大学分科会(第166回) 議事録

1.日時

令和4年3月28日(月曜日)16時~18時

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 質保証システム部会「新たな時代を見据えた質保証システムの改善・充実について(審議まとめ)」について
  2. 次期教育振興基本計画について
  3. 高等教育行政に関係する政府の諸会議の動向について
  4. その他

4.出席者

委員

(分科会長)永田恭介分科会長
(副分科会長)村田治,渡邉光一郎の各副分科会長
(委員)越智光夫,熊平美香,後藤景子,湊長博,村岡嗣政,吉岡知哉の各委員
(臨時委員)相原委員,麻生隆史,安部恵美子,大野英男,大森昭生,金子晃浩,川嶋太津夫,小林弘祐,小林雅之,清水一彦,須賀晃一,清家篤,髙宮いづみ,千葉茂,曄道佳明,長谷川眞理子,益戸正樹,松下佳代,吉見俊哉の各委員

文部科学省

(事務局)増子高等教育局長,森田大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術政策連携担当),里見大臣官房審議官(高等教育局担当),笠原大臣官房文教施設企画・防災部技術参事官,西田高等教育企画課長,新田大学振興課長,柿澤高等教育政策室長,森下高等学校改革推進室長,髙橋高等教育企画課課長補佐,一色大学振興課長補佐,竹花大学設置室長補佐,加賀内閣官房教育未来創造会議担当室主査ほか

5.議事録

【永田分科会長】  皆さん,こんにちは。第166回の中教審大学分科会を始めます。
 残念ながら今回もコロナの拡大が収まっていない状況で,オンラインとなっております。皆さんの発言環境が整えられているという条件で御参加という理解で会議を進めさせていただきます。このウェブの会議ですが,YouTubeライブにて配信中です。
 それでは,事務局から連絡事項をお願いいたします。

【髙橋高等教育企画課課長補佐】  事務局,髙橋でございます。
 本日は,ウェブ会議及びライブ配信を円滑に行う観点から,御発言の際は,「手を挙げる」ボタンを押していただき,分科会長から指名されましたらお名前をおっしゃってから御発言ください。また,御発言後は,「手を下ろす」ボタンを押して表示を消していただけますようお願いいたします。また,発言時以外は,マイクをミュートにしていただくなど,御配慮をいただけますと幸いです。
 本日の会議資料は,お配りしている次第のとおりでございます。一点,参考資料1といたしまして,前回の大学分科会において御説明させていただきました,大学ファンドの創設に関し,国際卓越研究大学に関する法律案が閣議決定され,今国会に提出しておりますので,御報告いたします。
 以上でございます。

【永田分科会長】  ありがとうございます。
 本日,大きく4つの議題があります。最初は,質保証システム部会の吉岡部会長もいらっしゃっていますが,質保証システムの改善・充実についての案が取りまとまっていますので,御説明いただいて,意見交換をさせていただきます。2つ目は,次期教育振興基本計画の諮問内容ということで,渡邉中央教育審議会会長が次期基本計画の部会長なので,その内容について御説明をして,若干の意見交換をさせていただきます。3つ目は,これは情報共有ですが内閣総理大臣の下に,教育未来創造会議が設置されており,何回か会議を持たれていますので,その内容について共有します。4つ目は,これも報告事項です。高等学校の卒業程度認定審査,仮称ですが,その制度について,事務局から御説明をいただき,若干の意見交換をさせていただきます。
 それでは,最初の議題です。質保証システム部会,新たな時代を見据えた質保証システムの改善・充実について,審議まとめを吉岡部会長から御説明をいただきます。よろしくお願いいたします。

【吉岡委員】  よろしくお願いいたします。質保証システム部会においては令和2年7月より1年9か月,計14回の審議を行い,質保証システムの改善充実に係る議論を進めてまいりました。前回2月9日の第165回大学分科会において,審議まとめの素案について報告し,御意見いただいたところですが,その後,2回のシステム部会における議論を経て,今般,部会としての審議の取りまとめ,お手元にあります「新たな時代を見据えた質保証システムの改善・充実について」の取りまとめを行いましたので,御報告いたします。
 まず,資料1-1に基づいて,全体像の説明をいたします。一番上の四角囲みを御覧ください。大学設置基準,大学設置認可審査,認証評価,情報公表という我が国の公的な質保証システムは,事前規制と事後チェック,それぞれの長所を組み合わせた形で設計されており,一定程度,機能していること。しかしながら,3つのポリシー,すなわち入学者受入れの方針,教育課程・編成実施の方針,卒業認定・学位授与の方針に基づく,教育の実質化を進める必要があるという指摘や,グローバル化やデジタル技術の進展に対応する必要があるという指摘,また,新型コロナウイルス感染拡大を契機とした遠隔教育の普及・進展を踏まえた対応を行う必要がある等の指摘があること。それらを踏まえて,大学における国際通用性のある教育研究の質を保障するため,質保証システムについて,1,最低限の水準を厳格に担保しつつ,2,大学教育の多様性・先導性を向上させる方向で改善・充実を図っていくことが求められている。この点を共通認識として議論を行ってまいりました。
 その上で,質保証システムで保障すべき質は,学校教育法の規定に照らすと教育研究の質であり,その保障のためには,学生の学びの質と水準とともに,教育と研究を両輪とする大学の在り方を実現する観点からは,持続的に優れた研究成果が創出されるような研究環境の整備や充実等についても一定程度,確認する必要があること。また,改善充実の方向性として,1,学修者本位の大学教育の実現と,2,社会に開かれた質保証の実現を2つの検討方針とするとともに,各質保障システムの改善・充実を検討していく際の視座として,1,客観性の確保,2,透明性の向上,3,先導性・先進性の確保(柔軟性の向上),4,厳格性の担保の四つを設定して検討を行ってまいりました。
 大学設置基準、大学設置認可審査については,学位プログラムを基礎とした内部質保証の重要性の明確化やクロスアポイントメントなど,多様な働き方の進展を踏まえ,一の大学に限りという専任教員の概念を基幹教員,仮称ですが,基幹教員と改めること。大学設置認可審査にあたって,実務家教員の定義の明確化や大学名称の考え方を周知すること。機関として内部質保証等の体制が機能していることを前提として,オンライン授業の60単位上限の緩和など,教育課程に係る特例制度を新設することなどを盛り込んでいます。
 認証評価につきましては,学修成果の把握,評価や研究環境整備,支援状況の大学評価基準への追加や認証評価機関の質保証に資する取組の推進,内部質保証の体制取組が特に優れた大学への次回評価の弾力化,不適合大学の受審期間の短縮化などを書き込んでおります。
 情報公表につきましては,教学マネジメント指針を踏まえて,認証評価において大学の情報公表の取組状況を確認することや,大学入学者選抜に関すること等を学校教育法施行規則に規定する各大学が公表すべき項目に追加することなどを盛り込んでいます。
 その他,重要な論点として,遠隔授業に関するガイドラインの策定,質保証を担う人材の資質能力を向上させる観点から,SD・FDの取組等の把握・周知。大学設置認可審査を経て認められた分野の範囲内なら,大学の判断で新たな学位プログラムが実施可能であることの周知,基盤的経費の配分や大学設置認可申請等における定員管理に係る取扱いについて,現行で入学定員に基づく単年度の算定としているものは,収容定員に基づく複数年度の算定へと改めることなどを盛り込んだ提言としております。
 それでは,本文の資料1-2を御覧ください。審議まとめ本文につきましては,前回の分科会以降,2度にわたるシステム部会での議論も踏まえて修正を行いましたが,修正のうち,主立ったものを紹介させていただきます。
 まず,3ページ目の中段です。前回の分科会や部会において,高大接続の重要性について御意見をいただいたことを踏まえ,初等中等教育分野での大きな変化を受け止めて,大学教育は学修者本位の観点から一層の充実に取り組む必要がある旨を追記してございます。
 13ページを御覧ください。前回の分科会でも,単位制度について様々な御意見をいただいたことも踏まえまして,13ページの下から3行目から14ページにかけてですが,単位制度に関する記述を追加してございます。大学教育は国際的に単位制度を標準として構築されており,学士課程を修了するに当たり,おおむね5,400時間程度の総学修量が求められており,脚注にも示すとおり,我が国のみならず,国際的にもおおむね5,400時間程度の総学修量が求められているところであること。また,授業方法によって授業時間が定まっていることについて,各大学の判断でより柔軟に行えるようにすべきではないかといった指摘があること,学期の区分や授業期間,授業回数等についても現行制度上,各大学の判断で柔軟に行うことが可能であることなどについても追記してございます。
 続いて,15ページ目を御覧ください。専任教員の見直しに関してですが,基幹教員,これは仮称ですけれども,基幹教員の概念を導入することで,複数の大学や学部で基幹教員となることも可能になる。仮称ですけれども,基幹教員となることも可能になることを明確にするとともに,民間からの教員登用が促進されることが期待されるとしてございます。また,前回の分科会で,専任教員の見直しによって,教員の非正規化を進めてしまうのではないかという御意見をいただきました。また,部会でも若手研究者の処遇低下を懸念する意見がありました。これらを踏まえまして,留意事項として,「教育研究の質の低下を招かないよう,学内及び学外での兼務の際の取扱いやその際の条件については制度化に当たり,留意する必要」があるとし,脚注の17ですけれども,「とりわけ若手教員の処遇等が不安定になることがないように制度設計の際には留意が必要である」ということを明記してございます。
 続いて,17ページを御覧ください。大学設置基準の特例制度について,要件として,3つの方針を通じた学修目標の具体化や教育課程の編成・実施,全学的な成績評価基準の策定・公表や当該基準に基づく学修成果の把握,成績評価・単位認定の適切な実施などを追記するとともに,特例の対象となる学位プログラムにおいて,目指す教育効果が明確であることなども追記してございます。
 続きまして,25ページまで飛びます。情報公表の関係です。大学ポートレートにつきまして,前回いただいた御意見を踏まえまして,「大学ポートレートが大学コミュニティーによる自律的な運営が行われていることも踏まえつつ」という追記をしてございます。また,大学入試の在り方に関する検討会議提言を踏まえ,学校教育法施行規則に規定する各大学が情報公表を行うべき項目として,大学入学者選抜に関すること等を追加することとしています。
 続いて,26ページです。ここから,その他の重要な論点の関係に入ります。教育再生実行会議第12次提言において,学事歴・修業年限の多様化・柔軟化が提起されていたことを踏まえて,既存制度の周知や大学現場などの効果的な運用に関する取組事項として,28ページになりますが,28ページに修業年限はおおむね4年の期間を指すものであり,厳密に4年間在籍することを求めるものではないことの明確化。早期卒業・修業年限の柔軟化等による学費の変更等については,各大学が授業料などの設定・徴収の考え方を整理し,学生等に説明すべきであることなどを追記してございます。
 続いて,29ページを御覧ください。定員管理の見直し関係の部分でございます。算定単位を入学定員から収容定員に改めるに当たっては,過年度在学者の取扱いについての留意が必要となります。2つ目の米印で記載しているとおり,1,全科目でシラバスに学修目標,授業方法・計画,成績評価基準の明示がされている。2,成績管理にGPAを導入している。3,成績不振の学生への個別指導,面談や補習等を実施していることなどを前提に,修業年限を超えて在籍している者を控除して算出するなど,成績管理の厳格化・明確化と両立が図られる仕組みとする必要があるということから,その旨を追記してございます。
 続いて,31ページ目,「おわりに」の部分です。今回の質保証システムの改善・充実は大学の先導性。先進性の向上に向け,大学の裁量をより高めていくものになっています。これは翻って,高等教育の質保証に対する大学自身の責任が強まっていくことの表れでもあり,大学間で互いに刺激し,切磋琢磨し合い,安きに流れることなく教育の質向上に努め,社会からの信任を得ていかなければならぬという矜持が大学,大学人に強く求められていることなどを明記しました。
 また,32ページの「おわりに」の最後に,「18歳人口が減少する中にあっても大学の新増設が続いている現状について,質保証等に対する懸念も指摘されていることを踏まえれば,今後,教育研究や経営等に様々な課題を抱えている大学への対応を含め,18歳人口の急速な減少を見据えた高等教育の在り方についても検討が必要である」という旨を付言して締めくくってございます。
 33ページ以降におきましては,現行の制度において,各大学の運用等で実施可能な取組例として,事務局が整理した資料を添付してございます。この審議まとめの別添参考資料として添付するということで,周知を図りたいと考えているところです。
 最後になりますけれども,この間,14回のシステム部会,3回の作業チームの会合が行われました。議論は大学の現状,将来像をめぐって多岐にわたりましたけれども,どの論点も大学とは何か,いかにあるべきかという本質的な問題に関わる重要なものだったと認識しております。委員の方々,そして事務局の方々には心からの感謝を申し上げたいと思います。
 本審議まとめは,これら質保証システム部会で交わされた様々な議論のエッセンスを質保証システムという観点からまとめたものでございます。社会が真に発展していくためには多様性が不可欠であり,多様性の中からしか新しいものが生まれてこないと思います。先進性,先導性も多様性の裏づけがあって初めて本来の機能を発揮します。大綱化以前のような規制に戻ることはあり得ませんけれども,また,同時に教育研究が素朴な市場原理の中で発展することもないと思います。社会の在り方,あり様が変化するのに伴って,社会の中での大学の役割も時代とともに刻々と変化していますけれども,大学が教育研究の機関として,社会の未来を創造する場であることには変わりありません。審議まとめと,その基礎となる議論を次にどうつなげていくかということがこれからの課題であると考えております。
 審議まとめに関する報告は以上でございます。ありがとうございます。

【永田分科会長】  吉岡委員,ありがとうございました。
 それでは,御説明の内容に御質問主体ですが,御意見もお伺いいたします。
 益戸委員,どうぞ。

【益戸委員】  ありがとうございます。質保証システム部会の審議まとめ,誠にありがとうございました。グランドデザイン答申をスタートとして,最近の社会情勢も踏まえて,大変分かりやすいものが出来上がったと感じています。吉岡先生をはじめ,御関係の皆さんに心から感謝申し上げます。
 質保証の改善,充実の議論というのは,言い換えれば規制緩和の議論につながったと言えるのではないかと感じています。今回のルール改正によって,各大学の自由度,柔軟性の広がりがはっきり示されたと部会長からもお話がありましたが,これを受けて,いよいよ大学,そして民間側も一体感を持って具体的なアクションが期待されます。また,あらゆる機会を捉えて,国民の皆さんに対して新しい時代を見据えた改革が起こっているということを知っていただきまして,学修者自らが将来に備えた,まさに人生の準備を従来とは違う角度から行っていただきたいと感じています。
 教育はコロナ禍でも止まらない重要な意義深いものです。今後,さらに社会の激動が予測される事態になっているのはもう間違いありません。私自身,日々の業務の中で,ウエルビーイングなど新しい概念も普通に議論されます。また,若い方の働く目的というのも多様になっていることを実感しております。従いまして,それぞれの生き方,考え方に基づく人材育成のための教育機会の平等というのは改めて重要だと思いますし,しっかりした教育の結果を出していかないといけないと改めて思っております。
 しかし,先ほども御指摘ありましたけれども,教育現場の現実的な問題としては,定員割れの問題,教育の質のレベルアップの問題,それから社会人の学び直しにどう貢献していくのかとか,引き続き検討するべきことはたくさんあると思います。単に,設置基準ですとか運営ルールに合っているからよしとするのでは,規制緩和の議論というのは全く意味がなかったのではないのと言われかねないのではないかと思っております。新しく考え直された各種制度をしっかり使って結果を出すのが,審議まとめへの重要な回答なのではないかと感じました。
 以上です。ありがとうございます。

【永田分科会長】  ありがとうございます。今,最後におっしゃったところは重要です。今日,ここで示されたのは基本的な考え方がまとまっているもので,これを実際に基準に落とす,あるいは省令等に落とすというのは,もう一段階あるわけです。今おっしゃった内容のことを,よくよく文科省のほうも考えて用意をいただきたいと思います。
 清家委員,どうぞ。

【清家委員】  ありがとうございます。日本私立学校振興・共済事業団の清家でございます。前回,私のほうから発言させていただいたことを踏まえていただきまして,今回のまとめの24ページから26ページにかけて,情報の公表に関連して,大学ポートレートの改善について,大学コミュニティーによる自律的な運営がなされているということへの留意を記述として加えていただいたこと,まことにありがとうございました。改めて御礼申し上げたいと思います。
 前回も申し上げましたけれども,私どもの事業団では大学ポートレートの私学版について,運営を担っておりまして,今後とも私学コミュニティーの意見や私学の特性等に十分留意しつつ,情報公表の充実に努めてまいりたいと思いますので,よろしくお願いいたします。吉岡部会長に御礼の気持ちを込めて,また,大変すばらしい報告書をありがとうございましたということを一言申し上げたいと思います。

【永田分科会長】  ありがとうございます。
 大野委員,どうぞ。

【大野委員】  ありがとうございます。吉岡部会長をはじめ,質保証システム部会の皆様,どうもありがとうございます。大変すばらしい審議のまとめになったと思います。
 私からのコメントですけれども,内部質保証が今回,十分であることを前提に設置基準の特例を認めるなど,一定の規制緩和が行われることは大変すばらしく思っております。今後,この審議まとめを踏まえた具体的な制度設計を行われることになると思いますけれども,その際には,大学を信頼した基準や手続となるようにお願いしたいと思います。せっかくの特例措置も,それに必要な手続が極めて煩雑なものになってしまっては,実際には使われないということになるのではないかということでございます。
 また,認証評価につきましては,これは評価機関に委ねられる部分が多いわけですけれども,外形的な基準で細かくチェックするのではなく,ピアレビューの精神で,自主的に教育研究の質の向上につながるような評価となるよう,国としても方向性を示すのが重要かと思います。一方で,社会からの信頼を裏切るような大学に関しては,ペナルティがあってもやむを得ないという認識でおります。
 以上でございます。ありがとうございました。

【永田分科会長】  ありがとうございます。
 村田委員,どうぞ。

【村田委員】  ありがとうございます。本当に吉岡部会長には御苦労さまでした。いいものができたと思ってございます。ありがとうございました。
 私からは,2点ございます。1点は質問なんですが,1つは今,大野委員からもありましたように,認証評価についてです。今日,吉岡部会長からも御説明がありましたように,事前チェックから事後チェックという精神は変わらないわけなんですが,認証評価につきまして,認証評価機関によって,かなり受審に対する対応が違っているのかということがありまして,その辺り,メタ認証評価といいましょうか,認証評価機関の評価をどうするかと,認証機関の機関を統一していく必要があるのか。そうでないと国際的な通用性も失いますし,その辺りのことを今後,ぜひ検討していただければと思います。
 もう1点は質問なんですけれども,これ幾つか多くの施策が盛り込まれているんですが,先ほど永田会長からもありましたように,省エネの改正だとか,あるいは設置認証評価制度の法制度の改正を含めて,どれぐらいのタイムスパン,スケジュールで,この実施を考えていかれるのかということも少し教えていただければと思います。
 最後の1点,これは蛇足かもしれませんが,図書等々の整備のところ,特にIT化が進んでいくということでございますが,もう先生方,御存じのように,電子図書が今,急騰しておりまして,これに対しては各大学,あるいは私大連だとか国大協でもお困りというか,困っているのが実態で,この辺り,少し文科省のほうでも対応をお考えいただければありがたいとは思っております。
 最後は要望でしかございません。私からは以上です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。最初の部分については,若干の記述がありました。事務方から御説明したいと思います。

【柿澤高等教育政策室長】  まず,認証評価について,御指摘をいただいたところでございますけれども,これにつきましては,スケジュールの御説明を申し上げようと思ったのですが,21ページでございますが,21ページ,客観性の確保のところでございますけれども,認証評価機関の質保証のさらなる充実に資する取組を推進するということで,認証評価機関連絡協議会の機能強化や認証評価機関に関する審査委員会のさらなる活用等ということを入れておりますけれども,ただいまの御意見も踏まえまして,さらに施策について検討していきたいと思っております。
 また,スケジュールでございますけれども,今般,部会におきまして,審議まとめを行っていただきました。具体的な設置基準等の改正につきましては,審議まとめを受けまして,文部科学省において具体的な条文化作業を行うこととなります。来年度中,大学分科会に諮問をさせていただきまして,令和4年度から実施可能なものは早期に実施しつつ,それ以外のものは,令和5年度以降からの制度運用の開始となっていくのではないかと考えておりますけれども,それぞれ見直し事項によりまして,周知期間の必要性ですとか運用開始の時期というところは変わってくるところがあろうかと思いますので,その点は事務的に,詳細に検討した上で,その都度,大学分科会においても御説明をさせていただきたいと考えております。

【永田分科会長】  ありがとうございます。村田委員,電子図書の件は事務方も今とても答えられる状況にないと思います。

【村田委員】  あくまでも要望です。結構です。

【永田分科会長】  すみません。
 長谷川委員,どうぞ。

【長谷川委員】  すみません。ありがとうございます。吉岡部会長のまとめはすごくよかったので,それについて別にないんですけど,1つ私が懸念をしているのは,リアルとデジタルの最適な組合せとは,多分まだ分かっていないんだと思います。それで,そういうことを念頭に,デジタルはとても一見便利だから,そして,遠方の人とか,そこに実際に行けない人もみんな参加できるということで,いいことがいっぱいありますけど,現実に人間の認知能力として,デジタルで本当にどれだけのことが理解できるのか,関係性がつくれるのかというところはものすごくマイナスがあるので,その辺のことを,まだ検証もできていないと思いますので,少し慎重に書いたほうがいいように私には思えますと,学修者本位という点からしても,デジタルとリアルの本当のよさ,悪さというのをもう少し慎重に考えねば,今後いけないのではないかと思っていますという意見です。ありがとうございます。

【永田分科会長】  ありがとうございます。コメントはまた後でいたします。
 小林委員,どうぞ。

【小林(雅)委員】  ありがとうございます。私,前回,学位プログラムのことと専任教員のことについて,吉岡先生に御質問と,それから御意見を申し上げましたが,その点につきまして,非常によく要望に応えていただきまして,学位プログラムに関して,非常に分かりにくいものですから,できるだけ丁寧に説明してくださいということで,各箇所にそれぞれ,かなり丁寧な説明が加えられております。まとまって説明してくださいということを申し上げたのですが,これはかなり難しい注文だったので,むしろこのほうが分かりやすかったかと思います。この点では非常にありがとうございました。
 それから,専任教員のことについても,今,吉岡先生のほうから説明ありましたけれど,これも非常に細かく,注とかいろいろな形で説明がされております。もともとはクロスアポイントメント制度の促進のためということでご説明があったわけですけれど,それが設置基準を悪用するということが,審査をやっているとよくあるわけで,抜け道みたいなことを考えるところがどうしても出てきてしまうので,そちらのほうも考えなければいけないのではないかということで申し上げたんですけれど,それについても,御配慮をいろいろいただいておりますので,これで非常によろしいかと思います。ただ,1か所だけ気になるのは,15ページに新しい基幹教員について,例示がありますけれど,一定の範囲までということで,半数まで,4分の1程度とか書いてあります。これはあくまで例示ですけれど,このように書いてしまうと,「半数まではいい」と誤ったメッセージを与えないかというのが若干気になります。これから,もちろん設置基準で具体的にやっていくことになるわけですけれど,そのときもこれが1つのメルクマールになりますので,ここは少し考えていただいたほうがいいかと思います。
 もう1つ,それに関連しまして,この定義だと専任教員ではない常勤教員というのが出てしまうわけです。つまり教育担当ではない,研究などを行う教員というのが実際あるわけですけれど,そこのところはどのようにお考えになっているかということを少し,これは質問としてお伺いしたいと思います。
 それから,すいません,もう1点ですが,これは新しいことなんですが,授業料関係のことを明示化するということが入っておりまして,これは非常にいいことだと思います。これを通知でやられるということですけれど,私たち昔,文部科学省の委託事業で休学等の調査を行ったことがあるんですが,例えば休学時の学納金というのは大学によって全然バラバラです。しかも,それが必ずしも明示されていないということもあります。ですから,これはもう単なる通知ではなくて,公表の対象として考えてもいいのではないかと,これは意見です。どうぞよろしくお願いします。

【永田分科会長】  ありがとうございました。最後の意見は意見として取っておくとして,御質問のほうについては,吉岡委員,お願いいたします。

【吉岡委員】  おっしゃるとおり,ここで考えているときには専任教員であるけれども,基幹教員ではないということが起こるということは想定しております。その場合に,研究専任と考えるのかどうかというところは少し詰めなくてはいけないと思っております。一応考えている中では,ここで考えているのは,基本的には教育という観点で組んでいますので,教育に専念する必要は全然ないのですけど,教育も一緒に,研究もやるんですけども,教育を担っていく基幹教員というものを考えていくということに,ここでは想定されています。おっしゃるとおり,そこの境目ということは,制度化するときに考えていく必要があると思っております。

【永田分科会長】  ありがとうございます。
 村岡委員,どうぞ。

【村岡委員】  ありがとうございます。山口県知事の村岡です。部会の皆様,取りまとめ誠にありがとうございます。
 県内の大学関係者からいろいろとお聞きしている話で申し上げますと,情報系の実務家教員を確保しようと思った場合に,そうした人材は首都圏の企業ですとか研究所,そうしたところに多くて,地方にはなかなか少ないと。また,そういった人材は,地方の大学の給与水準では専任の教員になっていただくということは,実際なかなか難しくて,クロスアポイントメント制度等を使って,オンラインで授業を実施していただくということが必要になるという話を伺っています。
 今回の審議の取りまとめでは,専任教員の概念を見直して,設置基準上の最低限必要な教員の数の算定に当たって,一定の授業科目を担当する常勤以外の教員について,一定範囲まで参入を認めるという方向が示されています。これまでも,例えば我々の所属している中国地方知事会におきましても,産学連携を推進する観点から,企業と大学の壁を越えて卓越した人材が活躍できるクロスアポイントメント制度の導入の推進,これを提案してきているところです。今後の見直しに当たりましては,専任教員の要件緩和などについて,教育研究の質にも配慮した上で,地方の大学の実情も考慮した検討をぜひお願いをしたいと思っております。よろしくお願いします。
 以上です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。今,お二人なので,お二人までとさせていただきます。
 越智委員,どうぞ。

【越智委員】  ありがとうございました。吉岡部会長をはじめとして,質保証システム部会の先生方に,すばらしいおまとめをいただいたので,全体に関しては特にございません。ただ,常々考えている1つのことがありまして,小さいことなんですけど,お願いがあります。それは,34ページに大学の判断,運用で可能な教育活動の展開の中に,1,学位プログラム内に複数コースが走っている例ということで,ダブルメジャーとか,メジャー・マイナーというコンセプトが書かれているんですけれども,これはもう何度も過去の答申で頻繁に登場してきているんですけれども,各大学にある程度,任されていることが多くて,明確な定義とか統一性があまりないということになるので,副専攻修了時に必要な単位数とかが幾らかというところがはっきり分かっていないんじゃないかと思うんです。
 そうしますと,履修の事実を学位記に併記するにしても,法的根拠がないために,学修経験を証明するような能力がほとんどないということになります。今現在,データサイエンスの必修化とか話題に上っていますので,そのことを明確に学修歴として証明すると,そのために単に履修しただけではなくて,ある程度,法的な根拠を与えるような方向で制度を,マイナー制度ということを修了したことを明示してもらったほうがいいのではないかと考えてきましたので,御意見を伺いたいと思います。
 以上です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。いかがでしょうか。事務方で事例を作ったのでお答えをします。どうぞ。

【一色大学振興課課長補佐】  失礼いたします。事務局でございますが,先ほどの34ページ,上側の例の③でございますけれども,①’の例でございますけれども,こうした取組を実際に行われる大学は複数ございますが,各大学において自由に行われる取組をどこまで法令の制度によって縛ったほうがいいのかというところは,各大学の自由度もある種,半面としては,失わせるおそれもありますので,現時点では,このような取組例も紹介し,各大学がより柔軟に行えるということを促していくということ,そういった取組を行うことは認められているんだということを,社会にもこのように示していくということかとは考えておりますが,また,御意見を踏まえながら,引き続き,御指摘の点についても検討していきたいと考えております。

【永田分科会長】  越智先生がおっしゃるのはよく分かりますが,そのように,どう行うのがよろしいでしょうか。越智委員がおっしゃっているのは,柔軟であるが,柔軟過ぎて学域にどのように書くのかなど,具体的な問題です。それは,ぜひとも事例をつくって,皆さんにお知らせするのは重要なことかと思います。ありがとうございました。
 松下委員,どうぞ。

【松下委員】  ありがとうございます。取りまとめ本当にお疲れさまでございます。
 ちょうど今,出た部分についてと,もう1つ,大きな点についてです。今,御質問があった34ページの①’の図なんですが,ダブルメジャーとか,メジャー・マイナーといったときに,このように,1学位プログラム内の複数コースの抱き合わせという場合もあるかと思いますけれども,それ以外に複数の学位プログラムという場合もあるのではないかと。むしろ,アメリカなどではそういう場合が結構多いのではないかと思うんですが,それは想定されていますでしょうか。もしされているようでしたら,事例として,そういう図式も上げていただければと思います。
 それから,もう1つ,これは少し大きな話なんですが,32ページの最後のまとめの段落なんですけれども,「18歳人口の急速な減少を見据えた高等教育の在り方についても検討が必要である」と書かれているんですが,これはグランドデザイン答申ほか様々なこれまでの答申の中で,ずっと議論されてきていると思います。今回,改めて一番最後の文章として,これを入れられた意図があれば,お示しいただければと思います。何か新しい論点が出てきたので,こういったことを付け加えられたのでしょうか。その点,御説明いただければと思います。よろしくお願いします。

【永田分科会長】  それでは,初めの質問は事務方からお答えして,後ろの質問は吉岡委員からお答えいただきます。

【一色大学振興課課長補佐】  事務局でございます。
 1点目の御質問でございますが,同じページの同じ資料の②が,それぞれの学位プログラムごとで運営していく形としてあるものでございます。ここでは,いわゆる教教分離と呼ばれているものになりますけれども,教員の所属組織と学生の所属組織が分離する形にしまして,それによって柔軟なプログラム運営が行える,プログラムの改廃も含めた柔軟な運営が行えるような取組でございます。これは大学も,これもまた複数ございますので,こういった,まさに様々な取組ができることを示していくということが重要かと思いまして,このような資料を準備させていただいた次第でございます。
 以上でございます。

【吉岡委員】  よろしいでしょうか。最後の部分ですけれども,これまでに加えて何か新しい事態が生じているという意図ではございません。ただ,このところでは,18歳人口は減少しているけれども,一応進学率はあるということで,大学は一定程度保たれている。経営的にも保たれているわけですけれども,今後,そのことに対してどうなっていくのかということ,それから,大学等であれば,例えばここに経営等というのを入れてございますけれども,それが破綻した場合の学生の扱い等についても,いろいろな課題があると。この点につきましては,ここでの質保証という範囲を超える問題であるということで,今後も検討を続けていくべきであろうと,そういう趣旨でここに加えてある次第でございます。これはむしろ質保証のところでは言い切れていない話です。

【永田分科会長】  どちらかというと,経営でしょうか。

【吉岡委員】  経営の問題も絡んでいますし。

【永田分科会長】  広範囲ですが,前半のほうはもう少し主専攻,副専攻と同じように説明をしていただけないでしょうか。

【一色大学振興課課長補佐】  学位プログラムの場合はそれぞれ修了要件がございますので,その修了要件を満たしていくということが学位プログラムを修了したということになるわけですけれども,複数の分野を学ぶ時に124単位全てをそれぞれ独立して履修するのかどうかという問題がありまして,その際,①’のような形で,修了要件自体は,全体として124単位なんですけれども,それぞれの学生の学び方によって,専門分野が変容していくという部分があるようなやり方が①’でございます。
 ②のほうにつきましては,それぞれまさに専門性が独立した形になりますので,これらの学位プログラムを複数学ぶことも可能ですけど,その場合は,複数の学位プログラムに所属することになりますので,124単位掛ける2のような形になる部分がございます。一部,その中で共通性あるものについては,単位互換等々を行うことも可能かと思いますけれども,ダブルディグリーなのか,それともダブルメジャーなのかというところで,②のほうについてはダブルディグリーで,最初のほうはダブルメジャーということで,考え方が整理されているものでございます。

【永田分科会長】  ダブルディグリーであっても,124単位の中で120少々で皆さん取らせているわけですから,言われた各大学がカリキュラムの組み方をどのように考えるかであって,124単位を2つというわけではないです。

【一色大学振興課課長補佐】  単純にそうではございませんけれども,基本的にそれぞれのプログラムごとに修了要件が定まりますので,最低修了要件は124単位になるということでございます。
 その中で,それぞれの学修の中で共通性があるものについて,単位互換等を通じて重複することも一部可能でございますけれども,それぞれのプログラムにおいても124単位ということになります。

【永田分科会長】  例えば外国と行っている場合は単位互換をしていますが,これは同じ大学の中で,同じ科目を開講している相手方がどこの学生さんが取ってもいいですという科目である場合は単位互換ではないです。

【一色大学振興課課長補佐】  そうですね。

【永田分科会長】  そのプログラムが開講されている科目,卒業要件はいいとして,あなたはこのプログラムはA,B,C,Dを取ってください。こちらのプログラムはA,B,Eを取ってくださいという場合は,A,Bは共通なので,当然それは構わないということです。単位互換という意味合いはありません。

【一色大学振興課課長補佐】  そうですね。おっしゃるとおりです。

【永田分科会長】  各大学の工夫でそこは行っていただければいいという理解です。海外と行う場合はもう少し,フレキシブルになっていて,学内で単位互換もないので,開講の仕方によると思います。

【松下委員】  今,ダブルディグリーとダブルメジャーの御説明があったんですけれども,1つの大学の中で2つの学位プログラムを履修していくような場合というのは,ダブルディグリーと普通は言わないのではないでしょうか。複数の大学で,別々の学位を取る場合はダブルディグリーと言うと思いますけれども。

【永田分科会長】  主専攻,副専攻よりも,どちらも主専攻のような感じです。

【松下委員】  はい。同じ大学の中での,2つの学位プログラムを取るような場合はダブルメジャーというのではないかと私は理解しておりましたけれど,その辺り,また整理していただければと思います。

【永田分科会長】  先生の御理解で良いと思います。また整理して,事例集を作ってください。

【松下委員】  よろしくお願いします。ありがとうございます。

【永田分科会長】  髙宮委員,どうぞ。

【髙宮委員】  ありがとうございます。吉岡先生,それから質保証システム部会の皆さん,本当におまとめどうもありがとうございました。当初,非常に難しい課題だと思っておりましたけれども,おまとめの結果,かなり方向性が明確化されたのではないかと思っております。改めて御礼申し上げます。
 内容につきましては特に意見はないんですが,質問に近いことがクロスアポイントメント制度に関してございます。クロスアポイントメント制度を柔軟に使いますと,大学の幅がいろいろ広がって,いろいろなところに対応できる可能性が大きくなって,ありがたい制度ではないかと思います。ただ,きっと将来的に,それが細則においてどの程度,どのように決められるかによって,大分方向が変わるかと思いますけれども,そのうち,1つ書いてある範囲内で気になりましたのは,教員の要件としまして,こういう教員が基幹教員になれるというところに単位数が規定されていたように思います。近頃は部会でも,大学のガバナンスについて大分話し合われてきたところ,例えば,そのようなことが要件に入るケースというのは想定なさっていらっしゃるのでしょうか。むしろ,それは運営上の別の課題として,ここには含めないようなことをお考えなのか,質問させていただきたいと思います。よろしくお願いします。

【永田分科会長】  ありがとうございます。

【吉岡委員】  今の点につきましては,ここで扱っているのは基本的に教育の質保証という範囲で議論しておりますので,基本的には授業という視点を中心に展開しています。おっしゃるガバナンスというのは,例えば大学の運営等に関わるということかと思いますけれども,ここでは,例えば大学の運営に関わる人間を基幹教員としてカウントするかという話ではないと理解しております。

【永田分科会長】  ありがとうございます。

【髙宮委員】  ありがとうございました。

【永田分科会長】  追加で御説明いたします。

【柿澤高等教育政策室長】  今の点となるところですけれども,先ほど小林先生から授業料の関係,28ページのところで御意見をいただいたところでございますけれども,情報公表につきまして,これは休学時の学納金等に関連して,法的な位置づけがというお話がございました。
 現状,各大学が公表すべき情報事項につきましては,学校教育法施行規則,こちらの中で,授業料,入学料,その他の大学が徴収する費用に関することも情報公表事項として省令上,規定をされております。28ページ目の上から2つ目の丸で,今回,通知等により措置をするとされた背景といたしましては,教育再生実行会議の第12次提言の中で,大学の学事歴,卒業時期等の多様化,柔軟化ということが提言をされている中で,早期卒業ですとか修業年限の柔軟化等に係り,例えば学生が48か月未満で卒業するといったときの学費の取扱いについて,基本的に多くの大学では,それをあらかじめ説明しているということは一般的にはないという状況も踏まえまして,こういったことについて考え方を整理して,学生等に説明すべきであることを通知により,明示をしようということでございます。

【永田分科会長】  ありがとうございました。質保証システム部会のまとめですが,皆さんにはご理解いただけたのではないかと思います。この後,細かいてにをは等の修正を見つけた場合は,吉岡委員に直していただくということにさせていただきます。
 それから,先ほども途中でありましたが,設置基準など,そのほかのルールの改正,また,諮問いただいて,大学分科会でも見ていきます。今度は具体的な現場感覚の議論になるかと思いますがよろしくお願いいたします。
 それでは,吉岡委員,また部会の皆さん,ありがとうございました。
 次の議題です。次期教育振興基本計画について,事務局から簡潔に御説明いただいて,若干の意見交換をさせていただきます。

【柿澤高等教育政策室長】  それでは,資料2を御覧いただければと思います。
 本年2月7日に,第130回,中央教育審議会におきまして,次期教育振興基本計画の策定について諮問が行われましたので,その内容を簡単に御紹介いたします。教育振興基本計画,平成18年に全面改正された教育基本法に基づき,政府が策定する教育に関する総合計画でございます。平成20年に初めての教育振興基本計画が策定されまして,現在は,平成30年から令和4年度までの第3期計画の期間中,4年目ということでございます。
 諮問文の本文は3ページ目以降についておりますけれども,こちら,資料1ページの概要に基づいて説明をさせていただきます。諮問におきましては,今,学校で学ぶ子供たちが社会の中心になって活躍する2040年以降の社会,この特徴といたしまして,人口減少や高齢化,デジタルトランスフォーメーション,グローバル化や多極化,地球環境問題などが,これまで以上に進行することが予測されること。また,変動性,不確実性,複雑性,曖昧性の時代と称されるように,そもそも先行きが不透明で,将来の予測が困難な未来を迎えようとしている。こういった中で,私たちが望む未来を私たち自身で示し,作り上げていくことが求められる時代であるとされております。
 また,検討の視点としまして,2つ重要なコンセプトがございまして,1つは超スマート社会,Society5.0,こちらにおきましては,一人ひとりの人間が中心となる社会である。また,労働市場の構造や職業そのものの抜本的な変化が生じていく。また,ウエルビーイング,こちらは一人ひとりの多様な幸せであるとともに,社会全体の幸せでもあるウエルビーイング,こちらが実現されるように制度等の在り方を考えていく必要があるとされております。
 その上で,次期教育振興基本計画に求められることといたしましては,こちらの枠囲いにございますけれども,変革を起こすコンピテンシー,これはOECDのほうで言っておるものでございますが,新たな価値を創造する力,対立やジレンマを克服する力,責任ある行動を取る力などが変革を起こすコンピテンシーとされております。
 また,2点目といたしまして,幼児教育,義務教育の基礎の上に高等学校,さらには大学,専門学校,大学院までが,より一層の連続性,一貫性の中で有機的につながりを持つとともに,これらが産業界や国際社会も含めた幅広い社会のニーズに応えるものとなること,絶えず変化する予測困難な社会における人材移動を支える社会人の学び直し,リカレント教育の必要性がかつてなく高まっていること,全ての人がお互いを尊重し,誰もが生き生きとした人生を享受することのできる共生社会を目指し,その実現に向けた社会的方針を推進していくことなどが確認をされております。
 その下の記述の部分は,令和の日本型学校教育答申や,大学分科会で取りまとめていただきましたグランドデザイン答申を含めまして,第3期中の計画の中での進展経緯でございます。
 また,新型コロナウイルス感染症を契機として,デジタルが持つ学びにおける可能性が提示される機会となったこと,学びの在り方の変容をもたらしつつあること。また,学校の持つ福祉的機能や教師の存在意義,リアルな体験の持つ価値の再認識の契機となった,こういったことも踏まえて,次期教育基本振興基本計画について検討することとされております。
 具体的な諮問事項につきましては,こちら,1ページの下のところ,①から④までございます。①としまして,改正教育基本法の基本理念,現行計画の成果と課題,国内状況の変化,国際環境の変化等を踏まえた今後の教育政策に関する基本的な方針についてと。特にデジタルとリアルの最適な組合せ,全体が連続性,一貫性を持ち,社会のニーズに応えるものとなる教育や学習の在り方について。②としまして,今後5年間の教育政策の目指すべき方向性と主な施策について。③としまして,共生社会の実現を目指す学習を充実するための環境づくり。④としまして,多様な教育データをより有効な政策の評価,改善に活用するための方策についてとなってございます。
 また,資料2の最後のページ,9ページを御覧いただければと思います。教育振興基本計画につきましては,中央教育審議会教育振興基本計画部会,こちらで主に検討がなされるということでございまして,先般3月22日に,こちら,基本計画部会の第1回会議が行われたところでございます。委員名簿はこちらのとおりでございますが,大学分科会の副分科会長もお務めいただいております渡邉先生が基本計画部会長を務められ,また,各分科会長が基本計画部会の副部会長を務めるということで,永田大学分科会長が基本計画部会の副部会長という形,また,大学分科会の委員の先生方でいいますと,村岡委員,村田委員,大森委員,吉見委員にも,教育振興基本計画部会の審議に御参画をいただいているところでございます。
 以上でございます。

【永田分科会長】  ありがとうございます。平場から議論が始まっています。次のページ,今,御説明いただいた後のこれまでの教育振興基本計画というところを見ていただくと,今日の議論の参考になると思います。第1期,第2期,第3期の教育の目指すべき方向性というところに①から④,①から⑤まであります。この部分の議論がようやく始まってきたという段階です。もし御意見があれば,このような観点でいただけるといいかと思います。例えば,第1期では社会全体でという文言が,第2期では社会を生き抜くになっていて,第3期では社会の持続的な牽引をするという形で社会と教育について述べているわけです。同じように,第1期では安全・安心と言っていて,第2期では学びのセーフティーネットという言葉になっていて,第3期では生涯、セーフティーネットは残っていて,さらに教育施策推進という文言が入ってきています。今度,第4期に話す内容として,これと関連する必要はありませんが,こんな観点があったらいいのではないかということをおっしゃっていただければいいと思います。
 この部会に前は単なる一委員で参加していたときもありますが,どちらかというと,初等中等に引っ張られて,初等中等がかなり前に出ます。もちろんそれで悪いわけではありませんが,高等教育という分量が少なかったです。ところが,この議題の後に述べますように,ようよう官邸のほうも,高等教育に対して関心を示し始めているという,現状だと思います。ですから,今度の基本計画はもう少し高等教育の立場から入れていくものがあっても良いのではないかと思っています。
 初等中等は関わっている方が山のようにいらっしゃいますので,当然議論としてはその内容がメインとして出てきます。これは高等教育の基本計画ではなくて,我が国の教育の基本計画なので,初等も中等も高等も専門学校,それから大学院も全部入っていくということで,次の5年間にこのキーワードが大切ではないかという観点で幾つかお聞きしたいと思いますが,いかがでしょうか。
 清水委員,どうぞ。

【清水委員】  いつも教育振興基本計画は勉強させていただいております。臨教審が設置されたのが1984年ですから,それから第4期の基本計画期には40年が経つわけです。臨教審のときに,キャッチフレーズが生涯学習体系への移行だったと思います。第2期の基本計画には,生涯学習社会の構築というのはあるのですが,生涯学習体系への移行というのは,まだ現段階でも実現されていないと思います。
 第2期は,高等教育においては学習時間の確保というのが大きな目玉でした。第3期は,学習の充実といいますか,学習の成果,これが表に出てきました。第4期は多分学び続けるとか学び直しとか,そういう言葉がキーワードになっていくと思います。まさに人生100年時代における学びの連続性,継続性です。そのときに大事なのが,中教審を中心に高大接続というのがかなり議論されて,ある程度の制度設計もでき,施策に移ってきています。今度は大学と社会との接続です。これが生涯学習体系の移行では重要になってくるわけです。したがって,高大接続の次の新しい言葉として,「大社接続」です。ぜひこういう観点を第4期には取り入れて,40年経って,日本もようやく生涯学習体系への移行といったものが実現できる見通しが立つんではないでしょうか。ぜひ「大社接続」という考え方を入れてもらいたいと思います。

【永田分科会長】  清水委員,ありがとうございます。全体で言えば,教育と社会の接続ともっと大きく捉えてもよろしいでしょうか。

【清水委員】  それでも構いません。

【永田分科会長】  ありがとうございます。
 金子委員,どうぞ。

【金子委員】  金子です。発言の機会をいただきありがとうございます。
 私からもただいまの清水委員と似た観点なんですけれども,今回の基本計画の諮問を拝見させていただきますと,3ページのところ,幼児教育から大学院まで連続性,一貫性というワードでしたり,また,社会人の学び直し,リカレント教育と,こういった必要性について言及があります。そうしたことと,あと全体の文脈に鑑みますと,この諮問は生涯学習を教育の柱に据えることにかじを切ったのかなと,このように理解をさせていただいております。
 こうした認識でいいかどうかというのを,もし必要があれば,後ほどお答えを伺いたいと思うんですが,その上で2点申し上げたいと思うんですが,幼児教育だとか初等中等教育が,コミュニティースクールだとか地域学校協働活動への参画といったものが,学校を核とした地域づくりにつながり,生涯学習社会の基盤としての役割を果たしていると期待されていると思いますし,一方で,高等教育については,地域連携プラットフォームというものが生涯学習の基盤としての役割を果たせるんじゃないかと思っております。そうなると,高大接続の観点から見ても,また,高卒で就職した人の学び直しの観点から見ても,地域学校協働活動と地域連携プラットフォームが相互に連携するということが効果を発揮することにつながるんじゃないかと考えております。
 2点目は,今後の社会を見据えた場合に,リベラルアーツ教育をはじめとするSTEAM教育の充実が必要だと言われております。そのために,例えば教育機関においては,企業に在籍しながら通学できるようなカリキュラムの編成だとか,休日に開講する講座,施設の地域への開放など,また,行政や企業においては,サバティカル休暇をはじめとする有給の教育休暇制度の創設だとか,学び直しをした社会人に不利益を被らせないというのはもちろんなんですが,むしろこういったことを評価する制度の構築など,それぞれの立場で連携しながら,学び直しに資する施策の推進も重要ではないかと思っておりますので,ぜひともそういった観点も議論の俎上に載せていただければと思っております。
 以上になります。

【永田分科会長】  ありがとうございます。最後のところは,厚生労働行政が非常に重くて,こちらで非常にいいものをつくって押し込まないといけません。文科省で行うわけではないので難しい部分もありますが,認識は皆さん同じだと思います。
 熊平委員,どうぞ。

【熊平委員】  ありがとうございます。1ページ目に既に書かれている,ウエルビーイングを目指すということを実現するための教育というメッセージを,ぜひ強く打ち出していただきたいと思います。
 その観点から、2点あります。1点目は、自分の幸せをしっかりと創り上げていくためにキャリア教育を行うことが大切です。現在は,キャリアに対する選択について、大学生になってから考えるのが一般的です。しかし、海外を見ますと,中学校ないしは遅くとも高校でキャリアを選択し,その前提で教育も選択している国が多くあります。日本においても、遅くとも高校からは、自分のキャリア選択に合わせた、より目的的な教育を受けることができる教育にシフトしていくことが望ましいのではないかと思います。誰もが難関大学に入学することが幸せという考え方ではなくて,一人ひとりの多様性に合わせて人生の選択ができて,それがリスペクトされる,どんなキャリアもリスペクトされるような,そんな価値観を持てる教育が望ましいのではないかと思います。
 2点目は,社会の幸せについてです。自分だけが幸せになるのではなく,社会も幸せにしていかなければなりません。そのために、シチズンシップ教育を行い、共生するための力を育むことも大切です。一人ひとりが、いじめのない学校や,多様な人々が安心して共生する社会をつくる担い手となり、また、社会の課題解決に貢献できる主体的な人に育つことができる教育が期待されています。自分も、周囲も、社会も幸せにする市民を育むシチズンシップ教育の重要性についても、盛り込んでいただきたいと思います。
 以上です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。それでは,短めにお願いいたします。1人1分半でお願いいたします。
 川嶋委員,どうぞ。

【川嶋委員】  ありがとうございます。川嶋です。手短に。高等教育について言えば,キーワードはユニバーサルアクセスだと思います。既に20年ぐらい前に,マーチン・トロウはユニバーサル段階からユニバーサルアクセスへということを言っているわけですが,皆さん御指摘のように,リカレントとか学び直しということは,つまりいつでもどこでも誰でも高等教育にアクセスできるようになることです。当然,質保証は伴うべきと思いますけれども,オンラインの充実によって,ユニバーサルアクセスというのは実現可能だと思います。
 それから,ユニバーサルアクセスの実現に関連して,もう1つ指摘したいことは,入試・入学の国から卒業の国への転換が不可欠で,日本では大学入学試験に,国を挙げて多くのエネルギーを投入しているわけですが,そうではなくて,現在のように大学に入る際に質保証を求めるのではなく,大学を出るところでしっかり質保証する,そういう社会に変えていく,そのためにもユニバーサルアクセスというのは非常に重要な概念かと思います。高等教育へのアクセスは保証するけれども,自動的に出口である卒業や修了を保証しているわけではないからです。
 以上です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。
 長谷川委員,どうぞ。

【長谷川委員】  手短に。教育全体として,特に高等教育で,それを受ける個人がどういう意義があってそうするのかということと,その結果としてつくられた人材が社会にとってどうなるかということは,はっきり分けて目標を明らかにしていただきたいと思うんです。個人の幸せのため,個人がよりよく自分のやりたいことや自己実現を図り,よりいい状態を自分に課していけるようなこと,それは個人の幸せのための教育の基本で,社会は,私は,これは特に高等教育は,民主主義というものがちゃんと実現できるようないい社会を運営できる人材をつくることなんだと思うんです。それは,両方とも目的は同じだと思いますので,個人として何のためか,社会にとって何がいいかということの基本を明らかにしていったつくりがいいなと思いました。

【永田分科会長】  ありがとうございます。
 千葉委員,どうぞ。

【千葉委員】  ありがとうございます。ここ最近の株価の大きな転換というのが,未来は現在の延長線にあるのではないということで,高等教育機関,特に大学にはイノベーションということが求められています。また,最近のトレンドとしては,学修者本位ということも大変強調されているところでございますので,今後のこういう指針については,育成するということではなくて,教育力よりも学習力というところにスポットライトを当てて,様々なことに取り組むべきではないかと思います。

【永田分科会長】  ありがとうございます。
 松下委員,どうぞ。

【松下委員】  ありがとうございます。生涯学び,活躍できるとか,学びのセーフティーネットといったことで,学びということが強調されているんですけれども,先ほど清水委員がおっしゃったような大社接続というのも,単に大学から就職へという一方向だけではなくて,仕事をしながらまた戻ってくるという双方向的であるということですよね。スリーステージモデルからマルチステージモデルに変わっていくということもよく言われますけれども,学び続けるためには,仕事の場もそれに対して協力的でないといけないということ,つまり教育と仕事との関係が問い直される必要があるということですね。それから,それから学びのセーフティーネットについても,子供の貧困ということが問題になっている中で,教育と福祉の関係,その両者をつないでいくと,そういったことも入れていただければと思います。よろしくお願いします。

【永田分科会長】  ありがとうございます。これから話合いが始まります。先生方にお聞きしたいろいろなキーワードを使って,小中高が共有できる内容で,話は進んでいくと思っております。
 私自身もいろいろとその中で言って,大体はじかれるほうですが,私は一人ひとりの潜在力というか,もう少し持っているいいものを出してやらないと駄目ではないかというほうに,もう1回,持っていきたいと思っています。今はどちらかというと,そちらではないほうをたとえばセーフティーネットという言葉でくくられてきているので,もう1回チェンジしていかなければいけないのではないかと思っています。それから先ほど長谷川委員がおっしゃったのは,民主主義というか,社会の組成がどうやって成り立っているかということをよくよく,我々,子供から大人まで知らなければいけないのです。令和の日本型教育というものに質問させてもらったことがあります。日本型教育とは何ですかと聞くと答えが出てきます。令和の教育は何ですかと聞いても答えは出てきますが,令和の日本型教育とは何ですかと聞いた途端に沈黙されたということがありまして,そのような問題なのだろうと実は思っています。
 みんながアクセス可能になりながら,社会をつくっていく一員として育っていくということは非常に重要なポイントで,何とかそれを実現するためにどうしたらいいのかという議論が起こると良いのではないかと思っております。そのようなことは出ているので,皆さんのおっしゃったことはできるかぎり全部伝えます。それプラス,私もそのように思っていますと意見を申し上げました。
 それでは,この部分は随時,進行に合わせて,御報告を続けていくこととさせていただきます。3番目ですが,高等教育行政に関与する政府の諸会議の動向についてということで,これは情報共有です。事務局、よろしくお願いいたします。

【柿澤高等教育政策室長】  それでは,高等教育行政に関連する政府の諸会議の動向につきまして,時間の関係もございますので,できるだけ簡潔に報告をさせていただきます。
 まず,資料3を御覧いただければと思います。こちらは教育未来創造会議の関係する資料でございますけれども,初めにメンバーの構成を御紹介したいと思います。一番最後のページ,21ページを御覧いただければと思います。昨年12月に,新たに官邸に設置された会議でございますが,こちらは内閣総理大臣を議長,内閣官房長官を議長代理といたしまして,文部科学大臣を含む関係省庁の大臣,また,有識者の先生方が,この構成員という形になってございます。この大学分科会からは清家委員,日比谷委員にも御参画をいただいているというところでございます。
 また,教育未来創造会議の下にワーキンググループが設けられております。ワーキンググループについては,文部科学大臣と各有識者の先生方ということで,また,ワーキンググループの座長は清家委員が務められているということで,これまでに本体会議が12月に1回,また,ワーキンググループが3回開催をされておりまして,初夏を目途に,第1次提言を取りまとめるべく検討を進められていると聞いております。
 それでは,資料の1ページ目にお戻りいただければと思います。教育未来創造会議の資料の抜粋でございますけれども,検討の趣旨といたしましては,1ページ目にございますとおり,教育・人材育成といった人への投資は成長の源泉である。人への投資を通じた成長と分配の好循環によって,新しい資本主義の実現に資するということでございます。
 また,主な論点案が,2ページ目に記載をされております。主な論点案といたしまして,3点ございます。1点目として,未来を支える人材を育む大学等の機能強化,この部分につきましては,既に論点整理の案でかなり具体的な記述が出てきておりますので,その点は後ほど報告いたします。また,2としまして,新たな時代に対応する学びの支援ということで,大学卒業後の所得に応じた出世払いを行う仕組みを含む,教育費等への支援。また,3としまして,学び直し,リカレント教育を促進するための環境整備,こちらが主な論点案となっております。
 では,こちらの資料2の通しページ番号で言いますと,3ページ目を御覧いただければと思います。こちらは第3回ワーキンググループにおいて配付をされた論点整理案でございます。こちらの概要をざっと御説明いたします。まず,我が国の現状といたしまして,2050年には,日本の人口は1億人まで減少ということで,生産年齢人口比率が下がると。また,世界GDPにおける各国の比率,こちらも日本が相当,2.7%になるとの予測もあると。また,実質賃金の伸びは1990年代以降,日本は低調な状態が続いている,こういった現状。
 また,人材育成に取り巻く課題といたしまして,日本のデジタル競争力は28位である。また,IT人材需給に関する試算では,2030年には先端IT人材が54.5万人不足する。また,DXを進めるに当たっての課題として,人材不足を挙げる企業の割合が日本においては高いと,こういった課題が指摘されております。
 また,次のページ,4ページに行きまして,こちらも課題ということでございますから,上から3点目でございます。OECD諸国の中でも,日本はSTEM分野に進学する,入学する者,大学学部段階はOECD平均より大幅に低い状況。2014年から2019年までの5年間で,OECD加盟国の多くは,STEM系学部の学生数を増やしている一方で,我が国はほとんど変わっていない。修士号,博士号の取得者も諸外国に比べて少ない。また,大学の学部段階で理工系を専攻する女性は10%にとどまっており,男性の31%に比べると低い状況と。特に大学学部の女性入学者に占めるSTEM分野への入学者は7%であり,OECD平均に比べても大幅に低い状況。また,世帯収入が少ないほど大学進学を希望する割合が低いということ。日本企業のOJT以外の人材投資対GDP比は,諸外国と比較しても最も低く,低下傾向。こういった課題が指摘されているところでございます。
 これを踏まえまして,基本的な考え方としまして,基本理念が示されているところでございます。4ページ目の一番下ですが,日本の社会と個人の未来は教育にある。教育の在り方を創造することは,教育による未来の個人の幸せ,社会の未来の豊かさの創造につながるといったこと。
 また,次の5ページ目でございますけれども,上から3点目,教育人材育成といった人への投資は成長への源泉であるといったことが述べられております。
 また,ありたい社会像として,4点掲げられております。1点目は,多様な人材が能力を最大限発揮でき,適切に評価される社会の実現。2点目として,(2)として,社会課題への対応,SDGsへの貢献。(3)として,生産性の向上と産業経済の活性化。(4)として,全世代学習社会の構築ということ。
 また,ありたい社会像を踏まえまして,目指したい人材育成の在り方も掲げられてございます。未来を支える人材像として,主体性,創造性,共感力のある多様な人材ということで,枠囲いの中に,例えばということで,幾つかの人材についての例示がされているところでございます。
 また,6ページ,(2)でございますが,今後,特に重視する人材育成の視点ということでございますが,デジタル,グリーンなど成長分野における2030年,2050年の労働需給,雇用創出効果の推計や求められるスキル,課題を明らかにした産学官が目指すべき人材育成の大きな絵姿を政府として提示をすると,その上で大学等の機能強化,学びの支援の充実,学び直し促進のための環境整備を強力に推し進め,社会変革を促していくとされております。
 7ページ目以降が,具体的な方策でございます。まず,1点目,1,未来を支える人材を育む大学等の機能強化といたしまして,我が国の成長に向けた大学等の再編促進と産学官連携の強化ということで,デジタル,人工知能,グリーン,農業,観光など科学技術や地域振興における課題の解決に挑み,我が国の成長や社会の発展に貢献する高度専門人材の育成は不可欠であるといたしまして,産業界からの人材需要や進学者のニーズに対応できるよう,学部,学科構成を大胆に見直すなど,大学の学部等の再編を促進すること。また,私学助成をはじめとした各種助成制度のめりはり等も活用しながら,諸学問のバランスのよい学習に取り組むための環境の整備。一方で,定員未充足大学への私学助成の厳格化や18歳人口の減少による影響も含めた大学の経営困難から学生を保護する視点で,計画的に規模の縮小や撤退等がなされるよう,経営指導を徹底する。
 また,教育プログラムの策定に当たって,企業や自治体の参画を促す。産学官協働による人材育成機能強化といったことが述べられております。検討の方向性ということで具体的な取組が述べられておりますけれども7ページの下のところから,課題解決が必要な重点分野の再編,統合,拡充を促進する仕組みの構築ということで,こちらは学部,大学院の設置要件となる専任教員数や校地校舎面積基準,標準設置経費の見直し等が掲げられているところでございます。
 また,次のページ,8ページに行きまして,高専,専門学校,大学校,専門高校の機能強化ですとか,3としまして,ネットワークの構築,また,4としまして,大学の教育プログラム策定等における企業,自治体の参加の促進といったこと。また,6では地方自治体と高等教育機関の連携強化促進ということで,地域連携プラットフォームや競争の場の構築の推進といったことも入ってございます。
 また,7としまして,地域における大学の充実や高等教育,進学機会の強化なども盛り込まれているところでございます。
 次に,9ページ,(2)でございますけれども,学部,大学院を通じた分離横断教育の推進と,卒業後の人材の受入れ強化というところでございます。こちらも検討の方向性として枠囲いにございますけれども,文理横断による総合知創出ということで,人文社会科学系における理系科目,自然科学系における文系科目の設定といった大学入学者選抜における文理の融合の観点からの出題科目の見直しですとかリベラルアーツ教育の強化,入学後の選考分野の決定,転換,入学等を行いやすくする仕組み,全学的なデジタルリテラシーの向上,こういったことが述べられてございます。
 その他,ここの(2)の関係では大学院教育の強化,また,10ページに行きまして,博士課程学生向けジョブ型研究インターンシップの検証。4としまして,大学等の技術シーズを生かした産学での博士課程学生の育成,また,企業や官公庁における博士人材の採用,任用強化といったことが盛り込まれております。また,こちらは会議,ワーキンググループ等々でも,度々女性の活躍推進という観点からの意見も委員等からございまして,その中では,理工系を学ぶ女性像など女性活躍プログラムの強化ですとか,女子中高生の理系選択者の増加に向けた取組の推進ということも盛り込まれております。
 また,11ページに行きまして,グローバル人材の育成強化という観点からは,遠隔オンライン教育の利点を積極的に活用しながら,国際的な学生等の交流の再構築を行うということで,コロナ禍で停滞した国際的な学生交流の再構築,産学官を挙げてグローバル人材を育成していくこと,また,高度外国人材の育成活用強化といったことも盛り込まれているところでございます。
 また,デジタル技術を駆使したハイブリッド型の教育の転換,こちらが11ページの(5)のところでございますが,こちらにつきましては,12ページに具体的な検討の方向性がございますけれども,12ページの検討の方向性の1にあります,知識と知恵を得るハイブリッド型教育への転換促進というところでは,これは先ほど吉岡部会長から御報告をいただきました,質保証システム部会の審議まとめにも関わるところでございますが,オンライン教育を現行の単位上限を超えて実施できるようにするなど,規制を緩和する特例の創出ということが,こちらの教育未来創造会議のほうでも言われております。また,大学のDX促進という観点で,こちらは学籍管理等の電子化の取組促進と併せまして,電子ジャーナルの適切な活用促進といったことも入ってございます。
 その他,こちら教育未来創造会議の論点整理の中では,大学法人のガバナンス強化ですとか,(7)としまして,初等中等教育の充実についても検討の対象となってございます。
 14ページからは,こちらは新たな時代に対応する学びの支援の充実,また,リカレント教育の論点,これらについては,今後のワーキンググループでの意見を踏まえて適宜追加がされると聞いてございます。
 教育未来創造会議の検討状況は以上でございますけれども,もう1点,関連する会議といたしまして,参考資料2の未来人材会議の設置についてという資料を御覧いただければと思います。教育未来創造会議,今,御説明した会議は官邸に設けられる会議になりますけれども,こちら,参考資料の2にございます未来人材会議につきましては,こちらは経済産業省に設置される会議ということでございます。こちらの会議は,2030年,2050年の未来を見据えて,産学官が目指すべき人材育成の大きな絵姿を示すと。採用,雇用から教育に至る幅広い政策課題に関する検討を実施するということでございまして,資料の2枚目に委員名簿も付けております。こちらの委員のうち,柳川範之委員が座長を務める会議でございます。
 こちらの未来人材会議ですけれども,検討事項は教育未来創造会議と,多分に問題意識等が重なる部分もございまして,ページの通し番号で言いますと,9ページを御覧いただければと思います。9ページ,縦になって,2つのスライドが入っている格好になりますけれども,そのうちの66と書いてあるほう,現状と課題というところでございます。こちらも未来人材会議のほうで確認をされている資料になりますけれども,現状課題といたしまして,産業界は2030年,2050年を見据えて求められるスキル,能力を十分明確化し,教育機関に発信することができておらず,高等教育機関もまた産業界から求められる人材ニーズに必ずしも柔軟に応えられてこなかったと。学び直しについても,大学,大学院を活用したプログラムに関心が高まりつつあるが,多くの企業は,いまだに積極的かつ戦略的に活用しているとは言い難く,高等教育機関もまた実践的な学び直しの場を用意しようとするモチベーションは限定的であると。
 他方,大学における研究は役に立つものだけになればよいとの見方は一面的,役に立つかどうか分からない研究も含めて,大学の研究価値のポートフォリオが全体として産業界から評価されていくことが必要と。また,日本では諸外国と比べて博士人材の活躍の場が圧倒的に限られていることも課題ということで,企業等における採用拡大を促す必要があると。また,海外留学者数を反転させる必要がある。こういった現状,課題認識の下で,こちらの教育未来人材会議においても検討が進められているというところでございます。
 以上でございます。

【永田分科会長】  ありがとうございます。これはこういうことだという理解でいいと思いますが,御質問があればお受けします。いかがでしょうか。
 相原委員,どうぞ。

【相原委員】  横浜市大の相原ですけど,質問ですよね。今,求められているのは。

【永田分科会長】  はい。意見を言っても,言いに行く人がこの中にはいません。

【相原委員】  すみません。資料3の10ページのところに,女性の活躍推進とありまして,そこで,理工系を学ぶ女性をどうしたら増やせるかですが,大学の命はカリキュラムだと思うんです。本学は理学部の男子と女子の比が入学してくる比率はほぼ1対1で,年によっては女性のほうが多いんです。特別に何のプロモーションもしておりません。どうしてこういうことになるのかというのを確認するため,ヒアリングしましたら,本学ではいろいろなことが学べるカリキュラムだから,理学部に入っても文系も理系も学べると。だから,広く知識を得た上で,自分が理学部で何をやりたいか,理系として何をやりたいか決めて,そこから研究ができるという意見が非常に印象的でしたので,どういう対応をするかではなくて,どういうカリキュラムを理系で与えられるかで,リケジョと言われる人たちを増やすことができるのではないかと思っております。
 本学の経験からです。簡単にコメントさせていただきました。

【永田分科会長】  ありがとうございます。そのほかいかがでしょうか。
 後藤委員,どうぞ。

【後藤委員】  日本の現状とか人材育成を取り巻く課題を説明していただいたんですが,日本の教育のよいところもしっかり分析して,それを生かして伸ばしていくという視点も必要と思います。それから,御説明があったところは,新しい課題というよりは従来からの課題もかなりあったかと思いますが,それが改善できなかったのはなぜかという分析も含めて,今後,いろいろ検討していく必要があるかと思いました。

【永田分科会長】  ありがとうございます。何かチャンスがあったら言いたいです。よろしいですか。また,最後に少し時間が残るかと思いますので,所定のことを先にやらせていただきます。
 4点目に,高等学校卒業程度認定審査(仮称)制度を事務局から御説明をいただきたいと思います。

【森下高等学校改革推進室長】  恐れ入ります。初等中等教育局で高等学校を担当しています,森下と申します。お時間をいただきまして,ありがとうございます。
 私からは,大学への飛び入学制度に関連いたしまして,新しく創設をいたします,高等学校卒業程度認定審査制度について御報告をいたします。資料4を御覧いただけますでしょうか。
 特に優れた資質を持つ高校生につきまして,高校2年生の修了時点で一定の条件を満たす大学に入学することができる,いわゆる飛び入学制度というものがございます。現行制度では,飛び入学者につきましては高校を中退して大学に入学することになってございまして,もし飛び入学後に大学を中退して進路変更するという場合には,最終学歴は高校卒業の扱いになりませんので,就職であるとか資格試験等の受験において不利になると,ひいては,これが飛び入学制度の活用が促進されない一因になっているのではないかという指摘が,かねてよりあったところでございます。新たなイノベーションを創出したり,あるいは,国際的に活躍できる人材を育成するというためには,飛び入学制度の活用を促していくことが重要であると,私どもとしては考えてございまして,飛び入学した方に対して,一定の要件を基に,高卒相当の法的地位を付与する制度,これを創設しようと考えている次第でございます。
 具体的には,下の「制度内容」のところでございますけれども,認定審査を希望する方から文科省に対して,高校の修得単位数と大学入学後の修得単位数,これを申告していただきまして,左下に「審査基準」がございますけれども,高校時代に50単位以上,大学時代に16単位以上ございまして,その構成が著しく偏っていることがないというものを確認させていただいて,高卒相当の能力があると文部科学大臣が認定するという仕組みでございます。高校,大学関係者による審査委員会を設けまして,この審査を経て大臣の認定を得ると,合格証書を授与するとともに,学校教育法の世界で言うと,大学に入学できる資格が与えられる。高卒相当の資格が,法的地位が与えられるというつくりでございます。
 これに伴いまして,各種資格の受験条件であるとか民間の就職の条件で,高校卒業程度となっていることが多くございますので,高校を実際には中退しているわけですけれども,高卒相当として資格が得られるという仕組みでございます。
 パブリックコメント,その他の必要な手続は終えてございまして,今週末,4月から施行を予定しているところでございます。
 以上,御報告でございました。よろしく御承知おきいただきますよう,お願いをいたします。

【永田分科会長】  ありがとうございます。これは施行されますので,このようなことがこれからありますという情報共有にさせていただきます。
 先ほど途中になってしまいました,次期教育振興基本計画,教育未来創造会議,経産省の会議,この辺りについて,いかばかりか時間がありますので議論を続けさせていただきます。
 取り分けて,次期教育振興基本計画に関する観点で,小中高大,特に大の部分を話してほしいという御意見があれば,積極的に御発言いただきたいと思います。いかがでしょうか。ほかのことでも結構ですが,基本計画に関することが一番うれしいです。いかがでしょうか。
 大森委員,どうぞ。

【大森委員】  ありがとうございます。基本計画のほうは,私も参加させていただいているので,聞かせていただく側になるんですけれども,未来創造会議のほう,これも永田先生がおっしゃるように,ここで言ってもしようがない部分というのが多分あるのは承知の上なんですけれども,人材育成の在り方というときに未来を支える人材像というところは,なるほどと思いながら読ませていただいたんですけども,今,特に必要なとなると勢い,領域というか分野の話に入っていく。分野の話に入っていったときに,我々,高等教育はどこまで,どうというのがいつも悩みを持っています。DPで言えば,資質,能力ということを育てていこうということで今,教学マネジメントを頑張っているところですけれども,ある一定の業種であるとか分野の人材育成を,よしといって学部を例えばつくってやったけれども,分野の人材が飽和状態になると,あとはいいですみたいなことになっていくことの繰り返しって結構続けてきたと思うんです。
 だから,学部の学びのしっかりした部分と,こういった今,求められている人材を育てる部分というのは,少し切り離した形で考えていく必要があるんじゃないかということをどこかで言えたらいいなと思っています。これは人材育成という観点もそうだし,単純に言うと,経営という観点からいっても,この学部は要りませんとなったときに,これ,どうしたらいいんだろう,先生雇っちゃったんだけどということも含めて両方の観点から,ここのところは気をつけて,人材育成という,求められる人材像ということを考えていく必要があると感じていますということでした。
 以上です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。似たようなコンテクストで,要するに,デジタル25万人と書いてありましたが,皆さんのご努力があって、やがて達成されるわけです。達成された後も続けて行っていきますが,もっと大切なのは,情報学そのもののトップリーダーが育っていかないと,次を牽引できないわけです。そのような話にはなかなかならなくて,研究振興局は若干関係あるかもしれませんが,要は,ソフトでもハードでも,ソフトというのはプログラミングするのでも,それからハード,コンピューターそのものに対しても,もっとハイレベルの人も育てておかなければいけないのですが,どうしても注目されるのが25万人の方です。25万人は,各大学がかなり努力しているので必ず達成されます。リテラシーと応用基礎までだったら何とかなると思っていますが,どうしても議論がそちらにはいかないので心配しています。
 皆さん,手が挙がってきました。ありがたいことですが,まだ一度も御発言のない渡邉会長,お願いいたします。

【渡邉委員】  どうもありがとうございます。次期教育振興基本計画に向けて,大変参考になる御意見をいただいき,ありがとうございました。
 Society5.0時代の未来志向型教育という第3期の教育振興基本計画のテーマは,大学分科会に道筋をつくっていただいたと,私は受け止めております。2040年に向けた高等教育のグランドデザイン答申は,多様性や柔軟性という視点を打ち出し,第3期計画を先導してくれました。つまり,大学分科会で議論してきたことが第3期計画の位置づけを明確にしてくれたと思います。
これまで大学分科会ではいろいろな議論をしていただきました。本日も御議論いただいた質保証システムの改善・充実に関する視点や,それらを支える支援の在り方,地域における大学の在り方,さらには教育マネジメント指針など,課題として挙げられていた事項の全てを議論していただいたことで,これからの教育施策の柱が立てられたのではないかと思います。
 したがって,次期教育振興基本計画では,これから全く新しい柱を立てるというよりも,今まで非常に深い議論をして立てていただいたこれらの柱を,しっかりと実践させていくために必要な施策は何なのか,という考え方をするべきだと思っています。
 そこで私は,初回の教育振興基本計画部会の冒頭で,特に留意すべき視点ということで,3点申し上げました。1点目は,未来志向を持って,個人や社会がウエルビーイングを実現するような教育にしなければいけないという視点です。
 2点目は,先ほど永田分科会長もおっしゃったように,ウエルビーイングの実現と関連して,一人ひとりの可能性が最大限に引き出されるということが重要であるという視点です。ただし,そのときにはセーフティーネット的な要素として,誰1人取り残されないような多様性や包摂性を持つことが必要です。
 3点目は,答申としてこれから政策を打ち出す上で,どう実効性をもたせるのかという視点です。人的・物的資源の財源確保や再配分をしない限りこれらの政策は実現できません。こういったことが特に留意すべき視点ではないかと考えています。
 加えて,非常に抽象的な話ですが,VUCAの時代と言われるような今の時代を海に例えると,教育とは船の羅針盤を作るようなものだと思います。大変難易度が高いという話もさせていただきました。教育振興基本計画の策定に向けては,いろいろな要素を考慮する必要がありますので,本日いただいた様々な視点や要素も踏まえた上で,そうした方向に向かって政策を束ねていきたいと思います。
 最後に,日本の教育を考えていく上で「不易流行」という視点が重要であることを申し上げておきます。本日長谷川委員のおっしゃった民主主義の視点に関して言えば,教育基本法が前文等で掲げている教育の普遍性というものはまさしく民主主義,さらには世界平和も含まれており,これは日本の教育において理念的に誇るべきところです。今の時代だからこそ,このような不易的な要素は揺らいではいけないと思います。
一方でそれと同時に,今の子ども達はSociety5.0を生きていかなくてはならず,その時代を支えてもらわなくてはならない。そのためにはイノベーションやDX等の新しいものにチャレンジしなければいけない。不易流行の「流行」の部分が,特にポストコロナの中で重要なってきていると思います。
 現在,教育については様々な会議体が議論しており,その議題も非常に多岐に渡っています。そういった議論をまとめていくときに,冒頭申し上げたように大学分科会の皆さんの議論が大変参考になります。教育振興基本計画部会には,永田分科会長が副部会長として,その他何人かの方にも委員として入っていただいておりますが,この大学分科会での議論も引き続き参考にさせていただきたいと思います。ぜひ今後とも御協力をお願いしたいと思います。今日は本当にありがとうございました。

【永田分科会長】  ありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願いいたします。
 まだ一度も御発言いただいていない委員から先に当てさせていただきます。
 安部委員,どうぞ。

【安部委員】  ありがとうございます。教育振興基本計画では学び直しの必要性について,ずっとうたってきているわけですけれども,これまで,いわゆる学び直しをする必要性は,あると言われながら,なかなか社会の中に定着しない。人生100年時代で,職場と学びの往還がノーマルになるために,学校は先導的な役割をしなければならないのではないかと思います。ぜひ4期の計画では,学校が学び直しを,特に推進的に行う仕組みというのを整えていくことが必要ではないかということを,まず,思います。
 それから,先ほどから出ておりますように,職に就く前の学校教育を終えた直後の人たちが社会へ円滑に移行するための手だて,今は,職に就いてもすぐ辞めてしまう若者も増えておりますので,学校から社会への円滑な移行を促進するような仕組みというのが,教育段階から考えられていくということが,テーマとして必要ではないかと考えます。
 以上です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。
 曄道委員,どうぞ。

【曄道委員】  ありがとうございます。私も今,安部委員がおっしゃったことを指摘させていただこうと思っていました。1つは,生涯教育の中で,社会人を経験して,また学ぶという,その対象が多層的に用意をされないといけない。これが大学院に学ぶ場を求める,あるいは,そうでないケースも今後は多層的に生じるはずですので,制度設計をどのように考えるのか,これは例えば私立大学なんかは特にそうですけれども,どういう受皿を用意し得るかということについては,まだ制度設計についても議論の余地があるのではないかと思います。
 2点目は学び方でありますけれども,学校制度の中で学ぶ枠組みというものが,私はきつく効き過ぎているかなと。学びの蓄積という意味では効果的ではあると思うんですけれども,いざ社会に出てから,創造的な発想ということに本当につながる学びを学生たちはしているのかということを常々思っていまして,これは以前にも申し上げたんですが,学んでいくということに対して,学生に主体を持たせるということであれば,中等教育と高等教育がもっと接続,連携を密にして,学生が主体的に学びをデザインできるような教育とは何かということも議論する余地があるであろうと考えております。
 以上でございます。

【永田分科会長】  ありがとうございます。今,手の挙がっている方々が2分ずつか,2分半ずつだとぴったりです。長谷川委員,熊平委員,大野委員,清水一彦委員,この順番にお願いいたします。
 長谷川委員,どうぞ。

【長谷川委員】  ありがとうございます。いろいろな先生方がおっしゃったことというのは,みんなそうだと思うんです。最初に大森先生がおっしゃった,それから永田先生もおっしゃっていましたけど,今,必要な分野や仕事ということに近く考えた能力ということを言っていると,絶対に駄目になると思うんです。ですので,そういうことを発想する基になる,もっとメタな,上のレベルでの能力というのが何であるかということを引き上げていかないといけないのではないかと思いました。
 あと,質問なんですけど,こういう提言だの何だのというのには必ず,後藤先生もおっしゃっていたか,過去にどうしてそれができなかったかの分析とかが必要だと思うんですけど,女性の理系が少ない理由は,本当はどこにあるのかとか,人文社会と理系の知の分断というのをやめるには,何が一番効くのかとか,そういうことをきちんと調べるところというのはどこなんですか。というのが質問です。

【永田分科会長】  公式的な文書としてそれがあるかと言われると,ないという感じがします。1つずつのテーマについては,アンケートや,それから資料を集めるということを行っていますが,今おっしゃったようなことを全般的に,本質的に行っているところはないので,今度行いましょうか。今はそこまでしか申し上げられません。
 熊平委員,どうぞ。

【熊平委員】  ありがとうございます。3点あります。
 1つ目は、多様性についてです。多様性が大事という話が出ておりますが,小学校における教育が、人間を画一的なもの(誰もが同じスピードで、同じ授業を通して同じように学ぶことができる)と捉え、このものの見方を前提に設計されている限りにおいて,なかなか大人になっても多様性の本当の価値を理解することができないというのが現在の日本社会の現実です。この前提を見直す必要があるのではないかと思います。2番目は、子どもたちのウエルビーイングについてです。子どもの頃から、ウエルビーイングな生き方を練習することが大事です。その観点からはダブルスクール問題を無視することはできないと思います。生産性の低い授業に参加して,夜一生懸命勉強する,そういう在り方を子供に強いるのは,ウエルビーイングな子供の生活ではないと思います。3番目は,教育投資の価値についてです。教育が未来を創るという強いメッセージを出していただき,教育に対する投資をより多くしていただきたいです。特に,教員養成に対して,過去にはほとんど予算が増えていないはずです。教育に求められる内容の難易度が増している中で,教員養成にしっかりと投資をするということをぜひ盛り込んでいただきたいと思います。
 以上です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。
 大野委員,どうぞ。

【大野委員】  ありがとうございます。教育振興基本計画から少し離れて発言させていただければと思います。
 大学には,教育,研究,社会貢献の3つの役割があり,それを大学分科会で総合的に議論する時期に来ているのではないかと思っています。特に,国立大学ですら経営的に自立して,その機能強化,あるいは拡大が求められている状況の中で,国と大学の関係,大学政策の在り方そのものも,これまでの議論の延長ではない形で議論する時期に来ているのではないかと。
 さらには,社会からの要請に応えるのと並行して,そもそも,これからの社会の在り方を大学側が先導して提案し,そこに向けて大学の役割を主体的に議論するというような,社会に示していく,ある種のパッケージのようなものがここで議論されると素晴らしいと思います。
 以上です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。なかなか設置審のところですら,先ほど吉岡委員におまとめいただいたものは,よくまとまったと思いますが,その中で,大学の役目としての教育,研究,社会貢献,その部分がないと,設置の時に,どのような大学か分からないから,どこかに書くべきではないかと話をしていました。しかし、先ほどお読みいただいたように,なかなか教育以外のところは入りにくいという状況があります。もう一度今のようなことを全体で話して,どれを切り離しても大学ではなくなってしまうというところをよく考えたほうがいいかと思っています。
 吉岡委員,どうぞ。

【吉岡委員】  先ほど私が発言した最後のところで言った,多様性みたいなことと少しつながるのですけれども,それから,長谷川委員の御意見にもつながっているかと思うのですけども,こういういろいろなテーマが出されるときに,いろいろな計画が出されるときに,人材への投資ということが非常に強調されるわけです。それ自体は悪いことではないと思うのですけれども,しかし,人材への投資というのが,結局,優秀な人材をつくるために,あるいは,それを選び出すために投資していく側面というのが,実際には非常に強くなってくるのではないか。言うまでもないですけれど,社会というのは優秀な人材だけでできているわけではないです。
 それから,もう1つは,優秀な人材というときの何が優秀かということの基準というのは,往々にして現在の我々から見える範囲でしかない。そういう意味では,教育機関というものが,ある一定の優秀さみたいな形を基にした,結局のところ,選別装置になってしまっているというところを何らかの形で克服していかないとならないのではないかと,すごく大ざっぱな意見ですけれども,考えているところです。
 小学校から大学,大学院まで結局,選別の装置になってしまっているのはないか。その部分が,多分長谷川委員がおっしゃりたかったことと少しつながっているのかと思ったので,発言させていただきました。

【永田分科会長】  ありがとうございます。
 清水委員,どうぞ。

【清水委員】  基本計画とは全く関係なくて,先ほど飛び入学の制度で,学歴後退するというのを見直したと報告がありました。この見直しに25年かかった。その間25年で144人,年間6人ぐらいしか大学に入っていない制度ですけれど,当初から,それは大きな制度設計のミスだと思っていました。ここ及んで,きちっと制度化したのは喜ばしいと思います。
 実は,大学にも似たような「飛び級」制度があり,3年次から大学院に飛び級するとこれも学歴後退が起こるものです。早期卒業制度を使えば,それは解消できるのですが,早期卒業制度がない大学だってあります。大学レベルの飛び級制度においては,どのように学歴後退を見直すのかと(今の救済措置ではない制度),これは事務局にお聞きしたいと思います。
 以上です。

【永田分科会長】  厳しい質問をしても,なかなか今すぐには答えられないかもしれません。

【清水委員】  別に今でなくてもいい,そういう問題提起です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。ちょうど時間になってきました。実は今,清水委員がおっしゃったことを,質保証システム部会でも言いたかったです。限定されていなかった1つは,大学-大学院接続ですが,同じような観点で,長く大学に在学していなくても大学院に進学できる学生はいます。そのような子は逆に取り残されてしまう。だから小学校,中学校,高校と同じです。実は制度上,とても大変な部分が幾つか残っていて,これからどうするのかということと,今,同じですが,飛び級で卒業してしまう場合と,飛び級で大学院に進学する場合,まだたくさんあります。制度上はうまくいかない。外務官僚、裁判官のように,高卒が自慢みたいな職業もあります。大学2年か3年で国家試験を受かったほうがすごいという職業もあるわけですがそれはそのようなコンセンサスが社会にあります。制度上,自由が効かない部分がまだたくさんあると思うので,一旦質保証システム部会は閉じて,今度,実際の法律をつくる段階になりますが,また近々,そのような問題点がたくさんあるでしょうから,集めてみんなで話をする機会を設けていかないといけないと思います。
 マネジメント,ガバナンスの話は積極的に出ませんでしたが,そういったものも実はオールインワンで教育,研究,社会貢献,マネジメント,ガバナンス,切り離して話せるものではないと思います。よくよく事務方とも相談をして,ここからちょうど1年あります。今の任期の先生方がもう一度チャレンジする課題を設定して,先生方に苦労してもらおうと思っております。よろしいでしょうか。
 事務方から発言があります。

【加賀内閣官房教育未来創造会議担当室主査】  一言だけでよろしいでしょうか。教育未来創造会議担当室,加賀と申します。時間がないので一言だけ。相原先生と後藤先生,大森先生から,それぞれ教育創未来造会議に関するコメントをいただきました。
 先ほど,ここでコメントしてもという話だったんですが,事務局としても聞いておりましたので,事務局内でもしっかり共有させていただいて,議論,検討していければと思いますので,一言だけすいません,お礼と,ありがとうございました。

【永田分科会長】  以上をもちまして,一応議論は終わりとさせていただきます。事務方から今後の予定について御発言をいただいて,今年度はこれで締めます。

【髙橋高等教育企画課課長補佐】  本日は活発な御議論をいただき,誠にありがとうございました。
 次回の大学分科会は5月17日,火曜日,14時から16時を予定しております。実施方法等については,改めてお知らせいたします。
 本日,時間の都合上で御発言できなかった内容等については,また,事務局までお送りいただければと思います。
 以上でございます。

【永田分科会長】  ありがとうございます。
 そろそろ皆さんお顔を見たいです。コロナの様子を鑑みながら,1回ぐらいは集まりたいです。本年度はここまでということにさせていただきます。どうも御協力ありがとうございました。
 
── 了 ──

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