大学分科会(第158回) 議事録

1.日時

令和3年1月13日(水曜日)10時~12時

2.場所

WEB会議

3.議題

  1. 大学教育再生加速プログラム(AP)について
  2. ガツガツ若手WG「AirBridge」の活動報告について
  3. 教育と研究を両輪とする高等教育の在り方について
  4. 魅力ある地方大学の在り方について
  5. 第10期大学分科会の審議の状況について
  6. その他

4.出席者

委員

(分科会長)永田恭介分科会長
(副分科会長)村田治,渡邉光一郎の各副分科会長
(委員)有信睦弘,亀山郁夫,志賀俊之,日比谷潤子,吉岡知哉の各委員
(臨時委員)麻生隆史,安部恵美子,宇山恵子,加登田惠子,金子元久,河田悌一,小林雅之,清水一彦,鈴木雅子,髙倉明,髙宮いづみ,伹野茂,曄道佳明,長谷川眞理子,福田益和,益戸正樹,三村信男,山田啓二の各委員

文部科学省

(事務局)伯井高等教育局長,川中大臣官房審議官,森田大臣官房審議官,森私学部長,小谷私学行政課長,淵上高等教育企画課長,行松内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局次長 他

5.議事録

【永田分科会長】 皆さん,御準備はよろしいでしょうか。あけましておめでとうございます。第158回大学分科会を始めさせていただきます。年頭,お忙しいところお集まりいただきまして,ありがとうございます。
今回も新型コロナウイルス感染症対策ということでウェブ会議になっております。この会議の模様はYouTubeでライブ配信をしておりますので御了承いただきたいと思います。
それでは,事務局から,まず連絡事項をお願いいたします。

【奥井高等教育企画課課長補佐】 失礼いたします。本日は,ウェブ会議及びライブ配信を円滑に行う観点から,御発言の際は挙手のボタンを押していただき,分科会長から指名されましたら,お名前をおっしゃっていただき,御発言を頂きたいこと。また,御発言後に再度,挙手のマークのボタンを押していただいて,表示を消していただきますよう,よろしくお願いいたします。また,発言時以外はマイクをミュートにしていただくことなど御配慮いただけますと,有り難く存じます。
また,会議資料につきましては,次第のとおり,事前にメールでお送りしております。今回,参考資料として,昨年末,公表された国立大学法人の施設整備計画策定に向けた最終報告というものもお送りしておりますので,御参照いただければと思います。
なお,1月1日付で高等教育局に異動がございましたので,御紹介をさせていただきます。
森私学部長でございます。

【森私学部長】 森でございます。よろしくお願い申し上げます。

【奥井高等教育企画課課長補佐】 森田審議官でございます。

【森田大臣官房審議官】 このたび審議官を拝命いたしました森田でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【奥井高等教育企画課課長補佐】 事務局からは以上でございます。

【永田分科会長】 ありがとうございました。
本日,議題が五つございます。1点目はJSPS大学教育再生加速プログラム委員会委員長である河田委員からの御発案によりまして,このプログラムの先導的な取組事例を2件,茨城大学と京都光華女子大学短期大学部から御報告を頂きます。2点目は,前回の大学分科会で文部科学省のガツガツ若手ワーキンググループより報告のありました,大学院生を取り巻く研究室の環境等について意見取りまとめの御説明を頂きまして,今日は質疑応答をさせていただこうということです。3点目は今期の主題,教育と研究を両輪とする高等教育の在り方について,いよいよ取りまとめに向かって最終段階にありますので,皆さんと御議論をさせていただきます。4点目は,内閣官房の地方創生に資する魅力ある地方大学の実現に向けての検討会議の取りまとめができていて,今後それがどのように進んでいくのか,中央教育審議会からどのような意見が言えるのかということを考えながら御議論を頂きたいと思います。最後は,2月に第10期の中央教育審議会が終了いたしますので,第10期における大学分科会の審議状況の総括をさせていただきたいと考えています。以上5点でございます。
それでは,最初の議題に入ります。大学教育再生加速プログラムについて,河田委員から御説明を頂き,事務局から事業についての概要説明の後,二つの御発表を頂きます。それでは,河田委員から御説明をお願いいたします。
それでは,最初の議題に入ります。大学教育再生加速プログラムについて,河田委員から御説明を頂き,事務局から事業についての概要説明の後,二つの御発表を頂きます。それでは,河田委員から御説明をお願いいたします。

【河田委員】 私は2014年より,GP(Good Practice)を引き継いで日本の大学教育を実りあるものにしていこうという取り組みである「大学教育再生加速プログラム(AP)」の委員長を務めてまいりました。6年間この事業の公募,採択,審査,評価に携わって参りましたので,今日はこの取組について是非御紹介をしたいと思っております。
資料の1-1を御覧いただきますと,国公私立大学,短期大学,高等専門学校からの採択ということで,六つに分類されていますが,400件を超える応募の中から77のプログラムを精選させていただきました。そして,毎年度,フォローアップ,現地調査や視察等で,その進捗状況を確認してきたところであります。
今回,その中で特に優れた取組について御紹介したいということで,二つの大学に御報告いただくことになりました。全学部いわゆる全学的な取り組みであるため,日本の大学において弱いといわれる学長のリーダーシップの必要性,そして常に経済界から言われている「日本の大学教育がアメリカに劣っているのではないか」という批判に対して,日本の大学教育の向上,充実に努力しておられるモデルといえます。今日はその中から茨城大学,京都光華女子大学短期大学部にその御苦労や進捗状況をお話しいただいて,来年度からも是非こういう取り組みを続けていただきたいということでございます。それでは,両校の先生方どうぞよろしくお願いいたします。

【永田分科会長】 事務局からも御説明をお願いいたします。

【西大学改革推進室長】 引き続きまして,事務局から事業概要を御説明申し上げます。お手元の資料1-1を御覧ください。
大学教育再生加速プログラム(AP)は,大学教育再生戦略推進費,いわゆる国公私補助金の枠で,平成26年度から令和元年度までの6年間実施してまいりました。大学教育の質的転換の加速をキーワードにしまして,学士課程を主な対象として,資料の中段に掲げてございますように,テーマ1,アクティブ・ラーニング,テーマ2,学修成果の可視化,右上に移って,テーマ3,入試改革・高大接続,テーマ4,長期学外学修プログラム(ギャップイヤー),テーマ5,卒業時における質保証の取組の強化として五つのテーマを設定いたしました。
資料左上に戻っていただきまして,国立,公立,私立の大学,短大,高専という多種多様な高等教育機関によりまして,77件のプログラムが全国で展開されました。各プログラムでは,大学の教育改革を先導するものとして,アクティブ・ラーニング,カリキュラムマップ・ツリーの導入,ルーブリックによる評価,教職協働とFD・SD,高大接続,ディプロマ・サプリメントの発行など,様々な取組を実施していただきました。これらの先導的な取組の成果は,昨年度,本分科会において取りまとめいただきました教学マネジメント指針にも取り込まれております。学修者本位の教育の実現に不可欠な要素として,今後の大学教育改革の議論の参考になるものだと考えております。
本日はAPの中でも特徴的な事例として,茨城大学及び京都光華女子大学短期大学部から,それぞれの取組について御紹介いただきます。本分科会における今後の議論にとって有益なお話を伺えるものと期待をしております。
なお,京都光華女子大学短期大学部におきましては,幹事校として事業全体の取りまとめにも御尽力いただきました。
後ほど質疑応答の時間も設けてございますので,よろしくお願いしたいと思います。
なお,現在,JSPSにおきましてプログラム委員会が動いておりまして,各プログラムの取組に対する評価が今行われております。その結果は本年度中に確定し,公表される予定となっておりますので,併せて御報告申し上げます。事務局からは以上です。

【永田分科会長】 それでは,早速,茨城大学の太田学長,どうぞ御発表をお願いいたします。

【茨城大学】 よろしくお願いいたします。
本学の教育の質保証システムの構築ということでお話しさせていただきます。
1ページ目は卒業式の直後にコミットメントセレモニーというものを企画しておりまして,そこで新入生に対して本学のディプロマ・ポリシー,五つの要素・能力について説明したときの写真でございます。
本学では,コミットメントパートナーとして教職員,学生だけでなく,地域の人々の参画があり,上級生からディプロマ・ポリシーの要素・能力を説明し,「これから4年間,学びを約束しますね」という約束をしてくれた新入生にその内容を説明したブックを掲げてもらっています。このように入学式のときは全員,学びの約束をいたしました。
2ページは本学の教学マネジメント体制でございます。緑色のところですが,教員,学科コース,学部,全学という四つの階層を設け,各階層で授業点検,プログラム・レビュー,学部でのFD,全体的な改善施策を行います。それに対応する授業アンケートや達成度のいろいろなデータ,最終的にはまとめのレポートを公表しております。
また,アドバイザリーボードという学外の先生から,全体に関してコメントを頂くようにしております。
3ページは工程の図でございます。先ほど御説明したコミットメントセレモニーでDPを説明し,2年生の初めにどのぐらい五つの要素を達成したかをモニターしております。各学年で初めにDPの達成度の調査をし,4年生は卒業時にその達成度を調べております。また,卒業後3年してどの程度ディプロマ・ポリシーを活用しているかということもアンケートで調べております。
さらに,就職先にもDPの五つの要素をどれぐらい本学の学生が身につけているかということを調査しております。
データ,結果について御説明いたします。4ページの左の図でございますが,これは2016年度の入学生を追跡したデータでございます。青が自己評価としてほぼ達成している。緑色が大体達成している。右側の方は余り達成してないというものでございますが,学年進行に従って,学生たちの達成度が上がっているということが分かると思います。
右側の図は卒業時に,各年度の卒業生に対してどの程度我々の取組成果が上がっているかということを調べたもので,若干でございますが,達成度が上がっているということがデータから見えてまいりました。
5ページは各学年の四つの要素の卒業年次自己評価と就職先からの評価との比較でございます。顕著なのはコミュニケーション力です。なかなかこれが伸びないんですが,就職先からは,結構身につけていますよという評価を頂いておりまして,この辺が学生たちにもう少し自信を持ってもらいたいなと思っているところです。6ページは卒業時の学修成果を,3年後の活用度合いと比較したものでございます。少し細かく分けておりますが,卒業時に身に付けた俯瞰(ふかん)的視野や地域活性化志向等が3年後どのぐらい活用されているかを調べたものです。データから読み取れるように,卒業時に身につけた力が3年後にも影響しているということでございます。だから,我々はいかに卒業時に学生に力をつけさせるかということが重要だと思います。
7ページは学内でデータの共有をどのようにしているかということで,学内限定のデータベースをつくって,プログラム,教育の改善ができるようにしております。
学外については右側でございますけども,図示化したものを学外に公表し,私たちの教育の取組についてすぐに意見が頂けるように作成しております。
8ページは今年度,遠隔授業がどうなったかということをシステムで検討したものでございます。いろんな調査をしましたが,去年と今年で理解度,満足型を比べた場合,決して落ちていませんでした。これはかなり教員たちの努力,学生たちの勉強の具合ということが影響したと思いますが,いろいろなことを調査してこのような結果が得られております。
最後でございます。本学の教育マネジメント体制としては,議論するデータをメンバーにきちんと提供し,現場でしっかりと議論してもらうというシステムができたと思っております。また,地域社会からどのようにして教育の質保証をしていくか,学外からの意見を取り入れるシステムをつくったということでございます。
以上でございます。

【永田分科会長】 ありがとうございました。では続いて,京都光華女子短期大学部の相場先生,御発表をよろしくお願いいたします。

【京都光華女子大学短期大学部】 京都光華女子大学短期大学部の相場といいます。よろしくお願いします。それでは,「アクティブ・ラーニングによる主体的な学びの向上とディプロマ・ポリシー達成度の可視化」というタイトルで,報告させていただきます。
まず,アクティブ・ラーニングの活性化の正課内での取組についてです。私たちのアクティブ・ラーニングは,アクティブ・ラーニング・マスター制度というものをつくって,それの土台の上に展開をしています。アクティブ・ラーニングは1年前期の必修科目であるプレゼンテーション演習から始めました。この科目の前半の目的は,とにかくプレゼンは本当は楽しいんだということを実感してもらうことにあります。プレゼンの楽しさをベースとして,後半では,問題も答えも教科書にあるという高校生的な発想から,問題は現実にあって,答えは自分たちで見つけるしかないという,社会人基礎力の考え方へ転換するということを目的としています。この科目は外部からも高い評価を受けていますし,様々な指標でもアクティブ・ラーニングの成果が実証されています。
この成果を様々な分野のアクティブ・ラーニングへと展開しています。特に私たちが力を入れているのは,究極のアクティブ・ラーニングとも言える学生提案型授業と呼ばれるものです。この一連の科目では,学生自身がテーマを決めて,学生自身が授業を行うことになっていまして,中にはシラバスを学生に公募している科目もあります。
続いて正課外活動についてです。学生の主体的学びの向上にとって正課外活動が重要であるのは現在でも変わりありません。そこで新たな方針を三つ策定して,その方針の下,多様な活躍の場をつくり出しています。さらに,全学生へのアクティビティーの波及効果を狙って,学生リーダー組織「D´*Light」をつくりました。そこで2割の学生を組織して,膨大な中間層へ好影響を与えようと頑張っています。
更にもう一つ強調しておきたいのが,大学間連携による学生の主体的学びの場の創造です。これはチームAP合宿でも今後の課題として強調されたものでありますけれど,私たちはこれを短大フォーラムという場をつくって実現をしています。短大フォーラムというのは,全国の短大の学生,教職員が交流する場です。2016年度に初めて開催して,その後,発展しながら現在に至っています。
続いて,学修成果の可視化についてです。私たちはディプロマ・ポリシーを核とした可視化を行っているのですが,この点で私たちの可視化は標準モデルと言えるのではないかと考えています。
まず,ディプロマ・ポリシーを分野ごとの目標であるミドルレベル・ディプロマ・ポリシーへと具体化します。更にミドルレベル・ディプロマ・ポリシーをその分野に属する科目の到達目標へと具体化をしていく。このようにして到達目標を分解します。次に評価ですが,まず科目の到達目標の達成度を数値化します。そして,それを集約することによってミドルレベル・ディプロマ・ポリシーの達成度を数値化します。更にそれを集約することによってディプロマ・ポリシーの達成度も数値化する。こういう到達目標の分解と評価の総合によってディプロマ・ポリシーを可視化するということを行っています。それを実際にシステム化したものが,私たちが愛称でMe-L(ミーエル)と呼んでいるシステムです。
以上が標準モデルの範囲内の話ですが,標準モデルとは呼べない,あるいは標準モデルを超えた取組を二つ紹介させていただきます。一つは学修成果の可視化を何に使うのかということに関してですが,私たちは,到達目標/評価体系自体の改善のPDCAサイクルを回すために使っています。その際,難しいのは,つくった到達目標/評価体系がいいのか悪いのかをどう評価したらいいのかです。これについては確かに標準と呼べるものはないと思いますが,私たちはトライアルとしてディプロマ・ポリシーの各項目が独立した評価項目として機能しているかどうかを評価基準に置きました。更に具体的に言いますと,数値目標としてディプロマ・ポリシーの各項目の達成度間の相関係数が0.6未満になることを目標としました。このような目標が挙げられるようになったのは,Me-Lの構築によってディプロマ・ポリシーの達成度が数値として表示されるようになったからです。実際に,この数値を基に改革するという,2年サイクルの教育改革を今展開している最中です。
もう一つの標準モデルを超えた取組として,学修成果の可視化自体の改良があります。現在のMe-Lによるディプロマ・ポリシーの達成度評価は,一言で言うと分析的評価です。ディプロマ・ポリシーの各項目を,大体140の要素の平均として評価しています。したがって,突出した特徴を拾い出すという点では不得意です。そこで,ディプロマ・ポリシーを分解せずに直接評価しようじゃないか。要は分析的方法と相補的な関係にある全体的評価を援用していこうということです。そのためにつくったのがポートフォリオ・システムです。学生はディプロマ・ポリシーと関連した目標を設定します。そして,その目標達成のエビデンスを,写真をベースに集めてポートフォリオを作成します。そのポートフォリオを発表し,それを評価するということです。
今後,分析的評価と直接的評価あるいは全体的評価,これのハイブリッド評価をMe-Lバージョン2に実装していくということが課題になります。
以上です。ありがとうございました。

【永田分科会長】 相場先生,ありがとうございました。 それでは,委員の先生方から御質問や御意見をお伺いしたいと思います。 それでは,清水委員,どうぞ。

【清水委員】 茨城大学にお聞きしたいのですが,4ページ,各学年の学習達成度で4年生になりますと,急激に達成度が上がっていますよね。4年生になりますと,履修科目が少なくなって,卒業研究や卒業論文が中心になってくると思います。社会に出ても課題解決力が3年後も評価されているということは,卒業論文の影響が非常に強いと思います。逆に言いますと,1,2年生はその達成度が低いですが,これは科目を多く履修しなくてはいけない。つまり,カリキュラムが密になっている影響もあるのではないかと思っていますが,その辺の分析はいかがでしょうか。

【茨城大学】 なかなか難しいところですが,一つは初学年の場合,目的意識がまだはっきりしてないところがあるのではないかと思っております。卒業論文が始まると,自分は将来に向けてどのようなことをきちんと勉強しようかということをかなり意識的になっている状況ですが,初学年の頃においては,なかなかそこまではっきりと明確な意識ができていない。全般的に勉強はするけれども,もう少し深く踏み込むというところまで行ってないと見ております。もちろん,科目数といった原因もあるかもしれません。

【清水委員】 ありがとうございます。やはり大学教育は1,2年の初年次の教育が非常に重要であるし,課題が多いと結果を見て思いました。以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございました。髙倉委員,どうぞ。

【髙倉委員】 茨城大学にお尋ねします。スライドの6に評価について,評価を可視化,数値化して,どう評価するかというのが一番大変だと思います。ですから,数値,評価をするに当たっての基準は持たれているんですか。

【茨城大学】 評価というのは学生の自己達成度の評価でございます。学生たちがどのぐらい,それぞれの項目において達成したかということを調べております。

【髙倉委員】 すると,自己申告みたいなものということでしょうか。

【茨城大学】 はい。

【髙倉委員】 そういうことですか。分かりました。ありがとうございました。

【永田分科会長】 それでは鈴木委員,どうぞ。

【鈴木委員】 ありがとうございます。茨城大学に御質問があります。アドバイザリーボードを外部に委託されているかと思います。アドバイザリーボードの構成は9ページに「地域の方々による」となっていますが,どのような方をアドバイザリーボードとして任命されているのか,人数はどの程度いらっしゃるのかをお教えていただきたいと思います。

【茨城大学】 それぞれの学部でアドバイザリーボードというものを設けておりまして,地域の方々,いろいろな企業からの方々を含めて,本学の教育に関するデータをお示しして,いろいろなアドバイスを頂いております。例えば,昨日は理学部のアドバイザリーボードでしたが,大学関係だと埼玉大学名誉教授,地元の酒造会社社長,高校の先生,研究機関の副センター長さんなどにお願いしております。学部ごとにそれぞれです。

【永田分科会長】 ありがとうございました。曄道委員,どうぞ。

【曄道委員】 ありがとうございます。私も茨城大学にお伺いさせていただきます。
5ページにありますような就職先からの学修の達成度を評価する際には,例えばコミュニケーション力は大分差が開いているように思うんですけれども,達成度の概念についてのすり合わせはどの程度行われているのかという点と,3年後の活用度合いに対して,どの程度の卒業生がこれに応じているか,伺えますでしょうか。よろしくお願いいたします。

【茨城大学】 就職先の方々には卒業生を見て評価してもらっております。すり合わせという点ではまだまだ改善の余地があると思っています。コミュニケーション力については英語の能力も含めておりまして,現場においてどのくらい英語を使うかにもよりますが,そういう意味でこの辺の分け方というのももう少し工夫が必要かと思っています。
就職してから3年後の回答率は2割弱になっております。

【曄道委員】 どうもありがとうございます。

【永田分科会長】 どうもありがとうございます。
時間の都合がありますので御質問はここまでといたしまして,もしほかにあれば事務局に御質問をお寄せください。茨城大学及び京都光華女子短期大学部のお二方,ありがとうございました。
それでは,次にガツガツ若手ワーキング「AirBridge」の活動報告ということで,文部科学省若手ワーキンググループからの資料説明の後,質疑応答させていただきます。
それでは,御説明をよろしくお願いいたします。

【池田研究振興局基礎研究振興課係員】 研究振興局の池田と申します。前回に引き続きましてお時間を頂き,ありがとうございます。我々の取組については,前回お話しさせていただいたとおりでございまして,1枚目に前回の資料をお示ししております。
昨今,博士課程支援の流れが強まっている中で,経済的な支援,就職口の確保,そしてコースワークの強化といったハード面の話に加えまして,研究室の環境や研究室にて行われている教育についてもきちんと考えていくべきだと捉えておりまして,特に研究室における教育についての改善の方向性を資料2ページ目にお示ししております。
その後はほぼ御参考ですが,学生も含めまして現場関係者の生の声を聞くヒアリング・ワークショップに関する資料をつけております。
時間も限られておりますので,早速,委員の皆様からの御意見を賜れればと思っておりますので,よろしくお願いいたします。

【永田分科会長】 御質問,あるいは御意見,お伺いいたします。事務局から最終的なヒアリング・ワークショップで得られた感想だけ,簡潔に述べていただけますか。御担当者の感想で結構です。

【池田研究振興局基礎研究振興課係員】 前回は,研究室教育の能力の質保証と,研究室や教員の研究指導の方針と学生の受け取りたい研究のマッチングの相性をどう取っていくかという2段階の取組が必要ではないかということで,ノウハウの共有や研究室の教育研究指導力養成等が評価されてないのではないか,学生目線では研究室選びが本当は大事なのに,なかなかそこの取組が進んでないのではないかといったお話をさせていただきました。
4ページにヒアリング・ワークショップから得られた知見がございます。現場の若手研究者の皆様からも体系的なスキルの養成がなかなか至らず,講義活動ではなくて,研究室における指導についてもある程度ノウハウがないと,手探りの部分がかなり多い。昨今,学生が多様化して徒弟制から開放されている中で,教員の皆様もどういうふうに学生と付き合っていったらいいのかがなかなか見えてこないという声を頂いております。
また,最後のページですけれども,研究指導,研究室運営に関する評価が実施されていないという声が大半で,外部資金の獲得や論文執筆は評価されるが自分がどういった学生を研究室の中で育てたか,研究者として育んだかはなかなか評価されないということが聞こえております。
また,研究室選びにつきましては,一部かもしれませんけれども,特に学部4年生の研究室選びの際に,じゃんけんやあみだくじで研究室が選ばれてしまっていて,どう考えても誰も行きたくないような研究室に無理やりあてがわれてしまうというケースがあります。ただ,研究室教育,研究室の質の保証といった意味では,学生目線で選ばれる研究室・選ばれない研究室というものがあってしかるべきかと思っておりますので,そういった研究室の下限が定められていることによって,誰も行きたくないような研究室に無理やり学生があてがわれてしまっているという現状が課題だという声もございました。以上です。

【永田分科会長】 私の方から一つ質問させていただきます。研究室に入ると研究活動が中心となり,教員も学生も教育プログラムの中に卒業研究や大学院の研究活動とともにコースワークが入っているという認識が薄れると思います。そのような意見はヒアリングの中で出てきましたでしょうか。

【池田研究振興局基礎研究振興課係員】 直接的な回答になるかは分かりませんが,やはり聖域化されてしまっているという,されていることがいいのか悪いのかという議論もあるかと思うのですが,コースワークとは言いつつも,基本的には教員の下で,自分の台所として扱っているので,コースワークとしてはほぼ見なされてないというのも確かであると思っております。
一方で,研究室に所属しなければプログラムを修了できないのかという疑問の声も確かにありまして,行きたくもない研究室に行くぐらいなら研究活動をやらないで,ほかの単位を取って卒業するということをされている大学もあります。修士でもそれをすればよいのではないかといった声も少し聞こえてきたところではございます。ただ一方で,先ほどのお話にもありましたとおり,論文作成時の教育効果が一番高いだろうという声が学生,教員からも上がってきておりますので,いたずらに研究室で論文を書くという活動をないがしろにするということは余りよくないのかと。そうなってくると,やはり研究室での指導をいかにきちんと組織的にフォローしていくかが重要と思っております。

【永田分科会長】 御説明はよく分かります。一方で,社会から求められているのは研究力を身につけることは当たり前で,コースワークから広い視野を身につけてほしいということです。その意味で,いま御紹介された研究室の現場の御意見と社会からの要請が少し隔離しているかもしれません。他の委員からも質問をお受けしたいと思います。それでは,志賀委員,どうぞ。

【志賀委員】 ありがとうございます。私自身は文系でゼミの経験はありますが,研究室は全く経験してないので,若干想像で語ってしまうところがあるんですが,フラットな組織の中で多様な考え方を持っている人たちがお互いに意見を言い合って,その中で化学反応が起こってイノベーションが起こりますよね。シリコンバレー等は,いかに多様な人を集めるかというところだと思っております。今回の報告書にもありましたが,学生が多様化してきて多様な意見が出てくるのに対して,教授陣が自分の考え方と違うということで排除してしまうと,せっかくの多様な意見がボトムアップとして上がってこない。つまり,イノベーションが起こらないということなんですが,そういった閉鎖的,あるいは徒弟制度的な研究室は,改善の方向にあるんでしょうか。若しくは旧態依然の体制が今も続いているということなのか,そのあたりを教えていただければと思います。

【永田分科会長】 まとめてお答えいただいた方がいいと思うので,先に質問をお聞きいたします。それでは,有信委員,どうぞ。

【有信委員】 どうもありがとうございます。資料の最後のページに「どう考えても行きたくない研究室」という表現があって,感覚的にはよく分かるんですが,具体的に言うと,例えば非常に指導が厳しい等,具体的にどんな感じの研究室かということが浮かび上がってきたのであれば教えてほしいです。もう一つ深刻な問題は,やりたい研究があるにもかかわらず,希望する研究室に行けないということで,これと行きたくない研究室とが結びつくという話もあると思います。この辺は何か具体的な例のようなものがあれば教えていただければと思います。以上です。

【永田分科会長】 続きまして,髙宮委員,どうぞ。

【髙宮委員】 ありがとうございます。研究室における,ほかの学生,あるいはTA等々との人間関係について,もしヒアリングの結果がありましたらお教えいただきたいです。教員が指導した場合に,学生にとっては先輩後輩関係のような人間関係ができてきたり,リサーチアシスタント,あるいはTAのような先輩との関係によって学修進度が随分変わるかと思います。そのような意味で,研究室内の人員構成などについて何か御知見がありましたらお教えていただけますと幸いです。

【永田分科会長】 古沢委員,どうぞ。

【古沢委員】 ありがとうございます。私も研究室の配属のことに関心を持ちまして,研究室とのミスマッチ,非常に大事な問題となっているように思います。
大学ごとに様々だと思うんですが,お分かりになる範囲で,希望者が多い場合,面接や成績順ということもあると思いますが,志望の度合い等をどの程度聞いて選定しているのか,お分かりであれば教えていただければと思います。じゃんけんやあみだくじ等ランダムに選ぶというのは少し極端だと思いましたが,これがごく一部なのか,それとも複数見られたのかということもお聞きできればと思います。以上です。

【永田分科会長】 日比谷委員,どうぞ。

【日比谷委員】 資料2ページ目の下半分について質問がございます。「研究指導者として最低限求められる質の担保」という,「最低限」以下が赤になって強調されていますが,そもそも最低限の質担保でいいのかということが一つ目の質問。
二つ目は,ここで担保されなければならないとお考えになっている質がどのようなものであるか,教えていただければと思います。以上です。

【永田分科会長】 それでは,7点ほど質問がありましたけども,簡潔にお答えいただけますか。

【池田研究振興局基礎研究振興課係員】 ありがとうございます。全てキャッチできるかは分かりませんが,順番にお答えさせていただきます。多様性の話で,旧態依然的なところが今少しずつ改善されているかについては,研究者の流動化が進んだ結果,安定したポストを獲得できないという問題はありますけれども,逆に流動化が進んだ結果,外の風が入ってきて,比較的若手の方はそこの意識が高まっているのというのは直感的に感じております。ただ,いずれにしても,そういった昔ながらの考え方からなかなか脱却し切れてないといった問題もあり,博士支援が活発化していく中,博士学生が増えていくという予見に照らしますと,オートノミーに任せていてはなかなか解決できないのではかないかと考えています。
また,行きたくもない研究室というのは具体的にどのようなものか,やりたくない研究であるにもかかわらずといった御質問ですが,こういったものが絶対いい,悪いというのはなかなか判断できませんので,具体的には,学生さんの目線で行きたいところ,行きたくないところを判断していただくべきだと思っています。その中で一つ大事なのは,教員がどういった研究室の教育とか指導方針を持っているかというのが,あらかじめ示されていることだと思っております。パワハラ気質,ネグレクト気質といったところがありますけれども,あえてそのようなところに好んでいく学生もいらっしゃるという中で,研究室に入ってから自分の受けたかった指導を受けられないということのないよう,まずはそこが先に見える化されていることが重要ではないかと思っております。
あとは研究室の中の人間関係につきまして,一つ聞こえてきたのが,特に留学生に関わる話で,定員を埋めるがために学生をとにかく増やしたいという中で,海外の方を呼んだものの,なかなかコミュニケーションが取れないという問題が聞こえてきております。
また,配属のミスマッチについて,希望者の多寡をどのように大学の中で聞いているかは,なかなか我々としてもヒアリングが足りてないところでもありますけれども,じゃんけんというのはかなり聞こえてきております。ただ,最初からじゃんけんするというわけではなくて,まずは成績順で決まっていって,あぶれたときにじゃんけんで決まっていく,最初から完全に学生に任せていた結果,何となく議論が収束していかず,結果じゃんけんでいいやというふうになってしまうということもありました。
最後,最低限の質の担保でよいのかについてはかなり難しいところで,やはり教育については多様性があってしかるべきだと思っている中で,何をもって最低限というかというところはかなり難しいです。さすがにアカハラやそれにほぼ近いようなところを脱却するために最低限としているところで,その先には,学生と教員のマッチングということで,アグレッシブな研究室の教育を志向する教員なのか,かなり自由度の高い研究室なのか等がしっかり見える化されていれば,学生が自分に合った研究指導方針を自分で選んでいくことができるのではないかというふうに考えております。これに関しては,先ほど永田分科会長からコースワーク等々の話もありましたけれども,研究室の中でどういった能力を伸ばすかといったところも教員,研究室のPRにかなりかかっているところかと思います。ですので,産業応用が利く能力を研究室の活動の中で身につけていくべきだと思っている教員がいれば,それをしっかり示していただいて,学生がそこに入っていけばいいですし,とにかく基礎研究・研究をやるんだというところであれば,それをお示しいただいて,そこに学生が行きたければ行くという形が一番いいのではないかと思っております。
担保されなければいけない研究指導の質も,なかなか難しいのですけれども,一つは研究費の獲得や人数のマネジメントが破綻すると,誰も幸せになれないということです。つまり,一時的に大型の研究資金を獲得して,学生や留学生をたくさん採ってきたが,その後,研究資金が切れて,もう誰も面倒を見切れなくなった等,研究室マネジメントの一般的なノウハウですら共有されていないと健全な研究室運営ができないということで,そういったところも最低限の質と捉えればいかがかと思っております。変な回答になってしまったら申し訳ございませんが,以上でございます。

【永田分科会長】 ありがとうございます。若手職員の方々が積極的にこのような研究環境について調べて,意見を提言していこうという,その努力にまずは敬服したいと思います。大変難しい問題で,これからも様々な論点が出てくると思いますので,引き続き検討を進めていただければと思います。
本日の議論で分かったことは,大学全体や学部全体のディプロマ・ポリシーやカリキュラム・ポリシーはあるのですが,個々の研究室はそれをきちんと明示しているかというと,必ずしもそうではないようだということです。良い勉強をさせていただきました。この点は引き続き若手の方々に検討いただきたいと思います。
それでは,次の話題に移りたいと思いますが,これは第10期のメインテーマ,教育と研究を両輪とする高等教育の在り方です。先生方からの御意見も多々頂きまして,いよいよ最終段階になってまいりました。
それでは,審議まとめ(案)について,淵上課長から御説明を頂きます。

【淵上高等教育企画課長】 失礼いたします。資料としては,3-1から3-4までございますけれども,資料3-1-2,審議まとめの溶け込み版に基づき,これまでの審議状況についてまとめた案を御報告申し上げたいと思います。
めくっていただきまして,目次がございますけれども,最初の1番,2番については,これまでの現状・課題でございますので,ポイントとなります3番,11ページからの今後の「教育」と「研究」を両輪とする高等教育の活性化に向けた方向性について御説明を申し上げます。
11ページでございますけれども,(1)といたしまして,教育と研究を両輪とするバランスの明確化ということが述べられてございます。このバランスの明確化の主体としては,最初の丸で大学としてのバランスの明確化を掲げ,これを構成員一人一人が共有していくことが大事だということを述べた上で,次の丸で学部・研究科の組織,あるいは教員個人の特性,ミッションに応じたバランスの明確化といったようなこと,そして,それを踏まえた組織の評価,教員評価につなげていくということが述べられてございます。
また,教員における教育と研究のバランス,あるいはエフォートの明確化という観点から,ティーチング・プロフェッサー,リサーチ・プロフェッサーなどの仕組みの導入についても提言をしているところでございます。
続きまして,12ページでございます。大学教育のニューノーマルに向けて,コロナの影響で大学教育が大きく生まれ変わろうとしているということを述べた上で,中段から今こそ学修者本位の教育を実現すべく,授業科目の精選・統合,あるいは履修する科目数の大胆な絞り込みを進めて,一つ一つの科目に学生も教員も共に注力することを求めたいということを述べてございます。
12ページの一番下の丸でございますけども,オンラインと対面の効果的な組合せにより,学生と教員,学生と学生,学生とTAが共に考え,双方向で徹底的にディスカッションするといった学修スタイルへの転換も求められております。
めくっていただきまして,13ページでございます。二つ目の丸でございますけれども,新たなニューノーマル時代の大学教育にふさわしいハイブリッドによる教育方法については,一人一人の教員の工夫だけではなくて,新たな知見の共有,あるいは教育手法の開発も必要だということが述べられてございます。
ニューノーマルに対応した国際交流の観点では,オンライン留学の可能性を述べた上で,世界的なマイクロクレデンシャルという部分的学修の動きの中で,デジタル学修履歴証明書の重要性が増しているということも述べられてございます。
また,次の丸で留学生の受入れについて,国際的な学生の獲得競争が既に始まっている中で,日本ならではの大学の魅力を示していくようなことを模索する必要があると述べられてございます。
13ページの下からは,教育と研究を一体とした教育の在り方,人材育成の在り方ということが述べられております。まず学士課程においては,14ページになりますけれども,組織的かつ体系的な教育課程の中での学びが重要とした上で,DPとカリキュラム・ポリシーの接合,カリキュラム・ポリシーの実質化について述べられてございます。
中段三つ目の丸からは大学院教育,大学院生への教育という観点で,4行目にございますが,研究室での研究活動に閉じた限定的な学びだけではなくて,体系的な履修,あるいは専門的知識を活用・応用する能力を培うということが可能なコースワークの充実にも触れられてございます。
研究指導におきましても,研究者という側面と学生としての側面,その両方をきちんとにらんだ指導が必要だということ。
それから,学生中心の教育改革に向けてということで教学マネジメント指針の徹底を述べた上で,15ページに,教育課程の編成・実施プロセスにおいて,教員相互が積極的に関わるような仕組みの導入ということも述べてございます。特定の授業科目あるいは科目群において,研究ディシプリンが異なる教員によるチーム・ティーチング,あるいは教員とTAによるチーム・ティーチングなどを述べた上で,これらの科目群全体を統括する責任者,あるいは部署を設け,これらがばらばらにならないような仕掛けについても述べているところでございます。
それから二つ丸を飛ばしまして,学生中心の教育改革に向けてということで細分化された事業科目の統合ですとか,学事暦の柔軟な運用による授業科目の複数回実施などを提案してございます。また,FDの実施においてということで,FDに教育研究活動を支える事務職員の参加や,さらには学生参加型のFDの提案もなされているところでございます。
15ページの下からは学生を通じた教育研究機能の活性化ということで,TA,あるいはRAの育成,活用ということが述べられてございます。TA制度については,その本格的な活用ということで,適正な対価を前提とした様々な関わりをより積極的に促していくようなこと。このことによって,二つ目の丸でございますが,教員でなければ担うことができない役割に重点的にエフォートを投じることも可能となるということが述べられてございます。
また,次の丸でTAの積極的な活用というのは,プレFDの役割を持つのみならず,将来の教育職への重要なトレーニングに加えて,社会に出て指導的な役割を果たしていくためのよい訓練ともなるという意義も述べられているところでございます。加えてSAの活用も述べた上で,次の丸ではRAの活用ということで,RA制度をより効果的に活用するということで,こちらでも適正な対価が支払われることを前提に,学生が研究能力を身につける機会を推進していくということが述べられてございます。
17ページの頭には,TA,RAが担うこうした役割の明確化,また,ふさわしい処遇の改善ということが述べられてございます。
17ページ,(4)では,教育研究を担う中核的な役割となります大学教職員の在り方ということで,教員の質保証に取り組むことが重要であるということ述べた上で,大学教員の流動性とダイバーシティーの確保ということが述べられてございます。
ダイバーシティーの確保という観点で教員採用のプロセスで求める教員像を明らかにすることですとか,エフォートの明示ということが述べられてございます。
又は次の丸ではテニュアトラック制のさらなる拡大ということで,この制度が恒常的な仕組みとして定着することが望まれるということ。また,テニュアトラック制の審査プロセスの理念が業績評価のプロセスにおいても適用されるというようなことが述べられてございます。
最後の丸は様々な人事給与マネジメントの改革の必要性も述べられているところでございます。
18ページは教員評価の実質化でございます。最初の丸で,教員の流動性が高まると,おのずと採用プロセスの審査が増え,評価を踏まえた教員自らの能力向上が行われていくであろうということを述べた上で,シニア教員についての定期的な業績の公正かつ厳格な評価の必要性ということが述べられてございます。
なお,教員評価に当たっては,研究業績のみならず,教育業績など多角的に見るべきこと,あるいは様々な方からの評価ということで,多角的かつ多面的な評価の必要性が言われてございます。また,内部質保証としての教員評価ということで,これらの評価が教育の質に関わっていくことの必要性が述べられてございます。
19ページは,教員評価について更に深く述べた上で,中段からは教職協働の推進ということが述べられてございます。教員中心型の大学運営から,組織マネジメントの改革ということへの転換を求めております。近年,教職協働の考え方が浸透しつつあり,URA,あるいは様々な専門職人材の育成と配置が進んでいます。次の丸で各大学のマネジメントに当たって,事務職員,技術職員,URAなどの果たすべき役割やその重要性を理解した上で,組織マネジメントの転換を図っていくということが述べられてございます。
専門職について,それぞれの役割を再定義した上で活用していこうということが述べられてございます。20ページからは具体的な高度専門職人材として,例えばアドミッション・オフィサーの必要性か,技術職員やURAのさらなる高度化,また技術職員等の高度専門職人材の活用が述べられてございます。
最後の丸では,ポスドクの役割についても述べられているところでございます。
21ページが組織マネジメントの確立ということで,時間のマネジメントが必要であるということを述べた上で,次の丸で出発点として教員が担う業務の抽出,教員でなければ担うことができない業務を明確にする必要があるということが述べられてございます。
22ページ,組織マネジメントの重要性ということで,三つ目の丸でございます。大学ビジョンの提示,その共有ということが述べられた上で,次の丸でございますが,大学には様々な視点があり,学生本位,個性・特色の明確化,構成員重視,社会への貢献・調和といった観点を一層重視した上で,多面的にステークホルダーに責任を果たしていくというマネジメントの必要性が述べられてございます。
また,学内のみならず学外者も参画するといったダイバーシティーマネジメントや,一人一人の教職員がそれぞれマネジメントに関する重要性を認識していくという人材マネジメントに取り組むことも述べられてございます。
23ページには,組織マネジメントを支えるIR体制の構築ということで,二つ目の丸で組織マネジメントを成功させるためのIRを基盤として確立することの必要性,そしてIRで分析した内容について積極的に情報公開,広報していくということの重要性も述べられてございます。
最後に,大学運営を担う事務職員の高度化ということで,これは前回の御議論を踏まえて,独立した項目を立てさせていただいております。これまでも述べてきてございますけれども,事務職員の役割を明確に位置づけ直すということと,名称を含めて見直すことが必要ではないかという提言。また,23ページの最後の丸には,事務職員の役割として,管理運営のみならず,学生と教員をつなぐハブとしての機能といったようなことも提案されているところでございます。
24ページ,最後は,事務職員のさらなる能力向上の必要性が述べられてございます。
「終わりに」ということで,25ページ,特に四つ目の丸でございますけれども,様々なマネジメントが今回提案されております。時間のマネジメントですとか,人材マネジメント等のマネジメントをそれぞれで行うだけではなく,それを組み合わせることで全体を俯瞰(ふかん)した組織マネジメントに取り組むことが必要であるということが述べられてございます。
以上,最後のまとめに向けて最終的な御審議を賜れればと思います。御説明は以上でございます。

【永田分科会長】 見え消し版も御用意されていると思いますが,御議論を経たまとめを,事務局から御説明いただきました。御質問あるいは御意見をお伺いします。まず,河田委員,どうぞ。

【河田委員】 ありがとうございます。とても読みやすく,そして,特にいいと思うのは,事務職員の役割が明確化されており,教職協働ということがはっきり述べられていることです。最初の議題でもう1大学紹介していただきたいなと思っていた,大阪の追手門学院大学はアサーティブ入試で,職員の方々が推薦入試の面接をしておられます。多くの大学では,推薦入試は教員が面接しなければならないと考えておられるが,そうではない。実際に文部科学省,日本学術振興会,APの委員の方と一緒に訪問して,その実態を見させていただき,入学した学生諸君を面接したのですが,非常に目的意識が高いし,しっかりしている。アメリカ等の大学では入試も職員の方が実施しています。だから,先生方の研究,教育の時間を確保するためにも,職員の方が入試に関わることも可能ではないか,そのような1節をこのまとめのどこにどう入れたらいいのか,お考えいただきたいというのが私の意見そして願望でございます。以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
それでは,村田委員,どうぞ。

【村田委員】 ありがとうございました。非常によくまとめられていると思います。特に河田委員もおっしゃいましたように,職員の役割を強調されたのと,コロナ後のことをかなり取り入れているので,非常に読みやすく,よくまとまっているなと思っております。
ただ1点だけ,6ページ,ゼミや大学院の研究室活動は特に日本にとって重要なので,強調されているわけですが,そこにフンボルト主義という言葉が出てきています。一方で,11ページでは,先ほど事務局からも説明がありましたように,ティーチング・プロフェッサーとリサーチ・プロフェッサーを区別している。これは少しフンボルト主義とは異なる発想です。教育と研究の両輪といったときに,このフンボルト主義をどう捉えるのかがあやふやになっています。このままではフンボルト主義をそのまま引き継ぐという捉え方になりかねないので,例えばゼミナール研究室を強調するとしても,そこにフンボルト主義という言葉を入れずにおいた方がいいような気もいたします。これは私だけの意見かもしれませんが,一番理念のところですので,非常に重要だと思いました。以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。この部分は,フンボルト主義の是非が論点ではなく,既に共有されている前提があるという記述になっています。ここに先ほど村田委員がおっしゃったような現代的なセンスをどう整合させるかということですので,フンボルト主義という単語は入れなくてもよいと思います。検討させていただきます。小林委員,どうぞ。

【小林委員】 小林でございます。私は,大きな点一つと個別の論点の二つ,意見を申し上げたいと思います。
大きな点については,村田委員の御意見とかなり関連しますが,「はじめに」で,なぜ議論が重要かというところの説明がまだ足りないのではないかと考えております。これまで高等教育政策でこの問題が取り上げられてこなかったということが最後に書かれていますが,それに至るまでの経緯をもう少し書かないと,なぜこの問題を取り上げるかの重要性が伝わらないと考えています。
初めに教育基本法,その次が「学士課程教育の構築に向けて(答申)」(以下,「学士課程答申」という。)になり,その間のことが全く書かれていません。学生が変わってきて,研究だけではなく大学教育が非常に重要になってきたということで議論が進められてきましたが,それが「我が国の高等教育の将来像(答申)」(以下,「将来像答申」という。),学士課程答申,「新たな未来を築くための大学養育の質的転換に向けて~生涯学び続け,主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)」(以下,「質的転換答申」という。),そして「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」(以下,「グランドデザイン答申」という。),「教学マネジメント指針」という流れになっています。これらは教育を重要視していく一つの流れとしてあるわけですが,研究との関係は余り考えられないで進んできたのも事実で,その辺りのことをどう考えるかをもう少し書く必要があると思います。
それに対して原案に書かれていることは,研究は研究で進められてきたということで,大学院部会や総合科学技術イノベーション会議での議論というのが書かれていますが,これは逆に言えば,大学分科会の議論とは余り関係のないところで進められてきたというのが正確な見方だと考えています。すると,研究と教育は,政策の議論の中で全く分離されて議論が進行してきたということで,改めてこの問題を考え直さなければいけないというのが大きな流れではなかったかと思います。ですから,「はじめに」でその辺りのことをもう少し丁寧に書いていただきたいと思います。
個別の議論に関して,一つは,TAの重要性を強調していただいたのは非常に有り難いのですが,これはコロナ禍でますます重要になってきています。というのは,オンライン教育は,教員だけではなく,学生も多くの課題を出されたりして,非常に負担が増えているわけですけれど,教員のサポート体制がこれからますます重要になってくる。その場合,TAが非常に大きな役割を果たすと考えています。例えば課題に対して,教員がきちんとフィードバックをしなければ,学生は課題を出して,どのような反応があったか全く分からないというような状況に置かれてしまうという問題があります。アメリカの大学では,フィードバックしてきちんとコメントして返すということはTAの役割です。コロナ禍でますますTAが重要になってくるということを入れていただきたいと思います。
もう一つ,IRの基本的な考え方として,エビデンスに基づいて情報収集して学内で共有し,それに基づいて合意形成をしていくというところが重要で,その辺りのことをもう少し書き加えていただきたいということです。今日御発表のあった,茨城大学,京都光華女子短期大学は,非常に先進的なIR活動をされているところなので,そのような例も参考にしてIRの重要性をもう少し加えていただければと思います。以上です。ありがとうございました。

【永田分科会長】 ありがとうございます。先ほどの村田委員の踏み込んだ御意見を導き出すための質問をはじめに書くというのが恐らく小林委員のお考えです。その質問は実は「はじめに」の次の「検討の基本的な考え方について」の中で述べていますが,なぜそういう基本的な考え方をしたかを「はじめに」に載せたいということだと思います。思い出していただくと,このテーマでの最初の議論は第1回の本分科会で三島委員と私から,問題は教員の在り方ではないかということでした。それは教員が,教育における研究の位置づけをどう捉えているかが疑問だという点と,学生,特に大学院生は研究者でもあるという,この二つの視点でした。大学は研究と教育が両輪で初めて成り立っているけれども,どちらかの視点に偏るとよくないということで議論を始めたわけですから,何とか簡潔に,意図が通じるように修正したいと思います。 髙倉委員,どうぞ。

【髙倉委員】 ありがとうございます。働き方に関する課題については,このまとめの中で,非常に分かりやすく,具体的に提示されていると思います。任期付教員の課題についてヒアリングをいたしましたので,働き方の観点から意見を申し上げたいと思います。
任期付教員の職務分担は任期なし教員と変わらない場合も多く,任期なしの職に就くまで食べていけない程度の給料であるなど,労働条件の違いなどによって安心して研究できるような状況にないという声を頂いております。研究分野においても,競争的資金への様々な制約や各種報告の義務等によって疲弊感が蔓延(まんえん)し,短期的に成果を出しやすい分野への注力が見られるものの表面的な領域に偏りがちな傾向にあると思っています。人材の流動化による教育研究現場の活性化,多様な経験を通じた若手教員,研究者の育成を念頭に,若手教員がしっかりと基礎研究ができる体制づくりを推進していただきたいと思います。
その上で資料の3-2の2ページに組織マネジメントの推進について記載があります。教員が携わっている管理運営業務の見直し等が重要であるという指摘がありますので,業務を担う人材の育成に配慮した上で煩雑な事務作業の見直しなど,実効性のある取組をお願いしたいと思っています。以上であります。

【永田分科会長】 ありがとうございます。任期制については,教員のみならず,職員も同じようなことが起こるので,教職員全般として考えるべきと思います。
有信委員,どうぞ。

【有信委員】 ありがとうございます。最初の河田委員,村田委員の意見とほぼ同じ意見と,もう一つ簡単な御指摘を申し上げます。
今回,教職協働や事務職員についてしっかり書き込んでいただいたのはよかったと思います。10ページの大学の管理運営の中で,事務職員の役割の重要度が書いてありますが,例えば技術職員等は後で書かれてありますような事務職員,URAという明確な区分けも書いておりません。全てを書きなさいということではありませんが,後ろの教職協働とか事務職員に関する記述につながるような書き方にしていただいた方がいいかと思います。
また,3ページで,「さらに持続的な人材育成とイノベーションを生み出していくためにも」と書いてありますけども,「さらに人材育成と持続的なイノベーション」というように,持続的な人材育成ではなくて,イノベーションが持続的であるという書き方を御検討いただければと思います。以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。吉岡委員,どうぞ。

【吉岡委員】 吉岡です。一つは,先ほどまでの議論の中であったことですが,大学が持っているビジョンやディプロマ・ポリシー等が大学レベルでは結構言われるようになっていますが,それぞれの学部や学科,更に研究室まで十分に浸透していないので,その部分を最後の方にでも書いた方がいいと思いました。
これも今までの御意見にありましたけれども,構成員としての教職員,特に職員の役割について非常に積極的に書かれたということはよかったと思います。
学生もやはり構成員だということも触れられており,学生の役割も強調できたのではないかと思いますが,今までの議論からもう少し具体的に拾い出してもいいのではないかと思いました。特にカリキュラムへの学生の関与等,学生の主体的な役割が大学全体にとって重要だということは更に強調してもいいと思います。
もう一つ,11ページ,二つ目の丸で挙げられている大学が生み出す知ですが,これはかなり限定的だと私は感じました。応用的な話,分野で言うと科学技術的な貢献が専ら強調されているように読めます。人文社会科学的な価値も大学がつくり出しているということは,ここに入れておいた方がいいと思いました。
また,例えば気候変動等の地球規模の話と地域等の国内問題というように二つに分けられていますけれども,グローバルな問題や地域・国内問題のもっといろいろな事柄に大学は研究や教育を通じて関与しています。ですので,この部分を,もちろん前段の部分では例えばこういうことにも具体的に役に立っているということを書くと同時に,大学の社会貢献の部分は社会的・経済的価値だけではなくて,文化的価値というような記述も入れて,価値をもう少し広く取っておいた方がいいと感じました。以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。そのとおりだと思います。
三村委員,どうぞ。

【三村委員】 どうもありがとうございます。非常によくまとめられていて,今までの議論の中で重要な点は非常にうまく表現されていると思います。
1点だけ,最後の25ページの個々の仕組みだけではなくて,それらを組み合わせることで全体を俯瞰(ふかん)した組織マネジメントに取り組むことが求められるという部分について,これだけ大きないろいろな問題ですから,大学マネジメントの在り方を総体的に変えていくということが非常に重要だと思います。それをどのようにしていくかが次の丸のところに書いてあり,大学の自主的・自律的な変革に向けた検討が必要ということですが,大学と同時に,大学政策や財政的な支援も非常に重要だと思います。もともと日本の大学は職員数が教員の数に比べて少ないということが大きなネックになっていました。職員に大きな役割,あるいは専門的な役割を担っていただくとなると,制度や支援も必要になるのではないか。どのように入れたらいいかを考えて,国の政策としても支援するというようなことをどこかに書くことが必要だと思います。以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。それでは,髙宮委員,どうぞ。

【髙宮委員】 ありがとうございます。今回,教職協働やニューノーマルのことも含めて,大変よくまとまった文章になっており,非常に有り難く感じております。教職協働の問題の議論を通じて,職員の仕事の重要性が改めて認識されたわけですが,仕事の総量を減らしていかないと効率的な大学運営が難しいので,今後ICTによって,大学の様々な事務手続等々の簡略化が大いに必要になってくると思います。これまで各大学はかなり独自にいろいろなシステム開発をしてきたと思うのですが,それに対して文部科学省等が支援して,共同で簡略化,ICT化して事務作業量を減らすサポートのシステムを考えてくださるような方向の提案があってもいいと思いました。仕事を減らす方向に少し御考慮いただけないかと思って提案させていただきました。以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。キャンパスのスマート化という単語で表したつもりでしたが,今年度補正予算におけるICT化の支援の枠組みに加え,それをもっとしっかり推進するべきであるという御意見だと思います。少し書きにくいですが,考えてみたいと思います。金子委員,どうぞ。

【金子委員】 ありがとうございます。この取りまとめ案は大変よくできていると思いますが,率直に言うと,何でも書いてあるという感じがしています。何で教育と研究なんだというところは,実は何かよく分からないのではないか。今まで教育と研究は一緒にやるべきだというのが無条件に思われてきた。具体的に言うと,例えば研究をやっている人でないと,きちんとした授業ができない。研究をやっているからこそいい授業ができる。あるいは,セミナーに教員と学生が参加することによって教育も研究もできるんだということが無条件に何となく信じられていたわけですが,私はこれは正しくないと思います。いい研究者がいい授業をするとは限らないし,いい授業をするために研究成果が高い人が直接やらなければいけないということは必ずしもない。
また,そもそもドイツのゼミナールというのは研究目的の組織で,日本のゼミナールは帰属組織になっています。どこかに帰属しなければいけないから,帰属する。したがって,必ずしも研究テーマによって配分されているわけではない。これは先ほどのガツガツ若手ワーキンググループの発表でも名実に言われてきたところで,私はこのような縦割りの帰属主義の小集団に頼る文化が日本の大学の一種の強みでもあったが,今は非常に大きな制約になっていると思います。私が申し上げたいのは,何で今の時点で教育と研究を問題にしなければいけないのか,これをどのように解決していくかということが課題であるというような一文が必要だと思います。
その意味でもフンボルトという言葉を不用意に使うことは,批判的に考えなければいけないときなので,使い方を考えるべきだと思います。以上です。

【永田分科会長】 今,金子委員が言われたことを,「はじめに」の部分に書き込まないと,なぜ今このテーマを議論しているかというのがはっきり見えないので,うまく工夫します。 清水委員,どうぞ。

【清水委員】 ありがとうございます。取りまとめ案は,職員とともに学生が大学の重要な構成員であるときちんと述べた点を評価したいと思います。
大学によってはスチューデント・アシスタントだけでなくて,コロナ禍等にも対応するためのスチューデント・ドクター(医学部)という制度も確立しているところがありますので,これからは学生が教育だけではなく研究の主役の1人でもなければいけないと感じております。
15ページの四つ目の丸で,授業科目の統合と週複数回実施と書かれていますが,4学期制にすれば週複数回実施が増えて好ましくなると誤解されると思います。週複数回という概念は,本来,設置基準上はなく,正確に言うと,これは週複数日というようにしなければいけない。
あと4学期制を推奨しているように見えますが,日本の単位制度はセメスター単位です。セメスター単位とセメスター制で,この75年間来ているわけで,国際通用性から言うと,4学期制の場合には,クオーター単位に日本の設置基準を変えなければいけません。ここで安易に4学期制を推奨しているように見えるので,4学期制はという記載は削除して,学事暦の運用の仕方によっても週複数日できるといったように修正をお願いしたいと思います。以上です。

【永田分科会長】 了解しました。長谷川委員,どうぞ。

【長谷川委員】 ありがとうございます。職員の高度な能力をみんなでチームをつくって発揮していただきたいという方向はすごくいいと思います。
私が思うに,今までの研究部分,大学院生の養成で,違うことが二つあります。一つは,実際にその分野で研究成果を出すことです。成果を出すことはその研究室の繁栄にもつながるし,お金を取ることにもつながるのでそれが重要視されます。しかし,教育で言うと,同じことができるような人だけつくっていては駄目なので,研究とは何かが分かり,新しい問題を自分で発見して,それを自分で解決する手法も開発できるような人をつくらないといけない。そこの研究とは何かということを伝授するというのが,今まで研究成果を出すことに隠れて,余り明確にはされていなくて,それを教えなければならないということも余りなかったので,そこで大学全体のディプロマ・ポリシーも余り気にされてなかったのではないかと思います。なので,今の分野の現状の研究で研究成果を出せる人をつくるというのと別に,もう少し研究を俯瞰(ふかん)的に見られて,ほかのところにも発展していけるような人材の育成という意味での教育と研究というのを,大学教員の意識についてで書くのか,教育と研究の関係について(2)で書くのか,何かどこかに入れていただけたらいいかと思いました。以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。今回の審議まとめにおいても,教員の役割を再認識すべきではないかということを書きますので,いまの御意見も踏まえて,じっくり考えさせていただきます。
本日はここまでとしますが,ほかに御意見があれば,メール等で事務局に入れていただきたいと思います。今日頂いた御意見,あるいはこれからメールで頂く御意見を最後といたしまして,最終的な総まとめとさせていただき,次回,修正したものをお示しして,ほぼ最終案としたいと思います。ありがとうございました。
それでは次に,魅力ある地方大学の在り方についてということで,内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局の行松次長に御出席を頂いております。内閣官房より簡潔に5分程度で御説明,その後,文部科学省から関連の事項を御説明いただいて,意見交換をさせていただきます。

【淵上高等教育企画課長】 まず,文部科学省から全体の動きについて御報告をいたします。資料の4-1を御覧いただきたいと思います。
資料4-1の左上にございますこの議論は,昨年の「経済財政運営と改革の基本方針2020」(以下,「骨太の方針2020」という。)からスタートしてございます。この骨太の方針2020の中で,地方国立大学を含めた定員増や,地域雇用向けの地元枠の設定等,魅力的な地方大学実現のための改革パッケージを年内に策定するということが盛り込まれたことに端を発してございます。これを踏まえて,同じく夏の「まち・ひと・しごと創生基本方針2020」ですとか,その後の議論を踏まえて内閣官房を中心に,右側にございます,令和2年12月21日の「まち・ひと・しごと総合戦略」の決定につながっております。この昨年末の閣議決定の中で,地方国立大学の特例的な定員増の要件や対象大学の選定方法などについて早急に検討をするべしということになっているわけでございます。
2ページ目でございますが,この定員増に関する今後の流れということで,文部科学省,内閣官房,それぞれ両方の役割を事務的に整理したものを掲げてございます。右側の内閣官房にございます,12月までに御議論いただき取りまとめた検討会議の取りまとめがございます。これを踏まえて,文部科学省の中央教育審議会の大学分科会において,さらなる具体的な要件などについて御審議賜るという関係になっております。
それでは,内閣官房の方からの御説明をお願いいたします。

【行松内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局次長】 内閣官房の行松です。本日は説明の機会を与えていただきまして,ありがとうございます。
資料は4-2-1,4-2-2でございます。4-2-1に基づきまして御説明をさせていただきます。
内閣官房まち・ひと・しごと創生本部の事務局におきましては,地方創生に資する魅力ある地方大学の実現に向けた検討会議を昨年9月から7回にわたって開催しておりまして,昨年12月22日に取りまとめいただいております。この検討会議におきましては,先進的な取組をされております多くの地方国公私立大学からのヒアリングも含めて,多岐にわたる観点から御議論いただきました。大学分科会長,永田先生には,国大協の会長として,また,山梨県立大学の清水学長にもヒアリングに御協力を頂きました。この場を借りて御礼(おんれい)を申し上げます。
また,文部科学省を通じ,大学分科会における魅力ある地方大学の在り方に関するこれまでの御意見についても御紹介をした上で議論が進められたところでございます。
資料4-2-1ですけれども,本検討会議からは,コロナ禍による人口減少スピードの加速化,デジタルトランスフォーメーションの急激な進展によりまして地方大学もグローバル競争にさらされることとなり,大学の存続に関わり得るような,極めて重大な局面を迎えつつあるという危機感の下で,報告書のタイトルにありますように,地方創生に資する魅力ある地方大学の実現というテーマで,その中で例えば大学のガバナンス改革も含めた提言を頂いたものであります。これらの内容について順を追って御説明を申し上げます。
「1.はじめに」でございます。大学の存続は地域全体の課題であって,首長等のアクションが必要であるということや,本当に変わろうとする大学,あるいは大学の中で特区的に改革を進める主体を支援し,地方創生に資する地方大学のモデルをスピード感を持って創出し,広げていくことが提言されております。
具体的に,地方創生に資する地方大学が目指すべき方向性は,2.に示されております。最初に重要なポイントであります①,ニーズオリエンテッドな大学改革を目指すべきという点が挙げられております。人材ニーズ等を踏まえて,他大学との差別化に取り組むことで,選ばれる大学を目指すべきとされております。
それを受けまして②では,地域でのプレゼンスを存分に発揮し,結果として,地元に裨益(ひえき)をさせるという観点から,連携先は地元に限らず追求すべきであることや,大学の持つ知的・人的リソースにより,地域産業の第二創業的なイノベーションや新産業の創出につなげるほか,産学連携により質の高い人材育成を行うこと,地域連携プラットフォームや大学等連携推進法人等の活用によって,民間や国公私立を超えた大学間の連携協働を行うこと等が提言されております。
2ページ目に移りまして,③,ニーズオリエンテッドな大学改革を実現するためのガバナンス改革が必要ではないかということで,異なるバックグラウンドを持つ教員にトップの考え方を浸透させるためのマネジメントの工夫でありますとか,社会の変化やニーズを適切に捉えるために,効果的な民間人材の登用,それを可能にするマネジメント,これは能力や成果に応じた待遇等が例に挙がっておりますけども,そういったことに加えまして,学部・学科間の横並び意識などニーズに応じた大学改革を行うための新陳代謝を阻害する様々な要因からの脱却を行うための大胆な取組が求められております。
地方公共団体や産業界等への期待につきましては,3.のところで,例えば首長のリーダーシップに基づく地域の高等教育機関の将来像のデザインに向けた取組や,産学官の意見交換の機会を恒常的に設けることなどにつきまして御提言を頂いております。
4.といたしまして,国として対応すべき内容について示されているところでございます。
なお,本取りまとめの趣旨が文科省での検討等に反映されるべく本会議を存続し,必要に応じて意見を伝えることとされております。
①といたしまして,地方大学の改革を促すために,デジタルトランスフォーメーションを踏まえた制度運用の在り方を不断に模索することや,地方国立大学に対して,地域への貢献をミッションとして明示をするとともに,運営費交付金に追加配分等の環境整備について検討すること,地方国立大学による地方創生に資する真剣な取組を一層促していくため,大学の裁量で活用できる枠の創設など,運営費交付金の見直しも含めて検討すること等について提言をされております。
続いて3ページ目を御覧くださいませ。②といたしまして,地方国立大学における定員増に関する内容がございます。地方国立大学の定員増につきましては,18歳人口の減少の傾向を踏まえ,地方創生に資するものとして,一定の要件に基づき,審査等を行った上で,極めて限定的で特例的に行う必要性が認められる場合に限るべきではないかとの取りまとめがされております。審査,選定プロセスにつきましては,先ほど淵上課長から資料4-1に基づきまして御説明がありましたので割愛をいたしますが,引き続き文部科学省や中央教育審議会の議論と連携しながら進めていきたいと考えております。
定員増に関しましては,地方国立大学における特例的な定員増を価値あるものとするために,従来の運営費交付金とは切り分けて,質の高い教育研究を行うために必要な経常的支援を行うべきであること,5年程度の時間軸で目標を設定させた上で,中長期的に大学に裁量権を与えるとともに結果責任を問うような包括的かつ結果管理型の契約的な考え方を取り入れるべきであること等が提言されております。
最後に,「5.おわりに」というところで示されておりますとおり,地方を支える拠点として,公立私立大学は重要な役割を果たしていることや,今後さらなる飛躍が期待されていることが盛り込まれているところであります。国公私立を問わず地方大学が地方創生に資する大学を目指して改革を進めて,地方創生を進める駆動力として,更に魅力的に発展するために,本取りまとめをお役立ていただければと考えております。
内閣官房からの御説明は以上であります。ありがとうございます。

【永田分科会長】 ありがとうございました。続いて資料4-3のつくりを説明していただいて,内容は各自に読んでいただくということでお願いいたします。

【淵上高等教育企画課長】 承知しました。既にお送りしてございますので,御覧いただいているという前提でつくりだけ御説明いたします。
本日の議論は大きく六つの視点から整理をさせていただいております。一つ目が地方大学の役割,地方大学を振興する意義をどう考えるかということで,四角の箱の中に,これまでこの分科会で御議論いただいた内容を載せてございまして,次の点線では,今,御報告がございました内閣官房での御議論の状況を載せてございます。そして,この論点について更に深掘りをした方がいいのではないかと考えられる事務局としての論点案というのを載せてございます。
大きな二つ目が魅力ある地方大学とはどういうものかということ。そして三つ目,3ページは魅力ある地方大学を実現するための地域との連携の在り方。四つ目は地方公共団体や産業界などの役割。五つ目が大学が地方創生の取組を進める意義とはどういうものかと。そして六つ目,地方大学振興策と地方国立大学の定員増という論点,という構成になってございます。相互に関連することもあるかと思います。そして最後の6.に関しまして,更に参考資料をつけており,10ページと11ページでございますが,今後の流れということで,先ほども御報告をした資料でございますけども,今後,中央教育審議会での御審議を踏まえた,文部科学省で専門家会議を設けた上で,内閣官房にも随時御意見を伺いながら,最終的に審査をしていくような仕組みにしてはどうかということですとか,11ページについては,具体的に定員増を認めるとなった場合の要件としてどのようなものが必要かといったイメージ案を載せさせております。資料の説明は以上でございます。

【永田分科会長】 ありがとうございます。まち・ひと・しごと創生本部からこのような提案が今出てきているという状況の中で,どうすればベストで高等教育が展開できるかという観点から定員増を認める要件について考えるということが求められています。
本日は,まち・ひと・しごと創生本部の事務局からいらっしゃっていますので質問をお受けしたいと思います。意見というよりは取りまとめの内容について,御質問をお受けしたいと思います。山田委員,どうぞ。

【山田委員】 ありがとうございます。地方創生に資する地方大学の実現に向けた検討会議が非常にすばらしいものを取りまとめていただいたと思います。その中でやはり気になりますのは,地方の衰退と苦境はパラレルということが本当に重要だというふうに思っておりまして,地域連携プラットフォームを中心とした地方高等教育の将来デザインが重要ではないかと思います。地域の地方創生計画と高等教育の将来デザインがうまくマッチしていく形になる必要があると思いますが,ここに地域の合意であるデザインの話が全くないという点で,地域のデザインの話と国の対応等はどのように連携を図っていくのかについて,伺いたいです。
また,地域といっても,県境等いろいろと超えていくんだろうという話になってくると思います。例えば,私はこの前,美作の大学に行ってきましたが,高知県のエッセンシャルワーカーをたくさんつくっている。だから,高知県の知事がわざわざ講義まで行っている。そういった面で地域連携,地方大学の連携についてはどう考えているのか,お話を伺いたいと思います。

【永田分科会長】 行松次長,どうぞお答えいただけますでしょうか。

【行松内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局次長】 ありがとうございます。地方の将来デザインとの連携という意味では,この提言の中で,正に首長と大学との対話,その中で,この提言でも強調されておりますのは,いかに地域のニーズを把握し,どう捉えていくかということだと考えております。従いまして,その上で地方をどのように活性化していくかという自治体のプランの中で大学をどう活用していくかということをしっかり議論していただくということが必要であると提言されているところと承知をしております。

【永田分科会長】 今,山田委員がおっしゃった点を我々の方から積極的に申し入れていくことは可能かと思っております。こうしたら我が国の高等教育はベストになるという要件設定を文部科学省が担い,中央教育審議会が意見を求められることになるからです。渡邉委員,どうぞ。

【渡邉委員】 どうもありがとうございます。質問の前に少し感想を述べさせていただきたいと思います。検討会議の提言内容は地方大学にとって大変厳しい環境認識に立つものだと思いますけれども,結構現実に照らした形で,そういったものを踏まえた内容だと受け止めたいと思いました。その上で正面から受け止めていく観点でも,地方大学の個性を際立たせることの重要性,オンリーワンの価値の確立ということを明示してもらったというのは,好事例の共通項を出しながらも,独自性なんだということを書いていただいたのが非常によかったと思います。
あわせて,大学改革の真の経営の実現に向けた覚悟の必要性は,大学組織のマネジメントそのもののことを言っていると思いますが,このオンリーワンの価値の追求のためのマネジメントという位置づけにしていただいたのは非常によかったと思いました。
産学連携で研究人材育成,STEAM教育の重要性については言及していただいているんですが,地域づくりにこれからどう人を引きつけるのかという要素で見ると,内発型の地域づくりをどうするのか,広域連携の推進をどうするのか,地域におけるデジタルトランスフォーメーションをどうするのかという,三つの視点が重要になると思います。今回の中で地域連携プラットフォームをどう推進するのか,価値共創システムにどうするのか,そこに大学が核になってほしいということだと思うんですけれど,そのためには自治体に窓口がないとか,あるいは広域でやろうとしても自治体はどうしても県レベルで物を考えるし,広域連携のためには産業界の経済団体と連携しない限りできないとか,こういう非常にネックになるところがあるんですけれども,そういった人を引きつける地域づくりのための視点から見た要素についてどのようなお考えがあるのかをお聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【永田分科会長】 それでは,この質問で最後ですが,いかがでしょう。

【行松内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局次長】 御質問いただいた点につきましても,これはいろんな工夫の方法がある中で,地域が正にそのニーズがどこにあるのか,更に必要な連携として,この検討会議の中でも地域に裨益(ひえき)するというところの地域とは何かという議論も相当にされたわけですが,いずれにせよ,地域において魅力ある,しかも必要とされる大学をつくっていくための仕組みづくりという意味では,地元だけに限らず,国際的なところも含めて,必要な連携もしていかないといけないという議論でございます。いろんな連携のバリエーションがある中で,少なくともその地域のニーズは何か,そのために地域が大学も含めて提供できるリソースは何か。その中で近隣や広域的な連携というものも模索していく必要があると思いますし,その中で必要な国の支援ということもしっかり考えていくべきであろうと考えております。

【永田分科会長】 規制緩和や法改正が必要な部分も入っていると思うので,我々でいろいろと要件を検討するときに,これを進めるためには同時にこういうところも進める必要もある,という視点は重要ではないかと思いました。
先ほど申し上げましたように,この案件は他から出てきた提案をそしゃくして,我々として地方創生に資する大学をつくるための具体的な要件の検討をしなくてはなりません。そのような観点で本日御説明いただいたことを頭に残しておいていただければと思います。それでは,今回はここまでにさせていただきます。
最後,5番目の案件,第10期の大学分科会の審議状況は,我々がこの2年間やってきたまとめです。今期はまだ開催予定の分科会,あるいは部会がありまして,2月までの間にまだ進めなくてはいけない部分があります。それを待って最終版としますので,本日までの我々の活動のサマリーということで御覧いただいて,不足している事項などあれば御連絡いただければと思います。
それでは,事務局から最後に御挨拶申し上げます。

【奥井高等教育企画課課長補佐】 失礼いたします。活発な御議論を頂きありがとうございました。
次回の大学分科会は第10期の最終回となりまして,2月9日火曜日の14時から16時を予定しております。実施方法等につきましては,追って御連絡をさせていただきます。本日,時間の都合上御発言できなかった内容につきましては事務局までお寄せください。特に教育と研究の審議まとめは別途メールで御案内させていただきますので,よろしくお願いいたします。以上でございます。

【永田分科会長】 委員の先生方,本日はどうもありがとうございました。緊急事態宣言が出ていますけれども,是非とも健やかにお過ごしいただきまして,次回,第10期最終回も是非ともよろしくお願いを申し上げます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――
 

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