大学分科会(第153回) 議事録

1.日時

令和2年3月24日(火曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省 旧庁舎6階 第二講堂
(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 認証評価機関の認証について
  2. 中央教育審議会大学分科会運営規則の一部改正について
  3. 地域における高等教育機関と大学間の連携の在り方について
  4. 教育と研究を両輪とする高等教育の在り方について
  5. その他

4.出席者

委員

(分科会長)永田恭介分科会長
(副分科会長)村田治,渡邉光一郎の各副分科会長
(委員)有信睦弘,亀山郁夫,志賀俊之,吉岡知哉の各委員
(臨時委員)麻生隆史,安部恵美子,宇山恵子,加登田惠子,金子元久,河田悌一,小林雅之,清水一彦,鈴木雅子,髙倉明,伹野茂,長谷川眞理子,古沢由紀子,益戸正樹の各委員

文部科学省

(事務局)平野大臣官房審議官(総合教育政策局担当),森大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術政策連携担当),増子大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当),磯谷科学技術・学術政策研究所長,牛尾高等教育企画課長,長谷教員免許企画室長 他

5.議事録

(1)認証評価機関の認証について

第149回大学分科会(令和元年8月9日)及び第151回大学分科会(令和元年11月12日)において,文部科学大臣から諮問がなされた,公益財団法人大学基準協会からの申請及び一般財団法人短期大学基準協会からの申請に関する「認証評価機関の認証に関する審査委員会」における審議経過について,牛尾高等教育企画課長から報告があった。

その後,それぞれ審議を行い,原案どおり答申することについて可決された。

(ライブ配信開始)

【永田分科会長】
それでは,2番目の議題から公開にて議事を進めます。これは新型コロナウイルス感染症の拡大に関して生じた問題を解決するために,本分科会の運営規則の一部を若干変更させていただこうということです。
運営規則7条,「分科会の議事の手続その他分科会の運営に関し必要な事項は,分科会長が分科会に諮って定める。」とされています。
それでは,事務局から説明をお願いします。

【牛尾高等教育企画課長】 それでは,資料2を御覧ください。こちらが大学分科会運営規則の改正案でございます。
今,分科会長からお話しいただきましたように,今般の感染症等,やむを得ず会議が開けないような場合に,場合によってメール等で御審議いただくということも考えられるかと思っておりますが,現在の運営規則では,それを可能にする規定がございませんでした。ですので,この機に,この第2条の部分でございますが,メール審議等によって意見をお伺いして,それをもって分科会の議決とするという規定を設けさせていただきたいというものでございます。
文言等につきましては,既にこういう規定が置かれている他の審議会の例にならって整理をさせていただいているところでございます。
説明は以上でございます。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
本日も,議決事項がなければ書面審議でも良かったのですが,書面審議が認められていないためリスクを冒して集まっていただいています。今後むやみに適用することなく,やむなく使わざるを得ないときに,この手法を使わせていただくという前提でお認めいただけないかと思いますが,御意見いかがでしょうか。
吉岡委員,どうぞ。

【吉岡委員】 これについては反対することは全くないのですけれども,例えば,会議体によって,今,テレビ会議のような形をとるようになってきていますね。その場合,これはそのとおり読むと,多分テレビ会議は入らないと思うのですけれども,その辺との関係というのはどのように考えていらっしゃるかなというだけのことです。

【牛尾高等教育企画課長】 今回のこの感染症の広がりを踏まえて,我々もいろいろ頭の体操はしまして,テレビ会議の可能性もあるとは思っております。ただ,テレビ会議の場合,全員でやるとなると,委員お一人お一人がそれを可能にする環境を整えていただくような必要がということがございまして,現段階ですぐに導入するのはなかなかハードルがあるのかなと思っております。
ただ,条件が整えば,そういうこともあり得ると思いますので,その際にはまたお諮りしたいと考えております。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
そのような時代になってきました。また皆さんそれぞれのweb環境等をお伺いして考えたいと思います。
では,極力顔を合わせて会議を行うけれども,真にやむを得ない事情が生じた場合には,書面による審議も可とするという,資料2の運営規則第2条の改正について,お認めいただくということでよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【永田分科会長】 ありがとうございました。この事態の出口がまだまだ見えませんので,今後どのような重要案件があるかわからないということを考えると,大変重要な改正になると思います。
それでは,3番目の議題ですけれども,「地域における高等教育機関と大学間の連携の在り方について」です。
これは二つありまして,地域連携プラットフォームを作るためのガイドラインについてが第1点,もう1点が,大学等連携推進法人制度を導入するためにはどうしたらいいか,この2点です。
最初に,「地域連携プラットフォーム構築に関するガイドライン」の素案を事務局から説明いただいて,皆さんから御意見を賜ります。
それでは,事務局から説明をお願いします。

【牛尾高等教育企画課長】 それでは,私から説明をさせていただきます。まず,資料3-1を御覧いただければと思います。
こちらの資料,前回御議論いただきましたときに,このプラットフォームでありますとか,推進法人の導入の趣旨について,一応再確認した方がいいかなと思いまして,作らせていただいた資料でございます。
まず,大学等は地域の人材育成等におきまして,地域経済・社会を支える基盤であるということ。その一方で,各地域は,人口減少,産業構造の変化等,様々な課題と向き合っておりまして,地域ニーズを踏まえた質の高い高等教育機会の確保と人材の育成がこれまで以上に重要になっている。これが前提としてあるかと考えております。
その際に,地域の大学等,地方公共団体,産業界等がそれぞれの立場で単独でそれぞれの課題を解決していくということには限界が見えておりますので,関係機関が一体となった恒常的な議論の場を構築して,連携体制の強化を図ることが不可欠であるということが,この地域連携プラットフォームを導入しようという趣旨でございます。そのための具体的な国の取組の一つとして,国としてガイドラインを策定して,こうした取組を促していきたいというものでございます。
一方で,後ほど御議論いただきます大学等連携推進法人につきましては,こういった地域での御議論の中で,地域の大学等が国公私の設置者の枠組みを超えて協力することが,その地域における大学の機能強化を進める上で有意義であるという場合に,それを円滑に進めるための制度を創設しようというものである。このように整理できるかと考えております。
以上を前提といたしまして,次に,ガイドラインのポイントについて御説明させていただきたいと思います。資料3-2を御覧ください。
資料3-3がガイドラインそのものでございますが,大部でございますので,この3-2で内容のポイントを御説明させていただきたいと思います。
まずガイドラインにおきましては,地域連携プラットフォームの必要性と意義を最初に整理して掲げたいと思っております。その内容につきましては,ただいま資料3-1で御説明した内容を盛り込んではどうかと考えております。
その中で,それぞれ大学,地方公共団体,産業界にとってどんな意義があるかということを四角囲みでまとめておりますが,大学等にとっては,地域ニーズを取り入れた教育研究の活性化や地域の大学間の共同の取組が推進できるというメリットがあるかと思います。
地方公共団体にとっては,地域にある大学等の知と人材を活用した課題解決,域内への若者の定着促進に活用できると考えております。
それから,地域の産業界にとっては,自らのニーズを適切に反映した人材育成でありますとか,大学との共同研究の活性化に取り組むことがより進むのではないかと考えております。
その上で,下半分でございますが,地域連携プラットフォームの具体的な作り方,あるいは,取組の進め方などについて整理をしたらどうかと考えております。
まず地域連携プラットフォームの体制整備,運営についてでございますけれども,体制整備の考え方でございますが,まず対象の地域の単位をどう考えるかということでございます。都道府県あるいは市町村などの行政単位,場合によっては,行政単位を越えた生活・経済圏等,地域によって最適な単位を考えていただいてはどうかと考えております。
参画主体につきましては,関係する高等教育機関,地方公共団体,産業界等に組織的に関与していただくということが肝腎かと思っております。トップの皆さんの関与も大事でございますが,実務を担うようなミドル層,キーパーソン等の参画も重要と考えております。
それから,右に行っていただきまして,運営の考え方でございますけれども,恒常的な運営体制を構築するということが重要かと思っておりますが,その際には,既にある既存のネットワークを活用するということも有効かと考えております。
それから,運営のための予算でございますけれども,それぞれの参画組織から会費を徴収するということが基本に考えられると思いますが,それ以外にも,国等の関連するプロジェクト予算,あるいは,企業版ふるさと納税など多様な活用できる財源を使っていただいてはどうかと考えております。
次に,地域連携プラットフォームで議論・実行する事項を整理しております。
まず一番左の方からですけれども,まずは地域社会のビジョンの共有,理解の促進ということで,地域社会,あるいは,地域産業界の将来的なビジョンを皆で共有する。その中での高等教育の果たす役割を確認するということが肝要かと思います。
その上で,地域の現状・課題の共有ということで,様々な統計データ等を用いて,現状の課題,それから,将来予測についても共有・議論していただくことがよろしいかと思っております。
具体的な議論することの方向性でございますけれども,真ん中のところでまとめておりますが,まずこのプラットフォームに参加する皆さんの共通的な目標,方向性を確認していただく。その上で,それを踏まえた具体的な行動計画,地域課題の解決策を考えていただく。あるいは,それを支える地域の高等教育のグランドデザインを考えていただくということが考えられるかと思っております。
そして,より具体的に実行する取組についても,おまとめいただいてはどうかと考えております。一番右のところに例示をさせていただいておりますが,地域課題型の実践的な教育プロジェクト,あるいは,産業振興,イノベーション創出につながるような取組,地元での大学進学率,あるいは,域内定着率の向上策,外国人あるいは社会人向けの教育の開発等が具体的には考えられるかと思っております。
こうしたことをポイントにして具象化したものが資料3-3でございまして,こちら,大部になりますので御説明いたしませんが,こちらも御覧いただきながら議論をしていただければ有り難いと思います。
説明は以上でございます。

【永田分科会長】 ありがとうございました。
ただ今,特にポンチ絵を中心に説明いただきました。素案そのものは資料3-3ですので,今,全部詳細をお読みになる時間はないかもしれませんが,御質問や御意見はお受けしたいと思います。いかがでしょうか。
益戸委員,どうぞ。

【益戸委員】
この案およびガイドラインの中身につきましては,目新しい事項は特にないと思われます。その中で重要な事項としては,資料3-1,資料3-2にも記載されている「それぞれの立場から単独で地域課題の解決や人材育成,イノベーションの創出に取り組むことは限界があり」という箇所です。
現状,各省庁や内閣官房が様々な形で予算を持ち,地方創生や地域連携に関するプロジェクトが推進されておりますが,大きなプロジェクトを進行する上では,大きな予算が必要となります。さらには,文部科学省がこういったガイドラインを提示し,文部科学省絡みの予算を取りにいくということは非現実的かと思います。やはり各省庁,特に政府が音頭を取り,こういった課題解決に対して大きく予算を付けていくというメッセージをより強く出すべきではないかなと考えます。
資料3-2の運営の考え方の中に予算に関する記述がありますが,その中で,「参画組織からの会費徴収」と,「国などのプロジェクト予算」というのが同列に表記されているのは,トーンとしては弱いと感じます。

【永田分科会長】 大変有り難い御意見です。
志賀委員,どうぞ。

【志賀委員】 全体としてはこういうことなんでしょうが,言葉として,今,地方,それから,地方の中小企業,それから,生産性の格差,人手不足等々の中で,地方の中小企業のデジタル化,いわゆるデジタルプラットフォームをどう進めるかということで,そこを支える人材がなかなか地方では採用できないということで,今,中小企業の働いている方々の学び直しみたいなものが重要になりつつあるなと思っていて,この地域連携プラットフォームというのは,正にそういう地方の中小企業さんの既に従業員となっている社会人の,ソフトウェアあるいはAI等々のトランスフォーメーションの人材となれるような学び直しみたいな言葉が入っていると,時代に即応しているなと感じるんですが,入っていないので,もう少しそこら辺,幾つか入れていただければなと思います。

【永田分科会長】 有信委員,どうぞ。

【有信委員】 今の益戸委員,志賀委員の意見にも関連するんですが,まさしく入っていないという部分で,特に,ここに世の中が複雑化しうんぬんと書いてあるんだけど,その先で,今,Society5.0だとか様々なことが言われていますが,その後に書いてあることは全部,どちらかというと受け身なんですよね。地域の課題に応えるとか,大学が地域の課題を捉えるだとか,既にある課題を捉えるというときの課題の捉え方が,やっぱり未来へ向けて新しい産業を創出するとか,地域の在り方を根本的に変えていくとか,そういうベクトルが見えるような書き方になっていないと,今の地域の在り方は基本的にやっぱり枠組みとして変わらない感じになりそうな気がするんですね。
ですから,特に,IT化がどんどん進めば,何も東京に拠点がある必要は全くないわけで,様々な新しい産業がIT化の進展とともに地方に拠点化していくという可能性をやっぱりエンハンスしていくというか,それをもっとドライブしていくような視点がもうちょっと見えてもいいかなという気がします。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
髙倉委員,どうぞ。

【髙倉委員】 本年4月から,名古屋大学と岐阜大学の二つの国立大学が,統合により「東海国立大学機構」を発足し,いわゆるアンブレラ方式で1法人2大学となります。
同様に,横浜市などでは,市立大学も入った地域連合が検討されております。地域連携プラットフォームを構築する際には,地域創生の枠組みなども活用しながら,地域活性化に資する取組に是非していただきたい。
また,これまで何度か申し上げてきたように,連合には,全国47都道府県に地方連合会という地方組織があり,全国20都府県26の大学において,学生に向けて働くことに関する寄附講座を実施しております。地域連携プラットフォームの参画主体に,労働組合も是非入れていただき,一緒に活動を進めていきたいという思いがございます。
資料3-3,16ページ③産業界等(参画主体)「また,地域の実情に応じ,農業団体,福祉団体などが参画することも考えられます。」の箇所に「労働組合」の追記をお願いしたい。
また,連合も「連合プラットフォーム」という枠組みを創設し,地域活性化に向けて,労働組合の視点から,地域の産官学金労言の皆さんの参画のもと,地域課題の解決に向けた取組を進めております。
資料3-2右下部「課題解決のために実行する事項(例)」に「外国人留学生の受入れや社会人向け教育プログラムの開発」と記載がありますが,労働組合にも外国人留学生がおりますので,様々な連携が取れると思われます。是非,労働組合との連携を深めて進めていくことをお願いしたいと思います。
以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
村田委員,どうぞ。

【村田副分科会長】 ちょっと教えていただきたい。とんちんかんな質問なのかもしれませんが。この地域連携プラットフォームが,資料3-1になりますと,これが発展していくと大学等連携推進法人になっていく。こうなっているんですけれども,地域連携プラットフォーム自体を作ることが,例えば,大学にとってどういうメリットがあるのかということ。地域にとってはメリットがあるとよく分かるんですが,そのあたりのことが分からないのと,それから,地域大学ネットワーク機構,あるいは,大学等連携法人等々があるわけですけれども,一般社団法人何々地域大学ネットワーク機構とありますけれども,例えば,今,私はひょうごコンソ神戸の理事長をしておりまして,既にこういう形を一般社団法人でしています。
あとの資料を見てみますと,そこでのメリットは,学位の共同開講だとか,それから,教職課程の共同開講なんかはあるんですけれども,恐らく幾つかのコンソが一番悩みなのは,いわゆる学位プログラムを共同で開講していくことの難しさ,そこが一番ネックになっていて,大学間の地域間の距離感,それから,レベル感の違い等々,あるいは,大学の専門分野の違い等で,そこが一番難しい課題になっているわけなんですが,そのあたりのところを,このプラットフォーム,あるいは,このネットワーク機構についてはどう考えていらっしゃるのか。現場のところを調べられてなのかということをちょっとお聞きしたいなと思っています。

【牛尾高等教育企画課長】 御質問ありがとうございます。
まず,この地域連携プラットフォームと大学等連携推進法人の関係ですけれども,連携プラットフォームが発展して推進法人になるというよりは,連携プラットフォームのいろんな議論の中で,場合によってはこういう推進法人を作って活用してくる例もあるだろうということでございまして,飽くまでプラットフォームから見ますと,連携推進法人は一つの例でございまして,多様な形の連携というような取組があろうかと思っております。
それから,地域連携プラットフォームを作った場合の大学等にとってのメリットということですけれども,資料3-2の方にごく簡単には書いてございますけれども,こういう協議体が密接にできる中で,地域の皆さんが考えていらっしゃるニーズを取り入れた,先ほど社会人のプログラムのようなお話もありましたけれども,そういうことも含めた教育研究の内容をよりよいものにして,そのことがいろんな学生さんに来ていただく契機にもなろうかと思っておりますし,もちろん,こういうものがなくても大学間連携は進む場合もあると思いますけれども,地域にあるいろんな大学の連携協力がより取り組みやすくなるのではないかというのが,我々として考えている狙いでございます。

【永田分科会長】 村田委員のご指摘の点は,大学等連携推進法人にも関係してくるので,もう一度後ほど議論したいと思います。
渡邉委員,どうぞ。

【渡邉副分科会長】 ありがとうございます。
これまでの様々な議論が,今回のガイドライン案にまとまっており,体系立った制度としてよい整理になっていると思います。
この発想は高等教育のグランドデザイン答申から来ておりますが,今回の素案にも,関係機関が一体となって地域の将来ビジョンを共有化して,地域の課題解決に向けた連携協力の抜本的強化を図るという,目的意識が明確にされている点が特によいです。大学は,課題解決に向けて研究機能や教育機能を発揮するからこそ,一層強くなれるのではないでしょうか。こうした目的意識を明確化した上で,地域とは何かという整理をしたことは非常によかったと思います。
地域の在り方は,本文の9ページから12ページに整理されていますが,12ページのマル1にあるように,都道府県単位をベースにするのは,COCプラス等の基準が基本的に都道府県単位になっているので,当然のことかと思います。
ただ,都道府県単位だとしても,北海道内の国立大学のような,広域性にメリットを見いだす連携もよい動きになっています。実際に,10ページのマル2に整理されているような,広域の地域についても,連携が進み始めています。先ほどお話のあった名古屋の例も,中部圏というような概念を明確に射程に入れて検討されているところが非常によいと思っています。
このような,広域での地域連携プラットフォームは,発展的に国際競争力を持つものと考えます。地域だからといって,狭義な範囲に限定して考えてしまうのではなく,地域は世界につながるし,世界は地域につながるというような発想から,この広域地域をもう少しクローズアップして考えればよいのではないかと思います。
地域経済連合会も,既にこうした発想で大学と議論を始めています。したがって,10ページのマル2のなお書きについては,なお書きのレベルではなくて,もう少し前面に出し,そうしたところにも予算を付けられるような形でのまとめにした方が,より発展性もあり今日的な整理になるではないかと考えます。是非考慮いただければと思います。
以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
吉岡委員,どうぞ。

【吉岡委員】 三点ほど伺いたいことがあります。
一つは,資料3-2の真ん中,「体制整備,運営」の参画主体のところに,「トップの関与とともにミドル層,キーパーソンが対話に参画」と書かれてありまして,これ,トップだけでは駄目だというのはイメージとしては非常によく分かるのですけれども,ミドル層という言葉で実際にどういうことを考えておられるのか。例えば,地方公共団体であれば,首長ではなくて,もう少し実際にやる部課長レベルとかというのは分かるんですが,特に高等教育機関におけるミドル層ということばで,どういうことを想定しているのか,あるいは,どういうことを期待しているのかということを明確にする必要があるのではないかと思いました。それが1点目です。
2点目は,今の渡邉委員のことにもちょっと関わるのですが,この最後のところの課題解決のために実行する事項(例)の3番目のところに,大学等進学率(特に域内進学率)や域内定着率の向上策というのが出ています。これは,確かにこの点を考えるときに非常に重要なことではあるんですが,例の23区の規制のときにも議論になりましたけれども,これ,実際には非常に難しいことなわけですね。あのときも,結局,産業が地元になければ駄目じゃないかというような議論になりました。そういう意味では,大学と学生,地域の関係,また他方で,学問の広域性等の関係の中で言うと,これは実行するというか,実際にやっていくときはどういうモデルを組んでいくのかは非常に難しいと思うのです。ここはかなり重要なところですし,良く考える必要があるだろうと思いました。
もう1点は,これに関わること,同じようなことなのですけれども,例えば,地方にある大学で非常に突出した形を持っている大学というと,例えば,国際教養大学であるとか,あるいは,立命館アジア太平洋大学であるとか,地域にあるけれどもかなり国際性を持った形をとるようなところが,やはり突出した大学をつくっていると思うのです。ただ,そういう大学の在り方と,ここで考えられている地域のコンソーシアムあるいはプラットフォームの在り方とは,必ずしも擦り合わせがうまくいっていると思わないんですね。だから,留学生といったときに,留学生の扱い,あるいは,留学生がその後どういうふうに地域に定着していくかということが,必ずしもここで言われているものと接続ができていない。しかし,そこをうまくやらないと,日本の大学の国際性というところと結び付いていかないだろうと思います。先ほど渡邉委員が言われたように,地域というものをどう捉えるかという空間概念みたいなことにも関わることですけれども,その辺のところを考えていく必要があるかと思いました。
以上です。

【永田分科会長】 小林委員,どうぞ。

【小林委員】 私も,対象が抜けているという観点からですけれど,最初のところで,資料3-1で,一番右の下に研究開発法人等というのが入っているわけですけれど,地域に密着したという意味で言いますと,もう少しほかの組織も考えられるのではないかということで,例えば,農業試験場というのは,農学部と連携していろいろなことをやっているわけですね。ところが,これでガイドラインを見ますと,研究開発法人でもないし,地方公共団体でもないわけですから,そのあたり,決して排除しないということで,読み取れるとは思うのですが,もう少し前面に出してもいいのではないかと思います。

【永田分科会長】 そうですね。保健所などは,まさにそういう状況にあります。
鈴木委員,どうぞ。

【鈴木委員】 渡邉委員の意見と同様ですが,地域連携というところが気になっていました。地域だけで固まってしまって大学と民間がいろいろやっていくことは,良いことではありますが,今現在,働き方がどんどん変わってきていて,今回のような環境になりますと,テレワークのような働き方になると,どこでも人が活躍できるようになってきていると思います。そういうところから考えていくと, 10ページの広域圏内のところの連携プラットフォームも,そこにくっつけることの橋渡しができるように一緒に考えておかれた方が良いのかなと感じています。
大学も,企業もそうですが,地域だけで固まってしまうと,そこで孤立してしまって,人の雇用も生まれませんし,学生の流動化は進んでこないと思います。できる限り学生の流動化を進めて,仕事の枠を増やすということが前提であれば,余り地域連携ということに固執せず,広範囲での地域連携というものを少し表に出していただいたらいかがかなと感じました。

【永田分科会長】 金子委員,どうぞ。

【金子委員】 私は,これはこれで結構だと思うんですが,地域連携プラットフォームを作るというのは,それはそれで必要かなとも思いますが,それは全くはじめであって,実体がそこから出てくるのかどうかというところは,具体的に大きな問題だと思うんですね。
私,先ほど話が出ていました23区の問題のときの委員会に出て,そのときに,基本的に地域において高等教育機関と産業を結ぶことが必要だということが副次的に出てきて,そこから法律によって地域で連携機関をつくらなければいけないという形で,総務省がする地域連携のフレームワークができてきました。
それから,さっきもお話がありましたように,地域連携のプラットフォームって今幾つもあって,しかも,かなり予算は細切れであって,かなり雑多なものがあって,しかも,それはKPIで非常に縛られているので,形式化しています。要するに,こうやってもう方式もKPIで縛られて,それから,プラットフォームの形態は法律で作られて,内容はどうやってできてくるのかというところが,私はよく分からないんですけれども,これをやっておけば内容ができてくるのかというと,私はどうも不安に思うんですね。
私も幾つか地方の委員会に出ましたけれども,あちこちで持っている情報は非常に違いますし,県庁は大学のことなんか知りません。どうやってそういったところから新しい,少し力強いような連携が出てくるのかということを,むしろその実体をどう作るかというところが私は問題なのではないかと思うんですけれども。
そういった意味で,文部科学省は昔そういう検討した地域連携のGPがありましたが,これも比較的規模が小さくて,大学の中にGPオフィスみたいなのを作っておしまいみたいな感じのものがあった。
そういった意味で,ある程度の補助金を出して,しかも,それが一定の大規模な流れを作り出すようなものを探すメカニズムというのを何かできないんでしょうか。これはやっぱり文部科学省だけではできないのではないかと思います。だから,そういったものを作る仕組みをどこかで何かの形で作っていただければと思います。
以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
安部委員,どうぞ。

【安部委員】 安部でございます。
私は,短期大学のみの小規模レベルですが,大学が連携して地域と関わりを持ち,地域課題に取り組むという活動を20年ほど行っています。今回の地域連携プラットフォームの形成にも参画させていただいているのですが,その中で思いますのは,日本という国で,国公立・私立含めて大学というものが,地域のものであるという発想が今まで非常に薄かったと思っています。よく言えば,大学というのは,一つ上のもので,敷居が高くて近づき難いと地域の方々は思っていて,大学が地域に果たしている役割については,あまり認識がなかった,思いが及んでいなかったということを経験の中で強く感じています。
しかしながら,現在,地域が非常に疲弊して,特に労働力などは不足しています。いわゆる事業はできる,仕事はあるのだけれども労働者が確保できないとか,あるいは,中小や零細企業が多いので,高い賃金が出せないために人が雇えない,優秀な人が定着しないというような企業が地方の中にはたくさんあります。
そういう地域の働く人,一人一人の労働生産性の向上とか,あるいは,高齢化が進んでいて,コミュニティ力をしっかり強化しなければいけない中,コミュニティを支える人材の育成のために,この地域連携プラットフォームは,行政や企業と連携して,地域の人々に開かれた生涯学習機関としての役割があると思います。日本は生涯学習に対して非常にニーズが低いですけれども,これからは生涯学習機関としての高等教育機関の役割の柔軟性を高め,そして地域の大学として生涯学習をやることを宣言し,実施することは,地域連携プラットフォームがやるべきことではないかと思っています。
地域連携プラットフォーム形成に取り組んでいると,地方の中でも,行政と大学がどう連携を組んでいくか,どこが主体となってその活動を行うのかについては,まだ緒に就いたばかりで黎明期にあり,難しい問題もたくさんあります。これをやっていかないと地方では大学がつぶれるということよりも,地方自体が本当に衰退化してしまうという危機感を日頃感じているところでございます。この連携プラットフォームを対象とする多様なプロジェクトの展開が求められるところですが,文部科学省だけではなく多くの省庁から出される補助金を活用して,大学と地域を結んだ地域創生事業ができることを行っていただければと思っております。
以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
重要な意見がたくさん出てきましたので,改めて整理していかないといけないと思います。その際に,地域連携プラットフォームがなぜ必要なのかという問題と,できた後に何をするのかという問題を混同してはいけません。後者については,例えば,地域のコミュニティを支える人材を育てるとか,世界に通用する産業育成に資する,とかになると思います。こうしたプラットフォームの機能の問題と,プラットフォーム自体をなぜ作らなければいけないか,ということとは,やはり分けて考えないといけないと思います。
私からも一つだけ意見を言わせていただくと,大学と地方公共団体,産業界の三者の中で,最も関心が少ないのは,多くの場合,地方公共団体だろうと思います。というのは,義務教育は担当部門がありきちんと対応しているのですが,高等教育に関する担当部門を持っている地方公共団体は数えるほどしかないのではないかと思います。そうなると,地方公共団体が関わるという意識は,組織としての意思決定ではなくかなり属人的なものになる可能性があります。したがって,地域連携プラットフォームができるまでの段階で大切なことは,地方公共団体にいかに入っていただけるかという仕組みか制度かを作ることだと思います。
できた後は,今,安部委員からご意見があった,地域コミュニティの一人一人の生産性を上げるといったことなども基盤に,いかにこの地域にある大学が国内や世界と戦う存在になるか,というつくりになるのだと思います。ですから,プラットフォームができるまでとできた後では,分けて考える必要があるだろうということです。
ここまでの議論で分かったことは,地域同士,地方公共団体同士が強く連携していたら,きっと離れている高等教育機関同士も強い連携ができる可能性があるということです。したがって,地方公共団体の関心をこちらに向かわせるだけの魅力ある書き振りに変えていただきたいと思います。
よろしいですか。ありがとうございます。
それでは,続いて,大学等連携推進法人制度をこれから導入していきたいと思っているわけですが,それについて,資料の説明をまず先にお願いいたします。

【牛尾高等教育企画課長】 御説明の前に,先ほど吉岡委員から質問の部分があったので,それだけお答えさせていただきますと,参画するミドル層として想定していますのは,学部長さんであったり,あるいは,地域センターのようなものがあれば,そこのセンター長の方というようなものを想定しておりますということを付け加えさせていただきます。
それでは,大学等連携推進法人についての御説明に移らせていただきたいと思います。こちらについては,制度の詳細については前回御説明しておりますので,そのときに御質問いただいたような事項について改めて整理いたしましたので,そこを中心に御説明をさせていただきたいと思います。
まず,資料3-4を御覧ください。まず,ここの上半分のところで,この大学等連携推進法人の制度化の目的を改めて整理させていただいております。
上二つの丸は,先ほど来御説明しているようなことと重なりますが,三つ目の丸で,これも重なりますけれども,国公私の設置者の枠組みを超えた連携,協力を円滑に進めるための仕組みを作っていこうというのが狙いでございます。その際に,この法人を作ることによりまして,大学の機能強化に資する連携協力を目的とすると。ここのところがもう一つのポイントになるかと思っております。
それから,下のところでございますけれども,基本的に一般社団法人の枠組みを活用するということを前提に考えておりますけれども,そのメリットといたしまして事務局として考えておりますのは,社員として大学等が参画することになるわけですが,社員となる大学等が,対等な立場で社員総会の構成員となって,その法人の意思決定に参画することとなるということが一つポイントかと思います。そのため,その意思決定にきちんと参画するということによりまして,法人内の様々な協議調整等が円滑になり,大学等における緊密な連携を円滑,一体的に進めることができるのではないかと考えております。また,法人格を持つことによりまして,各大学等が共通して行うことが効率的・効果的なような業務について,推進法人が自ら主体的に法人の名前で行うことが可能になるということも,メリットになるかと考えております。
以下,重なりますが,資料の3ページ目が,この推進法人の大まかなイメージになっております。具体的には,一般社団法人の枠組みを活用いたしますけれども,一般社団法人は割と緩やかに設立できる仕組みになっておりますので,一定の認定基準を設けて,文部科学大臣が認定したものについて,この大学等連携推進法人としまして,その上で,教学面での一定の規制緩和措置を使えるようにする。具体的には,授業科目の共同開設ですとか,これも後ほど御説明させていただきますが,教職課程の共同設置,それから,先ほどちょっと御意見が出ておりますけれども,共同学位制度についても一定の緩和をいたしまして,より作りやすくするということを考えてはどうかと思っております。
認定基準の例については,右の下のところにまとめてございますので,御覧いただければと思います。細かい認定基準につきましては,前回一度御説明をさせていただきましたので,今は説明を省略させていただきます。
続いて,この推進法人の枠組みを活用した上での,教育上の特例措置について,資料3-5で御説明をさせていただきたいと思います。
これにつきましては,基本的な枠組みにつきましては,前回御説明させていただきましたので,その際頂きました御質問について,まずお答えをしていきたいと思っております。
まず,大学とか短期大学など学校種が異なる場合の共同開設をどう考えるのかということでございます。
基本的に,この制度,大学,短期大学,あるいは専門職大学等,いわゆる広い意味での大学という枠組みの中では,共同開設ができるようにしたいと考えております。ただ,学校種が異なるということは,準拠すべき設置基準等も異なりますので,参加大学間でのしっかりした協議は必要かと考えておりまして,参加大学間での教学管理体制をきちっと作っていただいた上で,共同開設科目としての位置付け,単位を与えることが適当かどうか判断する。そういうことを前提にして,こういうものを認めてはどうかと考えております。
それから,学生が学ぶ内容に偏りが生じないような取扱いが必要ではないかということでございました。
もちろん,共同に開設はしますが,それぞれの大学でカリキュラム・ポリシー,学位プログラムとしての体系性,バランスというものがございますので,それを踏まえた上での共同開設科目の位置付けについてきちんと考えていただくということが必要かと思っております。必要な留意点については,施行通知等で示してはどうかと考えております。
それから,共同開設するとはいっても,大学間の移動に係る時間,費用,学生に過度な負担が生ずる可能性についての御指摘がございました。
これについて,制度的に何らかの枠組みを設けることは考えておりませんけれども,参加する大学間において,時間割の工夫でありますとか,遠隔授業の導入等を検討するということが期待されるところでございます。これについても,施行通知で示してはどうかと考えております。
続きまして,2ページ目に行っていただきまして,共同開設を認める場合の単位数の上限について御意見がございました。単位互換・入学前の修得と合わせると90単位となる。そうすると,34単位分しか開設しないような大学が出てくるのではないかという御懸念でございます。
まず大前提としまして,共同開設を実施する要件としまして,繰り返しになりますが,協議の場(教学管理体制)を置くということをしっかり求めてまいります。その中で様々な共同開設についての事項を決めていただくとともに,それらの情報についてしっかり内外に発信していただく。それから,自己点検・認証評価等においても評価していただくということが,大前提として考えております。その上で,これは前回も御説明あったと思いますが,単位互換とか入学前の修得の60単位については,その大学で全く開設しなくていいというものではなくて,相当分の授業科目については,その大学でも開設している必要がございますので,34単位分しか開設しないということではなくて,94単位分は自ら開設しているということが前提になると考えております。
それから,大学あるいは学部・学科の新設の際に,この共同開設の活用を前提とした申請を認めるのかどうかという点でございます。
この点につきまして,大前提としまして,大学設置基準は,設置の際だけではなくて,設置した後も満たさなければいけない共通の基準であると考えておりますので,そういう考え方を踏まえますと,新しい新設の場合においても,これを活用するということは認めるということになるのではないかと考えております。ただ,その際には,当然,新しく作る大学にとっては,新たな科目ということになりますので,既存の大学が開講している科目についても教員審査等をしっかりと行って,その上で適切なものかどうかを判断する,こういう手続になるのではないかと考えているところでございます。
以下,具体的な要件等につきましては,前回説明しておりますので,御疑問がございましたら,また補足的に説明させていただくことにしまして,取りあえずの説明は,以上とさせていただきます。

【永田分科会長】 それでは,御質問,御意見等を承りますが。

【奥井高等教育企画課課長補佐】 分科会長,よろしいでしょうか。教員養成の方の御説明がございます。

【永田分科会長】 失礼しました。もう一つ,教職課程の実施体制についての説明の後に御意見をお伺いします。それでは,説明をお願いします。

【長谷教員免許企画室長】 それでは,総合教育政策局の教員免許企画室長でございます。私の方から,資料3-6と資料3-7に基づきまして,初等中等教育分科会の教員養成部会の下に置かれておりました「教職課程の基準に関するワーキンググループ」が今年2月に取りまとめた報告書のポイントについて御説明申し上げたいと思います。
教職課程とは,教員免許状授与に必要な所要資格を取得させるために文部科学大臣が認定する課程をいい,その審査のための基準を定めておりますのが,教育職員免許法,同法施行規則,それから,教職課程認定基準でございます。
これらの基準の在り方につきまして,大きく三つの論点に分け,このワーキングで御議論いただきました。ここの背景の中にございますように,まずは,大学の中の複数の学科・学部の間での共同の教職課程の運営,それから,2番目のところが,複数の大学の間での教職課程の設置,それから,3番目に,教職課程の質の保証というところでございます。
本日は,大学等連携推進法人の関係で,一番関係の深い,大学間での教職課程の共同設置に絞って御説明申し上げたいと思います。
背景としましては,資料3-6の2番目にも書かれてございますように,教員免許状の中でも,例えば,中学校の技術や美術のように,教育委員会の採用が非常に限られているような免許教科の種類がございます。例えば,中学校の技術ですと,年に1人,あるいは数年に1人ぐらいしか採用しないというような状況がございまして,そうなりますと,国立の教員養成系の大学でも,この教職課程を維持するための専任教員ですとか,授業科目の開設を維持することがなかなか難しくなってきておりまして,県によっては,もう中学校の技術の教職課程の認定を受けた大学が存在しなくなっているというところも出てきてございます。
そういった場合に,単独の大学でなかなか維持が難しいような免許状につきましても,例えば,複数の大学が共同で教職課程を設置するという仕組みを設けることによって,それを維持していく。あるいは,複数の大学で強みを持った科目を持ち寄ることによって,特色のある教職課程を設置していくということを目的としまして,この議論を行ってまいりました。
資料3-6の2ページ目の「見直しの方向性」を御覧いただければと思います。特に,右側のところ,「複数の大学において教職課程を共同で実施する体制」というところが今回の議論でございますけれども,大学等連携推進法人を構成する大学又は一つの法人が設置する複数の大学間において,授業科目や専任教員を合わせることによって,共同の教職課程を設置することを可能にするとございます。
原則としましては,ここにございますように,A大学,B大学,それぞれの大学が単独で授業科目と専任教員をそろえて教職課程の認定を受けるというのが原則でございますが,これを,A大学,B大学,複数の大学で授業科目,専任教員を寄せ合って教職課程の認定を受けるということを可能にするということが提言されてございます。
この場合に,大学等連携推進法人でありますとか,いわゆる1法人複数大学が前提になっているわけでございますけれども,これは正に今御議論いただいております教学上の特例,授業科目の共同開設の仕組みを利用する形でこの共同設置を認めていくということで,方向性が出されております。
これは,お手元の資料3-7の最後のページを御覧いただきたいと思います。23ページ目のところでございます。
どうして今回,授業科目の共同開設制度を利用する形でこの仕組みの提案がなされているかというところでございますが,単位互換制度ではできないことをやろうとしているというところでございまして,例えば,一番下の図のところで,中学校の国語の教職課程の開設に必要な科目が一部出てございます。国語の科目の開設するためには,国語学,国文学,漢文学,書道という,少なくとも四つの専門の領域を開設する必要がございます。このときに,教員養成系の大学ですと,教員の免許状の取得が卒業要件になっておりますので,これらの科目は全て必修科目になっております。ですので,単位互換の仕組みによりまして,例えば,B大学の方から国語学の科目を全部持ってくるということはできないということになっております。ですので,授業科目の共同開設の仕組みを利用することによりまして,A大学の方は,B大学の科目も利用して教職課程を設置するということが可能になってくるということでございますので,今御議論いただいております教学上の特例というものを前提とする仕組みを考えているというところでございます。
それから,類似の仕組みとしまして,共同教育課程というものがございまして,これとの違いもよく質問いただくところでございます。これは資料3-7の13ページ目のところを御覧いただければと思います。
13ページ目の中ほどに二つ図がございます。この4月から群馬大学と宇都宮大学が共同しまして,教育学部を設置するということがスタートするわけでございますが,正にこれが共同教育課程でございまして,これは左側の図の学位課程全体を共同で設置するものです。
今回ワーキングで御提案いただいておりますのが,右側の「教職課程の共同設置」ということでありまして,それぞれの学位課程はそれぞれ単独で立ったまま,教職課程の部分,一種免許状であれば,59単位の取得に必要な教職課程の分についてのみ共同で設置するという考え方に立っております。この点で,学位課程全体を共同化する共同教育課程と,教職課程だけを共同化する共同設置というものが区別されているというところでございます。
これによりまして,先ほど申し上げましたように,なかなか単独の大学では維持できない教職課程の維持でありますとか,特色のある教職課程の設置ということを期待しているわけでございます。
私の方からは,以上でございます。

【永田分科会長】 それでは,ただいまの説明に対して,御質問,御意見を承ります。金子委員,どうぞ。

【金子委員】 私は,最初にお話があった大学連携法人における教学上の特例,要するに,単位の互換及び共同設置等々に関わる点なんですが,かなりその扱いが柔軟になっている方向で変化が生じているというのは,これは当然といいますか,必至であろうと思いますが。ちょっと気になりますのは,この管理をどこでどうするのかという問題です。
実際,トランスファーできる科目が非常に多くなりますと,どこでどのようにその質の管理をするかということは,かなり大きな問題となって出てくるのではないか。今まで少数でしたから,基本的には事務局でチェックして,教授会で一応一々,学生一人一人に2点ずつくらい案を出して認めるような形をとっていたわけですけれども,そういったことではもう間に合わなくなっていると。
それをどのような形で管理していくかというのは非常に大きな問題で,大学の中で,個々の大学でそういったセクションを作るのか,あるいは,それこそさっきの連携法人みたいなもので,そういった機構を作るのか。あるいは,アメリカの一部の州では,単位のトランスファーのデータベースを作っていまして,それによって一定その内容のチェックができるというようなことも,トランスファーの範囲ですね。どういった形での単位として認めることができるのかというようなことを総合的に管理するようなシステムも作っているようでありますけれども。
こういった柔軟化に伴って,それが意味のある教育内容につながるというようなことを保証するために,どういった方向での機構,メカニズムを考えておられるのか。それをお聞きしたいと思います。

【永田分科会長】 文部科学省から今お答えできるようでしたらお願いします。

【塚田大学振興課課長補佐】 教学管理体制の仕組みは,連携する大学数であるとか,連携推進法人の形態によっても柔軟に設置されるべきだと思いますので,こういう形でなければいけないというふうに固定的に明示することは,現時点では考えておりませんが,今,委員御指摘のとおり,質保証のための会議体の在り方とか,イメージみたいなものは,施行通知とか制度のQ&Aという形で,参考例になるものを示していきたいと思っております。
以前,大学分科会でも,山梨大学と山梨県立大学の例を紹介いただきまして,そこでは,大学,法人全体の意思決定の下に,教学管理に関するワーキングみたいなものを設けて,質保証とかカリキュラムの検討がなされると聞いております。そういったものを参考にしながら,望ましいやり方というのを例示していきたいと思っております。

【金子委員】 今のは,こういうシステムを作ったら勝手に考えてくれというお話なのではないかと思うんですが。今,実際にトランスファーできる単位というのをずっと見ていますと,かなり大量なんですね。3分の1くらいばっとやるところは出てくるだろうと。いろんなところで柔軟化していますから。そうすると,これは,例えば,連携機構の中だけで考えて済むような問題であるのか,もうちょっと何か全国的にシステム化するようなものを作らなければいけないのか。
それから,機構の中だけのトランスファーではなくて,専門職大学院なんかは,それ以外のトランスファーも出てくるわけですよね。だから,非常に柔軟化すると言えば柔軟化するんですが,ある意味では,これ,コントロールしないと,中にいて何というのが分からなくなってくるというようなこともあります。
外国の単位の学位の承認については,実は,今まだ余り問題になってきませんでしたが,一時は相当大きな問題があって,本来は認めるべきでないと思われていた学位を認めた例というのは結構あるんですね。今,下手をすると,そういう問題も幾つか出てくる可能性がある。
ですから,政策的にどういうふうにするのか,方向性を一応考えておかれた方が私はいいのではないかと思いますけれども。

【永田分科会長】 今の金子委員の御質問は,要は,法人の設置は文部科学大臣の認下が必要である制度になっているが,その法人がスタートして運営されていく中での活動をどう制御するのか,ということだろうと思います。一般の大学ならば,当然ながら設置審があって,届出をするなり,認定を受けるなりして新しいものを作って,アフターケアがあって認証評価を受ける,となります。
では,大学等連携推進法人の場合は,どういう制度体制の中に位置づけられるのかということだと思うのです。現状ではその部分が明確でないので,法人が立ち上がると,その法人の中で連携して授業科目を開設しました,共同教育課程を作りました,という形でどんどん進めていきます,というところまでしか見えません。法人の中の各大学のカリキュラムは保証されているけれど,それらが共同開設した科目や課程の内容についてチェック機能が働く仕組みはないように見えてしまいます。

【塚田大学振興課課長補佐】 今回,授業科目の共同開設というものは認めますけれども,それを組み合わせて作る学位プログラム自体は,それぞれの大学において編成・実施されるものですので,その学位プログラムに対する大学としての質保証の仕組みというものは引き続き求められるわけで,例えば,認証評価においては,共同開設を実施したことも含めながら見ていただくということを,今後,施行通知の留意事項として示していきたいと思っております。
もう一つ,金子委員が言われたことで,この連携推進法人に限らず,今,単位互換の運用の柔軟化というものを進めている中で,その単位互換の水準をそれぞれの大学で認めていいのかというものは,この連携法人の議論だけにとどまらず,検討しなくてはいけないことだと思っているところです。

【永田分科会長】 認証評価で見るということであれば,認証評価に相応の機能と権限を与えないといけません。そうでないと,一般の大学のような設置審での厳しい議論とは全く無縁の仕組みになっていくので,よくよく考えた方がいいと思います。
清水委員,どうぞ。

【清水委員】 今回の教職課程の共同設置,これは画期的なことだと思います。むしろ再課程認定の作業の前にこういう制度ができていれば良かったかなと思っているくらいです。というのは,再課程認定では,幾つかの大学で,私の近くの大学でも課程を廃止するというのが現実に起こっていましたから。
現場からすると,科目の設置とか,教員の配置,これは非常に苦労しています。今回のような共同設置が可能になれば,専任教員も共通化できるし,科目設置も共通化できるということで,私は,教職の充実・向上にかなり貢献するのではないかと思っております。
その上で,資料3-7の13ページにその絵が描いてありますが,教職課程の共同設置のいろんなケースが考えられると思っています。つまり,全く新しく作る場合もあるし,片方に教職課程があって,片方にはない場合もあります。あるいは,両方に同じような課程認定の課程があり,それを共同化するといった,幾つか類型化が考えられると思います。だから,新しく作るだけではなくて,既存の教職課程をうまくこの制度で活用できれば,更に現場は元気が出ると思いますし,見直しがスムーズにいくのではないかと思います。このへんの類型化を考えてほしいというのが私の希望です。
以上です。

【永田分科会長】 河田委員,どうぞ。

【河田委員】 頂いた資料3-5の3枚目に,質保証に留意するということと,定員割れや赤字経営の大学の安易な救済につながらないように――と書いてあります。この制度が最初できたとき,その地域で存続が困難になってきている私立大学を公立化するのではなくして,地域で救済して解決する,その方策として立案されたと考えた方々も,少なくなかったと思います。もし,質保証に留意ということでするならば,これまで出た山梨大学と山梨県立大学や,群馬大学と宇都宮大学と違って,本当に大変な学校,いわゆる教養の授業も教員数が足らない,外国語教員も不十分,だから,それを何とかほかの大学等との連携で組み換え制度とするということであるならば,確固とした質保証をする手段をきちっと決めないと駄目です。
例えば,これを実施する大学は,全ての共同開講授業をする場合には,ナンバリングを使って,どこの学校も初級は100番台,中級は200番台,上級は300番台,その上は400番台と,そういう授業科目番号を付したナンバリングをして各大学が利用できるようにするといった,質保証をするきちっとした方策を用いないと,駄目だと考えます。ですから,その辺を文部科学省の方でどうなさるのか。質保証と口だけでは駄目です。その一つの安易にならない方策として,私はナンバリングを利用すればいいのではないかと思っています。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
髙倉委員,どうぞ。

【髙倉委員】 資料3-5,1ページに前回申し上げた内容を記載いただき,感謝申し上げます。
二つ目と三つ目の丸には,括弧表記で「留意事項として施行通知で示す」と記載されています。「何単位までを卒業要件に算入するか」や,広域連携の必要性は理解しますが,学生に過度な負担が生じないような配慮が必要な為,「大学間の距離や移動時間」などの目安は,早い段階で具体的な数値で分かりやすく示すことも検討いただきたい。
教職課程を共同で実施する体制についても同じ問題が想定されます。遠隔授業も増えてきていることから,そういったものを充実させていくことも含めて,学生の負担を軽減するための目安を設けた上で,議論を始めることも必要であると思います。
その上で,文部科学省としては,現時点で全国幾つぐらいの大学で実施できると想定されているのか,教えていただきたい。

【塚田大学振興課課長補佐】 今御指摘いただいたように,学生の負担への配慮というのは大事なものだと思っています。一方で,連携の仕方も様々あると思っておりまして,例えば,先ほど例に出しました山梨大学と山梨県立大学のように,かなり距離も近くて,カリキュラム全体を密に連携していこうというタイプもあれば,大学全体ということではなくて,特定の分野に着目して連携をしようという,規模感の違いもあります。
そういう特定の分野について連携をしようとしたときに,必ずしも近隣の大学同士ということで連携できるわけではありませんので,一律に距離とか移動時間の目安を示すということは,連携の選択肢としての可能性を狭めてしまうということも懸念しておりまして,御意見も踏まえながら慎重に検討したいと思っております。

【永田分科会長】 今のような場合でも,設置審であればもちろん学生の負担まで考慮するので,学生に負担をかけない方法を認可の際の条件にするはずです。このままではその仕組みが担保されているように見えないので,この法人の中で決めてしまうといつの間にか内容が変わっている可能性があります。単に作ればいいというものではなく,この法人の活動を制御することは非常に難しいけど,何らかの手段を講じなければ,既存のシステムとは随分違う形になってしまいます。
そのための手法はいくつか考えられます。学生は一切動かずに教員が遠隔地を回るという方法もありますし,そこは工夫次第だと思います。具体的にこうして工夫します,と明言しないで始められると,途中で変わっても文句を言えない,学生がずいぶん迷惑することになるのではないでしょうか。
村田委員,どうぞ。

【村田副分科会長】 先ほど少し御質問したことと関係あるんですけれども。授業に関してと言ったときに,資料3-5にも質問にありますけれども,恐らく5大学,6大学なんてあり得ないと思うんですよ。2大学とか3大学ぐらいしか,この大学等連携推進法人ということはあり得ない。
そのときに,先ほど河田委員からもありましたように,90単位ぐらいはマックスどこかの大学で,自大学は34単位しかという話になったときに,その質の保証の問題もありますし,そうすると,授業の質ということもあるんですけれども,一方で,複数大学の設置法人と,この大学等連携推進法人とどう違うのか。一般社団法人としてあるんですけれども,じゃ,そうだったら,質の保証だとかいろんなことを考えるときに,いっそのこと,もう複数大学法人にした方が,今,永田分科会長からも御意見があったように,いろんな意味での質保証だとか,制度的に担保ができるか。何かちょっと危なっかしさがこの制度には残るなというのが,ちょっとした感想なんですけれども。
そのあたり,逆に言うと,恐らく複数法人にはできないからこの制度だというふうに思うんですけれども,そこのところ,どういうふうにしたらいいのか,何か妙案があるのか,あるいは,今後工夫をしていっていただかないと,なかなか難しいかなと思ったりもします。意見です。

【永田分科会長】 小林委員,どうぞ。

【小林委員】 私も質の保証の話で,前回も申し上げて,2ページのところで,94単位分は自ら授業科目を開設しているからいいのではないかというようなことだと思いますが,かなり具体的に申しますと,前回も少し申し上げたのですが,科目を開設していさえすればいいということになってしまう可能性があるわけです。こういうことというのは大体低い方に流れる傾向がどうしても出てきますから,そこは非常に懸念しております。
先ほどから質の保証がずっと議論になっていると思いますけど,もう一つの仕組みとして,前回,15ページにあるんですけれど,大学の情報公表によってそれを少し担保しようといいますか,質保証をもう少し行われるようにしようというようなことだと思いますけれど,このあたりのことを,報告や情報公表を求めることとしてはどうかと,まだ疑問型になっていますので,この辺をもう少し詰める必要があるのではないかと思います。
これは全体として情報公表をどうするかというのは,次の議論になると思いますので,そのこととも関連していると思いますけれど,例えば,この場合に限って言えば,履修者数とか,実際にどの程度単位を取ったのか修得者数とか,そこまできちんとやらないと,これまでおっしゃっているような懸念というのは払拭できないと思いますので,その辺,是非よろしくお願いいたします。

【永田分科会長】 ありがとうございました。
麻生委員,どうぞ。

【麻生委員】 資料3-6に書いてあります,その裏のページの見直しの方向性の一番右ですが,教職課程の共同設置で,一つの法人が設置する複数の大学間において可能になるということですので,私学の場合,例えば,幼稚園教諭養成課程,小学校教諭養成課程で,2年制の短期大学と4年制の大学で,幼稚園免許,これは短大の場合は二種になり,小学校の場合一種ですが,この右に書いてある図に,大学と短期大学が同一設置者の場合,共同教職課程が考えられているのかどうかを御質問させていただきます。

【長谷教員免許企画室長】 まず,対象となる教職課程のところでまず申し上げますと,幼稚園教諭,小学校教諭の教職課程を共同できるかどうかというところにつきましては,現状,幼稚園教諭と小学校教諭の教職課程は,教員養成を主たる目的とする学科等においてのみ開設が可能であり,学位の目的と幼稚園教諭・小学校教諭の免許状がかなり密接に関連しておりますので,教職課程のみについて共同化する「教職課程の共同設置」になじむのかどうかというところは,実はワーキングの中でも議論がございまして,基本的には,中学校,高等学校等を念頭に置いている制度であるということが一つございます。
それから,御質問いただきました短期大学と4年制の大学との連携でございますけれども,これは正に今回御議論いただいている授業科目の共同開設の仕組みの中で,短期大学と4年制の大学との共同開設を可能にするかどうかというところと密接に関係してございますので,そこの結論次第と考えてございます。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
それでは,最後にわたしから一言だけ意見を申し上げます。教職の共同教育課程は,先ほど清水委員から言われたとおり,大変歓迎すべきことだと思います。しかし,初等中等教育の教育課程のニーズの多様化,小学校の英語や特別な支援が必要な児童等への対応等が背景にあったとしても,それが理由で共同専攻,あるいは,共同課程を作るだけで現在の教職課程の問題は解決しないように思います。問題の本質は,基幹教科すら一つの大学では教えられないような状況になっていることなのではないでしょうか。
つまり,今回の共同課程の設置を認める改正これ自体を否定するものでは全くありませんが,新たな要請がなくても,ここでわざわざワーキンググループを置いて議論しなければならないほど,単独で課程が成り立たなくなっている大学が増えているということ自体が,高等教育政策として再考の余地があるのではないかということです。それは何も教育課程を充実させろというだけではなくて,うまく集約する方法などを考えていかないと,こうした事態を招くのだろうと思うのです。
確かに,今までなかったような,例えば,小学校で英語を教える先生を育てるためには,一つの大学では設置できなくても,他大学でもっとそれに適する課程があれば,共同設置すると考えることはできます。しかし,もし基幹教科ですら共同課程でないと開設できない,ということになってしまうと大いに問題があります。この点は,全体の高等教育政策としてしっかり考えていただきたいと申し上げた上で,大学等連携推進法人制度の中で,共同課程が質の保証を伴って進められるように検討を進めていただければと思います。
それでは,本日最後の議題ですが,今期の大学分科会の中心的な課題である「教育と研究を両輪とする高等教育の在り方について」です。本日は若干時間があるので,事務局から簡単に説明いただいた後,その中からポイントを絞って議論をさせていただこうと思います。
それでは,お願いします。

【牛尾高等教育企画課長】 それでは,まず資料4-1でございますけれども,こちら,教育と研究に関わって何回か御議論いただいたときの主な意見を,主な論点ごとに整理をさせていただいたものでございます。こちらを御覧いただければと思います。
それから,資料4-2ですけれども,こちらは今後の御参考に頂けるような各種データを用意してございます。
スライドの2からは,教育と研究に関わっての教員の意識の関係で国際比較ができるようなデータを御用意しております。
それから,11ページ以降ですけれども,大学教育の在り方ということで,学士課程教育に関する問題意識などについて,学長の皆さんがどんなことを考えているかといったような資料を付けております。
それから,23ページ以降でございますが,ここは大学教員の在り方ということに関連するデータで,例えば,大学教員として見に付けるべき能力としてどんなことがあるかというようなことを聞いた調査結果などが付いております。
それから,最後,31ページ以降ですけれども,大学運営マネジメントに関わるもので,34ページ以降では,特に大学教員の職務活動時間の割合,研究・教育等にどのくらいの時間が割けているかといったことについてのデータをお付けしております。
それから,資料4-3でございますが,こちらは頂いた意見を論点の形に,取りあえず事務局としてたたき台として整理させていただいたものでございます。
これらに基づきまして,御議論いただければと思います。よろしくお願いいたします。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
お手元の資料4-3を御覧になりながら議論を進めたいと思います。論点例1が,大学における教育と研究はどのように関連しているか,という基盤的な部分です。その下の論点例2が,教育と研究に基づく大学教育の在り方,具体的には,教育課程や教育内容・方法についてです。論点例3が,研究と教育の担い手であるところの大学教員は本来どうあるべきか,という部分です。論点例4が,大学教員を支える大学運営マネジメントについて,となっています。
本日は,これまで中央教育審議会の長い歴史の中であまり議論されなかったポイントに絞って議論を始めさせていただきたいと思います。それは,大学教員の在り方です。大学には指導要領がないのと同じように,大学教員の育成については,さきほどの議題であった教職課程があるわけではありません。こうした中で,研究も教育も,今では社会貢献も担うとされている,将来における大学教員の在り方について御意見をいただきたいと思います。
この論点は全ての論点に関係してくるはずなので,是非とも御意見をいただければと思います。資料の3ページ目の論点例3に書いてある順番で言うと,一つは,大学教員に何が期待されているのかです。次に,大学教員を育成するという視点は必要ないか,さらには,各大学は採用する際に,大学教員の研究力や教育力をどう見ているかを明確にすべきではないか,ということです。最後が,各大学は,大学教員に対する教育支援や研究支援にどのように対応していけばよいのか,という点です。最後の点は,次の論点例4の大学運営マネジメントの変革にもつながっていくという,流れになっています。
本日はまず,現在の大学教員の在り方について,具体例でも良いですし,こうあるべきといった概念でも結構ですので,御意見いただければと思います。これまではこうだったけれども,今後は大学教員というのはこうでなければいけないのではないか,というような御意見をいただいて,その御意見を論点の1,2,3,4,それぞれにうまく振り分けながら,徐々にまとめていきたいと考えています。
清水委員,どうぞ。

【清水委員】 ありがとうございます。
私も,教育と研究を両輪とする大学教育の在り方で一番重要なのは,この論点3の大学教員の在り方だと思っています。
最近,実務家教員というものが,政策的にも実態的にもかなり多くなってきつつありますし,それに対する研修会とか,養成講座なども多くなってきております。
そういう中で,私は,制度として,テニュアトラックといいますか,テニュア制度がかつて導入されましたが,これが日本では十分に機能していないのではないかと思っております。もともとテニュア制度というのは,堂々と声を大きく出せるという意味合いがあり,当初は組合側からの要求で生まれてきた制度で,それが今は終身在職権ということになっています。アメリカの大学の場合にはこのテニュアを取得するまでに,教育・研究に相当打ち込まないと取れない。大学によっては,テニュア取得率ゼロなんていうところもあります。そういうシステムが日本の農耕民族に合うかどうかは別として,これを将来的に機能化させていけば,自然と教育・研究に専念できるようになると思っております。
ですから,一つの将来の方策として,テニュアトラック制度の機能強化,これを私自身は提案したいと思います。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
大変よい御提案だと思います。中央教育審議会なので,最後は具体的な制度等に反映できるような議論が一番望ましいわけです。例えば,テニュアトラックを実質化するためにはどうすればよいのか。清水委員が述べられたように,アメリカでテニュアを取るのは非常に大変です。1人についての人事を2,3年かけて徹底的にフォローし,最終的にテニュアが取れなかったという例がたくさんあります。そういう文化が日本に合うかどうかという問題も確かにあります。
そのほか,いかがでしょうか。益戸委員,どうぞ。

【益戸委員】
参考資料の様々なグラフを拝見致しますと,大学教員の本来の在り方に対する阻害要因あるいはエクスキューズに見える,御意見が非常に多いなというのが私の印象です。
農耕民族との表現が,清水委員から出ましたが,もはや民間企業においては農耕も狩猟もなく,生き残るために必死の努力をしている状態です。15年前から始まった大学改革が,果たしてどこまで進んだのか,ここ数年,中教審に関わらせていただきながら,常々感じております。人事評価や,教員,研究員が活動をするために,どうサポートしていくのが適切か,そもそもの職員の皆さまの在り方など,根本的な経営そのものを考え直さないと,本来の大学教員の在り方の理想像に近づかないのではないかと思います。
ですから,今までの大学改革の在り方を見直すというよりは,大学教員の在り方について,本来こうあるべきだという流れを整理し,新しい施策を考えたり,具体的に案を出すのが大切ではないかなと考えます。

【永田分科会長】 ありがとうございます。だんだん大学教員の理想像という点に絞られてきました。益戸委員の今の御意見のとおりだと思うので,この点を中心に議論したいと思っております。
そのほか,いかがでしょうか。今の清水委員と益戸委員の御意見に共通する部分ですが,大学教員には教員免許がありませんので,教壇に立つときに,1単位何時間教えればいいのか,自学自習を含む1単位の学修時間が何時間かを知らない大学教員も多いのです。これから新型コロナウイルス感染症が拡大する中で,いかにフレキシブルに授業を展開するかというときに, 1コマ何分を何回で何単位だったかと考える必要があります。これが理解できていないと,1単位を与えるために授業の時間はその一部であって,自学自習を入れて45時間の学修が必要である,ということが分かりません。では,学生に45時間学修させることができている大学教員が一体何人いるか,という問題です。
日本の学生は学修時間が少ないと言われますが,それは大学教員が学生に対して1単位の価値を正確に伝えていないことが一因と考えられます。単に,15回講義して試験を通れば2単位ではなく,学生が講義の倍に相当する時間をその科目の学修に費やさないといけません。アメリカの学生が遅くまで図書館にいるのは,そのために毎日レポート書かなければいけないからです。このような単位の本質を学生に伝えられている日本の大学は一体幾つあるのでしょうか。
つまり,大学教員の基本的な理解として,大学の教育はどういうものかという認識が十分ではないのではないかと思うのです。
これを十分理解したうえで,1科目終わりましたというときに, 2単位なら講義と自学自習をあわせて90時間の学修時間を学生に課しています,しかも,その中で独自の工夫をしながら,大学らしい研究という,つまり,探究するという仕方で教えています,と言わない限り単位は与えることはできないのです。
こうした危機感を持っているということを申し上げました。
金子委員,どうぞ。

【金子委員】 今,永田分科会長からもあったんですけれども,いろんなデータが出ていますけれども,今まで日本の大学教員に関わるデータを見ていますと,やはり日本の大学教員というのは,あんまり言いたくないんですが,かなり特徴がありまして,それは多分,先ほどの大学教員に対する不信感とつながっているんだろうと思うんですけれども,基本的には,やはり研究志向で,日本の大学教員は,世界の大学,主要国の教員と比べて,研究志向,これは疑いない,かなり強い。しかも,研究と教育が矛盾していると考えていて,教育を一所懸命やるということによって,研究時間を取られるという意識が非常に強いということはあるだろうと思います。
それから,もう一方で,あんまり今まで言われていませんけれども,教員に対する評価は,やっぱり各国と比べて少ない,これは事実だろうと思います。
それから,もう一つ,大学間の異動が非常に少ない。これと評価が少ないというのは関わっているわけですね。要するに,評価がよくあるというのは,結局,異動があるから評価をするわけで,学内での評価というのは,あんまりやってもいろんな問題が起こるというのは,それはどこの大学でもそうなんですが,異動が起これば評価せざるを得ない。そういう意味で,評価がないところと異動が少ないというのは重なっている。
それと,賃金体系も年功が非常に強くて,はっきり言って,学内にとどめておいた方が楽なんですね。これは日本の企業社会と非常に似た特質を持っていると。
というのが日本の大学の姿であると思います。これが,先ほど永田分科会長のおっしゃったように,教育の在り方にもかなり反映しているという面があるのかもしれません。特に,ゼミとか研究室とかというのは非常にこだわりまして,そこで何となく一緒にいれば,学生は学習していると思い込んでいるというのが,日本型の教員の思想の在り方だと思います。
ただ,私ども,最近,教員の調査をやりまして,前に2009年にやったんですが,昨年に,それぞれ大体2万人ちょっとですが,やりまして,ある程度変わっているところがあるんです。今私が申し上げた部分のかなりの部分はやっぱり変わっていないんですが,かなり変わってきているところはある。
一つは,やはり若手の教員に相当年長の教員との意識の差が出てきていて,例えば,評価をもっとやるべきだというような意見は,かなり若手の方で強くなっています。それから,若手は,ゼミとか研究室に対する思いというのは少なくて,やっぱりきちんと組織化した教育体系で,助手とかそういったものを使って,要するに,システマティックに教育した方がいいだろうと思うようになっている人が多くなって,これは前回やったときに,若手はかなり違う意見を持っているのかなと思ったら,そうでもなくて,やっぱり日本の大学の凝集力は強いなと思ったんですけど,今回は,若手が置かれている状況が確実に今変わってきて,危ない状況になったので,やっぱり考えざるを得なくなってきているのではないかなと思います。
その中で,教育の仕方もかなり変わってきていまして,今,学生向きになっているというか,教員に発言させるとか,学生参加とかグループワークをやる人が非常に多くなっていて,これは学生の調査でも,やっぱり多くなっていると言っているんですが。そういう意味で,かなり教育方法に対する考え方は,ここ10年ぐらいで随分変わってきているので,それは,こういう審議会を含めて,いろんなところでいろんなことを言っているのがやっぱり効いているんだろうと思いますが。ただ残念ながら,それが学習時間とは全然結び付いていないんですね。ここ10年ぐらい,学習時間はほとんど変わっていません。
ですから,言ってみれば,学生に親切になってはいるんですが,それが学習に努力をもたらすというか,そういう形での変化に結び付いていない。そういった意味で,前途はまだかなり大変だという感じがいたします。
以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
河田委員,どうぞ。

【河田委員】 金子委員が全て私の言おうと思ったことをおっしゃってしまいました。私も,最初国立大学で14年勤務し,その後,私立大学に長くいたのですが,いくつかの大規模な私学では,「学生一流,校舎二流,教員は三流」という言葉が言われておりました。その理由は三つあります。
一つは,きちっとした教員の評価ができていない。私のいた大学を含め,かなりの関西の大学では,職員の評価はきちっとして,それが給与に反映されていますが,教員評価は全然できていない。教員評価を導入しようとすると,次回の学長選挙で落選させられるというのです。やはり私学法のどこかの条に教員評価が必要だということを書く必要があるのではないかと考えます。
二つ目は研究休暇制度のサバティカルが,だんだんそれらの業務をきちんと実践した教員には普及してきましたが,必ずしも制度化されてない。だから,研究,研究と言う教員が多いですけど,研究と教育に,あるいは学内行政に時間を取られる時代ですから,是非ともサバティカルを法律的に,明確に義務付けて,5年に一度,あるいは7年に一度は研究休暇が取得できるということが制度化されるということが大事ではないかと考えます。
それから三つ目は,教員の流動性も少なくて,A大学を卒業して,そのまま助手で残って,ずっと講師,助教授,教授になっていき,あの先生はどこからも声が掛からないからずっと在職していると,学生や教職員たちは陰で言っているけれど,そういう先生が力を握って学部長になり,事によると学長になってしまう。時に,そういうことすらありうる。だから,大学教員には教員免許がないわけですから,そういう意味からも教員評価,サバティカルの制度化が必要ではないかと私は感じております。

【永田分科会長】 志賀委員,どうぞ。

【志賀委員】 これ,きのうだったと思いますけど,日経の電子版に,教育問題をいつも追っかけている横山さんという記者が,日本電産の永守さんの作った大学の記事を書かれていましたけれども,自分が京都の大学の理事長をやったときに,なかなか大学改革が進まないので,丸ごと大学を買って,東大・京大を追い越す大学にするんだという,いつもの永守節が出ていましたけれども。
その中にも書かれていましたけれども,結局,自分が授業に出てみたら,学生の9割が居眠りしていて,自分も10分たったら居眠りしていて,先生に文句言ったら,学生が悪いんだと言われたというのが出てきて,もうころっと変えるんだという。
こういう産業界の人が大学経営に乗り出してきて,どこまで変わるかというので,横山さんが最後に注目したいという書き方をされていたんですけれども。結局,日本電産なんか,グローバルで闘う象徴的な企業ですが,とにかく人を競争させていく,それによって人材育成をするという,それをベースにしているわけで,どんどん採用した人間ができが,パフォーマンスが悪かったらどんどん切るという。正直言って,民間企業の中でも,伸びている企業というのは,やっぱりそういう人事に対する厳しさがあるんですね。
ここで前に申し上げたんですけど,大学がちゃんとしたポリシーを持って,ブランドとして目指す方向みたいなものを打ち出すに当たっては,そういうポリシーにあった教育・研究をやれる先生を正確に評価をして,そして,競争環境の中で教員の質を高めていかないと駄目ですよ。評価システムはどうなっていますかってそのとき質問したら,評価システムはありませんとおっしゃったんで。やっぱりこれだけの議論をずっとしているんですから,そろそろ明確な評価基準なり,評価システムなり,あるいは,サティフィケート,認証なり,そういうことを明確にやっていかないと,ずっと議論ばっかりしても良くならないのではないのかな。永守さんみたいな人が,要するに,改革で乗り込んでこない限り,大学って変わらないぞということを証明してしまう。そういう危機感を私は感じますけど。

【永田分科会長】 宇山委員,どうぞ。

【宇山委員】 先ほどのテニュアトラックのことなんですが,私,広報の担当として,うちの大学に来た7人ぐらいのテニュア教員を最初から最後まで取材したり,ホームページで紹介したりしていたんですけれども。
まず,応募の動機が,海外の留学期間がすごく長くて,日本に戻ってくるポストがなくて,それで探して見つけてということで来た教員がほとんどで,また,受け入れるがわも,割と腫れ物に触るような感じで,戦々恐々としながら迎え入れて,チューターの責任者の先生3人だけが面倒を見て,余りほかの先生方は触らないようにみたいな傾向がすごく強かった感じがして。
最終的に,そのテニュアトラック教員たちは巣立っていって,ほかのところでキャリアを積んでくれて,伸びてはいるので,いいかなと思っているんですけれども。ただ,元の大学に残してくれた後輩が成長するかとか,それから,作ってくれた研究室が大きくなるかというと,あんまりそういう後が残らないかなという,大学としてのメリットが残らなかったことがちょっと残念かな。それは,もしかしたら,受け入れている,ちょっと腫れ物に触るような形の従来の教員たちの受入れ体制に問題があったのかなというのを,今,テニュアトラックのお話を聞いて思い出しました。
それから,うちの大学で,夏休みに中学生の医療体験講座というのをやっているんですけれども,中学生たちが,夏休みの宿題の対策で,大学に来て医療を学んで,それでポスター発表みたいなことをするというのを目的で来るんですけれども,非常に喜ばれて,ポスター発表の仕方みたいなことを先生方が細々と教えてくれて,研究発表の素材も提供してくれるということで,親御さんにも子供たちにも非常に好評を博しているんですけれども。
それを見ていて,研究の仕方,ノウハウ,ポスター発表一つだけでもいいんですけれども,何か期限が迫られた目標に向かって研究を進めていくということのノウハウを教えるというのに,アカデミア,大学というのはすごくたけているかなという感じがして,そこの部分を子供たちに教えていくということも大切だと思いますし,また,高齢者を対象にした文京区の方たちのセミナーみたいなこともやっていて,それで先生方が図書館とかに高齢者の方を連れていくと,「解体新書」が置いてあるんですけれども,それを見た高齢者の方が,「解体新書」に関して研究したいということをおっしゃって,それをサポートしてあげる教員が出てきたりとかということで,そこでまた先生方も問題意識を,こういう掘り下げ方があるのかという新しい刺激をもらったり,高齢者の方々が何か発表したい,文京区の文化祭で発表したいみたいなことで,研究が広がったりということで,すごくいろいろな年齢層に波及して,意外なところで,単純な市民公開講座みたいなことでも刺激になるのかなというので,地域連携のプラットフォームの一助というか,アイデアにできればいいかなと思ったんですけれども。
何か成果発表の場を作ってあげたりとか,それから,年齢・世代が違う,それから,立場が違うということで,産学連携というと,何か利益を求めなければいけないとかということになると思うんですけれども,もうちょっと教養教育的なことで人生を高めていくというか,豊かな人生を生きるためにどうしたらいいかということを一緒に考える場としての大学というのはあり得るのではないかなと感じました。
以上です。

【永田分科会長】 長谷川委員,どうぞ。

【長谷川委員】 ありがとうございます。
確かに,私が大学教員になってすぐというか,大分長いこと,科目がどれだけあって,時間がどうでというようなことを本当に全然知りませんでしたし,全く授業をやるということに関するいろいろなポリシーなども聞いたことはなかったんですね。
そういうことを最初にすごく教えられたのは,やっぱりエール大学に行って,エールで教えたときです。そのときに感じたのは,シラバスをちゃんと書かなければいけない。そのシラバスの書き方というのが,40時間とか,15回ではなくて,45分がずっと1学期月水金で続くんですけれども,その後ろにどれだけ学生に自習をさせなければいけないかということを組み込んだシラバスを書かなければいけないので,そうすると,参考文献として挙げるのではないんですね。参考文献ではなくて,この授業に出てくるには,これとこれは絶対読んでおいて,それを基に議論をするから来なさいという,そういうシラバスの書き方をしなければいけなくて,それによって何が分かるかも書かなければいけないので。だから,そういうことを考えさせるシラバスでないと受け付けてくれないから,そこですごく考えたわけです。
そういうような,今の日本のシラバスは,何か予定表みたいになっているだけなので,そうじゃない,ちゃんとそういう裏の学習も含めたシラバスをきちんと書くということが定型化すると良くなると思うんですね。
それには,どこかの報告にありましたけれど,日本の1学期間の授業数は多すぎます。それをもう半減ぐらいにしないと,1学期に取る科目数があれだけ多かったら,その裏にある学習をやれるわけがないので,そのためには,セメスターとか,いろんなことをして,講義に出る時間,取る単位の時間は減らすということがセットで必要だと思います。
それで,エールですごく思ったのは,そうやってものすごく大変なんだけど,一つ一つの授業というのを組み立てるには,トレンドジャーナルに一つの論文を書くぐらいの勉強をしないと,一つの授業ができないんですね。だから,もし15回やると,トレンドジャーナルに15本書くぐらいのことをやらなければいけない。そして,それをそのままトレンドジャーナルに載るものをしゃべっても駄目なので,その内容を半分にしないといけない。そこですごく考えさせられて,教育と研究が両方いい効果を生んでいたと思います。
そういう意味での,サポート体制としてRAもいれば,TAもいれば,サバティカルもあれば,事務職員の方がものすごくサポートしてくれるしという,そういう全部セットにならないと,全方向的に改革しないと実現しないかなと思います。

【永田分科会長】 いまの長谷川委員の御意見のなかに具体的な方法が全て含まれているように思います。
鈴木委員,どうぞ。

【鈴木委員】 よろしいですか。
今皆さんの言っていること,本当によく分かります。 3ページに書かれている内容というのは,正直言って,すごくがっかりしています。文部科学省の方にお願いしたいのは,是非,教えるということは何なのかということを,もう一度気付きを与えてあげてほしいと思います。気付きを与えるということは,やはり評価制度をきちんと入れることだと思います。
その評価制度の中には,上からの評価と,同期の横の評価と,下からの評価という,この三つの評価制度を是非入れていただき,教えるということに対する意識を気付かせて頂きここに書いてあることは当たり前のことです。まとめると,気付きを与えても直らない先生は替えていくというぐらいの感覚で,是非お願いしたいと感じました。
以上です。

【永田分科会長】 ありがとうございます。
貴重な御意見をいただきましたので,これをもとにもう一度まとめ直して,また議論に付します。これを何回も何回も繰り返すことで,だんだん完成に近づいていくと思います。
長谷川委員の講義に対する御意見は,わたしも実感しています。半年から1年以上かけて完成させた論文の内容を,一回の講義だけで話してしまうこともあります。そう考えると,15コマやるということは,その背景にどれだけの研究の成果がなければならないのか,ということが理解できると思います。そのように教育に向き合っている大学教員もいるし,そうでない大学教員もいるということが現状なのだと思います。
それでは,最後に,事務局から最近の文部科学省での会議についての御紹介と,次回以降の予定について簡潔にお願い申し上げます。

【牛尾高等教育企画課長】 恐れ入ります。参考資料1を御覧いただきたいと思います。
現在,高等教育局で,この大学分科会以外にやっております主な会議の御紹介をさせていただいております。
三つございまして,一つは,大学入試の在り方に関する検討会議でございまして,これはもう御案内のとおり,昨年末の,昨年の入試に係る方針変更に伴いまして,英語4技能評価,あるいは,記述式出題の在り方について,改めて検討を行っているものでございます。
それから,二つ目でございますけれども,国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議ということでございまして,国立大学法人について,一層戦略的な経営ができるようにするために必要な制度改正の在り方などについて検討する会議でございます。
それから,三つ目,これは最近始まったばかりでございますが,大学入学者選抜における多面的な評価の在り方に関する協力者会議というものでございまして,こちらは大学入学者選抜におけます調査書,あるいは,それ以外の様々な学生さんの学習履歴等をいかに評価していくかということについての検討会でございます。
以上三つの会議につきましては,ある程度議論がまとまった段階で,こちらの方にも御報告させていただきまして,御意見を頂戴したいと思っておりますので,その際にはよろしくお願いいたします。
以上でございます。

【奥井高等教育企画課課長補佐】 続けまして,次回の日程につきましてお知らせいたします。
次回は,5月20日水曜日の10時から12時を予定しております。会場は調整中でございます。また,新型コロナウイルスの関係で,開催方法は改めて調整させていただくことを御承知おきいただければと思います。
資料につきましては,郵送を御希望される場合,机上に残しておいていただければと思います。
また,プラットフォームのガイドラインですとか,連携法人の制度見直し,御意見がもし何かあれば,具体的な御提案を頂ければ幸いでございます。
以上でございます。

【永田分科会長】 ありがとうございました。
次回はもっと寄り添った議論ができるように,事態が改善していることを望みつつ,皆さん,どうぞ御健康にはお気を付けて。どうもありがとうございました。

── 了 ──

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高等教育局高等教育企画課高等教育政策室

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