大学分科会(第157回) 議事録

1.日時

令和2年11月5日(木曜日)14時~16時

2.場所

WEB会議

3.議題

  1. 認証評価機関の認証について
  2. 高専教育の高度化に向けた設置基準の改正について
  3. 国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議中間とりまとめについて
  4. 地方大学の振興について
  5. 教育と研究を両輪とする高等教育の在り方について
  6. その他

4.出席者

委員

(分科会長)永田恭介分科会長
(副分科会長)村田治,渡邉光一郎の各副分科会長
(委員)有信睦弘,亀山郁夫,志賀俊之,吉岡知哉の各委員
(臨時委員)麻生隆史,安部恵美子,宇山恵子,加登田惠子,金子元久,河田悌一,小林雅之,清水一彦,髙倉明,髙宮いづみ,伹野茂,曄道佳明,長谷川眞理子,福田益和,益戸正樹,松尾清一,三村信男,山田啓二の各委員

文部科学省

(事務局)淵上高等教育企画課長,吉田専門教育課長,堀野国立大学法人支援課長 他

5.議事録


 【永田分科会長】 第157回中教審大学分科会を始めさせていただきます。
 お忙しい中,御出席いただきありがとうございます。今回もコロナ感染症対策のためにウェブ会議とさせていただきます。また, この会議の様子はライブ配信されているということを最初に申し上げて 
 おきます。よろしいでしょうか。
 それでは,議事に入る前に,非常に残念なお知らせを申し上げます。この委員会に限らず,高等教育の世界で一家言を持って貢献いただきました佐藤東洋士委員が去る10月18日に御逝去されまし 
 た。佐藤委員におかれましては,大学分科会で通算7期,14年間にわたり御活躍いただいて,貴重な意見も頂きました。近年では,「教学マネジメント指針」や「2040年に向けた高等教育のグランドデザ 
 イン(答申)」にも多大な御助力を頂きました。謹んで哀悼の意を表したいと思います。
 皆様に御賛同いただけましたら,佐藤東洋士委員の御逝去に黙禱(もくとう)を捧(ささ)げたいと思っておりますが,よろしいでしょうか。御反対はないと思います。
 それでは,すみませんが,各場所で御起立いただきまして,こちらで合図をいたしますので,黙禱(もくとう)に御参加ください。
 それでは,佐藤東洋士委員の御冥福をお祈りして,黙禱(もくとう)。

 ( 黙禱(もくとう) )

 【永田分科会長】 ありがとうございました。御着席ください。それでは早速,会議に入らせていただきたいと思います。
 まず,事務局から連絡事項を含めて御説明いただきたいと思います。

 【奥井高等教育企画課課長補佐】 失礼いたします。
 本日,ウェブ会議及びライブ配信を円滑に行うため,御発言の際は手のマークのボタンを押していただき,分科会長から指名されましたら,御発言をお願いいたします。また,御発言が終わりましたら,    
 再度,手のマークのボタンを押して表示を消していただきますようお願いいたします。また,発言時以外はマイクをミュートにしていただくことなど,御配慮いただけますと有り難く存じます。
 また,会議資料は次第のとおり,事前にメールでお送りしております。なお,資料6につきましては,昨日,直前で差し替えをお送りしておりますので,併せて御確認ください。以上でございます。

 【永田分科会長】 ただいま御説明があったとおりです。
 それでは議事に入らせていただきますが,本日,六つほど議題を用意しております。
 1点目は,認証評価機関の認証について諮問がありましたので,その内容を事務局から御説明いただいた後に質疑応答を行います。
 2点目は,7月の大学分科会で御審議いただきました高等専門学校の設置基準の一部改正,について審議をお願いいたします。
 3点目は,国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議,9月に中間取りまとめが出ておりまして,これを事務局から説明いただいて質疑応答を行います。
 4点目,地方大学の振興という観点で,地方創生に資する魅力ある地方大学の実現に向けた検討会議における議論の状況について,前回に引き続いて議論を行います。
 5点目は今期の大学分科会の主題であります教育と研究を両輪とする高等教育の在り方について,一部取りまとめをしましたので,引き続き最終的な取りまとめに向けて議論を深めたいと思います。
 6点目,その他として,文部科学省の有志の若手職員たちが博士課程学生を中心とした教育研究環境の課題について検討を行っているということなので,参考として若手の意見を本分科会で発表して 
 いただきます。
 よろしいでしょうか。
 それでは,議事に入ります。一つ目,認証評価機関の認証について,専門職高等教育質保証機構から専門職大学院(教育実践分野)の認証評価機関としての申請があり,それを大学分科会にお諮り 
 するものです。具体的な審査については,本分科会のもとに置かれる審査委員会において行い,その審査結果をもって,後日,本分科会で審議を行うということですので,事務局からそれについて説 
 明を頂きます。
 淵上課長,お願いいたします。

 【淵上高等教育企画課長】 高等教育企画課の淵上でございます。資料1を御覧ください。
 1にございますように,一般社団法人専門職高等教育質保証機構より,学校教育法第110条第1項の規定に基づく認証評価機関に係る申請がございましたので,文部科学大臣より中央教育審議会へ 
 諮問を行うというものでございます。
 資料の10ページを御覧いただきたいと存じます。申請のありました一般社団法人専門職高等教育質保証機構の概要は設立目的等々にあるとおりでございますが,10ページの一番下にございますよう 
 に,当該申請機関はビューティビジネス分野の専門職大学院の第三者評価を行う機関として平成24年7月に認証を受けて活動している機構であり,このたび教育実践分野の分野別評価機関としての 
 認証の申請があったものでございます。
 11ページを御覧ください。四つ目の大学評価基準(案)のところにございますけれども,評価基準といたしましては,教育実践大学院の教育活動等の水準の維持及び向上を図るとともに,その個性的で
 多様な発展に資することを目的として,文部科学省の細目省令に定めております規定を踏まえた八つの基準で構成されております。内容としては,教育課程に関することや学修成果に関すること,内
 部質保証に関することなどの八つの基準で構成されているものでございます。
 評価方法につきましては,対象大学が作成する自己点検評価報告書に基づく書面調査,それから訪問調査を通じて大学の状況を把握,分析評価するということを予定しております。
 評価結果については,八つの全ての評価基準を満たしていれば適合していると評価し,一つでも満たさない場合には適合していないという評価となるものでございます。
 当面の評価は,平成29年度に開設されました星槎大学大学院教育実践研究科を対象とする予定でございます。
 これらの申請内容につきましては,先ほど分科会長からお話ございましたように,当分科会の下に設置してございます認証評価機関の認証に関する審査委員会におきまして専門的な調査審議を行う
 こととしており,結果が取りまとまったところで大学分科会に報告を頂くという予定でございます。事務局からの説明は以上でございます。

 【永田分科会長】 ありがとうございました。
 それでは,御質問,御意見ございましたらお受けいたしますが,いかがでしょうか。
 御意見はないようですので,それでは本申請に関わる審査については審査委員会に付託するということにさせていただきます。ありがとうございました。
 次に議題の2番目ですが,高専教育の高度化に向けた設置基準の改正についてということで,事務局から御説明を申し上げます。

 【吉田専門教育課長】 専門教育課長の吉田でございます。 高等専門学校設置基準の一部改正につきまして,資料2-1で御説明を申し上げます。7月15日の大学分科会におきまして,一度,概要を御
 説明させていただいておりますが,改めて簡単に御説明いたします。
 まず1ページ目は,改正の趣旨でございます。Society 5.0など社会の変化の中で,実務経験を有する者,あるいは企業の第一線で活躍する者の高等専門学校教育への参画による実践的な教育が重
 要という観点で,今回,高等専門学校での技術者育成機能の強化を図るための改正というものでございます。
 主な改正の内容は2点でございます。1点目が実務家教員の高専教育への参画の促進でございます。右下に図がございますけれども,高等専門学校の必要専任教員数のうち,これまでは実務の経験 
 を有する専任教員については各学校の判断という形になっておりましたが,実務家教員を積極的に登用できるようにするため,専攻分野における大体5年以上の実務の経験を有し,高度の実務の能
 力を有する,いわゆる実務家教員であること,また,1年につき6単位以上の授業科目を担当すること,教育課程の編成について責任を担うこと。この三つの要件を満たす場合には,必要専任教員数の
 2割の範囲内について,専任教員以外の者であっても,いわゆる専任教員とみなすという形の規定を追加するものでございます。
 2点目が多様なメディアを活用した授業の単位上限の拡大ということでございます。こうした実務家教員の参画を促進するために,デジタル技術を活用した教育が進んでいるわけでおり,高等専門学校 
 におきましては,これまで単位数上限167単位のうち30単位のみが認められていたわけでございますけれども,これを60単位に拡大するものでございます。
 施行期日は公布の日,11月中旬をめどに考えているところでございます。
 具体的な条文が2ページにございます。第8条の2を新規で追加いたしまして,専任教員のみなし規定を追加するという点,また,第18条の2項で30単位を60単位に改正するという内容でございます。
 3ページ,4ページ目が参照条文ですので御参考にしていただき,5ページを御覧ください。先般の7月15日の分科会以降,8月13日から9月11日までパブリックコメントを行った結果でございます。10件,
 御意見を頂戴したところでございます。主な意見といたしましては,例えば三つ目の丸にございますように,高専の校長にも,産業界出身,かつ教育への理解が深い人を登用してほしい,あるいはその 
 下の実務家教員の参画促進によって職業意識の向上につながる,あるいは下から二つ目でございますが,メディアを活用した授業はコンテンツの質向上,理解の深化に繋(つな)がるといった賛同意
 見がございました。また,下から三つ目でございますが,みなし専任教員で置き換えるべきではない,あるいは一番下にあるような少人数の対面授業を増やすべき,そういった慎重な意見も頂いたとこ 
 ろではございます。
 資料2-2がただいま御説明いたしました高等専門学校設置基準の改正についての大臣からの諮問文の内容でございます。
 本日御審議いただきました後,御了承いただく際,答申の案といたしまして資料2-3を御用意しております。説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。


 【永田分科会長】 ありがとうございました。
 それでは,御質問,御意見をお受けいたします。いかがでしょうか。三村委員,どうぞ。

 【三村委員】 質問させていただいてよろしいでしょうか。

 【永田分科会長】 はい,どうぞ。

 【三村委員】 この趣旨には賛成ですけれども,1点,質問させてください。
 改正の内容で丸3に教育課程の編成について責任を担うことという条項があります。教育に参加していただく以上,そういうことをきちんとやっていただくというのは重要だと思うんですが,具体的に教
 育課程の編成について責任を担うというのはどういうようなことをするイメージなのか,そういうことはある程度考えておられるでしょうか。例えば,教育課程を編成するための教員会議への参加とか, 
 あるいはFDなどの企画,それはあると思うんですが,それについてはどういうことを考えておられるか質問したいと思います。

 【吉田専門教育課長】 教育課程編成への参画の在り方については,例えば各高等専門学校における教務主事を中心とした教育課程の編成に関する会議等への参画などが考えられるところでござい
 ます。ここはもちろん,単に会議に参加すれば足りるということではなく,授業科目の内容や方法の改善につながるような実質的な取組を行っていただくことを期待しているということでございます。この 
 点につきましては,施行通知などにもしっかり書き込みまして周知をしてまいりたいと考えております。

 【三村委員】 ありがとうございました。
 教育の改善をするためには教育プログラムの計画や設定の段階での参画というのは非常に意義が大きいと思いますので,よろしくお願いします。

 【永田分科会長】 ありがとうございます。髙倉委員,どうぞ。

 【髙倉委員】今回の設置基準改正により,民間の優れた実務家や企業の第一線で活躍する方々が高等専門教育現場に参画することは,産業界の知見をより有機的に教育へ反映できるものと期待し
 ています。
 その上で1点申し上げます。前回までの議論で取りまとめられた「地域連携プラットフォーム構築に関するガイドライン」では,高等専門学校も参画主体に位置付けられている。ついては,資料2-1の6
 ページなどの「目指すべき姿」の中に,本プラットフォームの参画主体としての役割といった観点についても言及していただきたい。

 【永田分科会長】そのほか,御意見いかがでしょう。 高等専門学校設置基準等の改正に関わる事項は大学分科会の議決をもって中央教育審議会の議決とするということになっておりますので,ここで
 議決を行いたいと思います。
 事務局から定足数の御確認をお願いいたします。

 【奥井高等教育企画課課長補佐】 現在,25名の御出席でございますので,中央教育審議会令第8条第1項に基づく過半数を満たしております。以上です。

 【永田分科会長】 それでは,お諮りいたします。
 先ほど文部科学省の方から説明のあった内容について御了解を頂くということでよろしいでしょうか。御反対の場合には手を挙げる又は御発言いただければと思います。よろしいですか。
 御異論はないとお見受けいたしましたので,お認めいただいたということにさせていただきます。どうもありがとうございました。
 それでは,続きまして3番目の議題,報告ですけれども,国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議の中間取りまとめについて,事務局からの資料説明の後,質疑応答をしたいと思います。
 それでは,事務局,お願いいたします。

 【堀野国立大学法人支援課長】 国立大学法人支援課長の堀野でございます。資料3の1ページ目を御覧ください。昨年の「経済財政運営と改革の基本方針方針2019」(骨太方針2019)の記述ですけれ
 ども,この骨太の方針に基づいて国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議を設置して議論を重ねてきております。
 1ページ目にありますとおり,アンダーラインの部分,国は国立大学との自律的契約関係を再定義し,真の自律的経営に相応(ふさわ)しい法的枠組みの再検討を行う。また,現行の「国立大学法人評 
 価」,「認証評価」及び「重点支援評価」に関し,廃止を含め抜本的な簡素化を図る。それから下の部分で,授業料,学生定員等の弾力化等,新たな自主財源確保を可能とするなどの各種制度整備を 
 早急に行うといった閣議決定がなされております。
 次の2ページ目ですけれども,フューチャー株式会社の金丸さんを座長として,検討会議を月1回のペースで開催しておりまして,9月に中間取りまとめを行いました。
 3ページ目が中間取りまとめの概要でございます。左側の枠,国立大学法人と国との関係(自律的契約関係)とございます。その最初のところに書いてありますけれども,15,6年前に国立大学が法人
 化され,その後の法人化の長所を生かした改革というのは一定程度進んだとはいえ,いまだに国の管理,文部科学省からの管理が行き過ぎではないか。大学内部でも横並びの慣習が残っていて,当 
 初意図したような自律的,個性的な戦略的な経営体への転換というのは道半ばなのではないかという状況認識。それに加えまして,大きな研究大学においては外部資金をどんどん獲得できるように
 なってきておりまして,むしろ,文部科学省の制度が遅れているのではないか,もっと自由に成長できるように規則化してほしい,こういった声も出てきているということで,文部科学省と国立大学法人と
 の新たな関係を再定義する段階に来ているのではないかということでございます。
 二つ目の矢印ですけれども,国が毎年度,財政処置を講ずるに当たって求められる必要な国の関与,それと国立大学法人の自主性,自律性に基づく発展を両立させた形にしていこうといった大枠とし
 ての国立大学法人との国との関係。
 一方で,下の枠にありますように,経営裁量の拡大を可能とする規制緩和。国立大学法人が真の形態となるためには,「経営裁量を拡大できる手段」,新たに拡張した機能による活動が新たな投資を 
 呼び込み,成長し続ける経営モデルを開発していくことが必要だと。国は,国立大学法人が自らの裁量において戦略的・長期的に安定して活用できる資金を確保し,循環拡大することができる仕組み
 を作る,こういった考え方であります。
 右側に具体的な方策ということで,一番上に中期目標・中期計画の在り方とされております。
 この点について,先に4ページ目を御覧いただきたいと思いますが,従来の仕組みというのは文部科学省が各国立大学法人それぞれの中期目標を示す。それに対して,大学は計画を立てる。一個一
 個の大学の活動目標を国が定めて管理するという形を取っていますけれども,右側,新たな自律的契約関係としては,国としては86の国立大学,絶対に求める教育なり研究や社会貢献等,様々な国
 立大学に求める役割というものを一覧として定めて,国立大学法人はその中から自らの大学経営目標に照らして,自身のミッションとして位置づけるものを選択する。その上で,それに対する計画を策
 定するという考え方です。この右側は特に何が違うかというと,文部科学省には国として高等教育に求める政策目標がある。大学も大学として,自らの経営体としての経営目標がある。その両者がお 
 互いに約束して,これは達成しましょうというところを約束するというのが自律的契約関係でありまして,こうした形の中期目標・中期計画の関係に変えていくべきではないかと。その際,約束したことを 
 しっかりやってくれれば,その間に文部科学省があれこれ細かいことを言わないという方向を目指しておりまして,3ページ目に戻っていただきますと,右側の上から二つ目の枠のように,評価の在り方
 については,評価全体を簡素化すると。そして,国立大学法人評価の中で,毎年度の年度評価については廃止をするという方針を出しております。
 それから,内部統制,ガバナンスについての幾つかの項目がございまして,その下に会計制度・会計基準とありますけれども,経営協議会に外部の方に入っていただいて,経営者の方が見ても,国立
 大学の財務諸表は特殊でどう見ればいいかよく分からないと。そうしたことですと,せっかく参画していただいても,貴重な助言が十分に得られない,理解されなければ応援団にもなってもらえないとい
 うことがございまして,国立大学の会計基準を外部の人から見ても分かりやすいものに改善していく。一方で,戦略的に経営をするというのであれば,毎年度使い切りの前提だけでやっているのはなか
 なか難しいと。やっぱり戦略的に財源を積み立てていくような仕組みを会計制度・会計基準の中にもつくっていくべきではないか。
 それから,その下の枠で財源を確保していくための規制緩和として大学債発行の要件を拡大し,6月に政令改正をして,第1号の東京大学の大学債の発行も既に終わっているということでございます。
 その他,その下に定員管理の在り方,収容定員の総数が増えない範囲で学部・学科の再編を行うような場合には手続を簡素化してよいのではないか。あるいは,優秀な留学生確保のための定員管
 理の弾力化,あるいは留学生の授業料設定の在り方の柔軟化,こういったことについても検討していくべきではないかといった提言が行われたところでございます。
 引き続き中間まとめ以降も議論をいたしまして,年内を目途に取りまとめをしたいと考えておりますので,引き続き御指導よろしくお願いいたします。
 説明は以上でございます。

 【永田分科会長】 御説明のとおりです。それでは質疑応答並びに意見があればお受けいたしますが,いかがでしょうか。有信委員,どうぞ。

 【有信委員】 ありがとうございます。
 非常に重要な議論が行われていると思っています。特に年度評価廃止とか,具体的な内容も盛り込まれていていいのではないかと思うのですが,私が一番気になっているのは会計制度・会計基準の問題で, 
 要するに税金を使うという建前から,国立大学法人会計では収支均衡という会計原則があって,この収支均衡の会計原則があるが故に,例えば減価償却費が費用計上できないとか,様々な教育コスト,研究コ  
 ストを積み上げたとしても,結局,総コストが収入に見合うという形で何かわけ分からない格好になってしまうわけですね。これはとても経営という行為に結びつかないと常々思っているんですけれども,会計基
 準の見直しって,相当難しいと思うんですが,展望はあるのでしょうかというのが質問です。

 【永田分科会長】 堀野課長,お願いします。

 【堀野国立大学法人支援課長】 御質問ありがとうございます。
 ここの中間取りまとめでは大きな方向性だけ御議論いただきまして,別途,会計士等が集まる専門の有識者会議で議論を進めております。今の財務諸表では大学全体のコストが見えていない部分についても, 
 法人化前から引き継いでいる施設,設備分もあれば,そうでないものもありますけれども,そうした部分の減価償却費など,表に余りはっきり見える形になっていないコストも多々ございます。そのような部分が 
 実際,民間企業の方から見たときに分かりにくいという御指摘を受けておりますので,財務諸表の書き方そのものを,見えない減価償却費のようなものも見えるようにする,あるいは新たにこれから買っていく設
 備等につきまして,それを計画的に更新できるように引き当てていくための枠を設ける等といったことを現在,具体的に議論を進めておりまして,第4期のスタートに間に合うように,できる限り会計基準を整理し 
 ていきたいと思っています。別途,専門家会議で今,詳しく検討しております。

 【有信委員】 減価償却費の話は前々から言われていることで,個別には問題なんだけど,一番大本になっている問題は収支均衡という考え方だと思うんですね。だから,是非よろしくお願いします。

 【永田分科会長】 会計システムが分かりにくいという指摘は法人化当初から出ている課題です。おっしゃるとおりで,慎重に検討を進めていただきたいと思います。
 それでは,小林委員,どうぞ。

 【小林委員】 小林でございます。
 4ページ目の自律的契約関係というのは新しく出されているわけですけれども,これについて少しお伺いしたいのですが,今までは各国立大学が目標をつくって,それと文部科学省と協議して,中期目標・中期
 計画という形になっていると思いますが,これをあらかじめ国立大学法人に求める役割機能というのを一覧として示すということになっているわけですね。そうだとすると,これが非常に重要なことになると思うの
 ですが,2005年の中教審答申では,御存じのような機能別分化ということで七つの類型が出されたわけですが,このときには各大学がそれ以外の機能類型を出してもいいというようなことで進められてきたわけ
 です。そのこととの関連でお伺いしたいわけですけれども,教育,研究,社会貢献,それぞれについて,どの程度,大学が今,自由に提案できるのかついて少しお伺いしたいと思います。
 それからもう一つは,これが非常に重要だと思いますけれども,一体どのような形でこれを作成されるのかということについての見通しをお伺いしたいと思います。以上です。

 【永田分科会長】 堀野課長,どうぞ。

 【堀野国立大学法人支援課長】 この一覧は正に現在,検討しておりまして,これが30項目になるのか,何項目になるのか,いろいろ議論中ですけれども,基本的には大学がどの項目を選ぶかによって,正に機
 能強化したい部分にバラエティーが出てくるものにしたいと思っております。そういう意味で,書いてみると結構難しくて,抽象度を高めれば高めるほど皆さんが同じものを選びがちになりますし,具体的にすれば 
 するほど細かくなり過ぎて項目が多くなるといったところで難しいですけれども,いろいろ工夫しながら,それぞれ違うタイプの大学が違うタイプの国のミッションを背負っていくというような形で機能強化につな
 がっていくというものにしたいと考えております。
 スケジュールは年内を目途に原案をお示ししないと作業的に間に合わなくなるので,正式には来年の夏に第3期全体の業務の見直し結果と併せて示すべきものですけれども,年内を目途に作業して,事実上の
 作業に取りかかれるようなスケジュールでやりたいと思っております。

 【永田分科会長】 松尾委員,どうぞ。

 【松尾委員】 私は戦略的検討会議には全部出ていませんので,一回,ヒアリングで呼ばれただけですので,議事録でしか確認できないですけれども,たしか自律的契約関係のところは国立大学は運営費交付
 金を頂いている関係で,二つの要素があると考えていて,一つは国立大学のミッションとして必ず果たさないといけないもの,これについては国から基盤的な運営費交付金として交付される。その上で,時代の
 要請に合わせて,今,機能拡張の話があったんですが,ベーシックなファンクションの上に機能を拡張していくと。そのときにこういう指標が使われて,しかもこの部分というのはどうしても運営費交付金との関係
 が あるので,どのように評価をされて,ある意味では競争的というわけではないんですが,どのように評価を受けた上で運営費交付金が交付されるという部分になると思うので,今,示された絵では,そういう  
 ファクターが余り明確ではないんじゃないかという印象を受けたんですね。一方で,多分,運営費交付金の配分ルール等は今,議論されていると思いますので,それとセットで考えられると思うんですけど,その
 辺りのところは堀野課長,どうなっているのか,考え方を知らせてください。お願いします。

 【堀野国立大学法人支援課長】
 今,お話がありましたとおり,第4期の運営費交付金の配分に関しては新たな会議を立ち上げたところです。そして来年6月を目途に結論を出したいと思っておりますけれども,そこでの議題,大きな枠の考え方
 として,運営費交付金について,ベースの最低必要な基盤的な経費を見る部分と教育や研究の内容を評価して配分する部分,国との間の契約関係みたいなものに基づいて配分する部分,こういった三つぐら
 いの考え方で配分するということについてどう考えるかといったような論点がございます。ただ,その際に第3期でやっていたような大学ごとのKPI(Key Performance Indicator)の達成状況に応じた配分ということ
 ですと今と変わらないので,それは見直していこうという方向性ですが,そうでない場合に国と大学との契約に基づいて資金が配分される方法というのはどういうやり方があるのかということを検討会の委員には 
 海外の事情に詳しい専門家の方にも入っていただいておりますので,海外の例も調べながら,今後検討していきたいと思います。

 【松尾委員】 是非その辺りのところを明確にしていただきたいと思います。私自身もこれから国立大学がもし発展していこうと思うと,ベーシックな機能に加えて新たに加える機能というのがやっぱりどんどん大き
 くなっていくんだろうなと。そのときに,きちんと外部資金が取れ,また,公的資金でも,言い方は悪いんですが,競争的といいますか,評価に基づいて交付される部分,こういったものが増えていくと大学として発 
 展していけるのではないかと思いますので,第4期まであと1年半しかないので,そこのところをなるべく早く明確にしていただきたいなというふうに国立大学としては思います。よろしくお願いいたします。

 【永田分科会長】 そのほかいかがでしょうか。
 この案件については大きな議論があると思うのですが,まだ中間まとめの段階ですので,今後の議論を注視していきたいと思います。
 では,また意見交換させていただくということで,今日のところは,一応,御報告までということにさせていただきます。
 それでは4番目ですけれども,地方大学の振興についてということで,事務局から説明をお願いいたします。

 【淵上高等教育企画課長】 高等教育企画課の淵上でございます。資料4-1,4-2,4-3に基づきまして,地方大学の振興に関する御審議をお願いしたいと思います。
 資料4-1は,前回の大学分科会で魅力ある地方大学の在り方に関する御審議いただいた際の主な御意見をまとめたものでございます。
 地方大学を振興する意義という項目につきましては,産業界でも,データサイエンティストを採用するために,わざわざ企業の研究所を都会にもってきているような状況があると。地方の国立大学でこうしたこと
 が学べて,地方に就職するという流れを作ってほしいというようなことや,新型コロナウイルス感染拡大を受けて地方分散の流れができているので,東京の大学に入学するけれども,地元で勉強することができ 
 るようにしてほしいということ。それから,国立大学の定員増を認めるという方針が出てきたのは良いことであるということでございます。
 また,地域の特色を生かすための仕組みといたしまして,地域連携プラットフォームを形成していく上では,産官学金労言の多様な各主体が参画して議論が行われることが望ましいということですとか,地域の 
 個性,産業界・自治体・大学の個性を出していくことが必要といった御意見がございました。
 それから定員増をする分野の考え方といたしましては,STEAMと言っても単純ではなく,大学での教育と社会での要請との間のミスマッチが生じないように,この内容をもう少し明確にしていく必要があるということ。ある
 いは,世界の動きを地域に持ち込む分野と,農業や地域ごとに重要な分野があるので,二つの観点から強化をすることが必要。また,STEAMといってもその地域に必要なSTEAMは何なのかという議論が必要だという
 御意見がございました。
 資料4-2につきましては,内閣府に置かれております地方創生に資する魅力ある地方大学の実現に向けた検討会議の状況でございます。
 次のページに前回の主な意見というのが記載してございます。三つ目の丸,社会の変化やニーズへの対応ということで,先ほどと類似の御意見として,業種・地域によって,技術系の人材育成のニーズは異なるというこ
 と,各大学でどのような教育や地域貢献が求められているのかについてデータに基づいて検討することが重要だということ。あるいは,経営の自由度とインセンティブを与えることが必要であるということ。また,次の丸で
 すが,国・公・私を問わず,大学間での連携は必要であると。その際,行政が間に入ることも必要だという御意見。
 また,地方公共団体や産業界への期待ということで二つ目の丸ですけれども,地域の企業等における実際の雇用を十分にイメージした人材ニーズを示すことも重要である。その上で,求められている人材像を適切に捉
 えた人材育成に大学が取り組むことが必要。また,産学官の取組を進めるに当たって,「大学に貢献を求める」というスタンスではなくて,地方公共団体や産業界からも支出を行うことで取組が長続きする。それぞれお金
 を出し合って取り組んでいくという動きを具体化することが必要だということ。国立大学について,地方公共団体に担当部署がないことが多く,大学も国の方ばかり見ている。地域と国立大学が実質的に協働するための
 体制がそもそも整っていないことが課題であるという御意見。
 地方国立大学のミッションと支援の在り方という観点では,変化する社会との接点がなく,潤沢なリソースを生かしきれていないのが地方国立大学の実情で,それぞれの大学の役割分担やミッションを明確にした上で,
 定員増など付加的なことに取り組み,今あるものや個性を生かすための仕組みなどを作り上げていくことが重要であるという御意見。また,各地域でハブ的な役割を果たす地方国立大学における人材育成に関する新た
 なミッションを考える必要があるという御意見がございます。また,運営費交付金の配分についての御意見もあるところでございます。
 また,取りまとめに向けた考え方といたしまして,二つ目の丸でございます,大学が地域社会・地域経済の活性化にどのように関わっていくのか掘り下げていく必要があるということですとか,三つ目の丸で各大学が特色
 を打ち出すためのチャンスを与えながらも,その特色とは別の部分については中長期的にスリムにしていくという計画とセットで考えるべきではないかという御意見。また,いわゆる全国供給型の大学においては,そこに
 産業が集まってくるようなアイデアも含めて検討すべきであるという御意見がございました。
 この内閣府の有識者会議につきましては次の次のページにございますように,本日,第4回の会議がございます。前回,第3回の御議論の際には,清水委員からも御発表いただくなどして議論が深まっておりますけれど
 も,本日以降も議論を進めまして,年内に取りまとめに向けて議論が行われる予定でございます。
 続きまして,資料4-3でございます。内閣府の有識者会議での議論と並行いたしまして,本大学分科会でも前回から御議論いただいているところで年度内目途の取りまとめを予定しているところでございますけれども, 
 魅力ある地方大学の在り方に関する検討の視点の例として幾つかお示ししております。
 一つ目は,地方大学の役割や地方大学を振興する意義についてということ。また,魅力ある地方大学とはどのような大学かということ。それから,魅力ある地方大学を実現するための地域との連携の在り方。また,大学
 が地方創生の取組を進める意義について。また,地方公共団体や産業界などの役割について。そして最後に,魅力ある地方大学づくりを進める際の地方国立大学の定員増に関して,どのような大学であれば定員増を
 する意義があるかということ。域内の様々な高等教育機関との連携ですとか財政的な負担をどうするかといったようなことも含めて,どのような大学であれば定員増する意義があるかといった論点があろうかと思います。
 本日も前回に引き続きまして,この視点に限らず,御審議賜れればと思っております。事務局からは以上でございます。

 【永田分科会長】 ありがとうございます。
 この話題は前回も議論しましたけれども,スケジュールを見ていただくとだんだん押し迫ってきました。我々の役割としては,単に意見交換しているだけではなくて,地方の活性化,地方大学の振興という観点から,不足し
 ている論点やもっと議論を深めるべき論点について,文科省を通じて伝えることが重要です。皆さんそれぞれ,地方創生あるいは地方振興について御意見があると思いますので,この論点を決定的に欠いている,ある 
 いは間違った捉え方をしているという部分があれば,是非ともお伺いしたいと思います。恐らく,そろそろ意見を申し上げる最後のチャンスです。いかがでしょう,何か気にかかる点がないでしょうか。河田委員,どうぞ。

 【河田委員】 私,前職で日本私立学校振興・共済事業団という組織にいたので,一言申したいと思います。今日頂いた資料4-3の「魅力ある地方大学の在り方に関する検討の視点」の一番下にある6番目の丸で,「地方
 国立大学の定員増に関して」という一節がありますが,国立大学が定員増をいたしますと,新型コロナ禍の現在,それでなくても,恐らく地方の私立大学はよほど特色のある私学でないと定員が満たない,赤字状況が続  
 いているわけですから,ここのところは非常に慎重に検討していただきたいというのが私の率直な意見であります。この検討会議の委員を見ても,地方の私立大学の方がおられないので,恐らくそういう意見が余り出て
 こなかったのだろうと推測いたしますが,国立大学の定員増については非常に慎重に取り扱っていただきたいというのが,私の切なる願望です。

 【永田分科会長】 ありがとうございます。
 先ほどの検討会議では,山梨県立大学長の清水先生や山梨大学長の島田先生はヒアリングを受けているので,大学等連携推進法人の仕組みは御理解いただいていると思います。他にもいろいろな仕組みが新たにで
 きてきていますから,こうした状況を念頭に地方国立大学だけではなく,魅力ある地方をつくるために設置形態を越えて全ての高等教育機関が協働するという意見はあってしかるべきだと思っております。この意見は,新 
 たにできてきているシステムのことを相手に知らせることで御理解いただけるのではないかなと思います。そのほかいかがでしょうか。麻生委員,どうぞ。

 【麻生委員】 麻生です。地方大学ということですが,短期大学については,一切ここで触れられていないと思います。特に地方には短期大学が多いので,是非この視点も入れていただければと思います。以上です。

 【永田分科会長】 ありがとうございます。
 先ほどの河田委員の御意見と同じような趣旨ですので,設置者,あるいは高等教育機関の種別を漏れなく書き込むということでよいと思います。金子委員,どうぞ。

 【金子委員】 私,前の総務省の会議にも出ていたんですが,そのときから感じておりますのは,地方に対する寄与を大学がやれというのは重要だとは思いますが,何をやるのかというのは大学が探せという姿勢が非常
 に見えるんですね。私は地方が大学にとって本当に何をやってほしいのか具体的に示す,それからそれなりの貢献を地方からしてもらうというのは非常に重要だと思います。地方大学に何かやらせておけば役に立つ
 じゃないかというような姿勢はずっと私は見えるように思います。以上です。

 【永田分科会長】 ありがとうございます。
 先ほど地方自治体で高等教育に関わる部署がないという意見がありましたが,大学を活用する地方自治体の姿勢をより強く問いたい,というのが金子委員の御意見だと思います。
 三村委員,どうぞ。

 【三村委員】 今の金子委員などの御意見と同じです。資料4-3では,下から2番目の丸に地方公共団体や産業界等の役割についてという項目がありますが,こういう一般的な意味じゃなくて,もっと具体的に積極的に地
 方公共団体が大学に期待する役割を言い続ける,あるいはそこと恒常的な窓口をつくるとか,あるいは産業界を巻き込んで,そういう検討をするような場を半恒常的につくるとか,そういう仕組みがなければ,役割が大き
 いのは分かりますが,具体的に取組を進めるのが難しいと思うんですね。そこのところの仕組みを是非検討していただきたいと思います。以上です。

 【永田分科会長】 ありがとうございます。長谷川委員,どうぞ。

 【長谷川委員】 コロナでいろんなことがリモートで進みましたよね。そのことが次の大学の在り方というのに随分,大きな影響を与えるとともに,日本社会の動かし方というのも随分変わってくるのではないかと。そのとき
 に,学生が自分の生まれたところだけで,そこの地方の大学に行って,そこの地方の企業に勤めるというような人生設計もあるかもしれないけど,それは一つの選択にすぎなくて,それから企業というのもその地方にい
 て,そこにいるからそこで何かをやるということも今や一つの選択肢かもしれないというふうな時代になってきたときに,場所があって一緒だから何々をするというような力と,それからどこにいたっていいじゃないという力
 の両方が結構,作用,反作用的に両方あるんじゃないかと思うので,その辺は誰に対してどういう魅力で何を貢献すると地方がどうなるのかというようなことをもうちょっと全体の枠を少し大きく設定した方がいいように私
 は思いました。

 【永田分科会長】 ありがとうございます。
 長谷川委員の御意見に賛成なのですが,ほかの省庁も関わらなければいけない課題として,例えば税制について問題があるのではないかと思います。どこでも産業はできる,働くことはできると言った時に,地方に居な
 がら東京の企業で働くというケースがでてきます。そうなると,むしろ企業の本社は東京に集中して法人税がゼロのような自治体が出て,あっという間に地方が崩壊するという事態が起こるかもしれません。そうならない
 ためには,様々な課題を検討する必要があると思います。吉岡委員,どうぞ。

 【吉岡委員】 今までの委員の意見と余り変わらないのですが,東京の大学に勤めていた経験からしても,地方の学生たちは必ずしも東京の大きな企業に勤めたいというふうにみんなが思っているわけではないのです。
 地方で育ち,東京に出てきて,東京で勉強したけれども,やはり地方で仕事をしたい,地方の自分のふるさとを活性化したいと考えている学生は非常に多いのですが,実際問題としては,なかなかその場がない。地方公
 共団体の職を探すとか,学校の先生になるというようなことしかなくて,なかなか就職する場所がないというのが実態だろうと思います。
 先ほどの意見にもありましたように,地方公共団体,あるいは地方にある企業が大学に何を求めているのかということをもう少し明確にしていただくということが非常に重要なのと,それから大手の企業も実は地方でいろ
 いろ展開しているのだけれども,大体,就職試験は東京でやるわけですし,本社が東京にあって,東京中心で動いていくということで,学生によく実態が見えないということがあるように思います。そういう意味では,企業
 と地方公共団体,それから国も,それと地方の大学だけではなくて,東京の大学も含めて方向を考えていくということが必要だろうと思います。地方のことは地方の大学でというふうになってしまうと,議論がそこで止まっ
 てしまうので。実は学生は東京に出てきたから,そのまま東京に勤めたいわけでは必ずしもない。特にここのところで,学生たちは東京中心主義ではなくなっているという意識の変革があるので,その辺をもう少し細かく 
 見ながら,全体を考えていかなくてはならないのではないかと思います。以上です。

 【永田分科会長】 説明しにくいですが,言わんとすることは感覚として分かります。一連のものとまとめると,皆さん,同じような趣旨ではないかと思います。
 福田委員,どうぞ。

 【福田委員】 ありがとうございます。
 御説明いただいた資料4-3の二つ目の丸に魅力ある地方大学云々(うんぬん)ということがございますが,この中に学生にとって,保護者にとってというのが,ちょっと乱暴な意見かも分かりませんが,地域にとって,産
 業界にとっていいと,すばらしいと,それが地方創生の取組を進めていく上で必要ではないかと。従いまして,各大学の特色はみな地方によって違うわけですから,結果としてはそこにニーズがある学生が集まってくると
 いうような考え方というのはちょっと乱暴かも分かりませんけれども,なかなか学生と保護者と地域と産業の全てを考えると,なかなか方向性がまとまらないのではないかと考えましたので,一言,申し上げました。以上で
 す。

 【永田分科会長】 加登田委員,どうぞ。

 【加登田委員】 委員方のおっしゃるようなそれぞれの大学の魅力がある,力をつけるということは全く賛成でございますが,地方によれば,少子高齢化が進みますと,特に公立大学は医療職や看護職等コミュニティーを
 維持するための人材の養成の核になっているところが多いです。そこは単に学生や保護者が景気がいいから行くというところだけではなくて,やっぱり政策的にそうした人材を確保する点で優遇処置なり促進処置なりを 
 していただかないと,若い気持ちでいろんなところに行くのはいいんですが,循環するような視点も必要ではないか,本当にコミュニティーの維持に必要不可欠な初等教育から医療,福祉人材等の中核になりたいと考え
 ます。

 【永田分科会長】 有信委員,どうぞ。

 【有信委員】 ありがとうございます。
 ここに挙げられている論点を見ると,やはり地方対中央という観点で,何となく地方が遅れているとか脇にやられているとか,いろいろな意味で劣位にあるという感覚で書いてあるんですけれども,何年も前からヨーロッ
 パではクオリティー・オブ・ライフ,QOLということが盛んに言われてきました。少し話が戻りますが,かつての製造業全盛の時代は,各工業地帯が地方にあって,その地方に中央で学んだ学生はみんな配属されるわけで
 すね。あるいは,地方の大学を卒業した学生たちも地場の企業に就職していたわけですけれども,それがだんだん一極集中になって,これは産業構造が変わったということによるわけですけど,その上でまた今度,新た
 に産業構造が変わろうとしていて,その変わる先の産業構造は別に地方,中央という区分けの必要のないような構造に多分なっていくだろうと思います。そういうときに考えると,生きることの質というか,クオリティー・オ 
 ブ・ライフはある意味では明らかに地方の方がずっと高いわけで,むしろ,クオリティー・オブ・ライフというような視点をこの議論の中に入れて,よりよい生活ができるようなところで新しい産業を育てるというふうな,そうい
 うむしろ積極的な方向性がないといけないような気がします。これは意見です。

 【永田分科会長】 有信委員,ありがとうございます。聞いているうちに,企業版ふるさと納税のような制度があればいいのかなとか思いました。益戸委員,どうぞ。

 【益戸委員】 今回のコロナ禍でいろんな地方自治体の方,県庁とか市役所の皆さんとデジタルをどうやって使っていくかということを通じて感じたことを一言申し上げたいと思うのですが,地域によって極めて人材の差が
 あるということなんです。国立大学はじめ,地域の高等教育機関に対して,知の拠点という言葉がよく使われるんですけれども,今回のこの議論の中で,知の拠点というのは一体何なのかと。科研費を取るためとか,そう
 いうことではなくて,これは山田委員がよく御存じだと思いますけれども,地方自治体が例えば東京のコンサルにどれだけのお金を払うのかということも含めてよく考え直して人材教育というのは必要で,決して企業のた
 めの人材教育ではなく,行政機関,それから介護とか病院,もちろん,教育もそうです,そういうために人を育てていくというのは重要だなと思っておりまして,永田分科会長から10月中旬のNHKの日曜討論の中で,パリ
 の焼き栗(ぐり)の匂いを知らないとパスカルの哲学はよく分からないという御発言があったんですけれども,やっぱり地方の教育機関できちんと連携することによって,その地域のためになることもよく分かるのではない
 かと思いますし,一方で南の方の大学を出て,北の方の地域のために働くというのも対比として非常によく分かるんではないかなと思いますので,知の拠点ということについて,徹底した議論をお願いしたいなと思いま
 す。以上です。

 【永田分科会長】 ありがとうございます。松尾委員,どうぞ。

 【松尾委員】 私の方から2点申し上げたいと思いますが,国立大学,公立大学,私立大学という立場を離れて,まず,地方って一体何だというのはかなり広がりを持っていて,地方はどんな特色があって,ここから先,どん
 どん人口が減っていくわけですけれども,10年先,20年先ってどうなっているんだというところから,やっぱり一つ見てみないと,そこでどんな人材をどれだけ輩出して,どういう産業があるということがなかなか見通すのは
 難しいかもしれませんけど,そういうことも一方でやらないと,今あるこの時点から出発していくと,なかなか根拠にすべきことが多過ぎて難しいんじゃないかというのが1点目ですね。
 2点目なんですけれども,地方にはステークホルダーがいっぱいいますし,今,地域分散型社会をつくらないと,日本のレジデンシーは非常に難しいと言われているわけですから,そうするとこれも難しい課題ですけど,地
 域の大学と連携法人とか,あるいは地域連携プラットフォームとか今,言われていますけど,やっぱり実質的な地域のステークホルダーの協議をもっと突っ込んでやらないといけないと。私はいい例が幾つかあると思い
 ます。私は国立大学の例しか知りませんけど,地方自治体と国立大学が極めてインティメートにやっている例も結構あるわけですね。だから,そういう例も横展開しながら,しかし,将来に当たっては地方の捉え方です
 ね,これ,地域によって違うと思います。産業集積地と農村中心の地帯というのは当然違うと思うんですが,それぞれの地域でちゃんとビジョンをつくって,全体としてどうなるのかというのをまずしっかりビジョンをつくって
 おかないと,個別でいくと道を間違うんじゃないかという気がします。以上です。

 【永田分科会長】 ありがとうございます。村田委員,どうぞ。

 【村田委員】
 私からは1点だけ,地方の大学の在り方に関して,基本的に大学の役割は人材育成に尽きると思うんですね。いろんな意見で収容定員だとかありますが,このコロナでテレワークになったときに,23区以外のところでも十 
 分にテレワークでできる,それからこれからもそれはできていくだろう,地方の労働力をどうするかという話になってくるかと思うんですが,そのときに一番重要なのはリカレント教育の観点だと思います。地方の大学が地
 方の産業と一緒になってリカレント教育をどうするかということを,大学の一番の役割は研究と人材育成ですから,そういう意味でリカレント教育の観点がはっきりと打ち出していただかないと,一番重要な観点かなと。地
 方の創生に大学が資するのはリカレント教育がまずあるんじゃないのかなと思ったので御発言させていただきました。
 私からは以上です。

 【永田分科会長】 ありがとうございます。安部委員,どうぞ。

 【安部委員】 今,村田委員がおっしゃったことと同じことを言おうと思っていたんですけれども,国公立を問わず,地方の大学の役割というのは地方産業に資する研究に貢献するということと,それからやっぱり地方に必
 要な人材育成だと思うんですけれども,特に地方においては若者の大都市への流出と並んで,30代,40代の層も都市部に流れているという傾向があります。どうしてかというと,産業が非常に衰退しまして,雇用条件等
 が悪いというのがありますので,そういうことを一掃するためにも地方人材の労働生産性を上げるというような観点で地方大学が役に立つことというのを考えていくという視点がこの検討会議には必要ではないかと思い
 ますので,私からもお願いいたします。以上です。

 【永田分科会長】 多々,御意見ありがとうございます。山田委員,どうぞ。

 【山田委員】 ありがとうございます。
 少し視点を変えたいんですけど,地方にある大学は全て地方大学として今回の対象にしていくのかなというのがあって,私は東京対地方というような考え方ではなくて,これから大学が過疎,高齢化,少子高齢化の中
 で,どうやって将来をつくっていくときに,大学の生き方の一つ,生き残りの一つとして,地域と一体化していく,地域のために頑張っていくんだという形で魅力を持つ大学というものがあって,それに対して地域も正に自分  
 自身の生き残りをかけてそういう大学と一体となって頑張っていこうという大学,こうしたものをやっぱり魅力ある地方大学として,焦点を持って振興していかないと,東京以外にある大学をみんな振興させていくという話
 でこれをやると,非常に多様な大学があるので,全部,地方人材を育成しなければ地方の大学じゃないのかということになってしまいますので,それはちょっと何か違うような感じがしますので,もう少し地方大学の意味と 
 焦点を絞っていった方がいいのではないかなというふうに思います。以上です。

 【永田分科会長】 ありがとうございます。
 地方大学振興をどうやって推進するかという運用の面でも,本日出た御意見の中でできることもあるように思います。更に根本的な精神として,この中間まとめでは特に有信委員がおっしゃったクオリティー・オブ・ライフ
 というか,地域に生きること自体の価値ということに触れていません。このような視点も欠けていたように思います。
 淵上課長,何かまとめに一言。

 【淵上高等教育企画課長】 御意見賜りましてありがとうございました。
 事務局としても,内閣府に委員方の御意見をお伝えするようにしたいと思いますし,内閣府の年内取りまとめのパッケージが12月中にできてまいります。それを踏まえまして,最終的には大学分科会におきまして,具体
 的にどのような地方大学づくりをしていくのか,あるいはどのような要件を満たせば支援をしていくのかといったことも専門的な観点から御議論いただくことになると思います。今,たくさん頂戴いたしました論点なども含め
 まして,事務局としても整理をして,御議論を深めていただけるようにしてまいりたいと思います。ありがとうございます。

 【永田分科会長】 それでは本日頂いた御意見をうまくまとめて,内閣府に届けていただきたいと思います。
 それでは,続きまして教育と研究を両輪とする高等教育の在り方についてという議題でございます。事務局から資料の説明を頂いた後,質疑応答,あるいは意見交換をさせていただきます。事務局から,お願いいたしま
 す。

 【淵上高等教育企画課長】 資料5-1と5-2,5-3に関する御説明をさせていただきます。
 本分科会でずっと御議論いただいております教育と研究を両輪とする高等教育の在り方についてでございます。最終的な審議まとめに向けて御議論を深めていただければということで,まず資料5-1でございますけれ
 ども,5-2の審議まとめ本体から見えてくる大きなメッセージを事務方としてまとめたものでございます。
 この教育と研究を両輪とする高等教育の在り方について,全体としてどのようなメッセージになるのだろうかということでございます。大きくポイントが二つあるのではないかということでまとめております。もちろん,これ自
 体を御審議賜りますので,足りない点ですとか不十分,修正した方がいいということも御意見を賜れればと思います。一つ目のポイントは,教育研究機能の高度化を促進するためにどういうことをしていくべきか,でござ 
 います。ここでは新しい時代の大学マネジメントシステムを支える大学構成員,様々なプレーヤーに新たな時代としてどのような役割を担っていただくのかということを改めて考えてはどうかということでございます。構成 
 員一人一人がきちんと役割を認識した上で力を発揮するとともに,チームとして役割の連携・融合を図ることで教育研究機能の最大化を図っていく,最大限に高度化をしていくような仕掛けが必要なのではないかというこ 
 と。その際,大学におけるダイバーシティマネジメント,組織全体のダイバーシティを実現しながらやっていくということなのではないかというのが大きなポイントの一つ目でございます。具体的には,様々なプレーヤー,教 
 員,事務職員,技術職員,URA,TA・RAなどの位置づけの明確化ですとか,それぞれの職能開発をどうしていくのか,また,それぞれの位置づけ,名称をどうするのかということ,そしてそれら全体をどのようにマネジメ
 ントしていくのかということと思われます。
 二つ目のポイントは,コロナを踏まえたニューノーマルにおける大学の姿というものをどのように考えていくのかということでございます。コロナを踏まえた大学の経験を契機として,大学が生まれ変わるチャンスでもござ
 います。教員の役割,職員の役割,TAの役割,そして学生の役割においても新しい知見が得られて,授業の高度化を含めた新しい大学への転換をどのように進めていくのかということでございます。オンライン授業と対
 面授業のハイブリッドによる新しい教育の在り方ですとか,新たなFDの在り方,それから学生の学びの在り方,こういったものが今回提案できるのではないかということでございます。
 これが大きなまとめでございまして,資料5-2が具体的な審議まとめの本文になります。
 1ページ目から9ページ目までにつきましては,7月の中間的な論点整理を基本的に踏襲しておりますので省略いたしまして,10ページ目から御覧いただければと思います。
 「教育」と「研究」を両輪とする高等教育の活性化に向けてということで,今後の在り方を示してございます。
 基本的な考え方は,「教育」と「研究」を両輪とする高等教育の活性化に向けては,大学内外の人的・物的リソースを様々に組み合わせ,総合的に機能を最大化していくことが必要だということでございます。ただ,その
 際,教育と研究を両輪とするバランスの捉え方については,各大学によって,また,学部,研究科,それぞれ教員によっても軸足の置き方が異なることに留意をする必要があるということでございます。
 大学教育のニューノーマルへ向けて,オンライン授業などが大きな転機となったということでございます。ただ一方でコミュニケーションの機会といったものにも配慮しながら進めていく必要があるということを述べた上で, 
 10ページ目の最後の丸でございますけれども,ニューノーマル時代の大学教育にふさわしい,オンラインと対面のハイブリッドによる新たな教育方法を確立・定着させていくと。そのためには一人一人の工夫だけではな
 く,教員同士が生み出した新たな知見,新たな教育手法の開発に向けた支援が必要だということを述べてございます。
 (2)の教育研究の活性化に向けた方向性と方策でございます。丸1の両輪のバランスの捉え方でございますが,最初の丸,3行目にございます各大学が自らのミッションに応じた教育と研究のバランスを明らかにしていく
 と。それをFDを通じて,教員相互間での理解を深めていくことが必要ではないかということ。次の丸でございますが,このFDの実施に当たって,事務職員の位置づけ,学生参加型のFDあるいは自己点検評価にも学生が 
 参画するといったことも期待されるということが書かれてございます。それから次の次の丸でございますが,教員における教育と研究のバランスの考え方について,例えばティーチング・プロフェッサーですとか,リサーチ・ 
 プロフェッサーといったような仕組みも検討に値するのではないかということでございます。
 また下にございます,学修者本位の教育へ転換で,学士課程における教育に関して,教員の専門の関連領域を広く俯瞰(ふかん)し,自らの研究が学生の教育にどのように反映されているのか,組織的かつ体系的な教
 育課程の中で学生の学びと成長につながっているのかを確認していくことが重要だということ述べた上で,12ページでございますけれども,ディプロマ・ポリシーとカリキュラム・ポリシー,そしてカリキュラム・ポリシーの実
 質化,さらにはアドミッション・ポリシーとの関連性ということで,全体として一貫性のあるものが必要だということを述べてございます。それから,次の丸では入学直後からの初年次での学び,それから大学院生の学びに 
 ついて記述してございます。
 12ページの下の方では,学生中心の教育改革に向けてということで,教学マネジメント指針の活用とディプロマ・ポリシーに基づく組織的,体系的な教育課程の編成・実施ということを述べた上で,最後の丸でございます
 けれども,特定の授業科目,又は科目群におきまして,研究ディシプリンが異なる教員によるチーム・ティーチングを実施することが有効だということを書いてございます。この際,雑多な教員の単なる寄せ集めということ
 ではなくて,適切な役割分担の上で教員間の綿密な打合せや調整,科目群の統括をする責任者などが重要だということが述べられてございます。また一つ飛ばしまして次の丸でございますが,教員の時間が有限である
 のと同様に,学生の時間も有限であるということでございます。学生が「何を学び,身に付けることができたのか」ということを主眼に置いた教育課程の編成ということが記述されてございます。それから,次のハイライトの
 ところでございますが,コロナ禍におけるオンライン授業の推進により,履修科目の多い学生にとっては,授業科目ごとに様々な課題が与えられ,結果として授業時間以外の学習時間が増えているというふうな指摘もある 
 ということでございます。また,今回のコロナ禍ではオンライン授業に新たな学びが形成されつつあるということもございます。また,学生にとっては,大学という場所(空間)で多くの学生と交流するということ自体の重要性
 というものにも改めて気づかされているということでございます。こうした経験を踏まえた学修者本位での学びの質をどうやって保障していくのかということが大事だということが述べられてございます。
 次が大学院生を通じた教育研究機能の活性化ということでございまして,大学院生を中心としたTA制度を本格的に活用するということで,適正な対価が支払われることを前提に,いろいろな教育活動への参画というもの
 が求められるのではないかということでございます。
 これと並びまして,14ページの四つ目の丸,研究の活性化の観点で,RAについても同様に適正な対価が支払われることを前提に,大学での研究に従事する,また,研究能力を身につける機会を推進していくということで
 ございます。
 それから,14ページの下からは教育研究を担う大学教職員の在り方ということで,15ページでございますけれども,教員の採用について,様々なダイバーシティの確保が重要だということ,若手,女性,外国籍,実務家など 
 多様な人材の受入れを図っていく必要があるだろうということ。それから次の丸では求める教員像を明らかにすることや教育研究活動に関するエフォートについてあらかじめ示していくこと,また,次の丸では「テニュアト
 ラック制」の導入などが述べられてございます。
 それから教員の評価の実質化ということも述べられてございます。流動性が高まると,自(おの)ずと採用プロセスでの評価が高まっていくということと併せて,シニア教員も含めた大学の教員の業績を適正に評価する仕
 組みが必要だということが述べられてございます。この際,次の丸でございますけれども,研究業績のみならず,教育業績や研究室の運営などについても適切に評価をされる必要があるということが述べられてございま 
 す。また,16ページにかけまして,評価に当たっては,教員間のピアレビュー,学生の授業評価あるいは自らの研究が学生の学びにどう反映されているのかといったような多面的な評価の必要性が述べられてございま
 す。その上で,三つ目の丸でございますけれども,大学の教員評価について,国において国内外の先進的な事例や対応参考となる評価軸などについて調査研究を実施する必要があるだろうということも述べられてござい 
 ます。
 次に,高度専門職人材の活用について,16ページの下から二つ目の丸でございますけれども,大学の運営を担う事務職員,技術職員,URAなどの果たすべき役割や重要性について記述がございます。最後の丸では,こ
 れらの大学専門職自身の意識改革に取り組むとともに,大学でのスタッフディベロップメントの重視といったようなことが述べられてございます。また,専門職という観点では,二つ目の丸にございます入学者選抜の関係で 
 アドミッション・オフィサーについての記述もございます。研修支援の観点で,技術職員やURAの重要性,あるいは人事・給与体系の見直しを通じて,下の丸にございますURAの標準スキル,研修プログラムなどの開発も
 更に進めていく必要があるということが書かれてございます。
 18ページからは大学のマネジメントについてでございますけれども,二つ目の丸にございます,コロナの影響で大学のマネジメントも大きく変わってきているということがございます。時間のマネジメントの重要性の中で,大
 学の教員が担うべき業務というものをどう考えていくのかというようなことがございます。三つ目の丸にございます優先度や必要性が低い業務の見直しはもちろん,それぞれの役割を改めて見直す必要があるということ, 
 さらには事務職員が組織マネジメントを担う一員としての自覚を持って能力を発揮していくというようなことが書かれてございます。最後の丸には,大学が組織としてミッションを達成していくためのIRの必要性ということを
 記述してございます。大学の運営に関して,「大学運営IR体制」を構築していくことの必要性も述べてございます。
 19ページが事務職員の果たすべき役割ということで,事務職員の役割を明確に位置づけるとともに,名称も含めた見直しといったようなことも述べられてございます。それから事務職員の能力開発のための人材育成プロ
 グラムの開発,実施ということも記述してございます。
 最後に組織マネジメントの重要性ということで,19ページの最後でございますけれども,一義的には教育研究機能の根幹を担う教職員一人一人の評価やキャリアパスなどを含めた人材マネジメントに取り組むということ, 
 そして,部局単位でも大学のミッションの方向性の中で組織マネジメントを行っていく必要があるということが記述されております。また最後,21ページ目は,本日の御審議を踏まえて記述していくことになろうかと思っており 
 ます。
 以上,審議のまとめの素案ということでお示しをさせていただいてございます。
 事務局からは以上でございます。

 【永田分科会長】 大部にわたりますので後半のみの説明になりましたが,御意見等ございますでしょうか。日比谷委員,どうぞ。

 【日比谷委員】 日比谷です。
 私は13ページに書かれていることについて,2点申し上げたいと思います。
 黄色になっていないんですが,19行目から教学マネジメント特別委員会のときも再三申し上げてきましたように,授業科目が細分化され過ぎている。その結果,1学期に学生が並行して履修する科目が10から12が最頻値
 というような状況は深い学びにつながらないということを度々申し上げてまいりました。今回のコロナで,その次,これは黄色になっていますが,10から12履修をしていて,それぞれの教員が,もちろん,横に相談なんかでき
 ませんから,それぞれ課題を出した結果,こういうことになったわけです。各大学のアンケート調査の結果なども大変に興味を持って見ておりますと,確かに学習時間は増えているんですけれども,こういうふうにばらばら
 の課題をして,それぞれに時間がかかったので増えたというよりも,やはり厳選した科目で例えば週に3回授業が行われ,そのたびごとに適切な課題が出てということで学習時間を増やすのが本来の姿だと思いますので,
 改めて授業科目,並行履修の科目の数を減らすということと,それぞれの科目に学生が,教員もですけれども,注力する力をもっと増やすということを改めて主張したいと思います。
 それに関連して,その次のところに出てきますTAの活用は非常に有効です。今回も講義はオンラインの方がいいというような声がたくさんありましたけれども,それを受けてやはり深く議論をするというようなところにもっと
 TAは導入されるべきですし,そのための訓練も必要なので,現在のようなTA制度の在り方はもっと抜本的に見直し,どこかに書いてありましたけれども,教員の指導の下ということではございますけれども,もっと積極的
 に参画するようなシステムの構築が求められていると思います。以上です。

 【永田分科会長】 ありがとうございます。髙倉委員,どうぞ。

 【髙倉委員】 髙倉です。
 今の審議のまとめに関して,「働き方」という視点で発言させていただく。大学教育の場は実習性の高い教育と研究の場であり,一般的な労働現場とは大きく異なると考える。まとめで指摘されているとおり,管理運営業務 
 の負担に関する課題や諸外国と比べて職員数の少ないことなど,これまで抱えていた教育現場での働き方の課題が今回のコロナの問題でより鮮明となった。これらの問題は初等中等教育分科会において改善が指摘さ
 れている課題とも共通するものがある。各大学や教育課程によって様々な要因はあると思うが,労働基準法の適用除外の職種,業種に共通する時間の概念が低いことが背景にあると思われる。したがって,教員などが
 研究以外に費やす時間に焦点を当てた各大学での横断的な共通の指標による実態把握の検討も必要ではないかと思う。
 14ページに記載されている通り,TA・RA,博士課程学生の活動も同様であり,「使い勝手のよい労働力」であってはならない。各現場の実態に即しつつ,実態把握と改善に向けた取組をお願いする。

 【永田分科会長】 ありがとうございます。それでは,渡邉委員,どうぞ。

 【渡邉委員】 どうもありがとうございます。
 資料5-1として今回御提出いただいたポイント案は,大変意義があると思っております。特に新しい時代の大学のマネジメントシステムに,コロナ禍で起きた新しい要素をどう組み込んでいくかという視点が列記されている
 点が,非常に重要です。ただ,これらを各論で詰めていくというよりも,資料5-2の18ページに記載されている,組織マネジメントを推進するために大学の活動全体を横断的,俯瞰(ふかん)的に捉えた大学運営IR体制の
 確立や,やや広義になってしまうかもしれませんけれども,教学マネジメントの指針の位置づけ,FDの導入の定着など,大学組織のマネジメントの基本フレームワークをしっかりとこのタイミングで打ち出しながら,整理をし 
 ていった方がいいのではないかと考えます。せっかくこの分科会には,教学マネジメントやFDの位置づけに関する今までの議論の積み重ねがあるわけですから,今回の答申の中にもそれらの明確な位置づけを据えてい
 ただけたらと思っております。以上です。

 【永田分科会長】 ありがとうございます。重要な御意見かと思います。伹野委員,どうぞ。

 【伹野委員】 研究大学において,実際に研究を担っているのは,教員とともに,教員の指導のもとでの大学院学生ですが,その他にポスドクという存在もあります。通常,ポスドクは,大学院博士課程を修了した後,研究プ
 ロジェクト等で数年間有期雇用され,研究の遂行に重要な役割を担っています。ポスドク期間の研究の経験が,大学教員への採用に対し,効果的に働いている場合が多いと思われます。若手人材や若手の大学教員の
 育成の面からも,このポスドク期間の在り方の整理が重要と思っています。今回の教育と研究を両輪とする高等教育の在り方についての中で,是非ポスドクについても触れることが必要と思います。以上です。

 【永田分科会長】 ありがとうございます。博士課程大学院生の増員に向けていろいろと考えられているさなかですから,当然,その先,ポスドクになっていく方もたくさんいらっしゃいますから,大変重要かと思います。清水
 委員,どうぞ。

 【清水委員】 現在の教育と研究の議論の中で非常に注目されるのは,研究の議論も深まっておりますが,やはり学生の役割,あるいは学生の参加ということだと思います。国立大学が法人化されてもう20年近く経(た)ち
 ますけれども,学生参加というのが日本は非常に遅れた面となっています。この間,学生による授業評価はもとより,認証評価の現地調査においても学生の意見を聴取したり,今,河田委員を中心に行っている学生調査
 の議論でも学生目線で,学生の教学面での参加が強調されたりしています。学生の役割とか,あるいは学生の参加ということが強調され,教学マネジメント指針の次は教学マネジメントに学生が参加するという方向性で 
 行ってもらいたいと思います。
 もう1点は,資料5-3が非常によくまとめられておりますが,真ん中の緑色の部分の教育研究を担う大学教職員の在り方の黒ポツの二つ目にテニュアトラック制の活用と厳正な審査というのがあります。我が国には若手
 研究者に対するテニュアトラック制があり,これはある面では成功したと思っております。将来的には若手研究者だけではなくて,全ての採用者にテニュアトラック制といいますか,テニュア制を導入したらどうでしょうか。テ
 ニュアの取得率の難易度がアメリカでは大学のプレゼンスにもなっております。テニュア審査というのを大学全体での厳しい人事制度に据えるような,そういう大学が出てきてほしいと思います。多くは,個々の人事につい
 ては部局でやっています。経験的にも途中から採用された先生がろくに教育も研究もしないで声だけ大きくて定年まで行くというのを見てきました。そういうのをなくさなければ駄目なんです。全学テニュア審査のような制度
 を導入して,テニュアの獲得が異動のパスポートになるということも今後は考えていただきたいと思っております。
 以上です。

 【永田分科会長】 曄道委員,どうぞ。

 【曄道委員】 ありがとうございます。
 15ページからあります大学教員の評価の実質化ということで,今回,実質化という言葉が使われていて,懸命に今,各大学が教員の評価については試行錯誤しているものをより実質的なものにということで書いていただ
 いているんだと思います。その中でも,最初のハイライトのところでは,いわゆる昇進のときだけではなく,定期的なという業績の評価について言及がありますが,やはり評価という言葉を使う以上は,昇進時に評価をする
 ということと,通常の業務として評価を受けるということは意味合いが変わってくると思います。その意味で,ここで言われている教員評価が何に使われるか,やはりもうこの時点で更にその先を見据えていると思いますの 
 で,評価をどう使っていくのかといったようなことにそろそろ言及が進んでいかないと,実質化というところにたどり着かないという印象を持ちました。以上でございます。

 【永田分科会長】 ありがとうございます。有信委員,どうぞ。

 【有信委員】 どうもありがとうございます。
 申し訳ありません,今更ながらということで意見を言わせていただきたいのですが,6ページのところに大学教員の採用・評価という項目がありますが,この中で特に研究という観点を考えると,ダイバーシティと研究者の流
 動性というのはすごく重要だと思うんですね。先ほどの清水委員の意見とも重なるところがありますけれども,それに加えてテニュアトラックというような,このシステムがここに一応,書き込まれているんですが,積極的採
 用は余り進んでいないとの指摘もあるとか,かなり弱いんですよね。ですから,むしろ,ダイバーシティと教員の流動性という点に関してはもっと積極的に書き込むべきではないでしょうか。以上です。

 【永田分科会長】 ありがとうございます。吉岡委員,どうぞ。

 【吉岡委員】 吉岡でございます。1,2点。
 一つは,オンラインの授業を私自身やったわけではないのですけれども,見ていて,実際はっきりしたことは,オンラインの効果として,学生と教員との間で授業をやったりするときの理解度を上げるという点でかなり有効で 
 あるということが分かってきたと思うのですが,先ほど御意見がありましたけれども,学生同士の間での知識の深め合いというようなことが非常にしにくくなった。同時に,教員が大体,家にいるようになってしまったので,教 
 員の間で,どういう授業をやっているか,ふだんだったら研究室で出会って話をしたりしながら,何となく組み立てられているような,例えば学科単位の授業の全体像が必ずしも入っていなくて,それで学生にものすごく負担
 がかかって,レポートをたくさん書かなくてはいけなくなってしまうようなことが起こっていたという点は重要なことだろうと思います。今後,こういうことになってくる場合に,それをつないでいく一つの役割というものが職員の
 機能だろうと思います。職員が教員と学生とをつないでいくというのは,大学が全体としてまとまっていく非常に大きな要素なので,これをまとめていくときに,やはり職員の役割というのはこれ以上に強調していいのではな
 いかと思いました。
 それからもう1点は, 先ほどのTAやRAのこととも少し関わるのですけれども,流動化ということが強調されていて,私も教員の流動性というのは非常に重要だと思うのですけれども,一方でやはり22,3,あるいは大学院
 終わって20代後半の人間がこれから将来を考えたときに,ずっと有期教員みたいな先が見えないという事態だと,やっぱり研究者はとどまっていかないだろうと思うのですね。研究者は研究者として競争しているだけでは
 なくて,企業であるとか,いろいろな職業の中で人生設計をしているので,例えば有期教員化が増えていくとか,私の知っている範囲でも非常勤講師をしながらつないでいる人間はたくさんいるわけで,そういう人たちに対
 するセーフティーネットなのかどうか分かりませんけれども,キャリアパスの見えるような仕組みをもう少しちゃんと整えないと,大学院に行かないし,大学院に行っても途中でやめてしまったりするという人はどんどん増え
 ていくので,その辺のところを考えないといけないのではないかと思います。これは大学だけの問題ではないのですけれども,流動化と有期教員の有効活用みたいな話になってしまうと,ちょっと論点がずれてしまうのでは
 ないかなと思いました。以上です。

  【永田分科会長】 ありがとうございます。では,髙宮委員,どうぞ。

 【髙宮委員】 今回,プレーヤーの再定義を含めたプレーヤーのダイバーシティについて,大分冒頭の方ではっきりさせられたかと思います。これまで大学のシステムが硬直化していた理由の一つがプレーヤーの種類が限
 られており,そこに収まる人材を登用して,なおかつ一度その枠に入りますと,どうしても平等化の原理が働いてしまう欠点があったと思います。今回,プレーヤーの種類が非常に多岐に定義されていくことで,より柔軟性
 のある教育システムができるようになることによって,大学にとって教育と研究の両輪がうまく回るようになれば幸いだと思います。
 他方で,ここで余りそれぞれのプレーヤーについて強く定義をしてしまいますと,またそこで硬直化が起こってしまう懸念もございますので,プレーヤーの在り方を今後どのように新しいものも吸収して組み入れていくかとい
 うことが一つの課題ではないかと考えます。

 【永田分科会長】 ありがとうございます。
 本日の議論は,教育と研究の担い手の部分で,先ほどのポスドクの話や職員の話,それから今の髙宮委員のお話と,今まで出てこなかった観点に言及がありました。これらの観点は是非書き込みたいと思っております。
 先ほどの清水委員から発言いただいた二つのポイントのうちの前半のポイントは非常に重要だと考えておりまして,大学を構成している者というと,まず教員,職員と考えがちですが,やはり学生はコミュニティーの一番重
 要な構成員です。そのように考えると,教育を一方的に授けるとか研究の下働きとかという問題は本来絶対に起こらないはずです。そういう意味合いで学生をきちんと位置づけなくてはいけないということが,本日の議論
 で非常によかった点かなと思います。
 それでは,もう1議題残っていますので,今回,金子委員を最後にさせていただきます。金子委員,どうぞ。

 【金子委員】 ありがとうございます。
 今までの話を伺っていても,また,この結果を見ても,もっともなことが書いてあるんですが,私,三つ,ポイントがあると思うんです。
 一つは,学生がいっぱい授業を取る,実は先生も授業をいっぱい出している,これをもうちょっと整理するにはどうしたらいいのかということですが,今までの習慣でこうなっているというところもあると思います。日本の大学
 の先生は,もう17年くらい前の比較調査ですが,アメリカとかヨーロッパの先生と比べてカリキュラムについて相互に相談する時間が一番少ないんです。独りです。自分も研究に対応したことをやりたいという志向が強い。
 しかし,これをどうマネジメントするか,具体的な方法は実は余りまだ議論されていないと思います。教学マネジメントというふうに名前は出ていますけれども,先生が自分の授業をどう調整するかということについてはかな
 り微妙な問題があって,非常に議論が必要だと思います。
 もう一つ,先生の分化というか,リファレンシエーションですが,これについてもエフォートは明示されていますが,実際にやるには相当大きな問題があると思います。これについても具体的にどうやったら方眼できるかとい
 うことが大きな問題だと思います。
 3番目は評価と移動ですが,このペーパーで触れられていないのは賃金体系が日本の教員というのは上の方に,年功序列が全く崩れていないんですね。上に長くいればいるほどメリットがあって,しかし,入る場面で物す 
 ごい競争があるという。若手に競争を強いているけれども,年を取るほどプレッシャーがなくなるという構造になっているわけで,私はこれを是正するには,やっぱり大学間の移動を盛んにするしかないと思いますが,これ
 についても具体的にどうするのか。一時,年俸制が議論されていましたが,今は余りされなくなってしまいましたが,やはり具体的に移動を進めるのかが重要だと思います。以上です。

 【永田分科会長】 ありがとうございました。
 この議論はまだ続きますので,次回以降も引き続きよろしくお願いいたします。最後に,文部科学省の若手ワーキンググループから御報告いただきたいと思います。
 それでは,池田係員,どうぞ。

 【池田研究振興局基礎研究振興課係員】 本日はお時間のない中,貴重なお時間を頂きましてありがとうございます。
 先日,大学院部会の方でも少し発表させていただいたのですが,省内の若手職員の取組として,AirBridge(エアブリッジ)というものを立ち上げましたので,紹介させていただきます。
 お手元の資料の2ページ目を御覧ください。文部科学省では現場に根差した政策立案機能の強化の一つとして,重要だけれども,検討がなかなか進んでいない課題について,若手中心で所掌にとらわれずに議論を行う
 というチームが立ち上がっておりまして,7月に大臣へのプレゼンテーションを実施し,8月に報告書が公表されたところです。報告書の中にも少し書いてありますが,博士課程,アカデミアを意識ある若手が夢を持って活躍
 できる場にということで,博士課程への進学ということについて取り上げております。
 この活動では,コロナの影響でオンライン実施したものですが,現場の感覚に富む若手が,研究室という環境を考えるワークショップなどを実施しました。56名ぐらいで,そのうちの半分ぐらいが博士号取得者で占められて
 います。こういった取組がきっかけとなりまして,チームの活動自体は報告書の発表を以(もっ)て一度終わりましたが,是非新しくチームとして立ち上げて引き続き議論していこうということで,大学院生を含む幅広い現場
 の関係者との議論や対話を実施しながら,省内の若手職員による政策検討のワーキンググループを新しく設置して,AirBridgeと名前をつけました。
 今後,博士課程学生を中心とした現場の研究教育環境をよくしていこうと考えておりますが,飽くまで我々は若手ですので,大所高所の議論というよりは現場感覚で,大学院を出ている者がかなりいるので,現場で見てき
 たものの問題意識の中からどういうことができるかということを検討し,その中で学生にとって魅力のある研究現場の環境,特に研究室の環境というものをよりよいものとしていくべく,ここに書いてある四つの論点というも
 のを中心に検討を行っていこうと思っております。
 以上が設立の経緯となりますが,簡単に我々の考え方についても御紹介させてください。3ページ目です。博士進学というものを考えるに当たりまして,その障壁となるのは,もちろん,お金がないとか,職がないといったも 
 のが考えられます。これは非常に大事な観点であり,既にいろいろなところでたくさんの議論がされておりますが,大学院を卒業したばかりの我々の目線からすると,必ずしもそれだけではないと思っているところです。そ
 の他の要素としましては,例えば環境・精神面の問題として,研究室の環境や先輩・上司の姿,研究指導や人間関係,アカハラ・パワハラ等,いろいろ定量化しづらく,検討の俎上(そじょう)に上がってきづらい障壁もある 
 のではと思っております。学生が博士学課程に進む最大の理由というのは研究活動が楽しいからに他なりませんが,しかしながら,修士に入ってから博士への進学意向をなくしてしまう学生も相当数存在するという調査
 結果も存在しております。修士課程をある種のアカデミアへのインターンと捉えれば,インターン中にこの現場の環境や雰囲気はもうダメだな,やっていけないなと考えてしまい,進学を諦めてしまう,リタイアしてしまうとい
 うケースも存在するだろうということで,意欲ある学生は,先輩や上司の姿を通じて研究現場のリアルな実態も見ながら進学を判断しているのではないかという考えに基づいて検討を進めてきました。
 4ページ目です。そういった「その他」の環境という目線で考えてみますと,特に研究室という環境こそが重要なのではないかと思われます。例えば博士課程修了者へのアンケートでは,外部との接点が少なく閉鎖的であっ
 た,教員からの指導の不十分さを指摘する声であると言った声があがっております。また,アカデミアに残らずに民間企業に行った博士人材へアンケートを採ると,民間企業が大学にも勝る点として,2位に上司・指導者・
 同僚という声が上がっていたり,博士進学者を増やすための政策として何が有効かと聞いたときには,もちろん経済的支援とか給与改善はあるのですけれども,その後には,設備も含みますが研究室の環境を良くしてい
 く必要があるといった声が続きます。他にも,大学院生が進路や自分の研究に対して最も影響を受けるのは同じ研究室に所属する者であるとか,企業の人事担当に話を聞くと,博士のレベルというのは博士号を持ってい
 るかどうかではなくて,どの教員についていたかどうかでほとんど決まってくるといった声も届いております。我々ワーキンググループの感覚に照らし合わせても,これは言わずもがなだろうというふうに思っております。
 5ページ目です。こういった研究指導,あるいは研究室教育と呼ばれますけれども,これらについては,行政から見た課題として,研究活動,つまり研究の実施とか研究費の獲得,あるいは教育活動,そのうちコースワーク
 やインターンシップ,この二つの軸の間にずっと落ち続けてきたのではないかと思っております。しかしながら,先ほどもお伝えしたとおり,研究室における教育という観点は,大学院生の能力向上,あるいは人生に大きく
 影響する観点なので,この二つの軸の溝に落ちてしまっている研究室の活動ということを一つ,捉え直すべきではないかと思っております。
 参考文献からの引用となりますけれども,こういった声も届いているということで簡単にお伝えしますと,日本の高等教育施策ではコースワークを充実させる方針を一貫して続けてきたと。そういったコースワークを国際水
 準並みに充実させることは重要だけれども,やはり大学院教育の主眼が学位認定にあることを考えると,学位論文の作成やその指導というところが中心になるというのは変わらない。しかしながら,組織的な実践支援の
 対象や高等教育研究の視野からも研究指導といったところがなかなか取り沙汰されてこなかった,といった指摘もなされているところでございます。
 6ページ目です。詳細は割愛させていただきますけれども,参考文献によれば,研究者等の育成を目的とする教育のみではなくても,高度専門職業人育成を目的とした教育においても,体系的なコースワークも大事です
 けれども,それ以上に研究室における指導,教育の方が重要であるといったように現場の研究者や大学院生からも指摘されております。
 一方で,研究室の中での環境を見てみると,ゼミや論講,セミナー等の研究室全体の活動は大学生,大学院生,教員も多くの知識,技能が身につくと考えている一方で,教員から学生に対する個別の指導については,皆
 さん,たくさん評価はしているものの,実は獲得が期待される能力に一定のギャップが存在するということが示されています。こういうことで,課題としては,研究室間でのばらつきが存在することや,教員と大学院生が求め
 ていることや培うことを期待している能力のギャップが存在するので,そこの共通の理解を深めることが大事だと指摘されています。
 7ページ目です。こちらが今回,我々としての考えの案という形で発表し,御意見いただきたいものです。背景としては,やはり大学院重点化の影響や,学生の価値観や進学行動が多様化したこと,基盤的経費の削減,教
 員の多忙化,そして研究領域の多様化。研究領域の多様化というのは,学生の研究テーマが教員の得意な分野になればなるほど,やはり研究指導への密接度が高まっていくという結果が示されておりますので,昨今の
 潮流に伴い分野横断的な研究が増えれば増えるほど指導の密接度は下がっていくのは自然ということです。そういったことも踏まえまして,複雑高度化してくる研究指導や研究室運営の在り方に対して,どうしても対応が
 追いついていないのではないか。これまで脈々と続けられてきた手法だけではどうしても立ち行かなくなってしまっていて,そのひずみがいわゆるブラック研究室といった形で表れてきてしまっているのではないかと思って
 おります。
 こういったことを少しでも乗り越えていきたいと思っておりまして,課題を構造化していくと二つに分かれるのかなと考えています。一つ目は,下の段の青いところですけれども,まず,研究室教育機能の質の担保と向上。こ
 れまでなかなか研究指導といったところは聖域化されて,大学ないし国も踏み込みづらかったところでもあるのですが,一定程度は,体系化できる部分とできない部分に分かれると思っており,まずはそのベースとなる部
 分は脱聖域化していけばいいのではないかと思っております。例えば,我々が学生目線に立って言えば,研究指導者として最低限求められる質の担保というものがなかなか実はできてないのではないかという考え方が
 あります。他にも,研究室運営に関するノウハウの共有等により質を上げたり,その評価やインセンティブ設計を大学や国としてどう考えていくか,組織的にどうサポートしていくかといった点が重要かと思っております。こ
 れがあった上で,多様性のある学生と教員の指導力,研究指導方針の相性を考えていくべきだと思っています。大事なことですが,研究指導や研究室運営にはやはり多様性が必要で,一元的にこういう指導がすばらしい
 というのは多分ないと思っております。そういった意味では体系化は困難ですけれども,それが見える化されていないと,教員はよかれと思ってやっているけれども,学生はそう思わないというミスマッチが生じて,お互い 
 不幸に陥ってしまうということが散見されるということで,教員の研究室の方針や研究室環境をしっかり見える化した上で,学生が正しく研究室を選んでいくことで,学生と研究室のミスマッチが解消されるということが重要 
 ではないかと思っております。
 この二つの軸,最低限の質を担保した上で,あとは多様性のマッチングをやっていくという形で検討を進めていければと思っております。また,教育研究時間の確保というのももちろん大事です。ただ,教員の時間の確保
 だけを考えてしまうと,教員の時間を確保するために学生に雑用をさせる等のしわ寄せが起きてしまいかねませんので,大学院生をただ働きさせないという前提に立った上で,時間の確保をやっていく必要があると思って
 います。
 我々としては,研究指導というのは大学院教育の本丸であると思っておりまして,博士課程学生の必要性が叫ばれて,経済的支援を含む様々な支援策が検討されている今こそ,合わせて高度人材の育成や確保に向け
 た研究室での教育について,本格的な議論が必要と思っております。
 よろしければ,またお時間を改めて議論させていただきまして,大所高所から御意見いただければと思います。よろしくお願いします。

 【永田分科会長】 本日は御報告までということで,皆さん,資料をお持ち帰りいただきまして,研究室教育の再構築ということでお考えいただければと思います。
 それでは,次回以降の日程等について,事務局から御説明を頂いて,ここまでとさせていただきます。事務局,お願いいたします。

 【奥井高等教育企画課課長補佐】 事務局でございます。
 本日も活発な御議論いただきまして誠にありがとうございました。
 次回の分科会は 1月13日の水曜日,10時から12時を予定しております。実施方法等につきましては,また追って御連絡させていただきます。
 また,本日,時間の都合で御発言できなかった内容がございましたら,事務局までお寄せいただければと思います。
 また,教育と研究を両輪とする高等教育の在り方については,審議まとめに向けて,また委員の皆様からいろいろお知恵をいただければと思っておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。以上です。

 【永田分科会長】 永田分科会長】 それでは第157回大学分科会をお開きといたします。次回は年が明けてからとなりますので,みなさまよいお年をお迎えください。

―― 了 ――
 

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高等教育局高等教育企画課高等教育政策室

(高等教育局高等教育企画課高等教育政策室)