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III 目標評価
     
  1.
検討の視点 (法人化を契機に、目標・評価のシステムの導入を通じて国立大学がどのように変わるのか、どのような大学になるのか、という視点の整理)
    視点1
明確な理念・目標の設定による各大学の個性の伸張
      (具体的には)
         各大学ごとに国のグランドデザイン等を踏まえ教育研究の基本理念・長期計画を盛り込んだ長期目標を自主的に策定・公表
         各大学の教育研究の特色・地域性等を踏まえ基本的な理念・目標や重点的に取り組むべき事項などを中期目標に掲げることにより、各大学の個性を明確化   など
         
    視点2
第三者評価による教育研究の質の向上と競争的環境の醸成
      (具体的には)
         大学の教育研究活動について、厳正で客観的に評価する第三者評価システムを導入
         国際的水準の活動に従事した経験を有する幅広い分野の有識者から構成する国立大学評価委員会(仮称)が総合的に評価
         教育研究に関する事項は、大学評価・学位授与機構による専門的な評価の結果を活用
         評価結果を各大学における教育研究等の改善、次期以降の中期目標・中期計画の内容や運営費交付金等の算定に反映   など
         
    視点3
目標、評価結果等の情報公開によるアカウンタビリティの確保
      (具体的には)
         各大学の長期目標、中期目標、中期計画、年度計画を公表
         入学・学習機会、卒業後の進路、教育研究状況等に関する幅広い情報を積極的に提供
         各大学に対する国立大学評価委員会(仮称)等による第三者評価の結果を積極的に公表
         情報提供に当たり、利用者の立場に立った分かりやすい内容と方法を工夫   など
         
  2. 制度設計の方針
    (1) 国のグランドデザイン等と大学の長期目標
      (国のグランドデザイン等)
         国は、大学関係者や広く各界の有識者による検討を踏まえ、我が国の高等教育・学術研究に係るグランドデザインや政策目標を策定し、その中で、国や国立大学が果たすべき役割や責務等を明らかにする。
      (大学の長期目標)
         各国立大学は、国の高等教育・学術研究に係るグランドデザイン等を踏まえ、当該大学の教育研究の基本理念及びこれを実現するための長期的な計画を盛り込んだ長期目標を自主的に策定し、公表する。
   長期目標を実現するための計画には、10年程度のマイルストーンを置くことが望ましい。また、長期目標は必要に応じて見直すこととし、特に最初の中期目標・中期計画の完了時に点検を行うことが必要である。
      (システム全体の基本的な考え方)
         国の高等教育・学術研究に係るグランドデザイン等や、各大学の定める長期目標を前提として、中期目標・中期計画の設定及び中期目標の達成度等の評価は、大学の質的向上を図るための改革サイクルとして位置付ける。また、これらの各段階を広く公表することを通じて、国民に対する説明責任を果たす。
       
    (2) 中期目標・中期計画等
      (中期目標・中期計画の性格)
         中期目標は、各大学が自主的に作成した長期目標を実現するための一つのステップであり、長期目標を踏まえた一定期間内の達成目標である。また、大学が中期計画を策定する際の指針となるとともに、大学の実績を評価する際の主な基準となるという性格を有する。
         中期計画は、中期目標の具体的な計画である。運営費交付金等についての予算を要求する際の基礎となるとともに、中期目標の達成度を評価する際の具体的要素となるなどの性格を有する。
         中期目標及び中期計画は、相互に密接に関連するのは当然であるが、特に大学の教育研究の方針は大学の主体的な判断ができるだけ尊重されるべきであり、企画立案と実施の機能を国と大学との間で完全に分離することは適当でないことから、それぞれの原案はあらかじめ各大学において一体的に検討されることが望ましい。
      (中期目標・中期計画の期間)
         中期目標・中期計画の期間は、大学におけるカリキュラム編成の実態や修業年限等を考慮し、6年を原則とする。
         期間中の中期目標や中期計画の見直しについては、各大学が社会のニーズや科学技術の進展等に適切に対応できるよう、文部科学省及び文部科学省に置く国立大学評価委員会(仮称)において、大学の自主性を尊重しつつ、年度を単位に可能な限り柔軟に対応する。
      (中期目標・中期計画の作成手続き)
         中期目標については、大学の教育研究の自主性・自律性を尊重する観点から、あらかじめ各大学が文部科学大臣に中期目標(案)を提案し、文部科学大臣は、これを十分に尊重しつつ、また、国の高等教育・学術研究に係るグランドデザイン等や各大学の定める長期目標との整合性に留意して、中期目標を策定する。
   各大学は、中期目標に基づいて中期計画を作成し、文部科学大臣が認可する。
         なお、大学の教育研究の自主性・自律性をできるだけ尊重する観点から、中期目標についても、各大学が作成し、文部科学大臣が認可するなどとすべき、との一部の意見もある。
         文部科学大臣は、各大学の中期目標・中期計画について、あらかじめ文部科学省に置く国立大学評価委員会(仮称)の意見を聴かなければならない。中期計画には中期目標期間中における予算を記載することから、国立大学評価委員会(仮称)は、各大学に対する運営費交付金等の配分についても意見を述べる。
         国、国立大学協会等は、中期目標・中期計画の形式及び内容について、大学の長期目標に沿った複数の参考例を提示することが望ましい。
      (中期目標・中期計画の内容)
         中期目標は原則として全学的にわたるもので、主に大きな方向性を示す内容とし、国の高等教育・学術研究に係るグランドデザインに関わる事項や大学として重点的に取り組む事項を中心に記載する。各部局ごとの内容は中期計画の中で記載する。
         具体的に中期目標に記載すべき事項としては、大学の特性を踏まえ、次のとおりとする。
1 中期目標の期間
2 大学としての基本的な理念・目標
3 大学の教育研究等の質の向上に関する目標
4 業務運営の改善及び効率化に関する目標
5 財務内容の改善に関する目標
6 アカウンタビリティに関する目標
7 その他の重要目標
         中期目標は、各大学における教育研究の高度化、活性化に資するとともに、社会からの要請にも適切に対応した内容とする。また、全大学に共通する内容を基本としつつ、各大学ごとの教育研究の特色、地域性、その他の特性を踏まえ、一層の個性化を促進するよう工夫する。
         中期計画には、予算の根拠として必要な事項や法令に定める事項の他、大学の社会に対する意思表示として、可能な限り中期目標を実現するための数値目標や目標時期を含む具体的な内容を記載する。
         具体的に中期計画に記載すべき事項としては、大学の特性を踏まえ、次のとおりとする。
1 大学の教育研究等の質の向上に関する目標を達成するためにとるべき措置
2 業務運営の改善及び効率化に関する目標を達成するためにとるべき措置
3 財務内容の改善に関する措置
4 アカウンタビリティに関する措置
5 その他の重要目標に関する措置
      (年度計画)
         各大学においては、中期計画に基づき、各事業年度の業務運営に関する計画(年度計画)を定め、これを文部科学大臣に届け出る。
       
    (3) 評   価
      (基本的な考え方)
         国立大学法人(仮称)に対する評価システムは、大学運営の自主性・自律性や教育研究の専門性を尊重しつつ、評価により、大学の継続的な質的向上を促進するとともに、社会への説明責任を果たすことを目的とする。
         また、社会一般にわかりやすく大学の状況を示すことができる評価制度とするとともに、大学の過重な負担とならない効率的な評価や、評価制度自体の透明性に留意が必要である。
   さらに、評価システムについては、常により良いシステムを求めて、不断に工夫・改善を重ねていくことが重要である。
         なお、大学における教育研究活動の評価に当たっては、計量的・外形的な基準だけでは適切に評価し難い面があることや、教育研究活動の中長期的な視点にも十分に留意すべきである。
      (評価の主体)
         国立大学法人(仮称)の特殊性及び国立大学法人(仮称)全体の規模の大きさ等を踏まえ、より効率的・効果的な評価を実施するため、文部科学省に、独立行政法人評価委員会とは別に、国立大学評価委員会(仮称)を設け、同委員会が各国立大学法人(仮称)の評価を行う。
         国立大学評価委員会(仮称)は、社会・経済・文化等の幅広い分野の有識者を含め、大学の教育研究や運営に関し高い識見を有する者から構成することとし、その構成員の選任に当たっては、各分野において国際的水準の活動に従事した経験を有すること等を基本的な要件とする。なお、大学関係者については、現に所属する又は過去に所属した大学の個別評価には参加できない。
         各評価主体の基本的な役割・性格については、1各大学は、中期目標の達成度について、種々の外部評価、第三者評価を活用して厳正な自己点検・評価を行い、2大学評価・学位授与機構は、各大学の自己点検・評価に基づき、主として教育研究に関する事項について専門的な観点から評価を行い、3国立大学評価委員会(仮称)は、教育研究に関する大学評価・学位授与機構の評価結果を尊重しつつ、国立大学法人(仮称)の運営全体に対して総合的な評価を実施する。
   なお、大学評価・学位授与機構が国立大学法人(仮称)の評価を行うことに伴って、その業務内容を見直す必要がある。
      (評価の内容・方法・手続き)
         評価は、各大学ごとに中期目標の達成度について行うとともに、各大学の個性を伸ばし、質を高める観点から、分野別の研究業績等の水準についても行う。
   国立大学評価委員会(仮称)は、評価事項のうち、教育研究に関する事項について、評価に先立って、大学評価・学位授与機構の意見を聴き、尊重する。
         具体的には、国立大学評価委員会(仮称)の評価に先立って、1各大学が中期目標の達成度について自己点検・評価を行い、国立大学評価委員会(仮称)に報告する。2国立大学評価委員会(仮称)は報告されたもののうち、教育研究に関する事項に係る部分の評価を大学評価・学位授与機構に依頼する。3機構においては、専門的な観点から教育研究に関する評価を行い、その結果を国立大学評価委員会(仮称)に報告する。4国立大学評価委員会(仮称)は、機構の教育研究に関する評価結果を尊重して、総合的な評価を行う。
         国立大学評価委員会(仮称)及び大学評価・学位授与機構は、評価を決定する前にその結果を大学に示して、意見の申立の機会を設ける。また、国立大学評価委員会(仮称)及び大学評価・学位授与機構は、評価結果を公表する。
      (評価結果の活用)
         各大学においては、評価結果を教育研究その他の活動の改善のために役立てるとともに、自ら定めた長期目標の点検に活用する。
         評価結果は、次期以降の中期目標・中期計画の内容に反映させる。その際、その内容が、評価結果を踏まえて、発展的・現実的なものとなるよう配慮する。
         評価結果は、次期以降の中期目標期間における運営費交付金等の算定に反映させる。その際、競争的環境の醸成及び各大学の個性ある発展を促進する観点から、教育研究その他の業績に対する評価の結果を適切に反映した算定が行われなければならない。
   また、運営費交付金の算定に評価結果を反映するに当たっては、各大学・学部等の理念・目標・特色・条件等を踏まえた弾力的な算定方法の可能性を考慮することとする。
   なお、運営費交付金等の算定に用いる評価項目については、適切なものとなるよう慎重に検討するとともに、各大学の自主性・自律性が結果として大きく制約されることのないよう配慮する。また、運営費交付金等の算定の基準や方法を予め大学及び国民に対して明確にしておく。
   上記諸点を十分に踏まえ、評価結果の運営費交付金等への適切な反映の方法と手続きについて、具体的な検討を行う必要がある。なお、評価結果を次期中期目標等に適切に反映させるための実行段階における課題についても、さらに具体的な検討が必要である。
      (各年度の業務の実績に関する評価)
         各大学は、各事業年度における業務の実績について、主として中期目標達成への事業の進行状況を確認する観点から、国立大学評価委員会(仮称)の評価を受けることとするが、この評価は、一定のフォーマットにより収集した情報に基づき実施するなど、各大学にとって過度の負担とならないよう配慮する。
   各大学においては、国立大学評価委員会(仮称)による各事業年度の業務実績の評価結果を活用して、自主的に業務運営の改善等を図る。
   国立大学評価委員会(仮称)は、各事業年度の業務実績の評価結果を公表する。
       
    (4) 情報公開
         国立大学は、公財政支出に支えられた極めて公共性の高い機関として、社会に対するアカウンタビリティを果たしていく必要がある。このため、各大学において作成する中期計画、年度計画をはじめ、財務内容や管理運営に関する情報、大学への入学や学習機会に関する情報、卒業生の進路状況に関する情報、大学での研究課題に関する状況など、大学に関する情報全般を社会に対して積極的に提供する。
         また、各大学ごとに定められる中期目標や国立大学評価委員会(仮称)の行った評価結果について、各大学においても積極的に公表する。
   これらの情報を提供するに当たっては、利用者の立場に立った分かりやすい内容と方法を工夫する。

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