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学士・修士・博士等の学位取得者の採用・処遇に関し,産業界は,それぞれの学位の種類に応じた取扱いがなされるよう,十分に配慮することが期待される。例えば,博士課程の質的向上に関する大学側の努力と博士号取得者に対する企業側の処遇・活用の努力とは,同時並行的になされなければ効果は期待できないと考えられる。
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これまでの我が国では,大学や民間のシンクタンク政策研究機構等を含めた社会全体の知的セクターの形成・充実に熱心であったとは言い難い。また,近年の経済情勢の影響で社会全体の知的蓄積は危機的状況にあるとの指摘すらある。今後は,知的セクターの人材層を厚く形成するとともに,様々な分野で知的活動を行う人材が流動し,我が国社会全体の知的基盤を構成していくことが重要である。産業界は,高等教育機関をはじめとして,人材(研究者,大学教員)の受入れと送り出しを他の様々な機関との間で一層活発に行うことが期待される。
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また,高等教育機関は人材を養成し社会へ送り出すものであることから,人材(学生)の送り出しと受入れ(社会人学生)という点でも社会と双方向の関係に立つ。すなわち,産・官・政といったセクターの人材戦略が高等教育機関の人材養成に与える影響は大きいものがあり,研究面にとどまらず人材養成面でも十分な産学官連携が求められる。特に,留学生教育に多くの資源を投じてきているこれまでの状況を踏まえれば,留学生を含めた人材の活用を社会全体で真剣に図っていく必要がある。
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人材の流動化を一層促進し我が国社会の活性化を図るためには,産業界が社会人の大学院等への進学・再入学を積極的に支援することが重要である。この点に関しては,修士課程等への企業派遣の促進の他ほかにも,雇用関係を一旦離れてから進学・再入学し学位を取得した者に対して十分な処遇を用意することも期待される。
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専門職学位課程との関係では,高度専門職業人による各種の職能団体が形成ないし活性化され,専門職学位課程と密接に連携を図ることが期待される。
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また,研究開発を自社内部で完結させる「自前主義」には効率性や競争力確保の上でも限界があることから,各企業の経営・研究開発戦略において,大学との共同研究や技術移転等の産学官連携を柱の一つとして明確に位置付けることが期待される。短期的な経済情勢や国の支援策のいかんによらない持続可能な産学官連携の体制の構築が求められている。
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産業界には,国内の大学を投資対象として一層積極的に評価・活用することが期待される。各企業の合理的な経済行動に影響を与えるためには,我が国の大学の研究水準や経営状態等に関する大学側からの適時適切な情報の提供が不可欠であるが,より効率的な投資行動のため,産業界側にも最新の正確な情報を能動的に収集する努力がおのずと求められよう。こうした動きは,我が国の大学にとっての競争的環境の醸成にも大いに資するものと思われる。
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このような産業界の取組を促進するため,様々な機会をとらえて高等教育機関側と産業界側の情報交換の場を設けることは極めて重要である。また,そうした場を通じて,産業界側の意欲的な取組を評価し顕彰すること等も有効と考えられる。
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