大学分科会(第159回) 議事録

1.日時

令和3年2月9日(火曜日)14時~16時

2.場所

WEB会議

3.議題

  1. 質保証システム部会の審議の状況について
  2. 「全国学生調査」の本格実施に向けた検討状況について
  3. 魅力ある地方大学の在り方について
  4. 教育と研究を両輪とする高等教育の在り方について
  5. その他

4.出席者

委員

(分科会長)永田恭介分科会長
(副分科会長)村田治,渡邉光一郎の各副分科会長
(委員)有信睦弘,亀山郁夫,志賀俊之,日比谷潤子,吉岡知哉の各委員
(臨時委員)麻生隆史,安部恵美子,宇山恵子,加登田惠子,金子元久,河田悌一,小林雅之,清水一彦,髙倉明,髙宮いづみ,伹野茂,曄道佳明,長谷川眞理子,福田益和,古沢由紀子,益戸正樹,三村信男,山田啓二の各委員

文部科学省

(事務局)伯井高等教育局長,川中大臣官房審議官,森田大臣官房審議官,森私学部長,,淵上高等教育企画課長 他

内閣官房

  行松まち・ひと・しごと創生本部事務局次長 他

5.議事録

【永田分科会長】 中央教育審議会大学分科会第159回を始めさせていただきます。
お忙しい中,また,年度末が迫る中,御出席いただきましてありがとうございます。本日も,新型コロナウイルス感染症対策のため,会議をウェブで開催させていただきます。会議の様子は, YouTubeでライブ配信されておりまして,メディアの方々等に視聴いただけるシステムになっております。
それでは,議事に入る前に,資料等について事務局から御説明をいたします。

【奥井高等教育企画課長補佐】 失礼いたします。本日はウェブ会議及びライブ配信を円滑に行う観点から,御発言の際は挙手ボタンを押していただき,分科会長から指名されましたら,お名前をおっしゃってから御発言いただきたいと思います。また,御発言後はお手数ですけれども,再度,挙手ボタンを押していただいて,表示を消していただきますようお願いいたします。また,発言時以外はマイクをミュートにしていただくなど,御配慮いただきますと有り難く存じます。
また,会議資料は次第のとおり,メールでお送りしております。本日,参考資料といたしまして,前回の大学分科会でお配りしました第10期大学分科会の審議の状況について時点更新したものをお送りしておりますので,御参照いただければと思います。
以上でございます。

【永田分科会長】 ありがとうございました。
本日の議題は大きく分けて四つございます。最初は質保証システム部会の審議状況を,部会長の吉岡委員から御報告いただきます。2点目は,全国学生調査の本格実施に向けて,今年度,有識者会議で検討が進められてきましたので,座長の河田委員から検討状況について御報告いただきます。3点目は,魅力ある地方大学の在り方,特に地方国立大学が定員増を行う際に必要となる事項について,中央教育審議会から,必要な条件の大枠のアイデアを出さなければいけません。本日,これについては集中的に審議をさせていただく予定です。最後に,教育と研究を両輪とする高等教育の在り方について,前回まで御議論いただきました。加えて,前回以降に委員のみなさま方からメール等で多くの御意見を頂きましたので,これをまとめたものをお示しして,最終報告とさせていただこうと考えております。
それでは,早速,質保証システム部会の審議状況について,座長の吉岡委員から御報告をお願いいたします。

【吉岡委員】 吉岡です。中央教育審議会大学分科会質保証システム部会の部会長として,第10期における審議状況を御報告いたします。
質保証システム部会については,お配りしている資料1-1を御覧ください。昨年7月に部会を立ち上げて以降,関係団体からのヒアリングや有識者からのヒアリングを中心に,これまで計7回の審議を行ってまいりました。第4回までは,関係団体からのヒアリングを実施するとともに,委員で自由討議を行いました。その中で,今回の質保証システムの見直しに係る論点が非常に多岐にわたるとともに,相互に関連していることが確認されました。具体的には,現在の高等教育の設置基準,情報公開制度の在り方,大学教育の質保証の在り方,さらには,質保証を担う人材の育成方策などがありました。また,新型コロナウイルス感染拡大とともに広まったオンライン教育の可能性と課題などにも議論が及びました。
そうした状況を踏まえ,第4回質保証システム部会では,私の方で一度議論を整理いたしまして,お手元にお配りしてあります,資料1-2「質保証システム部会における今後の議論の進め方について」をお示しいたしました。今後の議論の進め方についてでは,議論の前提となる大学の在り方として,まず,議論の出発点として「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」(以下,「グランドデザイン答申」という。)があること。また,同答申に掲げられた学修者を中心に据えた教育の在り方と,多様な大学の在り方や多様な学生が学ぶキャンパスといった多様性が重要な視点となること。また,グランドデザイン答申後の大学を取り巻く状況として,新型コロナウイルスの感染拡大があり,それを踏まえ,時間的,空間的な制約を超えて学修成果を最大化するという観点や大学のレジリエンスという観点も重要な視点であるということを確認いたしました。
その上で,現行の質保証システムを補完し,設置認可をはじめとする事前チェック,認証評価に代表される事後チェック,それぞれについて,時代の要請や状況の変化による諸課題に対応するとともに,両者の均衡に常に配慮が求められるという点を指摘しております。そして,これらを踏まえた今後の議論の方向性として,現行の質保証システムの全体像を補完しつつ,グランドデザイン答申や,その後のコロナ禍を経て表出した大学像を踏まえ,質保証システムの各要素の役割や相互の関係を改めて精査し,時代に即した在り方を検討していくこと。学修者本位の観点から質保証システムとして最低限保証すべき質についての共通理解を深めるとともに,質保証システムは単に大学を評価するものではなく,大学の自主性,自立性に基づく自己改善を促進するためのものであり,大学はそうした一連の営みを通して社会から理解と支持を得られること。また,必要な情報を社会に公表し,社会との対話を進めることで,教育研究等のさらなる充実が可能となることを意識しつつ,いわば社会に開かれた質保証の実現を図る観点から議論を深めていきたいと整理をさせていただきました。
第5回以降は,この議論の進め方を踏まえ,資料1-3にあるとおり,質保証情報システム全体を通じた考え方と,質が保証されている大学について,どのような視点で見ていくべきかという共通認識を図るべく,多角的な観点から有識者ヒアリングを行い,具体的な質保証システムの見直しに入る土台を形成するための議論を行いました。
第5回は質保証の国際通用性という観点から,第6回は学修成果の保証や質保証を担う人材という観点から,第7回は大学における質保証の取組という観点から,それぞれ有識者をお招きしてヒアリングを実施しています。また,各回の議論を踏まえまして,通信制大学の質保証や学生調査を活用した質保証の情報公表といった観点からも,有識者からの御意見を伺い,多角的な観点から議論を深めてきたところです。
新型コロナウイルスの感染拡大をはじめ,高等教育を取り巻く環境が非常に大きく変動する中で,世界中がニューノーマルにおける大学教育の在り方を模索しています。我が国においても,新たな高等教育の仕組みを構築していく必要がありますが,その中で,その質をいかに保証していくかという点は極めて重要なテーマです。来期以降,今期の議論を土台として,こうした具体的な制度の在り方について,審議が深まることと思っております。
以上,大学分科会質保証システム部会における議論の状況を御報告いたしました。ありがとうございました。

【永田分科会長】 吉岡委員,ありがとうございました。御意見,あるいは御質問があればお受けいたしますが,いかがでしょうか。
それでは,最初に,小林委員,どうぞ。

【小林委員】 小林でございます。質保証システム部会につきましては,前回,私からも学生調査と大学の情報公表について,今の状況と意見を申し上げました。次の議題になっております学生調査にも関係しておりますので,それに関連して少し意見を述べたいと思います。グランドデザイン答申では,大学設置基準について抜本的な見直しをするということで進められたと思いますが,今の部会の議論を聞いておりますと,抜本的な見直しはなかなか難しいのではないかと感じています。あと1年程度でやられるわけですから,余り規制を強化する方向に行くのも望ましくないですし,定員管理などについてどこまで議論を進められるか分かりませんが,少なくとも抜本的な考え方の見直しにまでは至らないのではないか,また,そういうことは望ましくないのではないかと個人的には思っております。
1年程度でやるとしたらできるところからやるというような姿勢でやっていただくのが一番望ましいのではないかと感じております。これは学生調査や大学の情報公表についても全く同じで,できるところから進めていくという姿勢の方がよろしいのではないか。
ただ,それだけ言っていたのでは政策にはなりませんので,これも質保証システム部会で強調させていただきましたが,政策としては中間組織をできるだけ育成していくということが非常に重要だと思っております。大学ポートレート等,組織としてはできていますが,現実的にそれほど機能していない。国としては,こういった中間組織に対するてこ入れがこれから非常に重要になってくると思いますので,その辺りを是非検討していただければと思っております。以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。有信委員,どうぞ。

【有信委員】 どうもありがとうございます。非常に多面的な検討をしていただいていて,絶対的な尺度での質保証という観点と,それからグランドデザインを踏まえた観点で,非常に議論は進んでいると思います。
ただ積み残されている問題として,国際的な同等性があるように思います。例えば,最近は議論されなくなりましたけども,ヨーロッパでのボローニャプロセスとの関連,あるいは,中国では,言わばアクレディテーションが国家規模で進められるという状況。そのような中で,教育の内部質保証の観点で評価を行うという視点は,非常に重要なこととは思いますが,それをどこでグローバルな質保証のシステムに結びつけていくかについての議論を期待したいと思います。それを進めていくと,かつて中央教育審議会から日本学術会議に諮問が出されていた「分野別質保証」という問題にもぶつかります。この問題について,日本学術会議では膨大な作業をして,各学問分野の参照基準をつくったのですが,この辺のところも,なぜか途中で忘れられてしまっています。別にこれを本格的に議論しろと言うつもりはありませんが,少し検討が必要なように思います。半分は質問,半分はコメントです。以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございました。次に清水委員,どうぞ。

【清水委員】 ありがとうございます。先ほどの小林委員の御意見と少し関連しますが,大学設置基準は定められてからもう65年経(た)っていまして,現状の課題や問題を踏まえて常に修正されてきたものですから,これを元へ戻すということは現実的ではないと思います。
その上で,新たな評価システムである認証評価システムはもう第3期に入っておりまして,一定の貢献をしてきております。一般には,事前チェックから事後チェックへと言われていますけど,最低基準から向上基準への移行だと私は考えております。設置基準のバーを下げる必要はありませんが,むしろ認証評価のバーを上げて,認証評価の適合や,そこで評価された大学については,例えば設置認可の方で何らかの恩恵が与えられるよう,設置基準・認可と認証評価との関係についても,きちんとここで議論してほしいと思っております。以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。吉岡委員,今,3人の委員の方から御意見がありましたが,今後の議論の中でいかがでしょう。重要な観点が含まれていたと思いますが。

【吉岡委員】 ありがとうございます。3先生方のおっしゃることはどれももっともなことで,こちらの部会の議論でもそのような視点は組み込まれております。
一つは内部質保証を重視するというのが,基本的な流れでしたので,小林委員がおっしゃるように,例えば,規制を強化することによってどうこうするということよりも,内部質保証のシステムを機能させるような方向を考えていくことになると思います。それから,もう一つ,国際的な評価の問題は認証評価団体,機関の在り方にも関わっておりまして,日本は基本的に機関別評価になっており,分野別評価をどのように育てるかということ,それから,実際,評価を行えるような人材を含めてですけれども,組織をどのような形に整えていくかということがすごく重要です。小林委員のお話にも関わる,中間的な団体を作っていくという点について,その方向は考えていかなければならないと思いますが,具体的にどうすればいいかというところまでは行かないかもしれません。
認証評価機関の在り方というのは,これから非常に重要になっていく。その認証評価の在り方と機関を育成すると言いますか,在り方を考えていくことで,先ほど清水委員のお話でありましたように,設置のハードルは下げても認証評価の方できちんと把握できる,また,自己点検,それから,内部質保証がきちんと進められている大学,機関については,認証評価のいわゆる書類上,作成等の負担を軽くしていくことは考えられるのではないかという議論が部会内では進んでおります。全ての答えになっているかどうか分かりませんが,日比谷委員,もしも追加と言いますか,補助的な御意見があればお話しいただければと思います。

【永田分科会長】 ありがとうございます。質保証システム部会は来期も継続していくことになります。設置基準,設置認可,アフターケアがあって認証評価という質保証システムとしての構造の中に,例えば,内部質保証を認証評価で重んじるような論点も出ていますので,最終的に部会はルールにかなり踏み込んだ言及をすることになると思います。小林委員がおっしゃったようにそれほど時間はありませんけれども,ルールに言及できるような形で,今後も議論を進めていただければと思っております。どうもありがとうございました。
それでは,次の議題に移らせていただきます。
次の議題は,全国学生調査の本格実施に向けた検討状況ということで,座長の河田委員から,議論あるいは検討状況について御報告を頂きたいと思います。それでは,河田委員,よろしくお願いいたします。

【河田委員】 資料2に基づいて御説明したいと思います。裏表4ページ分あります。
まず, 2019年11月から12月の間に,国公私515大学の3年生を対象に学生調査の試行実施をいたしました。「グランドデザイン答申」を踏まえてのことでございます。
その後,「全国学生調査」に関する有識者会議が昨年7月から始まりまして,大学分科会からも小林雅之委員と清水一彦委員に入っていただきました。前回試行実施では国立大学が70校,公立大学が66校,私学大学が430校余り参加いただきましたが,今回は是非短期大学もということで,日本私立短期大学協会から貞静学園短期大学の奥明子理事長・学長,そして公立大学協会から山梨県立大学理事長・学長の清水一彦先生,全国公立短期大学協会から島根県立大学・島根県立大学短期大学部の岸本強副学長,また日本私立大学連盟から早稲田大学総長の田中愛治先生,日本私立大学協会から学校法人東京理科大学の本山和夫理事長,更に国立大学協会から島根大学の服部泰直学長などにも御参加いただいて,これまで3回にわたって検討を行ってまいりました。
その内容につきましては2ページを御覧ください。第1回の結果を踏まえて,論点を七つに整理してございます。論点1は全国学生調査の目的が学生にとってどういうものなのか,論点2としては,短期大学を加えるというもの。そして前回の試行実施では学部3年生を対象にいたしましたが,今回は学部2年生と4年生,短期大学は2年生を対象とする。時期は前回と同じように11月頃とし,質問項目は50問,大学と短期大学で同質問とすることといたしました。それから,論点5については各大学が順位づけ,いわゆる大学のランキングにならないように注意し,各大学の強み,特色が発信できるようにしたいと考えております。それから論点6,7については,既にいろいろな学生調査をされている大学もありますが,それとは別に,国の文教政策の基礎データとして文部科学省と国立教育政策研究所が中心となり実施していこうということでございます。
3ページ目は,質問項目の案です。これにつきましては,小林雅之,両角亜希子,山田礼子先生など専門家の先生方にも委員として入っていただいて作成いたしました。問1,大学に入学してから,どういうことが感じられましたかということで,10問程度。問2は,大学に入ってからの経験ということで,短期大学も念頭に置きながら,今年の1年生は無理でしたが,2年生,4年生には海外留学している学生もいるので,短期の海外留学を入れる。問5では授業時間や勉強時間はどれぐらいだろうかということを生活時間として聞く。全49問,それに加えて自由記述も入れております。それからもう一つ,今年はちょうど1年間にわたって新型コロナ禍という状況にありましたので,それについて感染症対策や各大学の対応を考慮しながら,適切な質問項目を幾つか準備検討いたしております。
説明は以上でございます。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
それでは,御質問と御意見等ございましたらお受けいたしますが,いかがでしょうか。
では,日比谷委員,どうぞ。

【日比谷委員】 ありがとうございます。
私は試行実施の結果が出ましてから,ちょうど教学マネジメント特別委員会の座長をしておりました関係で,コロナになってからはウェブも含めていろいろなところに呼んでいただいて,そのたびに試行実施の結果を大分活用させていただいております。本調査の結果も是非いろいろなところで活用ができるような項目を聞いていただきたいと思っております。先ほどの御説明を伺っておりまして,是非こういうことをお願いしたいというのを幾つか申し上げたいと思います。
一つ目は, 4ページの問5,これまでのあらゆる調査で出ていることですけれども,学生はかなり多くの時間,授業に出席をしているのに対して,予習,復習,課題など授業外での学習時間がどう考えても著しく少ない。コロナで課題が増えて,課題地獄というお話もありましたけれども,本質的に授業外でしっかり学習しているとはやはり読み取れない結果となっていると思います。
今回,問1の4番,予習,復習など自主学習について,授業やシラバスに指示があったという項目が入ったのは大変に結構なことだと思います。また,課題はたくさん出るけれど,コメントがついて帰ってこないというのも,私は大変にゆゆしき事態だと思っております。このようなことを総合的に分析しながら,授業時間外の学習が増えていると大変よろしいですが,増えない場合はどこに問題があって何を改善していけばいいかを,しっかり調査結果から読み取れるような方向で作成いただければと思います。以上でございます。

【河田委員】 ありがとうございます。金子元久委員から是非御助言をいただければ幸甚に存じます。

【永田分科会長】 金子委員からは,後ほど御助言いただきます。それでは,長谷川委員,どうぞ。

【長谷川委員】 ありがとうございます。私はこういうのをどんどんやっていって質保証の問題や大学側がどう教育を変えていくかということと一体になって進んでいくといいと思います。資料2ページの論点1,目的の4番目に本調査を通じて学生一人一人が自分を振り返ることで,学習や大学生活をより充実したものにしてもらうとありますが,これはすごく大事だと思います。日本の大学は長らく受験と就職の間の遊んでいる時間みたいに思われていて,学生自身が構成員の1人として,どのように大学を捉え,大学を改革していってほしいと思っているかという意識が余りなくても過ごせたでしょう。大学を取り巻く大学と学生と卒業生を採る社会,企業という3者が同じように目的を共有しないと全体のシステムはよくならないですから,これを通じて,学生自身が自分の大学のこと,大学生活というもの,自分がどのように成長するべきかと思うかということをしっかり考える基本になっていただければと思います。
それで,こういった調査を予備校は使うのでしょうか。私は予備校というのはいつまでたっても偏差値の話ばかり宣伝に書いているけれども,こういうことを使って予備校が動くと,結構意識も変わるのではないかという気もしましたが,それをこちらで指示しても仕方ないですかね。すみません,希望を言いました。ありがとうございます。

【永田分科会長】 長谷川委員,ありがとうございます。最後の御指摘についてですが,こちらの方が偏差値よりもずっと信用できる,あるいはそれをしのぐ何かを作るという御意見は大変面白いアイデアだと思います。金子委員,どうぞ。

【金子委員】 ありがとうございます。検討状況を見せていただいて,結果の公開に一歩近づいているという感じがしております。試行段階でも自分の大学については公開できることになったというのは非常に重要だと思います。こうしたことによって,ほかの大学とも比べることができる。それがより大学が工夫するために不可欠の条件だと思います。その点では非常に感謝したいと思います。
ただ,一つ申し上げたいのは,コロナ禍に関する質問はまだこれから検討するということですけれども,私はコロナ禍を通じて,新しい大学教育の在り方がある程度出てきているところもあると思うのです。特に遠隔教育を活用することがどのような意味を持っているのかといったことは重要だと思います。それで,各大学は結構,学生調査をやっていまして,それを見ますと,学生はむしろ遠隔教育を導入したことを高くポジティブに評価しています。
ところが,文部科学省や文部科学大臣がおっしゃっていることを聞きますと,対面に復帰しなくては絶対駄目みたいなことが聞こえるところは相当あります。大学で何を学修するか,大学での学修がどういう意味を持っているのかということがきちんと理解されていないのだと思います。
大学側もある程度,自分の大学については調査をしているけれども,これはほとんど外に出ていない場合が多い。しかも,大学が全体に公開しなければ,社会に認知もされない。したがって,大学の中でやっている努力は,外で大体評価されていないわけです。それは大学にとっても不幸ですし,社会にとっても不幸だと思います。それから,大学が更に改革を進めていくためにも不幸だと思います。
そういう意味で,遠隔を用いた手段をかなり立体的に,どういうところがいいのかとか,そこに関して学生がどのように行動しているのかということを分かるような質問項目を,是非具体的に挿入していただければと思います。
例えば,大教室の講義は,対面授業よりも遠隔の方がかなり効果があるようです。それから,私の所属している大学で聞きまして感心したのですが,理科系の基礎科目は,遠隔でやりますと,1回授業を聞いて,それから早送りして再生したりして,それで理解が進むというのは非常に効果がある,そういったこともあるわけで,そういったよいところも実態的につかめるような質問項目を入れていただきたいと思います。以上です。

【河田委員】 ありがとうございます。コロナ禍の質問は1問では絶対足りないので,どれぐらい作ろうかということで,既に5項目から8項目くらいの設問を準備していますが,次回の会議では決めたいと思っております。どうもありがとうございました。

【永田分科会長】 志賀委員,どうぞ。

【志賀委員】 ありがとうございます。このような機会で,産業界の人間として,毎回同じようなことばかり言っていて申し訳ないのですが,いわゆる従来型の昭和の雇用形態が,メンバーシップ型からジョブ型に変わるということが加速してきていて,新入社員から即戦力採用,あなたは何ができますかということを企業が求め始めています。特にコロナで新入社員が入ってきても, OJTができないのです。例えば,この会社の企業価値評価をやってくれますかみたいに,そのまま直(じか)に仕事が落ちてくるという状態の中で,先ほどお話がありましたけれども,受験勉強をして就職までのつなぎの4年間みたいな位置づけから大学は全く変わってきています。このような自覚を学生の皆さん方に持っていただき,こんなはずじゃなかった,OJTでしっかり教えてもらえるはずだったなんて,甘いことを考えないように,自覚を高めておかないと御苦労されますということ,産業界の人間なので一言申し上げておきたいと思います。以上です。

【河田委員】 ありがとうございます。

【永田分科会長】 最後に,益戸委員,どうぞ。

【益戸委員】 ありがとうございます。何しろいよいよこのようなことが本格的に始まったということでワクワクしております。先ほど永田分科会長もおっしゃっていましたが,偏差値で大学を見るという国民の習慣は抜け切っていないと思います。しかし,それを打破する上でも,このようなことを全面的に押し出していっていただきたいと思いますし,近い将来,教学マネジメント委員会で十分議論したことがもっと実現していくことを楽しみにしております。以上です。

【永田分科会長】 河田委員,いかがでしょうか。

【河田委員】 ありがとうございます。前回の自由記述のところでは,講義形式で一方的な講義が多いとか,この調査によって自分の大学が変わるように役立ててほしいといった積極的な意見が出てきていましたので,今回もその自由記述を増やして,是非本音を学生諸君に語っていただいて,それを実際に各大学で自分たちの大学改革に活用していただければ良いのではないかと思っております。国立大学の参加は70校で,あと16校が参加しておられませんので,もちろん筑波大学は参加しておられますけれども,東大,京大は入っていませんので,是非国立大学協会の会長である永田先生から国立大学は86校全部が参加,公立大学も全大学参加されるように,私学も田中総長にお願いして,是非多くの大学に参加してもらうように進めたいと思っています。先生方の御意見を参考にさせていただきたいと思います。

【永田分科会長】 どうもありがとうございました。
1点だけ申し上げますと,質問項目はこれでいいと思います。問いを考えるときに,アドミッションポリシーとカリキュラムポリシー,カリキュラムポリシーとディプロマポリシーの繋(つな)がりが,回答の結果で自然に確認できるような上手な問いを考えることが重要です。回答結果を後で並べ直すと,学生は大学が定めた三つのポリシーに沿って確かに育っているかどうか分かると良いと思います。
それを一々題材を挙げずに設問の中に埋め込んで,後で回答をリンクさせると分かるような設問を内装した方が,大学とってはより有り難いです。個々の学生のみならず,大学の反省という意味では,自分たちの意図どおり学んでくれているのか,教えられているのかということがあるかと思います。いろいろと知恵を絞って工夫された調査になればいいなと思っています。どうもありがとうございました。

【河田委員】 ありがとうございます。

【永田分科会長】 河田委員には,引き続き御検討いただきますので,新しい検討状況ができましたら,御報告を頂きたいと思っております。どうもありがとうございました。
それでは,次に三つ目の議題ですが,魅力ある地方大学の在り方についてです。最初に申しましたが,我々として求められているのは,どういった要件で,地方国立大学の定員増を認めていくかという要件の部分です。本日は内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局の行松次長にも御出席を頂いておりますので,随時質問をいたしたいと思います。
今回,余り長く時間をとれませんが,今期最後のミーティングですのでいろいろな御意見をお聞きしたいと思います。頂いた御意見のまとめ,取捨選択は私も一部やりますし,最終的に文部科学省が要件を作らなければなりませんのでそこにお任せすることになると思います。皆さんから忌憚(きたん)のない御意見を伺いたいと思います。
本日はなるべく多くの御意見をお伺いしたいので,こういう要件を設けてほしいということを最初におっしゃっていただいて,その理由はこうである,あるいは,その背景はこうである,というような具合に御意見をいただけると有り難いと思っております。
例えば,国立大学の定員増ですが,少なくとも地域の意志がそこに入っていることを条件にしたい。なぜならば,地方創生に鑑みてであるのようなかたちです。このような感じで御意見をいただければ,まとめの際に大変助かるかと思います。それでは,意見聴取の前に淵上課長から御説明をお願いします。

【淵上高等教育企画課長】 御議論に先立ちまして,資料について説明をさせていただきたいと思います。資料の3-3を御覧いただければと思います。
前回も少し御覧いただいておりますので,ポイントだけ御紹介させていただきます。本日御議論いただきたいのは,資料3-3の9ページでございます。検討に当たっての論点のうち,特に下の二つでございます。
高等教育政策は文部科学省の所管でありますけれども,地方創生に関して知見を有する内閣官房の審査結果を十分に参酌する上で,どのような手続が考えられるか。また,国立大学の定員増に係る今後の決定プロセスについてどのように考えるかということで,一つはプロセスの考え方についてでございます。
10ページに,今後の想定される流れを載せております。左側に文部科学省側の作業の流れ,右側には内閣官房の流れということで,真ん中に大学,自治体,産業界での検討状況がございます。文部科学省の表でございますけれども,年度内目途ということで,魅力ある地方大学の在り方についての取りまとめを書かせていただいております。中央教育審議会での御議論,魅力ある地方大学の在り方全体の御議論は次回以降,更に深めていただくとして,本日は地方大学の在り方のうち,地方国立大学の定員増を認めるに当たってのプロセスや要件について御議論いただきたいと存じます。その後,夏頃に,文部科学省の中に定員増に関する審査会を設けて,その審査を経て,最終的に国立大学についての中期計画の変更認可という手続になっていくかと想定をしております。その間,適時,内閣官房の地方創生に関する検討会議での御議論,あるいは,そことのキャッチボールを経ながら進めてはどうかと考えているところでございます。従いまして,例えば審査会にどのようなメンバーを加えていったらいいかといったことも本日の論点になろうかと思います。
9ページに戻っていただきまして,最後の丸が先ほど分科会長がおっしゃった具体の要件になってまいりますけれども,地域の特性やニーズを踏まえた質の高い人材育成を行い,大学改革を先導するような意欲ある地方国立大学に関して,特例的に定員増の規制緩和を行うにふさわしい具体的な要件をどのように考えるかということでございます。
11ページに具体的に四つの観点を挙げています。地方創生の観点からどのようなことを考えていったらよいか。また,地域における緊密な連携,地域における雇用創出,産業創出,あるいはリカレント教育の観点,また,これを効果的に進めていくための中長期的なKPIの設定といったことを掲げております。これ以外に,例えば,地方国立大学が置かれている地域ごとの高等教育の収容力等もどう考えるのかといったこともあろうかと思いますし,また,全体として,18歳人口が減少するといった状況もございます。そこから考えると,地方国立大学の定員増を永続的に認めるのか,一定程度の時限を区切るのかも論点としては出てくるかもしれません。そういったことも含めて,多角的に御審議を賜れれば有り難いと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【永田分科会長】 いろいろな手続における条件や必要なこと,あるいは,申請するときにこんな点に必ず言及する要件として何を求めるか等,もちろん関連したことは何でも結構です。おおよそ今から45分間ぐらいをこの時間に充てるつもりでいまして,様々な御意見を出していただき,なるべく多くの方に御意見を伺いたいと思います。
それでは,皆さんどうぞ,忌憚(きたん)のない意見をお願いしたいと思いますが,いかがでしょうか。益戸委員,どうぞ。

【益戸委員】 ありがとうございます。
まず,大学を地方創生の核と位置づけ,しっかりと進行していくという方向性は非常に意義あるものであり,是非推進していかなければいけないと思っています。昨年12月25日に経済同友会の会合で,内閣府のまち・ひと・しごと創生担当でいらっしゃる坂本大臣から地方創生全体の計画について,お話を聞きました。前回の分科会でも内閣官房の御担当者様から御説明を頂きましたが,まず,御関係の皆様が共通理解としていただくべきことは,地方国立大学の定員増に関しては地方創生に資するという観点から行われているということです。
従いまして,文部科学省ももちろん力を発揮しなければいけませんが,地方創生を省庁横断的に取りまとめている内閣官房にこそ,強いリーダーシップを期待しております。
次に資料3-2-1の,内閣官房の取りまとめ(概要)には,「文部科学省は」という言葉が並んでおります。文部科学省もしっかりと責任を果たさなければなりませんが,内閣官房の皆様にあられましては,是非しっかりと心にとめおいていただきたい役割をお伝えいたします。
まず,この取組全体のリーダーシップをしっかりとっていただいて,支援をするという姿勢を,是非お示しいただきたいということです。そして,二つ目は,自治体の長(ちょう)が産業界や国立大学だけでなく,地方の公立,私立大学や,高専,専門学校を巻き込んで地域の将来像を描くということも非常に重要だと思っています。その自治体の長のリーダーシップ発揮の有無を確認するのは,正に地方創生を所管する内閣官房の役目だと思います。従いまして,内閣官房にはしっかりと首長がリーダーシップを発揮していただけるような仕組みを工夫していただきたいと思います。
そして最後に,自治体のリーダーシップの下,産官学連携によって先端的な研究や教育で人材育成を通じ地方創生に取り組む場合,地方創生の観点からも内閣官房においてできる限りの予算などの支援を行っていただきたいと思います。これらの点について,是非とも更なる御検討を頂きたいと思います。以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。手続というか根本的な大枠のお話でした。次に長谷川委員,どうぞ。

【長谷川委員】 ありがとうございます。私は地方がきちんと機能しながら定員を増やすことで,一番重要なのはリカレント教育ではないかと思うのです。学部に在学している学生の年齢で25歳以上という人がほとんどいないのが日本の特徴で,世界の大学は25歳以上が結構いるのです。ということは,たくさんリカレント教育もあるし,昔行かなかった人が入ってくるということを循環してやっているのです。でも,日本は18歳で一生懸命受験勉強をして,それで卒業していったら二度と戻ってこない場所というのになっているようなのです。そこを変えていかないと全体的に日本の学問レベルが低くなるし,社会を担う立場に今現在いる人たちが,現場のいろいろな新しい知識や教育法を全然知らないということを直さないといけないと思いますので,その意味で,リカレントが大事と思います。
そうすると,リカレント教育の観点で社会人を出していく仕組みがないといけないので,地方の会社やいろいろな働く現場が,どのように社会人が社会人学生として大学に戻っていくという仕組みを大学とつくれるかということを考えると,きちんと計画できる大学は25歳以上の人をたくさん大学に戻すことができてよくなるのではないかと思っています。ありがとうございます。

【永田分科会長】 ありがとうございます。有信委員,どうぞ。

【有信委員】 ありがとうございます。私の意見の大半は今の長谷川委員の意見と同じですが,それに一つ付け加えたいと思います。日本は,OECDの平均から比べても高等教育を受けた人の比率が少ないということはさんざん言われています。実際に,今,ジョブ型雇用への転換という流れもありますが,各地域において自分たちが何で地域振興をやっていくかと一生懸命考えているはずです。
ですから,先ほど長谷川委員の意見にもありましたけれども,地域産業が一体となって地域に特徴的な試みをするという意味で,それに必要とされる専門性,それをどう育成していくかという観点を判断基準に入れていただければと思います。以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。安部委員,どうぞ。

【安部委員】 ありがとうございます。本取りまとめのシンボルとして示されました,地方国立大学の特例的定員増は,特に18歳人口の減少が加速する地方の中小規模の私立大学の脅威となることは明白であると思います。しかし,県名をそのまま付した地方国立大学のほとんどは,地域で1番の大規模総合大学であり,長年,地域の行政機関,金融機関,産業界に人材を数多く輩出した等の実績から,地域の人々が最も信頼や期待を寄せる高等機関であると思います。
その期待や信頼を寄せる高等機関である地方国立大学には,近年,地方で憂慮される問題である。若い世代の女性の流出が,むしろ男性よりも顕著であることを申し上げたい。その理由には,地方の産業界等では,今マスコミで話題になっております,わきまえる女性を求める傾向,女性のキャリア形成の障壁と言われるガラスの天井以前に,地方では男女で異なるキャリアトラックが容認されているような実態があるからです。
この取りまとめの4ページにもありますように,医療,保健,福祉,介護など,女性が多いとされるエッセンシャルワーカーで高い待遇やキャリアアップを求めている人は都市部へ流出し,地方では人材の確保がだんだん難しくなっております。地方の国立大学には,彼らがキャリアアップするためのリカレント教育の場の創設と,地域産業やコミュニティーの中核となる女性が地域で活躍するための学びの場としての公共機関の役割を果たしていただきたいと思います。
それに関連して,地方で活躍する女性の育成は,地方創生にとっての大きな柱であり,これは多様性を持った地域の創造につながると思います。そのためには,高等教育機関の多様性が必要となります。大学における教員の多様性や留学生受入れ促進などは,機関としての多様性を担保するものですが,先ほどたくさんの委員がおっしゃったように,これまで日本の高等教育機関の課題とされていた25歳以上の学部生や30歳以上の大学院生等の比率を上げることや,柔軟な学びのための非学位課程の創設など,これまで地方の中小規模の私立大学や短期大学が単独で取り組むことの難しかった高等教育改革に,国立大学が特例的定員増などを活用して取り組んでいただければ有り難いと思っております。
少子化が進む地方にありましては,大学が18歳主義,親負担主義を脱して,地域の多様な人々がライフステージに応じて柔軟に学ぶことのできる生涯学習機関としての役割を創造することで,地域産業振興や人々の労働生産性の向上に役立っていかなければ,地方は消滅することが必至で,大学はその防波堤になるものと思っております。以上です。

【永田分科会長】 おっしゃる通りだと思います。三村委員,どうぞ。

【三村委員】 どうもありがとうございます。要件は収容力の不足を考慮することということです。これは要件という,必ずそうでなければいけないということではないと思いますが,収容力の不足を重要な配慮事項とするという提案です。
理由ですけれども,実は2年ほど前から,県や産業会などと一緒になって,高等教育の在り方の検討会というのをやっていろいろ調べました。そのときに分かったことが,国公私全てを合わせた大学の収容力というのは,都道府県ごとに大きな差があるということです。大学全体を合わせた収容力が県内の希望者の半分以下の県も相当あります。その一方で,2倍以上という都道府県もあるわけです。
そのような状況ですから,多くの道府県,地域は地方からの若い層の流出を何とか防ぎたいと思っているわけですが,もともと条件を満たしていないと,そういう状況を克服する必要があるということです。そのためには,単に収容力を増やすだけではなくて,地方創生に資する増やし方,全国の学生を引きつける魅力ある新しい学科あるいは新しい産業を生み出すような分野等を増やしていくということだと思います。地方自治体や産業界の要望に応えているかどうかを,片方できちんと把握しながら,収容力ということも非常に大きな条件になるのではないかと思います。以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。小林委員,どうぞ。

【小林委員】 ありがとうございます。小林です。
私も要件について少し申し述べたいと思います。1点目は,大学の情報公表との関係で,要件として,こういったことを全て公表するということはつけていただきたいと思います。
それから,2点目といたしましては,これはもう30年前になりますが,当時,国立学校財務センターというところで,国立大学の社会貢献ということでプロジェクトがありまして,そこでかなり調べました。今日は時間がありませんので,一々全部を申し述べることはできませんけれど,いろいろな数値について検証いたしました。そのときの仮説は,国立大学は,実は地域に対して相当貢献しているけれど,自分たちはそれを自覚もしていないし,それを外にも出していないということでした。例えば,今まではもう明らかになっていると思いますけれど,審議会のこうした委員でありますとか,医療の地域貢献とか様々な形でなされているのですけれども,どうもそれを国立大学は自分たちの貢献だとは余り自覚していないということが問題ではないかということを仮説として検証いたしました。これについては報告書が出ており,様々な指標を要件として使えるようなものがあると思いますので,見ていただきたいと思います。
3点目はそのとき分かったことの一つで,これはグランドデザイン答申のときにも,私から報告させていただきましたが,例えば学生の移動に関して言うと,県内に就職しているというのは,その県に対して貢献しているということは言えるわけですけれど,例えば県内の入学率というのは様々な意味を持ってきます。県民に対して非常に貢献しているという面もありますけれど,県外から優秀な学生を集めているということも言えるわけでありまして,簡単に一つの指標で見るということは非常に危険だと思います。KPIということが,ここに要件として出されておりますけれど,安易なKPIをつくるとかえって有害だと思っております。ですから,KPIというのは,必ずしも数値化するものだけではなくて,定性的なものも含めて,しかも他の指標との関連で見る必要があるということを,是非留意していただきたいと思っております。以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。次に,村田委員,どうぞ。

【村田委員】 ありがとうございました。私の方からは1点だけ,先ほど長谷川委員がおっしゃったこととほぼ同じで,資料3-2-1にも書いていますけれども,society 5.0が今回のコロナで加速をすると言われていますが,正にテレワークも含めて地方創生をしていくときには,当然人材育成が大学の役割で,正にリカレント教育をどうするかということが重要だと思います。ただし,そのときに重要なのが,大学が幾ら頑張ってもその地域の産業界がきちんと活性化していかないと地方創生はできなくて,そこで出た産業界の活性に対する人材育成を大学がリカレント教育としてやっていく必要があろうかと思います。
そこで,ある大学の定員を拡大する場合は,その背景となる地域産業がどういうものを興していくのか,あるいは特化していくのかということが極めて重要な要件になってくるので,そのためのリカレント教育ということ,あるいは,新卒の人材でもいいですけども,その教育が重要だというのが一つ目です。
もう一つは,これも言わずもがなですけれども,DX時代になってAIを理解する人材が日本は非常に不足していると言われておりますので,少なくともAIをちゃんと活用できる人材については,地域関係なしに新たな定員増があってもいいのかとも思っています。以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。志賀委員,どうぞ。

【志賀委員】 ありがとうございます。要件としては,地方での雇用創出ですが,それも地方企業だけに頼るのではなく,テレワークで場所を選ばない働き方が本当に進んできつつあるので,地方に拠点を持たない東京の大企業でも,東京の会社の本社採用で,地方在宅勤務みたいな流れが,地方国立大学の定員増の中で進んでいくことが,今正に必要としているコンピューター,IT,AIの人材については,全く働く場所は関係ありませんので,東京の会社が地方の学生を採用して,地方での在宅勤務を推奨する,そういう流れをつくっていけたらと思います。以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。新しい観点が出てきました。古沢委員,どうぞ。

【古沢委員】 ありがとうございます。古沢です。
地域に資する大学の在り方を考えるときに,これまで国立大学では,医学部以外ではほとんどなかったと思うのですが,地域枠という形で明確に地域の高校生を地元の人材として育てていくような取組を対象とすることも考えられるのではないかと思いました。もちろん定員は限定する必要があるでしょうし,多少広域にしてもいいのかもしれませんが,高大接続を充実させることにもなりますし,都市部に比べて低い,地方の大学進学率を上げることにもつながるのではないかと思います。
その一方で,先ほどの最初の説明で,地域における収容力を定員増の際に踏まえるかどうかというお話がありましたが,これについては,本当に魅力ある内容であれば,幅広い地域から若者を呼び込むことが想定され,内容によっては新たな地域人材が十分呼び込めると思いますので,現時点で地域の実情にとらわれるべきではないのではないかと考えます。 以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。山田委員,どうぞ。

【山田委員】 ありがとうございます。今回,地方創生に資するということで,大学の方で,こういう検討が行われたことを大変うれしく思っております。何点か要件として申し上げたいのですけれども,地方創生の場合は地方創生計画というのを各都道府県,市町村で全部つくっており,そことの整合性の問題が出てくるということです。地域連携プラットフォーム検討会議の方では最初のところに出てくるだけで,あとは今,論点の方で初めて出てくるという形になっていますけれども,地域のステークホルダーが集まって,特に大学による地域創生計画,又は地方創生計画の中に大学の在り方を盛り込む,こういう形で地域と大学とが地方創生において,一致して取り組んだという方向性を出すことが要件として必要だし,それによって,初めて地域と大学とが一体となって定員増に当たられるのではないかと思います。
同時に,単に定員増をすればいいだけではなくて,することによって,地方公共団体に対する地方創生交付金,これを国立大学にも使えるようにすべきじゃないかと思います。それによって,新しい5Gをはじめ,AI,DX関係を思い切って地域に,大学とともに発達させることができるような新しい試みができるのではないかと思っております。
同時に,余り地方創生計画の中身を地域限定の絞りに掛けない方が,私はかえって地方創生に資するのではないかと思います。つまり地方の人材育成,知の拠点としての大学というのはもちろんメインですが,同時に,地方大学は地方のエッセンシャルワーカーをつくり出しています。これは地域に限ったものではない,ある面で,こういう人材育成に特化した地域というのがあってもいいという点では,そういった人を集めることのできる地方大学もあってもいいのではないか。それから,同時に,外国人人材の輸入,こうした問題についても,幅広く地方創生という観点から認めていただければいいなと思っております。
最後に,その中においても,例えば医学部でありましたような地域枠というのも,非常に面白い考え方だという形で,様々なタイプがあって,それぞれの地方創生というのは一つのものではありませんので,柔軟性を持って地方国立大学の定員増が行われることがいいのではないかと感じている次第です。以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。続きまして,高倉委員,どうぞ。

【髙倉委員】 先ほどの益戸委員の発言に同調させていただくが,地域連携プラットフォームをいかに機能させるかが非常に大事だと考える。今,様々な省庁が同様な観点でプラットフォームを構築している。我々,連合も産官学金労言との連携による地域連携プラットフォームをつくり始めている。是非,内閣官房がリーダーシップを発揮し,各プラットフォームが有効機能するよう取り組んでいただきたい。

【永田分科会長】 ありがとうございます。次に清水委員,どうぞ。

【清水委員】 ありがとうございます。私は今,高等教育から遠ざかっている層は,いわゆる低所得者層と同時に,社会人だと思います。社会人の高等教育の需要は非常に大きいです。18歳人口に焦点を当てると,公立や私立と競合しますので,そこは避けた方がいいと思います。フルタイムとパートタイムの社会人リカレント学生がいると捉えた場合,パートタイムのリカレント学生を,例えば3人を1人のフルタイムに相当するということで定員をカウントする。アメリカにあるフルタイムイクイバレント制度(FTE)を導入する。また,イブニングスクールを使って,リモートでも学修できるということ,働き方改革のパートタイム学生で,半分は仕事,半分は学び,そういう学習形態を取り入れた大学づくりを行う。
最後に,地域枠は意外と失敗しているようです。医師とか獣医の地域枠を見たら分かりますように,むしろ地域枠という発想ではなく,いわゆる無償制度を取り入れた定員増のための社会人教育システムにすべきです。無償の財源を新たに導入した高等教育の無償化と同じような仕組みでやる。そのぐらい本気で自治体も関与する大学づくりというのを期待したいと思います。以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。加登田委員,どうぞ。

【加登田委員】 ありがとうございます。正に地方創生の切り札として,地方における高等教育機関の役割は大きくなっていると思い,私どももその責任を痛感しているところでございます。
ただ,今までも地域創生と高等教育,知の拠点としてCOCやCOCプラスの活動を地域の各大学と連携してまいりましたが,問題は定員を増やせば,それが即出口である地元定着とつながるかというと,なかなかそこに難しいギャップがあるということです。と申しますのは,大きなコンビナートとか工業地帯にありましても,大企業ほど本社採用は東京採用になりまして,出口とパイプがつながらないというバイアスがあります。
ですから,地域枠で地域の学生を入学させたとしても,その出口とつながらなければ,地方創生への良質な人材の配給とはギャップがあります。その辺も含めて,産業界と行政と大学との連携,見直しが必要ではないかと考えます。以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。最初に申し上げました時間を過ぎようとしておりますので,今,発言を求められている方までとし,簡潔に御発言をお願いします。それでは,髙宮委員,どうぞ。

【髙宮委員】 簡潔にということですので,一言,私は是非今回の国立大学の定員増に関しては,グローバル化をあえて要件に入れてはいかがかと提案させていただきたいと思います。と申しますのは,今まで何度か地域連携等々の中で,地方においても国立大学が非常に中心的な役割を担ってくるということは,非常に歓迎されるべきことでございます。他方,どうしても地域のニーズということで,議論がどうも地域に縮小してしまって,少子化の中で,果たして地方創生を本当に止めるために,このような発想で大丈夫だろうかと。地域の拠点で,知の拠点である国立大学は,地方と世界とをもっと積極的に結ぶという視点を,あえてここで入れてみたらいかがかと思いまして,グローバルのキーワードを要件に入れてはどうかと御提案させていただきます。以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。麻生委員,どうぞ。

【麻生委員】 ありがとうございます。今までも意見が出ている部分はありますが,私は分野別での論点が重要だと思います。特にIT等はこれから発展していくと思います。現在はコロナ禍で,例えば医療従事者という一くくりになっています。これも一つの分野だと思いますが,医師養成にも時間がかかりますし,看護師や保健師,それから,臨床検査技師等,一つの分野でもたくさんありますので,これに対応できる分野別の割り振りをするという観点が重要だと思います。以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。宇山委員,どうぞ。

【宇山委員】 目指す方向性に関して,広報力と情報発信力の強化というのは非常に重要ではないかと思います。大学の中で何が行われて,誰とつながりたいのかを大学自体が発信していかなければいけないときになっていると思いますし,今,コロナ禍で,地方のテレビ局や新聞社もネタに困っている部分があるので,そういう部分を満たせるようなプレスリリースや,記者会見や勉強会等の力をつけるというのも,大学のアカデミアの力を蓄えるという意味では必要ではないかと思いました。以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。最後に,福田委員,どうぞ。

【福田委員】 ありがとうございます。一言だけ申し上げさせていただきます。
地方の国立大学に限らず,地方大学も恐らく県外から来て,県外へ就職している人が大変多いということがございますので,今回の定員枠に関しては,先ほどおっしゃっていた委員もございましたけども,社会人枠のみ定員増をするという考え方は,乱暴かも分かりませんが,一言申し上げさせていただきました。以上です。

【永田分科会長】 御意見いただきましてありがとうございました。
言い足りないこと,あるいは,御発言できなかった先生方は事務局の方に御意見をメールでお送りいただければ,それも含めて検討させていただきます。
ここから,文部科学省で要件設定をしていくことになると思います。もちろん今日出なかった部分もあるかと思います。この辺りは文部科学省にお任せいただいて,私が最後に確認するということで,皆さんの意見が十分に反映された形にさせていただくということで,先に進めたいと思っておりますが,よろしいでしょうか。
この件はまた議論する機会があると思いますが,今,求められているのは,文部科学省から教学上の要件をきちんと示していかなければいけないということです。加えて,清水委員の御意見にありましたFTEや単位蓄積に関わることは非常に難しい問題ですので,ある程度長い期間かけて,それこそ質保証システム部会で議論いただきたいような内容ではあります。そのような認識で,この議題については御理解を頂きたいと思っております。

(「異議なし」の声あり)

【永田分科会長】 ありがとうございました。
それでは,4番目の議題はいよいよ今期の総復習です。教育と研究を両輪とする高等教育の在り方についてということで,前回,詳細な御意見を頂きました。また,メールでも委員のみなさまから御意見を頂きました。これらを最大限工夫して,最終案に盛り込み直したものがお手元にある資料です。
それでは,事務局から簡潔に御説明をお願いします。

【淵上高等教育企画課長】 高等教育企画課長の淵上でございます。
それでは,資料4-1-1に基づきまして,前回,また,その後,メール等で頂きました御意見を踏まえた修正箇所の主な部分について,御報告を申し上げます。
2ページ目でございます。ここが一番大きな修正でございます。「はじめに」のところに,なぜ今回,教育と研究を両輪とするという議論をすべきなのか,あるいは,教育と研究の軸足の置き方,フンボルト理念との関係を盛り込んでございます。最初の丸の,最後のところにはコロナの状況を追記した上で,その次の丸でございます。大学の基本的な役割が教育と研究にあることに疑いはないであろう。しかしながら,教育と研究は相互関係や相互作用の現在的な意味づけ,また,そのための教育研究組織のみならず,教員,あるいは職員の在り方についての議論が十分と言える状況ではないと。例えば,その両者への軸足の置き方については各大学のミッション,大学内の学部等の組織,あるいは個々の教員に求められる役割によって,多様な形があり得る。その上で,各大学が全学的なマネジメント機能を総合的に発揮し,組織全体の力量の最大化を目指し,組織の在り方のみならず,個々の教員の教育と研究について,果たすべきエフォートの在り方を見極めた上で,それぞれ役割についての全体最適化を図りながら,求められる教育と研究の機能を最大限に発揮していくことが期待されると。
本分科会においては,これまで大学における教育の振興に関する提言を累次にわたって行ってきたところであるが,このような新たな社会変革の状況を踏まえ,これからの時代における大学の在り方を検討するに当たり,大学の機能の両輪である教育と研究の双方に着目し,その機能を総合的に最大化するための検討を行ってきたということを記述してございます。
3ページ目は,有信委員からの文言修正の御意見を踏まえた修正になっております。
5ページ目は,いわゆるフンボルト主義ということにつきましての修正になってございます。下段の方は文言の適正化ということでございます。
飛ばしまして,13ページ目でございます。大学のニューノーマルに向けての新たな時代の大学教育のところでございますけれども,ニューノーマル時代の大学にふさわしい在り方について,教育手法の開発に向けた支援だけではなくて,制度の検討といったことも御意見を踏まえて追記をしてございます。
それから, 14ページでございます。学修者本位の教育への転換というところで,一番下でございますけれども,大学院における院生の教育の在り方について追記している部分がございます。自らが専門とする分野のみにとどまらず,新しい課題を自ら発見し,俯瞰(ふかん)的な知識とスキルを組み合わせ,解決する力を育成することにも意を用いる必要があるということを追記してございます。
次の15ページにつきましては,下から二つ目の丸でございますけれども,前回の御議論を踏まえまして,授業科目の「週複数回実施」というのを「複数日の実施」といった修正,あるいは,一番下でございますけれども,学生の参画の観点からは,カリキュラムの検討段階からも参画を促していく必要があるのではないかということで追記がございます。
16ページの,TAの役割につきましては,コロナ禍におけるTAの役割の再認識といった記述を追記してございます。その他につきましては,内容的な変更ではなくて,少し重複を廃するようなものになってございます。
17ページの記述の追記は,RAの位置づけのさらなる明確化の観点の修正になってございます。
飛びまして,20ページでございます。三つ目の丸でございますけれども,「大学の専門職に委ねる」といった表現を,ここは従来のアカデミアの先生方と,事務職の主従関係を想起させる表現という御指摘がございましたので,「大学の専門職が担うといった」という表現に修正をしてございます。最後のところでございますけれども,「また,学生の就学・留学支援や大学の教育の国際化等について,教育に関する専門職を設置する動きも見られるところであり,今後こうした職員の活躍も期待される」ということで,URAへのみならず,UEAというものの必要性についても言及した方がよいという御意見を踏まえた修正になってございます。
それから,飛びまして,22ページでございます。管理運営業務の改善という項目のところでは,教員,研究者の働き方改革に係る記述の追記をしているところでございます。
23ページの一番下のところでございます。IR体制の構築のところにつきましては,IRの位置づけの明確化という観点からIRの役割についての記述をしているところでございます。
24ページ,一番下でございます。事務職員の活躍促進のところの記述も,先ほどと同様に「委ねる」という表現を「担っていく」という表現の記述に変えているところでございます。
25ページでございますけれども,こうした事務職員のさらなる職能開発など,育成につきまして,各大学でしっかり,それぞれのビジョンに基づいた育成,採用等の計画を立てて取り組むことが必要であるということを追記してございます。
最後, 26ページの一番下でございます。今,申し上げたような各大学の取組に任せるのみならず,国において,必要な制度の見直しや支援について検討すべきという御意見を踏まえた修正,追記をしているところでございます。
主な修正点は以上のとおりでございます。最終的な御審議をどうぞよろしくお願いいたします。

【永田分科会長】 今,御説明いただいたとおりです。
「はじめに」のところに丸が二つ増えておりますけれども,これは主として金子委員から前回御指摘のあった御意見を踏まえて追加しましたが,現時点における本まとめの意味づけとしては成り立っているだろうとは思います。そのほか,いろいろな先生方の御意見を反映させた形になっておりまして,だいたい御了承いただける内容ではないかと思います。
特段の御質問や御意見があればお受けしたいと思います。いかがでしょうか。髙倉委員,どうぞ。

【髙倉委員】 今回の取りまとめは,課題認識,そして解決に向けた方策など,非常によくまとめられており,御苦労いただいた事務局の皆さんに感謝を申し上げる。
大学における教育と研究の両輪の課題として,日本の教員は研究に比重を置く者の割合が非常に高い。一方でそのことは,ノーベル賞をはじめ,国際的に権威のある各種学術賞の受賞者輩出につながっている面もある。教育とのバランスを考慮しつつ研究を維持するには,当然時間が足りなくなる。まずは,教職員の負担感の増大,大学職員の少なさ,役割の変化という現状認識,また教職員の時間は有限であることを前提として記載をされたこと,さらには教員でなければ担うことができない業務か否かの早急な整理,検証に踏み込まれたこと,これらのことを評価したい。
重要なことは,効率的な運営に向けての組織マネジメントの強化,教育研究運営事務職員の役割の明確化,そして研究をサポートする技術職員の高度専門職人材としての地位確立であると考える。また,博士課程の学生は安価な研究労働力とみなされるべきではなく,研究者としても扱われる存在と明確化されたとことも評価をしたい。とりわけコロナ禍で明らかとなった,TA,RA,また,ポスドクの役割の重要性,役割にふさわしい処遇改善の重要性を踏まえて,教育目的の達成に向けて役割分担を図ることが重要である。これらの解決に向けて,文部科学審議官を座長に設置された,政策形成のための若手ワーキンググループ,AirBridgeには期待を申し上げたい。
最後に,今期の取りまとめを踏まえて,中期的なロードマップを持って取り組むことで,是非未来の最高学府を輝き続けるものとしていただくよう,改めて事務局の皆さんにお願いを申し上げる。

【永田分科会長】 ありがとうございます。長谷川委員,どうぞ。

【長谷川委員】 ありがとうございます。全体にとてもよくまとまっていると思いまして,先ほど髙倉委員もおっしゃったように,大学の先生とそれ以外のいろいろな,それを取り巻く事務職員の専門職や役割をはっきりさせたので,大学教員の時間管理も含めて
変わっていけるのではないかと思いました。
一つ要望ですが,14ページの32行目あたりからの赤というのは,私が言ったことを考慮していただけたと思うのですが,こうやって学際的や自分の分野にとどまらずということを言うと,いつも言われていることなのですが,私がここで言いたかったのは,研究に実際に取り組む人間というのが,本当はその分野の話じゃなくて,研究とはどんな活動なのかを理解していることだというのが言いたかったので,自らが専門とする分野のみにとどまらずの後に,研究とは何かの理解に基づきというのを一言入れてほしいと思います。
そのことは,この後に出てくるIRや教育研究を取り巻く専門職という人たちも,結局,そういうIRをやる人なんかは研究とは何かが分かっていて,でも自ら特定の研究をしている人ではないと,そういう職の位置づけというのが今までなかったので,それが重要なだと思います。

【永田分科会長】 かしこまりました,文言は考えさせていただきます。そのほかよろしいでしょうか。前回まで12回にわたり皆さんと議論をしてきました。中央教育審議会としては初めて研究という単語が入った議論でして,教員の資格,あるいは,教員とは何かという問題が最初に提起されて,これまでにない形のまとめにはなりました。まだまだ不十分な点はたくさんあるとは思いますけれども,長い間議論いただき本当にありがとうございました。
今,長谷川先生から御意見を頂きましたので,この部分は私に文言は一任を頂きまして,うまく反映させていただこうかと思います。
それでは皆様にお礼を申し上げて,あとは私と事務局に御一任を頂きたいと思います。どうもありがとうございました。
以上,四つ用意した議題は終わりました。今回が第10期の大学分科会の最後になりますので,第11期に向けて申し送りをしたい,是非とも次期,この辺りを議論してほしいというのがあれば,端的に御発言いただければと思います。
渡邉委員,お願いいたします。

【渡邉委員】 ありがとうございます。第10期の永田分科会長の運営について,感謝と敬意を表するという意味で,感想を述べさせていただきます。
第10期は,前期にまとめられた高等教育のグランドデザイン答申を踏まえながら,また,突如として起きたコロナ禍におけるニューノーマルをにらみ,答申の具体化をどうするのかということについて議論を行った期であったと思います。特に,教学マネジメント指針や,今回まとめていただいた教育と研究を両輪とする高等教育の在り方,また,先ほどの質保証システム部会もそうだと思いますけれども,いずれも,もともとのグランドデザイン答申と行き来しながら進めた議論でした。この審議を通じて大学というものが,Society 5.0という新たな時代において,価値創造システムの中核の機能,あるいは,Society 5.0に向けた社会変革の原動力になるのだということを,確認できたと思います。
先ほど議論された魅力ある地方大学の在り方についてでは,地方大学こそが価値創造の中核になるべき時代が来たのだと感じました。これらを踏まえて,第11期に期待したいことは,こういった中核機能を発揮するための大学のマネジメントの高度化をどうするのかや,大学経営の体系としてどう進化させるのかといった審議のステージにしていくことかと思いました。以上です。ありがとうございました。

【永田分科会長】 どうもありがとうございます。清水委員,どうぞ。

【清水委員】 永田会長以下,皆さんお世話になりました。グランドデザインでは学修者本位,学生力の答申が出されました。今回は教育と研究の両輪ということで,言わば教員力の審議まとめが出されます。
私は日頃から,大学というのは教える者と学ぶ者と,それをつなぐカリキュラムからなると考えていますので,学生と教員の後はカリキュラムだと思います。教育プログラムといってもいいと思います。コロナ禍の中で,履修科目数や履修単位数は非常に過密になっているということも問題になりましたが,何よりも日本の初等中等教育のカリキュラムはすごいものです。そのため世界に誇れる初等中等教育とか義務教育というレベルを維持しているわけです。世界で一番すばらしい教育プログラムは,自動車学校の教習プログラムです。誰が習ってもみんな運転できる。そういう誰が学んでも高等教育の成果が享受できる,こういう教育プログラムやカリキュラムの在り方について議論してほしいと思っています。以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。有信委員,どうぞ。

【有信委員】 ありがとうございます。今期は初めてといっていいぐらい,研究という言葉が入って,かなり大学まで含めた幅広い議論ができて,それがまとめられたというのは非常によかったと思います。
ただ,まだ心残りがあって,やはり学部教育と大学院教育をはっきり,私は個人的には分けて議論をして,本来,それぞれの在り方,従来はフンボルト主義の中で,教育と研究を一体としてという形できていて,これが非常に今の教育の在り方に対してあやふやな形で影響を与えていると思います。つまり学部教育は,基本的な学問を体系的に身に付けてもらうという視点が重要だと思いますし,大学院教育は,言わばリカレントに進歩しつつある,新しい知識を体系化しつつ,新たな教育として身につけてもらうと,今は簡単に言ってしまいましたが,もう少し突っ込んだ議論を是非やっていただければと思います。以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。小林委員,どうぞ。

【小林委員】 ありがとうございます。3点簡潔に申し上げます。
先ほど申し上げましたけれど,中間組織の在り方ということをもう少し議論していただきたい。特にそれに対してどのような支援ができるかということを政策として議論していただきたいということです。これは,例えば経営者に対する支援ということも含めて,専門職としての経営者とか,それから職員,特にIR,URAとか第3の職と言われるような新しい職員が増えているわけですけど,こういったことについて,まだ在り方を議論していないと思いますので,その辺りについては是非議論していただきたいということです。それが1点目と2点目です。
3点目は,これはずっと以前から積み残しになっている議題だと思いますが,大学の財務基盤をどうするかという問題であります。非常に大きな問題ですけれど,財務基盤をどうやって強化していったらいいのかという点について,ずっと課題になっておりますが議論されていない。特に大学の修学支援支援制度のような機関補助と個人補助と両方に関わるような新しい制度が,今までの議論とは別に出てきましたので,国立大学の運営交付金,私学助成,それから,個人の補助,こういったものを含めて大学の財務基盤をどのように強化するかという議論を是非していただければと思います。以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございました。御提案として,次にお伝えをしたいと思います。よろしいでしょうか。
今頂きました御意見は,当然ながら第11期に何らかの形でつながっていくかと思います。
それでは,第10期大学分科会の終わりに際し,文部科学省高等教育局長から御挨拶を頂きます。伯井高等教育局長,よろしくお願いいたします。

【伯井高等教育局長】 高等教育局長の伯井でございます。
第10期の中央教育審議会大学分科会の最終回でございます。一言,御挨拶,御礼(おんれい)を申し上げます。
今期の大学分科会におきましては,主に平成30年に答申を頂きました,「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」に基づきまして,高等教育に関する様々な課題について,13回に亘り御審議を頂きました。本日も,大学の教育研究機能のさらなる強化に向けまして,幅広い観点から,先ほど来,いろいろと御議論いただき,教育と研究を両輪とする高等教育の在り方についての取りまとめを頂きました。また,魅力ある地方大学の在り方についても,活発な御審議を頂いたところでございます。
今期の分科会におきましては,学部等連係課程制度の導入,教学マネジメント指針の策定,地域連携プラットフォームの構築に関するガイドラインの策定,大学等連携推進法人の認定制度の導入など,専門的見地からの御審議も頂きました。新型コロナウイルスの感染拡大をはじめまして,現在,高等教育機関はコロナ禍の中で教育研究活動をいかに止めずに活発に行っていくかということで,非常に御苦労をされているさなかでございます。これを乗り切り,世界中がニューノーマルにおける大学教育をいかに迎えていくかということで,コロナ禍の高等教育,さらに,その後のニューノーマル下における大学教育の在り方を,その変化を適切に捉えながら,活発に御審議いただいたということに対しまして,このような形での会議開催形態になっておりますが,改めて感謝を申し上げたいと思います。どうもありがとうございます。
文部科学省といたしましては,今期,御審議いただいたそれぞれの内容について,まずは具体化を図っていくとともに,高等教育のさらなる発展に向けて,関係施策を積極的に推進していきたいと考えております。
最後に,永田分科会長をはじめまして,委員の皆様方,大変お忙しい中,活発な御審議に御尽力いただきまして,改めて感謝を申し上げ,御挨拶とさせていただきます。本当にありがとうございました。

【永田分科会長】 それでは,最後ですが,本日を入れて13回の議論をさせていただきました。最後に私からも御挨拶を申し上げて,終わりにさせていただきます。
第10期の最初に申し上げたと思いますけれども,大学分科会は,1987年の臨時教育審議会の答申により設置された大学審議会が,2001年になりまして,中央教育審議会の大学分科会という形に変わりました。
いずれにしても,大臣の諮問に答える形の審議会ということで,高等教育,あるいはそれにまつわる様々な問題を議論してきました。初等中等教育分科会とは違って,ある意味独立した組織としてスタートした大学審議会が中央教育審議会に位置づけられた,という歴史の中にあります。
それを鑑みると,当然のことながら,今回も最後に小林委員から出てきましたけれども,政策的ないろいろな出来事が動いているのは確かですし,それぞれに我々も注視し,あるいは目配りしながら議論する必要があります。一方で,中央教育審議会に置かれた大学分科会の基本的な役割は,現場からのボトムアップの意見を採り上げ,そこに潜むいろいろな問題を解決するために議論をするところにあります。トップダウンで,例えば政策的に議論をすることはある意味では容易です。しかし,我々としては,これを実現するためにどうするのか,我々の理想とする大学教育,あるいは,大学の機能をいかに発揮させるかということについて,ボトムアップで話し合うというのが大学分科会の基本的な態度であると思っております。その分時間がかかって,時には,あそこは議論に時間がかかると言われます。それは当然でありまして,そうした慎重の議論の下に,我々は大臣に対して答申を行うことが大学分科会の役割ではないかと考えています。
今期,13回にわたり御議論いただきましたけれども,先ほど最後に幾つかの意見が出たとおり,議論しなければいけないいことはまだたくさんあります。最後に,私から一つだけ意見を申し上げますと,大学というところは,基本的に研究と教育を両輪にしていますが,我々は,今,強制的に新しい日常に身を置くことになりました。今後は,大学を取り巻く課題を議論する際に,その新しい日常の中で大学の果たすべき役割は一体何なのかということをいつも心の中に置いておきたいと思います。
デジタルトランスフォーメーションは進んでいます。ですから,これは大いに活用すべきですし,更にそれらを活用して,新しいデジタルトランスフォーメーションの方策すら生み出すことができる人材を育てていくことも当然です。しかし,それ以上に大学人が議論をしなければいけないのは,実は新しい日常を支える根本的な考え方,大きく言えばフィロソフィーは一体何なのか,ということだと思っています。
いろいろな分断と格差が,ちょうど拡大鏡で見たときと同じように,すごくクローズアップして今,私たちの目の前に見えています。それは,経済や雇用の問題ではなくて,教育の問題として私たちは考えていかなくてはいけませんし,大学だからこそ,アカデミアだからこそ,解決する新しい道筋を示すことができる部分がきっとあると思っています。これは第11期の基本的なテーマにはならないかもしれませんけれども,我々,高等教育に関わる者が今,心して考えていかなければいけないことではないかと思っております。幾らかでも賛同いただければ,私としては大変うれしく思います。
いずれにいたしましても,13回に亘る御議論,本当に心から感謝申し上げまして,また,どこかで皆様とお会いして,激論を交わしたいと思っております。どうもありがとうございました。それでは,これでお開きとさせていただきます。

―― 了 ――
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