大学分科会(第155回) 議事録

1.日時

令和2年7月15日(水曜日)13時~15時

2.場所

WEB会議

3.議題

  1. 「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」からの報告及び今後のインターンシップについて
  2. 高専教育の高度化に向けた設置基準の改正について
  3. 大学等連携推進法人制度の導入について
  4. 教育と研究を両輪とする高等教育の在り方について
  5. 令和元年度「全国学生調査(試行実施)」の結果について
  6. その他

4.出席者

委員

(分科会長)永田恭介分科会長
(副分科会長)村田治,渡邉光一郎の各副分科会長
(委員)有信睦弘,亀山郁夫,志賀俊之,日比谷潤子,吉岡知哉の各委員
(臨時委員)麻生隆史,安部恵美子,加登田惠子,金子元久,小林雅之,清水一彦,鈴木雅子,髙倉明,髙宮いづみ,伹野茂,曄道佳明,長谷川眞理子,古沢由紀子,益戸正樹,三村信男の各委員

文部科学省

(事務局)伯井高等教育局長,森大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術政策連携担当),川中大臣官房審議官(高等教育局及び高大接続担当),牛尾高等教育企画課長,西田大学振興課長,黄地専門教育課長 他

5.議事録

【永田分科会長】 定刻になりましたので,第155回大学分科会を始めさせていただきます。
お忙しいところ,御出席賜りまして,ありがとうございます。本日はWEB会議として開催し,その様子をライブ配信で公開しております。
議事に先立って,事務局から,注意事項等申し上げます。

【奥井高等教育企画課課長補佐】 本日は,WEB会議及びライブ配信を円滑に行う観点から,御発言の際は,Zoomの「手を挙げる」というボタンを押していただき,指名されましたらお名前をおっしゃっていただき,御発言をお願いいたします。
また,発言時以外につきましては,お手数ですけれども,マイクをミュートにしていただくよう,御配慮をお願いいたします。不都合あるかと思いますけれども,御協力のほど,よろしくお願いいたします。
また,会議資料につきましては,次第にあるとおり,事前にメールでお送りさせていただいております。また,参考資料として,先日公表されました「次期国立大学法人等施設整備計画策定に向けた中間まとめ」についてお送りしておりますので,適宜御参照いただければと思います。
以上でございます。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
本日,議事次第を見ていただきますと,五つの議題とその他から成り立っております。
一つ目は,「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」からの報告ということで,昨年から国公私の大学と日本経済団体連合会(以下,「経団連」という。)の間でこの課題について議論が続けられ,3月に報告書が取りまとめられました。本日は,その報告書について経団連から御説明いただき,また事務局から補完的に御説明いただいた後,若干の議論をさせていただこうと思っております。
2点目は,高等専門学校教育の高度化に向けた設置基準の改正ということで,御提案いただいたものについて審議をしようと考えています。
3点目は,大学等連携推進法人制度の導入ということで,いよいよ省令改正をしようということなので,その内容について御提案いただいて,皆さんと意見交換をさせていただくということです。
4点目は,第10期の大学分科会の主要テーマ,教育と研究を両輪とする高等教育の在り方ということについて,論点整理をもとに引き続き議論を行いたいと考えています。
5点目,最後に,「全国学生調査」が試行実施されまして結果が6月に出ました。その内容について御説明いただいた上,若干の意見交換をさせていただこうと考えております。
よろしいでしょうか。
それでは,早速議事に入らせていただきます。
最初に,「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」からの御報告と,それを受けた今後のインターンシップについてということで,事務局からも若干の説明をさせていただきます。経団連からは,長谷川常務理事に御出席いただいております。お忙しい中,御参加いただきまして,大変ありがとうございます。
それでは,早速,長谷川常務理事から御説明をお願いいたします。

【長谷川常務理事】 経団連の長谷川でございます。
それでは,資料1-1に基づきまして,産学協議会が3月31日に公表した報告書について御説明をさせていただきます。
まず,1ページ目をおめくりください。この産学協議会ですが,設立のきっかけは経団連が採用スケジュールを今後策定しないと公表したことにございましたが,採用日程の在り方のみではなく,学生・大学・企業の多様性を前提とした上で,今後の大学教育や採用,インターンシップの在り方について幅広く議論しております。
2ページ目は組織図になっておりますので,御覧いただければと思います。
1ページ飛ばしていただきまして,4ページを御覧ください。産学協議会では,まず,Society 5.0で人材に求められる能力をまとめました。最終的な専攻分野が文系・理系であることを問わず,データ分析力、外国語によるコミュニケーション能力などのリテラシー,論理的思考力,規範的判断力,課題発見・解決力,未来社会の構想・設計力などが求められるとしております。
5ページを御覧ください。また,そうした人材を育成するためには,企業と大学が「組織対組織」で包括的に連携し,そうした産学の包括的・複合的な連携の中に,共同研究やインターンシップを組み込んで,その成果を更にまた大学教育カリキュラムに還元するというサイクルを確立することが必要としております。
2ページ飛ばしまして,8ページを御覧ください。また,今後重要となりますリカレント教育につきましては,大学側の課題,具体的には,実務家を含む教員の確保,持続可能なプログラムを実施するための財政支援等,企業側の課題,すなわち,経営トップから学び直しを推奨するメッセージや学び直しの促進に向けたインセンティブとなる評価体系や人事制度の整備が必要などの課題を整理しております。
それから,1ページおめくりいただきまして,9ページ目でございます。これは大学教育改革に向けた政府への要望事項のうち,産学が合意した事項でございます。AI,数理統計,データサイエンス人材の育成に向けて政策的に推進すべきこと,大学等と連携した教育プログラムへの企業の資金拠出促進に向けた税制措置,それから,大学設置基準等の見直し,そして,大学等の多様な財源確保のための制度・法的基盤の整備などを求めております。
10ページを御覧ください。二つ目のテーマでございます,採用とインターンシップの在り方についてですけれども,産学協議会では,まず2030年Society 5.0となっている社会における学生の姿,企業の雇用形態,そして,採用・インターンシップの未来の姿について産学で理解を共有いたしました。
その上で,11ページでございますが,その2030年に至るまでにどのようなことを企業,大学側が行うべきか,取り組むべきか,ということを整理しております。まず,短期的には,企業は,大学における学修を尊重する採用選考活動を実施する。それから,採用選考に関する情報開示,企業の考え方を説明する。また,既に多様化・複線化している企業の採用・雇用形態の実態について,幅広く社会,学生に発信するとしております。
それから,12ページでございます。インターンシップにつきましては,現在,多種多様なインターンシップが行われているため,インターンシップの目的,意義,内容,期間等について,産学及び社会で共通認識を確立すべきということを言っております。
そして,産学協議会としては,キャリア教育として行う低学年向けのインターンシップと,就職・採用選考活動を意識した高学年向けのインターンシップは分けて検討すべきということを言っております。
また,インターンシップにつきましては,学業を優先するということで,原則,長期休暇期間中に実施するということと,「ワンデーインターンシップ」につきましては,就業体験を伴わないことから,「インターンシップ」という名称は使わないということについて合意をしております。
続きまして,13ページを御覧ください。こちらでは,本日御説明があると思いますが,文部科学省及び日本私立大学連合会から提案がありました,大学院の修士・博士課程を対象とする,ジョブ型採用につながるインターンシップという新たなインターンシップに向けて,産学協議会も推進に協力するということを述べております。
そして,1ページ飛ばしていただきまして,15ページでございますが,これはインターンシップに関する政府の3省合意というもので,インターンシップの推進に当たっての基本的考え方というのがございますが,こちらについては,参加対象が在学中の学生に限られていることですとか,採用選考を目的としたインターンシップが想定されておらず,学生・企業を含む一般的な認識や運用との乖離(かいり)が生じているということから,この見直しを要望しているところでございます。
最後でございますが,20ページ,21ページに,産学協議会が今後取り組む10のアクションプラン,ただいま申し上げたような政策課題についての10のアクションプランをまとめております。現在,産学協議会の下に設置されている二つの分科会で,この10のアクションプランの実践に向けた協議を継続しているところでございます。
以上でございます。

【永田分科会長】 長谷川常務理事,どうもありがとうございました。
文部科学省から,インターンシップ等についての御説明があると思いますが,よろしくお願いいたします。

【黄地専門教育課長】 専門教育課長の黄地でございます。
先ほど経団連の長谷川常務理事から御説明のありました産学協議会の報告書のSociety 5.0における採用とインターンシップの在り方の部分を踏まえまして,これまで文部科学省で進めてまいりましたインターンシップの拡大・充実のためのこれまでの取組を紹介しつつ,今後の対応の方向性について御説明申し上げます。
お手元の資料の3ページと4ページにつきましては,先ほど御説明いただいた報告書のうちのインターンシップの部分の概要を示しておりますので,省略させていただければと思います。
続きまして,5ページを御覧いただければと思います。インターンシップにつきましては,平成29年6月に文部科学省におきまして,「インターンシップの更なる充実に向けて」,現状と課題を整理した報告書を取りまとめまして,これに基づきまして,5ページに書かれておりますような,優れたインターンシッププログラムの普及,専門人材の育成,地域における推進協議会の充実,負担軽減などを整理して,各種の推進方策を進めているところでございます。
6ページを御覧いただければと思います。これまでの取組や,産学協議会からの要望も踏まえた,今後の文部科学省の推進の方向性について,お時間の関係もございますので,ポイントをかいつまんで御説明させていただきます。
なお,6ページに書かれております「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」の在り方の検討につきましては,後ほど御説明いたします。
7ページを御覧ください。インターンシップの地域ごとの推進体制の構築をより進めるために,毎年,全国的なフォーラムを開催したいと考えてございます。さらに,インターンシップの教育的な効果を高めるために,平成29年度からグッドプラクティスを公表・表彰してございまして,今後も隔年で実施したいと考えてございます。
続きまして,8ページを御覧ください。一番下に小さな字で書かれております。先ほど経団連からも若干紹介がございましたが,新たな理解に基づく先進的なインターンシップの提案・調整を図るべく,現在検討しております「ジョブ型研究インターンシップ」の先行的・試行的な実施を今後推進してまいりたいと考えております。これにつきましては,また後ほど御説明いたします。
9ページを御覧いただければと思います。国としてのインターンシップの推進につきまして,基本的な考え方を,文部科学省と経済産業省,厚生労働省の3省の合意によってまとめてきたところでございます。今後,これをどういう形で見直すかについて御説明申し上げたいと思ってございます。
まず1ポツにございますように,「基本的考え方」を取りまとめた当時の状況は,平成9年9月だったわけでございますが,社会的なインターンシップの導入の時期でございましたので,その当時はインターンシップを普及させるために,国が主導してその定義や在り方を示す必要があったところでございます。しかしながら,先ほど御紹介もありましたが,インターンシップは相当程度浸透しつつある中で,社会の変化に応じてインターンシップを実施することが極めて重要と考えてございます。
この点,2ポツにございますように,ジョブ型採用やキャリアパスの複線化等の状況を見据えながら,多様なインターンシップを実施できることが重要ではないかということでございます。
さらに,3ポツにございますように,大学と産業界がそれこそ胸襟を開いて様々な議論を,就職の在り方,あるいはインターンシップの在り方について御議論いただいてきたというふうに承知してございますが,先ほど御説明のありました産学協議会の報告書の10のアクションプランの記載にもございますように,大学・企業の今後のアクションとして,インターンシップの共通認識を改めて確立するということとなってございまして,極めて重要な取組ではないかと考えてございます。
その上で,4ポツにございますように,企業がインターンシップで取得した学生情報の取扱い等についても,引き続き就職・採用活動に関する4府省庁の要請文等で整理することも重要ではないかなと考えております。
以上をまとめますと,採用・インターンシップの在り方につきましては,当事者でございます産業界・大学においてまず共通認識を得ていただくということは極めて重要でございますので,その上で,この共通認識を尊重いたしまして,基本的な考え方の存在意義ですとか在り方を改めて検討し,見直しを図ることといたしたいと考えてございます。
なお,その際,産業界と大学との間で十分な共通認識が確立されるということでございますれば,中長期的には,この基本的な考え方の発展的な解消もあり得るべきではないかなと考えてございます。
続きまして,10ページを御覧いただければと思います。最後に,ジョブ型の研究インターンシップについて御説明いたします。ジョブ型インターンシップにつきましては,今年の1月に総合科学技術・イノベーション会議がまとめた「研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ」の中で,企業との連携による博士課程学生の長期有給インターンシップの推進が指摘されたことも踏まえまして,関係府省の協力の下,文部科学省におきまして枠組みの検討を行ってきたところでございます。
また,先ほど経団連から御説明のありました産学協議会の報告書にも,ジョブ型採用を見据えたジョブ型研究インターンシップについても取り上げていただいているところでございます。
今後のジョブ型採用を見据えながら,研究遂行の基礎的素養・能力を持った優秀な大学院の学生を対象といたしまして,長期かつ有給である研究インターンシップ,また,正規課程の教育プログラムに位置付けつつ,成果につきましては,企業側で適切に評価し,採用選考活動に反映可能といったようなインターンシップを先行的・試行的に実施することを検討しております。
まずは,実績のある博士課程の学生の研究インターンシップから積極的に進めていければと考えてございます。
具体的な内容につきましては,お時間の関係もあって詳細は御説明できませんが,その後ろの参考資料の中で紹介させていただいてございます。
ただ,飽くまで現時点においては参考例ということでございますので,より詳細な内容につきましては,2022年1月の試行的な実施を目指しまして,今後更に検討してまいりたいと考えております。
事務局からの説明は,以上でございます。

【永田分科会長】 ありがとうございました。
産学の間で「ワンデーインターンシップ」の名称は使用しないと合意できたことに加え,最後に説明のあったジョブ型のインターンシップについて具体的に国も考え始めたという,大変良い状況にあります。
このインターンシップ,または大学教育に対する提言について,あるいは文部科学省のお考えについて,何か御意見があればお伺いします。いかがでしょうか。
髙倉委員,どうぞ。

【髙倉委員】 髙倉です。皆さん,お元気でしょうか。よろしくお願いします。
2点申し上げる。1点目は,リカレント教育の対象についてです。首相官邸の未来投資会議にて,成長戦略実行計画案が取りまとめられ,間もなく閣議決定されると理解している。その中に,社会人の創造性育成として,「大企業に勤務している20代~30代前半の社会人に対してリカレント教育の機会を提供」とあるが,ものづくり産業を支えている多くは中小企業であることから,その必要性は,特定の対象に限られるべきではないと思っている。
加えて,実行段階においては,我が国の産業を牽引(けんいん)する産学の総力で取り組む必要があるため,資料1-1の8ページ「リカレント教育における産学連携の推進」,この冒頭の囲みの記載の様に,幅広い対象,階層,年齢ごとの施策を推進していただきたい。
2点目です。我々は,若年労働者のものづくり現場への就業意識を高めるため,従来から,インターンシップの単位認定制度の普及を要請してきた。今回,資料1-2の10ページに記載のとおり,博士課程学生の長期有給インターンシップの単位化・選択必修化の促進が主要施策として位置付けられていたことは,非常に評価に値すると思っている。
引き続き,高等学校,高等専門学校,短期大学,大学も含めて,インターンシップの単位認定の普及を推進していただきたい。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
続いて,吉岡委員,どうぞ。

【吉岡委員】 ありがとうございます。簡単に。
一つは,この報告書が出たのは3月で,まだコロナの前だったわけです。やはりコロナによって,インターンシップのやり方とかは,実際問題として,ここ一,二年は当然変化せざるを得ない。大学のアカデミックスケジュールも変わってしまうわけです。そのことも含めて,何が変わってしまっているのか,あるいは,どこを変えればいいのかということも含めて,早い段階で一度報告書の検証をやっていただければと思います。
もう一つは,ジョブ型の研究インターンシップであるとか,キャリアパスの複線化というようなことについては,産業界全体の方針というのもいいんですけれど,個々の企業がどういう取組をしているのかというのが見えないと,学生が就職を考えるときに分からないので,できるだけ個別の情報の提供ということを,是非この視点で統一的に出していただければと思います。
以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
曄道委員,どうぞ。

【曄道委員】 ありがとうございます。1点だけお願いします。
産学協議会の方で,インターンシップを単位化した場合の評価については,どういう議論がありましたでしょうか。経験的には,企業の方で評価をするということについては,非常に負担が大きいといったような声を以前に聞いたことがあります。よろしくお願いします。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
長谷川常務理事,何かお答えできることがあればお願いします。

【長谷川常務理事】 産学協議会では,単位化したときの評価の在り方ということについては,特に議論はしていないです。
他方,先ほど吉岡委員からございました,コロナ禍でのインターンシップの在り方については,現在,分科会で検討しております。オンラインでこの夏もインターンシップができるのか,できるとすれば,どういうやり方があるのかといったようなことについて議論しております。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
コロナ禍はいろいろなところに影響を与えていますが,そこからまたより良いアイデアが出る可能性もあるので,是非とも詰めていっていただきたいと思います。
最後に,産学協議会のまとめの中に少し書いてありましたが,インターンシップは,仕事の価値があるという認識を持てるようになるという意味で,大変大切なことだと思います。つまり,次は,給与をつけるかつけないか,という問題だと思いますが,企業側にとっては負担が増えるだけではなく,給与を払うに値するような内容に変わっていくのではないか,と期待しています。
この件につきましては,今後,アクションプランを策定した経団連と国公私の大学の間で引き続き検討が行われ,文部科学省でも具体的な施策に落としていく努力をされると思いますので,随時,御意見等賜りたいと思います。
本日は,この案件については,ここまでとさせていただきます。ありがとうございました。
それでは,続きまして,2番目の課題ですけれども,高専教育の高度化に向けた設置基準の改正についてということで,事務局から説明をお願いします。

【黄地専門教育課長】 専門教育課長でございます。資料2を御覧いただければと考えてございます。
まず1枚目でございますが,これまでの高等専門学校教育を振り返った上で,今後の目指すべき姿を簡単にまとめたものでございます。
これまでの高等専門学校教育ということで言えば,実験・実習を中心といたしまして技術者教育を行う高等教育機関ということで,60年ぐらいの歴史がある教育機関でございます。一方で,近年ですと,起業する学生さんや,あるいは,高等専門学校を卒業した後,大学に編入学することによって引き続き研究開発に従事する学生さんもどんどん輩出されているということでございます。
さらに,新しい時代に求められる高等専門学校教育ということで,例えば,AI,ロボット,IoT,ビッグデータなど,こういった先進的な分野がカリキュラムへ導入されつつ,こういった教育を受けた学生さんが幅広く社会で活躍されるという状況になってございます。また,教育の内容といたしましても,課題解決型の教育を中心として,社会実装教育の展開が幅広くなされているところでございます。
こういった中で,withコロナ,afterコロナ時代に求められる方向性といたしまして,まず一つ考えられますのが,デジタル・フィジカルを上手に活用した授業,もう一つは,優れた企業や実務家に高等専門学校の教育現場へコミットしていただくための環境整備も必要ではないかということで,この二つを掛け合わせた上で,新たな時代の高等専門学校教育への転換を図るべきという方向性をまとめさせていただいてございます。
一方で,2ページを御覧いただければと思いますが,こういった流れも踏まえまして,今年の4月28日に,高等専門学校機構から要望書を頂いてございます。
具体的な内容といたしましては,高等専門学校の設置基準を2点改定してほしいということでございまして,まず1点目につきましては,「多様なメディアを高度に利用して」実施する授業,いわゆる遠隔授業の上限単位数の拡大を図っていただけないだろうかという内容でございます。
字が細かくて大変恐縮でございますが,3ページに,また別途まとめた資料がございますので,こちらの方を御覧いただければと思います。
現状の制度で申し上げますと,高等専門学校は,卒業に必要な単位数として,167単位あるところでございますが,そのうち30単位までが遠隔授業を行うことが認められているところでございます。今回,高等専門学校機構から出てきた要望書といたしましては,167単位のうち,おおむね50単位程度は実習等に活用するということで,残る117単位程度は講義を中心とした科目でございますので,今後更に遠隔授業を進めるという観点からすれば,現在認められている30単位を60単位まで広げてはどうかという提案でございます。
文部科学省といたしましても,この御指摘,御提案を踏まえて,進めさせていただければと考えてございます。
もう1点の要望内容についてでございます。4ページを御覧いただければと存じますが,実務家教員に関する制度について,少し規制緩和をしていただけないかということでございます。
現状で申し上げますと,例えば専門職大学等においては,実務家教員のうち,専任教員のおおむね2割程度はいわゆるみなし専任教員でも可としており,企業で働きながら大学で教えるような勤務形態であっても,専任教員としてカウントすることが可能であるといったような制度の立てつけになってございます。
一方で,高等専門学校の方は,こういったみなし専任教員の制度はございません。しかしながら,先ほど冒頭御説明申し上げましたように,企業と高等専門学校の連携をより促進するということで言えば,実務家教員の方であっても,リアルタイムに企業の最先端の状況を教育に反映するという観点からすれば,このみなし専任教員を専門職大学等と同様に認めるべきではないかといったような御提案を頂いているところでございます。
従いまして,今後の方向性といたしましては,こちらに書いてございますように,実務家教員の割合は,高等専門学校の分野や教育内容に応じて相当幅広く柔軟に変えるべきかと存じますので,基本,設置者の判断といたしながらも,みなし専任教員の範囲は,全体の必要専任教員数の2割程度までは認めてもいいのではないかなと考えられますので,その方向で進めていければと考えてございます。
5ページ以降は,今,私が申し上げた内容をより詳細にまとめたものでございますので,後ほど御参照いただければと存じます。
説明は以上でございます。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
ただいま御説明のとおりで,みなし専任教員の導入と遠隔地授業を含めて教室等以外の場所で履修できる単位数の上限を60単位に拡大する,という内容になっております。
御質問あるいは御意見があれば,お伺いします。
有信委員,どうぞ。

【有信委員】 有信です。
以前から高等専門学校における教育は非常に高く評価をされていて,その上で,具体的に教育を更に推進していくために必要な変更点だろうというふうに理解しました。したがって,大きな方向性については,全く異論はありません。
ただ,気になるのは,高等専門学校というのが,言わば日本に独自な制度であって,世界的ないわゆる高等教育標準の中で,高等専門学校をどういうふうに位置付けるのかという,大きなグランドデザインのようなものがやっぱり必要な気がします。
教育の多様化というのは当然のことですが,多様化と同時に,併せて国際的な標準との同等性をどこで担保していくのかというようなことをベースにして,高等専門学校の在り方の全体像を大きく今後議論していく中で,今回のような変更がきちんと位置付けられるということが必要なような気がしました。
以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
そのほか,いかがでしょうか。現在はお手が挙がっておりません。
この議題は,これまで何度も皆さんとも話し合ってきた内容であり,特に異論はないのではと思います。
私から一言だけ申し上げます。国立高等専門学校機構の要望については,国立高等専門学校機構という一つの大きな機構が学位の質全体を統括しているシステムである限り,60単位を認めるということについては,質の保証の観点からは問題ないであろうと思います。
今後,我々が考えなければいけない課題は,一般の大学についても,当然オンライン授業の効果を認め活用が拡大する方向に進むし,進んでほしいと思っています。その際には,是非とも,オンライン授業の質保証と,個々の大学の個性というものを両立させるように考えていかないといけないだろうと思っています。
今回,高等専門学校にはそれを付言する意味は余りありませんが,今後の質保証等を考えたときに,単位数は別として,教育の中身については,やはりよく考えていかなければいけないだろうと思っています。
よろしいでしょうか。
それでは,これはパブリックコメント等に進めていただき,幅広い意見をお伺いしたうえで,もう一度,この大学分科会で議論をさせていただこうと思っております。
それでは,次の議題ですが,大学等連携推進法人制度の導入について,事務局から説明をお願いします。

【牛尾高等教育企画課長】 高等教育企画課長の牛尾でございます。よろしくお願いいたします。
資料3に基づいて御説明をさせていただきたいと思います。
本件につきましては,これまで何回か御議論いただいたところでございます。今回の資料につきましては,これまで頂きました御意見,それから,事務的に法制的な検討も加えさせていただいた上で,再整理したものでございます。
まず,スライドの2を御覧ください。制度のイメージをまとめてございます。繰り返しになりますけれども,今回,制度化しようとするものでございますけれども,大学の機能強化を図る上で,国公私の枠組みを超えて複数の大学等の緊密な連携を効果的に推進するために,大学等を社員とし,連携に係る協議調整や連携事業を一元的に実施するなどの業務を行う一般社団法人につきまして,一定の要件を満たすものを文部科学大臣が認定するという制度を設けようとするものでございます。
併せまして,認定を受けた一般社団法人の大学の設置者が設置する大学間において,他大学と連携して授業を開設する,そういうことができるようにする新たな特例措置も設けたいというものでございます。
続いて,スライドの3を御覧ください。まず,文部科学大臣が認定します一般社団法人の新たな制度の関係でございます。
今回,この制度の創設に当たりまして,新しく省令と大臣告示を設けたいというふうに現在検討しております。
その際には,この大学間の連携等が安定して緊密な連携を行う体制が構築できるものになっているかどうか,あるいは,公益性が担保されているか,こういった観点からの基準を設けて,それを満たすものを認定するということにしてはどうかと考えております。
具体的な基準をその下に幾つか並べてございます。
法人の組織に関することといたしましては,大学等の連携を推進する業務を実施するということをこの法人の主目的とするということを明確にしておいていただくということが必要かと思います。
それから,法人の基本的な方針として,大学等連携推進方針の策定ということと,それを公表するということを義務付けてはどうかと思っております。その方針の中には,連携業務の実施に関する事項でありますとか,教学上の特例措置を活用する場合においては,参加大学間での教学面での連携の意義・目的,実施計画等を明記させてはどうかと考えております。
それから,社員,役員,公益性の担保について,一定の基準を設けたいと思っております。
それから,その他のところでございますけれども,活動についての質を保証するという観点から,事業報告書等各法人の活動状況が外部から確認できるように公表を義務付ける書類というものを明記してはどうかと考えております。
続いて,スライドの4を御覧ください。教学上の特例措置でございます。
今回,大学設置基準の改正等を行いまして,今御説明申し上げました一定の要件を満たす一般社団法人の社員が設置する大学間,あるいは,同一の法人が複数大学を設置している場合がございますが,そういった場合における大学間において,他の大学が当該大学と連携して開設する授業科目を当該大学が自ら開設したものとみなすことができる特例措置を設けるということと,それから,これは現在でもできますけれども,共同教育課程を設ける場合について,これらの大学については,各大学で修得すべき単位数を一般の場合と比べて緩和してはどうかということを考えているところでございます。
具体的な要件でございますが,その下の黒丸のところでございます。二つの場合分けをしております。一般社団法人を活用する場合でございますけれども,この場合におきましては,各大学を設置する法人において教学面の代表者が参画するような組織を理事会として一般社団の中に置いていただく。それから,その理事会において大学等連携推進方針の策定・公表をしていただく。それから,その方針を文部科学大臣に届け出るということを要件としてはどうかと考えております。
複数大学設置法人の場合におきましても,法人が設置します各大学の教学面の代表者が参画する組織の設置,連携推進方針の策定・公表,文部科学大臣への届出を同様に要件としてはどうかと考えております。
それから,次の黒丸でございます。連携開設科目を設置する場合の規定の整備ということでございます。この場合にも,(2)にあるような要件を満たすということを求めてはどうかと考えております。
まず,この連携開設科目について,先ほど申し上げました大学等連携推進方針に沿っているかどうかということをチェックするということ。それから,こういった連携科目を開設する場合においては,関係大学間において協議の場,教学管理体制の設置を義務付けること。その中においては,授業の方法,内容,年間の授業計画,評価に当たっての基準,連携科目の履修に係る学生の利便,移動等への配慮等々について明確にするということが必要かと考えております。
それから,スライドの5を御覧ください。続きでございますけれども,(4)のところでございます。卒業の要件のうち,こうした連携開設科目をどの程度認めるかということでございますが,4年制学部について申し上げると,30単位としてはどうかと考えております。その他の課程については,後ろに別添1につけておりますので,御参照いただければと思います。
それから,こうした連携開設科目につきまして,これも質保証の観点から,一定の事項を公表することを義務付けてはどうかと考えております。具体的には,授業科目,授業方法,内容,年間の授業計画,成果に係る評価ということでございます。
それから,特例事項の大きな2点目,共同教育課程の修得すべき単位数の緩和についてでございます。この場合にも,これまで申し上げているような状況を満たす大学におきましては,通常ですと「31単位」又は「32単位」,それぞれの大学で修得すべき単位数というものを共同教育課程の場合でも置かなければなりませんが,これを「20単位」に緩和するということを考えてはどうかと考えております。この単位数は4年制の学部の場合でございまして,その他の場合については別添にまとめておりますので,御参照ください。
それから,スライド6でございます。前回お示しした点からの主な変更点をまとめております。中身は繰り返しになりますので,省略させていただきます。
それから,今後のスケジュールでございますけれども,本日,この大学分科会におきまして,おおむね御了解いただきましたら,この後,パブリックコメントを実施させていただき,可能でしたら,次回以降の大学分科会で更に審議を進めさせていただきたいと考えております。
説明は以上でございます。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
それでは,御意見,御質問等をお伺いいたします。
志賀委員,どうぞ。

【志賀委員】 ありがとうございます。
これは施行された後,例えば,文部科学省として,どれぐらいの一般社団法人ができるのか,どれぐらいの規模で全国をカバーされるのか。数値的な目標というんでしょうか,目安というんでしょうか,予想というんでしょうか,そういうものがおありでしょうか。

【永田分科会長】 事務局からお答えいただけますか。

【牛尾高等教育企画課長】 お答えさせていただきます。
現時点において,具体的な数値目標と言えるようなものまで,我々として何か考えているものはございませんけれども,既に幾つかの県におきまして,具体的に実施したいという御相談も頂いておりますし,あと,これを活用して,別途の制度になりますけれど,教職課程についても共同で開設できるようにしたいということを考えておりますが,こうしたものについても,制度化された場合には行いたいという御相談も頂いていますので,幾つかの具体的な例は始まるかと思います。
我々としては,それぞれの地域において,全国にわたり,こうした制度を御活用いただくことを期待しております。

【永田分科会長】 清水委員,どうぞ。

【清水委員】 教職課程の共同設置については,また別途御提案されるということをお聞きしております。今回,規制緩和措置に伴う教育の質保証,これが非常に重要な事項になっておりますが,これまでの議論を経て,かなりその質の保証が担保されるような設計になっていると思います。
その上でお聞きしたいのですが,認定制度なので,認定の際に,申請に基づく認定だと思います。その認定は別途,例えば審査委員会みたいなものを設けて認定するのか。その申請に対して認定されるまでのプロセスというのはどういうふうにお考えなのかお聞きしたいと思います。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
事務局からお答えいただけますか。

【牛尾高等教育企画課長】 失礼いたします。
まず一般社団法人の認定についてでございますけれども,先ほど御紹介したような基準でございますので,基本的には外形的に確認できる内容が中心かと考えておりますので,現時点では,このためだけの特別な審査組織等を設けることは考えておりません。

【永田分科会長】 清水委員,よろしいですか。

【清水委員】 はい。ありがとうございます。

【永田分科会長】 清水委員の今のご懸念をもう一歩踏み込んで,事務局にお答えいただきたいのですが,一般社団法人の認定については,文部科学大臣に対しての申請と認定でよろしいかと思います。問題は,そこで設置される教育課程については,小規模な大学が学部学科を作るよりは大がかりなものになるので,これには一定のプロセスが必要なのではないかと思いますが,いかがでしょうか。

【牛尾高等教育企画課長】 御質問の趣旨としては,この制度の活用を前提としたような新しい学部や学科を作ることを構想した申請等が出てきた場合ということでよろしいでしょうか。

【永田分科会長】 はい。

【牛尾高等教育企画課長】 そういった場合も当然あり得るとは考えておりますけれども,その場合,一部の科目については,提携する既存の大学の科目を,ある意味自大学の科目として設置構想を作るということになるかと思います。その際には,既存の大学の科目であっても,その科目の担当者が適切な教員であるかどうかといったような教員審査は改めてさせていただくという形で,新設のところだけではなくて,連携する既存の大学も含めた質保証は改めてチェックするということを設置審査の中でやっていきたいと考えております。

【永田分科会長】 清水委員,どうぞ。

【清水委員】 新しい組織を作るとか,設置する場合には,もちろん設置審マターになったりするわけですが,そうでない場合についての,例えば,連携開設科目をどういう形で設定するかといったことについては,一般社団法人の理事会の下に教育の質保証委員会というのを立ち上げております。そこで規則とか内規とか,あるいは評価基準を設けるという,徹底した質保証のための仕掛けを作らなければいけないと思っていますし,我々も,そういう形で今進めております。
ですから,大きな組織を作る場合には,もちろん国の審査は必要だと思いますが,そうでない場合には,理事会はもとより,一般社団法人の質保証委員会がそこをチェックしたり,あるいは公表義務を果たしたりして質を担保できるのではないかと思っております。

【永田分科会長】 麻生委員,どうぞ。

【麻生委員】 失礼します。
大学院,学部,それから,短期大学について,上限単位も含めてよく分かるようになったんですが。前から言っています一番のポイントである,短期大学士課程と学士課程が同じ中に入ったときに,その単位のやり取りが,この中では上限単位が,短期大学は短期大学で決められていると思いますが,短期大学の学生が大学に行ってそれを履修する逆のパターン,若しくは,ここには大学院も入っていますので,大学院まで含めてこれは想定されているのか,若しくは,同じ学士課程レベルの中でのやり取りを想定されているのか。ここが私には読み取れないので,説明いただけますでしょうか。

【永田分科会長】 事務局からお答えいただけますか。

【一色大学振興課課長補佐】 失礼いたします。大学振興課でございます。
今想定しておりますのは,大学の中には短期大学,また専門職大学も含まれますけれども,大学間でのやり取り,また,大学院同士のやり取りというのを想定しているところでございます。
具体にどういった形で行うのかにつきましては,前々回の分科会でもお答えをさせていただいておりますけれども,連携科目を実際に設定する際には,それぞれの大学間の協議の場を設けまして,先ほど牛尾課長からも御説明ありましたけれども,授業
の方法や内容,また授業計画等々を,それらの大学間の中で検討していくことになりますので,その中で,大学間で合意が取れるものを認めていくことになると考えております。

【永田分科会長】 吉岡委員,どうぞ。

【吉岡委員】 質問というほどのものではないのですが,一つ,こういう形でいろいろな大学が連携してくることになった場合に,個々の大学にとっての,一番簡単に言えば,3ポリシーとの関係ということは,きちんと分かるようにしていく必要があるだろうと思います。新しくする場合には,設置の問題になりますし,認証評価等でも,その辺のところはきちんとすべきだろうと思います。
それから,もう1点は,先ほどの私の意見とちょっとつながっているのですけれど,この3か月ぐらいで,我々の空間意識は,オンラインというもので随分変わったと思うんですね。このコンソーシアム等を作っていくというときのイメージの地域性というのは随分変わってきた。技術も上がってきたので,何となく一定の自治体等が基礎になるというイメージから,どこまで広げられるのかということは,ちょっと考えておく必要があるのかなと思いました。極端に言えば,どこでもできるということになりかねない。それはいいことかもしれませんけれども,どういう問題が生じるかということは考えた方がいいのではないかと思います。
以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
そのほか,いかがでしょう,御意見,御質問等はよろしいですか。
皆さんにいただいた御意見で,制度そのものがよくないという御意見はなかったと思いますので,うまく反映させて実現できるようにしたいと思います。そのために,パブリックコメント等で意見をお聞きするという段階なのだと思います。
しかし,私から一言だけ申し上げると,各大学の個性というか,その大学であるという理由が明確になりつつ,このような連携が深められていくことが非常に重要だと思います。いろいろな制度を使えるから使えばいいという,単なる功利的・便宜的なものではないはずですので,それは当然,大学人が考えていることだとは思いますけれども,最後にもう一度言いたいと思います。
益戸委員,どうぞ。

【益戸委員】 時間はかかりましたが,大変すばらしい枠組みになっているので,私としては大変満足しております。
ここで重要なことは,今までは連携というのは,チームワークや協力といった,比較的情緒的な部分でのつながりが多かったと思いますが,こうした形での枠組みがしっかりできるというのは,場合によっては牽制(けんせい)効果も非常にあるのではないかと思います。
従いまして,特に言われている教育の質保証という意味においても重要だと思いますので,ある意味ではお互い牽制(けんせい)しながら発展していくということについての前広な考え方というのもきっちり残していただきたいというのが一つ目です。
もう一つは,当然,文部科学省の中に相談窓口のようなものができると思いますが,作った以上は責任を持って,文部科学省としてもリードをしていただきたいと思います。
以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
最後に基本的精神を述べていただきました。
金子委員,どうぞ。

【金子委員】 質問ですが,既に大学の必要単位を修了するのには,今,他大学での単位,60単位をトランスファーすることは認められているわけです。それと,今回,この連携で認められる60単位というのは,内数になるのか,それとも全く別なものとなると考えられるのかということですが。

【永田分科会長】 事務局からお答えいただけますか。

【一色大学振興課課長補佐】 失礼いたします。
オンラインとの関係でございますが,オンラインで全て実施した場合については,卒業要件として60単位の範囲内となりますが,この連携科目がオンラインかどうかということについては,制度的に分けて整理しているものではございません。

【金子委員】 失礼しました。オンラインではなくて,他大学で履修した単位は,上限60単位ですけれども,これとはどう関係が。

【一色大学振興課課長補佐】 失礼いたしました。
単位互換との関係でございますが,単位互換とこの制度については,別ものになります。単位互換は,他大学で修得した単位につきまして,飽くまで自ら設置している科目の単位とみなすということになります。
この連携科目につきましては,他の大学が開設した科目を自大学の科目としてみなすというものになりますので,制度的位置付けとしては違うものであり,通常の単位互換の60単位は60単位として,こちらの制度で認められる単位,30単位については別途ということになります。

【永田分科会長】 金子委員,よろしいでしょうか。

【金子委員】 そうしますと,非常に多くの部分,半分以上が自大学以外で授業しなくても学位が取れるということになりますが。連携科目についての質保証は,何らかの仕組みができるにしても,学士そのものについて,一つの大学でもって,自大学で取った授業が半分を大きく割り込むような形で卒業できるということになってしまうわけですけれども,これに対しては,何らかの形で質保証はできるものなんでしょうか。

【一色大学振興課課長補佐】 昨年の夏に通知を出しましたけれども,その中で,単位互換の考え方について改めて整理をいたしました。単位互換については,必修科目などは必ず自大学において設置し,一対一対応をすることが前提となっておりますので,単位互換するに当たり,単に他大学の学修だけで行われるわけではなく,自大学でもきちんとした環境を整えるということが必須となっております。

【永田分科会長】 今,金子委員が御指摘された点を私も心配してきました。要するに,自大学で開設していれば他大学で受けても単位互換が可能である,そのほかに,大学連携等推進法人のようなシステムを使ってさらに他大学の単位も取ることが可能となる。そうなると,学生に対して学位を授与する大学はどのような個性を発揮しているのかよく分からなくなる,ということではいけないのではと思います。
ですから,既存の大学が連携して新たな教育課程を作るときも,先ほど清水委員が御指摘されたように,それぞれの機構でしっかりとお考えの上,それを検討・認可いただく第三者があった方がいいのかなと思っています。
事務局から何かありますでしょうか。

【一色大学振興課課長補佐】 各大学におきまして,ディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシーをしっかりと持っていただくことがまず重要になります。それぞれの理念に基づいて,連携科目,また単位互換がしっかりと行われているかどうかということを確認していくことが必要となります。
また,本分科会の下に置かれております質保証システム部会におきましても,今後,質保証のシステム全体を議論していくことになりますので,その中でも関連の議論はなされていくことと思います。その中で,質保証の在り方も含めて,今後検討していくものと考えております。

【永田分科会長】 金子委員,どうぞ。

【金子委員】 これ,提供授業についての質はある程度担保できるかもしれないんですが,個々の学生が完了している,修得した単位全体として,これは一貫性があって,質がそろっているかということについては,それでは保証できないんですね。
要するに,今まではあんまりよそから単位を持ってくるとか,共同授業をするとか考えていませんから,これ,自動的に一つの大学で授業の質を保証すれば,学生が修得する単位の質保証になると考えていたんですが,このように柔軟になってきますと,個々の学生が本当に一貫して,しかも質の高い授業を取って卒業しているかということについての保証がかなり難しくなる。
これは,アメリカで,特に遠隔教育を基にした大学は,互いにいろんなところから授業を交換し合って学位を作っちゃうというのがあるんですね。そういったこともあるので,それについては,私は柔軟化するのは一般的には結構だと思いますが,問題があるということをどこかで意識しておいて,それに対する配慮を何らかの形で作るようなことを将来は考えた方がいいのではないかと思います。
以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
髙宮委員,どうぞ。

【髙宮委員】 ありがとうございます。この認定制度に関して,先ほど金子委員からもありましたようにこれは将来的にオンラインの互換にも関係することと思いますので,それを導入した際の大学に求められる何かしらの基準が,ここにあらかじめ組み込まれているのかどうかを質問させていただきます。

【永田分科会長】 事務局からお答えいただけますか。

【牛尾高等教育企画課長】 まず一般社団法人の認定制度に関わってのことでお答えさせていただきますと,当然,ここの中では,連携して行う業務について,大学と連携推進方針というものを策定・公表します。これを一般社団法人として作るということは,その構成要素である社員の各大学については,基本的にそれに従っていろんな活動を行っていただくという形になるというふうに考えております。

【一色大学振興課課長補佐】 失礼いたします。

【永田分科会長】 どうぞ。

【一色大学振興課課長補佐】 オンラインの関係でございますが,オンラインにつきましては,制度的には分けるものではなく,今回の連携科目についての質保証と直接的には関わるものではございませんが,今後,withコロナ,afterコロナと言われる中で,オンライン授業が多くなってくることも当然予想されますので,対面とオンラインを含めた授業の在り方については,今後議論が必要と考えています。
これらのことについても,先ほど申しました質保証システム部会での検討の一つの要素となっておりますので,その中で議論していくこととなると考えております。
また,先ほど永田分科会長,また金子委員からの御指摘ありました,各大学でのディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシーの整合性等々については,今回改正した際に施行通知においてもしっかりと示したいと考えておりますし,また,認証評価における評価という形でも今後行われていくと思いますので,そういった形でのチェックの方法も含めて,今後検討していきたいと考えております。

【永田分科会長】 ここでまず一番重要な点は,一般社団法人を申請・認定するという手続きを文部科学大臣の下で行うということについて,おおむね皆さん問題がないとお考えですが,具体的に教育課程を構築していくプロセスにおいて,若干の危惧があるということです。
金子委員が述べられたように,アメリカや韓国にはキャンパスに学生が集まることなく,オンライン授業だけで学位を取って卒業していく,という大学も出てきています。
このような点も,一般社団法人を認定するこの枠組みの下で,また実際に大学の教育課程を認定していくときに,設置者と文部科学省とよく御相談できる仕組みになっていると良いのではと思います。
よろしいでしょうか。今後パブリックコメントに付した際には,同じような意見も出ると思いますので,それも含めて文部科学省から修正案を出していただけるものと思っております。
清水委員,どうぞ。

【清水委員】
実際に,一般社団法人の中に質保証委員会を設置して,規則とか内規とか評価基準などを策定して議論しているのですが,そこには当然,各大学の三つのポリシーの見直しとか,教学管理のシステム,それらとの整合性を図るといったやるべきことがあります。
先ほど金子委員が御心配された点につきましては,従来の単位互換制度と今回の連携開設科目制度というのは,似ているようですけど違っているものと考えています。単位互換制度と連携開設科目制度というのは,先ほど文部科学省から説明がありましたけれど,ある意味別ものとなっています。
したがって,単位互換制度を維持しながら連携開設科目も広げるということは,実際にはほとんど考えられないです。従来の単位互換制度を充実する上で,この連携開設科目制度の方に切り替えるというような考えでないと,この質保証というのが担保できないと思っております。

【永田分科会長】 優れた大学や優れた機構は,そのようにお考えになります。しかし,この枠組みで作って良いと法律等で規定され,その中身についての議論ができないで認定されることになると,中には質保証が機能しない機構も出てくるという懸念をお持ちの方は多いと思います。

【清水委員】 そこは,事後の報告等できちっとチェックするシステムもできていますので,事後チェックをしっかりしてほしいと思います。

【永田分科会長】 要するに,システムとしては賛成であるが,システムの趣旨に反する運用は防ぎたい,という議論ではないかと思います。
よろしいでしょうか。またパブリックコメントの後に皆さんで議論して,最終的に,本件は省令改正になるのではないかと思いますが,また御議論をお願いしたいと思います。
それでは,四つ目の議題です。教育と研究を両輪とする大学教育の在り方についてということで,資料4-1,論点整理の案というのが出てまいりました。事務局から説明いただいた後に,議論をしたいと思います。

【牛尾高等教育企画課長】 それでは,資料4-1に基づきまして御説明をさせていただきます。
これまで何回か御議論いただいたものをベースに,少し構成の見直しもさせていただいた上でまとめております。
中身としましては,大学における「教育」と「研究」の両輪,大学教員の在り方,大学運営マネジメント,その他という四つの大きな柱で整理をさせていただいておりまして,さらに,それぞれの柱の項目ごとに,現状の認識と今後の基本的な方向性を二つに分けて記載するようにしてございます。特に,現状の認識につきましては,お配りしております参考資料等を基に,事務局の方で少し整理をさせていただいたものも加えたりなどさせていただいております。
では,前回の資料からの大きく変わっている点に絞って御説明をさせていただきたいと思います。
まず,「はじめに」のところで,2ページ目を御覧ください。検討の必要性についてというところで,改めて今回この議論をしていることの必要性について整理を加えさせていただいております。
最初の丸にございますように,世界的規模の激しい社会的変化の中で,大学の教育研究の本来的な機能の発揮を通じて,社会の将来的な発展を支え,推進する基盤になるものであるという中での教育と研究の在り方というものを考えていこうということでございます。
特に,四つ目の丸でございますけれども,その中で教員の果たす役割というのが極めて重要であるということ。
それから,その下の丸でございますけれども,この教育研究機能を教員がしっかり果たすためには,教員と職員との適切な役割分担,これも大事であるということを示しております。
それから,3ページ目になりますけれども,新型コロナウイルス感染症の拡大ということを踏まえて,withコロナ,postコロナ時代の大学教育の姿についても考える。こういう必要性からも,この検討が必要であるとまとめさせていただいております。
続きまして,個々の柱について御説明させていただきます。
まず,大学における「教育」と「研究」の両輪でございます。大きく記述を加えているものは,そのうちの(2)の教育と研究の関係について,5ページのところでございます。現状の認識のところを少し書き加えさせていただいております。
まず二つ目の丸のところで,教育と研究はそもそも別のものではなく,教員の研究成果によって得られる知識を体系化したものが学問であり,それを学生に教えるのが教育であるというのが基本的な教育と研究の関係であるということを示しております。
それから,三つ目の丸でございますけれども,研究ということについて見ても,研究は教員と学生の協業で進められるもの,いわゆるフンボルト主義ではそうなっているということ。ですので,学生にとっても,研究的な側面を持った行動が求められるということを記しております。
それから,四つ目の丸でございますけれども,この教育と研究の関係は学部と大学院段階では異なっている面があるということで,特に学士課程における教育と研究の在り方を整理しております。
それから,5ページ目の一番下の丸のところでは,大学院修士・博士課程における研究と教育の関係というものを整理して記述をさせていただいているところでございます。
続いて,7ページから御覧ください。大学教員の在り方についてということでまとめております。そのうちの(2)の大学教員の採用・評価についてというところを,少し記述を膨らませていただいております。
現状の認識ということでございますけれども,大学教員の採用に関しまして,公募を通じた多様な人材確保が進んできてはおりますが,他大学出身者の積極的採用は余り進んでいないという指摘があるということ。
それから,次の丸のところでは,「テニュアトラック制度」というものがございますけれども,このテニュアトラックを導入している大学は2割にも満たないという現状であるということなどを書いております。
それから,8ページ目を御覧いただければと思います。最初の丸ですけれども,大学教員の評価に関して,教育面における業績評価を実施している大学は年々増えてきてはおりますけれども,それでも7割にとどまっていること。それから,そうは言いつつ,教育における評価というのが難しいことも事実であるということを記載しております。
それから,一つ飛びまして,三つ目の丸ですけれども,大学教員についての国際比較の調査を見ますと,教育活動に関する評価については,同僚,部局長から評価される機会が少ない。特に学生から評価される機会が低いというのが日本の傾向である。それから,研究活動に関する評価については,同僚を含む他者から評価される機会が少ないという傾向が見られるということでございます。
それから,四つ目の丸でございますけれども,学生による授業評価は実施されておりますけれども,授業アンケートの結果を組織的に検討し,授業内容等に反映する機会を設けている大学は半数程度にとどまっているといった現状を記載させていただいております。
それから,飛びまして,9ページを御覧ください。(3)教育研究機能の活性化についての部分でございます。ここも現状認識のところを少し詳しく記載を膨らませております。
最初の丸でございますけれども,学長や学部長からの課題の指摘としまして,授業科目の内容が各教員の裁量に依存し,教員間の連携が十分でない,あるいは,授業科目が細分化され,開設科目数が多いことが課題であるといった指摘があることを記載しております。
それから,次の10ページ目を御覧ください。上から二つ目の丸でございますけれども,大学における学術研究におきまして,学際的・分野融合的な研究が進められてきておりますので,チームとして活動することの重要性が高まっているということを記載しております。
それから,次の丸でございます。TAについてでございます。大学側への調査では,7割の大学でTAを配置しているという回答ですが,学生に対する調査を見ると,約半数の学生が,そういった教員以外の補助的な指導が余りなかったという回答がございまして,この辺に課題があるのではないかということを記載させていただいております。
それから,11ページ目のところでございます。基本的な方向性についてでございますが,今般のコロナ禍において,遠隔・オンライン教育が推進されておりまして,その中で,教員が学生とのコミュニケーションを意識したり,教員と学生が共に学ぶ一体感が生まれたりするということが期待されるのではないかということを記載しております。
それから,二つ目の丸ですが,TAやRAの関係でございますけれども,学生についても,研究活動を行っているという観点に立ちますと,研究活動に対する適正な対価が払われるということは当たり前とすることが必要である。あわせて,TA・RAの処遇や環境の向上というのが重要であるということを記載しております。
それから,最後の丸のところで,技術職員についても記載をさせていただいております。技術職員について,組織内における位置付け,処遇の明確化が必要ではないか。それから,大学等が連携して技術職員のスキルアップの取組を行うことが必要ではないかといった記載を追加しております。
3番目の大学運営のマネジメントでございます。ここについても,現状認識を少し厚く加えております。
二つ目の丸でございますけれども,教員が大学の運営業務に多くの時間を費やしているということから,大学の管理職や事務職員に権限移譲するということが考えられるところですけれども,教員の側(がわ)の不安や抵抗感があるのではないかということを記載しております。
それから,大学への調査では,教授会の運営上の工夫は様々に行われつつありますけれども,10年前と比べて教授会の時間が短くなったという回答は3割にとどまっているということを記載しております。
それから,四つ目の丸でございますけれども,研究パフォーマンスの関係ですが,研究資金の不足を発端に,研究人材の不足や研究環境の悪化が生じ,更に時間確保が一層困難になるという悪循環が起きているのではないかということを記載しております。
それから,次の丸では,学生支援に関する業務について,多くの大学で教職協働が行われておりますけれども,事務系職員が減少したということ,それから,諸外国と比べると日本大学はもともと大学の職員数は少ないといったことから,大学教員の負担感があるのではないかということを記載しております。
それから,最後の丸のところ,13ページになりますけれども,コロナ禍におきまして,事務職員の存在意義を再確認できたという意見があったということと,このコロナ禍を機に事務のオンライン化等も進むことが期待されるということを記載しております。
それから,基本的な方向性でございますけれども,三つ目の丸のところでございますが,教職協働から更に一歩前進して,教育研究以外は事務職員に任せるという考え方を浸透させる必要性があるのではないか。
それから,次の丸のところですけれども,教員の評価だけではなくて,学部・研究科といった組織単位の評価というものも必要ではないかということを記載しております。
それから,最後のページ,その他でございます。これは今回,新規に書かせていただいております。個々の論点というよりは,今回の議論全体に関わるということでまとめておりますが,今回の議論の中で明らかになった課題については,小手先ではない抜本的な改善提案を行う必要があるのではないかといったことですとか,大学がいかに社会貢献をしていくか,そして,それによって得られる経済効果をいかに大学に還元していくかといったことも大事である。それから,大学が社会の期待に応えるということも大事であるといったようなことを記載させていただいております。
それから,資料4-2は参考資料でございますけれども,若干新しいデータを追加しておりますので,その御紹介だけさせていただきます。
資料4-2のスライドの30でございますけれども,テニュアトラックの導入状況について,平成25年から29年の状況についてまとめた資料を追加しております。
それから,スライドの35以降でございますけれども,研究活動についての評価,あるいは学生による授業評価の実施状況などについて,35のスライドから38のスライドまで追加させていただいております。
あともう1点ですけれども,スライドの61からでございますけれども,私どもの方で,大学運営業務に関する事例調査というものを昨年度実施させていただいております。大学教員の学内事務の実情でありますとか改善策について,六つの大学を選びまして実地ヒアリング,インタビュー等を行いまして,どんな現状にあるか,あるいは,どんな改善の具体的な事例があるかということを取りまとめた調査を実施しております。その概要について,スライドの61から66までにまとめておりますので,こちらも適宜御参照いただければと思います。
説明は以上でございます。

【永田分科会長】 ありがとうございました。
新しく付け加わったところを中心に説明いただきましたが,論点として,このように整理されています。ここから我々の議論はいよいよ加速化するわけでして,論点を洗い出しただけで終わりではなくて,この論点の中で解決すべき問題については,最終的に,具体的にある程度の方向性を持って提言をしていかないといけないだろうと思っています。
今回は論点整理ですので,論点で足らない部分,あるいは,こういった論点もまだ残っているというのがあればお申し出いただくとともに,こうした中で出てきた論点で,もしこういう解決策があるというような御提案があれば,それもお受けしたいと思います。いかがでしょうか。御意見等,お伺いいたします。
有信委員,どうぞ。

【有信委員】 いろいろ手間取って申し訳ありません。
非常によく整理をされてきていたと思います。ただ,少し気をつけなければいけないと思うのは,個別個別で述べられている項目はほとんど全て正しいというか,みんなエビデンスベースで整理をされていますし,各委員からの意見も反映されていると思いますが,個別個別には正しいんだけど,それ相互がお互いに矛盾しているとか,全体の位置付け上,もうちょっと丁寧に言わなければまずいところとか,そういうところをそろそろ整理をしていかないとまずいかなという気がしてきました。
例えば,研究と教育が不可分であると簡単に言っていますけれども,これはそんなに簡単ではなくて,その後ろの方に,逆に,今度は教育が各教員の個人の力量に任されたり,微細にわたり過ぎているというような指摘があったりとか,あと,もう一方で,学生が研究者であるというような言い方を安易にしてしまうと,例えば,平成17年の大学院答申が出るときの一番の懸念事項は,学生が,要するに,教員の単純な安価な研究労働力として使い回されていて,学生に必要な教育がきちんと施されていないというような点が一番の心配事項であって,それを踏まえて,大学院教育改革というのが延々とやられてきたという経緯があります。
そういうこともあって,個別個別に言われていることは確かにそのとおりで,学生も,エビデンスとしては研究者として使われているんだけど,それを,例えば肯定的に見つつ,今のような議論を展開していくと,行き着く先は変なことになってしまうということがありますので,やっぱりどこかで全体像というのをきちんと作りつつ,それぞれの個別個別の項目のはまり方,位置付けをそろそろ考えていかないといけないような気がします。そういう意味で,個別の点について,やっぱり議論を深める必要があるんだろうと思います。
以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
論点整理の次の段階では,もう少し骨太な,最も集中的に議論しなければいけないところから,その下に連なるツリーができないといけないという話を事務局としています。論点整理にもっと御意見いただければ,ツリーを作ることができるかなと思っています。
益戸委員,どうぞ。

【益戸委員】 教育機関における教育と研究というのは,企業における製品の質やサービスの質と同じようなアウトプットだと理解をしております。この論点整理の中では,教育,研究の質の問題について既に様々な御意見が入っていると思いますが,アウトプットのレベルを上げるためには,根本的に会社の中,イコール大学の中を変えていく努力が必要だと考えます。そういう意味で言うと,この中の3番の大学運営マネジメントについてという項目について私が感じるのは,教育研究に比べると余り踏み込んでいないのではないかということです。根本的に経営そのものの仕組みについても,考え直す必要があるのではないかと考えます。
ですから,立派な教育者や研究者の方が,イコール立派な経営者なのかという点についても考える必要があるのではないでしょうか。そうすると,場合によっては,設置基準の中のことまで踏み込む必要も出てくるのではないかと感じながら,この論点整理を読んでおりました。
以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
マネジメントに関する御意見はまだ多くありませんので,今,益戸委員が述べられたことは大変重要です。マネジメントに関しては,もっと踏み込んで述べていかないといけないと思います。
三村委員,どうぞ。

【三村委員】 どうもありがとうございます。三村です。
大変よくまとめていただいていると思います。
それで,教育と研究を両輪とする大学教育というのは非常に幅が広くて,いろんなレベルがあるなと思います。5ページの下から二つ目の丸で,教育と研究の関係は学部と大学院では異なるというふうに書いてあって,非常に大きなくくりかもしれませんが,学部における教育と研究の関係,それから,大学院教育の関係というのを分けて考えるというのは,いいことなのではないかなと私は思います。
5ページの下の丸の学部の関係では,学生が受け身的に,研究でいろいろ新しい知見を持っている先生から,最新の知識を教えられる対象というような形になっているので,学部においても,課題解決型,あるいは探究型のプロジェクトや研究をやって,学生自身がそういう発想や力を身につけていくと,そういう側面もあることは重要なのではないかと思います。
一方で,大学院の方なんですけど,先ほど有信委員がおっしゃったように,大学院に行ったら,みんなとにかく研究室にこもってずっと勉強,研究というようなスタイルが長く続いたので,もっと幅広い体系的な知識とか,周辺分野の情報とか,そういう広い視野を身につける,そういうコースワークが重要だというのは随分言われてきたわけですよね。ですから,教育と研究を両輪とする大学教育というときに,学部レベルでの課題と大学院の課題というのは違う面があるのではないか。そういうことを書き分けて方向を示すというのが重要だと思います。
それで,そういうつもりで6ページを見ていくと,基本的な方向性というのは,この項目,丸が一つだけなので,学部,大学院それぞれについて我々が次に何をやるかというのは,今後考えなければいけないというふうに思ったところです。

【永田分科会長】 ありがとうございます。大変重要な御指摘です。
清水委員,どうぞ。

【清水委員】 清水です。
前の議論の中でテニュアシステムの見直しという発言をしましたけれど,それと関連して,5ページのところに,一方では,教育と研究は別ものではなく不可分である。これは共通認識だと思いますが,現実として,上の二つの丸にありますように,両立が困難だとか,あるいは教育や研究の重点の置き方にメリハリをつけるといった指摘もあります。これも理解できるのですが,ではこれをシステムとしてどういうふうに設計していくかというのが大事になります。
私は,教員組織の新しい職の改正とテニュアシステムの制度,それが日本ではまだ十分に熟知されていなくて,制度が定着していないと考えています。私の一つの案は,具体的には展開しませんが,テニュアラインの教員とノンテニュアラインの教員に制度として分けることです。テニュアラインの教員というのは,教育と研究が必須であり,その機能を十分に達成できる人となります。しかし,教員によっては,研究にはすごく優れた能力を持っている,あるいは,教育の面で能力を持っている人もいます。こうした人のためにノンテニュアラインの教員組織として採用できるような制度を設け,教授,准教授,助教という職位を同じにします。テニュアラインの教授とノンテニュアラインの教授というような制度にして,うまく教育と研究を大学の中で機能させるという,そういう制度づくりが私はいいと思っております。
今日は,そこだけにしておきます。

【永田分科会長】 ありがとうございます。これ以上踏み込むと,様々な御意見が出てきそうな内容ですので,本日は御意見を承ったということにとどめたいと思います。
吉岡委員,どうぞ。

【吉岡委員】 吉岡です。
いろんな論点が出ているところで,なかなか大変だと思います。
一つは,先ほどの有信委員からのお話にもありましたが,かなり重要なことだと私は前から思っている点で,要するに,学生というものをどう位置付けるかということは,やはりちゃんと考えておかなくてはいけないと思います。
研究ということを考えた場合でも,いわゆる研究所という形で独立しているものと,大学の中で研究と教育ということが考えられる場合との違いは,そこに学生がいるからということだろうと思います。
学生とは何かということであるわけですが,学生の位置付けであるとか,学生はどうあるべきか,ということについての議論はやはり必要ではないか。これは繰り返し言われていることですけれども,要するに,学生の意識が消費者になってしまっていて,サービスの受益者になってしまっている。これをどういうふうに変えて,学生の主体的な関与を導き出すのかというのは,かなり大きな要であると思います。それがやはり研究と教育を結びつけるということの要だろうと思います。
もう一つは,この論点整理の最後のところで,「教育と研究を両輪として人材育成と科学技術の発展に資する大学のこと」というふうに出ています。これだと,若干,科学技術というところに重きが置かれているように読めます。やはり大学の中の,例えば,人文学の問題であるとか,社会科学の問題であるとかということをどういうふうに位置付けるのか。科学技術というのは見えやすいので,社会貢献として見えやすいわけですけれども,人文学の役割であるということは,どこかに組み込んでおいた方がいいのではないかなと思います。知の基盤を確立していくということにとっての人文学の意義というのは重要であろうと思います。これは亀山委員とか,その辺りから発言いただいた方がいいかもしれません。
その2点です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。科学技術という表現が誤解を招くのかもしれません。科学の発展に資するという意味であれば,人文科学も社会科学も含めどの分野もそうでしょうし,それがまた技術に還元されてくるのでしょう。
曄道委員,どうぞ。

【曄道委員】 ありがとうございます。2点お願いいたします。
まず1点目は,先ほど清水委員からの御指摘もあったところです。9ページあたりに,教員の在り方について,基本的な方向性を示していただいていますけれども。この教員評価というのは,もう長年,大学の中で大きな課題としてずっと向き合ってきたと思うんですけれども,この中で,今回,その評価基準とか,それから,評価の指標のことが幾つかの丸の中に埋め込んでいただいてあると思うんですが。やはり評価をして,それがどうその教員に向けて実際に効果を及ぼすのかという,その評価の精度という言葉をもう少し強く打ち出す段階にもう来ているのではないかなということを,1点指摘させていただきたいと思います。
それから,14ページにある,その他についてというところは,この中でいろいろと社会への貢献とか,社会へのアピールとか,それから,今も吉岡委員の方からお話があったような人材の育成と科学のといったような,総括的な書きぶりをしていただいているような気がするんですが。この中に職員のことが入ってきていないのがちょっと気になりまして,社会にアピールしていくというのも,必ずしも教員だけではないと思いますし,大学のシステマティックな機能ということについて,もう少し触れていただくのがよろしいのではないかなと感じました。
以上でございます。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
志賀委員,どうぞ。

【志賀委員】 ありがとうございます。
今までも何度か発言させていただいていることが論点として整理されていて,いいなと思うんですが。
今日はちょっと違う論点なんですけれども。今日の最初の議題で,産学連携で就職活動みたいな話をしていて,その中で,研究型インターンシップのような話が加わったわけなんですけれども。今回,大学の中の教育と研究というところに閉じた議論になっているんですが,私は今,そういういろんな形のベンチャー投資,アカデミアシーズへの投資等々をやっている中で,大学の研究の成果を世に出していくところ,そこがやっぱり産学連携の弱さというのは,この大学分科会でも何度も指摘しているんですが,やっぱり大学の教育と研究を両立させていく在り方から,更に社会に出ていくところの連携みたいな。今日,更に研究型インターンシップみたいな議論が出てきたので,そういうものを膨らませていって,本当に自分で研究のマネジメントできる人材を大学が育てていって,それが産業界の中に入っていって,産業界で実際に社会実装されていくみたいな流れがこの中にもあったらいいなというように感じたので,今日の議題に関連しているので,発言させていただきました。
以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。学校教育法において,教育,研究,その成果をもって社会貢献することが大学の役割になっています。教育,研究の両輪の話をすると,そのアウトカムとして,もちろん優れた人材を育成するという記述はあるけれども,生み出した成果を社会に還元していくという記述はありません。大切なことですね。
渡邉委員,どうぞ。

【渡邉委員】 どうもありがとうございます。
私が申し上げたいことも,今の永田分科会長のご発言と重なるところがあります。
この議論の中で,教育と研究の両輪で何を目指すのか,どこに行くのかということが大変重要です。最終ページの最後の2行に,「教育と研究を両輪として人材育成と科学技術の発展に資する大学」との記載がありますが,本文の「はじめに」の「背景」にあるように,「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」(以下,「グランドデザイン答申」という。)で描いたような新しい社会構造に大学がどう貢献するのか,そのための教育と研究の両輪であると考えた方がよいと思います。したがって,先ほど吉岡委員もおっしゃったように,科学技術に限定するよりも,もう少し幅広い社会発展の視点で目的を書いた方がいいのではないでしょうか。また,その目的が明確になったとき,今回の報告書の中で,評価基軸というのをかなりのボリュームで入れていただいたことが非常に大きな意味を持つと思います。
教育活動の評価については,既に教学マネジメント特別委員会で議論されているので,この関係において,学生評価も含めて,どう評価するのかというのは明確になっていくと思います。ただ,本文に記載があるとおり,諸外国との比較において,日本の研究活動についての評価は,まだ確定していないと思われます。諸外国は外部評価のウエートが非常に高いのに対して,日本は外部評価が極めて希薄になっています。ここにどういった評価基軸を入れたらよいのか,これは最後の方の大学運営マネジメント全般に関わる問題も入ってくるので,非常に難しいと思います。
しかも,研究というのは,短期評価では誤る可能性がありますから,長期的な評価基軸を入れる必要があります。いずれにしても,この評価基軸を入れて,教育と研究の両輪を成り立たせて,それが目的に向かう,永田分科会長がおっしゃっていた全体ツリーという表現は,まさしくその辺がすっと入ってくるかどうかということだと思います。
論点整理は非常にいい方向にまとめられていると思いますので,是非,そうした視点を入れていただけたらと思いました。
以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
村田委員,どうぞ。

【村田委員】 ありがとうございます。
一番初めに有信委員がおっしゃったことと,それから,今,渡邉委員がおっしゃったことと関係しているんですが。全体として,教育と研究とを両輪とすると。学問分野によって,理系と文系,あるいは理系と人文社会科系によって,教育と研究の関係ってかなり違ってくる。あるいは,大学院と学部ではかなり違ってくると思うんですね。
そのときに,フンボルト型が書いてあるんですけれども,今,50%以上の高校生が大学に行く時代で,昔のようなフンボルト型でやっていけるのかなというのが,正直言って,私立大学の学長として,特に文系の学生を多く抱えている大学としては,正直な感想でございます。
特に,研究と教育の両輪,研究成果をそのまま学生にって,もちろん分かるんですけれども,同時に,先ほど永田分科会長がおっしゃったツリーを考えた場合に,例えば,知識レベルであれば,恐らく社会科学も自然科学もそうだと思うんですが,今回のオンラインも含めて,オンデマンドも含めて,知識のレベルは,もはや教員個人ではなくて,体系的に,そういったAIも含めて,できると思うんですね。むしろ大学での教育というのは,その知識を踏まえて議論し考えていく,その仕組みを作っていくことだと思って,そうなると,教員の役割がこれまでのようなものとは違って,コーチングだとか,ファシリテーターだとか,というような能力がより一層求められていきて,これまでと同じように教育と研究という形で考えられない部分も出てくるのではないかと感じています。
そのあたり,一つ課題として挙げていただければと思います。ちょっと根本的な問題かもしれません。
以上です。

【永田分科会長】 よく分かります。いまの論点をうまく全体像に落とし込むのはなかなか大変なのですが,教育の方法も如実に変わってきていることは間違いありません。教員が教えるという意識とともに,自分の研究やその教えている内容の深さを学生に伝えていかないと,大学で教員が学生と対面で教育することの価値がないのではと思います。
麻生委員,どうぞ。

【麻生委員】 麻生です。ありがとうございます。
この中に書かれている内容は,大学の教育と研究ですが,その中に,大学院と学部の違いが出てきていますが,実際,現状では,短期大学もありますし,そして,専門職大学も深く学芸を教授研究するという視点で現在発足しておりますので,そういった切り口の部分,すなわち短期大学と専門職に関わる部分,それも研究の深さが違うと思いますが,大学ですので研究をやっています。これについても入れていただきたいと私は思っております。
以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
今まで我々が述べた論点がまとめられているのが論点整理ですので,これを構造化して見せると,おそらく議論が不足していた論点が見つかると思うので,事務局と努力して,見せる形にしたいと思います。
多くの委員の先生方にとってはこうした議論を御経験されていると思うのですが,これまで中央教育審議会で研究をテーマに議論をすることはほとんどありませんでした。大学教育の在り方を研究と教育の両輪と捉えたり,あるいは研究と教育は互いにどのように影響を与えているのかを考えたり,ということすらほとんどなかったのです。今回,過去の教育,あるいは教育システムだけを議論していたところに,初めて研究という側面が入ってきたので,従前から議論されてきたことは少し寄せながら,なるべくこの研究と教育という部分で太い幹を作って,そこに話さなければいけない枝葉の部分も書き込んだ構造体ができるように努力をしたいと思っております。
そろそろ時間ですが,ほかに御意見はいかがでしょうか。よろしいですか。
よろしければ,次回までに議論のしやすいポイントをフォーカスしながら整理できるように努力をさせていただきます。
最後に,本日,昨年実施した全国学生調査(試行実施)の結果が出ておりまして,これについて,事務局から説明をさせていただきます。どうぞ。

【奥井高等教育企画課課長補佐】 失礼いたします。高等教育企画課,奥井でございます。資料5を御覧ください。
全国学生調査につきましては,昨年6月の本分科会でも御説明させていただきましたが,昨年冬に学生さんからアンケート回答を頂きまして,結果を取りまとめましたので,御報告をいたします。
まず,趣旨目的は,繰り返しになりますけれども,グランドデザイン答申の中で,「学修者本位の教育への転換」の一つとして,こういった全国の学生さんの声を聞こうということが試みとして提言されまして,今回は初回の調査ということで,適切な調査方法や質問項目などを整理・検証するということを目的に,試行実施させていただきました。今回参加意向のありました515大学,約40万人の学生さんに対して回答を求めたということになります。
2ページ目を御覧ください。実際の回答としましては,全体として,約11万人,回答率は27%の学生さんから声を頂きました。しかしながら,一定の回答数,30人以上かつ有効回答率が,その学部で10%以上ある者に関しては,10万2,000人,回答率が37%ということで,下の表を見ていただけますと,かなり小規模の学部・大学におきましては,回答率は非常に高かったという結果,大規模の大学・学部ほど低かったというのが,結果として出ております。
続きまして,4ページ目を御覧ください。これは設問の回答を集計したものでございます。項目の4というところに,レポートなどの課題が出されたかということで,これはほぼ「よくあった」「ある程度あった」ということが90%を超えておりますが,5ページ目を見ていただけますと,項目の5というところで,その適切なコメントが付されて返却されたかどうかという問いに対しては,「余りなかった」「ほとんどなかった」というものが半数を超えているというところでございます。
続きまして,6ページ目を御覧いただけますと,これは大学に入ってからの経験を尋ねた問いでございます。研究室やゼミでの少人数教育については,やはり「有用だった」という声が非常に多かった一方,インターンシップ,これは5日以上という定義をしておりますけれども,長期の,いわゆる長いインターンシップにつきましては,「経験していない」方が非常に多かったという結果も出ております。
7ページ目は,問3として,授業期間中の平均的な生活時間を尋ねております。これは,過去のいわゆる類似する学生調査とほぼ同様な結果になっておりまして,授業への出席時間は長く,予習等の授業に関する学習時間はやはり短いという状況でございます。
8ページ目を御覧ください。問4といたしまして,知識や能力を身に付けるために,大学教育は役立っているかという問いに対しては,各項目とも比較的「役立った」という回答が多くございました。一方で,統計数理,外国語を使う力については,実際経験していない方もいらっしゃるかもしれませんけれども,それほど役立っているという声は多くなかったという状況でございます。
11ページを御覧いただけますと,今回は全体の集計表だけお示ししておりますが,例えば学部規模別ですとか,あるいは学部の分野別,又は学部の分野別と学部規模別の回答状況を組み合わせた詳細なデータも公表しておりまして,各大学においては,こういったデータと比べながら,自大学の立ち位置について確認いただくことができるようにしております。
最後,12ページ目以降を御覧ください。今回は試行実施ということで,課題等も浮き彫りになっております。
まず調査方法・対象ですけれども,やはり回答率が低かった大学・学部も多くございました。こういった中では,どういった形で学生にアナウンスしたかというものを確認した,よりいい方法について検証していくこと。
また,(3)の質問項目ですけれども,問4の「役に立ったか」という設問は,やはり答えづらかったという学生さんからの意見もございますので,よい良い質問内容について検証すること。
また,13ページ目の(4)調査結果の取扱いについて,今回,全体の集計について取りまとめておりますが,大学がより他大学との比較ができるような形で,どういうやり方がいいのかというものを検証するとともに,各大学におきましては,個別のデータについてフィードバックしておりますので,教授会,あるいはFD・SDの研修でも使われているという御回答を頂いているというところでございます。
今年度につきましても,当初予定しておりましたが,今回のコロナ等の情勢を踏まえまして,今年度につきましては,検証する期間ということで,来年度,改めて試行実施できるように検討してまいりたいと考えております。
以上でございます。

【永田分科会長】 ありがとうございました。
学生さんの意識というか,感覚が数字になって表れています。何か御質問ございますでしょうか。
髙倉委員,どうぞ。

【髙倉委員】 今回の調査はトライアルということだが,検証すべき課題が浮かび上がってきた印象を持っている。
5ページ項目⑤「適切なコメントが付されて課題などの提出物が返却された」に対して,「あまりなかった」及び「ほとんどなかった」が合わせて57%,過半数以上である。このことは,教員からのフィードバックが物足りないという意見の表れだと思うので,学生を育てる観点からも,改善が必要ではないかと考える。
6ページ項目⑤では,7割がインターンシップ未経験とのデータが出ている。この結果をどう捉えているか。先ほど申し上げたとおり,単位認定制度の創設・拡充や,学生が取り組みやすくなるインセンティブが必要ではないかと考えるが,現段階で検討している取り組みがあればお聞かせいただきたい。
9ページ項目⑥⑦では,外国語力や統計数理の知識・技能が大学教育の役に立っていないとの回答が多い。このことは,我々が論議してきたリベラルアーツ教育の拡充が必要だということを裏付けていると考えられる。今回の調査結果を十分検証し,解決体制の構築を実施いただきたい。併せて,次回本調査に向け,調査内容をよりブラッシュアップし,有効回答率を向上させる努力をしていただきたい。

【永田分科会長】 益戸委員,どうぞ。

【益戸委員】 昨年度,日比谷座長の下,教学マネジメント委員会に参加させていただいておりました。今回は全国の学生調査(試行実施)ということで,全国でどうだったかという話だと思いますが,昨年,私が参加した教学マネジメント特別委員会というのは,決して理想論や精神論の議論ではなく,具体的に何をやるかということを議論する委員会だったと思います。
ですから,今回も早く個別大学ごとにこういった調査を行っていただいて,それをオープンにしていただきたいなと思いました。
以上です。

【永田分科会長】 大変大切な質保証に関わる御指摘です。
日比谷委員,どうぞ。

【日比谷委員】 私が申し上げようと思ったことは,髙倉委員の最初のポイントと完全に重なっているんですけれども。いろいろな課題や小テストはするんだけれど,コメントが返ってこないというのは,2016年に行われました国立教育政策研究所の調査でも,ほぼ同じような結果が出ています。
今の学生の試行調査で,例えば研究室やゼミが有意義だったということを言っている,これはよろしいんですが。特に,大学に入って1年生のとき,2年もそうですけれども,最初の段階でやはりたくさん課題を出し,それに教員がきちんとフィードバックしていくということで学習の習慣をつけなければ,なかなか学習時間も増えないし,自発的な学習者を育てられないと私は思います。
この点は繰り返し繰り返し結果が出ているんですけれど,フィードバックしないんだったら課題は出さない方がいいというのは,ちょっと言い過ぎかもしれませんけれども,そのぐらいにフィードバックの重要性ということも,中央教育審議会としても言っていくべきだと思います。
ありがとうございました。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
文部科学省としては,また来年度も実施するわけですが,当然ながら,今回の結果をブラッシュアップして,質問項目もよく精査した上で臨んでいくことになるのだろうと思っております。
その際,当然ながら,今回の御指摘を受けて,こういう点に留意したという御報告もあると思っております。本日は,まだ詳細に分析している段階なので,御指摘に対するお答えは控えさせていただいて,御意見を承ったところまでとさせていただくことで御了解いただきたいと思います。
それでは,以上で議題を終わらせていただきます。
一つだけ報告を申し上げます。この大学分科会の下に質保証システム部会という部会が置かれておりまして,7月3日に第1回目が開催されました。吉岡委員が部会長に就任されて,今後,具体的な議論を進めていくということになっています。
質保証システム部会は,大学設置基準,設置認定,アフターケア,認証評価といったシステム上の論点に加え,各大学で質保証を内部質保証という形でこれからどうやって進めていくのか,これらが大体検討のアウトラインだと思います。つまり,大きなシステムのプロセスと,最前線にある大学の中での質保証,これらについての議論が行われるということです。
それでは,今後の日程等について,事務局から御紹介いただきたいと思います。

【奥井高等教育企画課課長補佐】 失礼いたします。
本日は,活発に御議論いただきまして,誠にありがとうございました。
次回の大学分科会は,9月15日火曜日10時から12時を予定しております。実施方法,会場につきましては調整中でございまして,追って御連絡をさせていただきます。
また,別途御意見等ございましたら,事務局まで御連絡いただければと思います。
以上です。

【永田分科会長】 本日もオンラインでの会議となりました。次回の9月はどのような状況になっているでしょうか。それまで皆さんお元気でお過ごしください。
それでは,お開きにさせていただきます。ありがとうございました。

―― 了 ――


 

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