令和7年7月28日(月曜日)13時00分~15時00分
文部科学省 ※対面・Web会議の併用(傍聴はWeb上のみ) (東京都千代田区霞が関3-2-2)
(主査)森朋子 (主査代理)浅田尚紀 (委員)笠井正俊、葛城浩一、小林浩、斎藤有吾、嶌田敏行、中村真理子、林隆之、松浦良充、溝口侑
先崎大臣官房審議官(高等教育局担当)、安井高等教育企画課長、石橋大学振興課長、柴田国立大学法人支援課国立大学戦略室長、寺坂高等教育企画課高等教育政策室長、遠藤専門教育課専門職大学院、鈴木大学設置・評価室長
【森主査】
それでは,所定の時刻になりましたので,第5回教育・学習の質向上に向けた新たな評価の在り方ワーキンググループを開催いたします。
まずは,御多用の中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。
議事に入る前に,委員の出欠について御案内を申し上げます。本日は全員御出席ということになります。よろしくお願いいたします。また,本日もオブザーバーといたしまして,機関別認証評価機関の5機関に参加いただいております。よろしくお願いいたします。
加えて,事務局に人事異動があったということで,事務局から御紹介をお願いいたします。
【中島大学設置・評価室室長補佐】
それでは,7月15日付で人事異動がございましたので御紹介いたします。
高等教育局長の伊藤が退任いたしまして,後任として合田が着任しております。本日は所用により欠席でございます。
大臣官房審議官の森友が退任いたしまして,後任として先﨑が着任しております。
【先﨑大臣官房審議官】
先﨑です。よろしくお願いいたします。
【中島大学設置・評価室室長補佐】
続いて,高等教育企画課長の吉田が退任いたしまして,後任として安井が着任しております。
【安井高等教育企画課長】
安井でございます。よろしくお願いいたします。
【森主査】
よろしくお願いいたします。
【中島大学設置・評価室室長補佐】
以上でございます。
【森主査】
ありがとうございます。
新たなメンバーも加わりまして,また,熱い議論を重ねてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは,議事を進めさせていただきます。
本日は,経済団体からのヒアリングを実施した後に,これまでのヒアリングを通しての議論の整理について,意見交換を行いたいと思っております。
まず,評価結果を活用する観点から,経済団体からのヒアリングをいたします。まずは,一般社団法人日本経済団体連合会より,酒向教育・自然保護本部長,よろしくお願いいたします。
【日本経済団体連合会酒向教育・自然保護本部本部長】
経団連教育・自然保護本部長の酒向と申します。よろしくお願い申し上げます。
本日は,貴重なお時間を頂戴いたしまして誠にありがとうございます。今後の大学の認証評価への期待について,お話をさせていただきたいと思います。
スライド1を御覧いただければと思います。まず,私どもが本年2月に公表いたしました経団連の提言「2040年を見据えた教育改革」より,現状認識や教育への期待について御紹介させていただきます。
左のグラフ,皆さん御存じのとおり,18歳人口が急減し,労働力人口も減少するという,これは確定した未来があるということ。また,右のグラフでございますが,AI技術等の進展に伴い,社会が必要とする職種や能力が変化する中で,日本は現状,高いスキルを持つ雇用者の増加率が欧米に比して劣っているといった現状がございます。社会の変化を踏まえて,国民全体の能力強化が急がれると認識しております。
スライド2を御覧ください。国民全体の能力強化に向けて,上の四角囲みにお示ししているような方向性での人材育成を急ぎ,「最先端技術立国」,「無形資産立国」,「貿易・投資立国」を実現することを目指すべきだという意見を持っております。
また,その実現に向けて,本日の議論の中心である高等教育の改革は非常に重要な柱であると考えております。
スライド3を御覧いただければと思います。高等教育への期待(主要課題)として,3点ほど指摘させていただきます。
第一でございます。社会や産業構造の急激な変化を踏まえ,カリキュラムを不断にアップデートし,常に最新の知見や技術を取り入れ,高度化・多様化する能力やスキルを学生に提供し続けていただくこと。
第二に「出口における質の保証」を徹底していただくこと。
第三に,学修歴社会の実現に向けて,20歳前後の学生像から転換し,国民の学びを支える存在となっていただきたいと期待しておるところでございます。なお,経済界といたしましても,大学に対し求める資質・能力を継続的にきちんとお伝えする必要があるということは,しっかり認識しておるところでございます。
こうした高等教育への期待を踏まえ,認証評価制度の在り方について意見を述べさせていただければと思います。総括して申し上げれば,教育成果を見える化すること,それを社会に分かりやすく発信していただくこと,この2つを見直しの重要課題として考えていただけますと大変ありがたいです。
スライド4を御覧ください。こちらには「知の総和」向上の未来像の答申から,我々が共感している点を抜き出しておるところでございます。答申では,「在学中にどれくらい力を伸ばすことができたのかといった大学等の教育の質を数段階で示すなど,高等教育における付加価値を明確化する仕組みとすべき」といった点がまとめられております。こういった点につきまして,経団連としては,その方向性に賛同しておるところでございます。
また,答申をおまとめになる過程では,「学生の満足度や就職後の追跡等による評価も必要」といった御意見もあったと認識しております。そういった御意見にも賛同しておるところでございます。
現状の認証評価は,主に教育研究上の組織ですとか,教育課程の外形的な部分を中心に確認されておられると思いますが,学生がどれぐらい力を伸ばすことができたかといった教育成果に関する評価に力を入れていただけるとありがたいと思っておるところでございます。
続きまして,スライド5を御覧ください。認証評価への期待として,1点目,学修成果に関する認証評価を実施していただきたいということで,この点,主にスライド6に,例示として8つほど書かせていただいています。既に認証評価の対象となっているものが含まれるかと思いますが,特に下線を引いた項目の分析がなされることを期待しておるところでございます。こうした点につきまして,前回の会合における林先生のプレゼンを私が正しく理解できていればですけれど,TEFの教育的向上の項目について御発表されましたが,ご説明の要点としては,大学での学習を通じた変化量を図るとか,卒業後の学修歴や社会での活躍状況についても評価の射程とし得る,そういった試みがあるということをお示しいただいたと思っております。
この中で,教育歴とその後の雇用,所得などの情報を個人単位で長期的に追跡したイギリス政府のデータベースを活用されているといった御説明もあったかと思います。学修歴を蓄積,活用できる社会の構築というのは,国全体の能力を評価するという点で非常に重要であると思っておりまして,将来的には,政府のデータベースの構築と併せて,マル8にあるような項目も対象となっていくことを期待しておるところでございます。
スライド5にお戻りいただきまして,1ポツの2つ目の評価,期待感ございますが,認証評価について,社会的な注目度の高い学修成果については,定性的のみならず,定量的な評価も期待しているといったことをお伝えしたいと思います。
2点目でございます。スライド5の2ポツのところでございます。これは認証評価の結果を分かりやすく公表するといったところでございます。多くの大学の評価結果は,非常に大部な資料でございます。しかも複数の認証評価の機関が存在し,基準もそれぞればらつきがあるもので行われておりますので,受け取る側にとって分かりづらいといったところは否めないところでございます。
そこで,学修成果をはじめとする基盤となる部分は同じ項目で比較可能となるようなことを検討してはどうかと考えておるところでございます。先ほど述べました「知の総和」の答申でも,大学等の教育の質を数段階でお示しした上で公表するといった答申があったと思います。項目ごとにAとかBとかといった形で評価を公表しないと特徴がなかなか分からないといった御意見もあったと承知しておりまして,そういった考え方に我々も賛同しておるところでございます。
また,公表の方法につきましては,DXも進めながら,各大学が重点を置く教育や,その成果を一元的かつ横断的に比較できるようなデータプラットフォームの構築に国を挙げて取り組むことを,ぜひお願いしたいと思っております。
この点,「知の総和」答申で言及されたユニマップといったものに期待をしておるところでございます。
評価をどう活用していくかといった点でございますが,丁寧な教育を行っておられる大学には,その成果を踏まえて,手厚く支援されるような結果の使い方があろうと思いますし,我々経済界も評価結果を踏まえて,どこと組んでいこうかといったところも考えていけるのではないかと思っておるところでございます。認証評価の結果を社会とのコミュニケーション手段として活用できることが我々としての期待でございます。大学と産業界との対話が一層深まり,大学の教育・研究力の向上に資するような認証評価となることを我々としても願っておるところでございます。
私からは以上でございます。ありがとうございました。
【森主査】
ありがとうございました。
「学修歴」という非常に重要なキーワードを提示いただいたと思います。
では続きまして,新経済連盟,小木曽政策部長,オンラインからとなりますでしょうか,よろしくお願いいたします。
【新経済連盟小木曽渉外アドバイザー】
資料を用意していますので,そちらで説明させていただきます。
新経済連盟は2012年から活動を開始している経済団体としては一番新しい団体でありますが,主に,新しく自分で立ち上げた会社が多く所属しております。新経済連盟の「新経済」というのは,「新」と「経済連盟」で区切って考えられる方が多いのですが,「新経済の連盟」という意味で集めています。今回,わざわざこの名前の由来を申し上げたのは,まさに教育の在り方として,これから産業界としてどういう人物を求めていくかという中で,今回の評価制度をどう考えるかということを述べたいので,新経済連盟の趣旨を説明させていただきました。
資料に沿って説明させていただきます。大きく分けると,まず4つ項目がございまして,現状の制度自体をどう認識しているかを1ポツで説明させていただきます。
2ポツで,では,実際にどういう第三者評価(認証評価)だと良いのかという,目指すべきものとしての総論的なものの話をさせてください。
3ポツ目で,では,具体的に制度に落とした場合に,どのようなことを確保することが必要だという話を説明させてください。4点ほど指摘してあります。
最後,社会へのアカウンタビリティーということで,どのようなデータとかを公表していくべきかと,そのときに当たって民間から考える留意点みたいなことを述べて,閉じさせていただければと思います。
そもそも現状認識ですけれども,今,この制度を見直していくという方向性で議論されているかと思いますが,まさに我々の立場からしてもこの見直しが必要と考えており,ぜひ,前向きに見直しをしていただきたいと思います。
3点ほど重要なところがあると思っており,高等教育機関に対する評価が有効に機能している場合と必ずしも機能していない場合と二分化しているという指摘が各種資料に書いてありましたけれども,我々もそう思います。
それから,社会経済構造が大きく変化する中で教育自体をアップデートさせる必要があります。我々,別途,教育改革の提言ということで,文部科学省様,ほかの関係省庁様に提言を出しているのですが,キーワードとしては,やはり教育自体のアップデートであると考えております。そのような中で,当然,教育内容のアップデートに連動して,評価制度も変えていく必要があるだろうと考えます。
それから,産業界自身もこれからの時代がどうなるかと全部が予想できているわけではありませんが,その中で,今まで従来どおりに求められていた資質・能力を要請するだけでは足りないのだろうという重大な危機感はやはり持っていて,必要な能力・資質の要請につながっているのか,つながっていないのかということは大変重要なことだと思っております。これが現状認識の(1)でございます。
それから(2)は,大学の改革というのを対外的に発信していくことや,認証によるその意義とは何なのかという議論がされていることは各種資料で見受けましたけれども,これから少子化の時代で,圧倒的に子供がいなくなるという時代の背景を踏まえましても,高等教育機関が積極的に認証評価制度を活用することで,むしろ,自分の大学はこういうことを目指していますと言うことが,より本制度の意味を広く捉えると重要であると思っております。
それから(3)は言わずもがなですけれども,必ず両方併記されているので,忘れているという趣旨ではないと思いますけれども,質保証というのは当然の前提として,質保証だけではなくて,アップデートしていかなければいけない,あるいは,これからの時代,資質・能力というものが今まで問われていたものと違うものになっていくということでは,学習の質保証だけではなくて,学習の質向上というところも併せてやらなければならないと考えます。当然,認証評価の目的としても,質の保証だけではなくて,質の向上も併せてあるということが非常に重要なことだと思っております。
それから,(4)です。政策全体をつくるときにどう政策体系をつくり上げるかという視点ですが,従来,いろいろな答申を出されたり,文部科学省で政策を打たれていると思いますので,高等教育政策の掲げる政策目的は,当然,この前の答申のところで位置づけているのが最新の目標だと思いますけれども,そういうものとの関係とか,あるいは分かりやすく言うと大学評価の国際ランキング,大学評価の国際ランキングそれ自体をどう捉えるのかということ自体に議論はあると思いますけれども,ランキングが低下しているという事実は事実としてあります。そういったものに対して,外部的な客観的な指標に対して,どう引き上げていったり,どうしていくことが高等教育政策の中で定性的定量的目標なのかということを議論する中で,それにつながるような認証評価の在り方って何なのだろうかということも議論のシェアとして考える必要がある,というのが我々の現状認識です。
それから,(5)がAIの登場,これは既に中央教育審議会とかでも議論されていますけれども,学びの内容が抜本的に変わっていくということがありますので,そういうものと評価制度をどうリンクさせていくかが今後の検討において重要な観点であると考えます。
それから(6)について,大学での教育を変えると大学の教育の在り方が高校の教育の在り方に影響を与え,高校の教育の在り方が小中学校の教育の在り方に影響を与えるということで,要するに,ドミノ倒しという言い方はよくないかもしれませんけど,そういうふうに影響を与えていくということで,高等教育をどう評価するかということは,教育全体の中で非常に重要な問題だと認識しているところでございます。これが現状認識でございます。
今のような現状認識を踏まえた上で,目指すべき第三者評価というものがどういうことかということを2ポツで述べさせていただきます。3項目ございます。
最初の項目では,これは私が言うような話ではなくて,皆さん専門家がお集まりなので釈迦に説法なので大変失礼なことを書いているだけですけれども,自らの高等教育機関がどういうミッションやビジョン,ポリシーを掲げて,どのようなプログラム・カリキュラムを設けて実装しているのかということをまさに再考する機会にしていただきたいということが1点目。
それから,求められる人材像をコンピテンシーとして,質の保証とか質の向上というときに何を身につけるとそうなるのかというところがはっきりしていないと,質の保証とか質の向上といっただけではぼやっとしているため,コンピテンシーとして何なのかという提示をすることです。これは全てというよりは一例ですけれども,産業界からすると,どういう知識を持っているかということも重要ですけれども,それに加え,どのようなやり方で,どのように社会実装していくのかという工夫ができるかどうかですね。いわゆる「アントレプレナーシップ」という言い方をしますけれども,そういう精神をどう養っていくのかということが非常に教育に対しての期待として,経営者や弊連盟の会員企業に聞くと多いところがございます。それがあるので,別途,アントレプレナーシップ教育の必要性というのは小中学校の段階から,もちろん大学も含めてですけれども,各教育段階において必要であるということを示唆しております。文部科学省さんも本年3月に「日本版EntreComp v1」を公表していらっしゃいます。こういうことにも目配りする必要があるかなと。
(3)は国の支援制度とのつながりですけれども,質保証だけではなく質向上を行った高等教育機関について,マル・バツや適合・不適合というだけではなくて,要するに,もうちょっと高く評価しますよ,その評価に基づいて適切な支援がありますよと個々にインセンティブみたいな形にすると質の向上にうまく結びついていくのではないかということを書いています。
3ポツで,これを基づいて,では,具体的な制度設計としてどういうものが必要なのかということを書き出したものが以下でございます。4点書いています。2ポツの裏返しが3ポツになるので若干重なっている部分がございますが,(1)は教育の質の保証と向上の双方を達成するために,評価を実質的にしなければいけない。適合・不適合というだけの形式的な基準というよりは,実質的にどういう人材を輩出しているのかということを見る評価制度が必要である。
それから,大学全体では大き過ぎるので学部研究科,これはそういう方向で示されているので,そういう方向で基本的に賛成ですよという意味になりますけれども,そうしてほしいと。
それから,定性的定量的も大きな方向性としては示されていたと思います。そのとおりだと思います。
それから,国内外でいろいろな先行優良事例というのがあると思うので,そういうものをきちんと調査研究をして制度設計に反映してほしいというのがあります。
それから,経済界との接続の話です。知見の活用や経済界との連携ということで,評価をすること自体の枠組みの中で,経済界の声をどう反映させるか,すなわち,大学など高等機関を出た後に,社会の中で活躍していただくわけですけれども,受入先という言い方が正しいかどうか分かりませんが,経済界として,どういう声を求めているのかということを反映していただくという,非常に重要な話であります。そういうものについてどう仕組みをつくるのかということ,それから,個別の評価の枠組み,それ自体もそうですけれども,総論として,高等教育機関とか,評価機関とか,経済界の会議体というのを,常設も含めて検討すること,そのような意思交換などをする場があっても良いのではないかという御提案をさせていただきます。
それから,カリキュラムを含め,評価項目として,外部民間企業との連携など外部に公開されているということを評価項目の一つとしたらどうかという御提案です。
(3)は教育がアップデートされているかということで,AIとかデジタルに対する取組とか,現在の時代の変化に対してどのようなことをしているのかということも評価制度の中で位置づけてみたらどうかと。
それから,先ほど経団連様からもあったと思いますが,評価をするときに,卒業生を対象とし,実際に大学の4年間でどういう学習の実績があったのかということや,卒業した後,その後どうなっているのかというところをきちんと把握しないと駄目ではないかということは,我々もいろいろな会議等へ参加しますがやはり声は大きいと感じています。
最後は社会へのアカウンタビリティーということで,今,この制度の知名度が低いという話も出ていましたけれども,見せ方として,ダッシュボード的,最近,デジタル庁とかいろいろなところで政策のデータをダッシュボードとして世の中に出していくことがはやりというか,世界的にもそうですけれども,なっています。この見せ方をうまくやるということ自体,民間の知恵が活用できるところであると思いますが,データを見せながら分かりやすく評価をする。ここで言わないとそのような形にならないので敢えて言いたいのですけれども,評価を分かりやすくしていくためには,広い意味でオープンデータの一環ということになると思いますが,これについて,やはり積極的に国策としてやる話ではないかなと思っています。
それから,オープンデータのやり方も,加工されないようにということで,役所の方はどうしてもPDFで出してしまうので,それだと結局,いろいろな人がこれを使ってどう解析しようかということに活用しにくく,活用しにくいと使われないので,結局,どんなにいいものを使っても,知名度も上がらないままになるんですね。そういうきめ細かいところの工夫とか見せ方というのは非常に重要になってくるということをお伝えし,最後,話を閉じさせてください。ちょっと長くなりました。よろしくお願いいたします。
【森主査】
御体調の悪いところ,ありがとうございました。大変重要な示唆をいただいたと思います。
それでは続きまして,日本商工会議所山内企画調査部長,よろしくお願いいたします。
【日本商工会議所山内企画調査部長】
日本商工会議所の山内でございます。
3月末まで,産業政策や中小企業に関する部長として,長年,大学の皆様と産学連携してまいりました。
現在,地方創生も担当しており,地方創生事務局とは,人材育成や教育を一つの推進の核にできないかなという話をしているところでございます。今回は貴重な説明の機会を頂戴しましてありがとうございます。
評価の在り方への意見ということで,これまでの経営支援の実績や経験も踏まえて,認証評価制度の期待,質向上にどう活用するのか,地域・企業共創の取組を評価にうまく盛り込んでもらいたいという思いがあります。第三者評価や目指すべき人材像などをお伝えさせていただきたいと思います。
資料1-3の1ページ目を御覧ください。商工会議所は,商工会議所法に基づく組織であり,全国に515,会員は125万。日本の企業の約3割に会員になってもらっております。
ミッションは左下にありますように3つありまして,政策・提言と企業支援と地域活性化です。右上にありますように,商工会議所の会員には,企業のほかに,大学などの教育機関も含まれていて,例えば東京商工会議所は,現在70校の教育機関が会員になっています。加えて金融機関やNPOも会員ですので,地域をどうするのかという結節点としての役割をしっかりと果たしていきたいと思っております。こうした組織性格上,地域人材の育成という観点で,この評価への期待を申し述べたいと思っております。
スライドの2を御覧いただきたいと思います。下の図ですが,これは先日,石破総理との地方創生に関する会議に使った資料を抜粋したものです。一番上に課題がいろいろ書いてありますが,人口減少の中でも成長する経済にするには,地域で価値を創出していかなくてはいけないと考えております。左下のピンクの生産の部分ですが,価値創出するには人材が非常に大事です。ここを起点と考えますと,やはり,教育機関,そして私ども産業界との共創が鍵になってくると思います。先ほどありましたように,人材で求められる資質も多様化する中において,地方創生という観点からも,大学など高等教育機関の役割は,非常に高まっているものだと思っております。
スライド3は各地の商工会議所と大学の連携事例の一部です。ほとんどの会議所は高等教育機関と連携している状況です。こういったところをぜひ評価をいただきたいということも含めての事例ですが,右上の札幌は学生発のアイデアを地元でビジネス化するような動きになります。右下の静岡は,民間企業と共同研究して新商品開発を進めて,いろいろと販路拡大している事例です。左上はJETROと組みながら,海外展開,グローバル人材の育成を支援する動きになります。その下の京都は産業人材の育成です。商工会議所は簿記などの検定を持っておりまして,京都産業大学では簿記の検定も活用していただいております。右側に大正大学を書いていますが,日商では,ビジネス知識向上のためにマスター検定というものを持っております。ITなどを使うものですが,これの学生版の認定制度として日商アソシエーション検定をつくり大学と連携しながら,若者人材育成に活用しているところです。
4ページ目を御覧ください。商工会議所として,大学との接点で感じる3つの課題について,少し申し述べたいと思います。
1つ目は「人材育成」への対応と課題です。各地で大学と協定など,あるいはコンソーシアムというものを多く結んでおりますが,残念ながら,具体的な動きは出ていないというのが現状かと思っております。また,気になるところは,下に協力依頼とありますが,小中高からキャリア教育含めて,会議所への依頼は増加しておりますが,大学からの依頼は横ばいの状況であるという点です。
こうした中で,赤字でPointと書いてありますが,地域でどんな人材が必要なのか,各主体が共創するプラットフォームにどう参画して推進していくのか,さっき少し話がありましたが,初等中等教育と高等教育との連結がなかなかうまくいってないケースもあるようです。そのため,どうつないでいくのか。こういったところを積極果敢に取り組むような大学は,ぜひ,評価をしていただけるとありがたいと思います。
5ページ目を御覧ください。2つ目の課題は「産学連携」です。これは進んできていると思います。例えば,東京商工会議所では,大学など57機関と産学公連携相談窓口を設置しておりまして,企業からも,大学の「知」を有効しない手はないという声が寄せられております。ぜひ評価いただきたいのは,大学が自ら自分の強みを生かそうとしているのかどうか,地元や地域の資源・技術をどう活用支援しているのか,関わっているのかというところはポイントになると思っております。特に大学と企業の間で,言葉の壁がありまして,双方の思いが正しく伝わっていないところもあります。双方をつなぐようなコーディネーター機能のところに注力しているのかどうかも評価いただきたいと思います。
また,企業は,どうしても大学を敷居が高く感じてしまいます。大学側からも,ぜひ,活用方法や積極的なPRをどのくらい行われているのか,あるいは共同研究の成果を見える化する努力をしているのかなどをぜひ評価していただけるとありがたいと思います。
また,地域のまちづくりで考えますと,大学の施設には非常に関心があり,価値があると思っております。共同研究施設やラボ,オープンキャンパス,市民活用,あるいはシナジー効果の高い企業と連携する取組はより重要になってくると思います。商工会議所だけでいいますと,大阪の立命館大学は茨城商工会議所がキャンパス内に事務所を構えておりまして,こういった事例はまちなかキャンパスなどで一緒に取り組めるものではないかと思っています。評価の仕方については専門家の皆様にお任せしたいと思いますが,ぜひ,こういった点についても,評価していただきたいなと思うところであります。
6ページ目を御覧いただきたいと思います。3つ目の課題は,「人材確保」,企業から見ると採用です。新規採用の充足率が書いてありますとおり,4割の企業が採用計画の5割に届かないという中小企業の状況であります。いかに地元の中小企業の魅力を知ってもらうかというのは,地域の人手不足解消の鍵です。ぜひ,体験する機会が増えれば就職の選択肢も増えますから,大学と企業の共通認識の醸成やミスマッチ解消などの取組については,地域としては評価ポイントになると思います。
7ページ目を御覧いただきますと,これも人材確保の続きでありますが,仕事をする上で大事にしたい能力です。東京商工会議所の調査ですが,横棒のグラフがありますけど,上段が学校卒業後の新入社員で,下段が企業の声になります。企業側からしますと,やはり,主体性や規律性,社会人基礎力と言われるところの期待が高く,お互いに重視している能力には差があるという実態です。長年の課題である社会人の基礎力の徹底と併せて,ぜひ,こういったものを評価してもらいたいなと思います。教育課程の中に,この学科を卒業すると,どんな仕事に就いて,どんな生活ができるのか,イメージできるようにすることが,地域の人材育成にはとても大事だと思っております。
先週,気仙沼に行ってきましたが,地元に残った学生の中に,文学部を卒業して,賃金は高いが東京の大企業で銀行とか営業をするよりも,若干賃金は安いかもしれないが,大学で勉強した好きなことを行い,地域の学芸員などで生活するほうがいいという声がありました。自分から選んで入った大学の学部や学科ですので,好きで勉強したことを生かして地域に残る人を残す,全ての学科で今後のキャリアパスをイメージできるような課程,カリキュラムというものが必要なのかと思いますし,地元の企業も協力すると思います。こういったところも,ぜひ評価していただくと非常にありがたいと思います。
8ページ目が結論的なところでありますけれども,認定評価制度への期待についてです。企業側の認識は,制度自体を知らないとか,自社との関係性とか必要性を感じていないというものになります。この制度自体が教育の質向上にどう関係しているかが分からないというのが現状です。
しかしながら,先ほど酒向様からもありました学修履歴は,企業の期待も高いものかと思います。ぜひ,適切な評価と分かりやすい公表を徹底していただいて,住民や企業の理解促進,地域により開かれた大事な大学であることを後押しするような制度になっていただければと思っております。
成績評価とか論文・研究,年代を超えたリカレント,これらの必要性は十分理解されておりますので,地方創生の観点からのポイントを列記しております。例えば,地域や産業が必要とする人材の育成・輩出,地元でどの程度,就職,活躍しているのか。大学の特徴を生かした研究や調整が行われているのか。企業とのアクセスも含めて,連携の実績がどうなのか。共同研究や地域貢献,この活動成果というものがしっかり明確に公表されているのか。360度評価ではありませんけれども,学生含めて,先ほどありました経済界の声を多様なステークホルダーの声をいかに反映しているのか。そして,せっかくある制度ですから,組織の改善とか質向上にいかに活用しているのか。こういったところはぜひ注目をしたいと思っております。
改善点を下に2つ書いてありますが,評価基準はぜひ統一化していただきたいと思います。総合的,横断的に評価を比較可能なものとしていただけると分かりやすいと思います。私から評価してもらいたい項目をいろいろと言いましたけれども,評価する側もされる側も評価疲れになってしまっては困りますから,なるべく,この基準は分かりやすく,簡素化する方向でよい形にしていただきたいと御期待申し上げるところでございます。
最後,9ページ目です。上段に書いていますけれども,今後,AIの普及とトランプの関税もありますし,社会経済環境は限りなく激しい状況になると思います。大学もこうした環境に柔軟に対応していく必要があるかと思います。その際には,地域や企業のつながりというのは,これを知る,あるいは大学の重要性を訴えていく重要な接点になると思います。詳しくは説明しませんが,オレンジで3点,評価いただきたいなと思うような項目を列記しております。地域人材の育成,産学連携と共創,地方創生への貢献の3つです。こうした地域貢献を重要性評価の指標としていただき,制度を複雑にならないよう段階判定とかで高く評価するなど,なるべく負担にならないような配慮をしつつ,ぜひ,申し上げた評価項目をうまく取り込んでもらえればと思います。
そして最後に,政府には,こうして評価された大学,高等教育機関には,運営費交付金や各種補助金などの財政支援の拡充をぜひお願いしたいと思っております。
商工会議所としては,非常に一緒にやりたいと思っているところでありまして,期待しているところでございます。
私からは以上でございます。
【森主査】
時間がない中,ありがとうございました。
では,最後でございます。公益社団法人経済同友会様からは書面資料をいただいておりますので,事務局から説明をお願いいたします。
【鈴木大学設置・評価室長】
資料1-4を御覧いただければと思います。経済同友会様から資料をいただいております。
まず,1ポツの教育の目指すべき姿でございますけれども,経営同友会は,「価値創造人材」の育成というものを掲げて,いわゆる自発的な探求を促し,他者との相互作用の中で学びを深化させる「育てる教育」への転換が必要であるということを記載いただいております。
その上で,2の新たな高等教育の質保証・向上システムに関する意見です。まず,(1)の評価の在り方ですが,新たな認証評価制度では,制度的適合性の確認という役割にとどまらず,卒業数年後の活躍など,社会における教育の実質的なアウトカムを重視することで,高等教育の質的転換を促す戦略的ツールとして設計されるべきではないかということを意見としていただいております。
また,高等教育機関が産業界や地域社会と連携して人材育成に取り組むことを促進すべく,認証評価制度においても,外部との対話や協働の取組を対象とすべきであるということも記載いただいています。
さらに,特色ある教育研究に果敢に取り組むことができるよう,認証評価制度では,挑戦,差別化,高等教育機関の多様性を尊重する柔軟さを備えていくことが重要であるということを意見としていただいております。
(2)評価基準・項目のあり方ですが,産業界や地域社会に求められる資質・能力の伸長など,実質的なアウトカムを把握する観点から設計されるべきであるということで,3点いただいております。
2ページ目,1つ目は,卒業後の進路満足度,企業による人材評価,実務適応力など,教育成果の妥当性を検証する視点が求められるという点です。
2つ目は,高等教育機関における各種取組の可視化と外部への発信,定期的な対話や連携の状況,地域課題解決型の教育・研究の推進状況などを評価項目に含めるべきであるという点です。
3点目は,いわゆる戦略的な意思決定とか教職員の役割分担,外部ステークホルダーとの透明性ある関係構築など,ガバナンスを評価する項目を盛り込むべきであるということをご意見としていただいております。
次に,(3)評価結果の公表,活用のあり方です。まずは高等教育機関と社会との信頼性の構築,教育研究質向上のためにも,誰もが容易にアクセスでき,全ての高等教育機関の評価結果を目的に応じて比較・分析できるデータベース形式で公表すべきであるということを指摘いただいています。また,定量的な結果だけではなく,教育・研究活動の強みや改善点,特徴などの定性的な項目についても整理して提示することが必要ではないかという御意見もいただきました。あわせて,自己点検・評価の結果やIRデータも一元的に参照可能とすることで,高等教育機関の情報開示も加速することも考えられるのではないかという御意見をいただいております。
続いて,(4)効果的かつ効率的な評価のための対応です。評価の項目の中で,共通化できる項目は特定の機関に集約し,各認証評価機関には,各高等教育機関の特色を踏まえた評価に特化させることで,評価体制全体のスリム化・効率化を推進すべきであるという御意見をいただきました。
あわせて,評価委員への登用による外部ステークホルダーの関与の増加,国際的な認証制度との整合,教育成果の可視化指標(ラーニング・アウトカム)の開発も必要ではないかという御意見をいただいているところでございます。
以上でございます。
【森主査】
ありがとうございます。
ここまで,4団体の御意見を伺ってまいりました。この後は20分程度,質疑応答の時間とさせていただきます。
酒向様,小木曽様,山内様にお答えいただくことが可能でございますので,どなたへの御質問かということを明示して御質問いただければと思います。いかがでしょうか,挙手をお願いいたします。
では,小林委員,お願いいたします。
【小林委員】
小林でございます。御説明ありがとうございました。
私も企業人でございますから,ほとんど考え方は似ているところでございますが,1点確認させていただきたいのが,大学は,個性化して,高等教育の特色を踏まえた多様性を担保していくというのがまず前提にあって,そのために,ミッション,ビジョン,ポリシーといったことも言われていたと思います。
一方で,共通項目による可視化というのがございました。それを段階的に,皆が分かりやすく提示していくというのがあったのですが,一方で,コンピテンシーとか,アントレプレナーシップとか,価値創造人材とか,なかなか定量化しづらい項目も,かなり出てきたのではないかと思います。こうした定量化できない項目について,例えば経団連さんなんかは,企業の採用と大学改革への期待に関するアンケートによると,2つの創造力といって,コンピテンシーとクリエイティビティーとイマジネーションということをこの調査の詳細ではおっしゃっていたと思うのですが,こうしたなかなか数値化できないものに対して,段階的に評価していくようなアイデアが何かあれば教えていただければと思うのですがいかがでしょうか。これはどの団体の方でも構わないのですが,なかなか可視化しづらいものを,産業界としては可視化して,共通認識で比較検討できたらいいと思うのですが,それをどのように可視化の道筋に乗せていくか,何かアイデアがあれば教えていただきたいです。
【森主査】
ありがとうございます。
どなたからでも結構でございます,定量化しづらい項目の可視化について,何かアイデアがありましたら,お三方から御発言いただきたいと思いますが,いかがでしょうか。
【小林委員】
では,酒向さんからからお願いします。
【森主査】
では,酒向様,お願いいたします。
【日本経済団体連合会酒向教育・自然保護本部本部長】
先ほどおっしゃったアンケートが資料のどこに記載があるか,教えていただけますか。
【小林委員】
資料に記載はなく,もともと経団連様のホームページに出しているものになります。
【日本経済団体連合会酒向教育・自然保護本部本部長】
まず,全て数値化して,全て比較可能にしてくださいということは申し上げておりません。ただ,ベースとなるようなものについては同じ項目で比較可能とするのがいいのではないかと思っておりますということです。
おっしゃっている数値に表しにくいものはもちろんあると思うんですけれど,それは,それぞれの学生さんが,自分が在学中にどう変わったと思うのかという自己分析もおありになると思うので,それはアンケート調査などでできるのではないかなと考えます。
あとは,前回,林先生から御提示いただいたいろいろな取組があるということも踏まえて,数値化に向けた取組はあるのではないかと思い,今回,発言させていただいております。できるところはあるのではないかと思っております。
【小林委員】
いえ,ありがとうございます。
【小林委員】
山内さん,いかがですか。
【日本商工会議所山内企画調査部長】
ありがとうございます。
ずっと創業支援を行ってきており,アントレプレナー教育というのは非常に大事だと思っています。おっしゃるように,一律で可視化して比較すること,どこまで育ったかとかというのはなかなか難しいところです。企業の人に,実際,大学や高校に行ってもらって話をしてもらう中で,学生の声として,起業や,地元でそういったものに対する関心がどのくらいあるのかは,地域によってはアンケートをとっているところはあります。どんな講座をやるとどんな人材になるかを研究することはそれも,これをやったからといって,それを受けた人がどれだけいいかというのはなかなか分からないところです。実際に今受けられている学生の感想というのもありましたけど,前向きな意向のところの学生が持っている関心度とカリキュラムの質がどうなっているのかということ。あとは,起業や創業など,卒業後にどう生きて活躍しているのかというところは一つのバロメーターになるのかなという気がします。
【森主査】
申し訳ありません,他に多くの委員が挙手していますので,ここで一回区切らせていただきます。小木曽様,挙手いただいていたところ申し訳ありません。
次以降,申し訳ありませんけれども,皆さんにお聞きしたいという気持ちはよく分かるんですが,進行の都合上お一人指名いただき御質問いただくような形でお願いしたいと思います。
今,私の画面上では,笠井委員,葛城委員,林委員,斎藤委員,嶌田委員,溝口委員が挙手されておりますので,この順番でお願いいたします。
では,笠井委員,よろしくお願いいたします。
【笠井委員】
では,経団連の方に御質問いたします。ほかの団体もそうだったのですけれども,出口における質の保証というのは,恐らく就職とかで誰を採用するかということを考えると,企業にとっては重要だろうと前から感じているのですけれども,それとの関係で,ワーキンググループで検討している中にある一つの課題として,大学に入ってから出るまで,どのくらい力を伸ばしたか,どのくらい学生をきちんと教育したかという,伸びた度合いみたいなものをどうやって測るかという論点があるのですけれども,そういうことについて評価をする意味が企業にとってどの程度あるのかということをお伺いしたいと思います。
また,それと関係があるのですけれども,大学ごと,あるいは学部ごとの場合もありますけれども,例えば新聞などで,企業の採用担当者の方がこの大学はこういうところがいいと言っているといった,大学ランキングみたいなものを発表されたりするのですけれども,ああいうのは,私なんかは,採用された従業員のうちでどの人がいいというのは分かるのですけれども,大学ごとにそんな順番や点数なんかつけられるものだろうかというのは少し疑問に思うのですけれども,今日の話とはちょっと違うかもしれませんが,ああいうのは本当に信憑性があるものでしょうかということを伺いたいと思います。
【森主査】
酒向様,お願いいたします。
【日本経済団体連合会酒向教育・自然保護本部本部長】
後者の質問については,私も先生方にどのように受け止めておられるか伺いたいなと思うところです。
【笠井委員】
良い評価があったらうれしくなるということはあるのですけれども,疑問もあります。
【日本経済団体連合会酒向教育・自然保護本部本部長】
有力な新聞社様,出版社様が非常に,かなり力を込めて,評価されていらっしゃると思うんですけれど,公的な機関が,ランキングというよりも評価してグルーピングするイメージで評価をしていただくという形があったほうが良いと,思います。
もう一つの質問については,恐らく企業が一番注目しているのは,その方々が学び続けようという意欲を持っているとか,そういったところが非常に注目しているところでございまして,出口というのは,この点数が取れるようになりましたという出口ではなくて,入学から卒業までに,様々なご指導を受けて,学び続けられる力とか,自分たちが何か社会問題を解決するために,問題意識を持って,どんなデータをとって,それにどうやってアプローチして自分の考えをまとめていくかというような訓練がなされて,こうした点について,入学時と卒業時と比べて,学生さんが自分に力がついたなというような満足度があるかどうかというところは,かなり採用の方々も注目されるポイントだと思っております。その辺りは,意識調査などで捉えられる数字もあるのではないかなと思っておるところでございます。
以上になります。
【笠井委員】
どうもありがとうございました。
【森主査】
ありがとうございました。
続きまして,葛城委員,お願いいたします。
【葛城委員】
葛城です。
私からは,新経済連盟の小木曽様にお尋ねしたいのですが,資料1-2の3の新たな評価制度に求めるものの4点目に,卒業生の学習実績や卒業生のその後の動向の把握なども必要であると書いていただいております。確かに非常に重要だなとは思っているのですが,現実問題として考えたときに,なかなか卒業生調査というのは難しいところがあって,何をどこまでというか,あるいはどんな情報が必要と考えておられるのかということで,もう少し詳しくお伺いしたいというところです。
卒業生の学習実績というものがどういうものを意味しているのかということと,卒業生のその後の動向の把握について,例えばどういうことをイメージしておられるのか,その2点をお伺いできればと思います。
【森主査】
小木曽様,よろしくお願いいたします。
【新経済連盟小木曽渉外アドバイザー】
学生の卒業までの実績というのは,先ほどの学生時代にどこまで学んだかということについて違う書き方で書いたので,新しい意味合いがあるわけではないと御理解いただけれれば。
【葛城委員】
では,学習実績については在学中のお話だったということでしょうか。
【新経済連盟小木曽渉外アドバイザー】
そうですね,なので,後段について回答いたします。後段のところは,私もそれを書きながら何回もどうするかというのは,確かに難しいところがあって,ちょっと議論をしなければいけないなと思っているのですが,確かに,大学で学んだことをどう社会で活かせているかということが,学校側としても教育の成果を量る情報として重要であると考えます。この点についても争いがあるのかもしれませんが。教育で得た成果を発揮する場というのは,社会や研究でということになりますが,大学を出て,社会に出てから,どう活躍できるかというところも大学で学んだことの成果を役立てるということの一つだと思います。そうすると,そこのフィードバックがないと,大学で何を学んだかということを,大学のカリキュラムを含めて,ニーズと合っているのかということが分析し切れないと思います。ここまでは総論的な話です。
では,詳細をどうとるかというのはすごく難しくて,多分,確定的な答えというのは今ないとは思いますし,民間企業側も大分協力しないとできない話でもありますので,要するに,無責任なことを言っているものではなく,経済界としてもこれをやるとすると,かなり御協力をしなければいけないなということは思って書いています。なので,学修成果をどう使うことができたかというフィードバック,要するに実学的な意味合いとして使えたということが,大学のところで分かりやすくフィードバックとして出てくる,例えばPBL的に学ぶことができたことが社会で役に立つ,企業で働いていく上でも役に立ったとかということがフィードバックとして出てくると,大学のカリキュラムの在り方などについて検討することができ,評価の一つの項目のしやすさになるかなということでイメージを書きました。よろしくお願いします。
【葛城委員】
ありがとうございました。
【森主査】
ありがとうございました。
続きまして,林委員,お願いいたします。
【林委員】
ありがとうございます。
商工会議所の山内様にメインでお聞きしたく,あと,もし時間があれば酒向様にもコメントいただければと思いますが,共通して,大学改革,教育改革の必要性と,今行われている認証評価の乖離が大きな問題だと,きっと,皆さん御認識されていると理解しました。
その上で,この認証評価に,具体的に今から申し上げる3つのオプションがあったとしたらどう考えるのかということをお聞きしたいです。どれかを選ぶというイメージではないんですけれども,1つ目は,そもそも産業界は認証評価の評価結果というものを読みたいと思っていらっしゃるのかどうかという点です。今日お話を聞いても,別に評価結果は読まないのではないかなと思いながらも,山内様の話だと,もしかしたら評価結果を産業界と大学の対話の材料に使うというのはあるのかなと思っているのですけれども,そういう評価結果を,つまり,我々の議論の中で,産業界も読みやすい,読んで意味があるような評価結果にすべきかが1点目です。2つ目は,評価結果は読まないけれど,評価の基準を通じて,大学が人材育成のやり方をアップデートしてくれればいいのだというスタンスに立っていらっしゃるのかどうかという点です。3つ目は,酒向様の話で特によく出てきたのですけれども,個人学修歴のような話,大学全体というよりは個人の学修歴とかのナショナルなプラットフォームであるとか,あるいはコンピテンシーのテストの結果であるとか,あるいはスキルバッチみたいなものであるとか,そういうものをもう少しプラットフォームをナショナルに整備して,そういうのを通じて大学評価もして,産業界としては,そういうプラットフォームを見たいと思っていらっしゃるのかどうかという点です。この3つのオプションがあるなと思いながら聞いていたのですけれども,どうお考えなのかというのをぜひお聞きしたいと思います。
【森主査】
山内様,お願いいたします。
【日本商工会議所山内企画調査部長】
ありがとうございます。
まず,この評価結果自体は,きちんとやっていればそれなりに評価されると思います。この評価自体を個々の企業が見るというところよりは,さっきおっしゃったように,このプラットフォームを各地でつくっていく必要があるときに,どういう方向に向かっているのか,2番目の質問と同じように,この基準を通して,どういう方向に学校として向かっていくのかという判断するときには非常に参考になると思います。ただ,私もこの話が来るまで,大学評価に関してあまり意識はしていなかったものですが,せっかくですので意識すべきだと思いますし,そういった議論が地域の中でできるといいと思います。先ほど質問にありましたが,各種調査結果を見て,こっちの大学のほうがいいと親が判断し,学生が都市部に出ていってしまう現状があります。学校がどんな方向性で教育を行っているか,地域の大学がどういうものかが地域に浸透すれば,一概に何でもいいからもうとにかく東京に行てしまおうとかいうことにはならなくなると期待しているところです。
あと,個人の履歴についても,これから兼業・副業が当たり前になる中で,国としてもある程度データとかを整備していくのであれば,そういった個人の履歴が見えてくると,企業のほうも採用しやすくなると思います。
【森主査】
せっかく個人の学修歴の話がありましたので,酒向様,一言コメントいただければと思います。
【日本経済団体連合会酒向教育・自然保護本部本部長】
3つから選べというのはちょっと難しいなという気が正直ありまして,全て期待するところです。今のままですと認証評価は読みにくく,コミュニケーション手段としては厳しいなと思っていますのが正直なところです。
3つ目は,やはり今後大学の在り方としては,学修歴社会の一つのコアになるのが大学の存在だと思っているので,学修歴社会の担い手としての大学と,学修歴社会を生きる子供たちを育ててほしいという,この2つがあります。その学修歴社会像をつくっていくという話の中では,やはりデータベースは必要じゃないかなと思っていて,その卒業後に係るデータベースがあれば,大学の取組みとあわせて評価することで大学の質の向上に向けて,いい効果が現れるんじゃないかなと思っています。
企業さんが欲しいのは,ずっと学び続けられる方ですということなので,そういったマインドで18歳から22歳,もしくはその後の国民を,どういうふうに大学様として対応されていらっしゃるのかというところを見られると,すごくありがたいなと思っています。そういう大学さんとは一緒にカリキュラムを組んでやりましょうかとか,一緒にカリキュラム創造をしましょうかという話で御相談しやすくなるという,そういったイメージでございます。
以上でございます。
【森主査】
ありがとうございます。
続きまして,斎藤委員,お願いいたします。
【斎藤委員】
斎藤です。ありがとうございます。小木曽様にお伺いしたいのですが,今,論点として学位プログラムですとか,学位のための学問分野を背景にした教育というものをやってきて,それでどういうふうな力が育つのかというのを,個々人レベルで見るというよりは,プログラムとしてそれが保証できるかというのがこの質保証の議論だというふうに考えております。もちろん,個々人が育つのも大事だと思うのですが,プログラムとしてそれがどういうふうに育てることができるのかというところです。
その際に,アントレプレナーシップとかリーダーシップ教育は一昔前にございましたし,あと地域の話もございました。こういった,いろいろ新しく出てくる教育に関して,どこまでそれぞれの専門分野は担保していくべきかというところに関して,お考えがあればお伺いしたいです。
といいますのも,例えば自然科学系とかで,工学のほうであれば割と社会の実装とかというところで,そういう新しい教育に親和性の高いところと,あと純粋数学ですとか,なかなかちょっと離れているところですとか,それぞれの分野によって,それぞれの教育に対する親和性みたいなところがあるのかなと思います。
こういったことを踏まえまして,学問分野の位置づけとしてどのように考えていけばいいのか,お考えがあればお願いいたします。
【森主査】
では,小木曽様,よろしくお願いいたします。
【新経済連盟小木曽渉外アドバイザー】
ここは結構争いがあって,すみません,ちょっとこの話が正しい比喩かどうか分かりませんが,プログラミングを教育に導入すべきだというときに,プログラミングそのものを教科にするか,プログラミング的思考でやるのかというところの問いがあったと思います。あの時は,プログラミング的思考というところで入れるということになりました。今回全然関係ないですけれど,AIの話というのは情報科という中で教えるのか,小中でも今は別途時間をつくってやるかという議論をしているという部分もあります。
私のイメージとしては,一つ学問があって,各項目,各学問のアントレプレナーシップ自体は,素養としては全てに共通することなので,全てのそれぞれの学問に対する基礎素養として必要なベースになるものであると同時に,それを体系だって一つ学ぶ必要もあるというのが私のイメージであります。
その中で,ではアントレプレナーシップ教育というのをどこに位置づけるかというところに,定義あるいは外縁がはっきりしないところがあるので,それで文部科学省さんが,OECDとかEUとかで議論をしているところのアントレプレナーシップ教育にまつわるコンピテンシーのところを日本版に直すという形で,ガイドブックを最近,3月でしたか,作られていたと思います。
ただ,多分ガイドブックも,今後議論するためにまず第1弾として出したので,今,御指摘いただいたところは,結論がはっきり出ているわけではないと思います。私としては,一つの学問として置くべきだというイメージで書いています。
以上です。
【斎藤委員】
ありがとうございます。
【森主査】
今,小木曽様がおっしゃっているのは,この「日本版EntreComp V1」という,こちらですかね。
【新経済連盟小木曽渉外アドバイザー】
それです,はい。
【森主査】
ありがとうございました。
では,続きまして,嶌田委員,お願いいたします。
【嶌田委員】
企業さんが欲しい人材と,大学が送り出したいといいますか送り出している人材との間に恐らくギャップがあるのかと思います。11月にAPQNという評価機関といいますか質保証機関の国際会合が香港であるのですが,アジアのそのような会合でも,産業界とのギャップをどうするか,ということがテーマになっていますので国際的にもそうですし,日本においてもそういうギャップがあるんだなと感じております。
厚生労働省のホームページによれば,大学生は98%が就職しているというデータがありました。就職希望者分のうち98%が就職できて,学校基本調査のデータを見ていると8割ぐらいの学生が4年で卒業できているという状況です。
このように,4年でほとんどの学生は就職できるという状況であれば,大学としては,「学生の多くが自分の行きたい分野に就職できない」とか,企業さんから,「大学は教育目標とかディプロマ・ポリシーを掲げているのに,その大学から採用した学生が,それらのことを全然できないじゃないか」というクレームがたくさん来て,学生が採用してもらえないとか,そのような状況が展開しているのでしたら,大学としては「授業が悪いのかな,カリキュラムが悪いのかな,もっと質を高めなきゃまずいよね」と思うと思うのですね。でも実際,学生は何となく卒業できてしまうし,何となく就職できてしまうという状況かと思います。もちろん企業側も条件に合致しない学生は就職させない,というような状況になって就職浪人がいっぱいいて,大学もディプロマ・ポリシーを厳格に運用して卒業できない人いっぱいいるという社会が望ましいというわけじゃないのですけれど,現実としてそういった状況の中で,じゃあ我々は何をすればいいのかを考える必要があると思います。
認証評価については,これまでは法令適合性を見ていこうという,車検のような感じで,「この車は大丈夫なのかな」みたいな感じでやっていたのを,もっと本当に質が高いのか低いのかみたいなところを見ていくみたいなことを考えていったときに,どんなギャップを埋めればいいのかを考える必要があると思います。
だから今回,皆さんが本当に一番埋めてほしいギャップは何ですかという,そんなところをお伺いしようかなと思ったんですけれども,時間の都合もあるのでコメントとさせていただきます。
別に大学がサボっていたわけではなくて,内発的動機として質を向上しようという気持ちになれない原因というのが別にあったのではないかという点をコメントさせていただきます。
以上です。
【森主査】
ありがとうございます。大変重要なところですけれども,御質問ではなくコメントと受け取らせていただきました。
では最後,溝口先生,よろしくお願いいたします。
【溝口委員】
溝口です。すみません,小木曽様にお伺いをしたいなと思いまして,資料の中の3,新たな評価制度に求めるものの2のところです。経済界の知見の活用や経済界との連携というところで,会議体の創設とか,評価の枠組みに経済界の声を反映させるというお話があったかなと思うのですが,ここを詳しく,もう少し教えていただきたいなと思います。要は,この会議体をつくることによって,経済界が現状どういうことを考えているのか,今回みたいにまとめる形で一気に意見をもらうというお話ではなくて,常時話をしていく中で,大学に対して経済界が今どういう人材を欲していて,また,どういう人材を送り込んできてほしいのかという話をしていくというようなイメージなのかなと思うのですが,そのような声をこの評価の枠組みに反映させていってほしいという中で,評価自体ですかね,この認証評価の評価者として企業人が入っていくという考え方もありますし,声を反映させるというときに,どのレベルで産業界の人間というのが,今回の新しく変わっていく認証評価に関わっていくのがいいとか,そういったところのイメージがありましたら,もう少し教えていただければと思います。よろしくお願いします。
【森主査】
小木曽様,よろしくお願いいたします。
【新経済連盟小木曽渉外アドバイザー】
反映の仕方というのはいろいろなやり方があって,一番のダイレクトにあるのは,評価者として民間の経済人が入るということだと思います。評価機関の評価の際に。それも含めて私は書いています。
そうでなくても,評価基準を策定したりするところに,ヒアリング先として民間団体などに意見を聞くというやり方もあると思います。だから,運用する上での総論的なところで民間の意見を聞くというのもあれば,個別の審査のときに民間の経済人を入れるところもあると思います。
ただ,そこは,踏み込んでどちらかというふうに書かなかったのは,法律上の立てつけなどのところで,第三者性というところの関係で,やはり教育と民間は連携すべきだと思うのですが,適切な関係性が必要だとも思うので,そこら辺でどう考えるかというところは議論があるかなというのがあったので,ふわっとした書き方で書いています。
それから,会議体の話は,会議ではいろいろなことを議題で話せると思っていて,まさに今,先生がおっしゃっていただいたような話をするというのもあるし,何か,できていないじゃないかというつるし上げをする会議を開いてくださいという意味合いで言っているのではなくて,経済界,それから大学側で,それぞれ思っているところや抱えている問題を出し合って,評価としてどういう項目が足りている,足りていないや,そういうのがあると良いんだ,みたいな話を,定期的に話をする機会があれば良いのではないか。
お互いに話をすると,お互いが知らないことについて知るだけでも意味があって,今後の実際の運用に関わってくると思うのですけれど,わざわざ会いに行ったりするということ自体が結構難しいので,それであれば,定常的な会議体をつくって,まず会うという前提をつくったほうが僕はいいと思っております。
多分そこは文部科学省さんに音頭を取ってもらって,会議体をつくると非常に良くなるのかなと思います。多分,誰かが1人で考えて何かできるという世界ではなくて,すごく難しい問題だと思うので。この,教育をどうするかというのは。
あと,経済界の場合,別に教育の専門家ではないのですが,どういう教育をしてほしいかとか,どういう社会人になってほしいかということを伝える役割ができると思うので,そういうことを会議体でできればというふうに思っております。
すみません,以上でございます。
【溝口委員】
ありがとうございます。
【森主査】
ありがとうございました。
まだまだ御質問,お聞きしたいことは尽きませんが,時間の都合にて,これで議題1を終了させていただきます。
議題1関係の皆様,酒向様,小木曽様,山内様,本当にありがとうございました。ここで御退出いただいて結構でございます。御多用のところ,御参加いただきましてありがとうございました。
続きまして,議題2に移りたいと思います。これまで4回,多方面からヒアリングをさせていただきました。ここまでの議論の整理と今後のスケジュールにつきまして,事務局から御説明をお願いいたします。
【鈴木大学設置・評価室長】
資料2を御覧いただければと思います。
先ほど森主査からもお話がありましたように,これまで4回,各種ヒアリング等を通じまして,非常に様々な御意見をいただいたところでございます。改めて御礼申し上げます。
そこでいただいた意見を整理いたしまして,今後こういう方向で検討していきましょうというペーパーとしてまとめさせていただきました。なので,これでもって何か結論付けるという性質の資料ではなくて,これからこういう方向で検討してはどうかという形のペーパーというふうに御理解いただければと思います。
なお,このペーパーの中に,御覧いただければ分かると思いますが,点線囲いで,これから深めていくべき項目・視点というものも併せて追記させていただいているところでございますので,そういう建付けのものとして御覧いただければと思います。
資料2でございますが,大きくは第1部と第2部に分かれているところでございます。第1部につきましては,新たな評価の基本的考え方ということでございまして,1ページ目の1ポツでございますが,これにつきましては,これまでの質保証の考え方と課題を整理させていただいたところでございます。
大きく4つの丸で,これまでの認証評価の考え方を整理させていただいた上で,課題としては大きく3点,挙げさせていただいたところでございます。
①でございますが,現在の認証評価が社会に対して訴求力が弱いのではないかと,そのような御意見をいただいているところでございます。
その上で2ページ目の②でございますが,評価に当たり,評価者・被評価者双方の負担が重く,そのインセンティブが感じられないのではないかという事務の負担感,認証評価がどういうことに使われているのかというのが分かりづらいというところの徒労感というところが挙げられているところでございます。
③でございますが,認証評価を通じた内部質保証の意識を大学全体で共有できていないのではないかという点です。当然,認証評価結果は,高等教育機関によっては内部質保証に活用しているところもあるのですが,必ずしも全ての教員,職員がそれを共有できていないのではないかという御意見をいただいているところでございますので,記載させていただいたところでございます。
その上で,3ページ目でございますが,改革の方向性というものを記載してございます。これにつきましては,もともとこのワーキングにつきましては,令和7年2月のいわゆる「知の総和」答申で御指摘いただいた提言を踏まえて,検討をスタートしたところでございます。
なので,先ほど御紹介した①から③の課題,「知の総和」答申の提言の内容を踏まえて,大きく以下の方向性で,現在認証評価制度の改革を行ってはどうかというものでございます。
(1)につきましては,学修者本位の教育を引き出す評価制度の構築ということでございます。これまで大学設置基準等の法令適合性とか,教育環境水準の教学に係るシステムなど内部質保証の確認ということを中心にやってきましたが,これは引き続き重要であるというふうに思っておりますが,その評価を基盤にして,高等教育機関が自ら掲げた養成すべき人材像やいわゆる3ポリシーを起点としながら,学生が在学中にどれぐらい成長したかという学修成果を可視化して,その結果を踏まえて,各高等教育機関自らがさらなる改革・改善が進められているかという観点から評価すべきという点です。そこをまさに新たな評価制度としていくべきではないかという,これが大きな方向性の1つ目でございます。
2つ目でございますが,社会に開かれた質保証・質向上の実現ということでございまして,高等教育機関は,これまで以上に教育活動,自律的な改革・改善を行うに当たっては,社会からの理解と支持を得ることが必要不可欠であろうということでございます。
3ページ目から4ページにかけての記載でございまして,社会からの理解と支持を得ることが不可欠であるならば,社会に理解されやすい形で,この評価結果についても公表される仕組みを構築してはどうかというものでございます。
(3)でございます。効果的かつ効率的な評価の実現というものでございます。これも先ほど課題の中にありました徒労感・負担感というところの指摘を踏まえまして,評価の手続につきまして,より効果的・効率的な評価というものを行っていこうということで,デジタル化やデータベースを積極活用することで,評価事務手続の簡素化・効率化を図っていってはどうかというのが,大きな3つ目の方向性でございます。
この大きな3つの方向性を踏まえた上で,新たな第三者評価というものは,評価の主体,対象,視点,手続,公表・活用の大きな5点の論点ごとに新しい評価を検討していってはどうかというものでございます。
第2部が,この①から⑤まで掲げた視点を踏まえまして,それぞれ詳細を記載したものでございます。
まず,1ポツの評価の主体,誰が評価するかでございますが,これにつきましては,今も認証評価機関は16機関ございます。その認証評価機関がピア・レビューを通じて評価を行っているところでございますので,今の認証評価機関が評価の主体として,かつピア・レビューを行って,第三者評価を責任を持って実施することが必要であろうということを考えているところでございます。
一方,課題の中にありましたように,その評価の基準・観点が必ずしも一致しないということであったり,評価の手法が異なるということで,効果的・効率的な評価手法が十分に共有,実践できていないのではないか,アカウンタビリティーという点からも問題ではないかという御意見もいただいておりますので,3つ目の丸でございますが,評価に当たり,必要な基準・項目をより明確化するということと,評価機関間の評価の観点・手法の共有を図って,ばらつきをなくすための調整の場を設定するという方向性で検討してはどうかということでございます。
(2)は評価主体の質の確保でございますが,これにつきましては評価者の質というところの問題と,併せて,評価機関についても評価の質の担保を図っていくべきではないかということでございます。
6ページの3行目を御覧いただければと思いますが,評価機関自身も,現在,自己点検・評価のサイクルを実施していただいております。評価機関に対して,文部科学大臣が認証を与えるところでございますけども,その評価が適正に行われているかを確認するシステムを設けることも検討してはどうかということを記載させていただいたところでございます。
次の7ページの2ポツからは評価の対象でございます。評価する単位・対象をどことするかというところでございます。2つ目の丸ですが,先ほども少し御説明しましたとおり,高等教育機関全体の内部質保証システムの構築,これは一定の成果を上げてきているというところでございます。
ただ,教育研究の基本的組織である学部・学科,研究科ごとの教育の質を評価して,改善につながっているかというところについては,まだまだ課題があるのではないかというところの御指摘をいただいたところでございます。
それを踏まえまして,3つ目の丸でございますが,新たな評価において,教育の質について評価を行うということであれば,各教育課程を通じて能力を育成して,知識,技術,技能を修得させ,学位という形で学修成果を証明しているということでございますので,原則で言えば学位プログラムごとの評価という視点が重要なのではないかと記載しております。
その一方で,4つ目の丸でございますが,今は学部・学科等の,教育研究上の基本的組織を設置して,教員も配置しておりますので,設置の際も学部・学科・研究科単位で認可を得ていることを踏まえますれば,学位の分野に基づく,学部・学科・研究科ごとの教育の質の評価を重視する制度に向けて,引き続き検討していくべきではないかということでございます。
続いて3ポツは評価の視点でございます。
まず,(1)の評価の基準・項目でございますが,先ほども言いましたように,新たな評価というものは,各学部・学科・研究科の教育目標たる養成すべき人材像や,ディプロマ・ポリシーなどの3つのポリシーに照らして,学生が必要な学修成果を上げられているかという点を可視化して,改善・改革に活動できているかというものの評価を中心に据えていく方向性と考えています。
したがいまして,この観点からの評価に注力できるような制度的な措置を検討してはということを考えているところでございます。
それに当たって,研究という観点につきましては,3つ目の丸でございますが,教育と研究の往還というものが高等機関においては非常に重要な視点でございますので,この新たな評価においては,その研究力やその成果が教育にきちんと還元できるかどうかという点に留意すべきではないかということを書かせていただいたところでございます。
4つ目の丸でございますが,教育の質というものを評価するに当たっては,今後のワーキングの一つのアウトプットの形としてはこういうことを考えてはどうかということを書いているところでございますが,教育の質を評価する基準・項目,こういうものの指標を定めるとともに,具体的な評価基準・項目,指標のモデルを示すことを引き続き検討してはどうかということを書かせていただいたところでございます。
併せて,5つ目の丸でございますが,先ほどもいろいろ意識調査の話とかも経済団体の皆様からございましたが,これまでも,アンケート等,学生の自己報告を通じてエビデンスを得る間接評価が中心でありましたが,やはり学習評価は,第一義的には学生の知識・能力の表出に伴う直接評価によって行われることが必要でございますので,直接評価と間接評価の双方の観点で,学修成果の可視化を行っていくことが必要ではないかということでございます。
その次,6点目の丸でございますが,併せて,教育の質の向上につながる優れた取組,各高等教育機関がそれぞれやっている優れた取組,特徴的な取組についても,積極的に評価できる仕組みになるよう留意することが必要なのではないかということを書かせていただいたところでございます。
次の9ページの1つ目の丸でございますが,先ほども言いましたように,学部・学科・研究科を重視する評価を行っていくのであれば,仮に共通的な基準・項目を設けたとしても,当該分野の独自性とか国際基準に照らして,別途評価基準・項目を追加することは許容してもいいのではないかということを記載させていただいております。
次の丸でございますが,今の認証評価は基本的に法令適合性を中心に見ているところでございますが,この法令適合性に関しては文部科学省との役割分担,データベースを活用して,法令適合性の確認を,認証評価機関ではなくほかの形で,こちらの負担を減らしていくことが必要なのではないかということを書かせていただいたところでございます。
さらに,その次の丸でございますが,高等教育機関の負担の軽減ということから考えれば,仮に新たな評価を導入するに当たって,既存の教学に関する調査・点検を行っているものについては,整理・統合を併せて検討すべきであろうということで,国立大学法人評価における教育に関する現況分析については,廃止を含めて検討してはどうかということを書かせていただいています。
さらにもう一つ下は,国際的な評価機関による認定等について,大学にインセンティブが働くように,新たな評価において,大幅に業務を簡略化するような取組を検討してはどうかということを書かせていただいているところでございます。
ここまでが基準・項目でございまして,(2)が評価の結果の在り方でございます。ここにつきましては,今は「適合」「不適合」という形で評価結果を公表しているところでございますが,2つ目の丸にありますように,やはり高等教育機関として必要なのは,教育の質をきちんと測ることが必要であるというふうに考えてございます。
しかしながら,偏差値や立地等により,必ずしも各教育機関が行っている教育の質とは直接的に関わりがない価値判断で,社会的評価であったり進路選択であったりが行われている現状があるので,そういうものを打破するためにも,やはり教育の質というものを分かりやすく評価,発信する必要性が高いということを書かせていただいております。
併せて,今であれば「適合」「不適合」という形でしか公表されていませんが,それが仮に段階的な評価ということになれば,より進んだ取組,先進的な取組が分かりやすくなるということになりますので,それを取り入れた形で,高等教育機関が自己改革・自己改善に取り組むことができるということも期待できるのではないかということを踏まえまして,段階別な評価を導入する方向で,引き続き検討してはどうかということを書かせていただいたところでございます。
次の丸でございますが,ただ,段階別評価をするに当たっても,いわゆる課題を追及・指摘するのではなく,やはりできたことを褒める,さらなる高みを求めて自己改革ができたところを認めるというような形の評価制度にしていくべきではないかということを書かせていただいたところでございます。
(3)でございます。これについては,ディプロマ・ポリシーの再検証でございますが,これから新しい評価を仮に行っていくに当たっては,各高等教育機関が養成すべき人材像,身につけるべき資質・能力というものを,改めて各高等教育機関として適切なものになっているかどうかというものを再検証していただく必要があるのだろうということを書かせていただいたところでございます。
11ページでございます。評価の手続でございますが,ここについては,データベースを構築して,より評価機関,大学についても負担が軽減するような取組をしてはどうかということを書かせていただいてございます。
評価のサイクルにつきましては,評価基準・項目や手続の全体像を明確化した上で,最終的に判断すべきでありますが,視点としては,医学部が6年制であることや,国立大学法人の中期目標が6年サイクルであるということを書かせていただいたところでございます。
評価手続の効率化につきましては,現在の細目省令においては,実地を必ず行うことになっておりますが,オンライン面談に代えることも認めてもいいのではないかという視点から書かせていただいたところでございます。
次に,12ページでございます。評価結果の公表・活用でございますが,評価結果の公表につきましては,社会へのアカウンタビリティーというものを加味するのであれば,しかるべき主体が評価結果を一元的に公表して,フォーマットに統一性を持たせるということ,公表する内容につきましても,特に必要な内容に厳選して公表するなど,社会が利用しやすい公表の在り方を構築するということを考えております。
また,「知の総和」答申では,Univ-mapというデータプラットフォームが書かれておりますが,ここに新たな評価結果も掲載してはどうかということを書かせていただいたところでございます。
いずれにいたしましても,新たな評価結果を公表するということになったときには,いわゆる序列化を惹起するようなことがないよう配慮することが必要だという御意見をいただいておりますので,そのように書かせていただいたところでございます。
(2)でございます。評価結果の活用の在り方でございますが,新しい評価につきましては,今は大学評価基準がそれぞれの評価機関によって様々ということがありますので,国の政策の活用ということが難しい状況でございますが,これまで検討の方向性で書いたように,細目省令において必要な項目を明確化し,手法とか観点の共有を図る場を設置することで,要は評価結果の活用につなげることができるような,評価を共通化することができるのではないかということを考えているところでございます。併せて,いい評価結果を得たところに対して,何かしらのインセンティブを与えてはどうかということを書かせていただいたところでございます。
最後に,13ページでございますが,これにつきましては,新たな評価と設置計画履行状況等調査の連携ということで,今も設置計画履行状況等調査という,大学とか学部・学科を設置した際に,いわゆる完成年度まで文部科学省の方でやっている調査がございます。
この調査において,是正・改善意見については,今も評価機関に対して伝達をしているところでございますが,定員未充足の対応であったり,教職員の編成に関する意見がほとんどということでございますので,大学設置分科会設置計画履行状況等調査委員会において,是正・改善意見のほかにも,教育の質の向上に対する様々な意見をいただいたときには,申し送り事項として評価機関に伝えて,評価への活用を促すということを考えてはどうかということを記載したところでございます。
以上が現時点での,これまでの現状の整理でございます。併せて今後の日程については,資料3を併せて御覧いただければと思いますが,今日ここで委員の皆様から御意見いただいた上で,そのいただいた御意見,今日,経済団体からも意見をいただきましたので,それを踏まえながら,また8月4日に,ここまでの議論をもう一度再整理した上で,改めてもう一度この会議の場議論していただきたいというふうに考えているところでございます。
私からの説明は以上でございます。
【森主査】
まずは,雑駁ないろんなことをここに集約いただいた事務局に,御礼を申し上げます。まとまって,こうやって新たに見ますと,いろいろな観点が網羅されているということと,いろいろな,また違う御意見もあるかなというふうに思います。
事務局に確認なのですが,今日この後,残りの時間で皆様に意見をいただいて,さらに御発言が十分ではなかったときにはメール等でもお送りいただき,それを反映したものが8月4日に出てきて,その時もまた議論をさせていただいてアップデートすると,そんなイメージでよろしいでしょうか。
【鈴木大学設置・評価室長】
作用でございます。
【森主査】
承知いたしました。
では,残りの時間,あと20数分でございますが,今の御説明に対して自由にディスカッションをしてまいりたいと思います。どうぞ,挙手のほどよろしくお願いいたします。
まずは斎藤委員から,よろしくお願いいたします。
【斎藤委員】
ありがとうございます。先ほどの議論の内容とちょっとかぶるところがございますので,ぜひ考えをお聞かせいただきたいのですが,やはりアントレプレナーシップですとか生成AIですとかデータサイエンスみたいなところというのは,学問分野の中に埋め込んでというよりは,全学的なミッションとして,いわゆる共通教育ですとか教養系の科目とかでやっていくみたいなことが起こり得るかなと思います。
その時に,学位,あるいは学問分野,ディシプリンというものをベースにこれから質を保証していくという議論の中で,そういう全学的なミッションですとか,新たな社会の対応みたいな教育というのは,どう評価対象とするべきなのかなというところを,少しお聞かせいただきたいと思います。いかがでしょうか。
【森主査】
ありがとうございます。
事務局,よろしいですか。では石橋さん,お願いいたします。
【石橋大学振興課長】
ありがとうございます。今御議論いただいている方向性であれば,評価単位は学部・学科,研究科ごとということになりますので,おっしゃるとおり,全学で取り組んでこられたことをどこで見るかというのは,この後の制度設計にも大きく関わってまいりますし,ぜひ先生方の御意見を頂戴したいなと思っておりまして,それはまだ,それをやらないと決めているわけでは全くなくて,じゃあどうすれば,まさにここまで各大学様が取り組んできてくださった,全学共通でいろんな取組をしていこうということを評価できるのかを考えていきたいと思います。2つやり方があると思っておりまして,学位を授与するに当たって,当然,全学教育を基盤としてお出しになっているという観点から,学部・研究科ごとに見るというやり方もあると思いますし,全学のところは全学のものを確認した上で,学部・研究科のものを見るというやり方もあるかと思います。あとはもちろん,評価機関側がどのような体制でやっていただくかなど,少し細かく詰めていかなければいけないかと思いますが,そこはどちらも考え得るのかなと思いますし,また第三の道があるかもしれないのですけれども,先生方のアドバイスをいただきながら,議論を進めていければなというふうに思っております。
以上でございます。
【森主査】
斎藤委員,いかがでしょうか。
【斎藤委員】
ありがとうございます。
【森主査】
ありがとうございます。
では続きまして,浅田委員,お願いいたします。
【浅田主査代理】
まず,最初にお尋ねしたいのですけれど,本ワーキンググループの名前が「新たな評価」ということで,今日の説明でも「新たな評価制度」というのは何度も出てきていますが,「新たな認証評価制度」とは言われず,「認証評価制度」を分けて使われています。「新たな評価制度」全体の中に「認証評価制度」が包含されていて全体を見直すという,そういう枠組みと捉えてよろしいですか。
【鈴木大学設置・評価室長】
我々といたしましては当然,現在は,第三者評価で大きな役割を果たしているのは認証評価制度だと思っております。当然,認証評価制度を見直す中で,評価に関するその他諸々の周辺的なところも見直していく必要があるのだろうということを考えておりますので,「新たな評価制度」という言葉を使わせていただいたところでございます。
【浅田主査代理】
評価制度を包括的に見直すのは大事なことだと思っています。認証評価制度は現在動いていますので,それをどう見直すかという話では,やはり,現実にとらわれた形になるので,評価制度全体を見直すという意味で使われたならいいなと思っています。ただ,今日のお話を聞いていまして,というか今までの一連のお話を聞いていて思うのは,先ほど嶌田委員が,企業と大学のギャップという言い方をされたのですけれど,認証評価にも理想と現実のギャップがものすごくあると私は思っています。これは埋め難いギャップがあって,理想をずっと語っていても,現実は追いついていかないと思っています。
認証評価制度について,今日の企業の方のお話もそうなのですが,何か全部解決してくれる万能制度のようなことを言われるのですが,そんなことはあり得ないのです。というのは,ピア・レビューで評価する制度ですので,基本的には同業者間で相互支援するという枠組みです。だから,向上に向けた支援はできると思いますが,強制力がないので,質の最低限を保証する能力はないと私は思っています。
認証評価制度を今のままでどう変えていくのか,それとも,ドラスティックに変えてしまうのか,という点で言えば,今日の資料で文科省が考えられている方向性で現実的に実現できるのは,恐らくNIADに全部任せてしまったらいいのだろうと私は思っています。
つまり,今の認証機関に対して,文科省が指示して,それぞれの基準をそろえて,評価の質をそろえるということを言われますけど,それははっきり言って,本当にできるのかなと思っています。それなら,実際に全データを集めて,いろいろな分析もされる能力があるNIADにお任せして,内部質保証,それから学部・研究科等の質保証,質向上もお任せしたらいいのでは思います。
今の認証機関に改善・向上してもらって,ここで書かれているものが本当に実現する未来があるのだろうかということについて,私は悲観的になっているところがあるのですけれど,その辺りはどうお考えなのでしょうか。
【森主査】
ちょっと難しい御質問だと思いますけれども,フィージビリティーがあるか,実現可能かということだと思いますが,その辺はいかがでしょうか。石橋さん,お願いいたします。
【石橋大学振興課長】
ありがとうございます。もともと,「知の総和」答申にこれが書かれたときから,このようにフィージビリティーの議論は大きくいろんな方面でされていると,我々としても認識をしております。
そのためにと言ったら変ですけれども,先生方の御知見をお借りして,どういう形で実際やっていけるのかということを考えていくというところで,このワーキングに御議論をお願いしてきているというのが現実のところかと思います。
評価機関の皆様方も参加してくださっておりますし,我々も議論をさせていただいておりますが,実際,今回のこの仕組みの趣旨というのは,大学で学んでいる方々,高等教育機関で学んでいる方々が,やはりその学びに対して自分の成長を実感できたり,実際学位を出すというところに対しての大学側の保証がどうなっているのかというのを確認したりするという,そういう評価に変えていくことが学修者本位そのものの実現であるという,中教審の強い意思の中で議論がスタートしていると思います。
それを実現するためにどういうやり方がいいのかというところについては,おっしゃるとおりフィージビリティーをしっかり見ていかなきゃいけないと思うのですが,まずはその大きな方向性に向けて何ができるかということを,我々も当然事務局として考えさせていただきますし,先生方の御知見をお借りしたいというのが率直なところでございます。
【森主査】
ありがとうございます。ただ,それが前提にならないと,できるかできないかということになりますので,事務局には徹底したシミュレーションをお願いしたいと思いますし,また,それを私どものほうに提示いただければと思います。
ありがとうございます。続きまして,松浦委員,お願いいたします。
【松浦委員】
ありがとうございます。まずは,8ページに教育と研究の往還ということを書き込んでいただいて,大変,私,気になっていたことですので,このこと,大変感謝しております。
それから,今の浅田委員の御発言とも関わるのですが,この5ページにある,ピア・レビューを維持しながら協議会による評価の整合性を確保するというのは,これはずっと長い間の課題だったので,大きくどういう方向にしていくのかというのは必ず議論しなきゃいけないことだと思うのですが,私の理解では,調整の場というか,協議会自体は既に存在しているように伺っているのですが,ここで書かれている調整の場というものと,既にある協議会との差異をどう捉えればいいのか,今,事務局でのお考えを伺えればというのが一つ目です。
それから,もう一つですが,7ページに,機関別評価と分野別評価があるということが上のほうで書かれて,ただ,その下で触れられているのは,機関別評価をどちらかといえばなくしてというか薄くして,学部・学科・研究科というところへ流れていると思うのですが,現行の分野別評価のこの文書の中での取り扱いについてはどういう理解をすればいいのかという点です。
学部・学科・研究科のほうを分野別という理解にするのか,それとも全く学部・学科・研究科というのは機関別・分野別の二律背反とは違う,第3のポイントとして示されているのかということを,確認させていただければと思います。
【森主査】
鈴木室長から,お願いいたします。
【鈴木大学設置・評価室長】
ありがとうございます。まず,協議会でございますが,当然,現在,各認証評価機関の中で協議会というものが自主的につくられているということは承知しております。
その上で,それをより明確化していく,今は特に何も規定等もございませんので,それを明確化してその役割を与えていくということを考えております。それはいろんなやり方があると思いますが,法律に定めるとか,それ以外にももろもろいろいろなやり方があると思いますけれども,今もあるものをさらに実質化していって,評価基準・項目の調整,視点・観点の調整等を付与していければと思っているところでございます。
これが1点目でございまして,続いて2点目のところでございます。機関別認証評価と分野別認証評価の御質問でございますが,ここにつきましても,まだまだ議論が必要かなというふうに思っております。
機関別認証評価を全てなくして,学位分野別の,学部・学科.研究科別の評価だけにしてしまうというやり方もございますし,併せて,先ほど少し斎藤先生からも指摘がありましたように,その機関全体の評価というのをどうしていくべきなのかという論点あるわけでございます。
そうなってきますと,機関別認証評価というものを,一部その機能を残すのか,もしくは,残さなくても学部・学科,研究科ごとの評価で足りるのか,そこは改めてもう少し議論する必要があるのかなというふうに思っているところでございます。
なので,7ページの点線囲いの中では,学部・学科,研究科ごとの評価を行う,学位の分野の種類に応じた評価をやってはどうかということと,全学的な教学マネジメントをどう担保するのかというところも併せて書かせていただいたところでございますので,ここはもう少し,この検討の方向性を踏まえながら,さらに深掘りを,先生方とぜひさせていただければなというふうに思っているところでございます。
【石橋大学振興課長】
追加で補足です。今行われている分野別の認証評価は,専門職大学・大学院をはじめ,実際制度が導入されたときに必要ということで法定されているものだと思います。
ただ,これはやはり学部だったり研究科だったり,そこにある程度フォーカスをした評価でございますので,重複してくる可能性も十分にあるかなというふうに思っておりますので,一度こちらの新たな評価のほうの整理がつきましたら,それで十分代替可能かという議論を加えてするということかと思っております。
【松浦委員】
ありがとうございます。
【森主査】
ありがとうございます。
続きまして,笠井委員,お願いいたします。
【笠井委員】
ありがとうございます。今まさにお話が出たところ,まず分野別認証評価の話ですけれども,今,石橋課長もおっしゃったように,資料だと9ページの(2)の1つ前の丸,その他先行して独自に評価を実施してきた分野という話で,重複や類似性等に留意するというふうに書いていただいていますので,これについては,こういうふうに書いていただいてありがたいと思っております。ここについては,法科大学院にいる人間として,強くお願いしたいところでございます。
手を挙げましたのはそれとは違う点で,質問も入るのですが,5ページで,先ほどの今日の前半の議題と関係するのですが,5ページから評価の主体がありまして,下から3つ目の丸,ピア・レビュー方式がとられているのを踏襲するという,これはそれで大変いいと思うのですが,産業界関係者などの幅広い人材に参画してもらうこともこれまで以上に促進していくことが必要であるというふうに書いていただいていまして,これについての「これまで以上に」というのがどのような意味なのかなというところが,少し気になったので伺いたいのです。例えばNIADですと,法科大学院の認証評価でも,それから大学機関別認証評価でも,評価委員会という一番上の組織になるのだろうと思いますけれども,ここでは企業の方とか,あるいは法科大学院だと労働組合の方とかも入っておられるのです。
そういうところで,上のほうの委員会などで大所高所から御指示いただくとか御意見いただくということのほかに,どういったものが考えられるのかなというのが,まだ自分の中でよく分からないところもあるのですけれども,先ほどの前半のお話を聞いて,こういったことも必要だなと改めて思ったものですから,先ほどお話があったかもしれませんけれども,もし何かお考えがあれば,事務局から伺いたいと思います。
以上です。
【森主査】
先ほど小木曽様のほうからもいろいろお話があったところですけれど,何か,事務局からございますでしょうか。
【鈴木大学設置・評価室長】
御意見ありがとうございます。5ページ目の,まさに必要に応じて分野に精通した幅広い人材に参画してもらうことというところは,一つは評価をするに当たっての観点かと思っております。
当然,これまでも産業人材を,産業関係者にも評価に加わっていただいているというのは重々承知しておりますが,これまで以上に参加してもらってはどうかという意見で書かせていただいたところでございます。
併せて,先ほども経済団体から様々な意見が出たところでございますので,ここについては,さらに追加的に産業界との連携みたいなことも考えられるのであれば,そこは加味して書いていければなと思っているところでございます。
以上です。
【松浦委員】
ありがとうございました。
【森主査】
続きまして,林委員,お願いいたします。
【林委員】
おまとめいただきましてありがとうございます。これからの論点のところも大分あるとは思っていますが,大きな方向性としては,これまでの議論を的確にまとめていただいたところだと思っています。
1つコメントと,あと残り2つ質問したいのですけれども,コメントのところでは,見ていて非常に分かりづらいのが,認証評価あるいは新たな評価というのが,社会へのアカウンタビリティーが目的であるといろいろなところに書いてあって,そこが非常に分かりづらくて,アカウンタビリティーそれ自体が目的になると,一体何のためのアカウンタビリティーなのかがよく分からないと考えています。そうすると,導入されたときは法令遵守であるとか,あるいは学生の消費者保護であるとか,そういう最低限のところもあると思うのですが,ただ,一方で今回の議論を見ていると,もう少し学修成果を明確化することで,半ば大学間の競争環境をつくって,それによって教育の質を上げていくという,そういう話だとすると,インセンティブの話もちゃんと書いてありましたけれども,そういう話も出てきますし,あるいは,今日の産業界の議論を聞いて分かったのは,やはり地域であったり産業であったり,そういうところでの対応のツールとしてこういうものがあり得て,それをアカウンタビリティーと呼んでもいいのですが,そういうのもあって,「アカウンタビリティー」という言葉で全部を吸収してしまうと,一体何のための制度だったのというのが非常に不明瞭になってくる気がするので,その辺りは,ぜひもう少し具体化していければなというのがコメントです。
続いて質問なのですが,内部質保証システムの話で,これまで,やはり内部質保証だということをずっと認証評価をやってきて,それがある種,質保証のオーナーシップは大学にあって,大学の中で学部・研究科の質をちゃんとやっていくのだという,そういう理念だったのですけれど,やはり先ほどの話だと理念と現実はギャップがあって,ここでもいろいろと書いてありますが,やはりなかなかそれが機能していないという状態はあるというふうに,多くの人は認識していると思っています。
今書かれているもののイメージの中で,内部質保証システムの評価というもの,要は,今までのイメージは内部質保証により学内でしっかり質保証しているのを,外部質保証,第三者評価が内部質保証が動いているかを見るという,これは国際的なイメージなのですが,それをどう考えていらっしゃるのかというのが一点と,それに加えて,さっきの話の法令遵守とか最低限のレベルのところも,今,内部質保証というか認証評価のほうは見ているわけですが,そこも,ちょっと読むとデータで行けるんじゃないかという感じにも,文科省がデータで分かるところはやるというふうに書いてあるようにも読めるんだけれど,一方で現実的には,本当に定性的な評価をしないと見えない最低限のレベルの話もあって,その辺りも実際にどのようなイメージをお持ちなのかというところについて,もちろん,今後の議論ですという話でもいいとは思うんですけれども,今もしイメージがおありであれば,お話しいただければと思っています。
以上です。
【森主査】
すみません,もう53分なので,ここからは1分勝負でお願いできればと思います。
【石橋大学振興課長】
内部質保証に関しましては,ここまで認証評価の,この20年のサイクルの中で,本当に各大学がしっかりと取り組んでいただくように,評価機関の皆様にもお力を貸していただいてきたというふうに認識をしております。
なので,それ自体をきちんと見るというか,それがちゃんと回っていることは引き続き重要なのですけれども,その時に,内部質保証が回った結果,どういう学生さんの伸びがあって,それがまた改善につながっているかを,もう少しアウトプット,アウトカムを見ながら評価できないかというのが,今回のポイントかなというふうに思っております。
それから2点目,最低限のところは,設置基準の適合性は文科省で確認できると思うのですが,先生がおっしゃった最低限という趣旨をもう一度お願いできますでしょうか。
【林委員】
データでは見えないような,今も評価者が見ている,例えばシラバスの内容の点検であるとか,定性的な判断を要するようなものを想定しています。
【森主査】
教員評価とかですね。
【林委員】
そういう視点は今後も,例えば学部・研究科とかの単位という話が入ってきたときに,どう考えるのかという点です。
【石橋大学振興課長】
ありがとうございます。もう少し深掘りしなきゃいけないと思うのですが,今,データベースで見られるのは,おっしゃるとおり,多分もう数量的に分かるものというふうになってしまいますので,シラバスの善し悪しなどになってくると,やはりそれは一旦アウトカムを見ていただいたときに,うまくいっていないとすればシラバスに立ち返っていただくような,そういうやり方も必要になるのかなと思います。
【森主査】
ありがとうございます。
では続けて,嶌田委員,お願いいたします。
【嶌田委員】
嶌田でございます。結局,駄目出しをやっていくというか,別にバツじゃなくても,下のほうですよとか,銅賞ですよとか星1個ですよとかやるときに,結構無責任に駄目出しするのは簡単にできてしまうんですけれど,本当にその人たちの心にしみるようなことをやろうと思ったら,相手のことを分かっていないとできないと思うのです。「この人たちは俺たちのことを分かって言ってくれているんだな」みたいに相手が思わないと,改善につながっていかないのかなというところがあると思うんです。そうなると,やっぱり対象となる大学に詳しいところ,国立に詳しいところとか公立に詳しいところとかそういう機関が見てあげたほうがよいのかな,と思いました。
僕が聞きたかったのは,,今日,企業の方に来ていただいて,どうやって評価に企業の方の御意見を取り入れようかなと思ったときに,以前,質保証システム部会において林委員が,ヨーロッパで企業の方を水準評価の中に組み入れているやり方を紹介していたと思うのですけど,あれはうまくいっていたのでしょうかという点です。回答は次回以降でかまいません。。
【森主査】
次回以降また情報提供いただくということとさせていただきます。ありがとうございます。
【森主査】
よろしいでしょうか。
中村委員,どうぞコメント,よろしければ。
【中村委員】
ありがとうございます。やはり私としては,分野別認証評価と新たな評価の関係性が,あまりクリアではなかったことが気になりました。
あともう一つ,林委員がおっしゃっていたことにも関連するのですが,頂いた資料の7ページのところに,教育の質を問うときに,学修成果として,知識,技術,技能を修得させ学位を与えるとあるのですが,知識,技術,技能のほかに,態度というか見えない学力といいますか,そういうところを特に医療系では非常に大事にしておりますので,この学修成果をどう見るのかということは,非常に議論が必要だと思いました。
以上です。
【森主査】
ありがとうございます。
本日,事務局でおまとめいただいたものを御説明いただいて,それで皆さんに御意見という段取りになりましたけれども,まだまだ,議論が尽くせてないと思いますので,皆様,どうぞメール等で事務局のほうにお知らせいただければというふうに思っております。
また,今日,産業界の方々に御意見をいただいた中で,私の感想としましては,教育の質向上とは,ディプロマ・ポリシーそのもののアップデートが必要だと思います。これだけ世の中が変わっていく中で,前に林委員がおっしゃったのかと思いますが,今までのものを精緻化するというよりも,やはり大学の教育目的そのものをアップデートしていかなければいけないと感じました。そこをどうやって評価していくかということで,これは大変難しい話かなというふうに思います。
その観点から,評価のシステムも従来のものをどうやって踏襲するかというよりも,フィージビリティーは本当に大変な話だと思うのですが,新たな評価制度システムを構築する必要があります。しっかりと事務局のほうで,もう一度意見をまとめていただくという作業を繰り返してまいりたいというふうに思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
本日の議題は以上になります。
事務局から御説明ありましたように,次回は8月4日ということで,少し短いスパンですので,ぜひ御意見をいただきまして,また事務局が取りまとめする時間もお与えいただければというふうに思います。
次回は,また事務局から修正案を出していただくということになりますので,どうぞよろしくお願いいたします。
それでは,本日はこれにて閉会とさせていただきます。御参集いただきましてありがとうございました。
―― 了 ――
高等教育局高等教育企画課大学設置・評価室