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認証評価結果の公表について,水準評定と達成度評定については,社会的には公表せず,大学に対するフィードバックのみであると理解として良いか。なぜ,水準評定と達成度評定を認証評価の作業の中に組み込みながら公表しないのか。
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認証評価では,適否の最終的な報告と各評価項目についての詳細な概要や意見を公表している。その際,水準評定及び達成度評定の各項目の結果は,各大学のみに公表している。その理由は,現段階において,各評定が各大学にとっては意味があるが,一般社会にとって必ずしも意味があるとは考えていないからだ。公表に伴い,評価のネガティブな部分のみが取り上げられており,評価の実体や内容については各大学にしか分からない部分がある。そこで,大学の長所を積極的に示すようにしている。しかし,将来に向けて,どのように扱うかについては,課題であり,公表することも必要かとも考えている。
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短期大学基準協会の評価において,項目別評価やその観点の評価についてまで公表するとなると,当該大学が抱えている問題を共有化していくという作業がやりにくくなることが考えられる。公表により,評価書に率直な評価が表しにくくなる。一方,当協会でも,公開については,今後検討すべき課題であると考えている。
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ALOはどのような方に依頼しているのか。
また,専門分野別評価と機関別評価の関係について,どのように考え,実際にどのように実施しているのか。
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ALOは副学長あるいはそれに準ずる職位の者で,一定期間,短期大学全体の教育あるいは管理運営に携わっている者に依頼している。
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専門分野別評価と機関別評価の関係については,専門評価分科会と全学評価分科会とに分け,全学評価分科会では機関別評価を行っている。また,専門評価分科会では,学部等を単位として,教育研究活動の内容について評価を行っている。両者の評価結果を相互評価委員会・判定委員会が取りまとめ,最終的な評価を行っている。
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相互評価委員会・判定委員会は,全ての評価基準に関わるのか。それとも一部なのか。
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基本的には全てに関わっている。特定の学部等に関する事項は,専門評価分科会の答申を得て,相互評価委員会・判定委員会にて取りまとめている。
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我々の大学はこれまで複数の認証評価機関の評価を受けているが,評価を受ける側として一番問題だと感じるのが評価者の資質である。評価委員をどのように訓練していくのかが最大の課題であり,評価委員には集中的な訓練が必要であると考える。このままでは,7年以内に全ての大学を評価するのは非常に困難であり,1つの評価機関で600名の評価委員を動員して評価を行っていたのでは,大学の教員全てが評価委員になるような状況であり,今後,この問題をどのように解決していくかが課題である。
評価項目については,各機関によって様々な観点から評価を行っており,それ自体は問題ではないが,評価に当たり,各評価機関は自らの評価の方向性を明示し,評価委員はそれを理解した上で評価を行うことが重要である。また,評価委員の養成が最も重要であると考えるが,この問題については,文部科学省としてどのように考えているか。
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評価委員については,各認証評価機関が自ら評価委員を確保し,その質の向上を図ることが基本であると考えている。一方,研究委託事業費として1億5,000万円を計上し,各認証評価機関に対する財政的支援を行っている。各認証評価機関がこれを利用し,評価委員の質の向上に取り組んでいる。
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評価委員の質の向上については,短期間の訓練ではなく長期間にわたる訓練が必要である。しかし,600名もの評価委員に対して長期間の訓練を行うことは事実上困難である。その背景には,日本にはまだ大学を評価するという文化が定着していないということが言えるのではないか。また,評価委員にも能力に限界があり,質の確保と問題と人数の確保の問題で板挟みになっている。
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短期大学基準協会の場合,平成17年度に評価を担当した委員は,平成18年度の評価委員には採用しないとの方針を採っている。できるだけ多くの者に評価作業を経験させるためにこのような方法を採っている。これにより,平成19年度からは経験者と未経験者が半分くらいの組み合わせになると考えている。
異なる価値観を持つ評価委員が一定の価値観をを共有するためには,相当努力が必要であり,当協会では,本年度の評価委員の研修会は去年の倍の時間を確保している。
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認証評価機関が個々に特色を出しながら評価を行うことは結構だが,一方で労力の重複が発生しているのではないか。評価委員の訓練や情報交換等を目的とし,認証評価機関同士が緩やかに連携していくことが必要ではないか。また,国として,そのような動きを支援していくつもりはあるのか。
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個人的には,アメリカのアクレディテーションの仕組みも試行錯誤を経て現在の姿になっており,日本も今後徐々に仕組みを作る必要があると考えている。その中で,各評価項目について詳細な評価を実施しようとするため,多数の評価委員が必要になるのではないか。その意味では,大学分科会等において,質保証のために最低限どのような基準が必要かについて,議論する必要があるのではないか。また,引き続き,各認証評価団体の質の向上のために,必要な予算を確保し財政的支援を行ってまいりたい。
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現在の認証評価制度は達成度を主観的にボランティアベースで評価するものである。そのため,さらに評価を簡素化してしまうと,評価として,社会からの信頼が得られなくなるのではないか。そのためにも,ある程度細かく評価せざるを得ないのではないか。現在の評価システム自体が労力を使うような方向に向いており,この流れを止めるには,まずシステムの大元に立ち返って考えてなければならないのではないか。
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果たして認証評価制度がこのまま続いていくのかについては疑問がある。例えば,学生定員や財務状況については,データを見れば判断できるものであるにもかかわらず,それが実際の評価の中で大きな役割を果たしている。本当にこの制度が大学の質を保証しているのか疑問がある。中央教育審議会答申「我が国の高等教育の将来像」でも言われているように,大学をいくつかの機能に分け,それに合わせて基準や評価の標準を決めていく必要があるのではないか。現状のままでは,社会も評価に対して関心を示さなくなる。国の政策として,どのように認証評価制度を維持し,発展させるのかについて議論する必要があるのではないか。
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アメリカのアクレディテーションも基本的な面で変質しつつある。アメリカのアクレディテーションは,達成度を自主的評価することで,大学全体の質を向上さるという仕掛けであった。しかし,1970年代頃からのCOPA(The Council on Postsecondary Accreditation)による奨学金制度との結びつきや,1980年代頃からの大学のユニバーサル化により,学生が流動化・多様化する中で,学生のモチベーションが落ちた。それに対応して,大学が社会に対して有益であることを示さなくければならなくなった。その答えがアクレディテーションの仕組みの中から見いだせるかについては,かなり継続的に議論され,現在では具体的な提言が出ている。例えば,インプットに関して,かなり明確にデータベースを作ることについては,1990年頃から連邦政府がデータベースをつくり,現在では巨大なものとなっている。また,社会への説明責任を果たすには,アウトプットが必要であるとの認識のもと,アウトプットの検索が可能となった。最近では,アウトプットの能力ではなく,学生がどれくらい勉強しているのか,カリキュラムについてどう思っているのかといった,学生が大学をどう見ているのかについて,大規模な調査が行われている。また,計測できるものは計測するという動きもあり,何百名もの評価委員に詳細に訓練を行うよりは簡単なのではないかとも言われている。現在の枠組みで,ボランタリーベースにこだわってしまうことが,評価を硬直的なものにし,多大な労力を使う結果になっているのではないか。
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認証評価システムをよりよいものとするためにも,当部会でも議論する必要がある。また,評価機関に対する財政的な支援が必要である。特に評価委員に対する研修は,よりよい評価を行うためにも重要である。
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認証評価の根本になっている各大学の自己点検・評価の方法が,実施当初から比べて改善されてきたのかについては疑問がある。自己点検・評価の方法の改善が認証評価の改善にもつながっていくのではないか。例えば,各大学の自己点検・評価の実施が評価委員の研修にも役に立つのではないか。各大学の自己点検・評価の実施状況について整理する必要があるのではないか。
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自己点検・評価については,回数を重ねる度に合理的に評価できるようになるのではないか。その際,PCDAサイクルをどうするかが重要である。それには,スタッフが十分な訓練を積む必要があるが,回数を重ねることで機能してくるのではないか。
現在行われている機関別評価は,事前規制から事後チェックへという流れで行われているが,国際的な質保証を考慮すると,機関別評価だけでは不十分ではないか。機関別評価と分野別評価やプログラム評価との分担をどうするかについて検討しなければならない。また,認証評価機関が正確な評価を行わないと,認証評価機関の社会的地位が下がる恐れもある。評価機関に対する評価を行わなければ,民間が実施する評価でもいいのではないかとかいう社会的評価が生じる恐れがある。これについては,今後検討していかなければならないのではないか。
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今の国際的な質保証については,専門職大学院,特にビジネス系の専門職大学院の評価の問題と関係がある。分野別評価については,評価機関の自主的な発生を待つということであったが,ビジネスの領域はグローバル化が進んでおり,日本の評価機関で評価を受けなくても,外国の評価機関の評価を受ければ良いという議論が出てくるのではないか。事実,日本でもアメリカの評価団体(AACSB)からの評価を受けることで,ビジネス系大学院の社会的地位を上げようとしている例もある。一方,国内の評価機関が自国内の大学院の評価ができないという状況が出てくることも考えられる。専門職大学院の分野別評価の問題は今後も検討しなければならない問題ではないか。
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国際的な質保証とは,高いものを目指すという観点がある一方で,最低限,日本の最低基準を保証するという点も重要であり,むしろ後者が国際的な質保証では重要視される。最低限の質保証とは簡単に思えるが,実際に評価に携わると,これが如何に大変かということを感じる。
また,評価文化の醸成に関しては日本は現在その最中である。評価が信頼を得るために,より精緻なものが必要ではないかとの意見もあるが,評価機関内部では,むしろ如何に簡素化するかを議論している。なるべくたくさんの方々に評価を理解してもらうためにも,むしろ簡素化しなければならないと考えている。
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評価を巡る動きの全体を俯瞰しながら,よりよい評価の在り方を検討していくことが当部会の役割ではないか。
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