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V   財務会計制度

1. 検討の視点
(法人化を契機に、財務会計の在り方を通じて国立大学がどのように変わるのか、どのような大学になるのか、という視点の整理)
  視点1:
教育研究等の第三者評価の結果等に基づく資源配分
    (具体的には)
       運営費交付金等の資源配分に当たり、競争的環境の醸成及び各大学の個性ある発展を促進する観点から、各大学の教育研究等の第三者評価の結果を適切に反映   など
       
  視点2:
各大学独自の方針・工夫が活かせる財務システムの弾力化
    (具体的には)
       運営費交付金は、国の予算で使途を特定せず各大学の判断で弾力的に執行(年度間の繰越しも可能)
       一定の学生納付金については、国が示す範囲内で各大学の方針・工夫により具体的な額を設定
       各大学の自己努力による剰余金は、あらかじめ中期計画で認められた使途に充当
       施設整備は、国が措置する施設費のほか、長期借入金や土地の処分収入その他の自己収入による整備も実施
       寄附金等の自己収入は、原則として運営費交付金とは別に経理にしてインセンティブを付与
       地方公共団体からの寄附金等の受入を、一定の要件の下に容認   など
       
  視点3:
財務面における説明責任の遂行と社会的信頼性の確保
    (具体的には)
       運営費交付金の算定・配分の基準や方法を予め大学及び国民に対して公表
       各大学の毎年度の財務内容を広く公表・公開
       大学の特性を踏まえた会計基準の検討   など
       
2. 制度設計の方針
  (1) 中期計画と予算
          国は、各年度の資金交付に当たっては、原則として中期計画に記載された事業等の実施を前提とするものの、当初予見困難であった状況への対応が求められることなども考えられ、必要に応じ中期計画の変更を行いつつ、各年度の財政状況、社会状況等を総合的に勘案し弾力的・機動的に措置するものとする。
       予算措置の手法は、基本的には中期計画において計画期間中の予算額確定のためのルールを定め、各年度の予算編成においてルールの具体的適用を図るいわゆる「ルール型」とするが、事前のルールにしたがった算定にはなじまない経費も考えられるため、そのようなケースにも適切に対応し得る手法とする。
     
  (2) 運営費交付金
    (運営費交付金の算出方法)
       各大学に対する運営費交付金は、予算配分における透明性の確保や各大学の自主性・自律性の向上の観点、及び、特定の事業等の実施に適切に対応する観点から、次の1及び2の額を加えたものとする。
      1    学生数等客観的な指標に基づく各大学に共通の算定方式により算出された標準的な収入・支出額の収支差額(=標準運営費交付金)。
      2    客観的な指標によることが困難な特定の事業等に対する所要額(=特定運営費交付金)
       運営費交付金には、競争的環境の醸成及び各大学の個性ある発展を促進する観点から、中期計画終了後の各大学に対する第三者評価の結果等を適切に反映させるものとし、その具体的方法や手続についてさらに検討する。
   また、各大学・学部等の理念・目標・特色・条件等を踏まえた弾力的な運営費交付金の算定方法の可能性を考慮する。
   なお、運営費交付金の算定に用いる第三者評価の項目については、適切なものとなるよう慎重に検討するとともに、各大学の自主性・自律性が結果として大きく制約されることのないよう配慮する。
   また、運営費交付金等の算定の基準や方法を予め大学及び国民に対して明確にする。
    (自己収入の取り扱い)
       自己収入を、通常の業務遂行に伴い収入が必然的に見込めるもの(学生納付金、附属病院収入等)とそれ以外のもの(寄附金等)に区分した上で、前者については、運営費交付金の算出に用いることとし、後者については、原則として運営費交付金とは別に経理し、運営費交付金の算出に反映させない。
   なお、自己収入の増加に向けてのインセンティブを付与する観点から、前者についても、例えば、附属病院において標準収入を上回った収入があるなど、自己努力により剰余金を生じた場合には、あらかじめ中期計画において認められた用途に充てることができるものとする。
    (学生納付金の取り扱い)
       学生納付金については、教育の機会均等、優秀な人材の養成とあわせて、大学の自主性・自律性の向上等にも配慮する必要がある。したがって、運営費交付金算定への反映のさせ方に配慮しつつ、各大学共通の標準的な額を定めた上で、一定の納付金の額について、国がその範囲を示し、各大学がその範囲内で具体的な額を設定することとする。
     
  (3) 施設整備費
    (財源)
       国立大学の施設整備は、国家的な資産を形成するものであり、毎年度国から措置される施設費をもって基本的な財源とするが、財源の多様化や安定的な施設整備、自主性・自律性の向上等の観点から、長期借入金や土地の処分収入その他の自己収入をもって整備することを可能とする。また、より効果的・効率的な整備を行うため、PFIによる施設整備の可能性も視野に置くべきである。
    (長期借入金)
       各大学における多様な財源確保の観点から、長期借入を行うことを可能とする。
    (不用財産処分)
       現在、国立学校特別会計において認められている学校財産処分収入をもって国立学校の施設整備の財源に充てる仕組みについては、これを存続させる。
    (長期借入等を行うシステムの構築)
       移転整備及び附属病院整備に係る長期借入や不用財産処分収入の処理等を行うためのシステム(以下「システム」という。)を構築する(共同機関の設置等)。
    (施設整備の仕組み)
       国(文部科学省)は、概ね次のような業務を行う。
         全大学を通じた施設整備計画の策定及び実施
         各大学の施設整備計画(中期計画)の調整
         各大学の施設整備関係予算のとりまとめ
         各大学への施設費の配分   など
       各大学は、概ね次のような業務を行う。
         各大学の施設整備計画の策定及び中期計画への反映
         配分された施設費及び自己財源による施設整備   など
       システムは、概ね次のような業務を行う。
         移転整備及び附属病院整備に係る長期借入金の一括借入れ及び償還
         文部科学省の配分方針に基づく長期借入金及び不用財産処分収入の各大学への配分   など
     
  (4) 土地・建物等
    (移行時の措置)
       各国立大学が移行前に現に利用に供している土地・建物は、処分が適当と考えられるものを除き、各大学の財産的基礎を確立する観点から、原則として国から当該大学に対し現物出資(又は無償貸与)するものとする。
    なお、現に利用に供している設備、備品等については、無償で引き継ぐものとする。
    (土地・建物の処分収入の取り扱い)
       土地・建物の処分は、主務大臣の認可を経てなされるが、原則として当該処分収入の一定部分については各大学の自己収入とし、残余は国立大学法人(仮称)全体の施設整備の財源調整に充てる。
     
  (5) 長期借入金債務
       現在、国立学校特別会計が有している長期借入金債務については、システムに承継させ、同システムが附属病院を有する大学からの拠出金をとりまとめて償還するか、又は、附属病院を有する大学に承継させ、システムが償還金をとりまとめて償還することとする。
     
  (6) 寄附金等
    (地方公共団体からの寄附金等)
       現在、地方財政再建促進特別措置法により禁じられている地方公共団体からの寄附金等については、法律制定当時と現在との社会経済情勢の変化、国立大学の地方貢献の進展等の状況を踏まえ、一定の要件のもとに可能とすべきである。
    (税制上の取り扱い)
       寄附金の全額損金扱いを含め、国税及び地方税における現行の非課税措置等の取り扱いは、これを存続させるべきである。
    関連して、私立大学についても寄附金や受託研究などの税制上の扱いの改善を図るべきである。
     
  (7) 会計基準等
       独立行政法人全般へ適用する会計基準については、既に「独立行政法人会計基準」が策定されているが、これを参考としつつ、大学の特性を踏まえた取扱いとすべきである。
       大学の規模に関わらず、説明責任等の観点から、全ての大学は会計監査人の監査を受けるものとする。

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