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1  基本的事項

高等教育機関が今後の我が国において果たすべき役割について
その中で、今後の大学が果たすべき役割について

 高等教育の役割は、人格の形成、能力の開発、知識の伝授、知的生産活動、文明の継承など、非常に幅広い。高等教育は、中等教育後の様々な学習機会の中にあってその中核をなし柱となり、社会を先導していくものである。

 学術研究の高度化、学習需要の多様化、社会の価値観の変化、国際化・情報化の進展等の中で高等教育が今後ともその役割を十分に果たすためには、各高等教育機関が競争的環境の中でそれぞれの個性・特色を明確にし、全体として多様な発展を遂げていくことが必要である。

  このような新しい時代にふさわしい高等教育大学の位置づけ・役割に関し、社会人受入れの推進等の生涯学習機能や地域社会・経済社会との連携も視野に入れる必ていくことが重ある。

  高等教育の中核をなす大学は将来の全人格的な発展の基礎を培うためのものであり、技能や知識の習得のみを目的とするのではないという大学教育の基本的特性を明確にすべきである。また、大学教育(学部段階・大学院段階を含む)としてのコア部分の整理を通じて、「大学とは何か」ということも明確化すべきである。

 「大学とは何か」を明確にし、今後の高等教育の展開を考えていく上で、学校教育法第52条に規定する大学の目的の単一性と実際の大学の多様性との関係をどう整理するかが重要となる。

 大学は、学術の中心として深く真理を探求し専門の学芸を教授研究することを本質とするものであり、その活動を十全に保障するため、伝統的に一定の自主性・自律性が承認されていることが基本的な特質である。また、このような大学における教育の課程の修了に係る知識・能力の証明として授与されるものが学位である。

 大学は、学術研究の推進や高度な人材の養成を通じて歴史的普遍性や国際性を志向するものであるとともに、時間的場所的な諸条件を限定された一個の社会的な存在でもある。したがって、大学についてはその自主性の尊重が本質的要請であると同時に、大学には自律的に時代や社会の期待に応えていく姿勢が求められる。

 19世紀ドイツ以来の「フンボルト的大学観」は我が国の大学の在り方に大きな影響を与えてきた。この考え方は、研究と教育を一体的に結合させるという大学の本質を明確にする役割を果たしてきたものの、大学人を第一義的に研究者であると自己規定し、研究成果の披瀝が最高の教育であるとする考え方は、主として少数エリートに対する大学教育の時代想定前提として成立するものであり、21世紀の今日ではもはや歴史的意義を有するに止まるのではないか。フンボルト以外にも注目すべき大学観として、例えば、オルテガが1930年頃のスペインの社会状況を前提として大学の使命を1教養教育2専門職業人養成3「それに加えて」科学としたものや、米国のクラーク・カーが著書「大学の効用」(1963年初版)の中で現代の大学を教育・研究・社会サービスの多機能を持った「マルチバーシティ」と考えたこと等が挙げられる。大学観も時代や社会状況に応じて変貌していくべきものと考えられる。

 大学は歴史的には教育と研究を本来的な使命としてきたが、我が国の大学に期待される役割も変化しつつあり、現在においては、大学の社会貢献(地域社会・経済社会・国際社会等、広い意味での社会全体の発展への寄与)が強調されるようになってきている。当然のことながら、教育や研究それ自体が長期的観点からの社会貢献であるが、近年では、公開講座や産学官連携等を通じた、より直接的な貢献が求められるようになっており、こうした社会貢献の役割を、言わば大学の「第三の使命」として捉えていくべき時代となっているものと考えられる。

 知識基盤社会化が国際的にも時代の流れであるならば、大学開放は大学にとって必須の事業活動と位置づけることができる。研究中心の大学であろうと、教育中心の大学であろうと、それぞれの個性・特色に応じた大学開放が考えられる。新時代の大学開放は、教育・研究機能等の拡張(extension)ととらえることもでき、社会への貢献として重要な意味を持つ。

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