大学分科会(第151回) 議事録

1.日時

令和元年11月12日(火曜日)13時~15時

2.場所

文部科学省 東館3階 第一講堂
(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 認証評価機関の認証等について
  2. 地域における高等教育機関と大学間の連携の在り方について
  3. 教育と研究を両輪とする高等教育の在り方について
  4. Society5.0時代に対応した教員養成を先導するフラッグシップ大学の在り方について
  5. その他

4.出席者

委員

(分科会長)永田恭介分科会長
(副分科会長)村田治,渡邉光一郎の各副分科会長
(委員)有信睦弘,亀山郁夫,志賀俊之,吉岡知哉の各委員
(臨時委員)麻生隆史,安部恵美子,宇山恵子,加登田惠子,金子元久,河田悌一,小林雅之,佐藤東洋士,清水一彦,鈴木雅子,髙倉明,髙宮いづみ,曄道佳明,長谷川眞理子,福田益和,益戸正樹,三村信男の各委員

文部科学省

(事務局)伯井高等教育局長,白間私学部長,玉上大臣官房審議官(高等教育局担当),平野大臣官房審議官(総合教育政策局担当),増子大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当),牛尾高等教育企画課長,大洞科学技術・学術政策局文部科学戦略官,髙田教員養成企画室長 他

オブザーバー

島田眞路山梨大学長,早川正幸山梨大学理事,袖山禎之山梨大学理事,大森昭生共愛学園前橋国際大学学長,谷内田修前橋市未来の芽創造課長

5.議事録

事務局より,議題のうち「認証評価機関の認証について」は,中央教育審議会大学分科会運営規則の第二条第二項の「公開することにより公平かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがあると認める場合」に該当し,非公開とする旨の説明があった。

(1) 認証評価機関の認証について
第147回の大学分科会(平成31年3月27日)において,文部科学大臣から諮問がなされた公益財団法人大学基準協会の申請に関する「認証評価機関の認証に関する審査委員会」における審議経過について,牛尾高等教育企画課長から報告があった。
その後,審議を行い,原案通り答申することについて,可決された。
(傍聴希望者入室)
【永田分科会長】 それでは,ここから公開にて議事を進めます。
最初の議題ですが,短期大学基準協会から新たに大学の機関別認証評価に関して申請があり,文部科学大臣から諮問をいただいています。
具体的な審査は審査委員会において行い,その審査結果を待って本分科会で更に審議を重ねた上で,申請の可否について議論することになります。本日は,申請概要を事務局から説明をいただいて,審査委員会の議に付せるかどうか御審議いただきたいと思います。
それでは,事務局から説明をお願いします。
【牛尾高等教育企画課長】 それでは,御説明させていただきます。資料2を御覧ください。資料2の1枚目は,本日付の諮問文でございます。
具体的な内容は,おめくりいただきまして,通しページの3ページ以下に,短期大学基準協会から出てまいりました申請書を付けております。こちら,少し詳しくなりますので,説明は11ページになりますが,参考として概要をまとめたものをお付けしておりますので,こちらで御説明をさせていただきたいと思います。
11ページを御覧ください。まず,短期大学基準協会の概要でございますけれども,短期大学の教育活動等についての総合的な評価を行い,質向上等を図るということを目的とした団体で,平成6年4月21日に設立されております。
主な事業といたしましては,短期大学の教育活動等についての認証評価の実施,その他の質向上に関わる種々の活動をされておられます。短期大学の評価を行う認証評価機関として,平成17年1月14日に認証を受けているところでございます。
続きまして,今回,諮問の内容になっております,申請のあった評価事業の概要について御説明いたします。11ページの下半分のところからですが,評価の対象は,短期大学を除く大学,いわゆる4年制大学ということになります。評価の周期は7年以内ごと,評価手数料の額は,そこに記載のとおりでございます。
おめくりいただきまして,大学評価基準の案のポイントでございます。4つの基準の柱を設けておられまして,1ミッションと教育効果,2教育課程と学生支援,3教育資源と財的資源,4リーダーシップとガバナンスといったものから構成されております。
評価方法でございますが,対象大学が作成する自己点検・評価報告書に基づき,書面調査及び訪問調査をするということでございます。
評価結果の示し方でございますけれども,当該大学の状況について「適格」又は「不適格」と判定するとしております。先ほど御紹介した4つの基準に照らしまして,全てがいいという場合には「適格」,4基準のうち一部又は全てが否である場合は「不適格」,自己点検・評価報告書の内容に虚偽記載がある場合ですとか,重大な法令違反等がある場合は「不適格」,更に「適格」の場合であっても,基準に照らして一部に問題が認められるような場合には,当該問題の改善についての意見を付すことがあるとされております。
簡単でございますが,申請内容の概要でございます。
【永田分科会長】 御質問をお受けいたしますが,いかがでしょうか。
短期大学基準協会が、新たに4年制大学の評価を行いたいということなので,審査委員会で内容を吟味いただいて,その結果をもとにもう一度ここでお諮りいただいて,認めるか認めないかという議論になるかと思います。現時点で特段の異議はないでしょうか。
異議はないようですので,審査委員会でこの件の審査を進めていただくことにします。
次の議題ですが,認証評価に関して,細目省令の改正をしなければならない事項があり,本日,諮問をいただきました。それにつきまして事務局から説明をいただいた後,意見交換をしたいと思います。
それでは,説明をお願いします。
【牛尾高等教育企画課長】 続きまして,資料3-1を御用意いただければと思います。こちらが今回の諮問内容の文書でございます。1ページ目は諮問文,それから,2ページ目は,今回御審議をお願いします改正内容の要綱となっております。
説明は,次の概要というページがあると思いますが,そちらの方が分かりやすいと思いますので,そちらに基づいて御説明をさせていただきたいと思います。
この細目省令でございますけれども,評価機関につきまして,文部科学大臣が認証する際の基準の細目を定める省令でございまして,その一部を改正したいというのが今回の内容でございます。
1番の改正の背景でございますけれども,(2)にございますように,先の通常国会におきまして,学校教育法等の一部を改正する法律によりまして,認証評価の方法につきまして,全ての評価機関につきまして,基準に適合しているか否かの判定をするということが新たに法律上義務付けられたところでございます。これに伴って必要となる細目省令の規定の整備を行うというものでございます。
具体的な内容でございますが,2の改正の概要,(1)でございます。再度の評価規定の整備ということでございます。再度,いわゆる再評価の対象につきまして,従前は改善が必要とされる事項を指摘される大学等を対象に再評価することの努力義務が規定されておりました。今回の学校教育法の改正によりまして,全ての大学におきまして,大学評価基準に適合しているか否かの認定が行われますので,この再評価の対象としまして,大学評価基準に適合している旨の認定を受けられなかった大学が含まれるということを明確化しようというものでございます。
また,その際の評価の事項につきましては,改善が必要とされた事項に限定するということを規定上も明確化しようということでございます。
なお,これに伴いまして,従来は法科大学院についてだけ適格認定の義務付けがございましたので,これについての規定,それに関連しての再評価の規定は不要となりますので,削除することとしております。
それから,(2)の法科大学院の関係ですけれども,ただいまの説明とかぶりますけれども,従来は法科大学院だけ大学評価基準に適合しているか否かの認定を適確に行うということが規定されておりましたが,今回の改正によりまして,全ての大学の評価について対象となりましたので,この規定を削除するということをさせていただきたいというものでございます。
施行日につきましては,令和2年4月1日ということでございます。
以下のページで省令の本体を付けておりますので,御参考にしていただければと思います。
説明は以上でございます。
資料3-2は,内容が適当であるとお認めいただいた場合の答申案を付けさせていただいております。
以上でございます。
【永田分科会長】 ありがとうございます。
簡単に御説明すると,前期の中央教育審議会で認証評価についてより的確に適合・不適合を出すべきという議論が行われました。これを受けて,先の国会で成立した学校教育法等の一部を改正する法律に沿った形で細目省令を改める,という内容です。
有信委員,どうぞ。
【有信委員】 認証評価の基準を厳格にするという意味で,大学評価基準に適合・不適合,こういう評価を入れるということについては何の異論もないんですけれども,法科大学院での適合認定を行うというときの適合性というのは,もう一つ別な意味があったように私は理解しています。つまり,法科大学院は法曹を育成するという目的で設置されていて,法科大学院の教育内容が法曹育成という目的に対して適合しているかどうかという文脈の中で適合評価をやるということで,ここが認証評価とは明確に区別をされていて,区別の内容は,今言われたように,1つは,大学評価基準に適合しているかしていないかというのは,大学評価基準が明確に規定されていなかったので,その文言がなかったということかもしれないんだけど,法科大学院の適合認定というのはまた別の意味があって,ここの部分について言うと,以前より議論が進められている分野別評価との関係です。分野別評価に関しては,中教審から学術会議に依頼が出ていて,学術会議で学問分野別に参照基準というのを作ってきていて,これが個別の学問分野ごとに身に付けるべき能力ということで決められてきていたと思います。
つまり,そういうこととの関わり合いにおいて,個別の学問分野ごとにそういう必要な教育が行われているかどうかということを見て,その適合性を認定するという部分が,ここではまだ多分議論されていないような気がするんだけど,その辺がきちんと議論をされているのかどうかということを是非お聞きしたい。
【永田分科会長】 事務局から回答をお願いします。
【牛尾高等教育企画課長】 まず,今回の改正内容は,そういった議論というよりは,先般の学校教育法改正に伴って必要となった部分を,ある意味,形式的に整える意味で改正をさせていただいている内容になっております。
本来の評価の在り方として,今,委員がおっしゃっていたような論点があるというのは,そのとおりだと思っておりますが,現時点において,専門職分野以外の分野別評価についてどうするかということについての事務的な議論はまだ,正直申し上げて,それほど進んでいるわけではございませんが,今後,質保証全体の議論というのを,設置基準,認証評価,全て併せてやることを予定しておりますので,その中では,分野別の評価の在り方,機関別評価の在り方,をどうするかということを深く検討させていただくことになると思っております。
【有信委員】 ここで法科大学院に対する規定を取ってしまうというのは,全体の整合性からすればそのとおりで,きれいに整うとは思うんだけど,それを取ったことによって,法科大学院の,あるいはほかの専門職大学院の認証評価が変わってしまうか。つまり,認証評価というのは,私の理解では機関評価なので,その教育機関が3つのポリシーにのっとって,教育の質も作り上げていて,当初の目標とする人材を育成できているかということを含めて,その教育システムが不断に改善されるようになっているという観点で評価をするわけで,特定の専門性なり,あるいは専門的職業人を育成するなりというような観点の部分は抜けているんですよね。だから,そこがこの改正によって抜けてしまわないような配慮をどこかでしておく必要があるのではないかというのが,少し心配なところです。
【永田分科会長】 有信委員が懸念される点はそのとおりだと思います。法的な根拠はないとしても,精神としては,各評価団体が評価団体の側で,例えば法曹はこうあるべきであるということを定めているはずです。従って,各評価団体の持っているその精神を含めて定めている内容を突き合わせて,標準化できればよいと思います。そこは今後検討すべきだと思いますので,認証評価の根本的な問題点等も含め大学設置等の制度のあり方について,年明けから部会等において話し合おうと考えています。
今の有信委員の御意見は議事録に残しておいて,そこで忘れず議論するということでいかがでしょうか。ありがとうございます。
繰り返しになりますが,認証評価は,多様な分野から成る大学を機関別で評価するのが原則です。この機関別評価と専門職大学院のある分野に特化した分野別評価は,少し視点が違うわけです。その2種類を法律上同じ文言にしてしまうと,分野別評価ならではの視点が抜け落ちてしまわないか、ということだと思います。そうならないために,各評価団体が定めている分野別と機関別の評価基準を持ち寄って,標準化すればよいのではないかという議論です。よろしいでしょうか。
それでは,この案件は細目省令の改正ということで,大学分科会の議決をもって中央教育審議会の議決に代えることができるということになっています。それでは,事務局から,定足数を確認いただきたいと思います。
【奥井高等教育企画課課長補佐】 失礼いたします。現在,24名の委員が御出席しておりますので,過半数を満たしております。
以上です。
【永田分科会長】 それでは,お諮りさせていただきます。先ほど事務局から説明のありました諮問の内容について,有信委員の意見は議事録に残した上で,御了解いただくということでよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【永田分科会長】 ありがとうございました。
認証評価や大学設置に係るいろいろな議論は難しい問題ですが、部会等で徹底的に議論なされるものと期待をしております。
それでは,大きな2番目の議題に移ります。前回も議論させていただきました,地域における高等教育機関と大学間の連携の在り方について,より深堀りしていきたいと考えています。本日は,大学等連携推進法人制度の活用を念頭に置いて,自治体・大学間で協定を結んでいらっしゃる山梨大学からヒアリングを行いたいと思っております。さらに,地域連携プラットフォームの先行事例として,「めぶく。プラットフォーム前橋」を構成しています前橋市及び共愛学園前橋国際大学からヒアリングを行った後に,皆さんで議論したいと思います。
それでは,山梨大学から島田学長にお越しいただいていますので,早速,15分程度での御説明をお願いいたします。
【島田学長】 御紹介ありがとうございました。山梨大学の学長を務めております,島田眞路と申します。本日は貴重なお時間を頂きまして,まことにありがとうございます。
早速ですけれども,山梨大学と山梨県立大学とのガバナンス連携による地方大学の機能強化について,お手元の資料を基に説明させていただきます。
資料4-1がお手元にございますかと思いますけれども,まず,1ページ目を御覧ください。設置形態を超えたガバナンス連携構築構想になります。左上水色枠のとおり,地方国立大学の使命・役割が拡大しており,多くの分野での期待が寄せられております。一方,右上紫枠の赤字に示しておりますとおり,山梨県では,18歳人口の大幅な減少や,地元大学への進学率低迷などの課題を抱えております。
これら課題に対応するため,オレンジ枠内のとおり,地理的要件や開設学問分野,運営基盤を考慮し,地域内での大学間連携が最善との結論に至りました。この連携により,教育資源の不足を補い,単独ではなし得ない事業展開が可能となります。その結果,1つ目ポツのとおり,AIやSociety5.0など,社会変化にも対応できるようになると考えます。また,文理の枠を越えた教育を実現いたします。
中央の水色部分に示したとおり,両大学は,現状の大学経営に対する危機感を共有していることから,その下の水色枠にお示ししますように,山梨県内の大学等との連携も視野に,まずは両大学で,連携事業の中核を担う運営法人である「一般社団法人大学アライアンスやまなし」,仮称でございますけれども,これを設立いたします。
それには,山梨県の協力が必要となります。右の写真を御覧ください。既に今年の5月に,中央に長崎山梨県知事,左に,そちらにも見えておられます清水山梨県立大学学長,右に写る私ががっちりと握手し,山梨県を含む3者間の連携協力に関する協定を締結させていただきました。
このように,山梨県も両大学の連携に主体的に参加,協力することが約束されています。つまりは,左下に示すように,行政と大学との密接な連携,連携基盤の強化が図られています。
まとめますと,黄色マーカーのとおり,全国初となる設置形態が異なる大学間でのガバナンス連携,すなわち強力にタッグを組む関係を構築し,地方における新たな大学改革の先駆けモデルを確立いたします。そして,連携実績を積み重ねることで,対象分野・範囲を順次拡大し,両大学ともに機能強化を図る構想であります。
2ページ目を御覧ください。一般社団法人設立に向けた取組状況(体制)になります。一番上の紫色枠のとおり,大学等連携推進法人の認定を見据え,一般社団法人の設立に向け,大学間連携に係る準備委員会を設置し,具体的な事業の検討を進めています。
マル1と下の図に示すように,6月に設置した準備委員会には,両大学の学長・理事が委員として参画し,次のページで説明します連携事業を検討するため,傘下に教養教育,幼児教育・教職,看護教育,社会科学・地域貢献,管理運営,教育の質保証,の6つのワーキンググループを設けています。
そして,上の紫色枠に戻りますけれども,マル2のとおり,各検討ワーキンググループの座長には,理事や学域長など責任ある役職者を充て,実行性を担保しています。既に5回の検討を重ねているワーキンググループもございます。
さらに,マル3にあるように,準備委員会では,各ワーキンググループの検討・進捗状況を把握しつつ,適宜必要な指示を出すなど,ワーキンググループの活動をしっかりハンドリングしております。
準備委員会と各ワーキンググループとの関係をイメージに表すと,水色とその下のとおりになります。一番下の紫色点線枠に示したとおり,準備委員会は10月までに4回開催しており,連携事業をはじめ,一般社団法人の運営についても協議を進めてきました。既に理事会構成メンバーや定款の策定準備を終え,現在は法人登記に向けた手続を進めている段階であります。
続きまして,3ページ目を御覧ください。一般社団法人下での具体的な連携事業になります。一番上の紫色枠のとおり,年内に両大学が社員として参画する一般社団法人を設立。一定のガバナンスを掛けて,連携事業を確実に実施いたします。その上で,その下の行に示したとおり,両大学が拠出する運営資金等を原資として,予算の配分を行いつつ,スピード感を持って連携事業を展開していく計画であります。
水色部分のとおり,設立する一般社団法人には,理事会や総会に加え,大学等連携推進法人の認定基準とすることが検討されております大学等連携推進評議会を設け,意見具申を求める体制を構築いたします。
それでは,具体的な連携事業を簡単に説明いたします。まず,左半分の紫色部分,令和2年度の実施計画です。これらについてはかなり具現化しつつあるため,それらを踏まえ,右側青字の令和3年度以降の計画の事業に発展させていきます。
主な事業を中心に赤字部分を説明いたしますと,左側上から4つ目の赤枠にありますとおり,両大学にある看護分野について,まずは大学院修士課程における授業科目の単位互換から始めてまいります。
次に,その下の緑色枠,社会科学分野では,山梨大学大学院に両大学の教員が参画して特別教育プログラムを共同運営する予定であります。
次に,右半分,黄緑色部分を御覧ください。一番上のオレンジ枠の教養教育分野では,教養科目の共同開設を計画しております。資料に記載はありませんけれども,教養教育の連携による効果は非常に高いと見込んでいますので,両大学間で相互補完をしつつ,共同開講などを推進していきたいと考えています。
その下の水色枠の幼児教育分野では,両大学の教育資源を有効に活用し,山梨大学の教職大学院に幼児教育分野コースの設置を進めていきます。
一番下の紫枠になりますけれども,管理運営面での連携も推進いたします。具体的には,赤字のとおり,物品等の共同調達・契約を来年度から実施いたします。そのほかにも,事務系職員の人事交流も実施いたします。
このように,様々な分野での連携事業を展開することで,両大学の機能強化を図っていく計画であります。
次の4ページを御覧ください。要望,大学設置基準のさらなる緩和になります。オレンジ色点線枠を御覧ください。大学設置基準の改正に伴い,1つの大学内で学部等連係課程を新設する場合には,専任教員のダブルカウントや,設置審査の簡略化が実現しております。
しかしながら,同制度の対象は1つの大学内に限られているため,大学間連携の枠組みで活用する際にはネックとなっています。つきましては,黄色マーカーのとおり,大学等連携推進法人の枠組みで,複数大学が共同で学部等連係課程を新設する場合には,教育の質保証が適切に担保されていることを条件の一つとした上で,当該複数大学を1つの大学とみなし,専任教員のダブルカウントを認めていただくことを要望いたします。中教審の委員の皆様方には,是非御賛同いただきたいというふうに考えております。
仮に黄色矢印のとおり特例が認められた場合ですけれども,右の水色点線枠上の中央,赤色マーカーのとおり,本学教育学部教員と,県立大学人間福祉学部教員による幼児・保育連係課程の新設などが可能となります。また,同じ考えで,その下のとおり,地方創生分野での連係課程の開設も進めていきたいと考えております。
特例の適用に当たっては慎重な対応が必要となるため,右側下段のオレンジマーカーに示したとおり,一般社団法人に教育の質保証委員会を設け,カリキュラムや教員資格審査,エフォート管理などを行い,教育の質を適切に担保してまいります。
特例の導入による期待される効果としては,一番下の緑色点線枠を御覧ください。そのとおりであります。時間の関係上,スキップいたします。
次に,5ページを御覧ください。地域連携プラットフォームの在り方についてになります。一番上の黄緑色枠部分に記載していますとおり,現在議論されている地域連携プラットフォームについては,大学等連携推進法人やNPOなどの関係組織と適切にマッチングさせることが必要であると考えます。
具体的には,その下のイメージ図を御覧ください。左側矢印のとおり,色が濃くなるにつれ,強固な連携を示しています。
次に,右側の図を御覧ください。円形で示しておりますけれども,山梨県では,県内の大学,自治体,各種団体が参画しているやまなし地方創生会議が既に存在しております。そのため,新たに設けるのではなく,既存の組織を活用。必要な機能・役割を付加し,発展させることで,地域連携プラットフォームと位置付けることができるのではと考えています。やまなし地方創生会議の中に大学コンソーシアムやまなしが,また,その中に今回の大学等連携推進法人があるとの位置付けであります。
つきましては,一番下黄色マーカーに示しますとおり,地域連携プラットフォームに関する要望といたしましては,山梨県をはじめ,他の地域でも既に地域社会との連携ネットワークを構築されていると思います。そのため,大学等連携推進法人との関係においては,それらを活用・尊重した制度,すなわち各地域の事情等を考慮し,画一的なものとしない柔軟な制度としていただきたいと考えております。
なお,COC+事業やコンソーシアムの取組状況については,次のページで簡単に触れたいと思います。次の6ページを御覧ください。COC+事業を中心とした地域社会への貢献事業になります。サブタイトルのとおり,「オールやまなし11+1大学と地域の協働による未来創生の推進」をキャッチフレーズに,本県における若年層の地元定着や,教育カリキュラム改革等に向けた取組などを活発に展開しております。
上段の実施体制を御覧ください。左側の紫色部分のとおり,山梨大学を事業責任大学として,県内11大学と横浜市立大学の計12大学が参画しております。一方,右側の青色部分のとおり,地域からは19の自治体及び15の団体・企業が参加しております。中央赤枠内のとおり,これら計46機関がやまなし地方創生会議を組織し,運営しております。このような多種多様で大規模なCOC+事業体は他の地域には例がなく,全国最大規模を誇っているものと思っております。
次に,下段の目標と事業構成を御覧ください。一番下右側の緑部分のとおり,県内就職者数の目標値を設定しており,達成に向けて,中央の赤いボックスに示すように,特にプロジェクト型インターンシップなどを実施するMiraiプロジェクトなどから成るやまなし未来創造教育プログラムに重点的に取り組んでおります。
続いて,これらの成果等を若干説明させていただきます。7ページ目を御覧ください。特色ある教育プログラムについて説明させていただきます。多数の事業の中でも,中段紫枠にあるキャリア教育の体系化が大きな成果です。企業からの提案に基づいたMiraiプロジェクトでのインターンシップ事業は,本COC+事業体が独自に開発した特色的な教育プログラムでありまして,文部科学省や外部評価委員会からも高い評価を受け,他の多くのCOC+事業のモデルとなっております。
成果等をまとめますと,一番下左側緑色枠のとおり,事業実施により大規模な事業運営組織の構築や,マル3,プロジェクト型インターンシップ事業の開発などは,右側赤枠に示したとおり,その成果を活用することで,地域プラットフォームへの展開,大学間連携教育への展開などが可能となる有益な取組となっております。
資料の説明は以上であります。
資料にはありませんが,一言申し上げたいと思います。今回は,教育関係の連携を中心に御紹介させていただきましたけれども,もちろん研究関係についてもその資源は両大学に数多くございますので,連携を強化し,第二第三の大村博士を輩出できるよう,成果を上げていく必要があると考えております。
最後となりますが,委員として参加されておられる清水県立大学学長は教育の専門家であり,その卓越した識見を基に様々な教育改革に取り組まれており,長崎知事におかれましては,山梨の活性化には人材育成が第一と公言されるなど,教育の重要性を強く認識されております。また,私自身も従前より,学生は宝との思いを強く持ち続けております。教育への強い熱意を持つこの3者が協力することにより,山梨県の高等教育の発展,さらには研究,地域貢献においても多くの成果を得られるものと確信しております。
ただ,手探りの部分もあり,不安がないわけではございません。分科会委員の皆様方におかれましては,本法人の大学等連携推進法人認可に向けて御指導,御支援くださいますよう,心からよろしくお願い申し上げます。
以上でございます。御清聴ありがとうございました。
【永田分科会長】 島田学長,ありがとうございました。
御意見があるかもしれませんが,もう1件のヒアリングを終えた後にまとめて議論の時間を取りたいと思います。
続きまして,前橋市から谷内田課長,共愛学園前橋国際大学から大森学長にお越しいただいています。それでは,15分程度で御発表をお願いいたします。
【大森学長】 このたびは大変貴重な機会を頂戴しまして,まことにありがとうございます。資料4-2に基づきまして,「めぶく。プラットフォーム前橋」について御報告させていただきます。共愛学園前橋国際大学学長の大森でございます。どうぞよろしくお願いします。
まず,概要でございます。3ページを御覧ください。そもそもこの「めぶく。プラットフォーム」という名前の由来なんですけれども,2016年に官民協働で策定した前橋市のまちづくりビジョンが「めぶく。」です。今,様々な芽吹きが前橋で起こっています。このビジョンに合わせてネーミングされたのが,「めぶく。プラットフォーム前橋」です。
4ページを御覧ください。概念を御説明すると,産官学が有する各種資源を集約し,1つの主体ではできない地域課題解決に取り組もうというもので,前橋市の政策として取り組まれています。市が主導して形成されているということが本プラットフォームの最大の特徴であり,かつ,これからの地域と高等教育の理想的な関係のモデルの一つではないかというふうにも自負しているところでございます。
このスキームをプラットフォームと呼び,それを運営するのが協議会であるという位置付けで,協議会には,市,商工会議所,前橋6大学が参画しています。
5ページには組織図がありますが,この協議会の会長は,前橋市長です。市の事業だということが,市長が会長ということもあって,よくお分かりいただけるんではないかと思います。そして,産業界の商工会議所会頭と大学界の代表,本学が副会長というふうになっております。また,運営委員会は,私,大森が委員長で,前橋市の公立大学法人と商工会議所が副委員長という位置付けです。事務局は共同事務局で,市を中心に,大学界,産業界から人が出て,構成をしているところです。
6ページを御覧ください。取り組むべき方向性は,地域人材の育成・定着であり,前橋で学ぶ,働く,生きるをつなげる各種取組を計画しているところであります。
7ページには,御参考までに,文部科学白書に取り上げていただいたことを示しております。
次に,プラットフォーム構築の背景,行政や産業界にとっての課題や意義,そして,経緯について,前橋市未来の芽創造課,谷内田課長から御説明いたします。
【谷内田課長】 前橋市未来の芽創造課長の谷内田でございます。よろしくお願いいたします。
それでは,私の方から,行政側から,このプラットフォームがどうしてできたか,何をしているかの2点について説明したいと思っております。
資料9ページを御覧ください。前橋市,群馬県の県庁所在地でございますが,人口34万の都市です。人口の89.6%に暮らしやすいと思っていただいております。ただ,残念ながら,新幹線が止まりません。新幹線が止まりませんので,この後の都市間競争であるとか,未来を創るというところ,いろいろな課題があると考えております。
そんな中で,海外のポートランドやシアトルを参考に,やはりクリエイティブな人が集まるまち,そうならないと,このまちの未来がないと考えて,まず,ミッションを作りました。都市の暮らしやすさ,多様性,寛容性をベースに,まちや人が幸せになる新しい価値の創造(めぶく)に挑戦する人やコトを支える。要は,新しいことをどんどんして,クリエイティブな人材を集めようということが目的でございます。
そんな中で,前橋は,未来型政策,市民・大学との連携,民間共創等をしておりますが,未来型政策の中では,東京大学,MRI,帝国データバンク等と官民ビッグデータを活用したEBPM,Evidence-based Policy Makingの推進等を行っております。
特にもう一点だけ前橋の特徴をお話しさせていただきますと,先ほど大森学長からもお話がありました,民間が主体となって,前橋ビジョンを作りました。これは,電通さんや博報堂さんではなくて,ドイツのKMSという,ポルシェとかアディダスをブランディングしている会社に民間主体でビジョン作りを頼みました。
そこでできたのが一番の特徴ですが,太陽の会でございます。これは,前橋の会社の社長さん,24社が集まって,自会社の純利益の1%をまちのために使うという,多分,日本にも世界にもない会でございまして,大森学長がアドバイザーになっていただいて,その会と行政が連携して,エッジの効いたまちづくりというものを進めていて,その1つが,「芸術は爆発だ」の岡本太郎さんの太陽の鐘を修復して持ってきたというものがございます。
資料10ページでございますが,この「めぶく。プラットフォーム」がなぜできたか,どうしてできたかという点について,私は3つあったかと思っております。1つは,やはり課題の共有です。前橋市の学生の転出超過という課題,それから,今,日本の社長の平均が66歳で,引退が70歳と言われております。それによる事業承継による倒産が非常に大きな問題となっております。それから,雇用がなかなか確保できない。
2番目には,大学のあるまちづくりというものを行政側が真摯に,自分ごととして意識すること,このことだと思っております。
そして,3番目,こちらが大事だと思っておりますが,目的が一緒だということです。大森学長がよくおっしゃいますが,大学の目的は学生を幸せにすることだと。僕ら行政の目的も,まちや人を幸せにすることだということで,目的が一緒だということが大事だと考えております。
11,12ページにつきましては,先ほどの転出超過の実際のデータとなっております。
13ページ,御覧ください。こちら,課題を示唆しているものですが,行政にとって大きな問題,市役所や県庁の中で大きな問題は,多分,大学を所管する部署がないということです。これは前橋だけではなく,ほかのところも一緒だと思いますが,例えば,高校生がその先どこへ行くというものが,先ほど言ったEBPM,Evidence-based Policy Makingが本来は必要なんですけど,そのエビデンスも実際は今のところないという状況が,今の課題だと認識しております。
14ページ目は,事業承継の細かい数字でございます。
その後,15ページ目からが,何をしてきたかでございます。先ほど大森学長からお話があったとおり,第1回協議会は,顔合わせでございます。
17ページが第2回の協議会で,各界からの課題というものを真摯に挙げました。
そして,18ページ目を御覧ください。こちらが今のところ,先ほどの資料と同じですが,取り組むべき方向性というものを今まとめております。目的にありますとおり,個々が自分らしく生きるということが一番大事ですが,まず,大学の活性化を行うという,前橋で学ぶ。それから,産業界と大学界を連携するインターンシップであるとか,UIJであるとか,そういったものをやる。
そして,3番目,ここが自分的には一番面白いと思っていますが,大学をリカレントの場所にするということでございます。先ほどあった事業承継に対応するビジネススクールであるとか,今,前橋の中での介護離職,お父さんお母さん,おじいちゃんおばあちゃんの介護をするために辞めてしまう女性の方がたくさんおります。辞める前に大学で一回学ぶことができないかということ。それから,データサイエンスでございます。今,データサイエンスの学生は,ほとんど都内の大きな企業がみんな採ってしまいます。ですので,地域の中の会社の誰かが大学に行って,データサイエンスを学んで戻ってくる。そういったものが大事ではないかと思っています。
そして,リカレントのところを発展させると,今,就職氷河期,ちょうど35から45歳までの100万人の方,正社員になれなかった方が大きな問題になっていますが,そういったリカレントの学びをちょっと絡めて,新しいことができないかと思っています。いずれにしても,現在は,理念から実装へ向かうという段階でございます。
以上です。
【大森学長】 引き続きまして,大学にとっての意義や大学の取組について御説明をしたいと思います。
20ページを御覧ください。大学にとっての意義ですけれども,左側にまとめてあります。まず,1つの主体では取組が困難な課題へのアプローチが可能となるということです。この「めぶく。プラットフォーム」も,そもそもは地域ニーズとしてのプレビジネススクール構想というものがあり,ただ,1つの大学だけではなかなか運営が難しいというところから出発したという経緯もあります。
次に,事業を共同することで,よりよいものになったり,コストを按分することで,持続可能になったりするものもあると思います。大学界全体でのアピールや,共同での地元定着への取組,地域人材のニーズに係る議論が期待されます。そして,連携推進法人も含む将来のより緊密な関係構築の基盤となることも期待されています。
大学では,右側にあるように,大学活性化,市内の教育の充実,リスクマネジメント,学生定着や人材育成,特にリカレント教育プログラムを展開するよう,各種取組を計画に計上し,暫時取組を開始しているところです。
21ページが学術マップでして,前橋の6大学を集めますと,かなり総合大学的になっているということがお分かりいただけるかなと思います。
22ページですけれども,ここからは取組の例です。例えば,合同大学説明会みたいなこともやっているわけですけれども,本学がチラシを作り,そして,群馬大学のLINEでそれを回していくというような,広報の協働化みたいなことが動き出していますし,公開講座は,明和学園短期大学さんの取組をプラットフォームの公開講座として開催することで,市政だより,広報にも掲載してもらえるなど,それから,合同のSD・FDは,初めて前橋市内の教職員が一堂に会したというところで,相当に意義があったというふうに思っています。
23ページも取組です。また,そのほかの取組も開始されておりまして,特にIR等共同研究を総合して展開しておりまして,前橋市の高校生や大学生の定着の動向が見えてきました。先ほど谷内田課長から,ここが全然見えなかったという部分が見えてきたということです。
また,今後はリカレントや若者定着奨学金等についても,実行に移さなければなりません。
24ページ,御覧ください。取組によって見えてきた成果で,前橋市12高校の進学者のうちの約13%しか前橋市内大学に進学していないということ。しかし,一方では,これは,足早ですみません,25ページになりますけれども,市内の高校出身者で,市内大学に進学した人は,県内就職が約80%であるというようなこと,そのうち46%が前橋市内に就職しているというようなことも分かってまいりました。
26ページは,参考まで御覧ください。
なお,参考資料として,このプラットフォームの方針の骨子をお配りしておりますので,これは後ほど御覧いただければ幸いです。
最後に,プラットフォームのガイドラインの原案について,少し意見を述べさせていただきたいと思います。28ページです。まず,全体のトーンとして,地域の主体とプラットフォームを組む際には,地域課題解決のための基盤という意味付けが必要なのであって,そのトーンがやや薄いというふうにも感じられたところです。
2章の運営についてですけれども,組織の持続可能性を担保する財源等の在り方などの記述が少ないのかなというふうにも感じました。
3章ですけれども,章のタイトルが議論という言葉を用いているために,実行フェーズが見えづらく,お話合いをするためのもののように感じられなくもないので,実行までもきちんと組み込んだ表現が求められると感じています。
また,大学間連携という最も重要であろう事柄に関する記述も少し薄いように感じました。
29ページに,プラットフォームに係る私の私見を書かせていただきました。先ほど課長からもありましたけれども,自治体や地域には高等教育を管轄する部署も予算もありません。それが自分ごととして高等教育のことを考えてくれるようになるためには,大学も地域課題解決へ向けての本気度というか,汗のかき方というか,そういうようなことが非常に重要になってくるし,それから,地域の皆さんにとって,大学というのは永遠にあるものというイメージがまだまだあるように感じていますけれども,大学がなくなることのインパクトみたいなことも共有していって,そして,大学が本気になって汗をかくというところが非常に重要なんじゃないかと感じています。
最後に,資料はございませんけれども,連携推進法人の在り方についても意見があれば述べるようにというふうに言われておりましたので,一言申し上げます。私も先ほど山梨大学の島田学長がおっしゃったように,学部等連係課程と同じことが連携推進法人でなされることを期待していました。そうなるものだとばかり思い込んでいました。地域における人材ニーズは多様です。ただ,一つ一つの人材マーケットの規模は小さいです。1つの大学で学位プログラムを立ち上げるのは,ゆえに無理があります。この速い時代変化の中で,ある特定の人材養成を目的とした学位プログラムを単独の大学が作るということは,地方においては極めて困難であります。
しかし,地域からの要望はあるのです。地域ニーズに即した学位プログラムを共同で作り,必要がなくなった場合にはクローズをして,更にニーズに即したものを作っていく。そういう場合には,教員は元のさやに収まるというようなことを繰り返せるような形,これが今後の地域における大学の重要な役割になるし,大学のミッションでもあろうとも思っております。それを可能にするためには,学部等連係課程と同じような仕組みというのは非常に大きなポイントになると考えております。
御清聴ありがとうございました。
【永田分科会長】 ありがとうございました。どちらのケースも大変よくまとまっていて,今後の展望まで明らかにされています。
それでは,委員の方々からの御質問,御意見をお伺いいたします。いかがでしょうか。
金子委員,どうぞ。
【金子委員】 大変ありがとうございました。両方とも先例として非常によい例ではないかと思うんですが,ただ,私,一般的に言いまして,きょうたまたま前橋市の方がいらしているのでお聞きしたいんですが,大学側は結構一生懸命やっているかもしれませんが,地域の側からの取組というのがマッチしているのかどうかというのはかなり疑問に思うところがあります。私はたまたま私の大学が属する,所在している県の地方創生委員会というのに入らされていまして,それで感じるんですが,地方創生事業にも教育とか大学とかを使うという名目はあるんですが,ほとんど大学に関する情報がないんですね。どうやって使っていいのかもよく考えていない。
少し考えるのは,非常に目立った何とか材料とか,非常に先進的な先生がいるから,それを使って,これを雇用に使えるかとか,そういったことは考えるんですが,さっきおっしゃっていたような,比較的人材のマーケットの情報が,個々は小さい,それから,インビジブル,掘り起こさないと出てこないような事業について,それを掘り起こすようなノウハウが多分ないんだと思うんですね。
それで,知事は,この県から東京に出ていく若者が多いから,どこか有名大学を引っ張ってこられないかとか言っていたとかといって,先生,何かそういう方法ありませんかとか言っていましたが,何かそのレベルで,非常に何となく非常に表面的なことを考えていて,地域の潜在的なニードを酌み取るというのは,本来は自治体がやるべき,よく分かっているはずなんですが,それが大学に結び付かないというのは,非常に大きな制約ではないかと私は思いました。
ですから,総務省がやっている地域創生で大学を使うというのと,文科省がやっている地域連携というものは,非常に両方とも同じことをやっているのかと思うと,相当違う発想から進んでいて,実態としてはそれをセパレートしている。これ,どのようにしたらいいのかというのを考えるのですが,自治体から見ると,こういうことはどう見えるんでしょうか。
【永田分科会長】 谷内田課長,今の金子委員の御質問にお答えできるようでしたらお願いします。
【谷内田課長】 今のお話ですが,地方創生,前橋市の方でも地方創生の委員会を作っております。地方創生の今回の問題,人口減の問題については,全ての参加されている皆様がご認識のとおり,若い学生たちが出生率の1.13という非常に少ない東京にみんな行ってしまって,そこで結局,結婚も遅くなって,出産もできなくて,人口減が進んでいる。ですから,対策としては,なるべく多くの若者が地方から東京に行かない,東京から地方へ戻ってくるということが課題と対策だということは皆さん分かっている中で話をする中で,大学と行政の中で連携ができていないのは,やはりコミュニケーション不足だということだと思います。地域の行政が,先ほどもちょっといろいろ話をしましたが,自分ごととして動くことが一番大事ですから,どういうことを気付くかという中で,大学と行政の中のコミュニケーションという場が,単純な何とか会議の場の中でコミュニケーションしても,それはやっぱり課題としてなかなか両方に浸透しないと個人的には認識しています。
ですので,やはり双方が課題感を持ち寄って,それに対応するグランドデザイン的なものはどんなものが必要なのか。一般的な答えになってしまいますけれども,実際に今前橋が行っているのは,大学の大森学長やほかの皆さんと課題を共有したことによって,その共有した課題をどう解決していくかというところを考えたことが,このプラットフォームにつながっていると個人的には認識しています。
【永田分科会長】 本日は山梨県からは誰もいらっしゃいませんが,島田学長から見て、先ほどのマインド以外に,地方自治体側に高等教育の意義や役割などを認識してもらう,という点について山梨県ではどうでしたでしょうか。
【島田学長】 これは県立大学の清水学長がおられるんですけれども,確かに一般的に言うと,やっぱり県と,国立系は我々,国立大は山梨大学ですけど,これとの協働というのは確かに非常に難しいですね,基本的に言いますと。私は医療関係で,山梨大学に26年間勤めていまして,その後学長になったんですけれど,医療関係でもかなり難しい。だけども,やはりこれを協働しないと,県の全体の医療としては成り立たないんですね。仲が悪いからとか,コミュニケーション不足とかって言っているんじゃ,もうこれはちょっとまずいので,それは積極的にコミュニケーションを取るように私もしましたし,今では大分改善されてきてはいます。完璧とは言いません。
今回のこの事業も,実は県知事が新しくなられたんですね。それで,非常に積極的です,こういうことに関して。実は我々これ,山梨大学と県立大学が最初に協働事業というか,連携をやろうということで,マスコミさんにアナウンスしようということになったら,知事さんから,いや,ちょっと待ってほしいと。自分が中心になって,国立大学と県立大学の間に入って,自分が一緒に,その3者で一緒にやりたいということで,実は記者会見を延期したぐらいです。それぐらい熱心な知事さんに今回代わったので,我々としても非常にやりやすいです。
ただし,県知事さんは頑張っているけど,県のその下の方々はよく分かりません。皆さん御存じのとおりです。だけども,これは県知事がやっぱりリーダーシップを持てばできる話ですし,我々大学側も,私がちゃんとリーダーシップを持ってきちっとやれば,協力ができる。
更にすばらしいことには,県立大学,清水学長がおられて,一緒にやろうとタッグを組んで,その3者でやろうということになって,だから,全国初で,大学等連携推進法人を目指そうということですので,文科省も,中教審も是非御支援いただきたいと思うんですね。もう一つ評価が足らないような気がしていますが,その辺のところは是非よろしくお願いしたいと思います。
【永田分科会長】 ありがとうございます。
金子委員からの御質問は,高等教育機関と地方自治体のトップ同士が認識を共有する努力は非常に重要である。しかし,地方自治体の内部において組織的なすり合わせは基本的にないので,トップ以上に現場の人たちの努力が不可欠ではないか,という趣旨であったと思います。
益戸委員,どうぞ。
【益戸委員】 全国でこのような形の地域連携はたくさんありますが、ご説明の中で出てきた様に、行政側、経済界側など様々な問題があり、おおくのが地域が上手くいっていないと思います。この様な状況の中で前橋のケースは非常に良い運営ができていると感じました。
連携に係る資金は潤沢ですか?地元経済界は、どこまでコミットしていますか?プレゼンの中で、地元に人を残したいとのお話がありました。
今後の人口減少化では、どうしても避けて通れない、事業継承、地元企業同士の統合や合併などがあります。その時に、リーダーシップを発揮できる人材を輩出していこうという方向が、関係者で定まっていれば、地元経済界からの更なる経済的な協力も必ず出ると思います。
すでに、色々とご努力があると思いますが、具体的にお聞かせ頂きたいと思いました。
また、前橋の様な成功事例はどんどん発信すべきです。文部科学省はどの様な方策をお取りですか。御父兄が、子供が頑張って勉強して良い結果を残したら、大企業に務め、たくさんの収入を得る様にさせたい。など考えるのは自然です。
しかし、一方で、地元の高等教育機関で勉学に励み、地元に残って行く道をサポートする事も重要です。全国レベルでの色々な成功事例を御父兄も学修者ご自身も知る事は、人生の選択の幅を広げる上で大切な事です。理解者無くしてこの様な連携は根付きません。ですから、文部科学省として今後、どうやって推進、PRするのでしょうか。

この2点をお聞きしたいと思います。
【永田分科会長】 今の御質問に対する回答を文部科学省に準備いただいている間に、山梨大学と前橋市において,簡潔に産業界とどのような下準備を行ってきたかということを御説明いただければと思います。
【島田学長】 すみません,御説明したんですけど,例えば,私のお配りした資料の5には,「やまなし地方創生会議」というのがございまして,6に示してあるように,参加団体・企業の15団体,商工会議所,それから,山梨中央銀行等,これは本当に産業界と密に我々は接しています。
山梨中央銀行さんは本当に我々のグレートサポーターで,私が大村先生がノーベル賞をお取りになったときに文科省にお願いしたんですけど,一切お祝いのお金というのはゼロで,普通,建物が建つって私はちょっと聞いたことがあったので,お願いしたんですけど,そんな金ないとはねられたので,私どもは大村智記念基金というのを創設して,3億7,000万集めました。そのときの何十%かは,中銀さんからなんですよ。だから,中銀さんが物すごくお金を入れてくれたおかげで,ほかの企業もそれに付いてきて,それだけ集まっているんですけれども,そういうような関係もありますし,中銀さんとは本当に密に,コーディネーターを私どもは雇い入れていますし,客員コーディネーターという名目では300人規模ですよ。と,我々と地域を結び付ける,そういうようなこともやってきておりますので,今の御指摘は,私どもにはちょっと当てはまりにくいんではないかなというふうに思っています。
【永田分科会長】 前橋市においてはいかがでしょうか。
【大森学長】 ありがとうございます。この関係性というのは,一長一短にはできないというか,長い,だから,横展開を,このスキームをぽっと持っていって,明日できますというものというのは,なかなか厳しいだろうというのが最初に申し上げなきゃいけないと思っています。
やっぱり産業界との関係性を作ってきたが故にできたのが,このプラットフォームだというふうに感じています。例えば,2012年の段階で本学の地元,群馬県内就職率は60%でしたけれども,最高になった2016年では80%まで伸びています。それは,地域の企業と一緒の教育プログラムを山のようにやっていって,そのことによって学生たちが地域で働く意義や魅力や企業の魅力を発見して,より地域に帰っていくようになっていった。そのことがうちの学生募集にもすごくつながっていて,有り難いんですけれども,そういう関係,つまり,大学と組むことによって,そうやって人材がきちんと定着してくれるということをお互いに理解をしていったが故に,じゃ,さらなる高みに行こうといったときには,二つ返事で,ではやっちゃおうよということで,長い交渉があってできたんじゃなくて,やらない? うん,やるやるという,そんな感じでプラットフォーム自体はできているということです。
お金の話なんですけれども,当然,プラットフォーム自体の運営にもお金が掛かっていきますけれども,例えば,そういうプレビジネススクール的なものを作っていったときに,そこにちゃんと受講生を企業がリカレントとしてどれだけ送り出すかということが重要になってきて,受講生がいなければ成り立ちません。むしろ受講料を企業さんがしっかりと払ってくれるということですけど,それはかなり各社長が,出すということになっているので,立ち上げれば回っていくというような状況になってきている。
ですから,関係性を作ってきたその結果としてのプラットフォームで,それを更に密にしていくというふうにイメージしています。私自身も,例えば,群馬経済同友会,前橋商工会議所,前橋経営者同友会,中小企業家同友会,全部会員で,その中に入って一緒に活動しながら,コミュニケーションも作りながら,学生たちと学んできています。これは自治体とも一緒で……。
【永田分科会長】 なるべく簡潔に。まだたくさん質問ありますので。
【大森学長】 ありがとうございます。やめます。
【永田分科会長】 先ほどの益戸委員の御質問の趣旨ですが,国公私立関係なく,高等教育機関と地方自治体のマッチングがうまくいかない、ということがあります。ですから,どこも同じ事情で課題が生じているので,これをどう解消するのかということですが,文部科学省から簡潔に回答いただけるでしょうか。
【牛尾高等教育企画課長】 ありがとうございます。きょう御発表いただいたような好事例を展開すべき正にガイドラインの御議論を頂いているわけですけれども,単にガイドラインを作っただけでは,なかなか広まっていかないというのはそのとおりだと思っていますので,いい事例の発信も一緒にやっていきたいということと,通常の私どものチャンネルですと,大学を中心にしか情報が行きません。でも,地域においては,大学にだけ情報が行ったのでは意味がないということだと思いますので,きちんと自治体や,産業界にも伝わるようなチャンネルを,経済団体に御協力いただくとか,あるいは総務省なんかにも御協力いただくというような形で,文科省だけじゃないチャンネルを通した情報発信というのも大事かなと今思っております。
【永田分科会長】 その大事なことをぜひ実施していただきたいと思います。
今,3人手が挙がっているので,先に質問をお聞きします。重なる部分もあると思うので。
志賀委員,どうぞ。
【志賀委員】 今頂いたお話で,一部回答があったんですけど,地域連携プラットフォームというのは,これまでいわゆる社会人のリカレント教育の受皿という形で話を聞いていたんですが,きょうも,地方の中小企業の,デジタル化の中で生産性の遅れだとか,そういうことを進める上での人材不足というのがたまたま話題になっていたんですが,こういう実態としてこの地域連携プラットフォームというのは,地域にある中小企業のリカレント教育の受皿に現時点でなっているのでしょうか。まだまだそこまでは行っていないのでしょうか。ちょっと実態を知りたいと思います。
【永田分科会長】 回答は後ほどお願いします。
髙倉委員,どうぞ。
【髙倉委員】 2つの事例報告ありがとうございました。「大学等連携推進法人」と「地域連携プラットフォーム」のいずれについても,大学が生き残り策を講じているのではないかという疑念を持たれてしまうとうまくいかないと思います。持続可能でインクルーシブ(包容的)な社会を実現するためには,多様な知恵や知識が集結する大学にしか果たせない役割を発揮するべきだと考えます。
「大学等連携推進法人」について先駆的な山梨の事例を伺ったが,他の地域ではどのような連携の方策があるのかイメージがつかず、単なる大学連携にとどまっているのではないかという懸念があります。
地域にとって従来の大学連携とどう違うのか。学生にとって学費や複数の大学における単位の認定など,どのような影響があるのか。あるいは,教育力や研究力の低下が懸念されている大学の働き方改革をどのように進めていくのか。山梨の具体的な対応についてお聞かせいただきたい。
「地域連携プラットフォーム」については,地域内での高等教育のグランドデザインを策定する役割が求められていると考えます。
労働組合では、以前から地域の大学と連携しものづくり教室などの独自の活動を行っています。参画主体に「労働組合」を入れ,プラットフォームの主体となる地方自治体や産業界と労働組合が連携し,生涯にわたって学び続けるリカレント教育などについて,地域に根ざした具体的なプログラムを早急に示していく必要があると考えます。
【永田分科会長】 鈴木委員,どうぞ。
【鈴木委員】 ありがとうございます。このように連携をしていって,どんどん広げていくというのはとてもよいことだと思います。私は今,地方創生に力を入れている企業におりまして,東京から大分学生が動いています。
本日お聞きしている中で,皆さんもおっしゃっていますが、企業の顔がほとんど見えないというところが,学生にとっては不安になるんだろうなと思いました。もう少し学生が夢を持って大学選びができるような,最初のところでは,地方がどう変わるのかという、前橋だったら,前橋の産業がどう変わって行くのか等。多分,家を継ぐために残る人は少ないと思います。そうなってくると,そこだけに焦点を当てると先細りになってしまうので,どちらかといえば,他県からどうやって学生を持ってくるのか,そういったことがもっとPRできるようなことを何かお考えであれば,具体的なことも少しお聞きしたいと思います。
【永田分科会長】 三村委員,どうぞ。
【三村委員】 いろいろ積極的な例をありがとうございました。山梨の話の中で,最初金子委員が出されたことというのは私も同じで,同じような感想を持っていて,例えば,地方自治体で総合計画や地方創生の計画はあるんだけれども,その中に大学とどういうふうにするのかということはほとんど書かれてことが多い。そういうのが山梨県ではどうなのかなというのが1つですね。
もう一つは,「やまなし地方創生会議」というのは,非常に大きな多様な団体が入っていて,すばらしいと思うんですけど,それを恒常的にアクティブにするためには,かなりいろいろな仕掛けとか,事務局の機能が必要なんじゃないかと思います。それに大学自体が相当な精力を割いているのか,それとも,もっといろいろな団体との協力の中でそういうのが動くような仕組みができているのか,その辺を教えていただきたい。
【永田分科会長】 全ての質問にお答えいただく必要はありませんが,山梨大学と前橋市から,可能な限りの回答を頂ければと思います。大きく分ければ,一つは、学生に訴求できるだけの魅力を学問としても地域としてもどれだけ持てるか。次に,実際,例えばリカレント教育においてそのようなニーズがあるのか。最後に,そのようなニーズを具体的にどのような施策で実現するのか,この3点だったと思います。
大森学長,どうぞ。
【大森学長】 まず,リカレントの機能を発揮しているかということに関して言うと,発揮させるためにこれを作ったというところで,これからです。でも,ベースは産業界からのリカレントニーズというのを受けてこれを作ったというところなので,いわゆる講座というか、教育プログラムができれば,すぐ動き出すというところです。
前橋の産業の今後については,課長からお願いします。
【谷内田課長】 きょうお話のあった産業界との調整やリカレントの実態というのが,多分,ほぼ同じことだと思うんですけれども,基本的には地域の中では,雇用不足というのが本当の問題になっています。どんな人が集まっても,雇用不足だという話ができています。その課題感というものをどうやるかということなんですが,実際に今,大学の方は進んでいますけれども,産業界がなかなか進まないという実態はございます。前橋がやっていることは,商工会議所の会頭さんであるとか,地方銀行さんの副頭取さんであるとか,地域の有名企業さんの会長さんに集まってもらって,この協議会の中に入ってもらっておりますが,その先がなかなか進まないということがあるんですけれども,今,この方面だけではなくて,先ほどちょっと言いました,前橋がこの後生き残るためには,産業界が生き残るためには,クリエイティブ産業とどう連携するか。今,生きている産業も,新しいクリエイティブ事業とつながることによって大きくなるんだという大きな話をさせてもらっています。それを街中のアーバンデザインというものを創るなど,これからの企業の在り方ということで,話を進めています。
先ほど最初に産業界との調整みたいな話もあって,リカレントの実態みたいなのもあったんですが,今,大森学長からあったように,じゃ,このリカレントを今進めているというものはございません。ただし,ちょっと私がお話しさせてもらった,今,介護離職の方が非常に多いですと。女性の方が,おじいちゃんおばあちゃんや,お父さんお母さんのために介護で辞めてしまっているというものは,地方の企業ではほとんどのところが経験しております。じゃ,その対策を実際どうしたらいいかという話で,これからこれを作っているんですということが大事なことと,あと,ちょっと下世話な話かもしれませんけれども,最初に産業界に持っていったときに,行政も,例えば,ふるさと納税であるとか,企業版ふるさと納税であるとか,ガバメントクラウドファンディングだということを想定しています。一番大事なのは,やはりファイナンスだということもお話しさせてもらっています。
少し話がずれるかもしれませんけれども,今,成果と連動するソーシャルインパクトボンドであるとか,PFSというものがあります。今,一番問題になっているのは,単年度会計することによって,長い計画が行政側ではできないということが問題になっています。ただ,そこのところもあるにしても,これから先にこういう長期の計画の中で,こういった都市を丸ごとアップデートするような地方創生をしなければいけない。そのためには具体的にこういうことをして,そのためには具体的にファイナンスにおいてこういうことをするんだということを話しながら,今進めているというところでございます。
【永田分科会長】 山梨大学から,どうぞ。
【早川理事】 山梨大学の理事でございますけれども,最初の御質問にございますように,この地域連携プラットフォームが,例えば,リカレント教育等の受皿になっているかというような観点から,簡単に取組を御紹介させていただきます。
もちろん先ほど来,意見が出ておりますように,地域の,例えば,機械電子工業会,あるいは経済同友会もかなり地方創生という観点から危機感を抱いております。そういったことから,このプラットフォームの会議の中で御意見を伺いつつ,山梨大学でも,県立大学さんと協働で様々なリカレント教育に取り組んでおります。
例えば,山梨県はワインの産地でございますけれども,地元のワイナリーの技術者を対象とした,かなり高度なワイン・フロンティアリーダー養成プログラムということで,座学プラス実習も含めた140時間のこういったプログラムをもう十数年続けておりまして,地域のワイン産業のリーダーなんかを養成し,あるいは,燃料電池の研究も山梨は全国の中心的な役割を担っているんですけれども,オープンイノベーションという観点から,地域のこういった関連の技術者を,高度な技術者を養成するという講座なんかも展開しております。そのほか,医療機器の設計の開発人材養成講座等を開いております。
こういった講座を開きますと,夕方以降,講義を行うわけでございますけれども,ほとんどの,9割以上の受講生が皆勤で参加をしていただくということで展開しております。
このほか,例えば,女性の方で,子育て等で一旦リタイアされた女性が,更にカムバックをして,社会に出ていくためのステップアッププログラム等々,山梨大学でも数々のこういったリカレント教育に力を入れている状況でございます。こういったものは,先ほどお話のあった山梨県立大学との連携の中でも推進をしていきたいと考えております。
また,こういった中には山梨県の関与もかなりございますので,こういったところから県も,いわゆる縦割り行政なんかに風穴を開けていく,そういった意義もあると考えております。
【袖山理事】 同じく山梨大学理事の袖山でございます。大学等連携推進法人と学生視点の取組,あるいは働き方改革についての御質問がございましたので,これについてお答えをいたします。
大学等連携推進法人を目指して一般社団法人を作るという大きな目的として,やはり第一に我々としても考えているのは,学生視点,学生にどういうメリットがあるかということをまずは第一に考えていきたいということで,このような取組を始めてございます。
説明にも申し上げましたように,山梨大学はどちらかというと理系中心の大学であり,山梨県立大学は文系中心の大学であるということで,例えば,教養教育などの分野においても,選択肢が限られるというような場面がございまして,様々な文理融合,この教育機会を提供することですとか,あるいは新たな需要というようなものに対応するというところで,どうしても限界があったと。そういうところを勘案いたしまして,両大学の連携によって,学生がより選択肢を持って教育を受けられるような取組をしていきたいというのが第一の目的でありますので,こういった点をしっかりと取り組んでいきたいということでございます。
それから,働き方改革についてでございますけれども,やはりこれもスケールメリットというところ等の観点がございまして,小さい大学でございますので,そこで新しい展開をしていこうというようなことになりますと,どうしてもなかなか新しい人を雇っていくというようなところが財政的に難しいという中で,教職員に過剰な負担を掛けることなく新たな展開をしていくためには,一定のスケールメリットというようなものも必要ではないかというふうに考えてございます。
そんなようなことで,この取組というのはメリットがあるというふうに考えてございますけれども,単純にその取組をするだけでは,過剰な負担というようなところにつながりかねないということもございますので,やはりICTを活用するというようなことも積極的に行っていって,学生のメリットとともに,教職員の働き方というようなところにも資するようにしていきたいというふうに思っております。
それから,地方創生会議をよりアクティブにしていくための方策ということでございましたけれども,確かに現状,地方創生会議,非常に大きな組織で運営をしてございますので,なかなか恒常的にアクティブに活動するというような部分では十分でないところというのも,現状ではあろうかと思ってございますが,大学等連携推進法人,新しい法人というようなことで,取組の核ができるということが,全体として大きな枠組みを動かしていくということでも重要だろうというふうに思っておりまして,表にもございましたように,大学等連携推進法人というのは非常に強固な連携の中で,ある意味,この連携の核を作るということが一つの目的でございますので,ここを中心といたしまして,より緩やかな連携,更に広域での連携といったものにつなげていくと。こんなことが地方創生会議,地域連携プラットフォームというようなものにしっかりつながっていくというふうに思っておりますし,また,そういうふうに努力をしてまいりたいと思っております。
【永田分科会長】 ありがとうございました。もっとお話を伺いたいこともありますが,時間の関係もありますのでここまでとさせていただきます。大変参考になりました。
本分科会では,これから大学連携等推進法人,あるいは地域連携プラットフォームを構築するに当たって,どういう問題があるかということを議論する必要があります。本日,教育コンテンツ等について,例えば,山梨大学からこうした規制緩和を行ってほしい,または、設置基準を一部変えてほしい,という具体的な御意見もありました。さらに,地方の産業界や自治体との在り方についての問題点も幾つか浮き彫りになりました。我々としては、それら課題を克服できるような仕組みも考えなくてはいけないだろう、と思います。
最後に,財源については議論が十分できませんでしたが,大学設置・学校法人審議会は,財政計画等を審査する分科会と,教育や研究のコンテンツを審査する分科会と二本立てになっています。大学連携等推進法人や地域連携プラットフォームについて検討する際は,これと同様の視点から検討することが必要であると理解できたことがまず大変重要です。これを契機に,構築しようとしている地域の構想が実現できるように議論をすることが我々の役目である、ということを再認識しておきたいと思います。

このテーマに関しては,置かれた事情が違えば、問題もそれぞれ随分違う可能性もありますので、今後もいろいろな関係者にヒアリングをしないといけないかもしれません。
それでは,続きまして,今期の一番重要な課題であります「教育と研究を両輪とする高等教育の在り方について」です。今回は,第6期科学技術基本計画の策定に向けて,科学技術・学術審議会の総合政策特別委員会が公表した中間まとめについて御報告します。本件については,我々を含めいろいろなところからの意見を取りまとめて現段階に至った、ということです。これについて情報共有をした上で,若干の議論をできればと思います。
それでは,事務局から説明をお願いします。
【大洞企画評価課文部科学戦略官】
総合政策特別委員会の事務局を務めています,科学技術・学術政策局から御説明させていただきます。
まず,科学技術基本計画ですが,今,第5期の計画中ですけれども,2021年度,すなわち2021年の4月から新たに第6期の科学技術基本計画が策定されることになっています。内閣府で,総合科学技術・イノベーション会議の議論を経て作ることになっていますけれども,その前に文部科学省科学技術・学術審議会として見解を取りまとめて,そこでの議論に反映していただくような形で,今,議論を進めているところです。中間取りまとめは,先月取りまとめましたけれども,最終的には3月まで議論を進めて,最終取りまとめを行いたいと考えています。
資料につきましては,資料5-1,5-2を配らせていただいております。5-1が報告書の本文ですが,きょうは5-2を使って説明させていただきます。
総合政策特別委員会のメンバーは,5-1の43ページにメンバーが載っておりますので,主査はJSTの濵口理事長に務めていただいております。
では,資料5-2を使って説明させていただきます。まず,報告書のタイトルですが,「知識集約型の価値創造に向けた科学技術イノベーション政策の展開」としています。現状認識の部分がまずございまして,概要の1ページ目は主に第1章,5-1の1ページ目から9ページ目をまとめたものでございます。
まず,現状認識といたしまして,デジタル革命等の進展によって知識集約型社会への大転換が起こると。モノからコトへと呼ばれることもありますし,それが加速して,社会システム全体がパラダイムシフトをしているということです。競争力の源泉が従来型の資本というものから知の創出ですとか,情報やデータの獲得,こういったものに移行するのではないかと。その中で,イノベーション創出のプロセスやスピードが大きく変化しているという認識をまずしております。
2番目の認識といたしまして,これまで培った科学的伝統ですとか,投資による有形無形の蓄積が科学技術先進国の一角としての礎になっている。ただし,科学技術イノベーションを取り巻く多くの側面で,今,我が国の国際的地位ですとか,そういったものは総体的に低下傾向にあるのではないかというところをまず認識するということでございます。
続きまして,2つ目の四角ですけれども,Society5.0を最終的な実現に向けて,一番当該委員会で考えましたのが,知識集約型の価値創造システムの構築ということです。こちらは,知が競争力の源泉となるということなのですが,最先端の科学ですとかアイデア,ビッグデータ等,これは知や情報が流通・循環して,それに対して活発な主に民間からの投資が行われるということにより,それが最大価値化されて,新たなイノベーションですとか,高付加価値のビジネスが創出されるような,そういうシステムを世界に先駆けて日本が構築していくということが重要ではないかと。その中では,大学と国立研究開発法人がその中核として機能して,変革の原動力になっていくことが重要ではないかということをまとめております。
その四角の中にありますように,大学や国立研究開発法人というのは,まず,価値創造の源泉となる基礎研究・人材育成の拠点であるとともに,国際頭脳循環の集積拠点であるし,また,産学官セクター間の知の循環の中核拠点にもなり得ますし,また,データの集積ですとか分析拠点にもなるというところを記載しています。
その下の図にありますように,知や情報,データ,人,資金がそこで循環して,更に下の矢印のように,我が国の社会課題の解決と世界の持続的発展へ貢献するようなものが生まれてくる。具体的には,課題先進国である我が国が最先端の科学技術を活用して,少子高齢化,SDGs等に述べられている課題を解決して,持続可能な社会システムやビジネスモデルを構築する。それが世界に輸出していくような成長産業につなげるということもできるのではないかと。
また,右側にありますように,人間主体のインクルーシブ社会の実現ということで,肉体的なハンディキャップですとか,地理的・空間的な制約を超えて,人々が分け隔てない知へのアクセスや発信,社会活動への参加が可能となる。そういった社会の実現を目指すと。また,その際には,いわゆるELSIと言われているような,そういった課題に取り組むことも重要であるということをまとめております。
これらの目指すべき社会像に基づきまして,その下の3つ目の四角でございますけれども,早急に科学技術イノベーションへの集中投資とシステム改革が必要ではないかというところをまとめております。また,次期基本計画期間,21年から25年度までですが,こちら,本格的な少子高齢化を前に,知識集約型への転換を我が国が主導できるものになっていくかという点で,中長期的に我が国のすう勢を決定付ける決断と実行の分水嶺であると。非常に重要な時期であるというふうに位置付けております。その時期に科学技術イノベーションに対して官民を挙げて集中投資をして,あらゆる人材・資源を総動員すると。それとともに,この投資を最大限効率的なものにするためのイノベーションエコシステムの確立を進める必要があるということを書いております。
また,それを受けて,科学技術イノベーションシステムが目指すべき方向性として,5点まとめておりまして,これは第2章以下,具体的に述べております。1つ目は,「知の創造大国ニッポンへ」ということで,価値創造の源泉となる基礎研究と学術研究の卓越性と多様性をとにかく強化していくというところをトップに持ってきております。
2番目,第3章ですが,「大学と国研を新たな価値創造の原動力に」ということで,先ほど述べましたように,新たなシステムの中核として大学・国立研究開発法人の役割の拡張をしていく。
第4章といたしましては,「多様な知を育み,出る杭を伸ばす社会へ」ということで,イノベーションを担う人材の育成を進めていく。
第5章といたしましては,「データ・AI駆動の研究革命」ということで,デジタル革命の進展に対応した新たな研究システムを構築していく。
第6章といたしましては,「挑戦する行政へ」ということで,政策イノベーションを霞が関の行政も実現していくということでございます。
また,下の欄外の注にございますように,今後,我が国の強みを生かした研究開発戦略というものを議論していくということと,科学技術と社会の関係性の在り方について,引き続き第7章で議論をすべきということが示されておりますので,今後,最終取りまとめに向けて議論していきたいと考えています。
続きまして,2ページ目の概要です。これは第2章から第6章までを簡単にまとめたものです。第2章の基礎研究・学術研究のところにつきましては,こういった基礎研究・学術研究の戦略的維持・強化のためには,挑戦的・長期的・分野融合的な研究を奨励していくということが重要であると。また,若手研究者の自立支援・キャリアパスの安定が重要である。また,世界の最高水準の研究環境を実現していくこと。そして,国際連携・国際頭脳循環の強化に取り組むと。この4つが重要であるということをまとめております。
主な具体的な取組といたしましては,四角の中にありますように,博士課程後期学生の経済的支援の抜本的充実,また,若手の研究者の安定的なポストの確保とキャリアパスの多様化,そして,研究費における研究計画の独自性とか挑戦性の重視ですとか,新興・融合分野の促進,また,研究設備・機器等の共用の促進と,それを支える技術職員の活躍促進というところを中心にまとめております。
また,2番目の四角ですが,第3章です。大学と国立研究開発法人の役割でございますけれども,こちらは,主な具体的取組を紹介させていただきますと,知的生産活動への社会的な価値付けによる産学連携活動の進化ということで,これは従来のように小型の共同研究ではなくて,大学ですとか国立研究開発法人の持つ知の活動ですとか,知のアクセスというものに大きく価値付けをしていただいて,大型の産学協働を進めていくような話が書いてございます。
また,次にありますように,例えば,大学や国立研究開発法人がカーブアウトベンチャーの創出の受皿になっていくということですとか,3番目にありますように,経営資源の戦略的活用のための規制緩和をしっかりしていく必要があると。4番目にありますように,地域の多様性ですとか強み・特色,そういったものに対して大学・国立研究開発法人が価値創造の中核となっていくというようなことが書いています。
続きまして,3つ目の四角,第4章ですが,こちらにつきましては,主な取組,四角の中にありますように,アントレプレナーシップの醸成ですとか,スタートアップ・エコシステム,また,文理の融合の区分を超えた教育の推進ですとか,多様なキャリアパスを可能とする雇用制度というところにも言及しております。
また,第5章ですけれども,デジタル革命の進展に対応した新たな研究システムですけれども,主な具体例といたしましては,スマートラボの促進ですとか,データ・AI駆動型研究の促進,また,データの未活用のルール整備,また,そのほか人材育成のことなどをまとめております。
最後,第6章でございますけれども,これは行政ということですが,自前主義ですとか前例踏襲主義に陥らない,大局観を持った政策を進めるべきだということで,主な取組といたしましては,民間の研究支援ビジネスというものが今かなり出てきておりますが,そういったものを効果的に活用していくことですとか,行政組織内でも新しい挑戦というものをしっかりと進めるために,アントレプレナーシップを醸成していくというようなことを中心にまとめております。
以上,説明になります。よろしくお願いいたします。
【永田分科会長】 ありがとうございます。
御質問及び御意見をお伺いしたいと思います。我々がこれまで主張してきた,例えば,博士後期課程の学生に対する経済的支援など、我々の主張も幾つか入っています。この際,質問とあわせて,我々はこのような意見も言っているが入っているかどうか、という御指摘を含め御意見をいただきたいと思います。
【志賀委員】 じゃ,1点よろしいですか。
【永田分科会長】 志賀委員,どうぞ。
【志賀委員】 書かれていることはそのとおりで,是非是非なんですが,具体的に,小粒の産学連携じゃなくて,少し国立研究開発法人も含めた大規模な産学連携というのは昔から言ってきたんですが,それが起こらないので,どうして起こすのかという。これは何回もここでも議論してきましたけれども,やっぱりそこをこれから進める中で,もう少し具体的に,どうしてやるのかというのが入るのがいいなと。そのように思います。
【永田分科会長】 ありがとうございます。
志賀委員の御指摘は全般について言えると思います。国立研究開発法人と産業界のみならず,ここで述べられていることをどうやったら実現できるか、というところが非常に難しいかもしれません。
渡邉委員,どうぞ。
【渡邉副分科会長】 今回の中間まとめですけれども, Society5.0 for SDGsの概念に沿って,非常にいいまとめをしていただいていると思います。今の世の中の雰囲気として,景気動向などといった短期のことに目が行きやすくなっている気がいたします。したがって,自然体では,そういった懸念がある中,この中間まとめにあるような未来からのバックキャストの視点を示したことは非常に意義があり,それに向けてこれからどう動き出していくのかというステージだと思います。
つまり,そういった未来からのバックキャストで議論してきたことを,大学分科会との連携の下に,強く打ち出すタイミングです。これから大変な取りまとめのステージになりますけれども,非常にいいステップを踏んでおりますから,この分科会との連携もしっかり取っていただいて,最終とりまとめに繋げていただけたらと思います。
以上です。
【永田分科会長】 懸念があるとすれば,例えば,第5期のところで,デジタルサイエンスが急速に進む中で,日本はどうすべきだと述べていたことが必ずしも実施できていません。6年後同じように,またここで書いたことが全然できていないのではないか、と言っているようではいけません。良いことが書いてあるのに,これを本当に実現する過程が保証されていないというところが大きな問題点だと思います。デジタルサイエンスについては,本当に実現しなくてはいけないと言っておきながら,実はまだほとんど実現できていません。
ここに書いてあることを本気で実現しようとするなら,例えば博士課程のところでも,競争的資金や民間資金ではなくて,国が根本的に支えるんだという気概が必要です。消費増税分で皆さんが経済格差なく高等教育にアクセスできるようになった。次の段階として,その先の大学院にどれだけ支援を拡充するかという書きぶりにはならず,民間資金や競争的資金で支援しますということでは,おそらく十分な支援は期待できません。
ここは,やはり国が本腰を入れて取り組むべき局面です。日本の産業界もようやく、労働生産性と学歴は正比例している,だから,例えば,人文系でも修士課程に行くのは当たり前になってくると認め始めています。こうした主張をもっと前面に出すべきであるのに,国はできないからどこかから資金を獲ってきて実現しなさい,という姿勢は良くないと思います。
そのほかいかがでしょう。
長谷川委員,どうぞ。
【長谷川委員】 本当に総花的にいいことがいっぱい書いてあって,確かにこれを本当にどうやって実現するかの細かいところというのが,これから一番肝だと思います。
それで,博士後期課程学生の経済的支援の抜本的充実はすごく大事で,本当にそうならないといけないんですけれど,その次が博士を授与された人たちの就職確保ですよね。そのときに,次のところに若手研究者の安定的なポストの確保とキャリアパスの多様化というのがありますが,安定的なポスト,アカデミアのポストの急激な増加は全く見込めません。ですので,今,全世界的に見て,全世界の統計で,Ph.Dの授与の数はアカデミックポジションの数の7倍あるんですね。ですから,7倍ということは,7分の1しかアカデミアには行けないわけで,その人たちを,多くの人はどこに行っているかというと,産業界であり,ジャーナリズムであり,官公庁であり,市町村であるんですよ。で,企業なんですよ。そういうところに隅々までそういう博士人材を活用するという気がないと,これは絶対実現しないので,大学や研究所でいい研究をするというのはもちろんですけれど,そのポジションの下にはもういろいろなところにそういう博士マインドを持った人たちが社会にいるというふうにしていかないといけないと思います。
【永田分科会長】 ありがとうございます。
今回は中間まとめですから,この動向をにらみつつ,我々としては,今,例えば,長谷川委員がおっしゃったように,産業界もそう変わってほしいけれども,一方で,我々高等教育機関は,学士課程,修士課程,博士課程の教育を本当にどうやって改革していくのかというのは,非常に重要なポイントです。そうした教育が研究者マインドをもった人材を生むことに加え,長谷川委員がおっしゃった産業を支える人材をも生み出していく、ということを強く意識して,今期の主題である教育と研究を両輪とする高等教育というテーマについて、次回以降議論していきたいと思っております。
事務局から、どうぞ。
【大洞企画評価課文部科学戦略官】 すみません,1点だけ。全てお答えすることはできないのですが,資料5-1の14ページを開けていただけますでしょうか。上から2段落目にあります,上から8行目ぐらいのところですが,ここは結構議論を頂いて大事だと思っておるところでございまして,「特に」と書いてあります。特に,博士課程後期学生は学生であると同時に,我が国の研究システムと教育システムの一翼を担う存在であり,将来,知のプロフェッショナルとして,我が国の知識集約型社会のシステムを支えることとなる人材であることを社会全体で育成していくという意識を持つということで,こういった意識の下に,政策が本当にできているかということをしっかりと考えていきたいと思っております。ありがとうございます。
【永田分科会長】 ありがとうございました。これからもこの進行状況は適宜フィードバックをしながら,議論を進めていきたいと思います。
それでは,髙宮委員,どうぞ。
【髙宮委員】 科学技術計画について非常に気になったのが,冒頭部分,総花的に本当に非常によく盛り込みができていると思って私も聞いておりましたのは,皆さん方同じでございます。最初の方で結構気になりましたのが,Society5.0の実現に向けてというところで,このようなシステムを世界に先駆けて構築するという一文がございまして,果たして日本はこういうものの取組が今現在,先進的だという認識がそもそも危ないことを招いているんではないかと思いまして,一文,大変気になりました。
学術界でかつて日本がかなりいいところにいたのは,経済状況がよかったときでございまして,何もできないままずるずるといろいろなものを失っているという実感は,いろいろな研究会の方がお持ちではないかと思います。正に知識集約型価値創造システムについては,海外では既に,国を挙げてということではないんですけれども,十分進んでいて,日本はここで国でも挙げない限り,それが一向に進まない状況を何とかしているという,非常にむしろ後進的な状況であることの認識を改めてここで訴えた方が,その方がまだ対応がよく進むのではないかと思って,1点だけ付け加えさせていただきました。
【永田分科会長】 おそらく,髙宮委員の御指摘は認識されていると思います。アメリカも中国もイギリスもフランスも,デジタルサイエンスの大きな国策を立てています。それを踏まえて我が国も,ここで追い抜けなくても,少なくとも並んで,次には追い越せるところまで持っていくという謙虚な気持ちも必要ではないか、ということかと思います。
事務局から、どうぞ。
【大洞企画評価課文部科学戦略官】 そういった御議論もございまして,ただ,日本はやはりリアルデータですとか,実際,産業の持っているデータですとか,そういう強みもあるので,これから更にフェーズがどんどん進んでいく中で,勝ち筋といいますか,日本が強くなれる部分というのがあるのではないかと。先駆けできる部分があるのでないかというふうには我々としては考えていますので,危機感をしっかり持って,そういった形で進めていきたいと思っております。ありがとうございます。
【永田分科会長】 最後の議題です。Society5.0時代に対応した教員養成を先導するフラッグシップ大学の在り方についてです。先ほど冒頭で説明をさせていただきました。初等中等教育分科会教員養成部会のワーキンググループで中間まとめが出ましたので,情報共有したいと思います。
それでは,事務局から説明をお願いします。
【髙田教員養成企画室長】
それでは,資料6-1と6-2でございますが,資料6-2を基に御説明いたします。
まず,経緯からですが,資料6-2をめくっていただきまして,中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会における教員養成のフラッグシップ大学検討ワーキンググループの設置というものがございます。今年の3月に設置しております。ここに設置の目的が書いておりますが,教育再生実行会議の第十一次提言で,国は,教師のICT活用指導力の向上をはじめとするSociety5.0に対応した教員養成を先導するフラッグシップ大学,例えば,教員養成の指定大学等の創設を検討するということが提言され,これを受けて設置されたものです。
なお,5月に入りまして,最終的にこの中間報告は提言という形でまとまりましたが,そこでは更に具体的に,産業界との連携だとか,あるいは個別最適化といったようなことにも対応したようなフラッグシップ大学を検討すべきということが提言されております。
右側がワーキンググループの委員の名簿でございますが,主査を,大学分科会にも所属されております三島委員とし,教員養成の関係者,あるいは教員養成以外の関係者,そのほかICT関係として戸ヶ﨑委員や堀田委員など,企業関係では若江委員に御参画いただきまして,検討をしております。5月からほぼ毎月1回のペースで議論をしたものでございます。
表に戻っていただき,こちらが中間まとめの概要でございます。目的・必要性のところでございますが,教員養成の現状といたしまして,既存の制度や予算等の制約の中では個別の好事例は生まれているものの,教員養成の在り方自体が大きく変革するような起爆剤にはなり得ていないということ。そういった中で,Society5.0時代に向け,我が国の教員養成の在り方自体を変革していくけん引役となる大学,これは改善とかではなく,新たなステージに引き上げるような大学を創出するということが必要であるということが提言されております。
フラッグシップ大学の役割ということで,左側でございますが,主に三つということで,新たな次元に引き上げるけん引役ということ,そういったとがった取組の成果をしっかりと全体に広めていくネットワークの中核ということがございます。もう一点が,そういったようなことを教育政策上の課題解決や,政策提言にきちんと結び付けていくといったようなことを役割として示しております。今のところ,こういうことが可能な大学について,最大三つ程度について指定してはどうかということでございます。
課題解決や政策提言だとか,あるいは新たな次元に引き上げるけん引役ということに対して,国として行うべき条件整備,支援の在り方として,二つ挙げられております。一つは,教員養成については,教員免許制度の枠組みに縛られているところがありますが,そういったところについて,例えば特例扱い的に弾力化していくようなこと,また予算面での支援をしていこうということでございます。
右側でございますが,そういったフラッグシップ大学の創出方法ということで,基本的には公募の要件として,教職大学院を有しているような大学について大学の実績が十分かどうか,教育研究力,それも先端技術や外部人材等を効果的に活用したような革新的なものかどうか,あるいは多様な関係機関との連携,また,教育環境と財政基盤ということで,未来の教室を先取りしたような学習環境の整備だとか,外部資金の獲得などもここでは求めていきたいということでございます。
選定や評価に当たっては,恒常的に教員養成部会の中で選定・評価を担うような委員会を設けて,これを継続的に見ていくというようなことを考えているところでございます。
以上でございます。
【永田分科会長】 ありがとうございます。
清水委員,どうぞ。
【清水委員】 ちょっと質問をさせていただきたい。1つ目は,これは国立大学を対象にした制度設計なのか。2つ目は,来年4月から始まる群馬大学と宇都宮大学の共同教育学部との関係はどう考えたらよろしいのか。
【髙田教員養成企画室長】 まず,私立大学や公立大学も対象にしているのかという御質問ですが,国立大学に限ったものではなく,全てを対象としております。
もう一つ,群馬と宇都宮のことについては,あれはあれでということで,これは全く別のものとして扱うということでございます。
【永田分科会長】 ありがとうございます。
選ばれた大学は大変ですが,頑張ってもらわないといけません。
それでは,最後に今後の日程等について,事務局から報告して終わりにします。
【奥井高等教育企画課課長補佐】 事務連絡でございます。本日は活発な御議論,ありがとうございました。
次回の日程ですけれども,1月22日水曜日の午前10時から12時を予定しております。場所については調整中ですので,追って御連絡いたします。
また,資料につきましては,郵送を希望される場合は,席上の方に残していただければと思います。
また,本日,時間の御都合で御発言ができなかった委員がおられましたら,メール等で事務局宛てに御連絡をお願いいたします。
以上でございます。
【永田分科会長】 それでは,定刻になりましたので,第151回の大学分科会をこれでお開きにしたいと思います。それでは,年が明けましたらまたよろしくお願いいたします。

── 了 ──


お問合せ先

高等教育局高等教育企画課高等教育政策室

(高等教育局高等教育企画課高等教育政策室)