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資料2
中央教育審議会大学分科会
制度部会(第6回)H13.12.18

中央教育審議会「大学におけるパートタイム学生(仮称)の 
社会人受入れの促進推進方策について」
(中間報告)(案)

はじめに

  本審議会は,平成13年4月11日に,文部科学大臣から「今後の高等教育改革の推進方策について」諮問を受けて,大学分科会において,多岐にわたる高等教育の課題について調査審議を進めている。
 このうち、短期大学・高等専門学校から大学院までの高等教育制度全体の在り方に関する問題については、6月に大学分科会の下に制度部会を設置して審議を行っており、現在、学生が個人の事情に応じて柔軟に修業年限を越えて履修し学位等を取得する新たな仕組み(いわゆるパートタイム学生の受入れ)について調査審議を行っている。
  また、大学院制度の在り方に関する問題については、同月、同分科会の下に大学院部会を設置して審議を行っており、現在、専門大学院1年制コース及び通信制博士課程について調査審議を行っている。
  このたび,大学等への社会人の受入れの推進方策の一環として、職業や家事等を有しに従事しながら大学で学ぶことを希望する人々の学習機会を一層拡大する観点から,学生が個人の事情に応じて柔軟に修業年限を越えて履修し学位等を取得する新たな仕組みについて,上記の部会におけるこれまでの審議の概要を以下の通り取りまとめたので,「中間報告」として公表することとした。今後,本審議会においては,「中間報告」に対する各界各層からの意見を踏まえつつ,更に審議を深めることとしている。


1  基本的考え方

  21世紀を迎え,社会,経済が急激に高度化,複雑化し,グローバル化が一層進展する中で,情報通信技術をはじめとする科学技術の進歩や産業構造の変化に起因する職業構造の変化に伴い,人々に必要とされる職業上,生活上の知識,技能が急速に陳腐化する状況が生じている。が急速に進んでいる。このため,個人が豊かで充実した人生を送るためには,このような状況に的確に対応して,新たな職業においても、生活においても、高度で先端的な知識や能力を適時適切に修得することが必要となってきている。社会全体にとっても,その活力を維持向上させていくために,時代の変化や困難な状況に柔軟に対応できる,最新の知識に裏打ちされた,課題探求能力,問題解決能力に富む有為な人材が求められている。このため、大学等においては、教員が各々の教育能力を向上させつつ、多様な学生のニーズに応えられる教育を行う必要がある。
  また,我が国の経済状況が低迷する中で,長期雇用を中心とする雇用慣行の変化や,企業内教育の減少,失業率の増大等を背景として,個人が自ら積極的に学習を行い,高度で多様な職業能力を開発・向上させ,雇用の確保を図っていく身に付けることにより、生涯にわたる就業の可能性を拡大することができるよう、新たな教育方法を展開することが必要となってきている。
  さらに,高齢化社会を迎えた我が国において,生き甲斐の充足を含め,個人がより一層豊かで充実した人生を実現することを目指して、人々の多様な生涯学習需要は増大する傾向にあり,これに応えて適切な学習機会の提供や,そのための体制整備を図っていくことが求められてきている。
  産業構造改革・雇用対策本部中間取りまとめ(平成13年6月26日)においても,経済のグローバルな競争が激しくなる中で,我が国の財産である人的資源を有効に活用し,中長期的に安定した発展をしていくためには,成長を支える高度な人材を育成していくことが不可欠であるとして,大学の積極的な活用により,世界にも通用する高度な人材育成のための環境整備を図ることを提言しており,大学等への社会人受入れを今後5年間で100万人規模に拡充することを求めている(社会人キャリアアップ100万人計画)。
  また,総合規制改革会議の「重点6分野に関する中間取りまとめ」(平成13年7月24日)においても,社会人のキャリアアップを強力に支援するため,社会人向け大学教育,大学院教育の更なる促進に向けての仕組み作りについて検討すべきであることが提言されている。

 以上のような様々な状況の変化を踏まえ、人々の高等教育に対する需要も個々の事情に応じて多様化してきている。
  例えば、高度で専門的な職業能力の向上を目指して大学院での高度な再学習を求める者、職業等による時間的制約から長期の在学での学位取得や通信制課程における学習を希望する者、あるいは、一般教養を高めるために大学等における学習を望む者等、多様な学習需要が考えられる。

  以上のような様々な状況の変化やこれらの大学に対する各界・各層からの要望,期待を踏まえ,各種の需要に対応するとともに、18歳人口が減少している状況等を踏まえ、我が国の大学は社会に一層開かれ、社会経済の活性化や地域コミュニティの形成に貢献する存在として,多様な年代の様々な事情を有する人々を積極的に受入れ,これらの人々に学習機会を提供していく必要がある。
 このため、本審議会においては、社会人等の大学等への受入れ促進のための各般の施策を踏まえ調査検討を行い、その一層の促進のための当面の具体的な改革方策について成案を得たので、以下の通り提言を行うものである。


2  具体的な方策

 学生が個人の事情に応じて柔軟に修業年限を越えて履修し学位等を取得する仕組みについて

(1)  大学における多様な履修形態の現状
  現在,我が国の大学においては,学生の様々な学習需要に対応し,多様な履修形態で卒業・修了要件を満たし,学位等を取得できるよう,昼夜開講制,夜間大学院及び通信制大学等が開設されている。(昼夜開講制(平成12年度):大学(学部)68校、大学院196校、夜間大学院(平成12年度):20校、通信制大学(平成13年度):大学院7校、大学(学部)23校、短期大学10校)
  また,大学が提供するあらゆる科目等を学生が自らの希望に応じて適宜選択し単位を修得することができる制度として,科目等履修生制度が設けられている。科目等履修生は非正規の学生であり,短期大学卒業者、高等専門学校卒業者等が科目等履修生として単位を習得し、大学評価・学位授与機構の審査に合格した場合を除いて、学士の学位を取得することはできないこととされている。

(2)  学生が個人の事情に応じて柔軟に修業年限を越えて履修し学位等を取得する仕組みの必要性
  昨今,職業能力の開発・向上や自己啓発等を目的として,職業等を有しながら大学で学ぶことを希望する人々が増えており,各大学では,これらの人々が学びやすいよう,上述のような様々な履修形態上の工夫が行われている。
  しかしながら,現状では,正規の学生として卒業・修了要件を満たし学位等を取得するためには,大学が編成する教育課程を修業年限に応じて履修することが必要であり,個人の事情に応じて修業年限を越えて履修を行う場合は,現状では一般的に留年や休学として取り扱われている。
  一方、諸外国においては、個人の事情に応じて修業年限を越えて履修を行い、学位を取得する正規の学生(いわゆるパートタイム学生)が制度的に存在し、多数在学している。
 学生が留年や休学として取り扱われることなく,個人の事情に応じて柔軟に修業年限を越えて履修し学位等を取得できるようにすることは,職業や家事等を有するに従事することにより日常的に様々な制約を抱える人々の学習を容易にし,各大学におけるこれらの人々の受入れを一層活発化すると考えられる。
  また,このことにより,通常の修業年限で卒業・修了することを予定していたものの,在学中に起きた何らかの事情で勉学意欲がありながら予定していた学習が困難となった学生が,留年,休学,退学をすることなく,学習を継続することも可能となると考えられる。
  さらに,昨今,非正規労働者として,自らの進むべき道を模索する若年層が増加しつつあるが,これらの人々が学問を通じて教養を身に付けたり専門的知識に触れたりする機会を拡大し,自らの社会的な役割を認識する契機の一つとなるとも考えられる。
  以上のことを踏まえ,職業や家事等を有しに従事しながら大学で学ぶことを希望する人々の学習機会を一層拡大する観点から,個人の事情に応じて柔軟に修業年限を越えて履修を行い学位等を取得できる新たな仕組みを,各大学が各々の判断で導入できることとすることが必要である。
  その際,学生個人の事情に応じて柔軟な履修を可能とする観点から,できる限り弾力的な仕組みとすることが適切である。

(3)  学生が個人の事情に応じて柔軟に修業年限を越えて履修し学位等を取得する仕組みの考え方

(1) (1) 対象となる学生の位置付け
  上記のような新たな仕組みの導入を各大学において積極的に推進していくに当たっては,対象となる学生の位置付けを明確にしておく必要がある。
  当該学生は,職業や家事等との兼ね合いにより,通常の修業年限在学する学生よりも1年間または1学期間に履修する単位数が少なく,修業年限を越えて在学することが予定され,それを各大学にあらかじめ認められた上で在学し,各大学の定める単位の取得等の要件を満たして卒業・修了することにより,学位等を取得する正規の学生(以下,「パートタイム学生長期履修学生(仮称)」という。)と定義することができる。
  (当該学生の名称については,本審議会において更に検討することとしている。)

(2) (2) パートタイム学生長期履修学生(仮称)を受け入れる学校種
  パートタイム学生長期履修学生(仮称)の多様な学習需要に対応し,大学における学習機会をできるだけ拡大する観点から,当該学生は,大学院,大学(学部)及び短期大学のいずれにおいても,それぞれの学校の判断により受け入れることができることとすべきである。
 例えば、短期大学において、社会人を含めた地域の学習需要に応えるために、多様な教育を総合的に提供する学科等を設け、長期履修学生(仮称)を積極的に受け入れることも一つの方法である。
  また,高等専門学校の専攻科についても,大学と同様に単位制を採用していることから,パートタイム学生長期履修学生(仮称)を受け入れることが可能であると考えられる。さらに,社会人の学習需要の高い専門学校についても,より柔軟な履修が可能となるようにすべきである。
  とりわけ,短期大学については,例えば,地域に密着したコミュニティ形成に資する教育研究の場として,「地域総合科学科(仮称)」を設置するなど,社会人の様々な学習需要に的確に対応しつつ,パートタイム学生(仮称)の積極的受入れを図っていくことが望まれる。
 さらに、専門学校においても、その自由で弾力的な制度によって、数多くの社会人を受け入れているところであるが、多様な学習需要に対応できるという利点を活かして、長期履修学生(仮称)も積極的に受け入れることが期待される。
  また,職業上必要な高度専門的知識・能力を修得することを目的として大学院への入学を希望する社会人のうち,学習時間等の制約により修業年限を越えて学習することを求める者が今後一層増大することが考えられることから,大学院においてもこのような需要に適切に対応してパートタイム学生長期履修学生(仮称)を受け入れていくことが必要である望まれる
  大学院修士課程においては,社会人の多様な学習需要に応えるため,予め長期の教育課程を編成し,標準修業年限を2年を越えるものとすることができることとされている(いわゆる長期在学コース)。一方,パートタイム学生長期履修学生(仮称)は,学生個人の事情により,大学等が標準修業年限に従って編成する教育課程の期間を越えて在学するものであり,いわゆる長期在学コースとは趣旨を異にするものである。
  なお,パートタイム学生長期履修学生(仮称)を受け入れるか否かの判断は,各学校が,各々の教育課程の目的や教育方法・内容等を考慮して自主的に行うことは当然である。

(3) (3) 在学年限及び年間修得単位数
  大学は,本来,学生が計画的に履修を行い学位等の取得を目指す場であることに鑑みれば,パートタイム学生長期履修学生(仮称)が在学できる最長年限については,各大学等において学則等で定める範囲内で,学生の希望を考慮しつつ定めることが適当である。
  その際,なお、期限を定めないで在学し履修することを希望する学生については,学位等の取得よりも学ぶこと自体を重視していると考えられることから,科目等履修生として受け入れることが適切である。
  また,パートタイム学生長期履修学生(仮称)の年間修得単位数については,より柔軟に履修できるようにする観点から,各大学等が定める上限の範囲内において学生が毎年自由に登録できることとすることが適当である。
  その際,実験・実習を行う課程においてはある程度継続的な学習が必要であること等を踏まえ,各大学においては,その教育内容や学生の要望等を考慮して適切な履修が行われるよう配慮することが必要である。
さらに,通常の修業年限在学することを予定していた学生が,仕事や家事等の都合で在学中にパートタイムより長期の履修への切替を希望することや,その逆の場合もあると考えられる。したがって,これらの状況に対応できるよう,学生の希望に応じて,通常の修業年限在学することを予定する学生とパートタイム学生長期履修学生(仮称)の履修形態の切替を可能とすべきである。ただし,怠学者等履修形態の変更に当たって相応の理由がないと判断される場合については,まで、この取扱いは認めないこととすることが適当である。を認める必要はない。
 もとより、学生の卒業時における質の確保を図ることは、大学等の社会的責任であり、長期履修学生(仮称)に対しても、厳格な成績評価を実施するなど、安易な単位認定や卒業を抑制することにより、教育水準の維持向上を図ることが必要である。

(4) (4) 配慮事項
  パートタイム学生長期履修学生(仮称)は修業年限を越えて在学することから,その授業料については,通常の修業年限在学する学生との均衡の観点から,に配慮しつつ、学生の負担軽減を図る観点から、修業年限分の授業料総額を学生が在学を希望する年限で分割して納めることができるようにしたり,単位制授業料制度を導入するなど,学生の負担軽減について配慮しつつ,設置者の判断により適切な方法で徴収することが求められる。
  設置基準の適用上や私学助成の算定上の収容定員の取扱いについては,パートタイム学生長期履修学生(仮称)は正規の学生として受け入れる以上,定員内の扱いとすることが適当であるが,パートタイム学生長期履修学生(仮称)の受入れを促進する観点から,その在学年限に応じて当該学生の実員に一定係数を掛けて算定方法を工夫するなど,その適切な取扱いについて検討すること対応が必要である。
  その際,パートタイム学生(仮称)と通常の修業年限在学する学生とを区別するために,パートタイム学生(仮称)については,別枠での入学制又は入学時の申告制等により,その人数を把握できることが前提となる。
  なお,パートタイム学生(仮称)を入学定員の枠内において受け入れる限り,教員の負担や必要な校地,校舎等の施設及び設備は増加しないと考えられることから,これらについては,現行設置基準を満たした上で,職業や家事等を有しながら大学等で学ぶ長期履修学生(仮称)に対しては、通常の修業年限在学することを予定する学生とは異なる、よりきめの細かい履修上の指導が必要となると考えられることから、各大学が各々の実状に応じて、アドバイザーを配置するなど適切な配慮を行うことが適当である。

  2  高度専門職業人の養成に特化した大学院修士課程1年制コースの在り方
 
 (省略)

  3  通信制博士課程の在り方
 
  (省略)



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