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昭和50(1975)年度に始まり平成12(2000)年度まで続いた高等教育計画は、我が国の経済的発展を支える人材養成のため、高等教育で学ぶ若年人口の量的拡大や、第2次ベビーブームのような18歳人口の急増期における受験競争の緩和等を目的として、政策的に実施されてきた。 |
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その後の、18歳人口が120万人規模まで減少していく過程では、計画的な整備目標を設定するのではなく高等教育の将来構想を示す中で、全体規模について試算を行い、平成21(2009)年度に大学・短大の収容力が100%に達することを示して、大学・短大が社会や学生の需要に対応したカリキュラム編成や指導方法の改善充実を行う必要性を指摘した。 |
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大学・学部等の設置審査に当たっては、特定の分野を除いて抑制的に対応する方針が採られてきたが、平成14(2002)年8月の中央教育審議会答申「大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について」では、大学が社会のニーズや学問の発展に柔軟に対応でき、また、大学間の自由な競争を促進するため、以後、抑制方針を(医師、歯科医師、獣医師、教員、船舶職員の5分野を除き)基本的には撤廃することとされた。 |
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米国の社会学者マーチン・トロウは、高等教育への進学率が15%を超えると高等教育はエリート段階からマス段階へ移行するとし、さらに、進学率が50%を超える高等教育をユニバーサル段階と呼んでいる。 |
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我が国の大学・短大の18歳人口を基準とした進学率は、1960年代前半に15%を超えた後急激に上昇して昭和50(1975)年度には38.4%にまで達し、高等教育のマス化が急速に進行した。その後、進学率は一時的に安定した後、平成に入ってから再び上昇して平成11(1999)年度に約49%に達した後、ここ数年はほぼ一定となっているた。大学・短大の進学率が一定となっているた要因は必ずしも単純ではないが、長期にわたる経済の停滞や専門学校への進学率等が影響を与えている可能性があると考えられる。 |
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専門学校を含めた進学率は、昭和61(1986)年度からほぼ一貫して増加し続けており、平成156(20034)年度には72.974.5%に達している。この意味では、我が国の高等教育は、同年齢の若年人口の過半数が高等教育を受けるというユニバーサル段階に既に突入しており、これにふさわしいものへと変革を迫られていると言うことができる。 |
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こうした様々な変化を背景に、量的側面のみからすると、高等教育は万人に開かれたものとなり、誰もがいつでも自らの選択により学ぶことのできる大多数の者が現に学ぶ高等教育の整備 「ユニバーサル・アクセスアテンダンス」がは既に実現しつつあると言うことができる。 |
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しかし、このような「ユニバーサル・アクセス」段階の高等教育が真に内実を伴ったものとなるためには、単に量だけでなく質的側面においても、多様な学習者の需要に対して高等教育全体で適切に学習機会を提供するとともに、学生支援の充実等により学習環境を整えていくこと、即ち、誰もがいつでも自らの選択により適切に学べる機会が整備された高等教育 「ユニバーサル・アクセス」の実現が必重要である。 |
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今後の我が国においては、個人が自己啓発を図り、より一層豊かで潤いのある人生を送ることを目指して、人々の多様な生涯学習需要は増大する傾向にあることから、「ユニバーサル・アクセス」が実現することにより、社会人が高等教育機関で学ぶ機会はますます増大していくと考えられ、この意味でも「ユニバーサル・アクセス」の実現が求められている。 |
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このことはまた、「学(校)歴偏重社会」が次第に過去のものとなっていくであろうことをも意味する。
かつて、我が国社会は「18歳のある1日に、どのような成績をとるかによって、彼の残りの人生は決まってしまう」ような学歴偏重の社会であるとOECD教育調査団(昭和45(1970)年)によって分析されたことがあった。今日では、実社会において、人生の比較的早い段階での学歴・学校歴のみでその人の将来の社会的な処遇が決定されるといったことがないことは明らかと言ってよい。しかし、依然として人々の意識の上では学歴偏重の考え方も根強く、意識と現実との乖離を解消する努力がなお必要である。 |
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職業生活の上でも、産業構造の変化や雇用の急速な流動化を背景とした昨今の社会人の大学院での学習需要の高まりを見ると、職場での肩書きや専門的資格のみに依拠するのでなく、自己を知的にリフレッシュして付加価値を高めるという意識が急速に社会全体に根づき始めたようにも見える。今後は、社会人が必要に応じて高等教育機関で学習を行い、その成果をもって更に活躍する、高等教育機関と実社会との「往復型社会」への転換が加速するものと予測される。 |
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また、男女共同参画や少子高齢化の一層の進展等に伴い、女性や高齢者が就労する機会も一層増大することが予想される。高等教育機関は、人々の幅広い知的探求心や学習需要に応えて、必要なときにいつでも学習しやすい環境と多様なメニューを提供することがますます求められる。
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