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資料3
中央教育審議会大学分科会大学院部会
理工農系WG(第3回)平成16年11月29日


研究者養成機能の充実について
《これまでの議論と意見募集より抄録》


博士課程における体系的な教育課程の確立
<博士課程における体系的な教育課程の在り方について>
 博士課程において、研究者養成と高度専門職業人養成という目的をそれぞれ明確に分離すべきとの観点から、また、博士課程の学生について、研究を行うに当たっての考え方の基本を身に付けるとともに、幅広い視野を身に付けるべきとの観点から、意見があった。
博士課程の前後期を通じ、同一専攻の中に研究者養成プログラムと高度専門職業人養成プログラムを分離することが必要である。
我が国の博士課程修了者の専門知識の幅は極端に狭く、思考の柔軟性等に欠ける。
大学院生間、または教員と学生間において、異なる分野について情報交換を行える場を持つことが必要。
博士課程では、特定のコースでの教育よりも、研究に必要な知識を自由に獲得し、「問題設定→問題解決」という考え方の基本を身に付けることができるように、専攻や研究科を越えた選択の自由度を確保することが必要。

 博士前期課程については、研究手法に関する訓練や周辺分野に関する知識の教授を体系的に実施することが重要であるとの観点から意見が多く寄せられた。また、分野によっては、語学力を充実させたり、長期インターンシップ等によりフィールドワークを体験することも有効であるとの指摘もあった。
博士前期課程を中心に、例えば毎回一定の課題を与え、それについての研究や、その研究に必要な実験の設計をさせる訓練が必要である。
関連異分野の学習の機会を設定する副専攻制の導入が必要。
学位論文を作成する専門研究分野の周辺の知識についても講義・演習等で習得させることが肝要。
授業科目については、科目の性格(基礎、理論、応用、フロンティア研究など)や実質的な内容を表現できる名称を設定するとともに、合格水準を明示することも重要。
英語によるプレゼンテーション教育、PDを活用した教育の充実、インターンシップ、海外交換研究制度などを充実させることが必要。特に工学系においては、先端の企業研究所での長期インターンシップを積極的に実施する必要がある。

 博士後期課程については、適切な段階を設けて学生の質の確保を図ることが重要であるとの観点から意見が多く寄せられた。
博士後期課程の学生に対して専門・副専攻の理解度に関する口頭試験を実施し、その合格者のみに博士論文の提出資格を与えることを通じ、日本の学生の基礎力を強化すべき。
博士課程を前期・後期の5年間で捉えれば、前期課程で20単位以上のコースワークを行い、後期課程は研究中心とすべき。ただし、この場合であっても、後期課程に他専攻等から編入してくるケースに対応するため、導入教育を行うことが必要。

 博士の学位については、論文博士という取扱いが博士課程への進学を阻害しているのではないか、「単位取得満期退学」という取扱いは国際的には通用しないのではないか、との指摘もあった。
優秀な学生が博士課程に進学してこない背景のひとつに、論文博士の制度がある。
大学院は「教育機関」として、修了者に学位を授与するという趣旨を徹底すべき。また、国際通用性の点からも、「単位取得満期退学」という扱いについては見直す必要がある。

大学院の研究機能の強化(施設・設備など)
<大学院教育の改善を支える施設・設備の在り方について>
 大学院教育を充実させるため、大学院として最低限必要とされる施設・設備の水準について見直すことが必要であるとの観点からの提言があった。また、研究に必要なデータへのアクセス向上や計算機ネットワーク環境をはじめとする情報インフラの一層の充実が必要であるとの指摘があった。
研究の実態を踏まえ、安全に関するインフラ設備を充実させるとともに、研究室の環境(スペース、計算機、空調など)の整備に取り組むことが必要。
特に、私立大学における大学院学生の研究環境を向上させるとともに、施設の老朽化・狭隘化にも適切に対応するため、施設・設備に関する大学院設置基準を厳しくすることも必要。
特に国費で整備された電子図書館や電子化された研究データについて、更なる共有化を進めるとともに、大学院生が自由に利用できるよう一層の公開が必要。
研究を遂行するには最新の知識と手段を駆使することが肝要であるため、大学の内外を含む計算機ネットワーク環境をはじめとする情報インフラの充実が必要。

<世界水準の研究体制を組織するための方策について>
 研究体制を強化するため、研究専従教員制度の創設を求める意見があった。事務組織については、産学連携や国際交流を強化する観点から、より高度の専門性を求める意見が寄せられた。
研究体制の整備のため、先進国並みの予算措置を行うとともに、教員の流動性を高めるための措置(任期制、海外を含めた公募制度)や、名誉教授が大学院教育に参画できる環境づくりが必要。
ポストCOEとして、国際水準にある海外の研究型大学院と協働して博士課程教育を進める研究科を経済面・制度面から支援するプロジェクトを立ち上げ、英語論文の執筆指導のできるスタッフ、学生に海外経験を積ませるための資金、優秀な人材を海外から招聘するための給与水準、英語で事務のできる支援組織等を確保すべき。
研究重点教員と教育重点教員の区分を進めるとともに、技術職員や大卒レベルの実験アシスタントの配置をはじめとする事務支援組織・研究支援組織の充実を図ることが必要。
「大学院の研究機能」と「教員の研究活動」は必ずしも同一ではない。21世紀COEプログラムにおいては、大学院教育課程との関連は明示的に取り上げられてはいないが、院生を巻き込んだ教育課程としての研究機能を支援する制度に発展させるべき。
諸外国の基準との整合性の取り方について検討することで、学位の国際的標準化を進めるべきではないか。

学生に対する経済的支援と大学院修了者のキャリアパスの多様化の促進方策
<大学院生に対する経済的支援について>
 学生が安心して修士課程、博士課程と進学できるよう、奨学金の額を拡充したり、より給付を受けやすいものとすべきとの指摘があった。また、学術振興会の特別研究員制度についても、より多くの者のアクセスが可能で、より多くの者に支援が行き渡る制度に改善すべきとの観点からの意見が多かった。
大学院進学の経済的リスクを減らすため、学部4年生の段階で極めて優秀な学生に修士課程への経済的支援を決定し、優秀な修士課程の学生には後期課程進学前に経済的支援を決定することで、安心して博士課程に進学させることが必要。
奨学金制度は、基本的には貸与であり、その額も修士修了者の年収に及ばないという問題があるが、家庭や周辺環境の状況から進学を断念している現状の解決のためには、給付額決定に関して大学の裁量権を付与し、優秀な学生に対して修士修了者の初任給相当額以上の給付をしたり、希望者全員に貸与し、修了後の所得に応じて返還できるような制度を構築する必要がある。
日本学術振興会の特別研究員制度について、基本的には更なる拡充が必要だが、当面は、対象を博士課程1年まで前倒しする、日本学術振興会の特別研究員の給与月額を半額近くにし、採用人数枠の大幅増を図るなどの措置を通じ、経済的支援効果が幅広く行き渡るようにすることが必要。
博士課程学生の生活費について、委託研究や国家プロジェクト研究の研究費である程度負担できる仕組みを確立すべく、欧米の現状を調査する必要がある。

<大学院修了者のキャリアパスの多様化の促進方策について>
 博士の学位を取得した者の有用性を社会に訴求するための仕組み作りについて提言があった。なお、大学院生の多様なキャリアパスの開拓は大学教員の責務であるという見解がある一方、大学や大学教員が個々の院生の就職にまで関与するのは避けるべきとの見解も示された。
博士の学位取得後、研究機関以外に就職することが困難な状況を打破するため、「企業における博士像」を具体的な形で明確にし、その意義を社会に認知させるための取組をすることが必要である。
大学院修了者の任期制による採用導入と教員流動化を図り、産学の人事交流を促進する支援が必要。そのため、全国的な院生の研究分野の登録と公開、キャリアパスの開拓などを行う共同組織を作るべき。
それぞれの学生の適性を見極め、多様なキャリアパス形成の機会を開拓・提供することは、日頃、大学院生を指導している教員の責務である。
研究指導を行うべき教員が就職に関与することは避けるべきだし、院生の就職にまで個々の大学が組織的に関与するのは問題が多い。


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