大学分科会(第165回) 議事録

1.日時

令和4年2月9日(水曜日)16時~18時

2.場所

WEB会議

3.議題

  1. 大学院設置基準等の一部改正について
  2. 令和3年度文部科学省補正予算(案)について
  3. 魅力ある地方大学の在り方について
  4. その他

4.出席者

委員

(分科会長)永田恭介分科会長
(副分科会長)村田治,渡邉光一郎の各副分科会長
(委員)越智光夫,熊平美香,後藤景子,日比谷潤子,湊長博,吉岡知哉の各委員
(臨時委員)相原道子,麻生隆史,安部恵美子,大野英男,大森昭生,金子晃浩,川嶋太津夫,小林弘祐,小林雅之,清水一彦,須賀晃一,清家篤,髙宮いづみ,千葉茂,曄道佳明,長谷川眞理子,古沢由希子,益戸正樹,松下佳代,吉見俊哉の各委員

文部科学省

(事務局)森私学部長,森田大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術政策連携担当),里見大臣官房審議官(高等教育局担当),笠原大臣官房文教施設企画・防災部技術参事官,寺門科学技術・学術総括官,西田高等教育企画課長,新田大学振興課長,
黒沼研究振興局大学研究基盤整備課長,柿澤高等教育政策室長,岸本主任視学官/高等教育国際戦略PTリーダー,髙橋高等教育企画課課長補佐,一色大学振興課課長補佐,堀家高等教育政策室室長補佐,竹花大学設置室室長補佐ほか
 

オブザーバー

  平松浩樹氏(一般社団法人日本経済団体連合会 教育・大学改革推進委員会企画部会長)

5.議事録

【永田分科会長】  所定の時間になりました。第165回中央教育審議会大学分科会を始めます。
 御多忙の折,御参加ありがとうございます。コロナ対策でオンラインとなっておりますが,皆様の発言が自由に行える環境にて御参加という前提で会議を進めさせていただきます。また,YouTubeでライブ配信をしております。
 それでは,会議資料,音声などの調子がよければ先に進ませていただきます。事務局から必要事項の連絡をお願いいたします。

【髙橋高等教育企画課課長補佐】  事務局でございます。本日はウェブ会議及びライブ配信を円滑に行う観点から,御発言の際は挙手のマークのボタンを押していただき,分科会長から指名されましたら,お名前をおっしゃってから御発言をいただきたいこと。また,御発言後は再度,挙手のマークのボタンを押して,表示を消していただくのをお忘れないようお願いいたします。また,発言されるとき以外は,マイクをミュートにしていただくなど御配慮をいただけますと幸いでございます。本日の会議資料は,事前にメールでお送りしておりますので,御確認願います。
 以上でございます。

【永田分科会長】  ありがとうございます。
 本日は4点,大きな議論をします。議事次第にその詳細,タイトルが載っております。1点目は,国際連携教育課程(ジョイント・ディグリー)ですが,それにつきまして,大学設置基準の一部改正の諮問が来ております。これについて審議をしたいと思います。実際には,去年の10月12日に,説明は終わっておりますが,今回最終的な諮問ということで審議を行います。
 2点目は,今日はここに一番時間がかかるかと思います。質保証システムの改善・充実ということで,この大学分科会の下の部会で話が進められていますが,更にその下の作業チームで具体的な検討が進められていまして,今日はその作業チーム座長の吉岡委員においでいただき,審議の経過報告をお願いしています。それに応じて委員の方々からの御意見を賜りたいです。
 3点目は,情報共有ですが,大学ファンド創設と大学の研究力強化に向けた取組について,現在の議論の方向について共有します。
 4点目は,一般社団法人経済団体連合会から先月公表されました「新しい時代に対応した大学教育改革の推進」について,御説明をいただいて意見交換をしたいということです。
 よろしいでしょうか。
 それでは,早速最初の議題,国際連携教育課程制度(ジョイント・ディグリー)の見直しについて,事務局から説明をいたします。お願いいたします。

【岸本高等教育国際戦略PTリーダー】  資料1-1を御覧いただきたいと思います。まず,最初に1ページ目でございますけれども,国際連携教育課程制度,以下ジョイント・ディグリー,JDと呼称させていただきますけれども,見直しについてということで,まず大学設置基準等の一部改正についての概要となっております。本件は,12月にも方向性について御議論いただいたところでございまして,教育再生実行会議の提言ですとか,1月の経団連の提言の内容にも沿った改正内容になっております。
 まず,1ポツの改正の趣旨でございますけれども,JD創設時におきましては,外国の大学の教育資源を活用して教育課程を編成する初めての制度でございましたので,設置に当たってその都度,大学設置学校法人審議会での認可を得る必要があるなどの慎重な制度設計になっていたと。そこがその制度創設から7年が経過し,実績が蓄積されてきたということを踏まえまして,その質を担保しつつ所要の見直しを行うために,このたび大学設置基準等の一部の,及び関係告示を改正し,JDの拡大につなげたいということでございます。
 主な改正事項は五つございます。
 まず,一つ目ですけれども,JDの定員でございます。国際連携学科を設ける大学の学部等を母体とするという前提を見直しまして,その学部等の定員の内数2割を上限とする制限を撤廃するということにしたいと考えております。これに伴いまして,国際連携学科を設ける大学等は,外国における災害その他の事由により,外国の大学等と連携した教育研究の継続が困難と認められる事態に備え,あらかじめ計画の策定その他,国際連携学科の学生の学修の継続に必要な措置を講じるものとするということを定めたいと考えております。
 それから改正事項の二つ目でございます。共同開設科目に関しまして,この後の三つ目の改正事項に関わりがあるんですけれども,JDに係る最低取得単位数を見直すことに伴いまして,共同開設科目の履修により修得した単位は,各連携外国大学における最低修得単位にも,国際連携学科を設ける大学における最低修得単位にも算入できないものとしまして,それぞれの最低修得単位数に達するまでは,国際連携学科を設ける大学,それから各連携外国大学において修得した単位とすることはできないものとしております。
 それから改正事項の三つ目でございます。国際連携教育課程に係る卒業要件ということでございまして,我が国の大学,連携外国大学それぞれにおいて,例えば大学の学士課程においては,これまで62単位ということだったところ,31単位以上を修得するということで見直しをしようとしております。
 それから改正事項の四つ目でございますが,JDに係る専任教員数,施設設備に関しまして,学部定員の2割の範囲内で,国際連携学科の定員を定める規定の廃止に伴いまして,母体となる学部等における資源の一部を活用することを前提とした規定,特例的な取扱いについて定めた規定ですけれども,それを削るという見直しを行うこととしております。
 改正事項の五つ目でございます。共同国際連携教育課程の場合の国際連携教育課程の編成等ということでございますけれども,国際連携学科等を設ける国内の二以上の大学が連携して教育研究を実施することができるというものとし,その場合の所要の読替規定を整備するということでございまして,それぞれの大学が共同して同一内容の国際連携教育課程を編成するものとすること。
 これに伴いまして,学生が連携して教育研究を実施する他の大学において履修した授業科目について,習得した単位を自大学の履修により習得したものとそれぞれみなすというようなことですとか,共同国際連携教育課程の場合について,国際連携学科に係る専任教員の数,校地面積,校舎面積,施設設備に関する所要の読替規定を整備することとしております。
 大学設置基準のほかに,専門職大学設置基準,大学院設置基準,専門職大学院設置基準,短期大学設置基準,専門職短期大学設置基準もそれぞれ相応の改正を予定しております。
 施行期日でございますが,令和4年8月1日を予定しております。
 それから少し飛ばしまして,省令の関連資料が続きますけれども,その51ページの次の次のページを御覧いただきたいと思います。告示の改正に関する概要一枚ものがございます。
 主な改正事項は二つでございます。まず一つ目ですけれども,JDにつきまして,全て設置認可の対象とされていたところということで,これを制度創設から7年が経過し,ということで,JD全体の教育課程が学位の種類や分野の変更を伴わないなどの要件を満たす場合には,届出での設置を可能とするというものでございます。全てのJD設置について設置認可を求めるという特例的な取扱いについてやめるということでございます。
 それから改正事項の二つ目でございます。連携外国大学が認証評価等を受けていることを要件化するというものでございまして,趣旨としましては,これまで設置には審議会における認可が必須とされていたところ,学位の種類や学問分野に変更がない場合には届出による設置が認められることとなりますので,これに伴いまして,これまで認可によって担保されていた教育課程の質を確認するために,連携外国大学の要件として,認証評価機関による評価等を受けたものであることを追加しております。この点につきましては,昨年の10月の本分科会における御指摘も踏まえた内容となっております。
 それから,その後は告示の関係資料が31ページ続いておりますが,それを飛ばしまして,最後に,ガイドラインの概要一枚ものがついてございます。「我が国の大学と外国の大学間におけるジョイント・ディグリー及びダブル・ディグリー等国際共同学位プログラム構築に関するガイドライン」の改定版の概要となっております。今回の制度改正に合わせた修正を幾つか施しております。
 内容としましては,今これまで御説明しました省令改正,それから告示改正に伴うものでございまして,届出設置が可能となる旨ですとか,母体となる学部等の収容定員等の2割上限を撤廃するということ,最低修得単位数の緩和をするということなども随所に明記をしております。
 それから,ガイドラインの概要の2ポツ目ですけれども,連携外国大学の教育研究の質を担保するための対応ということで,この点について,昨年の10月の分科会での御指摘で,どうやって質を担保すればいいのかということについて,どこかに分かりやすく解説を,ということだったかと思いますけれども,今回この改訂版のガイドラインにおきまして,連携外国大学の質保証を十分に確認するということを各大学にしっかり求めるということを明記しております。
 また,各大学におけるJDの構想の検討に資するためということで,主要国の認証評価機関のリストを参考資料として掲載させていただいております。各大学においてはガイドラインも御参照いただきまして,連携外国大学の質保証に十分留意していただきながら,JDプログラムの構築を検討いただくように,今後ガイドラインの周知においても留意していきたいと考えております。
 以上でございます。

【永田分科会長】  ありがとうございました。ただいまの御説明に御質問,あるいは御意見ございますか。
 長谷川委員,どうぞ。

【長谷川委員】  ありがとうございます。これで私もよろしいと思うんですけれど,このジョイント・ディグリーを実際に取った学生たちが,この制度についてどういうふうに感じているかというような,何かそういうフィードバックはあるんでしょうか。

【岸本高等教育国際戦略PTリーダー】  私どもの方で,JDを設置している大学の協議会にいろいろと情報交換をさせていただいていまして,そこで様々なシンポジウムなどが開催される折に,どういった実施状況であるとか,あるいは何が課題であるとか,成果は何であるかということについては,情報はいろいろとお伺いをしております。
 そういったそのときの課題があるということも踏まえて,今回の改正を,見直しをさせていただいているということでございまして。成果に関しましても,今,手元にはございませんけれども,非常に研究面でもいい効果があるということで,共同執筆の論文の数が非常に増えたとか,そのきっかけになったというような御報告もありました。JDによる学修をしたドクターの学生が参加した形で,そういった成果が目に見える形で出ているというような報告があったと記憶しております。

【長谷川委員】  ありがとうございます。お聞きしたのは,日本は博士課程の院生も学生であって,生徒みたいに扱ったりして,教える人の側から,教授からの御意見はよく聞くけれど,どうも大人としての,次世代研究者としての院生とか学生とかということの彼らの感覚をなかなか吸い上げていないのではないかという気がよくするので,お聞きしました。自分たち自身がどういうふうにそれを,制度を利用してどうだったかという責任の一部も含めて,ちゃんとそういうことをフィードバックできる人たちになってほしいと思っておりますので,お聞きしました。ありがとうございます。

【永田分科会長】  そのほかいかがでしょうか。前回も御意見はほとんどありませんでした。お認めいただける内容かと思っておりますが,よろしいでしょうか。
 これは諮問事項でございまして,大学設置基準の改正に関わる事項については,大学分科会の議決をもって中央教育審議会総会の議決とするということになっております。それでは,先に定足数を確認させていただきます。

【髙橋高等教育企画課課長補佐】  大学分科会の委員及び臨時委員数は30名であり,現在28名の御出席をいただいているところでございます。中央教育審議会令第8条1項に定める過半数を満たしております。

【永田分科会長】  ありがとうございます。まだ意見があるという方がいらっしゃればお受けしますが,よろしいですか。
 それでは,定足数も足りておりますので,お諮りを申し上げます。ただいま御説明をいただきました国際連携教育課程制度の見直しに関わる概要で実際には設置基準の改正ということですが,お認めいただけますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【永田分科会長】  ありがとうございます。お認めいただいたということにさせていただきます。ありがとうございました。

【岸本高等教育国際戦略PTリーダー】  ありがとうございました。

【永田分科会長】  続きまして,本日の一番のメインの議題ですが,質保証システム部会の審議経過についてということです。
 部会長及び作業チーム座長である吉岡委員から御説明の方をよろしくお願いいたします。

【吉岡委員】  よろしくお願いいたします。作業チームの座長も兼ねておりますので,報告させていただきます。
 この大学分科会においては,令和2年7月より質保証システムの見直しに係る議論を進めてまいりました。昨年9月の第11回のシステム部会において,専門的,技術的な事項について調査・審議を行うため作業チームを設置するということを決定いたしました。10月12日の第163回のこの大学分科会で報告した事項でございます。
 今般,作業チームとして質保証システムの改善・充実に関する考え方をまとめ,今後,質保証システム部会で年度内をめどに審議まとめをしていく予定となっております。このタイミングで大学分科会に審議経過を報告させていただく次第です。したがいまして,これは作業チームでのまとめという形になっております。これからお手元の資料2-2を基にお話ししますけども,適宜,資料2-1の方の概要も御覧いただければと思います。
 1ページ目から10ページ目までは,具体的な質保証システムの改善・充実方策を検討するに当たっての前提について整理したものです。
 1ページ目,現行の質保証システムに至る経緯において触れているとおり,現行の質保証システムは,事前規制型の長所と事後チェック型の長所を併せ持つように設計されていると言えます。
 また,2ページ目の一番上のパラグラフにあるとおり,現行のシステムについては,事前規制を弾力化することで,高等教育機関全体の新陳代謝を促しつつ,質の低下が懸念される場合には,大学等の自主的,自律的な改善を促すことによって,質を保証するという,そういう仕組みとして一定程度,機能しているとすることができると考えております。
 その上で,3ページから4ページにあるとおり,デジタル技術の高度化や新型コロナウイルス感染症を契機とした遠隔教育の普及進展,あるいはその背景となる社会状況の急激な変化等も踏まえ,大学設置基準をはじめとする質保証システムについて時代の変化に対応しつつ,将来を見据えた改正を行うべく,見直しの議論を進めてまいりました。
 また,6ページの保証すべき「質」とは何か,で記しているとおり,質保証システムにおいて保証すべき質とは,学校教育法の規定による教育研究の質であり,教育の質とはすなわち学生の学びの質と水準であるということを確認し,更に加えて,教育と研究を両輪とする大学の在り方を実現するという観点からは,持続的に優れた研究計画が創出されるよう,研究環境の整備等が行われていることについて,質保証システムとして一定程度確認していくことも検討すべきではないかと考えております。
 また,8ページからの2ポツです。改善・充実の方向性で記載しているとおり,質保証システム部会は,平成30年のグランドデザイン答申で議論された事柄を足場としつつ,学修者本位の教育の実現をはじめとする考え方を,質保証システムへと反映させることがミッションであると。そして,そのことを踏まえて,学修者本位の大学教育の実現及び社会に開かれた質保証の実現,この2点を二つの検討方針とするとともに,個別の制度の具体的な改善・充実の方向性を検討していくに当たり,四つの視座,「客観性の確保」,「透明性の向上」,「先導性・先進性の確保」,これは柔軟性の向上でもあるわけですが,そして4番目の「厳格性の担保」と,こういう四つの視座を設定して議論を行ってまいりました。
 
 それでは,11ページ以降を御覧ください。3ポツに当たる部分ですけれども,この11ページ以降からは,作業チームで集中的に検討を行った内容であり,まず大学設置基準・設置認可審査についてであります。
 大学設置基準の性質として,必要最低限の量的・質的構成要素を具備しているかを確認するための基準として定められており,正にこれは最低限の質保証を図るものとして重要な役割を果たしている。この点を踏まえまして,大学設置基準の規定の見直しに当たっては,各規定が最低限の質保証を担保する上で果たしている役割や,改定等を行った場合のそれが与える影響,また高等教育の質保証システム全体のバランスも考慮しながら検討を進める必要があるということを確認しております。
 その上で,見直しの背景として,社会全体が大きく変化・変動する中,学修者本位の観点から,大学が創意工夫に基づく,多様で先導性・先進性のある教育研究活動を行っていく際に,質保証システム全体として最低限保証すべき質を厳格に担保しつつも,時代に応じて柔軟性のある仕組みにしていく必要があるのではないかという指摘もございます。こうした観点も踏まえて,1点目は,時代の変化に対応しつつ将来を見据えた設置基準全体の見直しを行うとともに,2点目として,共通となる最低基準性を担保しつつ,大学教育の多様性・先導性を向上させる見直しが求められていると考えています。
 具体的な見直しの方向性につきましては,13ページ目から15ページ目にかけて四角囲みの中に記載してございます。まず,学修者本位の大学教育の実現の観点からは,各大学の内部質保証は学位プログラムを基礎として行われるべきこと,また内部質保証による教育研究活動の不断の見直しが求められることなどを理念上,明確にしてはどうかと考えております。
 また,客観性の確保の観点からは,現在,設置基準の様々な箇所に分散して規定されている,教員,事務職員,各種組織に関する規定を一体的に再整理すること。また,クロスアポイントメント等,多様な働き方が広がっていることも踏まえ,1の大学に限り専任教員となるという現行の専任教員の概念を,例えば基幹教員と,これはもちろん仮称ですけれども,例えば基幹教員と改めて,その定義を,教育課程編成等の責任を担うものであって,常勤の教員や一定以上の授業科目を担当する教員とし,設置基準上,最低限必要な教員の教員数の算定に当たり,一定以上の授業科目を担当する教員については,一定の範囲まで認めるという,そういう方向で見直すということ。
 また,「図書」や「雑誌」等の表現がございますけれども,電子化やIT化を踏まえた規定に再整理すること。また,「空地」については,教員と学生,学生同士の交流の場として再整理すること。それから,TA,SAなどの教育補助者についても,大学設置基準上,明示的に規定すること。更に大学通信教育設置基準について,デジタル時代に対応する観点で規定の見直しを行うこと。また実務家教員の定義や大学名称など,設置認可審査の明確化につながる周知を行うこと,などを盛り込んでございます。
 また,先導性・先進性の確保,柔軟性の向上の観点からは,「講義,演習,実習,実験」の時間区分の大括り化など,単位制度の柔軟な運用を可能とするよう見直しを行うことや,大学の創意工夫に基づく取組を促進し,今後の大学設置基準の改善につなげるため,内部質保証等の体制が十分機能していることを前提に,教育課程等に係る特例を認める制度を新設すること。また,校舎等施設や,それから運動場,体育館等についても,規定を弾力化すること等を考えられないかとしてございます。
 
 次に,同じく各質保証システムの改善・充実のうち,2番目の認証評価制度についてでございます。
 16ページ目を御覧ください。認証評価につきましては,国際通用性のある質保証の枠組みとして質保証システムにおける事後チェックの中核という役割を担っていますが,一方で幾つかの指摘がなされています。例えば内部質保証が真に有効に機能しているか否か,また,大学の教育研究活動の状況,学修の質であるとか水準,研究環境整備等が十分に評価できていないのではないかという指摘,あるいは認証評価機関によって,評価結果や評価水準の違いが存在するのではないか。評価結果について社外が利用しやすい形で公表されていないのではないか。また,機関別と分野別のサイクルが異なるなど,評価に伴う大学の負担が増加しているのではないか等々の指摘がなされているところです。
 これらを踏まえまして,17ページ目から四角囲みの中に具体的な見直しの方向性をまとめてございます。学修者本位の大学教育の実現の観点からは,内部質保証について自己点検評価の体制が整っているかだけではなく,どう改善されたかを評価し公表する形へと充実するということ,あるいは,学修成果の把握や評価に関することや,研究成果を継続的に生み出すための環境整備や支援の状況に関することについても,大学評価基準に追加することが考えられないか。実質化をしていくということです。
 また,客観性の確保の観点からは,認証評価機関の質保証のさらなる充実に資する取組を推進することや,透明性の向上として,各認証評価機関の評価結果を社会が利用しやすい形で一覧性を持って公表するということを検討してはどうかと考えております。
 これらに加えまして,先導性・先進性の確保,柔軟性の向上の観点から,認証評価で,内部質保証の体制取組が特に優れていることが認定された大学に対しては,その次の評価において評価項目や評価手法を簡素化すること。あるいは,法令適合性等について適切な情報公表を行っていることを前提に,法令適合性等に関する評価項目や評価手法を簡素化するなどの弾力化を図るとともに,大学の負担を軽減する仕組みや,分野別評価の合理化の在り方を検討してはどうか。
 その一方で,評価結果が不適合である大学については,例えば受審期間を短縮化する,7年を3年にするというようなことですけれども,そのような短縮化によって厳格性の担保をしてはどうかと考えております。
 
 19ページ目以降が3番目の情報公表についてでございます。情報公表の徹底は,社会に開かれた質保証の実現のために極めて重要であり,これまでも関連規定の整備等に基づき,各大学で情報公表の取組が進展しつつあります。また,データベースを用いた大学の教育情報の活用公表のための共通的プラットフォームとして,平成27年3月から大学ポートレートが運用されております。
 大学ポートレートの運営につきましては,大学ポートレート運営会議で決定され,大学コミュニティーによる自律的な運営が行われております。しかしながら,現在法令上公表が義務化されている項目では,学生が実際にどのような知識や能力を習得し,大学が実際にどのような教育成果を上げたかなどの成果の確認ができないという指摘や,あるいは学生の学びの質と水準に大きく関わる項目について,大学による取組状況に差が見られること。
 また,大学ポートレートにつきましては,国公立と私立で情報を提供するプラットフォームが異なるために,必要な情報を容易に入手できないという課題や,あるいは大学の教育研究の質に関わる重要な情報が必ずしも分かりやすく示されていないといった課題が指摘されております。
 これらを踏まえまして,21ページ目の四角囲みの中に見直しの方向性を記載しております。まず,認証評価の際に,教学マネジメント指針を踏まえて情報公表に関する取組を評価すること,各種情報を大学ポートレートに分かりやすく掲載することを基本とするとともに,ベンチマークの提示ができるよう改善する方向で検討してはどうかと考えております。
 また,大学における教育研究の質保証に資する情報公表について,どのような項目がどのような手法で公表されていることを担保することが適当かという点につきまして,引き続き検討することとしております。
 
 23ページ以降は,その他の部分ですけれども,大学に対する周知や大学現場における効果的な運用が望まれる事項,また,定員管理の在り方の見直し,事務職員・教員の資質,能力の向上など,公的な質保証システムそのものの構成要素にはなっておりませんけれども,質保証の観点から重要な論点について整理をしてございます。
 具体的には,例えば学修者本位の大学教育の実現の観点からは,遠隔授業に関して授業の質保証及び新たな取組の促進の観点から,一定のガイドラインを策定するということを検討するとともに,今後の遠隔教育の在り方については,各団体,大学での取組の状況や,様々な創意工夫,技術の進展状況等も参照し,引き続き検討を行うこと。
 大学の経営面や教育研究活動を支える大学運営の専門職である事務職員の果たす役割は非常に大きいことから,SD(スタッフ・ディベロプメント),それからFD(ファカルティ・ディベロプメント)の取組等を把握・周知することなどを盛り込んでおります。
 更に,「先導性・先進性の確保(柔軟性の向上)」の観点からは,大学の創意工夫による多様な教育活動を促すためにも,設置認可審査を経て認められた分野の範囲内であれば,組織の改組や融合領域の創設等を含めて,当該大学の判断で新たな学位プログラムを実施可能であるという点を周知すること,これは現在可能なことですけれども,これを周知していくこと。
 それから,基盤的経費の配分や,設置認可申請等における定員管理に係る取扱いにつきまして,現行で入学定員に基づく単年度の算定としているものについては,収容定員に基づく複数年度の算定と改めることも必要だと考えているところです。
 以上が,作業チームで議論した上でまとめた改善・充実案となっております。
 
 また,25ページの終わりの部分にも記述してございますけれども,今般の質保証システムの改善・充実については,新設を提言している特例制度に限らず,どのような影響をもたらしているのかについて,データやエビデンスに基づいた適切な評価・検証を行うことが必要だと考えております。
 今後,本分科会で本日いただく御意見も踏まえ,質保証システム部会で議論を重ね,年度内に審議をまとめたいと考えております。
 なお,質保証システム部会でまとめた議論を受けた,具体的な大学設置基準改正等の制度改正については,来年度,本分科会に諮問され,具体的に検討されるという,そういう形を取ることになります。この点も踏まえて御審議いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【永田分科会長】  吉岡部会長,ありがとうございました。それでは,御質問や御意見をお伺いいたします。
 大野委員,どうぞ。

【大野委員】  どうもありがとうございます。作業チームの皆様に,このように非常に詳細にまとめていただいて,大変感謝いたします。この方向性に関しては,もうそのとおりだと思うことばかりであります。その上で,4点ほどコメントをさせていただければと思います。
 1点目は,私たち,我が国の大学あるいは高等教育機関は,海外の大学と協調し,先ほどのジョイント・ディグリーもありましたけれども,また人材獲得に関しては競争関係にございます。そういう意味で,質保証システムが,国際標準と比較してどういう形になっているのかということは是非御検討いただきたいと思います。特に,過度の手続が必要とされていないのかどうかという点は重要に考えています。それが1点目です。
 2点目は,特例制度は大変すばらしいと思います。是非,更に踏み込んでいただければと思っている次第です。我が国の大学が,より先導性,そして先進性を発揮できるよう,一層の規制緩和が必要だと思います。例えば届出に対して事前の相談やチェックが実際には必要とされている場合もあったり,設置後の設置審によるアフターケアが必須であったりというところと特例制度の整合性などです。
 あと評価サイクル,今,柔軟化が出てきますけれども,優れた内部質保証システムが確認されている場合には,7年を超えたサイクルでもいいのではないか,是非それも御検討いただければと思います。
 3点目です。認証評価について,これは補助金申請資格を失うなどの行政との連動が強化されていった結果,これは受審機関によるのかもしれませんけど,外形的に最低限の基準を満たすかどうかというはずが,微に入り細に入るチェックをしていただくところに比重が移っていると感じています。これも先導性,そして先進性の,言ってみれば阻害要因になっている可能性があると思います。国の役割と,それからピアレビューとしての認証評価機関が果たすべき役割を整理していただくとよろしいかと思います。
 4点目ですけども,これは遠隔授業のことで,従来の対面と遠隔という二分法が,もう我々はこのコロナの2年間で成り立たないということが十分体感しているところであります。そういう意味でこの二分法を前提にしない枠組みが求められていると考えています。
 以上4点ですけれども,認証評価や質保証というのは,最低限の保証をする,
その意味で厳格さが担保される必要があります。ただ,その厳格性が担保されるというところが全体にかかってしまいますと,先導性・先進性を阻害する要因にもなってしまう。是非創意工夫を促して,学修者に対するのと同じように高等教育機関も創意工夫で発展するという質保証システムにしていただければとお願いする次第です。
 私からは以上です。ありがとうございました。

【永田分科会長】  ありがとうございます。現在,8人手が挙がっていると思います。順番にいきますが,簡潔にお願いをいたします。
 益戸委員,どうぞ。

【益戸委員】  ありがとうございます。平成30年のグランドデザイン答申に沿った形での議論を進めていただき,大変ありがたく思いました。改善・充実の方向性が学修者本位であること,質保証であるということからすると,今のデータが非常に重要な時代においては,いよいよ情報公表ということがスポットを浴びることになったと考えます。
 雑誌の偏差値ランキングや,有名企業就職ランキングなどで大学を選ぶのではなく,きちっと競い合った情報公表に基づいて,学生が何を学ぶのか,などをいろいろと考えていただくというのは,非常にいいことだと思います。
 そこで,認証評価の際に,どのようにその情報公表をしているのか,積極的になさっているところはプラス評価になっても良いのではないかと思いました。
 それからまた,大学設置基準というのは,全て「必要最低限の」という表現がついていますが,私から見ると,何かすごく細かいことがたくさん書いてあるな,というのが正直なところです。この認証評価が信頼できるのであれば、全てこの大学設置基準を当てはめて考えるのではなく,より良い評価のところには,自由度を持っていただくということも,大学がスピーディーに改革や発展をしていく上では,非常に重要なことではないかと感じました。
 以上です。

【永田分科会長】  益戸委員,ありがとうございます。最初にありましたインセンティブ付与の部分ですが,法律上定められていないので,認証評価機関の判断で行っています。大学基準協会においては,良い評価を得たところは,ホームページで積極的に良い点を公表しつつ,しかも各大学のホームページでその取組のところに直結するようにバナーを貼るような方法で,誰でも直結できるようにしています。
 ただ,法律上はそのような義務は現在,認証評価団体にないので,益戸委員が言われたことは,公表の時に認証評価団体に考えていただかなければいけない内容かと思います。先ほどの大野委員は大体システム全体に対する御意見だったと思います。今の益戸委員の場合には,ちょうど良いケースだったので,申し上げているわけです。各認証評価団体の評価がスタンダライズされているかという問題が,御説明の途中にありましたが,そことも関係していると思います。ありがとうございました。
 清家委員,お願いします。

【清家委員】  ありがとうございます。質保証について幅広く詳細な御検討をいただきましたこと,吉岡部会長をはじめ部会の委員の方々にまず敬意を表したいと思います。特に今,お話もありましたけども,この遠隔授業の一層の推進のための方策などは,私学団体の要望にも沿った,大変重要な御提言をいただいておりまして,御礼を申し上げたいと思います。
 その上で1点,審議に関して今いただいた整理案,この資料の3ポツの(3)において,情報公表で御指摘をいただきました大学ポートレートについてでございますけれども,これについては,今御説明いただいた資料の20ページにも記載されているとおり,私学版につきましては,私ども日本私立学校振興共済事業団で運営を担っているところでございます。
 大学にとって,学生あるいは入学希望者にとっても,そして社会全般に広く理解を得るためにも,情報は積極的に公表していくということは大変重要でございまして,法令に沿って各大学で対応すべきものでございますけれども,同時にその公表の方法等については,特に私学において,それぞれの経営方針ですとか判断も十分に踏まえたものであるべきだと考えてございます。様々な情報を一律に公表して,大学間での比較を可能にするということが,大学間の序列化等につながらないような配慮も必要かと考えております。
 そのような観点から,実は一つだけ御提案というか,お願いですけれども,この大学ポートレートの掲載内容等の見直しに当たって,特に私学の立場から検討していただきたい点がございまして。それは今,配付していただいた資料の整理案の21ページから22ページにかけて,「現時点での情報公開制度に関する改善・充実の方向性」という四角囲みがございますが,その中での大学ポートレートについて触れた項目,これの特に21ページの末尾から22ページにかけての四つ目の丸ですけれども,その末尾に,もしできれば,例えば,ただし検討に当たっては,国公私立大学のそれぞれの特性等に十分配慮し,大学ポートレート運営会議等での関係機関・団体等の議論を踏まえて行う,といったような記述を追加していただくことを検討していただくと,私学としては大変ありがたいと考えております。
 以上でございます。よろしくお願いいたします。

【永田分科会長】  清家委員,ありがとうございます。大変重要なことです。つまり,今まで質保証の法的制約のところで述べているのは,ミニマムエッセンシャルですが,実は多様性の部分については,逆に扱いにくい状況になっています。認証評価にしろ,設置基準にしろ,そこの部分をどう見ていくかというのは,本当は豊かな教育のために必要ですが,今,法的にはミニマムのところを見ている。ですから,今のような御意見は大変重要だと思います。
 それから,清家委員が前半におっしゃいました,何か序列をつけるようなことは,認証評価のもともとの目的に合っていないわけで,それは極力排除する形だと思います。世界各国の認証評価団体の認証評価を見ていると,競争社会をつくっている国は,序列をつくるような認証評価をやっておりまして,認証評価ではなくて,実はアチーブメント評価をやっています。
 それと違うということを清家委員がおっしゃったわけです。どのような教育をやるために,自分たちが目指す教育研究をやるために,十分その環境が整っていますというところを見るのが一番重要なわけであって,その結果,うまくいかない時もあるかもしれない,という気持ちで認証評価はあると思います。ありがとうございます。

【清家委員】  ありがとうございます。

【永田分科会長】  清水委員,お願いします。

【清水委員】  清水です。私も改善案の検討方針や視座,あるいは基本的な改善方向,これらについては賛成でございます。大学の自主性・自律性を尊重しながら,特に14ページに,単位制度の柔軟な運用の箇所がございますが,これに関して,三つほど私の意見を言わせていただきます。
 一つは,大学は今多くは1コマ90分,これは1単位時間に直すと45分ですが,この1単位時間の法的な根拠はないのです。学校教育と違って,そこは大学の自主性に任せられているのですが,現実を見ますと,40分でやっているところもありますし,岡山大学のように60分でやっているところもあります。多くは45分が単位時間になっていますが,これにより40分から60分まで幅がある,この現実の中で,ある程度目安を定める必要があるのではないかというのが1点。1単位時間の目安を定めるということです。
 二つ目は,今,単位計算方法が,講義,演習,実験と,この3種類で構成されておりますが,実はこの3種類というのは,旧制大学から新制大学へ移るときの総単位数を縮減するためにつくられた苦肉の策といいますか,フィクションです。特に理系の実験がそれを膨らませていたので,それを減らすために45時間の授業を1単位というようにしたわけです。実際には実験を担当している人には相当負荷がかかっているわけです。
 現在は,各大学が124単位にほぼ近づいていますので,その単位数を減らすという理屈はもう要らないわけです。ですから,この3種類の計算方法を,アメリカのように2種類ぐらいに分けるとか,あるいは,かつて議論されたように,45時間の学習時間のうち3分の1以上は授業時間というような目安をつくって,残りは各大学が自由に設定できると決めることも考えられます。3種類の計算方法を大括りという表現がありますけれど,これを2種類ぐらいにするというのが私は賢明ではないかと考えています。
 三つ目は,関連して卒業制度ですが,現在我が国の卒業制度は,大学の場合,4年以上,124単位以上という数的な規定のみでございます。そこに満足な学修成果とか,学修成果の達成度とかいったものを組み込ませ,質的な規定を設けるというのが今日求められているのではないかと思います。各大学とも今,学修成果の把握・可視化に努めています。ですから,この卒業制度の中に質的な規定を盛り込むこと。GPAも含めて,学修成果の把握や確認といったものを卒業の認定の中に含めていくということが考えられるのではないかと思います。以上3点でございます。

【永田分科会長】  清水委員,ありがとうございました。確か,最初の会で清水委員がおっしゃいました,おおよそ何万時間で教育は仕上がっていくという,もっと大局的な意味合いでの時間という方から考えてみては,ということかと思います。
 そのような意味合いで,全体の最後の学位に必要なものから考えていかないといけないし,3種類必要なのか,2種類ぐらいでいいのではないかという御意見だったと思います。ありがとうございます。
 村田委員,どうぞ。

【村田委員】  ありがとうございます。吉岡委員を含めて,皆さん本当に良い案をつくっていただきまして,御礼申し上げます。敬意を表したいと思います。その上で私から3点,お願いを,といいましょうか,意見を言わせていただきます。
 まず一つ目は,経過報告といいましょうか,この案について,冒頭にもありますように,基本的に認証評価と,設置基準というのは表裏一体といいましょうか,正に事前評価を1個緩めて,事後評価を厳しくするという,その観点は引き続きなされているわけですが,その中で一つ心配なのは,先ほど大野委員もおっしゃったと思うんですが,認証評価機関による評価の結果が異なっている点です。
 特に,事前評価を緩和し,事後評価をというふうになった場合に,残念ながらその認証評価自体も,最低限度の評価しか行われていない。それについて,更に認証評価機関によってばらつきがあるというようなことは,非常にこれは問題で,特に国際的な通用性のところでも問題ですので,是非認証評価機関の評価を入れた評価ですよね,ここを統一していかないと,結局,事前規制は緩い,しかし事後規制も実は緩くなってしまっているというような根本的な問題に突き当たるんじゃないかと思います。これを是非お願いをしたい。この点は,16ページでしたかね,書いてありますので,ここを是非お願いをしたい。これが1点目でございます。
 もう1点は,23ページだったかと思いますが,入学定員についての緩和,確か入学定員ではなくて,収容定員でというお話になっていくと思うんですが,これは既存の,既設の大学,既にある大学については,このとおりでいいとは思うんです。特に歩留り等々の,非常に私立大学は算定が難しくなっておりますけれども。
 一方で,先ほどの事前の規制と事後の規制とのお話と関係あるんですけれども,新設大学についての入学定員のところ,これが非常に厳しい状況にあるのか,といいますのは,既に幾つかの大学で初年度で50%を切ってしまうような大学が見受けられている。極端なところは20%という大学が,設置された新設大学で既に出始めているんですね。これは18歳人口が減少しているから当然そうなわけです。
 ここを考えた場合,新設大学での入学定員管理をもう少し厳しくし,既存の大学については収容定員,その辺りを考えていただく必要が若干出てくるのかというのは,先ほど申し上げました,事前と事後の観点から言いますと,あるかと思います。
 それから最後の点,三つ目でございますけれども,遠隔授業等々についてでございますが,これも海外との競争を考えた場合に,遠隔授業の在り方を,これ今は60単位となっていますが,もう少しこれも柔軟に,かなり進んだ形でしてはいただいているんですけれども,柔軟な形での運用を,踏み込んで今後議論をしていく必要があるのではないかと考えております。
 先ほど単位の問題がありましたけれども,これも皆さん御存じだと思いますが,遠隔授業になりますと,特にオンデマンドになりますと,2時間の授業を学生によっては1時間の早回しで聴くんです。そうすると時間による単位制度というこの管理の仕方,これは労働基準法もそうですが,そもそも根本が崩れてくるのではないかという気がしますので,これの議論も始めていく必要があるのではないかと思ってございます。
 私から以上でございます。

【永田分科会長】  ありがとうございました。最初のところは,先ほどもあったような御議論と同じポイントかと思いますが,2番目のところのポイントはかなり重要で,この概要が決まった後の詳細設計をする際,先ほど吉岡委員から出ましたが,そこで本当に喧々諤々(けんけんがくがく)の議論をしないといけない部分が二つ目,三つ目だったと思います。
 相原委員,どうぞ。

【相原委員】  すばらしい案をつくっていただきまして,ありがとうございます。簡単に申し上げますと,大学の負担軽減のところがとても重要だと思います。特に優れている大学,体制や取組が優れている大学は負担軽減をするという,一律でない対応というのはすごく重要なことかと思いました。
 それから,専任教員の在り方の見直しですけれども,いろいろ細かい規定はあると思うんですけども,できるだけ柔軟に教員がいろんな大学,いろんな研究室で働けるような見直しを進めていただければと思います。
 あと,それからもう一つ気になったんですけど,総合教育政策局で,大学の図書館の設置基準の見直しのようなことが考えられているようですけれども,そういうことはこういう内容にはあまり入ってこないと思ってよろしいんでしょうか。

【永田分科会長】  ありがとうございます。先に事務局から2番目の質問にお答えします。

【柿澤高等教育政策室長】  図書館のところも,今回の設置基準の改正のところでは,この13ページから14ページの辺りにかけまして,また校地・校舎等に関しましては,この15ページの下の二つの丸のところでございますけれども,「機能に着目した一般的な規定として見直す」ですとか,あるいは「デジタル化の状況を踏まえて,規定の見直しを行う」といったことが,こちらの作業チームの案の中で盛り込んでいただいているところでございます。

【永田分科会長】  相原委員がおっしゃった1番目のところですが,教員の担当は自由になった方がいいと思います。その背景を支えるのは,実は内部質保証のシステムを持っているかどうかです。なるべく自分たちで,エフォートも,それからコントリビューションもきちんと計算できて,やれるという前提だと思います。ですから,内部質保証をうまく評価の大きな部分に占めていけばいくほどうまくいくようには多分なると思います。
 金子委員,どうぞ。

【金子委員】  発言機会をいただきまして,ありがとうございます。
 今回の質保証システム部会と作業チームにおけるまとめは,大変良いまとめになっているというふうに思っています。敬意を表したいと思います。その上で,4点意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず1点目は,2ページ目の下から3行目にあります,授業外学習が十分でないという指摘のところです。これは注釈の4に,全国学生調査とありまして,この調査をもう少し詳しく拝見しますと,予習・復習等の授業に関する学習時間が5時間以下というのが69%ということですが,一方で,アルバイトなどで11時間以上という人も49%となっております。なかなか働かなければ生活できない,学習できないという,こういったことで,授業外学習に充てる時間が取れないという側面があるのではないかと感じております。
 2点目は,5ページ目の質保証の前提となる大学の在り方についてですが,これは前任の委員の髙倉から引き継いでおる内容で言いますと,第10期の大学分科会において真摯(しんし)に議論されたと認識をしております。この後,年度末までもう時間がないという状況ではありますけれども,大学分科会でまとめております,教育と研究を両輪とする高等教育の在り方について,こういった観点も踏まえて補強するべきではないかと考えているのが2点目です。
 そして3点目は,6ページ目の保証すべき質とは何かというところで,これも下から3行目の「一方で」とあるように,研究の質に関しては,これまで論じてこられなかったというのが認識のとおりだと思います。これは誰がどのように保証するのか,またできるのかというのは非常に難しい問題だと思っているんですけれども,先進的な研究ですとか,基礎研究や長期にわたる研究,こういったものはなかなか成果が出しにくいというものであり,尚更かと思っております。
 論文の引用数だとか定量的なもの,数値的なもので測るという類いでもないと思っておりますが,課題として是非挙げていただいて,これがこの分科会へ課題となるのかもしれませんが,是非問題提起として認識いただければと思っています。
 そして最後4点目は,13ページ目にあります,専任教員の見直しのイメージについてです。ここに基幹教員ということが書かれておりますが,その文意を読み解きますと,参考にあります,みなし専任教員と同等,または同様のものを想定しているのではないかと感じておりますので,それを前提に,少し意見を申し上げさせていただくとすれば,現状で言いますと,専任教員というのは退職者の補充がなかなかされておりませんので,減少傾向にあると認識をしております。この基幹教員を改めて定義することによって,教員の非正規化というものをむしろ推し進めてしまうのではないかと懸念をしているところです。
 任期付教員の増加と相まって,短期で成果が出る研究が中心となって,教員が基礎研究だとか,また長期にわたる研究に取り組むという質の保証の観点から見ても,懸念をされると思っております。この基幹教員という定義が出てきた趣旨を是非教えていただきたいと思っております。
 ここで提起されていることは,この大学設置基準の改正につながる大変大きな見直しと思っておりますので,是非学修者,教員,職員をはじめ大学教育の在り方全体に大きな影響を与えるものということで,現段階で幅広くこのアンケート調査も実施すべきじゃないかと考えておりますので,是非この点も御検討いただければと思います。
 以上になります。

【永田分科会長】  ありがとうございます。少し皆さんと違う視点が出たと思います。2番目のところだけ説明させていただきますが,その研究の質というのは,こういう研究をやりたいですと大学がおっしゃって,その環境をきちんと整えているかどうかということが一番重要です。ですから,きちんと準備されていますというのが,評価です。はじめから狙うものの水準が違う場合は違う形でいいわけで,結局そこを見られます。ですから,出てきた成果で論文数がいくつであるという比べ方は一切しません。質の保証の評価は,各大学の思惑の評価ということです。ちょうど良い事例が出ましたので,申し述べました。
 小林委員,どうぞ。

【小林(雅)委員】  ありがとうございます。私も,これまで70年以上,パッチワークでやってきて,大学設置基準というのをつくってきたわけですけど,それを抜本的にグランドデザインで見直すということが決まりまして,その方向性で議論されて,非常に詳細にわたる検討がなされてきたと思います。ただその上で,2点だけ質問とコメントしたいと思います。
 1点目は今,金子委員の方からありました,専任教員,あるいは基幹教員ということですが,これは今ご意見がありましたように,非常に大きな変更になると思います。そこのところに,みなし専任教員のことが専門職大学の場合について書かれていまして,これはそのとおりだと思いますが,これに当たるものとして実務家教員というのは,専門職大学・専門職学科以外では,現在工学部だけで入っているものですので,これを大学全体に広げるかどうかということはかなり大きな議論になります。
 その上で,もしそういう形で議論も進むのであれば,現在その専任教員数というのは別表で決まっているわけですけれど,これをそのままにしておきますと,金子委員が言われたように,専任教員といいますか,常勤の教員が非常に少ないということになりますので,その専任教員数,基幹教員数の見直しということも必要になると思います。その辺は是非きちんと議論していただきたいというのが第1点です。
 それから2点目は,これまで柔軟性を持つように,できるだけ大学を改革していくということで進められてきたわけでありまして,そのために学位プログラムというものを導入するということで進められてきたわけですけれど,これについてまだ,この案を見てみると非常に分かりにくいところがあります。例えば教員が組織と1対1に対応していないというようなことが12ページに書かれておりまして。
 ところが,学位プログラムに合わせて大学設置基準を柔軟化するかどうかということについては,23ページの方に,それはやらないで,現在,学位プログラムが届出制でできるので,というような記述があります。それに関連しまして,資料2-1では,設置認可審査を経て,認められた分野の範囲内であれば,というようなことが書かれているんですね。この記述については,資料2-2に対応する部分がないので,少し分かりにくくなっているのです。
 ですから,実際には,これから資料2-1の方を見るということが非常に多くなると思いますので,周知が十分されていないというのはそのとおりですけれど,是非ここの質保証システム部会で,更にその学位プログラムについて整理して議論していただければというふうに思います。
 以上です。

【永田分科会長】  吉岡委員,小林委員の後半部分について,書いてある場所が飛んでいますが,何か補足的に御説明いただけますか。あるいは,改善しなければいけないということであればご発言いただけますか。

【吉岡委員】  資料2-2の方の文章のところですけれども,25ページのところが,基本的に,小林委員の趣旨とちょっと違っているのかもしれません,2-2の方との対応でいいますと,25ページの四角のところの2番目の「先導性・先進性の確保」のところの一つ目の丸のところです。これは周知ということで,審査の際の分野の範囲,認められている分野の範囲内であれば,新しい学位プログラムをつくったり,学部学科等の設置もそうですけれども,届出が中心でできるということで,そのことでございます。ということで答えになっていますでしょうか。

【小林(雅)委員】  ありがとうございます。ただ,学位プログラム自体が,先ほど12ページに例を出しましたけど,組織と教員の所属等が対応しないとか,そういう柔軟なことができるということが,まだまだ知られていないと思います。ですから,その辺りのことを是非周知していただきたいという,そういう趣旨です。

【吉岡委員】  分かりました。おっしゃるとおりだと思います。現に大学でも学部学科での授業の担当者と,それから教員所属組織というのも変えてあるところも十分ありますし,たくさん出てきておりますし。それからいわゆる学位プログラム,考え方としては,学部というのもある種の学位プログラムの,大きな学位プログラムになっているわけですけれども,近年言われているような新しい学位プログラムを学部学科から離れた形でつくる場合でも,その分野が既に認められた範囲でつくる分には,おっしゃるとおり,いろんな形でできるということを,もう少し周知させていく必要があるだろうと考えております。

【永田分科会長】  ありがとうございます。また,小林委員がおっしゃるように分かりにくいところがあるかもしれません。きちんと公表していかないといけない。その学位プログラムの話は,先ほどからの教員の数とも関係あります。ミネルバ大学を御存じかもしれませんが,キャンパスも何もありません。ただ,あれはすごいです。たかだか数十人の学生を寄ってたかって教えるという質保証が成り立っているから,世界中を回って,キャンパスがなくても教えられる。それは内部質保証がしっかりしているということです。普通の大学以上の先生が関与しているというシステムになっています。
 曄道委員,どうぞ。

【曄道委員】  ありがとうございます。まず大変すばらしい取りまとめをしていただいたと感じております。問題の所在が明確になった上で,御提言をいただいていると感じました。私から2点,手短にコメントしたいと思います。
 一つは設置基準の特例制度ということで,かなり具体的な言及をしていただいて,柔軟性のある運用がこれからできると期待をしております。その中で,15ページの枠組みの中に,要件が定められて,例が挙げられていて,その中で,有識者会議等において確認をすることといった記載がございます。
 ちょっとこのイメージができていないんですが,特例制度を使って先進的な取組を,かつ,例えば国際連携の下で行おうといったときには,非常にスピード感のあるプロセスを踏むことが重要ですので,その辺の御配慮を,これから詳細設計をしていただく際にお願いをしたいと思いました。留意事項には,この文言がなくなって,活用しやすい仕組みとするといったことも記載していただいていますので,是非お願いできればと思います。
 もう1点は,直接この案の中に書き込めるものではないようには思うんですが,学修者本位ということをキーワードに大学教育を設計すればするほど,その学修者本位に設計された教育に堪え得る視点を持った学生を入学させないといけないと思います。
 ですので,この議論の中に,高大接続,これは入試も含めてですが,高大接続や,あるいはそういった教育の連続性という意味での高大連携ということをうたっていかないと,その学修者本位というものが,大学本位になっているような印象を持たれかねないということを指摘させていただきたいと思います。ありがとうございました。

【永田分科会長】  曄道委員,ありがとうございます。今のところ,その観点では話し合われてはいないので,多分吉岡委員の方で,斟酌(しんしゃく)されると思います。
 松下委員,どうぞ。

【松下委員】  ありがとうございます。私の意見は,先ほど清水委員や村田委員がおっしゃったことと少し重なってしまうんですけれども。今回,質ということを教育研究の質と,また学修の質ということで,明確に定義された点はとてもよかったと思います。その上で,単位制度との関係をどう考えるかということです。現在の日本の学修の質を保証する仕組みというのは,1単位当たり45時間の学修という時間ベースの考え方と,それから成績評価で見るという,その二つを組合せた形で行われていると思います。
 先ほど村田委員がおっしゃったように,遠隔授業が多く入ってきますと,その時間ベースの方が,これまでは,授業時間何時間,授業外学習時間何時間と決まっていて,また特に,授業回数ということが,文部科学省からの指導で非常に厳格に守られてきたんですが,そこが少し曖昧になってきます。その学修の質というのをどういうふうに担保していくのかという,その考え方,あるいはシステムの見直しが求められているんじゃないかと思います。
 この問題は,日本だけではなくて,今回のコロナ禍で世界的の大学が直面した課題でもありましたので,海外の動向なども踏まえて,もう一度基本的なところの見直しから進めていただければと思っております。
 以上です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。これはこの概要が決まった後のこの先の中で御議論いただくと思います。
 現在,あと5人のお手が上がっております。1人3分ぐらいずつでおまとめいただきたいと思います。そこまでで多分,予定時間をかなりオーバーすると思います。
 須賀委員,どうぞ。

【須賀委員】  おまとめいただきまして,どうもありがとうございます。私からまず,最初に教育研究の質ということで,これまであまり評価されてこなかった研究の質というのが今回入ったということがかなり重要だろうと思うんですが,逆に,研究の質を持続的に優れた研究成果を創出することであると,そのための研究環境の整備と考えられているようですが,そうしますと,どのレベルを最低限と考えるか。
 先ほど分科会長がおっしゃったような,それぞれにしたい研究があって,そのしたい研究をすることができるような設備が整っていることとなりますと,何となくどれが最低限のところかということがあまり明確にならないような気がして,不安に思っております。それが1点。
 もう1点は,先ほどから出ています単位制ですが,今の,例えば124単位という時間で,どれぐらいの拘束時間になるかというところを考えてみますと,恐らくセメスターで考えて,授業期間中は,週6日間,1日8時間というぐらいの数になるんです。これは多分働き過ぎで,恐らく,それができないということを前提として授業が組まれているんじゃないかと。そうすると授業回数のところに行くということは,実際に単位制の下で考えられているものの3分の1の時間で単位を出しているということになって,単位制そのものがもう崩壊しているような感じも受けております。
 そうしますと,もう少し違った形のもので先ほどから出ております,単位から成果へというところで考えていかないといけないという,その辺りにも話が結びつくのではないかという気がしておりまして。そういったことも是非教育の質の中で議論していただければと思っております。
 以上です。

【永田分科会長】  須賀委員,ありがとうございます。後半部分は先ほどの清水委員から出ていたのと大局的にある意味,似ているところがあります。前半部分の研究の話は,実は教育も全く同じなので,その大学が行いたい教育ができるかどうかが問題であって,それができる準備が整っているかどうかというのは,教員の判定まで含めて見ているわけです。ですから,そのように大学が何を意図するかというのは結構大きくて,幾ら何でも,文系単科と理系単科が比べられるわけもないということだと思います。教育においてもそうです。ですから,そこのところは不安も何もなくて,やりたいことをおやりになればいいと私は思います。

【須賀委員】  学修者本位という言葉を中心にまとめていかれたので,学修者の観点から見て,どう,その研究設備が見えるのかという,そういうお話が必要かということでございます。

【永田分科会長】  分かりました。ありがとうございます。
 古沢委員,どうぞ。

【古沢委員】  ありがとうございます。詳細なまとめをしていただいて,ありがとうございました。
 設置基準を見直す方向性として,大学の多様性や先導性を向上させていくというのは私も必要だと思います。その一環として15ページに,特例制度のイメージを出していただいています。例えばということで,遠隔授業の上限であるとか,校地・校舎の基準というのが入っていて,確かにこうした規制は日本独自のものと言われていて,国際化,デジタル化の時代になじまない面もあるのかとは思います。
 その一方で,もともとは,先ほどから学修者本位という言葉が出てきていますけれど,学生の教育の質保証という側面もあったものだと思います。資料にもありますように,現行制度でも,相当程度できることというのは,かなりあるのも事実だと思うんです。特例であるからこそ,その対象になることで,どのような効果とか目的があるのかということを,どのような要件になるかにもよるかと思うんですけれど,大学が示していけば,広く大学外の方たちにも理解を得ることができるのではないかという視点も必要ではないかと思いました。
 以上です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。
 千葉委員,どうぞ。

【千葉委員】  ありがとうございます。レポートについては,大変よくできていて,内容については非常に納得できるものでした。そういう前提で,意見というよりも,少し感想をお話しさせていただきたいのですが。
 教育の質と研究の質というのが書いてあるわけですけれども,教育の質あるいは研究の質ということになりますと,高い低いという観点から,高度であるということが必要になってくると思うんですが,その教育の質の中にある学びの質ということになると,これは,広さであるとか,機会であるとか,そういったところに焦点が当たってくるのではないかと思います。
 昨今の教育未来創造会議においても,イノベーションということが,我が国における大きな課題の一つであるということが語られていて,これは間違いのないことだと思うんですけれども,そのためには,学ぶ者の広さだとか機会だとかは非常に重要になってくるのではないかと思います。
 学び続けるというのも,割と最近の概念じゃないかと私は思うんですけれども,これからは,この学び続けるということが非常に重要になってまいります。そういう意味で,授業以外の学びをどういうふうに提供するかということが重要になってくるかと思いますので,「覚える」ということに加えて「考える」,「学ばされる」ということに加えて「学ぶ」,こういったものを加えて,先ほど永田分科会長のおっしゃった1万時間で,プロフェッショナルの入り口に入るというのは,内外合わせて時間を興味ある分野に傾けていくということが重要になっていくのではないかと思いますので。
 そういう意味では,教育の質,研究の質,それに加えて,学生に対する広い経験の提供であるとか,機会の提供であるとか,こういったことも加えていただくと,国の方針にも,よりマッチしたものになるのかということを感想として申し上げたいと思います。ありがとうございます。

【永田分科会長】  吉岡委員,ますます難しいでしょうか。定量的にはとても難しいです。意図はよく分かります。それぞれの大学の,その大学を出た価値がきちんとその学生さんに,一部でもたくさんでも伝わっているといいわけです。本当はそれが基準ですが。余分なことを申し上げてしまいました。
 後藤委員,どうぞ。

【後藤委員】  質保証システムについて詳細なおまとめをありがとうございました。全体の趣旨には賛同いたします。高等専門学校の立場から教育の質というのを考えますと,特にキーワードになっております,学修者本位の観点から,卒業生の質保証,何を教えたか学んだかということももちろん大事ですが,何を習得したかということが大事かと思います。
 DPの達成ということが重要で,全体としては賛同しますが,もう少しここにウェイトがかかってもいいかなという印象を持ちました。単なる感想になるかもしれませんが,そのような印象を持ちました。
 以上です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。今立て続けに,最後の部分で急に人材そのものの価値に触れることになってきています。どうぞ,麻生委員。

【麻生委員】  ありがとうございます。教育の質の保証という観点ではよくまとまっていると思います。ただ運用上の問題として,私がいつも引っかかっていることがありますので,是非,そこをどういうふうに考えていくかを議論していただきたいです。例えば設置認可審査があり,アフターケアがあり,その後に認証評価があるという流れはもう周知の事実ですけども,機関別認証評価等で不適合とか不適格を受けた大学が,今度新しい学部学科等をつくるときに,現在のシステムでは設置認可においてそれを受け取らないとか認可しないというシステムにはなっていないです。
 ただ,教育の質の保証ができていない機関ということの認定を認証評価機関がした場合,それが,文部科学大臣にフィードバックされていることは分かりますが,運用上,設置審にそれが反映されていないというところについては,深く議論すべきだと考えておりますので,よろしくお願いいたします。
 以上です。

【永田分科会長】  ありがとうございます。先に申し上げておきます。時間がなくて,そのほかの委員の方々の御意見で聞けなかった部分もあるかと思います。どうしてもという場合には,事務局の方に送っていただければ,我々としては,重要なものはフィードバックさせていただきます。
 麻生委員が最後におっしゃったところは,全然前面に出ていないことを実はおっしゃっています。つまり設置審にしろ,認証評価にしろ,駄目というのはおかしいのですが,十分ではないという場合があるわけです。この最低基準というのは,実はそこに効いています。これを大学にしたらまずいだろうという大学が出てくるわけです。
 ところが,麻生委員がさっきおっしゃったように,その設置基準の時もそうですし,認証評価の時もこれはいけないというのは,今,若干のペナルティしかないわけです。相変わらずまた大学を法人は設置できます。ここで先ほどから出ていた意見は大変ポジティブなものですばらしいと思うのですが,先ほどから少しずつ陰りのある発言をされているのは,全員設置審や認証評価に関わっている委員です。
 そこにとても厳しいものが実際にはありまして,吉岡委員は多分その中で必死の毎日を送られているのではないかと思います。本当に,質が担保されない場合が出てきてしまうわけです。これが非常に難しい問題になっています。逆に言うと,それを最後,麻生委員がおっしゃったわけですが,なかなか排除しにくい状態に今なっています。法律を読むとそのようになっています。
 そのような問題があって,そのような問題を認識している方としてない方で,若干意見が異なるだろうと思って聞いておりました。また,吉岡委員はもっとお詳しいでしょうから,いずれ詳細設計をする時に,それをやるといけないというものは多分出てきます。その時にもっと詳しく議論できるのではないかと思っております。
 今日いただいた意見は基本的に大学がきちんと高いレベルで質を担保するから,やりたいようにやらせてくださいという,一言で言うとこのぐらいの文章になると思います。そこを何とかできるような形にしながら,質保証していくということだと思います。いろいろな観点をありがとうございました。またチャンスがあると思います。ここはまだまだ途中段階です。
 吉岡委員,最後にどうぞ。

【吉岡委員】  一言だけ。ありがとうございました。たくさんの御意見をいただいておりますけれども,今日いただいた御意見の中には,実際に作業チームあるいは部会の方で議論されていることもございますので,より明確な形で,必要な部分は出していくということにしたいと思っております。
 大体永田分科会長が引き取ってくださっているんですが,最初におっしゃっていたように内部質保証がきちんとできている大学であれば,ほとんど実は問題がないということで,内部質保証がどれだけきちんと整っていて,それが機能しているかということをきちんと判断できるようなシステムというのが質保証システムの一番根本にあります。
 そのシステム全体をその観点からきちんと整理していくということが必要だと思うんですが,最後におっしゃったとおり,最低限の部分すら実は担保されていないというようなことが起こっている。それから,村田委員がおっしゃっていたみたいに,設置審では入学者確保の点についてもきちんと審査をしているわけですけども,実際に蓋を開けてみたら,実はほとんど集まっていないということが起こる。これはある種の書面上の審査であるということも関わっていることでありますけれども,そういう点も含めて制度上どうするかということ,それから実際にそれがどう機能しているかということは,不断に検証していかなければならないと思っているところです。
 いただいた御意見を反映させる形で,この後,議論をもう少し詰めた形で,また部会の方に,これは作業チームの途中経過報告という形でございますので,これを質保証システム部会の方で更に議論をし,そして大学分科会の方にまた報告させていただくというふうにさせていただきたいと思っております。
 よろしいでしょうか。ありがとうございます。

【永田分科会長】  吉岡委員,よろしくお願いいたします。そちらにお任せしてしまうわけですが,また御報告をいただければと思います。委員の方々,ありがとうございました。
 それでは,3番目の議題です。大学ファンド創設と大学研究力強化に向けた取組について情報共有です。
 それでは,黒沼大学研究基盤整備課長,御説明をお願いいたします。

【黒沼大学研究基盤整備課長】  よろしくお願いいたします。お手元に資料3を御用意いただければと思います。大学ファンド創設と大学研究力強化に向けた取組についてということでございます。先ほど分科会長からもございましたとおり,10月12日に一度,状況報告いたしましたけれども,それから3か月経ちまして,現在の状況の御報告ということでございます。
 ページをおめくりいただきまして,目次がございますけども,大学ファンドと,それから地域中核・特色ある研究大学総合パッケージと,主に2点ございます。
 3ページ以降,2月1日に行われました総合科学技術イノベーション会議の資料からの抜粋になってございますけども,そちらを用いて御紹介をしたいと思います。
 1点目,3ページのところ,大学ファンドの関係でございますけども,背景についてはもう既に御紹介しているので簡単にいたしますけども,諸外国に比べて,近年,研究力その他,相対的に我が国のところが低下してきているというところで,4ページでございますけども,その背景としては,諸外国の資金規模,事業規模が相当伸びているのに比べて,我が国の事業規模が伸びていないと。
 特にそういった資金力の差の背景に何があるかというと,4ページの右上のところですけども,各大学に固有の基金というものがあって,そこの資産運用に大きな差があるということでございますので,それを取り入れて,我が国でも10兆円規模で大学ファンドを創設して,その資金によって,4ページ下にあるような人,資金などが集まって循環していくような大学を支えていこうと,そういった構想でございます。
 5ページのところが,参考資料1にあるような制度設計の提言を1枚のイメージ図でまとめたものでございます。このファンドを用いてどういう大学を支援していくかという,選び方の制度設計の図でございますけれども,左下にあるような,緑色の枠,三つの条件でポテンシャルを見ていくということが取りまとめられてございます。研究力,それから事業・財務戦略,それからガバナンス体制,この三つで,まずポテンシャルのある大学を見ていって,そこから事業計画などをつくっていただいて,それに対して大学ファンドからの助成を行っていくということでございます。
 詳細な条件につきましては,参考資料1の6ページ,7ページに,また文字として書いてございますので,また御覧いただければと思っておりますけれども。ガバナンス体制につきましては,合議体の執行機関,それから大学の長と教育担当役員,事業・財務担当役員の役割分担というようなものが求められているというところでございます。
 7ページに行きますと,国立大学については,制度改革として法改正が必要ということ,一方で,公立大学・私立大学については,寄附行為,定款などにおいて,様々な機関の定め方があるということで,そのような中で調整をしていただくというようなことが提言をされているところでございます。
 それで,簡単にしてしまいますが,その次の6ページを御覧いただければと思います。こちらが今後のスケジュールでございます。2月1日に,先ほど申し上げたとおり,CSTI,総合科学技術イノベーション会議で,こちらの取りまとめがされましたので,これに基づきまして,我々としましては,関連法案を国会に提出をしていくということを考えておりまして,それが国会でお認めいただけましたら,夏から秋にかけて基本方針というものを定めて,認可基準,認定基準を定めて,大学を公募していくということになろうかと思っています。
 実際の助成につきましては,令和6年度からの開始を予定してございます。10兆円の資金を積み上げていくのと同時に,運用して,運用益を積み上げていかなければなりませんので,開始は令和6年度からという予定でございます。
 次のページを御覧いただきますと,そこから先は,「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ」でございます。ファンド以外の大学,ファンド以外の支援策についてでございます。こちらも参考資料2で分厚い資料を配付してございますけども,2月1日の総合科学技術イノベーション会議で決定をされたものでございます。
 8ページを御覧いただきますと,イメージがついてございます。それぞれの大学の強みがございますけど,地域の中核大学,特定分野の強みを持つ大学など,多様な大学がございますけども,それらの全体を底上げしていくということで,大学ファンドによる支援だけではなく,その他の施策をパッケージにして示していくということでございます。
 ページ8の上の黄色いところは,大学ファンド関係ですけれども,こちらは令和4年度についてはまだございませんが,令和6年度からですから,それに一応記載をしているものでございます。
 その地域パッケージの中身につきましては9ページに概要を書いてございます。丸1から丸3までの柱で構成されてございまして,丸1は,大学自身のそれぞれの強みを高めていくための取組,それから丸2,丸3は,それを地域とつないでいくような取組という,こういう三つの柱で構成をされてございます。
 それを横の概念図で示したのがページ10でございますけれども,ページ10の下の方にありますように大学自身の機能強化,それから地域への貢献のところの両方を伸ばしていこうと,こういう形になってございます。
 11ページ,12ページは,それの具体例でございます。ポイントとしましては,13ページに飛んでいただいて,中ほどの四つ目の四角でございますけども,この地域のパッケージにつきましては,今後改定を行っていく予定というところでございます。今回,全体で460億プラスアルファの予算を積み上げてございますけれども,これで終わりということでは決してございません。大学ファンドの支援が令和6年度から開始されますけれども,それに向けまして,このパッケージの内容を更に進化させていくということが予定されているものということでございます。
 それの検討の場になりますのが,科学技術学術審議会の大学研究力強化委員会というものでございます。15ページ以降にその関係の資料が掲載されてございます。今後こちらの委員会で,大学研究力強化という御覧のような丸1から丸3の柱で検討していって,また総合パッケージの方に検討の結果を打ち込んでいくということを予定しているところでございます。
 16ページが,現在の検討状況の例でございますけども,先ほどの強化委員会の丸1の拠点形成の取組の部分を現在深掘りして議論をしているというところでございます。
 こちらの委員会では,17ページ以降の具体的な事例とかも踏まえまして,ヒアリングも行いつつ,時にそういった実例を踏まえて,きちんとエビデンスに基づいて,研究力強化の取組を抽出していこうと思っておりますが,時には研究力の源泉とは一体何だろうというような根本論まで振り返りつつ,幅広く議論をされていくことを期待しているところでございます。
 時間が押しているということでもございますので,簡単でございますが,御紹介でございました。

【永田分科会長】  ありがとうございます。これは,国会に法案提出の直前まで行っています。御質問いかがでしょうか。いろいろ詰めて話さなければいけないこともあるでしょうが,今,概要の状態で,法案審議まで入ると思います。ですから,最後の公募の要領決定の時までにいろいろとあると思いますが,よろしいですか。なければ先に進ませていただきます。
 一般社団法人日本経済団体連合会から提言が出ておりまして,今回,その提言の御説明をおいて,皆さんに意見交換をさせていただきたいということです。経団連の平松様から御説明と聞いております。よろしくお願いいたします。

【平松経団連企画部会長】  日本経済団体連合会の教育・大学改革推進委員会で企画部会長を務めております平松と申します。
 本日は,経団連が去る1月18日に公表いたしました提言「新しい時代に対応した大学教育改革の推進」,並びに提言の検討に当たって実施をいたしました「採用と大学改革への期待に関するアンケート」の結果につきまして御説明させていただきます。
 まず,提言につきましては,お配りしている概要版の資料に沿って御説明いたします。それでは,1ページ目を御覧ください。
 経団連では,2018年6月に「今後のわが国の大学改革のあり方に関する提言」を公表いたしましたが,その後コロナ禍を契機に,デジタルトランスフォーメーション(DX)や,グリーントランスフォーメーション(GX)が加速するなど,経済・社会が大きく変化しております。こうした中で,人への投資を加速し,産学官が連携して,教育改革を進める必要があると考えます。とりわけ,社会の中核で活躍する人材を輩出する大学において,教育改革を急いでいただきたいと考え,今回,大学教育改革に焦点を当てるとともに,アンケート結果を盛り込みつつ,提言を取りまとめました。
 提言の構成は,1ページ目の下の図にあるとおりでございます。Ⅰ.として,Society 5.0において,大学に求められる役割を改めて提示した上で,Ⅱ.で,アンケート結果などを基に,経済界が求める人材像と採用動向を示しております。Ⅲ.では,新しい時代への対応に向けて,経済界が期待する大学教育改革について,続くⅣ.では,そうした大学教育を実現するために必要な規制・制度改革について,それぞれ述べております。最後の「おわりに」では,修学支援など教育格差の是正についても触れております。
 2ページ目を御覧ください。Ⅰ.の「Society 5.0において大学に求められる役割」では,教育,研究,社会貢献といった大学の三つの役割について改革の方向性を示した上で,各大学は生き残りをかけて,独自性やブランド戦略を強化すべきとしております。特に地域の大学には,「地域における知の中核拠点」としての機能強化を求めております。
 3ページ目を御覧ください。経済界が求める人材像や能力・資質について,主に,アンケート結果に基づいて示しております。企業は,多種多様な人材を求めていますが,特に期待する資質としては,8割の企業が「主体性」,「チームワーク・リーダーシップ・協調性」と回答しております。また,4割近い企業が「学び続ける力」を挙げております。一方,特に期待する能力といたしましては,「課題設定・解決能力」,「論理的思考力」,「創造力」が上位となっております。
 4ページ目を御覧ください。今後5年程度先を見通した採用動向です。アンケート結果によりますと,既卒者の採用を増やす傾向が見られるほか,多様な個性・才能を持った優秀な人材を確保するため,新卒一括採用に加えて,新卒者・既卒者を問わずに,通年採用,職種別・コース別採用,ジョブ型採用など採用の多様化・複線化を進めていく傾向が見られました。
 5ページ目を御覧ください。Ⅲ.の「新しい時代への対応に向けて経済界が期待する大学教育改革」です。大学は,内外の環境変化に対する感応度を高め,教育内容を不断に見直していく必要がございます。また,変化の激しい人生100年時代において,大学には,高校を卒業したばかりの若者の教育のみならず,社会人の学び直しの場としての役割も期待されます。
 5ページの概念整理図で示しているように,今後は,「仕事と学びの好循環」の実現を通じて,人々のwell-beingを達成するとともに,我が国の経済・社会を持続的に成長させていく必要があります。そうした中で,産学官連携によるリカレント教育プログラムの拡充が重要になると考えております。
 6ページ目を御覧ください。大学教育の質保証の強化は経済界にとっても重要であります。各大学は,入学から卒業までの一貫した教学マネジメントを確立するとともに,特に卒業要件の厳格化など「出口における質保証」を強化することが重要と考えます。また,大学教育の質保証を評価し,カリキュラムの改善を図る上で,学修成果の可視化・公表も不可欠と考えます。
 一方,学生は,可視化された学修成果を基に,学修の改善に取り組み,就職活動では,学修経験を踏まえた自身の強みや個性を企業に効果的に伝えることが大事だと思います。企業といたしましても,採用選考に際して,学生の学修経験をこれまで以上に重視する必要があると考えております。
 7ページ目を御覧ください。新たな時代に対応した大学教育として,オンラインと対面を効果的に組み合せたハイブリッド型教育を推進するほか,経済界,国,地方公共団体など,多様な主体と連携しての人材育成が必要となっております。特に課題解決型教育やキャリア教育,起業家教育,リカレント教育では,産学連携の取組が重要と考えております。
 8ページ目を御覧ください。大学において今後重視すべき教育として,「文理融合教育・STEAM教育」,「リテラシーとしての数理・データサイエンス・AI教育」,「PBL等の課題解決型教育」,「グローバル化に対応した教育」,「キャリア教育等」,「起業家教育」,「リカレント教育」の7分野を挙げております。
 例えばグローバル化に対応した教育,海外留学,海外大学との教育連携に関しましては,海外大学との教育研究ネットワーク構築の推進や,オンラインと実留学を組み合せた多様な留学機会の提供,奨学金の充実による留学支援の強化が求められます。また,リカレント教育に関しては,産学連携によりプログラムを共同開発する大学や,質の保証されたプログラムを実施する大学に対して,国による支援を求めるとともに,企業に対しましても,受講する社員の経済的支援や休業・休暇制度の導入の検討を提案しております。
 9ページ目を御覧ください。現在,中央教育審議会の部会で,大学設置基準を含む質保証システムの在り方に関する検討が行われていると承知しております。大学をめぐる内外の環境変化や,今後の大学教育の方向性などを踏まえると,現在の大学設置基準を抜本的に見直す必要があると考えます。提言では,当面の改革として,現在全国800余りある全ての大学に一律の設置基準を適用することを改め,認証評価機関から長年高い評価を受けているなど一定の大学には,大学設置基準の適用や認証評価を一部緩和すべきとしております。
 更に各論として,学部等の壁を越えた連携教育プログラムや複数の大学による連携教育プログラムを拡大する必要があること,「出口における質保証」により4年で卒業するとは限らなくなることなどから,定員管理について,学部単位から大学単位へ,単年度単位から複数年度の平均値へと見直すよう求めております。また,卒業要件に関わるオンライン授業による修得単位数の上限撤廃や,リカレント教育の大学設置基準への明記,校地・校舎等の施設に関する基準の質的評価への改訂なども求めております。
 10ページを御覧ください。大学が機動的・戦略的に意思決定を行える「経営体」へと進化するためには,適切なガバナンスの実現と外部資金の獲得拡大が必要です。ガバナンスに関しましては,多様な背景を持つ学外者のガバナンス体制への参画や,監事と理事・評議員の兼任の禁止,学長等の在任年数についての上限の目安の設定などを提案しております。
 また,寄附の募集や大学債の発行など多様な資金調達手段により外部資金の獲得を拡大するには,大学版「統合レポート」の作成・公表など情報公開の充実が重要であるといたしまして,今後,政府・大学・経済界等による会議体を設置し,大学における情報公開の在り方を検討すべきとしております。
 11ページを御覧ください。「おわりに」では,大学教育改革と直接関係しませんが,格差是正に向けて,意欲と能力があれば,家庭の経済状況に関わらず,誰もが大学教育を享受できる環境の整備が重要であり,大学で学ぼうとする意欲と能力のある人々への修学支援の在り方について,今後総合的に検討することが必要であるとしております。
 最後に,我が国の経済・社会の成長基盤を強化するため,経済界として,産学官の連携によるSociety 5.0人材の育成と,大学の競争力強化に向けた改革に引き続き協力していく旨を表明しております。以上が提言の概要です。

 次に,「採用と大学改革への期待に関するアンケート結果」について,提言の説明では触れなかった部分のうち,特に大学教育改革に関する結果を中心に,簡単に御説明いたします。
 アンケート結果の資料の1ページ目を御覧ください。本アンケートは,昨年夏から秋にかけて,経団連全会員企業等を対象に実施し,381社から回答をいただきました。
 少し飛んで11ページ目を御覧ください。今後,我が国の大学が優先的に取り組むべき教育改革について尋ねたところ,教育プログラム面では,「課題解決型の教育プログラムの充実」が,また教育環境・システム面では,「企業や行政等と連携した実践的な教育プログラム推進」が最も多い回答でした。
 12ページを御覧ください。オンラインの活用により推進すべき大学教育の取組としては,海外大学や国内大学との連携授業を期待する声が多く寄せられました。
 14ページを御覧ください。大学の学事暦については,約6割の企業が,秋季入学や秋季卒業の導入などの学事暦改革を進めるべきと回答する一方で,各大学の判断で行うべきとの回答が多数を占めました。また,学事暦改革を求める理由としては,「多様な学生を採用できる機会が増える」,「海外留学をする日本人学生の増加が見込まれる」との回答が上位を占めました。
 17ページ目を御覧ください。産学連携につきましては,回答企業の約8割が産学連携に取り組んでおり,従業員規模が大きい企業ほど取り組んでいる割合が高くなっていることが分かりました。
 18ページ目を御覧ください。取り組んでいる産学連携の類型としては,「研究面での連携」が最も多く,次いで多かったのが「教育面での連携」でした。今後,大学が「社会に開かれた知の集積」として,国や地方公共団体も含めて産学官の連携を進めていくことが,教育面・研究面でも,そして地方創生の面でも重要と考えます。
 以上が提言とアンケート結果の概要です。経団連では,これらを公表した1月18日に,岸田総理をはじめ,末松文部科学大臣など関係大臣に建議して,提言内容の実現をお願いしたほか,御関係の皆様にお送りして,経団連の考えに対する御理解をお願いしたところです。中央教育審議会大学分科会の委員の皆様にも,是非経団連の考え方を御理解いただき,今後の御検討の参考にしていただければありがたく存じます。
 私からの説明は以上です。御清聴ありがとうございました。

【永田分科会長】  平松様,ありがとうございました。
 渡邉委員,どうでしょうか。経団連の上層部としては,何かほかに付け加えるようなことはありませんでしょうか。

【渡邉委員】  ありがとうございます。恐らく大学分科会にご参加の皆さんであれば,今回の経団連提言の内容を見られて,特に新しい提言ではないなという感想を持たれたと思います。私は,それは当然のことであり,むしろそのことが大事だと思います。
経済界は今,サステナブルな資本主義,あるいはSociety 5.0 for SDGsの実現を目指すという考え方になっています。教育界も,この分科会あるいは中央教育審議会としてグランドデザイン答申をとりまとめ,それ以降,教学マネジメントをはじめ,今日の質保証システムまで,一連の改革に向けて提言されてきました。そういう意味では産業界と,今まで皆さんの提案してきた内容というのが,ベクトルとしては一致してきており,その結果この経団連の提言内容が,皆さんにとっても大体,承知している内容と重なったのだと思います。
 ただ,一方で皆さんが進められた改革というものを,産業界が十分に理解していない,あるいは今の産業界の思考について,大学やアカデミアの方々が十分に理解していない,むしろこのことが問題です。したがって,この提言は,産学連携を相互理解の下に進めていくことが正に重要である,というメッセージとして受け止めていただけたらと思います。
 また,日本の構造は,多くの部分で縦構造になっています。アカデミアの中では文系人材と理系人材といった縦の構造があると思いますし,産業界の中でも製造業とサービス業等の縦構造,更にはアカデミアと産業界という縦構造もあります。これらは恐らくSociety3.0モデルだろうと思います。
多くの先進国ではアカデミアも産業界も,デジタル化や情報化,グローバル化等によって横構造をつくり始めています。 そういった意味では,Society 5.0を目指す中で,産学でどのように横構造をつくるのかということが重要であり,したがって産学連携が非常に重要だというメッセージに受け止めていただけたらありがたいです。
経団連では大学関係の代表の方と,産学協議会を続けさせていただいています。この協議会は永田分科会長や大野委員にも御出席いただいておりますので,これからも産学連携の下に,アカデミアも産業界も共に,新しい時代に対応する変革を遂げていければと思います。
 資料5ページに「仕事と学びの好循環」という概念整理図がありますが,まさしくこの図がアカデミアとしても産業界としても新しい時代に対応している状態を示しています。つまり,柔軟な雇用システムと社会に求められる学びを幅広く提供する大学による好循環の構築が,新しい時代には重要だと思います。そのように理解をしていただけたらと思いますので,是非よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

【永田分科会長】  渡邉委員,大変分かりやすい解説書がついた感じで,理解の幅が広がると思います。ありがとうございました。
 この経団連の件に関して,今議論をする時間もありませんし,じっくりとアンケート等も御覧いただいて,また,いつでも機会があります。先ほどの産学協議会は国公私の皆さんも代表が出ていらっしゃいますから,そちらの方にもいろいろと意見を申し上げれば,必ず産学協議会の場に出てくると思います。是非とも御活用いただければと思います。
 全体を通しまして,何かございますか。本当にタイトな中,ご協力ありがとうございました。本日の議題はここまでなので,次回以降についての御案内を申し上げます。

【髙橋高等教育企画課課長補佐】  本日は活発な御議論をいただき,誠にありがとうございました。次回の大学分科会は,3月28日月曜日,16時から18時を予定しております。実施方法等については,改めてお知らせさせていただきます。
 本日,時間の都合上御発言できなかった内容等については,永田分科会長の方からもございましたけれども,事務局まで御連絡いただけますよう,お願いいたします。
 以上でございます。

【永田分科会長】  ありがとうございます。このメンバーでの大学分科会は2月に始まってちょうど1年たちました。どこかでお会いしないと会わないまま,御卒業ということになるのは非常に寂しくて,体温を感じながら話すことも大切だと思います。なるべく早い機会に皆さんと対面でお話しできる機会を持ちたいと思いつつ,お開きとさせていただきます。本日はありがとうございました。
 
── 了 ──
 

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