大学分科会(第145回)・将来構想部会(第9期~)(第29回)合同会議 議事録

1.日時

平成30年11月20日(火曜日)10時~12時

2.場所

TKP赤坂駅カンファレンスセンター ホール13A

東京都港区赤坂2丁目14-27 国際新赤坂ビル 東館 13F

3.議題

  1. AIを活用した、日本社会の未来と高等教育に関するシミュレーションについて
  2. 我が国の高等教育に関する将来構想について
  3. 教学マネジメント特別委員会の設置について
  4. 高大接続改革の進捗状況について
  5. その他

4.出席者

委員

(分科会長・部会長)永田恭介分科会長・部会長
(副分科会長・副部会長)北山禎介,村田治の各副分科会長
(委員)有信睦弘,志賀俊之,室伏きみ子,山田啓二の各委員
(臨時委員)麻生隆史,安部恵美子,石田朋靖,大島まり,金子元久,河田悌一,黒田壽二,小杉礼子,佐藤東洋士,佐野慶子,鈴木雅子,伹野茂,福田益和,古沢由紀子,益戸正樹,両角亜希子,吉岡知哉,吉見俊哉の各委員

文部科学省

(事務局)山﨑文教施設企画・防災部技術参事官,平野大臣官房審議官(総合教育政策局担当),塩見社会教育振興総括官,義本高等教育局長,藤原事務次官,白間私
学部長,伯井文部科学戦略官,岩本文部科学戦略官,森大臣官房審議官(高等教育局担当),田村初等中等教育局参事官(高等学校担当),金光私学部参事官,蝦名高等教育企画課長,三浦大学振興課長,淵上国立大学法人支援課長,石橋高等教育政策室長 他

オブザーバー

(オブザーバー)京都大学こころの未来研究センター副センター長広井教授,株式会社日立製作所基礎研究センター日立京大ラボラボ長代行嶺主任研究員

5.議事録

【永田分科会長・部会長】  おはようございます。時間になりました。中央教育審議会大学分科会第145回と将来構想部会第29回の合同会議を始めさせていただきます。
 報道関係のカメラ等ですけれども,議題1が終わるところまでの撮影を可とさせていただきます。その後はお控えいただきたいと思います。
 前回,10月17日の将来構想部会で,2040年に向けた高等教育のグランドデザインの答申案に対しての団体からの発表,意見交換等を行ったところです。
 本日は大きく4つの議題がございます。最初は,答申案の前に,AIなどの新しいテクノロジーの創造によって新しい価値を見出していく,あるいは創造するという動きが,現在いろいろと始まっています。その中で,教育政策に関してもどう活用していくかというモデルの検討を進めてきているところです。教育振興基本計画の中にも,文部科学省が積極的にそういったテクノロジーを導入して,政策立案等に役立てていくという文言が盛り込まれております。そこで本日は,京都大学のこころの未来研究センターと株式会社日立製作所基礎研究センターの協働による日立京大ラボにおいて,AIを使って日本の未来社会と日本の未来の高等教育に関するシミュレーションを行っていただいており,その結果が一定程度出たところなので,皆様にお披露目させていただきます。
 2点目は,我々の一番大きな課題ですけれども,先ほど申し上げた2040年に向けた高等教育のグランドデザインの答申案について,関係団体からのヒアリングや,10月10日から26日まで実施しましたパブリックコメントなどの意見を整理し,その上で修正案を作成いたしましたので,それについて議論をさせていただきたいと考えています。
 3点目は,答申案の中で今後の課題として,教学マネジメントに係る指針の策定,あるいは学修成果の可視化と情報公表の在り方に関する検討を行うことが重要であると位置付けております。早速,専門的な調査審議を行うために,大学分科会に教学マネジメント特別委員会を設置したいと考えておりますので,それについてお諮りをさせていただきたいと考えています。
 最後に,世間の注目も一段と増しておりますけれども,高大接続改革の進捗状況について事務局から御説明をしたい,ということでございます。
 それでは,資料等について確認を事務局からお願いいたします。
【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。資料については,今回,大きく5点ございます。資料1-1と1-2が,先ほど部会長から御紹介がありましたAIを活用したシミュレーションについてのものになります。資料2が,答申案の見え消し版,資料3-1がパブリックコメントの結果,3-2が「参考とする御意見等」としてまとめた資料になっております。資料4が,教学マネジメント特別委員会の設置についての案,資料5が高大接続改革の進捗状況についてでございます。不足がございましたら事務局にお申し付けください。よろしくお願いいたします。
 また,加えまして,机上に「会議後回収」ということで,委員の先生方のみに配付させていただいておりますけれども,今回,答申案をまとめた暁には,本文以外にこれだけの資料が付きますということでお手元に配らせていただいております。特にこれを議論するということではございませんが,参考までに見ていただければと思います。
 
【永田分科会長・部会長】  それでは,議事を始めたいと思います。最初に申し上げたとおり,最初は,AIを活用した我が国の未来の社会の在り方及び高等教育の未来像ということでシミュレーションをしていただいた結果を御披露いただきます。京都大学こころの未来研究センターの副センター長,広井良典教授並びに日立製作所基礎研究センター日立京大ラボ,ラボ長代行,嶺竜治主任研究員にお越しをいただいております。本日は御多忙のところ,大変ありがとうございます。
 それでは,早速ですが,御説明を始めていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【石橋高等教育政策室長】  お二人の先生方にお話しいただく前に,文部科学省高等教育局として,このプロジェクトを始めた経緯について簡単に御説明をさせていただきます。
 資料1の中に冒頭書かせていただいているところでございますけれども,今回,2040年に向けた,グランドデザイン答申案を議論するために,2040年に向かう未来シナリオがどういうものになるのかということを、AIを活用してシミュレーションしてみました。昨年,日立製作所日立京大ラボと京都大学こころの未来研究センターの広井先生が取り組まれたところを私たちも知るところとなりまして,是非御一緒にとお声がけして始めました。なお、このシミュレーションを活用するのは政府内では文部科学省が初の試みとのことです。
 内容については広井先生から御報告させていただくことにしますけれども,基本的には,昨年作成されたシミュレーションを踏まえまして,さらに高等教育のキーワードを因果連関モデルの中に入れていくというようなことをさせていただいて,どういうシナリオが出てくるかを分析したものになります。
 広井先生,よろしくお願いいたします。
【広井教授】  御紹介いただきました京都大学の広井でございます。それでは,今回行いましたシミュレーションにつきまして,お手元の資料1-2になるかと思いますが,それに沿って簡潔に御説明をさせていただきます。
 まず,資料1-2の2ページをごらんください。これは,今回行いましたシミュレーションの全体の流れを示したものでございます。大きく上から,情報収集ステージ,選択肢検討ステージ,戦略選択ステージの3段階になっています。最初の情報収集ステージといいますのは,そもそも何を明らかにするためにシミュレーションを行うのかといった問題の設定に始まり,情報収集,その体系化を踏まえて,モデルを作る段階で,これは人間が行います。2段階目の選択肢検討ステージは,そうしたモデルを踏まえまして計算を行い,その結果を出す段階で,これは基本的にAIが行います。最後の戦略選択ステージは,そうした結果につきまして,様々な解釈や価値判断を行い,それを踏まえた政策提言をまとめる段階で,これは再び人間が行います。したがいまして,全体を見ますと,いわばサンドイッチ型といいますか,最初のモデル作りと最後の解釈の部分を人間が行い,真ん中の計算の部分をAIが行うという構造になっていると言えるかと思います。
 続く3ページですけれども,これは最初のモデル作りに関するもので,いわゆるワークショップを行いまして,日本社会の現在,そして未来にとって重要と思われます社会的要因を洗い出していくプロセスです。昨年作りました私どもの当初のモデルに関するのが左の絵でありまして,そこに出ているようなキーワードないし社会的要因を149選び出しました。しかし,それには教育関連の要因がほとんど含まれておりませんでしたので,今回,右の絵に関するものですが,高等教育に関する17の要因を新たに選び出し,それを従前の要因と統合して,最終的に166個から成る要因の因果連関モデルを作りました。
 次の4ページは,そうしてできたモデルを示したものです。今申しました166個の社会的要因につきまして,要因間で考えられます因果関係にプラスマイナスを含めて入れ込むと同時に,その因果関係の強さ,タイムラグを定量的に入れております。
 ただし,要因間の因果関係,特に未来の予測については不確実な面が非常に大きいものですので,そうした不確実性あるいはばらつきを十分入れ込んだモデルを作っています。
 次の5ページと6ページでは,そうしたモデルを作って,ダイナミックな変化をAIに計算させますと,時間の経過の中で166の要因が相互に影響を及ぼしながら変化していきます。それを示しているのが5ページと6ページの図になりますけれども,そのように各要因が時間の流れの中で変化していくにつれて,それらはやがて様々なシナリオに分岐していきます。いわば,未来の日本が様々に分かれていくイメージです。2050年頃に向けて,差し当たり,そうした未来シナリオは約2万通りに分かれていきますが,それらのパターンを見ていくと,大きく8つのシナリオに分かれることが,このAIによるシミュレーション結果から示されました。その8つのシナリオの代表的な例をひとまず示しているのが,5ページと6ページの図でございます。
 そして,そうした8つのシナリオにつきまして,それぞれのシナリオの中身を,未来の日本を考える上で重要と思われる観点から評価していくのが次の作業で,それを示しておりますのが7ページの表でございます。表の一番上の行に,左から順に,まず,人口,財政,地域,環境資源とありますが,これらは持続可能性に関する4つの評価軸を示しているものです。
 続きまして,雇用,格差,健康,幸福となっておりますが,これらは先ほどの4つの持続可能性とは別に,未来の日本社会を考えるに当たって重要と思われる4つの社会的パフォーマンスの領域を挙げたものです。そして最後に,教育という観点を今回は独立した領域として立てています。
 先ほど,2050年の日本が大きく8つのシナリオに分岐すると申しましたが,そうしたそれぞれのシナリオについて,それを今申しました4つの持続可能性と雇用,格差,健康,幸福,教育の観点から評価していった結果を示したのがこの表になります。
 〇,△,×と大まかな分布をごらんいただければと思うのですが,大きく上の半分,つまりシナリオ1から4と下半分,つまりシナリオ5から8に分かれまして,下半分の4つのシナリオは概して×が相対的に多いことが見て取れます。これらは,例えば,地域のところの×が顕著でありまして,いわば一極集中が進んで,日本全体の出生率も下がって,人口も減少していくといったイメージの社会像で,こうした下半分のグループをここでは「持続困難・都市(一極)集中型グループ」と呼んでいます。
 また,残る上半分の4つについて見ますと,シナリオ4がそれらの中でやや×が目に留まるということが示されておりまして,上のシナリオ1から3が相対的に最も良好なグループと言えます。この1から3は,人口や地域の持続可能性も相対的に高く,雇用をはじめとする社会的パフォーマンスも比較的良好で,これを「持続可能・地方分散(均衡発展)型グループ」と呼んでおります。
 実は,この後御説明しますように,以上8つのシナリオは時間的な分岐とも関連しておりまして,すなわち,最初にシナリオ1から4と下半分のシナリオ5から8の分岐が生じて,さらに時間が経過する中で,1から3と4の分岐が生じることがシミュレーションから分かっています。
 この表で特に注目していただきたいのが,教育のところの〇,△,×のパフォーマンスと4つの持続可能性,そして,4つの社会的パフォーマンスが一定以上相関しているという点でございます。つまり,教育分野のパフォーマンスがよくないと,社会全体の持続可能性や社会的パフォーマンスの面でマイナスになりやすい傾向が示されておりまして,逆に,教育分野のパフォーマンスが良好であることが社会全体の持続可能性や社会的パフォーマンスに寄与することが示唆されているということで,これは後ほど改めて整理いたしたいと思います。
 8ページをごらんください。これは,先ほどから述べております8つのシナリオへの分岐を,それぞれのシナリオの間の距離に則して見たものです。これは,それぞれのシナリオの内容が互いに近いかどうかを,その空間的な距離として表したものとしてごらんいただければと思います。
 下の方にあるシナリオ5から8が,持続可能性等において問題の大きいシナリオであり,先ほど申しましたように,上半分の1から4と下半分の5から8がまず分岐し,次に,上半分の1から4の中での分岐が生じて,真ん中の1から3が相対的に最も良好なシナリオになります。
 9ページに進みますが,これは先ほどから述べております時間的な分岐のパターンを示したものでございます。若干これは見づらいかと思いますが,大きくは,今から9ないし10年後に第1の分岐が生じ,続いて今から16ないし17年後に第2の分岐が生じるというシミュレーション結果が示されております。この点を踏まえますと,後ほど改めてまとめますが,できる限り早急に高等教育に関する改革を着実に進めていく必要があることが言えると思われます。
 続く10ページと11ページは,今述べているシナリオの分岐に当たりまして,モデルに入れた要因のうち,どの要因がその分岐にとって大きな意味を持つかという点を,やはりAIを活用して計算したものです。
 10ページは第1の分岐に関するもので,望ましいと考えられる1から4のシナリオに誘導するに当たって,教育関連では大学進学率という要因が最も上位に位置していることが示されております。それ以外の教育関連の要因を拾い出しますと,教育投資,留学生,研究者,地方大学の振興といった要因が位置しています。
 11ページは第2の分岐に関するもので,望ましいと考えられます1から3のシナリオに誘導するに当たって,教育関連では,都市部の大学の規模,大学進学率が上位に位置しており,それ以外の教育関連の要因を拾い出すと,教育投資,リカレント教育,国際通用性といった要因が位置しています。
 終わりに,まとめをさせていただければと思います。まとめ1は,先ほどお話ししました内容を再掲したものでございまして,未来の2050年の日本が大きく3つのグループのシナリオに分かれるというのが1)でございます。2)は,上の2つ,持続可能・地方分散(均衡発展)グループと持続不良・地方分散型グループとその下,持続困難・都市(一極)集中型グループとの分岐が第1に生じて,上2つの中での分岐が2段階目で生じることを示したものでございます。
 13ページが教育との関連でございます。まず,高等教育の質の向上・充実は,先ほども申しましたように,日本社会全体の持続可能性や社会的パフォーマンスに寄与する度合いが高く,2040年の将来を見据えた場合に,9ないし10年後頃までに答申案で提言されている改革を着実に実行することが重要です。
 より詳細に分析しますと,これはやや細かい数字の分析になりますので,先ほどのスライドには直接入ってはいませんが,シナリオ5から8,これは持続可能性が低いグループですけれども,これは人口や地域のマイナス等が顕著である一方で,教育関連の指標の中でも,教育の質,大学進学率,地方大学の振興が明らかにマイナスになっておりました。したがいまして,この3つ,教育の質,大学進学率,地方大学の振興を重視していくことが,持続可能性や社会的パフォーマンスに寄与する度合いが高いと言えるかと思います。
 3)ですが,説明の中でも触れてまいりましたように,今回のシナリオ分岐は,昨年行いましたシミュレーションと関連しますが,都市(一極)集中型か地方分散(均衡発展)型かという,いわば空間的な軸とも関連しておりまして,シナリオ5から8は都市集中型,シナリオ4は持続可能性が低い地方分散型,シナリオ1から3はその中間のバランスの取れた姿と解釈することができますけれども,高等教育の望ましい充実・強化が,地方を含めた日本全体の均衡ある発展につながることが示されたと言えるかと思います。
 最後の14ページは,これは先ほど申しましたことで,第1の分岐につきましては,1番目でシナリオ5から8の持続可能性が低い方向に進まないためには,高等教育関連政策としては,要因として寄与度が高い大学進学率の向上,教育投資の充実,留学生の確保,研究者の確保・育成,地方大学の振興を進めることが必要であるということでございます。
 第2の分岐につきましては,シナリオ4の望ましくない方向に進まないためには,要因として,寄与度が高い一定程度の都市部の大学の規模の確保,大学進学率の向上,教育投資の充実,リカレント教育の推進,国際通用性の確保を進めることが必要,こういう結果が示されたと言えます。
 以上,雑駁ではございますけれども,御報告とさせていただきます。
【永田分科会長・部会長】  大変興味深い結果,ありがとうございました。それでは,御質問,御意見等,若干伺いたいと思います。
 それでは,小杉委員,どうぞ。
【小杉委員】  大変おもしろい研究をお聞かせいただきまして,ありがとうございました。図表の読み方がちょっと分からないので教えていただきたいのですが,2つあります。1つは,7ページのマルバツ表なんですけれども,その中の財政というところは,本文を読みますと,財政と社会保障が含まれているようなものじゃないかなと推測されるんですが,財政が〇の場合が下に全部偏っていますよね。財政だけがほかと違う動きをする,財政だけ残るということでしょうかというのが1つ目です。
 もう一つは,11ページの感度の表ですけれども,符号のマイナスの意味を,多分,絶対値が大きいと影響力が大きいということだと思いますが,符号のマイナス,プラスは余り意味がないと考えてよろしいでしょうか。都市部の大学の規模にマイナスが付いていると,これはどっち側の要因だろうと不安に思いましたので,お願いいたします。
【広井教授】  ありがとうございます。いずれも重要な点で,1点目は7ページ,確かに財政はこちらの5から8が丸が付いているんですね。これは,1つの解釈としては,5から8というのは,いわば都市集中,一極集中型と申しましたように,やや単純な言い方をすると,一部の強い地域だけが残って地方などが切り捨てられるというような,ややそういった社会像とつながっているイメージ,それにより地域が全部バツになっているというようなことです。ですから,一部について財政的なパフォーマンスは,そういった部分を切り捨てることになるので,一見パフォーマンスがよい形になるけれども,全体として見るとかなり,さらに長期で考えると,人口も減っていきますので,望ましい姿とは言えないのではないかということで,解釈としては,財政が持続困難・都市(一極)集中型グループで丸になっているのはそういった意味合いで考えてございます。
【小杉委員】  財政には社会保障は含まれているのですか,含まれてないのですか。
【広井教授】  ここで言う財政には入っていません。
【嶺副ラボ長】  11ページの方ですけれども,こちらは分岐点2の要因の解析をしたものです。シナリオ1から3と4がどう分かれるかということで,実質はマイナスを取っていただいて解釈いただければと思います。
【小杉委員】  ありがとうございます。
【永田分科会長・部会長】  有信委員,どうぞ。
【有信委員】  詳細な検討,どうもありがとうございました。それと,我々にとって非常に都合のいい結論が出ているので特に文句はないですが,ただ,若干気になるところがあって,非常に大量なデータ,あるいは,それぞれの要因を検討されているけれども,基本的にここで「因果関係」という言葉が多用されていて,正の因果関係,負の因果関係という形で,少なくともデータに関しては,基本的に相関関係は分かりますが,因果関係を説明するにはそれなりの論理演繹的なものがなければ因果関係は言えません。したがって,いろんなところで分岐等々が言われていますが,これを因果関係という考え方で捉えてしまうと,多分,極めて危険ですよね。だから,そこを突っ込まれると,せっかくいい結論が出ているのに全部ひっくり返される可能性があるということと,もう一つ,ここで様々要因を考えておられますが,例えば,今検討されているような外国人労働者をたくさん入れるとか,そういうような政策の要素は基本的には,今言ったように,予測をやるためには,ある種の論理演繹的な考え方を入れないといけないので,そういう新しい政策を入れた影響を見るときには,また別の相関関係からそれをどう予測していくかというようなことを考えなければいけないですよね。その辺についてはどれぐらい考慮されているのか,その辺の2点を教えていただければと思います。
【広井教授】  ありがとうございます。それも非常に重要な点で,我々もかなり意識してきた点ではございますけれども,まず,4ページのもともと作ったモデル自体は,これは要素間の関係は因果の線を引っ張って,それがダイナミックに変化していく中で相互に連関し合いながら,いろいろな要因が直接,または間接に影響し合っていく中で分岐していくというイメージですが,まず,ここの因果関係というのは,要素を入れる段階で,先ほども言いましたように,かなり未来に関するもので不確実な度合いが非常に大きいものですので,かなりばらつきの幅を入れ込んだシミュレーションにして,不確実性の部分をかなり繰り込んだといいますか,そういうモデルになっているのが1点でございます。
 しかし他方で,おっしゃってくださいましたように,因果連関の部分と相関の部分は極めて慎重に区別するべき点でございまして,7ページの表に則しまして教育との連関ということを言いましたけれども,この表自体から言えることは,あくまで御指摘のとおり,相関関係でございますので,そこの部分を,教育が因果関係でほかをよくするというような説明をするのには,それはちょっと違ってきますので,相関が強いというのが基本的な事実関係でございます。
 もう1点は,10ページ,11ページのところは分岐の要因で,どの要因が感度が大きいかということの比較ですので,ここは多少,その因果に関わる要素があるかと思いますけれども,これも単純な因果というものではございませんので,その点も非常に注意して,これは解釈,理解するべきものと考えてございます。
 2点目につきましては,実はこのモデルの中には,移民とか外国人労働者という要因は直接は入れていません。ですので,そういった意味では,これはこれで一定の仮定を置いたモデルになっています。未来の予測につきましては,現時点では全く予想できないような変化が生じることがございますので,これはそういったことを踏まえた上での限定された結果と解釈するべき点はあろうかと思います。
 ただ,先ほどの不確実な要因を要素間の間では入れておりますので,ある程度,未来の不確実な部分も吸収するような性格も持っているのではないかとは考えています。
【有信委員】  ありがとうございました。心配しているのはそういうことです。それから,こういう手法を使うのは極めて重要で,今後,新しい政策をどんどん入れていくときに,政策の影響度を具体的にあらかじめ見ながらやっていくことは重要なので,それも踏まえて,是非新しい,このモデルの発展をやっていただければと思います。よろしくお願いします。
【広井教授】  ありがとうございます。
【永田分科会長・部会長】  村田副分科会長,どうぞ。
【村田副分科会長】  ありがとうございます。非常におもしろい結果,本当にありがとうございます。私は,2点質問させていただきたいと思います。
 1つは,まず初めに確認ですが,13ページの最後,まとめの3)のところに,地方分散の均衡発展型が一番よく,都市集中型,あるいは,特に極端な地方分散型が悪くて,その間ぐらいが一番いいんだという結論なのかと思いますが,まず,これに関しまして質問ですが,一極集中型あるいは都市集中型,あるいは地方分散(均衡発展)あるいは地方分散・持続不良という定義は,一体,何をどういう手法で定義をしているのか。私が聞き逃したのかもしれませんが,まず教えていただきたいということです。
 2つ目の質問ですけれども,これは特にきょうは中央教育審議会ですので,高等教育のところに重点を置いていただきまして,分岐点1と分岐点2のところがありますが,分岐点1のところでは,高等教育に関しましては,地方大学の振興が1つの要因に挙がってきておりまして,さらにそこから10年ぐらいたった後の分岐点2では,今度は逆に,都市部の大学の規模の確保と,反対のことが出てきております。ということは,今回のシミュレーションでは,まず地方大学の振興をし,そしてその後で,10年ぐらいしてから都市部の大学にというような結果になって,ちょうど中間の方へ行くというような解釈が間違っているのかどうか。
 もう一つの質問ですが,やはりまとめの3のところにございます。教育の質,大学進学率,地方大学の振興の重視と書いていますが,この3つのうち,どれが一番重要なのか。3つとも重要だと思いますが,特に,せっかくシミュレーションで,こういう係数が出てきておりますので,どの係数が一番大きくなって,要因としては大きいのかということもお教えいただければと思います。よろしくお願いいたします。
【広井教授】  ありがとうございます。それは,私どもとしてもかなり重要な点だと思っているテーマでございまして,その点を御指摘いただきましたこと,大変ありがたく思います。
 最初の,13ページの都市集中型とか地方分散型といったことの定義でございますけれども,これは7ページにございますようなシナリオの分岐のそれぞれのグループ全体のマルバツの,あるいはもうちょっと別の数字の指標がございますけれども,全体を見た上で,ここで示されている社会の姿がどういった性格のものかを言葉として後から名付けたという性格のものでございます。ですので,例えば,下半分の5から8は地域が全部バツになっておりまして,人口が全部バツになっておりますのは,例えば,出生率は東京が都道府県の中で一番低いということがありますので,大まかなイメージとしては,東京に全て集中すると全体の出生率が下がって人口も減っていくということがございますけれども,そういった集中型の社会像をこれらは全体として示していると言えるのではないか,そういったことで,このシナリオ,グループの性格を大きく特徴付ける名称を付けたというのがその意味でございます。
 2点目が,最初の方で地方大学の振興,後の方で都市の大学の規模の話が出てきたことの解釈でございますけれども,基本的に御指摘いただいたとおりでございまして,前後して恐縮ですが,7ページの5から8の望ましくないグループを見ますと,そこの資料には入れていませんけれども,細かい指標の数字を見ますと,下の4つは地方大学の振興,教育の質,大学進学率がいずれもマイナスに出ていまして,つまり,こちらの5から8の,先ほど申しました都市集中型,一極集中に偏ってしまわないためには地方大学の振興が重要であると。
 今度は,さらに次の段階で,1から4と5から8の内,今度は1から4のところで,4というのは,いわば,地方分散が行き過ぎたようなパターンで,これはまた別の意味で望ましくありません。それを緩和するためには,一定の都市部の大学の規模も確保する必要があるということでございます。ですので,基本的には村田副分科会長が御指摘になったとおりのイメージでございます。
 3番目,13ページのまとめの2)の教育の質,大学進学率,地方大学の振興のいずれが特に重要かというのは,この分析自体からは直接には出てきていません。関連性が深いというところまでに,差し当たってはとどまってございます。
【永田分科会長・部会長】  ありがとうございます。この話題はまだ検討中でありまして,本日,本論である答申案の審議もいたしますので,あとお二人に限定させていただきます。
 それでは,河田委員と吉見委員、続けてどうぞ。
【河田委員】  10ページと11ページ,それとまとめにも関わるのですけれども,1つだけ質問です。10ページのところではリカレント教育が入っていません。それから,留学生の確保が入っているのに国際通用性が入っていません。逆に11ページでは留学生の確保が入っていません。研究者の確保・育成も入っていません。どうしてこういう違いが出てくるのでしょう。僕の感覚では,分岐点1の段階でもリカレント教育は必要だし,留学生がいるならば国際通用性も必要です。分岐点2のところでも,例えば,外国人の研究者や教員を雇用したり育成したりする必要があるのではないかと思うのですが,その辺りを教えていただければと思います。
【石橋高等教育政策室長】  ありがとうございます。ここは,解釈をしていく中で我々が理解しているのは,最初の分岐のときの要因が大学進学率の向上,教育投資の充実,留学生の確保,研究者の確保・育成,地方大学の振興の5つで,それ自体は分岐したときに,これは大事だというものになっていて,その次の分岐のときには一定程度の都市部の大学の規模の確保,大学進学率の向上,教育投資の充実,リカレント教育,国際通用性の5つが大事だということなので,付加されていると考えていただいた方がいいんじゃないかと思っていまして,最初の分岐でまさに都市集中に行かないためにはこういう要因を大事にしていくと。次の分岐では,極端な地方分散に行かないようにという考え方なので,そのときはここに書いてあるリカレントとか国際通用性がさらに大事になってくると考えていただいたらいいのではないかと思います。
 ここに出てきているもの以外が必要ではないということよりは,こういう要因がトップの方に出てきたと見ていただければいいのではないかかと思っています。これは,あくまでもAIが出したシミュレーションの結果とお考えいただければと思います。
【吉見委員】  興味深いお話,ありがとうございました。外部的要因,先ほど,有信委員の後半の方のお話にもちょっとございましたけれども,日米関係がこれからどうなっていくのかよく分かりませんけれども,しかし,日本の学生においても研究者においても,優秀層の海外への流出がどんどん拡大していくとか,あるいは,中国の大学の実力がもっとどんどん伸びていって,日本をはるかに凌駕していくとか,そういう国際的な学問あるいは教育が大きく変わっていくというような要因,可能性が,このシミュレーションの中にどのくらい入れられているのかということがまず第1点。
 それに関連しますけれども,未来のことは必ずしも分からないのですけれども,しかしながら,例えば,政治学や経済学といった学問の知見を応用すれば,ある程度,可能性としては,こういうことが起こり得るということの予測は私は可能だと思うんですけれども,そのような政治学,経済学,社会学等々の学問の知見をここに入れ込むことが果たして可能なのかどうか,その2点をお聞きしたいと思います。
【石橋高等教育政策室長】  ありがとうございます。まず,高等教育関連の要因を拾い出したのは,我々の方でやりましたので,そのときに「グローバル化」という言葉は入れていますけれども,今,先生がおっしゃっていただいたように,もう少し細かい階層までのキーワードにはしていないので,そこは少し大きな概念になっているのが状況でございます。
【広井教授】  2点目でございますけれども,それは是非,我々としてもやっていきたいと思っている点でございまして,まだ今回のものは,ある意味で試行錯誤といいますか,初期的な段階のもので,いろんな学問領域の知見をさらに取り込む形で,また,どちらかというと国内的な要因が中心になっておりますので,例えば,これのグローバル版を作れないかとか,そういう議論も当初からしておりまして,そのあたりは是非積極的に,さらに,このモデルを改善するなり,より発展的なものにしていきたいと思っております。御指摘ありがとうございます。
【永田分科会長・部会長】  ここまでにさせていただきますが,私からも一言だけ言わせていただきます。
 一点目は,こうした分析において情報収集段階にまだ人が絡んでいるので,この次の段階として,AIが情報収集をしてその中から人が好きなように選択する,という方向に進むのが望ましいのではないかということです。それから,出てきた結果は正しいですよというネガティブコントロールが必要だと思います。今日,すぐ対応する必要はないと思いますが,AIの使い勝手がまだまだだと思うので,今後の展開に期待をしております。この議題はここまでにさせていただきます。お二人の先生方,どうもありがとうございました。今後も興味深い結果をどんどん生んでいっていただきたいと思います。
 それでは,審議は次の議題に進ませていただきます。先ほど申し上げたように,2040年に向けた高等教育のグランドデザインの答申案について,最後の議論を行いたいと思っております。先ほど申し上げましたが,2週間強の期間でパブリックコメントを実施しました。それから,ご出席いただいた先生方もたくさんいらっしゃると思いますが,各種の団体からのヒアリングも行ってまいりました。その中で,いろいろな御意見が出ましたので,それらについてまず御説明をさせていただいた方が分かりやすいと思います。その後に,それらを一部反映させたものを最終的な見え消し版として用意しております。これを順次,説明させていただきたいと思います。
 それでは,事務局からお願いいたします。
【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。まず,今,永田分科会長・部会長の御指示のとおり,資料3-1,3-2から御説明をさせていただきたいと思います。
 資料3-1がパブリックコメントの結果でございます。期間が10月10日から26日のこの間,パブリックコメントを実施させていただきました。また,同じように,団体のヒアリングもこの間に行わせていただいたという状況でございます。
 パブリックコメントの総意見数は208件になっておりまして,意見の観点別件数は,その下に整理をして入れさせていただいております。
 めくっていただきますと,「具体的な主な意見」ということで取り上げさせていただいております。全部は御説明いたしませんが,かいつまんで申し上げますと,例えば,2ページ目の最初でございますけれども,やはり国際的な競争がますます厳しくなっていることを考えますと,大学生本位の改革を行う必要があるのではないかというようなことですとか,1つ飛ばしまして3つ目ですけれども,やはりまだ企業の就職面接では,いまだ,何を基準にしているのかが見えておらず,産業界が採用基準を見える化する方が先ではないかというような御意見もございました。
 また,2ページ目の最後の方でございますけれども,高等教育と社会との関係で,学問の自由,大学の自治の関係でございますけれども,適切な緊張関係を保つことが必要であるということも入っているところでございます。
 3ページ目でございますけれども,「多様な学生」のところは,1つ目のところは,やはり一度は海外での学習経験を積む者が増加することが望ましいというような御意見もございましたし,1の「多様な学生」の下から2つ目でございますけれども,例えば,学位の表記について,2種類の名称を表記するやり方があるんじゃないかというような御提案も頂いているところでございます。
 「多様な教員」の1つ目のところには,実務家教員の重要性は認めるが,実態を広く調査し,採用方法や採用基準を検討することも必要と,このような御意見も頂いております。
 めくっていただきまして4ページ目でございますが,3の「多様で柔軟な教育プログラム」のところでございますが,やはり就業構造の転換に対応した人材育成を考えていく必要があるのではないかというところでございますし,文理横断に関しては重要であるけれども,それぞれの学位のカリキュラムについて文理横断の状況を見える化することが改善の第一歩ではないかという御意見も頂いております。
 4の「多様性を受け止める柔軟なガバナンス」のところでございますが,一番下のところに,例えば,地域連携プラットフォーム(仮称)は,少なくとも高等教育が産業界,地方公共団体の御用聞きにならないようにというような御意見も頂いたところでございます。
 また,5ページでございますが,3つ目の「学びの質保証の再構築」のところでございますけれども,日本の高等教育でどのような内容やレベルの授業が行われ,どのように評価されているかが見えてないことも課題であるということで,日本の大学がどういうことを世界に提供していくのかを考えるべきではないかという御意見でありましたり,下から4つ目でございますけれども,情報公開を徹底していくべきであるということであったりとか,情報公表の内容は下から2つ目でございますが,どういうものを公表していくのかについては,いろんなステークホルダーの意見を十分に反映すべきではないかということも書かれております。また,最後ですけれども,学生調査については慎重に進めるべきではないかというような御意見も頂いたところでございます。
 めくっていただきまして6ページでございますが,認証評価に関しましても,例えば,2つ目でございますけれども,受審期間の件ですとか,受審大学が不利益にならないようなことを考えていく必要があるというようなことも御意見として賜ったところでございます。
 7ページでございますけれども,「国公私の役割」のところで,私立大学は「実践的な教育」という言葉が入っておりましたので,それはちょっと違うのではないかという御意見ですとか,「地域における高等教育」の2つ目でございますが,地域連携プラットフォーム(仮称)に関しましては,やはり多様な価値観を持った方々に関わっていただく必要があるのではないかという御意見も頂いております。
 めくっていただきまして8ページ目でございますけれども,「各学校種における特有の検討課題」に関しましては,特に短期大学に関しても,制度の再構築やいろんな議論が必要ではないかというような御意見を,3つ目,4つ目のところに頂いているところでございます。また,「大学院における特有の検討課題」に関しましても,大学院改革と学生支援の関係は少し整理すべきではないかという御意見も頂いております。
 9ページ目でございますけれども,学生の修学コストの関係で,「高等教育を支える投資」のところの2つ目でございますけれども,学生に修学コストの負担増をかけずにやる方法も考えるべきではないかという御意見も頂きました。また,「今後の検討課題」に関しましては,リカレント教育や国際通用性の関係も早急に議論していき,実施に移すべきではないかというようなことでございました。
 「その他」としましては,職員の教育・研究支援という役割への期待についても目配りがなされるべきではないかという御意見を頂いたところでございます。
 このようなパブリックコメントを頂きましたけれども,今回,答申の中に全部盛り込むということよりも,やはり今後,検討すべき課題に対しても非常に有効な御意見を多く頂けたと考えておりまして,資料3-2に,その意見をまとめさせていただいております。これはパブリックコメントのみならず,団体ヒアリングで頂いた御意見も含めまして,教学マネジメント指針の策定や設置基準の見直し等の各種政策の議論の検討の際に活用させていただきたいということで整理をさせていただきたいと思っております。
 例えばでございますけれども,1ページ目の「多様な学生」のところは,リカレント教育に関して,単に社会人向けの夜間コースを新たに設けるのではなくて,社会人が受講しやすい環境を整備することを軸に検討を行うべきであるというようなことですとか,めくっていただきまして,実務家教員の観点,「多様な教員」の1つ目は,先ほど申し上げたのと同じでございますけれども,このようなところも入れさせていただいているところでございます。
 また,3ページ目でございますけれども,「教育の質の保証と情報公表」のところも,先ほど申し上げたようなところが今後議論のときに参考にできるかと思っておりますし,めくっていただきまして4ページ目でございますけれども,上から3つ目,例えば,ポートレートの活用もどう考えていくのかということも重要ではないかということでございましたし,下から3つ目のところですけれども,認証評価に関しましては,もう少しデータの様式や作成方法について統一化していくともっと活用できるのではないかという御意見や,また,設置基準の見直しに関しては,その下でございますけれども,専任教員及び実務家教員の定義が非常に問題ではないかという御指摘を頂いているところでございます。
 また,5ページ目の冒頭も,設置基準に関して,こういう観点から見直すべきではないかということで御意見を頂いているところでございますし,また,5ページ目の後半,地域配置や規模のところでございますけれども,地域連携プラットフォーム(仮称)に関してもリクエストを2点ほど頂いているところでございます。
 また,めくっていただきまして最後の方でございますけれども,7ページ目の「今後の検討課題等」のところには,答申の在り方や,KPIをどういうふうに設けてやっていくのか,また,その工程表などの明示を行うべきではないかということで,このような貴重な御意見は是非参考にしながら,さらなる審議を進めていくことが必要なのではないかということでまとめさせていただきました。
 これらを踏まえまして,資料2でございますけれども,見え消し版で修正の箇所を御説明させていただきます。細かい点は省かせていただきまして,大きく変えたところを整理させていただきたいと思っております。
 2ページ目の「はじめに」でございますけれども,「はじめに」に関しましては,やはり世界の状況を少し加えたところで,2ページ目の真ん中のパラグラフのところに書いているところでございます。特に国としての政策的な努力が強く求められることを付け加えております。
 めくっていただきまして3ページ目でございますけれども,先ほどのAIの御発表にもありましたが,早めにいろいろなことをやっていくことが大事であるということで,速やかに始めなければ間に合わない事項を中心に記載していることを明らかにさせていただいております。
 めくっていただきまして6ページ目でございますけれども,このあたりは少し文言の整理をさせていただいたところでございます。
 それから,少し飛ばしまして10ページ目でございますけれども,「グローバル化」という言葉と「グローバリゼーション」という言葉が両方入っていて少し分かりづらいという団体の御意見がございましたので,そこを整理させていただきました。
 12ページ目でございますけれども,知識集約型社会への転換に関しては,知の拠点の大学が産業を支える基盤になることも期待されるべきであるので,入れさせていただいているところでございます。
 14ページ目でございますけれども,地域の中の高等教育機関というのは,単純にそこで人材育成をすることのみならず,やはり地方創生にとっても重要な役割があることを少し増やして加えさせていただいたところでございます。
 しばらく飛ばしまして,24ページでございます。24ページに関しましては,パブリックコメントの中で,事務職員については何も記述がないのだけれども,やはり教職協働がこれだけ進んできているのであるから,その点についても是非加えてほしいという御意見を頂きましたので,「なお」の2行を足させていただいております。それ以外のところは整理をさせていただいたところでございます。
 少し飛ばしますけれども,29ページのところでございますが,ここは誤解を生じるなというところで,設置認可と認証評価の組合せによる質保証ということ自体が変わるわけではないので,そこの整理をさせていただきました。
 30ページにつきましては,これまで議論してきています3ポリシー,それから,アセスメントの在り方について少し文言を整理させていただいたところでございます。
 32ページでございますが,教学マネジメントに関しましては,今後速やかに議論を開始いたしますけれども,大学にどう受け止められるかということを,ワーキングのまとめで入れていたものを再度こちらにも転記させていただいています。
 少し飛ばしますけれども,35ページは細かい整理をさせていただきました。例えば,大学進学率はずっと右上がりではないというところがございますので,それを正確に記載させていただいたところでございます。
 少し飛ばしまして,39ページでございます。先ほど,パブリックコメントにもございましたし,団体からの御意見にもありましたけれども,私立大学については実践的な教育を行うということだけではございませんので,独創的な教育研究を行う役割ということで整理をさせていただいたところでございます。
 43ページでございますけれども,ここも学校種ごととか,学位を授与する機関であるかというところで少し整理が不十分でございましたので,そのあたりを再整理させていただきました。
 最後,「おわりに」でございます。51ページに関しましても,これはワーキングからも議論がございましたけれども,やはり産業界とともにやっていかなければいけないので,産業界にも是非,評価の視点をより明確に提示していただきたいことは少し強めに言った方がいいのではないかという御意見がありまして,そのあたりを入れさせていただいたところでございます。
 簡単でございますが,以上が修正箇所でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【永田分科会長・部会長】  ありがとうございます。私から若干付け加えさせていただきます。パブリックコメントやヒアリングのまとめを御覧いただければよく分かると思いますけれども,答申を出したその先に関する御意見が多くなっています。次の議題で出てくる教学マネジメントの詳細な内容はもちろんのこと,例えば,実務家教員の在り方一つとっても,何々すべきであるというのは当然ですが,実際には,博士号を持つ者でなければ実務家教員として雇用しないという大学は当然あるでしょう。こうした点は個々の大学が判断すべきことなので,本答申に書き込むのはふさわしくありません。実際見てみると,具体的なアイデアがかなり細かな意見として付されていますが,これらは骨子に既に包含しているという意識で,今回,最終版の見え消し版を作っているということを付言しておきます。
 それでは,御意見等,頂きたいと思います。
【有信委員】  まとめ,どうも御苦労さまでしたということですけど,せっかくまとめていただいたので余り言うことはないんですけど,24ページの最初に,教職協働ということで新たに文章を加えておられますけれども,これ,すごく重要なポイントだと思うのですね。ただ,その下に,各大学のマネジメント機能や経営力を強化させるということもあって,一方で,従来の教員と職員という区別以外に,様々な専門的な役割を担う大学職員が出てきていて,これを今後どういうふうにきちんと制度化していくかはすごく重要な話になるので,単純に教職協働的な書き方ではなくて,下の部分も含めて,様々な役割の大学職員についての記述にした方が,将来を見たという意味ではいいような気がします。これはコメントです。
【永田分科会長・部会長】  ありがとうございます。教員もいろいろと多様化していますので,「様々な」という言葉は大変相応しい表現かもしれません。
 ほかにいかがでしょうか。室伏委員,どうぞ。
【室伏委員】  ありがとうございます。3ページの最後の記述ですけれども,ここで「高等教育が全ての学修者の『学び』の意欲を満たすと同時に社会を支える基盤となり」とありますが,高等教育の最終的な受益者というのは,個人というよりも,私はやはり社会だろうと思っています。個人個人が,高等教育を受けることで創られていくものは,日本の将来であり,日本が今後発展するための力であるということだと思いますので,ここは「同時に社会を支える基盤となり」だけでなく,もう少し社会が受益者であることを強調していただけないかと思いますが,いかがでしょうか。
【永田分科会長・部会長】  ありがとうございます。ポジティブな御意見だと思います。
 そのほか,いかがでしょうか。山田委員,どうぞ。
【山田委員】  ありがとうございます。私の意見も大分取り入れていただきまして,お礼を申し上げたいと思います。
 その上で,大きく2点だけ申し上げたいと思います。1点は,今回,もちろん国際化とかIoTの時代,AIの時代,こうしたものに対して,いかに研究の質とか教育の質を確保すべきかという点と,もう一つは,この中にかなり強く出ているのは,やはり大学の連携,統合の話が出ているなという気がしております。
 そして,様々なシミュレーションをしていきますと,定員に満たない大学,また,その中で,将来的に赤字がなかなか解消できない大学というのは,地方の大学がやはりどうしても多いというのが,マッピングしていくと現実として出てくると思います。そうしたときに一番大切なことは,いかに地域において適正規模な高等教育を確保していくか。そして,それは,この流れの中でも書いてありますように,ここはこの答申の大きな特徴だと思うのですけれども,地域連携プラットフォーム(仮称)を中心とした地域全体で高等教育を支えていく仕組みを作らなければいけないということだと思います。
 そうした点から申しますと,地域連携プラットフォームの役割の一番大きな点は,地域における高等教育のグランドデザインを作って,それに対して地域全体で責任を持っていかなければならない点だと思っておりまして,その点,地域の将来像とグランドデザインという書き方が非常に入り組んでいてあやふやになっていることと,連携,統合に対する地域の協力不可欠,地域の協力がなければ連携,統合は無理だと思いますので,地域連携プラットフォーム(仮称)が積極的にそうした方に関わっていくスタンスをもっと全面的に押し出していただきたいというのがまず1点であります。
 それから,もう1点,国の財政的支援,48ページですけれども,相変わらず財政が難しいという話は,我々みんな知っているんですけれども,将来に対して大変大きなツケが行きます。だから,将来の世代に対しての投資は控えるというのでは,これは往復ビンタみたいなものだと思います。将来の世代にツケが行くのであれば,それだけに今こそ将来の世代に積極的に投資をしていくという姿勢が中央教育審議会の姿勢ではないかと思っているところでありまして,その点から申しますと,社会全体で検討し,それだけに次の世代への投資として必要な公的支援を積極的に確保していく必要があるのだというようなスタンスが要ると思いますし,そして,連携や統合を図っていく上では,例えば,学部の再編とか校舎の再編が出てくるわけですから,そうしたことに関しては,やはり国としても積極的に進めていくための支援措置を講じるべきだというところまで,やっぱり中央教育審議会では書いてほしいなと思っております。
 あと,細かい点,幾つかあるので,それはまた提出しておきます。多分,地方公共団体が寄附するのは,寄附制限というのは国立大学に対する話で,民間だと大体補助金とか出資金になるとか,そうした細かい点はありますので,それはまた後で提出しておきますので,委員長も一読していただければありがたいと思います。
 
【永田分科会長・部会長】  ありがとうございます。御指摘の点は少し気になっておりまして,「寄附金」の募集ではなくて「寄附金等」の募集としなければいけないと思っていましたが,まだここでは直っておりません。
 そのほか,いかがでしょうか。骨子に関わるような修正意見はおそらくもう出てこないはずですが,細かな文言修正等についてはまだ見落としているところがあるかもしれませんので,お気づきの点があれば事務局に御連絡ください。
 それから,今,幾つか頂いた御意見の中で,誤解を招かないように,また,全体の骨子の主張が強くなるように,といった御意見については,私の方で簡単な言葉の追加修正であればできると思っております。
 そのほか,いかがでしょうか。最近,連携・統合についていろいろな団体との意見交換や講演会で話題を出すと,救済措置が目的であるかのように大変ネガティブに考えられているケースがかなり多い,ということが分かってきました。
 そのように記述しているつもりはなくて,教育研究の機能強化のための連携・統合と記述しているのですが,救済のための連携・統合と見られている向きがあります。全体を何度も読み直してみるのですが,どこでそのように取られるのかがはっきり分かりません。しかし,そういう意見を持っている方が多いのは事実です。この点について,どなたか御意見ありますでしょうか。山田委員,どうぞ。
【山田委員】  書いてあるのが,赤字のところは退場とか,定員が不足しているところについてはという,あそこを多分,地方は見てしまうのですね。ですから,そこのところだけだと思います。それでまたマッピングをして,それを示すというと,それがちょっと脅かしみたいにどうも地域は取るみたいです。
【永田分科会長・部会長】  分かりました。違うコンテクストで書いているのですけれども,財政的な問題にも十分目配りしてくださいという部分と連携・統合がどうやらつながっている,というわけですね。そのような誤解を招かないようにしないといけないのですけれども。
 そのほか,いかがでしょうか。よろしいですか。大変長い期間にわたって御議論をいただきました。今,最後の最後に幾つか御意見を頂きました。そこで,11月26日に最終答申を中央教育審議会総会で北山会長から大臣に手交するという段取りになるかと思います。本日の御意見をなるべくうまく取り入れる形で修正をさせていただいて,総会に出そうと思います。その修正については,是非とも私に御一任をいただきたいのですがよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【永田分科会長・部会長】  ありがとうございます。それでは,本日頂いた意見や細かな文言修正等も含めて,また,これから事務局にお送りいただくものも含めて,短期間で大変申し訳ありませんけれども,明日までにお送りいただければ幸いでございます。
 改めて,この案件につきましては,大学分科会・将来構想部会における議論に御参加,また御協力をいただいた先生方に深く深く御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。
 それでは,次に,この答申の本文中にも出てくる今後の検討課題という中に,先ほど申しました教学マネジメントに関わる指針の策定,学修成果の可視化と情報公表の在り方に関する検討を行う,という課題があります。早速,専門的な調査審議を行うため,大学分科会の下に教学マネジメント特別委員会を設置しようと考えております。その案について事務局から簡単に説明をいたします。
【三浦大学振興課長】  大学振興課でございます。資料4を御覧ください。第9期の中教審大学分科会に教学マネジメント特別委員会を設置させていただきたいということでございます。具体的には資料4の2枚目として「第9期中央教育審議会大学分科会教学マネジメント特別委員会の設置について(案)」でございます。今御紹介をいただきましたけれども,資料2のグランドデザイン答申の31ページから32ページに「具体的な方策」というところがございまして,「全学的な教学マネジメントの確立」の中では「各大学における取組に際してどのような点に留意しどのような点から充実を図っていくべきかなどを網羅的にまとめた教学マネジメントに係る指針を,大学関係者が参画する大学分科会の下で作成し,各大学へ一括して示す」とあり,その下に参考として,指針に盛り込むべき事項の例も掲げさせていただいているところでございます。
 また,その下にございます,「学修成果の可視化と情報公表の促進」というところの2つ目の丸でございますけれども,「大学教育の質に関する情報について,情報によっては大学に新たに義務付けしたり,取組の参考となるよう把握や活用の在り方等について教学マネジメントに係る指針の中に提示したりするなど,情報公表を促進する」というところがございます。
 それを受けまして,資料4の2ページ目,1の「審議事項」のところでございますけれども,(1)として,「教学マネジメントに係る指針の策定について」,(2)として,「学修成果の可視化と情報公表の在り方について」,(3)として,「その他大学等の教学マネジメントの確立のために必要な事項」ということにさせていただいてございます。
 2の教学マネジメント特別委員会の委員につきましては,委員,座長いずれも分科会長が指名ということにさせていただいております。
 3の設置期間でございます。具体的には教学マネジメント特別委員会を開いていただいて,どれぐらいのスケジュール感で成案を得るかというところは御議論いただくわけでございますけれども,この分科会決定としては,当面は第9期の委員の先生方の任期でございます平成31年2月14日までとさせていただいているところでございます。
 説明としては以上でございます。
【永田分科会長・部会長】  ありがとうございます。何か御質問はございますでしょうか。有信委員,どうぞ。

【有信委員】  教学マネジメントというのは非常に重要です。ただ,ここで言うと,いわば学部教育にフォーカスをして,これのマネジメントの個別個別の話を書いてあるのですが,実際に大学の機能というのは教育,研究,社会貢献という中で,教育研究を通常,教学と言っているわけですよね,大学の中では。ここでは,研究の部分はすっぽり抜け落ちていて,このマネジメントってものはすごく難しいのですけれども,これは今回のこの検討部会の検討外にするということで理解してよろしいんでしょうか。
【三浦大学振興課長】  基本的には,本分科会,また,その下にございました制度・教育改革ワーキンググループの議論を踏まえて,学部段階を中心とした教学面について集中的に御審議をいただいて,指針として取りまとめるということを考えております。
【永田分科会長・部会長】  そのほか,いかがでしょうか。
 今の御説明のとおり,将来構想部会の下に設置していたワーキンググループが課題を既に抽出していただいているので,これを踏まえ,具体的に細かな制度設計に踏み込む手前まで議論を進めていただこうという意図です。それでは,そこにありますように,教学マネジメント特別委員会の設置をお認めいただいてよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【永田分科会長・部会長】  委員会の設置についてお認めいただきましたので,あとは資料4の2ページ目にございますけれども,委員の人選並びに座長について私にお任せいただくことについてもお認めいただきたいと思います。よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは,早々に人選をして,早々に特別委員会を動かしたいと思います。
 それでは,最後に報告事項でございますが,高大接続改革の進捗状況について事務局から御説明をいただきます。
【三浦大学振興課長】  失礼いたします。資料5に沿って御説明をさせていただきたいと思います。
 高大接続改革につきましては,大学分科会に対しての御説明は昨年度の7月に一度お諮りをしているところでございますが,それ以来の御説明になります。資料5の1ページ目でございますけれども,高大接続改革の全体像ということで,高等学校の教育改革,教育課程の見直し,学習・指導方法の改善と教師の指導力の向上,多面的な評価の推進ということ,それから,右側,大学教育改革では,三つの方針(卒業認定・学位授与の方針,教育課程の編成・実施の方針,入学者受入れの方針)に基づく質的転換,その結節点でございます大学入試の改革ということで「大学入学共通テスト」の導入,各大学における個別入学者選抜についても改革を進めるということで,これ1枚で全体像ということにさせていただいております。
 めくっていただきますと,2ページ目,全体のスケジュールがございます。2018年度のところに赤い点線,本年度のところ,書いていますけれども,一番上のところで言いますと,高等学校の教育課程,学習指導要領の改正がございます。
 昨年度末に告示がされたという段階でございますし,また,その二つ下の「高校生のための学びの基礎診断」につきましても,昨年度末に認定基準の策定,公表されているところでございます。
 また,大学教育改革につきましては,昨年の4月から省令改正,三つの方針(卒業認定・学位授与の方針,教育課程の編成・実施の方針,入学者受入れの方針)について施行されておりますし,認証評価基準についても本年4月から施行されています。大学入学者選抜改革につきましては,大学入学共通テストの試行調査というのを昨年度から実施しておりまして,今年度,2回目の試行調査ということで,先日の土日で,各大学の御協力を頂いて実施させていただいた段階でございます。
 また,一番下でございますけれども,個別大学における入学者選抜改革ということで,入学者選抜,大きな変更をするときには,2年前までに公表してくださいといういわゆる2年前ルールがございますけれども,2020年度からの改革でございますと,今年度中に各大学の予告をしていただく必要があるというのが一番下のところでございます。
 3ページ以降は,高校生のための学びの基礎診断についての資料でございます。4ページ,御覧いただきますと,上の四角,丸の二つ目でございますけれども,赤字で,文部科学省が一定の要件を示し,民間の試験等を認定する制度を創設し,多様な民間の試験等の開発・提供,その利活用を促進するということです。それにより,高校生の基礎学力の定着に向けたPDCAサイクルの取組を促進するということです。それから,三つ目の丸でございますけれども,平成30年3月に「高校生のための学びの基礎診断」の認定基準・手続等に関する規程を策定しました。それから,一番下の丸でございます。平成30年度から本制度の運用を開始して,31年度から本格的に利活用を開始するということでございます。
 5ページには,そのスケジュールのイメージがございまして,3月の認定基準等の策定を受けまして,6月に民間事業者から申請を受け付けているところでございます。9事業者,27の測定ツールについて申請があったということでございまして,認定については,10から11月ということで,今,11月の半ばぐらいでございますけれども, 11月中には認定に向けて作業をしていきたいと思っておりますし,2019年度から本格実施ということで,制度の周知ですとか情報提供に努めてまいりたいと考えております。
 6ページは,この後の,毎年度の学びの基礎診断の手続の流れというのが書いてございます。一番右に「認定・情報提供」というのが10から11月頃と書いてございまして,その3つ目の丸に「認定の効果と取消し」というところもございますけれども,認定の有効期間は3年後の年度末までということ,また,事後チェックといたしまして,左下の方でございますけれども,毎事業年度終了後,以下の事項等について事業概要報告を求めるということで,受検者数ですとか試験実施後の検証内容等についてのチェックをするという体制を組んでいるところでございます。
 7ページ以降は,大学教育改革でございます。8ページに,「三つの方針に基づく大学教育改革の実現に向けて」ということで書いてございます。卒業認定・学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー),養育課程編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー),入学者受入れの方針(アドミッション・ポリシー)について,各大学には省令上義務化をされておりますけれども,各大学に定めていただいているところでございます。それが9ページ,今回の2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申案)の概要にございます。その左下,ローマ数字の3のところ,赤い点線で囲わせていただいていますけれども,まさに各大学が策定をした三つの方針に対して,その実質化をどうやって進めていくかということを,今回の中教審大学分科会で御議論いただきました。先ほど御了解をいただきました教学マネジメント指針の話もございますけれども,学修成果の可視化,それから,どうやって情報公表を進めていくかということと相まって, 三つの方針がきちんと実質化していくのだろうと考えております。
 10ページは,質の保証と情報公表についての説明資料ですが,グランドデザイン答申の説明資料でございますので説明は省略させていただきます。
 11ページ以降は,入試改革についての資料でございます。12ページを御覧いただきます。共通テストの改革といたしまして,現行,「択一式問題のみ」と書いてございますけれども,2020年度から国語と数学で記述式の問題を導入するということ。それから,英語は2技能から4技能評価に転換ということ。また,択一式問題についても,単に知識を問うということだけではなくて,思考力,判断力等を判定できるような共通テストにするべく,今まさに試行調査をしていただいているところでございます。
 また,個別選抜についても,学力の3要素が評価できていないという御批判もございますので,学力試験を何らかの形で課す,あるいは調査書の記載内容を改善するという改革も併せて進めるところでございます。
 13ページは,大学入学共通テストに係るスケジュールというのがございます。下の段でございますけれども,2年前にフィージビリティ検証事業を,大学1年生を対象に実施し,昨年は5万人規模の試行調査をさせていただきまして,その検証結果を踏まえて,今年度,先日,土日に試行調査をさせていただいたということでございまして,その結果を踏まえて,2020年度の大学入学共通テストの実施に臨むというスケジュールでございます。
 14ページからは,昨年度実施をいたしました試行調査の分析・検討結果ということでございます。問題そのものにつきましては,専門家の先生方からも高い評価をいただいているところでございますけれども,幾つか課題等も挙げられております。例えば,14ページ,「問題構成や内容等の在り方」というのがございます。記述式問題,国語については,特に,80字から120字の一番長い記述式問題の正答率が1割にも満たなかったということを踏まえまして,「平成30年度の試行調査に向けて」というところがございますけれども,三,四割程度の正答率を目指した作問を行うということ。それから,数学につきましても,無回答率が高いということを踏まえて,数式ではない文章で回答させる場合の問いの工夫などについてさらに検討するということ。それから,14ページ右側の方でございます。先ほど,択一式についても改善を進めていると申しましたけれども,マーク式問題についても正答率が低いという課題がございました。平成30年度の試行調査に向けては,資料の分量,バランスなどを工夫して,正答率が中程度か,やや高い問題に増やして,より多様な学力層を識別するということでございます。
 15ページには,「成績表示の在り方」というのがございます。記述式,国語につきましては,例えば,最初でございますけれども,3段階のみでは特定の段階に受検者が集まり過ぎる。二つ目,大学での活用のしやすさを考えれば,小問ごとの段階だけでなくて,総合評価も段階で示した方がいいのではないか。問3,一番長いものでございますけれども,ほかの2問より重く重み付けをした方がよいのではないかというような課題がございまして,今回実施した試行調査におきましては,小問は4段階,全体の総合評価は5段階ということで,関係者から意見を聞きつつ検討をするということでございます。
 また,その右でございますけれども,マーク式を含む結果全体といたしましても,9段階表示についてのシミュレーションをするということでございます。素点と併記をするという前提でございますけれども,段階評価についてもお示しをするということです。
 それから,「英語における問題作成の方向性」というのがございます。一つ目は,発音・アクセント問題等についてのアンケート調査の結果を踏まえて,読むことの能力を問うことを目的とした問題で実施し検証します。それから,リスニングについても,1回読みと2回読みが混在する構成や,アメリカ英語以外の読み上げ等々,様々なやり方を検証しつつ,どういった方向がいいのかを検討しているところでございます。
 また,4技能を評価する観点から,リーディングとリスニングの配点を等分とすることについても引き続き検討しているところでございます。
 そういった課題等を受けまして,16ページ,今年度の2回目の試行調査ということで,11月10,11の2日間実施させていただいたところでございます。この検証の結果につきましては,年度末を目途に,お示しをしたいと考えているところでございます。
 平成30年度の先日実施した試行調査について,もう少し詳しい話を17ページに書いています。例えば,実施教科・科目等のところにつきましては,昨年の試行調査は非常に難しかったという点がございますけれども,昨年度は平均正答率を設定しないで問題を作ったこともあったということでございますけれども,今回は5割程度を目標として検証するということで進めさせていただいているところでございます。
 また,18ページを御覧いただきますと,共通テストの枠組みにおける英語の資格・検定試験の活用との関係ということで申し上げますと,二つ目の丸でございますけれども,「平成30年度の試行調査では」といたしまして,CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)を参考にA1からB1までの問題を組合せて出すということ,それから,リーディングについては発音,アクセントなどの問題は出題しない,リスニングについては1回読みと2回読みが混在する構成で出題し,リーディング,リスニングの配点を均等として実施するということでございます。
 19ページからは,英語の4技能評価の導入についての資料でございます。昨年の7月13日に実施方針を策定いたしました。その前に,大学分科会で御説明させていただいたので1年以上たっているということになるわけでございますけれども,実施方針には,「外部検定試験の活用」といたしまして,4技能を適切に評価するため,現に民間事業者等により広く実施され,一定の評価が定着している資格・検定試験を活用するということとされておりまして,具体的な活用方法が19ページから20ページに掛けて幾つか書いてございます。これを踏まえまして,大学入試センターにおきまして,大学入試英語成績提供システムを構築し,民間事業者の参加要件を定めております。それが21ページからでございます。
 参加要件の抜粋が21ページでございますけれども,例えば1番では,原則として,申請日の時点において2年以上広く実施されている実績があること。2番では,広く高校生あるいは大学入試に活用された実績があること。3番,4技能全てを,極端な偏りなく評価するものであること。4番,高等学校学習指導要領との整合性が図られていること。5番,CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)との対応関係の体制が整っていること。
 22ページに参りますと,6番,毎年度4月から12月までに複数回実施すること。7番,経済的困難者等への対応など,適切な検定料であることを公表していること。8番,障害のある受検生への対応。9番,試験監督及び採点の公平性・公正性をきちんと確保していること。10番,採点の質を確保していること。11番,不正等にきちんと対応できることというような参加要件を示しまして,応募のあった中から,参加要件を満たしていることが確認された資格・検定試験というのが23ページの7団体,23の試験になるわけでございます。
 24ページは,大学入試英語成績提供システムのイメージということで図示をしています。大学入試センターと大学,受検生,民間の資格・検定試験実施主体との関係をお示ししているところでございます。
 25ページでございます。大学入学共通テスト実施方針について,先ほど申しましたとおり,昨年7月に発表させていただきましたが,その追加分として,今年の8月10日に追加分を公表させていただきました。
 1番といたしましては,負担を軽減すべき理由がある場合には,高校2年時の結果を活用することができるというようなこと。2番については,一定期間海外に在住していた受検生への対応。3番,病気等のやむを得ない事情で受検できなかった等の者に対する対応。4番,既卒者に対する対応。5番,各大学における障害のある受検生が不利益を生じないような取り扱いということについて追加で定めさせていただきました。さらに細かいガイドラインを現在作成しておりますので,作成し次第,またお示しをさせていただきたいと思います。
 また,26ページでございますけれども,「大学入学共通テストの枠組みで実施する民間の英語資格・検定試験について」ということで,8月28日付で大学振興課名で出させていただいた文書でございます。概要は26ページでお示ししております。1番としましては,どのように参加要件を満たしていることを確認したのかということ。2番,学習指導要領との整合性をどのように確認したのか。3番,受験機会の公平性の担保,受験生の経済的負担軽減等の具体的方法をどういうふうに確認したのか等々につきまして,文章で整理をしてお示しをしたところでございます。
 27ページは,現在やっております各高等学校に参加試験のニーズ調査についてでございます。これを取りまとめ次第,各試験実施団体にお示しをして,ニーズのあるところでは,きちんと試験会場を設定していただく,あるいは検定料をより下げていただくような検討をしていただくための材料になる調査でございますので,速やかにまとめてお示しをしたいと思っています。
 28ページ,参考資料として,経済政策パッケージの一部を抜粋してございますが,ここにも「大学等の受験料を計上する」ということで黄色の線を付けさせていただいておりますけれども,そういった経済的困難者に対する手当ても,この経済政策パッケージの中に含まれております。
 29ページから31ページまでは,現在,3年間の期間で,平成30年が最終年度でございますけれども,様々な改革,主体性をどうやって評価していくのかというようなことにつきまして,各大学に委託調査をお願いしています。本年度が3年間の3年目ということでございますので,これまでも折々にその成果等について中間的な御報告をさせていただいているところでございますけれども,まとまりましたら,また各大学にその成果の普及という観点で伝わるようにしたいと思っております。
 32ページ以降は,2019年度高大接続改革関係概算要求ということでございます。詳細は省略いたしますが,今申しました委託調査,3年間の事業ということで終了いたしますが,また新たな委託事業として35ページで要求しております。1つ目としては,これも大きな課題になっています調査書の電子化につきまして,2つ目としては,個別学力試験におけるCBTの導入ということで,今,2件の委託調査の概算要求をしていることを御紹介させていただきます。
 少し長めに御説明をさせていただきました。以上でございます。
【永田分科会長・部会長】  ありがとうございました。何か御質問等ございますか。
 金子委員,どうぞ。
【金子委員】  ありがとうございました。高大接続改革はかなり社会的な注目も浴びるところでありますし,社会的な影響も大きいので慎重になさっているし,それなりの準備をされていることは理解しますけれども,この方法の審議の過程でどのような形で,例えば,中央教育審議会のような立場のところで検討がこれから行われるのか,あるいは,きょうは御報告ということでしたけれども,どのような形で大学その他の意見が取り入れられるのかということについてお伺いしたいと思います。
 今日,お聞きしている限りは,技術的ないろんな準備が進んでいることは理解するのですけれども,私自身は中央教育審議会並びに高大接続システム改革会議にも出ていまして,そこでは高大接続をやることに関して,どうして必要なのかという議論がずっとやられてきたわけです。私が一番知りたいといいますか,議論が必要だと思いますのは,そこで設定されていた目標と今行われようとしている高大接続改革がどのように一致しているのか,あるいは一致していないのかという点です。
 例えば,第1回の試行を見てみますと,記述式の問題で正答率が非常に低い結果が出ているわけでありますけれども,これはある意味で初めから分かっていることで,記述式はやっぱり問題自体をちゃんと理解していること,それから,その答えを考えること,表現することという3つの条件がなければ,いわゆる正解にはならないわけです。
 これは予定されていたところでありますし,私は,これはこれでこういったことをやることは必要であるとは思いましたけれども,しかし,そのときの想定では,今,例えば,高校生の基礎学力,学びのための基礎診断というものが,それももう一つ,試験の一部として行われることになっていて,基礎的な読み書き能力はそちらできちんと一応は保証する。その上で,記述式とかそういった試験を行う。その組み合わせでやろうということが一定の了解であったのではないかと思います。
 ただ,今進んでいるのは,学びの基礎診断は高校のPDCAのために使うということになっていて,高大接続全体の一部をなしているというわけでは必ずしもないわけです。そういった点について,これまで議論されてきたところと少し違っているところが私はあるように思うのですけれども,そういったことについての疑問をただしたり,あるいは議論したりという機会はこれからあるのでしょうか。
 
【永田分科会長・部会長】  三浦大学振興課長、どうぞ。
【三浦大学振興課長】  高大接続改革の議論につきましては,教育再生実行会議,あるいは中央教育審議会でずっと御議論をいただいている中で,答申を頂いて,それを具体化していく中で,高大接続会議等々で議論を進めて,その結果として,昨年度の7月の,少なくとも入試については実施方針という形でお示しをしているところです。
 また,学びの基礎診断につきましても,その具体化の議論の中で今のような形に落ち着いたということで理解しておりますが,それについて,今日のような会議,機会を通じて御意見を賜るということも,その一環として,お時間を頂いたということでございますし,また,関係者が集まる,入試について言えば,入試の改善協議等の様々な場で御意見を頂くことになろうかと思います。
 また,もう少し大きな観点で,今,金子委員から御指摘をいただいたことについての対応も必要であろうかと考えておりますが,現状では今,そういった流れで進んでいると理解をしております。また,御指導いただければ幸いでございます。
【永田分科会長・部会長】  金子委員の御意見は,これまでに決めてやろうとしたこと,それから,現在進めていること,これら残っていることをまず判別すべきだということです。その上で,それをどう改善したらいいのか,どう本当に実行したらいいか,そういう御意見だと思うので,是非とも整理整頓していただければと思います。
 そのほか,いかがでしょうか。本日はどちらかというと,ここで決まっている流れを御説明させていただきました。さきほど,金子委員から言われたように,本件についてはまた追って,議論の進捗状況や過去の中央教育審議会における議論との整合性等についても御報告をいただく,ということでよろしいでしょうか。
 それでは,報告もここまでとさせていただきます。本日の議題は以上となっておりますので,今後の予定について事務局から御報告をいたします。
【石橋高等教育政策室長】  ありがとうございました。本日御議論いただきました答申案につきましては,適切に修正の上,11月26日に予定されている中央教育審議会総会におきまして大臣手交の予定でございます。御協力,本当にありがとうございました。
 次回の大学分科会につきましては,1月22日火曜日,10時から12時で予定しております。場所については追って御連絡をさせていただきます。資料の郵送希望の場合は,いつもと同様にしていただければと思います。
 以上でございます。
【永田分科会長・部会長】  どうもありがとうございます。今も御案内がありましたように,将来構想部会は本日をもって最後となります。
 文部科学省から一言お願い申し上げます。
【藤原事務次官】  文部科学次官の藤原でございます。本日は,昨年の3月の諮問以来,本日の会議におきまして答申案の最終的な取りまとめをいただいたわけでございます。委員の皆様方におかれましては精力的に御議論いただきまして,本当にありがとうございました。
 本日お取りまとめいただいた答申案につきましては,高等教育改革の今後の大きな方向性をお示しいただくものでございまして,委員の先生方の御尽力に心から感謝申し上げたいと思います。
 最後のローマ数字7のところでございますが,今後の検討課題がございまして,まず,中央教育審議会においては,今後とも引き続き設置基準などの見直し,あるいは教学マネジメントに係る指針の策定など,さらに専門的な御審議をいただきたいと思っておりますし,また,国におきましては,来年の通常国会を目指して,必要な法律改正など制度の改革に着手していきたいと考えております。
 将来構想部会にだけ所属されております先生方におかれましては,本日の会議が最後ということでございまして,昨年5月の第1回会合から本日まで29回にわたる御議論をいただいたわけでございまして,本当にありがとうございました。
【永田分科会長・部会長】  ありがとうございました。私からも御礼を少し申し上げます。29回目に当たります今回の会議で,ようやく「案」が取れて最終的に北山会長から文部科学大臣に答申を出していただくという段階に来ました。大変に御協力,活発な御議論,ありがとうございました。
 特に将来構想部会のみの御所属となっております,本日御出席の石田委員,小杉委員,福田委員,益戸委員,吉見委員,両角委員におかれましては,大変に活発な御意見,ありがとうございました。重ねて感謝を申し上げて,本部会,これで終わりにしたいと思います。よろしいでしょうか。
 それでは,大学分科会も含めて,これでお開きにさせていただきます。どうもありがとうございました。

 ―― 了 ――

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