ。

【千葉委員】  ありがとうございます。大学の文理横断・文理融合について,大変興味深く読ませていただきました。
 その中で,複雑化した社会の中における課題発見,課題解決ということにおいて,こうした取組が必要であると書いてあります,それについては,大学という視点で見た場合には,一つの視点においてそれは正しいことだと思いますが,少し全てを規定していくと,また同質化に向かっていくというようなことも危惧されるのではないかということを感じました。
 また,高等教育全体で言いますと,先ほども御発言がございましたが,短大,専門職大学,高専,専門学校,こういった多様な人材による,共に働く協働による課題発見,課題解決ということも,高等教育全体を見ると必要になってくるかと思います。
 また,高等学校においても,普通科中心の教育の体制になっていますけれども,やはり高等学校においても多様な人材を育成して,そして,それが高等教育に入って,さらに協働して課題解決をして,日本の発展に寄与していくと。こういったことも広い視点で見ていただけるとありがたいなと思います。

【永田分科会長】  ありがとうございます。須賀委員,千葉委員と続いてご発言されたところですが,この部会でも,中等教育とその接続についてはよく出てきています。まだ書き込みは足りないでしょうが,相当の議論をしないと難しい部分です。忘れているわけでもないし,回避しているわけでもないのですが,じっくりと腰を据えて議論をしたいと思います。大野委員,どうぞ。

【大野委員】  どうもありがとうございます。東北大学の大野です。
 1点だけ,今,高大接続も議論になり,大学の中の高等教育のことも議論になりました。ぜひ社会から見たときの社会プルみたいな大学・高等教育と社会との接続に関する記述を入れていただくと,全体として分かりやすくなるかと思います。例えば、どのような文理横断,あるいは価値創造を求めていて,そのためにどのようなものが必要かというような社会からのメッセージも,高大接続の議論と同じように,我々が社会からのメッセージを受けて高等教育を形づくるにおいてはとても必要だと思いますので,ぜひそういう視点も入れていただけるとありがたいかなと思います。
 いずれにしろ,審議経過,大変刺激的な内容を御報告いただきまして,誠にありがとうございました。
 
【永田分科会長】  ありがとうございます。大学に入るときと出るときということと同じかと思いますが,きちんとその視点でもっと大局的な意味で捉えていただきたいという御意見だったと思います。
 いずれもそのような内容だと思います。ここでやはり社会のニーズがあるのは間違いないですが,社会も少し誤解している部分もあるので,お互いに対話をうまくして,引き出さないといけない。
 ただ,先ほど申し上げたように,三井住友フィナンシャルグループのバリバリの文系の方に御発表いただきました。その方が文理問わずやらなければいけないことはたくさんあって,それと文と理というのはまた違うという感じでプレゼンされました。なるほどということがありまして,最後の大野委員の御意見にも実はつながる部分がありました。きちんともう一度それぞれを見て,文理とは何かまでもう一度考えながら,最終的にきちんと社会にコミットできるような形にしていきたいとは思っております。
 お手が挙がっているのはここまでだと思います。まだまだ3回しか議論していないので,大変稚拙な状況になっていますが,だんだん煮詰まっていくと思います。乞う御期待ということで,しばらくまた委員の先生方によろしくお願い申し上げたいというところでございます。
 それでは,お手が挙がっていませんので,次に,3つ目,教育振興基本計画部会における議論についてです。今度は少し将来にわたった基本計画ということですが,進行状況について事務方からまず御説明をいただきます。

【川村教育企画調整官】  ありがとうございます。総合教育政策局の川村でございます。私からは,資料3に基づきまして,教育振興基本計画部会における議論について御報告をさせていただきます。
 教育振興基本計画部会につきましては,1ページおめくりいただきまして,これまでの教育振興基本計画,こちら,1期,2期,3期とございますけれども,本年度3期の最終年度でございますので,次期の基本計画について審議をしているところでございます。
 次のページでございますけれども,次期計画の策定に当たっての諮問の概要でございます。こちらについては,本年3月の大学分科会におきまして御報告をさせていただいております。社会の変化,2040年以降の社会を見据えて,超スマート社会(Society5.0),またはウェルビーイング,こういった考え方を常にしつつ,一番下の諮問事項丸1から丸4までということで諮問をされているところでございます。
 次のページでございますけれども,これまでの審議状況でございます。これまで6回開催いたしておりまして,第2回でいわゆる第3期のフォローアップ,第3回で教育DX,それから現場での実効性についてということ,第4回では,教育とウェルビーイング,また,誰一人取り残さない教育について,第5回では,教育と産業界の連携,社会教育,それから教育と地域の連携,また,この回では生徒・学生さんからの話題提供というのもいただきました。そして,第6回では,グローバル,スポーツ・文化芸術・体験活動ということで御議論をいただいたところでございます。
 次のページでございますけれども,第3期の現行の教育振興基本計画の全体構造を整理をしております。5つの基本的な方針の下に21の教育政策目標というのが連なっておりまして,そこに施策群というのがそれぞれ目標ごとにあるという構造になっております。
 高等教育関係で申しますと,(4)問題発見・解決能力の修得というところにまず施策群がございまして,例えば,高大接続改革ですとか,学生本位の視点に立った教育の実現等々ということがございます。
 それから,(5)社会的・職業的自立に向けた能力の育成ですとか,それから,(7)グローバルの関係では,留学生に関する施策が入っております。
 (8)大学院の教育の改革等を通じたイノベーションの牽引人材,こちら,大学院教育改革等,大学院に関する施策群ということで入っております。
 また,(14)でございますけれども,家庭の経済状況や地理的条件の対応ということで,ここは特に経済支援,教育へのアクセス向上といった内容が入っております。
 また,(20)でございますけれども,教育研究の基盤強化に向けた高等教育システム改革ということでございまして,こちら,全体でありますけれども,次のページでございますけれども,6ページ,これに基づきましてフォローアップというものを行っております。先ほど申し上げた21の教育の目標それぞれにおきまして,現状,指標等がございますので,それを基に進捗状況を整理いたしまして,順調に進捗または目標を達成したものを赤字,課題あり,目標に達していないものを下線,横ばいまたは今後把握するものは文字修飾なしということで,目標ごとに記載をしております。
 例えば,(1)確かな学力の育成で申しますと,OECDのPISA調査等において,日本の子供たちは世界トップレベルの水準を維持しているということがございます。
 高等教育関係で申しますと(4)のところ,大学生の授業外学修時間,令和2年度は増加をしているという傾向が見られました。
 また,(8)の大学院教育の改革を通じたイノベーション人材の育成,これについては,修士課程修了者の博士課程への進学率が指標になっておりますけれども,若干向上が,増加が見られますが,中期的なトレンドとしては低下傾向でございます。大学発ベンチャーの設立数は増加傾向にあるというようなこともございます。
 それから,次のページでございますけれども,7ページでございますが,(14)の家庭の経済状況や地理的条件への対応ということで,経済支援によって,特に非課税世帯の子供の大学進学率が向上したという成果が見られます。
 それから,(20)教育研究の基盤強化等につきましては,寄附金ですとか,また,中期的な計画の策定状況等について進捗が見られるという,こういったこととなっております。
 こういったことを踏まえまして議論しておりまして,次のページでございますけれども,次のページは,第3期の計画期間中に教育政策に関して提言された答申ですとか審議まとめ,こういったものを整理しておりまして,高等教育関係でも,左側に大体の段階を書いておりますけれども,グランドデザイン答申以降,様々なまとめが中央教育審議会,また,文部科学省の有識者会議,他省庁の会議でも出ているというもので,こちらをベースに議論をさせていただいております。
 現在の審議の状況ですが,次のスライドでありますけれども,9ページでございますが,これまでの審議における総論のキーワードの整理ということで,こちら,前回の第6回の配付資料でございますけれども,計画自体は初等中等教育から高等教育,また,社会教育,生涯学習まで含めたものでございますので,教育段階を通じまして,上半分につきましては,大きな社会の変化ですとか状況,それから,下半分は学校に関わることということで,出てきたキーワードを整理しております。
 特に現在から5年後ということで,次期の計画の期間でありますところにおきましては,二重線で囲っております共生社会,誰一人取り残さない,また,日本型ウェルビーイング,教育DX,主体的な社会の担い手,こういったところが主なキーワードになってくるのかなというふうに考えています。
 それから,2040年以降の時代は超スマート社会,また,VUCA,人生100年時代,こういったキーワードが考えられるのではないかという議論でございます。
 また,右端には,普遍的な価値というものはこういうものがあるだろうということで言っております。
 下半分は,学校,それから縦軸に学校段階を置いておりまして,高等教育のところでいきますと,本日も議論がございました文理横断・文理融合ですとか,学修者本位,学修成果の可視化といった,これまで大学分科会で御議論がございましたキーワードというものをいただいておりまして,地学一体・協働ということですとか,右側のほうに産学連携人材育成というのがございますけれども,地域社会との連携というものも出てきております。また,右端には,計画の実効性のために必要な内容ということでございます。
 こういったキーワードの整理を踏まえまして,次のページでございますけれども,次期基本計画の策定に向けた基本的な考え方に係るこれまでの議論の整理(骨子)(たたき台)というものでお示しをしております。次期計画のコンセプトでありますけれども,5つございまして,予測困難な時代の象徴としての新型コロナウイルス感染症による影響によって浮き彫りとなった学校や教育の役割,学びの変容といったこと,こういったものを受けて,誰一人取り残さず,全ての人の可能性を引き出すための教育の実現に向けた個別最適な学び,協働的な学び,また,日本型ウェルビーイングの概念整理を踏まえた上での多様な個人のウェルビーイングの実現を目指すとともに,個人と社会のウェルビーイングの実現をつなぐような役割というのを重視する。
 それから,少子化・人口減少の中で,持続可能な社会の発展を生み出していく人材を育むための主体的な社会の形成の参画,また,生涯にわたって学び続ける学修者,社会や時代の変化に応じて課題を発見・解決するための学びを,特に高等教育においていつでも受けられる教育・社会環境を整備するということ,また,デジタルトランスフォーメーション,これを教育・学習全体の中に組み込むという視点,これらを通じた価値創造によるSociety5.0の実現ということをコンセプトとしております。
 以降,各章ですけれども,まず,教育の普遍的な使命ということで,教育基本法ですとか,今年は学制150年に当たりますので,そういったことを掲げておりまして,それ以降は先ほど申し上げたフォローアップでございます。次のページまでフォローアップが続きまして,社会の現状や変化への対応のところ,VUCA,また,Society5.0,日本型ウェルビーイング,こういったものを現在の状況として記載しております。
 その上で,2ポツのところが今後の教育政策に関する基本的な方針ということで,日本型ウェルビーイングの向上・共生社会の実現に向けた教育というのがまず1つ。
 それから,その下に考え方を幾つか並べておりますけれども,次の丸でございます。次ページでございますけれども,社会の持続的な発展を生み出す人材の養成ということで,特にこの中に高等教育に関する,例えば,デジタル・グリーン等に応じた時代や社会の変化を踏まえた問題発見・解決,また,文理横断・文理融合,産学官連携,グローバル人材の育成,リカレント教育,こういったものを挙げておりまして,そのための方向性ということで,以下に並べたような項目を現在,骨子として挙げているところでございます。
 その次の丸は社会教育,生涯学習に関する事柄,それから,その次のところが計画の実効性確保のための条件整備・対話というところでございまして,それ以降は項目,それから,明朝体のところは現行の計画の指標と目標を書いているというものでございます。
 最後,御参考ですけれども,18ページ以降に,フォローアップの資料ということでつけさせていただいております,学修時間に関するデータですとか,留学に関するデータ,また,大学院博士課程への進学率に関するデータ,こういったものをフォローアップとして行いまして,議論させていただいておりますので,御参照いただければと思います。
 以上でございます。

【永田分科会長】  ありがとうございます。
 第6回までの資料でした。第6回のときには,やはり激動する現代社会,予測不能な時代ということで,コロナのインパクトが大きかったから,前文に書かないと駄目だろうということと,力による現状変更というのも非常にインパクトが大きいということで,この時期の基本計画を書くのなら,きちんとそのような認識は持たなければ駄目だろうという意見は出ましたから,第7回の資料に出てくると思ってはおります。
 御意見とか御質問あれば,お伺いしたいと思います。いかがでしょうか。大野委員,どうぞ。
 
【大野委員】  ありがとうございます。御説明ありがとうございました。教育全般に関わる非常に広範な議論がなされていると理解いたしました。
 高等教育に関わる者として,高等教育のグローバル化について一言だけコメントさせていただきます。今お話があったコロナもそうですけれども,我が国,エネルギーも食料も自給が困難なわけでありまして,現在の経済規模を維持発展させようとする場合,少子高齢化の中でも知識集約的な社会を支えるグローバル人材の育成と確保が必要だと考えています。また,Society5.0の実現,あるいは個々のウェルビーイングを視野に入れた,パッチワークではない骨太の計画がここには必要だろうと考えています。
 人材育成確保の立場,特に高等教育に絞って考えてみますと,人材を育成する,確保する,あるいは我が国の学生が日本の大学に入ってすぐにグローバルについて理解するためには,留学生が非常に多いキャンパスが必要だと思います。したがいまして,留学生の受入れ,もちろん我が国の学生の送り出しも重要ですけれども,留学生の受入れによってネットワークもでき,学生の環境が格段にグローバル化して,我々の将来のネットワークをつくるということ,それを学生諸君が自ら築いてくれることも重要かと思っています。
 こういう意味で,世界各国の優秀な学生に,グローバルの循環する流れの中に日本の大学が参画するという質的な面が特に強調されるとよろしいかと思います。日本の大学も,世界の人材獲得競争に参加し,欧米のあるいはほかの国の大学と同様に,高い授業料を払ってでも留学生が来たいという魅力ある高等教育,あるいは大学を目指すことは重要だと考えています。広い中の一部ですけれども,ぜひその視点も御議論に入れていただくと,大変助かります。ありがとうございました。
 
【永田分科会長】  ありがとうございます。そのような御意見はやはり多いと思います。それに向けて変えなければいけない,あるいは準備しなければいけないこともたくさんあるので,これからの議論で,多分施策レベルに落とさなければいけないものは具体的に出てくるだろうと思います。川嶋委員,どうぞ。

【川嶋委員】  ありがとうございます。川嶋です。非常に広範なキーワード,あるいは領域,観点について議論されているんですけれども,先ほどの大学振興部会の中間報告に至る議論の中で,何人かの委員の方が,単に大学というか,学士課程だけで文理融合・文理横断,あるいは複眼的な思考や視点を持った人材が育成されるわけではなく,各学校段階ごと,それから,ひいては社会でどういうふうにすればそのような人材が育成されるのかという意見が出ました。
 この振興部会において,例えば,横串だけではなく,縦串として,複眼的な思考力を持ったような人材,これからの時代に必要な人材を,それぞれの教育段階でどのように育成していったらいいのかという,そのような議論というのはどこかでなされているのでしょうか。あったほうがいいというのが私の価値判断なんですけれども,いかがでしょうか。

【永田分科会長】  私も川嶋委員と同意見ですが,今のところ縦串でというのはないと思います。いろいろな段階でその必要性はもちろん述べられていますが,一貫した一つの大きな柱で,その食いつきでやるという話はまだ出ていません。多分,政策をつくるときには必要で,文言も一気通貫で行けるようにつくらなければいけないので,今はまだどちらかというといろいろなところから意見聴取をしている段階ですので,大変参考になる御意見だと思います。ありがとうございます。熊平委員,どうぞ。

【熊平委員】  ありがとうございます。熊平です。私のほうからは,幾つか申し上げたいことがあるんですが,まず,日本においては,やはり労働人口の減少もそうですけれども,いかに高付加価値をつくっていける人材を育てるのかということが,多分,最大の教育の一つのテーマかというふうに思います。
 その背景として,またもう一つは,複雑な問題とか,厄介な問題というのが山積みになってきているというこの世界の状況の中で,この問題がボーダーレスにもなっているというようなことだと思います。
 ですので,グローバル化ですとか,それから文理横断ですとか,そういったお話も,全てこういう複雑な問題をいかにグローバルで解決していくことができるのかというような,そういうところにつながっているから必要になってきているというふうに理解しています。
 ですので,日本の若者が世界のチームの一員として,ボーダーレスに広がってきている課題を解決して,高付加価値を生み出していく。そういう人材を育てられるような教育に変わっていくというようなところに焦点を置いていただけるとよいのではないかというふうに思いました。
 私からは以上でございます。

【永田分科会長】  ありがとうございます。小林委員,どうぞ。

【小林(弘)委員】  小林でございます。大野委員もおっしゃっていたのですけれども,グローバル化で留学生を増やすと同時に,来ていただく人たちも増やす必要があるという話があったと思いますが,ここでちょっと議論があまり進んでいないのが,9月入学の問題かと思います。特に大学院がそうなのですが,海外の優秀な人材を入れるためには,9月入学というのは避けて通れないと思います。文部科学省の通達で,学力検査は2月1日以降にしなさいというような通達もあって,そうすると,海外からの人たちを入れるのに,9月からどうやって入れるかというのはちょっと難しいので,その議論は以前あったと思うのですけど,これ完全に消えてしまっているので,それもちょっと検討していただければと思います。
 以上です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。相原委員,どうぞ。

【相原委員】  相原です。今のお話にあるような,グローバル化とか入学の話と,留学の時期の話というのは非常に具体的で分かりやすいのですけれども,ここに出ています日本型ウェルビーイングの向上,共生社会の実現化に向けた教育というのは,これはほかのテーマと比べてぼやっとした表現というか,あまりにも大きなテーマで分かりにくいと思うんですね。
 ウェルビーイングとは何かという概念については書かれていますので,実際にウェルビーイングとして何を目指すのかというところをしっかり定義していただければ,先に進めるかなと思いました。

【永田分科会長】 ありがとうございます。諮問の中に出てきているので,定義する必要があります。越智委員,どうぞ。

【越智委員】  ありがとうございます。私も振興部会の委員だったので,発言はちょっと控えておりました。永田委員長から,御質問がたくさんあったのに適切にお答えされたということと,中身について文部科学省の方もかなり頑張って書いていただいたんだなというふうに思いました。議論の中から大事な要素が割と取り上げられているんじゃないかと思います。
 やはり全体を通して見る視点というのがあって,高大接続,大学で何をやるか,そして大学院でどうやっていくか,それは社会とつながると。これは大野委員からも御質問というか,提言があったと思うんですけれども,その中で少子化とか社会が困っているところをどういうふうにカバーしていくかということです。ここについては,やはり今後ビッグデータになるというようなこともあって,理系のほうに流れていますよね。それは教育未来創造会議でも,現在の理系の学生を35%から50%にしようというような目標を掲げられていますし,奨学金給付に関しても,中間層の理系学生に拡大をというような方針が出ています。そういうふうな中で,文理融合をどういうふうに進めていくかということについて,私自身もなかなか難しいところがあるというふうに思いますけれども,やはりそれぞれの専門性を確立した上で文理融合というふうな方向に入っていく必要はあるのではないかというふうに思いますし,少子化ということで,大野委員が言われた,やはり留学生をどのように温かく迎えて日本の社会に溶け込ませていって,また送り返して日本のサポーターになっていくかというようなシステムも非常に重要ではないかというふうに思いましたので,一言,発言させていただきました。
 以上です。
 
【永田分科会長】   サポートしていただき,ありがとうございます。松下委員,どうぞ。

【松下委員】  すみません,手短に。6ページのところで指標の状況というのが挙がっているんですけども,(4)の大学生の授業外学修時間,令和2年度というのは,コロナでオンデマンドとかオンライン授業が広がった年で,この年は結構,特殊な年だったと思います。ですので,授業外学修時間がどこでも増えたんですけれども,これが今後のトレンドになるかという点はかなり注意が必要ですので,ちょっとここ,「コロナ禍の」とか入れていただいたほうが,意味が明確になるかなというふうに思いました。
 失礼します。

【永田分科会長】  ありがとうございます。髙宮委員,どうぞ。

【髙宮委員】   ありがとうございます。部会の皆様,丁寧なおまとめを誠にありがとうございました。
 非常にたくさんの御議論があって,慎重にいろいろ盛り込まれていたところ,私自身が興味を持っているところで,現在の学生のマインドについて,少しデータなりを加えていただけたらなと思いました。
 それは,今の学生,これから大学に入学する学生はデジタルネーティブでして,大分私たちが想像するのとは違うマインドにどんどんどんどん切り替わってきているのではないかと思います。例えば,コロナ禍で学生にいろいろ聞いてみますと,どんなことに時間を使ったかというののかなり筆頭が,ゲームをほかの人がやっているところを観戦するという。自分でゲームをするのではなくて,ゲーム観戦のほうに軸足が移っていたりとか,思いもよらないような行動がICTと関連して起こっていたりすると思います。
 恐らく今後それがどんどん進んでいくと思いますので,少し新しい学生の,方向性の検討という視点を加えていただいて,そのようなデータをお教えいただけるとうれしいなと考えております。
 以上でございます。ありがとうございました。
 
【永田分科会長】  ありがとうございます。参考にさせていただきたいと思います。
 そのほかは今のところお手が挙がっておりません。
 見ていただいて分かりますように,教育振興基本計画部会というのは,生涯教育,初等中等教育など,いろいろなところから人々が集まっているので,高等教育はかなり絞られた形での部分ということになっています。第3期を見ていただいてもそうですが,やはり人間の数が多い初等中等というところに結構重きは行きますし,生涯学習というのも結構比重が重いと思います。その中で,ある意味では,高等教育のところはきちんとえりすぐって出していかないといけないとは思いつつ,この議論には参加しています。
 ただ,大分変わりました。どちらかというと第3期は,弱者に対する目線で何とか皆さんで誰も取り残さないでいこうというところから,今回は,少し前向きになってきていまして,特徴を出してやっていきましょうという方向に移りつつあります。
 先ほど相原委員からもありましたが,私自身も何回も疑問で投げかけています。日本型といったときに,非常に難しい議論になっています。というのは,定義されないからです。有名どころでは,令和の日本型教育というのも1年半ぐらい前に答申で出ていると思いますが,令和の日本なのか,日本型なのか,令和の教育なのか,どれとどれがどううまくつながっているかよく分からない部分があります。当時も質問させていただきましたが,なかなか難しいところがあります。
 日本型というものがもっと分かりやすい言葉で置き換えることがもし可能ならば,そちらのほうが説明する際にはいいかもしれないというようなことは若干コンセンサスが得られつつあるように思います。これは初等中等も全部含めて,日本型ウェルビーイングという観点から考えなければなりません。
 1つ御紹介しておきますと,OECDのデータは,全部,欧米で作成されたインデックスを使って日本の子供たちの能力がはかられています。そうすると,人に対する思いやりみたいなところが強い子供たち,日本の子供たちに非常に不利にできているインデックスの可能性があり,点数が下がってしまうこともありえます。そのような意味合いからいえば,日本は日本のある程度の特性はあるのでということには気づいてきました。
 そのようなところから考えていかないと,世界と比べるといったとしても,もともとの文化や倫理観が違う中で一概には比べられないだろうというところもあり,本当に日本型ウェルビーイングと言われても,そんな簡単に答えが出るような内容ではないと思います。この辺はもっともっと継続して議論をしていかないといけないと思いますし,諮問のほうにその言葉が入っていますから,きちんとその答申をしなくてはいけません。
 渡邉会長,どうぞ。

【渡邉委員】  どうもありがとうございます。只今の永田分科会長のお話は非常に心に響きました。前回の第3期教育振興基本計画の策定の際,大学分科会を通じた議論や高等教育のグランドデザイン答申が議論の方向性を非常に明確にしてくれたという記憶があります。今回の次期教育振興基本計画を議論していく上でも,永田分科会長のおっしゃるように,初等中等教育のウエートが高いことは事実ですので,どうしても初等中等を中心にした議論になりがちですが,大学振興部会でこういう議論をしていただいているということが,教育振興基本計画部会によい影響を与えるのではないかと期待しています。
 本日の文理横断・文理融合の議論については,新しい時代における教養教育の在り方や高大接続など,これまで色々な議論の中で検討されてきましたが,それぞれが多様性の中にだんだん吸収されていくような流れになり,全大学一律という議論には今までなってこなかったのだと思います。
 ただ,その流れの中でも,新しい時代をどう整理していくのか,多様性を前提としつつも,未来に向けた整理をどうするのかを考える必要があります。その意味では,本日は大変よい議論をしていただいたと感じました。
 ところで,先週日曜日に文部科学省で行われた学制150年記念のシンポジウムに,私もパネルディスカッションの進行役で出させていただいたのですが,そのときに3つのお話をさせていただきました。
1点目は,教育にとっての羅針盤を明確にしていきたいという話で,私としては次期教育振興基本計画自体が羅針盤になり得ると思っています。これは永田分科会長がいつもおっしゃっていることですが,初等中等教育,あるいは高等教育というレイヤーごとの考え方ではなく,横断的なテーマごとに歴史的な整理をしていくべきであり,この整理こそが教育振興の羅針盤になり得るのではないかと思います。
 2点目は,学制150年の節目でしたので,不易と流行という話をさせていただきました。不易とは変わらないもの,つまり歴史が築いた日本の教育の強みであり,教育基本法の前文や1条2条にあるような,普遍的なものをまずベースに置くということです。流行とは,Society5.0社会の実現に向けた新しい文化の創造や,人生100年時代への対応など,時代の変化と共に変えていかなければいけない部分のことです。この2つをどう調和するのか。日本的な考え方でいえば,例えば令和とはビューティフルハーモニーという意味であり,二律背反することをどう調和させながら創造の力で新しいアウフヘーベンをするのか,という思考が重要ではないかということをお話いたしました。
 3点目は,先ほどの議論にもあったウェルビーイングの話です。日本的な視点ではなく海外の視点で分析すると,自己肯定力が弱いというような文化的要因が影響してしまうなど,ウェルビーイングを定義することは非常に難しいです。
 ただ,ウェルビーイングを教育と結び付けて考えると,個人の幸せという視点では,一人一人が持っている先天的な資質をどう活かしていくのか,どう伸ばすのかということが教育にとっての本質になります。つまり,幸福な人生を送ることができるという個人の幸せの実現こそが,教育の本旨なのだろうと思います。
 一方で,学校教育は多様な子供たちが一緒に学ぶ場であり,その意味では集団としての幸せを目指し,社会の幸せにつながらなければならない。そうであるとすれば,個人の幸せと社会の幸せがウェルビーイングにつながるということではないか。こんな話をさせていただいたところでした。
日本型とはどういうことかという大変難しい宿題をいただいているわけですけれども,これまで日本の教育で培ってきた強さと,未来に向けた新しい要素を中和させながらバランスを取っていくやり方こそが日本型なのではないかと,私は思っています。
 これからもぜひ,大学分科会の議論を次の教育振興基本計画そのものの羅針盤につなげていきたいと思いますので,引き続き御協力をお願いしたいと思います。今日は本当によい議論をしていただいたと思います。ありがとうございます。

【永田分科会長】 ありがとうございます。振興部会長ですので,まとめて今,御意見を賜ったということでございます。
 そのほかは挙がっておりませんので,ここまでとさせていただきます。また随時,御報告をしながら,意見を頂戴したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは,その他事項です。幾つか細かいのがありますが,幾つか選んで,こちらから御紹介させていただきます。
 最初は,教学マネジメント指針の追加部分のお話です。御紹介いただけますか。 

【平野大学入試室長】  失礼いたします。大学入試室長でございます。資料4のほうで,教学マネジメント指針(追補)の作成についてという資料を御用意しております。この資料に沿って,御説明を申し上げたいと思います。
 本日御参画いただいている先生たちにも多大なる御協力をいただきまして,令和2年1月に教学マネジメント指針が策定されたところでございます。この指針を踏まえまして,今,各大学において教学マネジメントの確立に取り組んでいるというところでございます。
 策定した後の変化ということでございますけれども,令和3年7月に大学入試のあり方に関する検討会議の提言というもの,これ,28回の議論というのを重ねてまとまったものでございますけれども,このようなものが策定されております。また,現在,教育未来創造会議や,先ほど御紹介いただいた大学振興部会においても,教学マネジメント指針の充実というものが求められているところでございます。
 資料4の2ページ目のほうには,教育未来創造会議の第一次提言の抜粋というものをつけさせていただいてございます。具体的取組の中にということで,総合知を育成するための入試科目の見直し,その他云々と書いてあった後に,教学マネジメント指針の見直しなどを取り組むということで書かれているものでございます。
 このような状況というものも踏まえまして,教学マネジメント指針につきまして,入学者選抜について取り扱った指針の追補というものを作成する。これは本体とは別に作成するということを現在のところ想定しているものでございます。
 これを作成するに当たっての方針について,真ん中辺りに書かれているものでございます。修業年限内で教育活動に用いることができる学内及び学生の資源は有限であるということでございます。こうした観点というものを踏まえますれば,高等学校教育との円滑な接続を図りながら,ディプロマ・ポリシーに定められた学修目標というものを達成できるようにするためには,各大学が入学者選抜の段階において,入学者受入の方針、アドミッション・ポリシーというものを適切に策定するとともに,当該大学で学び卒業するために必要な能力・適性を備えた人材というのを見いだすということが必要であるということでございます。
 今後,教学マネジメント指針の追補というものを作成していくに当たっての基本的な方針というものについては,過去の教学マネジメント指針をつくったときと同様でございますけれども,過去の中央教育審議会の答申や様々な提言で示されている大学入試改革に関する内容,このようなものについて再整理をしていくということを想定しております。いろいろなことが書かれておりますけれども,各答申,また,提言などに点在をしているということでございますので,これを教学マネジメントという観点からしっかりと拾い上げて再構築していくということでございます。
 これに加えまして,先ほどご紹介した大学振興部会の中でも御議論いただいているような,近年求められている諸課題に大学が実情に応じて適切に対応できるような内容というものを盛り込むこととしたいということでございます。
 分量についてでございます。教学マネジメント指針というものについては,5本の柱というものが掲げられているわけでありますけれども,その項目1つで,一番多いものが10ページ程度ということでございます。このようなことも踏まえまして,この追補についても,最大で10ページ程度を想定しているものでございます。
 想定される項目の例ということでございます。大学入学者選抜の原則というものと,それを踏まえた入学者受入れの方針について,どのようなことを考えるべきか。入学者受入れの方針というものを踏まえた大学入学者選抜はどのようなことを考えるべきか。大学入試ということでありますので,高等学校における教育との適切な接続をどのように確保していくべきであるのか。また,学生の入学後の状況等を踏まえた,入試に当たっても適切な点検・評価,このようなことの実施ということが必要ではないか。このような内容について盛り込むことを現在のところ想定してございます。
 今後のスケジュールでございます。本日,大学分科会において,この追補の作成について開始をするということについて御報告をさせていただいているところでございます。これ以降,本日ご報告した大学振興部会の議題の件も含めまして,議論というのを参考にしながら,文部科学省において原案の作成というものに着手をさせていただくこととしてございます。11月以降の大学分科会において,この指針の追補の案というものをお示しして,大学分科会において御審議をいただきたいと考えております。
 また,大学入学者選抜協議会ということで,各大学,関係団体の方,学識経験の方,高校団体の関係の方,このような方が参加した会議というものもございますので,並行して報告を行いたいというふうに思ってございます。
 その上で,目指すところとしては,年度内にはこの指針(追補)というものを策定して,各大学の取組の後押しをしていきたいということを考えているところでございます。
 私の説明は以上でございます。

【永田分科会長】  ありがとうございます。
 説明どおりですが,何か御意見等,どうせ行うならこのようなこともきちんと加味してほしいみたいなことが一番ありがたいと思いますが,いかがでしょうか。
 益戸委員,どうぞ。

【益戸委員】 ありがとうございます。この点は非常に重要なことだと思っています。
新しく始まった冷戦や,インフレ問題、気候変動による社会変革など、過去に人類が経験したことのない、着地点が予想不可能な時代に突入しました。
 ですから,過去の常識であった、大学を卒業さえすれば良いという時代は終わりました。誰一人取り残さないという意味は、教育の機会均等ではなく、誰一人きっちり生きられる人生を送るために高等教育はある、というぐらいの気持ちを持って私たちは議論しなければいけないのではないでしょうか。改めて緊張感を持ってこの議論に参加させていただきたいと思っております。
 以上です。
 
【永田分科会長】  ありがとうございます。 日比谷委員,どうぞ。

【日比谷委員】  日比谷でございます。私は,教育未来創造会議のメンバーでございましたので,少しこの問題についての議論の様子をお伝えしたいと思います。
 こうして工程表がつくられて,今日の資料にも入っておりましたけれども,2022年度中に教学マネジメント指針の中で,アドミッション・ポリシー,入学者選抜について見直しということは明確に書かれておりますけれども,このことについて構成員から非常に多くの意見が出たことを,記録とかを御覧になればすぐお分かりになりますが,まず申し上げたいと思います。
 特に今日も話題になっていますけれども,大学に入学する時点で文系・理系に分かれているのはいけないというのはみんな言っているわけですけれども,非常に少ない科目の成績をもって大学への入学が許可されてしまうのは,これからのあらゆる国の将来にとっても,世界で活躍する人材となっていくためにも大問題であるということが多くの委員から表明をされておりますので,この後,私たまたま教学マネジメント指針のときの特別委員会の座長でございましたけれども,事務局とも御相談しながら,その辺りのことがきちんと理解が行き届くような形のものをつくっていくことが非常に重要かなと思っております。
 以上でございます。

【永田分科会長】  ありがとうございます。
 先ほどから高大接続の話が,出てきましたが,皆さんそのような認識だとすれば,大学だけが凝り固まっていると,大学に対して本当にいろいろな意見が湧いて出てきてしまうと思います。しっかりやっていただきたいのですが。
 小林雅之委員,どうぞ。
 
【小林(雅)委員】  すみません,どちらでしょうか。私のほうでよろしいですか。

【永田分科会長】  そうです。どうぞ。

【小林(雅)委員】  今のところで,学生の入学後の状況を踏まえた適正な点検・評価という項目が最後に入っていますが,これはもう少し広く見ると,いわゆるエンロールメントマネジメントという考え方でありまして,これは学生の入学前から,入学時,それから在学中,それから卒業時のアウトカム,学修成果,それから卒業まで全部縦に一本通すという考え方です。
 これはアメリカの考え方ですので,今日の議論で言いますと,これも日本型に少し変える必要があるとは思いますが,日本ではやはりこういった考え方がまだまだ弱いのではないかと思っていまして,先ほどの永田分科会長の言い方を敷衍すれば,テーマ別といいますか,学生の成長というところで一本縦に線を通していただきたい。教学マネジメント指針のほうはそういうふうには考えてつくっていないので,新しく入試のことが出てくると,それまでの教学マネジメント指針との整合性というのが問われることになりますので,その辺りはぜひよく検討していただければと思います。
 以上です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。言い得て妙でした。小林弘祐委員,どうぞ。

【小林(弘)委員】  小林弘祐でございます。中教審の大学分科会の議論は,理想論になっているところがどうしてもあって,現実は一体どうかというと,私立大学の定員割れが47.5%ですかね。かなりのところの大学が定員割れしていて,入学のプリンシプルは非常によく分かるのですけど,足元を見ると,そういうことをやっていたら学生が集められないという大学もかなりあるので,その辺のこともちょっと御配慮いただかないと,現状はついていけないのじゃないかというふうに危惧いたします。
 以上です。
 
【永田分科会長】  ありがとうございます。吉岡委員,どうぞ。

【吉岡委員】  一言だけ。高大接続のときもそうでしたけれども,大学が新入生といいますか,高校から卒業生を受け入れるというときの話が,狭い意味での入試,しかも学力試験の議論に収れんしないようにすべきではないか。先ほどもありましたけれども,私立大学で,いわゆる学力試験ではなくて,学生を受け入れているところはたくさんあるわけですね。それから,単に学力だけではなくて,それまでどういう経験を積んでいたかということを見ようという方針を明確に出しているところもあるので,学生受入れというときに,いわゆる狭い意味での入試の問題ではない部分を考慮に入れておいていただければと思います。
 以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございました。教学マネジメントのほうで,つくっていただいて,先ほどの御説明どおり,大学分科会にその内容が出てきますから,そのときにしっかりとまた議論しないといけないと思います。
 ただ,今いただいた意見のうち,特に小林雅之委員のほうから出てきた,一貫したストーリーとしてちゃんとつくっていかないと,凸凹になってしまうというものがあります。
 先ほどの哲学や数学の話とも同じですが,基本的には大学の個性が出るようにやらなければいけないので,小林弘祐委員の理想論を追うなというわけではなくて,根本的なところだけはみんなで議論しているが,各大学が本当は自由に設定すべき内容だと思います。ですから,それが可能なように当然考えていかなければいけないということだと思います。
 どうもありがとうございました。
 もう一つ,その他の中から概算要求についてです。
 
【柿澤高等教育政策室長】  それでは,参考資料の2のほうを御覧いただければと思います。こちら側の高等教育局の主要事項,令和5年度概算要求でございます。かいつまんで,新規事業のところなどを中心に御紹介できればと思っております。
 こちら,令和5年度概算要求,参考資料2の1ページ目でございますけれども,国立大学経営改革促進ということで,1兆1,170億円ということでございまして,こちら,運営費交付金のほうが1兆1,116億円で,前年度からの300億円の増額ですとか,あるいは国立大学経営改革促進事業などでございます。
 また,高等専門学校の高度化・国際化で785億円と。私立大学等の改革の推進等ということで4,401億円というところを計上しております。
 また,成長分野を牽引する大学・高専の機能強化といたしまして,こちら,新規の予算として,大学・高専の機能強化に向けた継続的支援策の創設について100億円を計上しております。こちら,また後ほど触れさせていただきます。
 また,高度専門人材の育成等の推進という観点からは,大学や大学院における教育改革の推進ということで,地域活性化人材育成事業,SPARC,これは今年度から実施している事業ですけれども,来年度も引き続きということで予算を要求しておるということ。
 また,価値創生に向けたネットワーク型人文・社会科学系大学院構築支援事業ということでございまして,こちら,今日の参考資料の中で,参考資料4のほうでは,人文科学・社会科学系における大学院教育改革の方向性中間とりまとめということで,これは大学院部会の中間とりまとめのほうも参考資料として入れさせていただいておりますけれども,こうした大学院部会での検討等も踏まえまして,ネットワーク型の教育研究を通じて社会の期待に応える新たな人文科学・社会科学系の高度人材養成モデルの構築を支援する事業,こちらも新規事業。
 また,成長分野における大学院教育のリカレント教育機能の強化事業ということで,こちらも同じく7億円ございますが,成長分野における大学院が実施するリカレント教育プログラムの機能高度化や,リカレント教育に係る大学院組織内の改革を進めながら行う企業等との連携による,一気通貫したオーダーメード型学位プログラムの構築を支援するということにしてございます。
 次に,参考資料2の2ページ目を御覧いただければと思います。数理・データサイエンス・AI教育の推進につきましては,昨年度とほぼ同額,1億円増額の24億円。
 また,新規事業としまして,高度医療人材の養成ということで32億円,次世代のがんプロフェッショナル養成プランで10億円,また,質の高い臨床教育・研究の確保事業で23億円などを計上しております。
 また,グローバル社会で我が国の未来を担う人材の育成ということで,こちらが大学教育のグローバル展開力の強化ですとか,留学生交流の充実といったところで,計394億円の要求というふうになっております。
 また,高等教育の修学支援の確実な実施というところにつきましては,こちらは金額のほうは入っておりませんで,事項要求ということで,予算編成過程でこの額について検討していくという取扱いになってございます。
 3ページ目以降が,この予算事業のそれぞれの概要を示した資料となっております。このうち先ほど新規事業ということで触れましたところでいいますと,8ページを御覧いただければと思います。8ページ,成長分野を牽引する大学・高専の機能強化に向けた継続的支援策の創設というところでございます。こちら,教育未来創造会議の第一次提言等も踏まえた施策というところでございますけれども,背景・課題のところでも,デジタル化の加速度的な進展や脱炭素の世界的な潮流,これが産業構造を抜本的に変革するだけでなく,労働需要の在り方にも根本的な変化をもたらすことが予想されるという中で,教育・人材育成における成長と分配の好循環を実現するため,高度専門人材の育成を担う大学等が予見可能性をもって大胆な組織再編に取り組める安定的な支援が必要であるといった背景・課題の下で,事業内容,真ん中のところでございますが,デジタル・グリーン等の成長分野を牽引する高度専門人材の育成に向けて,意欲ある大学等が成長分野への学部転換等の改革に躊躇なく踏み切れるよう,複数年度にわたる継続的・機動的な財政支援を行うため,基金を含め継続的支援策を創設するということでございます。
 支援対象は,ここにございますとおり,特定成長分野(デジタル・グリーン等)に係る専門人材育成機能を強化する大学及び高専ということで,初期投資やの当面の運営経費等について支援を行っていくということで,事業スキームは検討中でございますけれども,独立行政法人等を想定しているというところでございます。
 また,先ほど日比谷委員のほうからも少し言及がございましたけれども,参考資料3といたしまして,本年,教育未来創造会議のほうで取りまとめられた第一次提言を踏まえて,工程表というものができております。
 今申し上げた新規事業との関係で言えば,例えば,参考資料3の上から2つ目のところで,成長分野への再編等ということで,令和4年度の取組として,基金を含めた継続的な支援策の在り方や実施体制の整備に必要な制度改正等に向けた検討というところ,そして,令和5年度以降に,検討内容を踏まえた支援の順次実施というような形で,こちら,提言事項に関する取組の工程表,これは文部科学省だけではなくて,関係各省の施策というところも含めてではありますけれども,工程表もできているというところでございます。
 また,こうした各種施策の在り方,進め方等につきましても,引き続き大学分科会のほうでも御指導いただければというふうに思っております。
 以上でございます。

【永田分科会長】  ありがとうございます。これは現状だけ知っていただければよろしいと思います。
 改めてこれだけは聞いておきたいことがございますか。よろしいでしょうか。
 時間となりましたが,先ほど1つだけ言おうか言うまいかと思っていたことがあります。大学振興部会のほうで,今後の我が国の大学全体の構造と,それから定員の問題がやがて議論されますが,程々慎重に行わないといけないと思っています。学生保護という質問が出たときです。歴史的には,高度成長期の頃に高専ができるなど,理工系人材をどんどん育てるという時代があって,そのときに私学の定員が大きく増えています。我が国にとっては子供がどんどん増える時代でしたから,そのようなものとカップルしています。
 ですから,時の趨勢と物すごくいろいろなものがカップルするので,単純に人が減ったから減らせばいいわけでもないし,うまくカバーできた議論をしないと,我が国の将来にとって禍根を残します。たしかあのときのグラフは,理工系人材が増えたし,大学へ行く人の入学定員を増やさなければ,とてもではないがカバーし切れないという状態をちょうどうまく捉えた時期だったと思います。高専もそのときにできてきて,我が国独特の教育システムもそのときにできたということなので,やはり学生保護という観点のところで言うべきだったと思いますが,もっと長い,ロングスパンの視野と,それから多面的な視野で考えないと,軽々には論じられない内容であるのは確かだと思います。先ほどの保護のところでお答えすべきでした。
 以上です。
 ほかになければ,事務局のほうから次回以降の予定等を述べていただいて,終わりにしたます。
 
【髙橋高等教育企画課課長補佐】  本日,活発な御議論をいただき,誠にありがとうございました。
 次回の大学分科会については,申し訳ございません。現在調整中ということでございますので,日程,実施方法等においては,改めてお知らせ,公表いたします。
 本日,時間の都合上発言できなかった事柄などございましたら,事務局のほうまでお寄せいただければと思います。ありがとうございます。

【永田分科会長】  皆さんとお会いできるのももうすぐと言って,もう1年半ぐらいたってしまいましたが,近々お会いできるかなと思います。
 それでは,御協力ありがとうございました。お開きにいたします。
 
 
―― 了 ――

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