資料4−4

「専門職大学院の教育研究活動に関する実態調査」について

1 調査の概要

【目的】

 制度発足以来、多様な分野において急速に設置されてきた専門職大学院の教育研究活動等の実態について、的確に把握し、高度専門職業人の養成の中心的な役割を担う専門職大学院の一層の充実に向けた検討を行うことを目的として実態調査を実施。

【調査内容】

  18年4月までに開設されているすべての専門職大学院(140専攻、回答率100パーセント)から、平成18年10月1日現在のデータ等について回答を得た。調査内容については以下のとおり。

  •  入学定員及び志願者の状況
  •  学生の属性
  •  教員組織及び教員の属性
  •  教育課程及び学習支援体制
  •  広報及び情報提供の状況
  •  施設等の状況

【調査スケジュール】

19年2月13日 専門職大学院を置く各国公私立大学長に対し照会
19年3月9日 調査回答の締切

2 調査結果の概要

1.入学定員及び志願者の推移

 法科大学院については、18年度から実施の新司法試験への対応として、16年4月に68専攻が同時に新設されたことに伴って志願者が集中した傾向があるが、その後も高い志願倍率で推移している。
 その他の分野の専門職大学院の志願者については、毎年急増している入学定員とともに増加しており、各年度とも志願者が入学定員を上回っている。

○ 入学定員及び志願者数

【単位(人)】
  15年度 16年度 17年度 18年度
法科大学院 入学定員 0 5,590 5,825 5,825
志願者 0 72,800 41,756 40,341
倍率 0 13.2 7.2 6.9
その他分野の専門職大学院 入学定員 654 1,564 2,776 3,797
志願者 1,269 2,551 4,919 5,505
倍率 1.9 1.6 1.8 1.5

2.在学生の概要

 専門職大学院の在学生は、その特性により、修士(博士前期)課程と比べ社会人の割合が高く幅広い年齢で構成されている。また、他大学や他分野からの入学者が多く多様な学生が在籍していることを表している。

○ 在学者の年齢構成

【単位(パーセント)】
  24歳以下 25〜29歳 30〜39歳 40〜49歳 50歳以上
法科大学院 30.7 37.6 24.8 5.8 1.1
ビジネス・MOT 7.0 17.6 51.3 19.3 4.8
会計 38.2 27.2 22.6 9.0 3.0
公共政策 51.7 25.1 16.6 4.4 2.2
その他 28.7 25.0 28.7 11.9 5.7
28.3 32.8 28.5 8.3 2.1
※ 修士(博士前期)課程における年齢別入学者数(平成18年度学校基本調査)
24歳以下 25〜29歳 30〜39歳 40〜49歳 50歳以上
79.5 10.0 6.3 2.7 1.5

○ 社会人学生の比率

【単位(人)】
  在学者数 うち社会人学生数かっこ比率)
法科大学院 14,152 4,431かっこ31.3パーセント)
ビジネス・MOT 2,926 2,618かっこ89.5パーセント)
会計 1,490 642かっこ43.1パーセント)
公共政策 609 188かっこ30.9パーセント)
その他 1,051 579かっこ55.1パーセント)
20,228 8,458かっこ41.8パーセント)
※ 修士(博士前期)課程の在学者(平成18年度学校基本調査)
在学者数 うち社会人学生数かっこ比率)
165,525 19,629かっこ11.9パーセント)

「社会人学生」とは、平成18年10月現在において職に就いている者、すなわち給料、賃金、報酬その他経常的な収入を目的とする仕事に就いている者(企業等を退職した者及び主婦を含む。)とする。

○ 入学時の学歴

【単位(パーセント)】
  学部卒業 修士課程修了 博士課程修了 その他
法科大学院 90.2 8.4 0.5 0.9
ビジネス・MOT 84.8 10.1 1.0 4.1
会計 93.3 4.8 0.1 1.8
公共政策 94.6 4.0 0.1 1.3
その他 82.5 6.6 0.8 10.1
89.4 8.2 0.5 1.9

【参考】「各大学院における「大学院教育振興施策要綱」に関する取組の調査」

【単位(パーセント)】
  専門職学位課程 修士・博士前期課程
他の大学等からの入学者の割合 75.7 30.0
他の分野からの入学者の割合 35.8 12.8

3.修了生の状況(法科大学院を除く)

 専門職大学院の修了生はまだ少数であり、現時点において調査結果等から一定の傾向を見出すことや評価を行うことは困難である。しかしながら専門職大学院制度の趣旨に則った教育研究活動の充実のためには、「修了生の状況」は非常に重要な要素であり、今後、継続的にフォローアップを行うことが不可欠である。

○ 修了生の進路先

【単位(パーセント)】
  社会人学生 その他の学生
企業等に勤務 72.9 70.5
転職または起業 12.6 3.1
博士課程への進学 1.6 8.9
不明・その他 12.9 17.3
【項目の内訳】
  • 1.「企業等に勤務」
    • 「社会人学生」
      入学時から在学中を通じて所属していた企業、官公庁に修了後も引き続き勤務する者。自営業を含む。
    • 「その他の学生」
      企業、官公庁等に就職した者。在学中に就職した者を含む。
  • 2.「転職または起業」
    • 「社会人学生」
      入学時から在学中にそれまで所属していた企業等を辞職し、在学中若しくは修了後に転職または起業を行った者。
    • 「その他の学生」
      起業をした者。在学中の起業を含む。
  • 3.「博士課程に進学」
    修了後博士課程に進学した者
  • 4.「その他」
    上記以外の者または不明の者

4.教員組織

 専門職大学院の専任教員は、専攻分野について

  1. 教育上又は研究上の業績を有する者
  2. 高度の技術・技能を有する者
  3. 特に優れた知識及び経験を有する者

 を専攻の種類規模に応じ置くものとされ、基準上必要とされる専任教員数の3割以上(法科大学院については2割以上)の実務家教員を必置としている。
 「専任教員の学位取得状況」においては、「博士」の学位を有する専任教員も33.9パーセントがである一方で、「学士・その他」についても27.1パーセントを占めており、多様な専任教員によって構成されていることが表されている。
 「専任教員の年間授業担当単位数」については、1年間の授業担当単位数が6単位未満の教員が31.8パーセントである一方で、12単位以上担当している教員も24.0パーセントとなっており、教員それぞれによって授業負担に相違がある。

○ 専任教員の学位取得状況

【単位(パーセント)】
  博士もしくはPh.D 修士 学士・その他
法科大学院 23.8 39.6 36.6
ビジネス・MOT 52.8 27.0 20.2
会計 31.2 31.9 36.9
公共政策 47.0 24.4 28.6
その他 43.8 28.1 28.1
33.9 39.0 27.1

○ 専任教員の年齢構成

【単位(パーセント)】
  39歳以下 40〜49歳 50〜59歳 60〜69歳 70歳以上
法科大学院 7.3 28.1 35.7 22.4 6.4
ビジネス・MOT 8.3 31.9 31.2 26.1 2.5
会計 10.6 31.3 25.1 25.1 7.9
公共政策 10.1 36.1 34.5 17.6 1.7
その他 20.4 22.8 31.2 19.6 6.0
9.0 28.9 33.6 22.8 5.7

○ 専任教員の年間授業担当単位数

【単位(パーセント)】
  6単位未満 6〜7単位 8〜9単位 10〜11単位 12単位以上
法科大学院 27.0 22.1 17.6 12.0 21.3
ビジネス・MOT 35.0 12.7 10.5 4.8 37.0
会計 33.9 19.8 15.9 3.7 26.4
公共政策 36.8 26.5 8.5 5.1 23.1
その他 49.4 6.0 12.0 13.7 18.9
31.8 18.9 15.3 10.0 24.0

5.ファカルティ・ディベロップメント

 ファカルティ・ディベロップメントについては、専門職大学院設置基準第11条において実施することが義務付けられており、本調査の回答では、すべての専門職大学院が実施していることが確認できた。
 なお、その実施方法について代表的な項目を掲げ調査したところ、「学生による授業評価」が最も多く95パーセントであり、続いて「教員相互の授業参観」60.7パーセントとなっている。

○ ファカルティ・ディベロップメントの取組状況(複数回答)

【単位:上段は専攻数、下段は割合(パーセント)】
  新任教員研修会 研修会(新任以外) 教員相互の授業参観 教員相互の授業評価 センターの設置 センター以外の組織設置 講演会の開催 学生による授業評価
法科大学院
山かっこ74>
14
下段18.9)
28
下段37.8)
56
下段75.7)
25
下段33.9)
5
下段6.8)
35
下段47.3)
34
下段45.9)
71
下段95.9)
ビジネス
山かっこ28>
16
下段57.1)
14
下段50.0)
13
下段46.4)
3
下段10.7)
4
下段14.3)
5
下段17.9)
7
下段25.0)
27
下段96.4)
会計
山かっこ14>
7
下段50.0)
6
下段42.9)
6
下段42.9)
5
下段35.7)
2
下段14.3)
5
下段35.7)
6
下段42.9)
13
下段92.8)
公共政策
山かっこ7>
2
下段28.6)
1
下段14.3)
2
下段28.6)
1
下段14.3)
1
下段14.3)
3
下段42.9)
2
下段28.6)
7
下段100)
その他
山かっこ17>
4
下段23.5)
5
下段29.4)
8
下段47.1)
3
下段17.6)
0
下段0.0)
4
下段17.6)
13
下段76.5)
15
下段88.2)

山かっこ140>
43
下段30.7)
54
下段38.6)
85
下段60.7)
37
下段26.4)
12
下段8.5)
52
下段37.1)
62
下段44.3)
133
下段95.0)
  •  分野名の項目における山かっこは設置されている専攻の数

6.教育課程

 専門職大学院の修了要件については、設置基準上、研究指導を受けること及び論文、研究成果は必須とせず、一定期間(原則として2年間)の在学と必要とする単位の修得のみを必須としているが、現状においては、設置基準の範囲内で、各専門職大学院がそれぞれ定めている。このため、同一分野の大学院間においても、「必要修得単位数」に大きな差が生じている。このことは「履修登録科目の上限設定」も同様である。
 なお、法科大学院については、修了要件について3年以上の在籍で93単位以上、履修科目登録の上限は1年間で36単位を標準とすることが専門職大学院設置基準上定められ、それに基づいて各法科大学院が修了要件や履修科目登録の上限を設定しているため掲載を省略した。

○ 修了に必要とする最低修得単位数の設定状況(法科大学院を除く)

【単位:専攻数】
  30〜39単位 40〜49単位 50〜59単位 60単位以上
ビジネス・MOT 8 16 2 2
会計 1 4 6 3
公共政策 0 7 0 0
その他 5 6 5 1
14 33 13 6

○ 1年間における履修科目登録の上限の設定状況(法科大学院を除く)

【単位:専攻数】
  25単位以下 25〜34単位 35〜39単位 40単位以上
ビジネス・MOT 6 12 2 3
会計 0 5 5 4
公共政策 0 2 3 2
その他 2 4 5 4
8 23 15 13
  • その他
    7専攻
  • (例)
    •  科目数で設定
    •  全ての学生が社会人の短期履修コース(1年制)のため未設定。

7.成績評価基準等の明示

 成績評価基準の明示については、専門職大学院設置基準第10条において義務付けられており、すべての専門職大学院において実施している。しかしながら、明示する内容、範囲、方法等は様々である。その中において「GPA制度を導入している専門職大学院(専攻数)」については以下のとおりであり、全体でも半数以下にとどまっている。

○ GPA制度を導入している専門職大学院

  法科 MBA・MOT 会計 公共政策 その他
GPA制度を導入している専
攻数わる設置専攻数
36わる74
(48.6)
9わる28
(32.1)
4わる14
(28.6)
0わる7
(0.0)
5わる17
(29.4)

8.学習支援体制等

 社会人の学生など、多様な学生が在籍している専門職大学院における、学生の学習支援体制の整備状況について調査した。その結果、社会人学生の比率が高い経営系の専攻分野については、平日の夜間及び土曜日などに授業を開講するなど「勤務時間に配慮した授業時間の設定」や都心等、立地条件のよいところで学習できるよう配慮した、「サテライト・遠隔教育システムの整備」などによって学生のニーズに応えている。
 また、学習相談への対応については、オフィスアワーの設定とともに、通信手段などを活用し、在学時間帯以外においても教員と学生が相談できる体制を整えるなどの工夫も見受けられる。

○ 社会人学生に対する配慮

【単位:専攻数】
  社会人のみを募集対象 社会人特別選抜の実施 勤務時間に配慮した授業時間の設定 サテライト・遠隔教育システムの整備
法科大学院山かっこ74> 1 13 9 5
ビジネス・MOT山かっこ28> 13 7 27 17
会計山かっこ14> 2 3 7 3
公共政策山かっこ7> 0 0 3 0
その他山かっこ17> 1 5 9 4
17 28 55 29
  •  分野名の項目における山かっこは設置されている専攻の数

○ 学習相談への対応(複数回答)

【単位:専攻数】
  オフィスアワーの設定 双方向性の通信手段(電子メールなど)を活用 TA等学習サポートを担うスタッフの配置
法科大学院山かっこ74> 69 56 37
ビジネス・MOT山かっこ28> 21 27 11
会計山かっこ14> 10 10 7
公共政策山かっこ7> 5 3 4
その他山かっこ17> 13 14 3
118 110 62
  •  分野名の項目における山かっこは設置されている専攻の数

9.学習環境等

 「自習室の整備状況」については、収容定員の80パーセント以上の座席数が整備されている専攻が全体の70パーセントを占めており、概ね学生が常時使用できる環境を整備している傾向が見受けられるが、一部で収容定員の30パーセント未満の専攻(全体では12パーセント)が見受けられた。
 「図書の整備状況」については、専門職大学院の立地条件などにも違いがあるが、10万冊以上の閲覧可能図書を有している専攻が多数(全体では72.8パーセント)を占める一方で、1万冊未満の整備にとどまっている専攻(全体では12.8パーセント)も見受けられた。

○ 自習室の整備状況(自習室の座席数わる収容定員イコール整備状況)

【単位:専攻数,かっこは割合】
  30パーセント未満 31〜50パーセント未満 50〜80パーセント未満 80パーセント以上
法科大学院山かっこ74> 0かっこ0.0) 0かっこ0.0) 1かっこ1.4) 73かっこ98.6)
ビジネス・MOT山かっこ28> 10かっこ35.7) 5かっこ17.9) 6かっこ21.4) 7かっこ25.0)
会計山かっこ14> 1かっこ7.1) 0かっこ0.0) 4かっこ28.6) 9かっこ64.3)
公共政策山かっこ7> 1かっこ14.3) 1かっこ14.3) 3かっこ42.8) 2かっこ28.6)
その他山かっこ17> 6かっこ35.3) 3かっこ17.6) 1かっこ5.9) 7かっこ41.2)
18かっこ12.9) 9かっこ6.4) 15かっこ10.7) 98かっこ70.0)
  •  分野名の項目における山かっこは設置されている専攻の数

○ 図書の整備状況(専門職大学院の学生が閲覧可能な図書の冊数)

【単位:専攻数かっこは割合】
  1万冊未満 5万冊未満 10万冊未満 10万冊以上
法科大学院山かっこ74> 7かっこ9.5) 8かっこ10.8) 2かっこ2.7) 57かっこ77.0)
ビジネス・MOT山かっこ28> 4かっこ14.3) 3かっこ10.7) 0かっこ0.0) 21かっこ75.0)
会計山かっこ14> 2かっこ14.3) 1かっこ7.1) 1かっこ7.1) 10かっこ71.4)
公共政策山かっこ7> 0かっこ0.0) 1かっこ14.3) 0かっこ0.0) 6かっこ85.7)
その他山かっこ17> 5かっこ29.4) 0かっこ0.0) 3かっこ17.7) 9かっこ52.9)
18かっこ12.8) 13かっこ9,3) 6かっこ4.3) 103かっこ73.6)
  •  分野名の項目における山かっこは設置されている専攻の数