令和6年11月12日(火曜日)16時00分~18時30分
Web会議
(部会長)永田恭介部会長
(副部会長)大森昭生副部会長
(委員)吉岡知哉委員
(臨時委員)大野博之、小林浩、中村和彦、濱田州博、平子裕志、堀有喜衣、益戸正樹、松塚ゆかり、両角亜希子、吉見俊哉の各委員
(事務局)伊藤高等教育局長、浅野私学部長、森友大臣官房審議官、奥野大臣官房審議官、松坂文部科学戦略官、吉田高等教育企画課長、石橋大学教育・入試課長、桐生学生支援課長、佐藤参事官(国際担当)、三木私学行政課長、板倉私学助成課長、錦私学部参事官(学校法人担当)、髙見高等教育政策室長、北野国立大学法人支援課企画官、篠原私学経営支援企画室長、西リカレント教育・民間教育振興室長、氏原大臣官房文教施設企画・防災部計画課企画官、花田高等教育企画課課長補佐、疋田高等教育政策室室長補佐、阿久津高等教育政策室室長補佐、濱中国立教育政策研究所高等教育研究部長ほか
(意見発表者)尾花和歌山市長
【永田分科会長】 ほぼ定刻になりました。第12回特別部会を始めさせていただきます。
今日もウェブ参加の先生方がいらっしゃいます。マイクを使って御発言をお願いします。、ウェブ参加の先生方は自由に御発言できる環境にいらっしゃるという前提です。
それから、この会議の様子はYouTubeで配信しております。
最初に事務局から、資料等についてお願いいたします。
【花田高等教育企画課課長補佐】 本日は、ハイブリッド会議及びライブ配信を円滑に行う観点から、御発言の際は挙手のボタンを押していただき、部会長から指名されましたら、お名前をおっしゃってから御発言ください。また、御発言後は再度挙手のボタンを押して表示を消していただきますようお願いいたします。また、発言時以外はマイクをミュートにしていただくなど、御配慮いただけますと幸いでございます。
本日の会議資料は、事前にメールでお送りしているとおりでございますが、会場のiPadには、本日の会議資料をチャットにてURLをお送りしてございますので、紙の資料と併せて御活用ください。
以上でございます。
【永田部会長】 ありがとうございます。
最初に大変面白い試みをされています和歌山市の取組、「ふるさとで学び働けるまち」についてヒアリングをさせていただいた後に、答申素案について、御議論をいただく予定です。それから、先生方に任意でお願いしておりましたパッケージに対する個人的な意見についても御披露いただく予定です。
それでは、議事に入ります。最初に申し上げた和歌山市から御発表いただきます。本日は、和歌山市から尾花正啓市長にお越しいただいております。お忙しい中ありがとうございます。それでは、よろしくお願いいたします。
【尾花市長】 皆さん、こんにちは。和歌山市長の尾花でございます。このたび発表の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。和歌山市としては、大学を核に据えたまちづくり、地方創生に力を入れております。早速ですけど、資料のほう、説明させていただきます。
まず、1ページを見ていただきたいんですけれども、和歌山市は大学が全国の中でも非常に少なく、県外進学率が全国ワースト1位となっていました。左の下に表があるんですけれども、約9割の方が高校から大学進学時に県外へ行ってしまうという状況でした。そういうこともあって、特に18歳の人口、左の上に赤で書いているんですけれども、18歳ぐらいの高校から大学へ行く年になると、いきなりこの人口が減ってしまいます。そうしたこともあって、何とかこの和歌山に若者をとどめたい、そして学んでいただきたい、そういう思いがあって大学誘致に取り組みました。
2ページを見ていただきたいんですけれども、この少子化の時代にそんな大学が成り立つのかという御意見もあったんですけれども、今、県外へ出ていく中で、地方に必要な職種がなかなか人が集まらない状況になっています。特に看護師さん、理学療法士、作業療法士さん、これも今後の高齢化社会に必要ですし、薬剤師さん、また、ここには書いていないんですけど、保育士さんなんかも県外へ行ってしまってなかなか地元に戻ってきてくれない、そういう状況が続いて、有効求人倍率も非常に高くなって、そうした人集めに大変苦労しています。そんな中で、こうした学部・学科を誘致しようというところを、和歌山市では積極的にやりました。
3ページを見ていただきたいんですけれども、特に初期投資を少なくしようということで、1つはまち中の生徒児童数が非常に減った中で、小中一貫校化の中で、3つの小学校、中学校が閉校となりました。その校舎を生かしたいと。校舎も耐震化されていたので、その校舎を生かせれば、初期投資が非常に小さくなるんじゃないかということで、まず2つの小学校については、約6億、7億で大学仕様にできました。それと併せて工期が非常に短いというところが、校舎の教室の壁を変えるだけで済んだということもあって、ほぼ半年とか8か月で大学仕様に変えることができた、そうしたところも、初期投資と併せて大学誘致をしやすい原因だったと思っています。
そういったこともあって、4ページを見ていただきたいんですけれども、高校生の県外進学率ワースト1を脱却できました。これがいいかどうかあれですけど、今現在41位まで改善されています。それと併せてすごいなと思ったのが、県内就職率が物すごく上がってきました。市内に誘致した大学だけ取ると、右に円グラフがあるんですけれども、大体84%の方が県内に就職をしてくれるようになりました。今まで県外に出ていた方が、県内で84%も就職をしていただけるということで、まさに学と職が結びついた形になっていて、そうしたことが全体の県内就職率を上げることになってきました。和歌山市内には和歌山大学が一番中心にあったんですけれども、どっちかというと大阪寄りの郊外に移転してしまったこともあって、なかなか和歌山市内に就職するというところがなかったんですけれども、28%ぐらいだった市内にある大学からの県内就職率が、今42%まで上がってきました。まさにこれから最終の学びの場である高等教育機関が、地方創生に大きく貢献していただいています。
最後の5ページを御覧いただきたいと思います。特に在学中に地域との関わりが非常に近い、学部も学科もそういうまさに学と職とが非常に近いということもあって、地域の社会とのつながりが非常に強いということもありました。まず、子育てイベントなんかでは保育士さんの大学へ行かれた方、まさに在学中にいろんなボランティアで子育てイベントに参加していただいたり、まさに学びの場が、キャンパスだけではなくてまち全体に広がっている感じがします。それと例えば、理学療法士さん、作業療法士さんのところなんかは、市民の健康づくりにも貢献いただいている。そうした市民公開講座等を通じて、健康づくりにも貢献いただいている、社会とのつながりが非常に大きくなっています。
また、大学生で様々なボランティア活動、今、地域社会は高齢化でなかなか担い手がないんですけれども、様々なボランティア活動をいただいたり、祭りへ参加してくれて、やっぱりまち中への大学誘致の効果だと思うんですけれども、まち中ではいろんなイベントをやっているんですけれども、そうした中でも祭りへ参加していただいたり、在学中に地域とのつながりが非常に大きく、こうしたことも地域への就職につながっているんだと思っています。
あわせて世代を超えたつながりというところも、和歌山では和歌山城ホールという、学生たちも集まってもらえるような場所をつくっています。そうした場を通じて、中学生であるとか高校生、世代を超えた交流もなされていって、次から次へとそうしたいいスパイラルへ入っているんじゃないかなと思っています。
最終の学びの場である大学というところが、今後の地域の貢献、そして地方の創生に大きくつながっていくというふうに思っています。これからもさらに大学誘致等も進められれば進めていきたい、そんなつもりでおります。
説明のほうは以上でございます。よろしくお願いします。
【永田部会長】 ありがとうございました。まちづくりのために大学を連れてくる。それで変えるんだという、しかも成果も出ているという状況です。
それでは、御質問、御意見をお受けいたしますが、よろしいでしょうか。小林委員、どうぞ。
【小林委員】 御説明ありがとうございました。すばらしい取組で成果も出ていると思います。和歌山市で取り組んでいらっしゃるということだと思うんですが、県との関係性はどのようになっているのか。あるいは大学を統括する部門ってなかなか自治体ではないと思うんですが、どういった部署なり組織が、こういった大学を運営したり、このような交流などを統括する部門になっていらっしゃるのか、その2点を教えていただければと思います。
【尾花市長】 まず、県との関係ですけれども、ちょうど前の知事さんも非常に大学誘致を熱心にやっていただきました。例えば、医科大学に今まで薬学部がなかったんですけども、それも和歌山市の土地を使っていただいて薬学部をつくっていただけたということで、非常に県との関係は良好な形で進めてきました。特に県の場合は、在学生の支援、奨学金であるとか、そういったところの支援というところも考えていただいて、学生がやっぱり勉強しやすい環境というところを県と一緒に構築させていただいた、そういったところが大きいんじゃないかなと思っています。
部署としては、知事直轄の部署であるとか、あとは総合的なところ、もともとの教育機関を抱えているところ、そういったところ、それと教育委員会等と、いろんなところでチャンネルを持ちながらやっていましたので、どこという形じゃなくて、県とはかなり密に連携させていただきました。
【小林委員】 ありがとうございます。
【永田部会長】 そのほかいかがでしょうか。益戸委員、どうぞ。
【益戸委員】 益戸です。市長、どうもありがとうございました。特に4ページの、誘致大学の卒業生の県内就職率が84.1%になったというのは、すばらしい取組だと思ってお聞きしていました。今は人を集めてくる、県内就職を増やすという取り組みですが、今後、高齢化によって県内人口が減っていくと、必ずどこかで県内就職が増加から減少へ転じてくると思いますが、減ってきた場合は現在取り組まれていることに加えてどんな少子化対策をお考えになっているのでしょうか。
【尾花市長】 少子高齢化というところは、当初から大分心配はされていました。まず、我々としては、できるだけ少子化というところは食い止めたい。高齢化については、健康長寿という形で健康寿命を延ばしていきたい。そうした中で、今回保育士さん、特に少子化については、地域で保育士さんを今養成していって、子育てしやすいまちにすることによって、やっぱり東京一極集中であるとか、そういったところはできるだけ分散に持っていければということで、少子化を少しでも止めていきたい、そういう思いでやってきました。
また、高齢化については、健康寿命を延ばすという形で、その辺は今の理学療法士さん、作業療法士さん等、これも高齢者だけではないんですけれども、そうした取組によって、人口減少に少しでもブレーキをかけていく、それが今後の地域の大学を育てていく手じゃないかなと思っています。
【益戸委員】 ありがとうございました。
【永田部会長】 そのほか、いかがでしょうか。大森委員、どうぞ。
【大森副部会長】 御発表ありがとうございました。感動しながらお聞きしておりました。ありがとうございます。
2点、お話しいただける範囲でもちろん結構なんですけれども、今回3つの私立大学を誘致をされていらっしゃいます。例えば、議論のプロセスの中で、市立大学をつくるという議論があったかどうかとか、それから、議会とかとのお話の中で、私立に市費を投資していくということに対してコンフリクトがあったのかどうかとか、お話しできる範囲で結構です。それが1点。
それからもう一つは、今設置ができて、今いい感じになっていますけど、設置だけじゃなくて動いている現在、市と大学、ほかの大学もあると思うんですけど、とのプラットフォームみたいなものができていたり、市の予算で支援する部分があったりという関係性はあるのかどうか。運営に関しての連携というか、その2点をお聞きできればありがたいと思います。
【尾花市長】 まず、市立大学については、今回あまり考慮に入れませんでした。というのは、やはり既存の大学はそれぞれ専門の先生も抱えていられるし、やっぱりノウハウを持たれている。既存の大学の学科・学部を誘致したい、それがやっぱり安定性もあるし、即戦力にもなってくる。そうしたこともあって、市立大学で一から教員さん集めてというところは、あまり考えなかったと思います。
もう一つは運営についてですけれども、運営については、今、できるだけまち中への大学、人数自体はそんな大きくはないので、そうした学生たちが交流しやすいような場をつくる。それと、すぐ職業につながるような、先ほどもちょっと申し上げたんですけど、そうした社会との関わりの中で養成、育成できるような、そうしたところの支援というところはさせていただいていて、今例えば学生間を結びつけるようなところは、フロンティアセンターというところを設けています。それと集まるような、交流する場所というのは和歌山城ホールという形で、そういったところをできるだけ無償で使ってもらえたりとか、そういう交流の場にしたり、そういう面ではやらせていただいているのと、地域で職を求められている企業さんとは奨学金という形で半分半分出し合いしながら、奨学金制度というところもつくっています。
以上です。
【永田部会長】 ありがとうございます。
吉岡委員、どうぞ。
【吉岡委員】 ありがとうございます。大変面白い御報告でした。
1点伺いたいのは、現段階でいいんですけれども、県内出身者の学生と県外から入ってくる学生の割合と動向、今後どうなっていくのかなということが1点と、それに伴って、学生支援で、例えば住居であるとか、食費であるとか、そういう支援みたいなことを考えておられるかとか、あるいは現にやっておられるのかという、県外関係というのはどうなっているのか、ちょっと教えていただければと思います。
【尾花市長】 ありがとうございます。今は県内のほうが多いです。多分まだそれほどPRできていないところもあって、県外から来られる方より、はるかに県内の方のほうが多い状態です。
それと例えば学生支援という形であれば、例えばシェアハウスの補助金、支援金をつくったり、学生がまちの中で住みやすい、特にまちの中の大学ですので、まちの中に下宿しやすい、あるいは住みやすいようにシェアハウスのそういう形の支援というのはさせていただいています。
【吉岡委員】 ありがとうございます。
【永田部会長】 そのほかいかがですか。
中村委員、どうぞ。
【中村委員】 ありがとうございました。いま設置されている2ページにある専門人材の養成は比較的生活に密着している職業であると思います。和歌山大学は比較的文系の大学だと思いますので、例えば理系の人材養成は考えられたのか。あるいは今後、考えていくのか。あるいはそういう要請があるかどうか・ということを教えてください。
【尾花市長】 理系、実は喉から手が出るぐらい欲しいところなんですけれども、アクションを起こしても理系の大学で来てくれるところはなかなかない。一からつくれば別なんですけれども、既存の大学で理系で入ってくれるところというのは、今のところ見つけられなかったのが現実です。
【中村委員】 ニーズはあるというふうに考えていらっしゃる。
【尾花市長】 ニーズはあると思っています。和歌山は非常にものづくり産業が得意で、金属、機械、また化学というところがすごくあって、非常に高度な技術も持たれているので、ニーズは非常にあるんですけれども、なかなか理系は呼べない。
【中村委員】 ありがとうございます。
【永田部会長】 よろしいですか。私から1つだけお伺いいたします。お招きした大学の学費の設定というのは、一般的な学費の値段ですか。
【尾花市長】 はい、そのとおりだと思います。特に高いとかそれはなくて、一般的だと思います。
【永田部会長】 だとすると、我々がアクセスで言っている地理的な問題と、それから経済的な問題という中で、現況であれば、経済的に払って入れるという学生さんがたくさんいらっしゃるということだと思うのです。
では、ほかになければ、市長、どうもありがとうございました。大変参考になるお話でした。
【尾花市長】 よろしくお願いします。ありがとうございました。
【永田部会長】 尾花市長は公務のため退席されるとのことです。どうもありがとうございました。
良い話を伺ったと思うところであります。本題に入りますが、進学者の統計の見直しをしましたので、まずはその説明をしていただきます。
【髙見高等教育政策室長】 それでは、お手元の資料2を御覧ください。資料2、少し今、見えにくくなっておりますけれども、進学率・進学者数推計結果という青いペーパーです。
昨年夏の大学分科会におきまして、将来の進学率・進学者数の推計を示しましたが、その後の少子化の状況を踏まえ、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計を出生中位・死亡中位から出生低位・死亡低位に変更し、新たに再度推計を行ったものがこちらの資料となっております。
上の表ですけれども、外国人留学生が現状のままであった場合、下の表がJ-MIRAIという政府目標がございますが、そちらで示した外国人留学生割合が2040年まで継続した場合の数となっております。まず、上の表を御覧いただければと存じますけれども、2021年時点の18歳人口が114万人であるのに対しまして、5段ほど下の大学入学者数を見ていただきますと、約62万7,000人となっております。これが真ん中より少し右側、2040年には約46万人と大きく減少する見込みです。昨年示した推計では、2040年時点で51万人でしたので、さらに約5万人減少するという試算となっております。また、2035年までは、この大学入学者数約60万人前後で推移しますが、2035年から2040年にかけて大幅に減少します。つまり、今後の10年間の間に、現在議論いただいている質、規模、アクセスといった課題について、国等における制度や予算はもとより、各大学において関係者に御理解いただき、また、将来を見据えた計画、実行までを着実に行っていくための期間が10年程度しかないといったことが分かるかと存じます。
下の表につきましては、留学生割合が伸びた場合という仮定でございますけれども、その場合でも2040年で約48.5万人にとどまり、2021年度時点の約62.7万人から大きく割り込む推計となっております。つまり、留学生の数が仮に大幅に伸びたとしても、少子化のスピードはそれ以上のスピードで進行していくといったことになります。
2ページ目ですけれども、先ほど申し上げたことをグラフで示したものとなっております。また、3ページ目以降は、都道府県別の数を示したもの、さらに7ページ目以降でございますけれども、試算の根拠を示しておりますが、本日は時間の都合上、説明は割愛したいと思います。
先生、そのまま続けて次の説明よろしいでしょうか。
【永田部会長】 お願いいたします。
【髙見高等教育政策室長】 続きまして、資料3を御覧いただきたいと存じます。急速な少子化が進行する中で将来社会を見据えた高等教育の在り方についてということで、答申の素案という資料です。
今年8月に中間まとめを取りまとめていただきましたが、その後、関係団体のヒアリングや委員の皆様からいただいた意見を踏まえまして、事務局において追記したものを答申素案という形で示しております。特に大きく変わったところを中心に説明をいたします。
3ページ目を御覧ください。中間まとめでは、今後の高等教育の目指すべき姿の前に、近年の社会や高等教育を取り巻く変化、また、これまでの高等教育政策を記載しておりましたが、これらは一番下の注釈に少し書いておりますが、補論として51ページ以降に移動し、そのエッセンスのみを3ページから4ページにかけて掲載しております。その後、4ページの中段中ほどの「知の総和」の維持・向上、これが今回の大きなキーワードになっておりますけれども、ここから15ページまでは大きな変更はございません。
続いて、16ページを御覧いただきたいと存じます。16ページ、2.の一番上でございますけれども、今後の高等教育政策の方向性と具体的方策、この章につきましては、質、規模、アクセス、それぞれの観点から、記載の充実を図っております。具体的には、16ページの下段から17ページ冒頭にありますとおり、1、学修者本位の教育の更なる改善として、アを学びの質を高めるための教育内容・方法の改善、そして19ページにはイとして、新たな質保証・向上システムの構築として、構造をより細分化するとともに、少し前に戻りますが、18ページの枠囲いの中で具体的方策を示しておりますけれども、この中では制度改善の実施をすることなど、今後どのようなことを行っていくのかをより明確に記載をしているところです。
同様に、20ページ以降になりますけれども、多様な学生の受入れ、また、21ページ以降には留学生の受入れの推進、23ページには社会人の学びの場の拡大、24ページには通信制教育課程の質の維持・向上について記載を充実しております。また、25ページ中ほど少し下の部分ですが、大学院部会で議論いただいたことも踏まえまして、大学院教育に関する記載を大幅に追記するとともに、29ページ以降になりますけれども、これまで記載していなかった研究力の強化につきましても、大学が教育と研究を両輪で進めることが必要であることなど記載を充実しているところでございます。
続きまして、33ページからになりますけれども、高等教育全体の「規模」の適正化として、記載を追記、修正しております。特に33ページの下段以降にございますように、1、高等教育機関の機能強化といたしまして、次のページ、34ページの枠内にありますとおり、意欲的な教育・経営改革を行うための支援、また、高等教育機関間の連携の推進について記述を充実するとともに、次のページ、2の高等教育機関全体の規模の適正化の推進としまして、厳格設置審査の実施、また、36ページに移りますが、再編・統合の推進、さらには縮小・撤退への支援について記載を追記しております。
また、36ページの下段からは、高等教育への「アクセス」確保といたしまして、38ページの枠内にありますけれども、地域の人材育成・アクセス確保につきまして議論を行う場の構築、また、議論を行う場において検討を促すための仕組みの整備、また、その地域にとって真に必要な一定の質が担保された高等教育への支援などについて記載を充実するとともに、39ページのイ、中ほどですけれども、都市から地方への動きの促進、先ほどの和歌山市のような例もあると思いますけれども、こういった内容についても新たに大幅な追記を行っております。
また、40ページでは、社会経済的観点からのアクセス確保といたしまして、個人支援、あるいは社会的観点からのアクセス確保について、記載を充実しているところです。
続いて、42ページを御覧いただきたいと存じます。3.期間別・設置者別の役割や連携の在り方といたしまして、機関別では大学・大学院、短期大学・専門学校等の役割、また、44ページの下段からは、設置者別の役割として、国立、公立、私立の記載がありますが、ここの部分につきましては、中間まとめからほとんど変更を行っておりません。前回の特別部会では十分に御議論いただく時間を確保できなかったため、46ページの下のほうでございますけれども、点線の枠内に、本日特に御議論いただきたい点といたしまして、機関別、設置者別の役割・機能や連携の在り方とそれを踏まえた具体的方策について、1つのバーに書いておりますけれども、国公私立大学の役割・機能や連携の在り方を踏まえた規模の見直し、また、連携・再編を促進するための方策、さらに機能別の観点を踏まえた役割や連携の在り方について、論点として提示をしております。後ほど意見交換では、ぜひこの点について御意見をいただき、さらなる記載の充実を図っていきたいと考えております。
また、48ページになりますが、4.高等教育改革を支える支援方策の在り方といたしまして、(1)の1では、高等教育の政策、2で高等教育への信頼、また、3として必要なコストの算出の必要性、こういったことについて、これまでの議論を踏まえて追記をしております。その上で、先ほどの3.の機関別、設置別の論点と同様でございますけれども、前回十分に御議論いただくことができなかった点について、49ページの一番下の部分でございますけれども、本日特に御議論いただきたい点としまして、公財政支援、個人・保護者負担、社会からの投資の在り方について、短期と中長期に分けた上で、その下に掲げている3つの観点、すなわち機関補助と個人支援のそれぞれの特徴を踏まえた公財政支援や基盤的経費助成と競争的資金配分による支援の在り方、また、個人支援による家計負担の適正化を前提とした高等教育の社会的・私的便益を踏まえた授業料を含む個人・保護者負担の在り方、そして企業等からの寄附金、社会や地方公共団体からの投資の拡大など、多様な資金調達を通じた経営基盤の確立・強化方策の在り方について、さらにはその下、50ページですけれども、社会からの信頼の確保方策、これらについて、本日この後、ぜひ御議論をいただきたいというふうに考えております。
なお本日ですけれども、先生方のお手元には冊子でお配りしておりまして、参考関係データ資料集を配付しております。特に追加した内容といたしまして、めくっていただきますと、参考データ集の(1)1-7から9にかけて、世界の人口推移に関するデータを追記しています。また、(1)の2-9では、日本の産業別就業者数の将来推計のデータというのを追加しております。さらに(2)の3-17から21にかけまして、県別の進学者と自県、他県への進学率の関係を整理したデータというのも追加しているところでございます。こういったものを参考いただきながら、この後、ぜひ御議論をいただければと思います。
私からの説明は以上になります。よろしくお願いします。
【永田部会長】 ありがとうございます。今からやり残した宿題をやった後に、いよいよ「素案」から「案」に変えるために、それぞれ先生方から任意に1ページの資料を提出いただいたので、それを説明していただき、議論をしたいと思います。まず、最初に話したいことは前回話せなかったことです。46ページの一番下段をご覧いただきますと、ここに国公私立大学等の役割・機能や連携の在り方を踏まえた規模の見直し、連携・再編等を促進するための方策、それから機能別の観点を踏まえた役割や連携の在り方、これについて具体的にどういったことを考えていけばよろしいかということを述べていただきたいと思います。
何を言っているのか分からないところがあるかもしれませんが、国公私立、それぞれおおむね幾らか役割が違う、あるいは目指しているところが違うのは御存じのとおりだと思います。先ほど申し上げたように、ただ地域において取り分けて、これらがばらばらにやっていて本当に地域のアクセスを確保できるかという問題があった、どのように確保するかというのが、多分一番重要な問題です。
これが一旦終わった後に、もう1つお金の問題を話すので、今ここで地理的な、物理的な意味でのアクセスを保障するのに、国公私立の役割を見据えた上で御意見をいただけるという観点でございます。いかがでしょうか。
皆さん、なかなか語りにくいでしょう。ですから、このようなことを言えばいいという事例を1つ申し上げると、例えば、地域でコーディネーターを置きましょうという話があったと思いますが、具体的にコーディネーターが誰であり、あるいはどのような人をどこに配置するのかということが非常に重要なわけです。そうしたときに、国公私立の役割を踏まえて、どのような意見が可能なのかということです。それは自治体がやればいいといっても、先ほどの和歌山市のように良い試みをされているところでも、専門の部署というのは基本的にはありません。いろいろなところで何とかやりくりしてやっているということです。それでやっていられるうちはいいとしても、本来はそうではありません。
それから、大学そのものがそういうことを牽引していく塊ができていかなければいけません。そういうことというのは、中村委員がおやりになっているにしても、連携等法人の枠組みをもっと強化していったときにいろいろな先生たちが国公私立から集まって、マネジメントをつくっていこうとするだろう。そういうときに、国公私の役目というのはあるのだろうと思います。地方自治体の要求だけを飲むのであれば、公立が主体になるべきだろう。それから、学問の精神にのっとってというのであれば私立にたくさんあるのだが、国全体の少子化の問題点は国立だってきちんとやらなければいけないということなので、イメージとして、どうしたら一番地域地域でよい連携の核ができていくかということを一番お考えになった上で、その役割というのは多分あるのだろう。
言いづらいだろうと思うので、例えば研究大学がある。それから、コミュニティーカレッジに近い地域のニーズに根差した大学がある。それであれば、どういう協力の仕方をすればいいのだろうかというようなことです。それは地域に両方あったほうが良いと思うのですが、具体的に考えない限り進まなくて、この文章の書き手も多分ここで書けなくなっていると思うのです。なぜなら分からないわけです。コミュニティーカレッジというのはもちろん普通の四大も、それから短期大学も含めて話し合って、こういう人を受け入れるとなります。だいたいで申し上げると、例えば、全体で定員を設定して、入学試験を行って、それぞれの大学のアドミッションに合わせて学生を採りました。しかし、勉強してもできない子ととてもできる子がいた。それはコミュニティーの中で動けばいいのではないかということです。ここまでできたら、もっとこちらの専門をやればいい。どうも出来が悪い、もう1回叩き込み直さないといけないのであれば、そういうところを専門にしているところに移ってもいいだろう。そのようなことをやるのであれば、一体どういう体系がいいか。先ほども理系が必要かという質問がありました。それは多分、全体で総合大学みたいなことになったら和歌山にとってはいいだろうという御意見の裏返しだと思うのです。そうすると、そういうものをどうやってつくるかということです。
大森委員、どうぞ。
【大森副部会長】 言いづらいというか、この後、発表しようと思っているのがそれだったので、どこまでネタバレの話をしたらいいのかなという。でも、中村先生とほぼ同じ内容を話すことになると思うんですけど、やっぱりコーディネーターをどこがといったときに、雇用する母体みたいなものというのは地域で絶対置かなきゃいけなくて、その名称は何でもいいんですけど、何とか機構みたいなものが置かれて、そこの中で地域全体のことを考えるコーディネーターがそこからお給料をもらいながら動けるという体制を取っていくということが妥当なんじゃないかというふうに、私はイメージをしています。
それで、さっきの和歌山のお話がすごく参考になったのは、やっぱり地域で求められているニーズというものをきちんと出しながら、どこで何人、1の位まで出す必要はないかもしれないけれども、そういうことを踏まえながら、お互いにそれはうちでやるよ、それはおたくでやってねというようなことをやりながら、地域のアクセスをちゃんと確保していくし、地域産業の人材確保ということにも資するようにしていくということで、そういうものをつくっていかないと多分駄目で、そこにもかなり、それは今度は自治体からもかなりお金を出しやすくなる機構だと思っていますので、様々な財源を使って、個々の大学の機関補助もしっかりやらなきゃいけないし、個人補助もしっかりやらなきゃいけないけど、この大学にだけって実際すごくやりづらいところがあるけれども、その機構に対してしっかりと運営費を出していくということは、かなり理にかなったやり方になるんだろうなと思っているので、そういう方向なのかなということをこの後お話ししようと思っていました。
【永田部会長】 ありがとうございます。多分和歌山で欲しいのは、デジタル人材育成の先生や学部が欲しいのだろうと思うのですが、今はないのです。中村委員、どうぞ。
【中村委員】 大森先生が言われたとおりなんですけど、根本的に思うのは、大学そのものに危機感がないということです。大学のトップが集まって話をしているんですけど、なかなか実感してもらえないということです。
さらに、地域が大学で何やっているかということをまだ理解できていない部分がある。つまり、大学のシーズ、どういう大学がどういう人材養成ができているかとか、どんな研究できているかということをなかなか理解してもらえないということです。
その上で、地域のニーズをしっかり大学側が受け止めて、そのシーズを変えていくとか、足りないものをつくっていくことが大切であると思います。そのためには今、連携等推進法人など、いろんな仕組みをつくりながらやっていくということが必要だと思います。
ただ、後ほどお話しますけど、地方創成を推進する組織を外枠でつくらないと駄目だと思います。こうした組織は、自治体につくるとか、大学だけがつくれるわけではないので、例えば企業と自治体、企業と大学がつくっていったものを自治体がきちんと把握しながら推進していくことが大切です。
その取りまとめをするコーディネーターをどうするかということが一番問題だと思います。たまたま山梨大学には、行政も企業のこと大学のことも理解されている方がいるので、その方が適任であると、私は考えています。しかしこの方も、いつかは引退されるんです。しっかりとコーディネーターを育成していかなければならない。コーディネーターを育てる土台というのは、やっぱり機構つくって、企業側から来た方でもいいし、自治体から来た方でもいいし、そういうことに興味あって、地域を元気にしていこうと思う人をコーディネーターとして養成しなければならないということを、後でまたお話します。
【永田部会長】 皆さん大体同じことを考えています。もっと具体的に申し上げると、一番大きい大学が頑張ればいいのだと思います。国大協であっても、大きな大学であれば全国大会を開くこともできるが、小さい大学だと人数も足らないし、実際できません。それなりにサイズ感があるところでないと、そこはかなりの持ち出しもあるでしょうから、そういうものだと思います。小さいところがいくらやろうとしても絶対にできないことはあると思います。
ですから、例えばうちの大学はこの分野とこの分野とこの分野を出します、この大学はこの分野を出しますといったときに、まずは一番分野の多いところが少しは責任を持って頑張りなさいと。国立と申し上げているわけではなくて、国立でも協力しないところは多分あります。また、学部の壁を越えるのはもっと大変なので、ほかの大学とやるほうが簡単だというのはいくらでもあります。国立だからといって別に大きいわけではありません。私が申し上げているのは、欲しい分野を考えたときに、その分野をたくさん出せるところが中心になってやはりやるしかないのだろうということです。そういう具体的なことを今おっしゃっていただかないと、先を書けません。みんなでこうしたらいい、ああしたらいいで終わると思います。そうなっては多分壊滅してしまうので、やはりその仕組みを文部科学省はもう始めないといけません。それに向けた取組を、あと10年待って始めたでは間に合わないので、今からその準備をしていかないといけません。
例えば、COEのような仕組みで今度は違うパターンの似た形で組まないと申請は採択されませんという仕組みをきちんと組んでいけば、徐々になっていきます。極端に申し上げると、人の資源とお金の資源がそこには投入されますから、それは自分勝手にやってくださいという意味ではなくて、どこかが汗をかかないと多分駄目なんだろうと思います。
【大森副部会長】 今、部会長、国立大学とは限らないというお話だったんですけど、ここの設置者別のところの書きっぷりでいくと、国立大学は公私立大学や地方公共団体とも連携しつつ高等教育機関の発展を牽引し、各地方において求められる役割、責任を果たす。牽引するという役割が国立大学にはあるのだというのをここに書いていくとすると、私学人が言うのは仕事を投げるようで、いや、やっていいならやりますけど、投げるようで申し訳ないというのもありつつ、また、私学の矜持をどう考えるかって怒られそうなところもあるんだけれども、やっぱりその地域にあって一番核になる、それは国策として各県にも置いているというところを考えると、やっぱり国立大学が地域の大学に声をかけて、中村先生されているように連携をして、このスキームを組んでという役割を担うんだということを明確にして、できればどの県においても、それを国立大学がやるという下に、私学のほうも柔軟に一緒にやろうと言っていくという、そこが明確に。誰やる、誰やると言っているうちに10年あっという間にたつと思っているので、これはもう国立大学の役目なんだ、それに私学はこういうふうにして柔軟に対応していこうというのを言っちゃったほうがいいんじゃないかという気はするんですけれども、どうなんでしょう。
【永田部会長】 益戸委員、どうぞ。
【益戸委員】 部会長が国立大学、大きいところがリーダーシップを取るというお話をなさりましたが、それはそのとおりだと思います。同じ県の中には国立大学も公立大学も私立大学もあります。国立大学ができること、公立大学ができること、私立大学だからできること、分野やレベルの違いがあります。国立大学にとっては、それは分野やレベルがちがうのでと困る事もあるでしょう。そこはしっかり私立がやらないといけない。協力の議論以前に国立、公立、私立の壁が明らかに見えます。まずこの協議体を壊してこの壁を取っ払わないといけないのではないでしょうか。
少子化が進行していく中で、地域で苦労していくのは、県民であり地元企業でもあります。企業側は、少子高齢化に向かっての新しいビジネスプラン作りを既にスタートしているところがあります。
遅れを取っているのは教育界かもしれないですね。一番遅いところが地域社会でイニシアチブを取っても効果は限定的です。早くアカデミアの皆さんが壁を取っ払って、より現実的な議論を開始する事が大切だと思います。建学の精神という言葉が何か邪魔していると思うのですが、企業にも創業の精神があります。例えば、ある大手百貨店は350年前からあります。当時は呉服商からスタートして、お客様第一を創業の精神として時代の変化に合わせた創意工夫による変革を繰り返して、現在の大手デパートになっています。常にその時代時代で、お客様第一主義に基づいたビジネスを展開した結果です。
建学の精神を大切にするのは重要ですが、少子高齢化における建学の精神に基づいたやり方は何なのだろうかと考えたとき、壁を取っ払ってみんなで協力をしないといけないのではないですか。全国にある協議体は、今までは年に1回か2回か3回しか会合を持たず、メンバーは名誉職の様な方がずらっと並んでいた。そもそも論のところからやり直さないと、いけないと考えています。
そしてもう一つ、文部科学省はこの協議体に入らないといけないと思います。文部科学省が予算を確保してくる責任があるからです。以前から申し上げていますが、改革には費用がかかります。支援をするという言葉遣いは良いですが、支援はお金を出すということです。人を出すというのも給料を払わないといけないわけですから。ですから、協議体の参加者全員が新たな責任分担をもう一度考え直してやり直すということが、重要であると思います。
【永田部会長】 ありがとうございます。ここに書いてある役割云々は、対象校種と、それから具体案とありますが、これは次の財政措置のところをクリアしないとできません。連携等法人に入ったところは全部単価を同じにするとかとなって、そのとききっと枠がなくなります。もう国公私立関係なく授業料同じになりましたとなった随分変わると思います。
ここで言っているコーディネーターとかお互いに協力し合うというのは、今申し上げたように要は産官学です。産業界も地域も官も全部関わらないとできないに決まっています。それを今度はどこの大学がというのが嫌であれば、今度は仕組みのほうで、例えば連携等法人に入ったところは全部学生の授業料同じですみたいになったとすればもう何もありません。あとは同じ勝負だし、同じだけでしょう。そういうバリアがたくさんあるから、なかなか入っていけません。なぜなら、100万円の授業料のところと50万円の授業料のところが学生を出し合うとかなったとしてもなぜとなります。先生のタスクが違うではないか、給料がなぜこんなに違うのかと。都内だと私立のほうが高くて国立が安いが、地域に行くと私立のほうが若干安いみたいなこともあって、そういうのが次のセッティングになっていて、ここはそこに行き着く前に、結論としては、多分今、益戸先生がおっしゃったように、それぞれの役割もあるし目的もあるのだが、協力できるところは全部やらなければいけません。
そのときに、地域の官、つまり地方自治体、それから産業界、それらが牽引していくのだから、そこにきちんと参加しなさいという意見であり、そこに文部科学省が入るということだと思います。
ですから、国も自治体も産業界も、それから国公私立も関係なく入ってやります。次の問題は、国公私の壁を破るために必要なことが多分あって、水準とおっしゃいましたが、私はほとんど経済学なのだろうと思っています。補完をお互いにできれば、先ほどのように、例えば作業療法士が必要だというのを国立は多分持っているところはあまり多くないのですが、設置できるわけです。そういうのは国公私で随分違ってはいるのだが、それは結局経営基盤が違うから、お互いになかなかうまく手が握れないところがあるのでしょう。
次のところでまた話せばいいと思いますが、ここは皆さんとしては、国公私立がそれぞれの長い歴史を背負ってここにいるということで、新しい時代に向けて、今までとは違うミッションを持つと書けばいいのではないか。ですから、こういう制度も地域のことも当たり前です。それから、建学の理念を大切にするが、協業するときに先に縛りにしてしまったらできないでしょう。公立は難しいところが若干あるのは、知事さんの、あるいは市長さんのという部分がありますが、そこは砕こうと。
次を話してみるともう少し進むと思うので、連続して話していただいて結構ですが、次は公財政支援、個人・保護者負担、社会からの投資について、短期、中期、長期で考えましょうということです。機関補助と個人支援のそれぞれの特徴を踏まえた公財政支援や基盤的経費助成、個人支援による家計の負担の適正化を前提とした云々、企業からお金をどのように入れるか、社会からどのように入れるか、そういう話です。
これも皆さんに1ページで書いていただきましたパッケージを見ると、はっきり申し上げてとても遠慮をされて書いていて、ここはよくないと思っています。そこで思い切ったことを書いてほしかったのですが。例えば、財政と関係あるのは、やがて25%減ります。それは我が国で考えたら、25%分の教員の人件費が減るので、それだけいなくなってしまいます。そういう国にしていいかという議論です。教員という言い方が悪ければ、研究者が25%削減されます。それは困ります。一方で研究力強化しなければいけない、社会貢献もしなければいけない、ということは、25%分全部授業料を上げますと私は堂々と言えばいいと思います。それを誰が払うかという問題は別問題ですから。まずは大学にお金がかかりますと言わなければなりません。物理的アクセス、経済的アクセス、規模、それから教育の中身とあったわけですが、矛盾しそうで時に難しい問題です。しかし、全部解決しないといけないわけです。
しかし、例えば今の規模の問題で縮小しました、それはしようがないです、25%減るので、平均で考えたら、日本中の国公私立の大学が減るわけです。25%学費が得られないので。そう考えているとしたら、その分25%研究力低下になりますから日本は絶対に滅びます。それではいけません。では、誰が負担するのでしょうか。それでも個人負担なのかという問題は、そこで初めて議論すればいいと思います。個々の問題ではありません。個々の大学が、人が減って経営が苦しいではなくて、日本として高等教育に25%投資が減る、つまり財力が下がります。それでいいわけがありません。そういうふうに考えたときに、それは国公私立関係なく同じです。これを何としてでも今以上に増やさなくではいけないわけでしょう。
ですから当然、個人負担だろうが何だろうが、とにかくまずは例えば授業料を1.25倍にしないといけない。払うのは誰ですかという議論をそれからしましょう。必要ないと言ってしまったらそういう議論になりません。皆さん遠慮されて、それぞれの大学を背負っている方が書かれている感じが若干あって、思い切って言えないのです。
しかし、ここで言わなければいけないのは、公財政支出、個人補助、いろいろありますが、これをどうするか。例えば、学費が免除になりました、あるいは学費無償化しました。皆さん御存じのとおり、無償化というのは今の基準値までで、残りは相変わらず徴収されるわけで、例えば国立であれば約54万、それから私立であれば約70万です。それ以上高いところは個人負担です。それが多分無償化の中身だと思います。それでいいのかということです。それでは少しも無償化になってないという意見もあるだろうし、そうではなくて、それではもう足らないでしょう。いいですか、ここでその状況になったら、今言った25%はさらに削減状態になって、2040年になったときに、お金は完全にありません。大学は先生を25%カットしないといけません。それを皆さん本気でそう思っておっしゃっているのかどうか、私には分かりません。授業料をその分だけ上げましょうと書かれている方がいらっしゃらない。ですから、私は、不思議だったのです。
パッケージというのはそういうことです。どこかが要るのでどこかができないというのはパッケージになっていないので、とにかくパッケージで全部解決しなくてはいけません。連携等法人も考えれば考えるほど難しいのはそこで、経済的に連携等法人をどうやって成立させるのか、これが一番の問題だと思います。これは国公私立だからできませんと言っているのであれば、もう議論は終わりです。そうではなくて、これを何とかしなければんいけないということだと思います。
パッケージはてきれいごとではなくて、今言った3つを矛盾なく、しかも3つとも充足できる方法を考えると今申し上げたように、お金について言えば増やすしかないと思います。アクセスは連携等法人がやるというのであれば、少なくとも経営権はなくても経営ができる状態にセッティングしないといけないでしょう。
それから、縮小はしようがないので、縮小していいではなくて、例えば日本人の定員を80%にこれから10年かけてしましょう、その代わり外づけで外国人は採れるだけ採ってみてください。そこは定員枠の外で数えますと言えば、別に頑張って100%でも120%でもいけるわけです。このように、フィージブルで、きちんとコンペティションをお互いに関わって頑張れるようなシステムにしないと、あそこも下がった、ここも下がった、冗談ではないです。絶対伸びていかなければいけないので、そういう方策をパッケージで考えなければいけないのだと思います。どこかだけがうまくいくのではなくて、もうここは隠せません。つまり、最後のパーツはどのように人数を縮減して、どのようにその人数分の知を取り戻すか。それから、どのように経済的にそれを成立させるかを考えないと、最後のパーツは書けません。ただ政府に支援しろと言っているのはナンセンスで、自分たちはこういうことをやるので、こういうことだからこうしてほしいというようなことだと思うのです。
後で伺います。1人ずついいことが書いてあるのですが、それはお金がかかるということはたくさんあって、きれいごとでは済みません。ぜひともここで公財政の支出、それから、無償化しても、大学に入るお金が増えるわけではないので大学は助かりません。個人補助、無償化するなどの経済的な支援と、大学経営はまた別物です。ですから、そこのところを間違えると、大学が経営できない無償化ができてしまったりする。これはゆゆしき問題なので、しっかりと考えないといけません。もちろん皆さんが大学にアクセスできるのは大変結構ですが、それで終わりではなくて、その時点でさらにもっと機関として教育研究が成り立つものに変わっていく方策をさらに考えないといけません。そうすると無償化ではなく、もっとたくさん学費を取らないといけません。そうすると、先ほどお伺いした和歌山市で、設定はどうですかと伺ったら変わらない、東京から呼んできても変わらないということです。まだ経済力が地域だってあるということはよく分かるわけですが、今後どうするのか。
あと十何年かたったときのことを決めようとしているわけです。ここでアイデアが中途半端であれば、パッケージが成立しないどころか崩壊してしまいます。ですから、はっきり要求するものはしなくてはいけないし、要求するために下りなければいけないところはきちんと下りなければいけないし、ここからはそういう問題だと思います。
というわけで、公財政支出、それから個人補助、個人と社会、誰が払うのということまで含めて、ご意見をどうぞ。私の意見は今申し上げたように、単に縮小してはいけない、学生は減るが、研究や社会貢献という観点から見たときに、大学の役割はますます増えるでしょう。そこを減らさないようにしないといけないと思います。そのように経済的なレベルを保たないといけません。。もちろん個人についての支援はウエルカムです。奨学金にしろ、それから経済支援にしろ、無償化もちろんウエルカムですが、それで終わっては駄目で、そこに機関が伸びていくための資金をどういうふうに調達するか、政府、社会、自治体から、また個人から支出いただかないといけないだろうと思います。
ほとんど申し上げてしまったかもしれませんが、どうぞ。
【大森副部会長】 答えが出ている感じが。じゃあ一応。部会長の問いに答える話にはならないかもしれないんですけど、正直に言うと、やっぱり今、もう1回ちょっと思考のスタートラインを引かなきゃいけないなと思っていて、みんなでということを自分は絵を描いておきながら、やっぱり個々の大学の経営という感覚から抜け出てなかったなという、話をしています。つまり、学費設定って、やっぱり高くすれば学生が来なくなるというところとのトレードオフ、どこが適正価格かというのを日々考えながらやっているので、これ以上高くできないという固定観念、これが相当こびりついてたので、削減をしたときに、人数を小さくしなきゃいけないということはもうデータが教えてくれるのでそうなんだけど、じゃあその減った収入をどうするかというところをみんなで分かち合っていこうねという話を次に発表するんだけど、だけど、そうじゃないだろうという話が、今、部会長からのお話だった。
例えば学生数が減っていって、教員数や設備が同じだったら、教育の質は上がるはずなんですよね。例えば、昨日とか財政審とかやっていて、学生減ったならST比も合わせろよみたいなことが書いてあるんだけど、そうじゃないだろうと。それだったら、よりいい教育ができて、「知の総和」がということを我々は言わなきゃいけないのに、減ったら減った分何とかしますのでみたいな感じの絵を私は描いていたという、今反省の弁を述べていますけれども、そんなことかな。
ただ一方で、高等教育への信頼というところはまだまだ我々がやらなきゃいけないというのと、あと、すみませんちょっと意見をつけるようですけど、国としてもというのが49ページの一番上の段落の最後にあるんですけど、ここも国としても各高等教育機関に対してとあるんだけど、各高等教育機関に対してだけじゃなくて、社会に対して国としても高等教育の必要性みたいなものをちゃんと、各大学がアピールしろよではなくて、国としてもこれは絶対必要なんだよということをやっぱり言っていかないと。この場合の国というのは文部科学省だけではなくて、例えば地方創生の観点から言えば、総務省も内閣府も絶対それを言わなきゃいけないし、それから、産業人材の確保ということで言えば、厚労省だって経産省だって言わなきゃいけない。大学なくなったらやばいんだよということを、国を挙げて国民にアピールしていくということを国の責務としてやっぱりやると書いてほしいなというふうには思っています。その理解を得ないと、昨日の議論のような意見が来るのかなという感じもあるんで、そういうことにちょっと思いは馳せました。ありがとうございます。
【永田部会長】 そのほかいかがでしょうか。新自由主義的にどんどん大学も稼いで頑張ればいい、それはコンペティションかけたらいいということであれば、そういう法制にしないといけなくて、中途半端です。伝統的な日本の税制体制を取りつつ、言葉では外部資金獲得と、自前でと言っていて、例えば、相続税1つとっても全然違うわけで、今は、かなり国が持っていく体制になっていますが、相続税控除はアメリカだととても多いので、亡くなったときに多くの遺産を寄附する方がたくさんいらっしゃるわけです。今おっしゃったことを切り返すとそういうことで、国がやるということを具体的に言うと、例えば今みたいなことです。税収が減るから簡単にはできないのでしょうが、、そういうことまでここに書かないといけないでしょう。ここに書くべきことは、国としてできることで例えば今のような税制改正だろうと私は思います。例えばです。
具体的でなかったら、これは、先へ進まなくて、国が今までと同じように税金収入から私学助成や運営費交付金などももちろん増やしていただきたい。それは年度予算で増やしてもらって頑張ってください。そうではなくて、根本的にいつまでもフィロソフィーと実際が合っていないのであれば、それを変えていかないといけません。日本はちょうど中間型です。個人負担と国の負担という国ですから、それに見合うようにつくっていかないといけません。
アメリカは完全に個人負担の国ですから、個人寄附を取ってきなさい。フランスは全部国が負担します。日本は中間型なので中間型の税制になっていかないといけないでしょう。中庸を取るような形というようなことを私は申し上げたいわけです。それが国の究極の参画の仕方だと思うのです。
社会に対しても同じように、国の策定も要りますが、おっしゃったように、社会が高等教育の価値を十分理解できてないのは社会が悪いのではなくて、やはり大学が悪いと思います。そういう大学側の努力が、十分足らないのだろうと思います。それは深く反省して、具体的にこれをやりますと書かない限り誰も信用しないので、財政に社会からの投資というのであれば、具体的にこれから大学はこういう情報の発信の仕方、あるいは社会とのこういう協業の仕方ということを具体的に書かないと、やはり信用されないと思います。どこまで具体的かというのは、もちろん程度があるでしょうが、大学も社会も一緒に絶対やりたいと思っていることがたくさんあるわけです。それが十分にどちらも発信できていないし、理解できていないのは、システムとして変えないと、いつまでも理解は深まらないと思います。社会から投資を呼び込むというためには、大学は相当努力しないといけません。
そのために、先ほどのように具体的なアイデアが欲しいです。税制については、本当に書き込んでほしくて、いつか教育に国民が支援しやすい形の税制をつくっていただけるといいと思います。
具体的になると嫌でしょう。アカデミアの人は金目の話をするのは違うというようなイメージがあるのでしょうが、大学は生き物ですから、きちんとエサを入れないと死んでしまいます。いかがですか。中村委員、どうぞ。
【中村委員】 今、永田先生のお話を聞いていて分かったのですが、なかなかそこの部分まで突っ込んで考えていませんでした。やはりこのままいくと、どんどんどんどん人数が減る、大学が減っていって、大学を出る卒業生が減っていって、そうなると国はどうなるのかということ、そこからのスタートだと思うんです。このままいくと本当に国が滅びるような状況になるかもしれないというところの危機感を持って、だから今、何が必要かということが多分必要だと思います。
危機感をあおることのほうが大事かな。とお話聞いていて思いました。人数が少ないから減らすということではなくて、日本を活性化するためにどうすればいいかということをしっかり考えた上での予算措置が必要なのかなと。この特別部会の中でも何度か出ていますけれども、文部科学省だけではなくて、総務省も、厚生労働省も、経済産業省も含めて、高等教育に関連するような省庁がすべて理解してもらわなければいけないと感じました。
【永田部会長】 そういうものだと思います。小林委員、どうぞ。
【小林委員】 今、中村委員おっしゃったとおり、前も私、申し上げましたけど、これから2040年には人口減少によって全国で1,100万人の労働者が不足して、大卒人材が金の卵になる時代になってきます。今でさえ大卒の採用計画を4割の企業しか達成できない、地方は2割台という中で、そうした未来に対しての投資をどのようにしていくかというのが、これからの課題だと思います。
現在、毎年1兆円程度医療費が増加しつづけているわけです。でも、それは重要ではあるものの高齢化に対応した支出増となっているわけで、必ずしも未来への投資として使用できていない状況だと思います。この審議会で共有いただいたデータでも、高等教育に関するの公財政負担がOECD38か国中、GDP比で下から2番目というのは、未来を支える人材への投資として明らかに低いと思います。高等教育に対する公財政投資をもっと増やしていくべきということを、我々はもっと強く言ってもいいんじゃないかと思います。つまり、国として未来への投資を増やしていくことを真剣に検討する時期にきているのではないかということです。
もう一つが、先ほど税制で言うと、ふるさと納税という仕組みがあると思いますが、それは自分が地元に納めている税金を、自分の意思で違う使い道を選択するということです。寄附の在り方でいうと、自分が国に使い方を任せて、国なり地方に納税していると思うんですが、自分で意思を持って寄附していくという文化を、もっと日本はつくっていくべきだろうと思っています。それは先ほどおっしゃっていただいたような、地域で、例えば日本でもカリフォルニア大学機構みたいな地域ごとに大学連携機構をつくって、そこに寄附する場合には、個人も企業も税額控除がされていくというような形で、お金の使い方を国に全て任せるのではなくて、自分で次の未来に投資するようなお金の使い方の税制改革というのも提言してもいいのではないかなというふうに思っております。
以上でございます。
【永田部会長】 そのほかいかがですか。両角委員、どうぞ。
【両角委員】 ありがとうございます。学生数が減っていったときにどうするのかということで、私はやっぱり教育の質を上げていくしかないと考えています。どこに投資していくかと考えていくときに、大学院もそうなんですけれども、社会が直接求めているようなことを大学が一緒になって直接やるという動きが、現状では少な過ぎるというふうに思っています。大学は、補助金等を獲得するためにも政府の方をしっかり見ていると思うのですが、大学の知に関係する企業や自治体とかを直接に見て、組んで、資金を獲得するような動きはまだ十分でない気がします。むしろそうしたところから支援を引き出すための仕組みをつくっていくことが必要なのかなと思います。国のほうしか見てないという、危機感がないというお話ありましたけれども、やはりそれぞれの大学が産業等と絡むようなところからお金を持ってきたほうがより補助金も増えるとか、インセンティブの構造を変えないと、今のままでは難しいなというような印象をすごく持っています。
社会からの信頼も現状で十分に得られていると思えません。かつて大学で大して勉強もせずに卒業して、そのまま会社に入ってやってきたという方も多いですし、現在の大学生の中にも、親が学費を払っていて必ずしも一生懸命勉強せずに何となく大学に行っているという子もいますが、そうした中で、ただ大学を信頼してくれというだけで社会からの信頼は得られるものではないと思っています。もちろんしっかりと良い教育をしている大学も多いですし、教職員も頑張っていて、そういうことをアピールしていくのは言うまでもなく大事なのですが、社会からの信頼を得ていくというのは、現在、働いている方々が、自分たちの会社とかが大学と一緒にやるとよくなるとか、大学に人材を少しずつでもよいので送りたくなって、そうすることで会社や地元社会などがよくなっていく、成長していけるという実感を得るような循環をつくらない限りは大きなインパクトを持ちえないのではないかと考えています。だから、お金を引き出すというのも、社会から直接に様々な形で引き出すことを目指すことが信頼を獲得していくということになるかなと思います。
さきほどの和歌山のケースもすごく素晴らしいと思うのですが、ただいつも思うのは、社会で必要な人材といった場合に、看護師さん、保育士さんなど、エッセンシャルワーカーの話しか出てこないんですよね。でも本当は人口が減っていったときに、その地域の在り方はどう考えるかとか、先ほどの理系の話もそうですけれども、そういうところで高度な人材が本当に必要だと思うのですが、そういう高度な人材が欲しいから大学に期待していますとか連携しますという話が、どこの自治体と話してもほとんど出てこない。若者いなくなるから困る、エッセンシャルワーカーがいないから困るというのはもちろんよく理解できるのですが、それしかないところが一番の課題であって、そういう意味では、大学もちょっとまだ努力が足りないのかなというふうに思っています。
【永田部会長】 ありがとうございます。大学が未熟だと思います。先ほどの中村委員はいい例で、例えば看護が欲しいが、別に山梨大学でなくても構わない、その代わり、自動運転バスでどんな田舎も走ってくれるというようなことは工学部を持つ山梨大学が全部やればいいというようなことが連携の本当の意味ではないでしょうか。別に組織体がくっつくようにと言っているわけではなくて、そういうふうに考えたら、工学部も看護学科も、一緒の連携等法人でやれるのではないでしょうか。ですから、ニーズを今のように上げてきたら、どちらも多分地域は欲しいわけです。山梨独特の高低差のあるところを走る自動運転バスが、独自のシステムで山梨交通に採用されればいいわけではないでしょうか。それはしっかりと工学をやらないとつくれません。適当では絶対無理なわけでしょう。ですから、それは大学がやることです。社会も多分、分かっていると思います。しかし、どちらも打って出ていかないから、いつまでたっても山梨交通に自動運転バスが入らないということになってしまう。そうすると出遅れた地方になってしまうわけです。先ほどの連携等法人というのはそういう意味です。看護と工学が一緒にやっているわけではなくて、一緒に目指すものを、違うプロダクトとしてやっているだけです。
そういうふうに広く見ていかないと、投資としても同じで、だんだん、あそこはお金がかからないからあそこへの投資は何円、こちらへの投資は何円ではなくて、連携等法人が自由に配分できるようにリソースが集まって、連携等法人が分配するという仕組みになっていけばいいのだろうと思うのです。
いずれにしてもこういった機構を作るのは、そんな簡単ではありません。しかし、そこまでいかないと、口先だけの連携になるでしょう。本当にその地域の看護も自動バスも全部やるのがそこの連携等法人がということではないでしょうか。そのときに不得意なことはやらなくていいし、大学の中に役に立たない分野があってもいいではないですか。例えば、山梨のフォークロアを研究している人文社会系のところがあったとしても別に全然いいわけです。それも全部包含した仲間としての連携等法人ですから、別に全部がお金で戻ってこなくてもいいのではないか。では、日頃から何をやっているかということです。人文社会のよく分からないところや、理学系のよく分からない昆虫のことを話しているのが大学なので、今、役に立たないものも含めて、地域に根差した文化と学芸の拠点として存在していくように努力しないとしようがないのだろうと思います。
さあ、お金の話で何かいいアイデアがあったらいただきたいところです。松塚委員、どうぞ。
【松塚委員】 ありがとうございます。教育が投資であるという前提に基づくのであれば、やはり費用がどのぐらいかかって、そして便益がどのぐらいで、そしてその便益を誰が享受するのか、誰がその投資に対するリターンを得るのかということを把握する必要が出てくるのではないかと思います。原則的には、リターンを確実に得られるのであれば、自ら投資をするというロジックは成り立つわけで、それが例えば個人であれば、個人が授業料、学費を支払うことをいとわないだろうし、個人では払えなくても、例えばそのコミュニティーだとか地域にとって明らかにプラスになるという認識があればコミュニティー、地元の産業などがコストを負担するという意味が出てくると思います。
それだけで割り切れない、例えば教育の機会を保障するということになりますと、個人は隣人の教育機会を保障するという行為は多分しないでしょうから、公財政支出が不可欠になります。まずはコストはどのぐらいで、誰がその恩恵をどのぐらい得るのかということの情報は先回の分科会のときも必要であるということが認識されたと思います。連携の工程を踏むときに、そのようなコストが各大学でどのぐらい発生しているのかということが見やすくなっていくという可能性はあるのではないかと思います。連携ではお互いに情報を公開しませんと、パートナーは多分見つからないと思いますので。ですから、連携の工程において明確にされた結果として、例えば規模だとか予算だとか、誰がどれだけ出すのかというところへと結びつけていくという工程が大切なのではないかと思います。
【永田部会長】 ありがとうございます。益戸委員、どうぞ。
【益戸委員】 今の松塚先生のお話もそうですし、両角先生のお話もそうですし、かつて小林委員がおっしゃった、大学という価値を本当に世の中は認めているのかという疑問は、私の頭からずっと離れないことです。
勿論、大学の価値はありますが、あまりにもそれが世に伝わっていないという現実もありますね。まず、ここの部分を解決しないと、その費用を誰が負担するのかという議論のところまでは行き着けないのではと思っています。民間企業では企業内でプロフィットセンターとコストセンターに分かれています。
プロフィットセンターは、当然のことながらコストセンターがあるからこそ収益を生むことが出来ます。収益を出して企業を支えているプロフィットセンターの人間の方がたくさん給料をもらっているかといったらそんなことはありません。コストセンターの方もしっかり責任を果たしている方は、プロフィットセンターと同様な処遇です。社会全体で、教育はプロフィットセンターなのか、コストセンターなのかと考えたときに、どちらかというとコストセンターではないでしょうか。
基礎研究も含めて、それが形になるか、ならないか分からない中で一生懸命やっていた結果が、社会のどこかで、個人でもいいですし、企業でもいいし、国力向上でもいいですが、プロフィット生んでいくという循環なのだと思います。その道筋とその貢献をというものをしっかり世の中に伝えないとこの改革議論は弱いと思います。
その前提としては、大学を卒業したということの価値の証明の為にも、厳しい成績評価をするべきなのではないかと思います。勉強をしなければ、卒業できない人間がいたっていいじゃないですか。大学は勉強するところ、資格を取るところ、自分の夢を実現する準備をするところだということをはっきりさせないといけません。
大学の成績評価は厳しくしましょう。それを宣言した上で、学費負担の議論であるとか、国力の話であるとかということを伝えていかないといけないとおもいます。
選挙のときの世論調査で、どの政策にあなたは興味がありますかというマスコミのアンケートで教育は順位が後ろのほうに来ています。教育無償化は上位に来ますが、教育の質を上げましょうという話はほとんど上位に出て来ません。
これイコール、政治家の皆さんから見ると、教育の質政策は票にならないことと感じるかもしれません。しかし、国力につながる議論です。今回の答申の中では、その行く末の意見をはっきり示していく必要がとても重要であると考えています。
【永田部会長】 ありがとうございます。
今度は皆様一人一人のパッケージを1、2分という条件で申し訳ありませんが、お手元の資料4を中心に、お一人ずつ熱を込めて御紹介をいただきたいと思います。その後、また議論に戻ります。
それでは、資料4を御覧ください。大野委員の意見から御紹介いただきます。その後、順番に御紹介いただきます。それでは、大野委員、よろしくお願いいたします。
【大野委員】 ありがとうございます。資料4でございますけれども、ポイントはそこにまとめさせていただいたとおり、文部科学省に新たな部局を創設していただく。それから、これまで話に出てきました新法人、名前は別としてやっぱりそれを設立する。そして質に関係してきますが、生成AIへの対応というのをやっぱり明確に打ち出さないと、乗り遅れてしまうんじゃないかという、これも危機感です。
新たに部局創設というのは、これまでの課題とかこれからの課題というのは、壁という話がありまして、壁を越えてやっぱり整理していかないとなかなか前に進まないというのがそこに書いてありますので、国家百年の計、教育というのをきちっとする必要があるという問題意識でございます。
それから、質のところについては、今お話しした生成AI、ものすごい進化ですので、仮にAI活用人材という言葉があれば、これぞ社会が求める新しい人材養成だと思いますので、どういう分野でどういうふうにしていくかというのは設置基準との関係もありますけれども、社会が求められる人材養成、これはこれまで大学はちゃんと人を人間教育しているのかとか、人を育てているのかという厳しい意見に対する1つの回答にもなると思います。それは学修者中心の考え方のところについて、資格だとかも必要ですけど、やっぱりマインドのところをしっかりと社会貢献できる人を育成していく必要があるだろうということ。
それから、2番目の規模適正化、アクセス確保ですけれども、これはいろいろ書きましたが、これまでもお話に出てきましたとおり、我が国のマスタープラン、高等教育システムの設計というものを新たにしっかりつくらないと、これまでの延長線上ではなかなかこの種の問題を解決するまでには至らないんじゃないかという話です。
3番目の連携のところ、これは非常に難しいところで、部局創設の話もなんですけど、例えば自治体には壁がございます。経済圏にはもちろん県境はありません。実は高等教育機関の中にも壁があります。この壁を残したまま何か新しい法人をつくっても、なかなか外形的な融合、統合はできても、実質化にするためにはやはり文部科学省がリーダーシップを発揮していただいて、しっかりとかじ取りをしてもらう必要があるんじゃないかということで書かせていただきました。
その他、お金の問題も出てきましたが、これは機関の企業化としましたけれども、例えば新法人が独立していくためには、仮に株式がいいかどうか分かりませんけど、自前でちゃんとお金を獲得していく仕組みがそこにないといけないと思います。あわせて情報公開を進めていかないと、そういっためぐりができないと思います。
最後に国家戦略、地方創生等いろいろありますけれども、あと人材育成戦略、そういった国の戦略と、それから高等教育の政策融合をしっかりとこの法人の中で実現できるような、そういうふうな形になっていただけるとありがたいと。ちっちゃなコミュニティーカレッジでも、その中で果たす役割はあるというふうに思っています。
以上です。
【永田部会長】 ありがとうございます。少子化対策に文部科学省が新しい部局をつくって対応するという、その部局というのは少子化というよりも、連携等法人というものを成功させるためにという意味だと思うのです。これはあまり話したことなかったです。全部地方自治体がコーディネーターをやるものだと皆さん思い込んでいました。あとはカリフォルニアシステムのまねはどうだ、モデルをやってみたらどうでしょうか。
次は、大森委員、お願いいたします。
【大森副部会長】 もう議論し尽くされた感があるのであれなんですけど、一応説明すると、前提の考え方としては、受験生というか地域の学び手の視点に立つということが大事で、どうしても私も含め、個々の大学の生き残りみたいなことを考えてしまっていたところの反省に立っていて、地域の子にとってどこの大学が残るかというのはどうでもよくて、そこで学べるかということが非常に重要なことなのでという観点から考えておりました。
アクセスというのは単に大学があるというだけじゃなくて、やっぱり学びの領域がちゃんとある程度確保されているということが必要なので、1つの大学、例えばそれこそ国立大学だけが残っていていいということでもやっぱりないだろうと、こういうことだと考えています。
適正規模でもデータとしては、適正規模ということで縮小せざるを得ないというのが今議論したところで、さっきの何かちょっと反省の弁を述べちゃったんですけど、縮小したら収入減るけど、それどうするって、みんなで案分していかないかという案がこれなんですけど、どうもちょっとその方向は違うらしいと思うので、それはそれとしてまた考えます。
いずれにしても、ただこういう機構ができていくことによって、お金の入りやすさというのはできてくるだろうという期待は持っているということと、設置者の壁を超えてこれをやっていかなきゃいけませんということです。
今、松塚先生のさっきのお話と加えて、ここにどうお金をというときに、1つジャストアイデアというか小さな話ですけど、SIBという考え方は大分最近できてきて、大学というのはやっぱりソーシャルインパクトを生んでいく機関であるので、ソーシャルインパクトボンドを呼び込んでいく。やっぱりちゃんと大学が覚悟、国債と似た話なんですけど、こういうことをやるから金を出してくれといって、それが達成できたなら行政がそこを支えるというのがソーシャルインパクトボンドですけど、地域づくりなんかで前橋市もこの間、国交省の第1号やったんですけど、それは大学にとって相当に覚悟が求められることだけれども、SIBを導入していくというのが1つの考え方かなと、さっきお話を聞いて思いました。
以上です。
【永田部会長】 ありがとうございます。地域大学連携機構(仮称)へ、国・自治体からの運営費支給という枠組みが書いてあります。
次に、中村委員、お願いいたします。
【中村委員】 私は先ほどから話が出ています、地方創生のための推進機構のようなものが、自治体や大学の外枠で必要だと思っています。資料の上部に背景を書いたのですけれども、少子化で地域の持続的な発展を阻害されてしまう。そのときに産学官金の組織的な対応が必要なのですけれど、そのためには大学がきちんと、大学が持っているシーズを産官金の方に分かってもらうことが大切です。その上で、産官金の方のニーズを大学がしっかり受け止めて、シーズを変えていくことが必要です。ここで連携推進法人や、フォローアップもできるというふうに思っています。
それから、地域連携プラットフォームは、既存のものがあるのですけれもど、前からお話が出ているように、あまり統一性が僕はないなと思っています。問題解決に向けたスピード感に、かなり課題がある。ただやっているだけということで、そうではなくて、きちんと実効性のある、産学官金連携のための新しい体制が必要だと思っています。
事業内容で書いてあるんですけれども、最初からあまり大きな組織体にしないで、私は地域創生推進機構みたいな、仮称ですけどつくっていって、もちろん大学、あるいは大学院も含めた人材の養成も必要なんですけれども、特に地方の場合は、リカレント教育の推進を通じて、地域の持続的な発展、いわゆる地方創生なんですけど、担うような、地域創生人材が必要だと。これも時代に即した、例えばデジタルとか、あるいは社会人大学院生みたいなものが必要になってくるというふうに思っています。
5年制の修士課程にも賛成ですけれども、僕は社会のニーズを考えると、やはり今、社会人になっている方が1年制でもいいから修士に入ってくる。特に人文社会系は、1年制の修士を充実させるべきと思います。前からお話ししているような、教員養成を入れていくということも大事だと思っています。もちろん博士も大事なんですけれども、やはり自然科学系と人文社会系の違いがあるだろうと思っています。
幾つか書きましたが、先ほど話が出ているように、きちんと話合いをしながら合意形成が必要だと思っています。小林委員が編集長をやっているカレッジマネジメントの最新号ですごく面白い記事がありました。折茂さんという方の記事ですが、どうやったら地域の企業と大学が連携できるかというところを、ハウツーで書いていただいているので、皆さんもぜひ参考にされるといいと思います。
それから、機構内に実務家の教職員を入れること。山梨の場合は実はもう1つターゲットがありまして、山梨中央銀行は地方創生部持っていますから、こことも一緒にやろうということで合意しています。今、具体的な誰を持ってくるかというところまで話がいっているということになります。機構内のコーディネーターとして中心となる方が非常に大事でして、先ほどもお話ししましたように、この方を養成しないとこれから先やっていけないということで、コーディネーターの持続的な養成が必要だと考えております。
それから、企業にとってはクロスアポイントメントによって人事交流をどんどん推進していくとか、あるいは産業界、例えば、経済同友会とか商工会議所とか、経営者協会があのですが、私は経済同友会との関係が大切であると思っています。商工会議所とか経営者協会に話をしていくと、やはり会社の話になってしまいます。自社に幾ら何人欲しいとか、この分野が欲しいとか。それだけじゃなくて地域の活性化をしていくためには、ちょっと個人的な方が入っている、いわゆる個人で入っておられる経済同友会のほうが非常にやりやすいなと感じています。
たまたまですけど、先週、山梨大学において中央日本経済同友会総会をやりました。8県から代表幹事が来られましたが、大学生と一緒にテーブルを囲んで話し合いを行いました。懇親会も一緒にやらせていただいて、非常に活発な会議ができたと思っています。
さらにここにはきちんとしたニーズの調査とか、社会人受入れのコーディネーター制度が必要であると思っています。政策パッケージは、まだまだ具体的ではないのですけれども、例えば、施設なんかはもちろん大学を利用して僕はいいと思っています。機構の構築とか運営とか調整委託費とか、当然人件費が必要だということで、ここしっかり見積もって理解をしていたくことが必要であると思います。
あとは下のほうに地域のニーズを踏まえた学修者本位の教育とか、規模でいうと社会人の多様な受入れをする。私は2040年、50年ぐらいの間に、山梨大学のキャンパスで学ぶ方の半分は30代・40代以上になるのではと思っています。
産学官金が連携しまして、地域の人材を養成するということで、右のほうに図を書きました。こういった機構をつくるということで、銀行とは合意を得ていますし、このことは例えば、経済同友会でお話をすると、非常に皆さんは賛同してくれるというところまでいっていています。次に自治体の首長にもお話しする予定です。
それから、山梨には、ファナックとか東京エレクトロンとかサントリーとかという大きい企業もあります。一方、中小企業もあります。ここの結びつきをやっぱりつくらなきゃいけない。大きな企業にお話ししに行くと、やっぱりすごく人材のこと言われるんです。簡単に言うと、前も話しましたけれども、お金を出すから人材養成してくれという企業もたくさんあります。中小企業はそれができないので、こういった機構を利用しながら、もちろんさっきのお話じゃないですけど、財政措置をしていただきながら、人材を養成していければいいなと思っています。
【永田部会長】 ありがとうございます。個人と企業という実例があるわけです。
次に、平子委員、お願いいたします。
【平子委員】 これまでいろいろ議論が出ていますが、これから先2040年の人口減少を考えれば高校卒業生だけで高等教育を論じるわけにはいかないということは自明のことだと思います。「知の総和」についてずっと議論してきているわけですが、高等教育の参加者の定義を見直してはどうかと考えています。人類のウエルビーイングを維持向上させるための解決策を施すために高等教育が必要だと仮定すれば、「知の総和」は、世の中の課題解決に資するイノベーションの質と量の掛け算に置き換えてものではないかという大胆な仮説です。
イノベーションはどうしたら起きるのか、これは歴史が証明していますように、組織の多様性と深く関係しておりますので、高等教育の参加者の多様性がキーになってきます。それはまさに、女性、外国人、そして社会人の参画ということだと思います。
今や生成AIの存在は無視できない状況ですが、大事なことは学生が高等教育を通じて、AIでは教えることができないことを学び、どんな人材に育つのかということです。高等教育の使命はAIに使われる、あるいは淘汰される、代替される人材ではなくて、AIを使いこなせる人材の育成ではないでしょうか。
そう考えると、学生や大学院生が求める大学教育の質もどんどん変わってくるはずです。それは教職員の仕事の質にも変化をもたらします。産業界においてもその影響は甚大で、生成AIの進展によってホワイトカラーの仕事が淘汰され、トップのマネジメントと、フロントラインの業務をする社員だけで十分な時代が来ると言われています。必然的に今の日本の企業のメンバーシップ型の雇用形態がジョブ型に変遷し、それが結果的には、労働市場の流動化を加速させていくことになるのだろうと見ています。
それに伴い、社会人のリスキリング、アップスキリングのニーズが高まったとき、大学や大学院の教育がその受皿になるかどうか、そのメニューを大学側が準備できるかどうかが大学の価値を左右する大きな転換点になるのではないかと考えます。
ここまでは総論で、これから各論で教育の質の話をさせていただきます。今日、和歌山市の話もありましたので、デンマークの事例を紹介させていただきます。デンマークは、実は世界的に見てもウエルビーイングの高い国で、労働生産性も非常に高い国です。デンマーク人は地域活動とか社会活動にも積極的で、彼らが3人集まれば協会ができるというようなジョークもあります。だからこそ自分の仕事以外に、地域コミュニティーの活動など、複数の社会的な役割を担っている人が多いという特徴があります。その意味で、この国は1人当たりの「知の総和」が非常に高い国だと言えますが、その秘訣はここにあるんだろうと思います。さきほどの和歌山市の例で、大学生が地域コミュニティーでいろんな活動しているのも同様です。
それから、この国には100年以上も歳月をかけたフレキシキュリティーという労働市場の柔軟さと、労働者の保護を両立させたシステムがあります。このシステムを維持するために、大学では生涯教育が重視されており、成人向けのプログラムとか、社会人の学び直しの仕組みが提供されています。大学の卒業生が労働市場にスムーズに移行できるようなキャリア支援プログラムが充実していますので、大学が柔軟な転職市場への橋渡しの役目を担っているということです。
それから、博士課程を目指す学生が、自分の所属している大学と民間企業の合意の下で、博士研究のテーマを国に要望して、それが採用されれば国から補助金が出されて、企業に雇用されると同時に、PhD学生として大学院にも所属して、給与と学位の両方を受け取ることができるという「Industrial PhD」もこの国が始めました。大学教育が国、あるいは地方自治体の雇用に深く関わっており、企業との間で人材を絶えず環流させることによって、大学は企業への重要な人材供給源になっています。社会と地域の大学の間には常にいろんな形で人が環流しているということです。ここが日本では決定的に足りていないところだと思います。
日本において、地方の中小企業がスタートアップや地方の大学と組んで、その地域の社会課題に対する解決策を社会実装するようなイノベーションの機会創出が増えてくればよいと考えます。
それから、規模とアクセスに関しては、若者が地元にとどまりながら、自分のキャリア形成に必要な教育を受けられる仕組みをどうつくるかが非常に重要だと考えています。特に地方の大学は、1つの大学で全てのプログラムを用意するのは難しいため、大学間の連携によって、学位授与をより柔軟に提供する仕組みをつくった大学に対して、国が積極的に支援すれば良いのではないかと考えます。
東京の一極集中というのを防ぐためには、極論ですが、首都圏とか関西圏における指定国立大学法人を中心として大学院大学化を検討してもいいのではないかと考えます。
それから、財政基盤の話です。物価高騰とそれに伴う賃金上昇が浸透してきた日本において、大学の教職員の賃金も例外ではないということです。海外から有能な教員をリクルートするためにも賃上げは不可欠だと考えます。シンガポールは、日本と同じように資源がない国ですが、高度人材の育成を国家戦略にしています。日本も高度人材の育成を国家戦略にして、よい研究・教育を行うために国が相応の支援をする必要があります。生成AIの進化は逆に人口不足を補う救世主だと考えたいです。それによって大学の研究、教育に必要な人員体制を抜本的に見直すチャンスにもなるのかなと考えます。運営交付金や私学助成金は、新しい環境下で経営努力をしている大学に対して、メリハリをつけた増額配分をしてはどうでしょうか。
費用負担については、特に国立大学法人は、費用の内訳を透明化して、1人当たりの教育費の推移を中長期的に開示して広く国民の理解を得るということが肝要です。授業料の水準は各大学が、今後いかに経営を安定化させるのかという観点で、国の負担と受益者負担、受益者は学生以外にも、企業や地方自治体も含まれますが、それ以外の資金とに分けて、大きな方針を示しその方針の下に授業料の水準については、可能な限り大学の自由裁量に任せてもいいのではないかと私は思います。
授業料が大きな負担になる家庭に対しては、公正な教育機会の提供のために、ある一定の基準を定めて、返済義務のない奨学金、給付金の仕組みを、官民で考えていけばよいと思います。このような仕組みを考えることによって、財政の基盤も強化されてくるのではないかなということです。
ちょっと長くなりましたが、以上です。
【永田部会長】 ありがとうございました。そのとおりだと思って拝見しながら聞いておりました。Industrial PhDは、たしかこちらも書き込んだのではないでしょうか。
【髙見高等教育政策室長】 現時点ではまだです。
【永田部会長】 その辺の情報は入っていると思います。それで最後の財政基盤のところも、ほぼリーズナブルだとこれだったら思えるわけですが、こうならないのが難しいところではあります。
次に、堀委員、お願いいたします。
【堀委員】 ありがとうございます。すみません、ワードファイルをそのままパワーポイントに貼ったので、見づらくて申し訳ないです。
まず、質なんですけれども、大学の社会的な意義というのを社会に認識していただくためには、やっぱり社会に出た後に評価される人材を育てるということがもちろん重要なんですけれども、その際に、量的というよりは質的な点で、卒業生が地域社会を例えばどういうふうに変化させたのか、個人の活躍だけではなくて、地域社会における大学の存在意義をアピールしていくということが重要なのではないかというふうに、今までの議論を聞いて感じているところであります。
それから、2番目の評価につきましては、一部既に報告書に書き込まれているところもあるんですけれども、どうしても今、評価のコストが高過ぎるなというのが大学を見ていて思うことなので、これについては検討してもよいのではないかというふうに思っております。
それから、3なんですけれども、例えば90分の授業を15回するというような、そういった形式を重視するマネジメントに近年の教育政策が進んできたように見えるんですけれども、重要なのはどういうふうに能力が獲得されたかというところが大きいですし、また、こういう教育をしますという形で書類で提出されたりしていると思うんですけれども、それもその書類のとおりやるというよりはやっぱり時代に合わせてアップデートしていくということが重要だと思いますので、もう少し自由度を持たせるような形式が、質を上げていくということになるのではないかと思います。
また「知の総和」を上げていくということで、トップ層の話が割と中心にこれまでなってきたかと思うんですけれども、進学率が60%になって、中堅の人材が非常に増えてくるということから考えると、やっぱり底上げを同時にしていくということは非常に重要だと思いますので、トップ層の引上げと底上げを同時に行っていくということが求められるのかなというふうに感じております。
そして、2番目の規模なんですけれども、既に以前の発表の際に、将来の労働力の需給推計というのは現在の延長なので、将来どうなるかというのは分からないというお話をさせていただいたんですが、とはいえ公的な資金を投入する、医療・福祉であるとか、あるいは義務教育などについては、一定程度の推計が可能ではあります。とはいえ国においては職種別には行われていないという状況です。それの代わりなんですけれども、現状、地元に大卒の高等教育でしか獲得できない職業資格を持った、いわゆるエッセンシャルワーカー的な方々というのは非常に重要ですし、例えば県庁で働くような公的機関で働く人材について、地域の大学がどのぐらい送り出しているのかということをもうちょっと量的に、大学は把握しているのかもしれないんですけれども、地域にアピールしていくということが非常に重要で、ここの部分については、将来的に守っていかなくてはいけないというような部分だというふうに思います。ここについては、きちんと地域社会にアピールしていくということが重要と思います。
それから、23区の定員抑制的な政策を全国で行っていくというのは一案だと思うんですけれども、先ほどもちょっと永田先生からお話ありましたけれども、大学で働いている人の雇用についての配慮というのが、今回あまりこの報告書の中でされていないんですけれども、やっぱり地域で大学がなくなるということになると、その地域でたくさんの失業者が生まれてしまうということにもなりますし、それまで養成されてきた大学人材というのももったいないので、一定の人材バンクのような形でもいいと思うんですけれども、何かしらの形というものも必要ではないかというふうに感じております。
それから、最後アクセスですけれども、大森先生や中村先生のお話は地域ごとにやっていくという話だったんですが、全国からアクセスできるようなプラットフォームをつくって、そこにアクセスして、そこから教養科目の単位の取得を行うような、そんなシステムというのも考えられていいのではないかというふうに思っています。
例えば、放送大学などが中心になってくるのかなというようなイメージもあるんですけれども、例えば124単位のうちの4分の1ぐらいまでなら取得してもいいというような、そんな形のイメージも考えられるのではないかというふうに思います。
今の大学教育というのは、各大学の個性はすごく追求されていると思うんですけれども、学士として共通に修めるべき能力というのがちょっとこちらからなかなか見えてこないという部分もあるので、共有化して各大学で先生を持たなくてもいいということであれば、今後、学費が上がってくると思うんですけれども、その部分で学費が低減されたりとか、あるいは最初の1年生のときは自宅から通って、残り3年生だけ地域移動するというような形であれば経済的負担も小さくなるので、学生のためにもなるのではないかというふうに感じております。
最後にここに書いてないんですけれども、今回御提案のありました、大学の連携推進機構とか連携法人には私も賛成です。私のイメージとしては、コーディネーターは永田先生みたいな感じの方がおやりになって、文部科学省の職員が事務局としてつき、そこで足りなければシンクタンクなどに応援を要請するような、そんなイメージを持っております。
以上です。
【永田部会長】 ありがたくないのですが、ありがとうございます。この中で初めて出てきた23区の定員抑制のような政策というのは、計算されたことないですか。これは23区の定員抑制をやると全国が救われるのですが、23区にある大学が苦しくなってしまいます。23区の大学生は、数が多いので、ここの定員抑制を何%かすると、他の地域はあまり影響を受けずに、少し縮小すればいいみたいになります。僕は実は、東京の大学の今後の増を、東京の大学は考えなければいけないと思います。先ほどの和歌山みたいな例が成功してくると、東京に流入しなくなるだろうし、東京というのは就職では魅力があるかもしれませんが、いつかデータにあったとおり、マイナスになって、流入しようが何しようが、当然東京も人が足りなくなります。これを加速するやり方になりますが、後で計算してみると分かります。東京だけの定員が減ると、日本全国、潤うとは言いませんが、かなり緩和されます。ですから、前の23区抑制とは違いますが、その代わりに地方に流入するのを促進する形をつくらないといけません。
これは後で最後に話したいのですが、オンラインです。これはここに書いてあるとおりだと思うので、我々もZEN大学のようなものをやっているわけです。その他で考えるべきことですが、大学にキャンパスは要るのかという問題は、もう1回考えなければいけなくなったと思うのです。ZEN大学という大学ができて皆さんお分かりのとおり、通信制でいける大学ができてきたというときに、本当にキャンパスとは何でしょうか。なくてもいいならなくていいという進化を、これから40年の間にしていくのかもしれません。そういうことも考えないと少し無責任かと思います。ありがとうございます。
それでは、益戸委員、お願いいたします。
【益戸委員】 若干ダブる部分もあるかもしれませんが、ペーパーに沿ってお話をさせ
ていただきたいと思います。
まず、規模です。規模は国立大学は学部、大学院定員の適正化を図る。公立大学は私立からの安易な公立化の抑制を行う。私立大学は的確に経営要件を課すことを原則とする。
当然それによって失われる恐れのある地域のアクセスは確保策を講じますし、規模が縮小する弊害をカバーして、「知の総和」を維持向上するためには、研究、教育の質を高める方策も講じないといけません。
まず、規模についての具体策ですが、原則として新規の設置認可はしない事とします。
ただし、高度専門人材や研究者の養成、社会ニーズの強いコンピューターサイエンス、データサイエンスなどのDX分野や半導体分野、各地域ごとに異なるニーズに答える人材育成の必要がある場合は例外とします。
この地域ごとに異なるニーズというのは、例えばエッセンシャルワーカーの養成などを地域ごとの協議会が認めた場合を想定しています。
次が、基金を設置することによって、率先して再編・統合を進める大学への重点支援を行う事です。既に理系転換基金というのが約3,000億ありますが、この支援は、同規模、ないしはそれ以上の規模でしっかり支援を行うというイメージです。
次が基盤的経費の拡充により、ST比の向上や、学部から大学院へ定員シフトする大学へ重点支援する事です。特に研究中心の国立大学は、率先して学部から大学院中心に転換すべきではないかと思っています。
次が、新たな認証評価制度による、教育面で質の低い大学の強制退場を即す事です。
質の低いという意味は、社会からのニーズというのはいろんなレベルがあると思います。そのレベルに合った結果を出す事が大切です。このニーズに対して結果が出せない大学というのは、本来の責任を果たしていないと思います。
次が、アクセスです。アクセスについては、先ほど来話が出ております協議体、大学、自治体、産業界、これを再定義します。再定義というのは、例えば、文部科学省直轄のモデル地域をつくるとか、地方自治体においては高等教育関係の部署を置いていただくとか、先ほど申し上げました協議会へ文部科学省が参画していただくということです。今後、この協議体の制度化を進めていただいて、策定した計画への支援をしっかりする事とします。
しっかりした計画でなければいけません。真に必要な分野の教育を行う大学への質向上の財政支援というのは、最も重要ではないかと思っています。
また、大学等連携推進法人制度の見直しによる大学連携の強化です。例えば、留学生の募集ですとか、留学生が卒業した後、日本にとどまっていただいて、日本のために頑張っていただくという意味では、日本語の指導はとても重要なことだと思います。しかし、留学生の数そのものがすごく多いわけではありませんので、一大学ではアドミッション体制整備や日本語教育体制整備が難しいこともあると思います。そういったことを大学連携ですべきではないかと思います。
次が、質の点です。出口の質保証の徹底、学生の成績評価のめり張りを強化するということです。成績が不十分な学生は進級・卒業させない。逆に成績優秀者をしっかり表彰するというようなめり張りが必要ではないかと思います。
そのためには、認証評価の抜本的な見直しが必要だと思っています。現在の認証評価というのは、適とか不適とか、すごく大ざっぱな評価です。社会からは様々な要請があると思います。それに的確に応えているのかということの視点も含めて、教育による付加価値を評価する仕組みも入れるべきではないかと思います。
次が情報公表の徹底ですが、これは再三出てきていることですが、留学生は一度も日本に来たことがなく、大学を選んで来日します。大学のホームページですとか、いろんな情報を集めて大学を選ぶわけですが、日本においては相変わらず偏差値による大学選びが主流になっています。留学生にも国内学生にとっても、学校選びの情報不足です。やっぱりこれを徹底的に変えるためには、情報公表の徹底をはかる事が重要です。大学ポートレートを大学間の比較を可能にするということもとても大切だと思います。
海外では実施している国はたくさんあります。日本だけできないということはないと思います。また、大学ポートレートへの参加を認証評価の前提条件にするという案はいかがでしょうか。新しいルールを作らないとこのままでは、なかなか情報公表は進まないのではないかなと思います。
最後に、社会で広く活躍する高度専門人材の育成ということです。修士、特に人文社会科学、博士課程では特に自然科学の増員、そして、これはとても重要なことだと思うんですが、多様なキャリアパス確立のためのトランスファブルスキルの育成、それから、社会への出口策を充実させることです。この点は企業側も努力しないといけませんが、すでに、国立大学13校がコンソーシアムを組んで活動をしていると聞いていますが、企業側の人事、または大学側の先生方からお話を聞きますと、必ずしも機能している様ではありません。ここの出口部分をしっかりしないと、せっかくの院生や博士課程の人材を生かすことができません。
今回の答申においては、囲みの中にある様に、高等教育の受益者は個人だけでなく、社会全体である。教育は未来への先行投資であるということをキャッチフレーズに、広宣活動を行わなければいけないのではないでしょうか。
最後に一つ、番外ですが、上場企業に比べると大学の規模というのは決して大きくありません。予算規模や教職員数、学生数からみると多く見えるかもしれませんが、様々な分野のシステム化投資をするには単独ではちいさ過ぎる所もあります。ですから、そういう意味でも、各大学が連携して働き方改革やDX化が必要です。
勿論、それを実現する為には、新規の政府からの資金支援がどうしても必要です。
やはり現在の各大学の予算では、必要と分かっていても資金がなく何もできないというのが現実でしょう。この点は、規模、アクセス、質とは若干外れますが、とても重要なことだと思っています。
以上です。
【永田部会長】 ありがとうございます。特に最後のところは、先ほどの財政基盤の支援の中で、システムの改革のためにはどうしてもお金を積まないと動かないということだと思います。かなり過激なことも書いてありますが、ここまででも足らない気もまだするぐらい、今は、窮状かと思います。厳しいことが書いてあります、かなり。
それでは、最後に松塚委員、お願いいたします。
【松塚委員】 ありがとうございます。私のほうからは、教育の質向上とアクセスの確保、規模の適正化を可能とする大学連携という観点からお話をいたします。
本案の趣旨は、連携のプロセスを経ることによって、教育の質向上とアクセスの確保を図ること、その工程で学生需要に対する需給資源の適正規模を見極めながら、連携の発展的展開、あるいは統合、合併などを支援するということにあります。
左のほうでは連携の在り方を、横と縦の連携に大きく分類しています。横の連携には共通性の高い教科、課程の共有、相互履修・統合、そして専門科目の相互乗り入れなどがあります。このような連携によって、各大学の強みを生かして科目などの効果的な組合せと、資源共有によって費用の削減を図りつつ、教育の質を上げるということが可能となるのではないかと考えます。
縦の連携のほうは、高等教育の各課程の連続性を確保することによる教育機会の拡充と、あと非伝統的学生や留学生の教育機会を拡大するなどがあると思います。これらの連携によって、18歳以降のセカンドチャンス、高学位への進学機会、オンライン教育など多様かつ柔軟な学習チャネルを通してアクセスを確保することが目指すことができるのではないかと思います。
右手に、縦横の連携プロセスを示しております。要約しますと、各大学の理念、教学情報、学生需要、資源などを明らかにしつつ、連携の環境を整えて、その連携の効果を見極めながら、段階的に適正規模に到達していくというプロセスが有効なのではないかと考えます。
下のほうには、連携を支える柔軟な資源共有と財源確保の例を示しております。こちらのほうは大森先生のほうからもお話がありましたことですので、1点、学習成果や専門性の可視化というのは、企業や地域連携に基づく奨学金や寄附金、競争的資金などの獲得機会を増強するという効果が得られると思います。ですから、この機会を活用することによって、財源の強化にもつながり得るというふうに考えます。
最後に、期待される効果です。連携に必須の大学自らによる教育内容、方法、成果の詳述は、教育の質向上の工程にほかならないと考えます。これらの工程は、就職、留学、転学、編入なども円滑にするというような効果があると思います。このような大学連携は、他の並走する大がかりな政策である留学生の誘致、社会人の学び直し、地域人材や企業人材の育成、そして博士人材の増加などと相乗効果が見込まれると思います。これらの全体の進展と成果を鑑みながら、適正な規模を、より正確に判断するというところにも貢献するのではないかと思います。
最後に、連携における大学のコストシェアに関して先ほど御指摘があったと思うんですけれども、これに関しましては確かに簡単ではないと思うんですが、日本の大学は既に国外の大学とは経験を有していると思います。留学生を交換するときだとか、連携学位や共同学位、これは国公私立関係なく学生を交換しております。その辺りのコストシェアというのは、経験を持っている大学が多数あると思いますので、その経験を国内で共有していくというプロセスも、連携の中に含まれていってもいいのではないかと思います。
以上です。
【永田部会長】 ありがとうございます。極めてある意味、今までみんな話したこともうまく網羅されているし、具体的に段階的に適正規模に到達するというのは、今まで皆そう思っていても、言葉にここで初めて出ていて、多分文部科学省側はメモしていると思います。
最後は伊藤委員ですが、今日は御欠席なので、事務局のほうから御紹介ください。
【花田高等教育企画課課長補佐】 御欠席の伊藤委員からいただいております政策パッケージ例について、事務局から説明させていただきます。11ページを御覧ください。
まず、本稿は2024年から2040年に至るまでの状況を、2040年から振り返るという形での御提案になってございます。
まず、初めに、1、質については、ハイエンド層に対する教育として、国立大学を中心に、文系分野での5年間、学士・修士一貫教育の完全標準化と、理系分野での博士修了の標準化が達成され、研究力も大いに発展したこと。
続いて、12ページのほうでございます。この下のほうでございますが、4年制学士課程大学、短期大学、専門職大学などをボリュームゾーンの教育を行う大学として位置づけ、時代の変化に合わせたカリキュラム革新に努めるようなったこと。
また、13ページでは、大学に対する社会の評価基準が、卒業によって得られる実力、出口管理にシフトし、企業等での採用活動でもそれが重視されたことなどが挙げられております。
次に、2、規模につきましては、知の総合力の進化のためにハイエンド層が学ぶ大学・修士・博士課程の定員を減らさないこと。続いて、13ページから14ページにかけまして、国公立の高等教育機関に対する学納金の最低ラインが文系150万円程度に設定され、その額にプラスして必要な費用が国や自治体から交付された。このことによって、国公私が学納金という基準では同じレベルで競争できるということになり、その結果として、一部の大学が閉鎖されたということ。また、地域的な観点からは、地域の高等教育機関に就学する学生には、奨学金にプラスしまして学納金バウチャーが発行され、都市圏から地域への学生の移動が促進され、地域活性化が促進されたとされております。
続いて、3、アクセスにつきましては、マイナンバーカードの普及と活用によって、国の支援は申請型からプッシュ型に大きく変化するとともに、消費税率の上昇と不要なばらまきも抑制されて、財源の確保が進んだことなどが挙げられております。
最後に15ページでございます。終わりに、2024年の過去に戻って考えたことでは、少子化が進む中において、「知の総和」を増やすために不可欠なのが、日本の大学生たちが世界の大学生に負けないほど勉強して活動する環境の整備であること、また、入り口管理から出口管理への転換を実質化するには相当の工夫が必要であり、文部科学省を中心とした仕組みづくりが必要という形でおまとめいただいております。
以上でございます。
【永田部会長】 簡潔に、驚くほど明快でしたが、伊藤委員の資料が唯一皆さんと違うのは、先ほど益戸委員がおっしゃった、水準で物を判断されている部分があって、ボリュームゾーンと、それからハイエンドという形で出ています。それはどこかで意識しないと、画一的にはやはりできないことだとは思います。それがあってこそ、多分地域連携プラットフォームの価値があって、そこで全部同じ水準になるのではなくて、それぞれ違う分野と違う水準を持って協力し合うということが多分重要だと思います。そのほか御持論も書かれていますし、分かりやすい感じでした。
以上、委員の方々から、御自分の視点からの3要件のパッケージで考えるとどうなるかという話で、難しいことはたくさんありますが、1回はやってみないといけない作業だったと思います。
残りの時間、今いただいた御意見に対して、特に御意見をいただかなかった先生は御質問をいただきたいと思います。書いてあったことでも書いてなかったことでも構いません。
それでは、濱田委員。いきなり当ててすみませんが、お願いいたします。
【濱田委員】 私、ちょっとまとめきれなかったので文章では出してないんですけれども、さっき永田会長がおっしゃったみたいにキャンパスが要るかどうかというのをアクセスの部分で一番考えなければならない点は、地方といっても交通が発達しているところと発達してない地方で全然違うということです。先日も幾つかの公共交通が発達してない大学の方とお話ししましたが、学生のほぼ9割がアパートで一人暮らしというところがほとんどで、そういう大学にはやはりそこのキャンパスに来てもらわないと、大学が当然成り立たないと思います。こららの大学ではオンライン全部でやりましょうといった時点でそれぞれのキャンパスの必要性がなくなると思います。それ故、それぞれのキャンパスで学ぶことにいかに特徴を持たせるかというのが今後重要かと思っております。例えば、同じ機械工学といっても、その分野の何を特徴づけるかというのが今後重要で、機械工学のどの分野も満遍なく行うというのでは多分もう成り立たない時代が来ていると思います。特徴づけるためには、その分野の何かをしかも独特だというものを持たせなければいけないと思います。
そして、その特徴ある部分を地域の産業とどう結びつけていくかというのが、今後の一番の課題だと考えます。ただその場合には、一大学で機械工学の全てを教育できなくなるので、大学間連携という形で、カリキュラムを補完し合えばよいと思います。大学間の連携に関しては、大学等連携法人もあれば、共同教育課程という連携の仕方もあるので、多様な連携の仕方を模索する必要があると考えます。現在、共同教育課程で行っている分野は、教育学部であったり、獣医学部であったり、資格を取れるところがほとんどですが、そういう資格を取得する教育課程ではないところでどういうふうにそのような連携を組んでいくか、別様の連携の在り方があるのかというふうには考えております。ただその場合、コンペティターと連携することになるので、ある意味学生を取り合う相手とどう連携していくかというのをうまい具合にやっていかないといけないのかというのが今後の課題だと思います。そのような連携もしていかないとなかなか生き残っていけないのかなというふうには考えているところです。
今日、和歌山のお話をお伺いして、全部資格が取れるところをうまく誘致されたんだと感心しておりました。資格が取れるなら別に県外へ行かなくて地元の大学でもいいじゃないかと考える方は多いと思います。大学がどうのというよりはその資格が取れるかどうかで多分判断されると思うので、そういう意味で、資格が取れない分野はどういうふうにこれから連携していくかというのをうまく考えていかないと、アクセスとかそういうものがうまくいかないのかなというふうにはちょっと考えているところです。
以上です。
【永田部会長】 ありがとうございます。少しだけ今のヒントです。ですから、連携等法人で試験ができると、取り合いではなくて一緒に教養課程で全部やれれば、そこは少しクリアできるかと思います。
そのほかいかがでしょうか。吉岡委員、どうぞ。
【吉岡委員】 吉見さんがさっきから手を挙げています、オンラインで。
【永田部会長】 失礼しました、見逃していました。吉見委員、どうぞ。
【吉見委員】 申し訳ありません、今日は現地に行けず、しかも宿題を出していない今、劣等生の大変肩身の狭い思いをしております。そんなわけで口頭で申し訳ないんですけれども、一言発言させていただきたいと存じます。
今日のお話にありましたように、2035年ショックが非常に迫っている。その原因は非常にはっきりしていて、1つは少子化と、東京一極集中だと思います。少子化のほうは変えられないんですけれども、本気を出せば東京一極集中は変えられる。それはなぜかというと、基本的にはポイントは、東京からマイナスをするということが最も重要なんだと思います。地方にプラスするということだけやっても駄目で、東京にマイナスをしたものを地方にプラスしていくということが、教育においても必要なんだと思います。
具体的には5つあります。1つ目は、先ほど永田部会長や、それから堀委員がおっしゃったことと重なるんですけど、やっぱりどこかで23区の定員抑制というのは考えるべきなんじゃないか。23区からマイナスをするということが必要なんだというふうに私は思います。
それから2番目には、税制の問題です。ふるさと納税は東京からマイナスして地方に持っていくということを非常に上手にやった例ですけれども、それ以外にも相続税をめぐって、あるいは何らかの税制的な措置によって東京から地方に資本を持っていくという仕組みをつくるべきだと思います。
3番目はオンラインで、やっぱりオンラインがこれだけ広がったことによって、2拠点大学というか、4年間ずっと東京の大学生たちも東京にいなくてよくて、1年ぐらい地方にいてもよくなっているわけですから、そうすると、学生たちが東京と地方の間を4年間の間で流動するということが可能なんだと思います。
4番目は、まだ発達途上ですけれども、イギリスとかヨーロッパではかなり広がっている、さっき話出ましたけれども、ソーシャルインパクトボンドのようなものを地方に入れていく仕組みをどうつくっていくかということだと思います。4番目ですね。
最後は非常に難しくて、答えはないんですけれども、やっぱり今の偏差値中心の競争というのはやっぱりマイナスが大き過ぎて、そうではなくて、大学間の教育の伸び代をベースにした競争の仕組みというのをどういうふうにつくっていくのかということがポイントだと思っております。そうすることによって、東京からマイナスにできる仕組みをつくっていくということが、これは教育にとどまらず、日本社会全体の再生ということに必須だと私自身は思っている次第です。
以上です。
【永田部会長】 ありがとうございます。堀委員もおっしゃったようなことをもう一度まとめて東京をどうするかということ、地方をどうするかとパラレルだということなので、そういう措置もあると思います。前も申し上げましたが、フォーブス500の、今アメリカの企業の本社がどこにあるかの分布図はロサンゼルスとニューヨークが中心ではなくて、ほとんどが中西部に固まってみんな動いていて、より快適な生活のできるところに移動しています。日本ぐらいです、これだけ東京に集中しているのは。東京の魅力はたくさんあるから分かりますが、それを今、吉見委員は違う形でおっしゃったんだろうと思います。
そのほかいかがでしょう。吉岡委員、どうぞ。
【吉岡委員】 すみません、今日いろいろな話が出たので、自分の考えがあんまりまとまらなくて。
1つはアクセスの話で、今もありましたけれども、やはり1つは地域連携をどうするかというのは非常に大きい問題だろうと思います。コーディネーターをどうするか、これはまず一番直近で大変だと思うんですけれども、コーディネーターは多分地域にある大学幾つかを、大学同士を連携するレベルまでは多分、自治体の職員レベルでもできるところまであるかもしれないんですが、実際に産業とつないだり、カリキュラムを編成したりするようになると、やっぱりかなりの専門家が関わる。つまり教員もそうですし、それから、先ほど実務家教員と中村委員がおっしゃっていましたけど、実務家教員の関わりみたいのが、かなり具体的に必要になってくるのだろう。ただ実務家教員がその領域の実務に限られていたりするので、そこをどうやって広げていくのか。いずれ10年後、20年後になれば、そういうコーディネーターを育てるような講座というのは多分できてくることが必要かなというふうに思いました。
もう一つは、アクセスはやはりオンラインを含むDX化というのが非常に重要な課題だと思います。先ほどのキャンパスが要るか要らないかというのはちょっと分からないんですよね。つまり、今後どういうふうに、例えばAIとか何とかも発達していくかもよく分からないのですが、私はキャンパス必要だと思っている人間ですけれども、やはりそれを組み合わせていく、どっちかに寄る必要はないので、大学というのはそういうことをいろいろやってみるところで、やってみるしかしようがないというふうに思います。
ただ、地方の大学が活性化していくということの1つは、やはり学生を集めることが必要なので、地方だから、地方に閉じる必要はやはりないと。これは最初の頃に議論したことですけれども、やはり私は非常に単純に、国際寮のような形の学生寮、これは文部科学省だけでできる問題ではないですけれども、居住を確保するということは非常に重要かなと。そうするとやっぱりそこである程度のレベルの教育をすることができれば、国内からも集まってくるでしょうし、それから、海外からも集めることができるだろうなというふうに思います。というのがアクセス問題。
あと経済的なアクセスの問題でいうと、学費というのをどう考えるのかということは非常に難しいんですが、確かにここにありましたように、やはり必要コストの算出というのは概略でもいいからやってみないと、やっぱりちょっと分からないというところがあると思います。今、例えば高等教育の無償化とか、学費どうするかという議論のときに、実際にそれが何を指しているのかというのは実はあんまりよく分かっていないと思うんです。というのは、私学で学費で取っているものって、いわゆる教育に関わっている、その学生個人にかかっている教育の費用だけじゃなくて、施設費であるとかをはじめもちろん研究費、それから教職員の給与など全部入っているわけで、そのうちの8割ぐらいは学納金でやらざるを得ないわけです。
国立大学の場合は学費というものも、必ずしも厳密に分けられないと思いますけれども、例えば施設費は別なわけです。どれだけのものが学生1人にかかるのかということを考える必要があるとは思います。何となく感覚的には300万ぐらいかなというふうに思いますが、ただ、この問題はやや危ない部分がありまして、というのは、例えば文系の割と大きな学部の学生と、それから理工系の小さな学部で、やっぱりお金がかかる学部とで、学費はどれだけ差が必要になるかみたいな議論に当然なっていくわけです。先ほど両角委員が、要するに政府のほうを見ているというふうにおっしゃっていましたけど、私学はやはり毎年のように学費を考えなくちゃいけないので、要するにその学費を負担してくれる人たちにどう説明するか。
例えば、先ほど益戸委員がおっしゃったように、物すごいコストセンターとプロフィットセンターの差が実は大学って大きいので、その中で、でもこの大学にいるので学費はこのぐらいですという説明をする必要が常にあるんですよね。その問題も含めて、やはり教育にかかる費用というのはどういうものであって、それはなぜ社会全体で支える部分がある、あるいは個人が負担するのかということは、概略考える必要があるかなというふうに思います。
最後にちょっとすみません、長くなって。質の問題では、これも益戸委員がおっしゃったように、出口の質保証ということを議論するには、やはり定員管理をどうするか、定員の設置基準をどうするかという問題、つまりちゃんと落第させていった場合には、当然定員オーバーしていくので、その問題がある。留年を許す場合にどうするかということですね。そうすると、設置基準の再構成を考える必要が出てくるだろうと思います。
あと、大学教育をどのようなレベルで考えるかということで、先ほどの地域連携もそうなんですが、今やっぱり大学単位で考えていますけれども、実は1つの大学の中でも学部によって地域との関係だけでも全然違うところがあるので、もう一つ、学位プログラムレベルでの評価、要するに、機関評価と、それから分野別評価ってありますけれども、分野別評価とまではいかなくていいと思うんですが、ある学位プログラムを担っている教育機関、それは学部であったり学科であったりという場合、あるいは大学ということもあるかもしれませんが、そのレベルでの評価というのをもう少しきちんとする。大学というふうにしちゃうと、大学の中で物すごく学部の差があったりするので、その辺をちょっと考え直してもいいのかなというふうに思いました。
あと幾つかありますけれども、ちょっと取りあえず時間なので。
【永田部会長】 ありがとうございます。これ以上は議論は詳細にできないのですが、たくさん意見は出ました。両角委員、どうぞ。
【両角委員】 すみません、私も宿題出せてなくて申し訳ありません。出せてなかったところの一番の理由は、規模に関する議論の難しさです。この3要素のすべてを考えるときに、先ほど吉見先生もおっしゃったように、東京一極集中というか、東京の問題と地方の問題と違っていて、そこをどう分けて考えるかというところを入れ込まないといけないと思います。皆様からご意見が出ていたように、企業と大学をもっと人材還流させるとか、オンラインを活用するというのはもちろん必要なことだと私も考えていますが、全国一律に考えて解は出ないように考えており、そのあたりをどう考えていいのかがまだよく分からなかったというのが難しく、宿題はできなかったのが正直なところでした。
次回以降の本会議への要望に近いのですが、仮にどういう形で、規模の考え方を変えていったときに、全体の規模としてどうなるかというような、もう少し精密なシミュレーションをしたうえで議論をする必要があると思います。あくまでにいくつかのシナリオを検討するためで、その通りにするという話ではありません。ただ、もう少し数字をもとに具体的に考えてみて、東京とそれ以外の地域をどう分けて考えていくのか、都心といったときに東京だけなのか、あるいはもうちょっと違う3大都市圏とかも含むのかとか、検討するプロセスが必要だと思います。難しいことですが、私はそのようにして考えるしかないと思っておりまして、その辺りの具体的な議論をする材料が欲しいなと思います。宿題出さないのに要望だけ出してすみませんけれども、ご検討いただけましたら幸いです。
以上です。
【永田部会長】 ありがとうございます。今日出てきた中で、今、東京と地方は施策として同じなのか。それから、益戸委員や伊藤委員がおっしゃった水準、ボリュームゾーンとハイエンド、あるいはローエンドで違うのでしょう。そういうことも鑑みないといけません。一律につくってしまうと大失敗という可能性もあります。次回以降の論点がまた少し増えたと思うので、その辺りに気配りをしたいと思います。
今日、長い時間取りまして、各自のお考えも、1人一、二分程度という中でしたが、御発表いただきました。大分理解も深まって、問題点も出てきました。あとは今の素案にもう少し具体的に読んだ人がなるほどそこまで行くのか、実際にやるのかということが分かる程度に書かないと、必ずしもKPIの問題ではなくて、それが少し必要かと思います。
長時間どうもありがとうございました。次回は、素案が削れて案になるようにしたいと思います。私もこの長い素案を読んで、事務局に赤を入れて渡してあります。足らないところがたくさんあって、文部科学省だけではできないはず、ここにほかの省庁も書かなければいけないのではないかなども書いて渡してあるので、また少し変わってくるかとは思います。
それでは、事務局のほうから、今後の予定等をお願いいたします。
【花田高等教育企画課課長補佐】 本日も活発な御議論いただきまして、誠にありがとうございました。
次回の特別部会は、12月4日水曜日13時から、ハイブリッド形式での開催を予定しております。本日御発言できなかった内容ございましたら、事務局まで御連絡ください。あわせて事後的にいただいた御意見も踏まえまして、次回の特別部会では反映したもので御議論いただく予定でございます。
以上です。
【永田部会長】 ありがとうございます。早いです。次あっという間に1年がたちますが、まだ1か月あります。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。今日はこれでお開きとさせていただきます。ありがとうございました。
── 了 ──
高等教育局高等教育企画課高等教育政策室