ここからサイトの主なメニューです
戻る


中華人民共和国高等教育法の概要

中華人民共和国高等教育法
(1998年8月29日 第9期全国人民代表大会常務委員会第4回会議可決)
(1) 法整備の目的
  80年代からの教育法体系整備の一環として可決(翌年1月1日施行)。それ以前に,学位条例(1980年),義務教育法(1986年),教師法(1993年),教育法(教育基本法に相当,1995年),職業教育法(1996年)。

(2) 法の構成
  8章69条から成り,基本的制度,高等教育機関の設置管理,組織・活動,教員・学生の処遇,教育費などに関する原則を示す。80年代以降の高等教育改革による現在の制度を法律として改めて規定。

(3) 主な内容
「法人格」の付与と自主権の拡大
「高等教育機関は設置認可の日から法人格を有する(第30条)」と規定し,国公立及び私立を問わず,法人格を付与するとしている。従来も政府から独立した「非営利事業体」であったが,改めて法人格を明確にし,その運営自主権を保障した。
高等教育機関の権限として,専攻の設置・変更,教育課程の編成,入学定員の設定,内部機構の設置・定員,経費・財産の管理などが認められる(第32〜38条)(従来通り)。
教員採用において,1980年代後半より採用されていた契約任期制を実施する(第48条)と明記された。
国公立高等教育機関における党指導の学内管理体制
  「共産党委員会の指導下による学長責任制」により,学内の重要案件は党委員会で決定することを明記(第39条)。80年代の一時期学長をトップとする管理体制が試行されたが,89年の「6・4事件」いわゆる天安門事件を機に党指導が復活し今回もこの体制が確認された。
多様な財源による教育費の調達
  公財政を主としながら多様な財源で高等教育費を補う体制の確立を規定(第60条)し,多様な財源として,授業料,企業運営,研究成果の移転による収益等を挙げている(第54,63,64条)。
高等教育機関に対する外部評価
  教育の質について国家が定める水準に達することの保証を義務づける(第31条)とともに,高等教育機関の運営水準・教育の質について教育行政部門の監督と評価を受ける(第39条)ことを定めている。


「高等教育法」の主な規定(抜粋)<中国>

  1998年8月29日に第9期全国人民代表大会常務委員会第4回会議で可決された「中華人民共和国高等教育法」は,以下の8章,69条から成る。

第一章   総則 (1〜14条)
第二章 高等教育の基本制度 (15〜23条)
第三章 高等教育機関の設置 (24〜29条)
第四章 高等教育機関の組織及び活動 (30〜44条)
第五章 高等教育機関の教員及びその他の職員   (45〜52条)
第六章 高等教育機関の学生 (53〜59条)
第七章 高等教育への投資及び条件整備 (60〜65条)
第八章 附則 (66〜69条)

  このうち,主な規定は以下の通り。


(高等教育の基本制度)
  卒業資格につながる高等教育(学歴教育)は,専科教育,本科教育及び大学院教育からなる。(第16条)
  訳注:卒業資格につながらない高等教育(非学歴教育)は,卒業資格が公的に認められず,独学試験などによって別途公的資格を取得しなければならない。
  専科教育の基本的な修業年限は2ないし3年,本科教育の基本的な修業年限は4ないし5年,大学院碩士教育の基本的な修業年限は2ないし3年,大学院博士教育の基本的な修業年限は3ないし4年とする。非全日制の卒業資格につながる高等教育の修業年限は,これより適宜延長しなければならない。(第17条)
  大学,独立設置の学院(訳注:設置専攻が少ない,いわば単科大学)は,主として本科以上の教育を行う。高等専科学校は,専科教育を行う。科学研究機関は,国務院教育行政部門(教育部)の承認により,大学院教育を行うことができる。(第18条)
  国家(訳注:ここでいう「国家」は中央政府のほか地方政府を含む。以下同)は高等教育独学試験制度を実施し,試験に合格した者に対し,相当する卒業証書又はその他の学業証書を授与する。(第23条)
  訳注:高等教育独学試験は,大学等に入学していない在職者を主たる対象として,省・自治区・直轄市単位で実施される。

(高等教育機関の設置認可)
  高等教育機関の設置は,国務院教育行政部門(教育部)が認可する。専科教育を行う高等教育機関については,国務院が権限を授与する省・自治区・直轄市人民政府が認可することができる。(29条)

(法人格の付与)
  高等教育機関は,設置認可を受けた日から法人資格を取得する。高等教育機関の学長は,高等教育機関の法定代表人となる。高等教育機関は,民事活動において,法により民事的権利及び民事的責任を有する。(第30条)

(高等教育機関の権限)
  高等教育機関は,人材の養成を中心として,教育,科学研究及び社会サービス(訳注:政府機関や企業などのために,受託研究,研究成果の移転,技術相談,人材養成・訓練などを有償で行うこと)を展開し,教育の質が国家が定める水準を達成するよう保証しなければならない。(第31条)
  高等教育機関は,社会の必要,教育条件及び国家が審査認定した定員規模に基づいて,学生募集案を作成し,自主的に学科・専攻の定員配分を調整する。(第32条)
  高等教育機関は,法により,自主的に専攻領域,専攻を設置,調整する。(第33条)
  高等教育機関は,教育の必要に基づいて,自主的に,教育課程の編成,教材の選定・編集,教育活動の組織・実践を行う。(第34条)
  高等教育機関は,自らの条件に基づいて,科学研究,技術開発及び社会サービスを展開する。国家は,高等教育機関が企業・非営利事業体,社会団体及びその他の社会組織と,科学研究,技術開発及び普及などの面で多様な形式の協力を進めることを奨励する。(第35条)
  高等教育機関は,国家の関係規定に基づいて,自主的に,外国の高等教育機関との間で科学技術及び文化の交流・協力を展開する。(第36条)
  高等教育機関は,実際の必要及び簡素化,効率化の原則に基づいて,自主的に,教育,科学研究及び管理運営の学内組織機構の設置,人員配置を確定する。(第37条)
  高等教育機関は,設置者が提供する財産,公財政支出による資金,寄贈財産について,法により,自主的に管理及び使用する。(第38条)

(党指導の学内管理体制)
  国家が設置する高等教育機関は,中国共産党高等教育機関基層委員会が指導する学長責任制を実施する。中国共産党高等教育機関基層委員会は,中国共産党規約及び関係規定に基づき,高等教育機関の活動を統一的に指導し,学長が独自に職権を責任持って執行するのを支援する。(第39条)

(高等教育機関に対する外部評価)
  高等教育機関の運営水準,教育の質について,教育行政部門の監督及び教育行政部門が組織する評価を受ける。(第44条)

(教員の契約任期制)
  高等教育機関においては教員の契約任期制を実施する。就任要件を備えることが評定された教員は,高等教育機関が職名に対応する職責,条件及び任期に従って契約により任用する。高等教育機関教員の契約任用にあたっては,双方が平等の立場で主体的に行うという原則に従い,高等教育機関の学長と任用される教員との間で任用契約書を交わさなければならない。(第48条)
  訳注:契約任期制は,1980年代後半に採用。教員は,通常国家計画により大学又は大学院卒業者が高等教育機関に配属され,この配属された教員に対し,改めて任用契約を結ぶ形をとる。最近は,就職自由化に伴い,高等教育機関が直接教員を採用する方法もとられてる。

(学生の授業料)
  高等教育機関の学生は,国家の規定に従って授業料を納付しなければならない。家庭が経済的に困難な学生は,授業料の補助金又は授業料の減免を申請することができる。(第54条)
  訳注:授業料は1989年から徴収。授業料の額は各機関が所在地政府機関の承認を得て独自に設定。

(高等教育費)
  国家は,公財政支出を主としながら多様な財源で高等教育費を補う体制を確立し,高等教育事業の発展が経済,社会発展の水準と対応するようにする。国家は,企業・非営利事業体,社会団体及びその他の社会組織並びに個人が高等教育に投資することを奨励する。(第60条)
  国務院教育行政部門(教育部)は,国務院のその他の関係行政部門と共同で,在学者1人当たり年間経費に基づき,高等教育機関年間支出基準及びその財源手当の原則を定める。省・自治区・直轄市人民政府教育行政部門は,関係部門と共同で,当該行政区域内の高等教育機関について年間経費の支出基準及びその財源手当の方法を定め,設置者及び高等教育機関の経費支出の基本的な根拠とする。(第62条)
  高等教育機関の企業運営,知識移転に伴う権利及びその他の科学技術成果による収益は,高等教育機関の運営に使用する。(第63条)
  高等教育機関が徴収する授業料は国家の関係規定に基づいて管理,使用し,その他のいかなる組織・個人もこれを流用してはならない。(第64条)


ページの先頭へ