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II 組織業務
  1. 検討の視点(法人化を契機に、組織業務の在り方を通じて国立大学がどのように変わるのか、どのような大学になるのか、という視点の整理)
    視点1:
学長・学部長を中心とするダイナミックで機動的な運営体制の確立
      (具体的には)
         学長は、経営・教学双方の最終責任者として、学内コンセンサスに留意しつつ、強いリーダーシップと経営手腕を発揮
         大学運営の重要テーマごとに副学長等を十分配置して、学長の補佐体制を大幅に強化
         事務組織は、教員と連携協力して企画立案に参画し、学長以下の役員を直接支える専門職能集団としての機能を発揮
         教授会の審議事項を精選し、学部長を中心にダイナミックで機動的な学部運営を実現
         学内での教育、研究、運営等の適切な役割分担を行い、教育研究活動以外の教員の負担を軽減し、大学の諸機能を強化   など
         
    視点2:
学外者の参画による社会に開かれた運営システムの実現
      (具体的には)
         法人役員に広く学外からも有識者や専門家を登用し、幅広い視野から大学を運営
         役員以外の運営組織にも学外の有識者や専門家が参加し、社会の意見や知恵を大学運営(とりわけ経営面)に適切に反映
         その他大学運営のスタッフに学外の幅広い分野から専門家を積極的に登用し、大学の諸機能を強化   など
         
    視点3:
各大学の個性や工夫が活かせる柔軟な組織編制と多彩な活動の展開
      (具体的には)
         各大学の自主的な判断で柔軟かつ機動的に教育研究組織を編制し、得意分野等にスタッフを重点的に投入
         教職員の構成も、教員、事務職員等の画一的な区分を越えて各大学の実情に即した多様な職種を自由に設定
         大学が獲得した外部資金を活用して、必要な研究従事者を弾力的に採用・配置
         研究成果の普及事業や移転事業など、教育研究活動に付随する多彩な活動を広範囲に展開し、必要に応じTLO等関係法人へ出資
         教育研究組織等の一部を国立大学法人本体から独立させ、特性に応じたより弾力的な運営を可能とする仕組みを創設
         各大学で産学官連携に関連する業務を弾力的・効果的に展開   など
         
  2. 制度設計の方針
    (1) 法人の基本
      (法人の単位)
         法人の単位については、大学の運営の自主性・自律性を高め、自己責任を強める上で自然な形であり、また、大学相互の競争的な環境の醸成や大学の個性化に資することが期待できることなどから、各大学ごとに法人格を付与することを原則とする。
      (法人の名称)
         法人の一般的な名称については、1高い自主性・自律性を前提に、大学教育及び学術研究を主体的に展開する法人としての基本的な性格を適切に反映させること、2昭和24年に制定された国立学校設置法に基づき「国立大学」の総称が社会的にも広く定着していること、3後述のように法人化後の大学の設置者を国とする方向で整理すること、などを総合的に考慮し、「国立大学法人」(仮称)とする。
   各法人の名称は、従来までの名称、活動実績、経緯等を考慮する。
      (大学の設置者)
         法人化後の大学の設置者については、1中期目標・中期計画や業績評価等を通じた国の関与と国の予算における所要の財源措置が前提とされていること、2後述のように大学の運営組織と別に法人としての固有の組織は設けないことを原則とすること、などを考慮し、学校教育法上は国を設置者とする。
      (教育研究施設)
         大学の附属図書館、附属学校、附属病院、附置研究所等の教育研究施設については、従来から大学の教育研究活動と不可分な関係にあるものとして位置付けられてきたことを踏まえ、大学に包括されるものとして位置付ける。
      (施設への出資)
         大学の施設のうち、運営の実態や独立採算の可能性等を踏まえ、より柔軟な運営を実現するなどの観点から、特定の施設を国立大学法人(仮称)から独立させ、別の種類の法人とするとともに、必要に応じて国立大学法人(仮称)がこれらの法人に出資できることとする。
      (根拠法)
         国立大学法人(仮称)の根拠法については、大学の教育研究の特性を踏まえて、各大学に共通して必要な事項と、各国立大学の名称など、個別の大学に関する事項とを合わせて規定した法律(「国立大学法人法」(仮称)、「国立大学法」(仮称)など)を制定する。
       
    (2) 運営組織
      (法人組織と大学組織)
         国立大学法人(仮称)については、1教学と経営との円滑かつ一体的な合意形成への配慮、2設置者としての国による大学への関与の存在、3従来からの国立大学の運営の実態、などを総合的に考慮し、効率的・効果的な運営を実現させる観点から、「大学」としての運営組織と別に「法人」としての固有の組織は設けない。
      (役員)
         国立大学法人(仮称)の役員の構成・名称については、現在、大学に置かれる職として学長、副学長が学校教育法上規定され、また、現に各国立大学には学長のほか、副学長が原則複数名配置されていること等を踏まえ、「学長」(法人の長)、「副学長」(複数名)、「監事」(2名)等とする。
         学長は、法人化された大学の最終責任者として、法人を代表するとともに、学内コンセンサスに留意しつつ、強いリーダーシップと経営手腕を発揮し、最終的な意思決定を行う。
         監事は、国立大学法人(仮称)の業務を監査し、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、学長又は文部科学大臣に意見を提出することができることとするが、実際の監査に当たっては、大学における教育研究の特殊性に鑑み、基本的には各教員による教育研究の個々の内容は直接の対象としないことが適当である。
   監事のうち少なくとも1名は、大学運営に高い見識を有する学外者から登用する。
         副学長等の役員は、学長を補佐し、業務の一部を分担する。
   法人化に伴い権限・責任が拡大する学長を補佐するため、大学運営の重要テーマごと(例えば、学術研究、教育・学生、財務会計、人事管理、施設管理、学術情報、環境・医療など)に、担当の副学長等の役員を十分配置する。
   副学長等の役員の数は、学部・研究科の数、教職員の数など、大学としての規模等を考慮し、各大学ごとに定める。
         役員には、学内からの登用にとどまらず、広く学外からも大学運営に高い見識を有する者や各分野の専門家を招聘する。必要に応じ非常勤とする。
   役員以外のスタッフにも、学外の幅広い分野から専門家を積極的に登用し、大学の諸機能を強化する。
   役員を始め大学運営のスタッフに、女性の積極的な登用を進める。
      (役員以外の運営組織)
         役員以外の運営組織については、
1 法人化に伴い経営面(例えば予算編成・執行、財産管理、組織編制、職員配置、給与決定、勤務時間管理など)での大学の裁量が大幅に拡大することに対応して、その裁量を効果的に活用し得る組織とすること、
2 国の直接的な関与を制限する代わりに、公的な財政支出に支えられる大学として、国民や社会に対するアカウンタビリティ重視の観点から、学外の有識者の意見を運営に積極的に反映させること、
3 経営、教学両面において、学内コンセンサスの円滑な形成に留意しつつ、従来以上にダイナミックで機動的な意思決定を可能とする仕組みを採り入れること、
などの観点から、経営面に関する権限と責任の所在を明確化するとともに、その権限と責任を担う組織に学外の有識者を参画させることとする。
         なお、運営組織の具体的な姿を検討する際の主な論点としては、
ア) 学外の有識者を、どの運営組織に、どのような身分・立場で、どの程度の比率で参画させるか、
イ) 教育研究者で構成される組織に、法人化後の経営面に関する責任を負わせることが適当かどうか、
ウ) 意思決定の過程で役員による合議を行う場合、正規の組織として役員会を設置すべきか、あるいは、事実上の組織として運用すれば足りるか、
などがある。
         上記論点を踏まえ、(別紙1)に示す各案について検討を行ったが、各案の主な特徴は、以下のとおりである。
(A案)
   役員に学外者が含まれるほか、審議機関である評議員会(仮称)に相当程度の学外者が参画する。
   評議員会(仮称)で経営と教学を一体的に審議するため、教員が経営にも責任を負う(また、相当程度の学外者が教学に責任を負う)。
   必要に応じ、事実上の役員会で合議した上で、学長が最終的な決定を行う。
(B案)
   役員に学外者が含まれるほか、審議機関である運営協議会(仮称)に相当程度の学外者が参画する。
   経営と教学は、運営協議会(仮称)と評議会が分担して審議するため、教員は経営責任を負わない。
   必要に応じ、事実上の役員会で合議した上で、学長が最終的な決定を行う。
(C案)
   役員に相当程度の学外者が含まれる。そのほか、審議機関である評議会には若干名の学外者が参画し、また、助言勧告機関である運営諮問会議は学外者のみで構成する。
   評議会で経営と教学を一体的に審議するため、教員が経営にも責任を負う。
   特定の重要事項は必ず正規の役員会で議決を行った上で、学長が最終的な決定を行う。
         本調査検討会議としては、上記(ア)〜(ウ)の論点を踏まえ、今後、(B案)又は(C案)を中心に、そのバリエーションも含め、引き続き検討を行う。
      (事務組織)
         各大学の事務組織については、法令で規定せず、予算の範囲内において各大学の判断で随時に改組等を可能とし、適切な組織編制を行う。
   その場合、従来のような法令に基づく行政事務処理や教員の教育研究活動の支援事務を中心とする機能を越えて、教員組織と連携協力しつつ大学運営の企画立案に積極的に参画し、学長以下の役員を直接支える大学運営の専門職能集団としての機能を発揮することが可能となるよう、組織編制、職員採用・養成方法等を大幅に見直す。
      (学部等の運営)
         学部等の運営については、教授会における審議事項を真に教育研究に関する重要事項に精選する一方、学部等の運営の責任者たる学部長等の権限や補佐体制(副学部長等の設置など)を大幅に強化することにより、全学的な運営方針を踏まえながら学部長等の権限と責任においてダイナミックで機動的な運営を実現するとともに、教育研究活動以外の教員の負担をできるだけ軽減し、人的資源を有効に活用し得る体制に改める。
       
    (3) その他の組織
      (教育研究組織)
         大学の教育研究組織については、各大学の自主的な判断で柔軟かつ機動的に編制することにより、学術研究の動向や社会の要請等に適切に対応し、大学の個性化を図るため、学科以下の組織は法令に規定せず、各大学の予算の範囲内で随時に設置改廃を行うこととする。
   その際、公私立大学についても、国立大学の場合と同様の観点から、国の設置認可を緩和する。
         なお、大学の教育研究組織の基礎・基本である学部・研究科・附置研究所については、その性格上いわば法人としての業務の基本的な内容や範囲を示すものであり、明確に定める必要があることから、各大学ごとに法令(具体的には省令)で規定する。
         特に国としての政策的判断や相当の予算措置を要するような大規模な教育研究組織の設置等については、当該大学の業務の確実な実施を担保するとともに、運営費交付金等の公費の支出の積算の根拠を明示する観点から、あらかじめ中期計画に記載し、文部科学大臣の認可を得る。
      (職員配置・構成)
         職員配置や職員構成は、国の定員管理の対象外とし、従来の画一的な職種の区分を越えて各大学の実情に即した多様な職種を自主的に設定し、また、各学部等への職員数の配分を自主的に決定する。また、外部の競争的資金等の間接経費等を活用し、当初の人件費見積りの枠外でポスドク等の研究従事者を随時雇用することを可能とする。
       
    (4) 目的・業務
      (目的)
         法律上定める各大学の目的については、各大学ごとに固有の目的規定を定めるのではなく、各大学の個性や特色の発揮を阻害しないよう十分留意しつつ、法人化後の国立大学に共通する一般的な目的規定として整理する。
      (業務)
         法律上定める各大学の業務については、各大学の目的と同様に、法人化後の国立大学に共通する一般的な業務内容として整理するとともに、各大学ごとの業務の基本的な内容や範囲を明確にする観点から、各大学の学部・研究科等を下位の法令で規定する。なお、目的と業務が極めて似通った内容となることも十分予想されることから、目的と業務を一体的に規定することもあり得る。
      (業務の範囲)
         業務の範囲については、公私立大学との使命や機能の分担にも十分留意しつつ、国立大学としての目的を達成するために必要な業務は、各大学の自主的な判断により、できる限り広範に展開できるよう配慮する。
   具体的には、1附属の教育研究施設等を含め、大学として行う本来の教育及び研究や、2入学者選抜、学位授与、診療、学生の厚生補導、公開講座・研究会・講演会等の開催、広報誌の発行など、教育研究に密接に関わるものとして現在すでに各大学で行われている各種業務のほか、3特許の取得・管理、大学会館の設置・管理、教育研究費の助成、学術図書の刊行・頒布・援助、奨学金の支給、研究成果の民間への移転事業など、教育研究に密接に関わるものの、種々の制約から現行では大学自ら実施しがたい業務についても、法人化に伴い大学の業務として実施できるようにする。
         特に、近年、大学の教育研究の活性化や新産業の創出等への期待から、産学官連携の必要性が強く指摘されており、大学自らの総合的・戦略的な判断に基づき、産学官連携を推進することが重要である。
   このため、法人化後の大学における産学官連携の在り方(リエゾン機能、TLO、インキュベーション業務、特許等知的所有権の管理など)については、各大学の主体的な判断により、事務組織の在り方等を含め、弾力的・効果的な推進体制を整備することができるようにする。
      (他の法人への出資)
         業務の一部については、法人化後の国立大学とは別の法人に実施させることにより、業務のアウトソーシングによる効率的な運営や弾力的な事業展開の実現、複数の出資者を募ることによる資金確保の途の拡大等に資することが期待できることから、業務の膨張への歯止めに留意しつつ、国立大学法人(仮称)からこれらの法人への出資も可能とする。
      (収益事業)
         収益事業については、国立大学法人(仮称)が、1独立採算制を前提とせず、国の予算による所要の財源措置が行われること、2その事務・事業も公共上の見地から実施されるものであること、などを考慮し、本来の教育研究等の業務に密接に関わる事業に限定して行う。
      (学生定員)
         学生収容定員については、各大学・学部等の業務の規模や教育条件を規定する基礎的な要素であり、運営費交付金等の算定の際の基本的な根拠となることから、あらかじめ中期計画に記載し、国の認可を得る。
      (業務方法書)
         業務方法書は、大学の教育研究活動に関する方法を業務方法書で定めることの妥当性や、各大学で定める学則の記載事項とその取扱いとの関係等を総合的に考慮する必要があり、業務方法書を作成しない可能性も視野に入れる。
      (移行方法)
         具体的な移行方法は、予算措置や評価のサイクルと移行時期との関係、事務局を含めた組織運営体制の整備や財務会計システムの整備など、移行に伴う諸準備の見通し等を総合的に考慮して決定する。

 


(別紙1)
   
(A案) 従来の評議会に代わり、経営・教学の両面にわたり重要事項を審議するための機関を設け、そこに相当程度の外部の有識者を参画させる案
  評議員会(仮称):
       大学運営に対する学内の責任者と、大学運営に関する学外の有識者(非常勤)で構成する。
       学外の有識者が相当程度を占める。
       教学・経営の両面にわたり大学運営全般に関する重要事項や方針を審議する。
(従来の評議会は廃止。運営諮問会議は、各大学の判断で設置。)
     
  学長は、大学運営全般に関する重要事項や方針についての評議員会(仮称)の審議を踏まえ、最終的な意思決定を行う。
  図1
(B案) 教学面に責任を負う評議会と並んで、経営面に関する重要事項を審議するための機関を設け、そこに相当程度の学外の有識者を参画させる案
  運営協議会(仮称):
       大学の経営に対する学内の責任者(役員等)及び大学の経営に関する学外の有識者(非常勤)で構成する。
       学外の有識者が相当程度を占める。
       主に財務会計、組織編制、職員配置、給与問題など経営面に関する重要事項や方針を審議する。
(運営諮問会議は、各大学の判断で設置。)
     
  評議会:
       部局代表者等で構成する。
       主に教育課程、教育研究組織、教員人事、学生の身分など教学面に関する重要事項や方針を審議する。
     
  学長は、経営面に関する運営協議会(仮称)の審議と、教学面に関する評議会の審議を踏まえ、最終的な意思決定を行う。
  図2
(C案) 教学・経営の両面にわたり特定の重要事項に関し、役員会に正式の権限を与え、そこに相当程度の学外の有識者を参画させる案
  役員会(仮称):
       監事を除く役員で構成し、学外者(常勤又は非常勤)が相当程度を占める。
       教学・経営の特定の重要事項について、学長の意思決定に先立ち議決を行う。
     
  評議会:
       部局代表者等を基本とし、大学運営に関する学外の有識者を若干名加える。
       教学・経営の両面にわたり大学運営全般に関する重要事項や方針を審議する。
     
  運営諮問会議:
       大学運営に関する学外の有識者(非常勤)で構成する。
       教学・経営の両面にわたり大学運営全般に関して助言・勧告を行う。
     
  学長は、評議会の審議を踏まえ、最終的な意思決定を行う。ただし、特定の重要事項については、役員会(仮称)の議決を経て行う(必要に応じて運営諮問会議が助言・勧告)。
  図3

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