高等教育の在り方に関する特別部会(第2回) 議事録

1.日時

令和6年1月26日(金曜日)14時~16時30分

2.場所

Web会議

3.出席者

委員

(部会長)永田恭介部会長
(副部会長)大森昭生副部会長
(委員)吉岡知哉委員
(臨時委員)伊藤公平、大野博之、小林浩、中村和彦、濱田州博、平子裕志、堀有喜衣、益戸正樹、松塚ゆかり、両角亜希子、吉見俊哉の各委員

文部科学省

(事務局)池田高等教育局長、寺門私学部長、西條大臣官房審議官、伊藤文部科学戦略官、小幡高等教育企画課長、吉田学生支援課長、石橋生涯学習推進課長、神山私学行政課長、桐生私学助成課長、村上私学部参事官、篠原私学経営支援企画室長、田井国立大学法人支援課企画官、髙見高等教育政策室長、中村高等教育局視学官、氏原大臣官房文教施設企画・防災部計画課企画官、花田高等教育企画課課長補佐、疋田高等教育政策室室長補佐、濱中国立教育政策研究所高等教育研究部長ほか

5.議事録


【永田部会長】  こんにちは。特別部会の第2回目を始めます。
 今回も対面とウェブのハイブリッドとして開催します。マイクを使って、音声など聞きやすいようにお願いいたします。
 それでは、事務局から資料等についての説明をお願いいたします。
【花田高等教育企画課課長補佐】  失礼いたします。本日はハイブリッド会議及びライブ配信を円滑に行う観点から、御発言の際は挙手のボタンを押していただき、部会長から御指名されましたら名前をおっしゃってから御発言ください。また、御発言後は再度挙手のボタンを押して表示を消していただきますようお願いいたします。また、発言時以外はマイクをミュートにしていただくなど御配慮いただきますと幸いでございます。
 本日の会議資料は事前にメールでお送りしているとおりでございますが、委員からの提出資料に加えまして、資料1-3に「高等教育の目指すべき姿」として、関連法規やこれまで出された提言等をまとめてございます。また参考資料1-1、1-2としてお配りしている参考データ集、参考資料集につきましても相当数資料を追加してございます。内容につきましては、この後、室長の髙見より御説明させていただきます。
【髙見高等教育政策室長】  それでは、お手元の参考資料1を御覧ください。本日は先生方に御議論いただくことがメインと思っておりますので、主な追加部分だけを絞って説明したいと思います。
 参考資料ですが、7ページから37ページぐらいにかけまして経済・産業・雇用、また若者の現状、そして学術研究の動向に関するデータを充実しております。
 また53ページでございますけれども、こちらにおきまして大学入学定員数の推移、こういったものを示すとともに、55ページでは規模別の学校数及び入学者定員の割合を示しております。
 さらに63ページ以降になりますけれども、都道府県別の学校数や定員数、規模別大学数比率等のデータを追加しております。
 加えまして、少し飛びますが、103ページ以降になりますと通信教育に関する動向、また115ページ以降では教員を取り巻く環境、さらに127ページ以降は大学教育の現状等について関連データを追加、充実しております。
 続きまして、参考資料の2を御覧ください。駆け足で恐縮でございます。
 51ページ以降でございますけれども、こちらに前回、益戸委員から御発言いただきました情報関連の関係の制度に関する現状、また、それに関しまして、参考資料2の73ページ以降でございますが、海外の情報公表の状況としまして、アメリカ、英国、フランス、韓国、中国、EUの例を示しております。
 その他、参考データ集、参考資料集ともに各所で資料の追加、充実を行っておりますが、時間の関係上、私からの説明は割愛させていただきます。
 以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 それでは、本日は、委員からの御発表を聞かせていただいてから議論をさせていただこうと思います。最初に、教育経済学を御専門とされています松塚委員から御発表いただきたいと思います。よろしくお願いします。
【松塚委員】  一橋大学の松塚ゆかりと申します。「大学間連携による教育・研究強化が拓く就学の機会」をテーマに本日は発表をさせていただきます。
 2ページ目を開いていただければと思います。まず、この発表は諮問事項1について検討した内容となっております。
 諮問事項1の2040年以降の社会を見据えた高等教育が目指すべき姿で求められているのは、グランドデザイン答申で示された高等教育の目指すべき姿を前提としつつ、同答申以降の社会的、経済的変化を踏まえ、これからの時代を担う人材に必要とされる資質・能力の育成に向け、高等教育機関に関して今後さらに取り組むべき具体的方策について検討すること、その際、成長分野を牽引する人材の育成や大学院教育の改革、社会人や留学生等の受入れによる「多様な価値観が集まるキャンパス」の重要性に留意することとなっております。
 これらを踏まえて、本発表では、これからの時代を担う人材に必要とされる資質・能力を確認しつつ、これを明らかにしようとした国際比較研究の結果と概要を紹介します。
 その上で、今後取り組むべき具体的方策を、多様な価値観が集まるキャンパスの重要性、特に留学や学び直しを通した新たな学生像を想定して考えたいと思います。
 最後に、1番目と2番目の検討結果に基づき、本発表のタイトルといたしました「大学間連携による教育・研究強化が拓く就学の機会」について考察したいと思います。
 次のページをお願いいたします。こちらがより詳細なアウトラインで、発表は、これに沿って進めさせていただきます。
 次のページをお願いいたします。グランドデザインとその後の政策的進展の確認です。
 第1回部会の参考資料から抜粋した概要ですが、その後の主要な政策の進展とともに、本部会の資料の1-3に具体的に記述されておりますので、ここでは読み上げずに、紙面での確認にとどめさせていただき、次のページに移動したいと思います。
 このページでは、グランドデザイン答申後の社会的、経済的変化を、高等教育と労働市場に焦点を当てて整理をいたしました。
 まず、少子化の進行により高等教育機関への進学者も減少することは、さきの部会でも吉見先生が言及しておられますし、第1回の参考データ集に具体的な試算と解説がありました。
 次に、新型コロナウイルス感染症の拡大は遠隔教育の急速な普及をもたらしました。
 また、コロナ禍とも相まって、ここ数年の国際情勢の不安定化は、留学や研究交流を不安定にし、大学間連携が難航する要因にもなっています。一方で、グローバル化が一層進むであろうことから、紛争や摩擦への対応能力も含めて、国際コミュニケーション力は今後ますます問われることが予想されます。
 経済格差の拡大は深刻であり、教育格差も顕在化するようになりました。
 就労の場では流動化が進んでおり、転職の増加や、メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への転換が進んでいると言われます。また、新卒一括採用・終身雇用制度の見直しが行われ、経団連では「就社」から「就職」へと意識を変えることを若い世代に呼びかけてもいます。
 さらにコロナ禍において、物理的な移動が停滞しても、オンラインでどこからでも学習や仕事ができ、知識や情報は、より柔軟かつ自由に移動することになり、ヴァーチャルモビリティーが増大しました。これとともに、場所にとらわれないノマドと呼ばれる新しい働き方が注目されています。
 最後に、生成AIの急速な発展と普及に見られる急速な技術革新が教育の場に多大なる影響をもたらしています。
 次のページにお願いいたします。次に、「大卒に求められる資質と技能の国際比較調査」と、それから得られた示唆を共有させてください。
 1990年代からOECD諸国を中心に、高等教育において「何を教えるか」から「何が身についたのか」への転換が求められました。これに伴い、何を身につけてほしいのかを明らかにするために欧州で広く行われるのが、大学教育のステークホルダーである学生、教員、卒業生、企業をはじめとする雇用者を対象に、大学教育で習得することが期待される知識や技能、つまりコンピテンスを専門分野別に問う質問紙調査でした。欧州では、この調査結果を参考に、大卒に求められるコンピテンスを学問分野別に定義していくチューニングという事業を進め、コンピテンス定義作成のため、この調査はチューニングパイロットスタディーと位置づけられたものです。
 日本での調査もチューニングパイロットスタディーを基礎的な枠組みとして、欧州とほぼ同一の質問内容を用いて実施されました。日本の主体は、2012年度に文部科学省の支援の下に設置されました教育改革推進懇話会の一橋大学を幹事校とする「チューニング・ワーキング」で、2014年から3年にわたって実施された調査結果を使用しています。
 EU側ではボローニャプロセスの枠組みで、デュウスト大学とフローニンゲン大学を幹事大学とする15大学が実施したチューニングパイロットスタディーの第四バージョンが分析対象となっております。
 次のページをお願いいたします。比較分析は汎用、歴史、物理、化学を対象に行いましたが、ここでは汎用コンピテンスの結果を紹介したいと思います。
 汎用コンピテンスのリストは16ページに、そしてコンピテンス重要度認識に関する日欧比較表は17ページに、添付の形で出ております。
 汎用コンピテンス調査での有効回答者数はEU側が7、087件、日本側が4、643件でした。
 まず、日本のみを対象にした結果です。教員、学生、卒業生、企業に対して大学で習得することが期待されるコンピテンスについて4点尺度で答えてもらった結果について、各グループ間の相関性を見た表がこちらです。
 注目したいのは、教員の認識は学生の認識と極めて近く、対卒業生、対企業と、大学から離れるにつれて相関は弱くなっていくことです。
 具体的には、教員が重視するコンピテンスには、抽象的な理論や概念を使って物事を考え、分析し、まとめることができる、また実際の状況に知識を適用することができる、あるいは解くべき問題を特定し解決することができる、自律的に仕事を進めることができるなどです。
 一方で、企業が重視するのは、チームの一員として働くことができる、時間を管理しつつ物事を計画的に進めることができる、他人とうまく環境をつくることができる、筋道を立てて考え物事を決めることができるなどでした。
 しかし、このような結果は、欧州との統合分析では異なる様子を呈します。
 次のページ、8ページに移動していただきたいと思います。両地域のデータを統合して算出したのが、こちらの相関係数です。日本の教員を軸にEUのステークホルダーとの相関を見ますと、日本の教員とEUの教員との相関係数はポイント837と最も高く、続いてEUの対学生、卒業生、企業と大学から離れるにつれて認識が離れていくこと、このこと自体は日本国内の結果と似ています。
 しかし、さきに見た日本の企業との相関が、ポイント499に比べますと、相当に高いことが見てとれます。学生の場合は、EUのどのステークホルダーともポイント7台の相関を有しています。
 一方、日本の卒業生と企業については、EUのステークホルダーと相当に異なる認識を有している様子が明らかです。
 特に日本の企業については、EUの教員との相関係数は0.204と極めて低く、対学生、卒業生、企業と徐々に上がってはいくものの、一貫して重要と認められるコンピテンスについて異なる認識を有していることが分かります。
 今回は2つの地域でしたけれども、大学は複数の国の大学と連携したり、多くの国の留学生を受け入れたりします。地域が多様化するにつれて、雇用者もしくは社会のニーズを一般化して、それを応答することで大学の価値を打ち出すことは、より困難な課題になると思われます。
 しかしながら、学修者本位の視点から学習の機会と内容を明示し、それらの情報を大学が自律的に発信していくということは、さきに述べた社会的・経済的な変化を考慮しますと、これまでにも増して重要になると考えられます。
 次のページをお願いいたします。今後取り組むべき具体的方策についてスライドを進めますけれども、まず、先ほど5ページで整理した社会的、経済的変化を振り返って、それらへの対応策を提示したいと思います。
 まず高等教育進学者の減少に対しては、大学就学人口の拡大を目指すことが大切であると考えます。
 遠隔教育の普及に応じた対策として、広域に向けた学習の機会と内容の明示を強化することが求められると考えます。
 国際交流の安定化とコミュニケーション力の必要性に対しては、国際的認知と需要を掘り起こす学習機会と内容の説明を行うことが問われるかと思います。
 経済格差と教育格差の問題に関しては、既に進んでいる修学支援新制度と並行して、進学を逸した社会人の復学を促進することが重要であると考えます。
 就労者の流動化に対応するためには、学習内容と期待される成果に基づく単位互換と累積、ディプロマサプリメント等の整備・運用を強化し、流動化に対応し流動性を支える大学間連携を進めることが肝要であると考えます。
 生成AIの急速な発展と普及に対しては、異分野間連携と継続的な学び直しの場を提供し、AIが得意とする情報収集・伝達とは異次元の個別大学の特色を強化することが対応策になると思われます。
 次のページでは大学による自律的情報発信の強化の重要性を挙げておりますが、大学の自律性の重要性については既に多くの研究、報告がありますので、ここでは多様化するニーズを一般化して応答するアプローチは困難になるだろうこと、情報発信や大学連携においても自律的なアプローチが問われていくだろうことの確認にとどめたいと思います。
 また、1つ大切だと思われますのは、教学連携には運営の観点が伴うために、日本で展開されている教学IRは、本来のInstitutional Research、さらには大学の垣根を越えたInter-institutional Researchへの転換が求められるというふうに、これによって大学間の連携が促進されると考えております。
 その次のページなんですけれども、学生の声を紹介しています。情報を求める大切な声なのですけれども、時間の問題もありますので、お読みいただきまして、またの機会に具体的に報告をさせていただきたいと思います。
 それでは、次のページ、今後取り組むべき具体的方策の最後は、ここまで検討してきた学習機会と内容、成果の明示・発信から就学者の拡大へとつなぐ工程と循環を示したいと思います。
 まず、一番上に位置します、何をどのように学び身につけることができるのかを明らかにするという工程の後、右下のほうに移動してまいりますけれども、まず、それらを大学が学習者と社会に説明し、関心を引きつけるということが問われてまいります。それと同時に、学習内容と成果を可視化することによって、自学と他学のカリキュラムや科目を比較することが容易になります。これによって、カリキュラムや科目の互換性も明らかになっていくものと思われます。
 そして、下のほうに移動いたしますと、これらの効果は流動性を拡大する基盤となり得ます。
 まず、縦の流動です。学習内容と成果の可視化を上位課程でも行うことによって、課程間でカリキュラムを体系化し、連続性を確保することができ、進学需要を高めることが期待できると思います。
 学習内容と成果の可視化は、横の流動性と言える留学や労働市場の流動化に伴う転職、急速な技術革新や長寿化に伴う生涯学習、学び直し、特にリカレント教育の求めと連動します。何ができるのかの可視化が流動性を高めるのは、可視化によって学習の達成度を確認しながら単位の互換性を確保するためです。
 例えば、履修した全ての科目についてディプロマサプリメントに詳述されれば、これをもって学生は、自身が学んだ内容を携えて大学や国を移動し、ディプロマサプリメントに記された情報は単位互換の根拠資料になり得ます。留学においても、学位を短期間で獲得したい学生や課程を系統立てて学びたい学生は、留学先で何ができるのかの情報を前もって提示、入手することによって、大学間の互換性を確認しながら効果的な学習に臨むことができると思われます。
 また、このメカニズムは、転職においても、生涯学習においても、同様に機能します。
 例えば欧州では、大学外の資格取得等においても、その資格で何ができるようになったかを詳述することを奨励されています。このような情報を持って転職する者は、雇用主の側に正確な情報を提供できるために、効果的な転職が進むと言われております。また、何を学んだかの記録が残ることによって、何らかの理由で大学を終えることができなかった者は就職後も大学に戻りやすくなり、同一科目の重複履修を避けるなどの効用もあります。
 左上に上がりまして、これらの流動需要によって、地域と学術領域両面における学習者の増大をもたらすことが期待できます。つまり、ラーニング・コミュニティ、学び続ける社会、コミュニティというような社会の実現が明示されると考えるわけです。
 同時に、流動の活性化に伴う大学間連携によって各大学は特色を再認識し強化することが容易になり、これによって学びの内容と成果も、より明らかになっていくという循環が期待できます。
 最後に、大学間連携による教育・研究強化と就学機会の拡大の関係を説明いたします。次のページになっております。
 連携の形として、比較優位性に基づく連携と競争優位性あるいは絶対優位性に基づく連携を挙げます。
 比較優位性は、各大学あるいは組織の強みを生かした相互連携の形を取ります。例えば、この図に即した場合、右のほうの図なんですけれども、上の大学が工学や人文学に比して農学が強く、下の左の大学が農学や人文に比して工学に強い、そして右下の大学が農学や工学に比して人文学に強いなど、各大学が他大学に比して比較優位性が高い分野で連携し合う形態です。
 具体的には、上にある大学の学生が学士課程で工学を学んだ後に、修士課程から左下の大学に進学するなどがあります。このような仕組みは、連携大学間の補完性に基づく教育と就学機会の拡充につながるとともに、学習者の多面的なニーズに柔軟に応えることを容易にします。
 一方、競争あるいは絶対優位性に基づく連携は、特定分野の学術的専門性を高めることに有効とされます。例えば人文学に強い大学同士が連携して共同研究を推進することによって、絶対的な競争力ある学術研究が目指されます。特にこのタイプの連携を国家間で行う場合、国際競争力の向上が期待されます。また、このような連携によって、教育においても卓越した研究成果に基づく学習機会を提供することが可能となります。
 もちろんこれらの連携の在り方は、常にどちらか1つの形を取られるというわけではなく、重なる場合も多々見られております。
 以上で私からの発表は終わりとなります。
 次のページから参考文献をトピックごとに分けて記載しておりますので、御参考にしていただければ幸いに存じます。
 御清聴ありがとうございました。
【永田部会長】  松塚委員、ありがとうございました。御意見というよりは御質問をお受けいたします。何か今の御説明の中で分からなかったこと等あれば、今ここでお受けしますが、いかがでしょう。よろしいですか。
 それでは次に、労働研究が御専門の堀委員から御発表をいただきたいと思います。
【堀委員】  労働政策研究・研修機構の堀と申します。私、教育社会学の研究者でして、学校から職業への移行について研究をしております。本日はこのような機会を頂戴しまして誠にありがとうございます。
 それでは、スライドをおめくりいただきまして、本日はこのような内容で進めさせていただきたいと思っております。
 まず3ページでございますが、ここには労働力の需給推計を示しております。これは2018年版のものでありまして、来年また新しい推計が出る予定になっておりますけれども、これまで日本のみならず、様々いろいろな国において、予想される労働需要に対してフィットした人材を大学教育において養成しようとする、いわゆるマンパワー政策というのを行われてきたわけですけれども、多くが成功してきませんでした。その要因は複雑なんですけれども、労働研究の側から言えば、産業構造の変化であるとか、あるいは労働力の需給状況が予想のように推移しないということが挙げられるかというふうに思います。
 そこで近年の労働力の需給推計というのは、現在を起点に、例えば経済成長率であるとか、あるいは就業率などを加味して、幾つかのパターンを想定するといった方法で行われています。
 ここで見ていただきますと、医療・福祉が伸びており、例えば最近話題の情報通信業などは伸びておりません。これは5年前には生成AIの発展がここまで進むということが予測されていなかったということがあるわけなんですが、このように産業構造の変化を人材育成に反映していくということが、いかに難しいかということを感じさせるデータでもあるかと思います。
 1枚おめくりください。次に本日は、現在の生成AIが雇用にどういう影響を与えるかということにつきまして、最新の研究を御紹介いたします。現在、研究での見方は大きく2つに分かれています。
 左側が、恐らく皆さんもお聞きになったことがあるであろう、AIにより雇用が喪失して経済格差が拡大するといった見方であります。幾つか研究が行われておるんですけれども、大規模な雇用喪失というのを見いだした研究はまだないというのが現状でございます。
 他方で右側ですが、AIが働き方にプラスになって格差を縮小させるといった見方もあります。
 例えばカスタマーサポートや文書作成において、生産性の低いホワイトカラーの生産性を高め格差を縮小する可能性ですとか、あるいは日本におきまして、まだ生成AIの影響というのは捉えられないので、新しい技術として昔のロボットの研究をした方がいらっしゃいます。このときにはロボットによって人が置き換えられていったわけですけれども、必ずしも雇用喪失にはつながらず、むしろ生産性向上につながったといった研究もあります。
 したがいまして、現時点で生成AIが雇用にどういう影響を与えるかということは、非常にホットな研究なんですけれども、まだ帰趨が見えていないといった状況にございます。
 続きまして、次のページですけれども、大卒者が今どんな産業で働いているのかということを、就業構造基本調査によりまして確認したいと思います。ここでは産業いろいろありますので、5類型で変化を見たいと思います。左側が男性、右側が女性でございます。
 一番右側に大卒が示してございますが、男性の場合は、いわゆる社会サービスと呼ばれる医療・福祉等が僅かに増えているということでございますけれども、右側、女性におきましては、現在3分の1が社会サービスに入っていっているということになりますので、大学におきましても、看護学部の増設などを通じまして、先ほどの見られたような医療介護需要に対応されてきたということが反映されているというふうに解釈できるかと思います。
 おめくりいただきまして、今のは産業でございますが、職種について確認したいと思います。ここでは仕事との結びつきが薄いと言われる人文・社会科学系を特に取り出しておるところでございます。
 一番上が就職者全体、そして人文科学系、社会科学系ということで、2003年から10年ごとを示しておりますが、一番左側の専門・技術的職業従事者が増えているということがお分かりかと思います。一般的に人文・社会科学系だと事務に入っていくというイメージがありますが、今はそうした学生は3分の1しかいないという状況でございます。
 では、この増えた専門・技術職業従事者というのは一体何なのかということを、ちょっとここに資料にお示ししてはいないんですけれども、令和5年度ですと全体の2割、人文系ですと34.2%、社会科学系ですとおよそ半数が情報処理・通信技術者になっております。学部卒だけで見ますと、数の上では工学系出身者よりも社会科学系出身者で情報処理技術者になる者が上回っているといった状況になっておるわけでございます。
 これは新卒ですけれども、次のページで、現在働いている社会人について見たデータがございます。7ページです。
 見ていただきますと、情報、化学は、ここで囲まれているような人文・社会科学系、入っていっているんですけれども、機械、電気系には入っていっていないという形になっております。これは経産省と内閣府の調査でございますけれども、今後データサイエンス学部の増加によって変化してくるかもしれませんが、現在は人文・社会科学系出身者が情報処理技術者になっているといった流れも見えてきているところでございます。
 おめくりいただきまして、ここでは大卒者の地域移動について確認をさせていただきたいと思います。
 これまで学校基本調査ですと、進学の際にブロック内での移動が多いということは知られてきたかと思うんですが、これは社人研のデータを使いまして、初職での就職も含めて、東京圏と地方圏の間の移動という観点から分析したものを御紹介します。そのうち地方出身者のみに限って御紹介をさせていただきます。
 ここでは中学卒業時を出身地とし、その後、大学・大学院卒業時、初職地、この3つの関係を見たものです。
 これ見ていただきますと、一番左の地方定着者が若いほど増えてきているということがお分かりかと思います。したがいまして、世代が若くなるほど地元で進学し就職するといったような地方定着割合が高くなってきているということが分かるかと思います。
 では、なぜその地方定着割合が増えているのかということ、たくさん要因があると思うんですけれども、今回、産業構造に焦点を当てておりますので、地域の産業構造の変化から仮説をお示ししたいと思います。
 9ページを御覧ください。ここでは全ての地域を取り上げるのは難しいので、東京のように知識産業が集中し人が集まってくる大都市と、それから長野のように製造業が強い地域、そして北海道のようにサービス産業が中心の地域を取り上げております。
 見ていただきますと、これは経済センサスという経産省の調査で従業員の割合の変化を見ているものなんですが、下から3番目、医療・福祉系は、いずれの地域にも増えているんですけれども、特に長野、北海道で増えているということが分かります。
 右側なんですが、これ私がやっているオリジナルな調査なんですけれども、長野県、北海道で調査を行いまして、25歳から34歳で、この地域に住む高等教育卒業者のうちの高等教育が医療、保健、福祉、教育関連分野の専攻であった者の割合であります。
 見ていただきますと、2008年から2022年にかけて、かなり増加しているということがお分かりかと思います。恐らく近年、地元で医療・福祉系の職場が増えたことから、地元医療・福祉系の大学に進学し、地元に定着できるようになったといった、そういった道筋ができているのではないかというふうに推測するところであります。
 以上、産業構造の変化について御紹介をさせていただきましたが、続きまして、リカレント教育について紹介をさせていただきたいと思います。
 ここで言うまでもなく、デジタル化であるとか、あるいは職業人生の長期化で様々な機会に教育を受けるということが期待されているわけなんですけれども、現在の日本型雇用がどうなっているかといいますと、一般に言われるように、必ずしも日本型雇用が弱くなっているというふうには労働研究ではあまり考えられてはおりません。新規学卒一括採用は恐らく今後も移行の主流であり続けるというふうに考えております。
 またジョブ型採用は、先ほど見たように、医療・福祉系はジョブ型採用ですので、ジョブ型採用は増えているんですけれども、全体としてじゃあ、いわゆる今までのメンバーシップ型からジョブ型に抜本的に変わるというふうにはあまり考えられていないということであります。
 むしろジョブ型というのは、どちらかというと中高年のホワイトカラーにおいてキャリアとして考えられるといった形の有効性が期待されるというところであります。
 おめくりいただきまして、こうした状況から労働政策におきましては、これまでは企業がこういうふうに能力形成をしてくださいねというふうに言っていたわけですけれども、個人主導のキャリア形成に変わっております。
 例えば「職場における学び・学び直し」ガイドラインというのが出ているんですけれども、これはリカレント教育の労働バージョンであります。
 また、そのリカレント教育の労働分野での有効なツールである職業訓練につきましては、地域職業能力開発促進協議会というものが設置されておりまして、ステークホルダーが参加しております。ここでは地域ごとに職業訓練の量や質に関する協議の場を持って議論をしております。
 それが13ページなんですけれども、事務局は都道府県労働局、都道府県がやっていまして、リカレント教育をしている大学にも参加をしていただいております。地域ごとにニーズを把握し、それを職業訓練に反映していくといった仕組みが行われておるところでございます。
 1枚おめくりいただきまして、14ページですけれども、リカレント教育がキャリア形成に対して有効に機能するための前提を労働研究から考えますと、まず、さっき松塚先生もおっしゃっていたと思うんですけれども、何を学べばよいのかというのが明確であることです。労働研究の言い方であれば、職業能力の「見える化」と社会的な承認であります。
 これに関しましては、もう本当にこれまで労働政策はいろんなことをやってきまして、例えば職業能力評価基準とか、ビジネスキャリア制度とか、ジョブカードなどをやってきたんですけれども、恐らくここにいらっしゃる先生方であまり御存じの方はいらっしゃらないでしょうから、あまり普及してこなかったということであります。
 そこで近年は、職業能力の見える化として、日本版O-netによる「タスク」による把握というのを試みられています。
 15ページを御覧ください。このO-netは、もともとアメリカ発祥なんですけれども、特徴は何かというと、一般的に職業情報というのは、個別の職業について、その特徴を記述するものなんですけれども、このO-netにおいては、抽象化された共通の基準に基づいて全職業の数値化を行っているという点が特徴です。必要なタスクは数値が高くなる、不要なタスクは低くなるといった形になります。
 もしこのような把握がうまくいけば、希望する職業や自分に不足するスキルを把握し、必要な学びにつなげていくことができるはずであります。
 しかしながら、まだこれは始まったばかりで、まだ職業数も十分でありませんし、ユーザビリティーもまだまだというところで、今後が期待されるところであります。
 1枚おめくりいただきまして、では、そのリカレント教育の可能性はどのぐらいあるのかということを見るために、自己啓発といって、企業にやれと言われるのではなくて、自らやった能力形成の実施割合を示したものがこちらでございます。若年期と中年期以降及び男女と有配偶、無配偶に分けたものでございます。
 見ていただくと分かりますように、女性の有配偶者を除きまして、基本的に年齢が高くなると下がっていくといった形になっております。
 大学が含まれる教育機関型というのは、まだ残念ながら数%しかないといった状況にあります。
 有配偶女性の上昇につきましては、一般にポスト育児期である中高年期に、学習活動であるとか仕事への意欲が高まるとされているんですけれども、その反映として考えられるのではないかというふうに思います。
 しかしながら、現在、教育機関型というのはあまり活躍していないとしても、他者交流型、独学型というのはこれだけありますので、潜在的な可能性はあるというふうに捉えることもできるかと思います。
 最後、17ページですけれども、大学のリカレント教育が労働市場から評価されるためにはどうしたらいいかということを2点、最後は指摘して終了したいと思います。
 まず、労働者が持つタスクと求められているタスクのギャップを埋めて、職業能力の社会的証明を提供するような、そうした教育機能を果たしていただけると、恐らく非常に評価されるだろうというふうに思います。これは今言われているマイクロクレデンシャルなどは、その可能性があるというふうに思います。
 そして、必ず将来的に需要の在り方というのは変化するので、職業資格の在り方を緩やかにするとか、あるいはいろんな互換性を持たせる、先ほどの松塚先生の話と重なると思うんですけれども、そうしたことが非常に重要なことではないかというふうに考えております。
 発表は以上です。長くなりまして申し訳ありませんでした。
【永田部会長】  ありがとうございます。では、今の御発表に対する御質問を先にお伺いしますが、いかがでしょう。よろしいですか。
 それでは、今の御発表も踏まえつつ、高等教育の目指すべき方向性ということについて、フリーディスカッションを再開したいと思います。前回までは、かなりフリーにお話をいただいて、いろいろな意見が出ていました。そろそろ方向を決めなければいけません。特別部会がしっかりと方向を定めないと、大学分科会のほうは全く進まないはずなので、こちらのほうでしっかりと議論をしないといけません。今の御発表を踏まえた上で、また前回までに、御発表できなかった御意見があればお伺いをします。まずは制限を設けずに自由に御意見を賜ればと思います。いかがでしょう。ほかにないですか。どうぞ。
【大森副部会長】  大森でございます。ありがとうございます。堀先生、ちょっと今、質問に手を挙げそびれちゃったので御質問なんですけど、それだけです。
 自己啓発の実施の割合のデータを頂いていて、教育機関型に比べるとほかがということとか教えていただいたんですけれども、聞き逃していたらあれなんですけど、これは、私、地方の大学なものですから、地域別に、このリカレントニーズというか。何か東京の働いている方々は、朝活とか、すごい学びの意欲があるように感じるんですけど、地方にいると、そういう講座開いてもとか、何かそのニーズを把握し切れていないだけかもしれないんですけれども、まだ何か盛り上がっていない感もあるのかなと思ったり、その辺、地域別というのは何かデータとかあるんでしょうか。
【堀委員】  どうもありがとうございます。残念ながら、ここではやっていないんですけれども、ちょっと担当者に調べてもらいたいと思いますが、私が知っている範囲ですと、例えば職業訓練におきましては、それぞれの地方で受けられる教育訓練の幅であるとかニーズに十分応えられていないというのが1つ大きな課題としてありまして、もし、そういう訓練に応えられなくても、大学が提供していただけるのであれば、お互いに地域で補完し合えるのではないかというふうに考えているところです。
 以上です。
【大森副部会長】  ありがとうございます。ニーズのほうが高いということなんですね。
【堀委員】  供給に対してニーズが多いかということにつきましては、やっぱり希望する内容によるという感じかと思います。すごく人気のある講座もあれば、あまり人気のない講座もありますので、そうした需要を捉えていくということが重要かなというふうに推測するところであります。
【大森副部会長】  ありがとうございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。吉見委員、どうぞ。
【吉見委員】  吉見でございます。松塚先生と堀先生の御発表、大変興味深くて、質問しようと思ったんですが、手の挙げ方よく分からなくて失礼いたしました。
 お一つ、ちょっと教えていただきたいことがあって、ぜひ御示唆をいただきたいんですけれども、まず松塚先生の御発表の中で、私、パワーポイントの7ページと8ページの、これからの時代を担う人材に必要とされる資質・能力に関して、日本とEUの間で、つまり教員が考えるものと企業が考えるものとの間の相関係数が日本とヨーロッパの間で顕著に異なるという、この結果、大変面白いというふうに思いました。相当有意に違うということですね。この違いの意味は何なのかということをもう少し突っ込んでお聞きしたくて。
 逆に言えば、なかなか日本の場合には大学で一生懸命学生を育成したり、学位を与えても、それが企業、社会に評価してもらえないというところに我々はずっと悩んできたわけでございます。その悩みは恐らく欧州のほうが少ないと思われると。それは大学の教員側が考えていることと社会、特に企業の産業界が考えていることとの差が小さいからだと思うんですね。
 なので、ここの有意な差ということの意味は大変重大だと思うんですけれども、ぜひ松塚先生にその辺のお考えを教えていただきたいということが1点でございます。
 それから、今の堀先生の御発表の中で、これも大変興味深いんですけれども、パワポの8ページのところですけれども、大卒者の地方への地元定着率がだんだん、だんだん若くなるに従って増えているという結果、これは常識的なイメージと、こう、どんどんなっていってくれれば僕は大変いいと思うんですけれども、何か通年的なイメージとちょっとずれがあるところがあって、これはどういうことだろうかということを考えていて答えがまだ出ていないんですけれども、これUターンする人はほとんど増えていないんですね、漸減ぐらいで。
 それから、何が違ってきているかというと、地方から、この場合、東京圏に大学で進学する人が減っているということでございますよね。そうすると、一体それはなぜなのか。つまり、経済的な理由で東京まで子供を送れないということでそういう結果が出ているのか。つまり、これは階層格差の拡大と関係がある結果なのか。それとも、意識として地方に、地元で頑張ろうという若者たちが増えているということなのか。この辺りのことが、何かちょっとこれだけだとよく分からなくて、その解釈を教えていただければと思います。
 以上です。
【永田部会長】  それでは松塚委員、先にお答えいただけますか。
【松塚委員】  私からでよろしかったでしょうか。よろしいでしょうか。
【永田部会長】  はい。
【松塚委員】  吉見先生、ありがとうございます。御質問いただきまして、うれしく思います。
 3つぐらい考えなくてはいけない点が、この結果から、あるというふうに考えています。
 まずコンピテンスに基づく教育というのは、社会や企業のニーズを酌み取って教育を組み立てていくということに特徴があると考えます。日本の企業が欲するコンピテンスと海外で求められるコンピテンスの間にずれがあるという事実は、学生と大学両者に具体的な課題を投ずることになると考えます。留学とか海外勤務を欲する学生は、日本企業の価値観と海外の大学及び企業の価値観、両方に配慮する必要が出てきますし、大学も社会や企業のニーズというのを国際的な観点から捉えて、国内学生はもとより、日本で学ぶ留学生に対しても、柔軟な説明力が求められていくのではないかというふうに考えます。
 2つ目は、企業サイドから見た場合なんですけれども、資質というのを重視するのは日本の企業の一つの特徴であるというふうにも言われていると思うんですけども、その自社で培養していくということがまず前提になっているということが、これまで想定されてきたのではないかと思います。今どのように変わってきたのかというのは堀先生からも御教示いただきたいところなんですけども、そのような採用、自社培養的な採用と人事育成では、国際社会から、もしかしたらば取り残されていくような可能性も危惧せざるを得なくなる一方で、将来性を重視して企業内で人材を育てていこうという文化的な歴史的特徴というのは、その利点の見直しも行う必要があるのではないかというふうに思います。ある意味、即戦力を求める海外の人事と照らし合わせながら、独自性の尊重と国際社会の協調というのが課題となっていくのではないかというふうに思います。
 3つ目なんですけども、今回のこの調査に関しての企業への質問というのは、人事部が主な対象となっているとあります。採用において求められる人材像が、企業の運営や国際事業の部門とかで重要と捉えられている人材像と、もしかして異なる可能性というのがあって、実際、今回の資料にあった、企業がどのように必要なスキルを考えているのかということに関しては、10年ぐらいの間に少しずつ変わってきているような傾向が見られました。ですから、ただ一方で、EUにおいても人事部門を対象に調査をしておりますので、やはり同じ人事部門同士で、少なくともその当時はずれがあったというようなことは言えると思います。
 学生の資質・能力の可視化が要請されるというのは、これは明らかなことですので、企業のほうでは求められる人材像に関して、その情報の信頼性といいますか、そういったものを恐らくこれからもっと高めていくのではないかというふうに予想されるのではないかと思います。
 すみません、答えになっておりますでしょうか。
【永田部会長】  堀委員、どうぞ。
【堀委員】  御質問ありがとうございます。8ページですけれども、吉見先生がおっしゃったように、進学時に都市に移動する割合というのが減っているわけですけれども、これは先ほど9ページで仮説を示しましたように、1つには、もちろん高等教育の地方分散化政策が進んでいったという側面はあるんですけれども、地元に残れるような医療・福祉系の需要があり、そしてそれに大学が対応して医療・福祉系の学部・学科をつくり、そしてそこから地元で定着して就職できるようになったということが一つ流れとしてあるのではないかと考えております。
 もちろん御指摘のように、地方から都市に進学させることが難しくなったという点もあるとは思うんですけれども、この解釈としては、労働研究からですと、そうした解釈になるのかなというふうに考えております。
 以上です。
【永田部会長】  よろしいですか。ありがとうございます。
 それでは、御質問ですが、平子委員、どうぞ。
【平子委員】  ありがとうございます。質問といいますか、意見でもよろしいんでしょうか。
【永田部会長】  結構です。
【平子委員】  すみません。松塚先生の発表を聞いていまして、非常に勉強になることが多々ありまして、示唆に富んでおりました。
 1つショックでしたのが、17ページの日欧比較のコンピテンスの重要度について、この項番を見ていますと、未来に求められる能力という観点から、例えば問題発見能力、あるいは革新性がこれから非常に大事になってくるわけですが、そのようなことを重視しているのがEUであって、日本は比較的そういう観点が少ないというのが改めて分かりました。未来に必要とされる能力を育成しているのがヨーロッパ、EU側なのかなということが新たに認識できたということです。
 そこで、吉見先生からの質問にもありましたが、教える側と企業経営者の意識のギャップ、コンピテンスに対するギャップが大きい、特に日本の場合はキャリア教育、キャリアに対する情操教育が圧倒的に不足しているのではないかというのが、11ページのこの学生の声からも分かるような気がします。
 日本はまだメンバーシップ型の会社が圧倒的で、ジョブ型の会社が少ないというふうに言われていますが、メンバーシップ型というのは、松塚先生おっしゃっていましたように、どうしても企業内での人材育成のカルチャーが残ってしまい、教える教員の意識と企業側の意識が離れていってしまうということから、結果、入社してきた人材が十分活用されないのではないかと。それが離職につながったり、あるいは人的生産性の低下につながっているということになっているのではないかという仮説が生まれます。
 したがいまして、やはり企業側の責務としましては、大学側で第一としているコンピテンスを生かすような人事システムにしていかなければいけないと思います。どうもそれができていないということからすると企業側にも、こういった人材を即戦力として活用することが求められますので、何をどうすればいいのかという課題が見えてきたような気がします。
 以上でございます。
【永田部会長】  何か御意見はよろしいですか。伊藤委員、どうぞ。
【伊藤委員】  慶應の伊藤です。今のお二人の発言で、私も松塚先生の8ページを見ていて、これは大学が変わるべきなのか、企業が変わるべきなのか。つまり、このグラフだけを見ていると、日本の大学が教えていることはEUの企業では役に立つんだけども、でも日本の企業では役に立たない。そうなってくると、実際に参考資料のデータなどを見ると、GDPの効率を見ると、イタリアとかフランスのほうが、ずっと日本よりか順位が高いわけですから。そうなってきたときに、これ大学で今、大学をどうするか、高等教育をどうするかを議論しているんですが、このグラフだけを見ていると、我々高等教育が変わるべきなのか、それとも会社が変わるべきなのかということが問われているような気がして、それに対して大学はどうするべきかというのがその方向性の議論になったのかなというのを今回、私が感じたことであります。相当ストレートな意見ですけど、これ私、皆様はどう感じたかというのはちょっと興味を持ってお聞きしました。
【永田部会長】  ありがとうございます。データですから、どちら側から見るかで、そのような意見になると思います。中村委員、どうぞ。
【中村委員】  山梨大学の中村でございます。松塚先生にご質問いたします。12ページの、サイクルになっている図ですが、この中の左に「流動需要がもたらす領域・地域両面における学習者の増大」とありまして、そこから「大学間連携を生かした特色の再認識と強化」とあるんですが、先生がイメージされている大学間連携を生かした特色の再認識と強化というのは具体的にどんなことをイメージされているのか、お聞きしたいと思います。
【松塚委員】  ありがとうございます。これは、この次の13ページの右側の図と併せて考えてくださると分かりやすいのではないかと思います。
 大学連携が、例えば比較優位性だとか競争優位性、特に比較優位性に基づいて行われるというようなことが想定された場合、連携の上で学生が動く、もしくは研究者が動く、移動するようになってまいりますと、実際の移動に伴って、前にいた大学、そして今にいた大学、行きつ戻りつする場合もあると思うんですけども、それぞれの強みだとか、他大学と自大学との異なるところということがより分かっていく、そしてそれを感じる人間が増えていくというふうになると思います。
 ですから、量的な拡大が実現しますと、その違いというものがより明確に表れていくというようなことがあるというふうに考えております。
【中村委員】  分かりました、多分その下にある、横の機会の拡大、つまり転学とか編入とか復学を柔軟的に促進することに対しての結果として、先生言われたような可能性が広がるというふうに受け取ってよろしいですか。
【松塚委員】  もちろんそのとおりでもありますが、ただ、復学、転学というのと、横の移動と縦の移動というのは、往々にして両方同時に起こることもあろうかと思います。
 この13ページの学士課程が、例えばその上のアグリカルチャーが強いところで学んだ方が修士、博士を次の他の大学で学ぶというような、そういった繰り返し、そして一度就職してから、また復学するというような、何度も繰り返すというようなことを想定しております。
【中村委員】  ありがとうございました。
【永田部会長】  ありがとうございます。さて、少しずつ絞っていきましょうかね。いいですか。小林委員、どうぞ。
【小林委員】  御説明ありがとうございました。松塚先生と堀先生に1問ずつ質問をさせていただきます。
 松塚先生の12ページの図のところでディプロマサプリメント、通用性のあるというところでお話をされていました。お二人のお話に共通するのは、人材流動性を高めるためには何ができるようになるのかというのをきちんと可視化した上で、それをきちんと自覚化して見せていくということが重要であって、それを多分、評価する側も重要なんだろうなというふうに思いました。
 そのときに、この松塚先生がディプロマサプリメントというのをお書きになっていて、EUではかなり使われていて、日本では文科省のGP等を通じてディプロマサプリメント始まってはいるものの、なかなか使いこなしているというか、まだまだ普及している状況ではないというふうに思っています。
 そのときには成績のつけ方とか、大学ごとのディプロマに対しての達成率は見えるんだけれども、横串を通して見たときに、相対的にこれが見えづらいというような課題もあるような気がするんですが、これディプロマサプリメントを日本で普及させていく、可視化のツールとしていくためには、どのようなことが必要だというふうに思われるかというのを1点でございます。
 もう1点、堀先生には、17ページのところで、やはりマイクロクレデンシャルみたいなことで、デジタル証明で学修歴をストックしていって評価していこうというようなことがありました。多分これは、先ほど日本の企業がメンバーシップ型で企業内最適労働者をつくっているので、なかなか横に能力が可視化できないというのがあると思いますが、ヨーロッパとかオーストラリア、韓国なんかでも、NQFといったような、National Qualifications Frameworkという職業を階級化していくようなものがあって、そういうものというのは日本ではまだまだ俎上にのっていないと思うんですが、そういったものは活用できる可能性があるのかどうかという点についてお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。
【永田部会長】  松塚委員、どうぞ。
【松塚委員】  御質問ありがとうございます。ディプロマサプリメントを普及していくために、恐らく有効な一つの手段として挙げられるのは、シラバスの段階から各教員が詳細にわたって自分たちが何を目的に何を教えているのかということを自身のためにも書くということを習慣づけていくということが、これは結局は自分たちのためにもなることですので。シラバス、我々、毎年、毎学期、かなり事前の段階で提出しなくてはいけないと。これはどこの大学でも一緒だと思うんですけども。そこで例えば大学のほうで、もしくは教務課のほうで枠組みをつくってあげたりします。少し、これに書いてくださいって紙を渡すのではなく、目的は何で、どのような方法で、そして各授業でどのようなことをしますかというようなことが書きやすいように、一定の様式を作って、それに記述して、教員が記述するというようなことで、そうしますと、だんだんデータベースに入っている情報量が意外と多くなっていくという現象が表れていくと思います。それを意外とちゃんと教員が少しずつ情報を増やしていると。
 一橋の場合は併せてその情報を、必要な人間に対しては英語に訳すというふうなことも支援としてやったりしております。自身で訳す人間のほうがほとんどなんですけれども、そういった部分で、かなり事務の方々のサポートというものが有効に機能しています。
 シラバスをしっかり書いて、そしてそれに基づいて評価基準を設けて成績を付与するということが習慣化していきますと、ディプロマサプリメントは必然的にできていくというような工程にうまくつなげていくことができます。
 そのディプロマサプリメントの通用性を高めるということが、また次の課題になると思うんですけども、そのために、先ほど言いましたInstitutional Research、IRというのが日本の大学、急速に進んだ、これは一つの改革、その成功例としても挙げられるぐらいではないかと思うんですけれども、これを教学に限らないで、大学のもっと広い業務を管轄するような本来のIRのほうへと転換させて、そして教学内容と連携させていくことによって、その通用性というものも同時並行的に確立していく可能性が高くなっていくというふうに考えます。
【堀委員】  御質問どうもありがとうございます。ただいまのNQFの日本版、JQFの可能性につきましては、教育の枠内では十分に成立するだろうと思うんですけれども、それを労働とつなげていけるかということにつきましては、まだまだギャップが大きいのかなという感じはしております。
 ただ、もし可能性があるとすると、スライドの13ページにお示ししましたが、先ほど大森先生の御質問と重なるんですけれども、大学教育のアカデミックな部分と、それから職業訓練というものが、もう少しつながっていく、それを通じて、いずれ労働につなげていくというような道筋が一つは考えられるのではないかというふうに推測するところなんですけれども、いきなりJQFというふうにはいかないと思いますが、積み上げで、このような形で地域ごとに積み上げていってJQFになっていく可能性というのは、私もぜひ期待したいところでございます。
 以上です。
【永田部会長】  よろしいですか。
【小林委員】  ありがとうございます。先ほどビジネスキャリア制度とかジョブカード、あとはキャリア段位制度みたいな、いろいろつくっているものの、なかなか普及しないので、日本の中でどうやったらそういうのができるのかなと思った。今のお話でいうと、地域ごとにそういったものを積み上げていくということが先生の中では重要だということだというふうに理解すればよろしいでしょうか。
【松塚委員】  はい。
【小林委員】  ありがとうございます。
【永田部会長】  益戸委員、どうぞ。
【益戸委員】  ありがとうございます。益戸です。
 私のキャリアは、31歳までは日本の銀行に勤務していましたが、それ以降現在まで外資系企業です。外資系の採用はジョブ型採用で、人事部はアドミニストレーションを担当します。採用のための準備はしますが、採用判断は各現場がします。現場で必要な能力や資質を明確に持ちながら採用活動をするわけです。その後、その仕事・ジョブの世界の中で人が育っていきます。大学名は問わず、能力と適性で選ばれるので全員が有名大学卒業でも、大学院卒業でもありません。そのセクションに入って、この仕事は面白いのでもっと頑張ろうと考え、専門性の学び直しのためにもう一度大学や大学院へ行く方もいます。勉強してまた戻ってくる、そういうような行き来もあり、ジョブ型が確立されてきたのではないでしょうか。
 一方で、平子委員から、日本企業は変わらなければいけないのでは、とのご意見が出ました。日本企業はメンバーシップ型です。私も日本企業の人事部で採用をやっていましたが、大きな魚の網をガサっと上げるように採用をします。その中に将来企業の核となる優秀な人間がいるかいないかは、採用段階でははっきりとはわかりません。この仕事のためにはこの能力・知識が必要だということが明確になっていない採用方法ですから致し方ないかもしれません。
 さて、以前事務局の方に情報公表の状況についてのデータをいただきたいとのお願いをいたしました。参考資料2の73ページから78ページで、教学マネジメント指針公表後の学習成果、卒業率、学生満足度など、徐々にですが新しい角度からの公表が始まっていることがわかりました。
 ただ、まだまだ日本の情報公表というのは、このデータを見ると、満足な状態ではないなと感じます。やはり抜本的に見直すことが必要ではないでしょうか。
ちょっと下世話な話をすれば、自転車に乗るときにはヘルメットをかぶらなくてはいけない、という努力義務があります。誰もがヘルメットをかぶることは安全のためには必要だと思っていても、罰則規則が無いとかぶらない人もたくさんいるのが現状だと思います。同じく情報公表は大切なことだと思っていていただいていると思いますが、なかなか手がつかない。さらに前に進めるためには、法制化とは言いませんが、強力なリーダーシップのもとに充実させていくことが、次のステップにも有効だと考えます。
 以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。御意見だったと思います。それでは、そのほかよろしいでしょうか。
 今日は、いつもの2時間ではなくて2時間半になっております。ヒアリングに対しての意見交換が終わったので、ここからたっぷりと議論したいと思います。
 少し悩んではいますが、先ほど吉見委員が地元に定着するというのは驚きだとおっしゃいました。実は国大協で国立大学を調べてみると、大体3割から4割が地元の子が入ってきて、残りは外から来て、出るときには7割が地元に定着するということになっていて、各86の国立大学で基本的に就職は地元だというデータがあります。ですから、地元のパワーはすごいと思っています。
 そのように考えたときに、ずっと表面上の話をしていても進みません。今は、どちらかというと質に関わるような話が多かったのですが、量の話はなかなか出てこないので、少し限定した話をしてはどうでしょうか。限定の仕方は、東京と、都市部と、あと地域、それぞれで事情が違うと思うので、それぞれの理想像は何なのかということを考えてみて、それを全部一派一絡げにはなかなかできないだろうと思います。それで意見が出てこないのではないかと思うので、少し課題を振ってみたいと思います。
 極端なことを言うと、地域の場合、特に大学の数が少ないような地域は、その大学がなくなってしまうと、多分その地域は滅んでしまいます。これと、1つぐらいなくなっても変わらない東京と、同じ議論ではやはりいけないと思います。この辺りをやはりしっかりと考えて、先ほど言ったように、地域にとって大学は人材の宝庫であるため、残さないわけにはいかないと思います。一方、東京は厳しくて、逆を言えば、いろいろなところに行ってもくれるのですが、東京に定着する人はやはり多くて、これも出ていかないので、なかなかダイナミズムは生まれません。ですから、この辺り、やはりしっかりと考えないといけないと思います。
 それに関して、今はっきりと申し上げましたが、地域で大学の数が極端に少ないようなところで、そこを滅ぼさないような施策が多分必要なのだろうと思います。それは行政上の施策もあるし、あるいは少ない大学が協力し合って存続するということも多分あるのだろうと思います。これが、もともとの諮問に国公私の役割と書いてありましたが、一緒に考えればいいわけで、地域において、それが一緒に働ける可能性はあるんだろうか、ないんだろうか、どうしたら機能し得るだろうかという、例えば課題を考えてみてはどうかと思います。その裏返しは、東京や、あるいはその中間にある大都市というところです。
 大都市も御存じのとおり、随分と地域型になってきていて、名古屋にしろ、東北にしろ、九州にしろ、地元の学生さんがほとんどで、全国から入ってこないという状況ですから、もう地域でもいいのではないかという感じになってきます。そこで質の問題は、今たまたま就職という観点から、地域に貢献する学生が育っていますというお話があったところでいいとして、そこをどのように存続させるか、もう要らないか。それは、あまりに私は極端な言い方だと思うのです。
 ただし、何度も言いますが、人口は減っていて、この間の共通テストも49万人台です。数年前は54万人とかいたわけですから、あっという間に50万人割ってしまっているわけです。このような中で、地域ごとにやっぱり違う施策を、全部ユビキタスに同じように打ったら多分うまくいかないのではないか。うまくいくアイデアを出していただければ、もうウエルカムです。
 私のアイデアは、地域で1つあります。例えば、地域においては国公私よく話し合って、今の連携等だけではなくて、より進んだ形の連携で、お互いの得意不得意を使うというのが多分いいのではないか。それで何とか地域の人材をメインテインするというのは一つの方法ではないか。
 その際、当然ながら子供が減っているので、4つある大学が4つのままでは多分難しいわけですから、ミニマムエッセンシャルな数にうまく、お互いに役割分担して話し合って集約していくのがいいのではないかと思います。
 ここからは、どんなアイデアでも出していただき、皆さんの頭のたたき台にしないと、いつまでたっても何も進みません。ここで決めたからといってもそのまま決まりません。分科会のほうでもまたいろいろと意見は出るはずですから、いろいろとお考えを聞かせていただきたいと思います。いかがでしょう。地域に分けて今後の施策を考えてはいかがでしょうか。たまたま御発表になった中に、地域に根差した就職口があります、あるいは地域がその人を必要としていますというのがありましたから、それも重要な観点だと思います。いかがでしょうか。濱田委員、どうぞ。
【濱田委員】  多分さっきの地域に定着が多いという話なんですけども、長野県の例を堀委員が出していたので、長野県の今、例を。私も信州大学と今いる公立諏訪東京理科大学しか詳しいデータは分からないんですけども、信州大学と今の諏訪東京理科大学、どちらも県内出身者、学生は25%です。それで、公立化した後に、特に諏訪東京理科大学はどんどん県内比率が下がりまして、昔、私立のときは多分7割ぐらいいたと思うんですが、今25%。それで、信州大学がちょうどそこと同じです。それで信州大学は、県内就職率が40%ぐらいです。
 そのときに、県内の経済の関係者から指摘されたのは、内訳はどうなっているんだ。内訳というのは、長野県というのはやっぱり製造業が強いところですので、製造業にどれぐらい残るかという指摘をされたときに、信州大学の場合は繊維学部と工学部というのが製造業に主に行くので、大体800人ぐらい修士と学部で毎年いるんですが、大体百五、六十人、2割ぐらいが製造業です。何で、じゃ4割いるかというと、教育学部があるので、教育学部の卒業生はほとんど県内に残るんですね。だから、やっぱり内訳をちゃんと見ていかないと分からないと。
 先ほど堀委員のデータで医療関係者が多いというのは、長野県は看護学部がここの何年かで倍に、3学部だったのが6学部に増えていますので、当然、高等教育を出た看護師が増えているというのが多分さっきのデータに反映していると思いますので。
 やっぱり地域を考えるときに、ざっくりした数字だけではなくて、それぞれの分野でというのは考えなきゃいけない。やっぱり製造業は、特に信州大学とかだと修士に行って、研究職に就きたい人はやっぱり大手企業に行きたいというのがあるので、どうしても東京本社に、ある会社に勤めてしまうというのがあるので、その辺りのところが結構あるかなというふうに、ちょっと私自身は強く感じているところです。
 以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。データを補足していただきました。
 堀委員、どうぞ。
【堀委員】  コメントどうもありがとうございます。私も長野県につきましては1997年から高卒の就職を中心に調べていまして、長野県は製造業があるので、高卒就職者が非常に安定したキャリアが歩めるといったところだったんですけれども、この2008年から2022年にかけて大きくキャリア。まだちょっと発表していないんですけれども、大きくキャリアが変化しまして、2008年のときは長野出身の大卒者は、高卒者とあまり変わらないような感じの正社員率だったんですけれども、2022年にかけても大きく変化したと、非常によくなったといったことがありました。その背景には先ほど申し上げた、医療福祉産業の拡大がございます。
 本当におっしゃるとおり産業別に見なくてはいけないんですけれども、製造業、非常に強いところ、それ、このデータ、確かにここに出ているところではあるんですけれども、ただ、長野県、4分の1が製造業に入っていくといっても、75%違うところに入っていくということでありますので、今の御指摘、非常に重要な点だというふうに思っているんですけれども、ただ、全体のマクロを見ますと、こういった状況だというような御説明させていただいたということで御理解をいただければ幸いでございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。益戸委員、どうぞ。
【益戸委員】  ありがとうございます。益戸です。私は熊本県の肥後銀行の社外取締役を11年やっています。この11年の中で、新入行員として入ってくる方も、中途採用で入ってくる方も明らかに変わってきました。地域に戻ってくる人が増えてきました。御本人から話を聞いてみると、少子化の結果なのですね。昔は、子供がたくさんいたので、郷里のご両親の面倒を誰がみるのかの話し合いの余地がありましたが、今や子供が1人か2人しかいませんので、どちらかが地元に戻らざるを得ないとか、初めから地元に就職するという方が増えてきたわけです。
 一方で、少子化の結果として地域大学の数が減ってしまうと地域の大卒者の数が減る、それは地域における経営者や専門職の数が減り、平均能力が下がることにならないでしょうか。東京だけ能力が高くなったとしても、日本全体としては国力が下がっていく結果になるので、注意すべき点と思います。
 例えば熊本県内で国立大学と県立大学と私立大学を見ると、それぞれ学部があるなしで、お互いカバーできる部分があると思います。その際に、どこがリーダーシップを持って実行していくかは重要な点です。
 かつて地域金融機関の数が多すぎるとの議論があり、各県の第1地銀と第2地銀と相互銀行と信用金庫と信用組合、これが連携・統合していった歴史がありました。自分がトップの間は何とか踏ん張りたい、と形を変えないために頑張り続ける時代はもう終わったのではないかと思います。
 堀委員のお話の中で、地域職業能力開発促進協議会が出てきましたが、主宰が都道府県ですよね。地域の人材ニーズというのを細かく対応していると理解をいたしました。一方で自治体は、どこのセクションが高等教育に責任を持っているのかが不明であることは大きな問題だと思います。地域職業能力開発促進協議会を通して企業と大学がどんなに議論し頑張っても、地域社会の未来像を策定しているのは地方自治体です。将来地図抜きに、必要な人材育成、教育議論は道を間違うかもしれません。ですから、その地域の自治体の指名された部局が責任の一端を担わないといけないと思います。もう一つ、地域連携プラットフォームが参考資料の87ページの中にも出ていますが、こういうことがきっちり機能しているのかどうかにも検証が必要です。
 やはり今の地域力の平均点よりも、連携・統合することによって平均点が上がるような地域連携を考えていかなければいけません。
 以上です。
【永田部会長】 ありがとうございます。地域に定着するのは医療、教育、行政、この辺りは皆さん定着していくわけです。ですから、今少し聞いていて、熊本のことは分かりませんが、例えば総合大学に看護があった場合に、近くに看護学校があれば、そちらに全部移譲してもいいわけです。総合大学が看護を離してしまいますが、協力して、県全体では看護はきちんと育てています。その分スリム化している大学になります。例えば、極端に言うと、そういうこともあり得るだろうと思います。
 すみません。たまたま看護が、頭に浮かんだので、ほかのところでも構いません。
 そのような具合に連携・統合というのをネガティブに考えないで、経営状態をよくするということを考えてみても得策ではないかと思います。地域にとっては、きちんとある一定数の必要な人材は育ててもらえるという担保があれば、決して後ろ向きにはならないと思います。
 そのほか、いかがでしょう。かなりだんだん好きなことを皆さんおっしゃるようになったので、このまま続けていきたいのですが。これが東京なら大変かもしれません。
【中村委員】  前回もお話ししましたが、山梨県の中で国立大学法人の山梨大学と公立大学法人の山梨県立大学が、大学等連携推進法人を設立しています。約3年間、取り組んできて、具体的に伸びたのは、やはり教養教育の部分です。お互いの大学の学生の選択権が広まった。そういうことがあります。
 今後、永田先生おっしゃったように、この2つの大学だけではなくて、私立も含めて、もう少し大きな枠組みの中で連携推進法人をつくっていく、あるいはそれ以上のものをつくっていく可能性があると考えています。
 そこで、以前も述べましたが、一番大事なのは、やはり将来予想なんですね。その地域の中で、どういう人材がどのぐらい必要なのかということを、例えば県であるとか、あるいは市町村であるとか、あるいはそれぞれの企業ときちんと関わり合ってやっていく。その上で大学と一体化して考えていくことが必要です。
 先ほど、看護のお話がありましたけども、山梨大学にも看護学科があって、山梨県立大学にも看護学部があります。いま2つの大学に看護の養成があって、それぞれある程度の入試倍率があるので、両存しているんですけども、この先、地域で必要な看護専門職数を予想し、どのような設置形態にするのかが課題となってきます。
 それから、先ほどの話でいうと、大学が学生の養成だけではなくて、やはり地域の産業とか、教育とか、医療のニーズをしっかり踏まえた上での人材養成、リカレント教育が必要になってくるだろうと思っています。
 山梨でも、地域連携プラットフォームをつくっています。しかし、先にご指摘あったように、枠組みはつくったのですけれど、なかなか実動していない。これからの課題は、そこだと思っています。
 繰り返しますけども、自治体とか、あるいは企業とか、金融とかと一緒に、本音の話をしながら、地域の将来予測をしっかり立てて、その中で大学をしっかり残していくという考え方が必要ではないか、と思っています。
 以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。先端的に連携法人を行っていらっしゃる山梨としては、先端であるが、やはり動いていない部分もあると正直におっしゃっているわけなので、それはこれから我々が考えなければいけません。
 そのほか、いかがでしょうか。何かほかに連携法人以外にやりようがあればいいのですが。今、地方の人口ダイナミクスと、それから産業ダイナミクスをきちんと計算しないと、どれだけ必要か分からないというのは大変重要なポイントです。
 先ほど信州で地元の産業界に進むのは150人でした。それでも600人ぐらいいる学部の4分の1は産業界に行っているわけですから、現場の信州の産業界を引っ張っているのだと思います。そういう意味合いで、やはり必要な人は必要だということです。
 話を変えて東京となると、またこれ、もめるのですが。東京はどうなのだ、余っているという話になるのだが、それよりも何よりも、違う形で言えば、地域でも、東京でも、定員割れを起こし始めているという法人はたくさん出てきているわけなので、これをただ定員割れしたからさようならではなくて、どうやって生かすかという考え方もあると思うのです。どうやって生かすかというのは簡単ではないと思います。経営的な問題があるので簡単ではないのですが、この辺りも共通の悩みとして、我々が解決をする案を出さないと、この国が滅びます。結局ここで出たアイデアを実践していくしか、やりようがないわけです。
 ですから、1点目の地域の問題と、それから少子化が始まって定員割れを起こしている実態があります。この辺りも、捨てるだけではなくて、どううまく活用するかという視点で考えると少し活路が見いだせると思いますが、いかがでしょう。
 何となく重いです。ここで話したことがそのまま施策になったらえらいことになると思いながら、皆さんいらっしゃるのかもしれません。まとめるときに、そんなに赤裸々に書くわけではありませんが、要旨はやはり書かないといけません。どうぞ。
【大森副部会長】  ありがとうございます。大森です。どこから話したらいいのかなと思いながらいるんですけども、まず、ちょっと実体験的なことで言うと、3年前に、うちは地元の同じ群馬県内のほかの法人さんが持っていらした短期大学を設置者変更という形で本学というか、本法人で引き受けてということをやってみました。ちっちゃな大学とちっちゃな短大、ほかに小中高あるんですけれども、同士の連携・統合の一つの事例だと思います。
 これは、そのままいくと短大は、いずれの御時かにはということだったと思うんだけれども、地域からやっぱり高等教育機関をなくすというのは地域の人にとってもすごくショックなことであるし、保育と栄養という非常にエッセンシャルなところの人材を供給しているところでもあったのでということなんですが、これ思いだけでやっているので、統合していけばいいよねといっても、正直言うと、短大のほうは定員が割れていてということは、黒くないんです、赤いんですよね。それを法人全体で何とか補塡しているという、かなりボランティアな。
 つまり、いい調子のときに合併して、より力を強めていきましょうという段階ではいけると思うんですけれども、いわゆる不採算部門を引き受けますというのは、うちの学内でも相当に議論があって、それはリスクじゃないのか。それはリスクを背負うということになりますから。なので、何かしんどくなってきたらどこかにというのは、もうどこかはもらってくれない状態になるだろうなという感じはあって、早め早めがやっぱり大事だったりとかなんだけど、その定員が埋まっている段階で、じゃ、どこかと一緒になろうというモチベーションは、これ、なかなかです。
 それからもう一つ、この間ちょっと新聞にも書いたんですけど、地域のプラットフォーム等の中で将来像を描いていこうといっても、仲間であり、ライバルでもあるんですね。国立大学もあり、公立大学もあり、私学同士もありというような。「何人ずつ減らします?」みたいな議論は、そこでできるのかというと、もう相当にだし、この分野は絶対必要だけれども、もうしんどくなっているから、じゃ国立大学さん引き受けてくださいって、さっきと同じことが起こるわけですよね。不採算のところを引き受けて、自分のところだけやっていくのでも精いっぱいなのに引き受けてもらえるのかとか、なかなか机の上で話しているのと、現場でちょっとしんどさがあるなという感じがしていますので、少なくとも、その地域の中でディスカッションをするときに、何か当事者同士ってかなり厳しい。何かちょっとこれは抽象的なんですけど、第三者的にその話をリードしてくれるような係の人が来てくれて、もうちょっとコーディネートをして議論をしてくれるような仕組みというのがないと、ちょっと当事者同士だと机幾ら並べても進まないな、何かそんな仕組みというのはあったらいいなというのが1つと、それからこの大学必要か必要じゃないかの選別をするということは多分できないんだけれども、どこは残すべきで、どこはというのは、やっぱり地域ニーズということしかないんだとすると、そこに、さっき益戸委員おっしゃったように自治体、地元行政とか市民の声というのがどういうふうに反映されて、でも地元行政が、いや、あそこの大学は要らないですけど、ここは必要ですとは言えないと思うんだけれども、そこのニーズということを考えると、もしかすると、これは文科省の中だけでの議論では、に閉じていると、あまり、ちょっと、なのかな。例えば総務省さんであるとか、そういったところと連携した議論の場が必要になってくるのかもな。
 自治体が自分のこととして地元の大学のことを公立大学以外の大学も、国立大学も、私立大学も、自分ごととして捉えられる仕組みというのは考えて、ここは残さなきゃねって思ったときにどうするかということも必要になってくるなというふうに感じています。ありがとうございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。その一案として、中村委員がおっしゃったように、地方自治体が将来像を描く、ここまでは150人の看護師さんが必要だ、ここからは120人で、120人の時代がこのぐらい続いて、あとは100人なり何なりで続いていくというのが出ればよい。ですから、それを当事者同士で話し合っても、やはり確かになかなかうまくいかないと思う。
 今、3人お手が挙がっています。両角委員、どうぞ。
【両角委員】  ありがとうございます。本当に今出ている御意見とかなり重なるところが多いんですけれど、私も先ほど益戸委員のおっしゃった自治体が高等教育に責任を持つようなところがはっきりしないという、この状態をちょっと変えていかないといけないという問題意識を持っています。
 やはり地域によって、地域ニーズは様々かと思うんですけれど、じゃあ地域で考えればいいんじゃないか、ということで地域連携プラットフォームという制度はできたのですが、その先がなかなか難しい。先ほども中村委員から実動させていくのが難しいというお話あったかと思うんですが、本当にそうだなということを感じています。色々な自治体でこういう議論に関わってみると、改めて自治体がそれまで公立以外の地元の高等教育機関に関心を持ってこなかったのだなと感じることがあります。地元に私学があっても、地元から評価が低いというか、その大学があってよかったとか、その大学を支援したいという議論になりにくいところも少なくないように感じます。
 要するに、どんな大学があって、どんな教育をしているとか、偏差値ではなくて、その大学のことが地元でさえあまり知られていない。もちろん大森先生のところみたいな大学もあるので、大学によって状況は異なりますけれど、結構そういう問題を抱えている大学と自治体が多いなという印象を受けています。大学側の働きかけも必要ですが、ただ自治体側も、地域が生き延びて発展していくためにも、高等教育ときちんと組んでいくことが必要だという問題意識を強く持ってもらいたいなというふうに思っています。
 参考になるか分からないですけれど、先月に韓国に行ってきて、韓国のやっている最近の政策がそういう考え方に近い印象を受けました。その政策自体がうまくいくかはわかりませんけれど、面白いなと思っています。RISE、地域イノベーション型大学支援システムという政策なんですけれど、文科省とか中央が持っている高等教育に関する権限や予算、、予算も3割ぐらいとか、地元の自治体に委譲するという、政策をこれから展開していくのですが、どのようなことが起きているのかを知りたくて韓国のある地方に調べに行ったんですね。そうしたら、地元にどんな大学があるかも知らなかったし、正直、大学名だけで判断して、「あんなところは」とか思っていたけれど、この政策をきっかけに、初めて真剣に自分の地域にどういう大学があるのかということを見て、それぞれの大学と話をしていったら、「意外にいい大学が地元にいろいろある」とか、「ここは役割を果たしていると思ったけど、いまいちだった」とか、様々な気づきがあり、真剣に大学を見始めて議論をし始めたということでした。
 この韓国の取り組みが、うまく機能するかはまだ分からないですけれど、それぐらいの刺激を与えることも必要かもしれない。それぞれの自治体で高等教育と具体的に議論していくような場をつくっていくという、プラットフォームだけではないような仕掛けも考えていくことが必要なんじゃないかなというふうに、感じました。
 取りあえず以上です。
【永田部会長】 ありがとうございます。そうですよね。教育、医療だけではない、行政だけではなくて、産業振興そのもの、デザインを持っていない自治体だったらどうにもなりません。
 吉見委員、どうぞ。
【吉見委員】  ありがとうございます。今日ちょっと4時前後にどうしても出なくちゃならないものですから、発言させていただきます。
 私、この問題は大学、高等教育の側から見ると同時に、地方あるいは自治体の側から同じ問題を、その視点から見なくてはいけないんだというふうに思っております。比較的過疎地の自治体で最も切実な課題といいますか、必死になってそれぞれの自治体がやっているのは、どうやったら人口が少しでも増えてくれるのかということだと思います。
 つまり、総体的に若い人あるいは、ある程度、労働力人口の方たちに、どうやったら少しでも増えてくれて人口減少を食い止められるのかというのが、もう全国の多くの自治体の切実な問いだと思います。
 そうすると、その大学があるということ、あるいはそこに高等教育の何らかの機能があるということが、その地域の人口増といいますか、人口が少しでも増えていくということに、どう貢献を結果的にしているのかということのデータというか、あるいはそれのある種の方程式というか、そういうものを示す必要があるのではないかというふうな気がするわけです。つまり、かなり精密な人口統計と、それから大学での様々な機能の相互連関といいますか、そういうものを結構、指標化するというか、理論化するというか、精密に分析するというか、そういう必要が、この作業の中ではあるのではないかなという気がするわけです。
 例えば地域のほうの側からいえば、関係人口という概念が大変、流行しています。関係人口というのは、ずっとそこに居住しているのではなくて、そこで様々な、例えば週2日行くとか、二拠点居住とか、あるいは時々その地域を応援しに行くとか、その人々を含めた人口ですけれども、そうすると、関係人口があるならば、関係学生数とか、関係教員数とか、そういうものもあって、さっきの大学間連携の話と直結しますけれども、専任教員を基幹教員に変えたということの一つの可能性は、そういう基幹教員として様々な関係基幹教員とか。それは基幹じゃないですね。そういう形の概念も含めて、広い意味での地域の人口増に貢献するという仕組みを示していくことがとても大切だというふうに思います。
 ちょっと補足、蛇足ですけれども、いろいろ地方を見ていると、非常に立派な家で空き家が増え。東京もそうですけども、ただ特に地方は、こんないい建物とか、こんないい建物で、それで、でも、もう住まい手がいなくて空き家というのが結構増えていますけれども、そういうところの活用というのも、もっともっとこういう形、方法ではあり得ることだというふうに思っております。最後は蛇足です。
【永田部会長】  ありがとうございます。伊藤委員、どうぞ。
【伊藤委員】  ありがとうございました。大体もう皆様と同じ意見なので、ここで。ただ、まだ東京の宿題が多分残っているんですよね。そうなんですよね。地方のほうは、ポイントは、どこまでソフトランディングできるかと、統合のときに。だから大森委員のおっしゃったことともすごく近いんですけども、結局、地方で2つの大学が統合されて、でも、統合されるほうというのがあるとすれば、その定員を半分ぐらいに減らしておいて、そこの定員に、教員が減るまでの、教員にかかる費用、職員にかかる費用を誰が持つかということが問題になってきますし、それプラス、じゃあ、ある土地をどういうふうに半分は、例えばもっと違う活用を地方が考えて、残りの残った土地はやはり大学としてさらに発展するものに使うという、その土地、施設と、それから定員と、それから教職員をどうやって減らしていくか、それに対する総合的なパッケージをつくらなきゃいけないというのが、もう大切なことだと思います。それに対して、どこまで統合を考える大学が、それほど懐が痛むことなくソフトランディングができるのかというのがポイントになってくるのかというふうに思います。
 先ほど永田委員長がおっしゃった東京とか関東地区になってきて、もう本当に、本来であれば定員割れがひどくて、これは畳まなきゃいけないような大学があったと、出てきたとすると、それはもちろん、どこかの大学と一緒になったとしても、やはり相当な勢いで畳んでいかなきゃいけない。そのときはまた、さらに土地を活用する場所が増えていって、人数はどんどん減らしていく。でも、その、例えば300人の教職員がいて、それを30年で減らしていくということになると、300人で1,000万円だったら30億円、1年かかって、どんどん、どんどん減っていくのに、10年後には20億円ぐらいかかって、20年後には10億円ぐらいかかるという減らし方をしていくわけですから。そうすると、60億円ぐらいはもうかかることに、ソフトランディングさせようとすると、それぐらいかかることになってしまうので、その辺のところをどういうふうに国の政策として入れ込んでいくのかというのが何か問われているのかなというふうに思いました。
【永田部会長】  だんだん煮詰まってきていて、そういう感じだと思います。地方自治体のデータも要るし、国としての施策も要るし、大学間の議論も多分必要です。
 吉岡委員、どうぞ。
【吉岡委員】  この発言しようかどうしようか、ちょっと実は迷っていたんですが、地域の教育的な水準を維持する、ないしはそれを上げていくという、さっき吉見先生がおっしゃったような話で考えたときに、1つ重要なのは、我々今ここで大学を念頭において考えているんですけれども、例えば高専であるとか、あるいは専門学校の果たしている役割って、やっぱりあると思うのです。今度の被災地についても、大学よりも、むしろ専門学校が幾つか被害を受けて、日本航空学園が山梨のほうに行ったとかという、そういうことがあります。
 発言しようかどうしようかと思ったのは、専門学校は基本的には総合教育政策局かな、が扱っているので、大学分科会の問題ではないと言えばそうなんですけれども、地域で、その地域の産業とか、あるいは知的な様々な技術、知識といったものを維持するために機能している部分があると思うんですね。それから、やはり専門職大学との関係もありますし、それから大学への編入とか、あるいはリカレントということで考えたときに、一応、視野には入れておく必要があるかなというふうに思いました。
 ここで直接論点として話せるかどうか分からないですけれども、それらの存在を入れないと、地域の活性化であるとか地域の知的な水準を維持する、伸ばしていくということは非常に難しいというふうに思いますし、地方の大学が今後どうしていくかというときに、やはり専門学校をどういう形で、例えば連携するとかというときに、多分考える中に入るだろうと思います。
 それから、これは東京の問題でもあって、東京の学生も結構、大学を卒業してから専門学校に行って技術を学ぶという人たちも多いので、これをどういうふうにここでの議論につないでいいのかよく分からないので発言をちょっと躊躇したんですけれども、やはり視野に入れておいたほうがいいのではないかなと思いました。
 以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。地域のほうは、第一歩として、その連携を強化するというのは何となく見えてきていて、そのためにやらなければいけないことが、少し大変です。自治体を巻き込まなければいけないというのもある。それにのっとって徐々に小さくして、医療でも、看護でも、今必要ですが、やがて減っていくし、IT技術がもっとそろうと、多分もう少し少なくて済むので、そのようなことも全部考えないといけないわけです。
 もう1個のほうの現在、定員割れをしているという事実。多分もうニーズがない、あるいは、ニーズはあるのだが十分に人が集められないというほうは、シリアスです。これは好き嫌い関係なく、もう既に非常に苦しい状況になっているのです。
 こちらについては、私はあまり好きではないのですが、やはりうまく撤退する方法を考えないといけません。撤退すると卒業生の母校がなくなってしまうというとても悲しい思いをさせることになるので、よほどうまく撤退させないといけないと思います。奇策を打たないといけないのだろうと思います。それもゼロ100、ゼロ1で考えるのか、うまく順序を考えるのかについては、ここの仕事なので、ここで撤退のさせ方を決めないといけないというか、アイデアを出さないといけません。議論する責任はここにしかないので、その撤退についても、あるいは吸収されていくのもいいのだろうが、とにかく考えなければいけません。
 いつも設置審のときに思うのですが、しょっちゅう名前を変える身勝手な法人があります。自分の母校の名前がころころ変わって気の毒だなと思っていたこともありました。
 そのような意味合いで、今度は少し頭を切り替えて、どうしても撤退せざるを得ない、あるいは極度に縮小しなければいけない、このような場合に、施策は、国は、自治体はどう考えたらいいのでしょうか。
 韓国や台湾は撤退補助金のようなものも出ています。
 地域の話が出て、今、撤退の話が出て、また東京や大都市の話が出て、また地域の話ということを繰り返しながら、どこかに到達しないといけません。
 今度はもう定員割れをしているところをどのようにしていったらいいのかということについて、いかがでしょうか。非常に重い話ですが。
 四、五年前は、ここまで、定員割れは、ひどくありませんでした。一気にここのところ定員割れしてきているので、とても切迫感のある話題になっています。いかがでしょう。
【髙見高等教育政策室長】  今日最後に説明しようと思っていましたが、私学部のほうでも、その関係で今、予算案として閣議決定をしているところでございまして、そちらについてちょっと簡単に説明させていただいてから皆様議論ということでいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
【桐生私学助成課長】  私学助成課長でございます。それでは、お手元の資料の2-2を御覧いただきたいと思います。昨年12月に令和6年度予算として、政府案として決定したものなんですけども、今日から始まっている国会に、これ、かけさせていただいて、3月までに通れば来年度、4月以降の施行ということになるんですけども、私学助成の大学の経常費補助金あります。全体で3,000億円ほどあるんですけれども、このうちの今回新しく打ち出している転換支援パッケージというのがございます。こちらの中教審での御議論も踏まえまして、我々私学部としても、できるところから手をつけていこうといった形で組ませていただいているパッケージになります。
 一番上を御覧いただきたいんですけども、来年度、令和6年度から10年度までの5年間を「集中改革期間」と位置づけております。これ、これまでのデータとかも照らし合わせると、18歳人口の急激な減は十数年後に始まるというのはもう分かっていまして、対して私立大学、取組というのは、これまでも見ていますと、学部転換にしろ、様々な意思決定やって実行していくには、やっぱり10年スパンでかかりますので、今後5年間というのは非常に重要な時期になると考えておりまして、こちらに対する財政支援を新たに創設しようといったものになっております。
 加えまして、様々な意欲的な改革というものを強力に後押ししていこうというのが、この全体の5つのパッケージになっております。
 新規の1番というところを御覧いただきたいんですけども、こちらは新たな私立大学等の経営改革支援ということで20億円、新規でつけております。これ中にメニューが2つありまして、メニュー1と2があります。
 メニュー1は、特にこれから、これやる前に、かなりいろんな団体さんですとか、大学さんともお話しさせていただいたんですけども、様々なこれからチャレンジをしていく上では私学の経常費だけでは足りなくて、といって研究費というものはまた別途、いろんな様々なファンディングで措置されているけども、やっぱり教育変えていくというところには人手もコストもかかるので、そこに対する支援というのがどうしても不可欠だというお話はかなり出ていまして、それをメニュー1で込めております。
 この中の一番下のほうに書いてあります、特に「キラリと光る大学/短大/高専(中・小規模中心)」と書いてありますけども、これから、こういうふうな方向転換をしていきたい。例えば学部転換にしろ、プログラムの転換にしろ、様々なことしていきたいといった意欲的なところに対して、基本的に、これ5年間、継続的な支援をしていくといったのがメニュー1になります。
 メニュー2は一方で、各大学単位での取組、やっぱり限度があるという声もたくさん伺っております。1つの大学でフルセットで、教育も、事務作業も全部やっていくといったことは、もう限界が来ているといった声もかなりたくさん伺っております。こういった点で、複数大学で、教学面にしろ、経営面にしろ、様々な取組を横でやっていくといったことはどうしても必要だろうといったことを応援していこうというのがメニュー2になっております。
 このメニュー2も5年間の財政支援をしたいと思いますけども、これ、その延長線上に、その下に星印で書いてありますけども、本事業で得た知見を活用して共通的なプラットフォームの在り方を検討とありますけど、この5つのグループだけではなくて、さらに様々な大学に横展開できるような形、それで必要であれば我々も概算要求等、また別の手だてを考えていきたいと思うんですけども、横展開していく、横展開というか、横の機能を横串でやっていく上での共通化というものを支援していこうというのがメニュー2になっております。
 新規の3番、4番は、これ私学助成、これまで一般的にやっていた原則に対する例外を設けようというものです。私学助成、今の仕組みですと、新しい学部をつくったときに、完成年度を迎えるまで私学助成というのは出ない仕組みになっています。学部でいえば、4年間たって5年目からしか私学助成出ないという仕組みになっておりますし、あるいは撤退するときには、募集停止をした瞬間から出なくなります。学部が存続しても出ないんですけども、それに対して今回、この5年間に関しては、一定条件の下ですけども、その例外措置を設けるといったものです。
 つまり、この入りの点では、理工系学部等に関しては、新しく学部をつくったときには、今も転換というのは認めているんですけど、その転換以上プラスアルファの部分ですね、やる部分で、1年目からお金が出るようにしようというのが3番ですし、4番は、例えばA学部、B学部、C学部を持っていて、うちはA、Bが強みなのでC学部を潰してA、Bにしていこうといったときに、C学部を募集停止するといった場合、今までは出なかった私学助成が、これ出せるようにしようといった、この例外を設けようというものです。
 さらに、真ん中の2番を御覧いただきたいんすけど、「私学経営DX」の推進ということで、これは私学事業団がこれまで蓄積していたデータ等もあるんですけども、これを、これまで御相談があったら様々な経営相談に乗りますといった形でやっていたんですけども、これをアウトリーチ型で様々なマッチングを解決していこうと、こちらからもお声がけして様々な経営課題解決していこうといったことをしていこうというのが2番になります。
 5番は、これまでも改革総合支援事業ということで、様々な政策で必要なことを形式化してフォーマット化して、それを満たした大学がポイントつけて支援したお金を支援していくといった取組ありますけど、これはまた引き続きやっていくということで、全体で転換支援パッケージというものを今回打ち出しております。当然これは今後また、こちらでの御議論も踏まえて見直しもしていきたいと考えていますし、と思っています。
 次に2ページ御覧いただきたいんですけど、この背景になっているもともとの考え方をちょっとまとめたものを、こちらで示しております。こちらの中教審でも御議論いただいている内容と重複している部分がありますけども、一番上に書いてありますのは、少子化が急激に進んでいくといったことを書いております。
 様々な算定方法あると思いますけど、仮にということで、私立大学のセクターだけで考えますと、全部で入学者、毎年53万4,000人ですけども、現在の1校の入学者数の平均ですので、単純平均すると約170校分、入学定員と2040年のギャップでいうと、これぐらいが、どう考えていくかというのはまさにシビアな課題だということになっておりまして、その下の私立大学としての果たすべき役割というものを今後考慮して、その財政措置というものを考えていきたいというふうに考えております。
 特に問題意識として、今日の御議論の中でも出ておりますけども、矢印以降、御覧いただきたいんですけども、そのまま自主努力とか、様々御自由にやってくださいといったことだけでやっていくと、やっぱり都市部にのみ集中する可能性、これは機会均等の点で非常に懸念されるところですし、あるいは学問分野として、経営効率だけ考えると、やはり偏ってしまうということは考えられるので、こういったところをちゃんと手当てして考えていく必要があるなと、我々の財政措置に関しても、このように考えております。
 3ページを御覧ください。これらをまとめて今回、転換パッケージとしているんですけども、今後取り得る方策として、ざっとこの財政措置を中心に並べたものが、この1、2、3になっております。
 特に1番のチャレンジのところに皆さん、ぜひ、ここに特化できるように我々としても底支えしていきたいなと思うんですけども、それ以外に、やっぱりマル2の連携・統合ですね。連携・統合もやっぱりやりやすくする必要があるというふうに考えていますし、3番は、現有リソースの配分の最適化の観点から縮小・撤退といったことも、それはやりやすくするといったことはやっぱり考えていく必要があるというふうに考えております。
 この赤字で考えているのは今回の財政支援なんですけども、加えて星印の部分で、制度面、指導面といった形で、我々として今の問題意識、課題意識を書いておりますけども、この辺りも今後の御議論として、この場でも御議論いただければと思っています。
 1つ目のチャレンジの部分では、例えば今後の経営基盤の確立の観点から、設置認可の審査の厳格化の在り方はどのようなものがあるかというのも我々課題認識として考えていますし、2番の連携・統合ですと、今日も御議論出ていましたけども、財政状況厳しいところと合併した場合に、今のルールを単純に適合してしまうと非常に損をしてしまうといったところはかなりあるので、そういった場合の特例措置というものをやっぱり考えていく必要があるだろうということ、それから3番の縮小・撤退においては、今後どのような形で指導の強化、今ですと割と定員未充足状況、かなり注視して見ていますけども、それ以外の考え方、指標。先ほど申しましたように、学問分野ですとか、地域バランスというものを考えていくと、それらをちゃんと踏まえた形のやり方というのを考えていく必要があるというのが1つと、それから残余財産の帰属についても、かなり様々なお話伺いますが、これの要件についてどう考えていくかといった、このような考え方が必要かと考えております。
 その下の、このマル1からマル3を考えるに当たっての経営の健全性というのが私立大学、特に求められていると思いますので、この部分において現在、私学助成の配分において、定員充足率によって増額、減額というものをかなり大きく決めておりますけども、その星印のところにありますように令和8年度以降、定員充足率、経営状況以外の話も込みで、先ほど申しました問題意識を踏まえた形で経営の健全化を図っていくといった方策が必要かと考えておりまして、その内容も、また本審議会の議論も踏まえて詰めさせていただこうというふうに考えております。
 令和11年以降は、その経常費補助金の配分において、そのような考え方踏まえた形での展開というのを考えております。
 ということで、これらの施策と併せて、昨年2月の中教審の大学分科会でも御議論もありました学生保護の仕組みの整備というのは、またこれも別枠で必要かと考えておりまして、これらはトータルのパッケージとして検討していく必要があるかなと考えております。
 来年度予算案の、特に財政面の問題点中心に、私学部の今の現状の取組と問題認識、お示しさせていただきました。ありがとうございました。
【永田部会長】  ありがとうございます。施策の一部を紹介いただきました。
 そのほかに、いかがでしょう。
【大野委員】  ローカルな話でもいいですか。
【永田部会長】  どうぞ。
【大野委員】  国際学院埼玉短期大学の大野でございます。本当に短期大学、それから都市部ということで、今日、部会長からお話があったところにダイレクトにいくかどうか分かりませんけども、こういう実際があるということで、お聞き及びいただければと思います。
 まず、2つお話ししたいんですけれども、修学支援の関係です。実は埼玉県の高等学校の進路指導の研究している先生方との話で、昨今の高校生は、コロナの影響もあるかもしれませんけど、モラトリアムが増えてきたと。すぐ社会に出るのが怖いというか、自信がないと。ですから、2年より4年行きたいというふうに、本当に学びたいからではなくて、まず社会に出るのを少し遅らせるという考えの高校生が増えてきていると。
 だから、昔だったら短大、十分やって社会にというタイプの高校生も、実力の有無は別として、大学に進学するようになってきているという話で、よく短期大学は専門学校さんとの比較もされますけれども、実は大学のほうに圧倒的にシフトしているというような現状があって、短期大学、苦戦をしているというところでございます。
 もう一つ、短期大学の学びの実際ですけれども、実は本学でも様々なFDをやっておりますが、その中の一つで、短期大学生の出席率についての、メインテーマじゃないんですけども、どうしても先生方そっちの話に行くものですから、聞いてみると、最初はすごくみんな熱意を持って、かなり100%近く続いているんですけども、だんだんその出席率が低減していくと。出席しなくてもちゃんと獲得できていればいいんですけども、やっぱり先生方、そこ悩むわけですね。その次に何が来るかというと、基礎学力が不足しているとか、意欲的にやっぱりちょっと何か力強くないとか、そんな話が出てくるんですけども、逆に実習系の先生の話聞くと、出席率落ちないと言うんですね。
 何を意味しているかというと、学生にとって、旧態としたって言い過ぎですけども、知識伝達型に終始する授業には魅力を感じていないということが見てとれて、本学では、いろんなことを学生が主体的に取り組むこともやっていますけども、例えば栄養教諭を目指す短大生に、高校生に向けての模擬授業をやると、物すごく事前準備して、もう本当の先生負かせるぐらい一生懸命やってくれるんですね。短期でも、やっぱり集中して成長させることができるという実感を持っております。
 とはいえ、厳たるこういう情勢で、定員が割れたら撤退という話がメインに出てきてしまいますと、本学よりももっといい教育をしている短期大学たくさんあると思いますが、なかなかそういう大きな流れにはあらがうことができず、例えば修学支援の問題だとか様々な、財政的な支援だけじゃなくて、ぜひ短期大学、短期の高等教育ということについても御議論といいますか、お願いしたいと思います。
 以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。先ほど専門学校も出てきましたし、短期大学もあって、その地域地域に合った構成になっていくのだと思います。
 そのほか、いかがでしょうか。どうぞ。
【小林委員】  小林でございます。先ほど文科省の方からの御説明で、定員充足率が低いというようなところに不利益がないようにというお話もありましたが、私がやっている調査の中で、私学事業団の方に定員厳格化でどのような影響があったのかというのをまとめていただいたときに、2016年から2020年の間に、実は3大都市圏の大学では定員が2万人増えているんですね。定員厳格化の前に駆け込みという形で定員を増やしていて、2万人増えるということは、1学年ですね。そうすると、1,000人規模の大学が20ぐらいなくなってしまうというようなことになっていて、この4年間で急速に悪化しているので、経営がそこに追いついていないという状況があると思います。
 今、逆に政策を見てみると、定員充足率8割にいろんなバーがあって、これが経営の戦略の打ち手の足かせになっている部分があるんじゃないかというふうに思います。
 それは8割で一つ意味があるんでしょうけれども、やはり一定期間そういったものをちょっと度外視しながら経営の選択肢、チャレンジするのであれば、そこの打ち手の選択肢を増やしてあげられるような緩和措置というのが必要かなというふうには思いました。
 以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。大森委員、どうぞ。
【大森副部会長】  何度もすみません。今の御説明を聞いてのところです。私学に対してパッケージでいろいろと手厚くということで、本当にありがたいなというふうに思っております。目配せをしていただいているなと思っています。
 それを前提に、とはいえというところをお話しするんですけど、これはやめてくださいと言うつもりは一向にありません。ぜひ、これがうまくいくようになんですけれども、例えば新規で4番、定員規模適正化というところでいくと、これ表現は定員規模適正化なんですけど、ここに書いてあるのは、学生募集停止を行った学部等というふうにあります。多分、停止、さっきの部会長からのお話のように、クローズしていくときの流れということを考えたときには、一旦は、まず定員を少なくして、つまり、例えば500人だったのが500人集まらないけど300人なら集まるなら、まず定員を300人に下げて、それでまずやっていこうかというのは、段階としてあると思います。それがまさに定員規模適正化で、ゼロ100というよりも、一旦、規模を縮小して、それでもやっていけるならやっていけばいいし、それでも難しくなったときに次に、じゃあいよいよかねという、そういう段階があっていいと思っています。
 本学も、20年前の話ですけども、ちょっと集まらないといったときに、50人定員を返上して、適正規模に直したことによって、逆に教育がよくなってということで、ということもあります。
 だから、その段階のときに、とはいえ、例えば500を300にするといったときに、そこに一定のインセンティブがもし働いて、つまり4年間の間に300に変わっていくわけなので、すぐ先生の後任を採らないとかもできないといった中でということも、つまり募集停止をやめたら、やめるって決めたらというだけじゃない段階があってもいいのかなというのが1つ、感じたところです。
 もう一つは、今苦しんでいるのは大体、小規模大学なわけですけど、これもどこかに書いてあるんですけれども、そもそも私学は8割から9割が学生の学納金で成り立っているので、本当に私学助成ありがたいんですけれども、私学助成が残っても、定員を減らすということは、なかなか経営が難しくなるということにもつながっていくというところで、その辺りを、じゃどうしろというソリューションはなくてあれなんですけど。
 ただ一方で、例えばその小規模にしても、一定程度、これは大規模大学さんから送られると思うんですけど、例えば本学でも、多分1億ちょいぐらいなんだと思うんです。就学支援金を除いて頂いている補助金。それぐらいでしか補助金は頂いていないと思うんですけれども。それぐらいしかって、大事な税金ですけれども。ちょっと不適切な発言だったかもしれません。非常に大金ですけれども、とはいえ、比較するとです。
 それが、例えば小規模であっても、最低それぐらいはどこでも、は必要だよねというベースを置いた上で、あとは規模に応じてとかというふうにすることによって、定員を少し削減していくことのインセンティブというか、いうことがあってもいいのかもしれないなということを感じているところです。
 御検討いただければというか、ここで何か結論出るものではないと思いますけれども。ありがとうございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。両角委員、どうぞ。
【両角委員】  ありがとうございます。2つほどありまして、1つは、今、大森先生がおっしゃったことと近いのかなと思って聞いていたんですが、今回のこの5年間の集中改革期間ということで、「こういう政策は今までもやってきたな」というのが、私学の研究に関わってきた者からすると思うことでした。定員割れ改善のために集中5年間とか、未来経営何とかとか、いろんな補助金事業があって、その中で経営指導のようなことをしていくと確実に一定程度の効果が一部の大学に出るという実感を持っているのですが、やっぱり何らかの恒久的な仕組みを変えていくということも併せて考えていかないと、5年間だけでは、その後が結局もたないんじゃないかということを強く感じています。
 具体的には、やっぱり今、大森先生がおっしゃったようなアイデアに近いんですけれど、最低の補助額みたいなものを決めていくとか、あるいは学生数の考え方自体を変えていくとか、そういった議論が必要なのではないかなと思っています。
 私学に関する様々なデータの分析をしていますと、1,000人未満が全体の4割弱ぐらいで最も多いのですが、例えば過去5年見てみると、小さい大学は、より小規模になっています。現状の定員のままで学生が集まらないからといって定員を減らしてきています。そうすることによって、専任教員も減らしているし、給料も減らしている。授業料もより良い教育しようと思ったら上げていくことを考えることも必要だと思うのですが、とても上げられなくて、むしろ下げている実態があります。小規模大学においても学部生以外の多様な学生を集めていくということも必要だと思うんですけれど、それ以外の院生、留学生、社会人といったところに目も向けられないという、そういう余裕がない状況になっています。それって、どんどん規模が小さくなっているから、将来のことを考える人も、改革をやる人もいなくなっているということもあると思うんですけれど、私学助成などの仕組みで、やっぱり学部の18歳から22歳というか、伝統的な学生しか、増やしても補助金が増えないといった仕組みも大きく影響しているんじゃないかなと、いろんな大学の関係者と話していると感じています。学生数の考え方を、フルタイム換算的なところとか変えていくということも、5年間だけじゃない恒久的なところでの議論もしたほうがいいのではないかなと思ったというのが1つ目です。
 2つ目が、今回のことで大学を閉鎖していったりするということを考えなければいけないということなんですが、こういう議論に、もうずっと20年以上付き合ってきているので、それも何度も議論したぞという感覚もあります。例えば2005年とか2007年ぐらいの再生研のイエローゾーン、レッドゾーンとか。その時の議論でも、もし大学が破綻した場合に学生どう処理するかとか、一定の議論を、したと思います。また不祥事など悪いことをした大学に対する対応については2014年の私学法改正のときに議論をしたと思うんですけれど、その後、真面目に誠実に経営をしているけれど少子化でどうしようもなく経営が厳しくなっている大学をどうするかという議論で、いくつかの財務指標を用いて大学の状況について指導をしつつ見ていき、それでも改善しなければ募集停止や撤退を促すような方針が2019年に示されて、採用・運用されているはずだと思うんですね。
 以上は一例ですが、そういうこれまで行われてきた議論がどうだったのか、そこで何が足りなくて今回に議論すべきなのかといったところが、まだよく分からないというところがあります。私学が主な議論の対象でしたが、大学の撤退などについてこれまで全く議論がなかったことはなく、何度か議論してきた感覚が私の中ではありますので、それらを振り返って、どこが足りない論点なのかを明確にした方がよいと思います。これほど急速に少子化が進むとは思っておらず、これまでの議論ではこのあたりは考えていなかったから今考える必要があるんだとか、もう少し具体的にしていくと議論しやすいのかなというふうに思いました。
 以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。今回は、先ほどの地方の話と、定員割れを起こしているところについて若干の意見をいただきましたが、先ほど伊藤委員もおっしゃったように、東京の話はまだ全然していません。それから、国公私の議論というよりは、それが一緒になって、もともとの目標とか、あるいは建学の理念とか、それが異なるものが一緒になるという問題があるので、これを乗り越えなければいけません。
 自治体のダイナミクスの計算はいいとしても、自治体が学問に口を出すようになると、少し訳の分からないことになる可能性があります。ですから、意見は出ても、なかなかそうしましょうということにはなりません。
 建学の理念というのは実は分かりやすいのですが、それこそが、その大学にとっての全てなので、これを守れないようでは多分もう駄目だと思います。
 国立には建学の理念があるところがほとんどないと思いますが、建学の理念のようなものが当然あるのだろうと思うのです。それを今ここで持ち出すわけではありませんが、そのようなものも考えなければいけません。今、両角委員がおっしゃったことに対する一部返答ですが、それぞれの大学の特性に鑑みて、やはり考えなければいけないこともあるということです。
 先ほど資料2-2はご説明いただいたので、予算関係の説明を受けて終わりにしたいと思います。次回以降、考えていきますが、どのように誘導すれば有効な意見が出るか分かりません。
 それでは、事務局のほうから、予算案の説明をお願いします。
【髙見高等教育政策室長】  それでは、私からお手元の資料の2-1に基づきまして、昨年末に政府において取りまとめられました令和6年度高等教育関係予算のうち主なものについて説明いたします。
 資料2-1の1ページ目を御覧ください。まず、我が国の人材育成やイノベーション創出を支える大学、高専の基盤的経費である運営費交付金、私学助成につきまして、各機関が引き続き教育研究活動に着実に実施しつつ積極的な改革を進めることができるように、対前年度同額程度の予算を確保しております。
 次に、高度医療人材の養成につきまして、大学病院に勤務する医師の働き方改革を進めつつ、引き続き教育、研究、診療の各機能を十分に果たすため、令和5年度補正予算として140億円を確保したところです。
 加えて医学生、医学系大学院生の教育研究活動や教育研究支援者の人件費の支援に必要な経費として、新たに21億円を計上しております。
 また、これからのデジタル社会において必須となる数理・データサイエンス・AI人材の育成を推進するため、数理・データサイエンス・AI教育の普及・展開や、これらに関する教育を取り入れた文理横断的な学位プログラムを構築する大学への支援に必要な経費として23億円を計上しております。
 続きまして、2ページ目を御覧ください。昨年4月に取りまとめられました教育未来創造会議の第二次提言等を踏まえまして、我が国の学生の海外派遣の拡大、優秀な留学生の戦略的な受入れ、また留学生交流の基盤となる大学の国際化を一体的に推進するための必要な経費としまして、対前年度32億円増となる378億円を計上しております。
 また、高等教育段階の修学支援につきましては、大学等に進学する意思のある学生が経済的な理由により進学を断念することのないよう、引き続き着実な支援を実施するとともに、令和6年度から新たに高等教育の修学支援新制度の多子世帯や理工農系の学生等の中間層への対象拡大、さらには大学院(修士段階)における授業料後払い制度の創設、貸与型奨学金における減額返還制度の見直しを行うこととしております。
 文部科学省としましては、これらの取組を通じまして、我が国の高等教育の質の向上を進めるとともに、引き続き関係予算の確保・充実に努めてまいりたいと考えているところでございます。
 私からは以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。御質問等ありますでしょうか。よろしいですか。
 予算の概要だけなので、詳しいところは見ていただければいいと思います。
 最後に、次回用に宿題として、先ほど言ったように撤退しなければいけないところ、地域の問題はいいとして、おおむね2050年は、今より2割以上、定員埋まらないということで、これを埋めるためにどうしたらいいかというと、当然ながら、今いない人を2割入れれば埋まるわけです。しかし、日本の800ある大学で、留学生を全部の大学が2割増やすことはほとんど不可能だと思います。ですから、その努力ができるところは多分してもいいのでしょうが、全てが可能とはやはり思えません。
 大学がグローバル化していくのは大変いいことだし、多様性に満ちたキャンパスは大変魅力があると思います。これも、選択と集中とは言いませんが、できるところとできないところがあります。地力が違うと思うので、どこでもできるようにはなりません。あちらの高校まで行って学生をリクルートしてくることができる大学がどれだけあるかということなので、そんなに多くはないです。
 そうすると、留学生を入れるからいいという議論は、おおむねはいいのですが、本当のマスで見たときに、本当に20から25%、外国人が来てくれるか、それを我々がきちんとリクルートできるかというのは、できないところとできるところが出てきます。
 ですから、我々としては、自分の大学の心配を皆さんもされるでしょうが、この国のことが心配なので、ここに託すわけにもいきません。留学生が入ればいいでしょうというのは多分、ある限られた大学です。では、どうするのか。やはり定員は少しずつ減らすしかありません。
 しかし、そうすると、困ったことに、知恵が減っていく、あるいは知識が減ってしまうのでこれはもっとよくないのです。この国を今より発展させていくのであれば、今以上の知が必要ですが、人が減るので減ってしまいます。
 最初の議論のように知の質を上げて、個々の学生の質を上げるというのは一つの手なのですが、限界があるので、どうするのかという問題です。
 例えば、イギリスは日本よりもずっと早くから子供が少なくて人口が減っていますが、ノーベル賞は相変わらず、取っています。ですからある一定のことができています。別にノーベル賞に限りませんが、そのようなところに学ばなければいけません。
 やはり何とかして我が国のこの知識、知を減らすわけにはいかないと思います。これも同時に解決しないといけないので、減らせばいいをそう簡単には言えませんが、どうしたらいいのか。この二律背反的な部分が、本気で考えないと、国を滅ぼしてしまうので、何とかして、このどうしたらいいのかということです。
 今日は議論をしませんが、今日、全然出なかった留学生の問題を考えてみても、実はシンプルではなくて、大変重い課題であります。
 そのほか、いかがでしょう。よろしいでしょうか。
 それでは、一段落ついたというところで、今日はこの辺りまでとさせていただきます。よろしいですか。
 事務局、何か最後にありますでしょうか。どうぞ。
【花田高等教育企画課課長補佐】  失礼します。本日も活発な御議論をいただきまして誠にありがとうございました。
 次回の特別部会は、令和6年2月27日火曜日10時からハイブリッド形式での開催を予定してございます。
 本日御発言できなかった内容がございましたら、事務局まで御連絡いただければと思います。
 以上でございます。
【永田部会長】  どうもありがとうございました。いや、あれでしたね。明けましておめでとうございますと言わないで始めちゃいました。何かまがまがしいことで始まっちゃったので、あまりめでたい気分がしません。すみません。これでお開きとさせていただきます。
 
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