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大学卒業時点の無業率が約20パーセントで推移しているが,これから先の見通しはどうか。求人数は微増の傾向であるが,無業率に影響はあるのか。
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今年のように求人数が多ければ無業率は下がるが,以前の水準までは下がらないだろう。近年の無業率の上昇は学生の行動の変化,つまり迷いや戸惑いによるところが大きいのではないかと考えている。専門教育の中で例えば将来について考えるような教育が必要ではないか。
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フリーター,ニートの問題については,高校生の段階から学生に対して労働観・勤労観を植え付けるような教育をすべきではないか。労働界では,高校と協力して寄附講座をつくり,労働観・勤労観を植え付けるための行動を行っている。
また,「高校生のときになりたい職業について考えておけばよかった」という声を聞くが,その点について,補足するデータ等があれば示して欲しい。
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データに基づくものではないが,「高校生の時にやっておけばよかった」という意見は確かに多かった。今後,調査していきたい。
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ニート・フリーターは昔から存在していたが,バブル経済が崩壊し数が増加し目立つようになったため問題視されるようになった。これだけニート・フリーターが増加したのは,企業の採用行動による部分が大きいのではないか。企業が採用数を増やせば今の状況は改善するのではないか。
また,非正社員から正社員に転じる割合は今後どれくら伸びると考えているか。
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「若者の自立・挑戦のためのアクションプラン」が策定され,正規雇用の拡大に向けて取り組んでいるが,非正社員が正社員となるケースは減少し,格差が拡大しつつある。これは良くない状況である。これまでの政策では不十分であり,もっと強力な政策が必要である。
企業が雇用を拡大すれば,無業者数やその比率は減少すると思われるが,いわゆる大学全入時代を迎え,日本の学生に対してどれだけ企業側が門戸を広げるべきかという問題は残る。企業側には,必ずしも日本の大学卒業者にこだわる必要はないのではないかという意見もある。楽観できる状況ではない。
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就職の問題には,いくつかの段階があると考えている。まず,高校生の段階で大学での専門分野を選択するという段階がある。大学は高校生の進路選択が円滑になるよう協力すべきではないか。分野ごとの状況をみると,理系に進学した学生は比較的意識が高い。
現在,就職活動が前倒しになり,3年次の頃から活動しなければならない。インターネット等の情報に踊らされているというよりは,そうせざるを得ないという状況になっている。おもしろさや興味といったものが固まる前に動かざるを得ない状況になっている。大学院はもっと状況がひどく,修士課程の1年次から活動を始めなければならない。
学生の行動を見ていると,就職活動の中で何度も挫折することで自分に対する自信を失っているように見える。また,これだけニート・フリーターの数が増加すると,学生も親も恥ずかしいという気持ちが薄らいでしまっている。高校とも連携してこの問題の解決にあたるべきではないか。
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就職率は,1960年代に90パーセント程度であったものが,学生数の急増により,1970年代には60パーセント程度に落ちている。このとき見られた傾向として,それまで大学生が就職しなかった業種に大学生が就職するようになり,そのことがきっかけで就職率が再び伸びた。1990年代の傾向としては求人数が減少する一方で進学率が上昇し大学卒業者が増加しているが,大学卒業者が就職したいと思う企業の求人が増えていないということである。1960年代に起こった変化とは別の変化が起きなければ,ミスマッチは解消されないのではないか。
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大卒求人倍率と大卒無業者については,男女の違いもあるのではないか。全体を通じて言えることだが,男女の違いに着目した議論が必要ではないか。大学も企業もその点を考慮すべきではないか。平成19(2007)年に団塊の世代が大量退職が始まるが,その際,女性や高齢者をどのように活用するかが議論されており,そのことにも注意を払う必要がある。
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男女別の分析は確かに必要であると考える。
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就職の問題について,学生支援という枠組みで考えた場合,大学は何ができるのか。インターンシップやキャリア教育等,大学は教育面でできることは行っているのではないか。大学のカリキュラムの中で教養教育の比重が減少し職業教育へと重点が移りつつあるが,一方で,企業は基礎的な教育を施して欲しいと要望している。就職率を上げるだけではなく,大学が基礎的なことをすべきなのかもしれない。企業の要望に応えるために大学が学生に何を教えるのかについてはカリキュラムの問題にもつながる。ひいては「大学とは何か」という議論にもつながるのではないか。
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学生の需給の問題の他に労働法制の問題もある。1990年代に労働者の仕事観が多様化し,労働基準法等が個性化・多様化・柔軟化の方向に改正された。また,産業構造が変化し,サービス業等で求人数が増加した。これらの業界では有効求人倍率が1.5倍とも言われているが,実際には非正社員数の伸びが大きいためである。
アメリカでは,1990年代に新たに80万もの企業が興り雇用の受け皿となっているが,日本ではそのような受け皿がない。また,日本では学生に対して起業するための教育を行っておらず,起業できるような教員も多くない。大学教育は将来の職場づくりについても検討すべきではないか。
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