令和7年4月24日(木曜日)10時00分~12時00分
WEB会議
(部会長)伊藤公平部会長
(副部会長)森朋子副部会長
(臨時委員)浅田 尚紀、太田 寛行、大野 博之、小林 浩、田中 正弘、林 隆之、日吉 亨、平子 裕志、松居 辰則、松浦 良充、松尾 太加志、松下 佳代の各委員
(事務局)伊藤高等教育局長、浅野私学部長、奥野大臣官房審議官、森友大臣官房審議官、吉田高等教育企画課長、石橋大学振興課長、佐藤参事官、鈴木高等教育企画課設置・評価室長、髙見高等教育企画課高等教育政策室長、花田高等教育企画課課長補佐、太田高等教育企画課高等教育政策室室長補佐、松井大学振興課長補佐、永見大学振興課大学院振興専門官ほか
部会長の選任等について
中央教育審議会令に基づき、委員の互選により伊藤委員が部会長に選任された。
副部会長については、伊藤部会長から森委員が指名された。
質向上・質保証システム部会の運営について
伊藤部会長から、質向上・質保証システム部会の会議及び会議資料の公開並びに審議参加の制限等について説明があり、資料2の原案のとおり決定された。
また、中央教育審議会大学分科会質向上・質保証システム部会運営規則に基づき、この時点から会議が公開された。
【伊藤部会長】 改めまして、今回の質向上・質保証システム部会の開催に当たり、部会長に選任いただきました私、伊藤公平より一言御挨拶させていただきます。
この質向上・質保証システム部会というものは、この後、御紹介がありますけれども、「知の総和」答申に基づき、急激に人口が減っていく日本において、「知の総和」、合計を保つ、または発展させるためには、一人一人の能力、志を上げていかなければいけないということで、そういうことで教育の質、または学びの環境の質を向上させようということを提案したことを受け、設置されたものでございます。
当初、私が伺ったとき、質向上という言葉がなく、質保証が強調されていたのですが、これは話が違うのではないかという苦言を申し上げました。もともと質向上があって、それについて、最低限の質保証がどうやって保たれるかを考えるべきであろうということで、とにかく保証することが目的ではなく、向上することが目的というのが私の願いでございますので、これから皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
では、続きまして、文部科学省を代表して、伊藤高等教育局長から御挨拶いただきます。
【伊藤高等教育局長】 文部科学省高等教育局長の伊藤でございます。先生方には、大変お忙しい中、この質向上・質保証システム部会の委員を御就任、お引受けをいただきましたこと、また、本日も大変御多忙の中、御参加をいただきましたことを、まずもって感謝、御礼申し上げます。
昨日、大学分科会の第13期、検討開始をいただきました。そこで、昨日の会議でこの部会の設置のほうも決定をしたところでございます。部会のほうにも御参加をいただきました伊藤部会長はじめ、委員の皆様には、連日の会議になり大変恐縮でございますが、それだけ大きく高等教育が動き出しているということ、待ったなしで動いているというようなことの左証であるというふうに思ってございますので、何とぞよろしくお願いいたします。
1つは、少子化というものも当然あるわけでございますが、もう一方では、大学教育の質に関しては、AIの進展等、昨日の分科会のほうでもたくさん意見を頂戴いたしましたけれども、大きく教育の中身自身も変わってくる。その中でいかに質を向上し、それを保証していくかというようなことは、今までの延長線では解決できない、大変難しい局面を迎えるのではないかというふうに思ってございます。
一人一人の学生が本当にこの変化する社会の中で、必要な力、能力というものを身につけ、そして社会を発展させていく、こういうためには、大学に期待されるものというのは大変高まってございますし、それだけ大学側の責務も多くなってきているというふうに思ってございます。
部会長のほうからも御紹介いただきましたけれども、今年の2月に中教審で求められました「知の総和」向上答申では、高等教育の質の向上、規模の適正化、アクセス確保という3つの高等教育の目的が規定をされたところでございますが、この3つの中でもトップに来ているものが質でございます。この質というものについて、この部会はまさに設置基準や設置認可審査の在り方、教学マネジメント、認証評価制度、また情報公表の在り方等を一体として御議論をいただきながら、より具体的な政策というものに結びつけるための御示唆をいただきたいというふうに思ってございます。
以前、これまでのこの部会のほうでも、学習者本位の教育というのを強く打ち出していただいたわけでございますけれども、この教育というものをさらに発展させながら、我が国の「知の総和」を向上させるため、皆様方の知見を踏まえ、ぜひとも活発な御審議をお願いしたいというふうに思ってございます。
本日は何とぞよろしくお願いいたします。
【伊藤部会長】 ありがとうございました。それでは、議事に進めたいと思います。
第3、今後本部会で検討する主な論点について、事務局から資料の説明をよろしくお願いします。
【石橋大学振興課長】 大学振興課の石橋でございます。どうぞよろしくお願いいたします。資料の3と4-1、4-2、それから参考資料の1を用いて御説明をさせていただきたいと思います。
まず、資料3のところで、ワーキンググループの設置について御審議いただければというふうに思っております。資料3を御覧いただければと思います。教育・学習の質向上に向けた新たな評価の在り方ワーキンググループについて(案)ということでございまして、この部会の下に、このようなワーキンググループを設置してはどうかという御提案になります。
設置の目的といたしましては、この後、御説明いたします「知の総和」答申を踏まえまして、その中で設置基準や設置認可審査、教学マネジメント、認証評価制度及び情報公表の在り方等を一体とした質向上・質保証システムについて、検討することとされております。特に、高等教育機関の評価の在り方については、平成16年から、学校教育法に基づいて、国公私全ての大学、短期大学、高等専門学校に対して、定期的に文部科学大臣の認証を受けた認証評価機関が第三者評価を行う認証評価制度が設けられているとともに、大学の教育情報の活用・公表のために、平成27年から「大学ポートレート」が開始されているなど、これまで教育研究を社会が評価できるように様々な取組が進められてきているところではございますけれども、改めて現在の制度の趣旨・現状を分析するとともに、課題を整理した上で、今後の在り方を検討することが必要となると考えております。
そのために、この部会の下にこのワーキンググループを設置するということです。具体的な主な検討事項は、(1)から(4)でございます。(1)第三者評価である認証評価制度の在り方について、(2)認証評価制度の在り方を踏まえた内部質保証の在り方について、(3)高等教育機関の教育情報の取扱いについて、(4)その他ということを御議論いただくワーキンググループとしたいというふうに考えております。また後ほど御審議いただければと思います。
それでは、続きまして、この部会で御議論いただきたい論点について、御説明をさせていただきます。
まず、参考資料の1を御覧いただきますと、先ほど部会長からも御紹介がありました、「知の総和」向上の未来像の答申の要旨ということで御準備させていただいております。この答申については、御案内の先生方も多いかと思いますので、簡単に触れさせていただきます。今後の高等教育の目指すべき姿のところで、今回、大きなデータの変化として、大学進学者数の推計が、2021年は62.7万人だったものが、2040年、46.0万人ということで、約27%減少するという、この状況の環境の中で何をしていくかということを御議論いただいたというふうに考えております。
その中で、ポイントはこの「知の総和」の向上ということで、質、規模、アクセスという観点から御議論をまとめていただいたものとなっております。
それを具体的に抜粋したものが、この資料の4-1になっております。御覧いただきますと、実際20ページにも及ぶ部分が本部会で御議論いただくものというふうになっておりますので、相当の分量のことが、この部会で扱われるとお考えいただければと思います。
それを、じゃあ、具体的にどういう論点かというのを、資料4-2で整理させていただいておりますので、資料4-2を御説明させていただきたいと思います。資料4-2、主な論点でございます。論点としては、全体で5つございます。
まず、1つ目が、認証評価制度の見直し及びそれに伴う情報公表の内容・方法の改善ということになります。1つ目のところですが、まず、各高等教育機関が今感じている評価に関する負担軽減ということは重要というふうに考えておりますけれども、教育、学習や研究の質を一層高めるため、例えば学部・研究科等に応じた定性的評価を導入するとともに、教育研究情報に基づく定量的評価を行い、これらに基づき在学中にどれくらい力を伸ばすことができたのかといった大学等の教育の質を数段階で示した上で公表するなど、新たな評価制度へ移行するための制度改善を行うと言うことが、大きく提言されているところでございます。
これに関しての結果公表については、国民に分かりやすい仕組みを構築すること、また、評価におけるデータ活用のためのデータベースの整備、このようなこと、それから、国において各大学の魅力を視覚化するための新たな指標を作成する。
また、教育情報の公表に関しては、入学者選抜の情報や、学習成果、教育効果に関する情報についての公表、このようなことが提言されているところでございます。
2が、学士・修士5年一貫教育制度の在り方ということで、優秀な学生が学士・修士課程を5年間で履修するような仕組みを考えてはどうかという御提案でございます。
3が、通信教育設置基準等の見直しでございます。昨今の状況、先生方も御覧になっていただいて、お感じになっているかと思いますが、これまで通信教育課程は、どちらかというと社会人の方々が学ぶ場合が多く想定されておりましたけれども、今後は通信制高校から直接進学してくる学生を対象とした大学通信教育というようなことも前提になってくると考えておりますので、大学通信教育に関する実態調査を踏まえて、どのような基準がよいのかということの見直しが必要というところでございます。
それから、裏面に行っていただきまして、特に通信教育課程に関しては、基幹教員の配置や、指導補助者の基準等について制度改善が必要ではないかという御提案でございます。
4でございますけれども、学生が主体的・自律的に学修するための環境構築の促進ということで、アカデミック・アドバイジング等の学修支援体制の整備や、教学マネジメント指針の見直し、それから、レイトスペシャライゼーション等の柔軟な教育課程編成により、入学後に学修するシステムの構築と、それを可能にするための定員管理制度の弾力化が提言されているところでございます。
また、5でございますけれども、「出口における質保証」ということで、厳格な成績評価(GPAの見直し等)や卒業認定の実施、また、成績優秀者への称号授与を含む教学マネジメント指針の見直し等を行ってはどうかという御提案でございます。
これらが答申の中で触れられている論点になりますけれども、6、その他ということで、部会の先生方、お気づきの点がございましたら、さらに論点を追加して議論する必要もあると考えておりますので、6、その他という欄も設けさせていただいております。
説明は以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【伊藤部会長】 ありがとうございました。第12期中央教育審議会、「知の総和」答申、今後、本部会で検討する主な論点などについて説明をいただきました。
まず、ワーキンググループの設置についてお諮りしたいと思います。本部会の下に、資料3のとおりワーキンググループを設置したいということでございますけれども、よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【伊藤部会長】 では、異議なしということでございましたので、このワーキンググループの設置を行い、認証評価制度の在り方等について、具体的な議論を進めていただくことにします。
なお、ワーキンググループの具体的な構成員は御一任いただければと思いますけれども、よろしいでしょうか。
ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明も踏まえ、大学教育の質向上に向けたお考えにつき、各委員から一言ずつ御意見を頂戴できればと思います。基本的には、名簿順に指名し、御発言していただければと思いますが、私と森さんは最後ということで、そうなりますと、浅田委員から、よろしくお願いいたします。
【浅田委員】 浅田と申します。私は、広島市立大学、兵庫県立大学、奈良県立大学と、3つの公立大学で学長、副学長を約20年間務め、大学運営に携わってきました。そこで、1つ痛感したことがあります。それは、世間では国公立大学という呼ばれ方をして、国立と公立はほとんど同じというふうに認識されているのですけれども、実は公立大学に作用する力学構造というのが、国立とは随分違っていて、質向上・質保証にも影響しているのではないかと感じております。
そのことが本部会できちんと議論されて、公立大学の質向上・質保証に資することになればと思っております。
以前の質保証システム部会にも参画させていただきまして、大学設置基準の改正などの成果があったのですけれども、システム全体の議論については不完全だったなという印象を持っています。今回は質向上がついて、グレードアップされていますので、ここで、設置認可から、認証評価、情報公表というシステム全体がきちんと設計されることを期待しています。
ただ、システムは、あくまで大学の周りにあるというか、大学を支えるものなので、その中心にある大学自身が意識改革と構造改革しないと、システムは機能しないと思っています。今回の「知の総和」答申を大学が危機感を持って共有して、質向上・質保証のシステムが機能するように積極的に参画できればいいと思っています。そういう意味でも、本会議での議論というのは非常に重要だと思っていますので、微力ですが貢献できたらと思っていますので、よろしくお願いいたします。
【伊藤部会長】 ありがとうございました。続きまして、太田委員、よろしくお願いいたします。
【太田委員】 太田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。前任理事、副学長で教育統括を担当していまして、約10年ぐらい前から力を入れていたことは、教育の質保証ということで、4階層の質保証システム、大学全体から個々の教員までの間のレベルの中で、どういうことを保証するような取組をしていくかということに努めてまいりました。
その中で、1つ、本学としては、ディプロマポリシーの要素、能力――本学では5つの要素、能力を掲げているのですけれども、それをちゃんとモニターしていくということ。それで、教職員側も、その要素、能力に対する学びのレベルが、どういうふうに学生が伸びているかどうか、学生側にアンケートをとりながら、そういうことを把握しながら、それを共有、還元していくという仕組みが何とか機能するようになってまいりました。
もう一つ、足りないのは、伊藤部会長がおっしゃるように、質の向上を目指すためには、さらにどういう取組をしたらいいのだということで、昨年からディプロマポリシーのルーブリックをつくりまして、それに対して、学生が今、自分がどのレベルにあるのか、さらに上に向かうには何をしたらいいかということが分かるような仕組みを、この4月からそれを全学展開するような方向で努めております。
この部会では、先生方の、我々の取組がどこまで有意義か分かりませんけれども、また意見を聞きながら進めていければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【伊藤部会長】 ありがとうございました。では、大野委員、お願いします。
【大野委員】 大野でございます。よろしくお願いいたします。私は、短期大学の立場ではございますけれども、これまで設置認可と、それから認証評価関係では、文部科学省の委託研究でアメリカのアクレディテーションの勉強もさせていただきました。そんなところで特に印象的だったのは、アメリカの全米高等教育評議会、いろんな認証評価が集まる会があるのですけれども、そこでヨーロッパの代表の方が、アメリカの認証評価は身内のお手盛りだというような厳しい追及をしたのです。
対して、アメリカの関係者は、ピアレビューでしないと、内容がよく分からない人が評価をすると、どこに行くか分からないということが、とても印象に残っております。かねがね評価というのは、これは学校の成績もそうですけれども、〇・×ではなくて、人や組織を伸ばすために、どう設計して、それを実際に運用していくかということが非常に大事だというふうに思っていますので、ぜひこの質向上・質保証のシステムの取りまとめが、我が国の高等教育の発展につながるように、微力ながら一生懸命頑張らせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【伊藤部会長】 ありがとうございました。では、小林委員、お願いします。
【小林委員】 小林でございます。よろしくお願いいたします。私は、大学の外の立場ということで、多くの大学に取材に伺ったりとか、訪問したりする中で、いろいろ気づくところがありますので、そういったお話をさせていただければというふうに思っております。
まず、これは答申をつくるときに私も参加させていただいたのですが、誰も経験したことのない少子化社会がやってくるということで、現在の延長線上ではなくて、よく非連続的なという言い方を私はしているのですけれども、従来の延長線上ではない非連続的な改革をしていくということが重要なのではないかと思います。
今回、ここに資料4-2でまとめていただいた主な論点というのをしたと思うのですが、もう一点、昨今、コロナが落ち着いて、留学生が大変増えてきています。これから、アジアも人口減少社会に入ってくる中で、国際的な留学生の獲得競争になってくることが想定されます。一方で、質はどうなんだみたいな声も、世間から上がってくるとい思います。
そうした中で、留学生についての将来的な日本ファンを増やすネットワークづくりなど、そういったものも含めて、質というものをどう考えていくのかというのも、論点に加えてもいいのかなと思いました。
もう一点、通信教育も、先ほどありましたけれども、私どもで調査すると、今高校生の10人に1人が通信制高校に通っているという状況です。もともと通信制は、戦後、社会人向けに出口の質保証という形で、ほぼ4年では卒業率が低いというものだったのですが、18歳の若年層が進学する中で、その質というものをどう見ていくのかというものも、非常に重要な課題なのではないかと考えております。
皆様と一緒に考えていければと思いますので、よろしくお願いいたします。
【伊藤部会長】 ありがとうございました。では、オンラインで田中委員、よろしくお願いいたします。
【田中委員】 筑波大学の田中正弘と申します。よろしくお願いいたします。私は、内部質保証への学生参画ということを研究テーマとしまして、ここ10年ほど調査等をしてまいりました。言い方を変えたら、学習者本位の質向上・質保証システムの在り方について研究してきたというふうにも言えるかもしれません。
中教審答申等におきましても、学生参画という言葉が散見されるようになってきました。世界的なトレンドでもありますので、我が国においても、ぜひ学生がいかに質向上・質保証システムに貢献できるかという点で、何らかの形で私もこの会議の中で貢献できればうれしいなというふうに思っております。ぜひともよろしくお願いいたします。
私からは以上です。
【伊藤部会長】 ありがとうございました。では、林委員、お願いいたします。
【林委員】 政策研究大学院大学の林と申します。私は、大学評価であるとか、あるいは科学技術政策の研究をしている者です。3点、申し上げたいと思っています。
まず、1点目ですが、こういう議論をするときに、私、いつも参照するのが、前のグランドデザイン答申で、質保証・質向上について熱心に取り組んでいる大学と、そうでない大学に二極化しているという話があって、本当にそのとおりだと思っているのが、それが長らく続いていると思っています。
今回も、議論するときも、そういう質保証について関心が低い大学に対しては極めて厳しくというか、しっかりと評価をする一方で、ちゃんと内部質保証ができているところは、しっかりとそこに自分たちのやり方に任せてやっていくような、そういうめり張りをつけるということを考えることが必要だと思っています。
ともすると、しっかりやっているところが、さらに新しい質保証・質向上の話が入ってきて、過剰に対応するという、よくやっているところが大変になってくるという、そういうのがずっと見ているとあるところですので、そういうところをしっかりと考えて、デザインをしていくことが必要だと思っています。
2点目ですが、大学改革と質向上・質保証の関係をどう考えるかというところが重要だと思っています。現状の認証評価は、正直言ってモチベーションも、メリットもないと思っています。なぜならば、極めてスタティックで、今やっているものがどう質が保証されるかという話が多い。一方で、大学改革は、ダイナミックで、これから必要となってくる人材を、どういう人材が必要で、どうやって育成していくか、そして、それをどうやって教育の国際競争力を持っていくかという議論をしています。
そことの連動がないと、認証評価というものをなぜやらなければいけないのかというのは、大学からはあまり見えてこないと。そういうところをいかに連動させていくかというのが、2つ目のポイントだと思っています。
そして3点目ですが、今回の答申にも書かれていましたが、大学院の質保証です。これまでの質保証の議論というのは、学部教育の議論がほとんどで、大学院の質保証はほとんどまともに議論がされていなかったのではないかなと思っています。
ただ、その一方で、今、国大協が博士学生を3倍にすると言っていて、世の中、産業界も博士の学生を受け入れていく機運が高まっていて、かなり博士及び修士もですが、大学院教育の拡充というところに関心が集まっていると思っています。
その大学院教育の質保証をいかに行っていくかというところが重要で、今SPRINGで博士の経済支援をしていますが、その中でトランスファラブルスキルの教育をするであるとか、いろんな改革をしているのですが、本当にそれがうまくいっているのか、質向上・質保証としてうまくいっているのかというのはほとんど確認されていないという状態。こういうものをしっかりと、この評価、あるいは質向上・質保証の議論の中で見ていくことが必要なのではないかなと思っています。
以上、3点、私、今関心を持っているところでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【伊藤部会長】 ありがとうございました。では、続きまして、日吉委員、お願いいたします。
【日吉委員】 ありがとうございます。埼玉県教育委員会の日吉と申します。このたびは、このような機会をいただきまして、本当にありがとうございます。初めてなので、しっかり取り組みたいと思います。
私はこれまで、高校の教員、そして地方教育行政の長として携わってきた経験から、特に、今回いただいた論点整理の1に関しまして、新たなこの評価制度というものが、高校教育と高等教育機関との接続性を高めるために非常に重要であるというふうに考えておりまして、その立場から、3点ほど意見を述べさせていただきます。
1つは、高校教育との接続性を考慮した評価制度の重要性についてでございます。現在、高校では、学習指導要領に基づきまして、主体的、対話的で深い学びというものを通じて、一人一人の生徒の学びの質を高めるということに力を入れているところです。これらの生徒が高校での学びというものを、大学でさらに伸ばすというためには、高等教育機関の評価においても、学習の成果であるとか、教育効果がどのように高められていったのかということを、ここにございますように定量的かつ定性的に示すことは重要と考えます。
特に、在学中にどれだけ学びの力が伸びたのかという指標は、高校と大学の教育をつなぐ重要な役割を果たすと考えております。
2点目は、評価結果の公表と、その分かりやすさということについてです。評価を受ける高等教育機関の特色であるとか長所、また、改善点などをまとめた要約資料というふうに書いてありますけれども、そういったものを作成して、広く発信するということは、高校生であるとか、あとは保護者、そういった方々が進学先を選択する際に大きな助けとなるのではないかなというふうに思います。
これから大きく変化する社会においては、高校生が自らの学びの目標であるとか、あと進路を考える上で、単にいわゆる偏差値などの大学のランキングだけではなくて、大学の教育の支柱であるとか特色が具体的に分かるような情報というものを提供していただくことが、生徒の学びの動機づけに非常に重要であろうというふうに考えています。
3つ目は、データベースの整備と利用促進に関してです。本県においても、高校教育においても、データを活用した教育改革を進めようとしております。例えば中学校と高校の教育データを連携させて、プラットフォーム化をさせて、高校での教育に生かしていこうというような取組も、これから進めようとしています。
高等教育機関でも、評価に必要なデータを効率的に収集、活用するためのデータベースに書いてありますが、そういったものが整備されていけば、さらに教育の質の向上に資する具体的な方策が見えてくるのではないかなというふうに思っています。
これらのデータを基にその大学の魅力を可視化していただければ、先ほどのお話にもつながりますが、高校生とか保護者が多様な視点から大学を選択する環境が整えられるのではないかなというふうに思っています。
そういう意味では、これからキャリア教育、全ての高校生にそういったものが必要だと思っていまして、主体的に進学先を選ぶ力を育んでいく必要があると思っていまして、こういったものが動機づけにつながるかなというふうに思っています。
以上の点から、高校と各高等教育機関の連携を深めまして、質の高い教育を実現するための新たな評価制度の構築については、私としても期待しているところであります。
以上でございます。
【伊藤部会長】 ありがとうございました。続きまして、平子委員、よろしくお願いします。
【平子委員】 皆さん、おはようございます。ANAホールディングスの平子と申します。中教審の大学分科会の特別部会にも参加させていただきました。先ほど、石橋さんからもお話がありましたが、2月の答申は非常に多岐にわたっていて、網羅的で、これをどうやってこれから具体化していくのかという点で、当部会は非常に大事な部会だと思っています。
今日は第1回目なので、頭出しということで、頭の整理をしてみたいと思います。私は、企業経営の立場からどこまで大学経営に物申せるかというところを考えています。企業経営の非常に大事なファクターとして、ステークホルダーに対してどういったコミットメントをするのか、例えば航空会社だと搭乗するお客様だったり、あるいは空港で対応する従業員だったりするわけです。
先ほど、田中委員から学生参画の話があったと思うのですが、まさに企業経営においても、従業員とかお客様の声をどのように生かすのかが非常に重要です。同様に、大学経営にも学生の声を今後どのようにして生かしていくのかは大事なファクターだと思います。今の大学生のマジョリティーを占めているのはZ世代と言われている若者たちで、Z世代は、全員がそうだとは言いませんが、おおむねリスク回避思考が強いのではないかと思っています。
リスク回避思考のZ世代に対して、大学からどのようなコミットメント、メッセージを届けるかということです。例えば最近、配属ガチャという言葉があって、企業に就職しても、自分の希望するところに配属されなかったらすぐに辞めてしまうようなことが起きています。企業の取締役などにはスキルマトリックスと言って、自分のコンピタンスの見える化ができているのですが、企業と学生との関係では、企業側が求めている人材と、学生が自ら保有しているコンピタンスとのマッチングを考えずに配属させてしまうと、すぐ辞めてしまう現象が起きているのではないかということです。
ですから、そういったことが起きないようにするために、大学側としてはデータの整備、大学全体のマクロのデータも大事ですが、個人の学生のミクロのデータをどう見える化するか、が非常に大事なのではないかと。自分がどんな能力を持っていて、どういったところで通用するのかが見える化できれば、今後、自分のパーパスやキャリアパスを実現するための大きな糧になるのではないかと思っているところです。
要は、学生の立場に立って、何を大学側が用意するのかということ、それは大学側の魅力にもなるし、学生にとっても自分のキャリアパスの形成に資することから、非常に大事なファクターになるのではないかと思っています。
それから、もう一点は就職。5年一貫制度は、私はいいと思うのですが、必ずコンフリクトが起きるのが就活です。就活の早期化が進んでいて、実際に大学の在学期間のうちの半分近くが就活に時間が割かれていて、十分な修学ができないという実態があるということです。
就活に対するアプローチの一つにインターンシップ制度というのがあります。日本ではまだ成熟していない制度ですが、充実させて学生が4年、5年の期間を全うできる仕組みがないと、質の向上には結びついていかないと思いますので、就活時期の問題も焦点に当てたほうがいいのではないかということ。
最後に、通信制教育の件です。ZEN大学が今春開校しましたが、授業の6割をオンラインの教育に充て、残りは、全国各地の企業や自治体でのフィールドワークや研修を組み込むと聞きました。
それはミネルバ大学とも通ずるものがあって、通信制教育はそれだけで完結するものではなく、そこに実態あるいは、社会実装のための場がなければならない。ということからすると、今後、通信制教育だけで完結させるのではなく、キャンパスの存在、あるいはフィールドワークのようなものを、今後どう考えていくのかも、質の向上に資するのではないかと思いましたので、あえて今日、頭出しですが、3点申し上げました。
【伊藤部会長】 ありがとうございました。続きまして、松居委員、よろしくお願いします。
【松居委員】 初めまして、早稲田の松居と申します。この委員会、初めてですので、いろいろ学ばせていただきながら、何かお手伝いができればと思っています。
今回、頂きました膨大な資料を一生懸命読ませていただいたのですけれども、私ども、私の立場としては、恐らくこの認証評価を受けている立場で、いろいろな文書を作ったり、それをまた評価結果を見ながら頭を悩まされたりという立場ですので、ここでの負担軽減を踏まえつつ、まさに重要なことだろうというふうに思っています。
ただ、大学学部の中でもよく議論になるのは、評価を、能力の変化等を可視化せよと言われたときに、これは誠に難しくて、GPA等々で定量化できる部分だけではなくて、大学で何を学ばせて、どういうふうな能力を向上させるのかといったときには、恐らくGPA等々の数値で表わせないような能力、例えばほかの省になりますが、社会人基礎力でありますとか、あるいは、もっと根底にあるような、人としての倫理感であるとか、そういったものをどうするのかというのがどうしてもディプロマポリシーに含まれていますので、そういったところの評価というのは大変難しくて、それを可視化せよと言われると、さらに難しくなるというふうなことですので、経験も含めて。だから、この定性評価、定量評価というところを、どこまで実現可能なものにしていくのかというのは、非常に重要な議論かなというふうに思っています。
本学の中でも熱心な学部においては、ルーブリックなんかを作ったりしておりますけれども、だからこそ、ルーブリックを作るのはいいけれども、それを使うリテラシーが教員にはないというふうなことで、ほとんど機能していないというふうな実態もありますので、ここの認証評価に関わるところというのは本当に難しい問題です。ぜひ、現場の立場からも、負担軽減と、ここのいい認証評価というもののバランスがうまくできればいいかなというふうに思っています。
そういった意味で、本学では研究、教育に、もう一つ、早稲田大学の場合は社会貢献というふうなことを非常に重要視して、昨年度、社会貢献に係る全学のセンターというのをつくりました。一応、私、そこの責任者を担っておりますので、そこのところでは研究教育と、それから課外活動も含めて、要するに数値化しにくいような能力をどういうふうに培っていくかということを、全学で考えていくというふうなこともやっておりますので、そのような立場から、ここの議論に関われればいいかなというふうに思っています。
もう一つ、私が所属しております人間科学部は、2003年に通信教育課程というのを、我が国の中では比較的早い段階――慶応義塾大学はもっと早くからあったように記憶しておりますけれども、きちっと学位を出すというふうな意味で、通信教育課程を開設して二十数年やってきています。
おっしゃったように、入学してくる入学者層というか、言葉を選ばなければいけませんが、当初は非常に優秀な社会人でした。ところが、だんだんその裾野が広がってくると同時に、高校を出てすぐでありますとか、そういった方々が入ってくるようになってきたので、そもそも研究大学の中での通信教育課程というものの在り方が大変難しいという実感を持って、日々どうするかという議論をしているところです。
先ほど御紹介があったように、ZEN大学というのは我々にとっても非常に脅威であります。すなわち、これからも通信制の大学は増えていくと思いますので、その通信大学にもいろいろあるというふうなことで、若い人たち、あるいは社会人のニーズに合った、どういうふうな通信教育課程というものを見せていくのかということも、重要な議論かなというふうに思っております。
ひとまず、以上です。
【伊藤部会長】 ありがとうございました。では、続きまして、松浦委員、お願いします。
【松浦委員】 慶應義塾の松浦でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
私は、2つのことを申し上げようかと思います。1つは、言わずもがなかもしれないですし、それから、既にもう日吉委員がおっしゃったことなのですが、大学の問題というのは、高等教育や大学だけを議論していても立ちいかないというところがあるということを、改めて最近思っているところです。
私、中教審では、かつて教育振興基本計画部会に参加させていただきまして、森友審議官にもそのとき大変お世話になりました。残念ながら、「知の総和」答申には、注のところで少しだけ触れられているところですが、2年前に閣議決定をされて、そこまで非常に集中的に日本の教育の全体像を議論していったわけで、あの議論の文脈の上に高等教育の在り方というものも考えていかなければいけないと思います。
「知の総和」というのは、決して高等教育や大学だけで知が構成されるわけではなく、高等教育ももちろん、初等、中等、あるいは就学前の段階から、日本の国の知がどういうふうに形成されていくのかという文脈のところで、初めて大学や高等教育の在り方というのが問われるべきです。
最近は、人材育成とか、キャリアパスとか、出口のところの議論が結構集中しているように思いますけれども、もともとは数年前に、いわゆる高大接続の議論をして、そのときも、入学者選抜だけじゃないのだよと言いながら、しかし、全体的な接続のところまで議論が行ったかというと、私は日本私立大学連盟のほうでその議論に加わりましたけれども、そうなっていないところはありますので、ぜひ今後、高等教育の質向上・質保証を考えるときには、その前提になる、どれぐらい成長したのかというのは、大学に入る前の段階から見ていかないといけないと思いますので、接続のことは、ぜひ視点として大切にしていただきたいかなと思っています。
もう一つ、2番目は、質の向上・保証というときのよく言われることですが、質と量というものとが一体化して議論されなければいけないと思うのです。学習量の測定というのは、どうしても時間で今やっている。大学設置基準が改正されて、かなり柔軟に扱いができるようになりましたけれども、それでも1単位45時間というのは変わらないのです。私、基本計画部会でも発言したことがあるのですが、今もう学生、オンデマンド教材、2倍速、3倍速で見ていたりするときに、1単位45時間というのはどう考えればいいのか。
今回、課題になっている学士、修士の5年制というのも、今まで6年のものを5年にするときに、そのときの単位の換算というか、学習量というのをどう捉えるのかということは必ず問題になると思います。それから、通信教育課程の設置基準に関しても、御指摘があったように、通信教育、あるいは大学のオンライン教育の在り方というのは急激に変化しているときに、そこで学習量の議論というのは不可欠。大学設置基準を改正してくれとまでは言いませんけれども、もう少し柔軟に、大学の学生の学習量というものを測定する基準の設定ということを、ぜひ議論したいなと思っているところでございます。
以上でございます。
【伊藤部会長】 ありがとうございました。では、オンラインで、松尾委員、よろしくお願いいたします。
【松尾委員】 松尾でございます。私は、北九州市立大学の学長を務めておりまして、もう退任して2年ぐらいたちますけれども、それ以外では、認証評価に関しましては、認証評価機関のほうで仕事をさせていただいておりました。今も行っております。それから、大学設置に関しては、設置の分科会のほうで何年かにわたって仕事をさせていただいております。
今回、私のほうとしてお話をしてみたいと思っているのは、論点の中で一番最初に挙がっているところの、特に情報公開のところであります。今既に認証評価の結果等も、形式的には公表はされておりますし、それから大学ポートレートという形で、大学の情報も公表はされているかと思います。
ただ、それがうまくいっているかどうかというと、いろいろと考えなければいけないところがあるだろうと思うのですけれども。その際に、情報を公表して、それを誰が、どういう目的で、どのような場面で見るのかというところをしっかりと考えておかないと、こちらから情報を出しているから見てくれるだろうというものではないはずですので、そこを考えてやらないと、本当に形式的な情報を出しているだけだというふうになってしまいかねないかなと思います。
特に、受験生なんかが大学を選ぶ場合に、例えばポートレートが使えるのだというふうなことを言っていても、恐らくそれはほとんど使われていなくて、どうかすると予備校だとか、受験産業のサイトだとか、そういった情報に触れるほうが圧倒的に多い。そちらのほうが多分、有益だろうと思うのです。
今の時代、AIが進んできて、生成AIを使うと、どういう大学を受けたいかというのを尋ねると、非常に的確というか、完全に的確ではないですけれども、かなり有用な情報を出してくれるというところがあります。だから、どういう情報が今世の中に出ていて、どういう人たちが、どんな情報を求めているのかということをしっかりと考えていかないと、ただ情報公開を公表するのだというところだけで突き進んでも、それが受け入れられないということになりかねないと思いますので、その辺りも含めた議論をこの部会でしていく必要があるかと思っております。
私のほうからは以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【伊藤部会長】 ありがとうございました。オンラインで、松下委員、よろしくお願いします。
【松下委員】 京都大学の松下佳代と申します。よろしくお願いします。
私は、認証評価については、あまり直接携わったことはないのですが、自大学の自己点検評価、あるいは他大学の外部評価、そして、直接認証評価ということではないですけれども、日本学術会議の分野別参照基準、この教育学分野の参照基準をつくったときの分科会の委員長を務めさせていただきました。そのときには、先ほどお話しくださった松浦委員と共に、参照基準作成に携わったという経験がございます。
それから、先ほど名前が出ていましたけれども、ミネルバ大学のケーススタディーを4年ほど続けてきまして、どういう形で、まさに質向上・質保証というのをやっているのかというのをつぶさに見てきました。
私、今回のこの分科会に参加するのは初めてでなんですけれども、論点として挙げてくださっている中で、まず1番目のところですけれども、私が一大学教員として様々な評価に関わっていて感じてきたのは、評価疲れ、評価負担を、皆さん、感じておられる。その割には、得るものが少ないというのが、多くの大学教員の実感ではないかと思います。その点で、一番最初のところで負担軽減をするということを掲げてくださったのは、とても意味があるというふうに思います。
そして、どうしてもこういう評価情報の公表ということになると、定量的な評価に偏りがちなのですけれども、定性的な評価ということも併せて挙げてくださったことも、とても意味があるというふうに思います。
私としては、まず、ほかに加えるとすれば、直接評価、間接評価。つまり、間接評価というのは、質問紙調査、アンケート調査などを通じて評価情報を得るものです。直接評価というのは、先ほどルーブリックとかありましたけれども、あるいは卒業論文を書いて、あるいは試験という形で直接学生の能力を実演したり、記述したり、そういった形で、評価を行うというものなのですけれども、今年度から全国学生調査が本格実施されますよね。そうなりますと、間接評価に関する評価情報というのがかなり集まってくるというふうに思います。
ですので、そのときにもう一つ、4年なり、6年なりの学士課程の中での学生の成長を測るということを考えたときに、間接評価と併せて、直接評価としてどんなことをやっていくのかということを検討していくことが、とても重要になってくるというふうに思います。
また、全国学生調査というのは、全国共通に同じフォーマットを使って行われるわけですけれども、各大学、学部、学科等のそれぞれの特徴というのがありますので、そういう共通性と多様性というのをどういうふうに折り合いをつけていくのかというのも、これはどこの国の評価でも非常に課題になっていることなのですが、共通性と多様性の調停ということ、それをぜひ考えていきたいというふうに思います。
それから、もう一つ、2で挙げてありました学士・修士5年一貫教育制度の在り方ということなのですけれども、これ、ヨーロッパでは以前から5年一貫で、学士・修士2学位を取るというのが割と一般的なわけですけれども、ヨーロッパは大学に入るとすぐ専門教育が始まるというのが普通です。
日本の場合は、4年間のうちの1年なり、2年なりぐらいがかなり教養教育、共通教育に充てられますので、その中で、5年で修士まで取るというのがどういう形で可能になるのか。下手をすると、修士レベルの切下げにならないのか。逆に言うと、学位のインフレ、そういう形にならないのかということが危惧されますので、そこをどういう形でこの5年間制度というのが可能なのかということを、考えていきたいと思います。
それから、これも先ほど松浦委員がおっしゃったように、全体としては、通信制大学のこととも関わってくるのですけれども、大学というのは基本的に時間ベースでカリキュラムが組み立てられているわけです。それに対して、コロナのときも感じたわけですけれども、もう一方で、成果ベースで考えるという、この2つの考え方があるわけなのです。単位制度というのが主に時間ベースで、なおかつ成績で不可ですと単位が出ませんので、成果というのも入っているわけです。
また、これのバランス、それをどういうふうに考えていくのかということも、認証評価で質の保証・向上というのを考えていくときに非常に重要な論点になってくるのではないかというふうに思っております。
以上、3点、述べさせていただきました。今後ともよろしくお願いいたします。
【伊藤部会長】 ありがとうございました。では、森副部会長、お願いします。
【森副部会長】 改めまして、桐蔭横浜大学の森でございます。今、委員の先生方のお話をお聞きしながら、このメンバーで議論ができるということを大変うれしく思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
私からも、何点かお話をさせていただきたいと思います。まずは、この設置基準、設置認可審査、教学マネジメント、認証評価、情報公開と、これまでは個々、非常に精度を高くやってきたというふうに、私は思っております。ただ、これを一連のプロセスとして見るということが非常に重要です。私は、ここに日本型モデルといったようなものが見えてくるのかなというふうに思っているところでございます。
そこの中で、今回でございますけれども、いわゆる緊急というものに関しては、様々なレベルがあるというふうに思いますし、大学の目的や理念といったものも様々あると。これ、複線型社会においては非常に重要なことだというふうに思っております。ただ、国公私や大学、短期大学、高専、全てに共通するのは、今回出ておりますように学生を伸ばすということに尽きるのかなというふうに思います。
この学生をどう伸ばすかということに関しては、特に大学なのですけれども、必要なものということに関しては、その専門的な知識、技能だけではなくて、私はやはり、日本の学位の品格としまして、学士力が正しいのかどうか分かりませんけれども、そういったような学位を持っている人が持ち合わせる、社会に出るときの非常に大きなバッチとしまして、ジェネラルエデュケーションのようなものというのは、非常に重要なのかなというふうに思っています。
そういう意味では、学士力、随分時間がたってしまいましたので、またここの再考といったようなことも必要なのかなというふうに思っております。そこの中で、今回、非常に勉強になりましたのが、日吉委員と平子委員がおっしゃったように、大学を中心としまして、高大の接続と、大社の接続のところだというふうに思います。
これまで非常に、特に社会との接続は、学位の優良性がなかなかなかったりして、ねじれた形になっているというふうに言われている日本型でございますけれども、今回のこの話の中で、高校から大学まで、大学からその先も含めて接続するという観点が必要なのかなというふうに思っております。
大変、私の個人的なことですけれども、実は私、日本の大学を出ておりません。先ほど松下先生がおっしゃったヨーロッパの大学を出ております。あちらでは、学生たちが自分のキャリアを構築するために大学を活用しているという形ですので、休学して、インターンシップに行ったり、または、転学部を自由にしたり、あとは入り直したりといったようなことで、自分自身の自立性を持って大学の教育を活用するという形だったというふうに思います。
ただ、先ほど、平子委員がおっしゃったように、日本は日本の大学の学生のよさがあって、リスク回避ではあるのですけれども、でも、そこにもいいところがたくさんあると。ただ、促さないと、なかなか行かないというのはどこも一緒ですので、そういう意味では、本当に学生を伸ばすという教育の力が非常に有効に機能するのが、日本型モデルなのかなというふうに思っております。
ぜひ、よい形のモデルを皆様と作らせていただくということを頑張ってやってまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【伊藤部会長】 ありがとうございました。では、私、伊藤のほうからも一言御挨拶差し上げます。私が働いている慶應義塾は、1858年にできたのですけれども、もともとその創設者の福沢諭吉は下級武士のところに生まれながら、父親を数えで、3つで亡くし、勉強する機会もなく、14歳、15歳で初めて本に触れて、そこから本を読み出して、19歳で長崎に行き、蘭学を学び出し、20歳では大阪の適塾に行き、そこで緒方洪庵の下でさらに勉強して、23歳では、江戸にやってきて、中津藩の中屋敷の中に自分の塾を開いて、24歳では、開港したばかりの横浜に行ってみると、皆、英語だと。今まで自分が学んできたオランダ語は全く通用しないと驚いて、ショックを受けたのですけれども、翌日には立ち直って、英語に切り替えて、英語を勉強し始めた。
それが功を奏して、その1年後には、日本が初めて自分たちの軍艦、咸臨丸をアメリカに送ることになるのですけれども、そのときに木村摂津守に、自分は英語が話せるから何かの役に立つと懇願して、自分で乗り込むことに成功した。その2年後、27歳には、ヨーロッパに今度は政府の遣欧使節団の正式な通訳として参加できるといったことをしたわけであります。
要は、そういう志の高い人たちがもう少しシステマティックに、学びに飢えた人たち、志が高い人たちのために高等教育を用意しようということで、慶應義塾、また立教、同志社、そして、その後に帝大、東大というふうにできていくわけでありますけれども、その頃の大学進学率の低さは、皆様御存じのとおり。東大、旧帝大の法学部を最初の頃出れば、そのまま司法試験もなく、弁護士や裁判官にもなれる。でも、それだけ厳しい勉強が課されたというのは記録に残っているわけであります。
翻って、私が大学に入る頃、40年前、進学率は25%でした。女子が12%、男子が38%ぐらいですか、それぐらいです。4分の1しか大学に行かない。それが今、大学に進学する人は、4大だけでも60%以上、そして、もちろん短大、高専、その他の専門職大学に参加する人を入れると、80%以上が、我々が今対象とする高等教育に進学していると。その全員が、実は申し上げれば、慶應義塾でも全員が学びに飢えて、そして志を高く入ってくるわけではありません。あらゆる形で、ベルトコンベアに乗って入ってくるという人も多くなっています。
もともと、例えば私たちの大学もそうですし、今もそうなのですけれども、学びたい人にとっては幾らでも自分の好きな授業が選べて、留学もできるし、最高のシステムなわけですけれども、楽をしようとする人が楽をできてしまうというのも事実であります。その辺のところをどう見ていくのかということが1つ。
もう一つは、大切なことは、80%以上が高等教育に進むということは、日本にとって一番大切なボリュームゾーン、ハイエンドが大学に行くのではなく、ボリュームゾーンという日本の日常で、そして、いろいろあらゆるところで支える人たちが、大学、広い意味での高等教育に入っていくので、その人たちがみなハッピーに、自分はあそこには行けなかったという、ランキングの低いところに行ったということを背負いながら一生暮らすほど、日本にとって損なことはないというのが、私の考えであります。
先ほどランキングという話が少し日吉委員からもありましたけれども、例えば学部ごとにとか、あらゆる格付けをすればするほど、場合によっては、それによって、または自分はそこしか行けなかった人というレッテルをずっと感じながら過ごすとすれば、それは最も日本にとって不幸なことであります。昨日の大学部会、分科会でもいろいろな議論があったところでありますけれども、設置の形態によって評価は相当変えてほしいと。
例えば専門職大学の方からも、自分たちはこういう形で、こういう教育をして、それに対して努力をしているので、それに対して評価をしてほしい。また、何をとっても福沢的な人に、逆に形のはまった授業のとり方に押し込めるほど、日本にとって損なこともありませんので、それは先ほど林委員が違う言い方をしましたけれども、目標とすることによって、評価のやり方というのを変えていき、また、その評価もコンプライをエクスプレインにするのが最も大切と、私は思っているところであります。
つまり、その評価基準を満たしているか。満たしていないのだったら、どうやって自分たちで、違うやり方で満たしているかを説明しなさいということですよね。それがあれば、これである設置基準、ある基準評価に対して、ひたすらA、B、Cとつけられる。それに当てはまらないケースも当然あるわけですから、それに対してエクスプレインで置き換えるといったことも大切になっていくのではないかと、私は思っているところであります。
この近々の少子化問題、これは危機的であります。先ほど小林委員も指摘してくださいました。少子化が進むと、当然のように、先ほど平子委員が指摘されたように、就職、リクルーティングがどんどん激しくなっていきます。そして、大学、また、あらゆる高等教育機関において、学びに使う時間がどんどん減っていきます。これは、危機的です。
若いときというのは、語学も、スポーツも、また、あらゆる経験、語学は若いときにしかなかなか学べない。もちろん、年を取っても学べるのですけれども、吸収力が違います。人生100年の時代に、この10代、20代にどういう経験を積み、一生涯志を持って学び続ける余裕、力をつける、その手法を身につける、どんな困難に向かい合っても、自分は新しい学びでそれを乗り越えていけるのだという、学びの力をつけるのが高等教育機関だと思いますけれども、それには時間がかかります。近道はありません。
ですから、その時間をどうやって確保するかというのが、私にとっての一番の危機感であります。大学2年生を対象としたアンケートでは、1週間、自分の学校での授業以外の時間、どれぐらい勉強していますかというと、5時間未満が50%近くです。これでは、高等教育機関としては失格で、これは我々、高等教育に携わる者たちが最も反省しなければいけない点ではないかと思うところであります。
でも、これもなかなか難しいのです。学生たちは就職をしたい。しかも、もしその大学が、今回の議論でもありますけれども、しっかりと勉強していないからどんどん落としていったとしたら、そうすれば、その大学は人気がなくなるという悪循環に陥っている。だったら、もう出させてあげましょうと。
そういうことを繰り返して、就職も早くなっていくということを繰り返していることが、実は少子化の中において、過去の失われた30年もそうですけれども、私たちが実際に反省しなければいけない、そして、乗り越えなければいけない質保証という意味では、どれだけ学びの時間を使うかというのは、1つの大きな指標だと思っています。
先ほど、松浦委員や、松下委員からもいろいろ指摘がありました。私は、実は大学の特別部会、今回の「知の総和」向上答申に出たところで、5年の今回の学部、大学院の一貫教育を提唱した者であるのですけれども、実はそのときの一番のジレンマは、なぜ高校2年生から大学に入れないのかと。いわゆる旧制高等学校がそうだったわけですよね。
どうしてもっと早くから、やれる人は大学に入れないのか。でも、ここは高等教育を議論する部会ですから、高等学校のことは話ができませんということで、そこで遮断されていたということがあります。そういったところも含めて、本来はどうやって学びの時間を確保していくのか。そして、恐らく5年、一貫ができたときには、先ほど松下委員が指摘されたように、カリキュラム的には全く別のオーナークラス的なものになり、相当な意味での、ただ5年に圧縮するのではないものになるのではないかと想像しているところであります。
いずれにせよ、今日本はずっと海外のほうを見ながら、コンプライアンスは法令遵守だから当たり前なのですが、ガバナンス改革というのを進めてきましたけれども、私としては、ウサギと亀の話をいつも使うのです。イソップ物語の「ウサギとカメ」という話を聞くと、我々は亀のように地道に努力をしてくれば、いいことが起きると学んだわけですけれども、アメリカでは主役はウサギです。
このウサギのように怠けると、絶対に負けないはずの亀に負けるということで、全く主役は違うわけです。そのウサギを規制するための様々なガバナンスというものが海外で発明され、そのガバナンスが日本に輸入されて、それが亀に当てはめられたとき、ただでさえ自分の力で努力して進む亀に、輸入されたウサギを止めるためのガバナンスが入ると、それはもう完全に止まってしまいます。
ですから、先ほど様々な委員の方が指摘してくださいましたけれども、特に森委員が日本型とおっしゃいましたけれども、評価疲れが絶対にないように、しかし、自分たちの努力によって、でも、この学習時間の少なさは何なんだといったようなことを、やはり日本の将来のために立ち向かっていかなければいけないというのが、私のもともと質向上に込めた思いでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
先ほど、森委員からも、この委員の皆様がすばらしい、前向きな発言をしてくださって、私も全く同じ気持ちでございます。まだ、実はこの議題は今日、自由討論ということで、残りの時間は自由討論しかございません。ということで、今、簡潔に意見を示された方もいらっしゃると思いますので、この後は、花田さん、会場の方は自由に挙手していただいていいのですね。オンラインの方は挙手ボタンでいただき、今せっかくですので、様々な発言をしていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
いかがでしょうか。私は実は、申し上げたいことは全てここで申し上げましたので、皆様のほうから御意見、今までの意見を聞いた感想でも結構ですので。
まず、太田委員、お願いします。
【太田委員】 高大接続ということで、非常に重要な、どうやって高校と接続しながら、そういう学びをちゃんと連続的に見ていくかというのは必要だと思っています。高校だけじゃなくて、中学から考えなければいけないのではないかなと思っているのです。中・高・大接続ということです。
今年、この春、卒業した学生がアントレプレナーシップとか、そういうことに興味を持っていて、プログラムを修了して、最後にプレゼンをやったときに、彼らが不平を言ったのは、中学校のとき、将来のことを書く欄というのは本当に狭い。だから、将来は何を書くかというと、職業選択ではなく、自分は何をやりたいかということを、もっと書き込みたい。
将来何になるのですかというような、職業選択のようなふうに閉じ込められてしまっているというような感じを聞いたことがあります。まさに今の学生とか、若い世代が夢をもっと語られて、それにどういうふうに果たして応えられるようにするかと、そういうような、もっと近づいた仕組みというのも非常に大事だなと。それを始めるのも高校じゃ遅いのかなと。中学ぐらいから、しっかりと話合いをしていく必要があるのではないかなというふうに思いました。
【伊藤部会長】 ありがとうございます。平子委員、お願いいたします。
【平子委員】 今日議論に出るかなと思っていたのがAIの影響です。中学も高校も大学も、AIに慣れた学生・生徒が、今後マジョリティーを占めると思うのですけれども、これと、大学、教える側の関係です。
先生方は、実際に生成AIを使っていると思いますが、授業のときにAIを使いながら授業の教材を作るのか、あるいは、自分の学びとしてふだんから接しているのか。これから先、学生・生徒と対面していかなければいけないときに、AIの問題を避けて通れないと思うので、そこに対するスタンスは、質向上・質保証の中でも、結構大きな問題になってくると思います。
これに加えて、最近はAIロボットの出現で、従来は最も苦手とされていた知的労働以外の分野も、早晩ロボットが代替するだろうということ。自由に動き回れるような知的ロボットが出てきたときに、これまで人間の仕事の牙城だったエッセンシャルなサービスなどはどうなっていくのか、それによって人間の仕事の定義とか、スコープが変わってくるのではないかと。
このような事情が加わると、大学を出たけれども、どういった形で就職すればいいのか、ということに大きく影響してくると思います。AIの影響について、先生方のふだんの活用方法や、実態をご紹介していただけたらと思うのですが、いかがでしょうか。
【伊藤部会長】 いかがでしょうか。先ほど私、申し上げなかったのですけれども、恐らくこの質保証の評価システム、生成AIで対応する大学がたくさん出てくると思いますので、生成AIで対応されることを前提に考えないといけないというのは、実は内心では考えていたところであります。結局それをつくり込んだところと、つくり込まないところで差が出てくるというところも、可能性として十分考えられますので、その辺のところは、そうですね。
AIのところは、またこの後、個別の議論の中で紹介していただければと思うのですけれども。
ほかの方々。じゃあ、小林さん、お願いします。小林委員。
【小林委員】 私もずっと高大社接続というのを言い続けてはいるのですけれども、その出口の先の企業の環境が大きく変わっていまして、以前は三種の神器と言われた、高度成長期を支えてきた年功序列と終身雇用、そして企業内労働組合というもので、企業内に囲い込んでいたというのが、日本の企業の特色だったわけです。
ただ、今、先ほど平子委員から配属ガチャという言葉があったとおり、新卒より中途マーケットのほうが大きくなっていて、盛んに転職をしていくような状況になっています。なぜかというと、人口減少の中で、どんどん人が足りなくなってくるわけです。リクルートワークス研究所のシミュレーションでは、2040年には1,100万人の労働者が足りなくなってきます。高卒や高専の求人倍率も非常に高くなっている。そうなると、どこかには皆さん、就職できるとなってくるというときに、本当に学位の価値って何だろうかみたいなことが非常に重要視されるのだろうなと思います。
その終身雇用、年功序列の流れは、社会人だけでなくずっと小学生時代から続いてきているような気がします。日本は割と過度な年齢主義と私は言っているのですけれども、何ができるかではなくて、何歳だから何年生みたいな形でずっと来て、これが大学に入っても、やはり入学がゴールとなっていて流動性が少ない状況ではないかと思います。先ほど部会長がおっしゃったように、じゃあ、飛び級があるのではと思いますが、以前ある国立大学で実施しましたけれども、飛び級で来た子が少数派で、なかなか思ったように成長が促進できないみたいなことが逆に起こっているということです。年齢主義から、到達度みたいなところに本当に変えていけるのかどうかというところは、大きな課題なのではないか思っています。
私は、先ほどから話題になっている高大接続改革の委員を当時やっていまして、途中で、志半ばで終わってしまったように思っています。本来は高校生の学習到達度を見て、大学の入学資格みたいなものを与えて、一定の質を担保しつつ、その後は大学ごとに大学に入学して教育に付いていく準備ができているかどうか評価するということも検討していたのですが、英語4技能と記述式に矮小化されて終わってしまったように思います。
高大接続改革の流れで、学習指導要領が大きく変わり、探究学習の導入等、高校のほうは随分今変わってきているので、それを受け入れる大学がどうしていくかというのを、再度考えていく必があるのではないかと思います。
もう一つ重要なのは、高校生だけじゃなくて、社会人も大学等で学び直し、学び重ねをしていかないと、この変化が激しい時代に「知の総和」を高められない時代になってきていると思いますので、従来型の伝統的な学生だけではなくて、先ほど通信教育もありましたし、留学生の話もありました。そして、社会人がもう一度学び直して、従来の就社型からキャリアがよりジョブ型にどんどん変わっていく形になってくると思いますので、そうしたときに「知の総和」を高められるようなシステムの在り方というものを、質という観点で考えていけると良いのではというふうに思った次第でございます。
【伊藤部会長】 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。オンラインの方も、どうぞ御自由にお願いします。
松浦委員、お願いします。
【松浦委員】 1つは、接続のことは大変重要なのですが、タイミング的に、今、10年に一度の学習指導要領改訂のタイミングで、この部会が別に学習指導要領に何か物申すということはないにしても、今回の学習指導要領の改訂の動向を我々もきちんと把握して、議論していく必要はあるのかなあと、思っています。
やはり、大学よりも、もっと小・中・高の変化は激しいと思うのです。その流れでいうと、AIの利用というのは、私は従事していたプロジェクトの関係で、小学校も含めてなんですが、小・中・高のAI利用のいろいろな先進事例について、関係している月刊誌で連載をしてきているのですけれども、やはり非常に積極的なのです。
もちろん、それは全体から見れば、恐らく一部の私立の学校の熱心な先生がリードしてということはあるかもしれませんが、文部科学省さんのガイドラインも、最初に出たものに比べて、改訂されたものは非常に積極的な書き方に変わったので、そういう、小学生は自分で使えない状況ですけれども、中等教育のAI利用の発展というのは、それが普通になった学生が、間もなく大学にどんどん押し寄せてくるところで考えなければいけない。それも、学習指導要領の改訂等のタイミングで、我々は注視していかなければいけないのかなというふうに思っています。
それから、もう一つは、企業さんもさすがにだんだん変わってきているなあとは思うのですが、特に大学院の修了者に関する採用の温度差というのは、個々の企業さんで相当違うのと、全般的に見たときに、まだまだ大学院卒だからということで、積極的に採っていただいているような状況にない。
私、今、日本私立大学連盟の大学院の人材育成の分科会の会長をしていますけれども、そこで私立大学の修了者にインタビューをして、それこそ定性的にこの問題を考えようということで、去年1年やってきているのですけれども、本人たちは大学院で学んで、研究力を社会に生かしたいととても思っているのですが、就職先がそれに応えてくださっているところもあれば、そうでないところもあると。小林委員におっしゃっていただいた動向が主流になって、これから大学と出口のところも、大学が行っている教育の変化が、社会や企業にきちんと伝わるような流れをつくるということも、この部会で考えていかなければいけないのかなと思って、伺っていました。ありがとうございます。
【伊藤部会長】 ほか、いかがでしょうか。
では、どうぞ、森委員、お願いします。
【森副部会長】 今のことについてなんですけれども、小林委員にぜひお聞きしたいのです。今、大学と社会の接続に関しては、エントリーシートと呼ばれる何も中身がない一枚物で接続するということに関して、私もこれはすごく不本意で、今から大学はこれだけ頑張りますと。
今回、認証評価等の話ですので、大学がどのぐらい伸ばしたかということになるのですけれども、学生個々がどれだけ伸びたかとか、どういう力がついたかということを表すチャンスでもあると思っているのです。そのときに、大学と社会の接続って、あれでつながりたくないと思っているのですけれども、何かアイデアはないですかということです。
三者合意ということで、今、インターンシップ等の活動が、そのまま入社試験等にも切り替えることにはなっているのですけれども、そうすると、大学生がみんな授業を放ったらかしてインターンシップに行ってしまうみたいなこともあって、この辺はどう整備していったらいいのか。もし、アイデアがありましたら、お願いいたします。
【小林委員】 これは、平子委員もよく御存じだと思うのですけれども、おそらくエントリーシートだけで見ている企業はありません。なので、面接も含めて、その個人がどのような経験を積んできたか、それを自分の言葉できちっと語れるかどうか、将来どうなりたいかをしっかりと見ていくような、何回も面接を重ねるというのが一般的だと思います。
今、学生の言葉を借りると、ガクチカという言葉をよく聞きます。これは、面接の際、企業が学生時代、一番力を入れてきたことは何ですかというのを聞くことにしているのです。それを通じて、その学生が何を課題として、何に取り組んで、どう成長したのかを聞きたいのですけれども、学生のほうは、ガクチカというと、サークルとかアルバイトばかり語り、何か敢えて特別に作らなければならいもののように思っているようです。
なので、逆に大学時代に、正課を通じて何が成長できたのか、何が身についたのかを、きちんと学生自身が可視化という言葉をよく使いますけれども、学生自身が自覚化できるかどうかというのが、非常に大きな課題なのではないかと思います。
もう一点は、今、就職の早期化ところを大学の皆様は言いますけれども、実は高校と大学の接続もそうで、大学において、学生確保がなかなか難しくなると、どんどん学生募集が前倒しになっていて、多分日吉委員はよく御存じだと思いますが、高校の先生からは大学が入試を早くやり過ぎるというようなところの接続の課題もできています。そう考えると、ご質問は入試を、エントリーシートのみで終わるのかと言っているようなものだと思います。高大、大社併せて同じ課題が、人口減少下になってくると、いかに優秀な人材を確保するかというところの課題が、全体に今染み出してきている状況なのかなというふうに思います。
【伊藤部会長】 どうぞ、浅田委員、お願いします。
【浅田委員】 ちょっと話題が変わるのですけれども、学位という言葉が、重要なキーワードになっていて、大学は、国から学位授与権を与えられた、社会にとって非常に大事な存在です。我々、大学関係者は学位授与するということで意識しているのですけれども、学位というものの重要さというのは、ディプロマポリシー、カリキュラムポリシー、アドミッションポリシーを定めて、卒業時の専門能力を保証する、そのことは大学人には常識になってきています。ところが、今、学士、修士、博士の学位に、括弧で専門分野がついて、物すごく多様化しています。
それが社会の多様化と、社会で働く人々の多様化ということに応じた現実だと思うのです。学位の質の話、今日も出ましたし、それから国際通用性という話も以前から言われています。でも、日本で学位というものの重要性が、まだ本当に社会に定着していない、学生自身も理解して、自覚しているのかというと、そこはなかなか難しいと思っているのです。
中教審などでは、学位プログラムという言い方はかなり以前から使われて、大学関係者には、常識の言葉になってきているかとは思うのです。私が十分調べ切れてないですが、法令上、学位プログラムという言葉がちゃんと定義されていないのではないかなと思っているのです。学校教育法であるとか、大学設置基準では、学部・学科という単位、いわゆる従来の組織単位で構成されていて、そこに教員が何人いるとかということが決められている。
これは、今の時代にもう合っていないのではないかなと思っています。というのは、学位というものに関してカリキュラムが組まれて、そこで能力保証がされて、社会へ出て行って、私は何の学位ですということを、社会に出てからも自覚し、堂々と主張するというのが本来の姿なのですが、私はどこどこ大学出身ですとか、何学部出身ですとかは言うけれども、学位の名称を本人はちゃんと自覚しているのか、みたいなところがあります。
だから、学位の重要性というのをもう一度きちんと再定義して、法令上も明確にした上で、それが本当にカリキュラムの中に埋め込まれて、学生自身が、例えば私は入学時に何の学位を目指すのだということを言えるように、ちゃんとしてあげる。何々大学の何学部を受けますではなくて、私は何の学位を目指します。そのためには、これだけの能力が卒業時に求められている。そのために、私はこういう授業を単位取得して、それを積み上げていくことで、卒業時に私が目指している人生の出発点に立つんだみたいな、何かそういう学位というものを、もう一度きちんと真ん中に据えた制度やシステムというのができたらいいなと、以前から感じているところなので、ぜひそういう議論もしていただけたらと思います。
以上です。
【伊藤部会長】 大野委員、お願いします。
【大野委員】 ありがとうございます。学生の学びについて、短期大学という話ですが、その昔、短期大学黄金時代が、本学でもそうですが、六大学に進学するような大半の女子学生が進学してきて、教員のほうも大変楽で、各種教育実習等、実習前には、皆さん、しっかり頑張ってきてくださいと声をかけると、相当程度以上の結果を収めてくる時代がありました。
時代が流れて、入学してくる学生の学力や、生活体験の不足や、それから社会のほうは、例えばいろいろとクレームを言う保護者の人が増えたりとか、アレルギーの対応をしたりしなければいけないとか、時には日本語だけでは対応できないとか、そのギャップって、物すごい勢いで広がっているのです。
でも、高等教育機関として、また養成施設として、さっきちょっと話が出た、甘くして卒業させるわけにいきませんので、何とかこのギャップを埋めなければいけないということで、必死に頑張っています。そのときに、今、幾つか頑張っている、さっき学生の自覚化という話がありました。学生はメタの認知の能力って低くて、力はあるのだけれども、思った以上に自分のことは駄目というふうに思ったりしていますから、そういったところを定性的な評価で、どれだけ進歩していったのかというのが見えるようにしてあげると、結構前向きに努力するエンジンになります。
あともう一つは、これはなかなか言うのは難しいのですけれども、頑張っているのは、マインドセットが必要だと思うのは、日本は、僕も昔そうだったかもしれませんけれども、学歴だとか成績で、その人のほぼ全てを評価してしまう傾向とか、文化があって、評価されるほうは、それでいい人はずっと優秀でいいのですけれども、小さいときから結構ダメージなのです。
今、本学に入ってくる学生も、私はこれ、できないからということを平気で言うのですけれども、そこをマインドセットして、成長型で、今あなたはできない状態は変わりないかもしれませんけれども、こうすると、こういうふうにできるようになるという道筋を示して、ちゃんと努力を促して、フィードバックを繰り返していくと、できるようになったという実感を持った学生って、成長し始めるのです。
非常にここは大事だなと思っていて、先ほど来、質保証って、すごく、ここから上か下かというところですけれども、そのプロセスのところを大事にしていただくと、全体の底上げがいくのかなと。これだけちょっと、さっき僕、ピアレビューの話をしましたが、確かにピアレビューって、内々の仲間内のお手盛りというふうに、本当に見られてしまうところはあるのです。
ただ、僕、アメリカの歴史あるピアレビューの世界はすごいなと思って感心したのは、根底に流れているのは、インテグリティーなのです。他者の評価じゃなくて、自分たちがちゃんとメタ認知して、悪いところを直していこうというメカニズムがないと、絶対よくならない。だから、そこの大学、短期大学が自らよくなるような、そういった仕掛けをサポートするというような形で動いていて、一番大事なのは、よく見せたいというのが人間の心理ですから、うその情報とか、ちょっと修正する情報を公表するところがあるのです。
そういったところには、ちゃんと注意が行って、あまり言うことを聞かないと、サンクションになるわけですけれども、そこは物すごく厳しい。だから、これはさっきAIの話も出ましたが、インテグリティーというのをきちっとベースに置いておかないと、何でもかんでも自分の手柄のようにして、結果だけ上げていると、その場はいいかもしれませんけれども、長い目で見たときは絶対駄目ということで、教育の根幹はそこにあるかなというふうに思っている一人です。失礼しました。
【伊藤部会長】 ありがとうございました。では、オンラインで松下委員、お願いできますか。
【松下委員】 ありがとうございます。今、いろいろ話題になったこと、幾つか私も感じたことを申し上げます。1つは、学位のことなのですけれども、この部会では、認証評価というときに、学位単位と、教育課程とか、そういったことを質保証していくということになるのだと思うのです。
私、日本だけではなくて、国際的にもカリキュラム改革の動向を見ていったときに、1つは、こういう、今日本でやっているように、スリーポリシーみたいなものを決めて、入り口と出口を決めて、そしてその間のカリキュラムというのを非常に体系化していくことによって、その出口での質を保証していくという方向があります。
もう一方で、全くそれと対照的なのですけれども、先ほどちらっと小林委員がおっしゃった、4年という時間がちょっと長過ぎると。学位というのは、4年なり、6年なりで、学士課程の学位を考えているわけですけれども、もう少し小さく単位を区切って、特に社会人などが学んでくるときには、小さい単位の内容だけ学べればいいというので、マイクロクレデンシャルとか、オープンバッジとか、そういうのが日本でも広がりつつありますよね。この2つの相反するというか、1つは4年、6年というかなり長い単位で学位をしっかり保証していくということ、もう一方では、もう少し小さく単位を区切って、その一つ一つについて、その質を何らかの形で担保していくということ。
この2つがあって、「知の総和」というのを考えたときに、人の数と、人の能力の掛け合わせで決まるということなのですけれども、人の数がこれだけ、18歳人口、大学入学者数というのが減っていったときに、人の能力を相殺するぐらいに高めていくって、非常に至難の業だと思うのです。
そうすると、以前から言われているように、社会人をもっと受け入れることとかが必要になってくると思うのです。日本の社会人学生を見ますと、修士課程は結構多いですけれども、学士課程は非常に少ないですよね。これは、4年間という長さというのが大きくネックになっていると思うのです。そういうときには、先ほど言いました2番目の方向性、もう少し小さな単位を区切って、そこで質を担保していくということが、これまで以上に必要なってくるのではないかなというふうに思います。
多分この部会は、主には学位プログラムの質向上・質保証というので考えているのではないかなというふうには思うのですけれども、「知の総和」答申全体のことから考えたときには、そういうもう少し小さい単位での質保証というのをどうしていくのかというのも、課題になるのかなというふうに思いました。それが1点目です。
もう一つ、AIのことが何回か出てきました。AIは多分、特に中等教育にも大きな影響を与えていると思うのです。大学生はかなりAIを使うようになっていますよね。この学習成果というのを考えたときに、例えばレポートを、AIを使って書く学生、それから、特に語学の先生方は非常に危機感を持っていらして、AIを使うのが当たり前になってきた中で、語学教育の意義とか、それから、現状、語学教育、学習をどうやっていくかというときに、AIを抜きには考えられなくなっています。
この質保証・質向上というのを考えるときにも、学生の学習成果というのが、その中でかなり重要なポイントになる。その学習成果をどういうふうに評価するかというのを考えたときに、この学習成果を何らかの形で表わしたものを基に、私たち教員は評価をしていくわけで、そこにAIが絡んでくるわけですよね。なので、このAIの問題というのは、質保証を考えるときにも重要な課題であるというふうに思います。
多分、文部科学省の中の、大学分科会の下での様々な部会で、そういうAIの問題とか、先ほど言ったマイクロクレデンシャルの問題なども、多分議論されていると思うのです。この部会でできることはそんなに。先ほど挙げてくださった論点だけでもかなりのものですので、そういったところまではなかなか議論できないかもしれないのですけれども、部会間の壁をできるだけ小さくしていただいて、お互いに今どういう議論がなされているのかというのを横目に見ながら、この部会の議論が進められるようにしていただければなというふうに思います。
これまでも、大学分科会などでも、ほかのところで、初等・中等も含めてどんな議論がなされているのかということも情報提供もしてくださっていましたけれども、この部会レベルでも、ぜひそういうこともやってくださるとありがたいなというふうに思います。
以上です。
【伊藤部会長】 ありがとうございました。マイクロクレデンシャルは、留学生の受入れ、またはこちらから留学生を出すときもとても重要な問題で、今は、相手の留学した学生が帰ってきたときには、単位の読替え、または相手のシラバスなどをよく見ながら、自分たちの単位になるかどうかとかをやっているわけです。
そういうことも含めて、その一方で、3つのポリシーを考えると、外で取ってきた単位を活用できるのかということが、先ほど松下委員の指摘だったのだと、我々が理解している問題ですので、その辺のところも議論していければと思います。
ほかにはいかがでしょうか。林委員、お願いします。
【林委員】 今までの御議論を踏まえながら、冒頭で、各委員がしゃべったときの、私の申し上げたことをもう一回考えていたのですけれども。生成AIの話は、教育の手段、あるいは学習の手段としては、もう使わないわけにはいかない。それを基にして、どうやって、そういうのをいかにうまく使えるかという話になっていくのだと思うのです。
ただ、一方で難しいのは、生成AIが当たり前になった時代において、育成されるべき人材はどういうことかということを、それも考えるのは重要なのですけれども、ここで質保証・質向上といったときに、さっきも認証評価がスタティックだと言ったのですけれども、例えばディプロマポリシーを考えろと、認証評価で言うわけですよ。
大学はある種、今やっている教育を、ただ作文して終わらせている大学が多くて、認証評価という場面で、まさに今議論があったように、5年後、10年後、生成AIが当たり前になってきている時代において、どういう人材を育成すべきかというのを改めて考えて、ディプロマポリシーを見直して、カリキュラムポリシーを見直そうということをやっている大学があるかというと、私は認証評価と関わっている経験だと、ほとんどないなと思っているのです。
そういうものを、いかにちゃんと評価の中でエンカレッジできるかということを考えたほうがいいのだと思うのです。生成AIもそうですし、ほかのヨーロッパとかを見ていても、グリーンイノベーションが進むと、じゃあ、グリーンイノベーションが進んだ中で、次に求められる人材は、工学分野ではどうなのか、社会科学の分野ではどうなのかと議論をしているので、そういうことをちゃんと促せるといいなと思っています。
その点からもぜひ申し上げたいのは、認証評価の負担が非常に大きくて、負担軽減だって書いてあって、私は全くそのとおりだと思いながら、10年くらい認証評価に携わっていると、特に文部科学省さん、ずっと認証評価が始まって、期を重ねるごとに、大変だから負担軽減だ、基準を減らせ、ページ数を減らせと、ずっと言ってきているのですけれども、その結果何になったかというと、形骸化して、皆さん、教育現場には全く魂がなくて、何か書類を作って、規則を学内につくればいいのだという対応だけが残ったというのが、きっと今の認証評価の状態だと私は見ています。
この負担軽減を、いかに中身のある負担軽減にするか。中身のあるというのは、さっき冒頭で申し上げたように、ちゃんと教育を変えて、教育成果を実現するような形のマネジメントに転換できるようなことをやりながら、負担軽減なのだと。それは、どう負担軽減になるかといったら、日々のそういう教育改革の活動の中に認証評価が入り込んでいるというか、質保証がそこに入り込んでいて、改めて何かをするという状態ではないというのが、きっと負担軽減だと思うのです。
恐らくそういう状態に持ってこないといけないと思っています。だから、これ、負担軽減をかなり注意しながら議論したいなと思っています。
以上です。
【伊藤部会長】 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。オンラインの方もいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
松居さん、どうぞ。
【松居委員】 ありがとうございます。この資料の中でよく出てくる優秀という言葉が、どういう意味なのかなというのを考えながら、皆さんの議論を聞きながら。今、林委員がおっしゃったように、どういう人を育てるのかということを考え直さなければいけないということに通じるのではないかと思います。
何をもって優秀と言うのかというのは、決してGPAが高いわけではなくて、そもそも人間としてどうなのかみたいなこととか、あるいは、企業から見て、この人は我が社にとって優秀なのかとか、いろんな優秀の定義というのはあると思います。この辺りは、どういうふうに優秀というものを定義づけるというか、考えていくのかなというのは、先ほどの負担軽減の話ではないですけれども、どういう人間を育てるのかということに直結をするので、そのレベルでの議論が非常に重要なのかなと思いました。
以上です。
【伊藤部会長】 ありがとうございました。おおよそ議論が、相当活発な議論を。
では、日吉委員、お願いします。
【日吉委員】 すみません、ありがとうございます。今日、様々な委員の方々のお話聞いて、大変勉強になりました。1つだけ感想を述べさせていただきます。
やはり、先ほど委員長がおっしゃられたように、8割ぐらいの生徒が高等教育機関に入る時代において、実際、多様な生徒が入学してくるという中で、今後、高等教育機関がどう変わっていくのかというところは、すごく難しいなというのは感じました。
今、特に初等中等教育において大きな問題となっているのは、不登校の問題なのです。これがコロナ禍を経て、すごく今急増しています。こういった子供たちが、今後どんどん高等教育機関のほうに入っていくということも考えていかなければいけない中で、通信教育の在り方なども含めて考える必要があるのかなということ。
それと、先ほどエントリーシートみたいなお話もありました。高校側から言わせていただくと、例えば調査書の取扱いというものが、実際に大学入試の中でどのような取扱いをなされているのかというのも、すごく心配であります。実際に主体的な学びというものを、今、初等中等教育では一生懸命力を入れてやっているのですが、それが果たして大学においてどのように生かされていくのかみたいなところも、すごく気になるところであります。
そういったところがより可視化されてくると、生徒であるとか、保護者にとっても、より本当に偏差値だけでない選び方につながってくるのかな、なんていうふうに思っております。
以上です。
【伊藤部会長】 いかがでしょうか、ほかには。質向上のためにはお金がかかります。これだけは、実ははっきりと申し上げなければいけないということであります。大教室で、学生を半分にしてほしいと言われたら、それは、それほどではないですけれども、学費が倍になるぐらいの考え方を。例えば、もっとAIを自由に使えるようにしてほしい、もっとこういうことができるようにしてほしいと。学生と、先ほど言ったような、教員と生徒の比率を向上してほしいと。それをやらなければいけないとすれば、それだけ教育にお金がかかるということは避けられません。
今のアメリカのようになりたいとは決して思えません。あのように高くなりたいとは思いません。でも、非常に高い私立大学、アメリカは3割ほどが私立大学に通っている学生ですけれども、その学生たちの多くが奨学金をもらっているということも事実ではありますので。要は、安かろう、悪かろうというところからも脱出しなければいけないこともあるので、その辺に対する投資ということも、今後の日本の社会を発展させるために、あらゆる世代から支持をいただけるように努力していかないと。
質の向上を、何のリソースを増やさないまま行うというのは、非常に難しいということだけは、私も分かっておりますので、恐らく文部科学省の皆さんも分かっていらっしゃいますので、その辺のところも議論するかどうかは別として、まず最初に申し上げて、今回は議論をまとめさせていただきたいというふうに思います。
最後に、今後の本部会の開催日程について、事務局から説明をお願いいたします。
【花田高等教育企画課課長補佐】 本日は、活発な議論をいただきまして、誠にありがとうございました。
次回の部会は、5月26日、月曜日、10時からハイブリッド形式で開催を予定してございます。
以上でございます。
【伊藤部会長】 では、本日の議事を終了します。本日は皆様、ありがとうございました。
―― 了 ――