大学分科会(第138回)・将来構想部会(第9期~)(第7回)合同会議 議事録

1.日時

平成29年10月25日(水曜日)14時~16時30分

2.場所

文部科学省旧庁舎6階 第二講堂

3.議題

  1. 我が国の高等教育に関する将来構想について
  2. 大学設置基準等の改正について
  3. 第3期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過について
  4. 東京23区の大学定員抑制に係る暫定的な対応について

4.出席者

委員

(分科会長・部会長)永田恭介分科会長・部会長
(副分科会長)村田治副分科会長
(副部会長)日比谷潤子副部会長
(委員)有信睦弘,亀山郁夫,五神真の各委員
(臨時委員)麻生隆史,安部恵美子,伊東香織,金子元久,河田悌一,黒田壽二,小林雅之,佐藤東洋士,佐野慶子,鈴木典比古,鈴木雅子,千葉茂,古沢由紀子,前野一夫,松尾清一,吉岡知哉,小杉礼子,福田益和,益戸正樹,両角亜希子の各臨時委員

文部科学省

(事務局)小松文部科学審議官,伊藤文部科学審議官,藤野サイバーセキュリティ・政策評価審議官,山下文教施設企画部長,義本高等教育局長,村田私学部長,瀧本大臣官房審議官(高等教育局担当),松尾大臣官房審議官(高等教育局担当),下間大臣官房審議官(初等中等教育局担当),塩見文部科学戦略官,氷見谷生涯学習政策局政策課長,内田教育改革推進室長,蝦名高等教育企画課長,塩原主任大学改革官,三浦大学振興課長,小山国立大学法人支援課長,角田私学行政課長,井上私学部参事官,堀野高等教育政策室長 他

オブザーバー

(オブザーバー)石川正俊東京大学情報理工学系研究科長,迫田雷蔵株式会社日立総合経営研修所代表取締役社長,青山伸悦日本商工会議所理事・事務局長

5.議事録

(1)大学が育成する人材について,東京大学,株式会社日立総合経営研修所,日本商工会議所からそれぞれ資料1から3に基づき説明があり,その後意見交換が行われた。
【永田分科会長・部会長】  第138回の中教審大学分科会及び第7回の将来構想部会合同会議を始めさせていただきます。
 議事次第を御覧いただきますと,本日は四つの議題がございます。
 そのうちの第1点は,将来構想部会の進捗状況ということで,我が国の高等教育に関する将来構想の議論の進捗状況について,御報告と議論を行います。
 それから2番目から4番目は,大学分科会としての議題です。
 一点目の議題の我が国の高等教育に関する将来構想については,将来構想部会において議論が進んでいるわけですが,現在,将来の大学が育成する人材は一体どういうものか,という議論に一番注力しています。
 本日も3名,外部から先生方にお越しいただいておりまして,それぞれのお立場からヒアリングをさせていただきたいと考えております。
 二点目と三点目の議題は,8月23日の合同会議において議題となったものです。
 二点目は,第193回の通常国会で,専門職大学・専門職短期大学の制度化等に係る学校教育法の一部を改正する法案が通り,現在,ほぼ設置基準の制定準備が整ってきたというところです。さらに,既存の大学・短期大学の一部にも専門職学科を置けるように制度を改正する,という議題です。これ自体はもともとの答申の中に,最初は機関の設置であるけれども,後に学部・学科等の設置ができるようにするという方針が示されていて,その方針に基づいたものとなります。
 三点目は,教育振興基本計画の策定に関わる現在の状況を御紹介いただき,議論いたします。こちらについては北山部会長の下で粛々と進んでいますが,それについて御報告申し上げて,意見を頂きたいということです。
 それから4点目は,東京23区の大学定員抑制に係る暫定的な対応について,というタイトルになっております。将来構想部会では御報告をして意見を頂いているわけですが,パブリックコメントの実施も踏まえた上で,本日,事務局から御説明いただき,御意見を頂こうという段取りになっています。
 それでは,今お話しした内容に関する資料の確認を事務局からさせていただきます。
【堀野高等教育政策室長】  資料につきましては,議事次第にございますとおりです。
 不足の資料等ございましたら,事務局までお申し付けください。
【永田分科会長・部会長】  それでは,議事を始めさせていただきます。
 最初に,我が国の高等教育に関する将来構想について,関連する3名の先生方から論点を述べていただきます。
 先ほど申し上げました8月23日の合同会議の中で,大学が育成する将来の人材について,及び,地域における質の高い高等教育機会を確保するための方策について御議論を頂きました。
 本日,まず1点目の大学が育成する人材について,3名の方からヒアリングを行います。
 前回は吉岡委員と金子委員に大学の立場から,例えばリベラルアーツの重要性や大学教育と職業との関連性についてのお話を頂いて,議論をしたわけであります。
 本日最初の先生は,東京大学情報理工学系研究科の石川研究科長でございます。
 石川先生,よろしくお願いいたします。
【石川東京大学情報理工学系研究科長】  御紹介いただきました東京大学の石川でございます。
 ICT分野を中心としまして,工学系全体にわたって,今検討しているものも含めて,御説明したいと思います。
 表紙に大体の内容を箇条書にしましたが,少し厳しいことを言うかもしれませんが,お許しいただければと思います。
 科学技術の構造の変化という資料についてです。教育あるいは研究も含めて,そもそも論からいたしますと,科学技術自体が変わってきているということを御理解いただかないと,これから先の議論がなかなか御理解いただけないかと思います。
 20世紀の科学技術というのは左側の科学技術で,アナリシスを中心として実証主義的な帰納法でやってきました。深く掘り下げて分かることを科学技術の最終目的としていましたが,新しい技術は,掘り下げるところはなくて,何もないところに何かを創出することになります。これは作る技術であって分かる技術とは全く違う構造を持っています。分かる技術と作る技術が両方合わさって新しい21世紀の科学技術は成立しているという構造を御理解いただきたい。
 足らないのは何かと言えば,作る技術です。例えばグーグルであれ,あるいはフェイスブックであれ,何もないところで作ったものです。何も問題がなかったところに作ったわけで,社会の価値を生み出すには,どういった研究が必要で,どういった教育が必要で,人材はどのように育てていくべきかということを御理解いただきたい。
 その際に,独創性の重要性が出てきます。その次のページとその次のページは,ある大学のファカルティ・ディベロップメントで使った資料ですが,少し厳しいことを言っていますが,例えばリニアモデルにしがみついてばかりいてではもう駄目です。それから,行き過ぎた要素還元主義はもうやめましょうといったことを書いてあります。
 一点だけ申し上げますと,最初のページの右上に,論文や特許が出ただけで優れた研究成果としてはいないかということは,かなり多くの方に当てはまるような気がいたします。
 2ページ先に進んでいただき,新しい教育モデルの必要性についてです。教育の議論をするときに,100人先生がいると100通りの教育論が出てくるということになりますが,実際に教育としてどう作るかということを具体的なプランとして出さないと意味がないということです。
 こういう人が必要ですと企業の方からよく聞きますが,人材,予算,プランを出していただきたいと思います。また,企業の人事部の方は大学がそういう人を輩出した場合は必ず採用していただきたいと思います。
 新しい教育モデルが多分必要だと思います。ICT分野は特にそうですが,技術が短命化して多様化しています。従来のように1つの分野を極(きわ)めればそれで一生食べていけるという時代ではなくなりました。技術は必ず変わる。そして短命化して多様化する。必ず広がる。そういったものに対して教育はどうあるべきかという新しい教育モデルが必要であると思います。
 特に工学,情報理工系の分野は,下手をすると数年だけの技術ということになります。数年の技術のために教育があるわけではないので,その先の技術まで見通した教育をどうするかという議論になるかと思います。
 一番下の枠ですが,現場は苦労しています。変なことになるかもしれませんが,講義自体を変えるのは時間が掛かるので,先生方は自分の努力で,同じ講義名の中で新しいことをどんどん入れています。社会では,講義が変わっていないのではないかと言われますが,内容は全部変わっていまして,そういう努力をしているということです。
 反面,変えない先生もいます。この先生をどうしようかという問題もありますが,とにかく現場はいろいろ苦悩していて,変えていっています。
 それから,社会の要請が正確に把握できない。一番下ですが,線形代数は古いから必要ないけれども,ビッグデータ解析やデータサイエンスの講義は必要って,これを笑えない方はビッグデータとかデータサイエンスの議論はしてほしくないんです。線形代数を教えないでビッグデータやデータサイエンスをどうやって教えるのかという話です。
 それから,少しレベルが上がりますが,熱伝導の偏微分方程式は使わないから講義は不要だけれども,フィンテックの数理は講義では必要という,これも笑うところです。笑っていただけないようであれば,新しい技術についていっていないということでありまして,こんなことが起こってはいけないのです。そういうことであります。
 それから,会社の人事がこれを理解していないことが最大の問題でありまして,少しジョーク気味で申し上げますと,今,技術教育が一番必要なのは企業の人事ではないかと思います。企業の技術者はよく分かっていらっしゃるんですが,人事の方はよく分かっていらっしゃらない。
 ページをめくっていただきますと,AI,数理・データサイエンスと,今,いろいろな形で日本の工学あるいはICTを変えようとしているキーワードが載っています。現状として,AI,数理・データサイエンスの人材が足りないのは明白であります。それをどうしたらよいかということですが,これを足りないというだけの議論では非常に不十分な議論でありまして,何がどのように足らないかというのを考えなければならない。
 我々は,学生と日々接しておりますが,ICT関連の学生は,今現在,はやっているものの次ぐらいまでは視野に入れて動いていると思います。必要なのは,技術そのものではなくて,構想力であったり独創性であったり展開力を持つ人材ではないか。数年で技術は次の世代あるいは次の展開が来てしまいますので,そのときにどうにもならないという学生では生きていけないわけで,それをどのように育てるかが重要であると思います。
 AIの次に何が来るかを予測し,あるいは来たときにそれに確実に適応できる教育をしていく必要があると思います。
 現場はもう変わっています。皆さんが思っているよりもずっと変わっています。一番下のパラグラフで,私の研究室には,日本の企業よりもアメリカの大手企業であるCTOクラスの方がよく来られます。負けているはずの日本の大学になぜ来るかというと,次を狙うためです。日本の大学は次のネタがあるのです。それをアメリカの今を担う会社のCTOが見に来ます。日本の企業はほとんど来ません。日本の企業は何を考えているかよく分かりませんが,アメリカの企業はAIの次をどのように探すかということに,もう手を付けている。
 我々が学会で発表したり,ユーチューブに出したりしますと,とにかく反応が早いのはアメリカでして,日本の反応は1か月後,半年後,1年後ということで,そういう社会的環境の中で,学生をそういったスピード感を持って育てるにはどうしたらいいかということが,我々の悩みでもございます。
 日本の企業に優秀な学生が行っているかといいますと,実はそうでもなくて,トップ人材は大体外資系やベンチャー,コンサルティングなどを行っています。そういう意味で日本がこの先の日本の技術を支えられるかということは喫緊の課題と感じています。
 それを背景といたしまして,下にあるような,短期,中期,長期の戦略が必要ということで,短期的人材,今を担う人材。それから中期的人材,次を担う人材。それから長期的人材,どのような変化にも耐え抜ける人材。このような三つのタイプに分けて,これは文部科学省の専門教育課で検討しているものでございます。それぞれの三つの人材に対して,それぞれの学生像,教育モデルを当てはめています。
 それをもう一歩ブレークダウンしたのが,次のページでありまして,工学教育改革の具体的方策を,今,検討している最中でございます。現状の問題として,学科の縦割りを外したい,社会のニーズに適応させる教育構造をとりたいということ,それから4年,2年,3年,9年はありますが,6年制,つまり学部と修士,国立の場合はほとんどの学生が修士まで行くときに,それに対した制度改革を行いたいと思っています。そういったものをこのページで書いてあります。
 その次に,産学共同教育体制や情報科学技術を強化したい,それから,工学教育に対して国や産業界による支援を頂きたいという内容を書いてあります。
 その下の図にありますように,右側にサツマイモのようなものがありますが,これが新しい教育です。昔はサツマイモではありません。育てた後は,その分野は退職まで同じような隆盛を極(きわ)めるわけですが,このようなものはどんどんなくなってくるので,次に移るということは必然であります。その必然をどのように教育が支えていくかを考えていかなければならない。このサツマイモモデルは割と受けているのですが,このように変わっていく人材であることを認識して議論しなければならないと思います。
 その次のページは,大学の日米比較ですが,これは後で読んでいただければいいのですが,要するに日本の予算は非常に低いのです。税金で回すだけではなくて,社会資本をどのように教育に還元するかというファイナンスが必要であると考えています。
 東京大学はこれに対して,例えばAIセンター,数理・情報教育研究センターを作り上げてまいりました。これは迅速に社会に対応するわけでございますが,もう大学の独り相撲ではありません。上にありますように,コンソーシアムを作って産業界と密に連携しております。ここには銀行や生命保険会社も入って,これから先の情報系の人材をどのように広く社会で適用していくかということを一緒に考えています。
 実は今週月曜日に発足会を開催しましたが,非常に多くの方に熱心に議論していただいて,銀行の方にICT工学人材が欲しいと断言していただきましたので,我々も新しい分野に広がっていければと思います。
 最後のページは,こういったものの議論で少しだけきちんと議論しなければならないと思っています。全部説明する時間がありませんので,2番目の来てほしくない数年後の世界が何かと言いますと,今,AI,AIと皆さんおっしゃっていますけれども,実はAIについては大学などは前からやっています。ですから,また変わってしまうわけです。何年後かに変わったときに,数年後,米国で新しい分野が重要視されている,日本はまた遅れていると言われたくないのです。大学はしっかりと努力してそれをやっているので,社会にそれを受け止めていただかなければならない。それはやはり大学と社会で一緒にやりましょうということが最後に申し上げたいことでございます。
 以上です。
【永田分科会長・部会長】  どうもありがとうございます。
 AIについては,今,3回目の波が訪れていると思いますけれども,我が国として前の2回は活かせなかったという御主張なわけでありまして,この3回目をちょうどいいチャンスにしようということです。
 残念ながら石川先生は14時半に退席されます。お三方のお話を全部聞いてから御質問の時間に移りたいと思いましたが,時間の関係上,ここで石川先生に御質問していただく時間をとりたいと思います。
 それでは,有信委員,どうぞ。
【有信委員】  石川先生,どうもありがとうございました。
 基本的におっしゃっていることにはほとんど全部賛成ですが,工学教育改革の具体的方策のイメージの中で,学部・修士課程段階における融合教育の推進ということで,学部・修士を6年一貫にしようという話をされていますが,これをどのように考えるかということです。ここに書かれてあることからすると,まず学部で基本的なことをきちんと教えて,大学院で更にその発展的な形にフレキシブルにできるようにするという考え方もありますし,それから,6年一貫課程にするのであれば,ボローニャ・プロセスのように,最初の3年間を学部課程のような形で位置付けて教育を編成して,後半の3年間は大学院の博士課程につながるような形にするという考え方もあると思います。
 この辺はどういう方向で考えておられるか,教えていただければと思います。
【永田分科会長・部会長】  石川先生,お願いします。
【石川東京大学情報理工学系研究科長】  この考え方は,文部科学省が大学における工学系教育の在り方についての中間取りまとめの中で議論されているものでありますが,前提として,全部を6年制に移行するのではございません。各学位プログラムあるいは学科・専攻の現状に合わせて,4年,2年の大学はそのままで結構ですし,4年,5年の大学もあれば9年という大学もあります。国立大学が特にそうですが,かなり多くの学生が修士まで行くという現状の中で,修士まで一貫するようなプログラムを作ろうとしたときに,6年制が制度上許されていないということがあるので,制度上見直していこうとするものです。
 今の有信委員の御発言の中で,3年と3年もあれば,途中で卒業する場合も考えると,4年と2年など,いろいろなパターンがありますが,一つの分野を極(きわ)めることは重要ですが,一つの分野だけでは足りなくなっており,ほかの分野を学ぶときに,ほかの分野の学び方によっては6年制一貫の中で学んでいくというモデルを考えているということです。こうしなければならないということではありませんが,こういうオプションを使えるようにしたいということであります。
【永田分科会長・部会長】  松尾委員,どうぞ。
【松尾委員】  どうもありがとうございました。名古屋大学の松尾です。
 4枚目の裏のところに,先ほど今後の工学教育改革の一つの方向性として,学科・専攻定員制度の廃止と,従来のディシプリンから飛び出て,より柔軟なカリキュラムを作っていこうということですが,我々の大学もいろいろお願いはしていますが,やってみると非常に難しいと感じております。組織としての意識決定がなかなか難しいところがありまして,先生の方で何か具体的にやっておられることがあったら教えていただきたいと思います。
【石川東京大学情報理工学系研究科長】  東京大学も同じ状況にありますが,取りまとめの中では,全国の大学を見ましたところ,例えば九州大学,大阪大学,東北大学,北海道大学というのは,工学部を大学科制に移しています。これは制度上の制約の中で運用も含めてやられていることですが,そういった中では幅広い教育と基盤教育をきちんとしようという考え方が見られます。東大はそこまででもありませんが,その考え方がだんだん広がってくるだろうという流れはああります。
 松尾委員がおっしゃるように,学内をどうするかというと,卒業生の同窓会組織まで見直さなければならないという話をするとブレーキが掛かってしまうということもありますが,ここで狙っているのは,制度上の制約を理由にできないようにしようということで,これを制度改革に持っていくことによって,もっと広くオプションをとれますという幅広い教育のモデルを作れるようにしようという考え方であります。
【永田分科会長・部会長】  ありがとうございます。
 今,実は将来構想部会の下で,学位プログラムや設置基準についても議論しておりますので,制度改革も議論されているということを念のため付け加えさせていただきます。
 金子委員,どうぞ。
【金子委員】  ありがとうございました。
 これは必ずしもICTに限らないことになるかもしれませんが,工学で問題になるのは,特に基礎的な教育をどのようにするのかということと,先端的なものをどう入れるのか,それから実現性をどういうふうに組み込むか,この三つの要因をどのように組み込むかというのはどこでも問題になると思います。
 日本の大学の工学部のかなり大きな特徴は,それを研究室というような組織でもってまとめるというタイプの教育をするところが多く,それによって一定の実践性を身につける,あるいはモチベーションを与えます。それから,ある大学で基礎的な知識はゼミで教えるという話をお聞きして,どうもゼミと科目との関係が逆転しているのではないかと思います。
 科目でもって基礎的な知識を与えるということに対して,必ずしもポジティブではないようですが,そのような状況で,先ほど申し上げた三つの要因をどのような形で結び付けていくのが適当だとお考えでしょうか。
【石川東京大学情報理工学系研究科長】  まず,基礎と実践と専門ということに関して,二つの流れがあります。一つは講義体系としての基礎と実践と専門がありまして,これは割と分けられます。学生との認識のずれも余りありません。
 資料にもありますように,一般教養科目での一般的な基礎と,専門基礎の強化があります。専門基礎というのは,工学あるいはICT全体にわたる基礎教育,その外までは行きませんが,その基礎教育を強化しようということがもう一つあります。それとは別に,卒論レベルを中心に,PBLを中心とした実践教育を行うというものです。
 少し学生とずれがあるのは,金子委員がおっしゃるように,実験や実践教育の中のPBLのようなプロジェクトに対して何が基礎かという話は学生とのずれが少しあるので,これはこういったものの体系化の中でうまく整理していこうということであります。
 まだまだ問題は多いと思います。
【永田分科会長・部会長】  ありがとうございました。
 それでは,千葉委員,どうぞ。
【千葉委員】  ありがとうございます。
 先生のお話で,企業の採用,採用人事,あるいは既存企業というような形で,卒業生の進路が割と就職というか,会社に入ることを前提にお話をされていたように思いました。やはりこれからは自分で会社を興すというようなことも学生に期待するところでありますし,少なくとも創造性とリーダーシップ,この二つのことは身につけてもらいたいと思っていますが,先生の学部ではどのように教育を行っているのか,教えていただければと思います。
【石川東京大学情報理工学系研究科長】  東京大学の産学連携の基本原則,組織等,設計したのは私でございまして,東京大学は十数年前からベンチャーキャピタルを持っているような大学であります。大学を挙げてアントレプレナーシップ教育に邁進(まいしん)してまいりましたし,一つだけ自慢できるのは,東京大学はほかの大学よりもベンチャーの創出数が多いということで,これは環境整備が十分なされたからだと思っておりまして,手前みそで恐縮なんですが,環境整備をしっかりと行ったということと,テクノロジーファイナンス,ファイナンスをちゃんと押さえたということもございまして,それが学生にいい影響を及ぼして,自由にやっても社会的にきちんと評価されるという考えを持ったのだと思います。
 ベンチャーに行く学生もどんどん増えてきております。ただし,全体のパーセンテージからするとそれほど多くもないので,東京大学の考え方は,講義内,つまり規定内の部分と,規定外,つまり講義外,単位にならない部分と,両輪体制になっています。それが私はいい形になっていると思っています。基本的なところは講義内でやって,チャレンジのところは別立てで行って,しかもそこにはサポートが十分にあるという体制をとっております。
【永田分科会長・部会長】  吉岡委員,どうぞ。
【吉岡委員】  ありがとうございます。
 イノベーションの進展の仕方と人の育ち方のようなことで伺いたいのですが,イノベーションは,例えば研究内在的に行く場合と研究と研究の間で進む場合と,それから本当に外から起こってくる場合とあると思います。
 ここは大学分科会ですので仕方がないと思いますが,外からという場合に,例えば高校あるいは中等教育のレベルに対する刺激は非常に大きなことだろうと思います。産業界については我々よく考えるのですが,中等教育に対する刺激の与え方など,その辺のイメージをお持ちでしたら,お話しいただければと思います。
【石川東京大学情報理工学系研究科長】  やはり初等中等教育で,産業界あるいは分野を超す,言わばベンチャーを興すというような考え方は,今,余り教育されていません。人材もいないと思います。
 これは何回か申し上げていますが,近未来においては,初等中等教育で,例えばある法則を教えた場合,その法則を教えて終わりではなくて,この法則は何に使えると言うべきだということを大分言っています。
 ニュートンの運動方程式ということになると,ニュートンの運動方程式を教えただけで終わるのではなく,これが何に使えるかといったら,ロボットに使えます。ロボットの中で使うというところまで初等中等教育で教えればいいのではないかと思っています。
 更に言いますと,初等中等教育の中に技術教育がない,STEAM教育がない,それから応用展開の教育がないということは,大学に来てからでは少し遅い面もあって,大学の入り口ではせめて少しぐらいのイメージは持って,あるいは一歩,二歩踏み込んだ知識を持ってきていただけると,大学の工学教育あるいはICT教育が重要になってきます。特にICTは,応用イメージを持っていない限り,何を学べばいいかが分からないので,入り口ぐらいでは少しイメージを持ってもらっているといいと思います。
 グーグルをやりたいと言うのですが,ソフトを1回も書いたことないというような学生も多くいるわけでして,そういった学生をどうすればいいかという問題でもあります。
【永田分科会長・部会長】  ありがとうございます。
 先生にお示しいただいた短期,中期,長期の戦略という図がありますが,これを中央教育審議会の立場から読み換えると,修得の水準,あるいは才能の水準と,それを供与する規模の水準という講図になります。フィロソフィー中心で本日は結構ですが,どの水準の人をどれだけの規模で育てるべきかについては,冷静に考えなければならないことだと思って聞いておりました。あまり御異論はないと思いますが,そのようなことは,数字で答えを出すことが非常に難しいかもしれません。
 制度・教育改革ワーキンググループでも役に立つ内容があったと思います。
 本日は,石川先生,どうもありがとうございました。
【石川東京大学情報理工学系研究科長】  どうもありがとうございます。
【永田分科会長・部会長】  それでは続きまして,次のお二方のお話でございます。こちらは,お二方の講演を聞いてから質疑応答とさせていただきます。
 それぞれ10分ですが,お二人目は,日立総合経営研修所の迫田代表取締役社長です。日立は大学院生を比較的多く採用していることもあり,どういった人事戦略なのかということが聞けると,大変参考になるかと思っております。
 お三人目は,日本商工会議所の青山理事・事務局長です。青山理事・事務局長からは,現場に近い企業の方から,求める人材と高等教育の将来構想全体についての御意見を頂くことになっております。
 それでは,迫田様,よろしくお願い申し上げます。
【迫田日立総合経営研修所取締役社長】  日立で人材開発を担当しております迫田と申します。
 本日は,私どもでどのような話ができるかと思いましたが,別に産業界を代表しているわけではありませんが,いわゆるGDPと大体同じ動きをしている企業の一つだと思っていますので,何らかの参考になればと思って,参りました。
 最初に,人材に期待するものということを話す前に,私どもの事業の状況を少し御理解いただいた方が,なぜこのようなことを言おうとしているのかということを御理解いただけるかと思いますので,事業を少し話させていただきます。
 ページをめくっていただいて,2ページを御覧ください。日立というと家電のイメージを持たれる方も多いですが,家電は全体の6%で,私どもの事業の中心は情報・通信システムあるいは社会・産業システムという,いわゆる社会のインフラを担うところを担当してございます。
 次のページでございますが,どのような会社を目指しているかということです。今の中期計画の中では,IoT時代のイノベーションパートナーを目指すということで,正にSociety5.0を支える企業になりたいということが我々の基本的な構想であります。その中で特に重点を置いているのが,社会イノベーション事業をどのように進めるか,しかもそれをグローバルに進めていくということが事業の大きな方向でございます。
 注力事業ですが,電力・エネルギー,産業・流通・水,アーバン,金融・公共・ヘルスケアという分野でございます。
 次のページに,私どもの今のグローバル展開の状況を示してございます。4ページでございます。日本がまだ売上げの約半分を占めておりますけれども,それ以外は海外になってきておりまして,昨年度の実績で海外売上高が48%,今年は50%を超える見込みであります。更に来年は55%ということで中期計画を組んでおります。
 そのような中で,会社数も,今,完全に海外の方が増えていますし,従業員も国内はどんどん減って海外が増えてくるということで,売上げだけではなくて,従業員数も逆転は目に見えているという状況でございます。
 次のページに,私どもの社会イノベーション事業の具体例を示してございますが,これはマスコミにも取り上げられております英国の鉄道事業でございます。私ども,これまで車両を作っておりましたし,長年やってきたわけですが,物を売るのではない事業だということであります。そのページに示してございますように,車両を運転できる状態で提供するのが事業の内容でありまして,それを27年半にわたって保証するというのが基本的な事業であります。
 これを受けることによって,IoTを使いながら保守サービスを効率化して利益を上げていくことが基本的なモデルであります。
 そういう意味では,物を輸出して終わりという事業ではなくて,その地に根差して,その地の人と一緒に事業を作り上げていくというモデルに変わってきているということでございます。
 次のページに研究開発体制を示してございますが,従来,少なくとも研究については日本でという形になっていましたが,ここもどんどん姿が変わってきております。例えば,正に今,石川先生がお話しされた情報系で言うと,今の重心は北米に移ってきておりまして,シリコンバレーを中心に,ビッグデータ,AI,そういう部分の研究が進んでおります。例えば中国で言えば,ものづくりは中国のウエートが非常に高くなっておりますので,材料を中心とした研究は中国が中心となってきております。このように,研究もグローバルに変わってきているということでございます。
 また,次のページに,産学連携,これは海外のものを紹介させていただいておりますが,もちろん国内でも各大学といろいろな連携をさせていただいております。昨年6月には東京大学,京都大学,北海道大学にラボを設置して,様々な課題,例えば国のビジョン形成など,そういったテーマで一緒に研究していくという体制を作っておりますが,同じように海外においても,それぞれの事業と一緒になる形で産学連携が進んでございます。
 そのような中で,人材のマネジメントも変わらざるを得ません。8ページでございます。「人財マネジメントの転換」と書いてございますが,これまでの日本人による日本人中心のマネジメントは変換せざるを得ないということで,長期雇用を前提としたメンバーシップ型の人材管理から,ジョブ型(仕事基軸)のマネジメントに変わっていかざるを得ないと考えております。
 8ページに示しているとおり,まず仕組みを変えるということで,これまで日本中心の人事制度から,グローバル共通の人事制度に変わってきております。
 また,組織編成の在り方や人材配置のポリシーもグローバル共通のものに変わってきております。
 また,構成員もどんどん変わってきております。先ほど外国人従業員が増えているという話をしましたが,例えば取締役会を見ましても,13名中9名は社外取締役で,9名のうち5名は外国人という構成になってございます。そういうことでダイバーシティも進めております。
 さらに,働き方自体も変わっていくということで,このような転換がどんどん進んできているということでございます。
 次に,具体例として,9ページに示してございますように,人材データベースも,日本人だけのデータベースではなく,従業員25万人のデータベースを作っております。
 そして,リーダー育成もグローバル共通で行う。グレードもグローバル共通のものを決める。全世界で5万ポジションを格付して,それに基づいた処遇の制度になってくるということであります。
 あるいは,パフォーマンス・マネジメント,いわゆる従業員の評価につながるものでありますが,これも世界共通の制度を作って,どこにおいても同じように評価が行われるという形になってきています。
 また,ラーニングマネジメントも,世界共通のシステムを使って,例えば30万人一斉にeラーニングに取り組める環境を作っております。
 次に,人材部門としてやるべきことはそれほど変わりはありませんが,これがグローバル共通でやっていくというように大きく変わってきたと思っています。グローバルな適材適所,それからパフォーマンスの最大化,モチベーション・エンゲージメントの強化,これが世界共通で必要になると思いますが,日本人中心の形ではなくなってきたということです。
 次のページは採用の状況ですが,これは日本の採用の状況を示しております。日立製作所単体ですけれども,年間約800名採用していますが,引き続き新卒を中心としております。もちろん国によって違うので,私どもは新卒中心の採用がよくないとは思っておりません。若年層の失業率の減少に非常に有効な方法だと思いますし,基本的なところは堅持したいと思っております。
 ただし,一方で経験者を排除するものではございませんので,こちらの割合もだんだん増えてきているという状況であります。
 学歴別に見ますと,高学歴化が進んできております。ドクターも毎年30名以上採用してございますが,7割以上が修士以上ということになってございます。
 一方で,外国人の採用も増えておりまして,これは国内で採用している人間だけでありますが,外国人が今6%を占めております。このように,国内においてはどんどん高学歴化が進み,かつダイバーシティが進んでいるということです。
 次のページに,経営研修の教育体系図を示してございます。先ほど申し上げたように,人材育成についてももちろんグローバルに共通に実施していくということが基本的な考え方でありまして,もちろん事業に必要な個々の技術はそれぞれの事業でトレーニングしていきますが,経営研修について言うと,極力グローバルに共通のものを実施していこうということで,日本以外においても同じプログラムを提供するということを基本としております。
 また,このような時代に対応できるように,とにかく日本人のグローバル化をどう進めるかということが大きな課題となっておりまして,13ページに示してございますように,とにかく若手のうちから早く海外を経験させることに取り組んでございます。5年間で約4,400名を海外に送り,いろいろな体験をさせる,あるいは実践型でタフな経験をさせるということを,大体1か月から3か月の期間,海外に送り込んで体験させるということを行っております。
 また,これまでの日本の人事のやり方ではとても海外のスピードに勝てないので,勝てる人材を作るということで,MBAにも人材を送っております。14ページのMBAプログラムについてですが,将来の経営幹部候補を選抜して,重点的にトップ20の大学に送り込むということに取り組んでおります。日本の大学は1つも入ってきていないので,残念であります。
 大学に対するということで,大変生意気なようですが,やはり世界最高水準の研究教育機関として認められて,世界中から優秀な研究者あるいは学生が集まってくるという状況を作っていただくことが,本当に産業界としては一番必要なことだと考えております。
 また,イノベーションのパートナーとして,一緒に世界のイノベーションをリードしていくということも大きな課題だと思っております。
 また,高齢化を含めた様々な課題を先進国である日本が乗り切っていくために,一緒になって推進していただきたい。
 さらには,学び続ける力,自ら考える力,コミュニケーション力,それからグローバルマインドを持った人材を育成して,輩出していただきたい。
 これは当たり前のようですが,やはり即戦力というのも魅力的な言葉ではありますが,むしろ先ほど石川先生が説明されたとおり,いろいろなものは変わっていくので,常に学び直し,学び続けるという姿勢の方が私は大切なのではないかと思っております。
 また,人生100年時代を迎えておりますので,常に学び直すことが一緒になってできるような大学であってほしいということが,私どもの希望でございます。
 以上でございます。
【永田分科会長・部会長】  迫田社長,本当にどうもありがとうございました。後で質疑応答の時間を設けます。
 続きまして,日本商工会議所の青山事務局長様から御発表いただきます。
 青山様,よろしくお願いいたします。
【青山日本商工会議所理事・事務局長】  御紹介いただきました日本商工会議所の青山でございます。本日はこのようなプレゼンテーションの機会を頂きまして,本当にありがとうございます。
 まず,商工会議所について簡潔に御説明させていただきたいと思います。商工会議所は,商工会議所法という法律に基づいて設立されておりまして,現在,全国に515存立しております。総会員数は,大企業,中堅・中小企業を含め125万事業所でございます。
 では,早速でございますが,お手元の資料3を御覧いただきたいと思います。私どもが高等教育についてさまざまな会議等で発言させていただいた内容も含めまして,簡単にまとめさせていただいた資料でございます。
 最初に,私どもの会員の大層を占める中小企業の現状について一部御紹介したいと思います。
 中段のグラフ,まず(1)を御覧いただきたいと思います。現在,中小企業が直面している最大の経営課題は,人手不足でございます。これは地方に行けば行くほど深刻さを増しているのが実態であります。
 グラフ(1)にございますように,新卒採用,中途採用のいずれにおきましても,約半数の企業が採用予定人員を満たせていないという状況にございます。人手不足の対応策としましては,省力化投資やITなどを活用した生産性の向上が喫緊の課題になっておりますが,グラフ(2)にございますように,こうした中での人材ニーズを見てみますと,中小企業では即戦力となる中堅層や経験者層に対するニーズが依然として非常に高い状況です。これは以前から高いわけですが,最近,特に高まっているということでございます。
 中小企業では,大企業に比べて労働分配率が高くなっています。規模が小さくなれば小さくなるほど労働分配率は高くなっており,人材をゼロから育成する余裕がないのが大方の中小企業の実態であります。
 もう一つの傾向としまして,グラフ(3)にございますように,中小企業の海外展開が年々拡大しているということがございます。これまでは大手メーカーに追随して,あるいは低コスト化を求めて中小メーカーが海外に出ていくという傾向が強かったわけでございますが,現在では,中小企業自らの判断で海外にマーケットを求め,単独で出ていく時代になっております。これは日本の企業数,事業数が減少し,マーケットが縮小しているということにほかなりません。特に製造業のみならず,サービス業においても海外展開が拡大しているという点が傾向の一つであると思います。
 こうした状況を見まして,実社会に最も近い高等教育に対して,商工会議所としての基本的な考え方を申し上げたいと思います。資料の上段,基本的考え方を御覧ください。御案内のとおり,第4次産業革命など,急速な技術革新の波がありますが,その一方でグローバル経済が急速に進化しており,国際競争がますます激化しています。わが国は,この国際競争に打ち勝つ企業を育て,将来にわたって産業力を維持していかなければならないということであります。
 以上を踏まえ,高等教育では変化の著しい実社会への円滑なつなぎとグローバル化を視野に入れた教育を是非とも実施していただきたいと期待しているところであります。
 経済成長が継続的に安定的に成長する時代は,ある程度,企業の内部において人材を育成する,研修することが可能でありました。しかし,今日はそれが不可能になってきております。それだけ余力がないというのも当然ですが,競争が激しくなっている,それから世界経済の動向,日本経済の変化が激しいということであります。
 一方で,新卒一括採用や終身雇用といった従来の日本型雇用制度は非常に変化しつつありまして,従来のような一律的な企業内研修や人材育成に対する熱意が企業から徐々に薄れていっております。企業内研修を行わないというわけではありませんが,従来型の研修は非常に減少しているということが言えるかと思います。
 そのようなことから,企業からは,実社会にすぐ適応する,接続性の高い,即戦力に通じる社会人基礎力のある学生,変化への即応性や多様性に富んだ学生を求める声がますます大きくなっているというのが実情かと思います。
 また,企業側からよく指摘がある点ですが,一つは,学生の基礎学力が低下しているのではないかという点です。社会人基礎力と私どもは見ておりますが,主体性や行動力,表現力,伝える力のコミュニケーション能力,論理的思考能力あるいは職業意識といったものが低下しているのではないかと懸念する声がいまだに多く聞かれております。
 こうした能力は,恐らく初等中等教育から一貫して育んでいくべきものだと思いますが,最も実社会に近い高等教育機関におきましても,この点は重要なポイントであるということを是非とも視点として入れていただければ,大変ありがたいと思っております。
 また,変化への即応性や多様性のある人材という点ですが,具体的には,国際競争力強化に向けて,内外の著しい経済社会環境の変化に即応できるグローバル人材,人口減少下にあって,疲弊し続けている地方の再生を担うような地域中核人材,それから第4次産業革命の波に後れをとらず,Society5.0の実現に向けて,生産性向上やイノベーションに寄与できる人材,パイオニア精神や起業家精神に富んだ人材の育成が強く望まれております。そうした素養を醸成する観点からの教育力の強化,それから大学の機能強化が必要だと考えております。
 また,経済社会とのつながりという点でいえば,産学連携などを通じまして,以前からやっていただいておりますが,これまで以上に社会に開かれた大学,実社会との積極的融合を図っていくための体制,整備が必要だと考えております。
 こうした考え方に基づきまして,将来構想部会において御議論がなされた特に3点について,それぞれ意見を述べさせていただきたいと思います。下の段,具体的な意見を御覧いただきたいと思います。
 まず,論点1,「高等教育機関の機能強化に向け早急に取り組むべき方策」という論点でございます。一つは,先ほど基本的な考え方でも申し上げましたが,企業側からは,社会人基礎力の不足を指摘する声がいまだに大きいという点でございます。この点は企業サイドは非常に重要視しておりまして,何とかこの点を向上させていただきたい。昨今はアクティブラーニングの重要性が指摘されておりますが,もう一つ,従来型の学部教育や縦割りの限られた範囲での知識偏重の学び方から,多面的な見方を養い,柔軟な発想力や思考力の基礎を醸成していただけるような教育の在り方が必要なのではないかと思っています。
 一般教養も重要ですが,この一般教養の中でも,欧米型のリベラルアーツ教育に近付けていくことが,社会人基礎力を育む上で非常に重要なのではないかと考えています。
 二つ目は,卒業要件の厳格化,ならびに学修成果,ラーニング・アウトカムを明確化し,これに重点を置いた評価方法に軸足を置いていくことが必要ではないかということでございます。
 それから三つ目でございますが,社会人学生の受入れやリカレント教育の拡充でございます。経済社会の変化がますます激しくなっておりますので,学びの継続や複線化を実現するような教育提供体制への期待はますます高まっていると思っております。少子高齢化が進んでおりますが,生涯学習の観点からも,社会人に対して,より柔軟な形で広げていただきたいと言っております。
 よく教員の不足というような問題が指摘されますが,これはこれからできるであろう専門職大学と同様,専門的な知見を有する実務家教員,企業のOBや現役の方等を活用していただくというような拡充の方法も御検討いただければと思っております。
 論点2でございます。これは,「変化への対応や価値の創造等を実現するための学修の質の向上に向けた制度等の在り方」についてであります。これについては,広い視野を持った人材を育成するためにも,我が国独特の文系・理系の伝統的区分の縦割り的な学部教育の在り方をもうそろそろ見直す必要があるのではないか,また,横断的な教育課程を編成する必要があるのではないか,それから,国際的にも通用性の高い機動的な学修体系へと再構築を進めていただく必要があるのではないかと思っております。こうした改革によって,世界中の優秀な外国人留学生を更に呼び込んでいくことも必要かと思っています。
 教員につきましても,海外の優秀な人材を幅広く招聘(しょうへい)する必要があると考えています。
 また,学生の職業意識やキャリア意識という点も非常に重要であると思っております。これまで以上にキャリア教育に厚みを持たせるべきだと思っておりますし,アメリカ等でやられているように,専門家を通じて指導力を強化していくことも一つの参考になるかと思います。
 また,キャリアデザイン論を必修化してはいかがかと思っております。
 さらに,学生が就職活動期に入る前に,幅広く実社会を見聞する,見識を広げるという意味からも,秋入学,それからギャップタームの導入についても改めて検討すべきだと考えています。この点については,商工会議所が実施した調査でも,過半数の企業がギャップタームに意義があると回答しておりますことを申し添えたいと思います。
 続いて,産学連携の強化を通じた大学のシステム改革でございます。時間の関係で簡潔に述べさせていただきますが,理工系を中心としまして,これまで以上に産業界とのつながり,連携を強化する必要があると思っております。既に多くの大学では連携に努めておられると思っておりますが,特に我が国の技術開発,研究開発は,その中でも大企業中心でありましたが,最近では中堅・中小企業にも拡大しております。これを更に拡大していただければと思っております。
 それから最後に論点3の「今後の高等教育全体の規模も視野に入れた,地域における質の高い高等教育機会の確保の在り方」についてでございます。ここ数年,政府に取り組んでいただいております大学の機能強化を更に推し進め,各大学の多様性と強みを更に強化していただくとともに,都市と地方との大学が連携してカリキュラムの単位の互換,二地域間で学べる国内留学,いわゆるダブルキャンパスの仕組みを創設することも,地方創生策の一環として御検討いただければと思っています。
 特に共同研究や事業化については,地域においてもニーズが非常に高い分野でございます。それから,人材交流をすることによって,この連携が進むと思っています。また,地域から大都市に学生が流れてくる,若い人間が流れているという問題がございますが,地域における人材確保という点からも,共同研究,人材の交流というのは非常に効果があるのではないかと思っております。インターンシップ制度の在り方をより効果ならしめていけば,この効果が更に拡大していくだろうと期待しております。
 長くなりましたが,私の説明は以上でございます。ありがとうございました。
【永田分科会長・部会長】  ありがとうございました。
 それでは,今,お二方に対しての御質問等,お受けいたします。
 小杉委員,どうぞ。
【小杉委員】  お二人とも大変よく分かりました。ありがとうございます。
 日立が人材育成に大変力を入れていることがよく分かりましたが,迫田様に二つ質問させてください。まず,グローバルな展開の中で,ジョブ型の人材政策をとられようとしている一方で,相変わらず新卒採用をされている。一括採用とジョブ型の人材配置の折り合いはどう付けているのか,あるいはどう付けられるつもりなのか。
 2点目は,残念ながら日本のMBAは入っていないというお話ですが,日本のMBAが今のところ御社ではなかなか評価しにくいのはどういう点が問題なのか。率直に教えていただければ,いろいろ改善の余地があるのではないかと思います。
 社会人の学び直しが全体に必要だとおっしゃっていますが,御社の人材開発の中に大学教育を使ってできること,あるいは大学教育が貢献できるところはないのか,MBAについてもお聞きしたいと思います。
 以上です。
【永田分科会長・部会長】  迫田様,お願いいたします。
【迫田日立総合経営研修所取締役社長】  新卒とジョブ型がマッチしないとは全く考えておりません。たまたま新卒の割合が多いというだけで,経験者を採らないと言っているわけではございませんし,今,私どもでは,会社を辞めて,また入ってくるとか,そういうことも普通に行われてきておりますので,それは全く矛盾しないと思っています。
 むしろ今の社会環境を考えると,新卒だけを採るわけではありませんが,多くの方が大学を卒業して,当然就職することを想定して勉強されているので,企業としても前向きに採っていくという姿勢は変えないというだけの意味であります。そこは余り関係ないと思っています。
 MBAについては,学ぶこと自体にも価値があると思いますが,それだけではなく,ネットワーキングや企業の中ではできない様々な経験が一番大事であると思っています。
 もちろんアメリカの大学でいうと,アメリカ人がまだまだ多いという部分もあるとは思いますが,例えばINSEADであるとかIESEであるとか,大変多様性に富んだ学生を集めることを基本的な方針としていますので,そういうところで揉まれてきた方々,この辺の活躍の余地は非常に大きいと感じております。
 また,先日,今,MBAに行っている人たちと話をしましたが,例えば東南アジア,シンガポールの方で勉強している方々に話を聞くと,各国の優秀な人材が集まってきて,また,各国で活躍されることが想定されるような方々が集まってきていて,それは非常に大きな財産になるということを話されていました。
 国内で同様にできれば,企業としてはそちらに行かせれば,ネットワークができるだけではなく,お金も掛からないし,大変助かりますが,残念ながら現状はそうなっていないところが非常に大きな課題だと思っています。
【永田分科会長・部会長】  小林委員,どうぞ。
【小林委員】  どうもありがとうございました。
 お二人にお聞きしたいのですが,社会人の学び直しについてです。商工会議所の方からは提供がありましたが,日立の方からは提供がなかったように思います。重要な問題だと思っていますので,お二人に御意見を伺いたいのですが,社会人の学び直しが非常に教育効果があるということは,私も放送大学や大学院で教えても実感していますし,各種の調査からでも明らかです。
 大学側が受入れに努力しなければならないということもそのとおりだと思いますが,企業,あるいは官公庁もそうだと思いますが,なかなか学んだ方がキャリアアップしない,あるいは処遇が改善されないという問題があるように思います。
 特に大学院でせっかく修士号を取ってもほとんど評価されないという問題があるようで,現在,社会人の人たちというのは,時間もコストも掛けて一生懸命勉強していても,報われないとインセンティブが働かないわけことになるので,そのあたりをどのようにお考えか,あるいはそういうことは改善されているということなのか,御意見を伺えればと思います。
【永田分科会長・部会長】  それでは,それぞれお答えをお願いします。
【迫田日立総合経営研修所取締役社長】  よくそういう御意見を伺いますが,先ほど申し上げたように,ジョブ型に変えるということは全く関係がないというか,修士を持っているかではなく,価値がある仕事に就けば,それだけの収入になるという仕組みです。
 つまり,次第に上がっていくのではなく,このポストの仕事をすることに対してお金を払うというシステムなので,実力次第ということです。
 そこは多分誤解があるような気がします。修士について,特別扱いをするのはちょっと違うのではないかと感じておりまして,どのような仕事ができるということではないかと思います。周りから見ても納得できると思う人であれば,そういうポジションに就いて処遇がはね上がることになると思いますので,私どもの制度で言えば,誤解があるのではないかと思います。
 もう一つ,学び直しというところで言うと,大企業で言えば,多くのところはある程度自分のところでできるのではないかという印象を持っております。そうすべきですし,企業の中で更にその能力を活用していくという意味で言うと,自前でやれるところの部分が大きく,いろいろな切り分けが必要ではないかと思っています。その辺はいろいろ相談しながらやっていけばいいのではないかと感じております。
 以上です。
【永田分科会長・部会長】  青山様,どうぞ。
【青山日本商工会議所理事・事務局長】  ありがとうございます。ここ数年,中堅・中小企業では,社会人の学び直しに対する要望が大変強まってきております。
 人手不足の中で,有為な人材を採用することは難しい状況です。そうすると,おのずから,現有勢力の中で生産性を高めるための研修等を行っていく必要があります。特に技術系や専門的な分野になりますと,国や自治体,私ども商工会議所等の経済団体で実施しているセミナー等ではなく,大学に行って学ぶことが必要です。
 ただ,非常に問題がありまして,中小企業の場合は,大企業と違って,長い期間を送り出して学修させるというのが困難な会社が多い状況です。従業員の希望があり,経営者としては出したいのだけれども,その代わりの人材がいないためになかなか出せないということです。そのような状況ですので,例えば1講座のみでも受講できる,また,3か月程度で履修が可能という講座をつくっていただくなど,企業のニーズに合った体制整備をしていただけると非常にありがたいと思います。
【永田分科会長・部会長】  今,四名の委員の札が上がっておりますので,時間の関係上,ご発言はこの四名までとさせていただきます。
 ただ,先ほどお聞きしていて,小林委員の質問の中で,大学側も企業側も反省しなければならないと思うのは,社会人が修士を取ったときに,その価値が正当に評価されていないということです。つまり,高卒と大卒は明らかに採る側(がわ)では能力の違いを明確に区別していると思います。それが,2年余分に非常に立派な勉強をしてきた修士の価値は,ジョブ型の場合には結局その人の個性だ,と言われてしまう。これは,大学側がそれに値するだけのいい教育を与えていないというのと,まだ日本の企業が修士の学修内容を理解していない部分,という両方があると思います。聞いていて,そのように思いました。
 そのアンチテーゼとして,今,大卒と高卒は明らかに,一般社会常識的にも,皆さん既に能力の違いについて認識を持っている。ところが,修士課程にはそれがないというのであれば,大学側にとっては大問題で,しっかり考えなければならないということかと思います。
 それでは,有信委員,麻生委員の順番で,その後,お二方にお願いします。
【有信委員】  迫田社長に質問ですが,日立製作所がグローバル化に向かって大きく変わっている姿が非常に明確に示されていて,これは非常に勇気付けられます。その中で,先ほども質問が出ていますが,ジョブ型雇用に変えるというときに,今の永田分科会長・部会長の話にも関わりますが,言わばジョブ型というときに,ジョブに関する専門的な知識が,どのくらい,それぞれのところで評価をしながら格付をされるのでしょうか。
 例えば,もう一つの質問にも関わるわけですが,欧米で採用した人たちを含めて,グローバルに人事処遇を考えようとすると,例えば欧米では,先ほどから出ていますように,学位に対してそれなりの評価をして処遇を変えるということをやっていますし,専門的な資格,知識に対してもそれなりのジョブに就けるときに評価しています。
 これを,例えば日立製作所はここまでグローバル化を進めてくる中で,人事処遇制度を言わばグローバルに一貫したものにしていかざるを得なくなると思うのですが,今後,どのようにやっていくお考えなのでしょうか。
 先ほどの,例えば日本の大学教育の中で,大学院教育の修士,博士というのが,言わば欧米で言われているように質的な変化をもたらしていないことを前提に日本側の採用をやっているのであれば,必ず欧米型の採用とどこかでコンフリクトを起こしてくるわけです。
 その辺をどのように考えておられるか,教えていただければと思います。
【迫田日立総合経営研修所取締役社長】  特に海外の場合には,ドクターを持って入ってこられる方はたくさんおられて,ちょうど最近も経験者で入られた方を幹部として迎え入れました。ドクターを持っておられますが,同時にやはりMBAも持っておられてという形で,事業を実際に行って成果を上げてこられた方々が,今,海外で非常に活躍されるのではないかと思います。
 そういう意味では,ジョブ型ということで,明らかに雰囲気が違うわけですが, 7割以上が修士以上なので,そういう中で自分がどうやって価値を発揮していくかということです。修士やドクターであればずっと大丈夫ということではなくて,そこから自分の能力をどう高めて,どれだけの成果を上げていけるのかということで評価されていくということです。それは別にごく普通のことではないかと感じております。
 制度的に申し上げますと,既にグローバルに共通のグレードシステムになっていまして,グレード自体は世界共通です。ということで,それぞれの方々を,専門能力,それから職務遂行能力,様々なこれまでの経験等々を評価して,そのジョブに就いていただきます。ジョブに就いていただいた方々のグレードが決まっているという,そのような制度でございます。
 ただし,今,違うのはそこからでありまして,マーケットによって職の水準が違うということ,ここが今,乗り切れない課題として我々として持っています。例えば同じグレードであっても,同じグレードを採るのに日本で採るよりはアメリカで採る方がはるかに高いお金が必要です。これはマーケットの事情なのでしようがないと今は割り切っておりますが,一方で,上のクラスになってくると,そういうことが通用するのかという議論がありまして,特に本当のトップの経営者層について言うと,無理が出てきています。例えば社長,会長よりも現地法人のトップの方が高いということが普通に起こってくるので,そうでないと採用できませんのでそうせざるを得ないのですが,アメリカはそういう矛盾はありません。アメリカが一番高いので,そこに合わせれば簡単に解決できるのですが,ほかの国,欧州も日本と同じ悩みを抱えていますし,アジアのグローバル企業も同じ悩みを抱えていますが,マーケットによって合わせるしかないという,そこは矛盾が生じております。
【永田分科会長・部会長】  麻生委員,どうぞ。
【麻生委員】  ありがとうございます。
 日立製作所の迫田様にお伺いしたいのですが,採用数のところで,19%の経験者の方を採用されております。日本を代表する企業としまして,この19%は他の企業を離職されてこられる方がほとんどであるのかということと,逆に日立製作所から他の企業へ流出なのでしょうか。採用の流動性という観点から,そちらの内容を知りたいので,教えていただければと思います。
【迫田日立総合経営研修所取締役社長】  幸いにして離職率は余り高くありません。よく3年3割と言われますが,そういったことはございませんで,2,3%程度が一般的かと思います。
 ただし,徐々に上がってきているように感じておりまして,いろいろな挑戦をしたいということで辞めていかれる方も目立つようになってきたという感じはしております。
 また,入ってこられる方は,いろいろな経験を積んだ方で,それこそ私ども,海外の大学を卒業された方もいるので,10月にも入社式をやっております。その中で見ますと,経験者の方々もそちらに入ってくるので,その辺を見ていますと,40代で入ってこられる方もいれば,第2新卒に近い方も若干名はいるということですが,主にほかの企業で働いていて,やはり違う仕事をしたいということで志望されてきた方がほとんどです。
【永田分科会長・部会長】  ありがとうございます。
 それでは,古沢委員,金子委員,簡潔にお願いいたします。
【古沢委員】  ありがとうございます。
 私は青山様にお伺いしたいのですが,この提言,非常に興味深く拝見しました。
 一つは,論点2の秋入学やギャップタームの導入を促進すべきというところで,私も正に同感です。秋入学については,5年ほど前かと思いますが,実現を目指す具体的な動きがありましたが,主に就職面で社会の対応が難しいということで見送られた経緯があるかと思いますが,今,迫田様のお話を伺っていても,かなり状況が変わってきたのではないかと思います。先ほど過半数の企業がギャップタームの意義があるとおっしゃっているということですが,秋入学についてもどのような意見があるのか,あるいは対応が可能になってきているのかということが1点と,もう1点は,論点1のラーニング・アウトカムのところで,これは大学側に成績評価の面でそういったことを反映してほしいというお話かと思うのですが,一部の海外の国で,近年だと思うのですが,卒業生のスキルを共通テストで測るという動きがあって,日本でもそういった論点があるかと思います。今はもちろん日本にはありませんが,そういった仕組みについてはどのように考えられるかということの2点,お伺いできればと思います。
【永田分科会長・部会長】  青山事務局長,お願いいたします。
【青山日本商工会議所理事・事務局長】  ありがとうございます。
 まず1点目,ギャップタームでございますが,商工会議所が実施した調査の対象は,ほとんどが中堅・中小企業です。中小企業の採用というのは大企業と違いまして,定期採用は3割程度です。残りは,必要なときに必要なだけ採用する,いわゆる通年採用をしております。今の時代は人手不足ということもあり,ほとんど通年採用状態になっていると言った方がよろしいかと思います。
 このような状況のため,ギャップタームを利用して,社会勉強や資格等に時間を充てていただくということについて,非常に意義があると回答していると思います。
 それから2つ目のラーニング・アウトカムでございますが,私どももその効果をどのように測るかということについてはアイディアがございませんが,会社に入ってみないと分からないという点が一番問題でございますので,学修成果を測る尺度があれば,企業にはとって非常にありがたいなと思います。
 以上でございます。
【永田分科会長・部会長】  金子委員,どうぞ。
【金子委員】  両方の方にお伺いしたいのですが,今,社会人の教育については大学側の問題があるかもしれませんが,採用側の問題として,一つは学歴を評価しないということが言われています。私はこれは余り大した問題ではないと思うので,おっしゃるとおり,学歴があれば何でも評価できるかというと,そういうものではないと思います。それは分かるのですが,むしろ問題は,教育の機会を与えることができているのかどうかということです。
 私どもがやりました調査ですと,社会人,これは非常に若い人から50歳ぐらいまで,5,000人程度で調査しましたが,5割程度の社会人は大学院で勉強し直したいという興味があると言っています。1割はしたいといっています。
 ですが,もう一つ,事業所の人事担当者に対する調査によると,原則として従業員が大学院で勉強することは認めていないというところが8割程度です。これを会社全体に聞くとおそらくそうは言わないと思っています。しかし,人事担当者並びに上役は,かなり制約する。
 実際に業務もあるのですが,私はそれだけではないと思います。つまり,問題は本人は今の業務に直接必要なことを勉強したいと思っている一方,おそらく会社側が考えていることと違うことを勉強したい,少しずれていることを勉強したいと思っているのではないか。あるいは,この会社ではなくて,ほかの環境での勤務の可能性を知りたいと思っている人もいるかもしれません。
 そうした意味で,事業所としては,直接にはやはりそんなに簡単に,勤務時間外であっても,余り積極的に許すわけにはいかないと思うことについてもある程度分かります。
 しかし,これをやってみますと,先ほど日立製作所がおっしゃったように,大体勉強の機会は会社の中にあるとおっしゃいましたが,会社の人事並びに上役が,この人はこれを勉強した方がいいということを完全に正確に把握できているわけではなく,やはり本人がどういう意図を持っているかというのは非常に重要だと思います。そのような意味で,本人が学びたいという機会をどう生かすかということは,私は企業にとっても非常に重要な点ではないかと思いますし,これから日本の社会が流動化する才能,企業の在り方として,そのような従業員の在り方を許すような人事施策が必要ではないかと思いますが,いかがでしょうか。
【迫田日立総合経営研修所取締役社長】  大変重要な指摘だと思っていまして,先ほどの質問で,新卒中心というのは今のところ大きく変えるつもりはないとお話ししましたが,基本的な考えとしては,自分のキャリアは自分で作るということがしっかり浸透していく中で,新卒の割合はおそらく減ってくるだろうと思っております。
 また,学ぶということに関して,自分で責任を負うという形に変わってくるだろうと思っております。
 そのような意味では,おっしゃるとおり,会社の中で提供できるものというのは,今,必要だと思っているものが中心になることはやむを得ないと思っています。
 ただ,それだけにしている企業というのは,ある程度,選択されなくなるのではないかと考えております。やはりそういったいろいろなキャリア機会を作れる会社でなければ選んでもらえない,あるいは残ってもらえない。そういう時代が来ていると思っています。
 そのような意味では,仕事が変わるということに関しても,手挙げ方式というのは今どんどん入ってきておりますし,先ほど紹介したMBAも,基本的には手挙げです。自分が将来経営者になりたいということで,それで上司もきちんと説得しなければなりません。そのようにやってきた人間だけを,その中から選抜して,会社がお金を出して行かせるということです。
 そのような意味で,自分のキャリアは自分で作るという意識はどんどん高まってくるべきですし,それを会社として応援できるものと,それはさすがに自分の費用できちんとやってくださいというものと分かれてくるとは思いますが,基本的な方向としては,そうだと思いますし,そうならない会社は選ばれない,あるいは優秀な人材が抜けていくことになってくると私は考えております。
【青山日本商工会議所理事・事務局長】  ありがとうございます。
 中小企業の場合は,若干大企業と違っておりまして,それだけの能力や知識,経験を持った人間が即戦力として欲しいと,先ほど説明したとおりでございます。ですから,まず第一の方向は,そういう人材をなるべく採用することだと思います。仮にうまく採用できた場合,社内勉強会等により共有化していくことがよくある手法です。
 二つ目は,大学と連携することです。事業化のために共同研究などを行っているところがありますが,そういったところは大学と交流がありますので,ある人間を大学の研究室に送り出して人材を作っていくという方法です。
 それから三つ目の方法は,新規事業を立ち上げることです。こうなりますと,まずは経験者や院卒クラスを採用していくことになります。それができなければ,それに近い大卒クラスの人間を大学のコースに派遣して,新たな事業化に結び付ける。このような行動パターンをとるかだと思います。
 以上でございます。
【永田分科会長・部会長】  どうもありがとうございました。
 まだまだ御質問もあるかと思いますが,お二方のお時間もございますので,ここまでとさせていただきます。迫田社長,青山事務局長様,本当にお忙しい中,ありがとうございました。感謝を申し上げます。

(2)地域における質の高い高等教育機会の確保ための方策(連携と統合の可能性)について,事務局から資料4-1及び4-2に基づき説明があり,その後意見交換が行われた。
【永田分科会長・部会長】  8月23日の会議においても,地域における質の高い高等教育機会を確保するために,どういった方策を今後考えていったらよいかの議論がありました。こちらについて,こちら側で若干用意した資料がございますので,それを御説明いただいて,議論をしたいと考えております。
 それでは,事務局から説明をお願いいたします。
【堀野高等教育政策室長】  それでは,資料4-1を御覧ください。1ページ目は,前回,8月23日に御議論いただいた際の資料の最後のページの写しです。真ん中から下にありますように,連携に係る現状の課題例として,下の二つの丸にありますように,全ての科目を自大学で開設することが設置基準上の原則となっている。これは単位互換する場合も同様で,相当程度,同等性のある科目を自分の大学で開設することが前提となっています。また,教員は一つの大学に限り専任となることが原則となっているということが,連携に係る課題として示されました。
 その下,統合に係る課題例として,二つ目にありますように,国立大学法人は1大学のみの設置となっていて,複数大学の設置は認められていない,私立大学の学校法人については自律的な連携・統合は進みにくいといった課題が示されたところでございまして,こういった論点について,今回,詳しく制度的に現状を把握した上で論点を明らかにしていきたいという資料でございます。
 具体的に,1ページめくっていただきまして,3ページ,初めに,単位互換制度と「自ら開設」の原則との関係についてでございます。まず,現行制度について,御案内のとおり,下の枠囲みに大学設置基準の抜き書きがありまして,第28条で,他の大学,短期大学において履修した授業科目の単位を,60単位を超えない範囲で当該大学の授業科目の履修により修得したものとみなすことができるという単位互換制度がございます。
 この運用につきましては,その下の枠囲みに昭和47年の次官通達がありますが,その(3)に示されてありますように,学部,学科等において通常必要とされる授業科目を開設することなく,他の大学の授業科目をもって代替させるような取扱いを容認しようとするものではないという考え方が示されております。
 さらに,上の四角囲み,第19条という条文がありますが,大学は,教育上の目的を達成するために必要な授業科目を自ら開設し,体系的に教育課程を編成するものとする。自ら開設するということが書かれております。
 1ページめくっていただきまして,この制度についての現状ですが,単位互換制度は81.4%の大学で活用されていますが,教育課程をどのように編成するのか,単位互換制度を活用するか否か,どういった場合に単位認定するのか,具体的な運用については各大学の判断に委ねられております。
 また,二つ目のぽつで,複数大学でコンソーシアムを形成して共同開設した授業科目を履修した場合に,各大学において単位認定をするといったようなグループを組んで実施している方々もいます。放送大学と協定を締結して,放送大学の提供する授業科目を自らの大学で単位認定するといったような動きも進んでいますが,こういった場合に,過去の通達で示されたような条件がどこまで厳密に運用されているのか,運用の仕方についてはかなり差があるのではないか。
 こういった「自ら開設」の原則をどう考え,授業科目をどこまで開設するか,どこまで単位認定するのか,認識,運用の幅にかなり差があるというのが現状でございます。
 次のページ,論点ですが,今後のことを考えますと,放送大学を含む各大学間における単位互換制度の活用,それから大学コンソーシアムの活用といったものは,教育資源の有効活用,教育内容の豊富化,多様な教育ニーズへの対応という観点から,有用性があると思います。また,ICT技術の向上によって,遠隔地であっても効率的かつ効果的な学習が可能になってきているといったことで,活用を広げる余地があるのではないかということがあります。一方,次の丸で,注意点といたしまして,単位互換制度が濫用されると,卒業に必要な単位数を自開設の授業だけでは取得できない,必修科目や専門科目を自ら開設しない,体系的な教育課程が編成されなくなるといった不適切な運用が行われることも注意をしながら考えなければならない。
 また,大学において必要な授業科目を自ら開設するという規定は,過去に一部の大学で発生した必要な授業科目を系列の資格試験予備校に丸投げしていたという不適切な事例を受けて設けられたという点にも注意をする必要があります。
 こういったことから,大学間連携の促進や教育改革のためのツールとして適切かつ積極的に運用されるように,「自ら開設」の原則の考え方や単位互換制度の解釈,適切な運用の在り方について,改めて明示すべきではないかというのが一つ目の論点でございます。
 次のページをめくっていただきまして,一つの大学に限り教員は専任となるという原則についてでございます。これは大学設置基準の第12条に,教員は,一の大学に限り,専任教員となるものとされております。最低基準として,必要専任教員を確保する上で,複数大学を専任教員として兼務することは許されていない。そして,設置審査等においては,教員を一の学部に限り専任教員としてカウントするという運用で行われておりまして,複数学部の専任教員となることは認められていないという運用でございます。
 次のページをめくっていただきまして,現状ですが,一の学部に限り専任教員としてカウントするという運用のために,教育研究の中でも,特定の学部・学科の専任教員は,他の学部・学科の教育研究には関与できないものと理解されている実態がある。このことが,各大学における学部横断的な教育の取組を躊躇(ちゅうちょ)させる一因にもなっているのではないか。
 次のぽつは,複数の大学間で見ると,クロスアポイントメントということは雇用契約の観点から行われていますが,次のぽつにございますとおり,一つの大学に限り専任の教員となるという考え方については,この規定は例外はありません。例えばクロスアポイントメントによって複数の大学と雇用契約を結んで50:50のエフォート率が協定上定められていたとしても,現行法令上,そのことをもって,当該教員が複数大学の専任になることは認められていないというのが現状でございます。
 今後の論点の一つ目といたしましては,まず,大学内の話ですが,一部の大学においては,学部横断的な教育プログラムの実施や教員の所属組織と学生の所属組織の分離が進んでいる中で,適切な教育が行われると認められる場合には,教員を一の学部に限り専任教員としてカウントするという運用を緩和する余地はないだろうかというのが1点目でございます。
 その下,一方で,専任教員制度の趣旨を踏まえると,やはり責任ある関与をしていただくという観点から,学部横断的なプログラムを実施する大学内で,各教員のエフォート管理の仕組みをしっかり構築しておくことが必要ではないかということでございます。
 次の丸は,複数大学間での話になりますが,情報インフラ,交通インフラが発達している中で,将来的には大学においてクロスアポイントメントを活用して強力な連携体制を構築し,大学の機能は残しつつも,教員を共有して活用するということは考えられないだろうか。
 次の丸で,この場合に,やはり各教員の責任ある関与という観点から,複数大学間での各教員のエフォート管理の仕組みを構築しておく必要があるのではないか。その際,例えば1人の教員を二つの大学で専任教員として扱うことを許容した場合,現在の1校分の教員数で2校分の設置認可が可能となってしまうということが起きるのも問題があろうということで,こういった点にも注意をしながら慎重に検討していく必要があるのではないかということでございます。
 次のページは,今の御説明のイメージ図でございます。
 その次,9ページは,地域における大学間の連携強化ということでございますが,前回御覧いただいたように,(1)にありますように,コンソーシアムは全国で45団体も作られている。9ページ下にありますように,前回紹介した事例として,京都3大学や兵庫教育大学などの教職科目の共同化など,大学間連携は様々な形でそれぞれの場所で行われているということを前回御覧いただきました。
 次のページですが,更に地方自治体,産業界との取組として,この三つの事例もヒアリングに来ていただいた例の復習ですが,長野県は自治体が高等教育に関連する部署を作って連携している,高知大学も地域に出ていって勉強している,北九州市においても産学官で共同した取組が行われている,こういった事例を紹介していただきました。
 今後の論点といたしましては,大学間ということについては,コンソーシアムが全国的に広がりを見せていて,国公私の枠を超えた複数大学での科目の共同開設,単位互換といったことが広がってきています。
 これに加えて,大学間だけではなく,地方自治体や産業界との連携の取組も地域によっては始まってきているということですが,今後,全国各地で質の高い教育研究の維持・発展を図るためには,こういった複数の高等教育機関と自治体,産業界が恒常的に連携を行うような体制,これを制度的な仕組みとして作っていくことも含めて,どのような体制を構築していくかといったことを検討する必要があるのではないかということでございます。
 次のページですが,国立大学についてですが,現在は1法人が1大学のみを設置しているということですが,現行の国立大学法人法の設計の中では,一つの国立大学法人が一つの国立大学を設置し,法人の代表と大学の学長が一致するという仕組みになっております。
 そのときの考え方は,法人化以前から学長が大学運営全般にわたって意思決定を行う権限と責任を有してきたということを,法人化に当たってもこういった学長の権限,責任を更に発展・充実させる方向で検討するということ。
 また,二つ目に,一の国立大学ごとに1法人を設立するということについては,大学運営の自主性,自律性を高め,自己責任を強める上で自然な形であり,また,大学相互の競争的な環境を醸成する,大学の個性化に資することが期待できるということ。
 また,三つ目に,教学と経営の円滑かつ一体的な合意形成の確保を図る仕組みにする必要がある。
 こういった考え方で,1大学1法人という制度になっているところでございます。
 こういったことが次のページに図がありまして,上に描いてある図が現行の国立大学法人の仕組みの図でございます。こういったことに対して,下の図は,5年前,平成24年に大学改革実行プランの中で,国立大学の1法人複数大学方式という考え方もあるのではないかという案が提示されたときの図でございます。
 前のページに戻っていただきまして,今後の論点ですが,大学の自主性を踏まえて,法人と大学との基本的関係を今後どう考えていくのか。
 また,公立大学法人や学校法人と比較して,国立大学法人としての望ましい姿は何だろうか。
 また,国立大学法人のガバナンス改革の推進の観点から望ましい法人の形をどう考えるのか。
 一つの法人が複数の大学を設置することについて,どのようなメリットがあるのか。また,デメリットがあるとすれば,それはどのように乗り越えられるのか。
 また,制度の具体的な内容をどう考えるかということでは,法人の長や学長をどのように任命するのか。
 現行の役員会や経営協議会,教育研究評議会の在り方について,どのように考えるかといった論点があろうかということでございます。
 13ページについては,今の国立大学の1法人1大学に直接関わるわけではございませんが,国立大学の教員養成につきましては,御案内のとおり,8月の報告書の中で,一部教科の教員養成機能の特定大学への集約,あるいは大学間での教員養成機能の統合など,こういったことについて検討すべきという報告書ができているところでございます。
 最後に,次のページ,私立大学についてでございますが,現行制度におきまして,学校法人の合併については私立学校法,大学の設置者変更については学校教育法に規定がございます。
 学校教育法の抜粋,第4条ですが,学校の設置者の変更が認可事項になっている。私立学校法の第52条では,学校法人が合併しようとするときは,理事の3分の2以上の同意という規定,そして所轄庁の認可を受けるという規定がございます。そして第56条では,合併の効果として,合併後に存続する学校法人又は合併によって設立した学校法人は,合併によって消滅した学校法人等々の権利義務を承継するといったことが法律で規定されております。
 そして,現状です,二つ目のぽつにありますように,私立大学については,大学や法人の独立性,自律性が強いということで,大学間あるいは法人間の合併の事例は少ないというのが現状でございます。
 論点といたしましては,一つ目に,私立大学の特色化・強みのある分野への資源集中を本格的に促していくという観点から,複数大学の協力による授業や学生募集,事務処理の共同化等々を促していくべきではないか。
 二つ目の丸で,特に地方の大学においては,地方自治体や産業界と大学が形成するプラットフォームに積極的に参加し,地域の高等教育に関する中長期計画も踏まえた教育研究活動や産学連携,こういったものを促していくべきではないか。
 次のページですが,各法人の成り立ちや独自性を生かし,一定の独立性を保ちつつ緩やかに連携し,規模のメリットを生かすことができるような経営の幅広い連携・統合の在り方は考えられないか。また,統合される学校法人の建学の精神の承継に配慮した仕組みなど,多様な連携・統合の方策は考えられないか。
 そして次の丸で,その際に,強みのある分野への資源の集中を進め,円滑な事業譲渡に資するよう,現在,大学単位でしか認められていない設置者変更につきましては,学部・学科単位での設置者変更を認めるなど,制度面での改善を検討すべきではないかということでございます。
 最後の丸ですが,学生を抱えたまま学校法人が突然に経営破綻に陥ることを防ぐために,経営悪化傾向にある学校法人に対しては,経営状況をより細かく分析した上で,私立大学の自主性,自律性に配慮しつつも,各学校法人の自主性に任せるだけではなく,他法人との合併や撤退を含む早期の経営判断が行われるよう,文部科学省や私学事業団が支援し,踏み込んだ指導・助言を行うことも必要ではないか。
 こういった論点を事務局としては用意しております。
 以上でございます。
【永田分科会長・部会長】  説明,ありがとうございます。
 この論点の整理ですが,基本的に前回までに出ていた教育上,研究上の連携はどんどん進めればいいだろうということで,ほぼ御異論のないところです。統合については,まだ本格的な議論をしている段階ではありません。連携については,あくまでも現在の体系の中でいかにして連携を強化できるか,それを邪魔しているものは何かという観点でまとまっております。統合については,議論はまだ始まっておりませんが,統合を視野にという御意見もありましたので,ここに幾つかの論点を整理したということです。
 統合に関しての議論については,本日は差し控えさせていただいて,連携に係るところで,もう少しこういう観点を入れておいた方がいいのではないか,というようなことがあれば,御意見を伺うということにさせていただきたいと思いますが,いかがでしょうか。
 単位互換制度を改めて見てみると,何と自由が利かないんだということがこれでお分かりになると思います。そういうものを今御提案したような内容で検討していくべきではないか,というのが論点の中に書いてあるわけです。
 それから,専任の問題は若干シリアスですが,基本的に1大学に1専任という原則があります。その下で教育現場ではどこかの専任であるとして運用していますが,それをどう考えるかということです。
 これは実は,学位プログラムや認証評価,設置基準の考え方の中でも非常に重要なポイントになっていますので,現況の中でいかにしてより協力的な教育研究ができるか,ということを考えた観点です。
 統合の方はまた時間を作らせていただきます。本日は,連携の方について主に御意見をいただきたいと思いますが,いかがでしょうか。
 それでは,小林委員,どうぞ。
【小林委員】  直接連携に関係するかどうか分かりませんが,そもそも専任教員というのはどのように定義されているかということが,どうも明確ではないように思います。大学設置基準に特に書いてあるわけではなく,専任教員という言葉はありますが,実際,大学設置・学校法人審議会で専任と言われて,審査になって,それで専任となるという形になっていますが,そのような形でいいのかどうかということは議論する必要があると思います。私立の場合ですと私学助成のカウントに含まれるかどうかという基準がありますが,国公立については特にそういった基準もないと思いますので,そのあたりをどう考えるかということも整理する必要があるかと思います。
【永田分科会長・部会長】  ありがとうございます。そこにあるとおり,大学設置基準の中に教員は一つの大学に限り専任教員となるものとすると,これだけは書いてあるわけです。その先々は細かく規定されていない。
 そのほか,いかがでしょうか。
 それでは,益戸委員,どうぞ。
【益戸委員】  地域における連携ということについてでもよろしいでしょうか。
【永田分科会長・部会長】  はい,結構です。
【益戸委員】  既に地域における地方自治体,産業界,教育界との連携などの協議が始まっている事は,よく分かりましたが,私の実感では,どうもそれが,うまく機能していないのではないかと感じています。急速な人口減少やICT教育の推進などを考えますと,各都道府県別での議論ではなく,もう一段大きな地域のまとまりで考えていかないといけないのではありませんか。
また,本日の日立様や日本商工会議所様のプレゼンをお聞きして,中央経済界は非常に早いスピード感を持って動いている事が良くわかりました。しかしながら,地域における連携では,スピード感ある具体策なき会議が多いのではないでしょうか。頻繁に教育界,経済界のトップ同士が顔を合わせ,お互いに支え合う意識での会議がないのが現実です。やはり連携は,お互いが常にウインウインの関係を作る事を前提にしたものでないといけないと思います。どうも経済界と教育界は,お互いにやや敷居が高いのではないでしょうか。もう少し敷居を低くして,ざっくばらんに話し合える機会が必要ではないかと思います。
大切なことは,どこの地域においても情報の格差がないこと,ざっくばらんに議論できるという仕組みをきっちり作ることです。今はまだ仕組み作りができていないのだと思います。やはり制度を作ることが必要ではないでしょうか。そのためには,法律の改正が必要なのか,省令の改正が必要なのか,資金的な手立てが必要なのかなど,更に一歩も二歩も踏み込んだ議論が必要だと思います。
本日,青山事務局長からのお話がありましたが,もっと地域において,俗に言う頑張っている中堅・中小企業の方々からの御意見をこの場でお聞きするというのも,私たちにとっては非常に勉強になるのではないかと思いました。
【永田分科会長・部会長】  ありがとうございます。最後のポイントは,前回の将来構想部会でお約束しておりまして,地域の中小企業の方の御意見をヒアリングすることになっております。本日は合同会議なので,初めてこの点をお聞きになった先生もいらっしゃるわけですが,それはお約束しておりますので,準備いたします。
 それから,益戸委員が今言われたのは,大体10ページの論点のところに書かれていることを補完していただいたということです。ここに維持・発展を図るために,地方自治体や産業界と構造的な連携を図り体制を構築し準備をすべきではないか,という論点があるということです。
 このテーマについて,本日はここまでにさせていただこうと思います。
 これは実は根本的に非常に重要な問題を多く含んでいます。本日は合同会議なので,大学分科会の方の議題もありますので,将来構想部会の方で少し進めて,改めてご報告させていただこうと思います。
 私からも一つだけ言わせていただくと,国立大学法人の1法人が1大学のみを設置していることについて,とあります。これ以前にもう一つ大切な要点として,国立大学法人法の理念は本当に実質化されているか,ということについて議論する必要があります。つまり,法人法は理念とそれを実体化した条文で出来上がっているわけですが,本当にその内容が実質化されて運用されているかどうか,ということです。これについては実は知らない方の方が多いのではないかと思うので,11ページに関連して,是非とも将来構想部会の方で議論を深めようと,今,考えております。
 この案件についてはここまでということで,さきほどお約束したとおり,将来構想部会で議論した後に,また大学分科会で御報告させていただきます。
 それでは,まだ3つ議題が残っています。この3つの議題は,大学分科会の議題でございますので,そちらに移りたいと思います。

(3)大学設置基準等の改正について,事務局から資料5に基づき説明があった。
【永田分科会長・部会長】  次は,大学設置基準等の改正についてです。これは最初に申し上げましたが,専門職大学,機関としての設置の法律が成立し,今度は学部・学科というレベルでこれを設置するために新しい基準が要るということです。
 それでは,事務局から説明をお願いいたします。
【塩原主任大学改革官】  大学設置基準等の改正につきまして御説明させていただきます。資料5を御覧ください。1にありますとおり,今回の改正の趣旨でございますが,大きく二つのことがございます。
 第1は,大学等における実践的・創造的な職業人養成の推進のための改正でございますが,永田分科会長からも御指摘ございましたとおり,昨年5月の中央教育審議会答申におきまして,実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の設置形態については,独立の組織としての設置とともに,既存の大学・短大が,一部の学部・学科を転換させる等により,新たな機関を併設できるようにすることが適当との御提言を頂いたところでございます。
 このうち,機関全体を専門職業人養成に特化させた枠組みとしては,既に法改正により専門職大学等の制度化が図られ,前回の分科会ではその設置基準についての御審議,御答申を頂いたところでございましたが,それに引き続きまして,専門職大学等の趣旨を既存大学等の中にも生かし,既存の大学等の一部の組織において,実践的・創造的な専門職業人養成の取組を推進するよう,今般,大学・短大設置基準等を改正して,専門職学科の制度を創設しようとするものでございます。
 なお,今回の専門職学科の制度設計の案につきましては,本分科会の下に置かれております専門職大学等の制度設計に関する作業チームにおいても御審議を賜りまして,本日,御提案をさせていただくものでございます。
 次に,改正趣旨の第2でございますが,地域における短期大学の役割・機能の強化ということでございます。短期大学につきましては,本年2月に大学分科会におまとめいただきました論点整理におきまして,地域における高等教育機会を確保するための仕組みの強化及び社会人学生のニーズに応じた教育提供方法の充実のための方策について,早急に検討する必要があるとされていたところでございます。
 これを受けまして,今期の大学分科会では,7月以降,制度・教育改革ワーキンググループにおける審議の中で必要な検討を進めていただいているところでもございますが,このうち,今般,特に専門職学科の制度とも内容が重なる部分について,今回の短期大学設置基準改正におきまして同時に措置しようというものでございます。
 2.改正事項でございますが,今回,改正の対象となりますのは,(1)から(3)までの3本の省令,告示となっております。
 (1)大学設置基準の一部改正におきましては,大学は,専門性が求められる職業を担うための実践的かつ応用的な能力を展開させるよう,特別な教育課程を編成して教育を行う学科,すなわち専門職学科を置くことができるものとし,専門職学科に係る基準の特例を定めることとするものでございます。
 (2)短大設置基準の一部改正につきましては,大学と同様,専門職学科の制度化のための改正を行うことに加えまして,専門職学科のみに限らず,短大全体に及ぶ基準の改正事項といたしまして,(2)の二つ目のぽつにありますとおり,専任教員数及び校舎面積について,小規模の学科を想定した基準を追加するとともに,実務経験を有する学生が短大に入学する場合に,当該実務経験を通じた能力修得への単位認定を行うことができる仕組みを整備することでございます。これにより,小規模の学科でも適切な運営を行うことができるようにして,地域の高等教育機会の確保に資するとともに,地域の社会人の再教育機能の強化を図ろうとするものでございます。
 (3)は,学位の種類,分野の変更等に関する基準の告示の一部改正でございますが,これにつきましては,現在,一般に大学の設置認可につきましては,学位の種類及び分野の変更を伴わない学科の設置につきましては,認可を要さず,届出のみで行うことができることとされているものでございますが,今般,専門職学科が制度化されることに伴いまして,専門職学科以外の学科から専門職学科等への転科へ係る一定の学科の設置につきましては,学位の種類・分野の変更の有無に関わらず,設置認可に係らしめることとしようとするものでございます。
 1枚おめくりいただきまして,2枚以降は別紙として,各省令・告示ごとの改正内容の骨子をまとめさせていただいているものでございます。
 別紙1は,大学設置基準の改正骨子でございますが,その改正の概要,1といたしましては,こちらにありますとおり,専門職学科の設置に関する根拠規定を定めますとともに,この際,専門職学科の対象となる分野につきましては,専門職大学と同様でございますが,医学,歯学,薬学臨床及び獣医学の分野は除くこととすること,また,大学は,専門職学科のみで組織する学部,すなわち専門職学部のみを置くことはできないこととしております。
 改正の概要,2は,こういった専門職学科に係る設置基準の特例等でございまして,教育課程,教員設置基準等について,専門職学科に係る基準の特例を定めようとするものです。これらの特例の内容は,基本的に専門職大学の設置基準で新たに定めた内容から取り入れてきているものでございます。
 (1)教育課程等につきましては,まず教育課程の編成方針として,産業界と連携しつつ,教育課程を自ら開発し,不断に見直しを行うこと。専門職業を担うための実践的かつ創造的,応用的な能力の展開等に配慮すること。
 ⅱ)教育課程連携協議会につきましては,産業界等との連携による教育課程編成・実施のための教育課程連携協議会の設置を義務付けること。
 ⅲ)開設すべき授業科目の種類につきましては,一般・基礎科目,職業専門科目,展開科目及び総合科目の四つの科目を規定すること。
 ⅳ)実習等の重視につきましては,卒業要件として,実習等による授業科目で40単位以上の修得を求めること。この実習等による授業科目のうちには,企業等での臨地実務実習による20単位を含むこと等を定めるとしています。
 また,ⅴ)入学前の既修得単位の認定に関しましては,入学前の実務の経験を通じ,実践的な能力を修得している場合には,当該実践的な能力の修得を授業科目の履修とみなして単位認定できる仕組みを整備するものでございます。
 裏に参りまして,(2)教員についてでございますが,そのⅰ)専任教員数につきましては,学部の種類及び規模に応じ定める専任教員数について,小規模の学科を想定した基準を追加すること。
 また,ⅱ)実務家教員といたしまして,専門職学科に係る必要専任教員数のおおむね4割以上は,いわゆる実務家教員とすること。必要専任実務家教員の数の2分の1以上は,研究能力を併せ有する実務家教員とすること。同じく,必要専任実務家教員数の2分の1以内は,いわゆるみなし専任教員で足りるものとすることとしております。
 (3)学生でございますが,入学者選抜に関しては,入学者の多様性の確保に配慮した入学者選抜を行うことを努力義務化すること。
 また,同時に授業を行う学生数については,原則として40人以下とすることとしております。
 (4)施設設備等でございますが,校舎面積については,学部の種類に応じ定める校舎面積について,小規模の学部を想定した基準を追加すること。
 さらに,専門職学部に係る校舎面積については,臨地実務実習が必修である等の特性を考慮し,卒業に必要な臨地実務実習を実施するに当たり,実習に必要な施設の一部を企業等の事業者の施設の使用により確保する場合には,一定の要件の下に,必要な校舎面積を減ずることを可能としているものでございます。
 また,実務実習に必要なその他の施設等についても規定を整備しています。
 以上の設置基準改正につきましては,平成31年4月1日からの施行としております。
 続きまして,別紙2は,短期大学設置基準の改正でございます。短大につきましても,大学と同様,専門職学科の設置項目及び基準の特例を定めることとしておりますが,別紙2の2ページ目の下段の部分,ローマ数字2番にございますとおり,小規模学科のための基準を整備及び入学前の実務経験を通じた能力修得に対する単位認定の事項につきましては,専門職学科のみの特例としてではなく,短大全体に及ぶ改正として,今回,措置することといたしております。
 続いて,別紙3を御覧ください。学位の種類及び分野の変更等に関する基準(告示)の一部改正でございます。改正の概要にもございますとおり,今般,届出のみで行うことができる学科等の設置の範囲を定めております学位の種類・分野変更基準の第1条第1項の規定は,その下の丸1,丸2に掲げる学科等の設置には適用しない旨の規定を追加することとしております。丸1は,専門職学科を設けていない大学等が専門職学科を設置する場合,丸2は,ある分野において専門職学科のみを置く大学等が,当該分野について専門職学科以外の学科等を設置する場合,この二つについては,学位の種類・分野の変更を伴わなくても認可に係らしめることとするものでございます。
 以上が今回の改正の概要でございますが,今回改正については,既存の大学等が平成31年度からの専門職学科創設に向けた設置認可申請の準備を進められるよう,年内目途に改正省令等を公布したいと考えているところでございます。
 本日の審議を踏まえて,更に調整を図りまして,一つには条文化等の作業,法制的な精査を進めますとともに,併せてパブリックコメントの手続を進めさせていただき,その上で,次回大学分科会で再度御審議を賜りたいと思っているところでございます。
 以上,よろしくお願いいたします。
【永田分科会長・部会長】  ありがとうございます。本日の議論の位置付けを最後にまとめていただきました。
 それでは,いかがでしょうか。
 先生方の中には作業部会に入っていただいている先生方もいらっしゃることと思いますが,作業部会の方でできてきた案について,本日御意見を頂いた内容を必要に応じて反映させたのち,パブリックコメントを経て,という順番になっております。
 いかがでしょうか,よろしいでしょうか。もし何か御意見があれば,事務局にお知らせいただきたいと思います。
 また,先ほどのとおり,パブリックコメント等の必要な手続を進めていきたいということなので,改めて次回もう一度御審議を頂いて,最終的に決めていきたいと考えております。
 それでは,御協力,どうもありがとうございました。

(4)第3期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過について,事務局から資料6-1から6-5に基づき説明があり,その後意見交換が行われた。
【永田分科会長・部会長】  続きまして,次の大学分科会の議題ですが,こちらは第3期教育振興基本計画の策定に向けた審議経過報告ということになります。これは中央教育審議会総会の直下に設けられている,北山大学分科会副分科会長を部会長としている教育振興基本計画部会で審議が進められているということです。
 9月28日の中央教育審議会の総会でこれまでの審議過程の御紹介がありましたが,その際の意見も踏まえてまた議論が行われてきました。その審議の報告を事務局よりさせていただきたいと思います。
 それでは,御説明をよろしくお願いいたします。
【内田生涯学習政策局教育改革推進室長】  生涯学習政策局でございます。第3期教育振興基本計画の審議状況につきまして,御説明させていただきます。
 これまで中央教育審議会の教育振興基本計画部会におきまして,昨年4月の諮問から審議を頂いてきているところでありまして,大学分科会からは永田分科会長,北山副分科会長,川端委員,金子委員にも御参画いただいているところでございます。
 前回8月23日の大学分科会・将来構想部会の合同会議におきましても状況報告をさせていただいたところでございます。その後,そのときの御意見も踏まえて修正させていただきまして,9月19日の基本計画部会で取りまとめいただきまして,去る9月28日の中教審総会で御報告させていただいたところでございます。
 本日は,その総会の資料を配付させていただいているところでございます。
 まず資料6-1でございますが,こちらは飽くまで確認のためでございますが,諮問事項を改めてお配りさせていただいているものでございます。諮問事項丸1ですが,2030年以降の社会の変化を見据えた,教育政策の在り方についてでございます。そして諮問事項丸2が,各種教育施策につきまして,効果の専門的・多角的な分析,検証に基づく施策の立案につなげる方策ということでありまして,エビデンスに基づく施策立案を推していくための方策の検討という趣旨の諮問でございます。現在までに諮問事項丸1の部分を主に審議いただいているという状況でございます。
 資料6-2に関しましては,去る2月に第3期教育振興基本計画の策定に向けた基本的な考え方をまとめさせていただいたものでございます。こちらも参考程度にお配りさせていただいておりますが,本年1月に大学分科会でも途中経過をこの資料を基に御報告させていただいております。
 この考え方は,総論的な内容をまとめたものでございますが,それをベースにいたしまして,今回までブラッシュアップしたのが,御覧いただこうとしております資料6-3,それと6-5の審議経過報告ということになります。それぞれ概要版と本体ということでございます。
 現状といたしましては,審議経過報告に関しまして,国民からの意見募集を1か月程度でございますが,行っている状況でございます。
 今後,教育振興基本計画部会では,先ほど申し上げましたエビデンスに基づく施策の在り方につきまして御審議いただくという流れでございます。
 また,制度全体といたしましては,人生100年構想会議におきまして,人づくりを論点に議論が進んでおりますとともに,将来構想部会におきましても高等教育の将来構想が検討されておりますので,そういった検討状況も踏まえまして,計画に反映すべきところは反映させていただくという予定でございます。
 今後,答申を経まして,年度末の閣議決定を目指してまいりたいと思っているところでございます。
 それでは,前回の説明と多少重複いたしますが,簡単に資料の御説明をさせていただきたいと思います。まず資料6-3でございますが,こちらは概要版でございます。第1部,我が国における今後の教育政策の方向性といたしまして,ローマ数字の1ですが,教育の普遍的な使命といたしまして,教育振興基本計画は,教育基本法の目的,目標を踏まえて策定するものでございますので,それらを踏まえる必要性や目指すべき姿というような考え方を記載してございます。
 ローマ数字の2でございますが,教育をめぐる現状と課題といたしまして,2期計画期間中のフォローアップも部会で行っていただきましたので,(1)といたしまして,ローマ数字2の左下でございますが,これまでの成果と課題をまとめさせていただいておりまして,(2)といたしまして,社会の現状,2030年以降の変化を踏まえまして取り組むべき課題といったものを記させていただいております。
 右側のローマ数字3といたしましては,2030年以降の社会を展望した重点事項といたしまして,人生100年時代を見据えた方向性といったことも踏まえまして,教育を通じた一人一人の可能性とチャンスの最大化を中心に見据えて取り組む旨を記載しております。
 全体の構成は今説明したとおりでございますが,併せまして資料6-4,こちらも資料の紹介だけさせていただきます。これは,今,概要で今後の方針として右下のところに1から5まで大きな赤文字の方針がございましたが,その方針ごとに今後取り組むべき施策群や政策評価の指標をロジックモデルという形で,一般的に政策評価などで使われる手法ですが,目標,施策,施策評価指標の関係性をまとめて図で示させていただいている資料でございます。こちらもお時間の関係で説明を省かせていただきますが,後ほど御覧いただければと思います。
 資料6-5を御覧いただければと思います。前回からの変更を中心に簡単に御説明させていただきます。前回もこちらの一つ前のバージョンで御説明させていただいておりますが,1枚おめくりいただきますと,1ページ目から2ページ目に目次がございまして,今,全体構成を1枚紙で御覧いただいたような形で,第1部,第2部ということで,総論,各論に分かれて全体構成が作られております。
 おめくりいただきまして,高等教育の関係を中心に,変更部分でございますが,19ページ以降でございます。第1部の総論の大きな方針1でございますが,更におめくりいただきまして,21ページ目でございます。三つ目の白丸といたしまして,前回御意見といたしまして,文系・理系の枠を超えた分野横断的な学問研究の必要性といった御意見も何人かの委員の皆様からございましたので,そういった記載をさせていただいておりますのと,22ページの下から二つ目の白丸にもその旨の趣旨を反映させていただいております。
 また,更におめくりいただきまして,25ページから26ページ,こちらも同じく総論の中の方針の4でございますが,二つ目の白丸,25ページの下の丸でございますけれども,高等教育の家計負担軽減の必要性につきましてもしっかり記載すべきとの御意見が前回ございましたので,改めてその考えを書き込ませていただいているという趣旨でございます。26ページの冒頭にかけての記載でございます。
 少し飛びまして,29ページ目でございます。二つ目の白丸と三つ目の白丸でございますが,こちらは教育振興基本計画部会と初等中等教育分科会におきまして,私立学校の振興に関しまして,踏み込んで記載すべきとの御意見を賜りましたので,二つ書かせていただいているところでございます。
 また,同じ29ページ目の中段でございますが,持続的な高等教育システムの構築というところで,前回,この項目に関しましては書きぶりがもう少し少ない案でございまして,全体的にもう少し膨らませた方がいいのではないかという御意見もございました。また,並行して将来構想部会の議論なども踏まえまして,今後更に追記させていただく予定でございますが,現時点といたしまして,こちらの項目の最初の丸といたしまして,高等教育の機会均等の確保の重要性という基本的な考え方を記載させていただいておりますことに加えまして,二つ目の白丸といたしまして,国公私立におきまして,改革の現状を,今まで何に取り組んできたかということをしっかりと記載すべき旨の御意見もございましたので,国立,公立,私立に分けまして書かせていただいております。
 30ページ目でございますが,一つ目の白丸は前回同様ですが,二つ目,三つ目の白丸につきましては,アカデミックサイドと産業界,地域との連携につきまして,踏み込んで記載すべきとの御意見もございましたので,追記させていただいているということでございます。
 また,30ページ,下から三つ目の白丸でございますが,「あわせて」で始まるパラグラフと,その次のパラグラフを新たに追記しております。それぞれこちらも基本計画部会でありました御意見の反映でございますが,教育の質の向上に向けた検討の取組や,大学の経営力の強化につきまして,具体的に追記してございます。
 また,今度は各論の部分ですが,少しページが飛びますが,68ページに行きまして,私立学校の基盤の強化ということで,経営の健全性の向上や財政基盤の確立,経営上の課題を抱える制度的な対応など,今後の構成について書かせていただいております。
 そして,70ページでございますが,持続的な高等教育システムに関しまして記載した一つのページがございます。こちらは前回の会議と記載の変更はございませんが,今後,将来構想部会等での御意見が具体化していく中で,追記させていただく予定としております。
 前回,御意見を賜りました修正を反映した点を中心に御紹介させていただきました。本日,この場でも更に御意見を賜れれば,今後,答申までに反映につきまして検討させていただきたいと考えております。
 説明は以上でございます。
【永田分科会長・部会長】  ありがとうございます。教育振興基本計画部会の方でもまだまだ意見がたくさん出ています。この大学分科会からも何か御意見があれば,お伺いできれば大変有難いのですが,いかがでしょうか。
 伊東委員,どうぞ。
【伊東委員】  ありがとうございます。倉敷市長でございます。
 私から,本日ヒアリングもお伺いしまして,4点,簡単に申し上げたいと思います。
 社会的な情勢の中で特に情報工学,ICTの活用ができる人材不足が,東京だけでなく,地方でも言われておりますので,学部横断的な,例えばITと農業,ITと経済など,そういったクロス的なところに是非力を入れていただきたいと思います。
 英語や国際化に関連してでございますが,2020年のオリンピックも非常に近付いております中で,日本人の国際的な対応について,更に力を入れていく必要が非常にあると思っております。
 3点目といたしまして,学び直しについて,女性の活躍という観点で,1度子育てをされて,子育てをされながら学び直しをして,また就職ができる,高等教育を受けて就職の機会を与えられるという点に是非御配慮いただきたいと思います。
 4点目といたしまして,地方創生という観点でございます。後ほど9月29日の告示のこともお話があると思っておりますが,地方創生の観点で大きく踏み出していただいたことに,心より敬意を表します。今後5年間ということは,今後,50年後に人口が5,000万人になるのか,それとも1億人近くまでに何とか保っていけるのかという観点が非常に大きく関わってくると思っておりますので,地方創生,特に地方の大学,地域の振興に資するという点についても,是非力を入れて作っていただきたいと思っております。
 以上でございます。
【永田分科会長・部会長】  ありがとうございます。
 教育振興基本計画部会でもまだまだ議論されているところですが,先ほどのITの問題について,簡単にできるわけではなく,人文系の人材であってもやはり基本的な数学の素養は身につけるくらいの心構えがないと,これからの世代には通じないだろうと思います。そうすると大学の基本的な教育のコアとなる部分はやはり大切だ,という議論もされておりますが,今のところ,まだそこまでは書き込まれておりませんので,その点は一生懸命主張しているところです。
 よろしいでしょうか。教育振興基本計画部会は初等・中等・特別支援が非常に強く,高等教育系は委員も非常に少なく苦労しております。従いまして,先生方の力強い御意見を持っていくのが一番いいだろうと思っております。
 最も強く主張しているのは,今申し上げたように,高等教育の基盤となる教育や研究の充実,という観点をやはりどこかに入れておきたいということであり,それを支える財政基盤もやはり入れておきたいという意見も出しております。
 よろしいでしょうか。それでは,またこれも何か御意見ございましたら,是非とも事務局にお知らせいただきたいと思います。こちらは,先ほどありましたが,年度内,3月までに閣議決定をしてという段取りになりますので,それまでにありとあらゆる意見を組み込んで,いい計画にしたいと思います。どうぞ御意見を事務局にまたお寄せいただければと思います。

(5)東京23区の大学定員抑制に係る暫定的な対応について,事務局から資料7に基づき説明があり,その後意見交換が行われた。
【永田分科会長・部会長】  それでは,最後の議題ですが,東京23区の大学定員抑制に関わる暫定的な対応についてということです。これは前回合同会議において,まち・ひと・しごと創生基本方針2017,閣議決定された東京23区内の大学の抑制案という方針を踏まえて,告示案が出ています。委員の皆様から,また意見を頂きたいと思います。
 これは,暫定的な措置であることから,法律化されているというわけではありませんが,今般出た告示について,議論しておいてもよいのではないかと思います。
 それでは,簡単に資料を説明いただいた後,意見を頂きたいと思います。
【蝦名高等教育企画課長】  それでは,資料7を御覧いただければと思います。「平成30年度に」から始まる大変長いタイトルでございます。
 本件につきましては,今ほど永田部会長からもお話がございましたように,今年6月のまち・ひと・しごと創生基本方針2017という閣議決定によりまして,今後,制度として,具体的には平成32年度以降ということを念頭に,地方大学の振興と,それから都市部の大学の定員の抑制の在り方について,年内に検討を行うことが閣議決定にひとつ定められてございます。
 これに基づきまして,現在,内閣官房に置かれました有識者会議で,年内を目途に検討が正に今進められてございます。
 それと同時に,冒頭申しました閣議決定におきましては,年内においても直ちに趣旨を踏まえた対応を行ってくださいということが閣議決定されてございまして,具体的には,平成30年,平成31年の定員増について,当面の措置として告示の改正を行うこととしたところでございます。
 その告示の内容をこれから紹介させていただきたいと思いますが,2ページ目を御覧いただければと思います。こうした平成30年,平成31年の定員増に対する対応を定めようとする告示につきましては,実は8月23日のこの会議におきましても,こうした方針でパブリックコメントに掛けますということを御報告申し上げたところです。その際の内容が,この2枚目の横長の資料左側ということになります。
 これから平成30年,平成31年に向けまして,平成30年4月からの収容定員の増につきましては,この10月に申請が来るというような状況です。それから,平成31年度からの大学の新設については,1年半前の,まさに今年10月です。それから,平成31年の学部の新設や収容定員の増につきましては,申請時期は来年3月ないし6月ということになりますが,これら,平成30年,平成31年の定員増につきまして,一括して,一番下の枠囲いにございますように,23区の大学の収容定員増に関する申請を許可しないことを原則としつつ,例外としては,一つには,施設設備等の投資を行うようなケースで,それぞれ一定の時期までに機関決定がなされているといったような場合,あるいは,23区に所在する専門学校がその専門学校の定員を活用して,言わば転換するような形で専門職大学を設置するようなケースです。それから,医学部の地域枠で東京23区に定員設定のあるものについては例外とするというようなことを例外としまして,これでパブリックコメントを行ったというところでございます。
 パブリックコメントの結果が,その次のページ以降,整理した内容でございます。後ろから2枚目,枠に収まっているものの主な意見の内容,文科省の考え方という整理がされているところを御覧いただければと思います。
 賛否それぞれ意見がございましたところでございます。賛成の意見,あるいは大学の自主・自律的な教育改革等の取組を阻害するのではないか。あるいは,そもそも地方大学の振興というのが本筋ではないかといったような御意見も頂戴したところでございます。
 また,その次のページに渡りますが,地方産業の振興こそが正に必要ではないかという御意見や,それからこうした23区の定員抑制を行うことによって,優秀な学生が海外から来なくなるのではないか。国際競争力の低下につながるのではないかといった御意見。あるいは,社会人の学び直しニーズが高まっている中で,そうしたものを規制するのはよいことなのかといったような御意見。あるいは,既に一定の投資を行っているようなケースについては,急な政策変更でそれが阻害されているのはよろしくないのではないかといったような様々な御意見を頂戴したところでございます。
 これらの御意見の中で,特に国際競争力の低下あるいは社会人の学び直しニーズといったところについては,実は今,平成32年度以降の措置を検討する,冒頭申し上げた有識者会議の場でも,これをどう取り扱うかということが大変大きな論点となっているところでございまして,前から2ページ目の横長の表に戻っていただければと思いますが,今回,こうしたパブリックコメントの意見を踏まえまして,当面,すぐ申請時期が到来する平成30年度からの収容定員の増,これは今年10月,今正に申請の時期を迎えてございますし,平成31年度からの大学の設置についても今正に申請の時期を迎えてございます。これらについては,当初パブリックコメントをした方針で,当面のものとして臨ませていただきつつ,申請時期がしばらく後に到来するもの,具体的には平成31年度の学部の新設や収容定員の増につきましては,来年3月ないし6月が申請時期ということでございまして,その頃には,冒頭申しました平成32年度以降の措置を議論するための有識者会議の最終的な報告が出されているという状況でございま。そこで,先ほど申しましたような留学生をどうするか,社会人をどうするかといったような,それ以外にも様々な観点から議論されてございますが,それらについての方向性を踏まえた形で,これから申請時期が来る平成31年度のこれらについては対応をするということにして,できるだけ,直ちに申請時期が来るものについては別段ではございますが,しばらく時間的余裕があるものについては,そうした政府におけるさらなる検討を踏まえた内容として対応することが適当ではないかと考えまして,今般,パブコメを掛けた案とは若干異なる形ではございますが,この表でAとBと整理をしてございます10月に申請の来るものについてのみ,今回,告示を新しく制定することとしたものでございます。
 その上で,今ほど申しましたように,これから申請時期が来る,ここで言うC,平成31年の学部新設,収容定員増につきましては,年内の有識者会議の結果を踏まえた形で,改めて告示を制定するか改正するかという対応を行うこととしたところでございます。
 以上が御説明となります。
【永田分科会長・部会長】  現在の状況は御説明のとおりでございまして,パブリックコメントを見ていただきますと,大体総会あるいは部会等で出てきた内容と重なっている御意見が多いという印象を持ちます。
 この件に関して御意見等ございますでしょうか。
 それでは,小林委員,どうぞ。
【小林委員】  これは事務局に確認したいのですが,私も東京23区内に所属する大学の教員ですので,ちょっと言いにくいところがあるのですが,そういった立場ではなく,一般的に確認したいのですが,これは東京23区内にある大学という形で全部書かれております。ただ,報道等を見ますと,私立大学について抑制するという言い方になっておりまして,国公立大学についてどういう扱いになっているのでしょうか。
【蝦名高等教育企画課長】  今回,収容定員の増と,それから学部・学科,大学の新設というような,もともと認可制度があるところについて,認可の際のルールをどうするという形で告示を定めました。前者については,公立については届出ですので,掛かりません。後者については,これは公立も含めて認可事項ですので,公立も対象になります。
【永田分科会長・部会長】  そのほか,いかがでしょうか。
 吉岡委員,どうぞ。
【吉岡委員】  23区にある大学側の者ですが,そもそも論は今申し上げませんが,このCの来年3月,6月のところの中に,ある種の例外規定を増やす形になっていると思いますが,この場合の社会人,留学生といった場合の定義について,どのようにこれを判断するのか。簡単に言えば,誰をもって社会人とするかということと,これは大学設置・学校法人審議会の仕事になるのかという2点を伺いたいと思います。
【蝦名高等教育企画課長】  現在,社会人といっても,例えば国際統計などでは25歳以上とかなり割り切って整理しているということがありますが,このあたりの定義についても,有識者会議で正に議論しようとしてございます。
 これらについて例外にするということになりますと,当然,別枠で定員を管理することになるのか。それはどのようにやっていくのかということも含めて,有識者会議で検討を行ってまいります。
 その上で,最終的な認可の際にそれらを確認していただくのは当然ながら大学設置・学校法人審議会ということになりますが,その際に,できる限りルールとして明確になるようにというようなことで,まずは有識者会議で検討するということでございます。
【吉岡委員】  ありがとうございます。
【永田分科会長・部会長】  今,吉岡委員から出たのは1例だと思います。中央教育審議会は諮問に答える立場ですので,なかなか我々が意見を主張する機会はないかもしれません。しかし,こうしたかなり重要な問題がありますので,総会の方からも意見はしましたが,今後とも有識者会議等と緊密に連携をとって進めていければと思います。
 そのほか,いかがでしょう。
 よろしいでしょうか。このテーマについては,今ここで意見が出なくても,本来はもう一度,大もとに立ち返って,東京23区だけ抑制することに本当に合理性があるのかどうかという問題もあります。大学分科会あるいは将来構想部会の方では同じような議論をしているわけですから,有識者会議等に先んじて,我々としてはまた議論を進めていきたいと思っております。
 それでは,予定した議題はここまででございます。御協力をありがとうございました。
 お忙しい中,またどうぞよろしくお願い申し上げます。

―― 了 ――

お問合せ先

高等教育局高等教育企画課高等教育政策室