大学分科会(第147回) 議事録

1.日時

平成31年3月27日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省東館3階 第一講堂

(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 分科会長の選任等について
  2. 大学分科会の運営について
  3. 第9期大学分科会の審議の状況とその後の対応について
  4. 第10期大学分科会の審議事項等について
  5. 認証評価機関の認証について(諮問)
  6. その他

4.出席者

委員

(分科会長)永田恭介分科会長
(副分科会長)村田治,渡邉光一郎の各副分科会長
(委員)有信睦弘,亀山郁夫,志賀俊之の各委員
(臨時委員)安部恵美子,宇山恵子,加登田惠子,金子元久,河田悌一,小林雅之,佐藤東洋士,清水一彦,鈴木雅子,髙倉明,髙宮いづみ,伹野茂,曄道佳明,長谷川眞理子,福田益和,益戸正樹,三島良直の各委員

文部科学省

(事務局)藤原事務次官,伯井高等教育局長,白間私学部長,瀧本大臣官房総括審議官,山﨑大臣官房文教施設企画・防災部技術参事官,玉上大臣官房審議官(高等教育局担当),森大臣官房審議官(高等教育局担当)平野大臣官房審議官(総合教育政策局担当),浅田文部科学戦略官,蝦名高等教育企画課長,三浦大学振興課長,淵上国立大学法人支援課長,鍋島主任大学改革官,石橋高等教育政策室長,大月専門職大学院室長,中澤政策科学推進室長 他

5.議事録

(1)分科会長の選任等について
 委員の互選により永田委員が分科会長に選任された。
 副分科会長については,永田分科会長から渡邉委員並びに村田委員が指名された。

 

(2)大学分科会の運営について
 事務局から,大学分科会の会議及び会議資料の公開並びに審議参加の制限について,資料2に基づき説明があり,原案のとおり決定された。
 また、中央教育審議会大学分科会運営規則に基づき,この時点から会議が公開された。


(傍聴者入室)
【永田分科会長】  傍聴希望の方,御入室かと思いますが,一言申し上げます。カメラ撮影につきましては,冒頭の挨拶までとさせていただきたいと思います。その後も公開ですので,筆記等を取っていただいて結構です。
 それでは,第10期最初の大学分科会の開催に当たりまして,私の方から一言だけ御挨拶させていただきます。
 前期も「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」をまとめさせていただきましたが,いろいろな意味で大学そのものに対する期待と,それから御批判が集まっている最中かと思います。世界的に見れば,グローバル化が進む一方で,ポピュリズムに押された内向きの態度を取るような国々も現れているという問題もありますし,デジタルサイエンスがますます進展して社会のあり方に大きな影響を与えつつあります。
 我が国を見てみると,やはり少子高齢化という大きな問題がありますし,地方創生という問題や,高齢化に関わる課題は,言葉を換えると人生100年時代に関する課題という言い方もできます。
 そういった中で,社会変革を起こす基本は,新しい学術と,それをつないでいく人ということになります。特に,教育においては,その人を創る部分に強く結びついているので,我々としては,今申し上げたような世界の動向や我が国のいろいろな課題を念頭に置きながら,大学が何をできるかということをまず考える必要があります。現在の教育の仕組みや,あるいは教育システムの仕組み等に十分目配りをしながら,新しい時代に向けた大学教育を皆さんで考えていくというのが,この分科会の目的と考えております。
 いろいろと難題が生じる可能性もありますけれども,御協力をお願いして挨拶といたします。よろしくお願いいたします。
 それでは,文部科学省を代表して,玉上大臣官房審議官からも御挨拶をお願いいたします。
【玉上大臣官房審議官】  第10期1回目の大学分科会の開催に当たりまして,文部科学省を代表しまして,私より一言御挨拶をさせていただきます。
 委員の皆様方には,第10期中央教育審議会大学分科会委員をお引き受けいただきまして,また,年度末の大変お忙しい中,本日御出席をいただき感謝申し上げたいと思います。
 御案内のとおり,大学分科会は,大学等における教育の振興につきまして調査審議することをその主な所掌としております。第9期までの分科会におきましては,「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」の答申に向けた議論をはじめ,大学院制度と教育の在り方,法科大学院教育の改善,専門職大学等の制度設計,認証評価制度の充実など,幅広い御審議を頂いたところでございます。
 グランドデザインの答申におきましては,Society5.0,第4次産業革命や人生100年時代,グローバル化,地方創生など,2040年頃の社会変化の方向性が示されておりますが,文部科学省といたしましては,こういった変化を見据え,高等教育機関が今後一層重要な役割を果たしていく必要があると考えておるところでございます。
 今回の第10期分科会におきましては,グランドデザイン答申のフォローアップをはじめ,2021年度からの第6期の科学技術基本計画の策定を見据えた,研究と教育を両輪とする高等教育の在り方に関する御議論ですとか,分科会の下に設置する各部会等の検討結果について,大所高所からの御意見を頂くことをお願い申し上げまして御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
【永田分科会長】  玉上審議官,どうもありがとうございました。
 早速,本日の議事ですけれども,大きく分けて3つございます。最初に,前期までの審議状況について事務局から御説明を頂きます。次に,第10期大学分科会で行う審議事項等について,こちらも事務局から御説明をいただきます。その際,各委員からは一言ずつ,審議事項,あるいは大学分科会で検討すべき事項の候補についても御意見をいただければと思います。最後に,認証評価機関の諮問事項があります。
 それでは,早速1点目,先ほど申し上げました第9期の審議状況について,事務局から御説明をお願いいたします。
【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。まず,資料3-1に基づきまして,第9期大学分科会の審議の状況について,振り返りをさせていただければと思っております。
 1ページ目でございます。第9期における審議実績といたしまして,まず一番大きいものでございますけれども,将来構想部会の中で,昨年11月に「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」答申に向けた御議論をしていただきまして,これが取りまとまったところでございます。それから,その下のところでございますけれども,この答申に向けては,将来構想部会の下に制度・教育改革ワーキンググループを設置いたしておりまして,この中では,リカレント教育,留学生交流の推進,学位プログラムを中心とした大学制度,全学的な教学マネジメントの確立,学修成果の可視化と情報公表の促進,教育の質保証システムの確立など,専門性の高い11項目にわたって審議を行っていただき,方向性を取りまとめていただいたものが答申の中に反映されているところでございます。
 次に,大学院部会に関しましては,この答申の中にも触れていただいておりますし,また,その後,めくっていただいて2ページ目でございますけれども,今年の1月22日に,「2040年を見据えた大学院教育のあるべき姿」ということで審議まとめを取りまとめていただいたところでございます。また,専門職大学院に関しましても審議していただいてきているところでございます。
 次の教学マネジメント特別委員会でございますが,これも答申を受けまして,速やかに教学マネジメントに係る指針の策定及び学修成果の可視化と情報公表の在り方について検討するということで,平成30年11月に特別委員会を設置し,議論を開始していただいたところでございます。
 法科大学院等特別委員会につきましても,この後,法案の内容を御説明いたしますが,法科大学院の充実に向けての議論をいただき,それを基に今回の改正につなげているところでございます。
 認証評価機関の認証に関する審査委員会におきましても,デジタルコンテンツ系分野の認証評価機関の認証をさせていただいておりますとともに,継続審議をしている案件もございます。
 3ページ目,専門職大学等の制度設計に関する作業チームでございますが,専門職大学・専門職短期大学が平成31年4月から,新たな高等教育機関として創設されることになりましたことに伴いまして,設置基準等の具体的な制度設計を御審議いただいたところでございます。
 そのほか,第3期教育振興基本計画の策定について諮問された観点におきましても,高等教育について,大学分科会等で御審議をいただいてきたところでございます。
 めくっていただきまして,4ページ目で,今期,第10期に継続して審議していただきたいということで,第9期から申し送られている事項が5点ございますので,御説明させていただきます。
 1つは,大学設置基準等の質保証システムの見直しについてということで,答申の中でも大学設置基準等の質保証システムの見直しを抜本的に行うべきだということが掲げられておりまして,これを今期より新規部会で設置して,審議を開始していただければという申し送り事項になっております。
 教学マネジメントにつきましては,先ほど申し上げました特別委員会において引き続き審議をしていただくということになっております。
 大学院制度に関しましては,審議まとめが出ておりますけれども,更に議論を進めまして,大学院全体の課程の在り方や,大学院設置基準をはじめとする法令改正等の方向性についても引き続き審議していただきたいということとなっております。
 法科大学院も引き続き具体的な制度改革が必要でございますので,そのあたりを議論していただくことになっております。
 認証評価機関についても,同様に審議が継続しているものがございますので,審査をしていただくということになっております。
 その後の参考資料は,それぞれの答申を含めて,どういう結果が出たかということをポンチ絵でお示しさせていただいておりますので,御参考にしていただければと思っております。
 引き続きまして,資料3-2を御説明させていただきます。資料3-2を御覧いただければと思います。高等教育・研究改革イニシアチブ,通称柴山イニシアチブにつきましては,高等教育機関,研究機関における教育,研究,ガバナンス改革を一体的に推進するための政策パッケージとして,去る2月1日に柴山大臣から発表したものでございます。基本的には,答申の部分を多く引いた形になっているということで,中央教育審議会で答申いただいたことを具体化していくものと捉えていただければ有り難いと思っております。
 冒頭のところにございますように,今後の高等教育機関・研究機関の改革を進める上で,取組あるいは成果に応じた手厚い支援と厳格な評価を徹底することによって,教育,研究,ガバナンスの改革を加速し,世界を牽引するトップ大学群,あるいは地域や専門分野をリードする大学群を形成するとともに,最前線で活躍する研究者,次世代を担う学生の育成,活躍を促進していくことが基本的な考え方でございます。
 改革の方向性といたしましては,この後,法案も御説明させていただきますけれども,高等教育機関へのアクセスの確保,大学教育の質保証・向上,研究力向上,教育研究基盤・ガバナンスの強化の4つの柱を掲げておりまして,それぞれの事柄について,手厚い支援と厳格な評価を徹底するとともに,それぞれの取組をばらばらではなく,一体的に進めていくということで考えております。先ほど申し上げましたが,大学教育の質保証・向上や教育研究基盤・ガバナンス強化は,答申の内容を反映したものになっております。
 例えば,1つ目の柱であります高等教育機関へのアクセスに関しましては,高等教育の無償化というところになりますけれども,授業料の減免等を進めてまいりますが,対象となる大学につきましては,社会や産業界のニーズも踏まえ,学問追求と実践的教育のバランスが取れている大学等に限定するでありますとか,学生の学習状況のチェックや厳格な成績管理を行うこと等を要件としておりまして,こういう両輪で考えていきたいと思っております。
 また,2つ目のところでございますけれども,教育の質保証・向上ということに関しましては,教育の質保証・情報公表のための仕組みをしっかりと構築していくということでございますが,一方で,評価の徹底が必要だという形で整理させていただいております。
 2ページ目を御覧いただければと思います。2ページ目は,4つの柱の主な内容と関連性を示したものということで,御参考に見ていただければと思っております。
 3ページ目からは,それぞれの柱につきましての具体策を入れておりますし,7ページ目からは,具体の工程表を作らせていただいておりまして,これから答申の内容の実現も含めた文部科学省としての施策の運び方を整理させていただいているところでございます。
 以上が3-2の説明でございます。
 続きまして,資料3-3を御覧いただければと思います。ここからは,現在,国会での御審議をお願いしております法律案を3つ,御説明を続けさせていただきたいと思っております。
 1つ目でございますが,学校教育法等の一部を改正する法律案でございます。学校教育法の一部改正に関しましては,認証評価において,各大学における教育研究等の状況が大学評価基準に適合しているか否かの認定を認証評価機関に義務付けるということが1つの法律事項でございます。
 その上で,認証評価で適合している旨の認定を受けられなかった大学に関しましては,文部科学大臣が報告又は資料の提出を要求することということで,大学における改善を促す制度的な担保を設けることにより,大学の自主性,自律的な改善の実行を促し,教育研究の推進をより一層図るものでございます。これは,グランドデザイン答申においても,認証評価については,受審が義務化されているにもかかわらず,その結果の取扱いについて制度的な担保が設けられていないなどの課題を御指摘いただいておりまして,その改善の一歩としての具体的な方策を実現するための改正となっております。
 続きまして,国立大学法人法の一部改正につきましては,まず1つ目といたしまして,これまで一法人が一大学を設置することとなっておりましたが,新たに1つの法人が複数の大学を設置することができるようにするとともに,昨年12月に基本合意を締結しております岐阜大学法人と名古屋大学法人を統合し,新たに両大学を設置する国立大学法人東海国立大学機構の創設を行うこととしております。
 次に,一法人が複数の大学を設置する場合や,その他管理運営体制の強化を図る等の事情がある場合には,法人の判断により,学校教育法上の学長の職務を担う大学総括理事を設置することを可能とし,経営と教学の分離を行うことができるようにしているところでございます。これにより,各法人が自らの強み,特色や規模,地域や産業界との関わり等を踏まえて,法人の経営力の強化や教育研究の向上に資する経営体制を選択できるようになるものと考えております。
 3点目は,国立大学がより一層社会からの期待に応えていくことができるよう,現在,1人以上の配置が義務付けられております学外理事について,4人以上の理事を置くことのできる法人につきましては,学外理事を複数配置することを義務付けております。また,学外理事の複数配置の義務化に合わせまして,学外理事を非常勤で任命する場合には,法定の理事の上限数を1名加算するという改正を行うこととしております。
 その他,4には評価の関係で,国立大学は認証評価と国立大学法人評価の両方の評価がありますけれども,評価の負担軽減を図るということで,この2つの評価の連携を図るものでございます。
 私立学校法の一部改正につきましては,少し細かくなりますけれども,3ページ目を見ていただきますと,そこに具体的にどのようなことを改正するかということを書かせていただいております。まず,ガバナンスの強化ということでございまして,役員の職務及び責任の明確化等を図ることとし,学校法人の責務として,運営基盤の強化や教育の質の向上,運営の透明性の確保を図ることとした上で,善管注意義務や損害賠償責任,特別な利益供与の禁止について規定するとともに,理事については監事への報告義務を課すこと,監事については理事会の招集権や法令違反行為の差止めなどの牽制機能の強化を図ることとしております。また,評議員会につきましては,中期的な計画や役員報酬基準の策定に当たり,理事長に意見を述べることとしております。
 続いて,右側の部分で情報公開の充実といたしまして,寄附行為,役員名簿,役員報酬基準の作成・閲覧に関する規定を整備するとともに,財務書類等について,現在は利害関係人のみの閲覧となっているところ,大学を設置する法人については,ホームページ等で広く公表することとし,情報公開を推進することとしております。さらに,中期的な計画等の作成として,大学等設置をする法人には,認証評価の結果を踏まえた中期的な計画の作成を義務付けます。加えて,破綻処理手続の円滑化の観点から,解散命令による解散時には,これまで理事が清算人となるとしていたところ,所轄庁が清算人を選任することといたします。これは,答申におきましても,多様な価値観を持つ多様な人材が集まることにより,新たな価値が創造される場である高等教育が必要ということで,ガバナンスの重要性が指摘されておりますので,国立大学法人法,私立学校法の両法案は,その御指摘を踏まえた改正ということになっております。
 1ページ目に戻っていただきまして恐縮ですが,最後に独立行政法人大学改革支援・学位授与機構法の改正の部分でございます。これにつきましては,国立大学法人の運営基盤の強化を図るために必要な情報の収集・分析を行う業務や,高等教育における学生の国際流動性を高めるため,内外の高等教育機関の入学資格等に関する情報の収集,整理,提供に関する業務を追加するということでございます。
 また,先ほど申し上げましたけれども,国立大学法人の評価に関しましては,機構が行う教育研究面の評価と認証評価結果の連動ということを考えております。
 施行期日につきましては,一部を除き平成32年,2020年の4月1日といたしております。文部科学省といたしましては,今回措置する規定を設けることによって,教育研究水準の向上と管理運営の改善を図りまして,より一層大学として求められる役割を果たしてもらうことを期待するものでございます。
 学校教育法等の一部を改正する法律案の概要につきましては,以上でございます。
【鍋島主任大学改革官】  続きまして,大学等における修学の支援に関する法律案の概要,資料3-4でございますが,簡単に御説明したいと思います。
 先ほど説明ございました高等教育・研究改革イニシアチブ,通称柴山イニシアチブの中でも,高等教育機関へのアクセスの確保,そして大学教育の質保証・向上というものを大事にしていこうという話がございました。修学の支援に関する法律案につきましては,最初のページにありますように,対象となるのが,大学,短期大学,高等専門学校,専門学校に通う学生になります。経済的な理由でこれらの学校の進学を諦めているような子供たちが多いのではないか,教育費負担が非常に重いのではないかという御意見の中で,何とか政府として,そういった子供たちに対して進学の機会を保証していこうという内容です。
 支援対象となる学生については,住民税非課税世帯,そしてそれに準ずる世帯の学生さんになります。
 修学の支援のために授業料及び入学金の減免を行ってまいります。これは,現在では予算措置という形で支援させていただいているものなんですが,新たに,新しい法律に基づくものとして創設してまいりたいと思います。また,学生支援機構が実施されています学資支給,いわゆる給付型奨学金,これまでは貸与型のものが中心だったんですが,昨年度から一部給付型の奨学金が少しずつ始まってまいりました。こちらを更に拡充していきたいという内容です。授業料,入学金と給付型奨学金を合わせて支援させていただくものになります。
 全体としましては,少子化に対処する施策ということで,消費税の引上げによる財源,この10月に8%から10%になるこの財源を活用させていただく形になりまして,幼児教育の無償化,高等教育の無償化という名前でも説明させていただいているものになります。
 2枚目を御覧いただければと思うんですが,これまで様々な閣議決定等で高等教育の無償化,負担軽減について議論が進んでまいりました。昨年末に関係閣僚の合意によりまして,大きな制度の骨格が固まってまいりまして,2月12日に国会に法案を提出させていただきまして,現在,衆議院において審議いただいているところです。
 具体的な授業料減免の金額なんですが,左側の真ん中のところにありますように,国公立の大学でありますと,授業料54万円,私立の大学ですと授業料70万円,これに入学金が加算されるような形を考えております。また,各学校種によりまして,それぞれの必要となる金額を上限額として,学生にとってみたら支払わなくて済む効果がございます。
 下に給付型の奨学金があるんですが,こちらは学生支援機構から各学生に直接支給することを考えておりまして,国公立,私立,それぞれ自宅,自宅外生の方々の金額,現在の検討状況を書かせていただきました。これまでの,現在の給付型奨学金の金額を,金額的にも大幅に拡充する内容になっています。
 右側の真ん中のあたりに階段のようなものがあるんですが,現在では非課税世帯の子供たちに対する支援になっておるんですが,3分の2,3分の1にはなりますが,隣の世帯も少し隣の世帯の方々まで支援の幅を伸ばしてまいりたいということを考えております。
 下にありますように,この制度を行っていくに当たりまして,支援対象者である個人,学生の方々にも要件を設けさせていただきまして,特に進学校の学習状況には是非頑張ってもらいたいという厳しい要件を設けさせていただいたりとか,大学等の皆様にも申請を頂くような形で幾つかの要件を設けさせていただきたいと思っております。
 上の方にある当面のスケジュールですけれども,制度自体は来年の4月からということをイメージしておるんですが,実際には子供たちにとってみますと,高校3年生の大体夏の段階だと思うんですが,進学した後に奨学金等をもらいたいという予約採用を開始できたらと思います。また,どういった大学がこの対象になるのかということも,夏以降,公表して,できるだけ子供たちにとって進路選択の幅が広いようなものにしてまいりたいと思っております。
 これまでも様々大学分科会の先生方に御意見を頂いたり,御相談に乗っていただいたりしておりますし,また先日の参考人質疑でも大変お世話になりましたが,また改めてこの制度の運用に当たりまして,先生方の御意見もいただきながら,よりよい制度にしてまいりたいと思っております。
 以上でございます。
【大月専門職大学院室長】  続きまして,法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律等の一部を改正する法律案の概要について御説明申し上げます。資料3-5を御用意願います。
 本法律案は,本分科会の下に設置されました法科大学院等特別委員会における法科大学院の教育の改善・充実の方策の審議結果を踏まえて立法化したものでございます。
 本資料の2ページ目を御覧ください。この資料は,昨年3月の本大学分科会において,そのときの審議状況を御説明するときに用いた資料でございます。法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度は,多様な法曹を輩出するという理念から,法科大学院は学部と完全に切り離す,独立した形で制度化され,平成16年から学生を受け入れました。当該法科大学院において必要とされる法学の基礎的な知識を有すると認められた者は,上に書いてあるような2年次から2年間学修する,それ以外の学生は3年間学修するということで始まりました。しかし,法科大学院全体としての司法試験の合格率が,制度当初期待されたものとは大きく異なるような状況が生じまして,法科大学院,法曹を志望する学生が激減しているところでございます。
 法曹を志望する法学部生の不安,迷い等をアンケート等で取りますと,経済的,時間的な負担の大きさや,司法試験の合格率の低さを挙げる学生が非常に多いということを踏まえまして,今回の改革案においては,本資料の上段にありますように,プロセスとして質の高い法曹を養成するという理念は堅持しつつ,学生の資質・能力に応じた期間で法曹となる道を一層充実するため,2年の既修コース,3年の未修者コースともに制度改革を行うものでございます。
 恐縮でございますが,1ページ目の法律案の概要を御覧ください。この法律案は,上段の趣旨のところにありますとおりに,法曹の養成のための中核的な教育機関としての法科大学院における教育の充実を図り,高度の専門的な能力及び優れた質を有する法曹となる人材の確保を図るため,法務省と密接に図って,その下の概要にあるような所要の措置を講ずるものでございます。
 趣旨の下の青色の概要というところでございます。本法律案は,4つの法律を束ねる,まとめた形となっておりまして,その中心をなすのが1の法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律の一部改正でございます。
 まず,(1)の法科大学院における教育の充実の部分でございますが,法科大学院は内閣に設けられた司法制度改革審議会の意見書において,関係者の自発的な創意を基本としつつ,広く参入を認める仕組みとされて,自主的かつ積極的に教育の充実を行い,その教育を認証評価などで事後チェックする仕組みと制度化されたものでございますが,今回は,法科大学院においては(ア)(イ)(ウ),法曹となろうとする者に必要な学識等を段階・体系的に涵養(かんよう)すべきことを法律上規定するとともに,省令である設置基準におきまして,各科目群について必要単位数を規定する。さらに,法科大学院に対して教育課程や成績評価・修了認定の基準に加えて,実施状況の公表を義務付けることとして,法曹養成の中核的な教育機関としての法科大学院における教育の充実を図ることとしております。
 また,(2)で,法科大学院と法学部等との連携を図るため,法科大学院が当該法科大学院の教育との円滑な接続を図るための課程を置こうとする大学と協定を締結し,それを文部科学大臣が認定する制度を創設することとしております。これにより,早期卒業を前提とした法学部の,いわゆる法曹コースと,法科大学院の3年プラス2年の制度化を図ってまいります。
 (3)の部分でございます,法科大学院における入学者の多様性の確保として,法学未修者や社会人,早期卒業・飛び入学により入学しようとする者に対して,方法や時期など,入学者選抜における配慮義務を規定することとしております。
 その下の(4)は,法務大臣と文部科学大臣の相互協議の規定の新設でございます。法務大臣と文部科学大臣は,法科大学院の学生の収容定員の総数,その他法曹の養成に関する事項について,相互に協議を求めることができるとしております。これにより,法科大学院の入学定員の管理の厳格化を行い,司法試験合格までの予測可能性の担保の措置を講ずるものでございます。
 また,その下,2の学校教育法を一部改正しまして,大学院への飛び入学資格について,学部の単位を優秀な成績で修得したと認められる者に加えて,そうした者と同等以上の資質・能力を有すると認められる者を追加することとしております。
 その他,3の部分でございます,法務省において,法科大学院教育の充実が制度化されることに伴いまして,司法試験法を改正し,一定要件を満たした法科大学院在学中の者への司法試験の受験資格の付与により,法曹コースの制度化と併せて,時間的,経済的な負担を図るとともに,裁判所法を改正して,在学中受験の合格者については,法科大学院課程の修了を司法修習生の採用に必要な要件とすることとしております。このように,法案は2年の既修者コースの改革が中心でございます。
 最後に,本資料の4ページ目を御覧ください。これは,文部科学省と法務省がまとめた法改正以外の事項も含めた法科大学院を中核とする法曹養成制度の改革の全体像でございます。昨年10月10日の本分科会で,本改革案について御審議いただいたときの御意見なども踏まえまして,資料の右側にありますように,法科大学院における多様性の確保の推進や法科大学院へのアクセスの向上等について,法改正以外の施策をしっかり行うことによって努めていきたいというものでございます。
 説明は以上でございます。
【永田分科会長】  説明ありがとうございました。御質問等があれば後ほどまとめてお伺いいたします。次に第10期,今期の大学分科会で審議を予定している事項について,こちらも先に事務局から説明をお願いいたします。
【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。資料4を御覧いただければと思います。
 まず,第10期大学分科会における部会等の設置について(案)ということでございまして,下の5つの部会,また特別委員会等の設置について御審議いただければと思っております。当然,この部会等から上がってきた審議がまとめられたものにつきましては,適宜,大学分科会で報告を受け,また御審議いただくという形になります。
 2から5の部会等に関しましては,第9期から引き続きあるものでございます。1つ目の質保証システム部会に関しましては,先ほど9期からの申し送り事項の中にもあると申し上げましたけれども,設置基準,設置認可審査及び認証評価制度等を一体として,質保証システムの在り方について専門的な調査審議を行うということで,新たに設けてはどうかと考えているものでございます。
 次のページを見ていただきまして,具体的な検討事項(案)でございます。まず,質保証システム部会以降に関しましては,引き続きの議論と,質保証システム部会につきましては,今申し上げましたような観点の審議をしていただくのはどうかということでございます。
 大学院部会に関しましては,2つ目のところでございますけれども,特に2021年度から2025年度までの第4次大学院教育振興施策要綱の策定等も視野に入ってくるところでございます。
 大学分科会に関しましては,一番上でございますけれども,答申のフォローアップ,それから教育と研究を両輪とする高等教育の在り方,特に大学院部会との議論も考慮しながらということになりますが,そういう観点。また,これも答申のフォローアップの一部ではございますけれども,地域における高等教育機関と大学間連携の在り方ということで,このあたりのことを審議いただくのはどうかという御提案でございます。
 これらを踏まえまして,少し参考資料を準備いたしましたので,その御説明に移らせていただきます。1つ目は,委員のみでございますが,お手元に机上資料でA3の資料を配付させていただいております。これは,第3期教育振興基本計画,それから昨年の答申,そして,これから具体化していく道筋というものがどういう形になっているのかということを整理させていただいておりまして,具体的には振興基本計画から答申,そして今の道筋までやるべきことは整理できているのかというところでございますので,今こういうところにいるということを,まず頭の片隅に置いておいていただければ有り難いと思っております。
 参考の資料に戻りまして,資料4の3ページ目からでございますけれども,今回,中央教育審議会もそうでございますけれども,政府のいろんな会議の中で,実は高等教育が多く取り上げられている例がございまして,それを政府の各会議の動向につきまして整理させていただきましたのが3ページ以降でございます。
 簡単に申し上げましても相当の数の会議が高等教育を取り扱っている状況でございますが,まず,教育再生実行会議におきましては,真ん中のあたりでございますけれども,Society5.0で求められる力と教育の在り方,それから高等学校改革ということで,高大接続も含めた議論がされているということで,この4月,5月の最終的な取りまとめに向けて更に検討が進んでいるところでございます。
 また,今回,教育と研究を両輪とする高等教育の在り方という御審議はいかがかと御提案させていただいている背景が科学技術・学術審議会の部分でございまして,中央教育審議会委員に,お抱えの方がいらっしゃる場合は黄色いマーカーで引かせていただいておりますけれども,高等教育関連の直近の動きといたしましては,これも参考資料ということで,別添で準備させておりますこういうポンチ絵がございますけれども,これが1月にまとめられました科学技術・学術審議会の「平成から○○(新元号)へ『新時代・新世代の科学技術システム』ビジョン論点取りまとめ」ということで,これをベースに第6期の科学技術基本計画,これが2021年度から2025年度になりますけれども,その議論が進められていっているところでございます。
 参考資料の最初の我が国の立ち位置及び今後の方向性というところでございますが,やはりキーワードとしては多様性であったりとか,調和,共創ということ,それから,高等教育がやはり大きな基盤となっていくのではないかという方向性は,答申と軌を一にするものだと理解しているところでございます。
 その参考資料をめくっていただきまして,具体的にどういうことをするのかということにつきましては,3ページ目に研究人材の改革とか研究資金の改革,研究環境の改革,大学改革と。大学改革は特に若手,それから人給マネジメントなどが入っておりますけれども,こういうことをやっていくということ。それから,未来社会デザインとシナリオへの取組などが御議論されているということでございますので,これも少し頭に置いていただきながら,今後の議論をどうしていくかということで,御参考にしていただければと思っております。
 資料5に戻りまして,科学技術・学術審議会は,めくっていただきまして,4ページでございますが,少しペースが速まった形で議論が進んでおりまして,今年の6月から8月ぐらいに中間まとめ,そして32年3月,来年の3月には最終取りまとめということで,第6期科学技術基本計画の骨格を作っていかれると理解をしております。
 第6期科学技術基本計画は,この次の総合科学技術イノベーション会議でも議論されておりまして,これまでの議論は,青いポンチ絵を下に入れておりますけれども,人材とか資金,組織などの議論になっておりましたが,これからは第6期科学技術基本計画で実現していくべき社会,それから研究の在り方がどういうものか,科学技術の在り方がどういうものになるのかという議論がこれから進んでいくということでございますので,こことの連携もまた密にしていく必要があるかと思っております。
 それから,5ページ目は少し変わりまして財政関係でございますけれども,経済財政諮問会議ということで,昨今の動きでございますが,改革工程表などが示されておりますけれども,この中では,財政の関係でございますので,運営費交付金や私学助成などが取り上げられておりますが,一方で,教育の質の向上などもKPIの中に挙がってきているところでございます。
 めくっていただきまして,6ページ目が未来投資会議でございまして,未来投資会議に関しましても,当然,産業競争力や官民対話の発展などが議論されておりますが,特に高等教育絡みでは,AI時代に対応した人材育成やリカレント教育,また中途採用拡大,新卒一括採用の見直しなどが言及されているところでございます。
 6ページ目の下の方,まち・ひと・しごと創生会議というものもございまして,ここは地方創生ということでございますけれども,第2期の戦略を作っていくという議論でございます。これは,答申で言っていただいておりますような地域のプラットフォームの作り方,また大学等連携推進法人などの議論も踏まえていただけるように整理していただく必要があるかと思っております。
 それから,7ページ目の下が財政制度等審議会でございます。めくっていただきまして,8ページ目,9ページ目で,これは昨年の10月に出されております検討の方向性でございますが,当然,財務省関連の審議会でございますので,金目の話が中心にはなっておりますけれども,このような形で提言がされているところでございます。
 それから,9ページ目の下が産業構造審議会で,少しこの会議自体は止まっていたようなんですけれども,2年半ぶりに再開ということでございまして,Society5.0時代のオープンイノベーション,スタートアップ施策の方向性について審議されているところでございます。
 めくっていただきまして,このあたりのことも,前期,第9期の委員でございました五神先生が座長ということもありまして,そこは方向性が近い形で議論が進んでいるというところでございます。
 11ページ以降にそれぞれの会議の名簿を付けさせていただいております。恐縮ですが,中央教育審議会委員の先生方には黄色いマーカーをさせていただいておりますが,幾つかの委員会には,先生方も入っていただいておりますので,よい連携をとりながら中央教育審議会の議論も進めていければと思っております。
 説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
【永田分科会長】  
 それでは、本分科会そのものへの御質問,あるいは事務局への御質問も含めて,今,審議事項内容を御説明いただきましたので,その点を中心に高等教育に対して,こういう観点で議論をする必要があるのではないかといった課題を提案する、という形の御意見を求めたいと思います。
 それでは,先生方から御自由に御質問,あるいは御意見を頂こうと思います。いかがでしょうか。
益戸委員,どうぞ。
【益戸委員】  第10期につきましても,皆さまどうぞよろしくお願いいたします。
 第10期大学分科会における主な検討事項ですが,資料4の2ページ目,一番上に白丸が3つあります。2番目と3番目の点ですが,受けた印象を申し上げます。教育と研究を両輪とする高等教育の在り方は,非常にとんがった大学や,どんどん外に出ていくような大学のイメージです。次の地域における高等教育機関と大学間の連携の在り方については,将来構想部会での議論によれば,地域のプラットフォームを作っていくというイメージです。地域においても,教育と研究は非常に重要です。必ずしもとんがった大学だけが教育と研究をフォーカスするものではないと考えます。
 現在の日本を取り巻く,ないしは世界を取り巻く環境を考えますと,地域においていかにビジョンをもつか,先ほどのお話の中で,「未来社会デザイン」という言葉が出ましたが,これは非常に重要だと考えます。そのためにも教育と研究にしっかり責任を持っていただくということも私たちは言及すべきではないでしょうか。ありがちなプラットフォームを形だけ作って,そこに参加している方は名誉職で結果的に成果がでないということではいけません。結果が出るようなプラットフォームを作ることを提案する,ということが私たちの責任ではないかと思いました。
【永田分科会長】  ありがとうございます。そのほか,いかがでしょうか。
 志賀委員,どうぞ。
【志賀委員】  2期連続して中央教育審議会大学分科会の委員をやらせていただいて,ここでの議論が比較的教育ということに比重が多くて,私がいつもここで申し上げている産業界の立場としては,当然人材育成ということで,大学での教育に産業界としては大いに期待するわけですが,同時に,研究ということを大学が担っていること自体が,正に日本の産業競争力の強化に直結しているわけでして,研究の在り方というのはもう少し掘り下げて議論していきたいと思っています。
 今,御説明がありましたように,いろいろな会議体の中で集中と選択を進めて,どういうところに重点的に研究の競争資金を提供していくかということは政府のレベルで議論されているんですが,全体として,研究に関わっている資金が,欧米中国等との競争をやっていく上で相対的に不足していると感じています。
 産業界にいて,私は40年以上,ものづくりの世界にいますけれども,明らかに何かの新しいシーズを求めるときに,国内での大学ではなくて海外の大学に目線が行ってしまっているという実態がある。したがって,少子高齢化の日本がグローバルの中で競争力を維持する上で,研究,技術開発という部分で,しっかりとした資金を提供しながらやっていくという骨格が私は非常に重要だろうと思っているんです。そういう中で,科学技術のいろんな分野をいろんな会議体で決めているのはいいと思うんですけれども,今問題になっている,その分野にだけ競争資金を提供するということで本当に長期的にいいのか。本庶先生がおっしゃっているように,最初の研究段階ではどういう成果が出るのか分からないような基礎研究のところにもっとお金が回らないと,将来的にはノーベル賞を出す研究がなくなってしまうのではないかという危惧があって,そこら辺のバランスが正直よく分からないと思っています。
 企業側の立場からすると,産学連携を高める,つまり産業界にとって非常に有効な技術開発を大学に求めるのは当然なんですけれども,それだけやっていて本当に将来の日本があるのかというところについては,私自身よく分からない。相対的に申し上げると,シーズ,アーリーの手前の,正に基礎研究の部分にもっとしっかりと国の資金が流れていって,そしてシーズ,アーリーが出てきた段階では,競争資金も提供されるんですけれども,当然,民間のリスクマネーがもっと大量に入ってきて,シーズ,アーリーからの死の谷を乗り越えさせて,そこら辺から産学連携で民間企業の資金が入ってくるという,この一連の資金の流れみたいなものが必要なんじゃないか。
 今,オープンイノベーションがうたわれてきて,産業界も非常にオープンイノベーションになってきています。従来のように,企業の中の研究所で基礎研究をやるというのがだんだんなくなってきて,産業界も大学にそういう研究を求めるような形になっていますし,スタートアップのベンチャー企業との連携も深まるようになっているんですが,そういうオープンイノベーションのエコシステムができている中での,あるべき大学の研究はどうなるのか。そのために必要な資金,あるいはリスクマネーがどういう形で大学に入ってくるのかみたいなところをしっかりと議論できれば,私としては非常に有効な議論になるのではないかと,そのように思っています。
 長くなりました。
【永田分科会長】  ありがとうございます。
 それでは,村田副分科会長,どうぞ。
【村田副分科会長】  ありがとうございます。私の方から2点,少し発言をさせていただきたいと思います。
 1点目は,質保証システム部会に関連することでして,いわばこれまでの認証評価,そしてその前の大学設置の基準,つまり事前評価から事後評価へと重点が移って,その制度はそのまま維持されると思うんです。ところが,認証評価の場合は,飽くまでも最低ラインの認証評価でして,正に質保証という場合には,認証評価において,もう少し質のところを重視するような形の制度設計がされていく必要があるのではないか。そうでないと,なかなか認証評価で質保証ということが考えられないのではないかと思ってございます。
 もう一点は,大学院部会のところでございますが,今,志賀委員からもお話がございましたイノベーション等のところではおっしゃるとおりだと思っております。大学院部会等々で研究のところでよく言われるのが,理科系のことはよく言われるんですけれども,人文・社会科学系のところの議論が少し手薄になっている。特に,リカレントを考えた場合には,人文・社会科学系のところで大学院をどう活用していくかという,リカレントの観点からここの議論をしていただければと思ってございます。
 以上でございます。
【永田分科会長】   有信委員,どうぞ。
【有信委員】  今期の審議の中に,さらっと教育と研究の両輪と書いてあるんですけれども,もともと研究と教育を一体にというのは,フンボルトの理念以降,大学のあるべき姿としてこれが信じられてきたわけですが,実はこのためにかなりいろんな混乱があるような気がします。
 第1に,学部の学生まで教員の研究の手助けという形で労働力として使われる。その印象がそのまま大学院でも続いている。これに対する深い反省の下に,大学院のいわゆる17年答申というのが出されたわけですけれども,この状況は余り変わっていない。
 前期までの議論の中で,もう少し今後やるべきだと思うのは,いわば基本的な学理をきちんと体系的に修得させるという観点での学部教育の充実と,それから大学院において新しい知識を作り出す,あるいは高度な専門的な職業に就くための,より高度な知識を享受するという意味での教育と研究とが結び付いた形での新しい形の教育をどうやるべきかということで,いわば学部教育と大学院教育の役割分担を明確にしていく必要があるのではないか。つまり,学部教育が,やはり研究に引きずられているために,産業界から見れば,当然修めているはずの基本的な知識が身に付かないまま,学部を出て会社に就職してということがあるので,以前よりずっと不満が寄せられているという事情もあります。
 それから第2は,グローバル化という観点で,当然,研究も教育もグローバル化していく,人材もグローバルに流動化していくという観点で考えると,1つは教育の質保証のグローバルな視点,国際的同等性をどういう形で担保するか。それから,大学院について言うと,いわば学位の国際的同等性をどう担保していくかという部分での議論も必要になってくるのではないかと思っています。
 以上です。
【永田分科会長】  ありがとうございます。最後に有信委員がおっしゃった御意見に関連して,現在の学位の分野の名称はおよそ八百存在します。有信委員の御指摘は,学位の分野の名称は教えている内容も表わしているので,こうしたシステムが国際的に互換性があるのかという点について,単に名称の数でなく教育内容の問題として考えるべきである、ということだと思います。
 ほかにいかがでしょう。鈴木委員,どうぞ。
【鈴木委員】  ありがとうございます。私は,産業界の観点で少し考えましたときに,2つ目の教育・研究というテーマのところがとても興味があります。その中で,教育だけに走るのではなくて,今世の中の一番キーになっているのは人材育成といいますか,社会に出てからどう仕事と関わり合っていくか,この点がなかなかなじめずに転職をしたり,仕事の中身が分からずにリタイアしたりという方が結構多いと思います。
 その意味では,技術系の特殊なスキルを有する人というのは,卒業する学生の中からすると,それほど数的には多くはないと思いますが,大半を占める一般職に就く方に対して大学卒業までの教育に,人材育成というテーマを是非取り上げていただき,各大学の中で授業に織り込んでもらえるような答申ができればよいと感じました。
 以上です。
【永田分科会長】  ありがとうございます。
 佐藤委員,どうぞ。
【佐藤委員】  御案内を頂戴したときに,1人2分程度でということで,手短に感想みたいなことになって申し訳ないんですが,去年の11月の2040年グランドデザイン答申の議論を踏まえて,何が次に議論されるべきかということを少し考えてみたんです。当然ながら,答申の中では,出生率が極端に継続的に低下していくので,2030年,2040年には学齢期人口の減少にともない,大学進学者が減っていく。そうすると,大学の方も,収容できる人数に対して現在の学生数よりも少なくなるということで,その中で様々な改革,対応が議論されたんだと理解をしているんです。
 そのためにガバナンスの問題であるとか,評価について議論されているんですが,実はそこでは国公私立を問わず,個々の大学の特性がどういうものであるかということについて,余り着目されなかったのかというのが現場サイドから見た感覚であります。大学はそれぞれ異なった環境の中で存在しているということを考えると,ワン・フォー・オール・スタンダードというものがあって,それで大学という名の組織の存在を測ることは避けるべきじゃないかということを感じたわけであります。
 そういう中で,私たちが議論する上で,大学が持っている自己改革だとか自己改善力に,もう少し信頼を置いた議論をした方がいいのかという当事者からの感覚があるんです。私たちは,教育の形とか制度についていろいろ改善をすることを議論しているんですが,教育の内容について,それぞれの大学が特性を発揮できるように,どういう支援ができるかということについての様々な仕組みは議論されているんですが,もう少しきちんと議論した方がいいんじゃないか。つまり,個々の大学が,私たちが普遍的に持っているはずであるというふうに先輩たちから教わってきたオートノミー,自主性について,もう一度,大学というのはそれぞれが自主的に動かなければ改善も何もできないから,メジャーを作ってそれを当てればいいんだという感覚で議論はしない方がいいんじゃないかと考えているところであります。
 あと30秒言ってもいいですか。
 これは,私個人の意見ですし,私自身が感じている。私立大学は,私学法の中にあって学校法人があるわけですが,この学校法人というのは,いわゆる文部科学省が管轄している法人だけじゃなくて,6,500ぐらいあるんじゃないかな,幼稚園法人から何から。ところが,私学法で言う学校法人のガバナンスとかいろんな議論をそこで一くくりでできないから,ちょっと難しい感覚が私立大学の中にいろいろ議論が出てきてしまうんです。
 戦後のことを考えると,余り古いことを言ってもしようがないんだけれども,国立大学が戦後,国立大学設置法の下で整備されてきて,現在,国立大学法人法の中で存在しているということを考えると,私学の場合,財団法人から始まって,1950年に私学法が整備されて,学校法人という存在となって運営されて,70年もたつわけですから,私学についての大学は私立大学法人法を定めてきちんと管理する――管理するという言い方は悪いんですが,そこで方向性を決めていくということも,そういう時期が来ているのかという妄想を持っているということだけは申し上げたいと思います。どこかで考えてもいいのかなと思っています。
 以上です。
【永田分科会長】  ありがとうございます。大学の改革には自主性を重んじることが重要であるが,同時に,ガバナンスのあり方も問われるべきであり、これらは両輪であるとの御意見です。
 髙倉委員,どうぞ。
【髙倉委員】  自動車総連の髙倉でございます。どうぞよろしくお願いいたします。私の方から3点,意見を述べさせていただきたいと思います。
 1点目は,先ほど資料3-4で説明いただきました大学等における修学の支援に関する法律案についてであります。法が成立し,支援が必要な学生に対して高等教育を受ける機会を広げることにつながることを,大変期待したいと思います。一方で,支給を受ける大学に幾つかの要件が課されることになりますので,子供が進学を希望している大学が対象外になる場合もあることから,選択の幅を狭めることにならないような配慮を是非お願い申し上げたい。
 また,対象外となる大学において,学問の自由や大学の自治を確保して,教職員が安心して研究,教育に従事できる環境の確保にも留意する必要があります。文部科学省においては,本年夏に予定されております対象校の周知を,できる限り早期に徹底していただきたい。
 2点目は,リカレント教育についてであります。職場の実態を見てみますと,リカレント教育が進んでいるという実感は残念ながらありません。企業と働く者の双方にメリットがなければ,職場を離れて学び直しをするための費用や時間を,確保ないしは捻出することにならないかと思います。働く者が学び直しによって処遇を改善された事例や,企業がリカレント教育を積極的に導入して事業の継続や発展に寄与した事例など,文部科学省として働く場と学ぶ場をつなぐためにも,企業と働く者の双方にメリットがある具体的な好事例を打ち出していただきたい。
 最後に,学校における働き方改革についてであります。本年1月に中央教育審議会より答申が出され,この4月からは勤務時間の上限に関するガイドラインに基づいて,公立の小中高校の教員については客観的な勤務時間管理が徹底されることになります。大学などの高等教育機関で働く教職員の働き方,これも大変重要なテーマだと思っておりますので,是非この場においても今後論議をしていただきたいと思います。
 以上であります。
【永田分科会長】  ありがとうございます。いわゆる「働き方改革関連法」については,各大学が4月1日から対応できるように準備していると思います。
 亀山委員,どうぞ。
【亀山委員】  今日のニュースで,AI人材25万人計画というのが出されたということで,いよいよ人文学の立場というものが危うくなったというよりも,より強化されなければならない時代が来たなという印象を受けました。これまで10年に一度,例えば2002年の中央教育審議会,ここでは「新しい時代における教養教育の在り方について」という議論がなされ,2010年には日本学術会議の方で,「21世紀の教養と教養教育」というかなり長大な,しかも内容のある答申が出されているんです。新しい時代のモラルということを考える上で,とりわけこういったAIの突出といったことを考えた場合には,やはり教養教育の再定義というものをもう一度しっかりやらないと,日本の人材育成の面において何か根本的なものが失われるのではないかと,若干保守的と思われるかもしれませんが,そのあたりを危惧しております。ということで,この分科会でも,教養教育の再定義といった方向性も少し議論の中に含めていただけると有り難いと思っております。
 以上です。
【永田分科会長】  ありがとうございます。
三島委員,どうぞ。
【三島委員】  今日初めてこの分科会に参加させていただきました三島でございます。
 初めに,第9期での審議内容のサマリーを伺いましたけれども,大変いろんなことに,高等教育のグランドデザインを含めて,教育改革について非常に的確な御指示というか,御意見をまとめられたということに感謝したいと思います。さらに,柴山イニシアチブというのが出てまいりまして,大学での教育の質の保証というところを非常に強く訴えられているところも大変うれしく思うところでございます。
 教育の質の保証で1つ間違ってはいけないのは,恐らく先生方がどういう教え方をすればいいのかということを優先するよりは,学生たちがどういうふうに物を受け取って,しかも自分の頭で消化して,そして自分の身に付けていけるかというところが質の保証だろうと思います。そこはいい方法論というんですか,そういったものを議論したらいいかと思います。そして,それによって,各学生が高校を出て大学に入ってから,学部あるいは大学院までの間にどれだけの伸び代を付けてあげるかということが,恐らく大学の一番の大きな役目だろうと思うので,ほとんどの教員がそういうことを大学の使命だと思うような仕組みをつくっていきたいと思います。
 それから,学部で何をすべきかというのは,先ほど有信委員もおっしゃいましたけれども,やはり基礎のところをしっかりと,しかも幅広くやるというのが学部教育で,大学院に入ると,ある専門のところに入っていくという,そこのところが大事だというのは言うまでもありません。もう一つは,大学にいる期間というのは彼らにとって人生で非常に重要な時間であって,そこにどれだけの人間性というか,能力的に言えば協調性であるとか,あるいは,いろんなことに挑戦する時間が大学にいる間にたくさんありますので,そういったことをさせる,彼らの背中を押してあげるということが物すごく重要なことだろうなと思ってございます。
 私も大学改革を随分やりましたけれども,そのときに思ったことは,初等教育,中等教育と連続していかないといけないということで,今,学生たちには,今までの高等学校でやってきた勉強と全然やり方が違うんだということを一生懸命教えています。それが初等,中等教育の改革が進んでいくと,うまくシームレスになるのかと,その辺のところも頭の中に入れて大学の改革を考えていったらいいのかと思いました。
 以上でございます。
【永田分科会長】  ありがとうございます。ある課題については、高大接続だけでなく大学院までを通じて解決策を考える必要があるかもしれません。
 それでは,安部委員、どうぞ。
【安部委員】  お先にありがとうございます。平成17年の将来答申を産業界とか社会全般のニーズに対応する形で,政策誘導でたくさんの大学改革が行われて,本グランドデザイン答申も2040年の深刻化する人口減少,少子高齢化,あるいはSociety5.0の社会の到来の中で,次の大学の方向性を網羅的に描き出していると参加させていただいて感じておりました。
 その中でも,特に,これまで想定しにくかった新しいニーズに大学や高等教育が対応するときに必要な,その裏打ちとしての高等教育の質の保証の在り方については,今期の質保証システム部会で論議されている設置基準,設置認可からAC,それから認証評価の厳格化等に対しての運用上の課題について具体的な対応をしっかりしていくことが非常に大切なことではないかと思います。大学教育は変わっていくものではありませんが,その基本となる質の保証というものがどういうものかということをしっかり確立していく必要があるのではないかと考えます。
 また,もう一点ですが,私は短期大学という地方に多くある小規模の高等教育機関を運営しておりますので,進学機会の地域間格差というのを非常に問題と思っております。本日お出しいただきました資料3-4で,経済的に厳しい家庭の学生に対する修学支援の拡充,充実については大変有り難いことだと思いますが,これらがどんな効果を生み出したのかということをしっかり検証して,制度の適切な運用の在り方というのを引き続き論議していただければと思います。
 最後に,第9期では,各都道府県別の高等教育の進学率とか,今後の大学の定員充足率の推計値などについて細かく出していただいたんですけれども,これを見るまでもなく,地方ほど高等教育機関の,あるいは地方そのもの自体の現状維持というのが難しくなっているのが明白というのがよく分かりました。特に,少子化と若者の流出の激しい地方は,厳しいのは大学だけではなくて,自治体や地元の産業界でも,人手不足等によって,例えば公共財とか住民サービスとか,そういうものの機能の低下というのを招いている状況なんです。
 その中で,地域は若い人材の確保として養成を,先ほど地域にも研究が必要だというお話もありましたけれども,地域産業の活性化のために,地域に存在する高等教育機関が,それらは
,大体小規模のところが多いんですけれども,連携を強めていくことを目的とする地域連携プラットフォームの構築と,その運用のためのガイドライン,支援というのが,今後ますます必要になってくるのではないかと思いますので,地域の高等教育というのをどのように国として考え,それを担っていく主体をどこと置くのかということを論議していただければと思っております。
 以上です。
【永田分科会長】  ありがとうございます。大変重いお話を3つほどいただきました。地域については,デジタルサイエンスが進んでいく中でも,日本だけが地域を活かせない国になってしまっているので,産業界に頼って産業を興してではなくて,高等教育が本当に地域を活性化できるかという,自分たちが地域活性化の主体になるような方策を考えるべきかと思います。
 また,認証評価については,設置,アフターケア,認証評価とあるわけですけれども,大学が廃校になれば学生さんは母校がなくなります。この重大性に鑑みれば,簡単に設置して十分な教育ができなければ認証評価で不適合とすればよい、というような軽いものではありません。ですから,設置も,認証評価,アフターケアも相当厳格に運用しなければいけないということだと思います。
 渡邉副分科会長,どうぞ。
【渡邉副分科会長】  冒頭,分科会長からお話しがありました,中央教育審議会が何を目指しているのかについて,少しお話しさせていただけたらと思います。事務局からの御説明やA3判の机上参考資料にもありますように,中長期の視点から,「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」や「第3期教育振興基本計画」がとりまとめられております。これらが表しているのは,将来の日本の課題解決を担う教育の視点,あるいは先ほどお話しがあった研究の視点,それから将来を見越して今の課題は何かという視点です。中長期を見据えて課題を解決していこう,改革をしていこうというのが,まさしく中央教育審議会が担う役割であると思います。
 したがいまして,政府機関をはじめとした様々なところで教育問題が議論される中にあって,私たち中央教育審議会の基軸は,中長期ビジョンに沿った改革を進めていくことです。そして,机上資料にある全体的な工程表のような形で,教育振興基本計画やグランドデザイン答申で示された項目を念頭に置き,各部会における具体案や実践段階にあるものを私たちが,中長期的な視点でしっかりと位置付けていくことが一番重要だと思います。
 大学改革は,現実的には進んで前に行っている大学と後れてしまっている大学があるのではないかと思います。本日いらっしゃる大学関係者の方もそうだと思いますが,進んでいるところは,大変な改革を進められていると思います。そうした好事例を将来ビジョンの中に置きますと,ベンチマークになると思いますので,是非皆さまから御提案いただいて,好事例研究型で議論を進めていただけたら,改革が前に進むのではないでしょうか。
 それから最後に,せっかくまとめたグランドデザイン答申も,第3期教育振興基本計画も,残念ながら教育関係者には意外と知られていないのではないでしょうか。ましてや,国民にはあまり伝わっていないように感じます。したがって,これからの検討の中でも,常に中長期的な内容に触れ,こうしたビジョンやグランドデザインが周知されるように,世の中にもう一度示しながら,進めていくことが必要だと思います。
 冒頭,分科会長がお話しされた中長期的なものを我々が担うというお話から感じたことをお話しさせていただきました。以上です。
【永田分科会長】  ありがとうございます。根本原理を忘れずに議論すべきであるということですが,その根本原理を現実に実行する場面になると,毎年度の概算要求のようになりがちです。そうならないように,根本原理に立ち返って考えるという視点を忘れてはいけないということだと思います。
 河田委員,どうぞ。
【河田委員】  先ほど志賀委員から,研究の在り方,教育にはお金が必要なんだ,資金が不足しているじゃないかという御指摘があり,今,渡邉副分科会長からは,中教審の担う役割や,本分科会が中長期的な内容を世の中に提示していく必要性についてご意見がございました。 今回頂いた資料3-1の4ページの「今期に継続して審議する事項」の5つの中にどう入れたらいいのかは分からないんですけれども,私も私学事業団を退任した後,大学のエンダウメントの構築を支援する活動に携わっています。日本の大学や短期大学で必要なのは寄附金をいかに集めて,それをうまく利用し,資産運用していくか,ということです。
 アメリカには,コモンファンドといって,政府から認められた唯一の,無税で資産運用ができる機構があります。昨年5月と6月に私立大学の理事長や学長,国立大学の学長や担当理事の方々と,アメリカの各大学を訪問しました。スタンフォード大学やカリフォルニア大学バークレー校,南カリフォルニア大学やカリフォルニア工科大学など,いろいろ大学を回ってみたのですが,その際に,日本で何が一番不足しているかというと,日本人はすぐ寄附文化がないとか,アメリカの大学とは規模が違うと言うけれども,バークレー校でも1970年に寄附金募集を始めたときは,わずか100万ドルで始めたが,それが現在,4.6ビリオンになっている。日本は,そういう努力もしないでアメリカの大学とは規模が違うと言うけれども,そうした寄付金募集や寄付文化醸成の努力が不足しているのではないかと指摘されました。 私学事業団のホームページを見ていただきますと,寄附金のポータルサイトというのがあって,47の都道府県の各大学,幼稚園から始まって,いわゆる学校法人ですね,各法人がどういう寄附金募集をしているか,全部一目瞭然になるように作っているのですが,まだそれに参加していない私立大学校が非常にたくさんある。関西や東北,九州の私立大学はほとんど掲載されておられない,努力が足らないと思うんです。国立大学の場合も,指定国立大学なら2年前の4月に国立大学法人法が変わって,かなりの大学はうまくすれば資産運用ができるけれども,しかし,指定国立大学6つしか駄目だとか,かなり条件が厳しい。
 そういう寄附金募集の仕組み,あるいはどう活用していくのか,そこから利益を上げない限り,今,文部科学省の御努力で何とか私学助成金,いわゆる経常費補助金と国立大学に対する運営費交付金は横並びですが,国立大学の場合は運営費交付金が非常に減ってきて,本当にこのままではノーベル賞が15年後には取れなくなるのではないかと危惧しております。寄附金募集の仕組み,それをどう進めていくのか,そうするためには私学法なりをどう変えればいいのか,そういうことも考えていただければ,10年後,20年後も日本の大学が生き残ることできるのではないかと考えております。
【永田分科会長】  河田委員の御意見は,大変重要な観点です。アメリカの主要な大学では寄附金の運用益だけで東京大学の運営費交付金をはるかに超えているということですが,もう一つ重要なことは,多額の寄附金を集めている州立大学でも運営費の35から40%くらいは公的資金が入っているという事実です。高等教育が持っているミッションを考えたときに,寄附金があれば公的資金は減らしてもいいとはならないのだ、ということは広く社会や国民に理解を頂かなきゃいけないので,どこに入れるかはまた後ほど考えるにしても,実は大変重要なポイントだと思います。
 そのほか,よろしいでしょうか。
清水委員,どうぞ。
【清水委員】  今期から参加させていただきます清水です。
 高等教育研究者という立場からお話ししたいんですが,戦後,高等教育は70年たちまして,この間の政策は,私は間違っていなかったと思っております。確かに欧米のいろんな制度やシステムが限りなく入ってきて,多くを学んだことも事実だと思いますが,日本的なものもきちっと残しながら今日まで来ていると思っております。
 何が日本的かといいますと,日本が誇れる高等教育の輸出産業として幾つかあるのですが,まず第一は,学校体育を踏まえた大学体育。2つ目が,とことん面倒見るゼミ。3つ目が最大のアクティブラーニングである卒業論文,卒業研究。4つ目が,世界に類のない高等専門学校,つまり中等教育と高等教育という両方持っている学校は世界にはない。これが4つ目。最後に,これはもっと誇っていいと思いますが,世界一の卒業率です,9割を超える世界一の卒業率。スウェーデンとかイタリアは50%を切っています。これは,私は日本が世界に輸出できる最大の産業だと思っております。こういう日本の高等教育のよさをもう少し深掘りして,国民にアピールする,世界にアピールすることが必要であるというのが1点目。
 そのために,今後の制度改革の視点として,人材育成が中心ですが,1万時間の法則という,これは一人前とか一流の人間になるには,1万時間の学習が必要であるという話です。日本の制度を見ても,小中高の学校教育,12年間できちっと1万時間超えているのです。大学と修士と博士,この9年間で1万時間超えています。ですから,プロフェッショナルとか,あるいはスペシャリストを養成するには,ちゃんと1万時間をクリアしていなければならない。医学も6年制ですが,これは8,500時間で1万には足りない,研修医制度をくっつけている。弁護士という専門職も,今度3プラス2という改革もありますが,司法修習生という研修の制度を備えています。先ほどの高等専門学校も,高等学校その後の2年と,大学に編入して,更に工学系で修士まで行くと,これは1万時間超えるんです。ですから,高等専門学校の卒業生で社会に出た人は,評価が高いし,優秀な人が多いと私は思っています。
 大学は,4年制は5,500時間しかない。ですから,大学4年間で一人前の人間を輩出するというのは不可能なのです。ここに,例えば企業とか社会に出て3年,4年の,この期間を加えると1万時間を超える。ですから,今は高大接続の時代,それも大事ですが,大学と社会との接続も大事である。つまり,そこに4プラス3とか,4プラスアルファのシステムを作らないと,一人前の人間は作れないという話です。
 あとは,先ほど接続の話が出ましたが,中高大,これを合わせると1万時間を超えるのです。ですから,高大接続ではなくて,中等学校と大学との接続,中高大接続を考える。今後,人材養成の上では,こうした観点を頭に入れながら制度設計をした方が私はいいと思っております。
 以上です。
【永田分科会長】  大変興味深い御意見ですので、改めてエビデンスを示して説明いただけると有難いと思います。
 加登田委員,どうぞ。
【加登田委員】  恐れ入ります。初めて参加させていただきます。
 先ほどの2ページに出ております第10期の主な検討事項について,それぞれ重い課題なので,これから慎重に勉強させていただきつつ頑張りたいと思いますが,特に3つ目の地域における高等教育機関と大学間の連携の在り方の課題でございます。私は,山口県立大学という公立大学所属でございますが,「地域」ということと,地方創生における「地方」という言葉がいろいろな論議のところで,地域か地方かということで,様々な次元の論議が進んでいると思います。地域における高等教育機関と大学間の連携とありますと,それぞれの各地域における連携の在り方というところに問題性が若干小さく囲われているような気がいたしますが,特に地方創生で念頭となっております,中央との,地方格差の問題等を考えますと,地方行政と高等教育と全国の教育行政との関連の検討の視点も,是非織り込んでいただけないかと思います。
 今回の改正の中で,高等教育機関のアクセスの確保ということで,低所得者等の,親の経済的条件ではないところでの高等教育機関へのアクセスが少しずつ進歩しているということは,大変喜ばしいことだと思いますけれども,同時に,地方の子供たちが高等教育にアクセスする機会がそれほど均等化されていないということは,更に大きな問題だと思いますので,是非,地域と地方ということを含めて御検討いただきたいということ。
 それから,教育と研究が両輪であるということは,我々高等教育の使命でございますが,地方におりますと,更に文化の拠点でもありますので,高等教育機関が地域社会,地方社会に果たす役割ということについても,是非御検討いただければ有り難いと思います。よろしくお願いいたします。
【永田分科会長】  ありがとうございます。
伹野委員,どうぞ。
【伹野委員】  高等専門学校機構の伹野でございます。前期から本委員会の議論に参加させていただいております。
 高等教育のグランドデザインの答申には、大いに賛同するものでございます。特に,グランドデザインでは学修者本位の教育への転換ということが打ち出されました。何を学び,何を身に付けたかを,教える側(がわ)ではなく,学ぶ側(がわ)が実感する教育体制に転換していこうということです。中央教育審議会の議論が高等教育全体の方向を示したことは非常に重要なことと思っています。今後具体的な議論が始まると思いますが,期待しているところでございます。
 また,学修者、学生の立場からすると,自ら学んだことがどのように自分自身で実感できるかということが必要です。そのため学生が学修成果を可視化すた情報から確認することとなります。それも大きな検討の柱です。
 学修者主体の教育を考えるに,主体者が学生だからといって学生が自ら教育できるわけではありません。どんな制度を作っても,学生を教育する現場は,やはり教員の役割です。教員の個々の教育方法や研究を中心とした教育からの脱却ということをグランドデザインでうたっています。教育の質保証は,やはり教員の質保証といいますか,教員の役割が重要になります。従来の教員の個々の教育手法から学修者本位の教育へ転換できるシステムの議論に期待しています。教員の評価等にも大きく影響するものと思います。
 私は国立高等専門学校機構に所属していますが,我が国の高等専門学校には国立だけではなく、私立や公立もあります。現在、全国高専連合会会長職も担っていますが、高等専門学校の教育の質保証というのは,国公私立を超えて一定のレベルを保っているという実感があります。設置形態を越えた教育の質保証というのも,何かの形で議論できればと思っています。
 以上です。
【永田分科会長】  ありがとうございます。
小林委員,どうぞ。
【小林委員】  ありがとうございます。今の伹野委員の御発言にありましたように,前回の答申審議のときには,学生の視点からの改革ということがかなり挙げられていたと思うんですけれども,今日は余りそれが出てこなかったので,そのことを少し述べたいと思います。
 具体的にどうするかということまでは,実は余り議論していなくて,学生中心にして見ていく,そのための可視化が必要だという点までで止まっているわけです。そもそも何のためにそういうことになったのかということを思い起こしてみますと,未来が不確実で将来が予測できない,そういうときにどういう学生を育てるかと,そういう視点から議論が進行したと思います。それに対して,学生自身が柔軟性を持っていなければ対応できないだろうということになったんですが,そのためには,高等教育機関そのものが柔軟性と多様性を持っていなければいけない,そういう議論だったと思います。
 ただ,そのときに,じゃあ,多様であればいいのかというと,少しそれは考え物であって,学部名称あるいは学位名称に見られるように,多様であればいいというわけではないということも分かっているわけでありまして,これまでの審議の中でも,特にワーキンググループとかになりますと,専門家が多いということもありますけれども,非常に細かな,マイクロマネジメント的な議論にどうしてもなってしまう。非常に外形的,あるいはKPIのような,そういう議論になってしまいますので,やはり必要なのは,分科会としてはどのような哲学でそれをもう一回見直すかという議論が必要ではないかと思います。
 そのためには,これまでの政策がどうなっていたか,それを検証していくということも必要でしょうし,先ほど副分科会長が言われましたように,短期的な視点と長期的な視点というのを分ける必要があるわけでありまして,どちらかというと,部会の方は短期的な問題を議論しているわけですから,やはり中長期的な視点から,大所高所からの議論をするというのが,この分科会の役割ではないかと思います。
 もう既に教学マネジメント特別委員会の方は議論が始まっていまして,私は主査代理ですので,是非ここで,分科会としてマイクロマネジメントに陥らないような哲学を示していただきたいと思います。
 1つだけ申し上げますと,規制と規制緩和というのは両方とも必要だと思っております。何を規制するべきか,何を規制すべきでないかということは必要だと思いますし,それから,入り口のコントロール,大学設置基準と質の保証,認証評価等のシステム,両方が必要だと思っていますが,どうもそれがうまく機能していないのではないかということで,これはまた別の質保証システム部会というのが作られて,そこで議論されることになっているとお聞きしていますけれども,そこがまたマイクロマネジメント的なことになるのではということが非常に気になります。そのあたりを是非,前回の反省も含めて,どういう審議をしていったらいいかということも議論していただければと思います。よろしくお願いします。
【永田分科会長】  ありがとうございます。具体例とかマイクロマネジメントといっても,その都度大局的な視点に立ち返って考える、という意識さえ委員の皆様で共有できればよいと思います。
 そのほか,いかがでしょうか。
曄道委員、どうぞ。
【曄道委員】  上智大学の曄道でございます。今期から参加させていただきます。
 先ほど永田分科会長もおっしゃったように,後半になりましたので,多くの委員の方から有益な御意見が出ているところでございますけれども,これから社会変革の時代に若い人たちを送り出す立場としては,社会の中で学び続ける力をどうやって備えさせるかということが重要だろうと思っています。これまで何となく大学の学部教育も,分野によっては博士課程までの9年間,研究者養成の9年間のうちの4年間,9分の4のようなイメージの設計になっているのではという危惧もございます。
 一方で,卒業してから40年間,学び続けていく,個人も,恐らく属する組織も学び続ける時代にあって,40年から50年学び続けるうちの学部教育はわずか4年間。この4年間で何を彼らに具備してもらえばいいかといった議論がもっと深いところまで必要かと。これは,特に先ほどから御意見が出ている産業界との対話も重要であろうと思いますし,対話というか,もっとかんかんがくがくの議論が必要かとも思います。
 そういった人材育成のことも含めて,各大学が特性や個性を発揮するということにおいて,先ほどの質保証のシステム,システマチックにこれが行われるということは非常に重要なことだと思いますが,一方で,その中で,どういうところで各大学が個性を発揮しているのかといったことも評価の中に含められるような仕組みが必要ではないかと思います。
 入学する学生も非常に多様化しております。一方で,進路を決めて出ていく学生たちの,その進路自体も非常に多様化しておりますので,その中で非常に柔軟性のある教育体系を大学内に整えるということに対する支援的な政策が出てくればと強く感じております。
 以上でございます。
【永田分科会長】  ありがとうございました。そのほか,よろしいですか。もし追加の御意見があれば,事務局に送っていただければと思います。
 それでは,またこのように御意見を頂く機会を設けさせていただき,少しずつ焦点を絞りながら,挙げられている検討事項,あるいは今頂いた御意見を基に議論を進めていきたいと考えております。
 検討を進めるにあたり、既に事務局からお示ししました資料4の第10期大学分科会における部会等の設置について(案)の中にあります各種部会について,本分科会の下に設置をお認めいただきたいと思いますが,いかがでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【永田分科会長】  ありがとうございます。それでは,この部会を設置して具体的な議論を進め,また,新たに重要な観点が出てきた場合には,それに関する部会等を設置して議論を進めさせていただきたいと考えております。
 それでは,本日の3点目ですが,認証評価機関の認証についてです。専門職大学院の認証評価については,大学基準協会から新たにグローバル法務系分野に関して認証を受けたいとの申請があり,これは中央教育審議会運営規則第3条第2項で大学分科会の審議事項になります。
 具体的な審査については,先ほど設置を御了承いただいた「認証評価機関の認証に関する審査委員会」において審議をいだだき,審査委員会の審査結果に基づき本分科会で議論を行うということになります。
 それでは,資料5に基づき簡潔に事務局から御説明願います。
【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。資料5を御覧いただければと思います。今,分科会長から御説明いただいたとおりでございまして,中をめくっていただきますと,大学基準協会から認証評価機関の申請書というものが出てきておりまして,グローバル法務系の専門職大学院の認証評価を行うということで,その機関として認証していただきたいということでございます。
 参考で付けておりますけれども,その次のページでございますが,大学基準協会の概要と,今回申請のあった評価事業の概要が,最後のところでございますけれども,専門職大学院グローバル法務系分野,グローバル法務修士(専門職)などということで,適合,不適合の評価結果をしていくということを,判定方法については以下のようなことで書いてあります。あと,評価手数料等も以下のとおりになっておりまして,これについて先ほどの審査委員会の方に付託させていただきまして,ここで審査の上,結論が出ましたら,また大学分科会に戻させていただくということでございます。よろしくお願いいたします。
【永田分科会長】  御質問,いかがでしょうか。新たな専門職大学の分野なので,その分野の認証評価を担当する団体の認証をしないといけないということです。よろしいでしょうか。――ありがとうございました。
 それでは,全体を通じまして,何か付け加えておきたい点等あれば御質問をお受けいたしますが,いかがでしょう。よろしいですか。
 それでは,本日の議題はここまでですが,今後の大学分科会の日程等について,事務局から御説明いたします。
【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。本日の御議論,まことにありがとうございました。
 次回開催については,調整の上,追って御連絡させていただきます。
 本日の資料については,郵送を希望される先生方は,机上に置いております附箋に郵送希望と書いていただけましたら,勤務先の方に数日にて郵送させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
【永田分科会長】  それでは,本日の分科会,これでお開きとさせていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

 

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