教育・学習の質向上に向けた新たな評価の在り方ワーキンググループ(第4回)議事録

1.日時

令和7年7月3日(木曜日)13時00分~15時30分

2.場所

文部科学省 ※対面・Web会議の併用(傍聴はWeb上のみ) (東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 評価結果を活用する団体からのヒアリングについて
  2. 諸外国の事例について
  3. その他

4.出席者

委員

(主査)森朋子
(主査代理)浅田尚紀
(委員)笠井正俊、葛城浩一、小林浩、斎藤有吾、嶌田敏行、中村真理子、林隆之、松浦良充、溝口侑

文部科学省

伊藤高等教育局長、森友大臣官房審議官(高等教育局担当)、吉田高等教育企画課長、石橋大学振興課長、柴田国立大学法人支援課国立大学戦略室長、髙見高等教育企画課高等教育政策室長、遠藤専門教育課専門職大学院室長、鈴木大学設置・評価室長

5.議事録

【森主査】 
 それでは,所定の時刻になりましたので,第4回教育・学習の質向上に向けた新たな評価の在り方ワーキンググループを開催いたします。御多用の中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。
 まずは,議事に入る前に委員の出欠について御案内を申し上げます。本日は委員11名全員が出席となっております。また,本日もオブザーバーといたしまして,機関別認証評価機関の5機関に御参加いただいております。ありがとうございます。
 それでは早速,議事を進めたいと思います。これまで認証評価機関,認証評価を受ける側の大学団体のヒアリングをさせていただきました。
 今回は,ステークホルダーとして非常に大きい高校生,高校側のヒアリングをさせていただいた後に,海外の事例,海外はどうなっているのかということと,あとは日本においても同じような評価がなされている事例がございますので,その事例について皆様と共有したいと思っております。
 では,まずは,評価結果を活用する観点からということで,高校団体関係のヒアリングをいたします。まずは,全国高等学校校長協会を代表いたしまして,渡邊東京都立上野高等学校総括校長,お願いいたします。オンラインでの御参加と聞いております。では,渡邊先生,どうぞよろしくお願いいたします。
 
【全国高等学校校長会渡邊東京都立上野高等学校長】 
 皆さん,こんにちは。東京都立上野高等学校の渡邊と申します。本日は,全国高等学校長協会の大学入試対策委員会の委員長ということで,今年2年目になります。昨年,墨田川高等学校におりましたが,この春異動して上野に参りまして,今回お話をさせていただく機会をいただきました。今日はよろしくお願いいたします。
 では早速ですが,今日は認証評価の高校側から見た現状認識ということで,本校の事例を中心として高校の進路指導の実際,検討に当たって考慮していただきたいこと,大学選択の現状等についてお話しさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 本校は全学年8クラス,全24クラスで九百数十名の全校生徒,9割以上が4年制大学に進学するという学校で,東京都から進学指導推進校の指定を受けています。国公立大学現役合格者数も10年ほど前には一桁だったところが,ここ数年で40~50名というところまで定着した学校であります。
 そうした学校の生徒,それから進路指導を担当する教職員の認証評価制度の現状認識ですけれども,お手元の資料にも書かせていただきましたが,生徒はほとんど認識しておりません。教員については,一部の意識と関心の高い先生方による活用がされているのかなというところで,知っているという先生よりも,知らない先生のほうが多いという現状はあると思います。ただ,質保証としての認証評価制度自体についてはある程度知っており,その信頼は高いと考えています。
 そもそも認知度が低い要因はということでいろいろ聞いたのですが,もともと知らない人に聞いてもどうして低いかというのが分からないというのは当然なんですけれども,やはり認証評価結果自体が,高校生向けに記述されていないということで,そもそもの役割が大学の質保証ということだと思いますので,これは致し方ないところかなと思っています。この辺の課題については,後で要望という形で述べさせていただきたいと思います。
 高等学校の生徒の大学選択の現状,どんなふうに選ぶかということですが,私の数十年前の高校生だった頃と比べてみてもそんなに大きく変わっているところはありません。ただ,情報量が御承知のとおり飛躍的に多くなっておりますので,情報の多さ速さと同時に課題もあるというところです。
 6ページにありますが,昔から変わっていないというのは,模擬試験を受けて,その結果で判定を受けて,それを活用する。それから,飛躍的に伸びたところでいうと,学習用の動画や課題配信サービス,こういったことについてはかなり活発に利用されているところです。東京都では高校生に1人一台端末を進めていますので,学校現場でも同じ動画を見たり,課題配信のサービスを受けたりしています。もちろん,家庭でも活用されています。それから,受験情報会社による様々な支援サービス,模擬試験の判定結果を合わせた課題配信等を個人で受けられたり,オンラインで個別のアドバイスを受けられたりというのもあります。
 東京都教育委員会は,進学指導推進校を対象に予備校と連携した校内予備校を実施していて,予備校の先生が高校に教えに来るなんてことも行っています。それは我々の時代には当然なくて,今はもう高校の先生が予備校の先生から教わるという時代で,いろいろな議論,意見はありますけれども,こういった現状です。
 7ページ,8ページ,9ページには,1年次からそれぞれ,本校をテーマにしながら,様々な取組を行っていることを列挙させていただいております。進学校は様々な工夫をして差別化を図っておりますが,やっていることは大体同じで,例えば1年生はオリエンテーションや適性検査,オープンキャンパス,それから同窓生の講話などで自己理解,職業選択,学部・学科選択,意識の向上等に取り組んでいます。
 2年次は,オープンキャンパスや大学研究室の訪問や模擬授業,個別面談やガイダンス等で学部・学科選択や決定,受験科目や受験校の選定に具体的に進んでいきます。ただ,ここ近年の大きな特徴は,「総合的な探究の時間」,本校は「上野学」ということで近隣の博物館や美術館等と連携しながら上野の立地を生かした探究を進めておりますが,こういった総合的な探究の時間の中で,社会的な課題を解決するためにはどんな学問が必要であるか,そして自分は大学に行ってそのために何を学ぶのかというような,SDGsも含めてですが,そういった課題の解決のための学び方,これを高校時代,1年生,2年生を中心に取り組んで,学部・学科選択につなげていくことが挙げられます。そして,2年生の後半からは総合型選抜の受験指導に移行していくことが,大きな特徴となっております。
 3年次になりますと,もう第一志望校合格を目指し勉強させるということで,大学入学共通テストのガイダンス等で国公立大学受験を促したり,共通テストが終わった後は二次試験に向けての出願指導を行ったりということで,非常にきめ細かくやっているというのも最近の大きな流れなのかなと思っています。いいところもいっぱいあるんですが,生徒にとって受け身の受験対策や進学対策指導になりかねないという懸念もありますけれども,保護者の要望も強いですので,都立高校をはじめ,私学などはもっと熱心にこういった指導をしているのが現状ではないかと思います。
 10ページにありますように,高等学校の進路指導の基本は,学部・学科選択です。学びたい学問は何で,なりたい職業は何で,そのために取りたい資格は何なのか,そのためにはどの学部・学科を選ぶのかというのが基本的な指導の流れですので,大学選びではなくて学部・学科選択が中心となります。この基本を失わないように立ち返るということが求められているし,あるべき姿かなと思っています。
 とは言いながらも,これは昔も今も変わらないんですが,自分の学力水準から入れる大学を探すこと。そして,保護者などの意向も含めて,通学できる範囲または通学したい範囲から大学を探します。その上でさらに,オープンキャンパスで行ってみた雰囲気,学生や教授陣の感じ,そういったもので自分に合った大学を探す。最後は,プライド,保護者の意向,社会的評価なども気にしながら選んでいくというのが実情であろうかと思っています。
 ここを強調しているのは,私の拙い経験からやはり有名な大学や,地元であれば国公立など大学選びが中心であるのではないかというふうに考えていたんですけれども,今の保護者,高校生自身は学びたい学問やなりたい職業というのが選ぶ選択肢の中心に変化しているのではないかなと感じるところでありますし,指導もそのように向けていると思います。本来あるべき姿になっているかなと思います。
 そのための情報はどのように得ているか。これも大きくは変わらないんですが,ホームページ,模擬試験の判定結果,進路指導教員による指導・助言などが中心です。受験情報誌がホームページに置き換わっているとは思いますが,高校現場では相変わらず紙媒体も非常に健在でして,こういった情報により進路指導が進められているというところです。
 あともう一つは,赤字で11ページに示しましたが,各種ランキング表,SNSの情報,こうした情報もかなり多くなってきているというのも現状です。イギリスの教育専門誌が発表した大学ランキングで東大ではなくて東北大が1位ということがありましたが,これも本校でも大きく壁に貼ってありまして,1位から200位まで示されております。ただ,これがどのぐらい役に立つかは定かではありません。ただ,私もちょっとびっくりしたのですが,データとして4万8,000人の大学生と1,700人の高校教員の回答を基にして273校のランク付けを行ったことが示されておりました。ある程度客観性を持たせた指標を基にしているということであれば,これは高校現場の受け止めとしてはかなり客観性があるかなと思いがちではあります。
 とは言いながら,立地や規模,設置者等が様々な中で,一概に270数校を1位からランキングすることの意味はさほどあるのかなと思っておりますし,医科大学などの単科大学がどうしてもランキング的には低い傾向があります。1位と5位はどのくらい違うのか,20位と50位はどう違うのかということは考えてしまいますし,そもそもランキング自体に意味があるのかなと思います。
 次に12ページを御覧いただければと思います。では,認証評価を今後どういった活用をしていけばいいのかということですが,私の考えで幾つか書かせていただきました。
 まず,情報の内容や提供環境の側面からですけれども,今の高校生はZ世代ですので,タイパを非常に重視します。迅速かつ的確に情報を入手しようとしていますし,そのためにインターネット等SNSの威力は非常に強いものがあります。先ほど申し上げましたが,学校でもDXを非常に有効に活用しているところはありますが,やはり光と影ではありませんが,たくさんの情報から端的に選べる,迅速に検索できるという光はありますが,やはり同じような情報がたくさん入手できてしまうということが,選ぶ上では非常に混乱するし,逆に時間がかかるのではないかという問題点があります。
 それから,大学が公表している情報の内容という観点からいいますと,アドミッションポリシーと認証評価の観点なども公表されてはいるのですけれども,私は言葉がうまく選べなくて「実質化」としましたけれども,アドミッションポリシーも非常に網羅的で総花的になりがちです。求められる資質・能力が学部ごとには非常に明確化されていますが,入学者選抜との整合が取れていないのではないかという課題もありますし,それからどうしても総花的であれもこれも記載されておりますし,ありきたりで差異が出ないということもあります。かつ総花的になれば,生徒のなかには「私はこの力がちょっと足りない」ということで自信をなくすことにつながりかねないということもあると思います。
 続きまして13ページですが,認証評価の実際の面ということです。先ほど申し上げましたとおり,評価への信頼は意識の高い教員は非常に高いものがあります。しかし,裏を返しますと,評価の結果の分量が大変多くかつ内容が若干難しい。やはり大学の質保証の観点ですので,高校向けには記載されていません。それから,評価と評価の期間が5年,6年,7年など非常に長く最新の情報が反映されているのかということ。それから,結果がほぼ「適合」であるということで,この認証評価を受けていれば,それは内容としては大差ないんじゃないか,大丈夫なんじゃないかという受け止めにつながりかねないと私は考えています。
 それから,生徒や保護者の観点から見ると,評価として学生受入れが高い大学はもちろん人気もありますし,成績評価や単位認定・学位授与方針がしっかりしているところは,その評価自体が成績評価が厳しいという受け止めになりまして,理想と現実と書きましたけれども,卒業が難しいのではないかと敬遠する要素につながりかねないと思います。できるだけいい大学に入りたいという観点から言えば,いい大学は競争倍率が高く,そのため難易度が高く,偏差値も上がる。つまり,結局は,入試難易度が高い大学が中身もいいので,当然人気もあるということにつながっていくのかなと思います。
 最後になりますが,認証評価がより活用され意義あるものとするためにはということで,私なりにまとめました。一部的外れなところもあるかもしれませんが,お許しください。14ページです。高校生に活用ということであれば,やはりその評価結果の概要版を高校生向けに作る必要があるだろうと思います。用語の選び方や,記述を高校生向けに意識して書くということは非常に大学や評価機関の負担が高まりますので,ハードルが非常に高いのかなとは思います。
 であれば,せめてそれを生徒に示し活用する高校の教員向けに,学生支援や質保証の面に絞ってでもよいので表すとか,それから教員研修で,今ある,または今公表されている事例などを基に,どう活用し普及していくかというのを研修にしていく必要もあると思います。また,地域(ブロックごと)で活用できる方策。例えば私は出身が北海道ですけれども,地方の国公立大学を勧める際には,北海道に限らず,地方の国公立大学のよさというのがなかなか首都圏の教員には伝わっていません。こういったところで活用もできるのかなと考えております。
 続きまして,生徒向けですけれども,15ページです。こちらですが,やはり評価項目や評価結果の簡略化・簡素化,これはワーキングでも目指されているところだと私は理解していますが,これは非常に重要だと思っています。ただ,AとかSとかというランク付,格付になると,それもどうなのかなというところもありますので,やはり評価結果の提供については工夫いただけないかとお願いしたいところです。それから,今ある大学ポートレートの活用への期待。これも先ほどお話しした進路指導教員向けのPRや,特徴や役割を明確にした指導ツールがまだまだ必要かなと,私も昨年度意見を申し述べたところであります。用語やトップページの工夫が必要なのも同じでございます。
 最後になりますが,いろいろ資料を見る中で見つけたところで全国学生調査ということで学生が質保証に参画するというものがありました。これは今,取組を進められると思いますが,私としては,高校生にとって非常に適正な評価指標となる可能性があると考えております。なぜなら,質問が,ちょっと学齢が上の先輩が答えたということや,高校生にとっても分かりやすい質問項目になっているからです。今後,これが指標として定着していけばいいなと考えております。
 最後になりますが,調べたところ,ある認証評価機関が,評価対象の大学の長所を積極的に公表しているものがありました。これについてはその大学の持ち味の情報として非常に有効であると思っております。私は,高校生にとって必要なのは,自分が入学した後,自分が成長できる具体的などんなモデルがそこにあるかということだと思います。大学は様々な出会いの機会を与えていただいていると思いますが,その機会の魅力を高校生が知り,そこを自分に置き換えて,入学後成長をする自分を思い描くような情報があると大変ありがたいかなと思っております。
 最後になります。この後の認証評価が,高校生や教員にとって活用しやすいもの,図られるように願っているところであります。
 私からは以上です。ありがとうございました。
 
【森主査】 
 渡邊先生,ありがとうございました。最後は個人的なおまとめということでございましたけれども,全国高等学校校長協会を代表して,事実をまとめていただいたということでございます。
 続きまして,日本私立中学高等学校連盟からは書面の資料を頂いているということでありますので,こちらは事務局のほうから御説明をお願いいたします。
 
【鈴木大学設置・評価室長】 
 資料1-2について,日本私立中学高等学校連合会から書面で資料を提出いただいておりますので,私から説明させていただきます。
 まず,Ⅰの認証評価制度の高校側から見た現状認識でございます。現状では,ほとんどの高校生や高校教員が認証評価制度の存在を認知していない。評価結果も活用されてないと思われる。7年に1回という認証評価だけじゃなくて,毎年更新されているという大学ポートレートとか教育情報公開のデータについても同様に認知されてないのではないかという御意見でございました。
 では,その要因として何が挙げられるのかということでございますが,まず,評価結果の分量が多いということと,内容的に大学の経営については全学的な評価であっても,教学面については,学部ごとの評価でないと進路選択の情報になりにくいのではないか。2つ目として,適合・不適合の二元論的評価であるため,各大学の差異がよく分からない。同じ適合であってもマイナスポイントを指摘することが多くて,各大学の優れている点や独自の点などを端的に評価していないので,活用しづらいのではないか。認証評価結果と,大学ポートレートや教育情報公開のデータが連動して分かりやすく提供されていないので,全体として大学ごとの違いとか各大学の変化を把握できないのではないかという御意見でございました。
 こういう課題を踏まえまして,新たな評価の検討に当たって考慮してほしいことについてでございます。高校生が現状どのように大学を選択しているのかというところでございますが,やはり高校生の進路選択につきましては,学問や職業への興味・関心から選択するのが基本ではあるんですけれども,入学の可能性をいわゆる偏差値で測ることで大学を選択しているという実態がある。各大学における3つのポリシー,とりわけアドミッションポリシーについては,推薦入試をはじめ大学及び学部選択の基本的な情報になるので,高校生や高校教員に分かりやすく提示しているかどうかを評価してもよいのではないか。
 加えて,高校ではいわゆる学力の3要素の下で資質・能力の育成を目指しているので,その資質・能力を多面的・総合的に評価する入学者選抜になっているかが大学選択を左右するポイントになるということでございまして,認証評価においても,本来あるべき入学者選抜になっているかどうかということを評価することが肝要ではないかという御意見でございます。
 現状の認証評価制度が認識・活用されていないことに対してどのようにすればいいかということでございますけれども,少なくとも各大学の独自性や特性を示すことが肝要ではないかということです。その際,大学卒業後の進路状況や大学教員の教育活動や研究論文数,それらの質的評価を示すことで各大学の実際の状況を示すことになるのではないかということでございます。
 大学は,高校生の進路選択や高校の先生が進路指導する上でどのような情報を公表することが望ましいかということでございます。要は,各大学の多様な取組やそれらの質的な違いが分からなければ大学選択につながらない。視認しやすい場所にそういう情報を掲載するということと,さらには文部科学省が各大学の評価結果を集約して情報提供することもあってよいのではないかという御意見をいただいております。
 その他ということで,各認証評価機関の評価基準がどの程度統一されているかよく分からないというところでございまして,やはり社会的に広く評価されて信頼される認証評価になるためには,評価機関に対する評価や認知度を向上させることが肝要なのではないかという御意見をいただいています。加えて,国際社会の変化に対応すべく「知の総和」の進展を期するのであれば,大学評価の国際ランキングなどは無視できず,日本の大学にとっても,教育の国際化の度合いなどを新たな評価基準に含めていくことが求められるのではないかといった御意見をいただいております。
 以上でございます。
【森主査】 
 ありがとうございました。今ご説明いただいたように,2つの後期中等教育機関から御意見をいただいております。ここから10分程度でございますけれども,意見交換または質疑の時間とさせていただきたいと思います。
 それでは,御発言されたい方は挙手ボタンか挙手でお願いをいたします。いかがでしょうか。
 小林委員,お願いいたします。
 
【小林委員】 
 渡邊先生,どうもありがとうございました。端的に御説明いただき,非常によく分かりました。ありがとうございます。
 2点質問させていただきたいのですが,1点目は,模擬試験の活用について昔と変わらず活用しているというお話でしたが,東京都であればかなりの模擬試験を受ける生徒がいると思うのですが,先生御出身の北海道など地方に行くと,なかなか模擬試験を受ける子供たちも少なかったり,その結果の活用方法もいろいろあったりすると思います。また,特に私立大学でも半数以上が総合型選抜や学校推薦型選抜ということである意味一般受験とは違う形で入学している中で,難易度みたいなところも大分昔と違ってきているような気がしますが,こういった一般受験以外の生徒はどのように模擬試験の情報等を活用しているのか,そうではないのかという点がもし地方の観点から分かれば,お伺いしたいのが1点目です。
 それからもう一つは,これからの制度に関する御提言のときに,安易なランキングにつながらないようにということをおっしゃったと思いますが,一方で,先ほど,世界ランキングは非常に気になるということもおっしゃっていました。先ほど中高連の書面資料でも,やはり世界ランキングみたいなものは気になるという意見がありました。民間がやるランキングはそれぞれ意図したインデックスがあって,それに沿ってそれぞれの主体が思う形で,結構はっきりした出し方をするのですが,安易ではないランキングの出し方ということについて,先生に何かアイデアがあれば,高校現場のお立場から教えていただければと思ってお伺いいたします。
 この2点お願いいたします。
 
【全国高等学校校長会渡邊東京都立上野高等学校長】 
 一点目の模擬試験の活用ですが,これは本校の例なんですが,大学入学共通テストというのは水準としては高校の卒業試験みたいなものだよと伝えています。ですから,得点率で7割,8割を目指そうということですので,一般受験はもちろんですが,学校推薦型も総合型も全員が最後まで受けなさいという指導をするのが一般的かなと思っております。ですが,やはり年内入試で終わった生徒が最後受けないということについては,もちろんこれは止められませんし,お金もかかることですので,そういった指導をしているというのが現状ですので,ほぼ全員の生徒が模擬試験は最後まで受験します。年間4,5回が標準かなと思います。これはもちろん学校によってかなり差があります。
 東京と地方はいかがかということですが,状況はあまり変わらないと私は認識しています。地方でも進学校はやはり情報が欲しいですし,判定は必要ですので,そういう意味では,最後までほぼ全員が受けたり,あとは大学別の模試を受けたり,こういったことについてはあまり地方も首都圏も変わらないんじゃないかなと思います。ただ,地方は学校による差はより大きいのかなと考えています。
 2点目ですが,ランキングについてです。安易な格付ということですが,お答えとすれば,安易じゃない格付やランキングはないのではないかと思います。ですが,先ほどの中高連の御意見にもあったとおり,高校としては基本は学部・学科選択を指導するのが基本ですので,私は,大学全体のランキングにはさほど意味がないと思います。これは個人的な意見ではありますが,おそらく多くの高校の教員はそう思っていると思います。何とか医大と何とか大学がどっちが上か下かというのは,これはその指標の結果はそうだったかもしれませんが,あまり意味がないのではないでしょうか。ですから,進路選択にあまり活用できないという見通しがあります。
 また,ランキングが上の学校と下の学校で,入学した生徒の満足度というか,行きたくて入った大学が低いランキングや格付をされることについては情報として,あまり意味がないどころかかわいそうに思います。あくまで一つの指標で並べた結果であって,それを活用した大学選びとなるかどうかというのは,立地も規模・環境も違うものを一律に指標として細かく0.何刻みで並べたものにどれほどの意味があるかなと私は考えていますし,多くの先生がそう思っているんじゃないかと推測します。
 以上です。
 
【小林委員】 
 渡邊先生,ありがとうございました。
 
【森主査】 
 ありがとうございました。続けていかがでしょうか。オンラインの先生方もいかがでしょうか。
 では,嶌田委員,お願いいたします。
 
【嶌田委員】 
 私はもともと大学にいたのですけれども,大学と高校で学生の引継ぎが,うまくできていない印象があります。大学は大学で企業さんに学生を送り出して,その後は,調査などはするのですけれども,そこから効果的に情報を引き出せていないことが多いと思います。高校から大学に移るときも,本当は大学と高校でもう少し,「ここまでやったよ」「じゃ,大学として今後こういうふうにやっていくね」という形で,高校さんも3つのポリシーがあって,グラデュエーションポリシーとかがあって,大学もアドミッションポリシーがあって,カリキュラムポリシーがあって,ディプロマポリシーという3つのポリシーがきちんとあるわけですから,本当はそれぞれポリシー同士でもう少しうまく引継ぎができたらよいのかなと昔から夢想はしているんですけれども,なかなかなかなか十分に活用できているような気がしない場面もあると思います。
 高校さんも,例えば茨城県内の高校さんだと,やはり3つのポリシーの活用がなかなか難しいとおっしゃっていました。しかしながら,このポリシー同士をもう少しお互いに接続させるといいますか,高校さんはグラデュエーションポリシーと,大学のアドミッションポリシーとどの程度合致しているのかというところも見てもよいのかなあと思います。その辺のポリシーの使い方がうまくできていないなと思っているんですけれども,何か渡邊委員,いい手はないですかねというご質問です。
 
【全国高等学校校長会渡邊東京都立上野高等学校長】 
 ありがとうございます。私も,先ほどお話ししたように,中学生に向けてアドミッション・ポリシーを出していながら,もちろん,そういった生徒が欲しいという思いはあるんですが,2つの観点から言いますと,一つは,やっぱり入学できることにどうしても着目するので,理想は理想だし,掲げるものは必要だけれども,目の前の子供をどうするとなったときに,高校側も中学側も,同じことが大学にもあるのかなと思います。
 そこでやっぱり必要なのは,話合いとか,この生徒がどういう生徒だということで,入試担当者と大学,高校の進路指導の教員なんですが,皮肉なことに,学生募集が大変な大学さんほど足しげく通っていただくので,情報も含めて交換しやすい。そうじゃない大学はもちろん回っていられないというのは当然ありますし,それはなかなかしづらいというのがあります。ただ,地方に行くと,地方の国公立大学は高校を頻繁に回られるということを聴いたことがあるので,それは首都圏とは逆の意味で関係が深いのかなと思います。
 あともう一つが,やはり総合型選抜です。これはやはり時間をかけて育てるというのが趣旨で,趣旨を踏まえているのか疑問な大学が首都圏に見られて大きな課題になっているんですが,本校も,ある国立大学では,こういった目的意識のあるこういった生徒を送ってほしいと話があり,高校側もそれに合った生徒を何度か大学に通わせたり,論文を書かせたりしながら進学できるよう指導していく。この対話が深まれば,年内入試は一概に悪いと思っていませんので,総合型選抜によって高等学校と大学がつながる,本当の接続ができればいいなと思っているところです。
 以上です。
 
【森主査】 
 嶌田委員,よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 非常に重要なところなので,あと1名ぐらいもし御質問がありましたらお受けしたいと思いますけれども,いかがでしょうか。
 
【松浦委員】 
 渡邊先生,ありがとうございました。大学にいる者としては,大変参考に,かつ,身につまされるような御提言をいただきました。その中で,特に14ページで御提案いただいている,認証評価結果の高等学校生徒向けと高等学校指導者向けの開発ということですが,残念ながら大学にいてこういうことはあまり考えてこなかったのですが,この認証評価結果の高校生版や指導者版というのはどこが作ることをイメージされているのかということを伺ってみたいと思いました。
 通常,認証評価結果は認証評価機関が公表しますので,認証評価機関で作成するということを想定しておられるのか,それとも,認証評価結果を受けた大学が独自にといいますか,自分たちで作成するものなのか,あるいはどこかにも御提案がありましたけれども,文部科学省等でもっと統一的に開発していただくということなのか,この辺りの先生の想定しているお考えを伺えればと思います。よろしくお願いします。
 
【全国高等学校校長会渡邊東京都立上野高等学校長】 
 ありがとうございます。先ほど主査の森先生からもお話がありましたけれども,ここから先は,全高長の大学入試対策委員会で認証評価について話し合ったわけではありませんので,私の,様々勉強したり,いろいろ経験したことから述べさせていただいているということをまず前提にお話しします。
 これは,今のお答えからすると両方なのかなと。大学にも過度な負荷はかけられませんし,それから認証評価機関もたくさんの大学を抱えていらっしゃいますから,細かいものを全部作るというのは無理だと思いますし,現在の認証評価の用語も含めた精選,簡略化を目指されているんだろうと思います。ですから,用語などを取捨選択しながら,認証評価機関はその結果を簡潔に公表した上で,各大学が特色とされるもの,または認証評価でよい点として取り上げられたものを各大学が追加で作成し,それを認証評価機関がお墨つきのものとして公開するというのが私のイメージです。
 認証評価を活用したり認知度を高めるというのは,やはり今のままでは超えてはいけないわけで,意義あるものということでお題をいただきましたので,高校生向け,少なくとも教員,指導者向けには必要かなと思い述べさせていただきました。そうすることでより活用が進んでいくものと思います。ただ,学部・学科ごとではないという課題などがいろいろあるので「ハードル高」にしてあるわけで,様々できることやできないこともあろうかと思いますが,一応資料にあるものをイメージしているということです。
 以上です。
 
【松浦委員】 
 ありがとうございます。大変参考になりました。
 
【森主査】 
 ありがとうございました。
 渡邊先生,私も1つだけ。今,進学率が60%を超えてきている中で,今のお話というのは,いわゆるハイエンド系の高校のお話として私は聞いてしまっているのですけれども,これは例えば分厚い中間層を対象にしておられる高校等とどのぐらい親和性があるお話なのか,先生ご自身のお考えで結構でございますので,その辺りもお聞かせいただければと思います。
 
【全国高等学校校長会渡邊東京都立上野高等学校長】 
 ありがとうございます。私もまさに中間層の学校で進路指導主任をしていたので,そのときの十数年前の感覚ではあるのですが,生徒と保護者の意識はやはりかなり違います。つまり,自分で選ぶという,まずその主体性の度合いが違うというのが一番です。それから,もちろん資質・能力,学習とか取組も含めてですが,いわゆる受験勉強に対する意欲も違っています。
 ですから,やはり中間層より下の生徒・保護者については,分からないことが多過ぎるので,進路指導の教員に聞きます。一つの事例としてお聞きいただきたいのですが,例えば,「こういうことをしたいのでどこかお勧めありますか」とある生徒から質問されたとき,進路指導に関わる教員が「じゃあ,ここがいいよ」と。「入れそうなら頑張って勉強する,無理そうだったら指定校推薦を使ってみてはどう?」というようなやりとりのように,ある意味マッチングして決めていく指導があるのではないかと思っています。今はおそらく,本当に18歳人口の減少も含めて,マッチングだけで選択・受験・入学できる大学が,特に地方辺りは増えているんだと想像できます。
 ただ,入学してから,人伝いで得た情報ですのでこんなはずではなかったと気付き,意欲の減退につながってしまわないか危惧されるところです。ですから,そういう意味では,どんな学校でも進路指導の教員の責任は非常に重いと思います,さらに加えて,生徒自身が自分で考えて選ぶということを高校生に身に付けさせるのは,高校の現場の進路指導に関わる全ての教員の大きな役割だろうなと思っているところです。
 以上です。
 
【森主査】 
 ありがとうございました。渡邊先生におかれましては,ここで退室していただいても構わないということですので,よろしくお願いいたします。御多用のところ御参加いただきまして,誠にありがとうございました。
 
【全国高等学校校長会渡邊東京都立上野高等学校長】 
 失礼いたしました。ありがとうございました。
 
【森主査】 
 さて,ここからは諸外国の事例について御発表いただきたいと思います。イギリスの事例を林委員から,そして,アメリカの事例を大学改革支援・学位授与機構開発部の森先生から御発表いただくということになっております。
 まずは,林委員,よろしくお願いいたします。
 
【林委員】 
 林でございます。資料の2-1に基づいてお話しいたします。10分程度ということですので,少し駆け足で見ていきたいと思います。タイトルとして「イギリスにおける高等教育の質保証とTEF」と書いてあります。
 1枚おめくりいただいて,最初に言い訳になりますが,私もそんなに最近,大学の教育評価についてウォッチしているわけじゃないので,御依頼いただいて少し改めて調べて,いろいろと変わってきているなというのが分かってきたところでございます。そういう意味であんまり十分な情報ではないかもしれませんが,ただ,多少我々の議論に参考になるところを少し注釈つきで御報告したいと思っています。
 それがこの2ページ目の,「ただし」というところでございます。TEFについての御説明をといただいているのですが,イギリスの場合は,質保証とTEFは2つ分かれているというか,2つあるということを我々はちゃんと認識すべきだと思っています。質保証のほうが,要するに,日本で言えば設置審査,そして認証評価のところであり,TEFのほうが,近いところで言えば,後ほど嶌田委員から御説明がありますような国立大学法人評価の学部ごとの教育水準の評価,という2系統があるということは認識した上でお話を聞いていただく必要があると思っています。
 そして,その上で3ページ目ですが,まずTEFに入る前に質保証のほうです。2017年から高等教育・研究法によって少し状況が変わっていて,2018年から高等教育機関登録制度が開始されています。つまり,大学として登録されるためには評価を受けなければいけないという仕組みになっています。そういう意味では日本の設置審査と同じような形です。
 その下に規制枠組みと書いてあって,そこに一般要件という,要は,評価基準に相当するものを書いています。AからGまでございます。この表は文字が多くなり過ぎないようにBのところだけB1からB8まで細かいサブ項目まで書いていますが,それぞれのところにサブ項目が実際はあります。見ていただきますと,Aが進学の話で,Bが教育の中身の話になっています。Cが学生の利益保護,そしてDが財政,Eがガバナンス,Fが情報提供,そしてGが授業料です。
 我々が注意しなければいけないのは,こういうAからGまでのものが,日本で言えば設置審査や認証評価で該当するものとして評価をされているのですが,後ほど出てくるTEFは,この中のB1から4のこの4項目に相当するところだけを見ているという違いがあります。ですので,焦点が違うということです。例えばBの中でもB5というのがあって,高等教育セクターで認められる水準とあるのですが,それは例えば日本でも設置審査でこの分野のこの学位,学士とか修士とかこの学位だったらこのカリキュラムでいいのかというのを分野別の先生方がかなり丁寧に見るわけですが,それは後ほど説明するTEFにはそこの対応をするところは入っておらず,こちらの質保証でしっかりとそういうものは見ているという,そういう状態になっていると御認識ください。
 それから,4ページ目,リスクベースアプローチと書いています。今申し上げたような,登録簿で大学として登録されるという制度が始まったのですが,新設の大学はもちろんそうなんですが,昔からある大学も,制度が始まったので一度評価を受けるわけですが,その後は,このリスクベースアプローチということで,既に登録された大学はリスクがなければ,簡素なモニタリングでやるということです。つまり,ここにリード指標と真ん中に書いてありますが,学生数,入学者数,卒業率等の指標で大きな変化がなければ,特に一度評価をしたときからの大きな変更はないだろうということで,詳細な評価を行わないということです。ですので,認証評価を我々重ねているときに負担がいつまでも続くというものを,こういうリスクベースアプローチということで英国では考えてやっているというところになっています。
 ここまでが質保証の話ですが,5ページ目からTEFの話に入っていきたいと思います。TEFでございますが,学生局,Office for Studentsがやっていって,最低要件を超える教育の卓越性を評価するものです。2017年から19年に試行的に3回実施したわけでございます。そのときの議論が少し書いてありますが,学生の期待に実際に入学してみると十分応えていない大学があったというのがアンケートで見えてきたということと,それから御承知の方が多いと思いますが,イギリスはREFという形で研究の評価を80年代からやっているので,研究については大学の先生方は関心が強いのですが,教育についてそういうものがなかったということで,このTEFを始めたという形になっています。
 過去2回は,ここにありますように分野別を試行的に実施していました。そもそも2017年から19年が試行的なものだったので,いろいろな方法を試してみたというフェーズになっています。例えばここに案1と書いてありますが,大学単位の結果と異なると想定される分野のみ評価を実施したり,あるいは全ての分野の評価をした結果を大学単位の評価にもそのまま積み上げて反映したりという,そういうものを試してみたりしたということです。ただ,その場合に,やはり機関別と分野別でやるので,分野別のほうはデータ数があまり重複するものを多くしていると大変だということで制限したら,逆に不完全情報になってしまって,18年から19年には分野別と機関別で双方完全情報をもって評価をするということをやったのですが,ただ,下線が引いてありますように,分野別というのは非常に細かくなるので,データが欠落していたり,あるいは学生が少人数の場合のデータをどう取り扱うかとか,あるいは最近,学際的なコースが増えているので,それと分野分類をどうするのかといったいろいろな問題が見えてきたということです。
 これから御紹介するTEF2023に関しては,分野別は実施しないということでやっています。ただ,後で見ますが,評価の文書とか,あるいはデータの中で分野に言及しているものがしっかりあります。例えば評価の中でも,一部の分野のことだけを書いてあると高い評価にはしないというようなそういうようなことが評価者に指示をされていたりするので,そういうところでしっかりと見ている形になっています。
 6ページ目が,TEF2023です。TEFの格付は,太字のところですが,高等教育機関の評判に影響を与え,学生の進路選択に情報提供することで,優れた教育へのインセンティブを与える,教育改善へのインセンティブを与えるものです。その下にTEFの格付を得ると授業料の上限をインフレ率に合わせて設定可能だという記載があって,今このTEF2023も,後ほど見ますが,4段階で金銀銅とそれ以外をつけるのですが,銅以上だと,インフレ率に合わせて,ここに書いてあるように9,275ポンドから9,535ポンドに授業料の上限を上げられるということになっています。ただ,TEF2023が終わった後のTEF自体に対する事後評価レポートを見ると,あまり大学はここは重視していないという結果が出ていて,それよりは上の記載にあるように教育活動の向上のほうに重きを置いているということが出ています。
 それから,4年ごとに実施ということで,評価結果は4年間有効です。ただ,本当に4年後にやるかというのは今議論がなされているとも聞いています。228機関が参加して,イングランドの学生数500人以上の機関は参加が義務付けられています。それから,大学院を対象とせず,学士課程のみを対象に,機関単位で実施しているという,そういう枠組みになっています。
 7ページ目です。では,何を評価しているかですが,大きくは2側面になります。1ポツで書いてある学生の経験,Student Experience,それから2つ目の学生の成果という,その2項目です。それぞれの中に2項目あります。学生の経験のほうに学業経験と成績評価があって,それからもう一つ,リソースと支援,学生参画があります。それから,学生の成果ですが,「良好な」と訳していますが,Positive outcomesと,それから,これも後でもう1回御説明しますが,訳し方が難しいんですが,Educational gains,教育的な向上と書いていますが,こういう2項目があります。後ほど説明しますが,さらにその下に細分化された項目があって,SE1~3とか書いてあるのは3項目あるという意味でございます。
 それから,その評価をどうやっているかですが,下に書いてあるように高等教育機関からの提出の文書,それから,任意ですが学生側からの提出文書もあります。それから,Office for Studentsが提供する指標,この3つをもって,評価者,評価者の中にも学生の代表が入るのですが,専門家パネルが評価をするという形になっています。
 ページをめくっていただいて,8ページ目です。非常にビジーな表ではございますが,この表は何かというと,学生の経験について2項目あるといった学業経験と成績評価,リソース,支援,学生参画が列になっています。それから,行で,上から卓越した,非常に高い,高いと書いてありますが,要は,3段階にするときの基準がこのセルの中に書いてあるという,そういう表になっています。
 上の「卓越した」だけ見ますが,学業経験と成績評価のところにはSE1から3まであって,教育,成績評価,フィードバック,そしてSE2がコース内容と提供方法,そして3が研究,イノベーション,学術活動,専門的実践,雇用主との連携という,その3項目を見ています。それぞれどういうものを「卓越した」と評価するかというのが,非常に簡素な文書ですが,定義されています。それから,リソースに関しても,右のほうですが,SE4で教職員の専門能力開発,FD,それからSE5で学習環境,そしてSE6で学習リソース,そしてSE7で教育改善における学生の参画と,こういうものが立っています。これがoutstandingだと,線が引いてあるところが優れたというような表現になっていて,それよりも少し劣るのが「非常に高い」。「高い」になると,先ほど冒頭で見た認証評価をパスしているレベルが高いという,そういう表現になっています。こういう形で3段階ついています。
 それから,下のほうに細かく書いていて申し訳ないのですが,後でも見ますが,さっき3つ使う情報のうちの指標というのがありましたが,学生の経験の特にSE1,2,5,6,7については,National Student Survey,全国学生調査,それの指標を使うけれども,証拠の半分以下にしかならないと書いています。要は,判断をするときに,それで判断をするわけではなくて,半分以下の程度の情報として使うと。大学のほうからは,この指標をどう解釈するかの説明文書が大学からの提出書類に書いてありますので,そういうものを見ながら評価をするという形です。
 それから次のページ,9ページ目,評価の基準の2枚目です。良好な成果というところでは,SO1は学生の学業成功を支援するアプローチだとされています。それから,SO2で在籍継続率,修了率,SO3で進路決定率みたいなものが記載されています。それから,教育的な向上という,右のほうですが,ここが我々の言葉で言えば質的な学修成果に相当するところです。まず,SO4で期待される教育的な向上は何か,我々の言葉では学修成果は何かということです。それから,SO5でそれを支援するアプローチは何か。そしてSO6で,それの評価と実証,実際にそれが身についていることをどう実証するかということになります。SO2とSO3は率と書いてありますので,そこも指標を半分以下で使ってみるという形になっています。
 10ページ目です。先ほどから出ているこのEducational gainsなのですが,非常に訳しにくいと申し上げたのが,さっきoutcomeという表現もあって,そこで私は成果と訳したのですが,それと違う概念としてgainsとなっています。少し前のイギリスはLearning gainsという言葉を使っていて,そことの差異化も少し難しいのですが,意味をくみ取ると,どうもgainsは,真ん中辺りに「変化量」という下線が引いてあるところがありますが,やはり得たものということで,最初から得てどう変化しているかという,そういうところに焦点を置いているという形になります。それから,learningを超えてeducationというのが後でもまた出てくるのですが,必ずしも個別の生徒のgainだけでなくて,例えばその地域とか社会全体のgainみたいな話まで入るという,そういうことをどうも考えているようです。ただ,実際,そんなに我々の認識を超えるところはなくて,10ページの下のところに,教育的向上に含まれる内容として,学術的能力,そして個人的な能力,モチベーションとかソフトスキルのようなもの,それから就労の能力,そういうものが入っているので,そんなに我々の学修成果の議論と変わるところではございません。
 11ページは,時間がないので飛ばしたいと思います。
 12ページ,先ほどから出ている指標のほうですが,指標は,先ほども申し上げましたように全国学生調査が学生の経験を見るときに使われます。5項目あってその中にクエスチョンが幾つか立っているのですが,こういう全国学生調査の中からこれらを使っているという形になります。それから,学生の成績は統計調査になって,在籍率,修了率,進路決定率が使われているという形になっています。
 13ページでございますが,こういう評価をした結果としてどうなっているかですが,金銀銅,そして改善が必要というこの4段階で評価をしています。真ん中辺りに「全体評価の大学数」と書いてありますが,こういう形で結果としては分布をしています。その横に「大学の例」と書いてありますが,やはりオックスフォードとかケンブリッジとかインペリアルカレッジなど,大規模なトップ大学は金になっているのが結果的に多いという形はありますが,ただ,ロイヤルアカデミー・オブ・ミュージックとか体育学で有名なラフバラーユニバーシティとかそういうところも入っていて,必ずしも特定のグループばかりか金に入っているわけでもないですし,銀のところにも様々な研究大学のようなものも入っている形になっています。
 あと少しだけ説明します。14ページ,こういうTEFの結果についての情報公表です。格付の結果とともに,大学が提出した書類,そして学生が提出した書類,そして,評価委員会がつけた評価書の全部が公表されています。それとともに,TEFの指標についても全てが公表されていて,後のページでダッシュボードというのがタブローという皆さん御承知のソフトで作られています。それから,下に書いてあるように,学生向け進学情報サイトや大学出願機関のサイトでも,こういうTEFのゴールドバッジみたいなものがついている状態です。
 15ページが指標のダッシュボード,これがタブローの表です。先ほどあった例えばStudent Experienceだったら,全国学生調査の回答結果,その大学の回答結果が生の数字でも見られるのですが,ベンチマークとの比較という形で表現されます。つまり,統計的にというか,分野別とか,男女別とか,地域別とか,そういうもので平均値を出した上で重みづけ合計をしてベンチマーク値をつくって,そのベンチマーク値に対して高いか低いかを示すという,そういう図になっています。ですので,この図で真ん中辺りにあるのはベンチマーク値と大体同じぐらいで,右に行くほど大学のベンチマーク値と比べて高いという,そういう状態が見えるようなものになっています。上の図がNational Student Surveyですし,下が指標のものになります。
 今見ているのは機関単位なのですが,これはラフバラー大学のサンプルですが,次のページを見ていただくと,ほとんど同じ図ですが,これが分野単位でも出ています。赤くマークしていますが,これはラフバラー大学のビジネス&マネジメント分野だけを取り出して見たときにやはり同じような図が公表されていて,そういう意味で先ほどから出ているように,分野別についても情報はちゃんと提供されている状態になっているという形でございます。
 そういうことがあって,17ページで,冒頭,TEFが教育の向上を重視していると述べたこともあって,TEFが終わった後に,例えば教育的向上のところについて優良事例の分析をして共有をするというようなことも行われて,ここに先ほどあったように学生個人の利益だけではなくて,このEducation gainsには,社会における集団的利益だと,人材の流動とか,持続可能性,社会的結束とかそういうまで入るとか,どういう形で大学が測定をしているかみたいなことの優良事例の流布もされています。
 次の18ページ,その中でも,例えばゴールドを取ったような大学は実際にどういうことをしているかの紹介サイトなどもOffice for Studentsは作っている。これはラフバラーユニバーシティが,我々の言葉で言えば学修成果のコンピテンシーをどう,この場合は15個つくっているのですが,それをどう作っていて,右のほうにそれを測定するようなアプリをどう作って運用しているかといったことが事例として共有されています。
 そして最後,19ページでございます。こういう情報が入学志願者,高校生にも伝わっているかということで,高校生がどのくらいTEFの情報をやはり見ているかという調査もしています。結果は,アンケートを見ると,42%が志望大学に出願する前にTEFの評価を見たことがあると答えていたりしてアンケート結果はポジティブなのですが,一方で,志願者にグループインタビューしてみると少し微妙な結果が出ていて,金銀銅メダルが何を意味するのか,金というのはトップ研究大学のことなのかとかそういう誤解もあったりとか,それからまさに日本の先ほどのお話と同じですが,記述式の評価というのは,ナラティブで価値は高いんだけれども,学生にとっては読みにくいという話も出ていて,基本的には日本と同じような状況は出ているのですが,ただ,先ほど見たように,情報公表のところがしっかりとできているので,もうちょっと日本よりはいい状態なのかなというような状況になっています。
 時間が大分押してしまいましたが,これがイギリスの状態になっています。以上です。
 
【森主査】 
 駆け足でありがとうございました。
 続きまして,大学改革支援・学位授与機構の森先生に10分程度でお願いしたいと思います。
 
【大学改革支援・学位授与機構森研究開発部教授】 
 皆さん,こんにちは。大学改革支援・学位授与機構の森でございます。このようなお題をいただきました。
 早速,スライドの2枚目でおさらいをしたいと思います。アメリカでは,憲法によって,教育に関する権限は連邦ではなく州に留保されています。高等教育も同じです。ですから,教育機関の正統性の担保は第一義的に州の責任なので,合衆国レベルで見ると,提供される教育の質に州ごとの多様性があり得ます。この幅は割とアメリカ建国の頃には大きくて,この問題を解決するために発明されたのが,教育機関が自発的に団体をつくって,そこへの参入資格,メンバーシップを審査する適格認定,すなわち,アクレディテーションのシステムです。
 簡単に歴史を振り返りますと,1847年に最初のアクレディテーション団体であるアメリカ医学協会が発足しました。つまり,最初のアクレディテーション団体は分野別のものだったということです。当時のアメリカは,新しい国における医師養成,これは生き死に関わる問題ですので,早い段階で医学校のアクレディテーションにニーズがあったというのは納得がいくと思います。
 1885年には,最初の地域アクレディテーション団体であるニューイングランド協会が発足しました。ここで言う地域がその後全米に増えていくわけですけれども,地域アクレディテーション団体は創設当初,中等教育までの学校を対象としていました。この地域アクレディテーション団体が大学の評価を始めたのは1913年で,北中部協会というところから始まりました。
 これ以降,大学のメンバーシップの認定というのが,連邦政府とは原則独立して行われてきたわけなんですけれども,風向きが変わったのが,1965年の高等教育法の制定を経て,1968年に連邦によるアクレディテーション団体の認証が開始されてからです。この認証を通してアクレディテーションと連邦奨学金の受給資格などのひもづけが始まりまして,これによってアクレディテーションに対する連邦の関与が大きくなったということです。
 御参考までに,スライド3枚目にあるのが地域アクレディテーション団体の地域の分け方とそれぞれのアクレディテーション団体が出来た年です。伝統的に個々の大学は,本部の存在する地域を分担するアクレディテーション団体に適格認定を受けるという原則が守られてきました。近年これが少し混乱しておりまして,その混乱の状況は地図の下に3点書き込みましたが,今日はそこまでは踏み込まずに,原則2024年までのアクレディテーションのあらましに注目したいと思います。
 次のスライドです。アメリカのアクレディテーションの概要ですが,Harcleroadという研究者がそれを称してこんなふうに述べています。新たな社会問題を,新たな制度を自発的に開発して解決するアメリカ式アプローチの好例。これは大変示唆的な言説だと思います。州による認可の粒度がまちまちであるという問題を解決するために,大学などの学校が自発的に結成したのがアクレディテーション団体で,アクレディテーション団体がさらに自発的に形成した連盟があって,それが今で言うCHEAです。このCHEAは,アクレディテーション団体を代表して連邦と折衝したり,社会に向けて情報発信をしたりもします。
 アクレディテーション団体と高等教育機関はピアの関係,同業者同士の関係ですので,どちらが偉いというわけではなく,相互に敬意を払うのが原則です。例えば,評価の場,こんな感じの会議室に大学の代表者が入室する場合には,アクレディテーション団体のコミッショナーもスタッフも私のようなオブザーバーも,全員立ち上がって大学を迎えるというのが私の見た実例です。このコミッショナーとスタッフについては後で述べたいと思います。
 ドット2つ目,アメリカの連邦規模の感覚では,アクレディテーションを受けている機関が正統な機関であり,受けずに学位のようなものを出せばディプロマ・ミルということになります。
 ドット3つ目,こういった質保証の仕組みは,高等教育機関が自主的につくって運営しているもので,連邦はそれを奨学金支給などの特定の目的のために利用しているというのが建前になっています。かつ,ここの表に示しましたとおり,アクレディテーションは機関別と分野別に分けられまして,さらに機関別アクレディテーションには,主流のシステムであるところの,地図をお目にかけましたが,地域アクレディテーションシステム,小規模で割と少数の宗教系や職業系の単科の機関などを対象とした全国アクレディテーションがあります。CHEAないし連邦から認証されていて奨学金の受給資格となっているアクレディテーション団体は,この表を見ていただきますと90ほど,91かな,あります。
 その約90のアクレディテーション団体の内部の構成ですが,典型的な形を御説明します。5枚目です。ほぼ全てのケースで,呼び方は様々ですが,適格認定を実際に行うコミッションと,団体のスタッフ,先ほど申し上げましたコミッションとスタッフから成っています。左の図,コミッショナーは大学の教職員や社会の代表者が委員として参画しているのが一般的です。一方で右の図,スタッフはこの団体を支える事務局の職員です。
 このスタッフがどのような人たちか,別添の資料を御覧ください。電子ファイルで御覧の場合は8枚目からです。このリストなんですけれども,CHEAないし連邦教育省に認証されている分野別のアクレディテーション団体ごとに,事務局スタッフの代表者のバックグラウンドとして,公表されている限りの大学院学位と職業学位を調べて一覧にしたものです。CHEAとUSDE,すなわち連邦教育省の認証の状況をマル・バツで示していて,星印がありますけれども,星印はかつて認証されていたということを表します。
 それで,今日この資料をお示ししている理由ですけれども,分野別アクレディテーション団体の事務局スタッフは,多くが当該分野での高い専門性を有する人々によって構成されているということをお伝えしたくてお目にかけているわけです。全てのスタッフについて資料を作るのはちょっと無理だったので,事務局長相当の人だけリストにしました。お名前は一部伏字です。ざっと御覧いただきたいのですけれども,手元の計算で分野別アクレディテーションの約68%の事務局長は,当該分野に特化した何かしらの資格を持っています。仮に事務局長がそのような資格を持っていなくても,事務次長,その他のスタッフの大半がその分野の専門家で占められている場合がほとんどです。なぜかというと,アクレディテーション団体は同業者がボトムアップで自発的につくっているからです。よろしゅうございますでしょうか。
 6枚目です。視点を変えまして,高等教育機関の側からアクレディテーションを見てみたいと思います。まず大学なら,大学全体の適格性は外側の楕円の機関別アクレディテーションが保証していまして,大学のミッションとか教育・研究の実態,財務,社会的責任などの観点から評価するのが大枠の仕組みです。この適格認定のスタンダードというのは,地域ごとにおおむね似通っていると言っていいと思います。
 それから,大学の中の部局・学部・学科・研究科あるいは個別の科目にわたることもあるのですけれども,その専攻特有の視点から教育と研究と,そして職業準備なども含む社会的レリバンスを評価するのが,この内側の楕円の分野別アクレディテーションです。この分野別アクレディテーションは,大学の側が必要に応じて受けるもので,個々の分野の教育・研究などを機関別よりも深く集中的に質保証するものです。ここで注意したいのは右下の四角なんですけれども,大学の営みには専攻分野別をどれだけ足し上げてもカバーできない余白というか,例えば大学全体のミッション,財務,図書館,事務組織や学長のリーダーシップといった領域が必ずあるということです。そのような領域は分野別ではなくて,機関別アクレディテーションがカバーするという,これは相補的な関係になっていると言っていいと思います。
 最後のスライドです。ここまでのまとめとこのワーキンググループのテーマに関わる私個人の幾つかの疑問,それはレトリカルクエスチョンなんですけれども,書き出しました。資料にあるとおりなのですが,1つ目,アメリカのアクレディテーションは,同業者の自発性に基づくもので,権力による関係ではなく,実用と敬意に基づく関係にあります。
 2つ目,機関別アクレディテーションは,高等教育機関が自発的に立ち上げた機関としての正統性の基本となるものです。ここで仮定の問いとして,ハイポセシカルクエスチョンとして,この機関別アクレディテーションがなかったらどうなるのかと考えようとしたのですが,そもそもアメリカには連邦教育省による一元的な設置認可がないので,今のところ,機関アクレディテーションが存在しなくてもいいという発想は生まれていないと思います。現政権にあってもなおです。この点が日本とアメリカの基本的かつ大きな違いです。
 一方,3つ目,分野別アクレディテーションですけれども,これは当該分野の専門家が自発的に立ち上げて専門家が運営するものです。御覧いただいたとおりです。当該分野の専門性を有する人材が運営するからこそ生まれる敬意や信頼もあると思います。ここでまた仮定の問いなんですけれども,専門家が運営するのでない分野別アクレディテーションがあったとして,それに国際的な通用性は生まれるのか。これは大いに疑問です。例えば別添資料で見ていただいたようなアメリカの例えば理学療法学の,学校心理学の,あるいは言語聴覚学の専門アクレディテーション団体の事務局と,日本の評価団体が,別に日本でなくてもいいですけれども,評価団体同士で付き合うとして,こちら側の運営組織に専門家がいないという場面などを想像いただければ,多分だんだん話は通じなくなっていくのではないかと思うわけです。
 さらに,次の,専門家が運営するのでない分野別アクレディテーションしかない状態,すなわち,専門家による分野別アクレディテーションも機関別アクレディテーションも存在しない高等教育システムの全体的な国際的通用性が担保できるのかというのも疑問だと思っています。なぜかというと,スライド6で見ていただいたポンチ絵の小さい楕円の中の専門性に不足があり,かつ大きい楕円の余白が埋まっていない状態になるからです。ただ,日本の場合,機関別アクレディテーションの不在というのは設置認可でカバーできるのかもしれませんが,それなら20年前に設置認可に加えて機関別認証価を導入したのはなぜだったのかというのが私のもう一つのレトリカルクエスチョンです。
 最後に,今日いただいたお題はアメリカの評価制度でしたので,ここまでアメリカのアクレディテーションについてお話ししてまいりましたが,言うまでもなく,アメリカのシステムが理想的だと言いにきたわけではございません。批判は常にあります。しかし,一度アメリカのアクレディテーション制度のような制度を導入した高等教育システムであるということは,これはよくも悪くも無意味ではないはずです。
 例えば機関アクレディテーションが初めから存在しなかったのならいいのですが,この先,日本の全ての高等教育機関がある日,機関別アクレディテーションを失うとして,その国際的なインパクトはいかばかりかという問いは無視できないと思います。つまり,この大学に何か問題があって,あるいはこれらの個人の人々が卒業した大学に何か問題があって機関別アクレディテーションが失われたわけではないといういきさつは,国際的なシーンではこれは思ったより簡単には理解されないのではないかというのも私の懸念の一つです。後戻りはできないのかもしれませんけれども,これらは置き去りにできない問いだと思いますし,それに応える正念場を迎えていると思います。
 以上です。ありがとうございました。
 
【森主査】 
 2名の先生方,ありがとうございました。では,ただいまのところで,林委員,森教授のそれぞれの発表に関しまして,質疑応答,意見交換を行いたいと思います。御意見がございます方は挙手をお願いいたします。いかがでしょうか。
 ありがとうございます。では,笠井委員,葛城委員の順番でお願いいたします。
 
【笠井委員】 
 ありがとうございます。オンラインで失礼します。笠井でございます。
 林委員にイギリスのことで少しお伺いしたいのですけれども,TEFの関係で,スライドでいくと10ページで,一番中心の話かなと思うので,教育的向上の項目に関して,理想的には学生のスタート地点の違いや変化量を考慮するという辺りで,こういうものについては,大学が提出書類で明らかにしなければいけない,証拠がないといけないという話なのですけれども,具体的にどういうふうにすればこの変化量を明らかにする証拠が出せるのか伺いたいです。
 というのも,これはこのワーキンググループのテーマとの関係では前から気になっており,例えば私は法学部なのですけれども,法律の勉強は高校まではあまりやってないものですから,大学に入って例えば1年生に入ったばかりの人に3年生・4年生の専門試験の答案を書かせて,そうすると,ほとんどできないと思うのです。それで,3年生・4年生になって試験をやったら,みんないい点を取れた。そうしたら100%伸びたみたいな,そんなふうなことでいいのかどうなのかという辺りが前から気になっているのです。今の例は私が考えた変な例なんですけれども,イギリスでどのようにして具体的な証拠を示しているのか,もし何か情報をお持ちでしたらお伺いしたいと思います。
 以上です。
 
【林委員】 
 ありがとうございます。まずは,9ページの下から7行目ですが,現在,教育的向上に関する全国的な尺度は存在せず,多くの公的機関は学生に提供する教育的向上を測定するための独自のアプローチをまだ開発していない可能性があると記載しています。要するに現状はこんなもんだよねということが注釈に書いてあって,こういう項目を立てることで,下から2行目ですが,教育的向上を測定し,証明するための実践を今後進めてもらうことを意図していますと基準に書いてあります。
 その上で,実際にどうかという話なのですが,例えば評価後のTEFに対する評価レポートみたいなものを見て,まずは変化量を見るのは非常に難しいし,見れていないという状況があるというのが書いてあるとともに,実際にあったのは何かというと,入学試験と同じ内容のものが,例えば卒業時に測定できるような分野であればできると書いてあって,具体的に何かというと,スポーツや芸術,音楽など,そういうものが入学時点に評価されていて,それが3年間とか4年間で成長してればその差分が評価できている。かなりスペシフィックな特定の分野においての能力であればできるけれども,それ以外は少し難しいというのが現状であるようでございます。

【笠井委員】 
 どうもありがとうございました。
 
【森主査】 
 ありがとうございました。続きまして,葛城委員,お願いいたします。
 
【葛城委員】 
 葛城です。林先生,ありがとうございました。私からは林先生に少し細かいことを伺います。すごく細かいので,もし御存じであればということで御回答いただけたらと思います。
 まず1点目です。全国学生調査(NSS)を評価に使われているということで,ここで検討している新たな評価についても全国学生調査を利用することは考えられるので,お尋ねするのですが,回収率がどの程度か御存じでしょうか。
 
【林委員】 
 正確な回収率がすぐ出ないですが,かなり高かったと思います。
 
【森主査】 
 私もその印象があります。
 
【林委員】 
 たしか最終年の学生に対する調査で,七,八割とか結構高い数字だったと思います。
 
【葛城委員】 
 それは例えば何割以上が云々とかということが国から言われたりとか,そういうことを根拠資料として使ったりするので,どのぐらいの回収率が必要かということが明示されているものなのか,それとも各大学が自発的に高い回収率を目指しているのか,どちらでしょうか。
 
【林委員】 
 全国学生調査はナショナルでやっているので,個別の大学がという話じゃないのですが,NSSは分からないですけど,ほかのところでも出てきている卒後調査はよほど学生調査より回収が難しいのですが,回収率がそれなりにあります。私がそれをイギリスのHESAのかたに聞いたときに,入学時点でこういう調査に卒業した後に回答することをちゃんと一筆取って求めているという説明を受けて,だから,そういうことを考えれば,NSSに回答することも恐らく入学時点で,入学したら回答しますよねという,そういうことを求めているんじゃないかなとは思います。ただ明確なところは分からないという状態です。
 
【葛城委員】 
 分かりました。あともう1点,これは確認なのですけど,NIADが出している報告書に全国学生調査の満足度を使っているというふうなことが書いてあって,端的に満足度を聞いているのかなと思って先生の話を聞いていました。12ページにあるTEF指標はSE1からSE7のものがあって,Q1から並んでいるのですけれども,こういうものをもって学生満足度と捉えているのか,お伺いします。
 
【林委員】 
 実際の資料の中で満足度という表現は見ませんでしたけれども,そういう意味では学生がコースの教育とかそういうものに一種満足しているかどうかはこういう指標で見ているという形になると思います。
 
【葛城委員】 
 答えづらい質問して申し訳ありませんでした。私からは以上です。
 
【森主査】 
 ありがとうございます。溝口先生,お願いいたします。
 
【溝口委員】 
 御発表ありがとうございます。森先生に少しお伺いしたいと思うんですけども,アクレディテーション団体のアンブレラ団体としてのCHEAだということで御紹介いただいたと思うのですけども,CHEA自体と連邦教育省との関係というのがどうなっているのかなということ,もう一つは,スライドの4ページのところでCHEAは認定しているけど,連邦教育省が認定していなかったりとか,あるいはその逆があったりとかというのがあるのかなと思うのですけど,それぞれが認定していなかったり,していたりする違いというのはどういうところにあるのか,もう少し詳しく教えていただけるとありがたいなと思います。どうぞよろしくお願いします。
 
【大学改革支援・学位授与機構森研究開発部教授】 
 ありがとうございます。CHEAと連邦教育省の関係は一言で言うと,ライバル関係といいますか,対立する利害を相互に調整する関係というふうに言うのが多分一番適切な言い方ではないかと思います。
 CHEAのミーティングなどに行きますと,連邦の政策に関する動向というのはとても注視されていて,それにどのように対抗/対応していくかというような話がメインの話になるというふうに思っております。それは連邦が出している高等教育政策のいかんによるんですけれども,大体そんな感じで御理解いただければと思います。
 アクレディテーション団体がCHEAに認定されていたり,連邦教育省に認定されていたりということなんですけれども,連邦奨学金の規定では,このどちらかに認定されていれば,その資格が生じるということになっています。
 分野別アクレディテーション団体の場合は,属している大学とか高等教育機関が,CHEAないし連邦教育省に認知されているアクレディテーション団体がクレジットされていればいいということにもなります。
 これは分野ごとの文脈の問題,特性,それから好みの問題などもあると思いますけれども,いずれにしても両方の認証を受けているところもありますけれども,両方とも受けていないところ,例えばAACSBという日本でも有名なビジネス系の専門アクレディテーション団体は最近になって両方の認証を受けないことにしているはずです。日本の大学の中でもAACSBのアクレディテーションを受けていらっしゃるところがあると思うんですけれども,そういう状況になっていて,単一のメカニズムというのは説明しにくいなという感じです。
 
【溝口委員】 
 ありがとうございます。最初のところでいきますと,要は単なる協力関係にあるというわけではなくてということですね。お互いがお互いの政策に関してきちんと意見を申し立てていくような,要は対等な関係にあるという理解でよろしいですか。
 
【大学改革支援・学位授与機構森研究開発部教授】 
 関係は対等であると言っていいと思います。やっている仕事が全然違うというわけで。
 
【溝口委員】 
 ありがとうございます。
 
【森主査】 
 ありがとうございます。浅田委員よろしくお願いいたします。
 
【浅田主査代理】 
 ありがとうございます。林委員に1点と森先生に1点質問です。
 このワーキングの親委員会は質向上・質保証システム部会です。質向上と質保証の2つのキーワードが入っているのですけど,イギリスの制度が質保証と質向上に分かれた形で動いているというのは,新しい評価制度を考える上で非常に参考になるお話をいただいたと思っています。
 ところで,質向上の方なのですけれど,質向上のメカニズムというのは,金銀銅の評価を受けて,さらに高みを目指して各大学が努力するという意味での向上なのでしょうか。それとも,この評価が何らかのアドバイスとかサジェスチョンを与えるような向上の仕組み,そういうものがあるのでしょうか。
 
【林委員】 
 ありがとうございます。ここで言う向上は,先ほどもある種,金銀銅という形で評判が出ることによって,それを高めようというインセンティブがつくという,そういうことで質向上になっています。
 ただ一方で,先ほどプレゼンの最後にお示ししたように,学生局も評価結果から得られた優良事例を流布するなど,そういう形でのサポートをしているので,向上に対して支援はなされているという状況だと思っています。
 加えてTEFが終わった後の事後レポートにて大学に対してアンケート調査をしているのですが,何が向上したかと答えているかというと,学内にエビデンスに基づいて判断をするカルチャーができてきた,そういうことを言っています。TEFのようなことをすることによって,彼らからいえばエデュケーショナルゲインズをいかにちゃんと測定して,考えていくかという,そういうところについては,実際に学内で向上していると認識しているようでございます。
 
【浅田主査代理】 
 ありがとうございます。
 アメリカの事例なのですけれど,質保証・質向上という2つの点で見たときに,アクレディテーションというのは,それらの要素をどう含んでいるのでしょうか。
 
【大学改革支援・学位授与機構森研究開発部教授】 
 ありがとうございます。アメリカには高等教育機関4,000機関ありますので,機関別アクレディテーションだけを見ても,大学にとっての高等教育機関にとってのアクレディテーションの意味というのは異なり得ます。
 ある地域アクレディテーション団体のエグゼクティブディレクターが言うところによりますと,3種類あると。ミニマムスタンダードを地域アクレディテーション団体は求めているんだけれども,第1のレイヤーはそのミニマムスタンダードらくらく越えてくる大学で,ほかに質を保全したり向上したりするメカニズムを持っている人たちで,真ん中のレイヤーが,これがちょうど地域アクレディテーション団体の基準を満たすと,質の維持というのがちょうどいいというような人たち,そして,第3のレイヤーが,もしかするとアクレディテーションを失ってしまうかもしれないというような機関は,これによって質の向上というのが,その機能が期待できるというような言い方をされているのを聞いたことがあります。
 しかしながら,この機関別アクレディテーションというのは,原則としてミニマムスタンダードを満たしているかというのを重要な視点としておりまして,むしろ,これは分野にもよるんですけれども,分野別アクレディテーションのほうに質の向上のエビデンスというか,そのPRのために外に対してここのアクレディテーションを受けているというようなことに説得力を求めているというところもあると思います。
【浅田主査代理】 
 ありがとうございます。
 
【森主査】 
 よろしいでしょうか。それでは,斎藤先生,お待たせいたしました。お願いいたします。
 
【斎藤委員】 
 ありがとうございます。林先生にお伺いしたいのですけれども,以前,TEF2023でトリプルゴールドを取った大学の方からお話を聞くことがございまして,スチューデントエクスペリエンスとスチューデントアウトカムと,あと全体で全てゴールドを取った先生からお伺いしたんですけれども,そのときに,TEFに振り回されるわけじゃなくて,自校の教育理念に基づいた質保証と説明責任を道具として活用していくというのが重要だというふうに述べていらっしゃいました。
 これまでのこちらのワーキングでもいろいろ聞いてきたように,評価疲れですとか,この評価は何のためにみたいな点がなかなか伝わっていないし,受ける側もなかなかそういったことを認識できないみたいな話がございまして,TEFを見てくださった感想だとかそのお考えで構わないんですけども,TEFの枠組みというのがこういう自校の教育理念に基づいて質保証の道具として活用していけるような要素といいますか,今までの日本の認証評価と比べて,TEFの枠組みというのはこういう側面があるから,そういう自校の道具として使っていけるような要素みたいなものがもしお考えございましたら,お伺いできればと思います。
 
【林委員】 
 ありがとうございます。TEF2017から3年試行したときは,比較的指標重視であんまり負担をかけないようにという設計だったと思うのですけども,ただ一方で,その後の評価レポートを見ても,あんまり評判がよくなかったというふうに認識しています。
 TEF2023で少し違うなというのが,指標が半分以下だというのが明確に書いてあるとともに,例えば10ページ見ていただくと,時間がなくてあんまり強調できなかったかもしれませんが,例えば教育的向上のところで,一番上に高等教育機関が特徴や使命に照らして自ら定義するという点です。我々の言葉で言えば,学習成果を大学の特徴であったり,設置の使命であったり,そういうものに照らして,自ら定義して,そして実際SO4はそれをどういうふうに明確に表現しているか,そして,SO5でどうやって測定するか,SO6で測定結果はどうかを見ている。極端に言うと,学習成果を一律の方法で標準的に評価できるみたいな発想ももしかしたらどこかにあるかもしれませんが,そうではなくて,この場合はしっかりと大学の特徴を踏まえた形で今回やるということで展開をしていると理解しています。
 実際に,過去の試行のときと比べて,今回は終わった後も6割ほどの大学がポジティブにこの評価を受け止めていて,3,4割はニュートラルで,ネガティブは数%だったということですので,大学としても基本的にはこういう設計でそんなに違和感はなかったというふうに受け取っているようでございます。
 
【斎藤委員】 
 ありがとうございます。
 
【森主査】 
 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。時間の関係で,あと数分かなと思うのですけど,私からもよろしいでしょうか。
 まず,森先生にですけれども,ご発表ありがとうございました。先ほどのTEFが割と受験生を見ているところがあると思うのですけれども,アメリカの場合はハイスクールへのインパクトとか,また,受験生確保のためのリテンション率もすごく高いと思うのですけども,そういうところにこういうものが活用されるとか,そういったような皆さんの思いがあるのかどうか,このあたりいかがでしょうか。
 
【大学改革支援・学位授与機構森研究開発部教授】 
 ありがとうございます。先ほど申し上げましたように,専門アクレディテーションを受けている中でも,ブランド力が高いとされる専門アクレディテーションを受けているということは大学のPRにつながり得ることですので,そこにはその機能,つまり,高校生というか,進学希望者へのインパクトというのはあると思います。
 ただし,機関アクレディテーションのほうは,これを受けていれば正統な大学だというミニマムスタンダードをクリアしているということですので,これがないと,一般的な大学のリーグには上がってこられないということになります。したがって,地域アクレディテーションを受けているということは,高校生,進学希望者への宣伝材料にはならないと思います。
 
【森主査】 
 ありがとうございました。
 林先生にも一つお伺いしたいんですけれども,ぱっと見た印象なんですけど,13ページの2023の結果について,改善が必要が3という,思ったよりも少ないなという印象があるのですけど,これはみんな頑張っているのか,それとも,多少まだまだ試行的なところがあるのか,これはどう読んだらいいでしょうか。
 
【林委員】 
 先ほどの8ページや9ページのビジーな表を見ていただくと,上から順にアウトスタンディング,ベリーハイ,ハイになっているのですが,ハイは,要は冒頭で申し上げた設置基準をパスしているかどうかぐらいの話なので,質が高いと書いてあると,その言葉だと質が高いのかと思っちゃうのですけど,実際の評価基準は,設置基準をパスしているか,そういうレベルです。そういう意味では,改善が必要というのは設置基準がまずいというレベルなので,そこはきっとそのぐらいなのだと思うんです。
 実際に出ているのは,これは民間営利の大学とかそういうのですので,運営や教育のマネジメントが十分にできていない大学なんじゃないかなというふうに思います。
 
【森主査】 
 ありがとうございます。そうしますと,頂いた資料の3ページのBの5の指標,高等教育セクターで認められる水準というところなのですけれども,これはTEFには入っていないということですか。
 
【林委員】 
 はい。イギリスの場合は昔からサブジェクトベンチマークという形で分野ごとに,例えば学部だったらどういう能力が必要かみたいなことが文書で作成されています。それを参考にして日本は学術会議が分野別参照基準をつくったわけです。実際に昔からこの質保証の評価,QAAという機関がやっていましたが,そこでは大学に対して,サブジェクトベンチマークを参照しながら,自分たちのカリキュラムがしっかりとできているかを説明するように求めるというような,基準の立て方になっています。設置審査相当のものではそういうものをしっかりと見ているのだけど,ただ,TEFのレベルになると,カリキュラムがそんなにできているかどうかみたいなのを,この段階で評価して金銀銅つけるかというと,そこはきっと難しいということで,こういう学生の経験,要は教育のやり方に対して学生がどう経験して,どう認識したかということと,学習の成果のところを強調して見ているという,そういう立てつけになっているんじゃないかなと思います。
 
【森主査】 
 ありがとうございました。
 そのほかいかがでしょうか。
 では,2名の先生方ありがとうございました。森先生におかれましては,ここで退室いただいても構いません。御多用のところありがとうございました。
 続きまして,2つの事例について共有させていただきたいと思います。まずは,先ほど林先生からもありましたように,日本にも参考になる制度があるということで,国立大学法人評価の現況分析についてお話をいただきたいと思います。その後,現在の認証評価制度の評価基準・項目について,事務局でおまとめいただきましたので,これについても御説明いただくということになります。
 まず,嶌田委員よろしくお願いいたします。
 
【嶌田委員】 
 嶌田でございます。それでは,国立大学法人評価の中で,今回,会議の場でも出てきましたけど,現況分析,現況調査表を用いた教育分野の評価について説明させていただきます。僕の場合,3回,これを受けるほうとしてやってきておりまして,いろいろ思いはあるのですが,客観的な話をさせていただこうと思っております。
 では,2枚目のところを見ていただいて,国立大学法人評価ということですけども,基本的に6年のワンユニットになっております。現在,第4期中期目標期間が令和4年から始まって令和9年度までということになります。令和10年度からは第5期という形になります。
 国立大学法人評価は基本的に4年終わったところ で大きな評価があって,6年目終了時にまたもう1回評価があるんですけども,受けるほうとしましては,4年目のところで大勢を見極めて,その評価結果を使って次の計画立てていくという感じになります。ですので,ちょうどよいところに評価があって,サイクル的には現場として結構動きやすかった記憶がございます。そういうものを6年ごとにやっているというところでございます。
 次の3枚目のところを御覧いただきますと,中期目標・中期計画というのがございます。中期目標というのは文部科学大臣から各国立大学にこういうことやってくださいというふうに示されるものです。4期に関しては,幾つか示されたものに対して,その中からこれとこれをやりますというのを選択する形になっています。
 それに対して,中期計画は,大学が,その達成のためにこういうことやりますよ,6年間でこういうことやるんですということを示して,文部科学大臣の認可をいただいて,6年間,それを基にいろんなことをやっていって,大学を運営していくという感じになります。
 下のほうを見ていただきますと,平成16年の4月に国立大学法人化しましたから,ここが第1期です。6年ごとに第1期,第2期,第3期,第4期と来まして,現在第4期で,間もなく第4期の4年目終了時評価が始まるというような時期になっております。
 国立大学法人評価の仕組みなのですけども,中期目標,これが幾つかの部分に分かれています。ローマ数字でⅠⅡⅢⅣⅤとありますけど,ここのⅠが教育研究の質の向上に関する事項ということで,社会との共創はどうですか,教育もしっかりやってください,研究もしっかりやってくださいという感じになっています。
 その下にⅡからⅤで業務運営,財務,自己点検評価や業務運営と,いろいろあります。
 我々、大学改革支援・学位授与機構は、Ⅰの教育研究の質の向上に関する事項の評価を担当しています。それ以外のⅡ~Ⅴと全体の評価は国立大学法人評価委員会というのが文部科学省にあり、担当します。
 教育研究の質の向上に関する事項について6段階で中期目標と計画の達成度評価をしているのですが教育研究の質の向上に関することを評価するわけですから,単に計画ができた,できない,目標を達成した,していないというところだけ見ていくわけにもいかないので,学部・研究科をそれぞれ細かく見ていって,その教育と研究の水準がどのようになっているのかについて分析させていただいています。それを現況分析という形で現況調査票というものを用いてやっております。
 次が教育研究の評価,どのようにやっているのか,少し細かくなるわけですけども,上半分のところは先ほど申し上げた6段階での中期目標の達成度評価です。それに加えて学部・研究科ごとの現況分析を行います。
 下のほうの灰色で囲んでいる部分が教育と研究の現況分析になります。研究の部分は、本日の内容から外れますので今日は触れませんので、ご了承いただければと存じます。第3期のときには,教育面の現況分析の対象となる学部・研究科等が865組織ありました。これを4段階で評価をしていくという形でやっております。
 次ページになりますが、こちらが評価組織です。国立大学教育研究評価委員会が機構にあるんですけども,こちらが親委員会となっていまして,達成度を評価するチーム,研究に特化して見ていただくチームなどがありまして,現状分析部会というところで,11の学系つまり11の学問分野に分けて評価を行っています。
 うち一つは大学共同利用機関の部会なので,実質的には教育については10の分野でやっています。人文科学,社会科学,理学,工学,農学,そこに保健,教育,そして総合文系,総合理系で総合融合系という10の分野です。基本的な分野と近年はどうしても融合的なところが増えていますから,総合文系,総合理系,総合融合系という分野横断の部会も設定しております。
 第4期は現在進行形でこれからやりますので,第3期どうだったのかという話を説明させていただこうと思います。現況分析では教育活動の状況と教育の成果の状況,つまり活動と成果の2つに分けて評価を行っております。
 分析項目,記載項目を整理した表ですが,必須記載事項と選択記載事項という2つに分かれておりました。必須のほうは学位授与方針,教育課程の方針,教育課程の編成,授業科目はどうですか,授業形態,実習指導,成績評価,卒業修了判定,学生の受入れというような形で8つあります。
 選択的記載事項というのは,大学の学部・研究科等は千差万別ですので,学系の特色をつかむために,この8つでは見切れないものを選択項目としていれてありました。例えばリカレント教育や教育の国際性,教育の質の保証・向上の中からその学部・研究科の特色をより示すことができるものを大学の方がいろいろ考えながら選ぶこととなります。
 下の教育の成果に関しましては,卒業修了率,就職や進学の状況,こちらが必須の項目という形になっております。私どもの大学機関別認証評価で領域6という教育課程を評価する項目があるのですけれども,その項目を意識する形で設定をさせていただいております。
 8枚目です。現況調査票には2つの記載事項がありました。基本的な記載事項については機構側からこういう資料を出してくださいという指定があるので,大学側でそれらの関係する資料やデータを添付した上で,機構の方で基本的な状況に問題がないかどうか,要するに認証評価で求められるようなレベルを基本的に満たしているのかどうかというようなところを確認する部分,これが基本的な記載事項という部分です。
 もう一つの部分が,第3期中期目標期間に係る特記事項という部分で,ここで優れた取組,特徴ある取組や成果,要するに大学側としては,我々の教育の質はこうなのだと,見て欲しいということをここで書いたという感じです。
 基本的な記載事項と特記事項合わせて,記述としては1ページが最大となりますが、資料も一定程度添付できました。
 次は記載の具体的な指示の例ですが,水色で書いてあるような部分,ここが基本的な記載事項で,こういうデータを出してください,こういう資料を出してというものが具体的に記してあります。
 右側の部分が特記事項で,学部・研究科等の優れた取組及び特徴的な取組や成果を記述して,必要に応じて資料を添付していく感じです。
 次の10ページ目は教育成果の状況のほうの資料です。教育成果のデータなんかですと,留年率や進学率など外形的なものが主体だった印象です。
 右側のところの特記事項は,自分が大学にいたころは、単位取得の状況で特記すべきものとか,いろいろ悩みながら記述した記憶がございます。
 次は,もくじです。このような形で学部,研究科等ごとに冊子を作っていきます。最初のところは教育目標と目的と特徴です。その大学の学部の教育目的とか特徴に照らして評価いただくので,委員の先生に分かっていただけるように,うちの学部の特色はこうです,こういう特徴で教育やっていますというところをしっかり書きました。
 その下に,教育水準の分析,つまり先ほど申し上げた活動と成果をどんどん書いていきました。
 次が段階判定,特筆すべき高い質,高い質にある,相応の質にある,質の向上が求められるという4段階評価になっておりまして,赤い線引っ張ってありますけども,それぞれの学部・研究科の目的等に照らして,取組や活動成果の状況が非常に優れているという判断のときには特筆すべき高い質というふうに,その学部がそういう評価をいただけることになります。その次の段階として,優れているという状況と相応だという段階があります。
 質の向上が求められる,つまり状況が不十分というのがあるわけですけども,これは基本的記載事項のところに,問題があるという場合にそういう評価になってしまうので,そうならないように頑張りました。
 13枚目が判定結果です。教育活動と教育成果,右左に分かれておりますけども,865の学部・研究科等がどうなったのかといいますと,教育活動については相応の質のところが一番多かったです。特筆すべき高い質や,高い質にあるところも7%ぐらい選ばれました。質の向上が求められているところも確かに若干ながらあったというのが少し悲しいところですが,そんな状況です。
 教育成果に関しても大体のところが相応の質に収まっています。
 14ページですが,収集したデータ項目です。評価委員の先生方は記述を読んで,根拠資料を読んで,さらにこのデータ分析も見て,大学の目的とか特徴を読みながら,4段階で学部ごとに成果と活動を評価いただいたという感じでございます。
 15ページが法人評価のアンケート結果ですが,実感としてもそうなのですけど,結構大変でした。ですので,作業負担を小さくしてほしい。もっと必要かつ十分なところでボリュームサイズをダウンしてほしいというような要望がかなりありました。ですので,今回今進めている4期に関しましては,ポイントを押さえつつ、ボリュームをかなり減らしております。
 記述も特記事項中心で,質の部分をしっかり見ていくというような評価になっておりまして,現在準備を進めているところでございます。
 説明以上でございます。
 
【森主査】 
 嶌田委員ありがとうございました。
 では,先ほどお話しいたしましたように,次は事務局からの説明に移ります。現在の評価基準の項目についておまとめいただきましたので,これについて御報告いただきます。
 
【鈴木大学設置・評価室長】 
 資料3-2を御覧いただければと思います。先ほど嶌田先生から現況分析において,どういう観点で調査をしているかというところをお話しいただきましたので,前回機関別認証評価機関に御説明をいただきましたが,改めてどういう評価基準,項目で評価しているかについて事務局で,5機関の機関別認証評価機関の御協力いただきながらまとめさせていただきましたので,御説明させていただきます。
 まず,2ページ目です。各認証評価機関がつくっている大学評価基準でございますけども,そもそも立てつけとして,各認証評価機関は,いわゆる細目省令と言われる省令に規定されていることに基づいて,大学評価基準を独自につくっております。
 いわゆる細目省令でどういうことが規定されているかといいますと,今回機関別認証評価の説明でございますので,一番左を御覧いただければと思いますけども,次の事項について認証評価を行うものと定められていることということで,①から⑨までございます。これらに基づいて各認証評価機関において大学評価基準をつくっているということでございます。
 3ページでございますが,基準数,基準の構成につきましては,それぞれの認証評価機関の独自性を持ってつくられているところでございますが,当然いわゆる細目省令で規定されていることに基づいて作ってございますので,基準の中身につきまして記載されるということはかなりオーバーラップしているのかなと思います。
 具体的に大学評価基準を説明させていただきたいと思います。まず4ページでございますが,各理念・目的を評価するところでございます。基本的に,上の行はいわゆる評価項目で,下の行が,それを評価するに当たって根拠にしている資料をまとめさせていただきました。
 この理念・目的に関する評価の項目としては,理念・目的を適正に設定しているのか,公表しているのか,あとは,一番右の大学教育質保証・評価センターは,目的そのものは評価基準にはなっていないが,各基準項目において大学の目的と関連性を評価しています。
 根拠資料につきましても,それぞれ各認証評価機関の中で必要なものを根拠資料として取り扱っているものでございます。
 次のページでございますけども,教育研究上の基本組織でございます。これにつきましては,評価の項目として,学部・研究科,附置研究センターその他の組織の設置状況は適切であるかとか,その適切性を定期的に評価しているかとか,改善・向上に取り組んでいるかという視点を評価していたり,あとは,物的資源という形で,例えば大学・短期大学基準協会は,校地とか,そういうところの資源がきちんと整備活用されているかというものを評価している団体もございます。根拠資料につきましては,それぞれ評価の基準に基づいて必要な書類を取り扱っているところでございます。
 6ページは,教育研究実施組織でございます。ここは教育研究上の目的とか,教育課程に即した教員の採用,昇任,教員の確保,配置,教員や職員の研修,職能開発が行われているかどうかというところを評価基準として設定しているところでございます。
 続きまして,7ページ,8ページで一つのまとまりでございまして,これは教育課程,学習成果をどのように評価して,その根拠資料は何を見ているかというところでございます。ここにつきましては,基本的には学位授与方針が具体的かつ明確であるかとか,教育課程方針が学位授与方針と整合性が取れているか,教育課程の編成,授業科目の内容が学位授与方針,教育課程方針に即して体系的にふさわしいものになっているのかどうか,あとは学習成果の把握,評価のところを評価している団体もございました。
 続いて,9ページは,学生の受入れでございます。これは学生の受入れが明確に定められていることであったりとか,入学者選抜が公正妥当な方法によって,適切な体制を整えて実施しているかであったりとか,入学選抜に関する情報が適切に提供されているかどうかというところを評価の基準として定めているところでございます。
 次の10ページは,学生支援です。学生支援につきましては,5機関ほぼ同様でございまして,学生支援に関する大学としての方針,あとは,キャリア支援とか,そういうことに対するサービスの提供であったりとか,その状況は学習支援に係る状況が定期点検して評価して改善に取り組んでいるかとか,そういうところを評価項目として取り上げているところでございます。
 続きまして,11ページは,教育研究,環境,施設設備の項目でございます。これも各評価機関それぞれ評価項目を定めておりますが,教育研究の設備に関する方針に基づいて,学生や教員の研究活動に必要な環境が適切に整備されているかどうかであったりとか,施設整備がきちんと整っているかとか,あとは研究活動に対する資源がきちんと配分されているかどうかとか,そういうところを評価項目として取り上げております。
 12ページは情報公表です。ここにつきましては,基本的には積極的に大学の情報を公表して,説明責任を果たしているかどうかというところを評価項目として見ているところでございます。
 13ページは,内部質保証についてです。内部質保証のための方針を適切に設定しているかであったりとか,教育の充実等,学習成果の向上を図るために,内部質保証システムを整備して適切に機能させているかであったりとか,その体制が明確に規定しているかとか,手順が明確に規定しているかとか,そういういわゆる手続の整備のところを見ているところもございます。
 併せて,学生の意見とか学外関係者からの意見とかいうものについても,そういうものを活用しているかどうかというものを評価の基準の対象としている機関もございました。
 14ページは財務です。ここは財務運営が確立されているか,適切に行われているかということで,根拠資料も財務諸表とか決算報告書ということで,基本的には同じような観点で御覧になっているのかなというふうに思います。
 15ページは,その他の項目で共通するものとして,社会貢献を記載しています。この項目はあったり,なかったりというところもございますけども,独自基準を設けて,国際協力だったり研究活動とか,そういうところを見ていたりとか,あとは地域社会に貢献しているかというものを評価基準として設けて,評価しているところもございました。
 16ページは大学運営です。ここはいわゆるガバナンスのところでございまして,理事会の機能がきちんと体制が整備されているかどうか,そういうところを確認しているものでございます。
 細目省令のそれぞれの定められている項目に基づいて,各認証評価機関がそれぞれの独自性,その目的を持って,このように,それぞれ若干差異がありますけども,大学評価基準を設けているという状況でございます。そういうことで,この点を改めて整理させて,御説明させていただきました。
 このまま資料4を御説明させていただきます。
 資料4でございますけども,この後,意見交換の時間があると思いますので,併せてこちらも参考にしていただきたいということで,先に御説明させていただければと思います。
 資料4はこれまでの出された主な意見ということで,おそらくこの後,嶌田先生の御説明に関する質疑応答と,新たな評価の行い方について意見があるのかなと思いますので,その点を中心に,これまで御紹介してこなかった意見を中心に御説明させていただければと思います。
 一番初めの現状認識,目指すべき第三者評価のところでございますけども,おめくりいただいて2ページをご覧ください,認証評価制度を通じて,高等教育機関として最低限の質を保証するためにとどまらず,高等教育の質,教育の向上をエンカレッジした未来社会を担う人材を育成する大学を高く評価する仕組みにしていくべきではないかという意見,次に上から4番目でございますけども,新しい制度は必ずしも規模の適正化と連動させるものでない一方で,少子化が進行する中で,今後市場原理に任せるだけであれば,大規模大学や学費の安い国公立大学に集中してしまうという懸念もあるので,地方で規模が小さくても頑張っている大学がたくさんある中で,そのような高等教育機関が不利益を被らない,教育の質を高めて頑張っている機関をしっかり評価支援していく仕組みにしていくべきではないかという御意見をいただいております。
 その下でございますけども,新しい評価制度においてはだ高等教育機関の内部質保証を充実させるために認証評価機関における支援や評価においては卒業生の実績を蓄積するような仕組みにしてはどうかという御意見もありました。
 もう一つ下でございますけども,認証評価の本来の趣旨・目的は,受審校の改革・改善のための支援であって,単に標語をつけて振り分けるような仕組みならないように注意すべきではないかという御意見もいただいています。
 続きまして,2ポツでございますけども,2ポツの①のどのように評価を行っていくべきかというところの意見でございます。評価者について,3ページの一番上の丸になりますけども,先ほども森先生のほうから評価の専門性というところがございましたけども,法科大学院などの専門性を有する分野については,引き続き各分野の専門家や利用者の観点を有する者を評価者として起用する必要があるのではないかという御意見です。
 その2つ下の評価の手法について,2つ目の丸でございますけども,評価の方法につきましては,現状の認証評価機関も一部行っているように,学生などのステークホルダーの意見も活用しながら進める必要があるのではないかといった御意見がありました。
 その下の項目の段階別評価については,評価結果の社会への訴求や,大学が評価を受ける費用対効果を踏まえると,学部・研究科等において教育の質を段階別に評価することは一つの選択肢としてあり得るのではないかという御意見をいただきました。
 併せて,段階別評価については,幾つかの評価機関では既に取り入れるところもあるが,学問分野によってはどれだけ伸びたかを数値化することは難しい,学問分野によって不公平が生じることがないよう配慮すべきではないかということと,これまでの中教審の議論を踏まえれば,数段階の評価を示すなど工夫は,一律に制度整備をするのではなくて,いわゆる各評価機関の判断に委ねるべきなのではないかという御意見もございました。
 次は4ページの②でございます。どのような評価基準・項目で評価を行っていくべきかという項目の中の2つ目の項目,評価の基準・項目というところでございますけども,2つ目の丸でございますが,第三者が評価するに当たっては,各高等教育機関が未来社会を見据えて育成するべき人材像を認識設定しているか,そのためにどのようなカリキュラムを組んで,どのようにその実績を把握しているか,これらをトータルで評価して,必要に応じて評価結果を段階評価するのが妥当ではないかという御意見がありました。
 次の5ページ目,上から4つ目の丸ですけども,大学はそれぞれ個性や特色のある教育を行っているので,その多様性や特色をどのように評価するかも検討すべきではないかという御意見です。
 さらにその4つ下の丸ですけども,いわゆる分野別評価については,機関別認証評価基準といかに調和していくかが重要であるので,分野別認証評価のこれまでの経験や実現を生かした制度を検討したらどうかという御意見をいただいております。
 さらにその下の丸は,評価基準の継続的な見直しについては,JACMEのように,基準のように定期的見直しを規定することも考えられるのではないかという御意見です。
 6ページに移りまして,④は評価を行っていくに当たって,効果的,効率的な評価を行っていくためにはどうすべきなのかというところでございますけども,7ページの上から3つ目でございますけれども,実地調査については,コロナ禍でのオンラインの経験を生かして,オンラインを活用することで負担軽減を図られるのではないかという御意見をいただきました。
 さらにその下でございますけれども,法令適合性の判断や定量的な評価指標の判断などは文科省において行うなど,文科省と認証評価機関との役割分担の在り方を検討すべきではないかという御意見もいただいております。
 その下の評価のサイクルの設定でございますけども,機関別認証評価,分野別認証評価,今日御紹介いただきました国立大学法人評価,公立大学法人評価のサイクルの違いによる負担については,サイクルをそろえることがいいのか,標準化することがいいのかは一長一短があるので,各高等教育機関レベルで定常業務としてしっかりと自己点検・改善が位置づけられることが重要でないかという御意見です。
 また,仮に今後医歯薬学部の6年制の教育についても他の分野別評価と同様に5年周期で行う場合,その妥当性も検証すべきではないかという御意見がございます。
 ということで,今ご説明した資料4のそれぞれの項目についても,この後,もしよろしければ御意見いただければ幸いでございます。以上でございます。
 
【森主査】 
 ありがとうございました。
 今日も情報量満載でございますけれども,ここから20分程度,自由に意見交換をさせていただきたいと思っております。御発言ございます場合には挙手ボタン等でお知らせいただければと思います。
 中村先生,林先生,松浦先生の後オンラインの委員に移りたいと思います。
 では,中村先生,お願いいたします。
 
【中村委員】 
 ありがとうございます。まず初めに,今の資料4の評価サイクルのところで,医歯薬系の分野別認証評価は7年サイクルでやっておりますので,5年で行っていると誤解される文章は,恐縮ですが,訂正をお願いしたいと思います。
 次に,嶌田委員にお伺いしたいのですけれども,先ほどの御説明で,分析項目に対して段階判定をされていて,これは単純にただ基準があって,それに対してというよりは,各大学各学部・研究科がその目的に照らして,非常に優れている場合は特筆すべき高い質であるというふうに段階評価をしているという御説明だったのですが,これは絶対評価ですか,相対評価ですか。
 例えばですけれども,最初の頃は全国の中でもすごく取組が優れている場合でも,それが三,四年たつと,多くの大学がグッドプラクティスを共有することによってできるようになっているような場合,それは褒めてさしあげたいと思うのですが,その辺の工夫といいますか,良い点を評価できるような仕組みがありましたら,お教えいただけますでしょうか。
 
【嶌田委員】 
 国立大学法人評価の場合は同じ時期に同じ評価機関で,しかも分野を分けて,まず横並びで一斉に見ながら,かつ,いろんな大学側の学部長経験者とか学部長クラスの方が委員には多かったと聞いておりますので,相場感が分かる先生方が大学の状況,目的,目標を見ながら調整していったというふうに聞いておりますので,一気にやったからこそできたというところがあるのかなと思います。
 
【中村委員】 
 ありがとうございます。承知いたしました。
 
【森主査】 
 ということは,絶対評価か,相対的評価かといったら,相対的評価ですか。
【嶌田委員】 
 各大学の学部・研究科等ごとに異なる教育目的や特徴に対して、「取組活動成果の状況が非常に優れていると判断できる場合」という基準を適用するので相対的に上を何%にしようという評価はしていないです。
 
【森主査】 
 ありがとうございます。中村委員よろしいでしょうか。
 続いて,林委員,お願いいたします。
 
【林委員】 
 コメントと,あと嶌田先生に質問です。まずコメントですが,先ほど評価基準の比較もしていただいて,あるいはこれまでの委員会聞いていても,日本の仕組みって非常に複雑で,複雑だからこそ学生・高校生も使わない。これは1回考え直したほうがいいなと思っています。評価機関が5つ本当に必要なのか。そして,細目省令があって,共通なところはありながらも,実際は評価基準がばらばらで,出てくるものはそうすると比較ができないものになっているので,本当にこれがいいのか疑問です。
 経緯としては,歴史的に古くから存在する評価機関があったり,あるいは私立大学に対して国の機関が評価をするのかという話だったり,あるいは短大は自分たちのことを分かってくれる評価者がいるのかとか,様々なステークホルダーの思いがあって,こういう状態になったのは分かるのですけども,何年もやってきて,もう少し標準化して,特に負担が大きいというのが分かっているので,できるだけ効率化するというのは必要だと思います。例えばイギリスのNSSみたいに全国学生調査というナショナルで1個のものを使う。日本は今もですけれども,大学にそれぞれ学生調査をしろ,それぞれ工夫してやれと言っているのですけど,本当にそれが正しいのか,もう1回考え直したほうがいいなというのが1個目のコメントです。
 ただ,その上で,私何度も申し上げているところなのですけども,効率化を誤解してはいけなくて,今まで失敗してきたと思っているのが,法人評価と認証評価を統合することで効率化しようとしたのは間違っていたと私は思っています。例えば,我々が分野別の評価に関して議論しようとしているときに,分野別の質保証をしようとしているのか,それともTEFみたいにパフォーマンスの評価をしようとしているのかは,きちんと意識したほうがいいと思っています。
 法人評価で現況と認証評価を合わせることで,あたかも法人評価が質の保証をしているかのような基準になっているのですけれども,短期間で少人数の評価者がカリキュラムがちゃんと分野の学位に即したものになっているかという,質の保証はできにくい。しかしあたかも十分に室保証をしているかのような誤解を与えるような仕組みに今なってしまっている。もう少し,法人評価は一体何をして,我々は今,分野別という論点が上がってきたときに,質の保証をするのか,パフォーマンスを見るのか,そこはしっかりと分けて考えたほうがいいと思っています。
 それから,あと,これは嶌田先生にも質問なのんですけども,その中で,これも効率化というがゆえに,かなり法人評価は指標を重視した形になっているように見えます。て,私も離れてしまってあまり最近の状況分からないですけども,先ほどのイギリスのエデュケーショナルゲインズとかでは,それぞれの大学で目指すべきコンピテンシーとか違うので,そこはそれぞれきちんとちゃんと独自の取組があって,でも,NSSナショナルスチューデントサーベイみたいな共通的なプラットフォームを参照しながら,それで自分たちのことを自己分析するみたいな,それがイギリスのやり方だと思っているんですけども,日本の場合はかなり指標重視に見える。だけれども,質的な学習成果の設定,把握,分析,それは今,法人評価でどのくらい重視されてやっているのかどうかというのをぜひ教えていただければと思います。
 
【嶌田委員】 
 なかなか難しい質問をいただきましたが,基本的に,4巡目というか,4期の評価の議論については途中から参加したのですが,内部質保証体制が各国立大学で整備されてきたところが一つ大きいのかなと思っています。さきほどのリスクベースアプローチの考え方じゃないのですけども,曲がりなりにも内部質保証の点検体制というのができて,一応それを認証評価の枠組みでは確認できている。
 だから,指標でプロセスを追うこと,プロセスは基本的に大学のほうで確認しているから,評価機関としては指標でアウトプット・アウトカムみたいなところだけを確認することによって,ある程度プロセスについてはできているでしょうということを推定するというやり方をしながら,やっているのかなというふうに思っているという形です。
 ポイントのところは何だったかもう一度お願いできますか。
 
【林委員】 
 端的に言えば,学習成果の質的な評価をしているのかということです。
 
【嶌田委員】 
 そこのところは,実際現場でやったときに,学習成果を自分たちで何かある程度議論するために,いろんな学生さんに聞いたよ,卒業した方に聞いたよ,就職先に聞いたよ,いろんなデータを取りまとめて学部の先生方見てもらって,議論してもらってというところで,把握というのまではできていますが、引き続き、改善を行っていく必要はあると思います。
 
【林委員】 
 そうだとしたときに,今やっている,あるいは次に考えるのは,そういうナラティブなものは求めて,それでそれをきちんと評価できるように努力していこうという方向なのか,それとも,ナラティブは評価できないから指標しか求めないという,そういうスタンスを取っていらっしゃるのかがよく分からなかったのでお伺いしたいです。
 
【森主査】 
 ありがとうございます。それ私のほうで引き取らせていただいて。多分,嶌田先生個人で御発言することは難しいと思いますので,宿題にさせていただいくということでよろしくお願いいたします。
 では,松浦委員,お願いいたします。
 
【松浦委員】 
 時間も気になりますので,一つだけコメント的なのですが,考えなくてはいけないポイントとしてあるなと思うのが,この「研究教育」という言葉というか概念です。これ省令の細目にも特色ある教育研究の進展云々とかありますし,評価項目でも教育研究組織あるいは環境という言葉,項目が立てられているのですが,実際,認証評価でやっているのはほぼ教育評価だけで,教育と研究の関係すらも問われにくいような状況があって,嶌田委員の資料の5ページ目の国立大学の教育研究の質の向上に関する事項というのも,教育の状況,研究の状況で,それぞれ分析単位も違っています。これは連動していないのでしょうか。
 
【嶌田委員】 
 ある程度独立しています。どうしても教教分離が進んで,かつ,学部・研究科があっても,例えば学部・研究科で理工学研究科みたいなことがあったら,理学部,工学部,理工学研究科をセットにして,そこの先生で見ているって感じになってしまうので,どうしてもやっぱりずれが生じていると思います。
 
【松浦委員】 
 教育と研究の関係が問われていないというか,多分,TEFとREFも全く別建てで進んでいるのだと思いますし,そのあたり,大学の評価というときに,どう考えていくのかということが問題かなというふうに伺って思っていました。以上です。
 
【森主査】 
 ありがとうございます。
 では,残り5分切りますので,葛城委員,溝口委員,斎藤委員,1分半でお願いいたします。
 
【葛城委員】 
 葛城です。嶌田先生,よろしくお願いします。
 先ほどの話の中で,現況分析部会については,総合文系,総合理系,総合融合等あるということだったのですが,ここはうまく回っているのでしょうか。
【嶌田委員】 
 部会長の先生がいろいろかなり御苦労されたという話は若干聞いておりますが,皆さんでかなり何回も議論してやったということを聞いています。実際データを見ると,そこが何かおかしな評価になっているかというと,そうではないなというような状況ですので,何とかなったかなと思っています。
 
【葛城委員】 
 ありがとうございました。
 
【森主査】 
 では,溝口委員,お願いいたします。
 
【溝口委員】 
 ありがとうございます。現況分析のところで少しお伺いしたいと思います。私がもしかしたら聞き逃してしまったのかもしれないのですけども,指標として基本的な部分,基本的な記載事項として出さなくてはいけない部分と,あと,中期目標に係る特記事項ということで両方出していくと思うんですけども,それぞれを見る割合というか,どちらかを重視するみたい比重について,全体としての方針というのは決まっているものなのでしょうか。それとも,そこら辺も含めて,各委員会のところで検討できるものなのでしょうか。そのあたりというのはどのようになっているのでしょうか。
 
【嶌田委員】 
 例えば,7ページ目の必須的な記載事項の8つに対して軽重がついているかということですか。
 
【溝口委員】 
 必須記載事項の中の軽重というよりは,必須記載事項と選択記載事項の軽重といいますか,そのあたりどうなっているのかなというところです。
 
【嶌田委員】 
 選択のほうは結局大学のほうで書くか書かないかって選択肢があるので,例えば,より強みが見せられるなと思ったら大学も書くし,特にここ書いてもあまり特に出して書くだけだなと思ったら選ばないという感じです。
 いろいろ聞きましたら,どっかに特化してというよりは,全体並べて見比べて,要するにいいものを抽出していったというふうに聞いておりますので,中のプロセスを細かく決めてというよりは,もうちょっと全体的にがばっと見てやっているような雰囲気があります。
 
【溝口委員】 
 ありがとうございます。つまり,別に選択のところにないからといって,そこが低くなってくるとかということではなく,そもそも必須も選択も含めた総合的に見てということですね。
 
【嶌田委員】 
 はい。だから,基本的記載事項に関しては下げるようになりますけれども,要するに特記的に書いてあるものは上げる要因にしかならないというか,それが普通のものだったら上がらないというだけで,多分下から2番目の評価になってくるような感じのイメージでした。
 
【溝口委員】 
 ありがとうございます。
 
【森主査】 
 では,斎藤委員,お願いいたします。
 
【斎藤委員】 
 ありがとうございます。ディスカッションする時間ないと思いますので,コメントだけ残させていただければと思うのですけど,先ほど林委員からもありましたように,共通指標を使っていくというのと,各大学独自でやっていくというところに関してなんですが,学習成果の評価のところを考えていくと,その大学が入学時からどのくらい学生を伸ばしているかどうかというのは,共通指標がある程度ないと,そういった分析なかなか難しいのだろうなというふうに思って聞いておりました。
 学内の中でそれを集めたとしても,それは学内の中で当該学生が頑張ったか,頑張っていないかみたいなところを可視化するだけで,大学あるいは学位プログラムとしての教育力みたいなことを示すのは,若干相対的にはなると思うのですけれども,いろんなところの指標がないと難しいだろうなと思って聞いておりました。
 そうしますと,専門分野別にやっていくとなってくると,専門分野のそういった能力を評価するような共通指標みたいなものがないと,このあたりって議論が難しいだろうなと思っていたのですが,例えば,国立教育政策研究所がやっております機械工学分野のテスト問題バンクの取組でしたら,機械工学という分野に関しては共通的なテストとかを作成して,その能力を評価するような手法がありますので,そういった意味では伸びみたいなものというのは分析しやすいと思うんですけど,それが全ての分野で作られているかといったら,そうではないので,そういった取組とかも参考にしながら,学習の伸びというところを見ていく必要があるだろうなと思って聞いておりました。以上です。
 
【森主査】 
 ありがとうございました。まだまだ御意見があると思いますけれども,時間になりましたので,ここで切らしていただきます。
 では,最後に,次回以降のスケジュールについて,事務局から御説明をお願いいたします。
 
【鈴木大学設置・評価室長】 
 先生方,長時間の御審議ありがとうございました。
 今後のスケジュールにつきまして,資料5に記載のとおり,第5回は7月28日に経済団体からのヒアリング,本日はステークホルダーとして高校の関係者からヒアリングしましたけども,次回は経済団体から見た認証評価についてヒアリングをしたいと思います。
 また,これまでヒアリングをしておりましたけども,大体ヒアリングはここで一段落させていただきまして,これまでの議論を整理して,一つずつの課題について御議論させていただければというふうに思っております。
 以上でございます。
 
【森主査】 
 ありがとうございます。これで本日の議題は以上になります。
 今,事務局から御説明ありましたように,次回は7月28日ということで,最後のヒアリングになります。今度は出口のほうということで,経済団体をお招きしてお話を聞きたいというふうに思います。
 そして,皆様におかれましては,これまでのヒアリングと,また情報提供いただいた内容について,新たな評価に向けた方向性について,いろいろとお考えのことあると思います。そのようなお考え等について,事務局までメール等,御意見の提出をお願いしたいというふうに思っております。本来でしたら議論したいところですけど,時間の都合がございますので,ぜひメール等で御意見をいただけたらというふうに思っております。
 いただいた御意見を基に,事務局にてこれまでもずっと整理してこられておりますけれども,また,それらをまとめて,次回の議論のたたき台にしたいということでございますが,室長,それでよろしいでしょうか。
 
【鈴木大学設置・評価室長】 
 ありがとうございます。そのようにしていただければ大変助かります。御意見につきましては,ある程度期限というものを設定させていただければと思いまして,7月10日を1つ目安にしまして,事務局にお寄せいただければ幸いでございます。
 
【森主査】 
 ありがとうございます。そうしましたら,経済団体からのヒアリングは受けていない段階でのお考えということですね。
 
【鈴木大学設置・評価室長】  はい。
 
【森主査】 
 ぜひ御意見等事務局までお寄せいただければというふうに思います。
 ありがとうございます。それでは,本日はこれにて閉会とさせていただきます。皆様,ありがとうございました。
 
―― 了 ――

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