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VI   大学共同利用機関

1. 検討の視点
     全国の国公私立大学等の関係研究者が集まって、大規模な施設設備の共同利用や国際協力事業等の実施等を行い、効果的な共同研究を進める大学共同利用機関は、研究者の自由な発想を源泉とする学術研究を推進する組織として、国立学校の一つとして位置付けられている。このため、大学共同利用機関の法人化を検討するに当たっては、以下の諸点を除き、原則として国立大学と共通した制度設計を行うことが適当である。
   なお、大学共同利用機関についての制度設計の検討に当たっては、次の視点に立って検討を進める必要がある。
   
  視点1:
学術研究をさらに発展させる観点からの制度設計
       大学共同利用機関は、それぞれの学術分野において我が国を代表する中核的研究機関であり、その研究成果は国際的にも高く評価されている。したがって、大学共同利用機関の法人化に当たっては、我が国の学術研究が高い国際的競争力をもち得るよう、学術研究をさらに発展させる積極的観点から、大学及び他の研究機関(独立行政法人・特殊法人等)との関係を含め、制度を検討する必要がある。
     
  視点2:
大学や研究者コミュニティに開かれた運営システムの確保
       大学共同利用機関は、全国の国公私立大学や研究者コミュニティー(国内外の関連分野の研究者群)の研究者が集まり、共同研究を進めるところにその特徴があり、制度創設の当初から、機関外部に開かれた運営を行ってきたが、法人化後の大学共同利用機関の運営システムについても、大学や研究者コミュニティをはじめ、さらに広く社会に開かれた柔軟な運営体制を確保できるよう、制度を検討する必要がある。
       
2. 制度設計の方針(国立大学の場合と特に異なる点)
  (1) 組織業務
    (法人の単位)
       大学共同利用機関は、個々の機関によって設置目的が異なることから、各大学共同利用機関ごとに法人格を付与することを原則とする。
    (法人の名称)
       法人の一般的な名称については、大学共同利用機関がいくつかの点で大学と異なる制度設計上の特殊性を有することになることに考慮し、「大学共同利用機関法人(仮称)」とする。
   個別の法人の名称は、従来までの名称、活動実績、経緯等を考慮する。
    (根拠法)
       大学共同利用機関法人(仮称)については、国立大学法人(仮称)の根拠法と同一の法律に、各大学共同利用機関に共通して必要な事項と、各大学共同利用機関の名称及び目的など、個別の大学共同利用機関に関する事項とを併せて規定することを中心に、法技術的な観点から、その他の方法も含めてさらに検討する。
    (役員)
       大学共同利用機関法人(仮称)の役員の構成については、機関の長(法人の長)、副所長(機構においては所属する研究所の長)等(場合により複数名)、監事(2名)とする。
          大学共同利用機関法人(仮称)の役員の名称については、現在、大学共同利用機関組織運営規則又は訓令によって規定され定着している名称を踏まえ、それぞれの機関に応じ、機構長、所長、館長又は台長並びに副所長等とする。
       法人の長は、法人化された大学共同利用機関の包括的な最終責任者として、法人を代表する。
    (役員以外の運営組織)
       大学共同利用機関は、その共同利用という特性から、外部に開かれた運営を行ってきたが、法人化後においてもさらに機関外部に開かれた運営体制を確立するため、外部委員のみで構成する評議員会、委員の半数程度が外部委員からなる運営協議員会を設ける。(別紙2
    (研究組織)
       大学共同利用機関の研究組織については、各機関の予算の範囲内で随時に設置改廃を行うこととする。
   なお、そのうち、機構の研究所については、機構の研究組織の基礎・基本であり、いわば機構の業務の基本的な内容や範囲を示すものであって明確に定める必要があることから、各機構ごとに法令で規定する。
    (法人の目的)
       大学共同利用機関においては、個々の機関によってそれぞれ設置目的が異なるため、大学共同利用機関に共通する一般的な目的のほか、個別の機関の目的を法律に規定する。
     
  (2) 目標評価
       中期目標・中期計画の内容については、大学と共通のものに加え、共同利用に関する事項を記載する。
       国立大学評価委員会(仮称)は、大学共同利用機関も評価の対象とするが、同委員会の構成に関しては、大学共同利用機関においては、同一研究分野のコミュニティに開かれた運営を行っているため、現在又は過去に当該機関に関わった者を広く参加させないとした場合、その研究分野に適切な知識を有する評価者を確保できない恐れがあることに留意する必要がある。
     
  (3) 人事制度
       法人の長である機関の長は、全員機関外の者からなる評議員会が推薦した者について、文部科学大臣が選考、任命する手続とする。
       法人の長である機関の長の任期は、当該機関の長の申し出を斟酌しつつ、機関ごとに文部科学大臣が定めることとするが、国立大学における検討の状況をも考慮する。その他の役員の任期も同様とする。
     
  (4) 財務会計制度
    (運営費交付金の算出方法)
       大学共同利用機関は、個々の機関によって設置目的や事業内容が異なることから、運営費交付金の算出に当たって、国立大学のように学生数等の客観的な指標に基づく、各機関に共通の算定方式による標準的な収入・支出を算出することは困難であるため、大学共同利用機関にふさわしい運営費交付金の算出方法を検討する。
     
  (5) その他
    (総合研究大学院大学との関係について)
       総合研究大学院大学においては、多くの大学共同利用機関が連携して研究科を構成し、大学共同利用機関の高度な研究環境を利用した大学院教育が実施されているが、法人化後も高度な研究人材や専門家の養成が円滑に行われるようにする観点から、適切な協力関係が保たれるよう配慮する必要がある。
    (機構の形態をとる大学共同利用機関について)
       大学共同利用機関の中には、現在、複数の研究所で機構を形成している機関があるが、その内部の研究所の組織運営、人事等の制度設計の在り方について、一定の自律性を確保する観点から今後さらに検討する。
       法人化に際し、我が国の学術の一層の発展を図るという観点から、さらに多数の機関が機構的な連合組織を形成することも考えられるため、法人の単位等を含め多様な制度設計の可能性について今後検討を進めていく。
       

(別紙2)
       
       評議員会
         大学共同利用機関を利用する立場にある大学の学長と有識者とで構成する(全員機関外の者)。
         機関の事業計画その他の管理運営に関する重要事項について機関の長に助言する。
       運営協議員会
         機関の職員、機関の目的である研究分野と同一分野の研究に従事する大学教員等で構成する(機関外の者が半数程度を占める)。
         機関の運営に関する重要事項で機関の長が必要と認めるものについて、機関の長の諮問に応じる。
       機関の長は、機関の管理運営に関する重要事項についての評議員会の助言を踏まえ、最終的な意思決定を行う。
  図4

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