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別紙5

大学院評価に関する論点整理(案)

基本的な考え方、改革方策 検討の背景、補足など
1. 大学院評価の目的と在り方

【大学の質の保証を巡る環境】
 国は、学習者をはじめとする社会的な信頼を保持し、国際通用性・信頼性のある大学教育の質を確保するための新たな高等教育システムを確立していくことが重要な課題。

 このような観点から、これまで自己点検・評価や認証評価など、大学の質の保証に関する各般の制度を導入。今後は、事前評価(設置認可制度)と事後評価(認証評価など)の相互の適切な役割分担、連携の確保等を通じて、全体として大学の質を保証する大きな枠組みを確立していくことが重要。

 とりわけ、事後評価については、大学関係者を始めとして社会に早期に定着し、実効性ある評価へと展開して、活用を図ることが急務。
 将来的には、事後評価の制度については、
1 自己点検・評価
2 認証評価
3 評価団体の評価の適正さを担保する仕組み
の3つにより、適正な評価を行える仕組みを整えていくことが必要。

 このような考え方の中で、大学評価の一環として、大学院の特性に応じた評価を行なうことが重要。

【大学院における評価の重要性と在り方】
 大学院については、特に、課程制を基本とする制度の趣旨に沿った体系的な教育内容・方法の充実(大学院教育の実質化)を通じて、国際的にも魅力ある教育を展開し、学位の国際通用性・信頼性の確保や、国際競争力のある教育研究の場をつくっていくことが重要な課題。

 このことから、大学院に関しては、将来的には、自己点検・評価及び認証評価について、大学全体を組織体として評価する「機関別評価」に加え、大学院教育の水準や専門性に沿った「専門分野別評価」を導入していくことが必要

 その際、大学院の専門分野別評価は、各大学院が自主的・自律的に設定した課程の目的(各課程において養成しようとする人材、或いは修得させようとする知識・技術の体系)に即して体系的な教育内容・方法が構築、実践されているかどうかを評価・改善していく考え方が基本である。

 また、専門分野別評価の発展を図るに当たっては、様々な自発的展開が期待されるが、現状に照らして一般的には、まず、大学評価の取組の基本である自己点検・評価の導入、例えば、専攻単位を基本とする「専門分野別自己点検・評価」の導入とその定着を図りながら、専門分野別の第三者評価への基盤の確立等を図っていくことが適当。

 現在、例えば、日本技術者教育認定機構(JABEE)により工学系の学士課程を中心とした技術者教育を評価・認定する活動が行なわれているが、今後は、大学院の教育の課程を対象とした専門分野別第三者評価について、大学関係者や学協会等により、このような取組みを行う機関が形成されていくことを強く期待するとともに、既に制度的に導入されている専門職大学院を対象とした第三者評価を実施する機関の展開状況も踏まえつつ、国としても形成・導入に関する積極的支援方策を講じていくことが必要。



 我が国では、今後、高度で知的な素養のある人材層が広く社会を支える知識基盤社会へと移行。
 大学(特に、大学院)は、このような要請に応える優れた人材養成の中核としての確かな機能を担っていく必要。

 また、現在の大学制度は、事前規制型から事後チェック型への移行を図るという規制改革の観点から、多様な大学が設置可能に。
 一方、大学を取り巻く国際環境について見ると、国際的な質の保証に関する検討や試みが進行中。国境を越えた教育の提供に目が向けられるなど大きな変革期にある。


大学院評価に係る主な制度改正
 第三者評価(平成16年〜)
 認証評価機関による第三者評価(機関別評価)を義務化
 専門職大学院においては、専門分野別の第三者評価を別途義務化
 自己点検・評価
 大学(院)の自己点検・評価を努力義務化(平成3年〜)
 自己点検・評価の実施と結果の公表を義務化、学外者の検証を努力義務化(平成11年〜)


−大学院部会における審議経過の概要(平成16年8月)より−
  大学院は、「深い知的学識を涵養する高度な教育の課程を提供する場」として、我が国が国際競争力をもって世界をリードし、また、国際社会に貢献するための基盤となる高度な人材養成の中核を担うことが求められている。
 国際的に魅力ある大学院教育の展開に向けて、その機能が多様化・分化し発展していくために、目下、最も重要なことは、各大学院(専攻等)が、特に人材養成機能の面で、自ら課程の目的等について焦点を明確にすることである。
  国は、新たに設置する大学院のみならず、既に設置されている大学院を含め、各大学院(専攻等)の課程の目的が明確に示されるよう、大学院設置基準に関係規定を新たに置くことが適当である。
 各大学院(専攻等)の課程の目的等を組織的に明らかにしていくことは、大学院評価の基準(ベンチマーク)を明確化する役割を果たすことになると考えられ、当該措置との有機的連携を図る方向で、今後、実効性ある大学院評価の早期確立に関する検討を行っていくこととする。


−大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について(平成14年8月)より−
 大学の専門性を様々な分野ごとに評価する、いわゆる専門分野別第三者評価についても、・・・将来的には多様な分野で行われることが必要である。しかし、現在直ちに多くの分野で専門分野別第三者評価が実施できる状況にはないところであり、認証評価機関による評価の義務付けは、当面、・・・専門職大学院から開始することとする。

基本的な考え方、改革方策 検討の背景、補足など
2. 大学院評価の促進方策

 課程制を基本とした大学院制度の趣旨を踏まえつつ、大学院教育の質(学位の質)を確保する我が国に相応しい制度の構築を行い、同時に、これらの制度が大学関係者をはじめとして社会に早期に定着していくことを通じ、実効性あるものへとその適切な展開と活用を図っていくことが重要。

  大学院評価は、大学院の教育研究水準、組織運営の一層の向上・改善に努めることを目的とするものであり、各大学院におけるこれまでの教育研究活動が適正に評価され、これにより、各大学院の教育研究活動がより一層効果的・効率的な形で発展していけるようなものとする必要。もとより、評価自体が自己目的化することのないよう留意する必要があり、自己点検・評価、認証評価、適格認定(アクレディテーション)といった評価に係る諸制度については、今後、評価の実績等を踏まえながら、関係者の負担軽減も含めた観点から、これらの考え方を整理していくことも必要。

1 実効性ある大学院評価の展開に向けた関係機関の取組の推進

 国、大学、及び評価機関は、実効性ある大学院評価の展開に向けて、従来の取組に加えて、今後、主に以下のことに取り組むことが必要。

<国の取組>
1  大学院教育の質を確保していくため、以下の条件整備を実施していくこと
大学院の専門分野別自己点検・評価の制度的導入
大学関係者や学協会等により大学院の専門分野別第三者評価を行う機関の形成・導入に関する支援(インセンティブの付与など)
専門分野別評価を行う評価団体の適正さを担保する仕組みの検討
2  国公私立大学等を対象とした競争的な教育・研究資金について、それぞれの資金制度の目指す目的に応じ、その審査・評価に当たって大学院の専門分野別自己点検・評価などの結果を活用していくこと
3  大学関係者を始め広く国民を対象として、説明会等の機会を通じ、大学の質の保証に関する趣旨、重要性についてより積極的に説明責任を果たしていくこと

<大学院の取組>
1  自己点検・評価や第三者評価を自らの教育研究活動の改善サイクルの中に明確に位置づけ、また、評価を行う責任体制を明確にするとともに、必要な事務的体制を確立していくこと
2  評価に必要と考えられる情報(例えば、定員充足率、教育研究指導の状況、学位授与率、学生の経済的支援の状況、就職先など)を、各大学の自己点検・評価の項目等を踏まえ、活用しやすい形でシステム化していくこと

<評価機関の取組>
1  評価項目の不断の見直しを行うとともに、学位の国際的な質を確保する観点に立って評価を行うこと
2  必要に応じて評価結果に対する大学の改善状況をフォローアップしていくこと
3  社会に対して評価結果を分かり易くかつ積極的に公表していくこと

【大学院の自己点検・評価の主な課題】
 大学院の自己点検・評価については、
学内での自己点検・評価に関する体制が十分に組織されておらず評価にあたり必要な情報が十分に整備されていない
形式的な評価に陥り教育研究活動の改善に十分に結びついていない
外部への情報発信が足りない
などの課題があると指摘。

【大学院の第三者評価の課題】
(機関別第三者評価)
 大学院の第三者評価については、独立行政法人大学評価・学位授与機構において、平成12年度から3年間を試行的実施期間として、設置者の要請があった大学を対象に行ってきたが、
大学自身による現状と問題点の的確な把握と教育研究活動の改善に貢献できた
大学及び評価者における大学評価についての習熟度が向上した
自己点検・評価の質の向上に繋がったことなどの一定の効果があった
など一定の効果があったとしている一方、
評価結果を改善に結び付ける体制が不十分である
評価に必要な資料が十分に整備されていない
効率的な評価方法の開発が必要である
などの課題があると指摘。

(専門職大学院の専門分野別第三者評価)
 専門職大学院については、社会における専門職(プロフェッション)の発展をにらみつつ、大学に関し深い見識をもつ関係者が、関連する職能団体を含めた社会の意見を十分に取り入れられる形で大学の専門的評価を組織的にも発展させ、学位の質を確保することが肝要。今後、このような努力を通じて、我が国に相応しい専門的な第三者評価の早期確立が望まれているところ。

 
2 各大学院の専門分野別自己点検・評価の実施の推進
−課程制大学院制度の趣旨に即した大学院教育の質の保証の枠組みの確立−

  各大学院(専攻等)の課程の目的が明確に示されるよう、今後、大学院設置基準に関係規定を新たに置く方向を踏まえ、各大学院(専攻等)の課程の目的別に、例えば、専攻単位を基本として、各課程の養成しようとする人材、或いは修得させようとする知識・技術の体系などに必要な教育内容・方法等の点検・評価を実施する「専門分野別自己点検・評価」を導入する。(注1)

 その際、点検・評価の項目については、現在行われている機関別自己点検・評価において各大学が設定している項目などを踏まえつつ、専門分野の別、新設・既設の別、通学制・通信制の別等の実情に応じ、各大学院の判断により適切な項目が設定されることが基本。(注2)

 点検・評価結果については、各大学が積極的に社会に公表し、社会の評価を受けることなどを通して、各課程の教育内容・方法の継続的な見直し・改善を図り、自らの教育研究水準の一層の向上に努めていくことが必要。
 さらに、これらの効果をより一層確かなものとするために、当該点検・評価結果について、各大学の判断により、学外者による検証を行っていくことが望まれる。

 大学院の専門分野別自己点検・評価は、大学全体の教育研究活動の状況とも密接な関連を持つことから、その実施時期については、大学全体を組織体として点検・評価する機関別自己点検・評価の前段階として実施し、効率的でより充実した点検・評価とすることが考えられる。
【再掲】−大学院部会における審議経過の概要(平成16年8月)より−
  大学院は、「深い知的学識を涵養する高度な教育の課程を提供する場」として、我が国が国際競争力をもって世界をリードし、また、国際社会に貢献するための基盤となる高度な人材養成の中核を担うことが求められている。
 国際的に魅力ある大学院教育の展開に向けて、その機能が多様化・分化し発展していくために、目下、最も重要なことは、各大学院(専攻等)が、特に人材養成機能の面で、自ら課程の目的等について焦点を明確にすることである。
  国は、新たに設置する大学院のみならず、既に設置されている大学院を含め、各大学院(専攻等)の課程の目的が明確に示されるよう、大学院設置基準に関係規定を新たに置くことが適当である。
 各大学院(専攻等)の課程の目的等を組織的に明らかにしていくことは、大学院評価の基準(ベンチマーク)を明確化する役割を果たすことになると考えられ、当該措置との有機的連携を図る方向で、今後、実効性ある大学院評価の早期確立に関する検討を行っていくこととする。


(注1)
具体的には、
1  各大学院(専攻等)が課程の目的(各課程において養成しようとする人材、或いは修得させようとする知識・技術の体系)を明確に示す
2  これに即した体系的な教育内容・方法を構築する
3  必要な教員組織、施設・設備などを整備し、教育・研究活動を実践する
4  これらの教育研究活動状況を自ら点検・評価する
5  自己点検・評価の結果を受けて、教育研究水準の向上に向けた改善を図っていく
といった大学院教育の質の向上に関する改善サイクルを確立

3 大学院教育の質に関する積極的かつ有用な情報の提供の促進

 高校生や社会人を含め大学院への進路希望者や在学生、修了者を雇用する企業、共同研究を行う企業などの大学院の直接的利用者が求めている大学院教育の質に関する情報を、自己点検・評価結果などを活用し、国際的にもわかり易く公表していくことが重要。

 このため、各大学院(専攻等)の専門分野別自己点検・評価などの結果について、設置認可の際の指摘課題、人材養成の目標(課程の目的)、教育内容・方法、教員の陣容、学位の種類、修了者の就職状況、学生への経済的支援の内容などの多様な項目のうち、それぞれ利用者の視点をも踏まえつつ、専攻分野別に集約・整理し、大学院教育の質に関する情報として、公表していく取組が考えられる。
 大学院評価は、大学院の教育研究活動の状況や成果を分かり易く示し、公共的な機関としての設置・運営の状況について広く国民の理解と支持が得られるよう説明していく機能や、魅力ある大学院教育の事例を広く社会に情報提供し、我が国の大学院教育全体の改善に繋げていく機能をも担っている。

−大学院部会における審議経過の概要(平成16年8月)より−
 21世紀の国際社会は、社会・経済・文化のグローバル化と変化の激しさを増す国際的な競争社会であり、現在、大学においても海外分校の設置、外国の教育機関との連携による教育プログラムの開発・実施、eラーニング等による国境を越えた教育の提供など、国際的な大学間の競争と協働が進展している。
 なお、国境を越えて展開される教育の提供によるアクセスの拡大を推進するに当たっては、まずは、我が国の学位の国際通用性の確保に十分留意することが必要であるとともに、また、我が国を含め諸外国の大学制度、並びに各大学の適格認定を含めた評価、教育内容、及び学位の通用性などについて判断できる国際的な大学の質保証に関する情報ネットワークの構築が急務である。



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