令和6年6月28日(金曜日)10時00分~12時30分
Web会議
(部会長)永田恭介部会長
(副部会長)大森昭生副部会長
(委員)吉岡知哉委員
(臨時委員)伊藤公平、大野博之、小林浩、中村和彦、濱田州博、平子裕志、堀有喜衣、益戸正樹、松塚ゆかり、両角亜希子、吉見俊哉の各委員
(事務局)池田高等教育局長、寺門私学部長、伊藤大臣官房審議官(高等教育局担当)、奥野大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術政策連携担当)、森友文部科学戦略官、吉田高等教育企画課長、桐生学生支援課長、佐藤参事官(国際担当)、神山私学行政課長、板倉私学助成課長、錦私学部参事官(学校法人担当)、石橋生涯学習推進課長、髙見高等教育政策室長、田井国立大学法人支援課企画官、篠原私学経営支援企画室長、氏原大臣官房文教施設企画・防災部計画課企画官、花田高等教育企画課課長補佐、疋田高等教育政策室室長補佐、阿久津高等教育政策室室長補佐ほか
【永田部会長】 第7回の特別部会を始めさせていただきます。
全員対面で御出席ですが、YouTubeの配信用のカメラが置いてあります。
事務局から、連絡事項を先にお願いいたします。
【花田高等教育企画課課長補佐】 本日は、委員の皆様、対面にて御出席いただいてございますので、御発言の際は、こちらの名立てを立てていただきまして、部会長から御指名されましたら御発言をお願いいたします。
本日の会議資料は、事前にメールでお送りしているとおりでございますが、こちらの会場のiPadのほうにもチャットにてURLをお送りしてございますので、紙の資料と併せて御活用いただければと思います。
事務局からは以上でございます。
【永田部会長】 ありがとうございます。
今日は、資料1-1の中間まとめ(案)について詰めた議論をさせていただきたいと思います。
全体の説明、それから、概要等の説明について、事務局からお願いいたします。
【髙見高等教育政策室長】 高等教育政策室長の髙見です。
まず、お手元の資料1-1を御覧ください。前回、5月31日の特別部会では、中間まとめの素案について御審議いただきました。本日は、同日の部会でいただいた御意見、また、その後に委員の皆様からいただいた御意見等も踏まえまして、事務局において中間まとめ(案)として整理しております。
前回の特別部会から新たに追加された箇所について、下線を引いております。既に委員の皆様には事前にお送りしておりますので、ポイントのみ絞って説明いたします。
まず初めに、1枚めくっていただいて、1ページを御覧ください。「はじめに」といたしまして、少子化の中で、人口が減少する中、高等教育機関の活動を強靱なものとすることによって、社会全体の活性化を促す好機である。こういった視点から文章を記載しております。
続いて、4ページ目を御覧いただければと存じます。前回までは記載していなかった地方創生の現状につきまして記載を追加するとともに、5ページ目にもあるとおり、高等教育のデジタル化についても記述を追加しているところです。
続いて、8ページ目を御覧いただければと存じます。こちらも前回まで特に記述はなかったのですけれども、障害のある学生の増加についても記載を追加しているところです。
そして、13ページを御覧いただければと存じます。この辺りは、(2)これまでの高等教育政策を総括した章となっておりますが、その中で、④大学のガバナンス改革の推進として、国立大学法人法あるいは私立学校法の改正等について、記述を追加しております。
そして、14ページ目、次のページを御覧いただければと存じますけれども、大学における財務構造の変容といたしまして、基盤的経費や競争的資金あるいは修学支援新制度の創設等について、新たに項目を設けております。
続きまして、少しまた飛びますが、18ページ目を御覧いただければと存じます。この会議でも多々意見のある「知の総和」の維持・向上につきまして、その前提となる記述を充実しております。
また、隣のページ、19ページの(3)の重視すべき視点、この中では、文理横断・文理融合教育と成長分野を創出・けん引する人材の育成の2つの項目について、①新たに時代に対応した教育内容の改善ということで、一つの項目にまとめております。
続いて、21ページを御覧いただければと存じます。中ほどからですけれども、流動性に支えられた多様性の確保といたしまして、まず①機関の多様性、そして、学生や教員の多様性に分けた上で、機関の多様性につきましては、複数の高等教育機関の連携によって、それぞれの強みを強化していくことが必要である旨の記載を追加しております。また、学生や教員の多様性では、次のページに移りますが、障害のある学生への環境整備に関する記載を追加しております。
続いて、23ページを御覧いただければと存じます。⑤下段でございますが、デジタル化の推進といたしまして新たに項目を設け、この記載を追加するとともに、次のページ、24ページですけれども、高等教育機関の運営基盤の確立として、ガバナンス改革の推進、あるいは、各高等教育機関の自主性・自律性の向上について記述を追加しております。
また、⑦高等教育機関の接続の強化では、入口であるアの初等中等教育の接続とともに、出口であるイの社会との接続、連携強化について記述を充実しております。
続いて、25ページ、一番下、地域との連携の推進の中では、26ページの中で、高等教育機関が地域の中核的な拠点となるとともに、地域も高等教育機関と一体となって地域発展を進めていくということとした上で、高等教育機関や関係機関の役割について記載を充実しております。特に、最後のポツの中ほどにあるように、地域の将来像を議論する際には、地方公共団体の役割は欠くことができない旨を明記しております。
続いて、27ページを御覧いただければと存じますが、この章では、高等教育の方向性と具体的方策について整理しています。特に、28ページの枠内にもあるとおり、前回の部会では検討の方向性としていた項目について、具体的方策として記載を改めるとともに、その内容について記載の充実を図っております。特に、28ページの中ほどにもあるとおり、定員管理の弾力化、厳格な成績評価、卒業認定、さらに、学修歴証明のデジタル化の推進、認証評価制度の見直し等について記述を追加しております。
また、29ページの多様な価値観が集まるキャンパスの実現、こちらの項では、30ページから31ページにかけまして、具体的な取組として、留学生や障害のある学生への支援、また、通信教育課程の質の維持向上等を中心に記述を追記しているところです。
また、34ページ、高等教育全体の規模の適正化、ここはタイトルも変えたほうがよいのではないかということで、規模の適正化という形にしましたが、この中では、3つ目のポツにあるとおり、この議論は大学、短大、高専、専門学校といった機関や、国立、公立、私立といった設置者それぞれにおいて他人事ではなく、しっかり議論を進める必要があること、また、その際には、地域や産業のニーズに応じた学部・学科の再編や、学内資源の学部から大学院へのシフトなど、それぞれのミッションに応じた再編を進めることも求められる旨を追記しております。
その上で、具体的方策、34ページの中ほどから下ですが、入口の管理といたしまして、厳格な設置認可審査の実施に関する事項を追記するとともに、意欲的な改革を行う機関への支援、あるいは、連携、再編・統合、さらには、縮小・撤退に向けた支援について記載を追記しております。
続いて、36ページを御覧いただければと存じますが、地域におけるアクセス確保に関する記載を充実するとともに、37ページにおきましては、社会経済的観点からのアクセス確保についても記述を充実しております。
また、39ページを御覧いただければと存じますが、4ポツ、機関別・設置者別の役割分担、連携の在り方については、今回、事務局において、これまでの答申やその後の各種制度改正などの状況の変化を踏まえ、記載を大幅に追記しております。
39ページの中段から41ページ上段にかけては、(1)の機関別の役割として、大学、専門職大学、短期大学、高等専門学校、専門学校について、その役割・機能について記載するとともに、41ページの中段からは、(2)の設置者別の役割として、明治期から現代にかけて歴史的な経緯も踏まえながら、その内容について記載を追加しております。
これらを踏まえて、42ページでは、国立大学、公立大学、私立大学の役割・機能についても記載をしております。
最後に、43ページですが、高等教育改革を支える支援方策の在り方として、いわゆる財政的な負担が中心ですけれども、特に中ほどのア、イ、ウにおいて、機関補助と個人支援のそれぞれの特徴を踏まえた公財政支援の在り方、いわゆる公的な負担の在り方、また、その中での基盤的経費と競争的資金による支援の在り方、イとして、個人・保護者負担の在り方として、高等教育の社会的あるいは私的便益を踏まえた授業料等を含む個人・保護者負担の在り方、さらには、ウとして、寄附金あるいは社会からの投資の拡大など多様な資金調達を通じた経営基盤の確立・強化の方策について、今後引き続き議論を重ねていくことが必要であるといった旨の記載をしているところです。
また、43ページの最後のポツですが、こういったことを進めていくためには、関係者もしくは社会の理解が得られてこそ、高等教育機関への投資が拡大していくということで、より高い満足度を得られるような取組、さらには、教育研究活動の高度化、このようなことを、各機関の強みや役割を活かしながら、しっかりと社会に発信していくことも必要であるといった旨を記載しているところです。
続きまして、本日ですが、お手元の資料2を御覧いただければと存じます。資料2は、地方公共団体と高等教育機関の連携の状況についてのアンケート結果ということでお示ししたものでございます。こちらは、本年4月から5月にかけてアンケートを実施しておりまして、回答を取りまとめたものとなっております。
このアンケートですが、本年2月27日の第3回の特別部会で説明したとおり、急速な少子化が進行する中で、地方の高等教育機関ほど学生が減少し、厳しい経営状況に陥る可能性がある、その結果として、地域の中での人材育成機能が十分に確保できなくなる可能性があることを踏まえて、地方公共団体と高等教育機関との連携状況について双方がどのように捉えて、今後の方向性についてどのように考えているのか、また、地域連携プラットフォームの全国的な構築状況はどうなっているのか、こういったことを把握するために行ったものです。
調査は、全ての都道府県と指定都市、また、全ての大学、短大、高専、専門学校に対して実施しております。
回答率ですけれども、地方公共団体で83.6%、高等教育機関で41%となっております。
回答に当たりましては、特別部会でも参考データ集等でお示ししております2040年の都道府県別の進学者数推計ですとか、都道府県ごとの大学学部の設置状況等を参照した上で回答いただくようにお願いしたところです。
まず、3ページ目を御覧いただければと存じます。都道府県・指定都市に対しまして、域内の高等教育機関との連携を担当する部署があるかどうか、こういった質問を、左上のグラフでありますが、問うたところ、9割以上が「ある」という回答でございました。
この担当部署については、10名以下程度の係、あるいは班といった組織が中心でしたが、左下の棒グラフのとおり、当該部署の業務量の中に占める高等教育機関との連携業務の割合は平均で3.9割、また、最も多かった回答は2割程度という状況です。このことから、高等教育機関との連携業務を主たる業務とする部署が設置されている例というのは、全国的に限られているといったことも分かるのではないかと存じます。
続いて、7ページから13ページにかけて、ここは設置者別に書いておりますけれども、各ページの下段で、域内の高等教育機関との連携を強化する必要があるかどうか、あると考えるか、こういった質問に対する回答を設置者別・機関別で示しております。
大学、短大については、設置者を問わず、域内に当該高等教育機関がある都道府県・指定都市の9割前後が、更なる連携強化が必要だと認識しているといった回答でした。また、高専については8割、専門学校については6割が、更なる連携強化が必要というふうに回答しております。
また、反対に、高等教育機関の側にも調査を行っておりまして、22ページ、23ページの右上にもあるとおり、7割の高等教育機関が、更なる連携強化が必要と回答しております。
また、その更なる連携に当たっての課題としては、15ページ目、あるいは、25ページ目に書いているとおりなのですけれども、地方公共団体側、高等教育機関ともに、連携するための専門家あるいはコーディネータの不足を掲げる回答が最も多くなっております。
最後に27ページを御覧いただければと存じますが、地域連携プラットフォーム、この全国的な設置状況について、地方公共団体側と高等教育機関側の両方に聞いたところです。
まだこれは精査中の値ではございますけれども、今回答いただいている内容としては、全国に295の地域連携プラットフォームが存在するとの回答が得られたところです。数の多さだけを求めるのではありませんけれども、どこの地域においてもこういった枠組みというのは必要になってくると考えられるところ、今のところ、2県を除いて、45都道府県に存在していることが確認できたところです。
今回回答として得られた地域連携プラットフォームの個別の状況については、次のページ、28ページ以降に一覧としてつけておりますので、適宜御参照いただければと存じます。
最後ですけれども、参考資料、データ集の新たに追加した主な資料について説明したいと思います。前回同様に、新たに追加した資料については、ページ数に黄色のマーカーを付しております。
お手元の参考資料1、関係データ集という表紙になったものですが、こちらの4ページ目を御覧いただければと存じます。つい先日も報道でございましたが、出生率もしくは出生数の推移ということを示したデータでございます。先日報道のあったとおり、昨年の出生者数は約72万7,000人と、前年に比べて4万3,000人の減少となっております。
また、大きく飛びますが、130ページを御覧いただければと存じます。130ページ、先ほど本文の中でも説明いたしましたが、大学、短大、高専における障害のある学生の在籍者数の推移を示したものですけれども、これを御覧いただくとおり、10年間で約4倍に増えているといったことが分かるかと存じます。
また、132ページを御覧いただければと存じますが、今度は外国人児童・生徒、これは初等中等教育、いわゆる小・中・高等学校等に在籍する外国人児童・生徒数の推移ですが、近年大きく増加していることが分かります。
続いて、206ページを御覧いただければと存じます。206ページは、大学段階における財政措置と費用負担の仕組みの全体像を示した資料となっておりまして、左上から奨学金等の経済的支援、いわゆる個人補助の部分、真ん中あたりに基盤的経費、右のほうに競争的資金を記載しているとともに、右下のほうにあるとおり、企業等からの収入構造も併せて整理をしているところです。
208ページ以降には日本の大学の財政状況、212ページ以降には諸外国の大学の財政状況を示しております。
また、218ページを御覧いただければと存じますが、こちら、国公私立大学の授業料の推移を示したものです。
220ページには、さらに消費者物価指数の推移、さらに124ページには、国公私立大学・短大別の家庭の年間平均収入の推移を示したグラフを掲げております。
最後、231ページを御覧いただければと存じます。こちら、将来推計と書いた資料でございますが、左の表が、先ほど申し上げた出生数の減ということで、前年度に比べて毎年どれぐらい減っているかということを示したものですが、過去5年間平均しても、毎年大体4万人ずつ減少しているというのが今の実態です。
また、右側ですが、大学・短大の入学定員を示したものになっております。例えば、大学の入学定員の平均値を取りますと810名、また、大学・短大合わせても630名ということになりますが、これは大規模な大学が全体の数を押し上げているという実態もありますので、入学定員の中央値を取っていくと、270人ということになります。
先ほどの毎年の減少率と入学定員の中央値、この辺を掛け合わせて割戻して見てみたところ、毎年、大体この中央値の大学が86.5校ぐらいの規模で影響を受けてくるといった試算も、この中では追記をしているところです。これは、「はじめに」の文章にもこの数字を記載しているところです。
あわせて、参考資料2を御覧いただければと存じます。こちら、関係資料集ということで用意していますが、41ページから42ページにかけて、先週金曜日に閣議決定されました骨太方針における高等教育関係の記載内容を抜粋しております。
特に42ページあたりですけれども、中ほどあたりに、まさに今御議論いただいている高等教育の機能強化に向けた質・アクセス・規模の在り方について、2024年度中に一定の結論を得る、こういったことが閣議決定なされておりますし、また、その下の部分でございますが、運営費交付金、あるいは私学助成の基盤的経費を十分に確保していく、こういったことも政府の大きな方針として新たに記載されたところです。
また、92ページ以降に、単位互換、あるいは履修証明、さらには単位累積加算、こういった制度の関係の資料を追加するとともに、192ページで、奨学金制度については、近年、様々な制度改正が行われておりますが、その近年の制度内容の変更事項について、記載を追加したというところです。
長くなりましたが、私からの説明は以上でございます。御審議よろしくお願いします。
【永田部会長】 ありがとうございます。
最初に事務局のほうにお願いしたいことがあります。現在の状況、それから、目指すべき姿、そして具体的な方策となっているわけなので、近いうちにロジックモデルで、どの課題にどの施策につながっているかについて御準備いただきたいと思います。
例えば、連携と言っても、経済的な意味もあるでしょう。科目をシェアするためにナンバリングをということもあるでしょう。ですから、何がどこにどうつながっているかというのを一回まとめていただけるとありがたいと思っています。余分な仕事かもしれませんが、お願いします。
それから、アンケートの結果を見て少しびっくりしましたが、結局、これが問題です。産官学連携や病院の問題で、きちんと県と大概は連携しているので、その辺りで高等教育機関と連携していると思っていらっしゃるのかもしれないのですが、根本的な高等教育施策ということで、本当に9割以上の自治体が窓口を設けているかというと、少し違うかもしれません。
逆に申し上げると、自治体側の認識は、少し関連があれば高等教育と付き合っているという感覚をお持ちかもしれません。それが実は一番問題だと思って、このアンケート結果を衝撃的に眺めておりました。これは感想です。
最初は、今御説明いただいた中で、項目として抜けているような論点があるかないかについて御確認いただきたい。この項目を見て、概要はお読みになっているかもしれませんし、今、追加の部分も説明いただきましたが、項目立てとして、やはり別立てにすべきではないか、あるいは、こういう項目が抜けていないかの辺りから入らせていただきたいと思います。
長丁場ですので、少しセクションを分けながら、いきなり各論の一個ずつだと、多分、ばらばらのところに注目してしまうと思います。ですから、まず、章立て上、欠けている項目はないかということ、あるいは、この項目はどこかに含めたらいいのではないかという、一番大きな概要を皆さんで少し見ていただいたらどうでしょうか。
相当の項目は取り込まれているので、大体いいのではないかと思っていたのですが、さっと見たときに、文章の中でも、学生の多様性というふうに書かれているところや国際競争の中での研究力の強化というのはあります。
しかし、私は留学生の部分が独立して項目としてあってもいいのではないかと思います。今は、いろいろなところに含まれているのです。多様な価値観が集まるキャンパスの実現など、そのほかのところにもあるのですが、見出しの中にはありません。外から見たときに何か認識不足みたいに見えるので、項目として目次にあってもいいのではないかと思います。
どうしても留学生でまとめるのが駄目であれば、多様な学生とか多様な教員というような大学を構成する人々の多様性というのをどこかに記載してはどうでしょうか。障害の学生のこととか、国際的な留学生獲得競争の激化などもあるのですが、後ろのほうに行くと、はっきりと書いてありません。
読むときちんといろいろなところに書いてあるのです。十分書いてあるのですが、まとまった項目が欲しいと思いました。
このようにきちんと書けているかということを、事務局に質問しながらでも結構です。書いてあれば、事務局から何ページに書いてありますという回答になります。まずは、概要でお願いします。その後、一つ一つの細かな項目、お気づきになった点から順番にお話すればいいと思います。いかがでしょうか。
平子委員、どうぞ。
【平子委員】 ありがとうございます。
23ページなのですが、デジタル化の推進という記述がありまして、デジタイゼーション、デジタリゼーション、デジタルトランスフォーメーションと3つのステージを述べられています。この中でも特にデジタルトランスフォーメーションは、もう全く次元の違うもので、デジタルを使って仕事のプロセスに変革を起こすというものなのですね。
昨今言われている通り、AIの進化というのは日進月歩で無視できない存在になっており、おそらく大学の教員あるいはスタッフの仕事を大きく変えていく可能性があるという点から考えますと、もっとAIに対する考察を深めて、16年先の2040年の時点ではどのくらいのAIの影響があるのかということはある程度ここで述べておき、その中で、どういう大学の在り方がふさわしいのかというのを考察するべきではないかなと思いました。あえてAIの影響というのを大きな項目として入れてみたらどうかなということでございます。
【永田部会長】 ありがとうございます。
大森委員、どうぞ。
【大森副部会長】 ありがとうございます。概要ということで、2点です。
1点目は、4に、機関別・設置者別の役割分担や連携の在り方という大きな項目で、それぞれ機関別と設置者別で書いていただいています。このことに関しては、冒頭の議論では、設置者別がどうなのかとかという議論はあったことはあったのですけれども、一応これはこれとしてなのですが。
これ、議論が必要で、私が言ったらすぐということではないと思うのですけれども、これに加えて、この文章の中でも、例えば、世界に伍する研究をされる大学と、地域の人材を育てる大学など多様な大学があるというような表現を文章では入れていただいています。そうすると、その観点というのは、機関別とか設置者別では拾い切れない観点になってきているのかなと。そこは横断するというか、私学でも世界に伍する研究をしていたり、国立でもという言い方自体に語弊があるのですけれども、地域の人材を育てているという。だから、機能別というような項目が必要なのかどうかということです。それは何回か議論には出てきた部分で、文章には入っているのですけれども、そういう必要があるかどうかを御検討いただいてもいいかなということが一点。
もう一点は、概要のさらに概要なのですけれども、ちょっと事務局にお尋ねで、この中間まとめの位置づけなのですけれども、これ、一旦中間でまとめて、このまとめに沿って、今度、後半戦、もっと深掘りとか具体化。例えば、表現の中で、一番最後のここは本当に重要で、43ページの支援方策の在り方とかの部分というのは、こういう観点から、引き続き議論を重ねていくことが必要だ。こういう支援の在り方、在り方、在り方というふうになっているのですけど、もう少し具体的というか、あるいは、抜本的な踏み込みをしたい気持ちではあるのだけど、今回は中間なので、このぐらいで一旦はとどめましょうという理解でよろしいのかどうかということ、書きっぷりですが、お尋ねしたいと思いました。
以上です。
【永田部会長】 ありがとうございます。
少しコメントさせていただきます。この機能別というのは、例えば、大学とは何か、専門職大学は何かというように書いてあるわけです。一方、設置者別のほうは、法律の文言に従ってほとんど書いてあるように思うのでそのような観点です。
ただ、私は必要だと思います。なぜなら、この先の具体的施策というのが欠けているのです。四角囲みのところが、ほかは全部ついているのですがここにはありません。ここの中に、例えば、連携等法人をさらに活性化するためにどうしたらいいのか、あるいは、今、公立と私立の間は、例えば私立が公立化するとかというのはあるのだが、どこまで設置者を超えられるか、あるいは、超えなければいけないということもあります。皆さんの議論を伺っていて、それぞれの個性は残しながらも、各地域でいいところをお互いにと言っているときに、今までの紙の上のMOUでは駄目で、ガバナンス上クロスできるようにならないと一歩も進みません。ですから、四角囲いの今後の具体的施策をここに書いていくと、意味が出てくるのではないかと思います。
ほぼ法律に沿って国公私立の定義が書いてあるだけなので、その先を入れられるといいと思います。そうすると、かなり有効なセクションになると思います。
相当に踏み込んだ連携、統合までいかなくても、連携はやらなければいけないと思うのです。それは皆さんの御意見だったと思います。ここだけ四角囲いがないので、四角囲いの具体的施策を述べられたらと思っております。
事務局、どうぞ。
【髙見高等教育政策室長】 大森先生から事務局に御質問いただいた内容、先ほど先生がおっしゃっていただいたとおりなのですけれども、43ページの高等教育改革支援方策の在り方については、この中ほどにございますが、上記3に掲げた高等教育政策の方向性、あるいは、4に掲げた、要は、前に書いている内容をしっかり踏まえた上で、それぞれどういった形で財務構造を考えていくのかということも御議論いただく必要はあると思っておりまして、そういった意味では、まず中間まとめを取りまとめていただいた後に、秋以降になると思いますけれども、この内容のさらに具体的なところについて御審議いただきたいと思っているところです。
【永田部会長】 それから、先ほどAIの話が出ましたが、数理・データサイエンス・AIという答申が出ているわけです。あのときは数理・データサイエンスまででは駄目だ、AIまで行かないと未来が語れないと言っているので、やはりAIの部分はもう少し割いて書いたほうがいいかもしれません。ありがとうございます。
伊藤委員、どうぞ。
【伊藤委員】 まず、先ほどの永田部会長のコメントにも、私、賛成なのですけれども。例えば、42ページの私立大学のところに、例えば、学士課程学生の約8割の教育を担うなどというふうに書いてあるのですけれども、もともと、これ、日本がそれを選んできた道なのですよね。
今、例えば、議論で、国がしっかりと教育費を持つべきだと。それがそうだとすれば、100%国立でもよかったわけです。でも、それをあえて選ばずに、明治から国立大学と私立大学と、また公立大学という形をつくってきて、結果的にこの割合になっているわけですけれども、これを実際に我々としてはどう考えていくべきなのかというのは、実はもうこれは日本が選んできた道でこうなってきているということをまず明らかにした上で、私立大学は結果的には担っているのですけれども、でも、国立大学をそれだけしかつくらなかったというのも事実なので、その辺のところは、どうしてそれを日本は選んできて、今後は何を日本は選んでいくことによって、どれだけのお金をつけていかなきゃいけないという議論をしないと、なかなか発展性がないのではないかなと思います。結果的にこうなっていますみたいな形ではなくて、やはり我々がこれをずっと責任を持ってここまで持ってきたことなので、それに対して軌道修正をするのかどうかということが、今議論されるべきことなのかなというふうに思っています。
あともう一つ、現状のところで、もともと用意していただいた資料の中には、例えば、大学2年生が平均的に授業時間以外に勉強する時間が、5時間以下が49%だとか、そのようなデータはもう相当用意していただいて、それを基に議論した結果として、例えば、知の総和を上げるためには、4年間みっちり勉強するだけでも変わるじゃないかということも明らかになってきているわけですから、そこら辺のところをどうやって。例えば、会社は、人が減っているので、早くから人を求めるかもしれないけれども、でも、今、会社に就職する人たちの4割が再就職を考えていて、転職を考えながら新入社員として入っていく中において、会社としても、今までのようなみっちりとした研修ができない状況になっている。そうなってきたときに、日本の知の総和、日本として本当に人を強くしていくためにどうすればいいんだろうかということが、それが大学がどういうふうに担えるかということが一番大きな問題になってくるのだと思うのですね。
私もこの委員会に出てから相当大学の歴史というのを読むようになったのですけれども、私立、国立、帝国大学といっても、帝国大学がもともとできたときには、私立よりも3年も4年も長いカリキュラムであって、本当にその形の中で教養を高めて、もう実力をつけて行政官になっていくとか、裁判官とかになっていくということをしているので、それぐらいの実力をどうやって、例えば、国立が教育を担うための新たな、例えば、あの頃の私立のはるかに上を行くようなことをやってみると、私立だって、それは当然それについていくような形で発展するでしょうし、そういうような大きなデザインをやはり2040年の高等教育の在り方として考えていかないといけないのかなというのが、私のすごく感じているところであります。
今のような形で、今はこうなっていますから、こういうところをちょっとカンフル剤的によくしましょうというようなことだと、うまくいかないと思う。
あと、やはり国立大学、帝国大学が出てきたときから、一体日本の財政は、これで国立に対する財政はもつのかということも最初から相当議論されたわけですけれども、でも、例えば、2040年、GDPの1%を高等教育につぎ込むということになれば、その頃のGDPが幾らになっているか分からないですが、自然と、1%をつければ3兆円ぐらいはプラスでくるのではないかと私は思っていて、そのときに、200万人の大学生に対して、2兆円あれば1人100万円のプラスのところで、2兆円あれば1人平均100万円の奨学金がつくわけですよ。
プラス、大学院生がいたり、いろいろなことを考えたら、3兆円の奨学金をまた配るお金をちゃんと取ってくると。例えば、それは、そのときは私は立派な高齢者ですから、高齢者が国の将来のためにそれだけの税金を払って、奨学金を払う財源を我々が出すのだと決めるとか、または、国債に関したって、もともと国債にはゴールデンルールというものがあって、将来の投資というのがいまだに前提ですから、それが今もう完全に形骸化しているわけですけど、でも、高等教育ほど将来の投資はないわけですから、それに対して、例えば3兆円を取ってきたら、そうすれば、もう国債と税金の組合せで。そうしたら、例えば、形上の値上げをしていたとしても、合格した学校に必ず誰でも行けると、また、プラスアルファで、地方にはバウチャーをつけるなどして、余計地方には絶対に空洞化しないようなプラスアルファの、そこに行くインセンティブをつけるとか、そういう全体的なバランスと、それから、やはり国がそれだけお金をつぎ込むのだったら、国立大学を中心として、本当の意味で帝国大学ができたときぐらいの、先を行くような教養教育というのをもう一度目指してもらいたいなと思うのが私の考えですね。
【永田部会長】 ありがとうございます。
最初の御意見からずっと出ている内容です。これについては、後で議論が出るでしょう。
両角委員、どうぞ。
【両角委員】 ありがとうございます。
項目で抜けているところがないのかということについては、今まで出ている御意見とほぼ共通なところについては、例えば、多様な価値観が集まるキャンパスって、いろんなものがあるので、さっきのリカレントとか、留学生とか、具体的に挙げないと、何を言おうとしているのかということが確かに見えにくいなという気がしていまして。例えば、社会人についても、単位を積み重ねていって、それが学位につながるとか、具体的な論点が何となくまだ見えにくく、目次からは見えにくくなっているということは、確かに気になりました。
あとは、1の取り巻く状況というところは、十分に項目が多いと言えば多いのですけれど、書きぶりの関係として、間違ったことは書いていないと思うのですが、現状どうなのかというようなところの問題認識、高等教育機関で地理的なところでのアクセスの問題が出ているとか、あるいは、もう定員を割れているところが半分以上になって、高等教育機関間の格差が出ている。今度、研究をすごく頑張っている大学にとっても、いろんな資金が足りなくて国際的に戦えないとか、今の状況をどう見ていて、なぜそんなことが起きたのかというような分析みたいなことが必要で、あんまりこれまでの高等教育政策一般のことを論じるというよりも、ここが課題で、なぜそうなったから、今後こうあるべきだという感じに何となく読みにくいような気がちょっとしているというところが気になる論点になります。
そうすると、多分、支援の形も、基本的には支援が、OECDのあれでも公財政支出が0.5と、OECD平均で約半分しかないという状況のままに、きめ細やかというけれど、きめ細やかというよりは、もう少し分厚い支援が本当は必要なのですけど、そういうところの話がないと、結局、今後どうしていくかというところの、なぜ問題だから、どう変えたほうがいいというような構成に、目次だけ見ると、いろいろ書いてはあるのですけど、見えにくいのかなという点が少し気になりました。
また細かい別の論点は、また後の機会に。
【永田部会長】 ありがとうございます。
今、印象的に若干弱いので後で施策を述べるときに、強く言いたいです。
益戸委員、どうぞ。
【益戸委員】 ありがとうございます。
リカレント教育やリスキリングという言葉の定義を、一度きっちりこのメンバーで見直したほうがいいのではないかなと思いました。というのは、全体として社会人のリカレントについては、質とか、規模とか、アクセスとか、様々な事が書いてあると思うのですけれども、参考資料1の122ページのところに、社会人入学者の動向という欄があります。こちらの上段のほうの学部の通学というところを見ると、見誤ったのかと思うぐらいの数字なのですね。これ、2,000人という数字なのですよ。これ、2040年に想定される学部段階の入学者が12万人ぐらい減ると言われているわけですが、とても穴埋めできるという現状ではないと、大きな望みをかけてはいけないのではないかなと思いました。
しかし、今まではこのリスキリングとかリカレントというのは、かなりポイントが高いのではないかという議論があったと思いますし、やはり中堅・中小企業のニーズというのも、新しい資格取得や、新しい技能を身につけるための職業訓練的な学び直しが中心になると思います。一方で、大企業は、将来的に大学院卒生の採用率を増やす方針に寄っていくと思います。そこでリカレントということになると、エリート層に対して、例えば高度人材を目指してもらうというような、大学院のほうに行かせようとする学び直しというようなニーズのほうが高いのではないかと思いますので、一旦ここは一度立ち止まって、ここのベースのところを考えたほうがいいかなと思いました。
【永田部会長】 ありがとうございます。
実は、同様なことが留学生についても言えるわけです。社会人の学びは全然増えていないので増えるための要件がたくさん必要だと思います。減った分を留学生で本当に補えるかということを真剣に考えていらっしゃらないのではないだろうかと思うのです。各大学が今の2~3%を10%、20%にするとか机上の論理で言いますが、ほぼ不可能だと思います。真剣に考えると、そうなるはずなのに書いてあるのです。ですから、例えば、入試も変えなければいけないとか書いてあるのですが、何か切迫感がないという感じはあります。
そのほか、いかがでしょうか。
中村委員、どうぞ。
【中村委員】 両角先生の御意見と少し似ていますが、項目からだけでは高等教育の在り方とか、高等教育がどうかっているのかということについて何を言おうとしているのかが見えにくいと思いました。昨日、山梨県内の甲府商工会議所の議員総会があり、そこで150名ぐらいの方の前で講演をしましたが、高等教育がどういう状況なのかというところは、皆あまり興味がないようでした。その一方、今、大学というところがなくなると皆さんどうなりますかということになってくると、真剣になってくる。つまり、社会、地域における高等教育の価値、在り方や存在などを表に出したほうが、一般の方には分かりやすいように思っています。
ちょうど1週間ぐらい前に、高等教育の現状について、山梨県で最大手の進学塾の生徒さんと保護者を対象にした講演を行いました。講演を聞いた皆さんが何と言ったかというと、大学へ入りやすくなっていいですよね、みたいな感じでした。つまり、あんまり一般の方々に、我々の今やっている議論というのは浸透していない、気づいてもらえていないという感じで、そこが僕はすごく危険だなと思いました。偏差値だとか成績だとかというところだけに絞られて、今後、我々の捉えている高等教育というものがどうなるのかというところは全然考えられていません。
あと、細かなところで言うと、例えば、工学部という学部があるとしたら、工学部って、どこの大学の工学部でもみんな同じだと思っているのですよね。具体的に、例えば高校生が、あるいは保護者の方がどういうふうに考えていくのかというところは、まだまだ我々の議論とは大きく差があるなと思いました。
ちょっとまとめにならないですけれども、要は、立場を、高校生とか、あるいは社会の方とかという立場から書きぶりを変えたほうが、一般的にはすごく分かりやすいのかなと感じました。
以上です。
【永田部会長】 ありがとうございます。
今回、「はじめに」を事務局のほうで、いつもの平板なものから変えたところ、大学の価値を訴えなくなってしまったので、ますますそのように取れるのだと思うのです。いつもだったら書かれることが、いきなり危機的状況の部分だけ書いているからです。
国公私立もう関係なく、先生がおっしゃっているとおり、大学で何をというところの根本について、今回は書いていないのです。ですから、どこかに書かなければいけないでしょうか。やはり少子化で大変ですと言っても分からなくて、大学がなくなりますと言っても、はっきり分からなくて、大学を卒業した人がいなくなりますと言うと、ようやく少し分かってくるようなところはあります。どう書いたらいいか、少し難しいです。
小林委員、どうぞ。
【小林委員】 御説明ありがとうございました。大分充実してきたなという感じはしております。
その中で1点、情報公表についてなのですけれども、現在は、28ページのところの質のところの具体的方策の一番下のところに、ポチとして、情報公表の更なる推進というのがあります。ただ、これ、質に限ったことではないような気がしています。今、中村委員がおっしゃったとおり、外から見たときに、まだ大学の中身がよく伝えられていないとか、経営状況についてなかなか御理解がいただけていないとか、あるいは、先ほどの留学生の問題、あるいは、社会人の学びの問題、特に最近問題になっているのは、奨学金が分かりづらいというようなこともありまして、大学と社会が上手くコミュニケーション取れていないというのは大きな課題だと思います。大学目線では、このまとめ方でいいと思うのですけれども、社会から見たときに、情報公表というところを、単に質の一部ではなくて、項目を立てたほうが分かりやすいのではないかなと感じたところでございます。
以上です。
【永田部会長】 ありがとうございます。
今、中村委員のおっしゃったことがうまくリンクするといいかもしれません。
実は私自身、まだ全部の行に赤を入れているわけではないので、これからやらなければいけないのですが、まだ皆さんの意見をいただく段階と思っています。
今度は少し踏み込んで、細かいことをぜひとも述べていただきたいと思います。
私のほうから事例として申し上げると、あまり我が国が卑下しなければいけないことを書いていません。例えば、なぜ半導体で負けているのかとか、何でグローバル競争になかなか参加できないのかなどです。それが先ほど両角委員がおっしゃったことと連関していると思うのです。それは別に悪いことでも何でもなくて、ジャパン・アズ・ナンバーワンの時代もあったわけです。何かが変わってそのように変わってきているので、書いてもいいことがあると思うのです。そういったことは抜けているかなと思います。もっと具体的なことでも結構です。今度は御自由におっしゃってください。
吉見委員、どうぞ。
【吉見委員】 ありがとうございます。
冒頭の「はじめに」のところと、恐らく18ページの2の(1)の我が国の「知の総和」の維持・向上というところに関わることだと思うのですけれども。
冒頭で、非常にはっきりとした形で日本の長期的な人口減少というものがどれほど重大な結果をもたらすのかということを明確に書いていただいたことは、大変いいと思います。
そのことで申し上げたいことが1点あるのですけれども、過去を振り返れば、確かに1944年から45年にかけて劇的に日本の人口が一時期どんと減ったことはありましたけれども、しかし、19世紀後半以降、日本の人口がこのような形で長期的に減衰するという経験はなかったわけですね。それがこれからますます始まっていくし、21世紀の後半までそれが続くと予想されるという、これは重大なことなわけです。
ただ、人類の歴史を振り返ってみれば、そのような経験は何度も人類はしてきたわけで、一番有名で皆さんが御存じなのは、14世紀から15世紀にかけての全世界的な人口減少です。これはペストのパンデミックもありましたし、それから、寒冷化ということもあって、物すごい数、人類は減ったのですね。そして、何が起こったかというと、人が減りましたから労賃が上がって、人件費が高騰して、どうも経営なんて農家もいろんな工場もやっていられないから、機械化が進んだと。その最たる例がグーテンベルクの印刷術で、グーテンベルクの印刷機というのは、その機械化の一環の中で発明されてきて、その後の歴史を変えていくわけです。
そこで何が一番重要だったかというと、同時並行でルネッサンスが起こったということです。つまり、人類は単に機械化を進めただけではなくて、ルネッサンスという形で、ダ・ヴィンチが出たり、ミケランジェロが出たり、それから、コペルニクスが出たりということをしていったわけですね。また、17世紀から18世紀を振り返っても、人口は若干減少している。若干寒冷化が進んで。それで、そのときに、いろんなことが起こりましたけれども、でも、近代思想とか近代科学というのは、やっぱり17世紀から18世紀にヨーロッパで起こっているわけですね。
日本のことを考えてみても、日本は18世紀初頭まで、17世紀は人口は増え続けていますけれども、18世紀から19世紀にかけて人口は減っているというか、停滞しているわけですね。そのときに、つまり、江戸時代の後半ですけれども、でも、その時代に儒学とか、蘭学とか、塾とか、そういうふうなある種の知的成熟が日本の社会の中にもあったわけで、だからこそ幕末に明治維新を起こすことができたという。
これ、一貫して何を意味しているかというと、人口減少の時代に、いろいろな合理化とか、機械化とか、いろんなことが進むのだけれども、しかし、いかにそこで人間的知性というか、知的創造力というか、そういうものを社会がつくっていくことができたかできなかったかということは物すごく大きくて、この話は、文字どおり、大学の学びとは何かということにつながるのだというふうに思います。
ですから、言いたいことは、つまり、歴史的に人口減少は何度も何度も起こっているという。だけれども、そのときに知的学びというのが大切で、その話は、やっぱり大学の学びということに直結した話なのだということを、冒頭なのかな、はじめにとか、18ページあたりとかで、知の総和とおっしゃっているところ、それは単に量的な総和というよりも、これはそれこそルネッサンスであるとか幕末の儒学・蘭学だとか、そういうものに類するような知的創造力の問題、大学を基盤とした知的創造力の問題なのだということを、多分もうちょっと強く押し出してもいいのではないかなというのが私の意見でございます。
以上です。
【永田部会長】 ありがとうございます。概要に関わることです。
どうぞ、ほかにも御意見をお伺いいたします。
大森委員、どうぞ。
【大森副部会長】 ありがとうございます。
先ほどの概要の議論のところでのお話、概要は終わったのですけれども、両角先生おっしゃったように、最初の部分を見ると、やっぱりかなりやってきたことはやってきていて、それはそれとしてちゃんと評価すべきだとは思うのだけれども、これだけ読むと、これだけやっているのだからもういいではないかと一般に思われかねないと。これだけやっていてもまだ追いつかないのだということをやっぱり見せないと、ここで議論する意味があるのかなと思って、このやっていることを否定するものではなくて、それでも、まだこういう課題があるというのがないとという意味で、中村先生おっしゃったように、誰から見てというのはすごく。やっぱり我々、大学がこの国に必要だよねというのを、もうちょっと国民的議論を盛り上げるということをしていかないと、お金もついてこないし。なので、訴える先が、もうちょっと社会に訴えるようなことをしてもいいなというふうに感じました。
それから、抜本的に2040年って、これ、伊藤先生がさっきおっしゃったお話と、部会長がおっしゃったお話とあれですけれども、例えば、国公私を超えて、連携推進法人で、今、国立大学同士のアンブレラみたいなのはあるけれども、国公私も含めてアンブレラみたいなことが起こっていかざるを得ないような気がするので、もうちょっと抜本的なという項目が、検討すべき項目としてだけでも挙げておいて、あとは、もう入試が機能しなくなるので、入口と出口の価値観の転換みたいなことを本当に日本社会全体がやっていくのかとかということですね。誰でも入っていいけれども、でも、今5年、6年かけちゃうと、保護者からお金欲しいのかみたいに怒られたりするので、そういうようなところは、抜本的な検討を要する事項みたいなのはあってもいいかなと思いました。すみません。さっき言うべきでした。
細かいことです。34ページなのですけれども、ここのところで書き加えていただいたところで、下線のところで、「あるいは、国公私、設置者別のそれぞれに云々」というところで、在り方について、これも文章表現なのですけど、「各機関において」と言うと、ここで言いたいのは、多分、各機関ごとにみたいなニュアンスなのかなと思うのですけど、機関という言葉が、後ろのほうでは大学、短大とかという機関のことを言っていて、でも、ここ、「機関において」となると、各大学においてというふうにも読めかねなくて、そこがちょっと意味が読みづらかったり、結局は、各大学で考えてねという話なのかなというふうにちょっと読めちゃったというところです。
それから、36ページですけれども、やっぱり自治体との関係のところで、今回アンケートも取っていただいて、もうちょっと踏み込めていいと思っているのは、この自治体なんかにはフィールドを提供してくださいねという書き方になっているかなとも思うのですけれども、もうちょっと我々として議論してきたのは、自治体さんがやっぱり自分のところにある大学を自分事化できる仕掛けをつくっていかなければいけませんよねということだったと思うので、その辺も具体を書き込んだほうがいいなと思っています。
それから、42ページですけれども、国立、公立、私立という中で、これは国立大学の先生方の御意見を聞かなきゃなんですけど、やっぱり各県に国立大学があっていただいて、これは本当に地域にとってすごく価値あるというか、意味あるというか、これは本当に伊藤先生さっきおっしゃったように、戦略だったと思うのですよね。各県に置いていくというのは。
そうしたときに、中村先生のところは本当にすごいのですけれども、やっぱり国立大学の役割として、地域の高等教育を牽引していくとか、まとめていくとか、そこまでやらせるなよというふうには怒られるかもしれないけど、やっぱりリーダーシップを取っていく役目があるのだと書いちゃってもいいような気がするのですけど。それは私学人が、ふざけるなと言う人もいるのかもしれないけれど、でも、誰かが怒られてでも牽引役をやっていくというところには、やっぱり国立大学さんに期待するところは多いのではないかというふうに思っています。
一方で、私立大学のところの書きっぷりですけれども、これ、このとおりではあるのですけど、今回、地方におけるアクセスということが非常に重要な諮問になっていることを考えると、地方において私立大学がそのアクセスを確保するために果たしている役目とか、あるいは、地域の若者を地域にとどめることに果たしている役割とか、そういったことを、やっぱり地方私立大学の在籍学生の出身を見ると、かなり高い割合で地元で、地元に就職させていると思うのですね。国立ももちろん高いのですけれども、より私立のほうが高いのは事実であると思うので、そういう役割もあるということを、首都圏の大学さんとそれは違うので、地方においてはみたいなところで書いてもいいのかなというふうに思ったというところです。細かいことです。
あと、全体として、どこかに、ページは探していたのですけど、高校のことを高等教育と書いちゃって、初等中等との連携のところだったと思うのですけど、高等教育との接続と書かれていたところがあったのと、探求の「キュウ」が違っているところと、学修の「シュウ」が違っているところとあったので、最後、検索をかけたほうがいいと思います。
以上です。
【永田部会長】 それは大変です。事務局で調べてください。
【髙見高等教育政策室長】 先ほど大森先生の御発言があった34ページの各機関ごとというお話でございますが、ここに事務局として書いた意図としては、各機関というのは、それぞれの大学、あるいは、短大、専門学校、それぞれにおいてしっかり検討いただくということの趣旨で。
【大森副部会長】 一個一個のになる。
【髙見高等教育政策室長】 という趣旨で書いております。ただ、そこがもし分かりにくい、もしくは、そうではないということであれば、またその辺も含めて御意見いただければと存じます。
【大森副部会長】 そうすると、各大学において、自分たちの適正規模をちゃんと考えなさいよというメッセージだという。
【髙見高等教育政策室長】 その全体の周囲の状況などを踏まえて、しっかり考えることが必要なのではないかと、そういった趣旨になります。
【大森副部会長】 なるほど。結構厳しい絵になっているということです。
【永田部会長】 ですから、どこかに書いてありました。逆に言うと、大学院大学になりなさいみたいなのもあったところです。
【大森副部会長】 ありましたね。
【永田部会長】 それはまた探さないといけません。
濱田委員、どうぞ。
【濱田委員】 地方自治体との連携がなかなか進まない一つの理由として、私が思うには、医学とか看護とかというのは、地方自治体の多分保健・医療に関する部署が関わっていて、教員の育成とかだと教育委員会が関わっていて、高等教育機関としてというよりは、医師を輩出する、あるいは、看護師を輩出する、教員を輩出するほうに多分自治体の目は向いていて、高等教育全体にはなかなか関わっていないというのが多分一番の問題点なのかと思います。
自治体に行くと、この内容だとこちらの部署に行ってくださいというふうに大体回されていきますので、そういう意味で、高等教育全体を考えていただけるような部署というのがないというのは、そういう理由なのかなと思います。一番自治体が重きを置いているのは多分医師であり、看護師であり、教員であるというところがやっぱり引きずっているのかなと思いますので、そこを全体としてどう考えていただくかというのが、縦割りの部分を無くしていくのはなかなか難しいのかも分からないですけど、そういう点をうまくやっていかないと、今後の高等教育全体を考えていただくことにはならないかというふうには考えております。
【永田部会長】 そのとおりだと思います。
堀委員、どうぞ。
【堀委員】 ありがとうございます。2点ございます。
一つが、今回調査をやっていただきまして、ありがとうございました。資料2の27ページの、私も295プラットフォームがあるということは大変驚いたのですけれども、このうち、本体の中間まとめの34ページに、適正化に向けた支援のところで、この地域連携プラットフォーム、具体的な方策として出てくるわけなのですが、今回の295の、今精査中ということではございますけれども、適正化に向けた支援に寄与していただけそうなプラットフォームというのがどのくらいありそうというふうに見込んでいいのかということにつきまして、事務局に教えていただければと思っております。
2点目が、先ほど大森先生がおっしゃった地方国立大学の役割なのですけれども、私も、もう国立大学の役割のところに、地方国立大学は、その地域を引っ張る存在として位置づけられるという形で書いてしまってもいいのではないかなと思っておりまして、そのために予算もつけるというような形で書き込んでいただけるとありがたいかなと思っております。
以上です。
【髙見高等教育政策室長】 先ほどの資料2地域連携プラットフォームの御質問でございますが、これ、現在精査中の数字ですので、まだこれから詳細は引き続き精査していく必要はあると思っています。
先生の御質問のプラットフォームはどれぐらいあるのかというのは、まだ詳細には把握できていないところですが、参考までに申し上げますと、この地域連携プラットフォームに加えて、大学等連携推進法人という仕組みができております。これについては、先ほどお話のあった国立、公立、私立を連携するような仕組みということで、既にもう出来始めているところですが、この事例が全国で8事例、山梨大学と山梨県立大学がスタートだったわけでございますが、今8事例できているということで、こういった取組を中心に、今後も連携の取組が広がっていくのではないかと考えております。
【永田部会長】 平子委員、どうぞ。
【平子委員】 やはり人口減少が非常に気になります。先ほども室長から資料の説明があったとおりなのですが、急速な少子化の進行の一つの原因として、進学や就職を契機として、10代後半及び20代の若者の転入超過が続いており、その傾向は男性よりも女性が顕著だと。
日本に限らず、韓国や中国など東アジアでは少子化、あるいは、出生率の減少が顕著なことは皆さんご承知のとおりですが、その原因の一つとして、過当な入口競争、つまり大学入学が非常に難しいがゆえに、学習塾に行かざるを得ないないという現状があるということ、そして、これらの国では育児が女性に集中していることです。さらには、今の大学の配置が大都市への若者集中を促しているのではないかということです。特に東京に若者が集中する傾向があるがゆえに、結果的には日本の人口の減少が加速されているといった分析があります。
これからの大学の在り方というのは、若者が地域の中にとどまりたくなる大学の魅力をもっと訴求していかないといけない。もちろん大都市の大学に行って勉強したいということは当然あっていいわけですけれども、これからの時代はオンラインで授業できるという時代が来るわけです。地域の中のキャンパスの価値とオンライン教育の価値、あるいは役割の違いについてしっかりと述べることによって、地方にとどまりながらも若者の望む学習ができる仕組みを追求していくことが、少子化のスピードを少しでも緩和することに寄与するのではないかなと思います。
【永田部会長】 ありがとうございます。
益戸委員、どうぞ。
【益戸委員】 前回のグランドデザイン答申から、その後、幾つかの部会を通じて今日に至ってきているわけですけれども、その過程にずっと参加してきて、やはり進んでいないことについては、よりはっきりとした具体案を示していかないといけないと思います。ですから、書きぶりも、例えば2つのことを申し上げたいと思うのですけれども。
1つ目は先ほど小林委員がおっしゃった、27ページから29ページにかけてのデータ活用の話です。例えば、29ページの一番上のほうに、共通プラットフォームの整備や、多様な比較分析が可能となる情報の可視化みたいな表現があるのですけれども、これでは弱いと思っていて、可視化するために共通プラットフォームを整備するという書きぶりが、僕は必要ではないかと思っているのです。
やはり国立と公立と私立がしっかりとデータを整備して、一つのデータとして見ることというのはすごく重要で、さらにプラスとして、全国学生調査というのがありますから、これの学生の成長実感や、大学教育への満足度、学習時間などを組み合わせることによって、既存の偏差値による大学ランキングを打破するような、要するに、入口の難しさというのと、出口でこうなったよというのをはっきり分かりやすくするということが非常に僕は重要だと思うのですが、これはずっとできていない。
逆に、この新しいプラットフォームがちゃんと整備されると、教育力の高い大学はどこなのだとか、違う切り口、言い換えれば、多様な尺度で大学を知ることができるということが実現すると思います。そうすると、先ほど出ている、社会にとって大学の価値は何なのだというときに、こういう角度で見ると、自分のそばにある大学はこういう価値があるじゃないかという見直しにもなると思います。と同時に、大学側の経営者にとっても、新しい切り口で、自分の大学はこういうふうにやっていこうという経営上の観点からも、非常にプラスにつながるのではないかと思うのです。
こういった新しい角度でものを見るようになると、私がもう一つ、どうしても日本としてやっていただきたいことは、イギリスやアメリカの基準での大学ランキングというものの中で日本の大学は何十位だというような形で出てくるのですが、日本発の大学ランキング、日本ではこういう角度で、こういうふうに大学を見ているのだよと、その角度でアメリカの大学を見ると、ここに位置するよみたいなものを、いずれはぜひできるようになってほしいなという願いがあります。
2つ目は、地域人材の在り方についての議論の話ですが、私は、この地域のアンケートの結果を真に受けてはいません。そんなことはないだろうというふうに思っていたのは実感です。やっぱり同友会の活動ですとか、実際、地域金融機関の社外取締役をやっていた経験からすると、そんなことはないと思っていて、しっかりした地域の人材育成の在り方についての議論を行う場をつくらないといけないと思います。今は作れていないと、これもはっきり書かないといけないと思っています。
要するに、真剣に議論する場であれば、協議会の参加者は誰なのかとか、開催頻度はどうするのかとか、例えば、議事録はちゃんと公表するとか、議論した結果について、責任の所在などをはっきりさせる。それが、地域、社会の皆様が納得する結果につながるのではないかと。しっかりした仕組みをつくって、かつ、言葉が正しいかどうか分かりませんので、ぜひもんでいただきたいのですが、権限強化みたいな形での組織体が必要なのではないかなと。今のままでは、私は進まないと思います。
一方で、規模の適正化の方策として、やはり厳格な設置認可の審査というのがどうしても必要ではないかなと。それはどういう意味かと言いますと、安易な私立大学の公立化というのは、私はどうしても気になってしようがないのですね。やっぱり一定の抑制をかける意味で、言ってみれば、この新しくつくる協議会での同意というのでしょうか、議論の結果として公立大学に変えようというようなことが申請基準の一つになるというようなところまでやるべきではないかと思います。
一方で、設置基準の審査の話ですけれども、これだけ文理横断とか文理融合というのは挙げられている割に、設置認可審査というのは、今までのように、経済学部とか、文学部というような審査になっていないのかと。要するに、既存の固有の原理原則審査に偏っていないかというような再確認というのも必要だと思います。そういうものがあってこそ、しっかりした議論というのはさらに活きてくると思うので、そういった思いを具体的にはっきり書くということを今回はぜひやっていただきたいなと思います。
以上です。
【永田部会長】 ありがとうございます。
今おっしゃった最後の部分はかなり重要だと思うのですが、どこまで書けるかという心配ではなくて、どこまで書かなければいけないかを本気で議論しないといけません。
両角委員、どうぞ。
【両角委員】 ありがとうございます。2つあります。
1つが、社会との接続とか連携のところで、私はこれが今後の大学にとってすごく大事だと思っているのですけれど。今、24、25ページとかで、高等教育機関の接続の強化の中で社会との接続とかが入っていて、地域との連携がまた別になっているという、この辺もちょっと整理をしたほうがいいのではないかなと思ったということと、あと、具体的に社会とつながって教育とか研究を一緒にやっていくときに、例えば、29ページにあるような、多様な価値観が集まるキャンパスの実現という、この辺がとても大事になってくると思うのですが。何か抽象的に言っているだけでも駄目な気がしていて、具体的な場みたいなものが地域にないと、なかなか大学と社会とかいろんな地域との連携がつながっていかないのではないかなと。その辺りの議論が抜けているのかなという点が気になったというのが1つ目です。
2つ目は、規模の適正化の33ページの、先ほど大森先生が御指摘したこととも関係するかなと思って聞いていたのですが、適正化って何ですかということが引っかかっていて、今行われている適正化というのは、今のルールの中で定員が確保できなくなったら、現状に合わせて定員を減らせと言っていることが適正化なのですけれど、それは日本社会の状況で見たときに、その地域にこれぐらいの規模の学生が受け入れられるようなキャパシティがあるとか、そういう意味での適正化ではないのではないかという気がしています。
前のグランドデザイン答申のときの結論が曖昧だったなというのがずっと気になっていて、各地域の規模は各地域で話し合って決めてね、以上という感じですから、国の役割を放棄したように見えた感じがちょっとしていて。でも、本当に必要な適正規模ってどういうことなのかという、その何が適正かという議論がなくて、経営の論理だけで書かれているという点がかなり気になりました。
以上2点です。
【永田部会長】 ありがとうございます。
グランドデザイン答申のときに適正規模の話はもともと議論しようとしていましたが、圧倒的な委員の皆さんからの反対で、規模の話を削らざるを得なくて、あの結論になっています。数年たったらこのような状況になっていて、数年前にも同じことを思っていたのです。しかし、同じ議論を進めようとしても、ほとんどの方から反対されました。あのときとは時代が変わったのが、ひしひしとよく分かります。このことは、もう数年たつともっと悲惨で、想像を絶する状態になっていることを我々は書かないといけないというわけです。
それから、その適正規模というのも、先生がおっしゃるとおりで、それぞれの大学のキャパシティがプライマリーにあるかもしれませんが、地域創生と言っているのであれば、そのような観点で見ないといけません。
先ほど濱田委員がおっしゃいましたが、病院の働き方改革等で困っていて、文部科学省のほうからは、医学教育の充実ということで、少しでも時間をつくってくださいというお金が各附属病院を持っている大学に少しずつ出ているのです。一方で、地域医療のために働くことについては、厚労省から出ていて、これは直接大学に来ないわけです。自治体を通ります。大変なことですが、自治体ごとの考え方が反映するので、大学に一定額来るとは限りません。たくさん来る県とほとんど来ない県というのができていて、介入できないのです。これに介入するのと同じメカニズムを考え出さないと、非常に難しいです。権限を与えると、そうなります。ですから、東京はとりわけ今厳しい状況になっているかもしれません。厚労省は自治体ごとに幾ら配りなさいとは言ってこないので、自治体の判断になるので、厳しい自治体にある大学もあると思います。
ですから、この自治体の関与についても、高等教育そのものの成り立ちを知った上での関与の仕方をするように、法整備は難しくても、何かしらやらないといけません。ただ参加してくださいというのでは、同じようなことがずっと続くと思うのです。
吉岡委員、どうぞ。
【吉岡委員】 ありがとうございます。
どうもうまく考えがまとまらないところがあるのですけれども、最初に伊藤委員がおっしゃっていたように、日本の大学って独自の選択をしてきたというのは、そのとおりだと思うのですね。明治以降、そもそも高等教育というのは大きく2つの役割があって、1つは、やっぱりエリート、明治で言えば、近代国家を担っていく人たちをつくるというのと、それから、国民全体の知的水準を上げるというので、これは必ずしもすんなりつながるわけではないようなところがあると思います。国立大学という、帝国大学は、まさにそのエリートをつくるためにつくられたもので、当時で言えば、私学は、それに対して、私塾や何かからできてきたところも多いわけですから、それこそ国民全体の知的な水準を上げるのに役立ってきた。
これは戦後の教育改革のときに、これがまた大きく変わったということがあると思いますが、それでも、やはりエリートをつくっていくという側面と、全体の知的水準を上げていく。しかも、これだけ科学技術の進展が速い以上、誰もがやっぱりある水準を持っていかなくちゃならないので、その教育をどこが担うのかという問題。これはもちろん小学校からの学校教育の問題全体でありますけれども、その中で大学が何をやるのかということだと思います。
この辺のところは、やはりきちんと考えないと駄目で、何となく戦後はうまくだらだらとやってきたということ、伊藤委員はそういうことだと思うのですね。しかも、人口は増えていったので、進学率も増えてきたので、あまりよく考えなくても、個々の大学もできたし、国全体としても何とかやってきた。何とかやってきたというところと、選んだ幾つかのことというのが複雑に絡まって現在の状態になって、しかも、そこに少子化が来たという、そういう話だと思うのです。
したがって、次のステップでは、これはなかなか難しい問題ですけれども、やはりエリート教育をするということと、全体の水準を上げていくということ、それは地域の問題も含めてですけれども、その部分はきちんと考えないとならない。どうしたらいいのかというのは私もよく分からないですし、かなりややこしい話に絡んでしまうと思いますけれども、その点が重要ではないかと思います。
高等教育、大学といったときに、我々はやはりどの大学も平等な大学で考えるのですね。要するに、大学の間にアプリオリに差をつけて考えてはいけないというふうに考えているわけですが、機能を考えるときには、どうしてもその問題を入れざるを得ない。そこの部分はやっぱり踏み込まざるを得ない段階に来たなというのが1点目です。
それから、2点目、少子化が進むことで具体的に何が起こってくるかというと、昔、日本の大学は入りにくくて出やすいと言われていたのですが、今や入りやすくて出やすいところに、全体がそういうふうになってきたわけですね。これは今回の資料に入っていたかどうか分かりませんけれども、永田先生の本か何かの文章に書かれていた、要するに、全体に入る人間が減ると、個々の大学が抱える学生の水準がどうしても下がってくるので、その教育負担が教員にかかってきてしまうという、そういう話があるわけです。
したがって、そのことを考えると、要するに、大学の入り方、入学の入り方と出し方の問題というのも、これも考えなくちゃいけないだろうと思います。日本の大学は入りにくくて出やすかったというのに対して常に批判があって、やはりきちんと卒業を管理すべきであると。これは出口の質保証という言い方でも言われてきたことですけれども、このことはやはりきちんとやる必要が出てきたのではないか。
それは、要するに、前にもちょっと言いましたけれども、例えば、学年制を取るとか、落第をさせるとか、とにかく卒業するのにはやはりそれなりの勉強をしなくちゃいけないというのを制度化する必要が出てきた。それは全ての大学でやる必要があるのかどうか分かりませんけれども、少なくともエリート教育をする部分は、そういうことを考えていく必要は出てくるだろうと思います。
ただ、アメリカみたいにGPAが低ければ退学させてしまったとすると、その退学させられてしまった人をどうするのかということも含めて、要するに、高等教育全体の仕組みの中で、そういう個々の大学の、例えば、出口の質保証というか、管理ということを考える必要が出てきたということです。
もう一つは、先ほどのエリート教育のこととも関係するのですけれども、ここで話されている内容に大学院の話も出てきているし、学部のことで書かれているところ等があるのですけれども、これは中教審の議論の中で、いつも我々は研究と教育の両輪という言い方をしてきました。したがって、大学の教員は研究者をしてきているわけですし、大学の教員は、やはりきちんと研究を背景にしていなければならないわけですけれども、しかし、個々の大学で見た場合に、研究中心的な大学であるということと、やはり教育中心的な大学というのは、事実上分かれてきているだろうと思います。
その場合に、要するに、研究と教育というのをどういうふうにするか。具体的には、研究者である教員の研究をどうやって保障するのか。それも個々の大学の中に大学院を持っているところもあるし、持っていないところもあるので、そのことも含めて、制度の中でどういうふうに配置していくのかということを考える必要があるのではないかと思いますということです。
具体的な方針ではないのですけど、以上です。
【永田部会長】 大変重要で、実はそこなのです。要するに、今まで自律的に、それぞれの大学のプライドと信念でやってきているものが、もう崩れているのに同じように続けているからいけないのです。はっきり申し上げてしまえば、それぞれの大学が求めている水準ではない学生を入れないと埋まりません。18歳人口が200万人超えの時代に比べて、明らかに学生はマスとしての能力は下がっているにもかかわらず、同じことをやっていてはいけないのです。昔は、大学のプライドと見識で済んでいたのだが、今は済まないのです。それが大きな問題なので、我々として、やはり法律と予算で仕切るしかありません。それが吉岡委員がおっしゃったことの回答としては、マインドではなくて、施策、お金と法律になります。いろいろなものをカバーできるきちんとした法律であればいいわけだし、お金のシステムであればいいと思うのですが。
どこまで踏み込むか難しくても、きちんと言わないと、また5年後にこんなに厳しくなってしまいましたではここにいる皆さんは責任を取らなければ。
大野委員、どうぞ。
【大野委員】 ありがとうございます。
申し上げたいのは一つで、複線化についてですが、今後の高等教育の目指す姿の24ページに入るのかと思いますが、今は初等と、あと、社会の接続だけですけれども。口幅ったいですが、本来、学びたい人が、その人の興味や関心や適性や能力、もちろん経済力も必要でしょうけれども、大学教育をいつでも受けられるように道を開いておくということが大事ではないかと思っております。
それは、学びたいときもさることながら、様々な経験を経て、それが学びを深めたりだとか、より発展させたりすることも可能だと思いますので、その複線化ということをぜひ、私、前回学位の連続性のところでお話をさせていただきましたけれども、何かそういうふうに整理して、それこそ行ったり来たりしながら、学びたいときに学びたいような設計ができるようにしていただければと思います。
以上です。
【永田部会長】 ありがとうございます。
多分、アクセスの議論というのは、今先生がおっしゃったことだと思うので、今度は、その条件を整えて、大学側が、先ほど出てきたみたいに、しっかり勉強しようという環境に変わらないといけないということだと思うのです。ありがとうございます。
吉見委員、どうぞ。
【吉見委員】 松塚先生、どうぞ。
【松塚委員】 ありがとうございます。
これからの大学の在り方そして大学の役割という文脈で具体的な御意見をいただいた上で、やはり大学でしかできない、他の教育機関ではなし得ないところを強調していかなくてはいけないという観点から、今、吉岡先生がおっしゃってくださった、エリート教育を含む、研究に直結する高度な学術という部分を発展させていくという役割が極めて重要だと思います。一方で、OECDレベルに比べて日本は社会人修学者が少なくこれから増えていくだろうというような観点をどのように表現していくかが大切になっていくのではないかと思います。
その意味では、知の総和というのはとても大切なキーワードだと思うのですけれども、社会人というところに目を向けたときに、例えば、これまでも文部科学省の資料にも用いられてきた「学び続ける」社会、ラーニングソサエティというような、何かキーワード的な表現、どのような年齢においても学び続けるということの大切さ、そして、それが大学でなければなぜいけないのかというようなディスカッションが大切なのではないかと思いました。
そういった観点では、益戸委員がおっしゃいましたように、社会人のリスキリングなどの言葉の定義を一度見直すことが大切だと思います。産業だとか社会のニーズに応えて、自身の技能を高めていくというニーズは大切だし、それが社会人の学びの主立った役割を占めるとは思います。一方で、今回の資料にも示していただいたように、可処分所得は東京だけではなく、地方においても相当見られます。余裕のある方々が、仕事をするための技能育成だけではなく、それも含むのかもしれないのですけれども、もっと学びを続けたいというような、そういったニーズも酌み取っていく環境を、例えば「学び続ける社会」というような表現で、大学独自のアプローチでつくることが可能ではないかと思います。
学び続ける社会における大学の役割というのは、特定しやすい部分と必ずしも特定できない部分がこれから出てくると思います。リスキリングは比較的特定されやすいほうですが、例えば、学び直しイコールリスキリングというふうに、一部のメディアなどは同じものとして扱っている一方で、就職するための技能、もしくは、ジョブ型雇用で問われるリスキリングというような意識が定着しつつあります。しかし必ずしもそうではなく、少なくとも日本以外の国では、リスキリングは学び直しイコールでもないし、ジョブ型雇用に伴うトレーニングというふうに定義されているわけでもないということもありますので、その辺りをしっかりと見定めていくということは大切だと思います。
なぜかと言いますと、社会人の学習者というのは、これまでの伝統的な学生に比べて、特定のときに特定の分野で急に減少したり上昇したりして、フラクチュエーションが激しくなると思います。そういったときに、大学がどのように反応していくのかということを考える上でも、どのような社会人の学び方があるのかということを少し具体的に詰めていくという必要はありそうな気がいたしました。
ちょっとためらいましたのは、30ページのところで、既に多様な修学者をどのようにして捉えているかということを明確に述べられておりますので、更なる表現は必要かどうかということはちょっと迷ったのですけれども、何か包括的なキーワードのようなものがあったら、分かりやすいのではないかと思いました。
以上です。
【永田部会長】 ありがとうございます。
それを具体的に直すとすると、設置基準と思いながら、聞いていました。大学の学びとか何ですかということに基づいて、設置基準になっているかどうかなのです。大学における教育、大学における研究、それから、大学におけるそれらの社会への還元ができるように大学が設置されているかどうかなのです。
この一つ前の期が、教育と研究を両輪とした大学という話だったのは、その研究の部分が、あの後で、研究できる環境を整えているかどうかという観点がようやく設置基準に入りました。そういったところまで実は戻っているのです。
先ほどのプライドの話もそうなのですが、今おっしゃったことは非常に重要で、もう一回大学で学ばなければいけないことは何ですかということを自覚していくことから始めないと、うまく将来像をつくれないかもしれないのです。だから、そのような意味で、とても重要な御意見なのです。
小林委員、どうぞ。
【小林委員】 ありがとうございます。
先ほど益戸委員、両角委員もおっしゃっていましたけど、やはり地域の人材をきちんと地域でニーズ、需要をちゃんと想定しながら育成していくということで、地域の適正規模というのが、現状の成り行きではない形で考えていく必要があるというのが、多分、36ページからの具体的方策のところに書かれていると思います。
どうもこの地域ってどこなのだというのが、非常にたくさん言葉は出てくるのですけれども、分かりづらくて、どうも都道府県単位で話しているような気もしますし、公立大学では市立もありますし、先ほどの全国の地域連携プラットフォームの地域は295あるということになったときに、どこに権限を渡して、地域のある程度の人材需要というのを想定して、そこに対して意思決定をしていくのかというのが、若干分かりづらいような気がしています。地域という言葉がたくさん出てくるのですけれども、やはりこの地域というのをどう定義して、どのように意思決定のボードを持っていくのかというのは、一つ大きな課題なのかなというふうに、これを見て感じました。
以上でございます。
【永田部会長】 そうです。冗談で申し上げると、藩ですかという感じがあります。
吉見委員、どうぞ。
【吉見委員】 ありがとうございます。
今の小林委員の話にちょうどつながる形になるのですけれども。このページで言うと、25ページから26ページにかけてと、それから、今の36ページからのところもあるのですけれども、地域連携のところについて一言コメントさせていただければと思います。
非常に乱暴なことを言いますと、長期的な日本の人口減少の最大の下手人というのは、僕は東京だと思います。東京一極集中がやっぱり根本的に問題なのです。令和5年度の出生数が72万、合計特殊出生率が1.2って、大変な数だと思います。
でも、これを細かく見れば、東京は0.9幾つなのですよね。1以下なのですよ。沖縄などはかなり高くて、地方のほうが基本的には高いわけですね。概して言えば。つまり、東京は人口の巨大なブラックホールであって、これは多分変わらないのですね。構造的なものだから。東京でどんな政策を施そうが、東京の人口率はそんなには高くはならないと思いますし、東京集中が続く限り、日本の人口減少は確実にもっともっと悪くなるという、こういう構造がある以上、やっぱり東京に大学が集中し過ぎているのだと基本的に思いますし、地方の大学をもっとちゃんとエンパワーしていく必要があるということは基本的な方向なのだと思います。そのときに、地域との連携、つまり、基本的に、この地域との連携というのは、やっぱり地方のほうに軸足があるべきだと私は思います。
そのときに、地域との連携ということはどういうことがあるのかということを考えてみると、僕は文系の人間なので、理系のいろんなフィールドのことは十分分かっていないのですけど、例えば、やや文系に近いところで言えば、地域で90年代から2000年ぐらいに、美術館とか博物館とか図書館とか、いっぱいつくったのですよね。だけど、県立・市立の美術館、博物館、図書館と大学は、本当は一緒にもっと深く連携すれば、その種のやや文系のマネジメント人材の育成とか、いろいろな分野での活用ってもっとできるはずだと思いますし、美術館や博物館や図書館や、そういうところをフィールドにして地域資源を活かしていくようなプログラムや教育というのはもっと可能なはずだと思っています。
それから、関係人口が大変話題になっていますけれども、関係定員という言葉があるのかどうか分からないのですけれども、学生たちが東京の大学と地方の大学でずっと4年間いるというのではなくて、もっとぐるぐる回っていくというか、教員も回ったほうがいいのですけれども、要するに、東京と地方で一緒になってやるというような、人も回っていくというような、何かそういう仕組みもあり得るかもしれない。
つまり、具体的な策を立てていけば、やっぱり地方の地域と、あるいは、知的・地域的な資源を本当に活性化させて、それを知的な生産力につないでいくような仕組みづくりを大学が担うということは非常に重要なことだと私は思っていますし、その辺の具体策も含み込んで、25~6ページとか36ページあたりに、もうちょっと深掘りできるのではないかなという気がいたします。
それから、一つ、アンケートのことなのですけれども、これ、自治体と大学との連携で、でも、さっき益戸委員の御発言にもありましたけれども、地方の財界というか、企業というか、それぞれ経済界ありますよね。そこをやっぱり入れて考えたほうがいいのではないかという気がするし、大学と地方の経済界、財界との連携って、もっとあるのではないかという気が実感としてしますね。
なので、自治体って、東京都も僕はそんな気がしますけれども、言っちゃいけない。それで、大きな県レベルの自治体って相当縦割りで、国以上に縦割りという印象を私は持っていますけれども。そうすると、これ、うまくいくはずがないのですね。大学と地域の連携に、産業界はもっとフレキシブルなので、大学と地域の産業界の連携はそれなりに結構動いている気がして、自治体が問題じゃないかという気もしないでもないのですけれども、縦割りどうにかしてくれという気がしないでもないのですけれども。なので、そこも含めて、地域の連携というのを、もうちょっと草の根のところから考えたほうがいいのではないかということを、これはアンケートを見ながら思いました。
以上です。
【永田部会長】 ありがとうございます。YouTubeの前で言いにくいことを言っていただきました。
伊藤委員、どうぞ。
【伊藤委員】 先ほど吉岡委員が私の言おうとしていることを上手にまとめていただいたので、ありがとうございました。
そのときに、永田部会長がその後おっしゃったことは、例えば、5年後、あのときの議論は何だったのだと言われたら大変なことになるというのは、まさにそのとおりで、実は、今回のこの議論をさんざん続ける中において、私もいろいろ取材を受けたりする中において、2040年以降とは言うのですけど、2040年以降の施策を幾ら話しても、そこに行くまでのタイムラインでどういうことをしていくということを示さなければ、5年後にそれに向かっているかどうかさえも分からない。でも、人口減少はもう着実に進んでいくと。
ということは、これ、タイムラインに対して適正規模、地方の配分も含めた適正規模は何なのかとか、また、縮小されていく中において、一部の大学は淘汰されていく中において、その位置づけというのはどういうふうになっていくのか、どれぐらいが適正規模なのか。また、さらには、結果的には淘汰されていくときには、個人負担というのは、国立、公立、市立でそんなに違わなければいけないものなのか。でも、個人負担はある程度一定にしたとしたら、じゃ、それに必要な奨学金というのはどれぐらいの規模なのか。
また、さらに、今、吉見委員もおっしゃったような、様々な地方連携、それから、様々な旅する教員と学生みたいな連携のプログラムができたときに、それは、どれだけそれが可能で、お金が必要になっていくかということを、まずタイムラインを示すことによって初めて国大協とか私大連とか、様々な中で、これをやるにはこれだけのお金が必要です、これだけのことをやるにはこれだけのものが必要ですということが出てきて、さらに、これだけの国からの奨学金も必要ですということが全部出てくることによって、初めて具体的に2040年に向かって進んでいくし、その中で、例えば奨学金が不十分であったら、こんなに奨学金が不十分だったらこんなことになりますよというようなことがはっきりと出てくるような気がするのですね。
ですから、個別に今までのモデルの延長で頑張るということが破綻してきているというのが、先ほどの永田部会長の一言がありましたけれども、それをもう少し組織的に、日本国として、世界に貢献する日本としてどういうモデルをつくっていくのかというのが、それが2040年に向かって、どうやってそれを実際にあらゆる方面から示していくかというのがポイントであって、それが今回の中間報告ではタイムラインがすごく曖昧なのですね。それが私が一番気になったことで、それが本当にこのまま、ここに集まっている我々が責任を果たしたと言えるのだろうかということの一番の気になっている点です。
【永田部会長】 ありがとうございます。
伊藤委員と似たようなもので同じことを繰り返し話さなければいけない立場になってしまっています。要するに、今の意見というのは、我が国の高等教育を支えるのは誰で、それから、受益者は誰かということをもう一回考えるとはっきりするのだと思うのです。学生個人は、当然ながら、才能を発掘して伸ばして、受益者の一部になるだろうと思います。ここで話しているのは、その状況が、少子化で、もう数も総和も足らなくなっているというときに、それは当然ながら、国が、あるいは、社会がと言ったほうがいいかもしれませんが、受益者とならなくなってしまう可能性があります。必要な数の人が受益を得られなくなってしまうような状況を考えたときに、前々回に申し上げましたが、ある意味の教育国家観というのをきちんとここで持たないと、何回議論しても同じところで止まってしまうのではないかと思うのです。
ですから、堂々と学生という受益者にもっと払ってもらってもいい可能性もあるし、堂々と財務当局からは厳しいと言われても、国に要求すべきものは要求しなければいけません。文科省の方々は、やはり厳しいところがあるのはもちろん存じ上げていますが、ここでひるんでしまったら、将来像ではなくて、概算要求のようになってしまうので、それでは駄目だと思うのです。将来像なので、10年かけてもこれをやらなければいけないということだと思います。
私自身だけ表明しておくと、受益者は学生本人であり、国であるというふうに思っています。ですから、そこは応分しなくてはいけなくて、バランスが幾らかという議論は当然必要だと思うのです。
もう一つ、我が国が、ジャパン・アズ・ナンバーワンの時代とまでは言いませんが、本当に冠たる国になっていくのであれば、それは相分の高いレベルの教育をしなくてはいけません。ましてや知の総和を上げると言っているわけですから、相当に教育にお金がかかるのは当然だと思うのです。今までのとおりやっていたら、今までどおりのものしかできないからです。ですから、無駄がないかというのはその後のことであって、まずは投資しないといけないのだろうということです。
だとすると、大学側も覚悟しなくてはいけないし、地域も、自治体が駄目だというのなら、その地域の産業界もそうなのですが、覚悟しないといけません。ここで失敗したら、その地域はなくなるのだと思います。県庁と市庁舎から大学の人がいなくなってしまうので、普通の自治体の運営ができなくなってしまうと思うのです。そのような状況になるということを、先ほど中村委員が、地域の人が全然分かってくれないとおっしゃっていました。今回は性根を決めてこれを言って、そのために具体的にこうしますということを言っていかないといけないと思います。そうしないと、5年後にまた同じテーマで中央教育審議会で議論していますというのでは、さすがに格好悪いです。
中村委員、どうぞ。
【中村委員】 吉岡委員がおっしゃった、もちろん今、永田部会長もおっしゃいましたけれども、大学と自治体だけではなくて、大学と産業、あるいは金融というところを、やっぱり全体を通して考えていく必要があると思います。多分、小林委員がよくお話しされる産業構造から大学を変えていこうというのも、まさしくそこに当たると思います。
そのときに2つ方向性があって、1つは、地域のニーズを大学のシーズとしてどういうふうに変えていくか。あるものはいいのですけれども、知らない部分もいっぱいあると思います。だけど、こういうニーズがあったときに、この大学だけではできなかったら、ひょっとしたら大学連携みたいな、これはもう地域の枠を超えても僕は必要なのかなと思っています。
あとは、松塚委員がおっしゃった、益戸委員もおっしゃいましたけど、いわゆる社会人教育というか、そこで言うと、リカレントとリスキリングになると思うのですけど、ある意味、リカレントのほうは、どちらかというと、学びの大切さみたいなものを醸成していけばいいと思うのですね。それはもう大学だけではなくて、初等中等の段階から養成していって、学ぶということがいかに面白いかという、今、学習指針もそうなっていますけど、そこが大事だと思いますが。
一方で、リスキリングのほうは、どちらかというと、企業側が、例えば職員の方とかに対して、こういったスキルを身につけてほしいとか、もちろん御本人が行く場合もありますが、そのときに大事なのは、うちも幾つかやっているのですが、企業の側が、そのことに対してきちんと理解ができているかとか、あるいは、企業側の、例えば時間にしても、あるいは措置にしても、そういったところが、ただ本人が行きたいという、企業が行ってくださいというから、大体うちで言うと、金曜日の午後とか土日に来て、いろんな技術を100時間ぐらい磨いて、資格を取ったり、修了証を取っていくのですけれども。その部分で、全体、自治体も企業も含めて、大学で学ぶ、あるいは、高等機関で学ぶというところに対する理解を深めなければいけないなと思っています。その部分が、まだまだ社会は足りないのかなと思います。
一方で、前にもちょっとお話ししたのですけれども、リカレント、リスキリングを受けた方の中で、資格が欲しいとか、免許が欲しいという方がいっぱいいらして、それは既存のものであれば、そういったものを出すような方向性で、これはぜひ規制緩和をしていただきたいし、一方で、そういうものがなければ、新しいものをつくって、その方のインセンティブになるようなものにしていくということがすごく大事なのかなと思います。
一つ例なのですけど、山梨大学、本学の教育学部が、今年度から高校の情報の免許を出すようになりました。これまでは免許を出せないものですから、ただ情報について学びなさいというところで。そうすると、全然来なかったのですね。今回、免許を取れる講習をやると言ったら、他県も含めて、今、40名ぐらい来ている。今まで5人ぐらいだったのが、一気に40名。それで、一度には取れないのですけど、教員の方が多いので、2年、3年かけて取るのですけど、やっぱりそういう自分が学んだ後に何か得られるということは非常に大事で、その部分というものを、ぜひこのリカレント・リスキリングの中でやっていくことが必要なのかなと思っています。
以上です。
【永田部会長】 ありがとうございます。
吉岡委員、どうぞ。
【吉岡委員】 ありがとうございます。
ちょっと戻っちゃうのですが、先ほどの小林委員がおっしゃっていたのは、地域ということが何なのかというのは、やっぱりすごく重要な問題だと思います。前からもそうですが、中教審でこういう文書を作るときに、地方大学と書くか、地域の大学と書くかみたいなところで、非常に微妙に判断しながら文書も作ってきたと思うのですね。
というのは、先ほどの平子委員のおっしゃっていることと違うことを言ってしまうのかもしれないのですが、地方大学というふうに言いますが、先ほど小林委員が言ったとおり、基本的には県単位で物を考えているので、したがって、国立大学も大体は県庁所在地とか大きな地方都市に置かれている。これはある意味で当然かもしれません。私学も大体そういうところに集まるわけですね。そうなると、そこから離れている人たち、学生たちというのは、やはり都市に行って住まなくちゃいけないので、住居費の問題がかかってくるということが一つですね。
それから、もう一つは、要するに、地方のエリートコースというのは、地方大学に入って、その地方の県庁であるとか役所に勤めるとか、大企業の地方の支社であるとか、銀行とか何とか、これも随分再編されてきてしまって、むしろ減っているかもしれませんけれども、やはり地方公務員になっていくというのは一つのルートだろうと思います。
ただ、吉見委員のおっしゃっていることとも関わるのですけれども、やはり学生というのは移動したほうがいいのですが、特に地方で考えるときには、地方で育てて、地方から出さないようにしたいという議論がどうしても入ってきてしまう。これはやむを得ないことだというふうに一方で思いつつも、しかし、学生のことを考える、それから、地方にとっても、地域と言ったほうがいいかもしれませんが、やはり自分の地方とか地域とは違うところで生活経験があったりする人間が戻ってくれたほうが明らかにいいと思うのですよね。したがって、その流動性をどうやって確保するのかということは、かなり真剣に考えなくちゃいけないと思います。そうじゃないと、地方はだんだん同じことの再生産で、知的レベルもある種の感覚も衰えていくということになる。それはかなり重要なことかなというふうに思います。
ただ、放っておくとどんどん東京とかに出ていってしまう。ただ、これは学生の側から見ると、あるいは、地方から出てきた学生からすれば、やはり地方から出たいという人たちは結構いるわけですね。単に都会に憧れるという言葉ではなくて、地方から出てみたい。将来は戻るかもしれないけど、出てみたいということを言う人たちがいるということが一つ。
それから、地方の大学のトップは、先ほど言いました地方国立大学で、これは、したがって、地方エリートコースになるので、結構難しいので、そこに入ることができないとか、あるいは、そこも住居費等がかかるのだったら、東京に出てきてしまうとか、ほかの大都市に出てきてしまうというのは、選択としてあり得るわけです。先ほど言った、地方から出たい、自分の親元から離れて生活したいということで、移動する学生って、ある時期から非常に増えたと思います。それは私学で言うと、新しく学部をつくると、そこに女子学生が非常に集まる。しかも、地方の女子学生が集まっています。つまり、ある時期から、20年ぐらいですか、そういうある種の移動する学生は、女子学生といいますか、女性が結構多かっただろうと思います。それが一定程度の進学率を保ってきたということでもある。
その動機といいますか、その構造をどうするか。つまり、移動を保証しつつ、かつ、地方が衰えないようにする、しかも、地方が活性化するような形でやっていくという方策をかなり具体的に考えるべきであると。非常に短期間で言えば、国内留学型ですよね。つまり、大都市の大学も、例えば、1年間は地方の大学で勉強するというようなことをある種のデフォルトにしていくような、あるいは、地方の大学も、1年間は大都市で勉強するような形というのは、海外と留学の協定を結ぶことができるのだから、そんなに難しいはずはないので、そういうようなことも含めて、やっぱり流動性を具体的に考える必要があるだろうと思いました。
以上です。
【永田部会長】 ありがとうございます。
これは法律ではなくて、施策と予算の流れを変えれば、必要だと思えばできるのではないかと思うのです。ですから、それはここに書くか書かないかは別としても、できることだろうと思います。
大森委員、どうぞ。
【大森副部会長】 ありがとうございます。
今、吉岡先生がおっしゃったこと、国内留学をやろうとしている大学は現実にかなりあって、そういう協定を持っていたり、もう制度もつくっていたり、ただ、実は実績が上がっていないというのが現状です。
うちも東京の大学さんとそれをやっていたり、あるいは、全国の幾つかの大学と連携推進法人を組んでやっていたりするのですけれども、基本的に124単位、自分たちでというところがある中で、学生たちがほかの大学に行ってまで学ぶインセンティブはないのですよね。うちの大学がよくて来ているわけだから、ほかにわざわざ行く必要はないよねと。
だから、吉岡先生おっしゃったように、もうデフォルトで、例えば、124のうちの4分の1は、どこかほかで取らなきゃいけないみたいな仕組みをしない限りにおいては、なかなかそこが今いかないなというふうには感じています。
ただ、その際に問題になるのが、やはり部会長おっしゃったように、お金の問題で、地元だから通えている子が、半年でも1年でも東京に行ってこいと言って、アパート借りろと言ったら、これはもう無理なのですよね。そこが前、内閣府でその制度をやったときも、学生に移動費とかを使っちゃいけないということだったので、なかなか進まないということがあったので、そこはまさにそれをやるべきだとするなら、それをやるためにはどうしたらいいかって、まさに予算と政策の話にひもづくなと思って聞いていました。
それから、吉見先生がおっしゃった地方の産業界との連携は、本当にまさにおっしゃるとおりで、うちも中小企業家同友会が授業をやってくれていたり、何とか協議会がやってくれていたり、経済同友会と連携協定を持っていたりという、そっちはかなりいけていると思うので、書き込むということには賛成です。
小林委員がおっしゃった地域の難しさって、うちも地域、地域って自分でいつも言っておきながら、難しさは本当に感じていて、自分ちの地域って群馬県だよと言いながら、でも、実際はどこまでなのだろうとか。前も申し上げたように、群馬県だけで議論していて、適正規模とか言って、もし多少シュリンクさせても、大学って、じゃ、そこで入らなくなった子は、お隣の県に行くだけなので、何だったのだろうという話になるので、それはまだ私も答えが見えていないです。
それから、よくこの答申で、地方における人材需要とか、人材を考えて地域で人材育成していきなさいって出るのだけれど、出てこないですよ。というのは、一個一個の業界にとっての必要な人材要件というのはあるわけですよ。こういう専門知識を持っていてほしいとか、こうだとか。でも、それって、採用のベースで考えると、地方ではそんなに大きな数ではないので、そうすると、それを一個一個を育てていく、10人ずつ育てていくとかというのは現実的ではないから、みんなで産業界と集まって議論を3年間ぐらい続けたことがあるのですけど、結局出てきたのは、社会人基礎力です。地方においても。そこにプラス、群馬ラブというのが一つ入ったというぐらいなので、そうすると、同じなのですよ。東京の大学さんが育てる学生も、地方の大学が育てる学生も。どこの業界に行っても、自ら学び続けながら課題を設定して解決していける人材を育てていくということなので、地方独特のというのは、特殊な産業構造がある熊本のような例とか、そういうのは本当にあるかもしれないけど、日常のところでいくと。
ただ、それでも、その業界に合わせてというのが必要になると、それごとに学科をつくっていたら、もう大学は倒産しますので、10人ずつを教員集めてと。そうすると、設置指針の問題になっていて、もう少し総合的な要望学域の中で、ディシプリンベースではないものというのをしっかりとやっていくというようなことにならなきゃいけなくて、永田先生おっしゃっていただいた設置指針の問題ということが、これだと経済学としては駄目じゃないかと言われても、いや、そうじゃないのでという話になってくるなというところは言わなきゃいけないなと思っています。
先生方のお話を聞いて、ちょっと思い至りました。
【永田部会長】 ある意味、日本がかなり高度な国だからこその要求なのです。しかし、遡って戻ってみると、アメリカでもどこでもそうですが、リベラルアーツ教育は行っています。専門教育は最後に少しだけ行うだけで大学院に入学してから専門を行ってくださいとなっています。ただ、日本の企業は結構専門性を欲しがるから、今までの日本の大学の形式があっていたと思うのです。もう時代が少しずつ変わっているのかなというふうには思います。
平子委員、どうぞ。
【平子委員】 ありがとうございます。
今の大森先生、あるいは、吉岡先生のおっしゃったことを受けて、考えたことがあります。おっしゃるとおりで、流動性はすごく大事なのですね。地方から出るなというつもりは全くなくて、もっともっと出てほしいのです。むしろ環流するということが大事で、その連続だと思います。先ほど吉見先生おっしゃったように、教員とか学生の環流が必要だということは、まさにそのとおりです。
そのために、具体的にどういう仕組みがあるのかという、吉岡先生からの提案でもあるのですけれども、アメリカにはミネルバ大学という大学があって、基本的には座学はオンラインで行いながら、大学2年生からは、世界各地を回りその地域の社会課題の解決に学生は時間を費やすということを聞きました。
その日本的な応用としてできないかなと思うのは、地方の大学に例えば東京の学生が行く、それも一つの課題を背負って行くということです。ミネルバ大学の、地域に入って社会課題を解決するというところを、東京の大学生が地方の大学に行き、そこで例えば地方の大学生と一緒になって課題解決するような仕組みをつくっていくということが、ある意味では、キャンパスというものの価値を上げることにつながるのではないかと。人と人との交わりからイノベーションは生まれますので、地域の社会課題、それはまさしく地方自治体の問題でもあり、地域に根差した企業の問題でもあるのですが、社会課題を起点にその地域での連携が生まれてくるのではないかと思います。
思いつきの意見ですが、以上です。
【永田部会長】 ありがとうございます。
吉見委員、どうぞ。
【吉見委員】 ありがとうございます。一瞬で終わります。今度は一瞬で終わります。
先ほど来、地域という概念をどう定義するのだということが話題になっているので、私、社会学者なものですから、社会学者的な私なりの回答を言っておきたいと思うのですけれども、これは地域という概念を二重化すればいいのです。つまり、地域という概念には2つのレベルがあって、一つは、土地としての地域がある。もう一つは、ネットワークとしての地域がある。つまり、土地としての地域は、要するに場所ですから、そこのそれぞれの地域の中に伝統的なコミュニティがあって、町内会があって、自治体があってという、これは地域ですね。だけども、オンライン化だとか、現在の様々な技術的な変容の中で、情報化の中で、ネットワークとしての地域がもう一つ出てくる。しばしばこれは片仮名で書きますけれども、これは関係人口とか、それから、先ほど来出ているオンライン上のネットワークとか、今出ている人の環流を含むわけです。
このネットワークとしての地域という概念がもう一つかぶさってきているので、この地域という概念が2つのレベルの関係をどういうふうにして、そこにどういうふうに大学が関与するのかということが、結構面白い課題になってきているのだと私は思いますので、それなりに概念定義はできるはずだと思っています。
以上です。
【永田部会長】 ありがとうございます。
先ほど吉見先生が東京がいけないという話をされていました。これは文科省ができる施策ではないのですが、フォーブス500のデータで、アメリカの企業の7割ぐらいの本社は、ロッキー山脈と東海岸の間に移っていて、もう西海岸、東海岸にないわけです。アメリカは、企業自体が全部移っています。窓口だけ東海岸、西海岸、つまり、ロサンゼルスとかニューヨークに置いてあります。基本的には、活動は全部、物価も安いし、生活環境のいい場所にみんな行っているわけです。そうすれば、そこはどんどん活性化されます。日本の自動車メーカーは全部その辺りに今行っています。例えば、ホンダであればオハイオ州のようにそれぞれ地域に散らばっていっているわけです。そこに大きな雇用も生まれるし、新しいメトロポリタンがそこにできていくことになります。
全く日本にはその考え方がなくて、何でも東京に集まればいいという方針になっているでしょう。文科省がこれを再構成するのは難しいが、国のつくり方そのものをやはり考えないといけません。先ほど言ったように、必ずもう地域に出かけないとできないため、実際にアメリカで自動運転の話をしようとすると、オハイオに行けば議論できます。そのような時代にもう入っているのに、日本だけは東京なのです。やはりそこが大きな問題で、地域の問題を根本的に解消したければ、多分そこから手を着けるべきでそれを先導する教育のシステムがあればいいのです。それが書ければ、文科省らしい提案になるのだと思うのです。経産省に言わないと実際には企業は動かないでしょうが、こうだからという理由をつくれるといいと思います。
吉岡委員、どうぞ。
【吉岡委員】 永田委員のおっしゃったこととほとんど重なって、私が思い出したのは、パリ12大学というヴァル・ド・マルヌというところにある、パリの東のほうにできた割と新しい大学なのですけど、そこは、要するに、大学をつくると同時に、企業の研究所もつくって、フランスですからもちろん国立大学なのですけれども、ディズニーランドの近くで、広大な土地を開いて、そこに大学を新しくつくると同時に、企業の研究所や何かを全部配置していくわけですね。本当にそういうことをしないといけないだろうと思ったのですが、私も、ここで言ってもしようがないかなと思ったので言わなかったのですが、永田先生おっしゃったので。やっぱりそういう発想を持っていかなくちゃいけないだろうと思います。
それから、先ほど言ったこととちょっと重なるのですけれども、やはり地方の大学が、例えば、地域で連携して閉じてしまってはいけないわけで、それが要するに外に開いていかなくちゃいけないわけですよね。そのためには、それぞれの大学とか地域の連合体が、要するに、都市とかほかのところの地域から人を呼び寄せられるようにしなくちゃいけないわけです。それがやっぱり非常に重要なことだと思います。
流動性のことで言えば、昔は、これは東京に人が集まっちゃう話かもしれませんけれども、東京には県人寮というのがたくさんあった。東京だけではなくて、大学のあるところには県人寮がたくさんありました。それから、地方にも寮があったわけですよね。やはり寮が持っている機能というのは、ミネルバもそうですけれども、一緒に暮らしながらというだけではなくて、人の移動を保証する非常に重要な要素だろうと思います。単純に寮を付加すればいいというふうには思いませんけれども、やはり住居費が大変だということも含め、それから、その地域に地域以外の人たちを呼び寄せる、あるいは、県庁所在地にある大学であれば、県庁所在地でないところにある地方の中の地域の人たちを集めるためには、やっぱりそういう住環境等を充実させるということは、当然ながら必要なので、そのことはかなり具体的に考えるべきだし、こういうのに書き込んでもいいのではないかなというふうに思いました。
以上です。
【永田部会長】 ありがとうございます。
大森委員、どうぞ。
【大森副部会長】 ありがとうございます。
今の永田部会長のお話でいくと、多分、今、制度的に一番近いかなと思っているのは、内閣のほうで持っている地方大学・地方産業創生交付金だと思います。あれは悪くない設計になっていると思っていて、あの申請主体は自治体なのですよね。なので、本腰を入れないと駄目だし、自治体も持ち出しをしなきゃいけないということで。ただ、これ、結構ハードルが高いことは確かです。
もう一つは、これからの新しいチャレンジになかなかあれが使い切れないというか、既存の地元の企業さんと組んで、こうならばというところが書けないと、これからこういう産業をここで起こして、誘致をしてきて、大学もそういう研究をするから、人材育成のエコシステムをつくるので、これからそれをやりますというのは、なかなか、本当にできるのですかと言われて、投資にくれないのですよね。
なので、もうちょっとそこまで、今回の、例えば、DX人材の3,000億みたいに、準備期間に使ってもいいみたいな在り方で、もうちょっと大学と自治体が、じゃ、この産業をここに呼んでこようよということに使えるような制度設計があるといいのだろうなと、今部会長のお話を聞いて思っていました。
あと、さっき平子委員がおっしゃった東京の大学さんがというのは、これ、多分、全国で実はもういろいろ動いていて、日本版ミネルバみたいなのも、地方大学同士でもやり始めているところが出てきてはいます。
うちも、慶応の学生さんが3年間、前橋に入り込んで一緒にやってなんていうことをやって、地元民が自走できるようになって引き上げていきましたけれども。だから、それ、すばらしいのです。だから、そういうこともなっているので、それをもっと発掘していくと、まねできるものがいっぱい出てくるかなというふうには思っていますけど、その方向は絶対そうだと思っています。
ありがとうございます。
【永田部会長】 ありがとうございます。
最後にフォーカスをもう一回絞りたいと思います。それは、両角委員がおっしゃった適正化の意味なのですが、意味は、両方取れます。ただ、地域という問題を含めて、その適正化の指標というのは何ですかということです。
これを書くときに、皆さんから合意いただけるのは、きちんと積極的なKPIなり、目標を立ててやらなければいけないというのであれば、その適正化、実は何度考えても難しくて、人口というのは、一つの指標になっていて、人口が少ないところに大学の数が多くあってもいけないわけでしょう。ここで最後に皆さんからの知恵が欲しいのですが、その適正化と言ったときに、もし地域全体での適正化を本当に述べられるとすると、その適正化の標準としての何かが必要なのです。そうしないと、言い合いになっただけで終わってしまうからです。何をもって、地域における規模の適正化とするか。今回は、こちらで書いている一部を切り取って、地域における適正化という問題について、皆さんから具体的な御意見が欲しいのです。
もう簡単なことは言ってしまいました。人口というのは、一つの重要なパラメータでしょう。それはもう間違いないのですが、そのほか、一体何をパラメータとするのでしょうか。ここはその責務があって、それを書かないと、いつまでたっても何の適正化もできません。大学側の教育のレベルとか、その大学が考えているポリシーというほうからも、もちろん自発的にいろんなことが起こるわけですが、それでも、先ほどおっしゃった観点はかなり重要なので、ぜひとも御意見をいただきたいと思うのです。
両角委員、例えば、人口以外に何が考えられるでしょうか。
【両角委員】 別に。いや、まず人口だろうということは思ったのですけど、それ以外、なかなか難しいっちゃ難しい。人口以外って結構難しいのかなと。経済規模みたいなことだと、それを大きくしていくということは必要だと思うのですけれど。ただ、やっぱり人口当たりの学部生の数とか、人口当たりの大学院生とか、そういうものがやっぱり一番基本にはなるかなと思います。それ以外で言えということに全然答えていないので、申し訳ないのですが。
【永田部会長】 人口構成というのは考えないといけません。
益戸委員、どうぞ。
【益戸委員】 基本は人口だと思うのですけれども、先ほど伊藤委員がおっしゃったタイムラインというのが重なってくると思います。地域をどの範囲にするかという、道州制なのか、県なのかという話はちょっと横に置いておいて、基本的には、各自治体が、今後の5年、10年、20年先のどういう経済規模になっていくのか、自分の県は、例えば気候であるとか、いろんな要素を含めて、どんな場所になっていくのかというのは必ず持っていると思うのですね。そこの部分を人口の上にかぶせないと、今後発展していく地域なのか、そうじゃなくて、残念ながら人が減って出ていってしまう地域なのかということがなかなか分からないと思うのですね。
もともとはこの議論は、急速な少子化が進むという大前提で来ているわけですから、残念ながら人口が減って消滅していってしまう地域も含めて考えなければいけません。どうしても、そこには人口プラス、やっぱり経済がどうなるかということが重要だと僕は思います。
【永田部会長】 ですから、自治体が、教育をビジネスにしてやるのだというところが出てくると、また違う考え方を載せることができます。先ほど吉見委員がおっしゃったようにそこまで自治体が本当に考えていないような気はします。いいチャンスかもしれなくて、本気に考えていかないといけません。
人口をゼロにしていいわけはないので、何かしらの接点があって、あと、人口とか経済の問題を載せて考える適正化というのはきっとあるのだろうと思うのです。
ただ、これを聞いて各自治体が、教育を産業化するのですというのが出てきてくれれば、いいのですが。
吉見委員、どうぞ。
【吉見委員】 今の益戸委員の話と重なるのですけれども、人口は基本的なのでしょうけれども、いつの人口かということはやっぱりあって、つまり、現時点での人口では多分ないのですね。2050年だったら、2050年の人口がどうなるかという予測値になるから、予測値はある幅を持っているから、そうすると、現在の出生率が、ある種その地域のいろんな要素を加えていったときに、その地域においては回復していくということを考えたり、ある産業が起こってくることによって、人が入ってくるということを計算に入れた予測値としての人口だと思いますし、その際に、もう一つは、関係人口みたいな話があって、定住人口だけなのかということですね。その予測値の中に関係人口的な要素を入れるのかどうかという、そういうことを考えると、もうちょっと振れ幅が出てくるのかなという気がします。
【永田部会長】 伊藤委員、どうぞ。
【伊藤委員】 適正化を何のためにするかというと、全ての大学を守るためにするわけではなくて、あくまでも知の総和を増やす、また、社会・世界への貢献できる日本をつくっていくためであって、そうなってくると、先ほど、例えば、特に上の部分、大学院、本当の意味での高等教育、これからの高等教育に進む学部生を育てる大学というのは、規模を縮小するというのは私はよくないと思います。例えば、大学院や海外の大学院に進みながら、結果的には、本当の意味でエリートとして担っていくような立場の人たちの規模が均等に縮小されるということは、結果的には国力が落ちるということなので、そこのところの力はさらに伸ばしながらも、国全体の力を上げるために、あらゆる私立とかがどうやって伸びていくかということを考えていったときに、最終的な適正化というのは、そのレベルでは、ある意味やっぱり競争がないといけないと思っていて、その競争が、例えば、個人負担をある程度一定にしながら、退場しなければいけないところは退場しなければいけないような形で適正化が図られていく。
それと同時に、やはり地域、地方に関しては、国としても相当戦略的に考えながら、ここと、ここと、ここと、ここという、県が一つの基本になるとは思うのですけど、そこら辺のところをどういうふうに考えながらタイムラインを考えていって、それに対して、逆に、その地域と一緒に、じゃ、それを達成するためにはどうしていけばいいのかということを、経済界も含めて議論していくということになるのかなとは思っています。
【永田部会長】 ありがとうございます。
適正規模が、今度は分配するときには、各大学の特性に鑑みて分配することになるわけで、全部大学院につぎ込めばいいわけでもなくて、全部学士課程でいいわけでもありません。専修学校や短大というのもある程度配分の余地を残さなければいけないので、適正化と言った瞬間にそれぞれの地域にとって本当にベスト、ベリーベストであって、しかも、そこに配置される大学というのも、今度は競争原理の逆なのですが、この大学はこの価値があるから置いておくと、例えば、この係数のうちのこの辺を全部カバーしている、あとは、これがないといけません、こうなっていくわけです。
ですから、この問題にあまり触れなかったのです。皆さんがかなりお考えならば、決めるわけではないが、こういうことを考えた適正化を図らなければいけないということは書けると思うのです。
それこそ、そこに、その地域の知性を集めた人たちが県のための会をつくらないと、全くでたらめな将来像が出てきてしまうと思うのです。ですから、地域を支える全体像は、自治体だけでは駄目だし、産業界だけでも駄目なので、やはりきちんとつくらなければいけないということです。県が出している将来計画もあるでしょうが、それがほとんど架空だという内容になっていたら話にならないわけです。
小林委員、どうぞ。
【小林委員】 簡単に。今、18歳人口が減っていくということを前提に計算をしていこうということだと、規模を考えていこうということだと思うのですが。先ほどのアメリカの事例のように、税制を改革しながら、その地域の産業構造を変えていくとか、基幹産業を新しくつくっていく。そのために、18歳だけじゃなくて、いわゆる社会人、リスキリングを企業と連携してやっていくとか、あるいは、留学生をもっと集めていくというような戦略的要素を残していなければいけないと思いますので、18歳のところと、それ以外の新しいマーケットというところでのKPIというものは、分けて考えていったほうがいいのかなと考えております。
【永田部会長】 松塚委員、どうぞ。
【松塚委員】 関係するのですけれども、適正規模というのがどの程度あらかじめ決めなくてはいけないのかということが気になります。といいますのは、流動性が向上した場合だとか、オンラインがどのぐらい普及するのかだとか、動的で見えにくいところがあります。冒頭の方で、一つの問題に対する対策が他の対策と交差する可能性があるというようなお話が出たと思うのですけれども、例えば、学修者本位の教育や単位の見える化などの質保証面の対策は流動性のほうにも効果を発揮していくと思います。多角的な効果が発生する可能性もありますと、ますますどのぐらいの規模に落ち着くのが適正なのか事前に把握できるのかが心配なところではあります。
【永田部会長】 お言葉を返すようですが、それを決めるのがここです。留学生の数にしろ、産業にしろ、それから、社会人にしろ、こういう施策を行うから増えます、これだけ来るという施策を出した上でのKPIなのです。誰かに任せては駄目なので、こういうふうにして留学生を増やすから、これだけ増えます。これだけ社会人の産業をこういうふうに誘致することを県と協力してやるから、社会人がこんなに流動します。それから、国内留学も、こういう施策をやるから流動化します。我々が考えた上でやらなければいけなくて、今私が申し上げている適正規模というのは、そういう意味です。
こうなればいいということではなくて、やることを全部やった上で、適正規模は何かなのです。ですから、ここでもう具体的に留学生どれだけ獲得できるか、社会人をどれだけ流動化して動かすことができるのか、そのための施策を先に考えないといけません。その後に、そのベリーベストを尽くした上での適正化ということです。お言葉を返すようというのは、先生はそれを今おっしゃっているので、それを話さないといけないのです。
なので、フィロソフィはもう終わりました。皆さん、しっかり考えられているので、具体的にこれを施策に落とさないといけません。そのことをしっかりとこれから中間まとめが終わった後も考えていかないといけないのだと思います。
ですから、責務は重くて、こちらで人口に換算してこうだから、この適正ですでは駄目なのです。2040年にどうしたら社会人を流動化できるのか。例えば、こういう奨学金をつくればこう動くだろう。それから、留学生は、頭では5%と言っているが試験をこういうふうに変えて、寮をこういうふうにつくっていくと、例えば、留学生は全国でこのぐらい増えるだろう。というようなことをここで話すために、今わざと適正規模を出したわけであって、適正規模ありきの話ではないのです。
最大の努力を払った結果、それでも人がどうしても集まらない地域も出てくるかもしれません。ですから、いろいろな要素をかみ合わせて、もうあらゆる要求をどうやったら満たせるかを我々はきちんと考えないといけないのだろうと思うのです。両角委員が最初におっしゃっているのは多分そういう意味です。
終了時間になりました。事務局が中間まとめを今日の意見を入れてどこまで書けるかという問題になってきましたが、しっかりと協力して、皆さんにも御意見を再度賜ったりしながら、進んでいきたいと思います。
次回は、大学分科会と合同の会議になります。ですから、ここにいらっしゃらない方も委員としていらっしゃるわけで、そちらの方々の意見を広くお聞きしながら、我々としてよりよいものをつくっていきたいと思っております。
それでは、事務連絡をお願いいたします。
【花田高等教育企画課課長補佐】 本日も活発な議論をいただきまして、誠にありがとうございました。次回の特別部会は、大学分科会と合同で、7月19日金曜日、15時からハイブリッド形式での開催を予定してございます。
本日御発言できなかった内容がございましたら、事務局まで御連絡ください。
【永田部会長】 ありがとうございました。次は、合同会議で皆さんとお会いすることになります。
── 了 ──
高等教育局高等教育企画課高等教育政策室