大学分科会(第168回) 議事録

1.日時

令和4年6月22日(月曜日)14時~16時

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 医学部臨時定員増に係る大学設置基準に係る諮問について
  2. 大学設置基準等の改正について
  3. 高等教育を軸としたグローバル政策の方向性(案)について
  4. 「イノベーション・コモンズ(共創拠点)」の実現に向けて まとめの方向性について
  5. その他

4.出席者

委員

(分科会長)永田恭介分科会長
(副分科会長)村田治,渡邉光一郎の各副分科会長
(委員)越智光夫,熊平美香,後藤景子,日比谷潤子,吉岡知哉の各委員
(臨時委員)相原委員,麻生隆史,安部恵美子,大野英男,大森昭生,川嶋太津夫,小林弘祐,小林雅之,清水一彦,須賀晃一,清家篤,髙宮いづみ,千葉茂,曄道佳明,長谷川眞理子,古沢由紀子,益戸正樹,松下佳代,吉見俊哉の各委員

文部科学省

(事務局)増子高等教育局長,森田大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術政策連携担当),里見大臣官房審議官(高等教育局担当),角田文部科学戦略官,山下高等教育企画課長,古田大学振興課長,渡辺主任視学官・高等教育国際戦略PTリーダー,柿澤高等教育政策室長,草野大学設置室長,西大学改革推進室長,廣田文教施設企画・防災部整備計画室長,髙橋高等教育企画課課長補佐,一色大学振興課課長補佐,保坂専門教育課課長補佐,相原医学教育課課長補佐,塩野谷高等教育国際戦略PT総括補佐ほか

5.議事録

【永田分科会長】  第168回の大学分科会を始めます。
 次は皆さんとオンサイトでと言っていましたが,また,オンラインになってしまいました。それでも,今日はこちらに委員が5人か6人かいらっしゃっているので,少しずつ皆さんの顔が見られるようになってきました。オンラインですが,先生方,自由に御発言できる環境にいらっしゃるという前提で,会議を始めさせていただきます。
 また,我々の会議の様子はYouTube配信いたします。
 それでは,本日の連絡事項からお願いいたします。

【髙橋高等教育企画課課長補佐】  本日はウェブ会議及びライブ配信を円滑に行う観点から,御発言の際は挙手のボタンを押していただいて,分科会長から指名されましたら御発言をお願いいたします。また,御発言後は,挙手ボタンのほうをもう一回押して,消していただきますようにお願いいたします。また,発言時以外はマイクをミュートにしていただくようお願いいたします。
 本日の会議資料は,既にお送りしております,次第のとおりでございます。御確認ください。
 以上でございます。

【永田分科会長】  ありがとうございます。お手元の資料をご確認ください。本日は大きく分けて,4つの議題があります。
 最初は,医学部の定員増で,後で説明がありますが,引き続き,1年間維持をするという設置基準の改正です。
 2つ目は大学設置基準の改定,前回もお話をしました,大きな改定がなされますが,その条文案ができたので審議をさせていただきます。
 それから3つ目は,コロナでグローバル活動が下がりましたが,今後,コロナ禍,ウィズコロナという状況の中で,高等教育の再グローバル化というか,活性化したいということで,事務局から説明をいただいて,皆さんで議論をします。
 それから4つ目は,これは施設関係ですが,「イノベーション・コモンズの実現にむけて」ということで,方向性が5月にまとめられています。事務局から説明をいただいて,皆さんで意見交換します。よろしいでしょうか。
 それでは,最初の議題に入らせていただきます。医学部の臨時定員増に関わる大学設置基準改正に係る諮問についてです。事務局から御説明をお願いします。

【相原医学教育課課長補佐】  医学教育課課長補佐をしております,相原と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 資料1-1に基づきまして,御説明申し上げます。令和5年度医学部入学定員増についてと書かれておる資料でございます。御覧いただけますようお願いいたします。
 医学部の入学定員につきましては,将来的な医師の需給の観点から,これまで抑制分野とされてきてございます。一方で,地域における医師の確保,また,地域の医師の偏在問題が顕在化しましたことから,平成18年より入学定員を増員してきてございます。平成22年度以降は,資料中ほど,2ポツに示します3つの枠組みによりまして,臨時的に入学定員を増員してきてございます。
 1つ目は,いわゆる地域枠でございまして,地域の医師確保の観点から,都道府県の医療計画等に基づきまして,奨学金を設けまして,卒業後,一定期間において地域従事することを求める地域枠です。2つ目が,研究要請のために複数の大学と連携し,研究拠点を形成しようとする研究医枠。3つ目が,歯学部,入学定員を恒久的に減少する代わりに,臨時的に医学部定員を増員する歯学部振替枠,この3つの枠組みでございます。
 令和4年度まで,この3つの枠組みで増員してきてございますけれども,このたび,厚生労働省における医師需給分科会の議論を踏まえまして,3つの枠組みのうち,1点目の地域枠,2点目の研究医枠による増員につきましては,引き続き1年間延長し,令和5年度におきましても措置をするということとする一方で,歯学部の振替枠につきましては,制度導入から10年以上が経過してございまして,その役割は果たされたものということで,当該枠組みを廃止することとするものでございます。
 一方で,歯学部振替枠に相当する増員分につきましては,地域における偏在対策の充実に充てることとする方向とされてございます。今回の大学設置基準の改正については,これらの措置に伴いまして,大学が臨時的に定員を増加させる際に,専任教員等の基準についても引き続き措置をする,そのための所要の改正を行うものでございます。
 次ページ以降,その関連の資料をつけさせていただいております。
 御説明は以上でございます。御審議のほど,どうぞよろしくお願いいたします。

【永田分科会長】  ありがとうございます。それでは,御質問,御意見等お伺いいたします。いかがでしょうか。
 引き続き地域枠と研究医枠は確保するという内容です。よろしいですか。
 それでは,大学設置基準の改正に関わる事項については,大学分科会の審議,議決をもって中央教育審議会の議決とするということになっておりますので,議決を取ります。
 事務局は,定足数について,御報告をお願いいたします。

【髙橋高等教育企画課課長補佐】  大学分科会の委員及び臨時委員数は30名でございますけれども,現在27名に御出席をいただいておりますので,中央教育審議会令第8条1項に定める過半数を満たしております。

【永田分科会長】  それでは,改めてお諮りを申し上げますが,医学部臨時定員増に関わる大学設置基準の改正について,ただいま御説明いただいた内容で御了解いただけますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【永田分科会長】  御異論はないと認めまして,適当と認めたということといたします。ありがとうございました。
 続きまして,大学設置基準そのものの改正について,前回も議論をしました。今回,条文になりましたので,事務局から御説明をいただいて議論をさせていただきます。それでは,御説明をお願いいたします。

【一色大学振興課課長補佐】  失礼いたします。事務局より,議題2の大学設置基準等の改正について御説明させていただきます。
 資料は2-1から2-6まで,6点ございますが,今回は主に資料2-1から2-3までを中心に御説明させていただきます。
 まず,前回5月17日の大学分科会におきまして,委員から多数御質問,御意見のありました基幹教員について資料2-2に基づき,次に,教育課程等の特定について資料2-3に基づき,改正内容,ポイントについて御説明させていただきます。その後,前回の省令案骨子案からの主な修正点について,資料2-1に基づいて御説明をさせていただきます。
 それでは,まず,資料2-2を御覧いただければと思います。基幹教員について,御説明させていただきます。前回の大学分科会におきまして,今回,導入される基幹教員制度について,仕組みがより分かりやすくなるように説明をといった御意見等もございましたことから,今回,こちらの資料を御用意させていただきました。現在の専任教員制度は,大学設置基準上,一の大学に限り専任教員となる,専ら当該大学の教育研究に従事するといった規定は置かれているものの,それ以上の詳細の要件は定められておらず,過去の設置認可審査におきましては,例えば年間担当単位数8単位未満かつ月額報酬が20万円未満,当該大学以外の業務の従事日数が週3日以上といった要件に該当する場合,当該教員の専任性に疑義があるものとして,個別に教員の専任性を確認するといった審査を行っておりまして,当該要件に該当しない場合は,専任性について特段の確認を行うといったことはしておりませんでした。
 このように専任教員というものについては,基準上,明確でないといったこともあり,運用上の工夫として取り扱われておりますが,大学から見た場合,どのような要件を満たしていれば専任教員と呼べるのかはっきりしておらず,こういった審査等を経て判断されたものでしか,確実なものはございませんでした。こうした専任教員としての定義がはっきりしていないということ,また,今日働き方の多様化,民間企業からの教員登用の促進等の観点から専任教員の規定を改め,基幹教員として定義を明確化するよう,質保証システム部会の審議まとめにおいて提言されておりまして,今回,①,②の両方の要件を満たす教員を基幹教員とするという定義を定める案を検討しております。
 具体的には,①としまして,教育課程の編成その他の学部の運営について責任を担う教員ということで,例えば,教授会や教務委員会など,当該学部の教育課程の編成等について意思決定に係る会議に参画する者などを想定しております。
 また,第2の要件としまして,AまたはBのいずれかの要件を満たせばということになりますけれども,Aの要件につきましては,当該学部の教育課程に係る主要授業科目を担当する教員でございまして,ここは前回,常勤の教員ということで表現をさせていただいておりましたけれども,委員の御意見等の中でも常勤の考え方が様々であるということから,今回,専ら当該大学の教育研究に従事する者ということで整理をさせていただいたものでございます。
 こちらにつきましては,従来の専任教員というところの考え方にある意味,合わせておりますので,従来の専任教員というのはここに入ってくるという考え方で,例えば,1の大学でフルタイム雇用されている者などを想定しておるものでございます。また,もう一つのBの要件としまして,当該学部の教育課程における年間8単位以上の授業科目を担当する教員につきまして,こちらは専ら従事するかどうかということは問わないということでございます。
 次に,2ページ目を説明させていただきます。こちらが専任教員から基幹教員に制度が変わることによって何が変わるのかというものを整理した表でございます。専ら当該大学に従事するという要件を満たせば,現行規定ではいずれであっても専任教員であるということになりますけれども,基幹教員の要件についてまず教育課程の編成等について責任を担うということを前提とした上で,主要授業科目を担当する,または,8単位以上を担当するといった場合については,基幹教員になるということでございます。他方で,専任教員であったけれども,今後基幹教員にならない者というのも一部おりまして,例えば,それは研究所等で教育に全く関わっていない,授業科目を全く担当していない教員などが基幹教員ではないということになります。
 この考え方につきまして,実は現行規定におきましても,授業を担当しない専任教員については,設置基準の別表で定めます,必要教員数の算定からは除くという規定が設けられておりますので,基幹教員というものは,まさに教育課程の編成等に責任を持って教育を推進していく教員であるということ,その観点で別表の考え方に合わせた形で整理したものでございます。
 下段のほうの専ら当該大学に従事しない者でございますけれども,通常,専任教員ではないということですけれども,現行規定に例外規定もございまして,教育研究上特に必要があり,かつ,教育研究の遂行に支障がないと認められる場合につきましては,専任教員になることができるということがありますけれども,実態として,この規定を活用している事例というのはほぼないと承知しております。ですので,通常,専ら従事していない者というものについては専任教員とはならないということになりますけれども,今回の新基幹教員の規定によりましては,教育課程の編成等に責任を持つ方であり,8単位以上持つということであれば,基幹教員になれるということでございます。
 次に,3ページ目に移らせていただきます。3ページ目は必要最低教員数の算定についての御説明になりますけれども,右側は大学全体の教員の構造でございまして,基幹教員と基幹教員以外の教員とに分かれるということでございまして,基幹教員以外の教員というものについては,先ほど御説明しましたとおり,研究所等に所属しまして,教育を全く担当しない者などが想定されております。基幹教員については大きく3つのカテゴリに分かれると考えております。具体的には,専ら従事するかどうかというところで,青色,緑色のグループと黄色のグループということに分かれますけれども,さらに,専ら従事する者の中でも,主要授業科目を担当する教員と,それらも含めて年間8単位以上の授業科目を担当する教員とで,青色と緑色とに分かれます。青色と緑色と黄色は,いずれにしても,基幹教員でございますけれども,設置基準で定めます最低教員数の算定に当たっては,それぞれ要件が異なってくる,算定の仕方が異なってくるということでございます。こちらの青色,緑色の専ら従事するという要件で考えますと,これは従来の専任教員と同様でございまして,別表でそれぞれ分野別に定める数,または,大学全体で定める数のいずれかを1として算定することができるという,青色のところで示しているものでございます。
 他方で,年間8単位以上の授業科目を担当するという要件を満たす場合について,複数の大学,学部で,それぞれについて,その要件を満たすといった場合につきましては,オレンジ色のほうになりますけれども,それぞれの学部等の最低数に算定することができるということになるということでございます。これらについては,4分の1以内であるということになります。
 また,別表第1と別表第2でございますけれども,別表第1のほうが分野別,別表第2のほうが大学全体の職員に基づく数でございますので,性質が違うことから別表1に算定した者については,別表第2では算定ができないということで整理をしております。
 次に,4ページ目に移らせていただきます。ここからはケース別になりますけれども,例えば,X大学に専ら従事する教員の場合ですけれども,いずれにしましても,この教員につきましては,専ら従事する者として授業を担当しているということになりますので,X大学におけるA学部については,専ら従事するということから1として算定ができるということでございます。
 また,Y大学におきましても,Y大学のB学部について,教育課程の編成に責任を担い,また,8単位以上を担当しているということになりますので,Y大学の基幹教員であり,Y大学の最低数にも算定ができるということでございます。
 次に,5ページ目を紹介させていただきます。これはX大学,Y大学共に専ら従事していなく,例えば,企業等に専ら従事する者でございますけれども,この場合,X大学,Y大学のそれぞれのA学部,B学部で教育課程等に責任を持って,年間8単位以上担当している場合においては,それぞれの大学において基幹教員となり,また,それぞれの最低数としても4分の1の範囲内で算定することできるというものでございます。
 次に,6ページ目に移らせていただきます。これは同一大学の中での複数学部のことでございますけれども,ケース4は,A学部,B学部共に責任を持った上で,そこにおける年間8単位以上の授業科目を担当している場合,ケース5につきましては,A学部については2単位,B学部について8単位といった場合でございますけれども,ケース4につきましては,それぞれの学部において,それぞれの要件を満たしておりますので,4分の1以内としてそれぞれ算定することができるというものでございます。もしくは,専ら従事するという要件で,いずれかに1だけ算定するということのいずれかが取れるということでございます。ケース5につきましては,それぞれの学部での要件を満たしておりませんので,専ら従事するという点で,いずれか1のみ算定ができるということでございます。
 次に,7ページ目を御紹介させていただきます。基幹教員に関連しまして,質保証の観点から御懸念の意見等も前回ございましたけれども,質保証システム部会においても同様の御指摘がございまして,教育研究の質の低下を招かないようという観点から,特に各大学において,基幹教員の情報を常時公表し,外部からの検証が受けられるようにするなど,データエビデンスに基づく分析が行えるようにするということが言われているところでございます。
 また,少し8ページ目のほうを御覧いただければと思いますけれども,8ページ目には,関係法令を記載しておりまして,現行の情報公表の規定におきましても,教員組織,教育の数,並びに各教員が有する学位及び業績に関することについては,情報公表することとされておりまして,また,認証評価においても,状況に係る情報公表に関することについては評価項目としてなっているところでございます。
 こうしたことから,7ページに戻りますけれども,各大学が行います基幹教員の情報については適切に,各大学から示してもらうということで,広く社会からチェックをいただくということが重要だと考えておりますし,また,その状況については認証評価機関がしっかりとチェックをしていくということで,高等教育システム全体としての質保証を保っていくということが重要と考えているところでございます。
 資料2-2については,以上でございます。
 次に,教育課程等に係る特例制度について,資料2-3に基づいて説明をさせていただきます。前回の骨子案でも御紹介をさせていただきましたが,その後,法制的な検討が進みまして,若干の文言修正はございますけれども,内部質保証等の体制が十分機能していることを前提に,教育課程等に係る特例を認める制度というものを創設するということでございます。その際,大学のほうから申請をいただき,文科大臣が認定をして,その場合,特例対象規定の全部,または一部によらないということができるという制度でございます。
 また,その際,認定を受けた大学でございますけれども,認定を受けた大学は,特例対象規定の全部,または一部によらない教育を行うための教育課程等について学則に定め,公表するということを求めるということで,広く情報公表を求めるということでございます。
 また,特例対象規定でございますけれども,前回の骨子案でも御紹介させていただいておりますが,授業の自ら開設の原則,まず,35週にわたるという1年間の授業期間,また,単位互換等の60単位上限や,遠隔授業の60単位上限,また,大学等連携推進法人の連携開設科目に関わる単位上限,また,校地校舎面積基準,また,学部等連携課程や共同教育課程,または国際連携課程における単位数や面積に関する規定などが対象となります。
 次に,2ページ目を御覧いただければと思います。前回の骨子では,具体的には示しておりませんでしたが,告示で定めます認定基準について御説明をさせていただきます。認定基準としましては,1点目がいわゆる内部質保証が整備されているということ,並びに,その情報公表を積極的に行っているということ,また,申請日の直近の認証評価において適合の認定を受けているということ。また,欠格条項として申請日の前,5年以内に,次のいずれにも該当しないことということで,法令等に違反していないかということ,また,財務状況が健全でないということ,また,教育状況や管理運営が適正を欠くといったところに該当する場合については,申請ができないということになります。
 これら大学としての要件が,この3点になりますけれども,また,特例に係る教育活動の具体的な中身としまして,申請計画書を御提出いただくことになりますけれども,申請計画書について,申請の目的,また,特例を行う先導的な教育を行う実施組織であります学部等,また,その組織において取り組まれる,先ほど御紹介しました特例対象規定のいずれを使うのかということ。また,それを活用して,具体的にどのような教育を実施するのかという内容を書いていただくことを想定しております。
 これによりまして,申請計画書に書いてある範囲において,組織,また,規定において実施ができるということになります。また,先導的な教育を行う場合に比して,教育研究水準の向上に資する取組である根拠,また,基準によらない特殊な教育を行うことに対して,学生に対する適切な配慮として行う具体的な措置,また,実施予定期間,また,終了後,検証をいただくことになりますけれども,それに当たって,どんな形で検証していくのかという計画について申請書に記載していただきまして,学長から文部科学大臣に申請をいただくということでございます。
 次に,3ページ目に移らせていただきます。申請認定のスキームのイメージでございますけれども,先ほどのような形で申請書を伴って申請をいただくわけですけれども,受け取った文科省は,次に有識者会議へお渡ししまして,有識者会議において,先ほど紹介した認定基準に基づく確認審査を行っていただきまして,その結果を基に文部科学大臣が認定をするというものでございます。
 有識者会議でございますけれども,大学設置基準の制度,先ほど諮問答申いただいたところでございますけれども,大学設置基準に関することでございますので,大学分科会の下に,その会議を置くということを想定しているものでございます。また,全体の内容が認められましたら,また,大学分科会に会議の設置についてお諮りしたいと考えており,また,引き続きよろしくお願いしたいと思っております。
 また,有識者会議においてですけれども,3でございますけれども,適正な実施のため必要があると認める場合については,認定に条件を付し,または変更することができるということ。また,大学から申請されます実施予定期間を踏まえて,認定期間を定めるということでございます。その認定期間が終わりましたら,この取組が終わるということになりますけれども,その取組が,なお継続したほうがよい,また,継続する必要があるといった場合につきましては,1のところの,括弧で書いておりますけれども,延長申請ができるということで継続的な取組を行える仕組みとしております。
 次に,4ページ目に移りますけれども,先ほど申しましたように,申請計画書に書かれた学部,学科等の教育組織において,特例による教育活動を行えるということでございまして,その教育活動に基づく実施状況につきまして,年1回程度,報告をいただき,また,認定期間終了後には検証,報告をいただくということでございます。そのほか,必要に応じまして,文部科学省から情報等をいただいたり,または,有識者会議の委員とともに現地を訪問させていただいたりといったことも想定をしております。
 また,取組の中で課題があり,是正が必要という場合については是正要求を求めたり,また,非常に問題があったり,直ちに取りやめたほうがいいという場合については,認定の取消しについて,有識者会議に諮った上で取消しを行うということを想定しております。また,この間,入ります情報につきましては,文部科学省から有識者会議のほうに報告をしまして,有識者会議においては適宜分析,また,個別の大学に対する助言やフォローアップ等を行う形を想定しておりまして,個々の大学の取組についても伴走支援をしていくということを想定しているものでございまして,審査のみではなく,こういったフォローするという機能も併せ持つということを想定しております。
 また,認定を取り消した場合の経過措置としまして,特例による教育を期待した学生が入っている者が,学生が不利益を被らないよう,その学生が在籍している間については,先導的な教育を継続することができるという経過措置を置くということを想定しております。
 また,申請計画書は国と大学との約束事項ということになるわけですけれども,これを変更する場合については,また申請等が必要になるわけですけれども,特に特例対象となる実施組織である学部等や特例対象規定を変更するといった場合につきましては,改めて文部科学大臣の認定が必要となりますし,それ以外のことにつきましては,事前に届出をいただくということでございます。
 以上が特例制度についての御説明となります。
 次に,資料2-1に戻りまして,前回の省令案,骨子案からの修正点について,説明させていただきたいと思います。
 まず,2ポツの基本的な考え方でございますけれども,網かけしている部分が変更点でございますが,ここは前回,大森委員から御指摘いただいたところを踏まえた修正でございます。また,3ポツの漢数字の一のところの「3つのポリシー」の後でございますけれども,こちらは,今,「学位授与の方針」と書いておりますが,正式には「卒業認定・学位授与の方針」ということでございますので,御承知おきいただければと思います。
 また,2ページ目に移りますけれども,漢数字の二の組織関係のところでございますが,こちらにつきましては,法制的な検討結果として文言修正したものでございまして,内容の修正を伴うものではございません。
 なお,前回,大森委員のほうから,厚生補導の関係で御質問いただいたところで,1点,こちらの回答について修正がございますので,御説明させていただきます。前回,厚生補導について,奨学支援や懲戒なども,ここにあります,就学という文言に全部含まれるのかという御質問をいただいたところでございますけれども,奨学支援は厚生補導には含まれますけれども,懲戒そのものにつきましては,学長等による処分でございまして,ここで言う厚生補導そのものには直接含まれるものじゃないということでございますので,前回の説明から修正をさせていただきます。
 また,漢数字の三につきましては,先ほど御説明させていたとおり,基幹教員に関する部分の修正でございますので割愛させていただきますが,3ページ目のところの中段にございます,「また」のところでございますけれども,専門職学科について,実務の経験等を有する専任教員という規定がございますので,そこについては,基幹教員と改めるとともに,その中において,みなし専任教員という規定もございまして,質保証の観点からみなし専任教員の数についても,複数の学部において,8単位以上の当該学部の教育課程に係る授業科目を担当する基幹教員と合わせて4分の1の範囲内とするという規定を設けることを想定しております。
 また,ページが進みまして,4ページ目でございます。漢数字,五の(3)でございますけど,「また」のところの研究室のところになりますけれども,現行でも研究室は専任教員に対して必ず備えるという規定がございますけれども,今回,専任教員から基幹教員に変わるということから規定の変更がございまして,ただ,先ほど御説明したとおり,基幹教員だけでは,これまでの専任教員の対象が漏れることになりますので,「及び」の後の「専ら当該大学の教育研究に従事する教員」というものを含む形で整理をしています。このことから対象範囲も広がることもありますので,ここの規定については,経過措置を設けるということを考えております。
 (4)でございますけれども,「また」以降につきましては,現行の規定でも専門的職員を置くという規定がございまして,そこの内容について,特に内容的な変更を行うわけではございませんけれども,骨子案で分かるように明記をしたほうがいいということで記載をしたものでございます。
 漢数字の六につきましては,特例制度に関することでございまして,先ほど御説明させていただきましたので,割愛をさせていただきます。
 ページが飛びまして,8ページ目に移らせていただきます。漢数字の七になりますけれども,(5)のところでございますが,専門職学科に関するものでございまして,授業を行う学生数について,40人以下であるということでございますけれども,その例外措置の規定がございますけれども,例外措置について,どの場合について認められるか不明瞭であるといった意見もございますところから,今回,授業の方法等の教育上の諸条件を考慮し,教育効果を十分に上げられると認められる場合であることを明確にするよう改めるという改正を行うことを想定しております。これらにつきましては,専門職大学等についても同様でございます。
 また,漢数字の九でございますけれども,本省令案につきまして,現在,資料2-4で配付しております。大部の資料でございますけれども,そちらはイメージとして配付しておりまして,附則はついておりませんけれども,今後,附則について,以下のようなものを置くということを想定しております。
 まず,1点目ですが,機関教員に係る各規定,また,校舎や,先ほど御説明した研究室については期間措置を設けるということ。また,今審査中でございます,令和5年度開設の設置審査につきましては,従前の規定のとおりとすること。また,令和6年度開設の設置審査,これから申請等になりますけれども,それにつきましては,改正後の規定,または従前の規定のいずれかで審査を受けられるということ。また,来年以降の申請になりますけれども,令和7年度以降の開設の設置認可申請につきましては,改正後の規定で審査を受けるということ。また,9ページ目に移りますけれども,単位制度でございますけれども,他省庁の省令において,設置基準の単位制度を引用している条文等もございまして,各省令において改正が必要かどうか,また,そのための準備が要るかということもございますので,公布から施行までの一定の期間を設けるということを想定しております。
 また,米印であります,ただし書のところでございますが,米印自体は,各設置基準についても,先ほどの大学設置基準の改正の考え方を踏まえて,所要の改正を行うということでございますけれども,大学院設置基準,または専門職大学院設置基準におきましては,漢数字六の教育課程等に係る特例制度につきましては,特例対象規定として,例えば遠隔授業の単位上限であったり,面積基準等の基準であったりというのは大学院にはございませんので,そういった,そもそも対象となる規定はないといったこと。また,単位認定の取扱い等についても一部関連するものがございますけれども,現在,単位数で言えば,学部が124単位に対して,大学院が30単位と4分の1未満であるということ。また,現在も少ない中での弾力的な取扱いが認められていることから,今回の改正は見送るということ。また,漢数字の三の機関教員の取扱いについては,大学院部会において引き続き検討を行うということで,先日6月16日に大学院部会で審議を行いまして,このような取扱いの方針で今後,進めるということで記載しているものでございます。
 大部になりましたけれども,御審議いただければと思っております。
 以上,よろしくお願いします。

【永田分科会長】  ありがとうございます。
 それでは,御意見とか御質問あればお受けします。いかがでしょうか。清家委員,どうぞ。

【清家委員】  それでは,コメントします。ただいま御説明がございました,大学設置基準改正は,大学質保証システム部会での検討の成果に基づくものと承知しておりまして,吉岡部会長をはじめ,各委員の真摯な御検討に改めて敬意を表したいと思います。
 この基準改正においては,オンライン授業の活性化などの実態を踏まえた,教育課程の特例制度としての遠隔授業の単位上限についての特例措置,そして,単位の計算方法について,講義,演習等の時間区分を大括り化し,また,単位当たりの時間は標準時間であることを明確化するなどの制度運用の柔軟化,そして,現行の専任教員を基幹教員に改める教員概念の見直し,明確化などの内容が盛り込まれております。これらの内容は,いずれも私学団体からも要望されていた事項でございまして,各大学において,学修者本位の教育を,より多様かつ柔軟に進めていくために,大変有意義な改正であると考えております。
 文部科学省におかれましては,今回の設置基準の改正について,ぜひ趣旨や内容を分かりやすく大学関係者等に御説明,周知していただきたくお願いを申し上げます。
 私からは以上でございます。ありがとうございました。

【永田分科会長】  ありがとうございます。大野委員,どうぞ。

【大野委員】  大野です。特例制度について,3点コメントさせていただきます。
 まず,特例制度は,大学の創意工夫を促す新たな仕組みとして,大変歓迎すべきものだと思います。認定手続が過度の負担になったり,あるいは申請がそれによって抑制されたりすることがないように,運用面での配慮が必要だと考えています。
 2点目として,その審査については,設置基準を実際に運用して,設置認可手続を担っている設置指針との連携が図られると,より適切な審査ができるものと思われますので,御検討いただきたいと思います。
 最後に,大学院については,博士課程のさらなる充実が求められている中で,今後は大学が様々な新たな試みに挑戦することが予想されます。大学院設置基準そのものの見直し,そして特例制度については,ぜひ今後とも継続的に検討をお願いしたいと思います。
 私からは以上です。ありがとうございました。

【永田分科会長】  ありがとうございます。麻生委員,どうぞ。

【麻生委員】  私からの質問ですが,先ほどの2-1の最後のところで,大学院設置基準,専門職大学院設置基準においては引き続き検討ということになりました。それで,例えば資料2-2の5ページに,複数大学での必要最低限教員数の算定ケースが示されておりますが,これについては,例えば大学設置基準の中でやるのか,もしくは,大学設置基準と異なる短期大学設置基準や大学設置基準と専門職大学設置基準の間での想定があり得るのかどうか。というのは,X大学とY短期大学でもあり得るのかと,単純な質問です。これについて疑問に思ったので教えていただければと思います。

【永田分科会長】  申し訳ございません。今,音声が途中で切れましたが,皆さん聞こえていましたでしょうか。文科省の中が通じていないのか,それとも全体なのか。聞こえていましたか,皆さん。

【大森委員】  聞こえています。

【永田分科会長】  文科省だけ悪いようです。こちらが途切れ途切れになってしまいまして,申し訳ございませんが,麻生委員,もう一度,簡潔に質問してください。

【麻生委員】  では,簡単に申し上げます。資料2-2の5ページに示されている複数大学での最低教員数の算定ケースが示されております。これは大学と,それから短期大学,もしくは大学と専門職大学,もしくは専門職短期大学等,他の設置基準が違うものに対しても適用はされるのかという質問でございます。

【一色大学振興課課長補佐】  適用されます。それぞれの基準に基づいて算定されることになります。

【麻生委員】  ありがとうございます。

【永田分科会長】  桜美林の小林委員,どうぞ。

【小林(雅)委員】  ありがとうございます。小林雅之です。私も以前からお伺いしている基幹教員について,もう一度確認したいと思います。
 全体として,質保証システム部会の審議まとめでは,非常に運用が重要だということをおっしゃっていたと思いまして,これは全体として,大学の質保証というのが,入口のコントロールから出口チェックという形で変わってきたことを,より具体化していると考えます。
 今回,その流れの中で,総則の第3項に不断の見直しを行う必要があるということが書き込まれましたので,それは非常に重要なことだろうと思っております。出口チェックという観点から,公表について少しお伺いしたいんですけれど,今日の資料の2-2の7ページ目のところに,公表をどうするかということが書かれております。これは質保証システム部会のほうのまとめでも出ているわけでありますけれど,これを見ますと,審議まとめのところでは,「各大学に基幹教員(仮称)の情報などを常時,公表する」とありますけれど,そうしますと,これは設置基準上の新しい大学・学部の教員が対象になるのでなくて,全大学の全教員のうち基幹教員が対象になると考えてよろしいかということです。
 それで,その場合,もう一つは,ですから,基幹教員以外は公表をしなくていいのかという疑問が湧きます。それから,さらに言えば,これについては設置基準ではなくて,学校教育法の施行規則のほうで,教育情報の公表ということでやられていると思いますが,そこにどのように書き込むのか,この辺りについて確認したいと思います。よろしくお願いします。

【永田分科会長】  ありがとうございます。

【一色大学振興課課長補佐】  まず,全基幹教員が対象になるかというところにつきましては,対象となります。また,基幹教員以外の教員も対象となります。
 それは8ページ目のところにございますけれども,先ほど先生のほうから御指摘もありました,学校教育法施行規則におきまして,各大学の情報公表の義務づけがなされております。この第172条の2がそのとおりでございます。その中におきまして,現行の規定におきましても教員組織,教員の数,並びに,各教員が有する学位及び業績に関することということは情報公表が求められておりますし,そのときの施行通知におきましても,教員組織に関する情報については,役割分担,年齢構成を明らかにすることに留意することであったりとか,教員の数につきましても公表するということ,また,各教員の必要な専任教員の数を確保しているということであったり,男女別,職種別の人数等も明らかにすること,また,各教員の業績についても,研究業績等にとどまらず,多様な業績を積極的に明らかにするということなどを既に求めておりまして,今回,改正に当たりまして,合わせて,基幹教員に合わせた形の表現で,改めて求めるということになると思いますけれども,教員に係る情報公表は従来からも,また今後も公表を求めていくということ,また,認証評価機関におきましては,もともと情報公表についてチェックをするということになっておりますけれども,さきの7ページに戻りますと,審議まとめにもございますけれども,認証評価における情報公表に関する評価を実施するに当たってはということで,教学マネジメント指針も踏まえて,大学の教育活動に伴う基本的な情報であって,全ての大学によって収集可能と考えるものと整理されたものについては確認を行っていくということで,認証評価機関におけるチェックをより強めていくということとなります。
 このような形で,基幹教員の情報が最新のものであるかとか,また,中段にございます,数であったりとか,学位であったりとか経歴,また,業績等,所属であったり,または,そもそもの要件であります,教育課程の編成,その他の学部の運営の参画状況や担当科目等についても出していただくことが必要であると思っておりまして,これらについては,各大学が法令に基づいて適切に出していくと。それを外部からチェックするとともに,先ほど申しましたとおり,認証評価機関がチェックをしていくということでの体制強化を図っていくということでございます。

【小林(雅)委員】  ありがとうございました。

【永田分科会長】  続きまして,北里の小林委員,どうぞ。

【小林(弘)委員】  小林弘祐です。それでは,2つ,1つは基幹教員に関連してなんですけども,十分経過措置も,きちんと出していただいているんですけど,経営者としては,雇用契約をどうするかというのが,最終的にいろいろと悩ましいところで,今までは専任と,それから兼任とか兼担とか,いろいろ契約をされてきたんですけど,基幹教員とした契約とした場合に,それ以外の教員というのは,どういう形になってくるのか,そちらも気になるところです。
 それから,もう1つは,この前もお話ししましたけど,年金とか健康保険とかそういったいろいろな労務に関することもあるので,文科省の考え方は非常によろしいと思うんですけども,最終的にそういった労務関係のこともどうしても出てきてしまうので,ゆくゆくは,各省庁ですり合わせをしていただければと思っております。それでやらないと現場が混乱しますので。
 それから2番目,特例措置なんですけど,先ほど大野委員もおっしゃっておりましたけれども,学校法人審査会とか分科会でかなり厳しく,今までの設置基準に基づいて審査をやっているわけなんですけども,それでもなかなかいいアフターフォローで定員割れ,例えば2割とか,そういう状態の学校も出てくるんですけども,今まで見たところでは,特例措置の中に,学生確保ということが項目として乗っかっていないので,それもかなり大事な,エビデンスを持って学生が確保できるんだという見通しも立てていただく必要があると思いますし,できれば,その辺が慣れている学校法人審査会とか分科会と連携を保っていただければと思っております。
 私の意見です。以上です。

【永田分科会長】  最初のところ,保険云々という雇用の契約と,これはどういう関係ですかという質問だと思いますが,事務局,いかがでしょうか。

【一色大学振興課課長補佐】  ありがとうございます。雇用のそれぞれの契約につきましては,各法人と教員との契約になってきまして,その在り方については,現行の専任教員であっても多様なものかと理解をしております。その中で,例えば研究所等にお勤めになって常勤で働かれている教員の方の処遇についてどのようにするか,これは,一義的には各大学の御判断になるかと考えておりますが,先ほど御意見という形で承っておりますけれども,様々な年金制度等々の関係で,複数の機関で働くということを,逆に言うと,そちらの制度のほうが阻害する可能性があるという観点での御指摘かと思いますけれども,これは大学だけではなくて社会全体の中での労務関係の整理が必要となりますので,こういったことについては,厚労省とも引き続き,適宜,相談しながら検討していきたいとは思っております。

【永田分科会長】  設置の審議会のほうについては同じ問題意識だと思いますので,気をつけてやっていただけると思います。
 松下委員,どうぞ。

【松下委員】  ありがとうございます。私は特例制度について,少し確認させてください。
 資料2-3の1のところに考え方ということで,今後の大学設置基準の改善につなげるためにということ,それから,これはあくまでも先導的な取組であるのだということが書かれているんですけれども,例えば3ページとか4ページのスキームを見ますと,特例制度で先導的な取組をやった結果が,どのように今後,大学設置基準の改善などに生かされるのかと,そこの筋道というのが描かれていないように思います。
 特例制度というのは,初等中等教育の研究開発学校を土台にしてというか,そこを参考にして高等教育でもそのようなものを行うということで,今回設けられたと伺っているんですけども,そうしましたら,例えば非常に優れた成果を上げているようなものについては,より広く大学全体に広げていくための何らかの仕組みのようなものを,ここのスキームに入れていただいてもいいんじゃないかと思います。いかがでしょうか。

【一色大学振興課課長補佐】  ありがとうございます。考え方のところに,先ほど御指摘いただいたとおりでございますけども,今後の大学設置基準の改定にもつなげていくということを目的の1つと捉えております。その観点から,ある種,大学としては,多様な取組が行える制度であるということ,国からすると,その成果を踏まえて,今後,設置基準の改正等にも生かせる制度であるということ,この両面の特性を持っているというのが特例制度と考えているところでございます。
これは具体的に,実際にどういう成果が出てくるかということにもよるとは思いますけれども,まさに先ほど委員から御指摘いただいたとおり,全ての大学に広げたほうがいい成果がもし得られれば,それは踏まえて設置基準の改正をしていくということになると考えておりますし,他方で,その大学だからできたというものだとすると,それを単純に広げていいかという問題もありますので,引き続き継続的な研究であるとか,もしくは部分的な導入をしていくということも考えられると思いますので,その成果の出方次第かと思いますけれども,それは実際に走りながらというか,成果を見ながら検討していきたいと考えております。

【松下委員】  了解しました。

【永田分科会長】  古沢委員,どうぞ。

【古沢委員】  ありがとうございます。私は,教育課程に係る特例制度について一言申し上げたいと思います。
 今回,示された認定基準の申請計画書の事項を拝見しますと,特例制度を申請する理由がもう少し明確になるようにしていただきたいというのを,念のため,言っておきたいと思いました。というのは,例えば,この事項に,例なのかもしれませんが,先導的な教育を行わない場合に比して,教育研究水準の向上に資する取組である根拠を示せというんですが,それも必要だとは思うんですけど,やはり,その研究そのものがすぐれているかどうかということ以前に,この特例を使うことがなぜ必要なのか,それがなぜ先導的な研究に,教育に必要なのかということを明確にするような基準にしていただいたほうがいいのではないかと思いました。というのは,学生にとっては,規制緩和は,やり方次第では質保証に関わることだと思いますので,それは単に,いい教育だからというときに,なぜ規制緩和が必要なのかというのは明確になればいいと思います。
 それと,先ほども小林先生からも出ましたが,学生確保の見通しとか安定的な経営にあるとか,そういったことも入れていただければと思います。
 以上です。

【永田分科会長】  現在の設置審議会のほうでも,学生確保については相当厳しくやっていると思います。それから,設置の理由等については,相当,分厚いものが書かれてくるので,そこに書かれているものでは普通の設置なので,それを超えるということを見せないといけないので,詳細に書けば書くほど,実は特例制度の融通性がなくなってしまう可能性もあります。

【古沢委員】  詳細な制度というよりも,これだと1つ飛び越えて,特例が必要な理由ではなくて,特例を使ってこういう研究をするんだけれど,この教育研究がすぐれているということに終わってしまわないかというのを危惧しただけで,なぜ特例を使うことが必要なのかという根本のところを入れたほうがいいんじゃないかということで,すごく詳細にということではないです。

【永田分科会長】  事務方,どうぞ。

【一色大学振興課課長補佐】  ありがとうございます。御指摘のことは,まさに我々も考えているところでございまして,先ほど資料の説明のときに申請の目的,また,実施する組織,また,規定の対象,その内容,これらについては一貫した整理が必要になりますので,単に60単位上限の緩和だけやりたいといったときにも,それをどこの組織が具体的にどういう形でやるのかという内容を示す。それはなぜ必要かというのが目的であるというところなどにおいて,それを求めている趣旨を明確に求めていくということかと思いますので,運用の際に,しっかりとその辺は求めていきたいと思いますし,まさに審査員に評価いただきたいところはまさにそこでございますので,その辺りをしっかりとやりたいというところでございます。

【古沢委員】  ありがとうございました。分かりました。

【永田分科会長】  現在も設置の理由を説明する書類は,実は法令的に書かれているわけではなく,このような内容をそれぞれ何十項目か書きなさいとあります。多分そのときに,特別な特例の場合の事例が出てくると思います。そのようなことを書きなさいという内容になると思います。
 曄道委員,どうぞ。

【曄道委員】  ありがとうございます。私も特例制度について,今の古沢委員の御質問にも関係すると思うんですけれども,柔軟な運用の下で,先導的な,かつ効果的な取組が生まれてくればと思います。ただ,先導的というものは,先導的であるがゆえになかなか評価は難しい,有識者会議の中でも評価が分かれることも起こり得るかと思うんですが,実際に実施をした後に,その取組がどのような効果を生むことができたかといった検証など,事後のプロセスについては,どのようにお考えなのか伺いたいと思います。よろしくお願いします。

【一色大学振興課課長補佐】  ありがとうございます。検証の方法につきましては,先ほど資料2の2ページ目でございますけれども,検証に係る計画について各大学に考えていただくと考えております。なので,そこの実効性なども併せて評価の対象になるということでございまして,大学としてどういう形であればうまくいくのか,当然その中でも修正があると思いますので,先ほどの説明の中でも御説明しましたが,申請計画書自体も修正は可能でございますので,その中でトライアンドエラーをしながら,どのような形で検証していけばいいのか,まさにその取組自体が,ある種,内部質保証的な取組になりますので,それがある意味しっかりとなされている大学であれば,教育の改善はしていくだろうということで考えております。
 最終的には,その全体の成果を踏まえて,先ほど御指摘もありましたけれども,設置基準の改正等にも必要に応じて反映していくということでございます。

【曄道委員】  ありがとうございます。

【永田分科会長】  清水委員,どうぞ。

【清水委員】  ありがとうございます。前回も申し上げましたが,グランドデザイン答申以降,我が国の量的平等性から質的多様性への改革ベクトルの移行が,今回の設置基準の改正には非常に具体的に表れていると思っております。この短期間に,条文に落とし込んだスピード感に敬意を表します。
 その中で注目しているのは,単位制度とも関係しますが,卒業制度の見直しです。設置基準の第32条に関わるものです。単位制度については,30年前の大綱化のときにかなり簡素化されました。それ以来の大変革ではないかと思っております。第32条の条文ですが,修業年限の規制が外れまして,124単位以上の修得と,そのほかは大学が定めるという非常にシンプルになりました。
 シンプルはいいのですが,ちょっとシンプル過ぎます。いわゆる質保証を掲げる改革の中で,そこを解説とか周知のときに説明すればいいのかも知れませんが,条文の上でも,例えば,学修成果等を考慮して定めるとか,これまで各大学が取り組んできた学修成果の可視化がわかるような形での表現にならないかと思っております。この規定だと,各大学が自由に定められるということになります。ある大学はGPAを要件に課すこともあるでしょうし,ある大学は卒業論文を専門科目から外して卒業要件に組み込んだりすることも考えられます。学部によっては,国家試験の合格といったことを定める可能性もあります。
 そうではなくて,我が国がこれまで取り組んできた,ディプロマポリシーで明らかにした学修成果を4年間、6年間に身につけたかどうか,これが担保されないと卒業要件にはならないのではないかと思います。ですから,これまでの量的規定に新たに質的な規定が加わるような表現といったものを盛り込んでもらいたいというのが私の考えです。
 以上です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。かなり重要なコメントです。事務局,どうぞ。

【一色大学振興課課長補佐】  ありがとうございます。修業年限の規定について,設置基準上は削除しますけれども,学校教育法,法律のほうで,修業年限の記述というのは第87条で定まっておりまして,こちらは4年とするというところ,これは特に変えることはありませんので,ここについては変更ありません。
 その上ですけど,なぜ,では削除するのかということですが,前回,御説明させていただいて,十分丁寧な御説明ができていなかったということかと思いますけれども,例えば秋入学をした者,例えば9月に入学をした者が6月に卒業できるのかどうか,8月31日までいなきゃいけないのかどうかといったところが,4年以上と記載されていることによって,そういった疑念というか解釈が生まれてくるというところ。実際には,日本の大学を出て海外の大学に進学するときにサマースクールとの接続を考えると,6月に接続していくということが重要になったりする場合もございますので,ここは4年間厳密に在籍するということではないという趣旨を明確化するために,大学設置基準上の4年以上というところを削除する。ただし,当然ですけども,法律の4年とするというところは変わらないというところでございます。
 また,単位制度自体の根幹は今回変えるものではございませんので,資料2-1のところの8ページ目に戻りますけれども,漢数字,七のところの(3)でございますが,ある意味,単位の積み上げが学修成果の積み上げということ,逆に言えば,ディプロマポリシーに基づいてカリキュラムポリシーを作成し,その教育課程の編成,また,授業科目の設計,それに対する教員の配当をしていくということが全体の流れになっておりますけれども,個々の授業科目単位において,試験その他の大学が定める適切な方法で学修の成果を評価して単位を与えるものとするという形で,まさに学修成果を評価していくと,単に試験だけじゃなく学修成果を評価していくという形の改正も今回行いますので,その趣旨にも,ある種,兼ねている部分があるかと考えているところでございます。
 以上でございます。

【永田分科会長】  清水委員,どうぞ。

【清水委員】  単位の積み重ねで卒業というのは,そもそもアウトプットという考え方です。我々が今,重視するのはアウトカムです。要するに,単位を取得したから学修成果を獲得したかというのは,別の話だと思います。ディプロマポリシーで明確にした学修成果をきちんと4年間あるいは6年間で身につけたかどうか,これがアウトカムなのです。単位を取った,124単位集めた,これはアウトプットです。そこは区別というか,しっかりと峻別していかないといけないと思います。

【永田分科会長】  今のポイントは,かなり重要なポイントです。後で申し上げますが,これはパブリックコメントも出して決まっていくことなので,もう少し改正の余地もあると思います。しっかりと回答できるように対応をこれからもしてください。少し意味が違うので。御理解いただいたと思います。
 安部委員,どうぞ。

【安部委員】  ありがとうございます。私は細かいことですけども,今回の省令改正は,多様で先進的な教育研究を大学が行うための改正であり,それに対して附則として規定を置くというのが最後にあります。今回,申請になった基幹教員に関連して,いわゆる指導補助者に関することが,授業の一部を分担させることは可能であるということが,資料2-1の3ページの(3)に書いてあります。例えば,複数の大学を行き来している基幹教員が担当する授業科目を,専ら当該大学の教育研究に従事する教員や,あるいは学生や,その他の人が補助したり,あるいは授業の一部を担当させたりすることが可能という規定を置くことについてですが,その際,十分な教育効果を上げることができると認められる場合と書いてありますが,この規定を教育の質を下げないように,学修者本位の学びができるような授業体制の構築を前提とする趣旨の規定にしていただきたいというのが私のリクエストですので,お願いして発言をさせていただきました。
 以上です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。ある意味で,似ている御意見だと思います。今すぐにここで変えることはできませんので,御検討いただかないといけないと思います。
 そのほか御意見,いかがでしょうか。村田委員,どうぞ。

【村田委員】  細かな話で恐縮なんですけど,特例制度についてですが,先導的な取組というのがはっきりしてこないというか,具体的に変わってくるんだと思うんですが,文科省として,例えば認定期間はどれぐらいを考えていらっしゃるんでしょうか。少なくとも,4学年が全部そろうまでというのが最低だと思うんですが,4年度では短いかと思ったりするので,どれぐらいを基準に考えていらっしゃるのか,もしお考えがあれば教えてください。

【一色大学振興課課長補佐】  認定期間は,国が最終的には決めますけれども,第一義的には,まず,大学のほうから実施予定期間というのを出していただきまして,それを踏まえて決めるということを想定しています。
 先ほど御指摘あったとおり,卒業生が出るまではワンクールとして見る必要があるというのは1つの考え方かと思いますので,4年ないし4年以上というのが1つの範囲かと思いますが,具体の定めは,まず,大学に出していただいて,ただ,他方で,例えば100年やっていいですかと言われても,それはおかしいので,そういった修正ができるように最終的に国のほうで認定期間を定めるという形のことを想定しているものです。

【村田委員】  例えば10年というのはあるということですね。

【一色大学振興課課長補佐】  ということもあり得ると考えます。その検証も含めて10年要るんだという,ちゃんと説明をいただくということが必要になると考えております。

【永田分科会長】  髙宮委員,どうぞ。

【髙宮委員】  ありがとうございます。大変丁寧な条項作成等々ありがとうございました。
 資料番号ですみません,実際の設置基準のところなんですけど,第6章で質問させていただきますでしょうか。第6章第19条のところの3番に関しまして,「大学に専攻分野におけるおおむね5年以上の実務の経験を有し」から,最後の「責任を担うこととするよう努めるものとする」とあったんですけれども,先ほどまでのディスカッションに出てきた部分と,これはどのようなところが整合するのか教えていただきたいと思いまして,質問させていただきました。よろしくお願いいたします。

【一色大学振興課課長補佐】  ありがとうございます。資料2-4の先ほどの御指摘は9ページ目になりますけれども,第19条に第3項を新たに加えておりますが,こちらの条項につきましては,実は5ページ目のところに戻りますと,下側が旧規定になりますけれども,第10条の2に同様の規定がございまして,設置基準全体の規定の整理の中で,ある意味引っ越しただけのものでございまして,内容が何か変わるというものではございません。

【髙宮委員】  これは従来と変わらないということですか。

【一色大学振興課課長補佐】  はい。旧来,第10条の2の内容をそのまま書いているものでございます。

【髙宮委員】  そういうことなんですね。すいません。第10条の2というのは,今回の改定とはあまり関係ないということなんでしょうか。

【一色大学振興課課長補佐】  内容的な改正としては,特段関係がございません。

【髙宮委員】  分かりました。ありがとうございました。

【永田分科会長】  そのほかいかがでしょうか。大森委員,どうぞ。

【大森委員】  すいません,ぎりぎりで。先ほど,清水先生がおっしゃったことを,もう1回,今日は結論が出ないし,これからパブリックコメント等々というプロセスの中でということで理解していますけども,教学マネジメントをつくったときにも,いわゆるDPを達成していなかったら卒業させないということが,今,現行であり得るのかという議論は会議の中であったと思います。それは今の設置基準ではそれをしちゃいけないんだと。124単位を積んで4年たったのに,あなたは,この資質がないからとか,あるいは,検定でこれが取れていないからとかというのは,今はできないという理解で,マネジメント指針をつくっていたと思うので,それがもし変わるのか,変わらないのかというのは,かなり大きなポイントになってくると思うので,慎重議論がこれからも必要かなと思いました。
 以上です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。そのほかよろしいですか。
 幾つか論点が出てきまして,事務局のほうで,これからパブリックコメント等を経て,最終版にすると思います。今出てきた意見について,もう一度,次の分科会に戻ってくるときに,正確に答えられるように,準備,あるいは検討を進めていただきたいと思います。大分有益な意見が出たと思います。ありがとうございます。必ずそのようなプロセスを経るということで,事務方に一旦お任せをして,また分科会に戻ってくるときに,大切な議論をしたいと思います。ありがとうございました。
 それでは,次の議題に移りますが,高等教育を軸としたグローバル政策の方向性(案)について,事務局から資料の説明をお願いいたします。

【渡辺高等教育国際戦略PTリーダー】  高等教育局の国際戦略プロジェクトチームリーダーの渡辺でございます。よろしくお願いいたします。
 お手元に資料3を御用意いただけますでしょうか。高等教育を軸としたグローバル政策の方向性(案)とある資料でございます。若干,経緯を簡単に説明させていただきますと,昨年6月の成長戦略フォローアップ2021と言う文章の中で,コロナで大変な影響を受けている留学生交流でありますとか,大学の国際交流につきまして,国際的な動向を見据えながら,高等教育のグローバル戦略の再構築に向けた検討を行い,2021年度中を目途に一定の結論を得るということが示されてございました。
 これを踏まえまして,昨年度,国際化に非常に重点的に取り組む大学でございますとか,有識者の方々から意見をいただきながら,今年に入りまして,教育未来創造会議でございますとか,骨太の方針などを踏まえまして,今後の方向性に向けて,事務局において整理をさせていただいたものでございます。
 本日,大学分科会の場で広く御意見をいただくとともに,現在,関係団体でございますか,有識者の方々にも個別に意見をお伺いしていますので,そういったものを踏まえて,7月頃を目途に,文科省として整理,取りまとめの上,発表したいと思ってございます。
 1ページを御覧いただけますでしょうか。これは,まさに今,高等教育をめぐる国際的な交流活動の現状・課題でございます。こちらの左下のグラフが如実に示してございますように,新型コロナウイルス感染症の拡大によりまして,30万人を達成した外国人留学生につきましても,その受入れがかなり減少してしまった。さらに,よりショッキングなのは,右のグラフにございますように,上昇基調にあった日本人の留学生も激減してしまったというところでございます。このように,外国人留学生が入国できなかった状況が続き,さらに真ん中のグラフにございますように,我が国で留学された留学生の就職率も減少しているということも出てきてございまして,我が国を支える優秀な人材の確保に深刻な影響が出ているおそれがあると思ってございます。
 さらに,グローバル競争の激化,地球課題の噴出,国際情勢の変化によりまして,大学におきまして,これまで以上にグローバルな課題に対峙しているという現状にあると認識しています。その中で,より具体的な課題として認識しておりますのが,これだけ人口減少が進む中で,高等教育の質,多様性を高めて,社会の活性化につなげていくためには,世界中から優秀な学生を受け入れて,高度人材として定着させていくことが不可欠ではないかと考えています。
 さらに,日本人学生に関しましても,今まで以上に世界に飛び出して,多様な文化に触れ,世界中の人々と協働できる力,自ら課題に挑戦する力を身につける,真のグローバル人材として育成していくことが不可欠と考えてございます。
 さらに,このように優秀な学生を受け入れ,そして日本人を送り出す基盤として,大学のグローバル化をなお進めていくことが重要であると考えてございます。
 さらに,国際情勢の変化などを踏まえますと,重点分野,重点地域の見直しや,経済安全保障など,グローバル化を推進する上で,新たに経済化した課題への対応が不可欠であるかと考えております。
 2ページには,これまでいろいろな場で意見が出てきてございますけれども,国際的な交流活動を行う意義というものにつきまして,留学生の受け入れ,それから日本人学生の留学,高等教育のグローバル化などについて,意義を簡単に整理してございます。こちらは割愛させていただきます。
 3ページを御覧いただけますでしょうか。このような状況を踏まえまして,今後,文部科学省として,グローバル政策を進めていく上での大きな目標,政策の方向性について整理させていただきました。まず,一番上にございますように,何よりも先ほどのデータなどを見ましても,5年後などを目途に,激減した外国人留学生,それから日本人学生の留学を,これは少なくともコロナ禍前の水準まで回復していく必要あるんじゃないかと考えています。さらに,その際にも重点分野,重点地域というものを新たに考えるという観点から,世界中の優秀な外国人留学生を戦略的に呼び込みまして,さらに,日本で活躍いただくために,企業や地域などへの就職や定着というのを促進していくことが必要じゃないかと思ってございます。
 さらに,日本人学生につきましても,我が国の未来を担うという人材育成の観点から企業,地方自治団体などの参画と,段階に応じた海外留学支援を推進していくことが必要ではないかということ。さらに,そのようなインバウンド,アウトバウンドを集めていく上でも国内外の基盤制度を整備して,我が国の大学をこれまで以上のグローバル化を進めていく。そして,質の高い国際流動性を実現していくということが必要と考えてございます。さらに,コロナ禍におきましては,オンライン教育というのが,非常に効果が出てきているとこも国際的にも見られてございますので,こういったものを活用しながら,新たな形式での国際的な教育交流活動の拡大,これは実留学とオンラインを組み合わせるといったことも入ってくると思います。そういった新しい形の大学間連携というのを推進していくことが必要ではないかと思います。
 さらに,タイトルが高等教育を軸としたと書いてございますので,大学における交流活動を活性化するためにも,高校段階からの国際交流を強化する。さらに,多くの方が日本語教育機関を経て大学に入ってくるというルートもございますので,そこの日本語教育機関の推進の維持向上を図る。そして,大学を出た後の研究者でありますとか,それから大学の教員になるというところも含めますと,国際頭脳循環の実現などを関係局と一緒に進めていくことが必要と考えてございます。
 このような大まかな方向性に従いまして,下の絵にございますように,1つ目はインバウンドの方策として,戦略的な外国人学生の確保,2つ目にはアウトバウンドの方策として,産学官挙げてのグローバル人材育成,そして3つ目には,インバウンドとアウトバウンドを双方,効果的に進めるために,大学のさらなるグローバル化を進める基盤,ルールを整備していくという基盤構築が必要ではないかということで,4ページ以降,それぞれの方針に従った施策を整理してございます。
 時間の都合で,主なところだけ説明させていただきます。4ページ,まず,戦略的な外国人留学生の確保に関しましては,先ほど御説明させていただきましたが,重点分野,重点地域というものにつきましては,これは平成25年に外国人留学生の受入れ戦略というものを文科省で作成してございます。これを今の文脈におきまして,しっかりと見直ししながら,関係省庁と連絡,連携して,重点分野,重点地域を再設定することを進めていくということが必要ではないか。それに基づいて,各種の留学生支援事業というのを戦略的に見直すということ。さらに,3つ目の丸でございます。外国人留学生の方が,日本で活躍していただく。特に優秀な方が活躍していただくためには,国内企業への就職に当たって,ビジネス日本語でございますとか,インターンシップなどを軸とする教育プログラムの展開をさらに推進するといったことなども必要になってございます。
 5ページ目に入ってまいりますと,先ほど申し上げたように,日本語教育の質の向上という観点では,これは文化庁と連携してございますけれども,日本語教室の新たな資格制度でありますとか,日本語教育機関の水準の維持向上を図る認定制度に関する法案なども検討されているところでございます。それから,高校段階における外国人留学生の受入れなども,ほかの局と整理して対応してございます。
 6ページ,今度は産学官挙げてのグローバル人材育成というところでございます。これは2つ目の丸のところで,先般,骨太の方針にもしっかりと盛り込んでいただいてございますが,これまで官民協働によりまして,「トビタテ!留学JAPAN」というのをしっかり推進してきて,成果が上がってございますが,これをさらに発展させていく,その観点の1つとしては,高校段階からの留学支援というのを強化することが必要ではないかと思っています。そういった,「トビタテ!留学JAPAN」の官民協働のプログラムだけではなくて,文科省としても,日本人の留学の支援のニーズというものを踏まえまして,一番上にございますように,留学を希望する生徒,学生の段階に応じたシームレスな留学支援促進策というものを「トビタテ!留学JAPAN」の進め方と併せて,パッケージ化していくことということが必要ではないかと考えてございます。
 それから,7ページのほうに飛んでまいりますと,高等専門学校の国際化などが進んでいる中で,そこをハブとした送り出しということを考えていくようなこと,それから,国際バカロレアの普及促進によって,高校を出て直接,海外の大学を目指すというというルートも非常に重要ではないかと考えています。
 8ページ目でございます。基盤ルールの整備に関しまして,まずは大学のさらなる国際化の促進という観点で申し上げますと,これは,これまで非常にスーパーグローバル大学創成支援事業ということで,我が国における積極的な国際化に取り組む大学の改革を促進してまいりましたが,これが来年度までという形で,一区切りつけるということになってございますので,その後の,これまでの成果を踏まえまして,その後の支援をどう考えていくかということが大きな課題と思ってございます。
 さらに,その次の丸のところでございますが,コロナ禍の中でのオンラインの重要性ということを踏まえまして,既に走り始めております,オンライン国際教育プラットフォーム,いわゆるJV Campusにつきまして,さらに充実するとともに,これを令和6年度以降,どういう形で運用していくかということも課題となっていくと思っています。
 それから9ページのほうに移ってまいりますと,質保証,3つ目のところでございますけど,例えば,質保証を伴った国際流動性を促進する様々なルールメイキングに関しまして,今,諸外国,それから,様々な機関でそういった多様な国際的な枠組みが動き始めています。そういったところに,我が国としても積極的に参加するといったことも重要ではないかと考えております。
 それから,10ページのところに関しましては,様々な見直しの関係で,こちらの大学分科会でも議論されていくところもあるかと思いますけれども,3つ目の丸などでございますが,学習歴証明のデジタル化の推進など,こういったことによって,さらにオンラインを活用した国際的な交流をどう進めていくかということにつなげていくということ,さらに,科学技術・学術政策局などで今,進めております,いわゆる国際頭脳循環に関します戦略とうまく連携しながら,ここを進めていくことが重要かと思ってございます。
 11ページ目,最後に,ポジティブな面だけでなくて,安全安心を醸成していくという観点も非常に重要になってきてございます。これは安全保障貿易管理の徹底でございますとか,研究インテグリティーの推進,留学生の在籍管理の徹底と,こういったところについても併せてしっかり対応していくことが必要と考えてございます。
 以上でございます。よろしくお願いいたします。

【永田分科会長】  ありがとうございました。
 それでは,御意見,御質問等あればお伺いいたします。大野委員,どうぞ。

【大野委員】  ありがとうございます。世界各国の最優秀層の学生がグローバルに循環しています。その流れの中で,学生獲得競争も存在しています。日本の大学がそれに積極的に参画するということを,明確に政策目標に位置づけるということが重要だと思います。そのためには,国公私を問わず,各大学が国際的に見て魅力的なプログラムを提供できるような環境整備を,文部科学省としても積極的に行うということが今,示されたわけでぜひそれを推進していただければと思います。その際に,国立大学に関しては,学部段階では事実上,定員増が困難であります。意欲的な国際的取組については,留学生の定員について例外的な取扱いを認めることを考えていただきたいと思います。また,国としての特別な財政支援がないのであれば,プログラムに見合った学費の設定を可能にすることも検討する必要があると考えます。
 私からは以上です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。今現在,10人近く上がっておりますので,申し訳ありませんが,2分ぐらいに収めて,御意見等をお聞きしたいと思います。
 吉見委員,どうぞ。

【吉見委員】  ありがとうございます。2点,発言させていただきたいと思います。
 まず,1点は,ポストコロナで,恐らくインバウンドのほうはそれなりに戻ってくると思うんですけれども,アウトバウンドのほうはかなり壁があると思います。まず第1に,これだけ円安が進んでいますから,日本の円がすごく小さくなっているというか,特にアメリカに留学する場合には,以前よりずっと貧しくなっているわけで,そうすると,なかなかお金の壁が出ているということです。ですから,奨学金の変動相場制というのがあるのかどうか分かりませんけれども,これは,そういうリスクが,学生からすると,行かない圧力のほうが大きくなっているということを御認識いただきたいと思います。
 同時に,これまでオンラインという話が今はございましたけれども,オンラインの場合には,時間の壁といいますか,学事暦がこれだけ海外と日本は異なっていますから,そう簡単にオンラインで仕組みをつくるということができる状況にないということも認識しておくべきだと思います。
 さらに,これはキャリアが本当に海外に行った場合に,日本人学生が海外に行った場合に,キャリアがどんどんよくなるのかということが見えないことが,なかなか日本人学生が海外に行かないという理由になっておりますので,先ほどの前半のほうで議論があった特例措置とこれは関わってくると思いますけれども,先ほどの設置基準の改正と,こういう話をどう連動させていくのかという課題も出てくると思います。
 2点目は,単にお願いというか,こういうこともぜひということなんですけども,先ほど出たスーパーグローバルですけれども,これは検証の時期に入っていると思うんですけれども,厳密にやっていただきたい。ですから,スーパーグローバルを受けた諸大学がいろいろ報告を出していると思うんですけれども,見せかけということを言っていいのかどうか分からないんですが,ちゃんと本当に実質が上がっているのかどうか。数字は一応出ていても,本当に実質が伴っているのかどうかということを厳しく検証していただいた上で,その先のことを考えていただくべきではないかと私は思います。
 以上です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。渡邉委員,どうぞ。

【渡邉委員】  ありがとうございます。先ほどお話があったように,コロナ禍で,全体とした国際志向が縮小しかねないような状況というのは,これは深刻な状況だと思います。したがって,資料の2ページ,3ページで示されたようなインバウンド,アウトバウンド,それから基盤構築というものが好循環を創出するんだという,こういった形の総合的なグローバル政策の方針という形は,大変時宜を得たものだと思います。
 こういう方向性を強く押し出す必要があると思うんですけれど,先ほど吉見委員の指摘された驚異的な円安化というのは,これはなかなか影響が大きいと受け止めています。したがって,アウトバウンドにどう支援を出すのかというのは,非常に重要な要素になると思います。逆にインバウンドに生かせばいいんじゃないかという視点もあるかもしれません。次期「トビタテ!留学JAPAN」に向けては,骨太方針にも言及いただきました。そういった意味で,民間との協力関係を再び強化していくというチャンスでもあるかと思いますので,この方向性はぜひ関係省庁とも連携して,政府一体のオールジャパン政策であるというグローバル政策としての方針を強く出していただけたらと思っております。
 折しも政府のクワッド首脳会議のときに,クアッド・フェローシップが打ち出されました。既に対応されている大学もあろうかと思いますので御存じだと思うんですが,これは大変参考になるんじゃないかと思いました。産官学一体となって,未来の課題解決のためのSTEM人材育成を打ち出すというような,しかもそれはクワッド・フェローシップとして出すというのは,これは見習うべき視点だなと思いました。
 それからもう1つは,8ページ以降に記載いただいた,高等教育の基盤構築の中で示されている事項はどれも非常に重要だと思います。これがないとなかなか進めないと思いますので,特にこの中にある国際的なオンライン教育プラットフォームだとかジョイント・ディグリーだとか好事例が出始めているもの,こういうものを生かすということが重要ではないかと。加えて,メタバースの教育留学体験での活用というのが注目され始めています。国際交流の語学力の向上とも関係するんですけれど,大学教育の中でこういったメタバース活用すると,留学機運の向上につながるという期待感です。そういったことで,DXを含めた形でぜひ活用していただけたらと思います。
 いずれにしましても,こういうグローバル政策の後に,グローバル人材の交流によって新たなコミュニティーが形成されるということが重要なんじゃないかと思っています。
 私からは以上であります。ありがとうございます。

【永田分科会長】  ありがとうございます。日比谷委員,どうぞ。

【日比谷委員】  ありがとうございます。実は,私が言いたかったことは吉見委員の後半と完全に重なっておりますので,2分いただかなくても1分で結構でございますが,スーパーグローバル大学創成支援事業が始まりましたとき,各大学,特にうまく取れたところは非常に張り切って始まりました。あの段階で,後半にコロナがやってくるということは,ほとんど想定されていなかったと思いますけれども,その結果,計画変更が余儀なくされたことは,これは仕方がない面もあると思いますが,厳格な評価というときに,その中でも,代替のプランをどのようにつくったかとか,今後,先の見えない時代で,またパンデミックがあるかもしれない,また,留学生も行き来できなくなるかもしれないということを想定して,評価の際には,このような突発的な危機に,申請,採択された大学がどのように対応して,無理な中でも当初の目的をいかに達成しようかといった観点からも,ぜひ評価をしたほうがよろしいかと思います。
 以上です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。越智委員,どうぞ。

【越智委員】  ありがとうございます。私からも2点ございまして,1点は大野委員が述べられたんですけれども,海外からの留学生を増やしていくということで,円安で増えてくるのかも分かりませんけれども,元の30万人に返すという発想よりは,これをもっと増やしていくという方向にかじを切ったほうがいいのではないかと思っております。その理由は,その中に大変詳しく記載されているとおりであります。
 それと,もう1点のところは,この中にも記載があるんですけれども,来日した際,日本語教育の質の向上というところは記載されているんですけれども,具体的には,どういう組立てで,日本語教育の質の向上を図ろうとしているのかという具体的な案が少し見にくいというところがあるかと思います。
 以上です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。今後の参考になる御意見だったと思います。川嶋委員,どうぞ。

【川嶋委員】  ありがとうございます。大阪大学の川嶋です。
 手短にということで,まず,インバウンドとアウトバウンドに共通している点ですけれども,インバウンドに関しては,これまでのいろいろ歴史を振り返ると,経済力が強い国へ留学生が集まるという傾向がありました。日本も一時,GDPが2位,3位の頃は,かなりの留学生が世界各国から入ってきたと思うんですが,最近は特定の国からのインバウンドを除けば、日本以外の国に留学生が集まる。新型コロナの影響は別として,逆にアウトバウンドも先ほど円安というお話がありましたが,これも日本の経済力が高まらない限り,円安は続くと言われています。私は経済学者じゃないので,正確には予測できませんが,円安がしばらく続くと考えます。今日は,渡邉会長も御出席ですので,ぜひ経済界全体で日本の国力,経済力を高めるという努力を,ぜひ教育の国際化のためにも関係者と一緒にやっていただきたいというのが1点。
 2点目は,語学に関することです。日本語については,具体の取組1のところで,日本語学校の質を向上するというお話がありましたけれども,それ以上に、そしてそれ以前に 
海外の中等学校の生徒に日本語教育を受けるようなインセンティブを与えるような取り組みを是非ともしていただきたいと思います。現地の高校卒業までに,せめてN2レベル程度の日本語能力を身につけていただけないと,なかなか日本の大学で学ぶことはできない。といいますのも,日本の大学で,全て英語で授業を提供するということは、現実には困難ですので,日本への留学生,インバウンドについては,一定の日本語能力を身につけて日本に来てもらうということが必須だと思います。ですから,海外での日本語教育や日本文化のPRをぜひしていただきたいということです。
 逆にアウトバウンドを増やすにあたっては,日本の生徒や大学生の方々には,英語を中心として,外国語能力をしっかり身につけるような、それを支援するような取組をぜひしていただきたいと思います。それに関連して,小学校から始まった英語の4技能教育を,ぜひこれからも充実させる必要があり,高校教育や大学教育だけの努力では,アウトバウンドの学生を増やすことはできないのではないかと思います。
 以上です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。今まであまり出なかった御意見で,海外での日本語,あるいは日本事情教育を高いレベルに持っていけというのは,今まであまり言われたことはなかったです。ただ,東南アジアには,第2外国語に日本語が選択肢で入っている国もありまして,さすがにそのような国はきちんと身について,こちらに来ていると思います。そのような意味では,今まであまり議論されなかった,海外に対するインセンティブをどのように出すのか難しいですが,アイデアかと思います。
 熊平委員,どうぞ。

【熊平委員】  ありがとうございます。アウトバウンドとインバウンドの両方についてコメントがございます。
 まず,インバウンドについてですが,既に大野先生からもお話がありましたとおり,学費を見直すことや,定員外に留学生を扱うことは、とても重要だと思います。その上で,特にこれからは留学生の数だけではなくて質が問われると思いますので,優秀な留学生を呼び込むという観点からは,国際バカロレアなどの優秀な学生の入学を促進していくべきだと思います。海外では,スタンフォードやMIT,ハーバードを含め,トップ20の大学が既に実施しております通り,国際バカロレア等の卒業成績を合格資格として扱う入試を行うべきだと思います。
 また,先ほど言語の壁があるというお話がございましたが,海外の大学では、優秀な学生については、言語以外の能力評価で合格させ,言語力が不足している場合には,入学後に、ファンデーションコースで言語の習得を行わせています。この様な新しい仕組みの導入も必要ではないかと思います。
 また,企業については,残念ながら,海外からは日本の企業で働きたいという声が非常に少ないことが、さまざまなランキングで明らかになっております。企業にも、留学生が働きやすい環境を整えることを考えていただきたいと思います。
 また,アウトバウンドについては,例えば、日本財団の報告書を見ても,自分と社会とのつながりが非常に低いという結果が出ております。この結果を踏まえれば、当然、自分と世界とのつながりも低いということになるであろうと思います。この状況を変えるために、初等中等教育の段階から,少し海外に目を向ける教育にシフトしていくべきではないかと思います。また、グローバル化を実現するためには、英語教育を根本的に見直すべきだと思います。グローバル化を実現するために、義務教育における英語教育の目的を、「日本のどこに行っても、英語を話せる人がいるという状態にすること」と定義するべきではないかと思います。英語教育が変わらない限り、真のグローバル化を実現することは難しいと思います。英語教育そのものを見直し、グローバル化の土台を整える必要があります。【永田分科会長】  ありがとうございます。
 須賀委員,どうぞ。

【須賀委員】  私から1点お願いしたいと思います。具体的な取組のところで,高校段階からの海外経験や留学の強化を進めるということで,こういう非常に難しいと思うんですが,その際,高校から大学にかけて,入学を希望する人たちというのは,結構,附属なんかで話をしているといます。ところが,そこで問題になるのが大学入試なんです。入試という非常に大きな壁があって,そのために高校自体に留学に行けないという意見とか,あるいは,それは附属だからいいでしょうという話を申し上げて,文科省に相談に行ったときには,いや,大学に入学する入学判定については本人に戻ってきていただかないといけないんですということで,国内できちんとした入学に関する試験を受けなければいけないと,そういう仕組みになっているというお話を受けました。
 シームレスに留学支援をするということで,とりわけ若い段階から海外に目を向けるという人がいるにもかかわらず,外に対して大きな壁をつくっているというのは問題だろうということで,入試の在り方を少し,こういうときに併せて考えていただいて,シームレスな支援策にまとめていっていただけるということが望ましいのではないかと思っております。御検討をお願いいたします。
 以上です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。千葉委員,どうぞ。

【千葉委員】  ありがとうございます。留学生受入れの議論については,大学分科会ですから,大学に特化するのは致し方ないと思いますが,留学生30万人の内訳は,大学,短大,高専,専修学校,これを積み上げたものでありまして,留学生のニーズというのは意外と多様でありますので,もう少し広い視野で見ることも必要かと思います。
 アメリカの場合には,どちらかというと大学の魅力で留学生が集まっている地域でありますが,それにおいても,コミュニティーカレッジの役割は結構重要でありますし,地域の魅力で集まっているオーストラリアのほうは,どちらかというと日本型に近いのではないかと思っておりまして,オーストラリアでは充実した語学教育があります。また,TAFEと言われる,技術系高等教育機関がある。また,大学ももちろんそろっている。そして,ホームステイなどの社会としての留学生の受け入れる環境が整っているということで,我々日本は,どちらかというと地域の魅力で留学生が集まってくるというオーストラリア型を目指すべきではないかと個人的には思っておりまして,そういう意味では,もう少し広い視野での検討が必要かと思いますので,よろしくお願いをいたします。

【永田分科会長】  ありがとうございます。イビチャ・オシムというサッカーの監督が今と似たことを言っていて,国際化と言うが,日本のサッカーが世界に勝つためには,日本のサッカーを見つけないといけません,このような名言をおっしゃっています。同じだと思います。
 千葉委員がおっしゃったように,オーストラリア型になるかどうかは別として,我が国が留学したい国にどうしたらなるのかというのは非常に重要なポイントです。それをどのような設計で,文科省をはじめ,支えるのかということなので,大変,含蓄のあるコメントだったと思います。
 私も一言だけ申し上げます。皆さんの議論の中で,多分一番重要なことは,アウトバウンドのほうは明快だと思いますが,インバウンドに限って考えた時,「留学生」とは何ぞやということです。留学生という単語を使うからいけないのですが,海外に住んでいる18歳なり何なりの人が来るという感覚なのか,それともそうではないのかということをどこに置くかだと思います。
 要するに,先ほど試験の話も出ましたし,それから定員の話も出てきましたが,我々にとって,留学生という単語はやめたほうがいいと思います。海外在住の海外で育った方々が高等教育で日本を選ぶ,それだけのことではないかと思うので,そのような観点で見たときに,統一的な多分立場が取れるのではないかと思います。先ほど川嶋委員がおっしゃったように,もちろん個々の大学の魅力はあります。それはそれで大切です。多様性を求めるというのは結果です。
 そうすると,入学試験の問題も,さっきは行っている学生をどうするのかという話もありましたが,来る学生だって,今までみたいにではなくてオンラインを使っていろいろなこともできるでしょう。それから,入学試験の標準化ということがあって,今,留学生試験がありますが,もっと外国の方が受けやすい,日本の中等教育までを受けていない方々が受けやすい,皆さんが満足できる認定試験だって可能だろうと思うし,それが英語でもいいし,日本語でもいいが,出るときには,日本語を話すような人になってほしいと日本の企業が思っているなら,そのニーズにきちんと応えなければいけない。
 ですから,私は留学生ということに若干違和感がだんだん出てきまして,違う18歳の学生さんというカテゴリなのかもしれないと思いました。
 全然違う基軸で,先ほどの外国で日本語教育をインセンティブとしてということと似ているのですが,ぜひとも文科省は他省庁とも組んでいただきたいと思います。特に我々が条約を結んでいる国々にある在外公館に協力をもっと積極的に願わないといけないと思います。東京のフランス大使館は,定期的にフランスに留学していた日本人とフランスから日本に留学している日本人を集めて,ネットワークづくりを盛んに行っていて,そのネットワークが次の留学生を呼んだり,次の留学希望者を生んだりしています。それをやっているのは,在外公館ですから文科省ではないのですが,在外公館の多くには,文科省の若い方が武者修行に行っているはずですから,もっと積極的にそのような文科省外のところにも働きかけてやられたらどうかと思います。
 今後,詳細な設計が出てくると思うので,今出てきた各種の意見,ぜひとも参考にしていただきたいと思います。
 それでは,4番目,イノベーション・コモンズについて,御説明をいただきたいと思います。

【廣田整備計画室長】  失礼いたします。施設部計画課整備計画室長,廣田と申します。
 大学分科会におきまして,本日御説明する機会をいただきまして,ありがとうございます。
 お手元,資料の4になりますけれども,こちらについて御説明を申し上げたいと思います。国立大学等の施設整備に際して,現在,有識者会議におきまして,検討を進めているところでございます。高等教育政策を進めていくための基盤としまして,教育研究環境の整備というのは極めて重要だという認識でございますので,こちらの分科会においても御報告をさせていただくものでございます。
 まず,資料の4ですが,有識者会議の報告を説明する前に,1枚目,国立大学等のキャンパス整備の状況につきまして,御紹介をさせていただきたいと思います。1枚目左上ですけれども,現状におきまして,昭和40年代あるいは50年代にかけて整備された膨大な施設の更新時期が到来をしております。安全面,機能面,経営面で大きな課題が生じているということで,対応が急務とされておりますことを踏まえまして,第6期の科学技術イノベーション基本計画に基づいて,令和3年度から7年度までを計画期間とする第5次国立大学法人等施設整備5か年計画を策定し,整備を進めているところでございます。
 こちらの計画のキーコンセプトといたしましては,キャンパス全体をイノベーション・コモンズに転換をするというものでございます。イノベーション・コモンズというのが,大学の教職員,あるいは学生のみならず,産業界,地方公共団体などをはじめ,多様なステークホルダーが集い,交流し,共創していくということ,そして,教育研究の機能を強化していく,そのような共創拠点をキャンパス全体に実現していくということを目指すものでございます。老朽化した施設の戦略的イノベーションをはじめまして,ライフラインの更新ですとか機能強化,先端地域医療の拠点となる病院整備,こうしたことを進めていく方向性を明確化するとともに,整備目標としまして,約860万平米を掲げ,取り組んでいるところでございます。
 他方で,右上の予算額のグラフにありますように,計画的整備を行うために必要な予算の確保というものが不可欠である中で,イノベーション・コモンズの実現に向けて,どう具体的に取組を加速化していくかということが大きな課題でございます。
 2枚目になりますけれども,現在,別の有志者会議におきまして検討を進めている,まとめの方向性というものが5月に整理されておりますので,こちらを御紹介させていただきたいと思います。ただいま申し上げました背景を踏まえて,大阪大学の西尾総長を主査とします有識者会議を立ち上げて,イノベーション・コモンズの実現に向けた具体的な推進方策,こちらを,検討を進めているところでございます。最終的に,夏頃には最終報告を取りまとめていきたいと考えているところでございます。
 イノベーション・コモンズの実現に向けては,キャンパス全体において,産学連携,地域連携,あるいはアクティブラーニングの場など,様々なステークホルダーが交流,対話して共創していく場を展開していく必要がございます。そのために,全学的,組織的な動きをつくり,各大学が特色や強みを発揮できるような,そうした取組の強化につなげていく必要があるところでございます。
 資料の下ほどに,幾つかの大学の事例を掲載しているところです。例えば,一番左,最先端のイノベーション創出の事例といたしまして,最先端の研究と産学官連携をつないで,先端的な材料,デバイスの基礎研究から社会実装まで,一気通貫するための体制と,そして研究環境を整えているということで,社会と大学の双方向のコミュニケーションをベースとした共創空間,あるいはパブリックスペース,こういったものを整備している事例がございます。
 また,中ほどに,地域産業振興という枠がございますけれども,大学と自治体がタイアップしまして,町と一体となったキャンパスをつくるという構想の下で,自治体の所有施設をリノベーションしまして,大学が分野横断的な教育研究を展開するという事例でございます。地元企業との共同研究や技術開発,あるいは地域課題解決に向けた取組を,こうしたスペースを用いまして実現していくということで,イノベーションアトリエ,あるいはスタジオ,コモンスタジオみたいな多様な空間を整備活用しているような事例でございます。
 こうした様々な大学キャンパスを活用,あるいは整備をしている中で,大学の特色,強みを発揮するための取組,これが進められているところでございますけれども,これをどのようにして加速化していくかというところで,3枚目でございますけれども,中ほどに国が取り組むべき方策と書かせていただいております。こうした取組の実現に向けて,より加速していただきたいということで,有識者会議で提言があったものでございます。まずは,国の予算のより一層の確保充実を図り,教育研究基盤を強化していくということ。次に,戦略的イノベーションを始めまして,5か年計画の着実な推進をした上で,イノベーション・コモンズの実現に資する施設の整備に重点的な支援を行うこと。教育研究活動などのソフト面と施設整備のハード面,これが一体的になった支援を強化し,そのための事業評価の在り方を検討すること。そして,施設整備の企画段階からの一貫した支援を展開すること。右上になりますけれども,より柔軟な整備,維持管理が可能となるよう,改善すべき制度,緩和すべき規制等がないかどうか,実態を踏まえた検討と併せて,現行制度運用,新たな官民連携手法をしっかりと発信をすること,これ以外にも,目標設定やフォローアップ,ステークホルダーへの働きかけなどが示されているところでございます。
 一方で,国立大学等が取り組む方策として,ソフト,ハード一体となった取組を進めていくということに併せて,共創活動の各主体が有する様々なリソースを最大限活用できるように,関係者との協力関係を構築していくことなど,様々な方策が示されているところでございます。
 右下,地方公共団体,産業界への期待ということで,提言の中には,今後のまちづくり,地域産業創出の観点に大学の知を活用するなど,都市計画においてもキャンパスを位置づけて検討することですとか,各主体がビジョン,目標を共有した上で,それぞれの役割,強みを明確化していくことの必要性などが提言の中で示されているところでございます。
 文科省としましては,有識者会議における検討も踏まえまして,将来に共創拠点整備を促進するためのプロジェクトチームを設置しまして,関係機関団体等への働きかけ,実践事例の蓄積,伴走支援などを進めているところでございます。引き続き,有識者会議における報告の取りまとめに向けて検討を加速していくとともに,文科省といたしまして,しっかりと,こうした計画的整備が進んでいくよう,令和5年度の概算要求をはじめ,様々なアクションをしっかりと講じてまいりたいと考えております。
 説明は以上でございます。

【永田分科会長】  ありがとうございます。御意見というよりは,何か御質問があればお伺いします。よろしいですか。
 それでは,最後に大学分科会をめぐる最近の動向について簡潔に情報共有をさせていただきます。

【柿澤高等教育政策室長】  ありがとうございます。資料の5-1から5-3に基づきまして,簡潔に御報告いたします。
 まず,資料の5-1でございますけれども,こちらは前回,大学分科会のほうで配付した資料,大学分科会における今後の審議についてということでございまして,前回,大学分科会におきまして,大学振興部会の設置をお許しいただいたところでございます。
 1枚おめくりいただきますと,こちら,大学振興部会のメンバー表でございますけれども,先週6月17日に,第1回大学振興部会を開催いたしまして,部会長として,永田分科会長が御選任されまして,また,副分科会長に吉岡委員が信任をされているということでございます。引き続き,こちらの大学振興部会で議論を深めていただきまして,適宜大学分科会のほうでも報告,御審議いただければと思っております。
 次に,資料の5-2でございます。職業能力開発短期大学校から大学への編入学につきましては,こちらは昨年の10月に,本分科会におきまして御意見を伺ったところでございますけれども,その内容を含む改正構造改革特別区域法が本年5月25日に成立をいたしまして,6月1日より公布されているところでございます。文部科学省として今後,認定に必要な規定の整備等を進めていくということになっておりますので,こちらも報告でございます。
 3点目の報告でございますけれども,資料の5-3でございます。令和5年度魅力ある地方大学の実現に資する地方国立大学の定員増の選定結果というところでございます。こちらは,6月10日に公表してございますけれども,大学が地域貢献の役割や自らの存在価値を自覚し,地方公共団体,産業界,他の国公私立大学等を巻き込んだ上での取組を通じて,地方創生に資する魅力ある地方大学の実現のために,特例かつ限定的に実施する制度,でございますけれども,こちらは今回,申請ケースは5大学,5件で,結果といたしまして,審査結果,3大学,3件というところでございます。別紙のほうで,それぞれの大学の取組の概要が出ておりますけれども,島根大学,広島大学,徳島大学で,3件が地方国立大学の定員増として認められているというところでございます。
 以上でございます。

【永田分科会長】  ありがとうございました。今,御紹介いただいたことで,何か気にかかることがあれば,御質問にお答えいたしますが,いかがでしょうか。よろしいですか。
 それでは,本日はこれで全体終了いたしました。御協力いただきましてありがとうございました。
 次回以降の予定等について事務局から申し上げます。

【髙橋高等教育企画課課長補佐】  本日も活発な御議論いただきまして,誠にありがとうございました。
 次回の大学分科会は,9月でございます。9月7日水曜日,14時から16時を予定しております。
 実施の方法については,また改めてお知らせいたしますが,本日,時間の都合上,発言できなかった内容等については,事務局のほうまで御連絡いただければと思います。
 以上でございます。

【永田分科会長】  以上です。本日は御協力ありがとうございました。
 9月にオンサイトでお会いできればと思います。それでは,お開きにさせていただきます。ありがとうございました。
 
―― 了 ――
 

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