平成30年6月8日(金曜日)15時~17時30分
文部科学省 旧庁舎6階 第2講堂
(分科会長・部会長)永田恭介分科会長・部会長 (副分科会長)北山禎介副分科会長,村田治副分科会長 (副部会長)日比谷潤子副部会長 (委員)有信睦弘,亀山郁夫,志賀俊之,室伏きみ子の各委員 (臨時委員)麻生隆史,安部恵美子,石田朋靖 ,伊東香織,小杉礼子,小林雅之,佐藤東洋士,佐野慶子, 鈴木典比古, 鈴木雅子,但野茂, 千葉茂,野田三七生,福田益和,古沢由紀子,益戸正樹, 両角亜希子, 吉岡知哉の各臨時委員
(事務局)小松文部科学審議官,義本高等教育局長,常盤生涯学習政策局長,藤野サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官,村田私学部長,下間大臣官房審議官(初等中等教育局担当),伯井文部科学戦略官, 池田大臣官房人事課長, 瀧本大臣官房審議官(高等教育局担当),信濃大臣官房審議官(高等教育局担当),塩見生涯学習総括官,蝦名高等教育企画課長, 松永専門教育課長, 三浦大学振興課長,丸山私学助成課長,石橋高等教育政策室長,森友主任大学改革官 他
(オブザーバー)田中優子日本私立大学連盟常務理事
(1)日本私立大学連盟がまとめられた「私立大学の将来像」について,資料1-1,資料1-2に基づき,連盟の常務理事の田中優子法政大学総長にから御発表があり,その後意見交換が行われた。
【永田分科会長・部会長】 それでは,定刻になりました。第141回の大学分科会と第20回の将来構想部会合同会議を開催させていただきます。
お忙しい中,また,大変暑い中お集まりいただきましてありがとうございます。
報道のカメラ等が入っている場合は,カメラの撮影は議題に入る直前までにさせていただきたいと思います。
それでは,本日の議題ですが,議事次第を御覧いただきますと,大きく分けて5点ございます。最初は,日本私立大学連盟の法政大学総長の田中常務理事から御意見を賜るということになっています。
2点目は,大学院部会の審議経過について,有信部会長から御報告を頂きます。
3点目は,将来構想部会でのこれまで議論を踏まえ作成した「今後の高等教育の将来像の提示に向けた中間まとめ(案)」をお示しさせていただいて,意見交換をしたいということです。
4点目は,大学分科会の案件です。3月27日に開催した大学分科会・将来構想合同会議で説明いただいた工学系教育改革ですが,これについて,当部会の直下に設けられているワーキンググループで議論を重ねてきました。その結果,大学設置基準等の改正が必要であり,その改正に関わる諮問という形をしていただくということで,事務局の方から御説明を頂きます。
最後に,情報共有として,6月1日に開催されました第8回「人生100年時代構想会議」の内容について若干御説明をして,時間があれば御意見を賜りたいと思います。
それでは,最初に,事務局から資料の説明をお願いいたします。
【石橋高等教育政策室長】 失礼いたします。資料でございますが,今回,6種類配付させていただいています。資料1が田中先生の御発表の資料になります。資料2が大学院部会の資料になります。資料3が中間まとめになります。資料4-1,4-2,4-3が工学系教育改革の設置基準の改正の関係です。資料5-1,5-2が100年時代構想会議資料になります。資料6が日程でございます。
不足がございましたら,お申し付けください。
【永田分科会長・部会長】 それでは,議事を始めさせていただきます。
冒頭申し上げましたように,最初に,日本私立大学連盟が4月に取りまとめられました「未来を先導する私立大学の将来像」について,同連盟の常務理事,田中法政大学総長にお越しいただいておりますので,御説明を頂こうと考えています。
田中先生におかれましては,大変御多忙のところ,また,暑い中,お越しいただきまして,ありがとうございます。
それでは,御説明の方を早速お願いいたします。
【田中日本私立大学連盟常務理事】 日本私立大学連盟の常務理事で,今回の「未来を先導する私立大学の将来像」をまとめた委員会の座長をしておりました法政大学総長の田中優子でございます。本日は,この私立大学の将来像についての御説明をする時間を下さいまして,誠にありがとうございます。
お手元に青い冊子と,それから,それの概要版が配付されていると思います。短い時間ですけれども,それに沿ってお話をさせていただきます。
まず,このような将来像を取りまとめた背景ですが,現在,こちらの中央教育審議会の大学分科会将来構想部会で2040年頃を見据えた高等教育の将来構想について検討を進めてくださっています。ここでは,国公私立の役割分担,それから,設置者の枠を超えた連携・統合,あるいは,各高等教育機関の機能強化等について議論されていると聞いております。
また,国大協と公大協がそれぞれの将来像について取りまとめておられます。そこで,私立大学のグランドデザインについて検討し,国立大学,公立大学の在り方との違いを示し,そして,また,国によって私立大学の将来の方向性を示される前に,私立大学が自ら将来の方向性を示しておくということが重要ではないかと考えまして,本提言を取りまとめました。
本日は,私立大学がどのような機能を担ってきたのか。また,今後何をすべきなのか。そして,日本の教育水準を上げるためにより重要な役割を担うためには,国や政府に何を求めるべきかということをお話しいたします。
今回のこの将来構想の特徴としましては,検討に当たりまして,まず,アンケートを採りました。なぜかといいますと,私立大学は大変多様です。それぞれの独自性を持っておりまして,全体像をつかむのは大変難しいからです。そこで,アンケートの結果について,概要版の5ページを御覧ください。そこにグラフが出ています。
まず,この左側,5ページの上の方を御覧ください。例えば,そこの小規模,中規模,大規模に分けた大規模大学のところで,グラフ中の丸1と丸3が突出しているように見えると思います。このようなグラフがアンケートから出てきています。
丸1,丸3というのは資料の下の方,枠の中を御覧ください。丸1は,「知識基盤社会を支える高度で多様な教育の提供」,その役割を私立大学は担っているというものであり,本大学は担っている,あるいは,これからも担い続けるという御回答をなさった大学です。丸3は「世界(グローバル化)を視野に入れた取り組み(グローバル人材の育成,世界レベルの研究の実践等)」です。世界を視野に入れた取組を担っており,これからも続けるという御回答です。
大規模大学は,突出してこの丸1と丸3に偏っています。また,小規模大学はそれとはまた全く違う丸4,地域社会に貢献するところが突出しています。これを地域別に見ますと,近畿圏が丸1に突出し,東京を中心としたところが丸3に突出しているという傾向が見えます。
こういうことを見てみますと,私立大学は,類型化をされることはなくとも,既にその自主的な役割を分析して緩やかなすみ分けを行っているということが分かります。このようなことを前提にしまして,本提言を作りました。
本提言は,全5章から構成されています。また,付録として,先ほど御紹介したアンケート結果の概要だけではなく,幾つかの加盟大学における将来構想の紹介,それから,関連データを添付しています。そして日本私立大学連盟が予算要望やロビー活動に使用しているデータ,私立大学の果たしてきた役割や私学助成の現状,国私間の助成格差のデータなどを添付しています。
具体的な内容に入りますが,概要版の1ページを開けていただきたいと思います。冊子版を丁寧に御説明申し上げたいところですが,時間がございませんので,概要版を使いながら説明させていただきます。
まず,この提言の背景としまして,大学を取り巻く環境の変化を書いています。「第四次産業革命」,それから,人口減少,あるいは,「人生100年時代」の到来,地方創生とグローバル化,このような背景があります。これに対して,特に人口減少社会においてはリカレント教育体制などの構築が必要です。そういう今まで私立大学が担ってきたけれども,はっきりと意識改革できなかったことを提言の一つにしています。
そして,2番,大学教育のあるべき姿として,大学が育成すべき能力に「人間としての在り方を常に問う主体的で洞察力に富んだ思考力」という表現を使いました。また,AIへの対応,それから,歴史,地域について書いています。
ここで,大学教育のあるべき姿を書くに当たって,私立大学の特徴をこの矢印の下の方に書き上げました。一つは,私立大学というのは建学の精神による多様な教育研究をしてきたということ。それから,日本や地域の特色や資源を活用した独自性のある教育研究を今後も推進しなくてはならないということ。それから,個性的な取組によって大学改革を推進して,多様性と特色を生かしたカリキュラム編成が必要であるということ。
これらのことから,国は教育の画一化を招きかねないような類型的な枠組み等の施策を導入するのではなく,それぞれの大学の独自性を生かす方向でサポートをしていただきたいと,要望しました。
3番は,大学全体の規模・配置です。日本の18歳人口を基に進学率を今までは推計してきたのですが,現在ではそのような推計方法は余り有効ではないということを書いています。例えば,短期大学から4年制大学への移行が更に進みます。専門職大学,社会人や留学生の受入れ動向も必要です。そのようなことを勘案した進学率をこれからは推計すべきなのではないかということです。
地域ごとの大学配置についても,都道府県単位で行われきたことが多いのですが,現実には通行圏とか通学圏や交通圏が非常に重要な意味を持ってきます。ですから,より広いブロックで考える必要があるのではないかということを書いてあります。
そして,大学の連携・統合については,私立大学自身がそれを自ら考える必要があるということを強調しています。
4番ですが,国私の大学の機能・役割と公財政支出の在り方というところですが,この冒頭のところで,「私立大学がこれまで実践してきた教育」をまとめてあります。
1番目は,高度な知識基盤社会を支えるための多様性を持った高等教育の場の創出と維持をしてきた。2番目は,社会人としての幅広い教養と思考力の涵養(かんよう)を行ってきた。3番目は,先駆的な試みとしてのグローバル人材の育成。また,諸地域における地域人材の育成。そして,通信教育やエクステンションスクールなどの生涯学習も行い,また,先駆けた女性の高等教育の実施もしてきた。そして,課外活動や研究所活動も含めた日本文化や芸術の発展とスポーツ振興なども担ってきた。今まで,私立大学がそれぞれで担ってきたことを書き上げてあります。
このようなことを前提にしまして,3ページ目と4ページ目は,それぞれへの提言をしています。私立大学自身への提言を8項目,国・政府への提言7項目,産業界への提言5項目をまとめました。
私立大学自身への提言から幾つか取り上げますと,例えば提言4ですが,地方創生とグローバル化の一体的な推進とあります。
今は地方創生に尽力する大学とグローバル化に尽力する大学が何となく分かれていて,あるいは,これからも分けて考えようということがあるかもしれません。けれども,現実には地方の大学やその周辺の企業は世界展開しているところは少なくありません。地域の職場は,グローバル化を必須とする。そのための教育も必要であることは明らです。ですから,地方創生とグローバル化の両方の能力は一体的なこととして考え,また,教育の場で推進していかなければならないと考えます。
それから,提言3は,先ほど言いましたように,連携のところですが,これも地域に関わることです。今後は「棲(す)み分け」と「連携」の自主的な構築が必要になると考えます。
提言5ですが,特色をより強めていく必要があると言っています。この特色は各大学の特色であるとともに,日本における教育の特色も強めていかなければならないという提言をしています。アジアの大学が非常に発展してきています。それから,欧米の大学がアジアに進出してきています。日本の高校生たちが海外の大学に進学するという傾向が出てきています。
現在は,多くの私立大学が海外からの留学生を迎えていますが,このようにアジアの多くの大学が競争力を付けていったときに,日本の大学にそれに太刀打ちできる力はあるのかが非常に大きな懸念材料だと思っています。
そこで,日本の大学に来なければ学べないことは何か,という振り返りは必要になります。一つには日本語教育,もう一つには日本が成してきた様々なことについての方法の教育,広い意味でこういうようなことも大学で教える必要が出てくるのではないか。日本に来なければ学べないことは何かということを考える時期に来ていると思っています。
そして,大学間連携は大規模,小規模にかかわらず,これから必要なことです。
国・政府への提言ですが,例えば23区における大学の定員抑制に対する例外措置がもう決まっています。この例外措置をどのように進めるか。具体的に進めることになりますと,様々なことが起こってまいります。しかし,この例外措置を是非例外としてそのまま使えるようにしていただきたいということです。また独自性を生かす教育面へのサポート,それから,大学は,以前とは違う様々な設備が必要になっています。そういう財政面のサポートなどの提言もしています。
産業界への提言もしています。今日は時間がないので,省きますけれども,国・政府への提言,産業界への提言をまとめました。
国への提言について,一つだけ申し上げますと,提言7ですが,国費により設置された研究設備等の国公私間における共同利用の推進という項目があります。やはり私立大学は,特に理系におきましては,設備上の不足というものが研究に非常に大きな影響を与えています。国立大学でなければできない巨額な設備というものがあります。それを現在でも共同利用という形で使える範囲もありますけれども,これを更に進めていただきたい。そうすることによって,より多様な研究者が設備の不足という条件を免れて研究を進めることができると考えています。
以上,非常に早く短い時間で御説明申し上げましたが,このような提言をまとめました。是非これについて検討をお願いし,また,時間がある限り,議論をお願いしたいと思います。
御清聴,ありがとうございました。
【永田分科会長・部会長】 田中先生,簡潔におまとめいただきまして,ありがとうございました。
ここから質問をお受けしたいと思います。いかがでしょうか。亀山委員,どうぞ。
【亀山委員】 田中先生から御提言があったわけですが,この日本に来なければ学べないことの具体的なイメージはどのようなものなのか。あるいは,人文系,社会系,理工系,全ての領域にわたって,例えば幾つか例をお教え願えればと思います。
【田中日本私立大学連盟常務理事】 法政大学の場合,国際日本学という名前で,今まで日本の様々な分野で分かれていた領域を,分野間を通して留学生に対して教えるということをやっています。特にこれは大学院教育なのですが,留学生が分野にとらわれないで,日本の全体像をつかみたいということで,非常に多くの留学生がやってきています。そのような要求があるということは,そのことでよく分かりました。ですから,分野別ではない教え方というのは一つあると思います。
それから,これは現在,まだまとまっておりませんが,社会科学あるいは,理系においても,今まで日本が行ってきた研究方法あるいは,ものづくりの関係において,方法の抽出ということは必ずしも行ってこなかった。そのまま産業として定着はしていったが,学問としてそれを客観的に見るということがなされなかったのではないかと思っています。
それを言葉や論理でしっかりと伝えていくことが必要だと考えています。
【永田分科会長・部会長】 ありがとうございます。
そのほか,いかがでしょうか。志賀委員,どうぞ。
【志賀委員】 お時間がない中で説明を省かれた部分なのですが,産業界への提言のところ,5つある中で,1についてもう少し詳しく伺いたいと考えています。産業界が個々の私立大学の個性を十分理解した上での採用をしていないという御指摘でしょうか。
【田中日本私立大学連盟常務理事】 これは「私立大学を十把一絡に判断して批判するのではなくと」本文に書いてあるのですが,本文冊子の13ページ,提言1に,産業界や社会において,私立大学を十把一絡に判断して批判するのではなく,各私立大学の改革の実態を知って,正しい理解による評価をすべきであろうということです。つまり,分かっていただきたいということが一つです。
どうしても私たちから見ると,求める人材像を一方的に期待されているという気がいたします。むしろ,それだけではなく,そのような人材を育成する教育プログラムやキャリア教育に資するインターンシップの制度,そういうことについて,是非協力をしていただきたいということです。
特にインターンシップについては,まだまだ足りないところがあって,これは企業には受け入れ難(がた)いことという事情はよく分かります。けれども,教育全体から見ると,どうしても必要なことだと思います。
【志賀委員】 ありがとうございます。
【永田分科会長・部会長】 両角委員,どうぞ。
【両角委員】 この国・政府への提言5の本文を読んで,お聞きしたいと思ったのですが,定員管理を,学部ごとではなく,大学全体で行うことが望ましいというのは,どこまでのイメージで書かれているのでしょうか。
今後を考えていくと,もう定員だけで管理していく限界を感じています。その一方で,今の高等教育の質は学部ごとに専任教員を選んでというような様々な仕組みの上に成り立っています。そういったのが望ましいのも分かります。一方で,具体的にどういうアイデアがあるのかについて,教えていただけたらと思います。
【田中日本私立大学連盟常務理事】 これは個々の学校,大学によります。具体的に述べるのは難しいのですが,ST比は守らなければならないし,むしろ上昇させなければならないということがある。一方で,学部ごとにST比は非常にばらつきがあるということもある。
それから,もう一つの事情として,今の学生は,ある学部に入っても,それだけではなくて,ほかの学部の科目を学びながら,より広い教養を身に付けたいと思っています。それになかなか応えられていないという現状があります。そうでありながら,学部ごとに同じような科目を持ってしまうという重複もあるという矛盾を様々に抱えております。そうしますと,もっと学部を超えた全体としての教員の配置というものが整備できれば,より合理的,効率的,さらに,学生の要望に応えられると考えています。
そのことを考えると,学部ごとに細かく数字を見ていくのではなくて,そういう部分が専門科目のところであるのは当然なのですが,大学全体で見るところを作っていくということも可能なのではないかと思っています。
事情がそれぞれ違いますので,具体的にはここまでぐらいですが,そういうイメージです。
【両角委員】 ありがとうございます。
【永田分科会長・部会長】 今の議論の一端を聞いているだけでも,本来はもっと様々な御意見を伺いたいのですが,時間がまいりましたので,大変申し訳ありませんが,ここまでとさせていただきます。
先ほどの日本ならではの特色についてですが,日本語や日本事情といったコンテンツそのものよりも,例えば,卒業研究やゼミのような方式は欧米社会には余りありません。このため,欧米の学生さんがそうした方式に非常にひかれて,4年間の中で,半年でもいいから,専門の先生の下で勉強したいということもあります。極めて日本的な方式ですけれども,欧米の学生さんが留学先を決める際の大きな利点になります。つまり,教育システム上もやはり日本のよさはどこかにあるだろうと思います。
そのほか,産業界への提言,設置基準の問題など様々ありますが,我々はまだ詳細を議論していません。今後いい題材にさせていただこうと思います。
本日は,お忙しい中,田中先生,どうもありがとうございました。
【田中日本私立大学連盟常務理事】 ありがとうございました。
(2)大学分科会の直下に設けられている大学院部会の審議経過について,資料2に基づき,有信部会長及び事務局から御説明があり,その後意見交換が行われた。
【永田分科会長・部会長】 それでは,続きまして,大学分科会の直下におかれています大学院部会の審議経過について,有信部会長及び関連する事務局から御説明いただいて,どのような議論が進んでいるのか理解させていただこうと思います。
それでは,有信委員,よろしくお願いいたします。
【有信委員】 それでは,簡単に概要を説明させていただきます。なお,詳細はまた事務局から説明します。
御承知のように,世界の状況が大きく変わってきていて,日本としても,新しい社会Society 5.0に対して,様々な手を打っていかなければいけない。こういう中で,今後の知識基盤社会を見据えた高度な知のプロフェッショナルを育成するということが焦眉の急になっています。これが基本的には大学院に期待されていることだと理解しています。
その上で,様々な社会的要因,あるいは,人口動態等々が言われていますが,優秀な日本人学生のうち,特に博士課程への進学が期待しているようには全然伸びていないという課題に対して,もしこのような状況が続くのならば,日本そのものの国際的な地盤沈下は避けられない。もう現実に地盤沈下しつつあるという話もありますが,こういう深刻な事態に対して,私たちは大学院部会として,大学院をめぐる様々な課題を議論しながら,その結果を今後の大学院教育の在り方に生かすべく,取りまとめをしていく予定でいます。
詳細については,事務局から説明します。
【三浦大学振興課長】 失礼いたします。大学振興課の三浦でございます。資料2,ただ今,議論の背景に相当する部分は有信部会長から御説明を頂きました。私からは2番の審議事項以下について御説明をさせていただきます。
2番,審議事項としまして,これまで,今期5回,大学院部会を開催しています。これまでには「大学院の有する価値」,それから,「優秀な人材の大学院への進学の促進」,「キャリアパスの多様化と活躍状況の可視化」等について御審議を頂いております。今後は,「修士課程及び博士課程における教育の充実」,これは博士一貫制もございますし,区分制,前期,後期の在り方,あるいは,専門職大学院の位置付け等も含めたものでございます。また,それと関連付けた上での「高度専門職業人養成の充実」,あるいは,大学院段階のリカレント教育の在り方等について議論を進める予定にしています。
3番としまして,主な論点,これまでに御審議を頂きました事項をまとめてございます。
まず,「大学院の有する価値」でございます。一つ目の丸といたしまして,大学院の機能と三つの方針の在り方ということでございます。3ポリシーについては,学部段階では法令上位置付けられているわけでございます。けれども,大学院についてはアドミッションポリシーだけが義務付けられているという状況を踏まえまして,大学院においても,三つの方針をきちんと位置付けるべきではないかということでございます。また,三つの方針を踏まえた内部質保証の機能がきちんと回っていくような仕組みを構築することが重要ではないかという観点でございます。
二つ目に,大学院における定員の在り方でございます。実際の各大学院における入学状況のデータなどを踏まえまして,例えば,大学院博士後期課程ですと,大学院全体の専攻のうち,入学者がゼロの専攻が2割強ございます。また,入学者が二人以下の専攻も5割ぐらいあることを踏まえまして,例えば,恒常的に定員充足率が低い専攻には社会的なニーズがより高い専攻への定員に振り替えるようなことが考えられるのではないか。あるいは,恒常的に定員が超過をしている専攻,これは主にマスター段階の工学系が多いということでございますけれども,恒常的に定員が超過している専攻についても,自らの責任において入学者選抜,あるいは,定員の設定を見直すべきではないかということでございます。また,それらが進んだ上で,内部質保証が機能しているときには,大学院全体としての運用の柔軟化を検討すべきではないかということでございます。
2ページ目,「優秀な人材の大学院への進学の促進」という観点でございます。
一つ目は,「アカデミアリクルート」という概念を普及すべきではないかということでございます。博士課程に進学をしたい学生が,きちんとその進路について理解ができるような形で,「アカデミアリクルート」という概要を定着させていこうとでございます。その際には,様々な経済的な支援等がございますが,そういった支援について,どのタイミングで学生が知ることができるのか,あるいは,その権利を得ることができるのかも含めて,制度設計をすべきではないかという観点でございます。
それから,二つ目の経済的支援についても,国費だけに頼らない経済的支援の充実方策を進めていくという中で,「ファイナンシャル・プラン」というのを作ることによって,学生に対して情報提供をしていくべきではないかという観点でございます。
三つ目が「キャリアパスの多様化と活躍状況の可視化」でございます。
博士課程,博士人材と企業とのミスマッチをどうやって埋めていくかということです。博士課程リーディングプログラムの取組,先駆的な取組もございますので,そういった取組の成果を踏まえまして,そのミスマッチを解消していこう,有益と考えられる取組を推奨していこうという観点でございます。
それから,博士人材の活躍状況・処遇の把握・可視化という観点で,国や大学それぞれの在り方等でございます。国は,まず,諸外国の活躍状況の情報収集をするべきであるということでございます。また,博士課程の伝統的な進路である大学の研究者以外の進路について,具体的に専門性を活用しているような事例を把握するべきではないか。また,各大学におきましても,それぞれの大学,大学院を修了した学生の方の活躍状況について把握をして,その情報を積極的に発信していただくことが必要なのではないかという点です。
それから,三つ目の丸でございますが,企業の取組として,博士人材の専門性を積極的に活用して,能力に見合った適切な評価と処遇を与えるということを考えるべきではないかということでございます。また,先駆的な取組を行っているような企業には,発掘をして顕彰するような検討も必要なのではないかという御議論を頂いたところでございます。
4番,今後のスケジュールでございます。今後,更に審議を進めまして,将来構想部会として答申をまとめる際には,大学院部会の審議内容が反映されるような形で審議を進めていきたいと思っています。冬頃を目途に,大学院部会においての審議内容を取りまとめる予定で考えています。
以上でございます。
【永田分科会長・部会長】 ありがとうございます。
私としましては,将来構想部会として答申をまとめる際に,大学院部会の審議内容を是非とも反映させたいと考えております。将来構想部会では,6月末を目途に中間まとめを出しますが,その中で欠けているポイントを後で皆さんからいろいろと意見を伺いたいと考えております。大学院については,前から欠けているという御意見がありましたので,大学院部会で鋭意議論を進めていただき,情報を頂ければと思います。
それでは,本件について意見,御質問等をお受けしたいと思います。村田委員,どうぞ。
【村田副分科会長】意見ですが,「大学院の有する価値」の主な論点の1行目,「大学院の4つの人材養成機能」とありますが,恐らくこれから大学院の進学率を上げていくときに,研究者,高度職業専門職業人,研究者でも自然科学系と社会科学系では全くパスが違ってきたりします。それぞれの将来の職業に絡めるように,あるいは,そのパスが見えるような形で,個々の機能に基づいて,難しいかもしれませんが,考えていく必要があると思います。
社会科学系と自然科学系とでは全然状況が違ってきていると思います。ましてや,リカレント教育というときに,特に社会科学系は大学院,それも専門職大学院の問題もあります。その辺り,これから深掘りしていただければ有り難いと思います。
以上でございます。
【永田分科会長・部会長】 有信委員,どうぞ。
【有信委員】 おっしゃるところは非常に重要な問題です。それから,もう一つは,いわゆるPh.D.の特性として,彼らが修めた専門的な教育と同時に,Ph.D.のコースの中で鍛えられた特性というのがあります。今後ますます創造的な仕事が様々な分野で求められるというときに,新しい取組,新しい未知の問題に対してどういうふうに取り組んでいくかという取り組み方が実は博士課程の中で鍛えられているのです。けれども,ここの部分が実はよく見えるようになっていない。
特に今までの日本のアカデミックポストを担う人たちの養成機関としての博士課程という位置付けの中で,どうも明確にされてこなかった部分もあります。そういうことも含めて,あわせて,検討を進めていきたいと思います。
【永田分科会長・部会長】 例えば,アメリカの議会周辺で活動するロビイストは人文系の博士を取っている方がほとんどです。日本にはそういう人材が余りおりません。しかし,例えば文部科学省にも博士又はMBA等を取った方がある程度いると良いのではないかと思います。
我が国においては,人文系では大学院がまだまだ特別なことと考えられています。けれども,今申し上げたように博士人材の活躍する分野がまだまだあると思いますので議論すべきだと思います。
そのほか,いかがでしょうか。千葉委員,どうぞ。
【千葉委員】
2ページの最後のところに,企業が余り採用してくれない,あるいは,処遇が与えられないということが書いてあります。企業側がなぜそういうことをしてくれないのかということについての調査をしないと,処方箋が書けないということになるのではないかと思います。その辺の調査はどうなのでしょうか。
また,博士といっても,日本全国,地域によっても違います。分野によっても,学部によっても違います。博士という十把一絡(から)げでやるというのは乱暴な気がするので,少し詳細な調査をされたらいかがかと思います。
【有信委員】 おっしゃるとおり,博士というのは十把一絡にできる部分,できない部分があります。いわばできない部分は,それぞれの専門性が異なるので,みんな同じように対応を求めるというのは難しいところがあります。ただ,様々な分野で高度に知的な作業が要求される場面が増えてきている中で,博士課程の学生たちは,専門分野にかかわらず,先ほど申し上げました新しい問題に取り組むという訓練を受けてきているというところで,十分強みが発揮できると思います。そこをもう少しきちんとやるということとです。
それから,先ほどの御質問で,民間企業は何で採用しないかという,これも様々な調査を実はやられているわけですが,採用経験がないとか,博士課程の学生の視野が狭いだとか,採用しない理由は多く出てきます。
ただ,一番大きな制度的な問題だと思っていますのは,例えば大企業の場合ですと,博士課程を修了して能力があっても,格段に給与差を付けることができない仕組みになっています。これはいわゆる組合が同一職種同一賃金ということで,賃金管理をかなり厳格にやってきたという伝統があります。その中で,博士課程の修了生を高賃金で雇おうと思っても,その理由を明確にしなければいけない。それはこれから徐々に改善されると思います。
それから,もう一つは,長年の慣行で,雇用条件が実は市場原理に基づいていない。つまり,逼迫(ひっぱく)している専門性を持った人材がいるにもかかわらず,それに対して高給が払えない。
当然ながら,需給関係で給料が決まるのが普通だとお考えになると思います。けれども,それが今の日本の労働慣行では絶対にできないとういことになっています。そういうところを,質的に変えていくしか当面はないと思います。これは大学分科会のスコープを超える話でありますけれども,そういうこともありますので,御理解いただければと思います。
【永田分科会長・部会長】 ありがとうございます。
日比谷委員,どうぞ。
【日比谷副部会長】
本日,中間まとめのところで,学部の学位の国際通用性については鋭意書き込まれているとお話しされていますが,実は大学院で出している学位についても,何をするのかよく分からない学位が少なくない数ございます。新しい大学院のプログラムを作りたいというような審査をするときにも,この学位名称は適切であるかということはよく話題になります。
この将来構想部会で話し合わなくてはならない項目に挙がっているとは思いますが,学位名称についての御検討の状況,あるいは,これから検討するという場合にはその方向性を教えていただければと思います。
【有信委員】 御指摘の点,よく理解をしているつもりです。今までのところで,学位名称について,多少議論に上ったことはあります。ですがが,本格的に議論はしておりません。
将来的には全くおっしゃるとおりで,大綱化以降,学位そのものの名称が極めて自由になって,様々な名称が付けられるようになってきています。けれども,国際的な標準で言えば,いわゆるPh.D.というのが国際標準でどこのレベルになるか,あるいは,欧州のボローニャ・プロセスであれば,バチェラー,マスター,Ph.D.というそのそれぞれのEUの中での標準リファレンス学位というのができています。そういうことを見ながら,最終的には検討を詰めていきたいと思っています。
【北山副分科会長】 先ほど御説明いただいた,企業における博士人材の活用,処遇という点に関連して一点お伺いします。資料の「博士課程・博士人材と企業との間のミスマッチ」という部分に,リーディングプログラムの成果に関する記載がありますが,この成果というのは,リーディングプログラムの卒業生のうち,何人,何%が企業に就職したかといったことを指すのでしょうか。
【有信委員】 そうです。実はそのミスマッチを解消することも含めて,リーディングプログラムでも様々な仕掛けを入れています。
その結果として,企業への就職率が増えているということもあります。本来活躍できる人たちの活躍の場が広がっているという点で具体的な施策がどういうふうに効果があったか。そういう施策の効果がある部分については,それをより広めていくと,そういう形で進めていけるかと思います。
【北山副分科会長】 ありがとうございます。
【永田分科会長・部会長】 大学院部会で,まだ議論は続くと思いますが,千葉委員や日比谷委員がおっしゃった,学位に関する課題については,大きな方向性は示せるかと思います。
また,博士修了者の給与についても議論がありました。これについては,黙っていても高い給与を出させるぐらいの価値のある人材を育てればいい,という言い方もあります。外的な要因はいろいろあるのでしょうけれども,大学としては,少なくともより良い人材を育てる工夫をしないといけないと思います。是非とも,有信部会長の方で,議論を先へ進めていただきたいと思います。
(3)今後の高等教育の将来像の提示に向けた中間まとめ(案)について,資料3に基づき,事務局から説明があり,その後意見交換が行われた。
【永田分科会長・部会長】 それでは, 3番目の議題です。本日の主題である「今後の高等教育の将来像の提示に向けた中間まとめ(案)」についてです。
今後の高等教育の将来像の提言については,大体6月をめどに中間まとめを出して,そこでまたいろいろ御意見を頂いて,最終的な答申に繋(つな)げようというロードマップを描いております。
今回は合同会議ですから,幅広く御意見いただきたいと思います。また,中間まとめまでに,もう一度将来構想部会を開く予定です。今回と次回の2回で,本日お示しした中間まとめ(案)に対する御意見をまとめていきたいと考えています。
中間まとめですから,足りない部分がたくさんあることは御承知いただき,現在までの議論をまとめたものであるとお考えください。
それでは,御説明をお願いします。
【石橋高等教育政策室長】 失礼いたします。資料3を御覧ください。
まず,目次でございますが,「はじめに」というところと,それから,1から6の項目で整理をさせていただいています。特に1から5の項目については,論点整理を踏まえたものということで整理をさせていただいています。当然,議論が深められてきているところが多々ありますので,それを踏まえた形にしています。
では,中身に入っていきます。2ページ目を御覧ください。「はじめに」,「2040年の姿」というところでございます。諮問におきましても,2040年がターゲットイヤーにされています。それをどういうふうに整理をするかということで書かせていただきました。
まず,2040年という年は今年生まれた子供たちが,現在と同じ教育制度が存続していると仮定すると,大学の学部段階を卒業するタイミングとなる年という形で,一つその軸を整理させていただいています。
その次のところは,そのとき,日本はどういう形で世界の中で役割を果たしているのかというところを整理させていただいております。これまで我が国は,教育の力で人材と知的な財産を生み出して,世界の中で活躍の機会を得てきたと言えるということと,今後我が国は課題先進国として,世界の国々が今後直面する課題にいち早く対応していく必要に迫られているということでございます。その際,最後の方ですが,特に高等教育については,我が国の社会や経済を支えることのみならず,世界が直面する課題の解決にいかに貢献できるかという観点が重要であるとさせていただいています。
次から2040年頃の社会変化の方向ということで整理させていただいております。まずはSDGsが目指す社会というところで,国連で提唱されています持続可能な開発のための目標,SDGsのことを紹介させていただいています。
3ページ目,その流れを続けて,下線部でございますが,「全ての人が必要な教育を受け,その能力を最大限に発揮する社会の到来が期待される」と結ばせていただいています。
次がSociety 5.0,第4次産業革命が目指す社会というところでございます。第4次産業革命とも言われるこの技術革新でございますが,社会の在り方そのものが大きく変化する超スマート社会,Society 5.0の到来が予想されているということで書かせていただいています。
その際,後半の方に,「これらの技術革新は,AIやロボットによる職業代替可能性を格段に高め,仕事の仕方や身に付けておくべきスキルや能力を現在想定されているものから大きく変化させていくことが予想される」ということと,「現時点では,想像もつかない仕事に従事していくことも予想され,幅広い知識を基に,新しいアイデアや構想を生み出せる力が強みとなる。また,AIが持ちえない人間だからこその能力としての創造性やコミュニケーション能力は更に重要となる」ということで書かせていただいています。
4ページでございますが,人生100年時代を迎える社会というところで,3行目のところ,3ステージの単線型の人生ではなく,マルチステージの人生を送るようになるということを書かせていただいています。そのパラグラフの最後の方ですが,「生涯を通じて切れ目なく,質の高い教育を用意し,いつでも有用なスキルや知識,必要な能力を身に付けられる学び直しの場が提供されていることが予想される」とさせていただいています。
次が,グローバリゼーションが進んだ社会でございます。グローバリゼーションに関しましては,「人の国際的な移動の爆発的拡大,情報通信技術の劇的な進歩,社会経済のグローバル化が加速している」ということとともに,「各国は独自の社会の在り方,文化の在り方などのローカリゼーションの動きも活発化することも想定される」としています。
これも最後の方でございますが,「今後,留学生の受入れ拡大を含めた海外からの人材の積極的な受入れが更に進めば,社会の様々なシステムが,多様性を踏まえたものとして構築されていくとともに,我が国の文化や社会のこれまでの在り方の良さが調和した社会に発展していくことが期待される」とさせていただいています。
その後,地方創生が目指す社会でございますが,まず,総人口のことを書かせていただいております。2040年には,1億1,092万人となるということでございます。
5のページの3行目,「また」のところですが,これは平成26年に整理された「ストップ少子化・地方元気戦略」を注に書かせていただいていますが,ここで全体の49.8%の市町村が将来的には消滅するおそれが高いというようなことも発表されております。それを踏まえた形にしていますが,「他方」というところで,やはり地域集約型が進めば,「地域の中での生産性の向上,高付加価値化が可能となる」というところで,「都市ではなく地域が産業の拠点となる可能性も高まる」としています。
それから,そのパラグラフですが,地方創生が実現すべき社会は,「個人の価値観を尊重する生活環境を提供できる社会」ということで,「生まれ育った地域で個人の価値観を尊重して生活し,その地域を豊かなものにしていくための継続的な営みができる社会の実現が期待される」としています。
以上が,社会の変化の展望というところでございます。次が,高等教育の状況と展望ということでまとめています。
高等教育をめぐる国内外の状況に関しては,国内の機会提供の段階から,域内の,近隣諸国を含めた域内の提供の段階へ,また,高等教育がまだ充実していない地域での教育機会提供の段階,そして,MOOCsのようなオンラインにつながっていっているということを書かせていただいておりまして,オープンな時代を迎えていると言えるということでございます。この動きには,ここに書いてありますような様々な変化も影響しているということで整理をさせていただいています。
6ページ,「競争」から共に創るというところに動いていくべきだというところでございます。世界大学ランキング等の影響もあり,国家間を巻き込んだ競争に発展しているところもございますが,一方で,高等教育の国際協力も進展しているということでございます。
既に人類が抱える課題が国境を越えたものとなっている中で,もちろん切磋琢磨(せっさたくま)は必要であるということで書いています。けれども,国内外で機関ごとにただ「競争」するのではなく,人的,物的資源の共有化による「共創」へと発想を転換していく必要があるということでございます。「特に,我が国のような課題先進国の高等教育機関が世界的課題解決に貢献することは重要であり,この貢献が各国との安定的な関係の構築にも資するという意識を持つことが必要である」と書かせていただいています。
それから,3番のところで,高等教育の課題と方向性を整理させていただいています。
まず,冒頭にどういうことを書いているかということの前提を整理していますが,4行目,「学習者にとっての『知識の共通基盤』を作るという視点に立ち,『何を学び,身に付けることができるのか』を中軸に据えた高等教育への転換を引き続き図っていく必要があること」。それから,「個々の教員の教育手法や研究を中心にシステムが構築されるのではなく,学習者の『主体的な学び』の質を高めるシステムを構築していく」と。これはガバナンスにおいても同様ということで書いています。
また,最後でございますが,「一つの機関での固定化された学びではなく,学習者が生涯学び続けられるための多様な仕組みと流動性を高める方策が必要であることを強調しておきたい」とまとめています。
中身でございますが,21世紀を生きるための「学び」をどう考えるかということで, OECDのキー・コンピテンシーの例を説明しています。7ページ目の3段落目のところを御覧いただければ,「このような観点も踏まえて,高等教育の在り方を考えた場合には,文系・理系の区別にとらわれず,新たなリテラシーにも対応した一般教育・共通教育とそれを基礎とした専門教育が行われること,分野を超えて専門知や技能を組み合わせる実践力を培う教育が行われること,卓越した才能を見出(だ)し大いに伸長する教育が行われることが必要」と書いています。
次が,初等中等教育からの接続と多様性というところでございます。まず,初等中等教育段階で,今回の新しい学習指導要領において整理をされた目指す資質・能力について書かせていただいています。
8ページ真ん中,初等中等教育段階におきましても,社会に開かれた教育課程を目指すべき理念として位置付けられています。そのようなことを踏まえまして,最後の方の段落になりますけれども,「こうしたことを踏まえ,高等学校教育で育成を目指す資質・能力を前提に,アドミッションやその後の高等教育にどう生かしていくかという高大接続の観点と,入学段階からいかに入学者の能力を伸ばすかという観点で高等教育における『学び』を再構築することが重要である」としています。
次が高等教育の新たな役割をどう考えるかということで,3点に整理をさせていただいております。現在もこの役割を持っているという前提でございますが,「人生100年時代におけるリカレント教育を通じ,高等教育があらゆる世代のための『知識の共通基盤』となること」,また,アカデミック・インパクトの件は,委員の方からも御紹介がありましたので,「国内外に必要な教育を提供する」と,それから,地方創生の観点で,「知識基盤のプラットフォームという役割を担い,日本のこれから,地域のこれからを創るという新たな役割を再構築」と整理をさせていただいています。
また,社会との関係は,高等教育と社会との関係ということで,これも御議論いただきました「学問の自由」,「大学の自治」ということを整理させていただいた上で,「その自由が保障されていることが,新しい『知』を生み出し,国力の源泉となる根幹を支えていることを再確認しておく」とさせていただいています。
10ページ,その上で,やはり社会との関係性ということで,「その成果を社会に還元することを通じて,社会からの評価と支援を得るという好循環を形成」ということ,それから,「高等教育システムそのもの,そして,高等教育機関の『建学の精神』や『ミッション』は,時代の変化の中で,変わるべきものと変わらないものがあることを改めて意識」するということと,その『強み』と『特色』を社会に分かりやすく発信していく」ということで整理をしています。
次が,質保証の在り方の見直しでございます。その質が国内外で認知されることが重要ということで,保証すべき質とは何かということを検討することも含めて,「現在の設置認可から認証評価,組織を中心とした質保証の在り方を見直す」という整理をしています。
産業界との協力・連携に関しましては,やはり高等教育と産業界が人材を育成する側と人材を活用する側で議論と理解を深めていくということ,それから,産業界の雇用の在り方,働き方改革と学びのマッチングが必要不可欠,また,大学内外の資源を有効活用ということで,協力関係,連携関係が充実していく必要があるとしています。
それから,投資と還元の好循環でございますが,「公的な支援,民間からの投資と社会からの寄附等の支援,個人負担のバランスの在り方について」ということで,投資効果について整理をしながら考えていく必要があるということでございます。それから,人口減少期においては,一人一人の能力と可能性の最大化が国力の源でございますので,投資効果を最大化する形で公的支援が投入されるべきでございます。社会のあらゆるセクターから,人材育成に還元する方策とその好循環ということでまとめさせていただいています。
それから,18歳人口減でございますが,88万人に18歳人口が減少するということで,2040年までの間は,例えば国公私の役割分担の整理とか,多様な学生が集まる環境創出の集約,高等教育の質の保証ということをやっていく上で,やはり2040年には,国公私立の設置形態に着目した政策よりも,国公私を通じ,「公共財」としての高等教育という視点での政策がより重要ということで書かせていただいています。
そこからは,中央教育審議会の議論の経緯ということで,平成17年の「我が国の高等教育の将来像(答申)」(以下,「将来像答申」という。)を整理させていただきました。12ページ目の上から二つ目の丸,「2040年を見据えた高等教育の将来像を描く際,『将来像の提示と政策誘導』の方向性は変わらない」とさせていただいていますが,その際,我が国の高等教育の国内外に対して果たしていくべき役割の再構築,接続関係,それから,ガバナンス,情報公表,そして,「強み」を生かした上での連携・統合や規模の設定,地方公共団体や産業界との連携ということで整理をさせていただいています。
以上が,「はじめに」の部分になります。
13ページからは,先ほど申し上げましたように,論点整理を少し直していると考えていただければと思います。割愛しながら,説明を続けさせていただきます。
社会の変化に対応できる人材とその成長の場となる高等教育というところでは,「個々人の強みを最大限に活かすことを可能とする教育」への転換を引き続きやっていくということで,何を教えたかから,何を学び,身に付けることができたのかというような形で,評価の仕方やリカレント教育について整理をさせていただいています。
その際に,論点整理でも整理していただいたように,多様性をきちんと整理をしていくということで,その2につながるような書き方にさせていただいています。
14ページ,社会の変化に対応するために獲得すべき能力ということで,特に,論理性や批判的思考力等々,普遍的なスキルやリテラシーというものを,一般教育,共通教育と専門教育の双方を通じてきちんと育成していくべきものであるということ,それから,分離横断的なカリキュラムということは,平成17年の将来像答申でも出てきています「21世紀型市民」の育成につながっていくということで書かせていただいています。
専門教育については,ジェネラリストではなく,プロフェッショナルと具体的な業務の専門化に対応できる専門的なスキル・知識を持った双方の人材育成ということで,14ページから15ページに書かせていただいています。
また,データサイエンスなどの新しいリテラシーということで,基盤的リテラシーを大学で文理を超えて身に付けるという整理をさせていただいています。
特に,産業社会との関係におきましては,特に職業実践的な科目に関しては,産業界とも協議しつつ,カリキュラムを修正するサイクルを恒常的に回していくということでまとめています。
16ページ,高等教育機関の教育研究体制というところで,これは論点整理の中にありました多様性ということで書かせていただいておりました。加えていますのは,特に上から四つ目の丸ですが,「流動性」の部分が重要であるということを強調させていただいています。
16ページの下が,多様な教員というところで,ここからは具体的な方策を四角の中に入れていますが,これも,これまで論点整理では,「何とかではないか」というような形であったものを「実施する」,あるいは,「検討する」という形に整理をし直させていただいています。
多様な学生も,同様に,社会人,留学生,それから,障害のある学生ということで整理をさせていただいています。
18ページの後段は,リカレント教育の充実から留学生交流の推進,それから,学位等の国際通用性の確保,また,先ほど日比谷委員からも御指摘を頂きました学位名称の件,それから,国際展開ということで書かせていただいています。
多様な質の高い教育プログラムというところは,特に文理横断的なプログラムの編成,これは学位プログラムにもつながります。また,三つ目の丸のところで,特に数理・データサイエンスなどの基盤的リテラシーということに関しましては,教えられる教員の全国的な不足ということが言えますので,そのようなことにも対応できることが必要ではないかと整理をさせていただいています。
21ページのところから,その施策を整理しています。
ガバナンスに関しましては,これも論点整理のところで取り上げていただきました連携・統合,それから,「地域連携プラットフォーム」の関係を整理して書かせていただいています。また,学外理事についても,少なくとも複数名ということで書かせていただいています。
23ページ,大学の強みの強化ということで,これも三度ぐらいにわたりまして御議論いただきました強みというものをどう整理していくかということで,既に議論いただいたものをそのまま入れさせていただいている形になっています。
表に関しましては,参考ということで,三つの観点の例ということで24ページに書かせていただいています。
26ページ,教育の質の保証と情報公表ということで,前段のところは論点整理の内容をそのままにしています。27ページのところにありますが,具体的に何をするかというところで,「全学的な教学マネジメントの確立とその前提としての学修成果の可視化」,「設置基準等の見直しを含む入り口での設置認可と恒常的な情報公表・認証評価制度の改善」ということを書かせていただいています。特に,情報公表に関しましては,社会が理解しやすいよう,一括して公表することも検討すべきというところで,教学マネジメントの確立,それから,情報公表ということを書かせていただいています。そして,その次,29ページのところに認証評価制度の在り方ということで書かせていただいています。
30ページ,18歳人口の減少を踏まえた大学の規模も地域配置ということで,論点整理を踏まえています。31ページ,大学進学者数の推計は,これは論点整理以降,整理をさせていただきましたので,そのデータについて書かせていただいています。
「推計によれば」の真ん中の辺りですが,2040年には大学進学率は57.4%,大学進学者数は2040年には約51万人ということになります。2017年と比較すると約12万人減少して,現在の約80%の規模となる。
それから,都道府県別の進学動向等はデータを整理して提示させていただいているので,これは論点整理から変わっておりません。
国が提示する将来像と地域で描く将来像に関しましては,33ページ,特に国の役割として,各地域の立地条件や産業状況,歴史的背景など特有の事情を顧慮する必要があります。国が直接,地域における将来像に関与することは非常に困難である一方で,議論の前提としてのデータの整備や,プラットフォームの構築への関与,連携・統合の仕組みの制度的整備などは国が担うべき役割であるとまとめさせていただいています。
最後に,各高等機関の役割等ということで,34ページ以下でございます。専門職大学・専門職短期大学,それから,短期大学,高等専門学校,専門学校,大学院ということで,大学院は,先ほど有信部会長からも御報告いただきました大学院部会での審議内容を踏まえたものとして書かせていただいています。
最後でございますが,37ページ,答申に向けた検討課題というところで,まだ残っています課題を,今後,三,四か月をかけて更に議論を進めていただければと思っています。特に「四つ目の諮問事項については,教育研究費を支える基盤的経費,競争的資金の充実や配分の在り方,学生への経済的支援の充実など教育費負担の在り方等について」は,政府における検討の状況も踏まえつつ,本部会において引き続き議論を行うとさせていただいています。
また,諮問事項1から3までにおいても,特に適正な規模の関係や,適正な規模を維持していくための設置基準の見直しを含む設置認可や審査の在り方,情報公表・認証評価制度の改善,それから,国公私の役割分担,規模の在り方,大学院教育の在り方や研究との関係などについては更に議論を継続するということで,引き続き,精力的な議論を重ねることとしたいということで,まとめの原案を作らせていただきました。
以上でございます。
【永田分科会長・部会長】 ただいま簡潔に御説明いただきました。
これから御意見を頂く際には,これから本格的に議論しなければいけないポイント,あるいは,こういう議論すべきポイントが残っているのではないか,というような御発言が一番有り難いと思っています。
もちろん,本文その他についてのコメントは頂きます。しかし,中間まとめであることから,もっとここを深掘りすべき,あるいは,まだ全然検討されてないといった事項を取り落とすことは大きな問題ですので,是非とも御意見を頂ければと思います。
有信委員,どうぞ。
【有信委員】 非常に広範にわたってきちんとまとめていただいて,大変だったと思います。
話を伺っていて,ここのところはどういうふうに入れるのかと気になっている部分を指摘させていただきます。
全体の背景のところで,2ページの最初にSDGsがあって,その後にSociety 5.0というのがあります。これはバックグラウンドとして非常に重要なポイントで,特にInclusiveという概念が重要だと思います。これを考えるときに,データが大量に生産されているというのは,この後々にもそれに対する専門家を育てる必要があると書かれていますが,大量のデータがある意味で占有化され,それによって様々なことが公平に行われなくなるという懸念があるわけです。
例えば,富の集中が急速に進んでいて,かつては数十人で世界の富の何割かを所有していましたが,今は数人になってしまうという急速な富の偏在化が起きる可能性があります。その偏在化の可能性をいわばどうやって防ぐかという問題です。
一つは,いわゆるオープン化です。一つは法律的に,整備をされつつある個人情報をどう保護するかというような様々な仕組みであるというようなことは社会的には言われているます。そういう部分を,例えばSDGsでこの書き方を書いて,それがSociety 5.0につながるときに,そのバックグラウンドとして,もう一つ,そういうある種の公平性を保つことの重要性のような指摘をしつつ,それが大学教育の中で生かされて,いわば数理・データサイエンスに対する教育が重要だと書かれています。そのバックグラウンドにはそういう背景がありますというのが何となく分かると良いという気がします。
【永田分科会長・部会長】 大変有り難い御意見です。反映させることはできると思っています。
この中間まとめに直接書き込むことはできませんでしたが,今後の議論の中で,いま御指摘いただいた内容については,何らかの形で考えていきたいと思っています。私が抜けていると思っていることは,AIを使うことは当たり前でみんながやらなければいけないのだけど,そうした社会になったときに,人は何をするのかということを書いていません。それは皆さんと議論した後に,最終的なまとめに書き込もうと思っていました。その中に,今の内容は入れられるだろうと思います。
佐藤委員,どうぞ。
【佐藤委員】 これだけ多様な多角的な意見が出ている中,ここまできちんとまとめたということに対して敬意を表したいと思います。
その上で,幾つかの点について申し上げたいと思います。
今回の中間のまとめで,高等教育の将来像についての提示が,国公私立という設置形態の相違によるものではなく,進められている点は非常に良かったと思います。
ただ,文章で直してもいいのではないかと思っているのは,一つ目に23ページ,大学の強みの強化ということです。最後の行,「なお,私立大学については」という部分です。
その前のところで,「大学として『強み』や『特色』を明確にした上で,それらを伸ばしていくために,大学間の連携・統合を進めていくことも一つの方策である」ということを言っているわけだから,私立大学については,公共性があることを前提として,「創設者の理念に基づく建学の精神を踏まえた『強み』や『特色』を考えていく必要がある」というのは,ここでなくてもいいのではないかという感じがしました。
私立大学の関係者から言えば,建学の精神というのは残しておいてほしいと言うのだけれども,議論しているのは,2040年の高等教育のあるべき姿について言っているわけです。それぞれのセクターによる将来像について議論していません。
その上で,実は6月1日に経済同友会で,「私立大学の撤退・再編に関する意見」というのが出ました。それ以来,様々な方が様々な意見を言ってます。実は私も,経済同友会のローカルな地域経済同友会みたいなところに加わって,議論しています。
それから言うと,財務面で持続性に疑義のある大学への対応について,これは,私立大学だけではなくて,ほかのセクターにも言えるのではないかと思うのですが,お互いに民間の団体ですから,民としてきちんとコミュニケーションを図った方がいいのではないかという感じがしました。
それから,もう一つは,教育課程の質の保証に係ることです。将来像答申で,法の整備がなされて,統括副学長を置くことができるようになった。これは教育課程について,管理できるアカデミックオフィサーがあった方がいいという御提案を申し上げて,様々な議論の結果と承知しています。けれども,教学マネジメントを整理するという意味では,この統括副学長が何をすべきかということについて検証した方が良いというような気がしています。
それから,3点目に,質保証に関してです。もう認証評価が3巡目に入ってくるわけですが,社会から見て,分かりにくい。皆が評価結果を共有できるということがもっと必要と思っています。
もともと,大学基準協会が加盟判定や相互評価をしたときは,基準も,評価も大学人がやって,ピアレビューをしていたはずです。どうもこの認証評価というのは,設置基準が下敷きにあって,その上で,評価基準が決められています。ピアの意見というのは,ピアが携わっているのかもしれませんが,あまりできてないということだと思います。
機関別認証評価,試行時から3段階とも関わってきましたが,大学分科会の認証評価機関の認証に関する審査会で認証されているわけです。どうも評価の物差しが一つに見えてしまう。
そういう意味では,評価団体も今から議論してもう少し現行の評価指針にとらわれない,社会でも,グローバルな環境でも,分かりやすいシステムに大胆に変えるようなこともしてもいい。次の議論として,取り上げていただけたらと思います。
以上でございます。
【永田分科会長・部会長】 ありがとうございます。
志賀委員,どうぞ。
【志賀委員】 大学からという視点でずっとまとめられているのですが,産業界の人間として考えているのですが,ちょうど就職活動が行われているときなのですが,今年も売手市場で,相変わらずの新卒一括採用です。エントリーシートをいっぱい配って,学生が本当に学業で大事な時期に半年間を費やしています。要するに,多様性が重要で,多様性のある教育をしていこうということになっているのですが,企業の採用活動は完全に脱個性で,コミュニケーション能力が高く,主体性があって,積極性がある学生を非常に短い時間でどんどん採用している。
この採用を変えない限り,学業を真面目にやるとか,先ほど田中先生が私立大学を十把一絡(から)げとおっしゃいましたが,まさに大学が個性ある教育をやっていても,実際問題,大学の名前を入れただけでエントリーシートの受付が終わってしまう。だから,学生個人の能力,どれぐらい学業を真面目にやったということも関係なく,大学の名前だけで採用を決めてしまうような現状の在り方を絶対に変えないといけない。
センター試験が変わることによって,初等教育の在り方が,自分で判断し,自分で考えて,そして,表現するという教育に変わりつつあります。ですから,同じように,産業界にも強調してもらいたいです。経済同友会で盛んに議論するのですが,産業界から見て,もっとガバナンスをはっきりしろと言うのですが,産業界と大学が,どういう人材を求めているかということについて,そろそろ真剣に議論をしないと,新卒一括採用によって短期間で採用するような在り方を抜本的に変えないと,本当に脱個性の学生ばかりを作ってしまう。
ですから,大学からの出口のところに何かメスを入れるような改革をしないと,大学は変わらないのではないかという気がします。
センター試験によって初等教育が本当に変わりつつあると思うので,同じようなことを,ここの中でも, 27ページ,「産業界においては,採用プロセスに当たり,『求める人材』のイメージや技能を具体的に示していく」をというのが入っていますが,もう少し産業界も真面目に考えてほしい,新卒一括採用をやめてほしいというようなメッセージを入れられたら良いのではないかと思います。
結果的に,先ほど,田中先生もお話しされていましたが,見せ掛けだけのインターンシップというのは本当に良くないと思います。あれは何をやっているかというと,内定が決まった学生を抱え込むために,見せ掛けインターンシップをやっているわけです。
ですから,もっと大学の先生は怒って,ここを変えていかないといけないと言うべきだと思います。2040年の大学を構想していますが,ここが変わらないと,結局,学業に関係なく,クラブ活動をやって,サークルをやって,アルバイトをやっていた人間で留学経験あれば,グローバル人材だという訳の分からない採用基準をやっている限りにおいては,大学は変わらないのではないかと思います。
【永田分科会長・部会長】 大学院部会の議論と少し似ています。高大接続ではなくて,大学と産業界の接続について議論する場がないといけない,ということでしょうか。
【志賀委員】 そうです。
【永田分科会長・部会長】 大変重要な御意見です。産業界の方は本当に良い人材が欲しいからおっしゃるのだと思います。ですから,今までと同じではいけないということが認知されれば良いと思います。
益戸委員,どうぞ。
【益戸委員】 中間まとめとして,大変すばらしいものができたと思います。
特に申し上げたいのは,全体を通して,教育を受ける側からの改革を重視している。という点です。
2ページに,「国連が提唱する持続可能な開発のための目標」,3ページにSociety 5.0のくだりが出てきます。さらに,6ページに「競争」から「共創」,「協創」へという流れになっています。
社会人である若い世代は勿論(もちろん),学生の皆様もまさにこの流れの中で物事を考えているのではないかと思います。とすると,その目線で2040年を考えたときに,このまとめの展開は非常にフィットしてすばらしいと考えます。
志賀委員がおっしゃった企業の採用形態の問題,そして,佐藤委員がおっしゃった経済同友会の私立大学撤退・再編に関する意見についてですが,私は,30年間,外資系に勤務していますが,その間,あなたはどこの大学の卒業ですかと聞かれたことはありません。あなたの専門は何ですかということは常に聞かれました。基本的に社会全体が,大学の名前のブランドではなく,何を学んだのかを重視する方向になることが必要ではないでしょうか。
10ページに,「産業界との協力・連携」というところで,「日本型雇用は高等教育の変化の足かせともなっていると言われている」という一言があります。志賀委員からはもっと厳しくという御指摘がありましたが,お互いにお互いのせいにするのではなくて,もっと協力をしていかなければ日本の未来はないぞとのメッセージ性のある文章に変えてはいかがかと思います。
そして,最後の37ページ,諮問事項1から3までに関するもので,今後更に検討を重ねなければいけない項目ですが,特に設置基準等の見直しを含むという部分で,今後,急速に世の中の環境変化が起こります。企業や経済活動もどんどん変化していきます。それに合わせて,高等教育機関の設置認可,認証評価の改革もとても重要なのではないかと思います。
以上でございます。
【永田分科会長・部会長】 ありがとうございます。
鈴木(雅)委員,どうぞ。
【鈴木(雅)委員】 産業界の立場から,先ほど志賀委員がおっしゃったので,補足です。
現在採用活動を直接させていただいています。今多くの学生さんにお会いしています。その中で,経済同友会の提言にもありましたように,共通して言えることが,産業界に対して大学がどういう学生を育成しているのか,という情報開示が結構薄いと言われています。
我々採用する側もそうですが,大学を一つ一つ見ても,それぞれ方針や育成の仕方が違うと思います。けれども,本当に短時間の中で学生さんを採用しなくてはならない企業は,競争力がないと採用できないのです。大学ごとのメッセージが産業界に余り伝わっていないような気がしています。
学生さんと面接をして,初めて大学の中を知ることが結構多いです。もっとこの提言で,どのような方策で学生と産業界に情報開示を進めていくのかという点も盛り込んでいただけたらと思いました。
以上です。
【永田分科会長・部会長】 ありがとうございます。
吉岡委員,どうぞ。
【吉岡委員】 2点です。
1点目は,前から気になっていたことで,5ページの3行目のところ,「地方からの人口流出がこのまま続くと」というこの文章なんですが,これまでもよく使われていますが,20歳から39歳の女性の流出が続くと,その市町村が消滅していくという発想は余り品が良くないのではないかと思います。
これは本筋に余り関係ないので,地方で人口流出が続くと消滅する可能性があるということは確かだと思います。その部分は残してもいいと思うのですが,何も若年女性に焦点を合わせる必要ないと思います。
2点目は,先ほど,大学院部会の議題のときに発言すればよかったのですが,最後のところで,知のプロフェッショナルの話が出てきますけれども,やはり大学院生とその企業とのミスマッチの問題の一つは,大学の責任です。けれども,大学院生が非常に偏った専門性を持ってしまうシステムがまだ動いているのと思います。
特に工学部の修士課程の場合,そのときの研究室がやっている研究のための労働力のような形で,ある極めて限られた専門知識と限られたスキルを身に付けて出てしまう。博士課程はそのままその研究を続けてしまう。確かにそうなると,社会にとっては,あるいは,企業にとって,非常に扱いにくいということになります。汎用性がないと言ってもいいかもかもしれません。
何が言いたいかというと,大学院教育におけるリベラルアーツといいますか,あるいは,レイトジェネラリゼーションの問題ということを,大学院教育,学部からそうだと思いますが,少し強調してもいいと思いました。
以上でございます。
【永田分科会長・部会長】 ありがとうございます。大学院についてはもとより,学部の教育についても実は決着していません。大学院については,最終の答申が出る前に,大学院部会の方で議論を更に深めていただき,大まかなところだけは書き込めるようにまとめていただきたいと思っています。
小林委員,どうぞ。
【小林委員】 私は研究者としての立場から意見を申し述べたいと思います。
冒頭に,今の子供たちがどうなるかということが書いてありますが,この中央教育審議会の部会で議論をしているときに,学生からの視点というのが非常に重要だということは出てきたと思います。これからの子供たちがどういう未来を生きていくかということを考えると思っていたのですが,余り強調されていない。
それはどうしてかというと,未来が不確実でよく分からないからです。確実な未来もありますが,多くの場合,ここに書いてあるような未来が本当に来るかどうかということはよく分かっていないということなので,難しいということだろうと思います。
ただ,そういう中で,逆に,研究者として考えますと,未来はよく分からないのですが,過去はよく分かっています。過去の高等教育政策が何をやってきたか,それによって何が起こってきたかということはそれなりには分かっているわけです。そういう観点からしますと,11ページから12ページの記述というのは余りにも簡単過ぎると思います。
例えば,高等教育計画の反省の上で,平成17年の将来像答申が書かれたと言及されています。これはどうしてかというと,それまでの自由放任政策によって,非常に格差が拡大してきたということが背景にあって,現在の東京23区規制よりも大幅な政令指定都市の抑制計画が行われたという経緯があるわけです。
ですから,そういったことで規制して格差が縮小する面と,逆に,規制をかけたことによって弊害が起きた部分もあるわけです。今の政策がこういった大きな流れの中に乗っているということをもう少し書いていただければと思います。
それはどういうことかといいますと,計画,規制の時代から自由放任の時代というふうに大体15年ぐらいずつ繰り返してきたわけです。けれども,そういうやり方がもう通用しなくなった。計画というやり方が通用しなくなったので,2005年は,ここにありますように,政策誘導というやり方に変えたわけです。
12ページに,「『将来像の提示と政策誘導』の方向性は変わらない」と書いてあるので,このやり方を続けるということを明確にしているわけであります。これがはっきりしたという点ではいいと思いますが,このような政策を続けるためには幾つかの前提条件があります。それは,以下,細かく書かれていることが大体そうですが,一番大きいのは高等教育機関が社会から信頼を得るにはどうしたらいいのかという視点で見るべきなのです。
そのためには,大学の質の保証が重要になってくる,あるいは,大学の情報公表が重要になってくるというような個々の政策になっていくわけです。そういった大きな視点を持って少し書いていただくと,この次の方向性がもう少し見えるのではないかと思います。
また,長期的な話と短期的な話が一緒になって書かれているので,非常に分かりにくい。もう少し長期的な視点から見たものを書き入れていただくと,平成17年の将来像答申,そしてこの秋に出す将来像答申の意味合いがはっきりするのではないかと思います。
以上でございます。
【永田分科会長・部会長】 先ほど既に申し上げましたが,小林委員が最初におっしゃった部分については既に考えはほぼまとまってきています。ですが,まだ十分練られていないということで,中間まとめには出しておりません。つまり,2040年における人そのものの価値をどうやって捉えていくか,という問題は書き込む予定にしています。
後半の部分は,中間まとめなので,それぞれの教育施策について,批判というよりは,事実として書き込んだ方が良いと思います。
小杉委員,どうぞ。
【小杉委員】 既に何人かの委員の方が触れられた産業界との関係をお話ししたいと思います。
日本の2040年に労働市場がどうなっているか,あるいは,産業界の雇用慣行がどうなっているのかという話は,2040年の世界を,高等教育を決めるような大きな要因だと思います。ただ,それをここでほかのものと同列に書くほどにエビデンスのある話ではありません。そういう意味で,今回, 10ページで社会との関係の中で産業界の協力・連携という形で出さざるを得ないということは分かります。本来すごく大きな話だということは最初に書くべきではないかと思います。
方向としてはおっしゃっているとおりで,産業界との連携を更に深めて,リカレント教育にしても,伝統的学生の教育にしても,もっと踏み込んでやるべきです。けれども,その重要性はもう少し強く書いた方がいいのではないかと思います。
特に,「日本型雇用は高等教育の変化の足かせともなっていると言われている」という表現が気になっています。高等教育の問題は,産業界のせいだと言っているような感じで,産業界や労働市場,あるいは,日本の雇用管理の在り方にはそれぞれの論理があって,そして,歴史を踏まえてこういう状態が出来上がっています。その辺に対してのリスペクトは必要ではないかと思います。
そういう意味では,書き方としては,今の大学教育の在り方は,日本の企業の採用や能力開発の在り方,それと連携,それぞれの関係の中で築かれているものだから,これからの新しい展開を図るときには,産業界との連携をもっと深めなければいけないのではないかという論理の方が伝わりやすいと思います。これをどこまで深く書くかということは委員の皆さんから御意見が出されたところだと思います。けれども,現状では,協力を深めるという方向性で書くしかないと思います。
ただ,後半の方で出てくるリカレント教育の充実の在り方や具体的な政策提案の方に関連しては,もう少し深く書けないかと思っていることがあります。この具体的な提案の中で,職業実践力育成プログラムの話も出てきています。私は,職業実践力育成プログラムを幾つか見て回っていましたが,全学を挙げての組織的なものにはなかなかなっていなくて,一人の先生の思いでやっていたり,非常に小さなプログラムしかやってないところもかなりありました。
それを,リカレント教育もやっていくためには,もっと組織的なものにならなければいけない。できれば,地域連携プラットフォームのようなところが中心になって,職業実践力育成プログラム的なものの開発のバックアップや検証をする。
産業界がそういうものをうまく使わないのは,それが成果として検証できないからであって,それがある程度検証できれば,もっと広まると思います。組織的な開発と検証ができるような仕組みが必要ではないかと思います。
以上でございます。
【永田分科会長・部会長】 室伏委員,どうぞ。
【室伏委員】 全体を拝見して,高等教育機関と社会,産業界との連携は非常に重要だと思います。社会全体の中で,高等教育機関が果たすべき役割の一つとして,政治や行政といった領域で活躍できる人を育てることが非常に重要なことだと思います。それも是非書き込んでいただきたいと思っています。
14ページの下から2番目の丸のところに,「時代の変化に合わせて社会を支え,社会を改善していく資質を有する人材」ということが書いてあります。けれども,やはりこれだけでは足りないので,社会全体を俯瞰(ふかん)的に見て,それを改革していくような人材という表現も入った方がいいのではないかと思います。
企業とのことばかり書き過ぎではないかという気がしないでもないのですが,ただ,大企業との関係のことに偏っているのではないかという気がしています。
例えば,少し前に,中小企業の関係者の方々とお会いしてお話を伺ったのですが,日本に300万もある中小企業のうちの240万が後継者不足で潰れてしまうかもしれないということでした。日本の高等教育機関は,そういった中小企業を運営し,経営していくという能力のある人を輩出するようなことも考えるべきではないかという思いを持っています。
もう一つ最後に申し上げたいのですが,志賀委員から内定が決まった学生を抱え込むための見せ掛けインターンシップが良くないという御意見があったのですが,経済同友会が間に入って2年前から始めているインターンシップは,学生たちを早期に働く場に触れさせるという非常に良いものができています。各企業にとって負担が大きいと思いますが,こういった取り組みを広げていただいて,そこで本当の意味での職業教育をしていただきたいと思っています。
以上でございます。
【永田分科会長・部会長】 ありがとうございます。
伊東委員,どうぞ。
【伊東委員】 私の方からは,12ページの下から二つ目の丸の部分と,そして,最後の37ページの下から二つ目の丸の部分について,申し上げたいと思います。
一つには,今後,大学の連携・統合や規模の設定を,その地域の実情や人材養成の観点を踏まえてということで行っていくということが書いてあるわけでございます。この中にも随分書いてありますが,地方で人口が減っているからといって,地方の大学の規模を縮小するというような方向にならないようにしていただきたいと思います。もちろんここに書くものでは現時点でないと思います。けれども,そのようなところが非常に心配になりました。
37ページ,大学の設置基準の見直しや規模の在り方ということについても,そのような心配は持っています。
そして,先ほど,志賀委員はじめ,多くの皆様から,大学と就職のことが出ました。私ども地方にとりまして,特に地元以外の大学,東京圏をはじめとするところに行った学生が地元に戻ってこないということが最大の問題点であり,非常に困っているということでございます。先ほど,中小企業の後継者のことも出ましたが,特に地方の中小企業は困っています。
そのときに,高等教育として,能力,学習を教えるということはもちろんだと思いますが,今の東京一極集中是正という国の方針を踏まえると,是非,自分の地域以外の大学に行った学生に対しても,自分の地域,また,自分の地方の企業にも,よい企業はたくさんあるということを是非,学校のどういう形なのか分かりませんけれども,就職だけではなくて,実際に教えていらっしゃる先生たちから,そういうところに目を向けてもらいたいと思います。
我々地方公共団体は,とにかく地方に子供たちを帰してもらいたいと心から思っています。
以上でございます。
【永田分科会長・部会長】 いまの伊東委員の御意見については,各都道府県別に高校生がどのように大学を選んでいるか,その後,卒業後どこに定着しているか,といったデータを後に御覧いただけると良いと思います。
データによれば,例えば国立大学においては,京都府を除いて,ほぼ7割以上が,他県から来た学生もその卒業した大学のある県に就職しています。自分の県からその大学に入る学生は2割ぐらいですから,多くの学生が他県から来て,大学がある場所に定着するという形になっています。つまり,高等教育にあっては,意外に入った学校の地に定着しているのです。
古沢委員,どうぞ。
【古沢委員】 採用の問題について,私も申し述べさせていただきたいと思います。
どの大学を出たかが評価につながるのは良いことだと思っています。海外でも,採用の際,非常に重視される国はかなりあるのではないかと思います。
ただ,現状の問題としては,18歳の入学時点での学力を問うような形になっているのが問題です。そのためには,大学側にも課題があると思っております。成績の管理であったり,卒業時の質保証を具体的にもう少し書き込んだり,論議することも必要ではないかと思います。
前の分科会でも指摘させていただいた流動性ということも本来それにつながると思っています。16ページに,学生も組織に縛られることなく,「流動性」を確保と書かれていますが,もう少し具体的に書いていただくことで,そういう出口管理の問題につながっていくかと思っています。
全然別の話なのですが,21ページに,多様性を受け止めるガバナンスというところで,二つ目の丸に,隣の22ページに書いてあることが凝縮されているのですが,大学間の連携・統合ということだと思いますが,その段落の一番下の方に,「取組を推進するための支援体制の構築」というのがあります。これがどのようなことをイメージして書かれているのかが,一読して分かりにくいと思いました。
22ページにも,2番のところで,「連携・統合について,建学の精神の継承に配慮しつつ,支援する」と書いてあります。また,「早期の適切な経営判断を促す指導を実施する」とあるのですが,大学が主語になっている文章ではないので,文部科学省あるいは国かとは思うのですが,かなり大事なところです。もう少し分かりやすく書いていただいた方がいいと思いました。
以上でございます。
【永田分科会長・部会長】 ありがとうございます。
村田委員,どうぞ。
【村田副分科会長】
私からは,お願いが一つございます。
先ほどから出ていますけれども,キー・コンピテンシーの話もここに書かれています。ボローニャ・プロセス,OECDで,御存じのように,キー・コンピテンシーが出てきた背景,あるいは,概念の一つがエンプロイアビリティです。当然,就労することを前提として,まさにキー・コンピテンシーという議論が出てきたわけです。そうしますと,中間まとめのところで出ている,いわゆる教育の質の保証というときに,その質の保証をするために,当然,学修成果の可視化と出てくるわけです。一体何を,どういうものを指標にするのかということがものすごく重要だと思います。
そのときに,やはり志賀委員からも出ましたようなエンプロイアビリティという観点がどこかで入っていくと思います。そのことは,個別の課題としてはリカレント等が上がっていますが,大学院の先ほどの議論もそうですが,マッチングの問題を強調した方がいいのではないかと思います。
全体として,非常に様々な御意見をまとめられて,非常によく書かれているなというのは本当に感心しています。けれども,今日の御議論を聞きながらも,少しそこのところを強調していただければ良いということが一つです。
それから,もう一つ,これは感想なのですが,教育の質保証で,先ほど小林委員からもございましたけれども,基本的には,政策誘導のスタンスは変えないということが書かれているわけです。そうしますと,認証評価のところをどう強化していくことが,質の保証をどう担保していくかということにつながっていきます。ですから,認証評価をどうしていくのかが今後具体的に議論していかなければならない課題だと感じています。
以上でございます。
【永田分科会長・部会長】 ありがとうございます。学修成果の可視化は難しい問題です。
鈴木(典)委員,どうぞ。
【鈴木(典)委員】 2ページに2040年頃の社会変化の方向とありまして,SDGsが目指す社会。3ページにSociety 5.0が目指す社会。4ページに人生100年時代,地方創生が目指す社会,それから,グローバリゼーションが進んだ社会とあります。網羅的にリストアップされているわけですが,このグローバリゼーションが進んだ社会というところ以外は,ある意味,日本の国内が2040年頃,どう変化していくかということが取り扱われているわけです。その意味では,国内がどうなっていくかということ,唯一,グローバリゼーションが進んだ社会というのが四つ目に出てきて,そういう社会で日本の高等教育がどうなっていくかと描かれています。
この順番について,グローバリゼーションが進んだ社会というのを一番に持ってきて,その社会,グローバリゼーションの中でSDGsが,あるいは,Society 5.0,人生100年,あるいは,地方創生が目指す社会というふうな順番に変えていくことはどうかと思います。
それから,もう一つ,グローバリゼーションが進んだ社会において,言及されているのですが,教育の国際通用性,すなわち,2040年に日本の高等教育の国際通用性がどうなっているかについて目標的に書かれていないのではないかと思います。
ということは,学部,あるいは,修士,あるいは,博士の学位の国際通用性がどうなっているかということになるかと思います。これは進んでいる,あるいは,海外諸国に伍(ご)して,2040年には大丈夫だとはっきりと書いていただけないかということであります。
具体的な在り方というのは,海外の大学との単位がしっかりと互換ができるということです。単位の互換ができるようなカリキュラムになっていくということが国際通用性の第一の条件だと思います。ここのグローバリゼーションが進んだ社会の中に,標準化と多様化という言葉が出ていて,この標準化という言葉がいわゆるカリキュラムの標準化ということを示していると思います。その場合に,カリキュラムを英語で開講するということがどのくらい必要なのかということがグローバリゼーションという中に非常に大きく出てきます。このことも書いておく必要があるのではないかと思う次第です。
以上でございます。
【永田分科会長・部会長】 ありがとうございました。
鈴木(典)委員がおっしゃったことは全部,制度・教育改革ワーキンググループで検討中ですので,今後,同ワーキンググループで議論された内容が入ってくると思います。
亀山委員,どうぞ。
【亀山委員】 人生100年時代の書き方について,少子化が問題になっても,高齢化の方はほとんど問題にされていません。高齢化に対して,どう大学が対応するのかについて,真剣に考えるべきだと思います。
ここの部分では,マルチステージという言葉があります。主として,高齢化社会への対応というところに少し重点を置いた書きぶりが重要ではないかと思います。あと,生涯を通じて切れ目なく質の高い教育と書いてありますが,非常に書き方が浅いと思うのです。もう少し,高齢化社会,この人生100年というのは世界的にも非常に特殊な事例なのであって,その中における日本人の自覚の問題といったことも問われるべきだと思います。
そういった場合に,やはり生涯にわたるリベラルアーツ教育の重要性ということをもう少し踏み込んで書かないといけないと思います。リベラルアーツ教育自体が文化的な地方創生に貢献するだろうということを申し述べたいと思います。
以上でございます。
【永田分科会長・部会長】 ありがとうございます。
伹野委員,どうぞ。
【伹野委員】 新しい高等教育の制度に対する期待が持てるということで,非常に好感が持てるような内容でございます。
一つだけ気になった点が,6ページの2040年に向けた高等教育の課題と方向性の中で,非常に期待されるというところは,学習者目線という点でございます。
それで,「主体的な学び」というところがここに指摘されています。まさしくこのとおりです。今までの教育の形を大きく変えるという意味では,非常に大きなインパクトのある見方です。ここでは,質を高めるシステムを構築することが課題になっています。この段階で,もう少し踏み込んだ具体的な体制構築ということで,「主体的な学び」を保証する制度というのはどういうところがあるかについて,もっと踏み込んだ議論ができればと期待しています。
以上でございます。
【永田分科会長・部会長】 ありがとうございます。
野田委員,どうぞ。
【野田委員】 リカレント教育が出ていますので,労働界の立場で一言だけ申し上げておきたいと思います。
18ページに,具体的な方策としてリカレント教育の充実という具体的なテーマが設定をされています。そこで御意見申し上げますが,リカレント教育のその要素の中に社会人の学び直しという課題もあるわけでございます。これは人生100年構想会議の中でも,大きなテーマになってございます。
そういった中で,産官学の連携,オールジャパンでということはそのとおりだと思います。けれども,社会人の学び直しを促進するという観点で捉えたときに,その衝撃となっているものは何かと考えると,経済負担の問題,時間がないという問題です。
働きながら,学び直ししたいのだけれども,時間がないということがアンケート調査のトップでございます。そういった観点が必要なのではないか。100年構想会議の中では,環境整備の中に,その種の休暇制度の創設などを産業界に求めるということなども提案をさせていただいています。そういった観点も少し具体的な方策の中に取り入れていただければ有り難いと思っています。
以上でございます。
【永田分科会長・部会長】 ありがとうございます。高等教育そのものではなくて,それを取り巻く環境を変えないといけないという提案なので,高等教育論だけでは収まらない問題です。こういうことを進めるためには,高等教育以外の分野もいろいろ協力してください,という書き方はできると思います。
安部委員,どうぞ。
【安部委員】
【安部委員】
この中間まとめを拝見して,2040年の高等教育の将来像構築には多くの観点とそれに伴った課題がたくさんあって,それを漏らさず網羅的にまとめられていると思います。
構成のことについて申し上げたいのですが,1番目に,未来社会の状況というのがデータ等でまとめられています。5ページに「2040年の高等教育の状況と展望」があり,6ページに「2040年に向けた高等教育の課題と方向性」について書いてあります。一つ目には,新時代に適応するために,大学教育の質の改革をしなければいけない。二つ目には,個人の多様性とか社会との連携に配慮した中等教育との接続性,そして,新たに設けられた全ての学生,多様な年齢層の学生に対する高等教育を開くことについてまとめてあります。
また,2040年の高等教育は社会と企業や地域で関係をしっかりと結ばなければいけないということや,18歳人口が減少するという大きな問題があるということが述べられています。
この並びに関して,並列ではないような気がするということが一つです。それから,その課題に対して,13ページから36ページに高等教育の改革の視点で,5項目書いてありますが,それらと今後の課題がどのように結び付くのかというようなことも示していただくと,分かりやすくなるのではないかと思いました。
以上でございます。
【永田分科会長・部会長】 ありがとうございます。概要を一枚で説明するときに,分かりやすく説明できるように作ってはどうか,という御意見でした。 日比谷委員,どうぞ。
【日比谷副部会長】 今後,大学を目指してくる人は,いわゆる18歳人口だけではない。非常に多様な年齢層,それから,多様なニーズ,これは海外から日本の大学を目指す人も含まれる。
そうすると,それぞれの大学がどんな教育をしているか,何が特徴かという情報を,その人たちに分かりやすい形で公表することがすごく大事だと思います。産業界の方々にとっても,どういう大学かというのは大事です。様々な御意見がありましたが,これから入ろうとしている人に非常に重要な情報だと思います。
そのときに,認証評価はこれほどの労力を掛けて定期的に行っています。ピアレビューや,基準をもっと考えるべきだと思いますが,仮にすばらしい認証評価の制度ができたとしても,今のような公表の仕方では誰も読みません。
それを,高校生も読め,海外の人も読めるということが重要です。例えば,英語で公表するというようなことがあると思います。社会人の方に向けては,やはり社会人の目で見て納得できるような形で公表することを真剣に考えなければいけないと思います。
もう一つ,認証評価機関は情報発信しなさいと書いてあります。ですが,大変結構なことです。すぐれた取組を積極的に記載し,特色ある教育研究活動を積極的に発信すると書いてあります。これはよろしいことだと思いますが,自分で経験してみても,すぐれた取組と褒められるところは大体いつも同じです。結局そこがその大学の強みだからです。ですが,ここをもう少し努力してほしいと書いていただいているところの方がはるかに大学にとっては有り難いです。
大学に行こうとする人は,強みはもちろん見ていいのですが,ここは少し足りないのではないかと言われたことを,どのように改善するかという姿勢を持っているかというところをこれから大学に行きたいと思う人が最もチェックすべきポイントだと思います。そういうことも積極的に発信して,認証評価と情報公表について,積極的に書き込んでいただきたいと思います。
以上でございます。
【永田分科会長・部会長】 千葉委員,どうぞ。
【千葉委員】 Society 5.0の方の話も大変興味があります。34ページ,各高等教育機関の役割というところで,委員の先生方もお話になったような未来型の教育が高等教育機関に求められています。一方で,地域の生活を支えるという人材の育成も高等教育機関の大変大きな役割になっております。短期大学のところに書いてありますように,様々な幼稚園,保育士,看護師,栄養士,介護人材,また,専門学校では,理容,美容,調理師,土木,建築等々,国家試験の養成施設があるわけです。けれども,それがフェードアウトしていきますと,人材供給が絶たれてしまうという形になります。その地域の生活を支える人材を高等教育機関としてどういうふうに維持をしていくのかということです。
こういう観点も盛り込んで,継続の検討をしていただければということで申し上げたいと思います。
以上でございます。
【永田分科会長・部会長】 ありがとうございます。
石田先生,どうぞ。
【石田委員】 何度か同じことを申してきましたが,先ほど鈴木委員の方からありましたように,国際通用性とそれに伴う質保証ということを認証も含め,書き込んでいただくのは,ワーキンググループの方で検討するということですので,大いに期待したいと思っています。これが1点です。
それから,もう1点は,先ほど流動性という話も出ました。16ページで流動性と出ているのですが,流動性の中で一つ大切なところというのは,やはり地方のポテンシャルを上げるというところです。同じ生まれ育った地域で,生まれ育った場所で,高等機関に行き,そこで就職するということが地方のポジションを上げるとは思っていません。
ただ,そういった意味で,正しい流動性を確保するというのを,書き込んでいただけると,有り難いと思っています。
以上でございます。
【永田分科会長・部会長】 ありがとうございます。
小林委員,どうぞ。
【小林委員】 先ほど,未来が不確実と言いましたが,そこをどうするかという話なのですが,学生の方については,社会の変化に対応するために獲得すべき能力と書かれています。私は高等教育自体がそういう能力を持たなければいけないと考えています。
そういう観点からしますと,多様性と柔軟性が求められると思うのです。社会の変化に対応して,高等教育の方も柔軟に変われるような仕組みを作っていかなければいけないと思っています。けれども,その辺のことが余り書かれていないのです。
20ページに,時代の変化に対応して,学部・研究科等の組織を超えて,迅速かつ柔軟なプログラム編成ができるようにするというのはそのとおりだと思います。これは別にプログラム編成だけの話ではなくて,高等教育全体に係る話だと思います。そういう形で書いていただければと思います。
【永田分科会長・部会長】 ありがとうございます。小林委員から述べていただいた御意見の中で,定員や修業年限の考え方については,まだ議論が詰め切れていないと思っています。こうした論点は,これからの議論に付していきたいと思います。
次回,もう一度,委員の先生方に御意見を伺います。更なる議論を積み重ねる中間まとめになるか,という観点で検討させていただきます。本日述べていただいた問題は,その際に議論を深めたいと思います。
それでは,5分間,休憩です。
( 休憩 )
(4)工学系教育改革に係る大学設置基準等の改正について,資料4-1,資料4-2,資料4-3に基づき,事務局から説明があり,その後意見交換が行われた。
【永田分科会長・部会長】 議事を再開したいと思います。
次は,工学系教育改革に係る大学設置基準等の改正について,という諮問事項です。冒頭でも述べました,3月27日の大学分科会・将来構想部会合同会議の御意見や,制度・教育改革ワーキンググループにおける議論を踏まえて,パブリックコメント等に必要な手続をもう経た上で,具体的な法令改正について,文部科学大臣から諮問がなされています。
その概要について,事務局から説明を頂きたいと思います。
【松永専門教育課長】 専門教育課の松永でございます。資料4-1「工学系教育改革に関する大学設置基準等の改正について」でございます。
先ほどもございましたように,方向性について,3月末のこの会議で御審議を頂きました。改めまして御説明申し上げますと,まず,改正の趣旨といたしましては,現行の設置基準上,大学,大学院におきまして,教育組織と研究組織を分離し,教育ニーズへの適切な対応を重視した組織編成を可能とするため,学部段階にあっては学科に代えて課程を設けること,また,大学院段階にありましては,研究科に代えて「研究科以外の基本組織」を設けることが可能となっています。
工学系の教育研究を行う大学が,社会の要請,あるいは,産業分野の変化に迅速に対応できるよう,これらの現行制度を活用して,機動的に教育を展開しやすくするというために行う改正でございます。
改正の概要については,大きく二つございます。
一つは,工学系の学科・専攻の縦割りの見直しに関してです。教育ニーズに適切に対応するというための例えば学部でございましたら課程,そういうものの設置を促進する観点から,この学部に課程等を設けた場合の教員基準を,これまでこれはなかったものでございますが,定めることと,これを定めるに際しましては,学部,あるいは,研究科以外の基本組織単位で,ですから,学部等,全体で何人と定めるということが一つでございます。
もう一つは,工学分野における学部と大学院の連続性に配慮した教育課程ということでございまして,学部と大学院の連続性に配慮した教育課程を編成する大学におきましては,当該学部等において,二つございます。一つが,工学以外の専攻分野に係る事業科目,もう一つが,企業等との連携による事業科目の開設,これらの科目の開設に努めるということでございます。これを努力義務として規定をいたします。
また,その場合,これらの科目を開設する場合には,担当する教員として,工学以外の専攻分野に係る事業科目については,他の専攻分野の学部・研究科の専任教員を配置する。また,企業等との連携による授業科目の開設の場合には,実務の経験等を有する教員を配置するということを規定するものでございます。
3月末のこの会議の後,4月の末に,将来構想部会の制度・教育改革ワーキンググループで,再度,これについて御議論を頂きました。
そこでの御意見としましては,先ほど,学部と大学院の連続性に配慮した教育課程におきまして,企業等との連携による授業科目を開設する場合に,それを担当する教員として,実務の経験等を有する教員の配置ということを申し上げましたが,この実務家教員について,単に実務の経験があるというだけでは不十分であって,しっかりと教育研究ができる人材である必要があるという御意見がございました。
これについては,今後,この改正についてお認めいただきましたら,施行通知等の中で,実務家教員の教育の質保証,及び,教育力強化に向けた組織的なファカルティ・ディベロップメント等の実施を求めていく予定でございます。
また,この間,パブリックコメントを実施いたしました。内容に係る御意見としては,1件でございました。その1件は,この改正の趣旨については,合理的で,工学系に対象をとどめるのではなく,分野を問わずこれを導入すべきであろうということでした。むしろ,社会科学系こそこの対象とすべきだと思うという御意見がございました。
これについては,前回,この会議におきましても,他分野への展開ということで御意見を頂いたところでございます。今後,学部等組織の枠を超えた学位プログラムという形で御審議を頂くとともに,また,各分野について,今回の工学系と同様の課題があるとしましたら,それは別途検討していくというふうに考えているところでございます。
このような経過をたどりまして,資料4-2にございますとおり,今回,これに係る大学設置基準等の改正について,諮問をさせていただいたところでございます。
以上でございます。
【永田分科会長・部会長】 ありがとうございます。
ただいま御説明いただいた今回の改正に関わる概要について,御質問はございますでしょうか。
志賀委員,どうぞ。
【志賀委員】 産業界で非常に困っている,人工知能のアルゴリズムのコードを書けるコンピュータサイエンスや情報工学をやっている学生が,東京大学と京都大学だけです。定員が百数十名しかいないというふうに聞きました。完全に需給がマッチングしておりません。
大学側は今,自由にそういうコンピュータサイエンスをやる方を増やすことができるような制度改定になったという理解でよろしいですか。
【松永専門教育課長】 各分野の定員については各大学・各大学院の御判断でございます。それを増やすことができるようにするということではございません。それについてはこれまでと同様でございます。けれどもが,その中にありまして,例えば工学では,これまでの専攻を超えた教育課程の実施をしていく,あるいは,その課程を設けていくということで,その産業の動向,変化,産業分野の変化に応じた教育課程をより柔軟,また,機動的に作っていけるようにするという内容の改正でございます。
【永田分科会長・部会長】 教育内容については踏み込んでいなくて,工学領域ではなるべく幅広く自由に科目を組んでくださいということです。事例として出している情報工学のような科目はこれから大切な分野なので,様々なところと組んで充実させてくださいということです。
けれども,義務ではなくて,分野については,海洋工学等,様々な分野が出てくるかもしれないので,そこまでは踏み込んでおりません。
【村田副分科会長】 今の志賀委員の御質問ですけれども,私が解釈していたのは,むしろ,工学部全体,各学科に定員を設けていたものを,もう少し自由にやってもいいということです。今,AIの話が出ましたが,これからいろいろなものが進んでいく中で,柔軟に,一つの学部,工学部の中の全体において組み換えを自由にできるという形で,学生の定員も教員の定員も組み換えていくことができますと解釈はしていたのですけど,そうではないのですか。
【松永専門教育課長】 今おっしゃったことはそのとおりでございます。
【永田分科会長・部会長】 ただ,方針決定は各大学ということです。各大学がどうお考えになるかによりますので,義務ということではありません。
諮問ですので,最終的には,議決を取る必要があります。
中央教育審議会運営規則規定第3条第2項の規定は,大学設置基準等の改正に係る事項は,大学分科会の議決をもって,中央審議会の議決とする異なっています。したがいまして,諮問に対する答申の内容について,今御説明を申し上げました。特段の御意見がなければ,議決を取らせていただきたいのですが,よろしいでしょうか。
それでは,事務局にお願いをします。この案件は大学分科会の案件ですので,大学分科会の出席者について,定員と出席者の数の確認をお願いします。
【石橋高等教育政策室長】 大学分科会の委員及び臨時委員数は28名でございます。現在,21名の御出席ですので,中央教育審議会令第8条第1項に基づく過半数を満たしています。
【永田分科会長・部会長】 事務局から御報告があったとおりです。議決してよいと皆様に御了承を頂いたということですので,お諮りをしたいと思います。ただいま説明のあった工学系教育改革に係る大学設置基準等の改正について,御了解を頂くということでよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【永田分科会長・部会長】 ありがとうございます。
それでは,異議がないということなので,お認めいただいたということで,大変ありがとうございます。
(5)「第8回 人生100年時代構想会議」ついて,資料5-1,資料5-2に基づき,事務局から報告が行われた。
【永田分科会長・部会長】 それでは,その次です。情報共有ということで,「第8回人生100年時代構想会議」についての資料の御説明を頂きます。
【森友主任大学改革官】 失礼いたします。それでは,6月1日に開催をされました第8回の人生100年時代構想会議の概要について,簡潔に御報告をさせていただきます。
資料5-1でございます。当日は,人づくり革命の基本構想ということで,その骨子案が示されて,取りまとめに向けた議論が行われています。
骨子案ですが,資料5-1の3ページをお開きいただき,まず,下の方に,大学等の高等教育の無償化ということで,見出しのみ申し上げますと,支援対象者の要件ですとか,次のページに行きますと,支援措置の対象となる大学等の要件ということで,これは昨年末,閣議決定されましたパッケージを踏まえた形で骨子が掲げられています。
また,その下,4.として,大学改革,各大学の役割・機能の明確化,大学教育の質の向上,学生が身に付けた能力・付加価値の見える化,経営力の強化,大学の連携・統合等,また,その下の5.のリカレント教育ということで,産学連携によるリカレント教育などにつきまして,これまで,林文部科学大臣から,100年時代構想会議において報告している内容を踏まえた骨子が示されたところでございます。
有識者の委員からは,例えば人口減少時代には大学が個性を明確にすることが必要で,このことが若者たちの未来の選択肢を広げることにもつながるといった御意見ですとか,高齢者の高い就業意欲を生かして,人生100年時代のマルチなライフスタイルが可能となるよう,社会全体でいろいろな選択肢を用意するといった様々な御意見がございました。
また,当日は,資料5-1の通しページ15ページ以降ですけれども,林文部科学大臣から,高等教育段階における負担軽減方策に関する専門家会議における検討状況についても報告をいたしています。内容については,本部会におきましても随時御報告させていただいている内容でございますので,割愛をさせていただきます。
最後,5-2でございますけれども,安倍総理大臣から,資料のとおり,締めくくりの発言がございまして,関係部分の抜粋でございますけれども,大学改革については,個々の大学の役割・機能の明確化,外部の意見の反映による大学教育の質の向上,学生が大学で身に付ける能力の見える化等々,そういった課題について,明確な方向性を示す。また,リカレント教育について,教育訓練給付の拡充,技術者や在職者向けリカレント教育の教科の具体策を示すといった発言がございました。
人生100年時代構想会議におきましては,次回の会議におきまして基本構想が取りまとめられる予定でございます。
簡単でございますが,以上でございます。
【永田分科会長・部会長】 ありがとうございます。
これは情報共有ということにさせていただきます。
今日,たくさん議題がございましたけれども,
一番大切な将来構想の話については,次回になるべく集中して議論ができるようにさせていただこうと思っていますので,よろしくお願い申し上げます。
それでは,この部会の今後の予定等について,事務局から御説明を最後に頂きます。
【石橋高等教育政策室長】 失礼いたします。
大学分科会については,日程調整の上,改めて御連絡をさせていただきます。
次回の将来構想部会については,6月25日金曜日,15時から17時を予定しています。場所は追って御連絡させていただきます。
以上でございます。
【永田分科会長・部会長】 それでは,次回以降もどうぞよろしくお願い申し上げます。
本日は,どうもありがとうございました。
―― 了 ――
高等教育局高等教育企画課高等教育政策室