高等教育の在り方に関する特別部会(第5回) 議事録

1.日時

令和6年4月26日(金曜日)16時00分~18時30分

2.場所

Web会議

3.出席者

委員

(部会長)永田恭介部会長
(副部会長)大森昭生副部会長
(委員)吉岡知哉委員
(臨時委員)伊藤公平、大野博之、小林浩、中村和彦、濱田州博、平子裕志、堀有喜衣、益戸正樹、松塚ゆかり、両角亜希子、吉見俊哉の各委員

文部科学省

(事務局)池田高等教育局長、寺門私学部長、伊藤大臣官房審議官(高等教育局担当)、奥野大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術政策連携担当)、森友文部科学戦略官、吉田高等教育企画課長、桐生学生支援課長、神山私学行政課長、板倉私学助成課長、錦私学部参事官(学校法人担当)、佐藤参事官(国際担当)、石橋生涯学習推進課長、髙見高等教育政策室長、田井国立大学法人支援課企画官、西リカレント教育・民間教育振興室長、花田高等教育企画課課長補佐、疋田高等教育政策室室長補佐、濱中国立教育政策研究所高等教育研究部長ほか

5.議事録


【永田部会長】  両角先生が若干遅れていらっしゃいますが、そのほかの予定されている方は全員御出席という状況になりました。予定より若干早いのですが、第5回高等教育の在り方に関する特別部会を始めます。
 本日も対面とウェブのハイブリッド会議として開催しております。また、我々の議論の様子はユーチューブで配信されます。オンラインで参加の方々は、自由に御意見を述べられる環境にいらっしゃるという前提で会議を始めます。
 それでは、事務局から今日の御説明をお願いいたします。
【花田高等教育企画課課長補佐】  本日は、ハイブリッド会議及びライブ配信を円滑に行う観点から、御発言の際は挙手のボタンを押していただき、部会長から指名されましたらお名前をおっしゃってから御発言ください。また、御発言後は再度挙手のボタンを押して表示を消していただきますようお願いいたします。また、発言時以外はマイクをミュートにしていただくなど御配慮いただけますと幸いでございます。
 本日の会議資料は事前にメールでお送りしているとおりですが、会場のiPadには本日の会議資料をチャットにてURLをお送りしておりますので、紙の資料と併せて御活用ください。
 なお、4月以降の委員の役職に変更がございましたので、参考資料3のとおり、新たな名簿をお配りしております。また、事務局にも人事異動がございますので、御報告させていただきます。
 奥野大臣官房審議官でございます。
【奥野大臣官房審議官】  よろしくお願いいたします。
【花田高等教育企画課課長補佐】  森友文部科学戦略官でございます。
【森友文部科学戦略官】  よろしくお願いいたします。
【花田高等教育企画課課長補佐】  吉田高等教育企画課長でございます。
【吉田高等教育企画課長】  よろしくお願いいたします。
【花田高等教育企画課課長補佐】  事務局からは以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございました。
 だんだん議論も煮詰まっていく途中です。今日は基本的には、高等教育へのアクセスをいかにして確保するかという問題と、少子化の中で規模をどのように適正化していくかという問題の2つを後ほど徹底的に議論させていただきたいと思います。また、ヒアリングは、そのような観点も含めて、中村委員、濱田委員にお願いするとともに、国立教育政策研究所高等教育研究部総括研究官の朴澤先生にもヒアリングさせていただくという段取りになっております。
 それでは、ヒアリングに入ります。最初は山梨大学長の中村委員です。地方国立大学の一つとしてのお立場から御発表いただきます。よろしくお願いいたします。
【中村委員】  山梨大学の中村でございます。よろしくお願いいたします。本日、私のほうは、地方国立大学の学長という立場から、「地域における大学の在り方について」と題しまして、山梨県の現状や本学の取組などに触れながら、最終的には地域における大学の現状、課題と、それらの対応策につきまして、考えを述べさせていただきたいと思います。
 ここからは資料に基づいて説明させていただきます。資料右下に赤字でページ番号を振っておりますので、まずは2ページを御覧ください。本日の発表事項でございます。主に、1番から5番までは概要あるいは現状、現在の取組等につきまして簡単に説明させていただき、メインは6、7、8、今後の課題あるいは課題解決のための対応策、そして、まとめとして、私の考えている私見、望まれる施策等につきましてお話をさせていただきたいと思います。
 それでは、3ページを御覧ください。山梨大学ですけども、今、4学部ございます。教育、医学、工学、生命環境、これは農学系ですけども。そして、大学院は2つ、教職大学院と、ちょっと変わっているのは、医学、工学、生命環境、農学系を一緒にしまして、修士と博士課程をつくっておりまして、医工農学総合教育部と題しております。これは融合研究を大事にしたいという意味から、4学部2研究科の地方中規模総合大学ということになっております。
 それでは、4ページを御覧ください。こちらは山梨県の現状、主に少子化を基にしまして、表にしてまいりました。まず18歳人口ですが、2021年で7,768人、非常に小さい県です。これが2040年、推計で5,000人ぐらいになって、マイナス35.6%、ますます減少することが予想されるところでございます。
 大学進学者ですが、これは2021年が5,018人、2040年の推計は3,669人ということで、こちらも減少していく中、この後お話ししますけど、特に県内大学進学率というのが非常に低く、24.6%、これは全国32位でございます。そして、県内流動、流出がどんどん顕著になっているという傾向が見られるということが特徴です。
 次に5ページを御覧ください。こちらは前回出されました特別部会の参考資料を基に作っておりますが、各都道府県別の専攻分野別入学定員数の比率です。山梨県では、人文・社会科学系の割合が36%、これは全国14位ですが、一方で、理系、工学分野は、これは県内で本学のみでして10%、これは全国ワースト16位というふうに低く、非常に偏りがあるということが顕在化しております。
 次、6ページを御覧ください。そういう中で、本学の卒業生の県内就職状況ですが、平成30年度から令和4年までの5年間の平均値を出してみました。中ほどにあります赤枠の部分に記載いたしましたが、県内就職者は34%でございます。やはり卒業生も県内定着率が低迷しておりまして、これはこのまま行くと地域産業の担い手不足が深刻化していくという問題を抱えているということでございます。
 次、7ページ、こちらは学部別に表にしてみたのですけども、時間的なこともありますので、説明は省略させていただきたいと思います。
 次、8ページを御覧ください。今度は本学の地域人材養成に係る取組をまとめてみました。幾つかありますけれども、御覧のとおり、本学の強みの研究を生かししまして、リカレント及びリスキリングの講座を中心に、山梨県の人材養成に積極的に関与しているところでございます。例えば、強みの研究としまして、附属病院がございますので、医療機器産業技術の人材養成、あるいはその下の、これは、本学は特に強いのですけども、水素・燃料電池の人材養成。それから、山梨という地の利を生かしまして、ワイン、これはワイン科学研究所がございますので、ワイン・フロンティアリーダーの養成をプログラムとしてやっているところでございます。
 次に、9ページを御覧ください。ここからは「大学アライアンスやまなし」、聞き慣れない言葉かもしれませんが、大学等連携推進法人を目指しまして、本学と公立の山梨県立大学との間でこういったものをつくりました。その説明をさせていただきたいと思います。
 令和元年12月に、一般社団法人の大学アライアンスやまなしを設立いたしました。そして、令和3年3月に、日本で初めての大学等連携推進法人として文科省から認定を受けております。先ほど言いましたけども、公立の山梨県立大学との連携を強力に推進しているところでございます。具体的には、特に左側の教育面が中心でございますが、連携開設科目というものをかなりの数やっておりまして、この後のページでも示しますけども、156科目まで拡大しております。最終的には、この数年のうちに全ての全学共通科目を連携開設科目化したいと。向けて、今、準備しておりますし、多ければいいというものではないので、共通教育科目の精選とか、あるいは学生が選択しやすいような状況をつくり出すということを今、努力しているところでございます。
 10ページを御覧ください。今、御説明いたしました連携開設科目の推移を示したものでございます。初年度、令和3年度は53科目でしたが、令和5年度、昨年の実績は156科目でございます。履修登録者数は464名という形で、かなり多くの数の学生がこの連携開設科目を利用して、自分の選択肢を増やしていくということが分かります。非常に評判はいいと感じております。
 11ページを御覧ください。こちらは、説明は省略いたしますが、アライアンスやまなしの取組といたしまして、設置形態を超えた大学連携でございますので、その背景でありますとか、あるいは先ほどお話ししました経緯、さらには、現在強化していかなければならないような内容を示しております。
 次に12ページを御覧ください。では、運営体制はどうなっているかというところを図示してみました。アライアンスやまなしでの取組ですけども、これは一番大事なのは理事会でございます。左の上にございますが、業務執行の決定等をここで行っております。その下に傘下として2つの委員会を備えておりまして、1つは教育の質保証委員会、もう1つは連携事業実施委員会でございます。ただ、この委員会では全てできませんので、具体的には、その右にございます具体的な連携事業を検討する8つのワーキンググループをつくっております。例えば先ほどの教養教育、156科目と言いましたが、これは教養教育ワーキングでやっていると。そのほか、看護、幼児、あるいは教職課程等のワーキングをつくっているということでございます。
 それでは、13ページを御覧ください。今の話をすると、一見、スムーズに見えるのですが、実際はそうではなくて、かなり苦労したというか、今でも努力していることが多々ございます。連携するに当たりまして、どんなことが問題だったかということで、大きく苦労したのは左側の授業スケジュール、これは両大学は合いませんので、これを一致させること。それから、右にございますカリキュラムに関することでございます。この解決のためには、実際、教学担当、理事、副学長が月に1回、3時間、4時間の話合いを持ちまして、時間はかかったのですけども、この3年たって、ようやく対応済みというところが増えてまいりました。ただ、現在でも、カリキュラムに関しましては、教養教育改革についても科目の削減でありますとか、あるいは両大学の同一科目化、あるいはカリキュラム・ポリシー、あるいはディプロマ・ポリシーの統一、あるいはシラバスの様式の統一というところを検討中でございます。あと1年ぐらいかけてこれを解決していきたいと考えております。
 実は、ほかの県にもあると思うのですけども、このほか、この資料には記載しておりませんが、山梨県の大学連携の仕組みとしては、県内の全ての12大学が加盟しております単位互換等の授業を実施する大学コンソーシアムやまなしというのがございます。ございますが、こちらのほうはさらなる展開が望めない状況であり、私学の幾つかは既にこれをやめておりますので、今後、廃止の方向で、どちらかというと、この大学アライアンスやまなしを中心に動いていきたいと考えているところでございます。
 それでは、14ページを御覧ください。ここからは地域連携プラットフォームに係る取組について説明いたします。令和5年3月に地域連携プラットフォームを整備いたしまして、地域人材養成推進会議というものを開催しておりますが、2回と、非常に少ない回数でございます。構成員は、ここに示してあるような14名、県関係、産業関係、金融関係ですね。これも後ほどお話ししますが、SPARCという地域活性化人材育成事業におきまして、これを活用しまして、この地域連携プラットフォームの意見を踏まえながら、新たな教育プログラムを展開するとともに文理融合型の教育組織(学環)を目指しております。これの整備に向けまして、取組を進行しているところでございます。
 15ページを御覧ください。こちらは多分、皆さん、よく見る図だと思うのですが、地域連携プラットフォームをつくるときにどういう形で参画しているかというところでございます。左側に5つの機関がございます。参画機関でございますが、その役割も示しております。右のところに高等教育機関とございまして、本学、山梨県立大学、さらに、山梨英和大学、それから、山梨学院大学の4大学が、そのシーズを生かしながら、地域の求める人材ニーズに基づく教育を提供していこうというところで、この地域連携プラットフォームという取組を進めているところでございます。この辺は後で、課題のところでお話をしたいと思います。
 16ページになります。先ほど少しお話ししましたが、SPARCという地域活性化人材育成事業、これはうちが比較的早くこの事業を取らせていただいたので、今、幹事大学となっております。先立って3月29日、30日に、リクルートの小林所長においでいただきまして、特別講演をしていただきました。このSPARCというのは、地域を牽引する人材を育成するために、地域連携プラットフォームあるいは大学等連携推進法人の活用をし、大学連携等によりまして、教育の体制を整備するという事業でございます。
 具体的に、次の17ページでございますが、最終型は、一番右のほうに令和10年、11年とございますが、本学の場合は、これはまだ仮称ですけども、共生創造学環という、学環ですので、やはり学生が地域の課題について課題を発見し、それを掘り下げながら、解決するために多種多様な学問を学んでいくということが学環でございますので、そういったところを今後つくっていくということでございます。
 この辺が非常に、国立大学が今後行くべき重要な観点だと私は思っておりまして、しっかり地域のシーズを知る、それについて、地域のニーズを知る、それについてシーズがあれば、もちろん提供するのですが、なかった場合でも変えていこうということが大事だと思います。これは本学だけでできなければ、他大学と連携しながら変えていく。要するに、ニーズに合った、きちんとしたシーズを提供しない限り、やはり地域活性化しないと思っていますので、この辺を今後強く進めていきたいと思っております。
 そこで、18ページでございます。ここからが今回お話したかったところですけども、今後の課題について、私の私見ですけども、お話をしたいと思います。赤字の部分を中心に説明させていただきたいと思います。
 1番目の大学アライアンスやまなしに関わる課題ですが、①のところに書きました。共通科目では、一定の成果は上げております。先ほどお話ししたように、数も増えているのですが、例えば、今後は共同教育課程の設置、あるいは専門教育に踏み込んだ改革と。クロスアポイントも含めて、こういったことを積極的にやらない限り、こういった連携推進法人の意味はないと考えております。
 それから3番目、大学の設置形態を超えた新たな枠組みの構築が課題であると。後でもお話ししますが、例えば私学の参画というのを今後考えていくということで、今、お声がけを行っております。いろいろな条件があるので、そこを解決しながら、やはりお互いにいい形の大学運営をしていきたいと思っています。
 2番目ですが、地域連携プラットフォームに係る課題ですが、こちらは、実効性を持たせるためのスキーム構築が必要だということはうまくできていないと思っております。実際に私もこの会議に参加したのですけども、プラットフォームが本来の役割を十分発揮できていないというのが現状でございます。ここを何とかしたい。風穴を開けたい。やはり本気になって大学がそういうことを考えていく、地域貢献を考えていくということを分かっていただきながら、地域の産業とか金融、あるいは自治体の方々に理解していただいて、本当にタッグを組むということが必要だと思います。
 そのために、3番目です。コーディネーター的役割を担う人材が不足しているということでございます。これは大森委員が前に御意見したと思うのですけども、各大学の考えよりも、地域の人材養成という大きな観点から大学に指示する仕組みが必要であると思います。プラットフォームに責任、権限、役割を与えるべきと考えておりまして、地方公共団体、経済界、産業界、大学、これを結ぶコーディネーター的な役割を担う人材というのが必要だと。こういった方々を設置すべきと考えております。その人材が活躍するためには、例えば機構的な組織を整備する必要があるとも思っております。
 そして、ここにありますけども、次のページですね。19ページを御覧ください。こちらのほうは、課題の中でも、特に地域の課題、係る課題についてまとめてみました。まず1番ですけども、山梨県は大学の各専門分野を専攻する学生数に、先ほど言いましたように、非常に偏りがございます。ですから、地域の人材需要に応えることがまだできない、そういった可能性を今後つくっていく必要があるということと、3番目ですけども、DXとかAIなど、急速な社会変革に対応した人材育成を行っていく必要がありますので、個々の大学だけではなく、この辺は地域全体で、大学、一体化として取り組んでいく必要があると考えておりますし、これこそリカレント、リスキリングというところを非常に必要とするのかなと思っております。
 それでは、次の20ページを御覧ください。先ほどお話ししました課題を解決するための対応策ということでまとめてみました。20ページですけども、ここには、1番目は、大学アライアンスやまなしというところの課題についての対応でございます。
 ①といたしまして、山梨大学と山梨県庁、山梨県立大学、この3者でつくっているものでございますから、簡単に言うと人事交流をよく行わなきゃいけないと。これによってお互いのことが分かるという、要するに組織をつくる、そういった取組をしていくということも一つの活性化の手段であると考えております。
 それから、④でございますが、地方公共団体、経済界、産業界、大学間のコーディネーターを配置すると。先ほどお話ししましたが、これは必須であると考えております。
 2番目の地域連携プラットフォーム関連の対策ですけども、まず1番は、人事交流、各大学の有する資源を最大限利用いたしまして、魅力ある科目の新設など、改革を進めていき、多様かつ高度な教育を提供するということが必要だと思っております。
 それから、3番目ですが、私立大学が参画しやすい仕組みの構築ということは必要だと思っています。例えば、助成金などのインセンティブが考えられますが、大学アライアンスやまなしをおいては、現在の国立、公立の枠組みに加えまして、私自身の私見ですが、先ほどちょっと出てきましたけど、同じ甲府市というところに所在しております私立の2大学、山梨英和大学と山梨学院大学の参画を視野に入れて考えていくということを進めています。国立大学といたしまして、国公私大の協働を先導していきたいと考えております。そして、高大接続の一環として、高校生に対しても授業を開講して、県内大学入学時には単位として認めるような仕組みをつくって、もう少し高大連携を密にして進めていくということが今後大事になっていくと。それによって、大学のシーズも分かってもらえますし、大学の中で勉強したいことが明確になると考えております。
 21ページを御覧ください。こちらは地域課題に関しましての課題解決のための対応策として考えたものでございますが、地域の教育課程の対応は、地域の各大学に任せるのではなく、地域全体としてバランスが必要であると思っています。地域ごとのグランドデザイン設計、これは国のグランドデザインもあるのですけども、難しいかもしれませんが、地域ごとのグランドデザインをしっかり経年的につくっていくということが非常に大事であり、地域連携プラットフォームの強化・活用を進めていくことが必要だと思っています。繰り返しますが、これは具体的に、本当の意味のプラットフォームをつくらないと意味がないと思っています。
 2番目ですけども、地域課題の解決には、単に専門知識だけではなくて、全体像を俯瞰して捉える視点としまして、人文社会あるいは自然科学等の広範なリベラルアーツというものを学ぶ必要があると。そこに視点を置いて磨くことが大事であると考えています。
 それから、これは前回もお話ししましたけども、リスキリングとかリカレント、この教育推進の一環としては、社会人を対象に、確実なメリットを打ち出せる仕組みがなければ駄目だと思います。まずは教育課程において、資格あるいは免許を付与できるような仕組みの構築を検討することが必要だと思っております。
 前回ちょっとお話ししましたけど、例えば教員免許ですが、特別免許状もいいのですけども、私は、社会人を対象に、例えば教職大学院を活用した1年制の教員免許授与の仕組みをつくっていくということも今後必要になってくると思っています。今まで課題とか対応策のお話をしました。私の私見ですけど、多分、第3回目に、この部会、特別部会でお話しされた小林委員の考え方、あるいは『IDE』の昨年の8月、9月号に、国大協の位田専務理事が書かれた巻頭言、これも似ている、同じような考えを持たれていると思っています。それから、『大学マネジメント』の2024年2月号で、井上法人支援課長が書かれていました。この寄稿をしておりましたが、産学官、地域連携施策のためのビジョン、こういったところも非常に似ているのかなと僣越ながら思っています。『カレッジマネジメント』238号では、ワークス未来予測の2040、これは考える上で非常に役に立っていまして、これを基にした地域連携における大学の役割というものを真剣に考える必要があるだろうと思っています。
 そこで最後でございますが、22ページを御覧ください。私の発表のまとめといたしまして、望まれる施策について提案させていただきたいと思います。
 まず1番ですが、地域ごとのグランドデザイン。先ほども言いましたが、この実現に向けまして、地方国立大学の実情(特色)に応じた支援というものが今後必要になってくる。これを国立大学だけではなくて、その地域の公立あるいは私立の大学も含めて、中心になってやっていく必要があると思っています。
 3番ですが、地域における高等教育施策に地方自治体がより深く関わっていくということだと思います。これは単に部署を置くだけではなくて、本当に中核になって関わっていくということが必要だと思います。
 4番目、県下の高等教育の共存共栄を図ることを目指して、国公私を含む一定部分の共同体制及び体制を担保するスキームが今後必要になってくると思っています。
 5番目です。国公私の役割分担を明確にすることが必要だと思っています。切り口としては、学問分野とか教育課程の緩やかな分担というものが考えられると思います。教養教育など、リソースの共有が可能な部分については連携を深め、クロスアポイントの教員を増やすなど各大学の専門分野、強みの部分に注力していくことが重要だと思っております。
 一番下、青枠の下の部分ですけども、本学としては、このような観点を念頭に置きまして、地域の課題解決に主体的に関わることを牽引していきたいと考えていますし、地方国立大学の新たな役割・使命だと真剣に思っております。
 以上で発表を終わらせていただきます。ありがとうございました。
【永田部会長】  ありがとうございました。大変意欲的な内容でございました。
 それでは、分からないところの質問をしていただいて、議論は最後にまとめてしたいと思います。説明でよく分からなかったというところがあればお聞きいただければと思います。いかがでしょうか。
【大森副部会長】  1点だけよろしいでしょうか。
【永田部会長】  大森委員、どうぞ。
【大森副部会長】  ありがとうございました。質問だけ。プラットフォームの形成をされるときに、参加団体の、要は、資金的には会費制みたいな形でやられているのかどうかという、そこをお聞きできますでしょうか。
【中村委員】  資金調達まで行っておりませんで、例えば経済同友会だとか、あるいは商工会議所というところに、今、私自身が積極的に足を運んでいますし、そういった会議に出させていただいて産学官金連携の重要性を説明する。まずはきちんとした客観的なシーズをどうやって集めるかというところが大切で、その上で、今度は資金というところになってくるかなと思っています。
【大森副部会長】  ありがとうございます。
【永田部会長】  吉岡委員、どうぞ。
【吉岡委員】  すみません。事前に見せていただいた折、最初に思ったのは、大学コンソーシアムやまなしと大学アライアンスやまなしとの関係、アライアンス、コンソーシアムの関係がどうなっているのかなということだったのですが、先ほど、こちらのコンソーシアムのほうは、今後は解体していくというか、廃止していくということです。一方で、国公私全体を含めたアライアンスの拡充みたいな話があるというので、どこかその辺で長所と短所とか、あるいは今後の展開みたいなことのヒントということで、何かあればと思いました。
【中村委員】  県内に12大学が最初入っていたのですけども、現在、10大学になりました。今年度中に、コンソーシアムを抜けたいという大学も聞いております。ただ、県内の中の大学で何かまとまっていろいろな意見交換するということが大事だと思いますので、その部分は残していきたいと考えております。もう一つ、実は山梨の地域は、小さい県なのですけど、私がおります甲府というところ、国中と言っているのですが、もう一つは郡内と言って、大月、都留、富士吉田というところなのです。ここはまた別文化でして、そこには都留文科大学あるいは大月短大、健康科学大学がございますので、そこはそこで一つ、まとまりを今後つくっていくということを聞いております。
【永田部会長】  よろしいでしょうか。ありがとうございます。後ほどいろいろと関連した質問が出るかと思います。
【中村委員】  ありがとうございました。
【永田部会長】   それでは、次に、公立諏訪東京理科大学長、濱田委員から御発表いただきます。よろしくお願いいたします。
【濱田委員】  濱田でございます。地方大学におけるアクセスと人流ということでお話をさせていただきたいと思います。右下に白抜きでページ番号がございますので、そのページに沿ってお話をさせていただきます。
 中村先生からのお話では、大学の中身のお話をかなりされていたのですが、私の話にはほとんどありません。ほとんど家計負担を基準にして人流のお話をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、2ページ目でございます。公立大学ですので、公立大学についての紹介を若干だけさせていただきます。「活力ある公立大学のあり方に関する研究会」という報告書が昨年の12月に出ております。そこにホームページのアドレスを示しておりますので、また御覧いただければいいかと思います。公立大学は、1989年に39校だったのが昨年100校ということになっておりまして、学生数も6万人から17万人に増えているということで、拡大しております。ただ、三大都市圏以外の地方に75%の公立大学がございまして、その半分は単科大学、特に多いのが看護系の大学ということになっておりますので、なかなか一様に公立大学を語ることができないというのが現状でございます。私の場合には、地方の公立大学中心のお話になっていくのと、もう一つは、私どもが私立から公立になった大学ですので、その話を若干させていただきたいと思っております。
 3ページ目を御覧ください。これが私立から公立になった大学で、これは全てではなく、この後に公立になった大学があります。通常の場合、公立になりたての場合には倍率が異様に上がる場合があり、大体5年ぐらいすると定常状態になりますので、定常状態になったところだけを示しております。また、入学志願倍率に関しては、公立化2年前を基準にしています。公立化前にしていないのは、公立化というのが決まると、公立化していなくても倍率が上がるものですから、2年前というのが大体基準になっております。それで見ていただくと、ほとんどの大学が公立化前は1倍台ですとか、0倍台、1倍切っているところもあるのですけども、公立化後は非常に低い倍率のところから高い倍率に変わります。これは通常の変化でございます。
 それともう一つは、地域内入学者率というのがかなり変わると言われております。この表で色をつけているところは、県レベルの人数になっておりまして、例えば高知工科大学ですと、50%が25%、静岡文化芸術大学だと85%が41%と半減しているのです。それを長野県内で見ますと、長野大学、ここは上田市の地域だと非常に低い数字ですけども、長野県内で見ますと、80%が大体40%ということで、ここも半減しています。さらに、私どもの大学も54%から28%ということで、大体半減するということで、地域内の入学者が減って、他の地域からの入学者が増えるというのがほとんどというか、全てと言っていいと思います。これが私立から公立になったところの変化でございます。
 これは後で申し上げますけども、多分一番大きく影響しているのは、家計負担、要するに、授業料です。授業料がやはり半減するということで、外からも入りやすくなるというのが一番の理由かと思います。
 それでもっと詳しくお話しするために、4ページ目を御覧ください。これは私どもの大学の入学者がどこから来ているかという図になっているのですけども、黒丸が長野県ということで、先ほど言いましたように、50%超えが現在大体25%前後で推移しているところでございます。その代わりに増えたところが、緑色の逆三角になっておりまして、東海の4県ということで、愛知、静岡、岐阜、三重で、この4県からの入学者が長野県以上に増えています。1年だけ、2022年だけ減っているのは、コロナの影響かと思います。それとあと、私ども山梨県の県境に近いところにありますので、山梨県からは一定数、大体10%ぐらいは来ています。ただ、東京圏の4都県からはほとんど増えていません。逆に減っているというので、ここのところがなかなか、実際に授業料が減っただけでは向いてもらえない部分が東京方面にあるのかなと思います。
 それで次のページ、5ページ目が、私が元いた信州大学の状況でございます。信州大学も、黒丸が長野県で、現在25%前後で推移しております。先ほどの私どもの大学と同じように東海4県からは多くの学生が来ておりますが、東海4県については近年25%から20%ぐらいに減っています。代わりに、最近すごく増えているのが、赤丸の東京圏4都県です。10%前後で推移していたのが今、20%近くまで上がっているということで、信州大学の場合には、東京圏から来る入学者が増えています。この理由は、もともと長い歴史のある国立大学の、ある意味、私が、元いた人がブランドと言うのも何なのですけど、ブランド的なものがあるのかなとは思っているところでございます。ただ、学部によって大きく異なっておりまして、教育学部は、長野県比率が50%前後あるのですけども、一番低い農学部だと10から15%ということで、分野によってかなりの違いは見られるというのが実情でございます。
 それで、この原因を探るために、6ページ目、これはここの会で与えられているデータですけども、東京圏の4都県というのは、データのところの説明にも書いてあったと思うのですけども、東京圏からの入学者が多いと示されています。それで、資料の部分、5から8%のところが東京圏以外に行った人になるのですけども、この図だと、どうしてもパーセントで書いてあり、東京圏の1%と地方の1%は大きく人数が違いますので、それを実際の人数で表した場合どうなるかというのが次の7ページということになります。
 この図で左側の青いバーのところが東京圏になっておりまして、実際の人数を合計すると1万2,000人ぐらい、実際にはおります。右側のえんじ色のバーが東海4県になっております。東海4県の場合には、東海圏の大学に行った人だけではなくて、東京圏に行った人を除いておりますので、その2つの地域の大学以外に行った人の人数になっております。真ん中の様々な色が混在するバーは、長野県内の大学への進学者で、大体4,100名ぐらいです。長野県出身者の人数ではなく、長野県内の大学に入学した人の数です。これを見ますと、長野県内大学の入学者の内、長野県出身者が半分弱、東京圏が10%、東海圏が14%となっています。その東京圏出身の人のほとんどが信州大学に入学しているのではないかと思います。国公立という意味で、東京圏あるいは東海圏からたくさんの人が流れ込んできているということができると思います。6ページの図のパーセントの面では少ないのですけど、もともと人口が多いので、こういう形になっているのだと思います。
 それで、その一番の理由が8ページにございます、自宅通学か、アパートを借りているかというところだと思います。これはJASSOのデータから、令和4年度の学生生活調査結果から取らせていただいているのですけども、アパートを借りている人の国公立と、自宅から私立に通っている人の家計負担はほぼ一緒ということにグラフではなっております。東京圏にいる方というのはかなりいろいろな私立大学に通えると思いますので、その人たちが家計負担するのと、地方にアパートを借りていくのがほぼ同じ家計負担なのですね。だから、どっちを選ぶかという話になるのだと思います。
 それで、地方の国立大学だと、東京圏の人も選んでいただけているという形だと思います。最近の毎日新聞のニュースによりますと、旧帝大に入学する東京圏出身者のパーセントがすごく増えたというのが出ていたと思うのですけども、それは多分、東京圏の高校生にはやはり旧帝大に魅力があって、そこに行くのに、家計負担が変わらなければ多分行くと思いますので、そういう意味で選択しているのではないかと思います。
 私どもの大学の居住形態もそこに書いてありますけども、90%ぐらいの学生がアパートを借りており、逆に言うと9%しか自宅通学がいません。この居住形態は信州大学も同じ割合だと思います。
 そこで9ページ目でございますけども、大きなキーとなるのはやはり自宅通学かと思います。自宅通学できる範囲に多くの大学がある三大都市圏というのは、自宅・私立を選択しても、アパート等・国公立とほぼ同じ学生生活費になりますので、大学のレベル等は無視して学生生活費だけを考えると、やはり地方のアパート等・国公立というのが視野に入るのではないかと思います。
 それとあと、地方のアパート等・国公立というのは、大都市圏の自宅・私立と拮抗しているので、かなり競争が激しい。私どもの大学の結果を見ましても、やはり東京圏の私立大学と併願していて、どちらかというと東京圏の私立大学に入学するという方が多いので、東京圏出身者がなかなか増えないと言えます。そういうのを見ると、これから国公立、特に公立であったとしても、やはり大学の個性化とかそこで学ぶ魅力とかを上げていかないといけないのではないかと思います。
 それとあと、地方の方からよく聞くのですけども、地方だと、自宅通学できるところに自分自身にマッチした大学がほぼないので、アパート居住を選択した時点で、自宅がある都道府県内に行く必要はないということです。アパート居住だったら別に、ほかの地域へ行っても同じ費用負担ですので。だから、そういう意味では、選択肢は広がるのですけども、県内とかそういう自分のところの都道府県内に行くというのが減ってくるという、そういう理由になるのではないかと思います。
 それで、先ほど中村先生の話にも、SPARCという話があったので、ここで話が違うほうに行くのですけど、私、昨年度と一昨年度の委員をやらせていただいていたので、ちょっとここで紹介をさせていただきます。この事業はいろいろなもの、中村先生のお話に出てきた地域連携プラットフォームとか、大学等連携とか、いろいろな条件を持ちながら行っている事業なので、かなり大変なプログラムだと私自身は思っています。その中で、今後、私自身がこういうふうに進展していけばいいなと思っていることだけ申し上げます。この事業と接続を意識した高大連携ということで取組を行っているのですけども、ぜひ高校生、そこの高校生にこのプログラムには魅力があるというのを十分に分かっていただくと、アクセス的に、要するに、魅力という意味でアクセスが上がるのかなと思っています。もう一つは、社会人の教育もこのプログラムで行うことによって、社会人にもよく知ってもらい、それにより社会がこのプログラムを認知してもらえると思います。その両側から、ぜひ魅力を高めていただいて、地方の大学としてどういうことをやっているかというのをぜひ発信していただければと思っているというのが、これは感想めいたことですけども、昨年度と一昨年度の委員をやっていたということで、ちょっと間に挟ませていただきました。
 それで最後、11ページでございます。では、地方の高等教育はどういうふうにアクセスを確保していけばいいかということです。一つは、これまで当然のように考えられてきた地方の大学収容力を上げるということです。参考資料の中にありましたように、収容力と比例して、県内からの進学者は増えています。しかし、もう既に、日本全体で収容力が志願者を超えている状況ですので、現実的ではなかなかない、困難であろうと思います。では、通えるところということで、交通インフラ、特に二次交通をもっと整備すればいいのではないかと言っても、これも全部整備するのはなかなか難しいと考えられます。
 それで3つ目、通学可能な立地へのキャンパス移転というのは、一部行っている大学というのが、ニュースで出ております。その理由を聞くと、やはり通学できる範囲を広げるためという理由が一番だそうです。そのような移転は、一部できる大学はあるでしょうが、そう簡単ではないでしょう。
 それで最後、これはちょっと突拍子もないことを書いてあります。オンライン教育に関しては、いろいろな形でやっているのですけども、オンライン教育だけだとやはりモチベーションが上がらないということで、リアルを混ぜたオンライン教育ということをこれからやる必要があるだろうと思います。例えば、今、長野県もそうですけども、高校への進学者が減ってきて、高校の再編をやっております。そうすると、必ず高校の土地と建物は余ってくる。それをどういうふうに再利用するかというのが問題になってきますので、そういう場をうまく利用した高等教育ができないのかと思います。例えば今、アメリカの大学だと、ほかの国と2+2という教育システムを作っています。ほかの国で2年やって、アメリカの本土で2年やるような教育をやっていますけども、日本の国内で、例えば地方で2年やって、どこかの大学で2年やるとかみたいな形も取れるのではないかという、今までと違う形の大学を考えないといけないのではないかと思います。地域自身が大学を丸々呼んできてやれる時代ではありませんので、そういうサテライト的な考え方をうまく利用しながらやっていく必要があるのではないかと考えます。
 ただし、これを複数の大学が共同でやるとなると、さっき言った大学等連携法人とかが使えると思います。しかし、3つとか4つの大学連携でさえ、SPARC事業で見ていると難しいと感じており、これが例えば10の大学とかになったら非常に難しいと思いますので、そういう意味で、大学側が考えるというよりも、地域自身が中心になって考えていかないと、恐らくこれからの高等教育は成り立たないのかなと思います。それで、今もう既に進学率が低い地域でも50%に近づいており、半分の人が高等教育に行くようになっている時代ですから、高校までの教育と一緒に何か考える時代なのかなということで、一つの例というか、私の考えとして、発表の最後に示させていただいた次第でございます。
 以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。具体的な説明で、皆さんよくお分かりになったことだと思います。ここが分かりにくいというのがあればお尋ねしてほしいかと思います。いかがでしょうか。
 吉見委員、どうぞ。
【吉見委員】  ありがとうございました。大変興味深いデータを教えていただいて、勉強になりました。一つ教えていただきたいのですけれども、最初の3ページですかね。つまり公立化することによって、言わばローカルな入学者がかなりナショナルというか、リージョナルというか、広がっていくという。学生の構成が変わってくるということだと思いますけども、このことによる学生たちの文化的な変化といいますか、学生たちの雰囲気とか、それから、学校の中における、何というのでしょうかね。いろいろ教育的な学生たちのカルチャーの変化という意味では、どういうことが起こってくるということなのか。少し教えていただければと思います。
【濱田委員】  学生自身のやる気は多分かなり上がっていると思います。それと、いろいろなところから来た人が集まりますので、そういう意味では、自分の知らない文化とか環境で育った人と接することができますから、そこは非常にいいのかなと思います。それとあと、我々のところで言うと、本当に小さい、茅野市という、多分5万人ぐらいの人口だと思うのですけども、そこに1,000人以上の学生がアパートを借りていますから、学生自身が非常に近いところに住んでいるということで、一緒に何かをやろうという、そういうふうなことも起こってきているのではないかなと思います。そういう意味では、いい点は多々あるかなと思っております。
【永田部会長】  ありがとうございます。よろしいでしょうか。
 それでは、次に、国立教育政策研究所朴澤先生に、「高等教育へのアクセスの在り方を考える」ということで御発表いただきます。よろしくお願いいたします。
【朴澤総括研究官】  ただいま御紹介にあずかりました国立教育政策研究所の朴澤と申します。よろしくお願いいたします。
 資料1-3の画面共有で報告させていただきます。ただいま、お二人の委員の先生方から地方の大学として、あるいは地域としてどう教育を提供するかといった観点のお話がありましたが、私からは、進学者の側から見たデータを少し御紹介させていただきます。先ほど人の流れというお話もありましたが、言わば「適材適所」のような状況が実現しているのかといった観点で、議論の材料を御提供するというものです。
高等教育へのアクセスの現状を問うためにどうするかといいますと、18歳人口、あるいは日本全体を3つくらいに分けて、進学先の違いを検討するとよいのではないかということで、先ほどの1ページ目の日本地図の3つですが、私立大学への自宅通学の多い3「大都市圏」と、それ以外の非大都市圏ですね。県外進学も多い「地方」に、まず2つに分けると。さらに、「地方」といいましても、「大都市圏」からの遠近によって、あるいはまた地域ブロックのまとまりも考慮しまして、2つぐらいに分けると、進学の構図がすごくクリアになってくるのではないかということで、仮に「地方A」、「地方B」と分けてみたものがこちらの地図です。大都市圏は1都2府5県のところですが、その周りにあるのが地方Aの24県、さらに、大都市圏から見れば一番遠いところにあるのが地方Bということで、15道県に分けた上でデータの整理をしております。
 2ページの下の薄いブルーの部分は、出身高校所在地県別の大学進学率です。2022年度の男女合計の値を最も高い東京から並べてあるという図です。この図は、各県の18歳人口の多さに比例する形で横幅が示されていますので、日本全体の18歳人口の半分弱は、大都市圏にいるということも同時に分かるかと思います。ちなみに濃いブルーのほうは、短期大学進学率です。
 以上を踏まえまして、時間が限られていますので、非常にピンポイントですが、一つの視点ということで、「大学進学率の内訳」というものを見てみました。内訳といいますのは、設置者と入学難易度を区別した値でして、具体的には2015年の『学校基本調査』の個票に、河合塾さんの偏差値データを結合させて集計するということを昔、行いましたので、そちらを御紹介しています。偏差値に着目するのは非常に御批判もあるかと思いますけれども、進学先選びで今も参照されていることは否定できませんので、あえてやってみるということです。3ページの左下には、2015年、それから2022年の大学進学率が出ておりますが、この2015年における日本全体の進学率のうち、外国学校出身などの1.3ポイントを除いた50.2%の内訳を右側の棒グラフで表示しております。紫色の棒グラフが国公立大学、青いほうが私立大学です。
 もちろん国公立と私立の偏差値というのを比べるのは非常に難しい、厄介な問題もあるのですが、あえてまとめてみたところ、この折れ線グラフですね。赤く示した折れ線グラフのような形になる。「への字」型を左右反転させたような分布になっています。これだけを見ますと、左右対象ではないのですけれども、何となく釣鐘状のような感じになっている。「ああ、そうか、大学進学者の学力分布というのはこういう感じになっているのかな」というようにも思われるわけですが、4ページの3地域別の集計を見ると、どうもそうでもなさそうだと。つまり、この黒い折れ線グラフのところが3地域別の進学率の内訳になるわけですけれども、大学進学者の学力分布が3つの地域、いずれも同じような分布の形であれば、赤い点線のような感じに、「への字」型のようになっていないとおかしいのではないかとも考えられるのですが、そうなっていないということはどういうことを意味するか。
 5ページの3つ目のポツですけれども、経済的あるいは地理的な理由で、「本来の学力」で入学できるはずの大学よりも、低い難易度の大学に進学するケースがひょっとしたら起きているのではないかといったことも読み取れるデータになっている。特に地方Bですね。スライド4ページで言う一番左側の「40.0未満」と書いたブルーの点線の四角で囲った部分ですとか、その2つ右側の「47.5~55.0未満」のところが多くなっていて、これらのように、ひょっとしたらもう少し高い難易度の大学に行っていた人も入っているのかもしれないといった考察もできます。
 ちなみに、今申し上げた2つのカテゴリーというのは、県内、あるいは、県外だけれども地方所在というような、地方大学への進学が8割ぐらいで、結構多くなっています。ですので、このことを評価するに当たってはその点を考える必要があると。どう評価できるかというと、2つぐらい観点がありますけれども、一つは、これは昨年9月の諮問文の表現をおかりしますと、「地方の高等教育機関が果たす多面的な役割」の一つが現れているのではないかという。つまり、入学難易度から想定される以上に、学力の高い学生を地方の大学が受け入れているということがあるのではないか。そういった学力や意欲の高い学生に報いる何らかの方策や支援というのは一つ必要になるのかもしれない。
 ただ、一方で、(2)ですけれども、これはかなり押しつけがましい見方かもしれませんが、学力と進学先との間に一種のミスマッチのようなものが起きているのかもしれない。これはアメリカだと、「アンダーマッチング」という言葉がありますけれども、日本でも同じようなことが起きているという指摘も既にありますし、先ほどお示ししたデータですと、地方の高校からの大学進学の一部でそういったことが起きている状況がうかがえるということです。
 最後のスライド6ページ目になりまして、では、どのようなインプリケーションを読み取るべきなのかということになりますが、そもそも学力と進学先とのミスマッチというものが課題と言えるのか。活躍する方は、どの大学を出ていても活躍されるということもあるのですけれども、ただ、出身大学によって、就職機会が現実に異なりますので、言わば「適材適所」のようなことが実現しにくいのではないか。そうだとすると、公平性だけではなくて、効率性の観点からもミスマッチの緩和というのは望まれることではないかということが考えられます。
 この部会では、人口が減る中で、一人一人の能力が高まっていくことが非常に重要であるという議論があって、今日の資料2-1にもそう記載がございますけれども、それはこういった、既にあるミスマッチの緩和によっても達成することができるのかもしれないと考えますと、2つぐらい方策が考えられるというのが最後のところです。一つは、より入学難易度の高い、ほかの地域にある大学への進学移動も、希望すれば可能になるような個人補助というものを考える。これは既に修学支援新制度ですとか、その中間所得層への拡大がそういった方向で機能していると見ることもできるのかもしれません。
 ただ、「私は好きで地元にいたい、別に移動したくありません」といった方に移動を強制するようなことではもちろんございません。希望する方が移動も可能になるような環境を整えるということが重要だと思いますので、別途そうではない、先ほどちらっと言いましたが、学力や意欲の高い学生に報いるようなコストのかけ方というのが必要かもしれない。あるいは、もし移動が多くなると、入学者が近距離から集まるような大学の学生募集がなかなか難しくなるかもしれませんので、地域から求められる大学の経営が成り立つような、規模を維持する上での、主に地方私立大学を念頭に置いた機関補助の在り方を工夫するといったことも必要になるのかもしれません。
 ほかにも重要な課題が幾つもあると思いますし、駆け足となりまして恐縮ですけれども、私の報告はこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。
【永田部会長】  ありがとうございました。何となく考えていたことが数値できちんと表されると、それなりにやはりそうかという感じがします。解釈の部分はまたいろいろあると思います。御質問があればお受けしたいと思います。いかがでしょうか。
 伊藤委員、どうぞ。
【伊藤委員】  ありがとうございました。質問ということで、最後の政策的インプリケーションのところに、修学支援新制度が既に一定程度機能かと書いていらっしゃるのですけども、これはあれですか。理工系に進んだ場合に、中間層でも支払えるというものを指しているのか。これはどういう文脈なのか教えていただけますか。
【朴澤総括研究官】  御指摘ありがとうございました。少し舌足らずであったかと思います。明確にデータで見られているわけではありませんけれども、やはり最近の短期大学の募集停止などの動きを見ていると、既に低所得世帯の活用する修学支援新制度は、あるいはそれが今年度から中間所得層にも、理工系や多子世帯について拡大されたことで、移動を促進するような形で結構動いているのではないかと予想されるという趣旨でございます。
 以上です。
【伊藤委員】  ありがとうございました。
【永田部会長】  いろいろなデータを重ねるともっと面白い分析ができそうでありますが、よろしいですか。ありがとうございます。お三方からのヒアリングさせていただきました。先生方、どうもありがとうございました。
 ここから、御披露いただいた内容を含めて、皆さんに御意見を賜りたいと思います。今回、特に注視したいのはアクセスの確保ということです。それは今回、分析されましたが、いろいろな理由があって、いろいろなところに学生はいるわけです。それも我々としては保障しないといけないという問題があるということ、それから、今いただいたグラフも20年後にはもっと棒グラフが低くなったグラフに変わるということを想定しないといけないということです。
 今日で大体ヒアリングを終えるつもりなので、練習問題も少し加えて、具体的にアクセスを確保するのにこういうことをしたらどうだという、背景がこうであるから、こうならこうだという分析ではなくて、こういう観点を改善するためにこうしたらどうだろうか。それから、少子化の問題は、その観点ではこういうふうに解決できるのではないか。解決までいかなくても一つの手だてになるのかもしれない。しかも、重要なことは、「知の総和」は変えないという、もう一つの前提があって、こちらも減らすだけであれば簡単で、減った分だけ減らせばいいでは済みません。後半で、質の向上に向けた話はまたしたいとは思うのですが、いずれにしても、非常に難しい問題を解かなければいけないので、でき得る限り、こうして見るといいのではないかという具体的な御提案も含めて御意見をいただけるとありがたいです。次回からは具体的な御提案の議論になっていくので、練習問題的ですが、そういう御意見のいただき方をしたいと思っております。
 どなたでも結構です。少し離れたことでももちろん結構ではあります。
【髙見高等教育政策室長】  先に事務方から少し資料の説明を。
【永田部会長】  その前にこれまでの議論の概要を説明していただきます。よろしくお願いいたします。
【髙見高等教育政策室長】  お手元の資料2-1を御覧いただければと存じます。先ほど永田先生がおっしゃっていただいたとおり、本日は、アクセスの議論についてお話しいただきたいと思いますが、これまで4回にわたって特別委員会で御議論いただいておりますので、事務局におきまして、論点整理(案)として、資料2-1のとおり、背景、高等教育の目指すべき姿、今後の高等教育の在り方、また、国公私立の設置者別の役割分担や、高等教育の改革を支える支援方策の在り方、この4つの観点から、この資料を整備してございます。特に本日御議論いただきたいのは、3ページ目の3ポツ、高等教育の在り方のパートでございます。ここでは(1)としまして、教育研究の「質」の更なる高度化、また、6ページの(2)からございますように、地域における質の高い高等教育への「アクセス」確保、そして、7ページの(3)にございますように、高等教育全体の「規模」の適正化、こういった形で事務方において整理しております。
 このうち、(1)の「質」の高度化につきましては、本日後半に御議論いただくこととした上で、まず、先ほど中村委員、濱田委員、また、朴澤様から御発表いただいた内容とともに、6ページから9ページにかけての記載の(2)の「アクセス」確保と、(3)の「規模」を中心に御議論いただければと存じます。
 特に、6ページ中ほどにあるとおり、地理的観点からの高等教育機関へのアクセス確保としましては、検討の方向性という枠の中で列挙しております。具体的には、これまでの議論を踏まえて、地域の志願動向や人材需要を踏まえた上での求められる学問分野を学べる高等教育機関の確保という視点、また、アクセス確保のために必要な議論を行う場や、支援を行う仕組みの構築といった点、さらに、地域において検討を促すための方策の整備などが挙げられることと存じます。
 その上で、点線の中でございますが、「深掘して御議論いただくポイントの例」を事務局で作成いたしましたので、これ以外でも結構でございますけども、地理的アクセスの範囲や、求められる学問分野の在り方、また、その議論を行う場やコーディネーターの役割、議論の内容、支援方策などを提示いたしましたので、これらも参照いただきながら御議論いただければと存じます。
 また、経済的観点からのアクセス確保という視点では、グランドデザイン答申以降の修学支援新制度の創設など、大きな進展もございましたが、検討の方向性といたしまして、経済的観点からのアクセス確保と質の維持向上、両立の確保を掲げております。
 その上で、さらに深掘りいただく議論のポイントの例といたしまして、7ページに移りますが、経済的アクセスの範囲や具体的方策について、質の維持向上等の両立性の観点も含めて御意見いただければと存じます。
 また、次に、7ページの(3)高等教育全体の「規模」の適正化という項目ございますが、この中では、18歳で入学する伝統的な学生以外の受入れの拡大といたしまして、検討の方向性、枠の中でございますけども、学生の概念の見直し、また、留学生や社会人の受入れの更なる推進、そして、オンライン授業の進展を踏まえた取組を掲げております。
 その上で、深掘りして御議論いただくポイントの例といたしまして、科目等履修生などの取扱いですとか、留学生、社会人の受入れを進める上での課題や解決策、また、選抜性の高い大学における受入れ学生の変化への考え方、さらには、DX、遠隔教育の推進を踏まえた、遠隔教育を含めた高等教育の在り方について御意見をいただければと思います。
 さらに、高等教育全体の規模の適正化といたしまして、8ページの中段以降でございますけれども、2040年代の大学進学者は、現在の入学定員と比べて大きなギャップがある中で、検討の方向性、黒枠の中でございますが、意欲的な経営改革を行うための支援、また、教学、学校運営面における機能の共同化・高度化、さらに、縮小・撤退を見据えた現有リソースの配分最適化、そして、定員未充足大学の定員規模の適正化の促進、また、連携、再編・統合・撤退等の経営判断の促進に向けた支援、学校法人が解散する場合における学生保護の検討、高度な研究力を有する大学における大学院の充実強化といった観点で整理してございます。
 その上で、「深掘して御議論いただくポイントの例」といたしまして、法人運営面での審査の厳格化、また、収容定員の適正化に向けた方策、そして、統合した際の不利益にならないための措置、また、規模縮小や撤退に係る指導強化の在り方、学校法人が解散する場合の残余財産の帰属の在り方等について、これらの論点の例も参照いただきながら御議論いただければと存じます。
 また、本日のお手元資料2-2は、前回いただいた主な意見ということでお配りしておりますし、また、参考資料1、データ集でございますが、新たに加わったデータといたしまして、参考資料1の75ページを御覧いただければと存じますけども、この75ページは、大学入学者数と社会人・留学生数。これにつきまして、通学と通信制に分けるとともに、学部、大学院に分けた上で、実際にその中で留学生、社会人がどの程度いるのか、これが非常に低いことが分かるかと存じますが、こういったことも参照いただきながら、今後の規模の在り方等も併せて御議論いただければと存じます。
 また、参考資料2の86ページからでございますが、前回の会議でも、学部と修士の接続のお話いただきましたが、現状の制度の整理をした資料、それから、87ページ以降では、諸外国の修業年限、こういったものを米国をはじめ、欧州各国の修業年限を整理した資料も追加しております。
 また、120ページ以降では、病院とか鉄道などの各機関における連携、再編をまとめた資料を用意しております。こちらについては、この後、室長補佐の疋田から説明いたします。
 私からの説明は以上でございます。
【疋田高等教育政策室室長補佐】  高等教育政策室の疋田でございます。関連しまして、今、髙見からありました参考資料2の参考資料集119ページ以降の、各機関における連携、再編等に関する施策の例について御説明させていただきます。
 各事例につきまして、全体を通じて大まかにまとめさせていただきますと、手法としましては、国が方針を示し、連携、再編等を行う主体が計画等を作成し、その計画を制度面、財政面で支援するという方法が採用されていることが多いかと認識しています。
 まず、120ページを御覧ください。文部科学省関連の事例としまして、まずは国立大学を挙げさせていただいています。国立大学につきましては、2002年から2003年頃に、101大学から89大学へと集中的に統合がなされています。これは2004年の法人化に向けて、教育研究基盤の強化などを目的としてなされたものでございます。手法としましては、いわゆる遠山プランの発表であったり、「国立大学の再編・統合についての基本的な考え方」の公表であったりと、国が方針を示すことで実施されているところでございます。
 次、121ページを御覧ください。公立小・中学校の適正規模・適正配置に関する取組は、中段の目的欄の下線部分にあるように、各市町村において、地域の実情を踏まえ、児童生徒の教育条件の改善の観点を中心に据え、学校教育をより良く実現するために行うことを目的となされています。この取組を促すために、文部科学省としましても「手引」を作成したり、財政支援等を行ったりしているところでございます。
 続きまして、122ページを御覧ください。ここからは他省庁の事例の御紹介となります。左側、農協につきましては、1961年から2001年頃の取組になります。1960年度末ですが、規模が小さく、経営が不振な農協が多数存在していたため、農業の基盤強化を目的としまして合併を進め、農協の規模を拡大していくために「農業協同組合合併助成法」というものが制定されました。この法律により、2001年には、農協の数は約9割減となっています。その内容としましては、農協に合併経営計画をつくらせて、それを都道府県知事が認定し、認定された計画について助成を行うというものになっています。
 続きまして、右側の市町村合併につきましてですが、御承知のとおり、明治、昭和、平成と、3回、市町村合併が行われているところですが、最後の平成の合併について、ここでは取り上げています。1999年から2010年頃に行われていたもので、市町村数が約半減しているところでございます。これは地方分権の推進等を背景に、自治体の行財政基盤を強化することを目的として行われたところでございまして、手法としましても、1999年から2004年までは、合併特例債や合併算定替の大幅な延長といった手厚い財政支援措置により行われていました。2005年以降は、国・都道府県の積極的な関与により推進されているところでございます。
 次、123ページを御覧ください。いわゆる地銀につきまして、人口の減少等による経営環境の悪化を背景に、地域経済の基盤となる金融サービスの維持を目的としまして、合併・経営統合等の抜本的な業務見直しを行う際の支援措置が創設されています。手法の1つ目の黒丸にありますように、資金交付制度が5年間の時限立法で創設されています。これも地銀が実施計画を作成し、国の審査会による審査・認定したところに資金交付を行っているところです。こちらにつきましては、1件当たり30億円を上限としまして、財源は預金保険機構の利益剰余金を活用しているということでございます。
 続きまして、124ページを御覧ください。医療機関につきまして、病床の削減や統廃合ありきではないのですが、良質かつ適切な医療を効率的に提供できる体制の確保を目的としまして、再編が進んでいるところです。これも手法としましては、2014年に地域医療構想という仕組みを創設しています。こちらにつきましては、各地域において需要と必要量について推計し、協議を行い、病床機能の分化・連携を進めるものでございます。この地域医療構想に基づいて財政支援を行ったり、税制優遇を行ったりしているものでございます。
 続きまして、125ページを御覧ください。地域での協議の在り方に関する制度の事例を2つ紹介させていただきます。左側の地域公共交通、いわゆるローカル鉄道でございますが、その再構築を行うということで、2007年に地方公共団体が関係者と協議を行い、地域公共交通計画を作成することが努力義務とされました。2023年からは、事業者側からの要請に基づいて国が再構築協議会を組織し、協議が整った再構築方針に基づいて、再構築事業を実施することとなっています。これらを財政支援しているところでございます。
 なお、最近ですと、岡山県、広島県にまたがる芸備線の再構築協議会が設置されたと承知しています。
 右側の公的職業訓練につきましては、第2回の特別部会において、堀委員からも御紹介いただきましたので簡単に紹介しますと、地域職業能力開発促進協議会において、地域の人材ニーズ等を踏まえた実施計画を作成していただき、PDCAを回していく仕組みとなっています。
 私からの説明は以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。今、御説明いただいた内容で何か御質問あれば、いかがでしょうか。大体御理解いただいているかと思います。それでは、今、御説明あったとおり、最初に、アクセス確保ということと規模の問題、この辺りを重点的に、その後、先ほど申し上げた知の総和を下げないというほうの問題と分けて議論させていただこうと思います。いかがでしょうか。
 皮切りに、こんな感じかと思うのですが、中村委員の御発表を伺っていて、連携等法人があそこまで行っているのであればすごいという印象を持ったのです。それで、それを伺っているうちに、ディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシーもある部分では統一させていく段だと思いました。大学はビジョンを持っていて、山梨大学4学部と山梨県立大学3学部それぞれがそれを持たないとしようがないだろうと思います。大学一つとして全体のディプロマ・ポリシーをいきなり持つというのは、無理だろうと思います。それから、カリキュラム・ポリシーを全部一致させるのは無理だろうから、一大学が一つずつの3ポリシーを持つという考え方では、連携等法人はうまくいかないのかもしれないと思いました。ですから全体として統合的にビジョンを持って展開されていくとすると、そこにそれぞれの学問分野で大学が持つポリシーというのを定めていかないと不可能ではないでしょうか。
 なぜかというと、そこまでできているなら、中村委員、どうですか。アドミッション・ポリシーも一緒にして、試験を一緒にしたらどうですかという質問になるわけです。それができるかといったら、できると思うのです。なぜかというと、大学全体としてやるとすると、2つの大学で考え方が違う可能性がありますが、それぞれの学部が持っているものであるとすると、全体で選抜試験をしても別にいいではないしょうか。それは大きなインパクトがあって、2つの設立基盤の違う大学が入試を一緒にやっていますということになります。そこまでお考えになったことがあるか、ないかということです。
【中村委員】  私見ですが、考えています。もちろんそこは結構大事なところだと思っています。
【永田部会長】  3ポリシーのうち、カリキュラム・ポリシー、ディプロマ・ポリシーをそろえていくとおっしゃるなら、アドミッション・ポリシーはどうなのだろうということになります。何となくそこに救いを見いだした気が若干したのです。一緒にやっていく難しさ、つまり、大学のアイデンティティー、あるいはそれを学部の集団のアイデンティティーと読み替えて、それは保ちつつも、実は根本的な大学の機能は一緒にやれることがあるのではないかと思って聞いたのです。
 中村委員がおっしゃっていることはすばらしくて、とにかくいろいろなことが、節約もできましただけではなくて、カリキュラムをどんどん一緒にやっていくということで、理想的だと思ったのです。
【中村委員】  ありがとうございます。
【永田部会長】  アドミッションはどうされますか。
【中村委員】  アドミッション、これは私見ですけどもね。
【永田部会長】  もちろん、構いません。
【中村委員】  自分としては考えております。それを一緒にすることによって、かなり効率化できるということになると思いますし、そこを本当にやるのであれば、さらに越えていかないといけないことだと思っています。
【永田部会長】  問題はたくさんあるのでしょうが、考えてみてもいいことではあるのかもしれません。
 それでは、引き続き御質問、御意見交換をしていただければと思います。吉岡委員、どうぞ。
【吉岡委員】  今ほど理念的な話ではなくて恐縮なのですけれど、中村先生にお伺いしたいのですが、山梨大学と県立大学は、実質的に距離はそんなに離れていない。同じ甲府で、2キロとか3キロぐらいですかね。
【中村委員】  そうです。車で15分もあれば行けると思います。
【吉岡委員】  そうですか。というのは、私の勤めた大学でも、授業の交換とかいろいろなことを考えたのですけども、学生の移動であるとか教員の移動というのはかなり大きな問題で、実際に動かすときには、仕組みができても学生が実際に来ないとか、休み時間、移動時間の関係で、両方が取るカリキュラムをどの時間帯に入れるかみたいなことが非常に難しかったのですが、その辺の具体的な対応は。
【中村委員】  さっき問題点というか、課題のところでお話ししましたけども、基本的にオンラインでできるものはオンラインでやると。でも、できない、例えば実習とか、あるいは実験とかですね。そういうものはやはり一緒にしなきゃいけないので、あるいはグループディスカッションみたいなものですね。その場合には、一般教養を同じ曜日で統一するしかない。例えば、月曜日は一般教養の日みたいにして、そこで学生が自由に行けるような状況をつくる。そこでまた、一方の大学に行ったら、そんなに行ったり来たりしないでできるような仕組みをうまくつくっていく。ここは結構難しいのですけど、何かこう、パズルをはめるようなものですが、できないことはない。この努力はやはり学生のためにやるべきだと私は思っています。
【永田部会長】  そのほかいかがでしょうか。
 申し上げましたが、とにかく確保できるよう、アクセス可能なようにということです。要するに、地方に行ったらもう大学には行けませんというのは困るわけなので、どうしたらいいか。それが、連携等法人というのは、多分そういう状況を打破する一つの方法だろうということで御質問をしているわけです。
 そのほかいかがでしょうか。平子委員、どうぞ。
【平子委員】  ただ今、山梨大学の話を聞いていて、同じ県同士の大学のアライアンスにメリットがある一方でやはり限界もあるのかなと思いました。2つの大学にはそれぞれ歴史とか成り立ちの背景がありますので、教育内容はどうしてもそのような制約がついて回るということです。それによって、地域の課題との関係から地元に欲しい人材、あるいは課題解決に必要な能力を身につけた学生さんがいない、あるいは育成できないというギャップが生まれていると思うのです。このような問題への対応としては、さきほどの中村委員のお話の中にありましたように、地方自治体をもっと巻き込むことの必要性は、私も全くそのとおりだと思います。逆に言うと、当該地域だけで必要な人材を育成するのが難しいのではないかと。
申し上げたいことは、県をまたいだアライアンスを検討されたのか、それによってより大きな問題がそこで生まれたのかどうかということです。といいますのは、他の大学では県をまたいだアライアンスがすでに生まれているからです。これから先、知の質を高めていくとなると、自分の学びたい学問へのアクセスという問題は、物理的な制約だけではありません。先ほど実験とか実習はなるべくオンラインではないほうがいいというお話もありましたが、現在はオンラインでもかなりクオリティーの高い授業ができる環境にありますので、県をまたいだアライアンスというのがあってもいいのではないかなと思いました。そこ辺りのメリット、デメリットを教えていただけるとありがたいです。
【中村委員】  おっしゃるとおりで、例えば地域のシーズ、まだ全部調べたわけではないのですけども、それを捉えていくと、間違いなく両大学では確保できないシーズが出てくると思います。これを県内の大学と考えても難しいところもある。そうしたら、やはり県をまたいでという形ですね。その大学で包括連携協定を組んでいるところでうまくやっていくかということは考えています。
 例えば、ちょっと具体的な例ですけども、うちの大学の工学部に建築がないのですね。建設。でも、やはり地域の方々に聞くと、建築、建設って大きいよと。土木はあるのですね。そうしたら、ないのだけども、今この状況の中で確実に建築とか建設学部をつくるのは無理なので、連携協定を組んでいる大学と一緒になってやっていく。クロスアポイントをやっていったり、あるいは、今の平子委員のお話だと、実験、実習と、もちろんオンラインでできる部分もあるのですね。ただ、そこは例えば集中講義とかそういうところをうまく使ってやっていくと。何らかの手を使って、とにかく一番大事なのは、学生が学んでいてよかったなと思うような状況をつくる。そのベースに地域のシーズをしっかりつくっていく。地域のニーズをしっかり理解した上でつくっていくと。
 小林委員にSPARCの講演をしていただいたときに言われたのですけど、つくるのに時間がかかるよ、やるのは早くやれというおしかりを、忠告を受けて、そのとおりだと思います。だから、しっかりニーズをつかんだ上で、その部分でできることはできるだけ早く動いていかないとなかなか難しい。連携を組んでやるにしても、なかなか難しいし、そこに垣根があれば、先ほど永田先生がおっしゃったように、緩和をしていくような方法で希望していくということになると思います。
【平子委員】  分かりました。ありがとうございました。
【永田部会長】  小林委員、どうぞ。
【小林委員】  分かりやすい御説明ありがとうございました。中村委員に一つ、そして、濱田委員に一つ質問があります。まず、中村委員は大学等連携推進法人のほかに地域プラットフォームのお話をされていました。そのときに、特に私学をどう巻き込んでいくかというのが課題だとおっしゃっていました。地域の人材を育成しようとか、地域の地元残留率を高めようという思いは、目的は一緒なのですけども、学生募集のところで呉越同舟、競合になってしまうというところがあるように思います。先ほど山梨県は36%が人文・社会系に偏っているというところを見ると、そういったところの分野を見たときに、私学をどう巻き込んでいくかというのは非常に重要な課題だと思います。ただ、私学は、建学の精神や、教育の目的がそれぞれあるので、これをどう一緒にまとめていくかというところも含めて、何かアイデアがあればいただきたいと思います。
 もう1点、濱田先生には、公立大学が今、非常に増えているのですが、県立もあれば、市立もあったり、府立があったり、様々な設置者があると思います。公立大学は自治体が目標を策定して、大学側が計画を作成するということになっています。そうなると、自治体のビジョン以上に大学は大きくならないというか、展開ができないように思います。先ほど看護系分野が多いとおっしゃっていましたが、似たような小粒の大学が増えていってしまう懸念もあるのではないかと思うのですが、そこら辺のところ、何かお考えがあったら教えていただければと思います。よろしくお願いします。
【中村委員】  では、先にすみません。
【永田部会長】  はい、どうぞ。
【中村委員】  地域連携プラットフォームという話になると大分難しくなってくるのですけど、例えば先ほどお話しした連携推進法人の中で、共通科目を一緒にしていくというのであれば、たまたまかもしれませんが、うちの大学はどちらかという理系が強い。県立大学は、国際だとか、いわゆる福祉が強い。山梨学院大学は、法学、経済、あるいはスポーツが強い。山梨英和大学は心理学が強いのですね。そういう意味では、ある程度分かれているというところで、教養共通などはかなりの部分で一体化できるだろうと。要するに、質の高い教育ができる。
 その上で、質問の本質は地域連携プラットフォームですが、ここはやはり地域のニーズを知って、4大学で動いていけるか、あるいは動けなかったら、先ほどのお話のように、県を越えた、県をまたいで新しい仕組みをつくっていくということだと思います。
【小林委員】  ありがとうございます。
【濱田委員】  多分ほとんどのところは、地域がどういう人材が欲しいかというので、学部とかを決めていると思うのですね。看護というのはどこの都道府県でも必要なので、どうしても看護が増えていくというのは、ある程度、方向性としてはあるのかなと思うのです。ただ、看護を見ていると、やはり県内の学生が行って、県内に就職するという流れは割とできているのかなというふうには見えています。
 それで我々のところで言うと、もともと我々が立地している地域というのは、いわゆる製造業の集積地域なので、それで工学ということになっているのですけど、ただ、人材がそこの地域だけで、工学の、特に機械とか電気だけにそんなに進学者がいるかというと、いないので、どうしても外から集めることになるのですね。
 それで、じゃあ、そのまま残ってくれるかというと、なかなか残らなくて、やはり東京の企業に行ってしまうということです。我々のところで言うと、25%が長野県出身で、25%は長野県内に残るので、そういう意味では人口の増減はないのですけど、ただ、そこで重要なのは、長野県の人が長野県に就職しているわけではなくて、長野県の人はむしろ外に就職したくて、外から来た人が長野県に残っている。そこで人の入替え、ミキシングが起こっているので、そういうことをある程度それぞれの地域は目指している。ただ、さっきおっしゃったみたいに、地域のビジョンとどうマッチするかというと、もうそこの分野の1点だけで多分一致しているということで、目標を立てるときにそこを超えてというとなかなか難しいのですけど、そこは逆に、大学のほうが、こういうこともやってみませんかというのを話しかけることによって、目標を大きくしていくということが必要なのかなとは思いました。
 国立大学法人の中期目標と公立大学が大分違うのはやはりその点で、設置者が、国立大学は文科省というか、文科大臣なので、同じ人ですけど、公立はそれぞれが違うので、かなり中期目標の立て方が違います。そこのところをどういうふうにしていくかというのは、やはり外も横も見ながらやっていかなきゃいけないとは思っているので、その辺り、今後大きな課題です。私も初めて、今回、公立大学の中期目標、中期計画に携わったものですから、全然違うなというのがやはり印象で、そこをどうやっていくかというのはやはり公立大学の課題かなと思っています。
【小林委員】  ありがとうございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 先ほど、わざと難しいことを私は申し上げていて、多分皆さんの心の中に難しいというイメージが湧いたはずです。つまり、個々の大学のアイデンティティーというものを保ちながら、一つずつが小さくなってもいけないという、本当に難しいだろうというイメージが湧いたと思うのです。それを解決しなければいけないので、それ以外のこと幾ら語られても全然意味がなくて、その状況を我々は何とか未来に改善した形でつくらなければいけないという難しい問題です。
 吉見委員がとても斬新なアイデアをおっしゃってくれそうな気がします。吉見委員、どうぞ。
【吉見委員】  とんでもない前振れで。ちょっと話が大きくなってしまって恐縮なのですけれども、今日の御発表の中で大変重要な知見というのは、濱田委員が先ほどお話になられた、つまり、家計負担が大学選択にかなり決定的な影響を及ぼしている。しかも、この家計負担は、マスで見たときには一定であるということだと思います。逆に言えば、家計負担、この条件がうまくクリアされるならば、学生は比較的容易に移動する。地域をいろいろこう、東京だというふうに限らずにいろいろな地域に移動し得るポテンシャルがあるということを含意しているのではないかと先ほど思いました。
 ここでいきなり話が大きくなるのですけれども、じゃあ、そもそも大学とは何かという話に来るわけですね。言うまでもなく大学というのは、中世以来、旅する教師と旅する学生のある拠点での共同体として始まったものです。つまり、移動の自由というのが大学の一番の根本にあると私は思います。そのことを十分自覚しているヨーロッパ、EUは、既にボローニャプロセス、エラスムスプロジェクトで、学生たちを旅させながらいろいろな経験をさせて、優れた知識を身につけさせようという取組をしてきたわけです。
 先ほどの文科省の見解の中でも、これから問題発見力、的確な予測、革新性を持った学生を育てなければいけないとなっているときに、この3つをかなえる一番の、私は、今の日本の学生たちに欠けていて、しかし、育てなければならない能力は、私は失敗力だと思います。失敗することの力という。その力がやはり今の若い人たちを見ていて、かなり欠けている。それを育てていくためには、やはり異文化との出会いとか、違う伝統とか、違うバックグラウンドの人たちの出会いとか協働、一緒のことを何かやっていくという力が必要だと私は思うのですね。そうだとすると、恐らく私たちは地域という概念を変えなくてはいけない。つまり、地域というのは、2種類というか、2つの次元を持っていて、1つの地域は土地としての地域、当然あります。ですから、それぞれの県、市町村、それぞれ地域だと思います。
 でも、ネットワークとしての地域というのはもう1つあって、片仮名の地域と言ってもいいかもしれませんけれども、つまり、21世紀がますますモビリティーを前提にした社会になっていくとすれば、それはますます、それを一定の地域の中にずっといるという人もいるけれども、結構な多くの人が動きながら、必ずしも、田舎から都会へというのではなくて、2拠点居住とか、関係人口とかいろいろな形で、都市の人がもう1回地域に入っていく。また別の地域に動いていくということが常態化していくような社会が、21世紀、ますます広まってくるとするならば、もう一方で、土地としての地域と並んで、ネットワークとしての地域というものがあるだろうと。それはだんだん強まってくる可能性があるだろう。それを大学とどうつなげていくかということを考えると、むしろ、土地としての地域を前提にした連携と、それから、ネットワークとしての地域を前提にした連携。つまり、いわゆる土地という意味では、異なる地域の大学が連携しながら、その間を渡り歩いていく学生を増やしていったり、それから、別の地域に定住していく、定着していく学生を増やしていくという。移動を前提にした社会の中での新しい地域と大学とのつながり方というのは、先ほど、話が元に戻りますけれども、家計負担とか、経済的な負担というものをちゃんと国がサポートするような仕組みをつくれば、ひょっとしたら、そういうふうな流れをつくる可能性があるし、これは多分、それに乗った学生たちにとっては大変創造的な力を身につける場になり得るのではないかということを思いました。
 以上です。
【永田部会長】  吉見委員に質問します。今の大学の運営側から見ると、そのときに圧倒的人数が足らなくなっているわけです。そうすると、選ばれる大学になっていかなければいけないわけですが、結局、席が余ってしまうわけです。この問題が重要な問題で、学生も教員も大学院でどこかに行ったり、外国に行ったり、どんどん自由に歩いてくれればいいのですが、そのたびに変動するわけです。それでよしとすると、大学が学生に選ばれるような大学としてそれぞれががんばり、あとは自由競争だということにほぼ近いと思うのです。それで地域の問題が解決すれば本当にいいのですが、地域の大学にどのようなてこ入れをしていくかという大問題がここでまた生じてきます。
【吉見委員】  そうだと思います。ですから、私は問題提起として発言して。
【永田部会長】  もちろんそうだと思っています。
【吉見委員】  解決策を発言したわけではなくて、そういう大それたことはできませんので、そういう視点も、つまり、地域というのを単純に土地だけに見ないで、二重化して考える。あるいは、学生たちが移動するということの重要性を考えるという視点もあり得るのではないかという、そういう問題提起でございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 益戸委員、どうぞ。
【益戸委員】  本日の三人の委員の方のプレゼンをお聞きして、もはやこの少子化による高等教育の在り方問題は避ける事は出来ない社会問題であるということをはっきり日本の国全体で認識するべきである。と 強く感じました。私が思い出したのは、90年代の金融機関の不良債権処理問題です。 92年には、既に銀行は不良債権を抱え、ほぼ債務超過の状態でしたが、当事者である銀行も、借り手も、マスコミも、国民も、時の世論は、 国のお金、税金をこのような不良債権処理に使うなんてとんでもないという風潮でした。 この頃に公的資金を使い、手をつけていれば、ここで話は終わっていたかもしれません。しかし、決断が遅れた為に、その後、95年の住専問題の深刻化、そして翌年には住専破綻。97年には北拓、山一証券、98年には長銀、日債銀への破綻につながっていったのです。少子化もなかなか止める事が出来ない問題です。従って、この少子化問題には、とことん国が関与して、公的な資金を使うべきだ。と全ての人が認識すべきと私は今日はっきりと思いました。中村委員のレジュメの18ページ、地域連携プラットフォームに関する課題の中で、形骸化しないためのスキーム構築というのが出て来ますが、そのためには、もう一度、参加者の役割分担をはっきりさせないといけないと感じています。行政と大学、教育界と民間ではそれぞれの目的が違いますから、言ってみれば、行政と教育の方に経済をどんなに良くして欲しいと言っても、決定的なアイデアは浮かばないのではないでしょうか。勿論、逆に、経済界にどうやったら知のレベルを上げることができるのだと問われても、我々専門家ではないので難しい課題です。ところが、今までどうもここがごちゃ混ぜになっていて、お互いに意見を言い合い議論すると、何か全体の実行レベルが高くなるのではないかという幻想があったのではないでしょうか。この事をはっきり理解することが、実は実効性を持たせるということなのではないかと考えています。従って、一旦、みんな降りてみる。降りて、私はとことんやるという方だけ手を挙げて、参加して頂く。決して名誉職ではありません。会議を年に2回しかやらない様では駄目です。もう毎週やるぐらいのつもりがないと、 この問題を乗り越えてはいけないでしょう。 参考資料の他省庁の中で金融庁の例があります。123 ページの「連携、再編等に関する施策の例(他省庁関係)」の中で、地域銀行、 地銀の話ですね。この背景にははっきり「人口の減少等による地銀等の経営環境の悪化」と書いてあります。はっきりと資金使途を明確にして臨む事は重要です。理解を得るための最大のポイントだと思います。文部科学省、財務省が少子化を前面に出して資金提供をお願いしたいと思います。それから、もう一つよく分かったのは私立大学から公立大学になると何が変わるのかがよく理解できました。私の経験によれば、例えば県知事とか市会議員、県会議員の選挙公約の中に、地元のために公立の大学を作るというのがよく出て来ます。この公約をとことん追求して説明を聞くと、濱田先生のプレゼンの中にあった、アパートが増え、地元経済を潤す為であるからとの意見にたどり着く事がありました。県外から学生が入ってくるから、地域経済が上がるから、これは私の公約の一つですとの説明です。しかし、当選後、本当に公立大学になった例というのは極めて少ないと思います。公立大学の設置については、より責任を持ち厳格にすべき事とも思いました。 そして、国が関与すべき事だと思います。
申し上げたいことは、議論を整理して、もう1回やり直しする事をはっきりすること、そして、国がしっかり関与する。そして、国の資金を使う。少子化による高等教育の在り方の議論の結果ついてのコスト負担はちゃんとやるので、しっかり具体策を議論しましょうという宣言が必要だと思いました。
【永田部会長】  要するに、我々は議論をいくらしたとしても駄目なのです。どうするかということをきちんとやらなければいけない。そのときに教育関係者たちは、教育のそれぞれのユニークさを知っているわけだから、どのようにそれを保ちながらやるのか。それから、自治体や地域の産業ということは、我々も素人ですから、どのようにしてそれを再構築して、そこに人を根づかせるかを考えなければいけません。それぞれ不得意なこともあるのだが、どうしても、今までの延長をやっていても、もうもたないというのは少し分かった気がします。それをわざと先ほど、アドミッションを一緒にやったらと申し上げて、それは大学の個性がもうなくなってしまうと皆さんの頭の中に急に浮かんで、「えっ?」という感じがしたはずなので、本当にできるかできないかは別として申し上げてみたわけです。
 ここからです。それでも学びたい子は、書いてあったとおり、あれほどいるわけで、保障してあげなければいけないわけですから、全体で言えば、高等教育機関はある一定数、絶対必要なわけです。それを我々は守らなければいけないし、地域にとっては、小学校がなくなると、まちがなくなると同じようにやはり高等教育機関が最低限これだけはないといけないという単位はきっとあるはずです。それは守らなければいけないということが条件なので、国公私立がどうのというのは、もちろんプラクティカルには非常に重要ですが、その前に考えなければいけないことがやはりあるはずです。
 先ほど吉見委員が、十分に経済的支援をすると、本来、学生たちはどこに行ってもいいのだとおっしゃったことは、そのとおりだと思います。あとは、自分たちの働く場所にも行って、働いていらっしゃるのでしょうから、産業をきちんとその地域に起こさない限り、定着しないというのも絶対正しいわけです。ですから、それを避けては絶対無理なのです。そうすると、地域産業と大学はもう完全に同じ平面で我々は提案しないといけなくて、我々はもちろん経済産業省ではありませんが、絶対こうでないといけないということは言えるはずです。ここで話さなければいけないのはそのような問題だと思います。
 今、益戸委員がスパッとおっしゃったのはそのとおりです。今まではどちらかというと、各高等教育の組織やシステムが大切であり、それを何とかしようとしていました。それはそのとおりであり、皆さん知っていることです。そうではなくて、2040年でもう愕然と、18歳が少なくなっても、サステーナブルにするということで考えなければいけません。
 そうすると、何かもっと割り切った話が出て、その後、それの逆で現状を救うための施策を考えればいいので、やはり大鉈を振るわないと無理かと思います。いくら話してもしようがないのです。ここで話したことが実際に世の中にフィードバックしていかない限り、多分、文科省だって、簡単に施策をつくれるわけではなくて、ここはそのような有識者の集団であるため、我々も責任があるわけです。だから、やめるのではなくて、責任がありますと私は申し上げたいわけです。
 そのほかいかがでしょうか。吉岡委員、どうぞ。
【吉岡委員】   いいでしょうか。ちょっとまた話が戻ってしまうのですけども、すみません。先ほどの濱田先生の話と、その後の議論の中でも出てきました家計負担が非常に重要だという話、ポイントだという話と、それから、もう一つ、具体的には、自宅通学というのはやっぱり非常に決定的だ。確かに住居費と生活費というものの差、例えば国立大学は全国一律なわけですから、その差が生じていることは非常に大きいだろうと思うのです。
 先ほどの吉見委員の話と別のことを言っているように聞こえるかもしれませんが、大学ってそもそもという意味では、いろいろなところを移動するという側面と、みんなが一緒に暮らすという側面があると思うのですね。カレッジが一番典型ですけれども、みんな一緒に暮らす。その2つの側面をすごくうまくやったのがミネルバ大学で、ある種の、非常に面白いやり方、どれだけうまくいっているかどうか分かりませんけれども、非常に面白い発想だなと思いました。
 そのことともう一つ。オンライン教育の在り方というのが、我々、コロナのときにバッとオンラインが進んだのです。あのときのオンラインの発想というのは、ばらばらに部屋にこもらざるを得ない学生をつなげるという発想だったわけですけれども、その後、ミネルバの例も含めて考えると、要するに、オンラインでできる授業はオンラインでやるけれども、実はみんなでディスカッションしたり、それこそ同じ釜の飯を食うというような側面も含めて、ある種の共同的な人間生成と言うのですかね、そういう側面が見えてきたということがあるだろうと思うのです。
 そういうふうに考えたときに、それから地域の問題を考えると、今日のデータ集の162かな。地域別の入学定員の充足率というのが出ていますが、やっぱり入学定員は充足していないのですね。一方で、今日のデータに入っていないのですが、学修者本位の振興策の会議のときの会議のデータの中に、各県の進学者の収容力データというのがあったと思うのです。それだと、実はほとんどの都道府県は、18歳の人口が大学に行けるだけの収容力を持っていない。あるいは大学進学希望者と比べても、とても収容できていないのです。そもそもそういう状態になっている。これが今後も進むと、これは多分ますます悪くなっていくだろうと思うのです。
 ということを幾つか考えた上で、質問の形にさせていただくと、例えば山梨大学では、あるいは公立大学等でも、学生寮というものについて、もう考えていらっしゃるかと思うのですけども、学生寮の復活とか、あるいは国際寮というものを今、各大学はいろいろ考えて、それは先ほどの議論にあった多様性とか異文化と触れるという、一番決定的なことだろうと思うのですが、寮をうまくつくっていって、そこにオンラインをできるようにしていけば、かなりの、先ほど吉見委員がおっしゃったような話も含め。寮だからそのまま移動はしないにしても、いろいろな人が集まって、しかも、生活費がある程度確保できる。それから、学生数が増えるわけですから、その地域の振興にも貢献するというようなことはあるかなと漠然と思ったのです。特に国立大学の方々は、学生寮の経験というのはあると思うのですけども、その辺のところはどういうふうに考えていらっしゃるかなということで、質問の形にすると中村委員がいいかもしれないです。
【中村委員】  本学の場合、学生寮はまだあります。
【吉岡委員】  そうですよね。
【中村委員】  はい。女子寮と両方あるのですね。もともと山梨医科大学と山梨大学が二十数年前に統合したものですから、医学部のほうにもあります。今後、学生の希望を聞くと、増やしてほしいと。なので、新しくつくることはまず無理なので、だから、ここはそういったアパート、会社さんと契約をしながらやるということを今、企画はしていますけども。そんなところです。
【永田部会長】  中身があまりにプラクティカルですが、要は、キャンパスが必要かと聞いているのです。キャンパスは必要だと多くの方は思っていらっしゃいます。意味はいろいろあると思いますが、行った先にも、キャンパスはあるわけですから、大学というのは物理的に場所として必要であるというアイデアは多分皆さん大体一致しているのでしょう。ミネルバ大学ですら、ほかの大学のキャンパスを借りているわけですから、今の御質問は、そういう意味だと思うのです。そういう意味合いでは、魅力あるキャンパスがいろいろなところにあればいいわけです。それを幾つ確保するかという話ではないかと思いますが。それが国公私立それぞれの立場はあるかもしれませんが、どれだけ魅力的なキャンパスがここにあるのかということです。それは学生にとっては学ぶ場所として、我々としては研究する場所、生活する場所としてあるのでしょう。それが一緒くたになっても、できる場合と、できない場合とあるでしょうという話をいきなりしたわけです。
 ですから、連携等法人のかなり先端的事例としてお話いただいたものを、もっと発展的にしたときに、それぞれの大学のアイデンティティーを残しながら、どうしたら本当に高いレベルで活用できるのか。そのときに縮小や、ある意味では2つ合体すれば膨れるわけですが、そのときに、一部削ることもできるだろうと思います。そういう意味合いで、連携等法人を、今の権限があまりない連携等法人以上にもっと機能の高い連携等法人というものをそろそろ考える時期かと思います。要するに、その地域に何かを確保しなくてはいけないし、そこには物理的に何かを確保しなければいけないし、それぞれの思いがあるが、そのよさだけを残していくような努力をしなくてはいけないというものの結晶が連携等法人のさらなる高度な機能を持たせた連携等法人というようなイメージで今は聞いています。それは中村委員のおっしゃったことをさらに未来型に変えていった、私の頭の中であることです。そうすると、そこのところへの参入の仕方というのはとても難しいですが、十分に議論できる対象ではないかと思います。
 ヒト、モノ、カネ全部が連携等法人で動くと、それで1個の大学になってしまうので、それは連携等法人以上になってしまうわけですが、いいさじ加減というのがどこかにあるのではないかというのが一つ、中村委員の話を伺って、解決策としての単なるたたき台として出しています。私の個人的な意見として、そこまでしているなら、山梨大学から見ると、自分のところに国際政策学部ができたという考え方だろうし、山梨県立大学から見ると、医学部がすぐそばにできたという感じだから、看護学部も喜ぶという関係になっていて、物すごく近しい共同教育なり、研究ができる環境が整ったことになります。であれば、もう一歩進んだ連携、今の連携等法人よりももっと進んだ経営を一緒に一部できるようになっていけばいいのではないかと思うわけです。
 大野委員、どうぞ。
【大野委員】  すみません。ありがとうございます。短期大学、アクセス確保という意味で、短期大学の話をさせていただきたいと思います。経済的な問題もさることながら、18歳の時点での学力というのもアクセスできない一つの大きな要因だと思います。知の総和、維持向上ですので、その時点では届いていないのだけれども、その後、やりたいと思ったときに、敗者復活という言葉がいいかどうか分かりませんが、やはりアクセスするような、今でもあるのですけども、もっと幅広くすることによって、今の大学にもっと多様な人たちが集まってダイナミズムが生まれるのではないかということで、実は平成26年、2014年ですけども、中教審で、短期大学の今後の在り方についてということで審議まとめがなされています。その中で、短期大学の今後の在り方の課題として、短期大学の位置づけの明確化ときちっとうたわれているのですけども、いまだ、やはり進学者がどんどん減ってきて位置づけが専修学校と少し曖昧になってきているとかいろいろな見方があって、いま一度、短期大学、ファーストステージ論ではないですけれども、アメリカのコミュニティーカレッジのように、例えば経済的、社会的に序列化してしまった構造に風穴を開けるといいますか、そういったところからもアクセスできるような、そういったしかけをこの審議の中でも少しくしていただいて、短期大学の活路というよりは、日本の高等教育全体の中で短期高等教育に学んでいる人たちが、大学、それから、マスターとかそういうふうな移動ができる設計も考えていただければありがたいと思って、発言させていただきました。
【永田部会長】  ありがとうございました。
 大森委員、どうぞ。
【大森副部会長】  私も難しくて、なかなか発言を躊躇してしまうのですけれども、今、幾つか御意見が出ていたところで言うと、吉見先生がおっしゃった移動というところが、かなり議論が必要になってくるなと思って。だから、おっしゃっていただいて、すごくよかったと思っているのですけれども。この文書の中にも流動性みたいな言葉が入ってきます。大学を語るときによく研究者の流動性を高めることによってと。ただ、実感として、教育、学生を育てていこうと思ったときには、あまり流動性は欲しくないというか、先生たちと学生たちのコミュニティーの中で4年間一緒に、そこには地域も入って、一緒に育っていって、先生が毎年変わるよみたいな感じだと、何か育ちが悪いなという実感が。これは小中高校的な発想かもしれないのですけど、うちの場合はなるべくいてくれる人を採用していくような、同じビジョンに向かってずっと、卒業してからも、あそこに行けば先生がいるというような感じなので、そこの。これはもうほぼ感覚の話なのですが。
 ただ、移動ということが進んでいくためには、それをよしとするのであれば、これは単純にあちこちというだけではなくて、地域で、大学に行けなくても、例えば東京に行けば行けるというのも一つの移動だと思うのですけど、そのときに今、行けないからアクセスをどうしようという話になったときに、移動が可能になるということは多分、さっきお金の話も出ましたけども、修学支援新制度に加えて生活費も含めたような支援というものを国民が大学生に提供していくことの理解というものがあると、それは可能になってくるのだろうと思います。そうすると、総和としては、別に地元に大学がなくても、アクセスはできるようになるということになっていくのだと思うのですね。
 そうなったときに今度は、方程式を解くのが難しいのは、学生からすれば、学びたいことを学びたいところで学べるというのが一番いいわけだから、それでオーケーなのだけど、一方で、この間ずっと議論が起こってきているのは、地域における大学とか地域の問題。ちょうど消滅何とか都市みたいな発表もまたされましたけど、そこにおける大学の役割みたいなことを掛け合わせると、答えが一気に見えなくなってしまうというところがあるなと感じています。
 実際に、さっき朴澤先生おっしゃった、アンダーマッチングですか。これは例えばうちの大学は典型的なあそこのゾーンなのだけれども、あります。いわゆる県内トップ高校の子がうちの大学に入ってきて、4年間。入ってきたほうが育つと思っているので、うちに来たほうがその子にとってはよかったねと思ってはいるのですけど、でも、聞くと、修学支援新制度があったからとか、あと、うちの特待生があったからと卒業のときに走って報告にくる子がいます。それがなかったら、やはり進学自体を、あんないい高校に行っていたのに、進学自体を諦めたという子はやはり移動できないのですよね。なので、移動までも可能にさせる修学支援ができたら、できるのであれば、ちょっと議論が変わってくるなと思っています。つまり、益戸委員がおっしゃったお金の問題と絡んでくるのだけど、そこまでやれるのかと。それがそうじゃないとなるなら、今度は地理的なアクセスということをどう担保していくか。そうしたら、地元の私学も公立も国立もそちらに機関補助しながら維持をしてもらうようなことをやっていかざるを得なくなるだろうということかなと思って。もう何か、もしかすると、修学支援新制度、どこまで行けるのかという話がないと話が進まないかもしれないというぐらいの感じもしたりはしてきたなというところがあったりして。すみません。本当にまとまらない話をしてしまいました。
 あと、連携推進法人の話は、永田先生がさっきおっしゃった、それでいくと、もう極端な話、各県に一つ、連携推進法人という組織があって、そこにブランチとして各大学がぶら下がって、入試もそこに入って、レイトスペシャライゼーションで学びたいところに入っていくという可能性も出てくるのかもしれないですけど、そうやってみんなが助け合っていく。ただ、設置者が違うと難しいですね。この間の学費の問題にもなっていくという、むしろそっちかもしれない。同じところで入試で入ったのに、そこから先の壁があって。でも、それぐらいの議論は必要かもしれないと思っています。
 ただ、それはかなり中長期的な議論になってくると思うのですけど、感覚としては、あした、潰れていく大学がもう出ている中で、短期的にカンフル剤を打つのか、打たないのかという議論というか、判断をしてほしいなという、そんな気がしています。ここでする話なのか分からないけど、何かすごく高邁なことを議論して、何年かかかっているうちに、それこそ大学がなくなっていくのだろうと思っているので、議論がまとまるまでの間、カンフルを打ち続けるということは必要かもしれないと。結論が出るまでですね。ということも感じています。
【永田部会長】  それは多分、誰も否定していなくて、それは今の文科省、行政としてやるべきことです。我々が今、話しているのは、その先の国のための姿を考えています。ですから、あしたのことを話すのであれば、誰もここにいなくていいということだと私は思います。そのようなことではなくて、ここで話すのは、何十年か先の日本の姿を今、描かなければいけないということで、あしたのことは行政がやるべきだと思います。我々は行政ではないので、やってもしようがないと思います。
【両角委員】  ありがとうございます。質の高いアクセスということで、もちろん連携推進とか、地域で協力してやっていくということは不可欠だと思うのですが、学生というか、進学する側の立場から考えたときに、連携したから進学先が増えるという話とはやはり違う気がします。連携は、地域の質の高い高等教育をつくっていくというところで大事かなと思うのですが、アクセスの問題が今日、あまり議論できていないのではないかというところがずっと気になっています。
 私も前回発表させていただいたときに、18歳時点での進学率の都道府県別の進学率は全部上がっているのですけど、みんな均等に上がっていて、地域別の進学格差はそのまま温存されたまま残っている状況について述べました。その差が埋まらない状況の一つの要因は、今日もかなり議論が出ていたかと思うのですけれど、要するに、もう経済的な問題ではないかという気がするのですね。お金があれば東京に行けるとか、あるいは、公立大学になることで安くなったから学生が集まったなど、当然のことですが、進学行動と経済状況は深く絡み合っていまして、18歳人口のアクセスといったものをどう考えて、どういう政策が必要かという議論が現状で課題がある以上、やはり必要だなと思っています。
 資料2-1の6ページ目の③ですが、私が言ったことが途中で切れているような気がしたので、このままだとまずいという気がしまして、どうしても言っておきたいと思って手を挙げました。個人補助の修学支援新制度とかで、高等教育全体の資金投入は増えていて、経済的観点からの「アクセス」の確保は一定の進展と書かれていると思います。先日もお話したように住民税非課税世帯の大学進学率が伸びたという効果はあるけれど、それ以外のところでは、解消していないことも多いこともまたかなり強調したと思うので、ここで終わってもらっては困るというか、なお、かなりの問題が残っているといったところをぜひここに入れてほしいなと思いました。
 あと、18歳人口のアクセスの問題もそうですけれど、社会人とか質の高いところの進学アクセスの問題といったときに、もちろんオンラインのところもあると思うのですが、やはり大学院とか修士、博士課程のところをいかにそれぞれの地域でも充実させていくかということはかなり大事なのではないかと思っています。社会人の大学院アクセスを考えると、それこそ先ほどから出ている地域連携がかなり重要になってくるという気がしています。社会人が大学院で学んでいくということは、その地域のこれまでの知で解けなかったことを大学の学知を加えることによって、共に解決していくというところですごく重要だと思うのですが、既存の大学院は今、変わりつつあるとはいえ、やはりまだ細かく専門分化していて、研究者養成の大学院といった側面のみがまだ強く残っていて、それだけではない大学院の在り方に変わっていくということが重要だと思います。社会人のアクセスと言ったときに、私は大学院へのアクセスがとても重要なのではないかと思うのですが、社会人が行きたいなと思う大学院に変えていかないと、知の総和が高まっていくというところも解決しないのかなと感じています。
 すみません。2つほど混ざって発言しましたが、以上です。
【永田部会長】  実は後で話すといっても、質の話に一部入っているわけです。ただ、先ほどの中村委員のスライドでは、64%の進学率が75%近くになっても数百人減ってしまいます。ですから、そこは奨学金を出そうが、何しようが、減ってしまいます。ここが一番の問題だとやはり思います。進学率を上げるということで、アクセスする全体像を増やしていくというのは当然私も賛成だし、そうしければいけないのですが、減ってしまうという先ほどの中村委員の御説明というのは痛烈です。進学率が今の60%台が75%に上がっても、5,000人が3,600人に減るわけです。ですから、前半部分は、ディスアグリーというよりは、そこはそこで大切なことですが、後半の部分については、多分、質の問題とも大きく関わっていて、大学院の問題は多分これから出てくるのだと思うのです。社会人や大学院の問題というのが一方の解の一部でもあるわけです。つまり、学士課程の知のレベルを上げるという努力をずっとしてきましたが、一番分かりやすいのは、全部大学院に行ってしまえば、その分、大分変わるはずでマスの理論としてはあり得るわけです。それはもう我々が考えなければいけないことだと思います。
 そこは分けているわけではありませんが、どちらかというと、質の議論にコミットしていくのかなと思っています。私は各県のデータを知っていまして、全部シミュレーションしてありますが、どんなに上げていっても駄目で減ってしまうのです。それはもう総数が減るので、減るのは当たり前です、そのときに大学がなかったら困るわけです。減ったから大学がないという地域をつくってはいけないということなのです。学生たちはどこにいてもきちんとアクセスできないといけません。その条件を我々は探ろうということだと思うのです。ないから、東京に行けばいいというのは少し違うと思います。地方にいたいという学生も必ずいるという、朴澤先生の議論だと思います。大森委員、どうぞ。
【大森副部会長】  これは言ってしまうと、またいろいろなところで燃え上がると嫌なのですけど。えいやと言ってしまいますが、じゃ、10%減らしましょうみたいなことがあり得るのかということです。つまり、県レベルで、高校とかは私学と公立と相談しながら少しずつ定員を調整していますよね。高校というのは、そうではない生徒もいますけれども、大体県内のところに行くので、ベースが見えている。ところが、大学は、例えば我々群馬県が少し規模を考えましょうと、プラットフォームで議論して少しずつ減らしたら、お隣にみんな行って、あれっ、お隣はよかったよねみたいな話になりかねないという話の中で言うと、全国で統一して考えていかなきゃいけない話に結局はなるのだとしたときに、そういうことをする。ただ、そのときに、元の定員を維持しながら募集人数を減らすという議論もあったし、かなり長期スパンでそこを、だって、先生だってすぐさよならできるわけじゃないし、運営の規模感があって、これまでやってきたものをシュリンクさせると言ったら、すぐどうということはできないから、そこを長期スパンで、そこはお金の話ですけども、支援していくというぐらいじゃないと、今、永田先生がおっしゃった話でいくと、そのパーセントが……。
【永田部会長】  そうなってはいけないから申し上げています。
【大森副部会長】  いや、だけど、そうすると、全体でそこをやらないと、結局、どこかに集中すればなくなるところが出ますよね。
【永田部会長】  そうなる可能性もあると思います。経営体側からは減らしたくないという意見は当然だと思います。私が申し上げているのは、行きたい大学がないのは困ります。その大学は残さなければいけないと申し上げているのです。定員を10%一律減らせばいいという問題ではないだろうし、どこかの大学がなくなるという問題でないのをどのように解釈するかという問題なのです。その地域で、大学がなくなったら、もう地元の大学に行ける子がいなくなってしまいますから駄目だと申し上げています。一律に10%減らすというような考え方というのは、ある意味では、全くよくない施策だと思うのです。ですから難しいのは、選ばれる大学にならなければいけませんと先ほど私は申し上げましたが、学生が行きたくない大学を残してもしようがないということだと思うのです。
【大森副部会長】  もちろんそうですね。
【永田部会長】  ですから、行きたい大学に皆さん努力しなくてはいけないだろうというのが全体にまずないといけません。それでも各地域から本当に大学がなくなってしまったら、その地域はあまりいい将来像は描けないと思うのです。ですから、我々が守らなければいけないのだが、逆に言えば、どのように守るかです。ですから、一律に10%減らすというのは、一案として、意見としてお聞きしますが、そのような考え方をしたくないわけです。必要なものは必要なところにきちんと残す。それはどのような根拠でそこに残すのか。そのときに、人口減少の中でそれに対応できるだけのことをしなければいけません。例えばそこが減っていても留学生あるいは社会人対応をして、一定量、きちんと行くような能力を持っている大学を残せばいいではないですか。それは、教育の中身をどのように強化するかという話に当然なるわけです。
 そこに話がいかないと、いつまでたっても、数をどうするかというのは、少なくとも学生の数が減ってしまうので、全体に減るか、どこかが極端に減るか、それは分かりませんが、あくまでも減るので、それにのっとって我々は設計しないと失敗します。
【大森副部会長】  だから、選んでもらう大学になるために、教育を充実させる。あるいは研究というところもあるかもしれない。教育研究を充実させてというところに、もちろん集まってもらう。でも、現場感覚としては、それでも追いつかなくなってきているという。
【永田部会長】  そうです。
【大森副部会長】  そうすると、でも、集まっているところもあり、その地域によって、例えば、はっきり言えば東京にある程度集まっていてというときに、このままいくと、全体の規模を考えないと、どこかに集中がどんどん進んでいくことで、すぽんと大学がなくなるという現象が、みんなが残るはもう無理で、すぽん、すぽんとなくなっていっているのが。今、実際、なくなっていっていますよね。そこを、いい教育を、何かそこなのですよ。
【永田部会長】  分かります。
【大森副部会長】  母数に合わせて全体規模を調整するという考えをしないで、すぽんとなくなるのを助けることができるのかという。
【永田部会長】  助けるというのがまずおかしいと思います。学生を助けるためなら助けますが、大学を助けるか助けないかという議論ではないと申し上げています。学生が、日本中どこにいてもきちんと行きたい、ある程度の大学に行ける状況を我々はつくれるのかという議論なので、ある大学がなくなるとか、なくならないかというのは、結果なので我々としてつくった施策は、学生たちに極めて不便を強いるようなものではいけないだろうということです。ですから、個々の大学がどうなるかはもちろん考えますが、それ以前に考えなければいけないアクセスというのはそのような意味です。やはりどうしても北海道にいなければいけない子が北海道に大学がなかったら、もう高等教育を受けられないわけです。それはまずいのではないですかということです。
 伊藤委員、どうぞ。
【伊藤委員】  ありがとうございます。実は待っていたのは、これは質のことにも関わってきて、最終的にはアクセスのお話をしますので、その絡みの中でお話をしたいと思います。前回、国立150万円ということで、私もやっといろいろ反響を浴びて、これだけのみんなが反応してくれたのはすごいなと思っているのですけども。その心は、もともと質を向上するためには、例えば大学の場合は1人当たり300万円ぐらいの収入が必要であるし、それは実際に今、国立はそのレベルかもしれないけども、平均的ですね。86万台は。でも、もっと地方大学も必要なわけです。しかも、これからインフレがあるときに、例えば300万円では足りなくて、350万円とかもっと必要になっていくわけです。なのに、毎年1%ずつ運営費交付金が減らされていくという状況の中で、それで本当に質の向上は得られない。だったら、各国立大学としてどういう工夫が、可能性としてできるかといったときに、国立大学としては、取れる学生からは学費をしっかり取り、でも、取れない学生、先ほども何度もありましたし、非課税世帯はもとより、例えば650万円ぐらいの収入であったって、取れない学生であれば、それはしっかりとした奨学金を充てて、それの結果として国立大学も公立大学も収入が増えるような形になっていき、質が向上する。その上で、でも、そこで値上げをしてくれないと、私立大学が同じような競争ができないということになるわけですね。誰が退場していくかという話になるわけです。だから、そこで公平な場をつくり、ある意味、工夫に基づく競争原理も出てくる必要があるだろうということになるわけです。
 その上で、では、地域のアクセスをどうするかと言ったときですけども、その奨学金というのを、例えば地域A、Bと先ほどありましたけど、結局はお金であるのであれば、そういうところには、さらに大きな、地方大学を選ぶ学生にはさらに多くの奨学金をつける。それは国策として。ですから、結果的には、全ての公私立、ある意味、学費という意味では、イーブンな競争はしながらも、でも、地方を国としてとにかく保って繁栄させるのだということを決めるのであれば、そこに国公私立共通の学生支援というような形で、そこに行く人には大きな奨学金というか、これはもちろん給付型ですね。給付型の奨学金をつけていくというようなことを例えば考えるなら、これは国として必要であれば、先ほど益戸委員も国として必要であればそういうことを考えるべきであろうし、また、今日の濱田委員の発表で、本当に、ああ、これはお金が大切なのだということは相当明らかになりましたし、さらには、中村委員の今日の御発表の中で、皆が組むといったときに、あまりにも私立と公立と国立で学費が、学納金が違うというのは、幾ら基盤部分を一緒にやるとしてもなかなか難しいところも出てくるのだけども、これがある程度、奨学金という個人負担を基に、共通の学納金のような形になっていれば、場合によっては地域を移動しながらの旅する共同学習機構みたいな、ミネルバのまた新しい日本版が、先ほどいろいろな意見があった中において、そういうような形も例えば考えていけるのではないかという。長期的に考えたときには、相当クリエーティブなことを考えなきゃいけない。要するに、今言ったような旅する、そういうクリエーティブなことを考えていかなきゃいけないのではないかというのが私の今回感じたことであります。皆さんの御発表を伺い、本当にそういう意味で勉強になりました。ありがとうございました。
【永田部会長】  気になさらないでいいのです。伊藤委員の御意見は皆さん分かっていまして、今回もお金の話が出てきているのは、皆さん理解しています。一部理解されないような場面もあったようですが、おっしゃる意味はきちんと通じていると思います。それは御心配ありません。賛否は別なのですが、意見としてきちんと皆さんつかんでいらっしゃるのは確かだと思います。賛否は別というのは、またいろいろな考え方がお金についてもあるとは思うのです。勉強したい人にお金を出そうというのは、大体誰しも賛成だと思うので、それはそうだと思います。
 時間がなくなってしまって、先ほど両角委員の意見を少し聞かせていただいただけで、質の向上について、今日は十分な時間が取れません。個々の大学が選ばれる大学として、学士課程を頑張って、それから、キャンパスの中で育む場も必要だし、かわいい子には旅させることも必要でしょう。それはそれでいいと思いますが、それだけやっていたとしても、先ほど申し上げたように、人数が減った時に現場で努力しても、いきなり今の子が全部2倍の能力を持つということはあり得ないので、やはり日本全体としての知の総和という観点から言えば、もっと上の学力というか、大学らしさを継いでいかないといけません。
 そこで、先ほどの大学院というのは非常に重要な役目になって、その中の非常に重要なパーツが、学士課程は出て、社会に出たが、もう一度大学に戻ってくる社会人です。社会人学生が全然増えていないのは大問題です。厚労省に例えば、勉強するための休みなどをつくってと言いたいような気分はあると思うのです。ですから、そのような問題として、やはりアクセスというところに絡んできます。大きな意味で、大学院というのはまた全体として、この国の知の総和を上げるためにやはり必要だと思います。それは今度、次回以降にやはりもっと話していかなければいけないことなのが、そのような意味で、両角委員がおっしゃったアクセスという意味で、社会人がアクセスしやすいようにしてあげなければいけません。地域の大学、地方なんて、行きたくても行ける場所がないではないか。どんな会社にいて、銀行に勤めていても、地域でもう一度勉強したいといっても、大学がなくなってしまったら、それもできません。そういう役目を我々は負っているわけですから、そう安易に、どこかが抜ければいいという問題ではないのです。しかし、総体で言えば、学生の人数はやはり減っているわけです。大学院のほうは、今のように社会人のアクセスを増やすとかいろいろあって、増えるかもしれません。
 しかし、やはり考えなければいけなくて、無理なところに投資をしてしまうと、先ほどの益戸委員ではありませんが、何の意味もない投資になってしまいます。それはやってはいけないので、我々としてここで話すべきは、国費を投じるのであれば、価値のあるものに投資していかなければいけないだろうということだと思うのです。
 今日は時間がなくなったので、質の問題は前振りにさせていただきまして、両角委員がおっしゃったとおりの観点が非常に重要だと思っています。
 今日はもう一つ、アクセスの中で、社会人と並んで、留学生という問題が全然出てこなかったので、これはまた次回以降になると思います。そういった、我々が今話しているのは、個々の大学をどうしようというのはその下にありまして、その上で学生がきちんとアクセスできる環境をそろえることです。それから、レベルとして学びたい水準のものがきちんと学べるようになることです。それを保障しないと、何を話したところで、単なる数合わせだったというのはよくないということなのです。
 ですから、申し訳ありません。大英断の10%全部並べて切るというのに大反対してしまいました。私は反対でして、そういう議論ではないのだとあえて申し上げたいです。
【大森副部会長】  いやいや。
【永田部会長】  皆さん、清水の舞台から飛び降りるように、学費を上げろとか、10%切れとかいきなりおっしゃるのですが、意味はきちんと分かりますが、熟議は必要だと思います。
 質の問題は、今日はもうこれ以上は触れないとして、次回はそのような観点で、さらに知を増やさなければいけないので、そのためにどうしたらいいのかということをきちんと考えないといけません。それを考えた後に、具体的な大英断があるかもしれませんし、ないかもしれませんが、何かしらの方策はやはり考えないといけないだろうと思います。
 濱田委員と中村委員のプレゼンは非常によかったです。具体的な数字が上がっていて、こうなのだという、これを何とか、これに対応しなくてはいけないというのがよく分かったと思うのです。これは例外ではなくて、多分ほかの公立大学やほかの地方大学であっても、ほとんど似たことをおっしゃるのではないかなと思います。やはり我々は日本全部の問題として、そのレベルで受け止めないといけないということが、益戸委員がおっしゃった結論に近いのですが、一番重要なことです。ここからが勝負です。本当に我々が、この国に対して未来をつくれるように提言をつくっていかないといけないのです。そこがこれからの仕事です。ヒアリングは、必要に応じてということで、ここから議論が本格化すると思います。
 何か御意見等ございますか。
 それでは、どうもありがとうございました。次回の予告をしました。それから、今日は3人の先生方にプレゼンしていただきまして、ありがとうございました。
 それでは、事務方にお譲りします。次回以降の予定など、アナウンスをお願いいたします。
【花田高等教育企画課課長補佐】  本日も活発な御議論をいただきまして、誠にありがとうございました。
 次回の特別部会は、5月31日金曜日、10時からハイブリッド形式での開催を予定してございます。
 本日、御発言できなかった内容がございましたら事務局までお寄せください。
 以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございました。それでは、今回はこれでお開きということにさせていただきます。
 
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