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Home > 政策・施策 > 審議会情報 > 中央教育審議会大学分科会 > 大学院部会 理工農系ワーキンググループ(第3回)議事録・配布資料 > 資料2−2


資料2-2
中央教育審議会大学分科会大学院部会
理工農系WG(第3回)平成16年11月29日



大学院部会 人社系WGに係る審議について
《これまでの議論と意見募集より抄録》


1. 「審議経過の概要」で示した基本的方向性と分野別の現状

 各大学院の目的や位置づけの相互関係、資格と学位の関係などについて意見があった。
専門職大学院と研究大学院の区切りを明確にすべき。
教員養成系では、教育委員会が体系的かつ系統的に整理している現職教員研修と専門職大学院の関係をどのように構築するかが課題。
大学院の目的を明確化するなら、同時に課程の種別化も必要。
職業訓練体系(資格)と大学院(学位)の関係については、高等教育のユニバーサル・アクセスの観点もあるのでしっかりと整理することが必要。

2.
課程制大学院の趣旨に沿った教育課程や研究指導の確立
(大学院のスクール化)

 教員の教育・研究指導能力の向上のための方策
 教員の教育・研究指導能力の向上のための方策については、「人材養成機能に即した教育内容・方法の確立(単位の実質化等)」及び「大学教員の在り方」について議論があった。特に、大学院の教育方法については、スクール化の必要性について述べる意見がある一方で、学生はスクール化よりも参加型の授業を求めているとの調査結果が紹介された。また、大学教員の指導力の強化方策についても様々な意見が述べられた。

<人材養成機能に即した教育内容・方法の確立(単位の実質化等)について>
ある調査によると、学生は大学院のスクール化よりも、むしろ参加型の授業を求めているようだ。
修士課程が博士課程の準備段階になっている現状を変えなければならない。
現在の大学院は研究中心で教育プロセスを欠いているという指摘があり、スクール化の必要性を考えてほしい。

<大学教員の在り方について>
大学院で養成する研究者像を明確化し、それに基づく体系的なカリキュラムの編成や教員のリクルートを行うべき。
日本の大学教員は教えることが苦手なので、博士課程では教育能力を磨く訓練を行うべき。
学生がある程度研究成果に近づいた段階で、自ら学部生などに教えてみることをプロセスとして求めることは効果的である。
教育学部の教員に現場経験が乏しいのは問題であり、彼らが分かり易く物事を教える経験を積むことは重要。修士課程で現職教育をし、一度現場に帰した後、教育学部の教員になりたい者を博士課程に受け入れるという流れを作る必要がある。
研究者養成と職業人養成を分けるのは分かり易いが、学者になる素養のある学生を卒業後すぐに選別するのは難しい。だからこそ、修士課程修了時に選別をするのだが、この段階の選別が厳しすぎることが、学生が疲れてしまう原因になっている。

 今後の研究者等として必要な高度な素養の涵養の在り方
 今後の研究者等として必要な高度な素養の涵養の在り方に関しては、特に人社系の大学院においては日本の教養人の育成や人生観の涵養に当たるべきとする意見がある一方、現代的ニーズに適合した教育の実施も必要との見解が示された。また、修士課程の修了要件については、「研究成果」を論文に代替できる専門分野の拡充を図ることについて提案があった。

<各大学院の人材養成機能に即した高度な素養の内容について>
大学院に進学する者は、入学時から将来の目的を明確に持つべき。
人文系の最大の眼目は、日本の教養人の育成や人生観の涵養にある。教員養成に当たっても広い教養は必要。
大学においては、国家の基礎・基盤をなす研究の継承と、現代的ニーズにあった教育の実施の両方が必要。
企業が求める思考力を養うため、哲学・倫理学などの科目を大学院においても基礎的科目としてしっかり教える必要がある。

<各大学院の人材養成機能に即した高度な素養を涵養する方法について>
特に博士課程において、高度な素養の涵養を教育プロセスにもっと明確に位置付けてもよい。
博士課程についてはこれまでの古いやり方も必要だが、場面に即した教育能力が必要であり、これを系統的にどうするかが課題。
大学院にもオープン教育センターのような組織を導入してはどうか。
先生を越える研究、違う切り口の研究を許容すべしという提言は貴重である。
広い意味での教育者を育成するため、細分化しない専攻を作り教科横断型の教育を実施しているが、これを教員組織に反映させるのは難しい。

<修士課程/博士課程の修了要件について>
論文に代えて「研究成果」で修了できるとされる分野が少ない。
社会に出て行く人社系の修士には、むしろ社会における実践を求めるべき。
修士課程の修了要件については、例えばterm paperのようなものを作らせ、研究をさらに続ける資質の有無を判断することもありうる。
教育学系においては、論文に代わる修士課程の修了要件として、例えば行政系ならば地方自治体と連携したfieldwork、教育方法論なら研究授業が有効である。
博士課程に進学してくる学生は、卒論・修論で力を使い果たしており、余力がない状況。大学院における最終目標を博士論文の執筆に置き、場合によっては修論は不要とすべき。
文学の分野では、修士課程で3年かけて学ぶことにしている有力大学もあるし、まして学位論文をその後の3年で書き上げることは無理。学会で認知されない学位を取っても仕方がないので、最短でも4年、標準的には5〜6年かけて学位を取ることにしてもいいのではないか。

 教員・学生の流動性の拡大のための方策
 「教員・学生の流動性の拡大のための方策」に関して、現時点ではあまり議論がされていないが、これまでのところ、「教員の流動性」の拡大策として、全大学一斉に任期制を導入すること等が提案された。

<教員の流動性を高めるための方策について>
研究者の流動性を高めるには、全大学で一斉に任期制を導入しないと効果はない。これとテニュア制度などを適切に関与させることが必要。

 社会のニーズと大学院教育のマッチングのための方策
 社会のニーズと大学院教育のマッチングのための方策に関して、産業界や社会の要請を反映させることの重要性を述べる意見があった。

<産業界等と大学院教育との関係について>
応用分野においては社会とのマッチングが必要。
「産学連携」という言葉よりは"research"とか"fieldwork"とかいう捉え方で社会との関係を構想すべき。
修士段階では職業訓練にも配慮したカリキュラムを組むなど、社会的な要請を反映させていくことも重要。
産業界の連携について国の意識はまだまだである。ほとんどの大学が就職部を「キャリアセンター」に変えた時代に、「厚生補導」などと言っていては、単なる教育指導の域を出られない。

3. 研究者養成機能の充実

 博士課程における体系的な教育課程の確立
 博士課程における体系的な教育課程の確立に関して、「区分制の博士課程と5年一貫制博士課程」、及び「学位の取扱い」について議論があった。特に、博士課程の制度設計については、研究者養成の基本的形態として5年一貫を推進すべきとの意見が多く寄せられた一方で、一貫制の博士課程にも一定の弾力性を確保すべき、「区分制博士課程」が十分に機能していない原因について検討すべきとの指摘もあった。これに関連して、博士課程における修士の学位の取得にかかる学生の負担を軽減すべきとの意見が多かった。また、いわゆる『満期退学/単位取得退学』等の取扱いについて整理すべきとの意見もあった。

<「区分制」博士課程と5年一貫制博士課程について>
研究者養成の基本的な形態として「5年一貫博士課程」を確立し、教育プロセスや学位授与に当たっての審査プロセスの明確化を図り、適切な学生の指導を行うべき。
長いスパンで研究できるのは魅力であり、5年一貫の博士課程については基本的に賛成。
一貫制を突き詰めると、外から見たときに、「修士」は博士課程をドロップアウトした者のための学位という評価が下されないか。
一貫制にも、例えば学生の滞留が起こりやすいとか、教員がアカデミックに走りがちとか、修士の学位を持って社会に出る者が落ちこぼれ扱いされてしまうという問題がある。
5年一貫については、現実にはここからこぼれる者もいれば、途中からここに参加したい者もいるはずなので、これに対応できるようにすべき。
一貫制であっても、中間的な課題がないと研究が進捗しないのではないか。
「区分制」が当初の理想どおりに機能していない原因を議論すべき。
区分制であればいったん修士課程を修了したあとで博士課程に入学する取扱いになってしまうが、一貫制だとこのような取扱いにはならない。この取扱いの差は問題ではないか。

<学位の取扱いについて>
博士課程を途中で退出した者の学位と、当初から修士課程を目指した者の学位とを異ならせるなどの工夫が必要。
博士課程の学生が修士の学位を取得する際の学生の負担を軽減すべきである。
「満期退学」や「単位取得退学」のような日本独特の取扱いをどうするか。
学位授与率が低いことは、博士論文の要求水準に問題があるのか、それとも指導のシステムに問題があるのか、明確にすべき。
学位は世界的に通用するもののみに絞るべきであり、現在、4百数十もある学位の名称については、今後整理すべき。

 大学院の研究機能の強化(施設・設備など)
 大学院の研究機能の強化策に関しては、これまであまり議論はされていないが、現時点で、「理想的大学院の構築」、「プロジェクト研究の推進」などの提案がされた。

<大学院の研究機能の強化策について>
「理想的な大学院」をひとつ作って、他を刺激するというやり方はどうか。
底辺の底上げのため、レベルの低い大学院をどうするかも考えるべき。
プロジェクト研究を推進することで異分野の研究集団を構成することも大学院の活性化に資する。

 学生に対する経済的支援と大学院修了者のキャリアパスの多様化の促進方策
 学生への経済的支援と大学院修了者のキャリアパスの多様化の促進方策に関しては、現時点で、パフォーマンスの高い学生への支援の充実や、博士候補制度の導入などが提言された。

<学生への経済的支援について>
世界に通用する大学院を作り、優秀な学生を確保するには、成績優秀者の学費免除や奨学金など、パフォーマンスの高い学生への支援」についてもっと踏み込んだ議論をしないといけない。
留学生の確保のため、寮などの施設設備や奨学金を拡充することも有効。

<学生のキャリアパスについて>
キャンディデート(博士候補)制度を設けることで、論文作成を促すとともに、海外大学で教育を担当できる道を確保することもひとつの策。
社会学の分野では、社会調査士などの資格を念頭に、アカデミックを指向しない学生が増えつつある。このほかにも各学会が資格を作り、学生にもこれを利用して就職しようという流れがあるため、専門職を目指す層は格段に厚くなっているが、逆にこれらが大学院のカリキュラムと十分にリンクしていないことは問題。

 このほか、大学院評価に関連して「大学院における高水準の取組を顕彰する制度の確立」が提言されたほか、生涯学習の機会提供と関連し、「大学院へのユニバーサルアクセス」への対応について議論すべきとの意見もあった。

4. 実効性ある大学院評価の確立
大学院における高水準の取組を見つけて普及する仕組みが必要。

5. その他
資格に結び付く内容を提供している大学院を全て専門職大学院としてカテゴライズしてよいか。
生涯学習の機会を提供するものとして、大学院へのuniversal accessをどう捉えるべきか。
私学と国立との学費の格差は問題である。このために、私学は学生を国立に奪われている。

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