大学分科会(第167回) 議事録

1.日時

令和4年5月17日(月曜日)14時~16時

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 大学設置基準等の改正について
  2. 高等教育行政に関係する政府の諸会議の動向等について
  3. その他

4.出席者

委員

(分科会長)永田恭介分科会長
(副分科会長)村田治,渡邉光一郎の各副分科会長
(委員)熊平美香,後藤景子,日比谷潤子,村岡嗣政,吉岡知哉の各委員
(臨時委員)相原委員,麻生隆史,安部恵美子,大森昭生,金子晃浩,川嶋太津夫,小林弘祐,小林雅之,清水一彦,須賀晃一,髙宮いづみ,千葉茂,曄道佳明,長谷川眞理子,古沢由紀子,益戸正樹,松下佳代,吉見俊哉の各委員

文部科学省

(事務局)増子高等教育局長,森田大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術政策連携担当),里見大臣官房審議官(高等教育局担当),合田大臣官房審議官(科学技術・イノベーション推進事務局),角田文部科学戦略官,笠原大臣官房文教施設企画・防災部技術参事官,山下高等教育企画課長,古田大学振興課長,柿澤高等教育政策室長,草野大学設置室長,髙橋高等教育企画課課長補佐,一色大学振興課長補佐,加賀内閣官房教育未来創造会議担当室主査ほか

5.議事録

【永田分科会長】  第167回の大学分科会を始めます。残念ながら,コロナが鎮静化しないのでWeb会議となっております。いつも申し上げますように,議論に支障のない状態で御参加という認識です。また,YouTubeにてライブ配信いたします。
 それでは,事務局から最初の連絡事項をお願いいたします。

【髙橋高等教育企画課課長補佐】  事務局でございます。本日はWeb会議及びライブ配信を円滑に行う観点から,御発言の際は挙手のボタンを押していただき,分科会長から指名されましたら,お名前をおっしゃってから御発言いただきますようお願いいたします。また,御発言の後は,再度挙手ボタンを押して表示を消していただきますようにお願いいたします。また,発言時以外はマイクをミュートにしていただくなど御配慮いただけますと幸いでございます。
 本日の会議資料については,次第のとおりとなっております。事前に委員の皆様にはメールでお送りをさせていただいております。
 以上でございます。

【永田分科会長】  ありがとうございます。本日は大きく分けて3つほど議題があります。最初は,質保証システム部会で取りまとめられた提言の中の,特に大学設置に関することに基づいて,設置基準の改正等についての審議を行います。
 2つ目は,総理大臣の下に置かれております教育未来創造会議の第一次提言と,内閣府CSTI教育・人材育成ワーキンググループの政策パッケージの最終取りまとめ,この2つを関連事項として御報告をいただいて意見交換を行います。
 3つ目は,来年の2月まで大学分科会は続きますが,今期の今後の話題についてということでお話をさせていただきます。
 それでは,最初に,大学設置基準等の改正について,まず事務局から御説明をいただいた後に議論をさせていただきます。事務局,お願いいたします。

【一色大学振興課課長補佐】  それでは,事務局より資料1,また参考資料1に基づきまして,大学設置基準等の一部を改正する省令案,骨子案について御説明をさせていただきます。
 まず,参考資料1の2ページ目でございますけれども,前回の大学分科会で吉岡委員から御報告いただきました質保証システム部会の審議まとめの概要を掲載しております。説明は割愛しますけれども,左下にあります(1)の大学設置基準・設置認可審査にあります「改善・充実の方向性」の項目で,大学設置基準等の改正の方向が示されておりますので,この方向を踏まえて,資料1の省令案骨子案を事務局として作成しておりますので,本日,こちらについて御審議をいただきたいということでございます。
 また,参考としまして,参考資料1の4ページ目から6ページ目にかけまして,審議まとめに書かれております大学設置基準の改正に関する記載と,現行の設置基準の関連規定を整理したものを参考として用意しております。
 また,7ページ目,8ページ目については,専任教員の見直しの関係,また,特例制度の関係について審議まとめを抜粋したものを掲載しておりまして,また,9ページ目以降には設置基準の各条文,現行の条文を記載しておりますので御参考にしていただければと思っております。
 それでは,資料1に基づきまして骨子案を御説明させていただきます。1.目的,また,2の基本的な考え方でございますが,これは質保証システム部会において御審議いただいた内容を踏まえまして整理をしておりまして,目的としましては,最低基準性を担保した上で,大学が創意工夫に基づく多様で先導性・先進性のある教育研究活動が行えるよう,大学設置基準等の改正を行うこととしております。
 2点目の基本的な考え方でございますが,学修者本位の教育の実現,また,社会に開かれた質保証を図ることとする方針に基づきまして,客観性の確保,透明性の向上,先導性・先進性の確保の観点を踏まえて,3ポツ以下の改正を行うことを整理しております。
 3ポツ以下が主な改正内容案として整理しているものでございますけれども,一でございますが,総則等理念規定の明確化でございます。大学教育は3つのポリシーに基づいて行われるものであること,また,内部質保証による教育研究活動の不断の見直しが求められることを理念上明確化するため,(1)ですけれども,入学者選抜,また教育課程の編成について,学校教育法施行規則に定める3ポリシーに基づき行うということ。
 また,2点目でございますが,(2)の総則の理念におきまして,現行の基準でも基準より低下した状態にならないことはもとより,その水準向上を図ることに努めるという理念が定められておりますが,その規定におきまして,自己点検・評価,認証評価の結果を踏まえ,不断の見直しを行う旨の明確化を図ってはどうかということで整理をしております。
 二でございますけれども,教員組織・事務組織等の再整理でございます。教員組織は第7条に,また,事務組織は41条以降に規定をされており,また,教員と事務職員等との連携・協働については2条の3ということで,各規定が分散した形で整理されております。これらの規定を一体的に整理してはどうかということで提言を受けておりますので,(1)でございますけれども,教員組織につきまして,事務職員等も教育研究活動に参画するということを明確化する観点から,名称を「教育研究実施組織」と改めまして,必要な教員及び事務職員等からなる組織を編成するという旨の規定を置いてはどうかということでございます。
 2点目は,その組織におきまして,教員と事務職員等の連携・協働の規定の趣旨を取り込みつつ,次のページに移りますけれども,教員の役割分担と連携のみを規定しております現行の教員組織に係る規定を改めまして,教員及び事務職員等の相互の適切な役割分担の下で協働しつつ,組織的な連携体制を確保し,教育研究に係る責任の所在が明確になるように整理してはどうかということでございます。
 なお,ここで教育研究実施組織でございますけれども,教育研究を行う具体的な組織であります学部,学科等とは異なりまして,あくまでここでありますのはそうした学部等が教員と事務職員等で構成されて,それらが連携,協働を果たしていくと,またそれぞれの責任の明確化を図っていくということを整理するものでございまして,学部等で行います教育活動の組織体の中に教員と事務職員が関わっていくことを明確化する趣旨でございます。
 3点目でございますが,事務組織に並ぶ形で規定されております厚生補導を行う組織でございますけれども,今日厚生補導の概念が分かりにくくなっているところもございますので,課外活動,修学,進路選択及び心身の健康に関する指導及び援助等ということで例示してはどうかということでございます。また,現行は専任の職員を置くということで規定されておりますけれども,この職員には教員や事務職員等を含むという広義の概念になっておりますので,専属の教員又は事務職員等を置くという形で明確化を図ってはどうかということでございます。
 4点目でございますが,事務組織についても,今日の役割の明確化を図る観点から,教育研究,厚生補導の円滑かつ効果的な業務の実施のための支援,大学運営に係る企画立案,当該大学以外の者との連携,人事,総務,広報,情報システム,財務,施設設備その他の大学運営に必要な業務を行うため,同様に専属の教員又は事務職員等を置くという形で規定を改めてはどうかということでございます。
 三でございます。基幹教員等に係る規定でございます。「一の大学に限り,専任教員となる」旨の規定が現行,専任教員として規定が置かれておりますけれども,クロスアポイントメント等の働き方の多様化,また,民間からの教員登用の促進の観点,また質保証の観点も踏まえまして,これを改め,新たに基幹教員として教育課程の編成その他の学部の運営について責任を担うことなど定義を明確化した上で,最低必要教員数の算定に当たりまして,複数の大学でも算定を可能とすること,また,非常勤の教員を算定できるのは4分の1までとすること,また,授業科目の担当については,主要授業科目は基幹教員に担当させるといったことなどの改正を行ってはどうかということでございます。また,ティーチング・アシスタントやスチューデント・アシスタントなどの指導補助者につきましても,条文上明示的に規定するとともに,教職員の研修に係る規定についても一体的に整理をしてはどうかということでございます。
 具体的には(1)でございますけれども,現行の専任教員規定が12条に定められておりますけれども,それに代えまして,授業科目の担当を規定しています第10条において,主要授業科目については原則として基幹教員に担当させるとしつつ,そこで基幹教員の定義の明確化を図り,括弧で,「教育課程の編成その他の各部の運営について責任を担う教員であって,当該教育課程に係る主要授業科目を担当する常勤の教員又は一年につき八単位以上の当該教育課程に係る授業科目を担当する教員」としてはどうかということでございます。
 2点目でございます。質保証の観点から,1年につき特定の学部において8単位以上の授業科目を担当する教員は,複数の学部において基幹教員の4分の1の範囲内で算定することができると規定を定めるとともに,現行規定では収容定員が別表に定める数に満たない場合,つまり小規模の学部等ですけれども,その場合においては2割の範囲内で兼任の教員に代えられるという規定がございますので,それらの関係を合わせて4分の1の範囲内にするという規定を置いてはどうかということでございます。
 3点目でございます。指導補助者に関する規定のことでございますけれども,それの明確化を図るということで規定を置いてはどうかということで,補助させることができるとしつつ,授業科目を担当する教員の指導計画に基づき,指導補助者に授業の一部を分担させることができる旨の規定を置いてはどうかということでございます。
 今日,各大学におきましてオンライン授業の進展等がございまして,その中で1人の教員が全てを担当するというのでなく,その教員の指導計画の下で,TAも含めて分担しながらチームとして教育を行っていくことも今日的には考えられることから,こうした規定の明確化を図るという趣旨でございます。
 4点目でございますが,教職員の研修規定を一体的に整理するとともに,5点目でございますけれども,先ほどの指導補助者につきましても必要な研修を行うということで,質保証を担保するということではどうかということでございます。
 四でございます。単位数の算定方法でございます。現行規定としまして,1単位の授業科目を45時間の学習を必要とする内容をもって構成することを標準とするという,この単位制度の根幹の考え方につきましては,現行の規定を踏襲するということですけれども,その計算方法につきまして,現在,講義と演習,また,実験,実習・実技ということで,それぞれ時間が分かれておりますけれども,その規定を改めまして,当該授業による教育効果,授業時間外に必要な学修等を考慮して,おおむね15時間から45時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもって1単位として単位数を計算するという旨の規定に改めてはどうかということでございます。
 五でございます。校地,校舎等の施設及び設備でございます。(1)でございますけれども,校地については現在,学生の休息のみが例示されている状況でございますけれども,これを校地の本来の趣旨であります教員と学生,学生同士の交流の場としての校地であり空地であるという役割についても明確化を図ってはどうかということ。
 (2)でございますが,運動場や体育館その他のスポーツ施設及び講堂並びに寄宿舎,課外活動施設その他の厚生補導施設ですけれども,これらについては必要に応じ設ける施設として一般化をするということで,学生に対する教育又は厚生補導を行う上で必要に応じ,運動場,体育館等の施設を設けるという旨の規定を置いてはどうかということでございます。
 3点目でございますが,校舎等の施設ですけれども,現在,会議室,学生自習室,学生控室など,詳細に各号で規定されています現行の規定を改めまして,他方で,教育研究上の機能として必要となる教室,研究室等については引き続き列挙しつつ,必要な施設を備えた校舎を有するということで一般化してはどうかということで,具体的には組織及び規模に応じ,教育研究に支障のないよう,教室,研究室,図書館,医務室,事務室その他必要な施設を備えた校舎を有するものとするという旨の規定を置いてはどうかということでございます。
 図書及び図書館につきましては,電子化,IT化の進展,また,今日の図書館の役割を踏まえた規定に見直す観点から,現行の規定では閲覧室,整理室等の紙の書籍のみを想定した施設に係る規定が第38条の4項,5項に定められておりますけれども,それらについては削除するとともに,教育研究を促進するため,図書,学術雑誌,電磁的方法により提供される学術情報その他の教育研究上必要な資料を図書館を中心に系統的に整備し,提供するという旨の規定を置いてはどうかということでございます。また,骨子案ということで記載はしておりませんけども,現行規定されております専門的職員等の職員の関係の規定も引き続き規定するということでどうかと考えております。
 六でございますけれども,教育課程等に係る特例制度でございます。教育課程等に係る事項について,その改善に係る実証的な成果の創出に資する先導的な取組を行うため特に必要があり,その取組を行う大学において,教育研究活動等の状況について自ら行う点検,評価及び見直しの体制の整備,教育研究活動等の状況の積極的な公表並びに学生の教育研究上適切な配慮がなされていると認める場合においては,文部科学大臣が別に定めるところにより,特例対象規定の全部または一部によらないことができる大学として認定するという制度を創設してはどうかということでございます。
 ここで,特例対象規定としましては,自ら開設の原則,また,1年間の授業期間,単位互換等の60単位上限,遠隔授業の60単位上限,校地及び校舎の面積基準を対象としてはどうかということでございます。これら特例の認定に係る申請や認定基準,また有効期間等々の手続関係の規定につきましては,別途告示以下で定めることとしたいと考えております。
 七でございますが,これまでが質保証部会で御提言いただいた内容を踏まえた改正でございますけれども,それに関連しまして,客観性の確保の観点等から整理をしたものでございます。1点目が1年間の授業期間でございますけれども,現行規定では,1年の授業期間は,定期試験等の期間を含め35週にわたることを原則と規定されております。ここで,定期試験等の方法ですけれども,現在その方法は多様化しておりますし,また,1年間の授業期間が35週,その中に試験が含まれることは明らかでございますので,この「定期試験等の期間を含め」という条項については,わざわざ規定する必要はないのではないかということで削除してはどうかということでございます。
 2点目の各授業科目の授業期間でございますけれども,現行では10週,15週を原則としておりますけれども,4学期制も加えて例示する形で改めてはどうかということで,8週,10週,15週,その他の大学が定める適切な期間を単位として行うということで一般化を図ってはどうかということでございます。
 3点目でございますが,単位の授与については,現行規定では「試験の上単位を与える」と規定されておりますけれども,この試験につきましても,レポートによる学修評価等も含めて試験として認めておりますので,非常に多様な学修評価が現行制度でも認められております。このため,その実態に合わせまして,一の授業科目を履修した学生に対しては,試験その他の大学が定める適切な方法により学修の成果を評価して単位を与えるという形に改めてはどうかと考えております。
 4点目は,質保証システム部会でも御提言いただいておりますけれども,大学設置基準には卒業要件を定める在籍年数として4年以上というのが規定されております。他方で,学校教育法において修業年限は4年と規定されておりますけれども,4年以上ということで設置基準に書かれていることもございますので,この4年を少しでも下回ったら駄目なのかということで分かりにくくなっているところもございますので,おおむね4年の期間を示すものであって,厳密に4年間在籍することを求めるものではないということを明確化する観点から,大学設置基準上の在籍年数の4年以上という規定は削除してはどうかということ。他方で,各大学におきまして卒業要件は別途定めておりますが,それが今,現行規定は見える形になっておりませんので,十分条件を記載するという観点から,大学が定める要件を満たすという趣旨の規定も置いてはどうかと考えております。
 8点目でございますけれども,大学通信教育設置基準の改正でございまして,印刷教材等による授業に関し,物理的方法のみならず,クラウドを含むインターネット等による教材提供が可能であるということ,また,放送授業に関し,オンデマンドでの映像教材配信など,インターネット等を通じた映像,音声等の提供が含まれることを明確化してはどうかということでございます。
 その他,専門職大学設置基準や大学院設置基準,また短期大学設置基準等々,関係する設置基準もございますけれども,それらにつきましては関連する所要の改正を行ってはどうかと考えているところでございます。
 説明が長くなりましたけれども,以上でございます。御審議,どうぞよろしくお願いします。

【永田分科会長】  ありがとうございました。それでは,内容がかなりたくさんあったので,分からないところはもう一度確認しつつ,御意見を賜りながらの進行になると思いますが,御質問,いかがでしょうか。
 麻生委員,どうぞ。

【麻生委員】  麻生でございます。質保証部会で出てきた内容が具体化されていてよく分かるのですが,その中で,2ページの三の(1),基幹教員に関する内容については,基幹教員の定義が明確にされておりますが,基幹教員自体は誰が決めるのかということが1つ疑問であるのと,現在ある教授,准教授,講師,助教の中で,基幹教員になった教授は基幹教員教授等という名称として,この設置基準が変わったら使われるようになるのか,これをお尋ねしたいです。よろしくお願いいたします。

【永田分科会長】  事務局,どうぞ。

【一色大学振興課課長補佐】  1点目の御質問でございますけれども,現行の専任教員を誰が決めるのかということと同様でございまして,これは各大学が決めることになります。他方で,設置認可審査におきまして専任教員の妥当性については確認されておりますので,同様に設置認可審査においても基幹教員の妥当性は確認されることとなります。
 2点目でございますが,名称につきまして,現行,各大学で実際に「専任教員」という言い方をされているかどうかということにもよりますけれども,「基幹教員」という言い方をされることもあるかもしれませんけれども,それぞれ教授や准教授など,職階のほうを通常使われているかと思いますので,各大学の中で名称を適切に使われるということだと考えております。

【永田分科会長】  麻生委員,よろしいでしょうか。

【麻生委員】  はい。

【永田分科会長】  ありがとうございます。
 大森委員,どうぞ。

【大森委員】  ありがとうございます。大森です。文言の部分と内容に関する質問と2つあります。
 1つは文言で,1ページ目のところの2「基本的な考え方」で,「『学修者本位の教育の実現』をはじめとする考え方」というのが,はじめとするどんな考え方って,この「はじめとする」が文章としてちょっとどうかなという。ちょっと違和感があったということで,これは御検討いただければということです。
 同じ1ページの3の(2)で自己点検・評価,これ,結果を踏まえてなので,このプロセス自体が内部質保証だとは思うのですが,最近は内部質保証という表現が主流になってきている中で,そっちをうまく使ったほうがいいのかどうかという検討をいただければと思ったところです。これは確認です。
 2ページ目の(3)のところで厚生補導の内容を明確にしていただくということで具体例を出していただいているのですが,例えば,過去のいろんな定義とかを見ると,修学支援とかいろいろあるのですけど,これは修学に全部,あるいは学生の学籍とか懲戒とかそういうのも修学に入るという理解でよろしいのかという質問です。
 そこまでは文言なのですが,三の基幹教員のところ,やはり私も確認をしたいところです。三のところに複数の大学での算定も可能にし,非常勤の教員の算定できるのは4分の1までとするということは,複数の大学にいる基幹教員は常勤教員で,そのほかに非常勤の教員もいると読めると思いますが,その理解でいいかどうか。常勤の先生は,8単位はなくても常勤として認めることができるとも読めてしまうかなと思っていて,非常勤の場合は8単位以上ないと駄目ですけれども,常勤は何単位という規定はないけど,この人は常勤ですと言えばいいと読めるかなという,そこら辺,整理をもう少し明確にされたほうがよくて,もう1つは,その後に出てくる学部の共通なんですけど,同じ4分の1というのは,4分の1が2つあって,非常勤も4分の1以内ですよ,それから,学部で共同するのも4分の1以内ですよということの理解でいいのか。学部をまたがる先生は非常勤扱いなのか,4分の1,4分の1が出てくるのでというところです。専任と非常勤の基幹教員というのがもう少し分かるように書けるといいのかなって感じたのですが,ちょっと確認をさせてください。そこの関係性はどうなっていましたでしょうか。
 以上です。

【一色大学振興課課長補佐】  ありがとうございます。まず,1点目の1ページ目の「はじめとする」というところについては,表現は工夫させていただきたいと思います。
 2点目の自己点検・評価に関するところでございますけれども,現在,教学マネジメント指針を含めまして内部質保証ということは広く言われておりますけれども,現行法令上,内部質保証というものがないことと,自己点検・評価につきましては学校教育法にも規定されておりますので,ここで設置基準に内部質保証を置いたときに,そうすると,学校教育法上での自己点検・評価,認証評価結果を踏まえた見直しというところについての関係性が逆に分かりにくくなるところもありますので,法令の整理としまして,関係する法令と同じ用語を使っていくということのほうが,紛れがないというか,適切ではないかということで整理しているものでございます。
 3点目の厚生補導につきましては,先生の御指摘のとおり,修学に含まれるということで考えております。
 4点目の基幹教員のところでございますけれども,御質問が明確に聞き取れてなかったかもしれませんけれども,基幹教員としましては,まず第一の要件として,教育課程の編成その他の学部の運営について責任を担うことが条件となります。その条件を満たした上で,当該教育課程に係る主要授業科目を担当する常勤の教員若しくは,1年につき8単位以上の教育課程に係る授業科目を担当する教員のいずれかであれば基幹教員になれるということでございます。ですので,基幹教員につきましては,必ずしも8単位なかったとしても,主要授業科目を担当していれば常勤教員となれるということでございます。
 また,4分の1のところについては,御指摘のとおり,少し分かりにくいところもございますので,改めて御説明しますと,1年につき8単位以上担当する教員については4分の1までということで,ここの教員には常勤も非常勤もあり得るんですけれども,非常勤の場合について4分の1になるということの規定を置きたいと考えております。また,学外も含め,また学内も含めて,複数のところでカウントできるものにつきましては8単位以上というところになりますので,それについては同様に4分の1の範囲内で算定するということの整理にしたいと考えているところでございます。少し表現等,分かりにくいところもあるかと思いますので,そこはまた改めて整理したいと思いますけれども,趣旨としてはそういう趣旨で記載しているものでございます。

【大森委員】  複数の大学や複数の学部で基幹教員になっている先生は,8単位以上持ってないと基幹教員にはなれませんよということで,その先生たちは,ここで言う非常勤の先生になるんでしょうか。

【一色大学振興課課長補佐】  例えば,Aの大学として常勤だけれどもBの大学として非常勤ということはあると思いますので,Bという大学で8単位以上持っているかどうか,また,教育課程の編成等に責任を持っているかどうかというところになるかと思います。

【大森委員】  では,AとBで両方を専任扱いにするということはあり得る……。

【一色大学振興課課長補佐】  はい,あり得るということです。なので,複数の大学,企業等で勤務している方も対応できるようにするという制度化しております。

【大森委員】  そうすると,両方の大学で専任だったら4分の1規定には当たらないということになりますよね。

【一色大学振興課課長補佐】  4分の1までというところについて,その条件を課すというところの規定は置きたいというところでございます。

【永田分科会長】  大森先生,よろしいでしょうか。

【大森委員】  はい。

【一色大学振興課課長補佐】  つまり,両方の大学で常勤ということはないかと思いますので,常勤は1か所になるかと思いますけれども,なので複数であるという場合については,どちらかが恐らく量的には単位数をちゃんと満たす条件が発生すると。

【永田分科会長】  同じ大学の違う学部だと両方とも常勤となる。

【一色大学振興課課長補佐】  それがございますので,それを(2)で表現しているものでございますけれども,要は,常勤であれば基幹教員となる場合に,AもBもCも全ての学部で基幹教員としてカウントされることがあっては適切じゃありませんので,その場合は,それぞれの教育課程に応じて8単位以上持っているということが条件になると法令として整理をしたいということでございます。ですので,8単位を持ってない常勤の教員については1しかカウントできませんけれども,複数の大学または学部を担当する場合については,8単位以上という要件が必要になってくるということでございます。

【大森委員】  文学部の先生が,例えば経済学部で8単位を持っていれば基幹教員になれますよとなったときに,経済学部では常勤としてはカウントできないんですね。

【一色大学振興課課長補佐】  はい,そういう形の規定にしようということでございます。常勤というのは,大学における常勤ということになりますので。

【永田分科会長】  同じ大学であればどちらでも常勤である。

【一色大学振興課課長補佐】  つまり,常勤の教員としてカウントできるのは1ですけれども,2つ目の,例えばA学部,B学部というときに,B学部でもカウントするためには,B学部の教育課程として8単位以上持っていることが必要であるということ。

【永田分科会長】  ですから,その条件でどちらも常勤となる。

【一色大学振興課課長補佐】  はい。おっしゃるとおりです。

【大森委員】  どちらも常勤なんですね。

【永田分科会長】  はい。

【一色大学振興課課長補佐】  常勤という意味で言えば,同一の大学で働いていれば常勤なので,その場合はA大学もB大学も常勤ではあるんですけれども,常勤としてカウントできるものは1のみにして,複数の学部で算定するときには8単位以上という条件を課すことになるということでございます。ちょっと分かりにくくて申し訳ありません。

【大森委員】  それで4分の1なんだ。なるほど。複数の大学で,大学で別々に,こっちも常勤です,こっちも常勤ですということはあり得ませんという理解でいいんですね。

【一色大学振興課課長補佐】  おっしゃるとおりです。

【大森委員】  どっちかは非常勤になるけど,4分の1以内の基幹教員にカウントすることはできるようになるよということですね。

【一色大学振興課課長補佐】  おっしゃるとおりでございます。

【永田分科会長】  よろしいですか。

【大森委員】  はい。ということが分かりやすくなるといいなと思っております。

【一色大学振興課課長補佐】  条文上,分かりやすくなるように工夫をしたいと考えております。

【大森委員】  ありがとうございます。

【永田分科会長】  金子委員,どうぞ。

【金子委員】  発言の機会をいただきまして,ありがとうございます。今回の骨子案の取りまとめをされた事務局に敬意を表したいと思います。その上で,改正内容の運用について2点と,今後の改正に向けて1点申し上げたいと思います。1点目と2点目は,今話題になっています専任教員のところになるんですけれども,今回の改正に当たって,前々回だったと思うんですけれども,分科会の中で私から発言させていただいた懸念については,質保証システム部会の審議まとめにも反映いただいたということで,この点は感謝申し上げたいと思います。
 今回の改正の目的にあります多様で先導性・先進性のある研究開発が行えるようにするという趣旨,これは本分科会の委員の先生方の大学をはじめ,多くの大学ではメリットとなって,また全く問題ないものであるとは十分理解をしているんですが,一方で,大変多くの大学がある中で,それぞれの大学で教育の質がしっかり担保されるかという観点から見ますと,とりわけ小規模の大学においては,大学設置の最低基準というものが引き下げられるんじゃないかと,そういった若干の懸念を持っているところであります。
 そこで,この骨子ということではないんですが,運用に当たっては,基幹教員が本当に学部の運営に責任を担っているのかとか,悪意はないにしても,財政上の理由から,教員の待遇引下げの方便となっていないかなど,事前または事後のチェック体制を厳密に実施していただきたいなというところが1点目です。
 2点目は,今少し話題にもなりましたが,非常勤教員の算定数を4分の1の範囲内で算定といったところになるんですけれども,これ,抑制的な基準であるということで評価したいと思うんですけれども,今後進む中で,さらなる緩和をしていこうというような議論がある際には,極めて慎重に取扱いをお願いしたいというのが2点目です。
 3点目は,3ページ目の五,校地,校舎などの施設や設備の改正についてになりますが,前回の分科会で次期教育振興基本計画の諮問文が示されたと思っています。その中で,幼児教育から大学院までの連続性,一貫性,さらには社会人の学び直しを含めて生涯学習を教育の柱とするという内容だったかと理解をしています。今回の改正は,設置に伴う最低基準という意味合いということなので,この中身自体は理解をしております。しかしながら,前回の分科会でも意見させてもらったとおり,地域学校協働活動と,地域連携プラットフォームの連携というのは,高大接続の観点から見ても,また,高卒で就職した人の学び直しの観点から見ても効果を発するものではないかと考えています。したがって,今後の議論の中では,学生に対する教育や厚生補導という観点にとどまらず,地域への開放,連携という観点もぜひ織り込んでいただければと思います。
 以上です。

【永田分科会長】  何かありますか,事務局。

【一色大学振興課課長補佐】  御趣旨を踏まえて,また整理をしたいと思っております。

【永田分科会長】  ありがとうございます。
 小林弘祐委員,どうぞ。

【小林(弘)委員】  よろしくお願いします。二の(2)の教育研究実施組織というのは非常にいい組織になるかと思いますけれども,1つは今,大学内では事務組織そのものを共通事務化する動きもありまして,各学部にそれぞれ総務とか人事とかそういったものがばらばらにあるよりは,1つにまとめて効率的な運営をしようという,そっちの方向に向かっているので,学部内に限るというのはちょっと難しいかと思うので,その辺の表現を少し工夫していただければと思います。
 3番目の基幹教員は,私は大森先生と同じように,ちょっと分かりにくいところがあったので,条文もいいんですけど,少し数字とか例とか,そういったものをふんだんに出していただいて,もう少し分かりやすくしていただければと思います。
 今,クロスアポイントメント制度がだんだん動き出していますけれども,私たちはまだ,エフォート20%以内であればクロスアポイントをやるんですけども,それがだんだん,だんだんエフォート率が5割とかって増えてきてしまうと,健康保険をどこが持つかとか福利厚生,年金をどこにするかとか結構難しい問題が出てくるかと思いますので,国立大学の間だけでは多分大丈夫だと思うんですけども,組織の枠を超えた仕組みも,この会でやることかどうか分かりませんけれども,省庁を少し横断的に検討していただければと思います。これが基幹教員についての私の意見です。
 あと,図書についてなんですけれども,IT化も進んで,だんだん図書もペーパーレスになってきて,どこからでもアクセスできるような図書館,ジョージア工科大学なんてついに,紙の本を全部廃止というような,かなり先進的なことも米国ではやり始めているんですけど,そのときに司書の役割,今,図書館には司書を必ず置かなければいけないという要件があるかと思うんですけど,そこは今後,制度的にどうなのかということを確認したいと思います。
 あと,八のオンデマンドの教育のことなんですけれども,前,村田先生もおっしゃっていたかもしれませんけど,学生によっては3倍速で見たり,同時に複数の授業を受けたことにしたり,結構効率的にやっているというか,そういったものをどうやって防いでいくかも1つ問題になるかと思います。
 以上が私の質問と意見です。

【永田分科会長】  設置の基準のところではないかもしれないものが入っていましたが,事務局,どうぞ。

【一色大学振興課課長補佐】  ありがとうございます。まず,1点目のところで,分かりやすい表現と思いまして,学部ということを例には出しましたけれども,規定上は「学部」という言い方はしない形にします。逆に言えば,学部の中に個別に置くこともできますし,大学横断的に置くこともできる。概念として,教育研究を実施する際に,教員と事務職員が一体的にやっていくんだということ,それは概念ですので,横断的なものもあれば個別にやるということもできる。いずれにしろ,そこではしっかりと協働,連携していただくという趣旨の規定を置くというところでございます。
 2点目の基幹教員のところは,先ほどの御指摘のとおり,分かりやすくしたいと思っておりますけれども,御指摘のとおり,必ずしも設置基準ではないかもしれませんけれども,それらについても引き続き様々考えていくこと,また,分かりやすくしていくことも必要かとは考えておりますので,引き続き検討したいと考えております。
 図書につきましては,司書の役割でございますけれども,現行の規定は,資料上は明記しておりませんでしたけれども,先ほど御説明させていただいたとおり,現在の規定については引き続き残すということで考えております。
 最後のオンデマンドにつきましては,通信に限らず遠隔授業全般ということかと思いますけれども,オンデマンドでありましても,やはり学修後の適切な指導は必要となりますので,指導という形でどうやって担保していくかというところが重要になるかと思います。単位制度としましては,1単位45時間という学修内容を標準とするのは基本的な考えでございますので,授業として行う部分,また授業外として行う部分,併せて十分な学修が行われているかどうか,それも各大学はしっかりと確認し,運営していくことが基本でありまして,それを内部質保証等で確認していくことが基本かと考えているところでございます。

【永田分科会長】  ありがとうございます。
 小林雅之委員,どうぞ。

【小林(雅)委員】  ありがとうございます。私も,多くの委員の方からもう既に出ておりますけれど,基幹教員に関連して,少し設置基準を離れて意見を申したいと思います。といいますのは,今の御説明ですと,一の大学で常勤ということしかないことになると,クロスアポイントとの関係がよく分からなくなってしまうわけで,小林弘祐委員からもありましたように,今,保険や年金の関係とかでどうしても,例えば国立大学と私立大学では共済が違いますから,どちらかに属さざるを得ないことになっています。ですから,そういう意味で言いますと,それが常勤だという意味ならそれでいいですけれど,ただ,クロスアポイントメントのために基幹教員をわざわざつくるという趣旨だったと思いますので,そうしますと,それが常勤ではないという言い方だと,一つの大学のみ教員で,両方の大学で教員になっていないという意味に取られかねないので,その辺,少し整理していただきたいと思います。
 それに関連しまして,少しはみ出ると申し上げたのは,質保証については,質保証システム部会の報告でありましたように,設置基準だけではなくて,認証評価と情報公表が非常に重要な役割を果たしているわけでありまして,先ほど麻生委員からもありましたけど,「基幹教員」という名称は,専任教員もそうですけれど,特に公表されていないわけです。ですから,誰が基幹教員かということは実は分からないというようなことになると思います。それでは,やはり透明性という意味で非常に問題があると思いますので,大学情報の公表の中に基幹教員を明示するようなことも検討していただきたいと思います。
 以上です。

【一色大学振興課課長補佐】  ありがとうございます。基幹教員のところは非常に分かりにくいところで,先生方から御質問等々いただいて大変恐縮でございますけれども,御指摘のようなところも含めて整理が要るのかなということ,他方で質保証の観点もありますので,法令上の効果としてどうであるかということと言い方,表現の仕方,その辺の工夫を考えたいと考えております。
 また,情報公表の関係でございますけれども,審議まとめにおきましても,基幹教員の情報等については常時公表して,外部から検証を受けられるようにすべきじゃないかという御指摘も受けておりますので,現行規定でも,教員や組織に関しては情報公表することは施行規則上求められておりますので,具体的に各大学に対して,どんな形で情報公表を求めるか,また,通知等も含めて工夫して対応してまいりたいと考えております。

【永田分科会長】  清水一彦委員,どうぞ。

【清水委員】  ありがとうございます。基幹教員については,九州大学のある教授から名刺を頂いたときに,既に「九州大学基幹教授」となっていました。通常の専任教員(教授)とは区別して「基幹教授」と使っている大学があるということを最初にお知らせしておきます。
 それとは別に,単位制度の運用基準,単位の計算方法とか単位の授与とか,あるいは卒業制度に関わる単位の運用に関して,その運用基準が大幅に改正されており,これは思い切った改革だと私は考えております。昭和31年の設置基準制定以来,65年ぶりの単位制度の改革ではないかと私は思っております。その意義は,単位制度の量的な規定から,質保証というか,質の規定が加わってきたという点が最も大きな改正点であって,これは戦後の大学史上,画期的な出来事であると私は評価しております。
 問題は,これによって各大学の裁量が非常に拡大されますので,特に学修成果の把握とか可視化とか質保証をどう担保していくかというのは今後大きな課題になっていくと思います。そのためには,今回の単位制度に係る大幅な改正の基本方針と3つの原理原則,これを踏まえた周知を徹底する必要があると思います。伝達講習的なものも必要かと思いますし,あとは認証評価機関の役割が非常に重要になってきます。ですから,その辺の周知徹底と今後の認証評価の在り方について,文科省も含めた形で,いろいろと研修の機会などを設けていく必要があると考えております。
 以上です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。そのとおりだと思います。
 吉見委員,どうぞ。

【吉見委員】  ありがとうございます。大きな話を1つと,細かいことを1つ発言させていただきます。大きなほうは,先ほど来議論になっております基幹教員のことですけれども,私も小林雅之先生と同じ方向の発言になりますが,ここに基幹教員の設置,つまりこれまでの専任教員を基幹教員に転換することの理由として挙げられているのは,クロスアポイントメント等の働き方の多様化や民間からの教員登用の促進ですね。つまり,大きな流れで言えば,これはいわゆるメンバーシップ型からジョブ型への転換という,我々の働き方そのものの転換を視野に入れた方向の政策と受け止めております。
 そういうことからすると,やはり基本的な方向としては,複数の大学で基幹教員として常勤で教育にたずさわることを認める方向が,この制度の主旨からして,本来あるべき形だと思います。今までのように,片方が常勤で片方が非常勤となってしまうと,じゃあ,そもそも何で基幹教員という名前にするのかという,そのそもそもの意味が非常に曖昧になります。あえて専任教員ではなく基幹教員という概念で,複数の大学で基幹的な仕事をしていく。その人が非常に有能ならば,つまり十分な能力を持っているならば,それらを同時に,常勤として,基幹教員として仕事をすることは十分にあり得る,それが当り前の社会に日本を変えていく。それがこの改革のそもそもの主旨なのですから,そういうふうに一歩,ぜひ踏み出していただきたいというのが私の意見でございます。
 あと,小さいほうの意見ですけれども,「厚生補導」という言葉です。これ,もともと戦争の時代というか,戦中期に使われていた言葉が戦後応用されていったもので,これはつまり,1950年代にアメリカからSPS,スチューデントパーソナルサービスでしたでしょうか,そのSPSという考え方が導入されて,このSPSに相当する言葉が日本語になかったものだから,かなり含意が違うと思うのですが,「厚生補導」という言葉がその訳として,戦前からのニュアンスを引きずりながらそのまま使われていった。しかし,「厚生補導」という日本語は,イメージが非常によくないですよね。本来の,SPSの考え方をこの日本語は表現していないと思います。ですから,重要なのはSPSのほうなのですから,そろそろ別の日本語の訳に変えていくということを,ぜひ御検討いただければと思います。

【永田分科会長】  ありがとうございます。
 それでは,松下委員,髙宮委員,相原委員,この3名までとさせていただきます。どうぞ順番にお願いします。

【松下委員】  大きく2点です。1点目は今の基幹教員のお話なんですけれども,ここでは基幹教員というのは,あくまでも教育課程の編成や学部の運営,授業というようなことで書かれているんですけれども,教員は,授業関係以外も様々な任務を担っていると思うんですが,基幹教員か否かというのは,そのうちの教育という仕事についてのみ規定されるのかということを確認させてください。多分そうなんだと思いますが,そこを確認させてください。
 2点目は,三のTA,SAのところです。普通,TAというのは多くの場合,大学院生,SAの場合は学部生がやる場合が多いと思うんですけれども,十分な教育効果を上げることができると認められる場合は授業の一部を分担させることができると書かれているんですが,これはSAもそうなのかということが1点目。
 2点目は,十分な教育効果を上げることができると認められるというのはどういうふうにして判定されるのかということ。
 3点目は,授業の一部を分担させる。これまでふつうTAは授業を行うことはできないとなっていたかと思うんですが,一部を分担させるという場合,範囲などは決められていないのか。ここは設置基準で決めるのではなく,各大学に任せるのか,それとも,何らかのTAの研修を一定義務づけた上で,その研修を受けた者に限りとかといったような条件などを規定で決めるのか,その辺りをお知らせください。よろしくお願いします。

【永田分科会長】  これは答えてもらったほうがいいので,事務局,どうぞ。

【一色大学振興課課長補佐】  まず,基幹教員の範囲ですけれども,教育のみ規定されるのかということですが,設置基準で別表のところで,そもそも現行の専任教員ですけれども,授業は持たない教員を置くことができるという規定がありまして,そこで数えられる専任教員は別表の数に含まないという整理が現行の設置基準上されています。ですので,必要最低数としての基幹教員というものにおきましては,同様に,これ,教育を想定しているものということで,教育を中心とした教員ということで考えているものでございます。ですので,例示として教育課程の編成等というのが第一ということでしているものでございます。
 2点目でございますが,SA,学部生等が想定されるものでございますけれども,これについても,大学において,また授業科目を担当する教員において十分と認められるような場合ということで考えているものでございます。また,その分担等でございますけれども,最終的に授業科目の設計,運営,また成績評価等については,授業科目を担当する教員その者が行うものであり,その教員の指導計画に基づいて行われるものですけれども,その指導計画に基づいて,一部をTA等に委ねる,分担することは任せられるという規定でございまして,その範囲については各大学が判断することと考えています。
 また,3ページ目の三の(5)でございますけれども,特に教員以外の学生等の指導補助者につきましては,ある意味,研修を行うことを必須としますので,そのような分担が行える指導補助者につきましては,研修を事前に受けておくことが要件となります。
 以上でございます。

【松下委員】  了解しました。

【永田分科会長】  髙宮委員,どうぞ。

【髙宮委員】  ありがとうございます。まずは,質保証システム部会の先生方,ここまで非常に有意義なことを全部含めて落とし込んでくださいまして,誠にありがとうございました。その上で,2つほど指摘させていただきたいと思います。
 1つは,教育研究実施方式,あるいは大学全体の運営やガバナンスとの関係についてでございまして,先ほどから何度か出ておりますように,基幹教員という概念を使うことによって,大学の今までの専任教員という扱いから大分形態を変えてくるように思います。複数の先生が恐らくはほかのところに所属し,ある大学で基幹教員として働くことになった場合に,実は大学としては,先ほど松下委員からも御指摘ありましたように,学生指導を含めて,多様な運営上の仕事がございまして,ここにエフォートを割かなくてもよい教員が増える可能性が考えられるのではないかと思います。
 例えば,職員等々によって補って,無事にガバナンスがうまくいくケースもありますでしょうけれども,設置の段階である程度,授業運営何単位と決められておりましたけれど,それ以外の大学への全体的な影響について,一応,何かしらチェックをするような方策があったほうがよろしいのかなと思いました。例えば,エフォートについて考える等々のことがあってもいいのかなと思いました。これが1点でございます。
 もう1つは,基本的な考え方の中に,大学設置基準以外にも,質保証システムとして認証評価の問題と情報公表の2つが挙げられております。恐らく,この2つ,先ほど,認証評価のことが重要性を帯びてくると指摘されておりましたけれども,さらに情報公表について,かなりオープンなシステムを全体として構築していかないと,非常に自由度の高い大学経営が可能になった分,比べるのも難しい状況が生じると思いますので,公表についての工夫が今後何かしら求められてくるかなと思いました。
自由度が増えた分,何かしらストッパーのようなことも少し事前に考えておく必要があるかと思って,2つ挙げさせていただいた次第です。
 以上でございます。ありがとうございました。

【永田分科会長】  ありがとうございます。
 相原委員,どうぞ。

【相原委員】  私は,1点だけ確認させてください。遠隔授業の60単位というのは,これが適切かどうかということは,どこかで議論を十分に尽くされたのかどうかを伺いたいと思います。といいますのは,4年制の大学だけではなくて,医学,薬学,獣医学というように6年制の大学がございますし,そういう大学というのは,感染症が,まん延防止までいかなくても,広がっているときには,できるだけ遠隔授業でやりたいということもありますので,考え方を確認させていただきたいと思いました。
 以上です。

【永田分科会長】  そこは吉岡委員,お願いいたします。

【吉岡委員】  60単位という枠組みについては,現在のコロナの場合もそうですけれども,60単位という枠はかかっておりますけれども,実際の授業のところでどういう授業をやるかについては,かなりの部分まで各大学の判断といいますか,仕組みに任されていると言えると思います。一色さん,そこの部分の構造の説明をお願いします。

【一色大学振興課課長補佐】  参考資料1の一番最後の45ページ目でございますけれども,遠隔授業について,先ほどのようなコロナ,また震災等々ありまして,対面授業が行えない場合,そういった非常時においては,これまで通知等をしておりますけれども,各大学の状況の判断におきまして,遠隔授業の60単位の中に算定しなくてもよいということの考え方を示しているものでございます。
 他方で,いわゆる平時における遠隔授業を実施する際にどこまで認められるかということについては質保証システム部会で御審議があったところではございますが,そこについては,直ちに全てその基準を撤廃するのは早計ではないかといった議論もあったことから,今回,特例制度の中でしっかりと質保証がされた大学において取り組む部分について,実験的にやってはどうかということで御提言を受けたところでございます。
 以上でございます。

【吉岡委員】  分かりました。

【永田分科会長】  皆さんのポイントは基幹教員のところに集中しているわけです。もう一度考えたいのですが,金子委員は労務上の問題としてきちんとやりなさいという御意見だったと思います。それはなぜかというと,経営上の節約をこれで図られてはかなわないからであって,それと同時に過重な労働負担にならないようにしたいからです。この委員会の委員の先生方は,真っ当な大学運営をされる方々ですが、設置審議会の委員長はどのように見ているかというと,本当にこの基幹教員について正しく教えられるのだろうかと見ているわけです。それは個人の能力によるので,この人がA,B,C大学で,もう10単位以上頑張って教えていたりするかもしれない。それはできるのかと言っても,申請主義的に言えば,可能です。そうすると,皆さんが心配されている教育の質の保証は誰がするのか,どのような段階でするのか。設置審議会に関わっていれば分かりますが教員認定のときにかかっています。あとは全部,各申請者の良識に従ってやっているわけです。
 清水委員と吉見委員が言われた大改革,私はこれを議論する前に申し上げましたが,あなた方は歴史に残る名前になると文科省の事務方に言いました。そのような改革です。非常に自由度が増して,高等教育がとても発展する方向に向いたが,一方で,ここにいる委員には想像もできないような大学もあります。しかし,その大学を申請主義的に見れば落とせません。そのような意味合いで,本当におっしゃったとおりに,効果的な形で教育に携わっていただけるかどうかということを,見る方法がない。はっきり言っておいたほうがいいと思いますが,現在の設置審議会でそれを見ようと言っても,無理だと思います。そうすると,5年,7年たった後に,認証評価のときに項目を設けて,ヒアリング等を行って徹底的に洗い直すわけですが,それは設置してから,数年後になります。
 そのような問題は,性善説に立っているので,どんどん緩和されて,いろいろなことができるのは良いことなのですが,ここにいる委員の方が設置審議会で審議されるときにどんな気分になるのかという気持ちになって聞いていました。吉岡委員と村田委員のお二人は,どちらも設置審議会の委員を長年務められており,いろいろと経験されています。紙に書かれたことと現実が乖離しないように,省令等でうまく制限できるように考えないといけない。とにかく,学生たちが不幸にならないようにしないといけないと思います。
 要するに,労務上の問題,経営上の問題,学習の水準をどのように保つかということを皆さんおっしゃっています。今後,きちんとチェックできるシステムをつくってくださいと,皆さん,異口同音におっしゃったと思います。関連して一言申し添えておきます。我が国にいる大学教員のデータベースはありません。ですから,個別に申請の中身を1つずつ当たるしかないので,その大変さを考えると,緩和されたことはいいことであるが,大変です。文言の中にも,主要授業科目以外の授業科目によっては,「なるべく基幹教員に」と記載されていますが,「なるべく」とはどの程度か,多分相当な議論になります。「なるべく」をどう解釈するかということなので,法文は法文ですが,ぜひとも緻密に文言を考えていただきたいと思います。この議題につきましてはまた出てくると思うので,そのときにまた議論させていただきます。
 次に,高等教育行政の最近の動向です。2つの大きな会議からの報告をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【柿澤高等教育政策室長】  それでは初めに,資料2-1に基づきまして,教育未来創造会議第一次提言について報告をさせていただきます。高等教育政策室長の柿澤でございます。
 教育未来創造会議でございます。内閣総理大臣を議長とする会議で,官邸に設けられているもので,こちら,以前も中間まとめの段階で御報告をいたしましたけれども,令和4年5月10日に第一次提言が取りまとまったところでございます。こちら,資料2-1の概要を御覧いただきますと,人材育成を取り巻く課題というところが述べられております。ここに書かれております課題を踏まえまして,基本理念として,日本の社会と個人の未来は教育にある。人への投資を通じた成長と分配の好循環を教育・人材育成においても実現し,新しい資本主義の実現に資すると。こうした基本理念の下で,ありたい社会像として,一人ひとりの多様な幸せと社会全体の豊かさを実現,ジェンダーギャップや貧困など社会的分断の改善,社会課題への対応,SDGsへの貢献,生産性の向上と産業経済の活性化,全世代学習社会の構築,こういったものをありたい社会像として設定されているということでございます。
 また,目指したい人材育成としまして,自分自身で課題を設定して,考えを深く掘り下げ,多様な人とコミュニケーションを取りながら,新たな価値やビジョンを創造し,社会課題の解決を図っていく人材ということで,今後特に重視する人材育成の視点としまして,文理の壁を超えた普遍的知識・能力を備えた人材育成などが掲げられているということでございます。また,現在,35%にとどまっている自然科学分野の学問を専攻する学生の割合を,5割程度にすることを目指すなど,具体的な目標設定といったところも,こちらの第一次提言に記載があるところでございます。
 具体的な提言事項につきましては,資料の2枚目を御覧いただければと思います。まず(1)でございますが,「進学者のニーズ等も踏まえた成長分野への大学等再編促進・産学官連携強化」というところでございます。1つ目の固まりとしまして,デジタル・グリーン等の成長分野への再編・統合・拡充を促進する仕組みの構築ということで,規制の緩和ですとか再編に向けた初期投資などや開設年度からの継続的な支援等々が記載されております。また,教育の質や学生確保の見通しが十分でない大学等の定員増に関する設置認可審査の厳格化,私学助成に関する全体の構造の見直し等も含まれてございます。
 そのほか,ここの固まりで言いますと,高専,専門学校,大学校,専門学校の機能強化ですとか,大学の教育プログラム策定等における企業・地方公共団体の参画促進,地域のニーズに合う人材育成のための産学官連携強化といったことも盛り込まれているところでございます。
 次に,(2)としまして,「学部・大学院を通じた文理横断教育の推進と卒業後の人材受入れ強化」でございます。こちら,STEAM教育の強化,文理横断による総合知の創出ということで,具体的には文理横断の観点からの出題科目の見直しですとか,ダブルメジャー,レイトスペシャライゼーションを推進するためのインセンティブ付与などが盛り込まれております。また,出口での質保証の強化という観点からは,設置基準の見直しなど,ST比の改善による教育体制の充実などが盛り込まれているところでございます。そのほか,大学院教育の強化,博士課程学生向けジョブ型研究インターンシップの検証等々も盛り込まれているところでございます。
 次に,資料2ページ,右側になりますけれども,「理工系や農学系の分野をはじめとした女性の活躍促進」というところでございまして,女性活躍プログラムの強化ということで,女子学生の確保等に積極的に取り組む大学への支援です。また,官民共同修学支援プログラムの創設,女子高校生の理系選択者の増加に向けた取組の推進などが盛り込まれております。
 次に,(4)としまして,「グローバル人材の育成・活躍推進」ということで,コロナ禍で停滞した国際的な学生交流の再構築,産学官を挙げてのグローバル人材育成,これは「トビタテ!留学JAPAN」の発展的推進といった話。また,高度外国人材の育成・活躍促進等が盛り込まれております。
 (5)でございますが,デジタル技術を駆使したハイブリッド型教育への転換ということで,知識と知恵を得るハイブリッド型教育への転換促進の中には,ただいま設置基準改正での説明もございましたオンライン教育の規制緩和特例の創設なども盛り込まれているところでございます。
 また,(6)としまして,大学法人のガバナンス強化ということで,社会のニーズを踏まえた大学法人運営の規律強化,世界と伍する研究大学の形成に向けた専門人材の経営参画の推進などが盛り込まれております。
 (7)は初等中等教育の関係でございますが,文理横断教育の推進,個別最適な学びと協働的な学びの一体的な取組の推進,課題発見・解決能力を育む学習の充実のほか,先ほど申し上げた,女子高校生の理系選択者の増加に向けた取組の推進など,また,子供の貧困対策なども盛り込まれているところでございます。
 次に,資料の3ページを御覧いただければと思います。未来創造会議の大きな検討事項は3つ固まりがございますけれども,2つ目はこちら,「新たな時代に対応する学びの支援の充実」というところでございます。(1)としまして,「学部段階の給付型奨学金と授業料減免の中間層への拡大」ということで,修学支援新制度につきまして,現在対象外の中間所得層について,多子世帯や理工系・農学系の学部で学ぶ学生等への支援に関し必要な改善の実施,また(2)としまして,「ライフイベントに応じた柔軟な返還(出世払い)の仕組みの創設」ということで,現在の貸与型奨学金について,無利子・有利子関わらず,現在返還中のものも含めて利用できるよう,ライフイベント等も踏まえ,返還者の判断で柔軟に返還できる仕組みを創設。また,在学中は授業料を徴収せず,卒業後の所得に応じた返還・納付を可能とする新たな制度を大学院段階において導入するということでございまして,これらにより,大学,大学院,高専等で学ぶ者が,いずれも卒業後の所得に応じて柔軟に返還できる出世払いの仕組みを創設することが提言されております。
 (3)の「官民共同修学支援プログラムの創設」につきましては,これは先ほど,理工系,農学系の分野をはじめとした女性の活躍推進のところでも述べたものでございます。
 そのほか,(4)として「博士課程学生に対する支援の充実」,(5)として「地方公共団体や企業による奨学金の返還支援」,(6)で「入学料等の入学前の負担軽減」,(7)としまして「早期からの幅広い情報提供」が盛り込まれております。
 検討事項の大きな固まりの3つ目でございます。「学び直し(リカレント教育)を促進するための環境整備」ということで,(1)として,「学び直し成果の適切な評価」ということで,学修歴や必要とされる能力・学びの可視化等を行うということで,個人の学修歴・職歴等に係るデジタル基盤の整備ですとか,企業において学び直しの成果がしっかり評価をされるようにということで,そうした評価体系の導入ですとか,支援等の取組の実践の促進,また,報酬や昇進等で処遇する企業への新たな支援策の創設などが提言されております。
 (2)としまして,「学ぶ意欲がある人への支援の充実や環境整備」というところでは,費用,時間等の問題を解決するための支援としまして,教育訓練給付制度の対象外である自営業者等に対する支援ですとか,あるいは,人材開発支援助成金制度において,デジタル人材の育成等について高助成率に位置づけるといったことが盛り込まれております。
 また,(3)としまして「女性の学び直し支援」ということで,そのための環境整備ですとかプログラムの充実が盛り込まれております。
 最後に(4)としまして,「企業・教育機関・地方公共団体等の連携による体制整備」ということで,リカレント教育について産学官で対話,連携を促進するための場の設置ということ,また,企業におけるリカレント教育による人材育成の強化,大学等におけるリカレント教育の強化,地域におけるデジタル・グリーン分野等の人材育成というものが盛り込まれているところでございます。
 第一次提言の概要は以上でございますけれども,教育未来創造会議におきましては,今後はこの提言において示された各事項のフォローアップ,必要な見直しを行うとともに,新しい資本主義の実現に向けた我が国の教育と人材育成に関わる課題の解決に向けて,引き続き議論が継続されていくと聞いているところでございます。
 以上でございます。

【永田分科会長】  ありがとうございます。
 CSTIのほうもお願いします。

【合田科学技術・イノベーション推進事務局審議官】  内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官の合田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。私から,資料2-2に基づきまして,政策パッケージについて御説明申し上げたいと思います。
 昨年3月に閣議決定された第6期科学技術・イノベーション計画におきまして,総合科学技術・イノベーション会議,CSTIと中教審がジョイントでワーキンググループをつくること,そして,初等中等教育における学びの転換について,これは,初めてでございますが,政策的な方向性を打ち出す旨が盛り込まれたところでございます。
 その背景は3つございまして,1つは,ウィズコロナで多くの国民が実感いたしましたサイバー空間の肥大による社会構造の変化,これをSociety5.0と7年前に表現したのはCSTIでございますけれども,Society5.0が目指すのは,一人ひとりの多様な幸せ,ウェルビーイングの実現でございます。科学技術やイノベーションは社会の分断や格差を解消してこそ意味があるという考え方の下,教育DXを政府全体で支えることはCSTIにとっても重要な役割となってございます。
 また,2つ目でございますけれども,昨年1月の初等中等教育に関する中教審答申は,同調圧力と正解主義から脱し,二項対立を乗り越える必要があると提言いたしました。同調圧力と正解主義はイノベーションの大敵でございます。
 さらに3つ目でございますが,全ての小中学生に情報端末を提供するGIGAスクール構想,4,610億円という国費を投じたわけでございますが,これは科学技術振興費ということで措置をさせていただきました。社会の構造的な変化の中で,あらゆる分野について1つの府省だけで対応できることは限られておりまして,府省を超えた協働が不可欠になっているというのが,CSTIが初等中等教育の学びの転換について議論したゆえんでございます。CSTIの議員でいらっしゃいます東大の藤井総長を座長とするワーキンググループには,中教審の渡邉会長にもお入りいただきまして,昨年の夏以降,8回にわたって議論を重ね,取りまとめたところでございます。近く,内閣総理大臣を議長とする,文部科学大臣にも加わっていただいておりますCSTI本会議で決定の予定でございます。その概要について御説明申し上げます。
 資料2-2の6ページを御覧いただきたいと思っております。初等中等教育の話で大変恐縮でございますが,前回,学習指導要領が改訂されたのが2017年でございます。指導要領が改訂されるのは10年に一度というサイクルでございまして,ちょうど今,5年たった真ん中,中間地点にございます。これから御説明申し上げますように,初等中等教育について大きくその構造,言わばアーキテクチャーを変えるためには,この時期に基本的な考え方を整理していく必要がございます。それを,今後始まる具体的な議論に反映させていく必要があるということで,今回議論を行ったものでございます。
 その上で,次の7ページに社会構造と子供たちを取り巻く環境の変化でございますが,3つだけ御説明申し上げたいと思っております。8ページ目を御覧いただきたいと思っております。これは,大学分科会の先生方は御案内のとおり,社会の構造的な変化,特にデジタルトランスフォーメーションを前に,我々の,そもそもの思考とか発想というものが変化しなければならないという議論でございます。これについては,先生方御案内のとおりでございますので説明を省かせていただきたいと思っております。
 2つ目でございますが,10ページ目を御覧いただきたいと思っております。子供たち自身の多様化,変化でございます。これは35人学級の1つの小学校のイメージでございますけれども,単純に統計で割り戻した場合に,1つの小学校の35人学級でも,左下からございますように,不登校・不登校傾向の子供たち,あるいは特異な才能を持つ子供たち,発達障害の困難さに向き合っている子供たち,そして右側でございますけれども,昨年度の全国学力・学習状況調査で,全ての子供たちに自宅の本の冊数を聞きましたけれども,本の冊数と学力には明確な相関がございました。自宅に本が25冊以下しかないという子供たちが,御覧いただいたらお分かりのとおり,小学校で縦2列分の子供たちがそれに該当するというものでございます。また,外国由来の子供で日本語指導が必要な子供たち,これも割り戻してまいりますと,クラスには必ず1人いるという状況でございまして,子供たちの多様化が進んでいることが御覧いただけると思います。
 14ページに飛んでいただきたいと存じますけれども,こういう状況の中で,初等中等教育におきましては,OECDがラーニングフレームワーク等を議論しておりますように,新たな価値を創造する力,責任ある行動を取る力,対立やジレンマを克服する力を育むことが求められているわけでございますけれども,もう1つ重要な深刻な課題といたしまして,15ページを御覧いただきたいと思っております。先ほどの教育未来創造会議の議論とも重なるわけでございますけれども,15ページを御覧いただきますと,高校1年生,義務教育を修了した15歳の段階で,特に女性のOECDのPISA調査,科学的リテラシー,数学的リテラシーでレベル4以上という,国際的に見てもかなりできる女性の生徒さん,これは1学年に4割いらっしゃるわけでございますが,高校に参りますと普通科の理系を選ぶ生徒さん,男女合わせて22%でございますが,女性に関しては16%,さらに学士におきまして理工農系を選択する女性の学生さんは5%ということで,これは社会的・文化的なバイアスがあると言わざるを得ません。私ども政府としては,この分野に進学すべきだということは決して申しませんけれども,この数字を御覧いただきますと,明らかに進路選択に社会的・文化的なバイアスがございまして,それを取り除くのが私どもの責任だと考えているところでございます。
 そのような観点から,21ページに飛んでいただければと存じますけれども,今回の政策パッケージは3つの柱を立てて,46本の政策を,ロードマップを基に確実に,この5年を見通して実行していく整理になってございます。1つ目は,22ページにございますように,子供の特性を重視した学びの時間と空間の多様化でございます。23ページを御覧いただきたいと思っております。先ほど御覧いただきましたように,左側でございますけれども,多様化している子供たちを前に,今,先生方は紙ベースの一斉授業,言わば丸腰で苦労していらっしゃるということでございます。右側にございますように,GIGAスクール構想,2019年以降,1人1台の情報端末を整備する中で,不登校・不登校傾向の子供でいらっしゃるとか,発達障害に向かい合っている子供につきまして,それぞれ教室で学ぶという学び方以外の学びが可能とするという形で選択肢を増やしていく必要があります。
 例えば,広島県におきましては,校内フリースクールということで,子供たちの学び,この教室では学べないという子供たちを支える,あるいは,それを教育センターがオンラインで結ぶことによって不登校の児童生徒に対する支援を進めておりますけれども,そういった学びを真正面から,私ども,しっかりとバックアップしていく必要があると考えております。
 24ページを御覧いただきますと,そうなりますと,これまで以上に,これまでは左側にございますように,学校は,学校あるいは学級,学年,あるいは教科の縦割り構造でございましたけれども,それを機能に応じまして,社会,民間の力,これは大学も含めて協働しながら学校を成り立たせていく必要があると。そのために,責任主体であるとか,特に情報の管理主体の明確化が必要だということで現在,デジタル庁とも議論しているところでございます。
 25ページを御覧いただきますと,他方で,他者と同じことができることのみが評価される社会ということは変わらずに,丸バツで大人が測りやすい力を評価することは変わらないまま,AIやアルゴリズムを活用した教育の個別最適化が進みますと,AIやアルゴリズムが指示するとおりの学びを他律的に行うことになりかねません。これは私ども,政府全体として重視している子供たちが自らの学びを自ら調整する力の育成につながらないということでございまして,後ほど御覧いただきますように,レポートですとか小論文といったようなパフォーマンス評価の確立ですとか,あるいは個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実が必要だと考えているところでございます。
 26ページ以降でございますけれども,1つ目の柱につきまして,例えば,26ページの政策の1につきましては,教育課程の在り方の見直しということで,真ん中にございますが,教科等の本質を踏まえた教育内容の重点化や教育課程編成の弾力化という観点から,これを議論していくということでございまして,その右側にございますように,渡邉会長の御尽力の下,中教審の中で,個別最適な学びと協働的な学びの一体的充実に向けた特別部会というものを設けていただきまして,議論がスタートしているところでございます。その下の教員免許制度,多様な人材が教壇に立てるための教員免許制度の改革,あるいは,27ページでございますが,先ほど御覧いただきましたように,不登校・不登校傾向の子供たちも含めた子供たちの状況に応じた多様な学びの場の確保にそれぞれ取り組んでいくこと,それから,政策の5でございますけれども,松下先生が御専門でございますが,レポート,プレゼン,実演などについてのパフォーマンス評価について,右側にございますように,内閣府が所管しております大型研究プロジェクト,SIPの枠組みを使ってでも科学的な知見の確立を図りたいと考えているところでございます。
 飛んでいただきまして,33ページを御覧いただきたいと思っております。2つ目の柱が,探究・STEAM教育を社会全体で支えるエコシステムでございまして,33ページにございますように,幼児教育から高校に至るまで,様々なアクターに探究・STEAM教育を支えていただきたいと思っております。
 具体的には,34ページでございますけれども,政策1にありますように,高専を軸にした小中学校のSTEAM拠点化,あるいは,飛んでいただいて恐縮ですが,35ページの政策6にございますように,大学入試における探究的な学びの成果の評価,多面的・総合的な評価の実施は極めて重要だと考えてございます。
 また,36ページの8-1の研究成果のアウトリーチの問題,37ページの9にございますように,大学と子供たちをつなぐプラットフォームの構築につきましては,オンラインとリアル双方から検討させていただき,前進をさせていただきたいと思っております。
 同時に,44ページに飛んでいただきたいと思っておりますけれども,特異な才能を持つ子供たち,これは私ども内閣府としては,選別をして育てていこうという発想ではございません。8歳で量子力学や相対性理論を理解していたとか,小学校1年生で高校の数学をやっていたという子供たちは,現実には価値観や感じ方の共感も得られなくて孤独であるとか,周りと同化するために知らないふりをしたですとか,自身の知的好奇心を我慢するのはとても苦しく,手や足の爪をはぐなどのストレスを感じてしまうといったような困難さに直面しているところでございます。
 45ページにございますように,まずはそういったことについての理解を社会的に共有すること,1-1。1-2につきましては,そういう子供たちに個別性の高い教育課程を提供するとともに,個別性の高い指導計画を確立していくことについて,右側にございますように,文科省,経産省,そして中教審で現在議論が重ねられているところでございます。
 46ページの3,入試の問題,47ページ,7,8とございますけれども,こういった子供たちにつきましては,ぜひ大学に大学入試の文脈でもその力を存分に引き出していただきたいと思っているところでございます。
 飛んでいただきまして51ページでございますけれども,先ほどお話を申し上げましたジェンダーギャップの解消についてでございます。これは,そもそも女の子は女の子らしくといったようなジェンダーバイアスは幼少期の頃から関わってまいりますので,右側の①にございますように,まずはそれを打ち破る社会的ムーブメントというものを,内閣府も含めてしっかり取り組んでまいりたいと思っております。③にございますように,多様な経験の先生が教壇に立てるような仕組み,⑤の高校普通科改革,⑦の入試改革,そして大学におかれましては文理分断からの脱却,⑨の学部や修士・博士課程の再編・拡充が,先ほど柿澤室長からございました教育未来創造会議の第一次提言になるところでございます。
 飛んでいただいて恐縮でございますけれども,61ページを御覧いただきたいと思っております。今回,CSTIがこのような議論をまとめるに当たりまして,やはり着実な実施に向けての観点が必要だということが議論なされたところでございます。特に初等中等教育については,それぞれの経験や思いに基づく様々な御意見がございますけれども,次を担う子供たちのために何が必要か,そして自分には何ができるのかという視点を大事にしようというのがポイントの1つでございます。
 真ん中でございますが,今申し上げたような教育の学びの転換というのは,私どもが受けてきた教育とは随分イメージが違うわけでございます。真ん中辺りにはございますけれども,大人の頭の中にある,かつて自分が受けてきた教育とは異なるため,それについて不安や違和感があるかもしれないですけれども,一人ひとりの多様な幸せを実現する社会に向けて学びの転換が不可欠であるということを共有していく必要があること。そして,そのためには,一番下でございますけれども,デマンドサイド,子供目線からのフィードバックを繰り返して政策をアジャイルに組み立てていくことが大事だという御議論をいただいたところでございます。この政策パッケージについては,年末に御意見を国民から頂戴したところ,寄せられた御意見の4分の1が10代以下の若い世代から寄せられたものでございました。私ども,政府を挙げて,このような初等中等教育の学びの転換を進めていきたいと思っておりますけれども,その重要な鍵の1つとなるのはやはり大学教育,高等教育でございます。ぜひ御理解いただき,御支援を賜ればと思っている次第でございます。
 私からは以上でございます。

【永田分科会長】  ありがとうございました。内容は豊富ですが,委員の方々から御意見というか,御質問のほうが適当かと思うので御質問を中心にお受けいたします。いかがでしょうか。皆さんがお考えになっておられる間に簡単なことですが,教育未来創造会議のリカレント教育の中にリカレント休暇の話は全く出ていません。そのほかのことはたくさん書いてありますが,そのような話は文字には残ってないのですが,議論されたのでしょうか。

【柿澤高等教育政策室長】  この点につきましては,先ほど概要版で説明をしてしまいましたけれども,参考資料2の31ページでございますが,「費用,時間等の問題を解決するための支援」というところがございまして,31ページの一番下のところに,労働者が働きながら教育訓練を受講するための長期休暇制度等を導入する事業主への助成の拡充ですとか,こういったことも盛り込まれているところでございます。

【永田分科会長】  よかったです。
 村田委員,どうぞ。

【村田委員】  教育未来創造会議の(2)の②の「『出口での質保証』の強化」のところなんですが,ここにST比が挙がっているんですが,これも中教審でずっと,ここ10年ばかり,あるいはもっと前からかもしれませんが,いわゆる教育の質保証の可視化を言われていて,そのときにはもう完全にラーニングアウトカムの話だと思うんですね。ところが,ST比というのは実はインプットの指標であって,アウトプットですらない。なぜこれが出てくるのか,むしろ,学習成果,ラーニングアウトカムが重視されている時代に,なぜインプットになるのか。ましてや,コロナにおいて,言わばオンデマンド,オンラインが,先ほども少し出ましたように,授業が早回しで,2時間の授業を1時間で聞くような学生もいてるのに,まさにオンデマンドをどうするかという議論をしているときに,ST比そのものの意味が変わってきているときに,今さらなぜこのインプットの指標が出てくるのかというのは,ちょっと時代錯誤ではないかなというのが私の感想です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。
 曄道委員,どうぞ。

【曄道委員】  曄道でございます。ありがとうございます。私も,今の村田先生と同じところに目を当てておりました。議論の中でST比が幾つだと出口での質保証につながるといったような,そういう議論までが行われたのかどうか伺いたいと感じました。
 それから,同じこのページの中の(5)にあります「デジタル技術を駆使したハイブリッド型教育」,この表現の問題なんですけれども,その下には「知識と知恵を得るハイブリッド型教育」という言葉があって,知識,知恵をまたがるという意味でのハイブリッドの話をしているのか,デジタルとオフラインのハイブリッドの話をしているのか,言葉の整理をつけていただいたほうがいいのかなということを感じました。
 3点目はCSTIでの御議論ですけれども,後半のほうで,特異な才能を持つ,例えば量子力学を小学校で解してとか,そういった生徒,お子さんに対する教育の在り方についての議論をかなり御説明いただいたように思うんですけれども,当然,分布は特異かそうでないかという分布の仕方ではなく,広範にいろいろな才能を持つ生徒,子供がいるわけで,その辺りの全体に向けた教育の当て方ということについての御議論があったのかどうか,これを伺いたいと思いました。
 以上でございます。ありがとうございました。

【永田分科会長】  合田審議官,どうぞ。

【合田科学技術・イノベーション推進事務局審議官】  曄道学長からの最後の御質問でございますけれども,御指摘のとおりでございまして,これは特定の分野に特異な才能のある子供たち,あるいは発達障害の困難さに向き合っている子供たち,これはここからがこうであるとか,ここからはこうでないみたいな話ではなくて,グラデーションだと思っております。
 その上で,先ほど申し上げたように,私どもは一定の線引きをして,この子たちを取り出して,国家社会のために尽くしていただくというような話ではなくて,そういう子供たちが直面している困難さというものをいかに取り除くかという御議論をいただいたと理解いたしております。その際,先ほど曄道学長がまさにおっしゃったとおりでございまして,私ども,教育の個別最適化というのは,こういった特異な才能を持った子供たちのみの話ではなくて,言わば全ての子供たちに関わる問題だと思っておりまして,先ほど申し上げたように,1人1台の情報端末を国家の意思で全ての小中学生に整備をさせていただきましたので,それを1つの足がかりにしながら,明治以来の一斉授業を乗り越えて,教育の個別化を進めていく必要があると。
 ただし,学校教育というのはデモクラシー,民主政の重要な基盤でございます。その際には,他者と対話したり協働したりということが不可欠でございますので,先ほど申し上げましたように,個別最適な学びと協働的な学びを一体的にどう充実していくのかが極めて重要であり,それが教育DXの先にある学校の存在意義だと考えているところでございます。特異な才能のある子供たちについても,そういう文脈で御意見を賜ったと御理解賜ればと存じております。
 以上でございます。

【曄道委員】  ありがとうございます。

【永田分科会長】  ここからは,申し訳ないのですが,御意見ではなくて御質問にフォーカスしてください。また,議題がまだ残っておりますので1人2分以内でお願いします。
 小林弘祐委員,どうぞ。

【小林(弘)委員】  小林でございます。資料の右下3ページ目の(1),これについて修学支援新制度の機関要件の厳格化というのは,給付型奨学金とか授業料減免の中間層への拡大について書かれているんですけれども,この辺がよく理解ができないんですね。今までの修学支援新制度の機関要件というと,実務家教員の数とか,一見,修学と関係ないものも入っていたんですけど,以前質問したときには,経営状況をこれに入れるというような話もあったんですけど,これ,具体的にはどういうことなんでしょうか。

【柿澤高等教育政策室長】  こちら,本文のほうで言いますと,参考資料2の26ページのところにございます。もともと高等学校,修学支援新制度でございますけれども,これは4年目で検証を行うことにもなってございましたけれども,この新制度の検証を行い,機関要件の厳格化を図りつつという記述がございます。いずれにしましても,今回,こういう形で第一次提言が出ていると。第一次提言ではここまでの表現がされているということでございますので,これを踏まえて,今後,文部科学省としても検討を行っていくということでございます。

【永田分科会長】  吉見委員,どうぞ。

【吉見委員】  ありがとうございます。久しぶりに合田さんの立て板に水の御説明をお聞きして,もう本当に鮮やかだと思いましたけれども,2点,申し上げたいことがあります。どちらの御報告でも,文理分断から文理横断へ,あるいは分野横断へという話が出てきますけれども,このときに,確かに理系へのシフトも一定程度は必要なんでしょうけれども,それ以上に重要なことは,むしろ複線化といいますか,1本に絞らない,つまり高校から大学への段階で,あなたは理系の専門,あなたは文系の専門というふうに一本化させてしまうのではなく,複数の専門を同時にやる形の教育を実現することが私は大変重要だと思っています。ぜひその辺の議論をしていただければと思っております。
 もう1点は,特に人生が多様化し,複線化し,流動化していることを考えますと,高校段階がものすごく重要になってきていると思います。ここでは中等教育の広域展開となっているんですけれども,しかし,よく考えますと,高校は本当に中等教育なのか。高校は実は高等教育にも入るんじゃないかという気がいたしまして,成人年齢も引き下げられたことですし,16歳から18歳くらいまでの若者たちの教育,高校段階の扱いをどうしていくのかというのが,我が国の将来世代の育成にとって決定的に重要になってくるように思うのです。その辺もぜひ,御検討いただきたい。本来は,高校は必ずしも中等教育じゃないんじゃないかということまで含めて御検討いただければと思います。

【永田分科会長】  ありがとうございます。
 後藤委員,どうぞ。

【後藤委員】  質問と言うより意見に近いですけど,3つございます。
 まず,デジタル化の対応で,高専や高専生の機能強化というところですが,分野の設置とか定員増ということもありますが,むしろデジタル化に対応できる教育内容の構築,ある分野をつくったり,そこの定員を増やしたりというだけじゃなくて,産業の融合・複合化とか分野横断的な能力の育成が言われていますので,学生組織だけではなく学修内容の構築をもう少し進めていただきたいと思います。
それから,理系選択の女子が高校でたしか16%とおっしゃったと思うんですけど,高専の入学者はそれより10%ほど高いです。25%以上が女子です。多分,選択の時期の問題が1つあり,早期の選択,早期の教育ということが理系女子の育成を進めていくと感じました。
 それから,小中学校段階のSTEAM教育の拠点として,高専と高専生の参画というのがあったんですが,STEAMのAはアートなので,創造性を養うためのアートの部分をどう考えておられるのかがよく分からなかったというところが1つございます。
 以上です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。御意見ですが,多分,文科省には役に立つと思います。
 大森委員,どうぞ。

【大森委員】  ありがとうございます。合田さんの御説明に質問です。この方向性,完全に私はアグリーで,地元でもそういう学校をつくれないかというディスカッションを始めていたところではあります。ただ,現行の指導要領とのバッティングが相当にあると認識していて,そのことで文科省とのやり取りの中でもちょっと難しいというようなこともあったんですが,この3つの政策パッケージについては,次の指導要領の改定までは実際には動かない。準備期間であって,現行指導要領の中でモデル授業等の展開もあり得るのかどうか,その辺の具体について構想をお聞かせいただけるとありがたいと思います。

【永田分科会長】  合田審議官,短くお願いします。

【合田科学技術・イノベーション推進事務局審議官】  今の大森先生の御指摘に対するお答えだけでよろしゅうございますか。それとも,吉見先生や後藤先生からも御質問いただいておりますが。

【永田分科会長】  吉見委員の御意見は大きな内容であり,今の大森委員の御意見は非常に近いところにあるので,お願いします。

【合田科学技術・イノベーション推進事務局審議官】  分かりました。では,大森先生の御質問につきましては,今回の政策パッケージにも明記してございますけれども,先ほど申し上げましたように,5年後の改訂を見据えたときに,今ここで次の改訂の編集方針を明確にしておかないと変わりませんので,そこは明確にしようということでございますが,できるものはできるところからやるという原則で考えてございます。
 教育課程につきましては,御案内のとおり,教育課程特例校という枠組みもございますので,そういったトライアルも併せて,ぜひ次の改訂につなげる,あるいは次の改訂を先導するという観点からお取組をいただければ,その観点からまたキャッチボールをさせていただければと,私は内閣府の立場でございますので,文部科学省も申しておりましたとお伝えをさせていただきたいと思います。
 以上でございます。

【大森委員】  ありがとうございます。

【永田分科会長】  須賀委員,どうぞ。

【須賀委員】  ありがとうございます。私は,教育未来創造会議の第一次提言のところで質問させていただきたいと思います。提言を見ますと,課題,理念,望ましい社会像,人材育成像ということで非常に分かりやすいんですが,この中に1つ理解できないところがあるので,そこを教えていただきたいと思います。2番目の基本理念のところで,人への投資を通じた成長と分配の好循環を教育や人材育成においても実現するというところまでは分かりますが,最後の理念の中に,なぜ「新しい資本主義」というのが入ってきているのか。これはどういうふうに理解すればいいのかということが,いまひとつ分からなかったんです。通常の特定の経済制度のようなものが理念として掲げられてきているということで,何を理解しておけばよろしいのかという点を教えていただければと思います。
 以上です。

【柿澤高等教育政策室長】  その点について,今ちょうど内閣官房からも会議に入っておりますので,何かコメントございますでしょうか。

【加賀内閣官房教育未来創造会議担当室主査】  内閣官房の加賀と申します。よろしくお願いします。今,岸田政権下におきまして,新しい資本主義実現に向けて会議等を開催しているところでございますが,基本的には新しい資本主義の実現に向けて,ちょっと逆説的ではありますが,まさに教育等に掲げた,今回の提言の内容でもございますが,人への投資を通じて成長していくというサイクルと,奨学金等もそうですが,分配,これを合わせてよいサイクルを回していくというのが基本的に言いたいところでございまして,ある種,新しい資本主義の実現はそれの先にあるものということでございます。前段の成長と分配の好循環をしっかり回していきましょうという理念だと御理解いただければと考えてございます。
 以上でございます。

【須賀委員】  分かりました。あまり理念らしくないんですね。

【永田分科会長】  それはそうです。新しい資本主義が定義されているわけではなくて,政治が今つくっていらっしゃるでしょう。

【加賀内閣官房教育未来創造会議担当室主査】  確かに新しい資本主義の実現に向けて……。

【永田分科会長】  新しい資本主義とは何かについてお聞きしたい。

【加賀内閣官房教育未来創造会議担当室主査】  成長と分配を回していくというのが大きく政権の中で言われていることでございますので,まさに教育の中でもそういったことが必要であるということを。

【永田分科会長】  前半部分は分かります。今おっしゃったとおりです。後半部分の新しい資本主義という定義がないのです。前半部分は皆よく分かっていて,分配までいいでしょう。それを新しい資本主義にどうつなげるかということについては,その定義の部分がないので,これは,官邸の会議なので,当然こうなってしかるべきだと私は思いますが,そう書かれても困るというのが今の委員の御意見です。今の発言は回答になっていません。須賀委員のご意見については。官邸の会議であり,トップは首相なので,そのような政策を立てるという意図に向かっているのでこうなると思います。確実な定義がここには述べられてはいないということです。
 熊平委員,どうぞ。

【熊平委員】  ありがとうございます。合田さんのご説明に対して、少し意見を述べさせていただきたいと思います。いずれも非常に充実した形で,教育におけるこれからの変化が整理されており,未来の教育に大きな期待を持つことができる御報告を頂いたと感じております。そんな中で,特に32ページでございます。こちらには、子供たちの多様性についても個別に明確に記載されており,個別最適な学びにつながるであろうと思います。もし可能であれば,今後の検討の中で,一人ひとり,個別な子供たちが学校でどんな生活をするのか,1日を過ごすことになるのかを具体的にイメージできる表現で,この内容を語っていただけると大変ありがたいと思いました。その中で先生方の役割もより明確になっていくのではないかと思います。
 そして,ウェルビーイングを目指しているのであれば,塾というものに関してどう考えていくかということも非常に大きなテーマだと思います。学校以外に子供たちが夜も学ばなければならないという中で,ウェルビーイングを手に入れることができるのかという疑問が残ります。
 もう1つは,自己理解を深めて自分らしく社会で生きていくことが最終的なゴールだとすれば,キャリア教育について,大学でではなくて,より早い段階で行うことをご検討頂きたいと思いました。キャリアについて準備を行うために、海外では小学校からキャリア教育の一環としてインターンシップを始めている国もあります。
 また、個別最適な学びが進むのはすばらしいことですが,共生社会を生きていくための準備も学校において行わなければならないので,学びが個別化することと,共生社会を生きる力を磨くことの両方が実現できるという観点も大事だと思いました。
 以上になります。

【永田分科会長】  合田審議官,何か一言あればどうぞ。

【合田科学技術・イノベーション推進事務局審議官】  一言だけ。熊平先生御指摘のとおり,全て御指摘のとおりだと思っております。ダイバーシティとインクルージョンという形で日本の学校教育をどう組み立て直していくのかということについて,引き続きぜひ御指導いただければと思っております。
 以上でございます。

【永田分科会長】  建設的な終わり方になりまして,よかったと思います。ここの会の情報は皆さんでキャッチしておかないと,この先のいろいろな施策に結びついていくことなので大切な観点かと思います。しかし,ここから直接意見を届けることは難しいので,文科省のほうが頑張って,合田審議官もどこかで頑張ってもらえると思います。ありがとうございました。
 最後ですが,時間がないので,少し短縮させていただきます。これからあと8か月弱だと思いますが,この期における大学分科会の次のテーマについて,提案をしたいということで受け取っていただきたいと思います。
 資料3-1を御説明しようと思いましたが,時間がありません。これはグランドデザインの要約ですので,これを見ながら,どのようなことが重要な議論の要点として残っているかについて御説明をいただきます。

【柿澤高等教育政策室長】  ごく簡潔に申し上げます。資料3-1,上半分はまさにグランドデザイン(答申)の状況の整理ということでございますが,グランドデザイン(答申)2018年にまとめられまして,具体的な改革方策や今後の検討課題として整理された事項については,相当程度の進捗を見たということでございます。様々な制度改正,まさに本日説明がありました設置基準改正等も,こちら,グランドデザイン(答申)を踏まえての取組だったということでございます。
 一方で,質保証システム部会の見直し,審議まとめにおきましても,18歳人口が減少する中にあっても大学の新増設が続いている現状について,質保証等に対する懸念も指摘されていることも踏まえれば,今後,教育研究や経営等の課題を抱えている大学への対応を含めて,18歳人口の急激な減少を見据えた高等教育の在り方についても検討が必要と,これは質保証システム部会からの宿題事項としても残っているところでございます。
 また,資料真ん中半分から下を見ていただきますと,「大学教育・経営等をめぐる現状,課題」というところでは,教学マネジメント指針等を踏まえた教育改善の努力を行っている大学と努力が不十分な大学に二極化しているのではないかといった指摘,また,本日,CSTIから報告もございましたし,教育未来創造会議の話もございましたけれども,初等中等教育から高等教育に至る文理分断からの脱却,文理横断教育,文理融合教育やSTEAM教育等の推進が様々なところでも提言されているところでございます。
 また,大学の経営環境ということに関しましては,こちら,学部における社会人学生の数,割合ともに減少傾向であるなど,依然として18歳中心主義の状況がある中で,また,学部入学する留学生の数も伸び悩んでいるというところがございます。こうした状況の中で,私立大学の入学定員充足率も令和3年度,初めて100%を下回るということでございまして,設置計画履行状況等調査におきましても,専任教員の確保ですとか定員未充足ですとか,そういったところで指摘を受けるケースも少なくなくなってきているところでございます。
 社会人や留学生の受入れの拡大といったことは,多様な価値観が集まるキャンパスを実現する上でも重要ではございますけれども,そうした諸施策を講じてもなお,今後,大学進学者数が相当程度減少することが避け難いとすれば,とりわけ地方の大学はその影響を強く受けることが想定されるということで,今後,経営難に陥る大学が増大することになれば,教育の質保証や学生保護等の観点からも問題が生じることが懸念されるということでございまして,こちら,今後の審議テーマにつきまして,永田分科会長とも相談をいたしまして,3点を入れております。
 1つ目は,総合知の創出・活用を目指した文理横断・文理融合教育,また,ダブルメジャー,メジャー・マイナー等による学習の幅を広げる教育の推進というところでございます。こちらも,このグランドデザイン答申からの流れを受けてのものでございます。また,(2)としましては,ディプロマ・ポリシーに定める卒業生の資質・能力を保証する出口の質保証の徹底,(3)としまして,大学の強みと特色を生かした連携・統合,再編等による地域における学修者のアクセス機会の確保や学生保護の仕組みの整備,国公私の役割等を踏まえた高等教育の規模の在り方ということを入れさせていただいております。
 今,永田分科会長からもお話がございましたとおり,第11期の審議時間も限られているところではございますけれども,そうした中で,大学分科会としての審議まとめを行っていただくに当たりまして,資料3-2は論点例ですので説明は割愛させていただきますが,資料3-3にございますとおり,部会等の設置ということで,新たに5としまして,大学振興部会としまして,今申し上げた3点の検討課題を中心に審議を行っていただければと考えているところでございます。
 また,資料3-4,こちら,永田分科会長とも御相談をさせていただきながら,大学振興部会の委員名簿(案)でございまして,今回,大学分科会としての審議まとめを行うに当たっての,まさにそのための素案を作成するための委員会という形でございますので,大学分科会の委員の先生方のうちから,この名簿にある先生方に大学振興部会に御参画をいただくことをこの案として準備をさせていただいているところでございます。
 簡潔でございますが,以上でございます。

【永田分科会長】  少し早くて分かりにくいところがあったかもしれません。いろいろ具体的な話は出ていると思いますが,我々のいろいろ考えてきたグランドデザインを,今の激動の中でもっとアップデートしたものにしていきたいということが基本的にあります。STEAMにしろ,ダブルメジャー云々にしろ,文理融合などいろいろ出てきましたが,例えば,今,デジタルトランスフォーメーションが進んでいます。このデジタルが進んでいるというのは,FAXがeメールに替わったことを意味しているわけではなく,基本的な物の考え方が変わらないといけないわけです。FAXも新しい資料をPDFにしてメールで送ればデジタル化したかといったら,それは全然デジタルではなくてアナログなのです。そのような社会に子供たちがあるいは学生が生きていく,あるいはそれを牽引していくわけです。真にそのような新しい概念で生きていかなければいけないところに,今度は前から述べていることの一番重要だろうと思うことを幾つかそこに掲げているという,そのような捉え方です。
 ですから,今度は逆に言うと,具体的なアイテムについて話をしながら,これから教育がどのように変わっていくのだろうということを一緒に話し合っていきたいと思います。例えば,デジタルが進めば進むほど,さっきの単位の問題がありましたが,学習の質の問題も当然入ります。例えば極端な話でアメリカにはもうできていますが,キャンパスのない大学も出てきています。つまり,時代が大きく変わっている中で持ち上げたグランドデザイン2040で書いたものの中のどこかをまた刷新していかなければいけないので,そういう捉え方をしようということです。
 大学振興部会にお願いをする先生には大変申し訳ありませんが,先にたたき台をつくります。ここで何かを全部つくるわけではないですが,いろいろな問題点を挙げていって,皆さんの意見でそれを文章に仕上げていきます。アイテムをたくさん並べて,最終的に哲学の通った文章に仕上げていくということを大学分科会の中で行います。今日お願いしたいのは,そのような内容についてまずは大学振興部会の人たちに汗をかいていただきたく,設置したいと思いますので,お認めいただきたいというのが一番簡単なお願いです。いかがでしょうか。私を入れてほしいなどがあれば喜んで入っていただきます。それでは,皆さん異議なしということでよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【永田分科会長】  それでは,申し訳ありません,今日いらっしゃっている委員の方にも何人も御参加いただきますが,早々に大学分科会のほうへ上げていく粗筋をつくりたいと思います。
 予定では文科省の国立大学等の施設整備についての話がありましたが,次回に説明をさせていただきますので,御了解をいただきたいと思います。
 それでは,事務連絡をお願いいたします。

【髙橋高等教育企画課課長補佐】  本日も活発な御議論をいただき,誠にありがとうございました。次回の大学分科会は6月22日水曜日の14時から16時で予定してございます。実施方法については,また改めてお知らせいたします。本日,時間の都合上,御発言できなかった内容などございましたら,事務局まで御連絡いただければと思います。
 以上でございます。

【永田分科会長】  次回はオンサイトで開催できるといいと思います。2年間,2次元でしか顔を見たことない人がいるというのはなかなか寂しいので収まることを祈っております。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――

お問合せ先

高等教育局高等教育企画課高等教育政策室

(高等教育局高等教育企画課高等教育政策室)