重要事項の例 |
委員からの主な意見 |
1 大学院を抜本的に強化し、世界的な教育研究拠点を形成する |
- 大学院の部分については、計画全体の中で一層強調すべき。
- どこにどうやって拠点を作るのか検討すべき。あまり「選択と集中」に走りすぎるべきではない。
- 教育における「選択と集中」は危険。教育は「多様性」であり、これを確保した上で「選択と集中」がいかにして可能か検討すべき。
- 今後5年間の目標・基本方向としては、「国際化」、「個性化」と「流動化」。世界第2位の経済規模に見合った、複数(20〜30校)の世界レベルの大学・大学院を構築することが重要。また、国際社会を先導するリーダーを育てることが必要。
- 国際競争力の観点からは、質のよい学生を惹きつける拠点、マグネット・ユニバーシティが必要。
- 大学院教育も量から質への転換を果たし、各大学において入学から学位取得まで一貫したプログラムを実践すべき。
- 国際的な研究拠点に関し、教員の負担の観点から「教育と研究を分離すべき」という議論が出るが、これは危険。高度な研究機関での教育機能、そうした機関に入るべき人たちを育てる機能それぞれを充実させることが必要。
- 中央教育審議会答申は、機能別分化を促しており、教育活動と研究活動それぞれの内容・比重は、大学によって多様化していく方向にあるが、両者は、教育基本法の示すとおり、大学の使命・基本的役割として不可分。
- 教育の質の向上は重要であるが、高等教育に携わる人材の確保ということについて、研究振興と併せて数値目標や支援策を考えていくべき。
|
2 社会の信頼に応える学部教育を実現する |
- 高等教育への進学率を政策目標として掲げることは重要だが、短大・高専・専門学校を含めた全体の進学率として定めるべき。その際、高校の進路指導の在り方に要注意。
- 高等教育進学率をさらに伸ばす(伸びる)ことを前提とするかどうか要考慮。
- 進学率の適正な水準に関し、例えば定員管理などについても記述すべきではないか。
- 知識基盤社会を志向する先進諸国の動向を踏まえるなら、我が国の高等教育の在学者等の規模は、過大とはいえないのではないか。教育政策・社会政策等の様々な観点から、成人や留学生を含む幅広い層に対して高等教育の機会を開くと同時に、多様な学生に対する教育の質を高めていくこと、そのための投資を充実していくことが重要ではないか。
- 「リベラルアーツ」について記述をすべき。
- リベラルアーツも目標を明確にし、課題設定とその解決能力を修得するための基盤とすべき。
- 授業を受動的な知識伝授型・講義型から積極的な問題解決型へ転換すべき(課題を設定して取り組ませるべき)。併せて教員などソフトの整備も必要。
- 全入時代を迎えて「入易」となったが、「出口」をどうするかが今後5年の最大の問題。
- 個々の大学で出口管理を強化するというのは現実には難しいため、国の支援が必要。
- 国民への説明責任を果たす観点から、人材育成の達成度を公表し、評価を受けることが必要。
- 9月入学の検討にあたっては、就職等の面で9月入学の学生と4月に入学した学生との差異がないことを保障できるか否かの検証が必要となるのではないか。
- 教育目的や成績評価基準等の明示、FD実施の義務化に関して了承
|
3 実践的な優れた職業人等を養成する |
- 職業人養成の節に、学部教育の記述を盛り込むべき。
- 学生の進路選択への支援については、進路選択力の向上に資するよう、カリキュラム等の充実を図るべき。その際、産業界など外部資源の活用をさらに進めるべき(例えば、インターンシップの単位化やトライヤル雇用、ハローワークとの連携強化など。)。
- 高専など職業人養成のパスから高等教育へどう繋ぐかが重要な課題。
- 高等専門学校教育については、卒業生に対する高い求人倍率に示されるように、社会的な評価が高いことを踏まえつつ、技術の融合化、複合化など新たな社会ニーズに対応し、抜本的な充実・振興方策を検討すべきである。
- 大学だけではなく、専門学校を含めた高等教育全体として振興方策を考えることが重要。
- 高等教育機関としての専門学校の位置づけ、職業教育をめぐる役割分担の在り方について検討すべき。
- 高度・多様な職業教育のための教育装置の整備、社会の要請を踏まえたプログラムの研究開発の支援が重要。
|
4 大学等の国際化を推進する |
- 国際的な流動性を高めることが大きな課題。多様な経験の少ない学部学生について、外国での経験は重要であり、短期留学を抜本的に拡大すべき。「国際化」は、日本の大学教育の改善に向けたインパクトとして考えるべき。
- 国際的な標準を考える場合、ボローニャ・プロセス等でなく、日本が中心となってアジア圏で新たなかたちを考えるべき。
- 我が国が他のアジア諸国に対して貢献することは必要であるが、受入れ大学が留学生の求めるものになっているか等の検証が必要。受け入れの数値目標も、こうした観点に立った上で検討すべき。
- 国費留学生制度は、私費留学生の増加を牽引。授業料減免学校法人援助の制度の拡充、私費外国人留学生に給付する学習奨励費の拡充などの政策目標を定めることが重要。また、留学にかかる必要な情報のデータベース化、インターネットを活用した情報提供にかかる事業の積極的な運用が必要。
- 留学生を広く受け入れるとともに、優秀な留学生を引き寄せる拠点の形成が重要。
また、国際基準に沿った柔軟な対応(学期、学位、カリキュラム等)が大切。
- 海外から優秀な研究者・学生を惹きつけられるよう、国際的なインフラ整備(宿舎、国際対応の可能な病院・学校等)を充実すべき。
- 留学生の受入れ目標を考える場合、短大、高専、専門学校を含めるべき。
|
5 地域における国公私立大学等の連携体制を構築する |
- 健全な大学間競争を促進するためには、同時に、知的共同体の形成、大学間の連携や協働を強化し、支援していくことが重要ではないか。
- 地域貢献の拠点としての「エクステンションセンター」の設置など、学外との協力を進めるための基盤整備を促進すべき。ただし、単に生涯学習の講座開設のためだけとせず、地域の産業基盤の「人材育成」、「技能伝承」、「技術開発」のために機能できるものとすべき。
- 地域の特色を活かし、地域振興の核となることが重要。
- 大学の最先端の「知」を構造化し、初等中等教育の教育内容、教員養成・研修に反映すべき(「教育院(仮称)構想」の実現)。
|
6 国公私立大学を通じた新たな学術研究の推進体制を構築する |
|
7 大学教育の質を保証する仕組みを確立する |
- 大学は供給過剰。質の向上を自ら出来ない大学は淘汰される他無いことを強調すべき。
- 自己点検・評価は十分に実施されているか疑問あり。自主的な質保証ができない大学があることは事実。文部科学省の一定の誘導、関与も必要。
- 専任教員の要件明確化など、大学設置審査の課題を踏まえた基準の見直しを早急に進めるべき。
- スタートした(今後スタートする)評価機関への支援強化が重要。
- 大学や教員の評価については、教育・研究活動の合理的な評価の実施、アウトカム評価を加えること、国際化の評価の実施が重要。
|
8 大学の教育研究を支える基盤を強化する |
- 社会的投資として高等教育を位置づけ、大学教育の質的転換を図るための財政的基盤をつくりあげていくことが重要。
- 大学における基盤的経費の確保は重要。学生の多寡にかかわらず、一定額を措置すべき。
- 研究、教育に対する競争的資金の増大とその仕組みや運用方法の工夫が重要。
- 既得権を打破し、教育資源を効率的に配分すべき。
- 大学で世界トップレベルの研究が継続できるよう、研究設備(特に10億円規模)の更新・整備を重点的に支援すべき。
- 民間資金の教育への投入促進のため、教育機関に対する寄付を行った場合は法人税、相続税、所得税等を税額控除する制度を導入すべき。
|
9 教育費負担を軽減する |
- 家計負担は、国際的に見ても高水準。これ以上の負担を求めることは問題。
- 「経済的理由によって大学・大学院進学を断念するようなことがないようにする」ことは重要。これは、「成績優秀な生徒・学生」に限らず、すべての希望者に開かれたものを基本とすべき。
- 日本学生支援機構の奨学金は、すべて無利子とすることが必要。また、成績要件を問うのであれば、入学時よりむしろ卒業時の学業評価で見究めてはどうか。
- 有利子であるため、奨学金の適用を忌避する層も潜在的に多いとされており、この点は看過すべきではない。
- 優秀な大学院学生への経済的支援を拡充すべき(例えば、大学院生の海外での研究を支援したり、研究者や大学等の機関が競争的資金から学生への奨学金を払えるようにする新たな仕組みの創設)。
|
10 いつでも新たなチャレンジが可能となる生涯学習社会を実現する |
- 日本の高等教育の構造転換すべき点の一つは、成人の学習機会。生涯教育が強調されているが、実際は量的にテイクオフしていない。
- 18歳人口が減少する中で生涯教育の重要性はさらに高まると考えられ、このコストを誰がどのように負担すべきかという議論について検討すべき。日本は学校教育に重点がおかれすぎている。
- 社会人受け入れ拡大方策の検討にあたっては、その社会人が仕事の傍らで集中して学べる環境を整備することが条件として必要。
- 学び直しのみでなく、実体験に基づいた課題を設定し、自主的な議論により結論にまで至って報告書を作成して情報発信するカリキュラムを加えるべき。
- 社会人の生涯学習機会の増大について、学位や単位と直接結びつける必要はないが、単なる受講ではなく、実質的な修了を目途とすべき。
|
1〜10を踏まえた公財政支出の在り方 |
- 高等教育に対する公的支出が少ないことは問題。大学教育の質、成人教育、国際的な流動性といった課題達成に向け、21世紀への戦略的な投資として、社会全体で支出することが必要。
- 科学技術基本計画において総額25兆円という目標が明記されたように、高等教育への投資額を具体的数値目標として盛り込んでいくべき。(※同旨複数)
- 「選択と集中」をする以前に、諸外国に比して少ない公財政支出を拡充することが必要。
- 教育振興基本計画には、資金的な裏打ちは絶対に必要。
- 予算額を増やすには、何にどれだけ使うのかということを明確にすべき。単純に「高等教育の公財政支出のGDP比をOECD諸国平均並みに」と言うだけでは不可。
- 「選択と集中」が各界から言われている現状では、全体の底上げが必要ということを訴えるべき。
- 質の転換のため、何にどれだけの資金を投入するかのアウトラインを示すべき。
- これまで低コストの状態を続けてきたが、教育予算を増額した場合、社会としてどういう負担が必要なのか議論すべき。
- 明治以来、日本の高等教育は初めて供給超過となった。学生の学力低下、多様な学生の受入れにより、高等教育の質を維持するだけでもコストが必要。資金を投じないと質が低下する恐れのある時代になっており、そのことを訴えるべき。
- 米国の高等教育は、この15年間で質的に大きく転換(授業方法改善、大学全体での教育のシステム化等)。毎年7〜8パーセントでコストが上昇し、質的改善に寄与。
- 大学改革をめぐる議論の中では、国際的な競争力の観点から、日本の大学の問題点や非効率性を指摘する意見が少なくないが、十分な客観的な根拠が欠如。むしろ、投資額が必ずしも十分でない中、相応の成果を上げているとも言えるのではないか。
|
★ 計画策定に当たっての基本的な留意点 |
【検討のスタンス、計画の記述の在り方について】
- この5年間で21世紀型の高等教育への構造転換をする、その基礎をつくるということが基本的な課題。
- 高等教育を受けることの意義をきちんと書くべき。
- 振興計画は、誰が誰に対して訴えていくのかを明確にすべき。
- 国民からの理解を得るため、分かりやすさは重要(例えば、事項を大括りに整理して、「国際競争力の強化」、「底上げ、層の厚さ」、「社会の信頼に応える教育研究基盤の形成」の3つとする等)。
- 大学の果たす役割、とくに社会との繋がりや初等・中等など前段の教育との関係性等を含め、現状をベースにしたものではない議論をすべき。
- 振興計画の策定に当たっては、文部科学省がすべきこと、大学がやることを切り分け、前者を記載すべきではないか。
- 我が国の高等教育の振興に向けては、新規採用や企業内教育、産学連携など、産業界との関係について検討すべき点が多々ある。政府内では、「社会総がかり」で教育再生に取り組むことを目指して活発な議論が進められているが、産業界との関係など、個々の大学の努力や教育行政の範囲では対処できない面に関して、より踏み込んだ議論も必要ではないか。
【数値目標の設定について】
- 教育基本法においては、自主性・自律性などの大学の教育研究活動の特性を尊重することを要請。目標の設定や具体的な施策の検討に当たっても、トップダウン的な発想に偏ることなく、適切な配慮を行うことが必要。
- 大学の自主性・自律性を尊重しつつ、教育研究の活性化を図ることが、長期的には、より多くのメリットを社会全体に還元することを認識すべき。
- 目標設定に当たっては、その結果として資金配分を歪めて大学教育を駄目にするようなことのないようにすべき。
- 大学の自主性・自律性の観点から、細かな数値目標は不適切。
- 規制緩和の行き過ぎで混乱が生じており、高等教育の建て直しのためにも、一定の数値目標の設定、計画の策定は必要。このままでは国際通用性は無化。
- 各教育機関が目標を明確にして、その実現や実行を評価、支援することを基本とすべき。
|