大学分科会(第146回) 議事録

1.日時

平成31年1月22日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所

TKP赤坂駅カンファレンスセンター ホール13A

東京都港区赤坂2丁目14-27 国際新赤坂ビル 東館 13F

3.議題

  1. 「2040年を見据えた大学院教育のあるべき姿~社会を先導する人材の育成に向けた体質改善の方策~(審議まとめ(案))」について
  2. 「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」を踏まえた大学設置基準等の改正について 
  3. 第9期大学分科会の審議の状況について
  4. 大学の国際化に対応するための大学入学資格関係告示の一部改正について
  5. 国立大学の一法人複数大学制度等について
  6. 2019年度 高等教育関係予算(案)について

4.出席者

委員

(分科会長)永田恭介分科会長
(副分科会長)北山禎介副分科会長
(委員)有信睦弘,亀山郁夫,志賀俊之,日比谷潤子,室伏きみ子の各委員
(臨時委員)麻生隆史,安部恵美子,大島まり,金子元久,河田悌一,黒田壽二,佐藤東洋士,鈴木雅子,伹野茂,千葉茂,野田三七生,古沢由紀子,吉岡知哉の各委員

文部科学省

(事務局)藤原事務次官,山脇文部科学審議官,義本高等教育局長,山﨑文教施設企画・防災部技術参事官,玉上大臣官房審議官(高等教育局担当),森大臣官房審議官(高等教育局担当),岩本文部科学戦略官,蝦名高等教育企画課長,三浦大学振興課長,淵上国立大学法人支援課長,石橋高等教育政策室長 他

5.議事録

【永田分科会長】  年が明けてしばらく経ちましたが,改めて明けましておめでとうございます。時間になりました。第146回の大学分科会を始めさせていただきます。年頭でお忙しいところ,お集まりいただきまして,まことにありがとうございます。
 最初に,カメラの撮影についてですが,議題1に入るまでとしていただくようにお願いを申し上げます。
 前回は将来構想部会との合同での開催でしたが,2040年に向けた高等教育のグランドデザインの答申についてまとめを行いました。それに基づいて,本日は二つの審議事項と報告事項が四つございます。
 審議事項の最初は,2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)の中でも将来の大学院の在り方について述べましたが,別途,大学分科会の下に置かれた大学院部会における「2040年を見据えた大学院教育のあるべき姿」の審議の取りまとめができましたので御報告をいただき,御意見をいただければと思います。
 二つ目は,これも答申に沿って述べていた大学設置基準の改正について,これから法制度も含めて検討していこうということで,基本的な方向性についての説明があり,その方向で良いか議論いただきたいと思います。
 報告事項の最初は,第9期の大学分科会の実績を一通り振り返り,今後に生かしたいと考えています。
 次に,国際化が進んでいますが,それに対応するために大学入学資格関係告示の一部改正を行ったことに関する御報告です。
 それから,これも答申に関わりがありますけれども,国立大学法人の一法人複数大学制度に関わる議論の現状について御説明をいただき,最後に,来年度の高等教育関係予算の案について御説明をいただく,このような順番になっております。
 最初に,事務局に異動がございましたので,御紹介をお願いいたします。
【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。本日付でございますが,高等教育局長が交代しております。義本から伯井に代わりました。一言,お願いいたします。
【伯井高等教育局長】  本日付で高等教育局長を拝命いたします伯井と申します。委員の先生方,どうかよろしくお願いいたします。
【永田分科会長】  それでは,議事を進めさせていただきますが,資料等に落丁等ありましたら,事務局に適宜お申し出ください。
 それでは,最初の審議事項ですが,「2040年を見据えた大学院教育のあるべき姿」について,大学院部会の審議がまとまったということで,この案について有信大学院部会長及び事務局から御説明をお願いいたします。
【有信委員】  第9期の中央教育審議会大学分科会大学院部会では,平成29年3月の「我が国の高等教育に関する将来構想について」という諮問を受けて,昨年11月に答申が出されました「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」,この審議を踏まえつつ,大学院における重要事項について審議を進めてきています。審議の内容の経過段階については,昨年9月に中央教育審議会大学分科会将来構想部会に報告をし,「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」の中にも一部取り入れられているところでありますけれども,その後も大学院部会として審議を重ね,審議まとめとして取りまとめを行いましたので,内容を説明させていただければと思います。
 資料1-2の概要版をベースに説明をさせていただきたいと思いますので,1-2を御覧ください。よく言われていますように,Society5.0の実現等々,2040年頃には,社会の構造が大きく変化をするということが想定されている中で,ある意味,知識集約型社会と言われていますけれども,その中で知の生産や価値の創造を先導する人材である,いわゆる知のプロフェッショナルが,これは諸外国の水準を超えて日本の中で活躍しなければいけない。にもかかわらず,今のところ,数の上でも水準以下ではないかというのが問題意識の大きな柱になります。大学院は,その知のプロフェッショナルを育成する中心となることが期待をされているという認識で議論を進めています。知のプロフェッショナルに何が要求されるかという意味では,「2040 年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」の中で示されています学部段階で身に付けるべき能力であります論理性,コミュニケーション能力等の普遍的なスキルやリテラシーについて,これらを高い水準で身に付けているということが第一であります。
 第二に,自ら課題を発見し,仮説を構築・検証する力などの大学院の中で身に付くべき社会を引っ張るベースになるような力です。それから,様々な場面で通用する,いわゆるトランスファラブルスキル,こういうものを身に付けていくということ。それから,複数のいわゆる専門領域にわたる高度な専門的な知識を身に付けている。こういうことが要求されるのではないかということで,これと併せて共通のベースとして,いわゆるSTEAMと言われていますサイエンス・テクノロジー・エンジニアリング,これはアートが入ってSTEAMになったわけですけれども,アート,マセマティクス。それから,昨今,特に言われておりますデータサイエンス等の基礎知識を踏まえた幅広い知識を身に付けているということも要求されるということだろうと思います。
 これまでも,例えば博士課程リーディングプログラム等によって大学院教育の実質化,あるいは学生に対する経済的な支援,国際経験の充実,産業界との連携などが進展をしてきています。ただ,大学院全体を見ると,我が国の人口当たりの大学院における学位取得者数は,諸外国といいますか,いわゆる先進国と比べて低いという状況であるにもかかわらず,入学定員が未達であるという状況も常態化しているということでありますし,各大学が強みや特色を踏まえた人材養成ができていると必ずしも言い難(にく)い状況であると。大学院のカリキュラムと企業等社会の期待の間にギャップがあるという指摘も受けているということなどなど,依然として大学院教育には多くの課題が存在しています。こういう課題が学生のキャリアパスに対する不安を招く一因ともなっているということで,このために学生が大学院への進学を躊躇(ちゅうちょ)しているのではないか,こういう問題意識も持って議論を進めてきました。2040年の社会の需要に応えていくためにも,まずは早急に社会のニーズへのより一層の対応をはじめとした大学院教育の体質改善とも言えるような取組が必要と考えています。
 これに対し大学院部会として,三つの方針(学位授与の方針,教育課程編成の方針,入学者受入れの方針)を出発点とした学位プログラムとしての大学院教育の確立,各課程に共通して求められる教育の在り方,それから,課程ごとに個別に求められる教育の在り方等々の観点から,審議の内容を整理しました。併せて学位授与の在り方,優秀な人材の進学の促進,博士後期課程修了者の進路の確保,キャリアパスの多様化,リカレント教育の充実,人文・社会科学系大学院の課題とその在り方についても,テーマごとに審議を行いましたので,その内容についても取りまとめております。
 詳しい内容については,事務局から説明をお願いします。
 では,よろしく。
【三浦大学振興課長】  失礼いたします。事務局から詳しい説明をさせていただきたいと思います。
 今,資料1-2というのを先生方,お手元で御覧いただいているかと思いますが,資料1-1,本体の部分に沿って御説明をさせていただきます。1枚めくっていただきますと目次がありまして,1として2040年頃に直面する社会の変化と「知のプロフェッショナル」,2として,「大学院教育が2040年の需要に応えるために」というのがございまして,それが1-2の上の方の青い線から赤い線の方の部分に相当します。3として,「大学院教育の改善方策」というのがございます。1から8というのがございますけれども,それが資料1-2の1から8というのに相当しておりまして,4として,「今後に向けて」という作りになってございます。
 ちょっと時間の関係で駆け足になりますが,資料1-1の方で御説明をさせていただければと思っております。まず,4ページからでございます。1で,今,有信大学院部会長にも御説明をいただきました大学院,4ページの黄色のところを中心に御説明させていただきますが,今後の社会を引っ張る高度な知のプロフェッショナルの養成が求められているということでございます。そのために大学院教育の改善をつなげていくということでございますけれども,5ページ,まず「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」で掲げられた能力に加えまして,下の方,黄色に塗ってございますけれども,最先端の知にアクセスする能力等々について身に付ける必要があるということ,それが6ページに参りますけれども,様々な場面で通用するようなトランスファラブルな力を備えていることが求められるというような指摘,それから,高度な専門知識というのも当然身に付けることが必要,特定の狭い領域だけにとどまらないようにした上で,高度な専門知識も身に付ける。
 それから,今,御説明ありましたSTEAMの話,データサイエンスの話,それから,6ページの一番下のところでは,国際的な欧米の諸外国の動向についても考慮する必要がある。各課程で共通に育成するべき能力を課程ごとに明確にする努力を続けていく際には,欧米のこういった取組についても参考にすべきであるという御指摘を頂いています。
 7ページから,2番,2040年の需要に応えるためにということでございます。最初の黄色の部分でございます。諸外国と比べても遜色ない水準で「知のプロフェッショナル」が活躍していかなければ,国際競争力に大きな問題が生じるという意味で,先ほども少し御紹介がありました学位取得者の海外との比較,全分野で見ても,修士で3分の1,博士で2分の1にとどまっている。そういう状況にもかかわらず,入学定員を充足していない。それが常態化している専攻が見受けられる。なぜそういう状況になっているかということを改めて真剣に検討して,早急に改善する必要があるとしております。7ページの下の方,大学院教育の成果と課題というところでございます。7ページから8ページにかけて,博士課程リーディングプログラムにおける成果を中心に記載をしてございますけれども,依然として大学院のカリキュラムと社会や企業の期待との間にギャップが生じているという御指摘も多いということでございます。
 9ページの下の方,「2040年の社会の需要に応えていくために」といたしまして,「知のプロフェッショナル」の重要性が高まることは明らかであると。その需要に応えていくためにも,早急に潜在的なものを含め,社会のニーズへのより一層の対応をはじめとした大学院教育の体質の改善とも言えるような取組を力強く進めていく必要があるということで,これがこの審議のまとめのサブタイトルにもございますけれども,体質改善の方策ということでございます。そのニーズに積極的に対応していって,それが大学院生の進路につながっていく,また,それが改革につながっていくというような好循環を進めていきましょうということでございます。
 10ページの一番後のところには,リカレント教育という部分もございますけれども,その中心は大学院ということで,様々な取組が必要ということとしております。
 11ページからは,3番,大学院教育の個別の改善方策についてでございます。まず1といたしましては,三つの方針についてでございます。学位プログラムというのを進めていくということは当然でございますけれども,12ページに参りまして,三つの方針の策定。学部段階では,入学者受入れの方針,教育課程編成の方針,学位授与の方針,三つのポリシーについては義務化されておりますけれども,大学院については入学者受入れの方針のみ,法令上は義務化をされているということでございます。12ページから13ページにかけてでございます。ここは,大学院についてもきちんと法令上の位置付けを明確にした上で,現在でも多くの大学院で三つのポリシーを作っておりますけれども,その義務化を契機に改めて見直していただいて,自ら学位の質を担保する内部質保証が機能する教学マネジメントの確立につなげていただきたいということとしております。
 また,その次,「教育研究組織の在り方や定員設定に関する見直し」ということでございます。各大学は研究科・専攻の教育研究組織の在り方に関して,柔軟に見直しを行っていただきたいということでございます。その際には,後述する研究科等の枠を超えた学位プログラムなども積極的に活用していただきたいということ。
 それから,真ん中よりちょっと下ぐらいに,「特に,各大学は,」とございますけれども,各研究科・専攻で養成する人材の需要について,できる限り具体的に把握をする。また,各研究科・専攻における修了生について,その状況を把握,追跡するということが求められているということで,それをまた定員設定に反映させていくというような取組が必要であろうということでございます。
 それから,13ページの一番下から14ページにかけて,なお書きでございます。そういった適切な運営というのが確認できるというようなことがどんどん進んでいけば,「国は,例えば,」というところ,研究科において専攻単位の定員の設定の自由化など,大学院における定員設定の柔軟化を制度的に検討するということについても御提言を頂いております。
 15ページから,2でございます。「各課程に共通して求められる教育等の在り方」ということで,まずは「コースワークの充実」,それから,「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」でも記述をいただきました,組織の枠を超えた学位プログラムということを積極的に活用していただきたいということ,それから,15ページの一番下の方でございますけれども,ダブルメジャーやメジャー(主専攻)・マイナー(副専攻)を積極的に導入をしていただく,あるいは16ページ下の方でございますけれども,海外大学とのダブル・ディグリー,ジョイント・ディグリー等についても,積極的な活用が望まれるということでございます。
 18ページからは「課程ごとに求められる教育の在り方」ということで整理をしております。三つの方針については先ほど申し上げたとおりでございますけれども,課程ごとに一定の整理をさせていただいたということが18ページの真ん中辺に書いてございます。ただ,これはその各課程を画一的に峻別して固定化することを求めているものではなくて,これに加えて各大学が自らの強み,特色を発揮して付加価値を付けることが期待されるという,この前提の下に19ページ以降で,それぞれの課程について記載をしてございます。
 19ページからは,修士課程ということでございます。修士課程は高度専門職業人等の養成を目的とするということでございます。
19ページの2段落目でございますけれども,修士課程において行われる修士論文の作成は,我が国における大変特徴的な取組であり,課題解決型の優れた取組と評価されているということもございますので,コースワークと研究指導の両者を適切に組み合わせて実施するということが必要であろうということでございます。
 また,学士課程から修士課程に直接進学をする者については,学部段階の教育との有機的な接続が重要ということで,具体的に例示もさせていただいているところでございます。
 また,19ページ下の方の括弧でございます。「高度専門職業人の養成に当たり重視されるべき事項」ということでございますけれども,20ページに参りまして,修士課程においては,専門職大学院の課程において行うことは制度上,予定されていないような教育を展開する。つまり,高度職業人養成といっても,専門職大学院の課程とは明確に課程の目的が違うわけでございますので,それを意識した教育を展開することが必要であるという提言を頂いているものでございます。
 また,真ん中よりちょっと下ぐらいの黄色部分でございますけれども,教育課程を編成するに当たっては,大学院設置基準で終了に必要な単位数として定めるものは,これは30単位でございますけれども,最低限であるということを踏まえて,場合によってはこれを超えて必要な授業科目を実施することというのも考えられるのではないかということも提言されているところでございます。また,その下,実務家教員についても法律上の位置付けを検討する必要があるのではないかということでございます。
 22ページからは博士課程でございます。博士課程につきましては,一貫制と区分制というのがございます。区分制の場合には,その博士前期課程について,後期課程に進学をするということを前提としているものと,実質的に修士課程的な扱いになっているものというのがございますので,それぞれに応じた適切な教育課程を設定するということが重要だというのが総論の部分でございます。
 23ページには,「社会の求める教育とのミスマッチの解消」というのがございまして,最初に,博士課程のカリキュラムや博士課程修了者の意識と企業の認識との間にずれが生じているということでございます。その下,「このため,各大学には,人材養成目的に応じて,」のところですが,先ほどのリーディングプログラムの成果などを参考にしていただいた上で,23ページの一番下,「博士課程修了者が企業の求める俯瞰的な能力を身に付けられる取組」としての例示,あるいはその次のページ,「企業と博士課程修了者の相互理解が進む取組」の例示などを参考にしていただく,また,実践的な内容のインターンシップをやっていただくというような取組も有用であろうということでございます。
 また,研究者・大学教員の養成に当たり重視される事項ということであっても,やはりコースワークというのが重要だろうということと,博士課程の学生全体を対象とした教育能力を身に付けるための授業科目開設等の取組(プレFD)などの積極的な導入,また,25ページでございますけれども,海外大学とのダブル・ディグリー,ジョイント・ディグリー,あるいは産業界との共同研究等の有用性についても御指摘を頂いております。また博士課程の中での高度専門職業人の養成に当たり重視されるべき事項ということで,やはり修士課程を超える水準の高度専門職業人養成目的に設定した博士課程と,研究者・大学教員を養成する博士課程との重点の置き方が異なる教育の在り方ということをきちんと課程の目的に応じて設定する必要があるという御指摘も頂いているところでございます。
 また,26ページ,最後のところでございますけれども,博士後期課程レベルにおける高度専門職業人の養成については,専門職大学院制度における博士後期課程レベルの課程について,どう考えるかということについて引き続き検討が必要であるという御提言を頂いております。
 27ページからは,「専門職大学院における課程」についてでございます。真ん中よりちょっと下ぐらいでございますけれども,今の26ページの話と関連をいたしますけど,現時点で専門職大学院修了者の大学院への進学は1%にとどまっていることを踏まえて,当面は博士後期課程への進学を希望する学生に対しては,例えばということで,専門職大学院の趣旨を踏まえた上で博士課程との連携を図ったり,教育課程の内容の工夫を図ることで研究に関する能力を身に付けるということが考えられるということでございます。
 また,教員組織につきましては,28ページでございますけれども,実務家教員を採用する場合についてはFD等が必要である。あるいはクロスアポイントメント制度などを活用することが必要である。また,実務家教員についても博士の学位取得を進めていくことが求められるというようなことがございます。
 また,29ページでございますけれども,認証評価につきましては,例示としてビジネス分野を挙げてございますけれども,海外の認証評価団体の評価についても活用できるように検討を進めていくべきではないかというようなことですとか,社会に対する情報公開の促進ということについても御指摘を頂いております。
 31ページからは,「学位授与の在り方」についてでございます。学位授与の標準修業年限内の授与の経緯というのは真ん中辺,黄色になってございませんけれども,若干は伸びているにしても,引き続き研究指導体制等の強化,学位審査の透明性・公平性の確保というのが重要であるということでございます。具体的には32ページでございますけれども,学位授与の主体として,指導教員だけに過度に依存をしないようにする。あるいは研究指導体制の強化のため,異なる専攻の教員や実務家,海外での研究経験のある者を加えた指導体制を構築するというようなことが重要である。また,先ほどの三つのポリシーに関係いたしますけれども,学位授与の方針というのを見直すタイミングで,改めて学位論文が満たすべき水準ですとか,審査の体制について基準を検討していくということ。それから,そういった基準については公表を義務付けることが必要ではないかというような御提言も頂いております。
 また,博士論文研究基礎力審査,これはQEと言われているものでございますけれども,QE合格した者には修士の学位が出るということになってございますけれど,この運用について,もう少しきちんと国としても確認をする必要があるのではないかということがございます。
 それから,33ページには,「論文博士の在り方について」も,白い部分で,データといたしましては大きく減少しているということがございます。それから,黄色の部分でございますけれども,インターネット等の多様なコミュニケーションツールを活用した教育が展開されるといったことも踏まえまして,論文博士について今後の在り方を引き続き検討すべきだという御提言も頂いております。
 また,34ページには,学位の取消しについても記載がございます。学位の取消しについては,今,具体的な制度設計はございませんけれども,きちんと整備をすべきであるということでございます。
 35ページからは,「優秀な人材の進学の促進」ということでございます。まず「入学者選抜の改善」ということで,これも「学位授与の方針」,「入学者受入れの方針」の改定に併せて,36ページの上段ですが,国でも「大学院入学者選抜実施要項」というのを定めておりますが,きちんと見直しに着手する必要があるということでございます。 それから,修士課程等の学生に対するリクルートというのを改善していかなければいけない。企業と大学とで人材の獲得競争になっているということを踏まえまして,36ページの下の方でございますけれども,例えば具体的なロールモデルを提供していくですとか,37ページの上の方,日本学術振興会(JSPS)の特別研究員制度,あるいは大学の授業料減免などの決定のタイミングと進学の意思決定のタイミングを踏まえた制度設計とするような取組が必要ではないか。あるいは経済的支援といたしまして,様々な国の国費だけに頼らない経済的支援の充実を進めた上で,全体としてどういった仕組みになっているのかということ,これはファイナンシャルプラン,37ページの一番下の方でございますけれども,学生納付金等や就学上の支援等に対する見通しを各大学が学生等に示すよう努めることを法令上に位置付けるべきであるという御提言も頂いております。
 また,38ページ,6でございます。今度は,博士後期課程修了者の進路の確保,キャリアパスの多様化ということでございます。大学教員以外の場にも進路を拡大をしていく必要があるということで,企業等の在り方と博士課程修了者の活躍状況の可視化というのが見出しでございます。具体的には39ページでございますけれども,真ん中あたりでございます。「国は,」といたしまして,諸外国の博士課程修了者の活用状況や能力に見合った処遇について情報を収集して,産業界に対して積極的に情報発信をしていくこと。
 それから,学生の就職後のキャリアパスの充実を図る観点も含めて,例えば大学院生の採用や能力に見合った処遇について優れた取組を行っている企業等の取組を発掘し,広く社会的に明らかにすることというような御提言も頂いているところでございます。
 また,40ページの一番上では,企業に呼び掛けるだけではなくて,国自身が博士課程修了者を積極的に採用するというような取組も必要である。
 また,その次でございますけれども,キャリア構築に係る組織的な支援,民間の就職支援企業を活用したり,アントレプレナーシップの教育を充実したり,あるいは専門のメンター,コーディネーターを配置するなど,組織的な支援というのが重要だという御提言も頂いているところでございます。
 42ページからは,リカレント教育の充実ということでございます。最初のところで,大学院段階がリカレント教育の中心の役割を果たしていくべきだということでございまして,43ページ下の方から,今後求められる取組というのがございます。多忙な社会人の時間的・空間的な障壁を低下させる教育の展開が求められるということで,具体的な例示をお示しをしていただいております。
 また,44ページにおきましては,今度,そのリカレント教育を担当する教員の側(そば)について,教員の確保やリカレント教育を担当する教員の負担増ということに対しまして,各大学の取組,労働契約等における取組,契約の見直し,あるいは人事評価等についても書いてございます。また,夜間・土・日の授業開設等についての環境の構築ということについても御指摘を頂いております。
 46ページからは,人文・社会科学系大学院の課題の在り方ということでございます。「はじめに」ということで,まず人文・社会系と一くくりにするということについての問題点については,適切ではないという御指摘もあるんですけれども,人文科学・社会科学という分類の下,多くの調査においてデータが収集されていること等を踏まえて,今回はこういうくくりでやったという前提の下であるということ。
 それから,46ページから47ページにかけてでございますけれども,人文・社会系大学院に対する社会のニーズということを例示をしてございます。課題解決を指向するエンジニアリング,デザイン的な発想に加えて,真理や美の追究を指向するサイエンス,アート的発想などが必要,あるいは歴史的・地理的な観点も含めた人文・社会系の知識を活用した広い視野による高度な編集力や情報の目利き力が重要であるなど,必要性についての例示。今後,人文・社会系の学問を修める重要性は更に高まるということでございます。
 黄色ではございませんけれども,人文・社会系のデータ,47ページの下の方から48ページにかけて,他分野に比べてまだまだ低いというようなデータを列記してございます。
 48ページは,その人文・社会系大学院の課題ということで,四つの点が課題とされている。体系的・組織的な教育に取り組んでいる専攻の割合が低い。博士号取得までの期間が長い。教育の内容が社会的,社会のニーズから乖離している。キャリアパスが見えにくい。また,「まず」というところからでございますけれども,人文・社会系の一部の研究科・専攻においてはそもそも体系的な教育プログラムが確立されていないという御指摘もあると。非常に厳しいことでございますけれども,そういった御指摘もある。また,標準修業年限内の学位授与についても低いというのが48ページの下の方にございます。
 今後どうしていくのかというのが49ページからでございますけれども,学位プログラム実施に着目した大学院教育を確立するということは当然でございますけれども,人文・社会系の大学院でこそ身に付く普遍的なスキル・リテラシーや幅広い能力を創出して,可視化をしていく努力,あるいは社会のニーズに対して新たなタイプの人材養成目的の模索,キャリアパスの開拓が引き続き求められるとした上で,一番下,インテル等が海外の例としても例示されているところでございます。
 50ページ以降は,課程ごとに更に記述がございます。修士課程におきましては,複数専攻・研究科にまたがる体系的なものにしていく必要があるのではないか。チームによる共同研究を推進し,理工系でやっているようなものの利点を積極的に取り入れるというようなこと。それから,研究科の枠を越えた学位プログラムというのは人文・社会系こそ有用なのではないかというようなこと。
 それから,51ページの「なお,人文科学の場合は,」というような御指摘がございますけれども,同時に学士課程の教育の在り方も見直していく必要があるというような御指摘がございます。また,博士課程については,様々な分野で活躍していくことが必要とは言いつつも,当面は大学における教員や研究者としての専門性を活用していくことが大きなウィイトを占めるとした上で,やはりプレFD等の必要性等について御指摘をいだだくとともに,その規模については,52ページでございますけれども,適正な規模になるように検討する必要があるという御提言を頂いております。
 53ページは,今後に向けてということでございます。まず卓越大学院プログラムを進めていって,それが大学院システム全体の改革につなげていくということが重要であるということ。それから,大学院生が実質的な研究の担い手になっているという現状を踏まえて,研究支援体制の確立についても,今後,併せて検討していかなければ,なかなか大学院教育の改革にはつながっていかないという御指摘でございます。
 54ページ,最後でございますけれども,ポスドクも含めた研究人材の養成についても考えていく必要があるだろうということでございます。
 最後,大学院の課程全体の在り方の検討。大学院設置基準ができてから40年を超えているわけでございます。途中申し上げました博士後期課程レベルの高度専門職業人の養成についての新たな課程の在り方ということも含めて,今後,引き続き検討ということでございまして,大学院設置基準をはじめとする法令ですとか,認証評価をはじめとする評価の在り方についても見直しを行うことが求められるということで,まとめということになってございます。
 長い時間,頂戴いたしまして失礼いたしました。以上でございます。
【永田分科会長】  どうもありがとうございました。この案件は審議のまとめでして,答申ではありません。今後,またこれを土台に更に議論を進めていきたいという,その取りまとめだと認識しています。ついては,御意見,あるいは特にこういう観点は更に議論を深めるべきであるというようなことがあれば,これからの議論に付すことができます。今後の議論を前向きに進めるための御意見が一番好ましいと思っております。いかがでしょうか。
河田委員どうぞ。
【河田委員】  立派なきちんとした,非常に行き届いたまとめで,私も前期,この委員会に属していたので,感心して読ませていただきました。ただ,私学の場合,特に人文・社会科学系の大学院がたくさんありますが,ここに書かれているとおり,ほとんど入学定員を充足していないというのが現状です。ですから,例えば51ページの上の方の黄色いところ,「人文科学の場合」の最後から3行目で「リテラシーをしっかり身につけさせるという方向」の部分で,学士課程を充実したらどうかと,大学院の存続については見直してもいいのではないかと言ってあげた方が親切ではないか。だから,しっかりと身につけさせるという方向と,その存続についても見直しをしていくことも重要である,と考えます。
 それから,次の52ページの下の方の黄色いところの下から2行目ですが,ここは,「検討する必要があることには留意する必要がある」とちょっとややこしいので,最初の「必要」だけを残して,「検討することが必要である。」と,「自らその適正な規模と存続を検討することが必要である」と,まとめられてはいかがでしょか。もちろん多くの大学は大学院を作り,修士課程を作り,博士課程を作ることを一つの目的としてやってこられた。その努力は尊いわけですが,アメリカにも大学院のない大学もたくさんあるわけですから,リベラルアートカレッジのように学部教育に力を入れたらどうかということを示唆してあげる方が,このあるべき姿のまとめとしてはいいのではないかと,そういうふうに思っております。
 以上です。
【永田分科会長】  人文科学者のお立場から,人文科学系に対する厳しいコメントでした。
金子委員,どうぞ。
【金子委員】  今の河田委員の話につながるんですが,日本の大学院は,やはり私は90年代の初め拡大し過ぎたと思います。今,充足率が低いところが非常に多い。この数字が出ていないのでよく分かりませんが,修士課程で新入生が2人とか3人とかいうところが専攻単位で半分くらいあるんじゃないか。これは,数字が公表されていないんですが,私は,これはもう専攻別に充足率を公表したらどうかと思います。それは潰したいというよりは,やはり大学自体,それぞれの大学としてどこに重心を掛けるかというのは,今,河田委員がおっしゃったように,学部の方にやはり重心を掛けるべきであると思うんですが,私どもがやりました調査ですと,日本の大学の先生はえらいコマ数が多くて,8コマぐらいやっているんですが,半分ぐらいは大学院なんです,平均でですよ。どういう大学でもやっているという感じなんですね。これは,やっぱりいろんな資源の使い方としては相当無駄があるといいますか,それはもちろん各大学が考えるべきところでありますから,私は禁止するとか,そういうことはやるべきではないと思いますが,しかし,情報は公開するべきだと思います。
 あと,それから,もう一つだけ,すいません。これ,社会人の学び直しなんですが,履修証明プログラムを今120単位を60単位にしてもいいとか,積み上げでもって修士で導くということはあるということはここに少し書かれていて,今度,行政手段を執られることを検討されているようですが,これ全体を見ると,やっぱりアカデミックな大学院を中心とどうしても見えるんですね。例えばリーディング大学院なんかも,これは明らかにアカデミックに,一緒のところのが中心に,それにプラス,リテラシーみたいなのをくっ付けるような形です。もうちょっと大学院が大衆化するためには何を必要なのかということを,これ,もう少し,何と言いますか,単に現在の大学院の検討だけでなくて,もうちょっと大学院Bみたいなものが必要なんだろうと思うんですが,大学院Bみたいなのを作るために何が必要なのかということをやはり議論することが必要なのではないかと思います。
 以上です。
【永田分科会長】  そのほかいかがでしょう。
北山副分科会長どうぞ。
【北山副分科会長】  今の金子委員に,御意見に関連する点。1点目,2点申し上げる中の1点目なんです。まず,この審議まとめの内容につきましては大賛成でございます。したがって,応援演説になってしまうんですけども,産業界の立場から申し上げると,先ほどもありました社会人の学び直し,リカレント教育という点についてまず1点目,申し上げます。
 今まで進んでこなかったのが実情なんですけども,確かに新卒採用であるとか,終身雇用であるとか日本の雇用慣行の問題も当然あります。多くの企業は,うちも含めてそうなんですけども,銀行ですけども,大学が基礎的な学力とか社会常識を備えた人材を送り出してくれれば,その後は自前で社内でやるからというようなスタンスが多くの企業で見られたのが実情であります。
 しかしながら,ここ最近,企業が大きな環境変化に直面している中で,学び直しを目的とした働き方改革に取り組む企業が増えてきている。企業側のスタンスも変わってきています。こうした背景というか,タイミングで,この審議まとめに盛り込んでいただいたような,43ページから44ページにかけてですけども,社会人の時間的・空間的障壁を低下させる取組推進,すなわち社会人が学びやすい環境の整備を進めていくことは,学び直しを今後こそ本格的に普及させるための大きな原動力になり得ると思いますし,また,こういった環境整備に加えて,教育の内容とか,コンテンツの点も重要だと思います。
 社会人や企業の意見を踏まえることが特に重要と本文に書いてございます。企業が直面している変化や,それによって生じる新たなニーズを適切に把握するためにも,産業界との積極的な対話を大きく期待するものであります。
 それがまず1点目で, 2点目は,この大学院のレポートにもありますし,「2040年のグランドデザイン(答申)」にもありましたが,やはり情報公開という点を社会にも分かりやすい形で,内容も踏み込んだ形でもう1歩も2歩も3歩も進める必要があろうかと思います。そうした体制整備と情報公開の中身のさらなる充実,その辺を期待するものであります。
 以上です。
【永田分科会長】  ありがとうございます。
日比谷委員,どうぞ。
【日比谷委員】  ありがとうございます。大事なところを黄色でハイライトすると,そういうふうに作っていらっしゃるんだと思うんですが,私が見て非常に重要と思っていることにはハイライトがされていないので,そこからお話をしたいと思いますが,19ページです。修士課程の総論のところで,黄色がしばらく続いた,すぐ下のところに,学士課程において異なる分野を履修した者も含めた学生のことが書いてあるんですが,私,ここは大変に重要だと思います。本日も,リカレント教育,社会人の学び直しのお話も何回か出ています。大学院Bという御指摘もありましたが,一旦社会に出てしばらくしてから大学院に戻る人が学士課程で専攻したのと同じ分野で大学院に行くという可能性はそれほど高くないと思います。
 それから,仮に今,大学院Aと呼びますが,アカデミックな分野で学士課程を終わるとすぐに修士課程に行くとしても,今,割と学部で勉強した同じところへ進むという人が非常に多いですけれども,やはり少し違った分野で大学院に行くということも重要と思いますし,最近,私はちょっとあるところでそういう道筋を通って博士課程の今,途中ですが,非常に卓越した業績を上げた人の例を見る機会がありましたが,学部とすごく違うことをしたが故に,その成果を上げたのだということを本当に実感する機会もございました。そうなると,やはりコースワークは大変に大事ということになりますので,この点について,是非もう少し強調していただければと思います。
【永田分科会長】  ご指摘の点は,分科会の基本的な方向性と合致した御意見だと思います。
吉岡委員,どうぞ。
【吉岡委員】  一つは,今,日比谷委員がおっしゃったことと重なるんですが,やはり大学生,特に大学院生が多様な進路をとれるということは非常に重要なことだろうと思います。ここの中に大分書き込まれましたけども,大学の学部時代にもう少しこういう勉強をしたいと思っても,修士に行ってもそこから先が全くキャリアパスが見えない。それから,実際に企業に入って少し働いてから大学に戻りたいなと思っても,今のところはなかなかそういう道が開けていない。ドクターなんか取ろうものなら就職が危ないというようなそういう状況で,学部学生が修士に進むモチベーションというのは,やはり日本では非常に低いだろうと思います。
 企業との共存という言い方をされましたけども,実際に大学4年生になるかならないぐらいでみんな非常に激しい就活が入っている中で,例えば学部で卒論を書きながら大学に通うという余裕自体がなくなっている。やはり修士に進んでそれなりの学位が評価される,あるいはそれから,先ほど日比谷さんがおっしゃったみたいに,幾つか方向を転換しながらも先に進むことができると,そういう道がないとなかなか大学院に進学する学生がいないだろうと思います。
 それから,先ほどの金子委員の意見と私がちょっと違う感じなのは,やはり大学院は研究の場なわけですね。学部教育に特化していくと言うと,例えば研究者である教員としての場というのがなくなっていくという可能性があるだろうと思います。やはりそこのところで余り切ってしまわない方がいいのではないか。大学院が果たしている学部教育も含めての大学全体の教育水準を上げていく,あるいは研究と連動しながら学生を育てていくという役割は,やはり日本の大学の中で非常に重要な役割を果たしてきたので,その部分が衰えてしまわないような方策を考えなければならないと思います。
 そのためには,多分大学院が大学ごとに完全に閉じてしまっている状況に対して,やはりもう少し教員の移動性といいますか,あるいは学生についても,修士でも博士でも,学生が他大学や,あるいはある先生のところで学びたいという場合に,それを行いつつ,学位は自分のところで取っていくような,そういう移動性といいますか,流動性というのをもう少し考えていく,制度的に考えていく必要があるんではないかと思いました。
 以上です。
【永田分科会長】  それでは,志賀委員,どうぞ。
【志賀委員】  ありがとうございます。40ページに修士課程修了者のキャリア構築に係る組織的支援の中でアントレプレナーシップ教育の充実というように入っていて,もう少しアントレプレナーシップ教育が大学院の中で進むといいなと思っているんですが,いわゆるインベンションとイノベーションの違いで,発明,発見まではしても,それを社会に影響を与えるものに変えていく事業構想能力であったり,これは,昨年,私,ストックホルムに行って,ストックホルム・アントレプレナーシップ・スクールというところに見学に行ったんですが,ストックホルムの6大学がみんな共通してアントレプレナーシップを学ぶのを必修科目にしていて,本当に研究をやっている学生が授業構想を立てるというような教育をやっていて,こういうのがいわゆるノーベルがダイナマイトを発見しながら事業会社を作っていくみたいなのに結び付くのかなと。ここら辺が非常に大事だし,私,この全体を読んでいて,何度も申し上げることなんですが,とにかく産業競争力の源泉となるイノベーションというのは,大学の大学院の研究の中で生まれているものが大半ですので,もう少しそこら辺は自信を持って,日本を支える的な形での意義を言っていただければなと思うんですが,これは理工系のところなんですが,もう一つ,人文・社会系の部分なんですけれども,最近,ちょっと『ホモ・デウス』という本を読んでいて,なるほどなと思ったんですが,ハラリが言っているには,人工知能で知のインテリジェンスがどんどん強まるかもしれないけれども,人間というのはインテリジェンスと意識,コンシャスネスが両方とも有していて人間と形成されているんだという意味で言うと,アーティフィシャルコンシャスネスというのは全然発達していない中で,ここを形成している人間力,人間性みたいなところはやっぱり人文・社会科学の占める分野ではないのかなと。
 したがって,ここら辺は,昨年,私,一橋大学の社会科学を研究する円卓会議のメンバーとして参加させていただいていろいろ議論をしたんですが,確かに今,議論のあったように,大学院のところをたたく学生が減ってきて,人が少なくなっているのはそうなんですけれども,やっぱり社会科学全体がこうやって地盤沈下することが本当にいいのか。私は自然科学のスピードと社会科学のスピードが合っていないところ,例えば人の寿命は自然科学でどんどん延びるけど,逆に言うと,社会科学が税制の問題等々で人の命を延ばすことを支える財政ができないとか,やっぱり人文・社会科学と自然科学が同じようなスピードで進んでいってやっぱり社会が出来上がっているんじゃないかなというので,少し何か全体的に自信がない文章なんで,それでいいのかなと感じました。
 以上です。
【永田分科会長】  ありがとうございます。最初にご意見を述べていただいた河田委員と最後に述べていただいた志賀委員,どちらも人文・社会科学系に対するご意見でした。単に重要なので存続すべきであるとは言いにくいですけれども,存続をかけて改革をするべきであるという言い方ならできると思います。
 それから,私の意見としては,やはり経済的支援についてはまだ十分踏み込んで記述していないのではないかと思いました。これまでの科学技術基本計画の目標や指標を達成するためにという視点だけではなくて,現在検討中の次期の計画に反映させるために,大学院がこれだけいろいろな改善をするのでもっと支援を強化すべきである、という方向性で検討すべきではないでしょうか。
 経済支援については,TA・RAなどは成績に基づいて採用してますので,いわゆる奨学金という形ではなくても、こういったところをしっかりと充実させればいいのかなという気がします。
 また,MD-PhDに関する課題についてはまだ議論されてないので,今後必要なのではないかなと思います。
 ここまでいろいろな御意見が出ました。これは先ほど申し上げたように答申ではなく,今後更に審議を進めるための現段階での大きなまとめという位置付けです。本日頂いた御意見を幾つか文言に反映させる方向で再検討しつつ,大学院部会長の有信委員とも御相談をして,私の方で最終的なものにさせていただこうと思いますが,一任いただけますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【永田分科会長】  ありがとうございます。有信委員,御協力のほどよろしくお願いいたします。
 それでは,どうもありがとうございました。修正をいたしまして,皆様にもお配りして,速やかに公表をしていこうと考えております。
 それでは,次に,2番目の議題ですが,これは2040年に向けた高等教育のグランドデザインの答申に基づく大学設置基準等の改正についてです。その中でまず,学位プログラムと実務家教員の登用促進の部分について,具体的な検討の方向性がまとまりつつあるということで,御議論をいただきます。
 それでは,事務局の方から,御説明をお願いいたします。
【三浦大学振興課長】  引き続きで恐縮でございます。資料2を御覧いただけますでしょうか。めくっていただきますと(1),3ページでございますけれども,(仮称)といたしまして,学部等連携課程の導入についてということでございます。学位プログラムの現状と課題といたしまして,現状では学生の所属する組織,教員が所属する組織,それから,学位プログラムが1対1の関係になっているということに対して,様々な学術研究の推進,ニーズの変遷に柔軟に,あるいは機動的に対応していくためには,境界領域,学際領域の教育というもののプログラムをどうしていくのかというのが課題となっているということでございます。
 矢印の下にグランドデザイン(答申)の抜粋を書いてございますけれども,大学が自らの判断で機動性を発揮し,学内の資源を活用して学部横断的な教育を積極的に取り組むことができるように,学部,研究科等の組織の枠を越えた学位プログラムを新たな類型として設置可能とするという御提言を頂いております。この組織の枠を越えた学位プログラムというのを今回,仮称といたしまして,学部等連携課程と位置付けをさせていただいたところでございます。この学部等連携課程を設けることについて,大学設置基準,大学院設置基準,短期大学設置基準及び関連規則の設置基準等を改正したいということでございます。
 めくっていただきまして,改正概要1というのがございます。ポンチ絵がございます。従来の学位プログラム,これは先ほど申しました1対1の関係がある,学部,その下に通常,学科というのがあるわけでございますけれども,学生,教職員,それから,教授会,学位プログラムが1対1の関係になっているということに対しまして,複数学部を置いているような大学におきまして,その複数学部から資源を出し合い,学際領域等の新たな学位プログラムというのを作れるようにしましょうということを示した絵でございます。
 具体的には,その次のページ,5ページでございますけれども,教員組織につきましては,その前のページの絵で言いますと,両側にある「緊密に連携する学部等」と書いてあるところでございますけれども,その教員をもって充てることができるということ。学生についても,その両方の連携する学部等の学生定員を切り出して,その真ん中の学部等連携課程の入学定員にすることができるようにする。
 学生組織につきましては,※印で,そのプログラムに参加する学生が十分な所属意識,帰属意識を醸成するような取組も必要であろうということも,施行通知等で考えていきたいと思っておりますし,また,施設,設備,必要な附属施設等についても連携する学部等と共用してできるというふうな位置付けにしたいと考えてございます。
 めくっていただきまして,6ページは,設置の審査についてはどう考えるのかということでございます。新たな学位,新たな分野,分野変更を伴う学位につきましては,当然にして従来型の学部を作る場合と同様に認可事項でございます。また伴わないものについては届出ということで,外形的な位置付けは同様でございますけれども,先ほど申しましたとおり,機動的に対応することができるというのが今回の学部等連携課程の一番の主眼でございますので,提出書類ですとか,あるいは提出時期というのを弾力化することによって,各大学が機動的に対応できる,柔軟に対応できるような体制を確保したいと考えております。
 2番,7ページからでございますけれども,実務家教員の登用促進ということでございます。実務家教員を必要に応じて積極的にその大学教育に参画していただくということの重要性については,もう様々指摘されているところでございます。グランドデザイン(答申)の抜粋をここに書いてございますけれども,専任教員として実務家教員を配置することができる旨を大学設置基準上,確認的に規定する。また,6単位以上,担当授業科目を持つ場合には教育課程の編成等に責任を負うものとするよう努めるというような御提言を踏まえた改正ということでございます。
 めくっていただきまして,8ページでございます。実務家教員の配置といたしまして,大学設置基準の規定の中で,実務家教員を置くことができるという規定を確認的に規定をするということ。この実務家教員については,現在でも専門職大学院等で規定がございます。だいたい5年以上の実務の経験を有し,かつ,高度の実務能力を有する者ということにしたいと思っておりますけれども,そういった規定を置くということ。
 それから,実務家教員と教育課程の関わりという点におきましては,6単位以上授業科目を担当するような実務家教員であれば,教育課程の編成,その他の教育研究所の組織の運営について責任を担うように努める。例えば,教授会のような会議体について出席をすることができるようにするということでございます。
 ※印に書いてございますとおり,教授会やカリキュラム委員会等への参画等,実質的な形で大学の教育課程の編成に責任を負うもの,6単位以上を担当する教員であれば責任を負うものとし,その具体的な形においては,各大学において明確化をするということ。
 それから,質の確保という点では,採用時にFDを受講することなどについて,施行通知などで通知をするということ。
 イメージということで右肩に書いてございますけれども,下の部分,ただの四角でございます。ここの元々の設置基準上の必要専任教員数について何か変更を加えるというものではございません。それにプラスして実務家教員を置くことについて確認的に規定をした上で,6単位以上担当する場合には,教育研究上の組織の運営についての責任を担うようにできるようにすることに努めるという規定を加えるという趣旨でございます。
 説明は,以上でございます。
【永田分科会長】  どうもありがとうございました。これは答申に基づいて文部科学省の方でまず学位プログラムについて,こういう考え方でこういうことが可能となるよう規則を変えていこうとするための案の概要説明ということになります。
 ですから,いろいろな御意見をいただいてよりよいものに変えていく,そのような意味合いでの御意見をお願いしたいと思います。いかがでしょう。
有信委員,どうぞ。
【有信委員】  設置認可制度に対して第一歩というか,一応手を入れるという方向性が出たということに関しては非常によかったと思います。それで幾つかちょっと質問をさせていただきたいんですけども,これで改正概要の1というところに学部等連携課程というポンチ絵がありますけれども,その真ん中に学位プログラムと書いてあって,管理運営組織と書いてあるので,ここが多分教授会のようなことになっていて,明確化しておいてほしいのは,現在,学位を出すのは基本的に教授会の役割ということになっていて,学位を認めるとか,ガバナンスの議論のときに,最終的に教授会に残された権限として学位等々と,いわゆる教学に関する幾つかの審議内容が残っていたと思います。ここで,学位がこの学位プログラムの管理運営組織によって出されるということをもう少し明確に意識をしておいてほしいというのが一つ。それは希望です。
 それから,改正概要の中で(1)の2の設置審査のところがありますけども,これで内容が変わるようなときに,せっかく機動的に新しいものが作れるということになったんだけど,実際に設置審査の過程ではそれぞれ学問分野が規定されていて,学問分野ごとに専門委員会が組織されて,これはプロセスの話ですけど,その専門委員会でそれぞれの学問分野に対してきちんとした教育・研究が行われるかという審議が多分行われると聞いています。これはただ実際にここのその前の1に戻ると,実際には,設置認可を受けた教員が新たにこういう学位プログラムを作るのであれば,少なくともその教員の基本的な教育能力,研究能力に関しては既に認められているとみなせば,新たな専門委員会による審議は必要ないのではないかと思えて,もしそこが省ければ大幅に,これは機動的に新しい学位プログラムを作れるようになると思うんですね。これがないと,例えばリーディングプログラムのときに,最初に京都大学の思修館が設置認可ではねられたというようなことが具体的な内容は分かりませんけども,そういうことがあると機動性が実際は大きく損なわれるわけですね。ですから,そこが検討できるかどうかということを是非御検討いただければと思います。
【永田分科会長】  ありがとうございます。そのほかいかがでしょう。
 今の有信委員の御意見は非常に本質的な質問だと思います。要するにプログラムそのものの教育内容の有効性,その他については当然ながら十分検討されるべきことなんですけど,それとは別に設置プロセスに関する課題はあると思います。
吉岡委員,どうぞ。
【吉岡委員】  今の有信委員の話は本当に重要で,今でも専門委員会の分け方というのをどういうふうに考えていくのか,特に新しい分野について考えるときにどういうふうに既存の専門委員たちの範囲を越えるようなものが出てきたらどうするんだという非常に大きな問題があるので,特にこのような形で学位プログラムを作るときにたいへん大きな問題だと思います。その点が一つです。
 それから,私はこういう学位プログラムを作っていくというこの考え方はやはりこれから重要だと思っているんですけれども,ここで教職員のダブルカウントが可として,既存の資源を,学内資源を活用して学部横断的な教育を実現するというふうになっていますが,実際に,特に23区内の私学の経験からしますと,新しい学位プログラム,学位プログラムを,それも新しいものをやるためにはやはりそれなりに新しい教員が必要である。学内で,学内の例えば教員をやり繰りして新しい学位プログラムができるというのはやはりかなり限られている。外からの資源がどうしても必要なので,まずそこでお金が掛かる。お金の問題が大きいのです。 それから,学生も,学位プログラムの新しいのができたときに,その先の将来どういうふうに自分が就職して,先ほどのキャリアパスの話ですけれども,見えてこないと,質の高い学生は集まってこないんです。そのためには,やはりかなり長い時間をかけてこれを作っていく。かなり長い視野で学位プログラムを定着させていかないと,数年ぐらいでは,まだ実はこれが成功しているものなのかどうかというのは分からないので,やはりやや長い目でこれをやっていく場合には見ていかなければならないだろうと思います。
 それから,もう一つは,こういう学位プログラムを作った場合の一番大きな問題は職員,新しい部分を支える職員。学生は代わる,教員は代わる。そのシステムが変わるので優れた職員が必要なんですね。私学の場合は職員をどうやってリクルートしていくかということが非常に大変なので,総じてこれが設置基準の問題もなのですけれども,これは,実際にこれがうまくいくためにやはりすごくお金が掛かるので,その部分を念頭に置いておいていただかないと,ただのすり合わせたものになってしまうのではないかとちょっと懸念するところです。それが一つです。
 それから,もう一つ,実務家教員のところですが,実務家教員の問題はいろいろ議論があるところで,実際に実務家教員が入ってくるということで活性化するというのは確かなんですけど,実務家教員として具体的にどういう人を考えているのかというのは,まだ統一的なイメージがないんではないかと思います。それで,大学,学部も,大学院研究科でもそうですけれども,大学の教員として非常に重要な能力というのは,やはり研究を指導するということと論文をちゃんと指導できるかということだと思うんですね。知識とか,経験とかというのを教育の現場に反映させるというのは,今でもどの大学でも非常勤であったり,特任であったりという形を使ってやっているわけです。実際にこれが学生の論文を指導したり,研究のプロジェクトをきちんと指導していくような実務家教員というのを選び,その質を高め,高い質の実務家教員を見いだしていくというのは非常に大変なので,この辺のところもイメージがきちんとしないと,何となく言葉が上滑りしていくのではないかと思った次第です。
 以上です。
【永田分科会長】  ありがとうございます。先ほどの大学院のあるべき姿のまとめの中には,海外のトップクラスのビジネススクールでは実務家教員の約9割は博士を持っている、との記述もありました。その意味で吉岡委員の御意見は今後どこかで生かしていくべきだと思います。
金子委員,どうぞ。
【金子委員】  これはむしろ事務局に伺いたいんですけど,先ほどおっしゃっていたところで,学校教育法改正でもって,学位の授与,教育課程については,やはり教授会は学長の諮問機関になったわけですが,しかし,最終的な権利はやはり教授会にあるんではないかということでしたけれども,これがそうなのかどうかと。私はそう,もう変わったんじゃないかと思っていたんですね。
 それともう一つは,かなり今まで教授会があやふやになっていたんですが,教授会は,教員は唯一の,単一の教授会にしか属せないのか,複数に属せるのかという問題もあります。例えば大学と大学院が併存している場合には,研究科委員会とわざわざ別の呼称にしているわけで,教授会は単一であるかというのは,今まで特に国立大学ではそういう解釈が多かったんじゃないかと思うんです。教育公務員特例法をそのまま読めば大体,かなりびしっと分かれて,教授会が独立の決定権を持っているかのごとく見えるんですけれども,今度の学校教育法改正でそこのところを変えて,意見を述べるものにすると言ったのは,組織自体は変わらなくて,教授会が決めちゃっていいと言っていたのを,教授会が決められなくて,最終的には学長が決めるということにしたのか,それとも教授会の考え方自体がかなり柔軟で,いろいろな単位で教授会を構成することができるようにしたと解釈し得るのか,ここら辺はどうなんでしょうか。
【永田分科会長】  三浦課長,どうぞ。
【三浦大学振興課長】  学位を出す権限は学長であるということは揺るがないと考えております。資料で申しますと改正概要の1の2,6ページのところでございますけれども,ここでは先ほどの有信委員の御意見のお答えにも一部重なるか思いますけれども,その学部と連携課程において,まず学位プログラムということでございますが,三つのポリシーを策定する。緊密に連携する学部等と連携をして管理運営組織,これはあえて教授会ではなくて委員会等と書いてございますけれども,そこにおいて学生の学位に関する審査,教育指導,成績評価等を実施する教学管理体制をきちんと整備する必要があるということで考えておりまして,さっきの図の真ん中の青い,くくっているところにおいて管理運営組織をきちんと位置付けていただくことが必要だと考えておりますが,ここに教授会を必ず置かなくちゃいけないかということについては各大学の判断でよろしいのではないかと思っています。
【永田分科会長】  ほかにいかがでしょうか。長い間,懸案事項として議論されきた課題であり,完全に一歩とまでは行かなくてもようやく半歩踏み出せたと言えると思います。かなり学位プログラムを認める方向の議論になってきています。これをもとに更に検討して,この後,パブコメ等の御意見も聞きながら,最終的にはまたここでお諮りをいただくことになります。なるべく多くの意見があった方が事務局として検討を進めやすいと思います。
 今、出てきた御意見を踏まえてまた御議論いただいて,更にパブコメ等いろいろなところから御意見をお聞きして,最終的に大学分科会に改めて諮っていただきたいと思います。
 それでは,この件につきましては,またもう少し詳細になったものが出てくるということで,次に進ませていただきたいと思います。
 それでは,審議事項はここまでとして,次に,報告事項に入ります。幾つか重要な報告もございます。
 最初に,本日が第9期の大学分科会の最後の会議ですので,第9期の大学分科会の実績を見てみようということです。それでは事務局に報告をお願いいたします。
【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。資料3を御覧いただければと思います。第9期大学分科会の審議の状況についてでございます。第9期は,大学分科会の下に部会が二つ,それから,ワーキングが一つ,また特別委員会が二つ,それから,審査委員会,作業チームということで,このような体制で御議論をしてきていただきました。
 まず,大きなところでございますけれども,1ページ目の最初でございますが,大学分科会の下に将来構想部会が置かれまして,当然のことながら,前回おまとめいただきました「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」を,答申をしていただいたというところでございます。これは約1年9か月にわたる審議の結果ということでおまとめいただきました。この答申をまとめるに当たって構想部会の下に制度・教育改革ワーキンググループが置かれまして,先の大学設置基準の改正のお話もそうですけれども,様々に議論をしていただきまして,特に今後,制度改正につながるべき議論はこのワーキングの方でしていただいたというところでございます。そこにも書いてありますように,専門性の高い11の項目にわたって審議が行われたというところでございます。
 次が大学院部会でございますけれども,大学院部会は今,有信部会長からもお話がございましたとおりの審議まとめをおまとめいただくということで,大学院制度と教育の在り方について御議論を頂きました。
 めくっていただきまして,2ページ目でございますけれども,それと併せまして,専門職大学院に関しましても専門職大学院のワーキングの議論を受けまして,その養成機能の充実・強化方策について御議論を頂きまして,産業界との連携をする仕組みや,専門職大学院の量的確保等々の御議論を頂いたところでございます。
 次に,教学マネジメント特別委員会でございますが,これは答申を受けた後に設置をされた特別委員会でございまして,既に2回ほど議論をしていただいておりますけれども,答申の中で特に重要になります質保証の部分,学習成果の可視化と情報公表,これを進めていくための教学マネジメントに係る指針の策定の審議を開始していただいたところでございます。
 それから,法科大学院の特別委員会に関しましては,法科大学院に関する教育の改善・充実ということで,それに関する基本的な方向性が昨年の3月に取りまとめられ,現在,具体的な制度改革に向けて議論が進んでいるというところでございます。必要な部分は,法改正につながるというところでございます。
 それから,審査委員会,これは認証評価機関の認証に関する審査委員会でございますけれども,デジタルコンテンツ系分野の専門職大学院に関する認証評価機関の認証について取りまとめていただいているところでございます。また,加えて専門職大学等の制度設計につきましての作業チーム,3ページ目でございますけれども,専門職大学・専門職短期大学・専門職学科の制度化に向けての具体的な制度設計をしていただいたというところでございます。
 そのほか,総会において御議論されておりました第3期教育振興基本計画の策定についての高等教育の観点からの審議,また,まち・ひと・しごと創生総合戦略につきまして,内閣官房の下に設置されておりました有識者会議において,大学について議論が進んでおりましたので,大学分科会においても地方創生に資する大学改革の観点から御審議を頂いたところでございます。また,大学設置基準の改正に関しましては,随時答申を行っていただいたというのが第9期の成果というところでございます。
 めくっていただきまして,4ページ目,来期に継続して審議する事項ということで,第10期につながる部分を5点ほど整理をさせていただいております。
 質保証システムの見直しにつきましては,設置基準の改正も含めて答申の中で言っていただいておりますけれども,これに関しましては,来期に新規の部会を設置して審議を開始していただきたいと考えているところでございます。
 教学マネジメントに関わりましては,特別委員会において引き続きの御議論をお願いしたいという形でなっております。
 大学院部会に関しましても,審議まとめを決定いただいた後は,それを踏まえまして,更に具体的な方向性を議論していくということが予定されております。
 法科大学院に関しても同様に,さらなる課題について整理をしていくということでございますし,最後,認証評価機関の認証につきましても,現在審議中の案件がございますので,これの審査は引き続くというところでございます。
 その5ページ目以降は参考資料で,それぞれの部会等でおまとめいただいたものを付けておりますが,5ページ目の答申の概要の裏ページを見ていただければと思います。6ページ目でございます。答申の御議論の際にも,グランドデザイン(答申)の後はどのようなことをどのような工程でやっていくのかという形でその辺は整理をしておくべきだという御指示も頂いておりましたので,非常に大くくりでございますけれども,整理をさせていただいております。今年度内におきましても,既に教学マネジメントに係る指針の策定に関しての議論が開始されておりますし,それから,国立大学について,大学間の連携・統合に必要な制度改正,制度・教育改革ワーキングの審議まとめにつきましては,年度内に引き続きの整理をしていくというところでございます。一方で,設置基準の見直し等の大きな質保証システムの見直しは来年度以降,また地域連携プラットフォームや大学等連携推進法人制度に関する細かい制度設計などは来年度以降で引き続きやっていきたいというところで整理をさせていただいております。
 御報告,以上でございます。
【永田分科会長】  ありがとうございます。何か抜けている事項はないですか。
金子委員,どうぞ。
【金子委員】  しつこいようですが,大学院B,この大学院のところは,タイトルを見ると社会を先導する人材の育成に向けた大学院なんですね。これも私は必要だと思います。ただ,日本の大学は大体800ありまして,この先生も18万人くらいいますが,この大学がやれることとしては,むしろ非常に大衆化された大学院,あるいは社会人教育をやるということは大切だと思います。
 受講証明制度とか,あるいは単位積み上げというのをしてきましたが,更にこれを大学の中でよりアクティブな活動にしていくために何が必要なのかということをやはり考えないと,日本の大学全体の活性化はできないのではないかと思います。
 以上です。
【永田分科会長】  ご指摘の点は大学設置基準等の質保証システムの見直しについての中に認証評価も含んでいると思います。よろしいですか。
 有信委員,どうぞ。
【有信委員】  大学に関していろいろコメントをいただきましたけど,現在の大学院の進学者数,大学への進学者数というのか,入学者数が大体60万人で,大学院の修士課程への進学者数が7万人程度です。それから,博士課程が1万5,000人程度で,1万5,000人のうちの4割ぐらいが社会人になっている。こういう状況の中で,この程度のマスの人たちが一体,この程度のマスを中心にして,ここを拡大する人たちの果たすべき役割,あるいは期待されるべき役割がどうかということを中心に考えてきました。もしも大学院を大衆化するということであれば,この規模感をもっと大きく変えた課題設定をしていかないといけないということになると思いますので,それも含めて検討するということだと思います。
【永田分科会長】 佐藤委員,どうぞ。
【佐藤委員】  今のお話の中で,修士課程,7万人ぐらいですか。そのうちかなりの数が留学生ですね。特に私学は留学生の占める率が非常に多くなっているということを考えると,それもちょっとどこかに検討の課題にしておいていただいた方がいいかなと思いました。
【永田分科会長】  麻生委員,どうぞ。
【麻生委員】  6ページの一番下から2行目の右に,学位プログラムを中心とした大学制度という中で,前から私が申しております短期大学士の制度の位置付けを含んでいると理解していますので,よろしくお願い申し上げます。
【永田分科会長】  よろしいですか。今後も考えなければいけないことは多くあることが分かりました。それでは,この報告事項はここまでにさせていただきます。
次は少し重要な内容が含まれている報告事項ですけれども,大学の国際化に対応するために,大学入学資格関係告示の一部改正について,説明をお願いします。
【三浦大学振興課長】  度々恐縮でございます。4-1,4-2という資料を御用意をさせていただきました。先に資料4-2を御覧いただきますと,将来構想部会のワーキングの審議まとめ,それからグランドデザイン(答申)の抜粋でございます。上の方で申しますと,18歳にならないと大学入学資格を認められない年齢要件の一部撤廃や,外国における12年未満の高校相当の教育課程の追加指定を推進するなど,大学入学資格の一部を見直すということでございます。グランドデザイン(答申)の方も同様の記載がございます。これを受けまして,告示でございます。大学入学資格関係の告示の一部改正をするということについての御報告ということでございます。
 資料4-1を御覧いただけますでしょうか。大きく3点に改正がございます。まず1でございますけれども,外国において学校教育における12年の課程を修了した者に準ずる者を指定する件というものがございます。現在でも外国における12年の課程を早く修了した人については,我が国の大学入学資格を既に認められているわけでございますけれども,それと同様の考え方に立って,外国における高校,12年未満の課程を想定しておりまして,プラス準備教育課程を修了した者,それに加えまして,我が国国内にある外国の学校の課程と同等の課程を有するもの,いわゆるインターナショナルスクールを修了した場合の18歳以上という要件を撤廃するというのが1でございます。
 2は,高等学校に対応する外国の学校課程のうち,当該課程を修了した者が大学入学に関し高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認められるものを指定する件,ちょっと長いものでございますけれども,これは12年に満たない課程を持っている国については,個別に国ごとに指定をするという制度ができておりまして,現在,ミャンマー,1か国のみが指定をされているということでございます。これは平成28年にそういう制度ができておるわけでございますけれども,今回の告示の改定に併せて,更に5か国の12年未満の課程の国の指定を追加したいというのが2でございます。5か国というのは具体的にはロシア,ウズベキスタン,ペルー,スーダン,ベラルーシ,この5か国でございますけれども,追加をするということでございます。
 3でございます。3は,大学入学に関し高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認められる者を指定するということで,これは国際的な大学入学資格というのがございます。ここに国際バカロレア等がございます。それから,国際的な評価団体から認定を受けた教育施設というのもございます。その教育施設に置かれる12年の課程を修了した者というのは,もちろん元々大学入学資格はあるわけでございますけれども,その中の18歳以上でなければならないという部分については撤廃をするということでございます。
 例えば先ほど大学院レベルではありましたけれども,学部段階でも,ジョイント・ディグリーのような取組が進む場合において,欧米の大学では大学入学資格が認められているにもかかわらず,日本の大学でこの告示の改正がないばかりに日本では受け入れられないというような事例も出ております。そういったことに対応するために,そういった国際的な入学資格等を有する者については年齢制限を撤廃するということでございます。
 4と書いてあるのは,条文上の関連改正でございますので,中身に係るものではございません。今月末に公布,施行ということで考えております。
 説明は以上でございます。
【永田分科会長】  ありがとうございます。これは御理解いただけたかどうかの確認になりますが、よろしいですか。ありがとうございました。
 それでは,次の報告事項ですが,こちらも重要な内容です。国立大学の一法人複数大学制度等に関する進捗状況について,淵上課長から御報告をお願いいたします。
【淵上国立大学法人支援課長】  お手元の資料の資料5-1と5-2に基づきまして,現在の議論の進捗状況等につきまして,御報告を申し上げます。
 国立大学の一法人複数大学制度等についてということでございますけれども,一法人複数大学制度につきましては,昨年の骨太などの閣議決定でその制度化が求められたということがございまして,昨年の9月に,放送大学の有川先生を座長といたします検討会議を設けて,12月19日,これは誤植がございます。資料5-1の一番上に12月11日とありますが,12月19日まで6回,集中的な御審議を頂いてきたところでございます。メンバーとしては,この分科会からも永田分科会長はじめ複数名の先生に御参加をいただきながら,これまで6回の御審議を頂いたということでございます。
 大きな論点といたしましては三つございます。めくっていただきまして,2ページ目がまずこの一法人複数大学の意義・必要性についてということ,それから,3ページ目からが基本設計の在り方ということ,そして,最終ページは一法人複数大学制度を一法人一大学との関係でどう考えるのかと,こういう論点で御審議を頂いてきたわけでございます。
 2ページに戻っていただきまして,まず意義・必要性というところでございます。一法人複数大学制度においては,複数の大学の教育・研究資源を確保することができるということ。そして,その研究資源を各大学,国立大学のミッションを踏まえ効果的・効率的に配分・利活用することは可能となると。また,法人の統合によって社会に対する存在感,発信力の強化が期待できる。あるいは経営刷新や大学改革等の取組を大きく進めることが期待されるということでございます。
 三つ目の丸でございますが,このような効果,大学統合を伴う法人統合ということでも期待をされるということでございますが,4行目から,一法人複数大学制度については,各国立大学が創設以降培ってきたブランド力や,大学が置かれた地域との関係性,また,卒業生をはじめとする人脈,研究機関との連携共同などを前提として,これらを生かしながら,法人統合による経営力の強化などのメリットも図れるということがあるんだろうということでございます。
 そして,次の丸の下から3行目でございますけれども,一法人一大学の原則は維持しつつ,一法人複数大学の仕組みを各国立大学法人の意思・判断に応じて活用できる仕組みとしていくことが必要だと,こういうことでございます。
 めくっていただきまして,3ページ目からが基本設計ということになります。まず,1番目が法人の長と大学の長の役割分担というところでございます。法人の長と大学の長の役割を分担することについては法人の判断,複数大学制度においては法人の判断で法人の長と大学の長の役割の分担を可能とするべきであろうということでございます。
 三つ目の丸でございますけれども,その際,法人の長と大学の長を分担することの設定期待される効果などについて,誰が検討することが適当かということでございますが,これは法人の経営の観点のみならず,教育研究の観点からも議論される必要があるだろうということで,その選択に当たっては,現行の経営協議会,教育研究協議会又はそれら双方の委員から構成される学長選考会議などが考えられるんじゃないかと。特に学長選考会議は教育と経営の両方からなる機関でもございますし,これまでどのような学長がふさわしいかということの選考を行ってきているようなところでもありますので,今後の法人の運営に対する検討をする組織としても適当ではないかというふうなことでございます。また,この役割を分担することを決めるに当たっては文科大臣の一定の関与ということも考えられる必要があるだろうということでございます。
 そのときの法人の長の役割ということでございますが,2行目にございます。法人全体に対して監督責任を負うということ,そして,経営の失敗,法人の諸問題について責任を負うということでございます。したがって,法人の長は経営の責任者として,人材・資源・予算を掌握し,リーダーシップの下,組織のガバナンスを維持し,法人の目標や業務の成果の最大化を任務とするということで,管理運営上は大学の長よりも上位に置かれるべきであるということでございます。
 続きまして,めくっていただきまして,4ページ目でございますけれども,さはさりながら,法人の長は経営にたけた者が就くというのが望ましいわけでありますけれども,当然国立大学は教育研究活動が主たる業務ということでございまして,教育研究にも一定程度の理解を有する必要があろうということでございます。
 また,法人の長と大学の長が分担をされた場合に,法人の長が大学の長としての職務を行わない場合が出てまいります。その場合,現行法はこの両方を一緒に行う方について,現行法上は「学長」と定義付けをしているわけでございますが,学校教育,大学の長としての職務を行う場合には名称を「理事長」とすることが適当ではないかというふうなことでございます。
 また,その次の丸でございますが,大学の長を別に置くこととした場合には,大学の教員等の人事権,任命権をどうするかということでございます。任命権そのものは最終的な責任者である法人の長に置くということでございますけれども,大学の自主性の確保などに鑑みれば,大学の長が一定の関与を行うというふうな仕組みも考える必要があるだろうということでございます。
 大学の長の役割としては,大学の長は,法人全体の経営方針に従いながら教育研究を行う一定程度の裁量や権限を有する。また法人の長に対して責任を負うという仕組みが適当であろう。また,法人全体の組織の中では大学の長もしっかり理事として参画をすべきであろうと。その際,ほかの理事とはもう少し異なる権限も与える必要があるのではないかということでございます。
 (2)が法人の長,大学の長の任命手続というところでございます。法人の長の任命につきましては,最初の丸の3行目にございます。法人の申出に基づいて文科大臣が任命をするということが適当だろうということ。
 次の丸で,大学の長の任命をどうするかということでございます。ここについては,今現在,法人等が検討している各大学,あるいは大学のチームなどからは,大学の長の任命権も現行と同様に文科大臣任命にしてほしいという意見もあったわけでございますけれども,それにつきましては十分御審議を頂いた上で,法人の長と同様に文科大臣任命とすることは,法人の長が法人運営に責任を有するという観点からはやはり適切でないんではないかと。したがって,大学の長の任命は,法人の長が行うということにすべきであろうということでございますが,やはり法律で設置される国立大学の運営に一定の責任を持つということでございますので,任命権そのものは法人の長にありますけれども,文科大臣も一定の関わりを検討すべきではないかということでございます。
 また,大学の長の任命権は法人の長が持つとしても,次のページでございますが,例えば学長選考会議など,一定の手続をとる必要があるだろうということでございます。
 5ページの真ん中以降は,法人における意思決定システムの在り方ということでございます。役員会等でございますが,二つ目の丸にございますように,先ほど申し上げました理事である大学の長も当然役員会に入っていくということでございます。
 また経営協議会,教育研究協議会の置き方などでございますけれども,それぞれ審議機関として引き続き法人に置くということが適当であろうということでございます。
 次の丸で,経営協議会でございますが,法人の人・物・お金などに関わるということでございますので,法人に置いた上で法人の長が主催をするという立て付けが適当であろうということでございます。
 続きまして,6ページでございますけれども,一方,教育研究評議会につきましては,その審議事項が教育課程の編成など,大学の中の教育研究面について関わるということでございますので,大学の長を主宰者として議論することが適当ではないかということでございます。ただ,その経営全体の観点,あるいは教学と経営の一致という観点から,法人の長がこの教育研究評議会にも参画をするということも必要ではないかという御意見でございます。
 それから,(4)以降が中期目標・中期計画,評価についてでございます。法人の中期目標・中期計画は,当然その設置する大学の目標・計画も含まれるということで,それぞれがきちんと整合的になるべきだということでございます。
 (5)は,指定国立大学が統合する場合の扱いということでございます。現在,御案内のとおり,まず予定されておりますのが指定国立大学である名古屋大学と,そうではない岐阜大学との法人統合ということでございますが,この論点が出てきたわけでございますけれども,法人が統合したからといって設置する全ての大学が直ちに指定国立大学になるということは適切ではないのではないかということで,現在は法人のみを指定するという仕組みになってございますけれども,特例的に法人の設置する一部の大学のみを指定するような仕組みも設ける必要があるのではないかというふうな提言になっております。
 最後,めくっていただきまして,8ページでございますけれども,3番の論点が一法人複数大学制度の一法人一大学への応用ということでございます。この最初の丸では,今回,一法人複数大学制度が具体化しつつあるということで,その検討をしてきたわけでございますけれども,二つ目の丸にございますが,一法人一大学制度は,法人の長と大学の長を一致させることで迅速な意思決定を可能とするなど,そのメリットを生かしながら法人運営が行われてきているところであり,このようなメリット以上に,法人の長と大学の長を分担することで経営力の強化,教学ガバナンスの強化という点でさらなるメリットがある場合には,その法人が選択して経営と教学が分担できるようにする,こういう仕組みを設ける必要があるのではないかという御意見でございます。
 以上が前回,第6回の御審議で配付をさせていただいた,その時点までの検討をまとめたものということでございます。当然この回でも御議論をいただきましたし,その後,パブリックコメントも行ってございますので,そうした意見を踏まえて,本日,第7回の御審議を行う。これに前回の御意見などを更に加筆修正したものを本日の午後に御審議いただくという予定でございます。
 なお,資料5-2が今申し上げたものをざっとイメージにしているものでございまして,簡単に補足的に御説明いたしますと,5-2の1枚目でございます。左側の図がございますけれども,法人の長と大学の長がA大学,B大学となるわけでございますけれども,法人の長のみが単独で職務を行って,大学の長はそれぞれ別々の大学の長が就任されるというケースもございますでしょうし,A大学のみを法人の長が兼ねるという場合もあるでしょうし,いずれの大学の長も兼ねる,こういった形態がいずれも考えられるわけでございますけれども,これ,いずれもとれるような仕組みをとる必要があるということでございます。
 一番上の法人の長の職務のみを行うような者についての名称については理事長と,こういうふうにしてはどうかということでございます。これについては前回の会議でもいろいろ御意見が出ているところではございます。
 続きまして,2ページ目でございますけれども,2ページ目の法人運営の参画という観点で申し上げれば,法人本部には,それぞれ先ほど申し上げました大学の長が理事として,やや裁量や権限をより高く持つ者として入っていくというふうなイメージになります。また,経営協議会は基本的に法人全体に置くということで,法人全体で一つの審議体ということになるわけでございますが,場合によってはそれぞれの大学ごとに分科会のようなものを設ける運用というものも考えられるだろうということでございます。
 教育研究協議会は逆に,基本形としては法人には置くことになりますが,大学ごとに重要事項を審議する場ということで,A大学の教育研究協議会,B大学の教育研究協議会というものが想定されるということでございます。ただ,両大学の教育研究をまたがったものをどう考えるかということも当然出てくるわけでございますので,その場合には連携協議会といったような運用も当然考えられるということでございます。
 最後のページがこれまでの議論をまとめたイメージ3ということで,先ほど申し上げた左上にございます設置する大学の長が全て法人の長と異なる場合ということで,A大学,B大学の長がそれぞれ単独で別に置かれるという場合のイメージ図ということでございますが,法人の長の任命権,また,大学の長の任命権,また,大学の中での教員,職員の方々の任命権といったような関係がここに書いてあるとおりになっていくということでございます。
 先ほど申し上げましたように,前回の御意見も踏まえまして,本日の午後に最終的な御審議をいただく予定でございます。御審議の状況にもよりますけれども,本日,基本的な方向性を取りまとめいただいた上で,可能であれば,この御意見を踏まえた法改正というものをこの次の,この1月に始まります通常国会に提出をすべく作業を進めているという状況でございます。
 御報告は以上でございます。
【永田分科会長】  ありがとうございました。本日の午後に最終まとめが出来上がるということですが,何かコメントございますでしょうか。
吉岡委員,どうぞ。
【吉岡委員】  コメントというわけではないんです。今まである意味では同一人格であった法人の長と大学の長が分かれる可能性が非常に大きくなったということですね。この中で見ると任期を基本的に同じにするという形になっているわけですが,実際には,任期の途中でどっちかが辞めたり,倒れたりとかということでずれることがあるわけですね。理事長と学長がコミュニケーションがうまくいっていて,同じペアで行っているときはいいんですが,片方がずれることが起こったときには,結構いろんな問題が生じると思うのです。しかも選任の仕方が法人の長の選任の仕方と大学の長の選任の仕方がやはりこれでは少し違えているというイメージなので,ずれということが起こり得るということをちょっと念頭に置いた方がいいかなと思いました。
【永田分科会長】  ありがとうございます。それでは,これは改めてまた最終まとめを本分科会で御報告することになると思います。
 それでは,本日最後の報告事項ですけれども,2019年度の高等教育関連予算について,事務局から御報告をいただきます。
【蝦名高等教育企画課長】  それでは,お手元,資料6-1と6-2を御覧いただければと思います。昨年の8月末に概算要求を行いまして,昨年末に予算の政府案が取りまとめられましたけれども,そのうちの高等教育局の主要事項について整理をしたものでございます。6-1,1枚紙にございますように,大きく生産性革命,人づくり革命,大学改革というものを柱にいたしまして,それぞれ必要な予算を計上しているところでございます。簡単に御説明させていただければと存じます。
 まず生産性革命といったところでは,Society5.0に向けた人材育成という観点から,例えば大学におけるサイバーセキュリティー人材などの情報技術人材でありますとか,データサイエンティストなどの社会のニーズに応じた人材育成を行うといったことなどを中心に,13億円の予算の計上を行っているところでございます。また,併せまして,そういった先端的な人材育成とともに,文理を問わず,多くの大学におきまして数理・データサイエンスの基礎的な部分の素養が必要であろうということで,これは既存の事業で,6つの大学にそうした教育の先陣を切っていただくためにカリキュラム開発などもお願いしてございますが,それらに対しまして,それらをベースとして協力校というものを設定をいたしまして,そこで得られた成果を全国の大学に普及をしながら検証していくといったことも併せて行いたいと考えているところでございます。
 また,人づくり革命というところでは,一番大きなものとしては学びのセーフティーネットワークの構築ということでございます。奨学金の事業につきまして,必要な予算を予算に計上いたしてございます。一つには,2018年度から本格的にスタートした給付型奨学金の制度,本格実施から2年目を迎えます2019年度におきましても,必要な額をしっかりと計上していくということが一つでございますし,また,無利子奨学金につきましては,受給資格を満たす希望者全員に対して貸与が可能となるようにということで,所有の金額を計上いたしてございます。
 また2020年度からは新しい高等教育の負担軽減方策を実施するということでございまして,そのための準備,2019年というのは大事な時期ということでございます。そのための所要の経費も計上いたしているところでございます。
 また,人づくり革命のもう一つの柱として,リカレント教育を挙げさせていただいてございます。この中では特に持続的な産学共同人材育成システムを構築しようということで,実務家教員の育成に関するプログラムの開発・実施ということを始めてみたいと考えてございますし,大学と産業界との間でのマッチングのような仕組みの開発などにも着手をしていければということで,所要の額を計上いたしてございます。
 そして,大学改革の部分でございますけれども,基盤的な経費として,一つには,国立大学改革の推進ということとしてございますけれども,国立大学の運営費交付金につきまして1兆971億円,これは2018年度,今年度と同額でありますけれども,これを計上するとともに,国立大学経営改革促進事業ということで,学長の経営改革構想の実現を加速するための運営費交付金とは別の補助金につきまして5億円増の45億円を計上いたしているところでございます。特に国立大学運営費交付金の中では,挑戦する国立大学への支援をこれまで以上に行っていこうということで,新たな評価・資源配分の仕組みを導入し,そうした取組の後押しをしていくといったことや,若手教員の活躍の促進といったようなことのために必要な額を計上いたしているところでございます。
 また,私立大学の改革促進ということで,私立大学経常費補助につきましては3,159億円を計上いたしてございます。2018年度,今年度に比べますと5億円の増ということでございます。この中では,特に一般補助と特別補助とに私学助成は分かれますけれども,一般補助におきましては,客観的指標を活用した,メリハリある資金配分をより目指していくということ,特別補助の中では,各大学の取組に応じて重点的な支援を行うための私立大学等改革総合支援事業というものを充実をさせていくといったようなことなどを内容とした所要の金額を盛り込んでいるところでございます。
 また,国立高等専門学校につきましては,その教育内容の高度化,それから,国際化の支援ということをしっかりと後押しをできるようにということで,626億円を計上いたしているところでございます。
 世界に誇るトップレベルの教育研究活動の実践ということで,卓越大学院プログラムにつきましては,74億円を計上いたしてございます。2018年,今年度からスタートをしているプログラムでございますけれども,2年目に当たる来年度におきましても新規での事業の展開が可能となるようにということで,こうした金額を計上しているところでございます。
 グローバル人材の育成につきましては,大学の国際化と,それから,留学生の交流,日本人の学生が外に出ていく者を支援する,あるいは優秀な留学生を受け入れる支援,双方から交流を支援していくといったようなことで,所要の金額を計上いたしてございます。
 最後に,高大接続改革の推進ということでございます。2020年度からの新しい大学共通テスト,大学入学共通テストの実施に向けて,引き続きその内容の検討を行っていく,検証に基づいた開発を行っていくということなどを内容としまして,ここにございますような金額を計上いたしているところでございます。
 2019年度に向けての予算案,現在,計上しております主な内容につきましての御説明は以上でございます。
【永田分科会長】  ありがとうございました。これは御説明だけということでよろしいかと思います。
 ありがとうございました。それでは,本日用意しておりました審議事項2件,それから,報告事項4件,いずれもつつがなく終わりました。
 それではこれで閉会とさせていただきますけれども,事務局から,まず事務連絡をお願いいたします。
【石橋高等教育政策室長】  ありがとうございます。本日で第9期の大学分科会,最後となります。活発な御議論,ありがとうございました。資料についてはいつもどおり,郵送希望の方は机の上に残していただければと思います。
 以上です。
【永田分科会長】  第9期の大学分科会は本日の会議をもって最後となります。文部科学省から,義本前高等教育局長においでいただいておりますので御挨拶をお願いいたします。
【義本前高等教育局長】  先生方,どうもありがとうございました。元職ということになりまして大変恐縮でございますけれども,先生方に大変お世話になりましたという観点から,御容赦いただきまして,ここで御挨拶させていただきたいと存じます。
 第9期の大学分科会も本日で最後になりますけれども,発足が2年前の平成29年2月,それ以降,分科会だけで13回も開催いただきまして,先生方には様々な高等教育の課題について御議論いただいたところでございます。今期の大学分科会におきましては,何といっても,2年前の3月に諮問いたしました我が国の高等教育に関する将来構想について,特に中心的に御議論を重ねていただきまして,今後の高等教育改革の指針と位置付けられるべき2040年に向けた高等教育のグランドデザインを11月に答申としてまとめていただきました。これに基づきまして,我々としては,しっかり施策の具体化に進めていきたいと思います。
 思えば,この2年間というのはいろんな形の議論があったと存じます。しかもこの中央教育審議会の主体性を問われるような形で,例えば23区の定員問題ですとか,あるいは諮問会議も含めてイノベーションとか経済的な観点からの大学改革をめぐる様々な議論がありましたけれども,そういう中においても中央教育審議会が主体性,自立性を発揮いただきまして,しっかりした形での将来につながるような答申をまとめていただいたということについて,我々としては大変有り難かったと思っていますし,また,これに基づいてしっかりした形での高等教育政策を具体化するということをここでもってお誓いさせていただきたいと存じます。
 答申以外にも,専門職大学等の新たな高等教育機関の制度化の問題,あるいは大学院制度と教育の在り方の問題,法科大学院制度の教育の改善・充実,あるいは認証評価機関の認証など,様々な観点から御議論いただきますし,それについても,施策について結び付けたいと思います。
 また,この期間におきましては,いわゆる獣医学部の設置・認可問題ですとか,この夏におきましては,大変我々としては反省しないといけないと思っておりますけれども,いわゆる幹部職員のいろんな形での行為によりまして文部科学省全体の組織が揺れた時代がありましたけれども,そこを先生方にお支えいただきまして何とかここまで来たということについて,改めて感謝したいと存じます。
 私も,昨日をもちまして高等教育局長を離れまして,明日からでございますけれども,大学入試センターの理事に異動する予定でございます。これも中央教育審議会でも御議論いただきましたけれども,高大接続改革ということで,2020年からスタートする共通テストの具体的な実施の最後のいろんな調整を図るという任務をいただいているところでございます。今後ともいろんな形で先生方から御指導賜りたいと思っていますし,また,我々としては,この答申,あるいはこの第9期でのいろんな御議論をしっかり胸に置きまして施策に進めていくということをお誓いさせていただきまして,粗辞ではございますけれども,御挨拶に代えさせていただきます。本当にどうもありがとうございました。(拍手)
【永田分科会長】  ありがとうございました。
 私からも簡単に御挨拶を申し上げます。委員の先生方には大変お世話になりました。御礼を申し上げたいと思います。義本前高等教育局長からほとんどお話しいただきましたが,私からも一言だけ付け加えたいことがあります。
昨今、教育界以外の多方面からいろいろな意見が出てくるようになりましたが,基本的には,教育論にのっとって教育のシステムを考えるのが中教審の役割であり,その本質を忘れずに我々は議論をずっと続けてきました。
 本分科会の成り立ちを振り返ると、内閣総理大臣が諮問する臨教審の第4部会「高等教育の改革」からスタートして,そこから大学審議会ができて,2001年から中央教育審議会の中に大学分科会ができました。こうした成り立ちを考えると,多方面からいろいろな意見が出るのも当然なのかなと思います。しかし、一旦中央教育審議会の議論に付したからには何が何でも教育論に則って教育施策を話し合うべきである、という信念を持ち議論してきました。委員の先生方には本当にいろいろとお世話になったというのが実感です。高等教育については今後も議論が続くと思いますが,いろいろな場所で,いろいろな形で,今後もその精神で前向きに高等教育を捉えていただければと思います。本当にありがとうございました。(拍手)
 ということで,これで第146回の大学分科会はお開きです。どうもありがとうございました。

―― 了――

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(高等教育局高等教育企画課高等教育政策室)