大学振興部会(第8回) 議事録

1.日時

令和5年1月13日(金曜日)10時~12時

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 「学生保護の仕組みの整備」に関する審議
  2. 「今後の大学教育の振興方策について(素案)」について
  3. その他

4.出席者

委員

(部会長)永田恭介部会長
(副部会長)吉岡知哉副部会長
(委員)越智光夫,村田治の各委員
(臨時委員)大森昭生,川嶋太津夫,小林弘祐,曄道佳明,益戸正樹の各委員

文部科学省

(事務局)池田高等教育局長,伊藤文部科学戦略官,山下高等教育企画課長,柿澤高等教育政策室長,髙橋高等教育企画課課長補佐ほか

5.議事録

 
【永田部会長】  おはようございます。時間になりました。第8回の大学振興部会を始めます。第11期中央教育審議会がいよいよ終わります。大学振興部会も第11期の開催としては,今回が最後となります。今日は,ハイブリッドになっております。会議の様子はユーチューブでライブ配信をしております。
 それでは,事務局,連絡事項をお願いいたします。
 
【髙橋高等教育企画課課長補佐】  本日はウェブ会議及びライブ配信を円滑に行う観点から,御発言の際は挙手のボタンを押していただき,部会長から指名されましたらお名前をおっしゃってから御発言ください。また,御発言後は再度挙手のボタンを押して,表示を消していただきますようお願いいたします。また,発言時以外はマイクをミュートにしていただくなど,御配慮いただけますと幸いでございます。
 本日の会議資料は次第のとおりでございます。事前にメールでお送り,ウェブでも表示しておりますので,御確認願います。
 以上でございます。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。
 メインの議題は,「今後の大学教育の振興方策」,つまり,大学振興部会で話し合ってきた内容です。取りまとめなくてはいけないので,素案をお手元に届けてあると思います。その中で話してきたことは「文理横断・文理融合教育の推進」が1つ,それから「出口における質保証」,それから直近になって話を始めました「学生保護の仕組みの整備」について,これらが論点です。
 前半2つについては,素案の中にかなり詳しくまとめられていて,今日大体,取りまとめの方向に行けるかと思います。それから「学生保護の仕組みの整備」については,まだ十分状況をシェアできてないと思いますが,今回,事務局がデータをいろいろ取りそろえていただきましたので,それを聞いてから,また,議論を先に進めたいと思っております。
 第11期の大学振興部会の開催は今回が最後ですが,審議の内容については,この上にあります大学分科会で,さらに議論を続けるという位置づけになっております。よろしいでしょうか。
 それでは,最初の議題というかメインの議題に早速入らせていただきます。事務局から御説明お願いいたします。
 
【柿澤高等教育政策室長】  ありがとうございます。高等教育政策室長の柿澤でございます。
 まず,初めに,前回会議でかなり音声の不具合等がありまして,誠に申し訳ございませんでした。今文部科学省でもいろいろとオンラインの会議,なかなか音声の接続がうまくいかないという状況もございまして,事務局も試行錯誤しながら改善に努めているところでございます。本日は,私の資料説明の間は,こうした形でオンラインで入らせていただきます。また,Zoomシステムの不具合で画像が乱れる可能性がございまして,その場合は,恐縮ですが,ビデオを停止した形で説明を続けさせていただければと思っておりますので,よろしくお願いいたします。
 それでは,資料1を御覧いただければと思います。こちらは12月21日の大学分科会で御議論いただいて,その後,そこでの御意見も踏まえて修正を行ったものでございます。これまで何度もこちらの部会でも御議論いただいているものでございますので,修正箇所を中心に御説明をさせていただければと思います。
 こちらは資料1になりますが,5ページを御覧いただければと思います。5ページの2つ目のパラグラフで「『総合知』の創出・活用」という話が出てまいります。この点につきましては,前回の大学分科会で松下委員から,「総合知」につきまして,これはそれぞれの専門知を深める,その専門知を持った人たちが共同することで「総合知」をつくり出していく,そういった趣旨をもう少し書いてはどうかといったことがございまして,網かけの部分の記述を追加しております。「『総合知』の創出・活用が必要とされる時代にあっては,専門知そのものの深掘り・広がりとともに,専門知を持ち寄って多様な他者と対話し,交流・融合・連携を進めることにより知の活力を生み出すことのできる人材が求められる。」としてございます。
 また,併せて,注釈のところで「総合知」やSTEAM教育といったところ,ここも具体的な意味合いを脚注でもいいので説明をするようにということがございましたので,追記したところでございます。
 次に,6ページを御覧いただければと思います。下の「新たなリテラシーとしての数理・データサイエンス・AI」の記述を修正した関係で,記述が移動したようなところもございます。6ページの網かけのパラグラフでございますが,前回,吉岡先生からも,御意見をいただいた歴史のリテラシーといったことも,技術研究や「技術開発がどのように社会の在りようや人々の生活に影響を及ぼしてきたのかといった歴史的な視点や」と追記しているところでございます。
 また,前回会議後,川嶋先生からも,この点1つ,ELSIと書きまして,新たな技術を社会で活用するに当たり生じる倫理的・法的・社会的な課題についての言及も必要ではないかということがございまして,これについては,網かけはしておりませんが,6ページの下の脚注の一番上,7で解説を付している形でございます。
 次に,6ページの下の「新たなリテラシーとしての数理・データサイエンス・AI」でございます。ここにつきましては,大学分科会で相原先生から,もともとの記述が企業が求める技術の羅列と習得というような形に傾いているのではないかということがございまして,それよりもむしろ新しい社会をいかにつくり出していくのか,そういった視点が重要という御指摘もいただいたところでございます。
 これを踏まえまして,6ページから7ページにかけての「数理・データサイエンス・AI」の記述ぶりを変えてございます。
 6ページから,「近年,AIの飛躍的進化等に伴い,社会経済のあらゆる領域においてデジタル化が加速度的に進展し,ビッグデータを活用した意思決定や様々なサービス等が人々の生活に大きな影響を及ぼすようになっている。このような現代社会にあっては,数理・データサイエンスやAIを含む科学技術に関する基礎的な理解やリテラシーを市民的素養として培うことは益々重要」と。
 また,「『人間中心のAI社会原則』では,AIを有効かつ安全に利用できる社会を構築すること,すなわち『AI-Readyな社会』への変革を推進する必要があるとして,社会原則のひとつとして『教育・リテラシーの原則』を掲げている。」という形で,どのような社会をつくっていくのかの背景を述べるような形にしてございます。
 そこから,「『AI戦略2019』では,デジタル社会の基礎知識『読み・書き・そろばん』的な素養である『数理・データサイエンス・AI』に関する知識・技能,新たな社会の在り方や製品・サービスをデザインするために必要な基礎力など,持続可能な社会の創り手として必要な力を全ての国民が育むことを目的として,『文理問わず,全ての大学・高専生が,自らの専門分野への数理・データサイエンス・AIの応用基礎力を習得』などの具体的な目標が定められている。」ということで,政府の施策のところにつなげてございます。
 次に,資料の11ページを御覧いただければと思います。11ページのパートですが,9ページから「一般教育・共通教育,教養教育をめぐる課題と文理横断・文理融合教育」について論じているパートになります。前回,曄道先生からも,ここの大綱化に伴って生じた課題としての教養教育を取り上げているパートで,教養教育,あるいは一般教育・共通教育と,文理横断・文理融合教育との関係性が少し読み手にも分かりやすくなっていないのではないかといった御指摘もございましたので,ここの関連性をもう少し分かりやすくするために,11ページに記述を追記しております。
 11ページの網かけの前の部分までは,一般教育・共通教育,教養教育をめぐる経緯や課題を述べているわけですが,そうした「経緯や課題は,文理横断・文理融合教育を進めるに当たっても留意する必要がある。2.で述べた通り,文理横断・文理融合教育のアプローチの一つとして一般教育・共通教育において学修の幅を広げるような教育を推進することは考えられるが,そのためには,文理横断的な学修を通じてディプロマ・ポリシーに定められた資質・能力を育成することを一般教育・共通教育の目標として明確化した上で,体系的な教育課程を編成・実施することが必要である。明確な目標や目的意識を持たずに,一般教育・共通教育において,単に個々の教員の研究分野に基づく幅広い授業科目が開設されていることをもって文理横断・文理融合教育の実践を標榜しても,教員の積極的な取組や教育方法・内容の改善,学生の学修意欲の喚起等につながらず,期待される教育成果につながらないという,上述の教養教育と同様の課題を抱えることになるものと考えられる。」としてございます。
 次に,出口の質保証の部分での修正箇所でございます。資料21ページを御覧いただければと思います。
 大学分科会で前回,麻生先生,安部先生から,それぞれ短期大学についての言及が必要ではないか。その中で特に全国学生調査については,短期大学については,大学と異なる傾向も見られたのでという,お話がございました。
 これを踏まえまして,21ページの一番上のパラグラフになりますが,「同調査では,短期大学の最終学年の学生も対象となっているが,大学と比較すると,全体として短期大学の教育活動,短期大学での学びに対する肯定的な回答の割合が高い傾向が見られた。一方で,学修時間については,『予習・復習・課題など授業に関する学習』が5時間以下の学生の割合が65%であり,大学と比しても高かった。短期大学の最終学年で何らかの『卒業論文・卒業研究・卒業制作』を行う学生の割合は大学よりも高いなど大学とは教育課程の特徴も異なり,単純な比較は困難であるものの,授業に関する学修時間の短さは大学と同様に課題であると言える。」ということで短期大学に関する言及をしてございます。
 また,21ページの下の部分になります。なお書きの部分です。こちらは古沢先生からの御指摘としまして,新たな課題としてのオンライン授業の質保証が必要であるということも言及してよいのではないかといった御指摘をいただきましたので,なお書きのところで,「同調査では,オンライン授業の受講割合や対面授業と比較して良かった点,悪かった点などの設問も設けられている。回答からは,地理的・空間的・時間的制約に捉われないオンライン授業の利点について,多くの学生が感じていることが明らかになった一方で,」22ページでございます「対面授業に比べて教員や他の学生とのやり取りがしにくいといった課題も生じており,オンライン授業の取組はいまだ試行錯誤をしながら改善を図っていく段階にあると言える。今後,大学における様々な取組の検証や技術の進展の状況等も踏まえつつ,オンライン授業の質保証,面接授業とオンライン授業を効果的に組み合わせたハイブリッド型教育の確立に向けたガイドライン策定等が求められる。」としてございます。
 次に,23ページでございます。「卒業論文・卒業研究やゼミナール教育の充実等」でございます。このところで,卒業論文や卒業研究といったことにつきましては,「知の創造」という意義があるという御指摘もございましたし,また,吉見先生からは,卒業論文について,こうした取組こそが国際標準の取組なのだといったお話もございました。
 これを踏まえまして,「また、」というところで,「単位の過剰登録等により広く浅くなりがちである我が国の学士課程教育において,学生に密度の濃い深い学修を求めるという意味で,卒業論文のありようこそが国際標準の取組であるとの指摘もある。」という記述を追記しております。
 次に,資料27ページを御覧いただければと思います。こちらは分科会の大野委員からの指摘でございます。質保証に関する国際的な潮流を踏まえた対応で,海外の質保証の動き,こういったことに日本としてもどう貢献できるのか,また,対応していくことが重要ではないかといった御指摘がございましたので,27ページの網かけの部分ですが,「各評価機関においては,海外の評価機関等との積極的な情報交換や対話等を通じて,我が国の質保証の取組に係る国際通用性の向上や国際的な連携の進展に貢献することが期待される。」という記述を追記してございます。
 資料1,素案としましての文理横断・文理融合教育,そして「出口における質保証」部分の主な修正箇所は以上でございます。
 続きまして,資料2「学生保護の仕組み」に関する資料の御説明をいたします。資料2を御覧いただければと思います。前回資料と少し重複するところもございますので,簡潔に御説明したいと思います。
 資料2の2ページを御覧いただければと思います。こちらは前回の会議でも御覧いただいたものでございまして,私立大学の経営状況についての概要を示した資料でございます。私大の48%が入学定員未充足ということで,19%が充足率80%未満でございますが,その内訳を見てみますと,地方中小私大の収支状況は,約4割が赤字といったところもございます。地方・中小規模,都市・中小規模,地方・大規模,都市・大規模で,こちらを御覧いただきますと,事業活動収支差額比率がマイナスの割合というところが,地方・中小規模ですと36%,これが都市・中小規模だと31.3%で,地方・中小規模,都市・中小規模において,とりわけ赤字傾向が見られるということがございます。
 また,資料の3ページですが,こちらは前回会議ではお示しをしておりませんでしたが,私立短期大学の経営状況に関する概要でございます。こちらは私立短大の86%が入学定員未充足でございまして,56%が入学定員充足率が80%未満であるといった状況がございます。
 こちらは,そもそも短期大学の場合は大規模校があまりないわけでございますが,中小の私立短大の収支状況は,約7割が赤字傾向ということもスタンスで明らかになっているところでございます。
 次に,4ページ目,これは私立大学の収支状況で,収入においては約4分の3が学納金,支出においては人件費が52.7%と約半分といった状況がございます。
 資料の5ページになりますが,私立短期大学の収支状況も大学と基本的には大きく傾向が変わるものではないといったところでございます。
 次に,資料の6ページですが,都道府県別の大学進学者の収容力でございます。各県の大学進学希望者に対する収容力は,東京都と京都府で150%を上回っているほか,9県でも90%を超えている。他方で,50%に満たない県も9県ある状況でございます。
 また,資料の7ページですが,都道府県別の大学進学者収容力の対18歳人口で見てみますと,東京都と京都府を除く全ての県で100%を下回る。その多くの県で50%未満となっている形でございます。
 8ページは私立大学における地域別の入学定員充足率でございます。これは47都道府県別ではございませんが,御覧いただきますと,例えば,東京においては充足率が103%,あるいは先ほどの京都も101.59%でございますが,低いところで言いますと,宮城県を除く東北が94.4%ですとか,あるいは四国は90.97%,中国地方も,広島を除きますが,87.45%といった充足率になってございます。
 また,資料の9ページになりますが,私立短期大学における地域別の入学定員充足率でございます。ただ,こちらの短期大学につきましては,先ほど御覧いただいたように全体として非常に入学定員充足率が低い状況になってございますので,100%に達している県はないところでございます。一番高くて宮城県の91.57%という数字になってございます。
 こうしたデータ以外にも,前回,村田委員からも,グランドデザイン答申の議論をしたときに,将来構想部会の中で,様々な各県のデータ等について分析をしたことがございまして,そうしたデータも更新をして議論していく必要があるのではないかといった御指摘をいただいたところでございます。実はちょうど今文部科学省で委託費等も活用しまして,こうした大学政策を議論する上での必要なデータの更新等を鋭意行っているところでございます。本日御説明した資料は既存の資料の範囲内で恐縮でございますが,今後しっかりと,新たなデータ,そしてまた,今急速に少子化が進行していることに関しましては,これを踏まえたシミュレーションといったことも必要になってこようかと思っておりますので,そういったところはまた改めて,しっかりと事務局としても取り組んで,大学分科会での議論に生かしてまいりたいと考えてございます。
 資料2の続きになりますが,10ページからは,大学経営破綻時に生じる問題ということで,学校法人堀越学園/創造学園大のケースの資料を入れております。こちらは前回会議で少し御説明させていただきましたので,詳細は割愛いたしますが,資料の11ページにございますとおり,堀越学園では,平成16年に創造学園大学を開設,平成18年に高崎医療技術福祉専門学校の開設以来,定員未充足などにより法人の経営状況が悪化したということで,文部科学省として経営や管理運営の改善の指導を継続しておりました。この間に,過去の財務計算書類や創造学園大学の設置認可申請時の書類における虚偽記載,経営悪化に伴う賃金の未払,税金や公共料金等の滞納,学校債の償還未履行や教職員の雇用をめぐる訴訟など様々な問題が発生したところでございます。文部科学省としての指導によっても改善が見られなかったという状況がございました。
 資料の12ページになりますが,学校法人として最も重要な在学生の修学機会を適切に確保することについても,責任ある真摯な対応が見られなかったということでございまして,文部科学省として,こうした状況においても法人の運営をこれ以上学校法人堀越学園の自主性に委ねた場合,在学生の修学機会が突然失われる事態になりかねず,学校の運営の継続性に疑問がある中で新たな学生等の受入れが行われ,将来不利益を被る可能性のある学生が増えてしまうといった状況になることを危惧いたしまして,解散命令の手続を行ったところでございます。
 13ページ目以降は,法令違反の状況についての補足資料でございます。
 16ページからが,「これまでの対応」で,前回,会議の中で御質問をいただいたことについても少し参考資料を付しております。
 資料の17ページですが,こうした事案も受けまして,平成26年に私立学校法の一部を改正することを行っております。これは,趣旨としましては,私立学校の自主性を尊重しつつ,私学全体に対する不信感につながるような異例の事態に所轄庁が適切に対応する仕組みを整備するということでございまして,「概要」にございますとおり,所轄庁による必要な措置命令等の規定の整備,報告及び検査の規定の整備,忠実義務規定の明確化というものを行ったところでございます。
 具体的には18ページにイメージ図がございます。このイメージ図にある赤枠の部分が,新たな措置として,異例の事態に適切に対応しようということでございます。ちなみに,こうした対応につきましては,学校法人の運営が法令違反,または著しく適正を欠く状態のときに,こうした対応を取っていくということでございます。
 また,1ページおめくりいただきまして,19ページ,令和元年の私立学校法の改正におきましては,19ページの上の「改正事項」にございますが,役員の職務及び責任の明確化等に関する規定の整備ですとか,情報公開の充実,中期的な計画の作成,破綻処理手続の円滑化等の規定も整備をしているところでございます。
 次に,20ページでございます。20ページは前回かなりやり取りもございましたので,説明は割愛させていただきますが,経営指導,経営に課題を抱える学校法人に対する取組でも,これまで経営指導の充実・強化について,取組の充実を図ってきたところでございます。
 次に,22ページ以降ですが,前回会議で出た論点といいますか課題といいますか,少し資料を追加しているところがございます。
 23ページ,教職員の取扱いの話も出ました。今御議論いただいているのは学生保護の仕組みでございますが,教職員の取扱いにつきましては,23ページを御覧のとおり,教職員は大学設置者と雇用関係にあるということで,労働者としての保護を受けることが原則でございます。大学を閉鎖して,大学設置者が存続している場合と,大学設置者が経営破綻した場合で問題状況が異なるということでございまして,大学設置者が存続している場合は,大学を閉鎖しただけで大学設置者・教職員間の雇用契約は消滅していないため,配置転換や退職勧奨,要件を満たす場合には整理解雇等による対応が考えられる。
 大学設置者が経営破綻した場合には,未払いの賃金や退職金の支払いを当該設置者や管財人に求めることとなるが,経営破綻に陥った場合は未払賃金が十分に支払われないことが懸念される。
 また,基幹教員制度の導入により,兼業やクロスアポイントメント制度のスキームの活用が考えられるため,それによって新たに生じる労働契約関係にも留意する必要があるところでございます。ただ,これは基本,雇用関係のところは,学校法人固有の問題というよりは,全体の労働法制あるいは労務契約等に関わることではないかと考えております。
 次に,24ページ,学生の学費負担でございます。判例上,学生・大学設置者間の在学関係は,消費者契約法上の消費者契約に該当するものということで,学生は同法上の消費者としての保護を受ける立場にあるということが,判例上確認されているところでございます。
 最後に25ページです。創造学園大学以降もいろいろ状況変化ございまして,政策の面では,先ほどの私立学校法の改正ですとか,あるいは経営指導の強化・充実があるわけですが,一方で,この間,オンライン教育の進展も相当程度見られたところでございまして,大学が仮に破綻してしまったときに,学生が転学をするといったときにも,当時はなかなかオンライン教育の活用といったところは議論にはならなかったわけでございますが,今後はそうしたところも可能性としては考えられるのではないかといったこと,また,高等教育の修学支援新制度が導入されたところで,高等教育の修学支援新制度の対象としての確認を受けるための要件として,大学設置者の経営状況や大学の収容定員充足状況が問われるようになったところも政策的には大きな変化ではないかと考えております。
 最後に資料3「学生保護の仕組みの整備」に関する主な課題・論点でございますが,こちらも基本,前回,御確認していただいた資料でございます。
 「基本認識」にございますとおり,各設置者において,自主的に不断の経営改善,教学の改善に努めることが重要。また,経営が悪化し,破綻が不可避と見込まれるような場合には,速やかに撤退等の経営判断を行うことが必要である。
 その際,在校生を全員卒業させてから学校を廃止することが学校法人としての責務であり,学生の修学機会を奪い,学校経営を途中で放棄するような事態になってはならない。
 このことを前提としつつ,実際に,資金繰りの深刻な悪化等により破綻に至るケースを念頭に,学校法人や国が採るべき措置等について検討を進め,セーフティーネットの整備を進めることが必要である。
 こうした基本認識の下で,「主な課題・論点の類型」としましては,5点を示しているところでございます。破綻を避けるために学校法人(大学)が行うべきこと。破綻が避けられない場合に学校法人(大学)が行うべきこと。破綻リスクを低減するために国等が行うべき措置。破綻時に国等が学生を保護するために採るべき措置。撤退・破綻する大学に関する手続,取扱いの検討ということで,2ページ目以降にそれぞれ取組の現状等を記載しているところでございます。
 以上でございます。
 
【永田部会長】 ありがとうございます。
 今お聞きいただいたように2つのパーツになっておりまして,「文理横断・文理融合教育の推進」と「出口における質保証」,これは審議まとめの案が出ており,1つずつ更新しながら,あとは大学分科会でという段階にもう来ていると思います。
 もう一方の「学生保護の仕組み」については,生煮えの状態ですので,審議の状況を報告するということしかできないであろうと思います。
 そこで,まず,最初に,「文理横断・文理融合教育の推進」と「出口における質保証」,この審議まとめ(素案)を基に,最終的な意見交換をさせていただきたいと思います。御意見等あれば,御発言をいただきたいと思います。
 越智委員,どうぞ。
 
【越智委員】  ありがとうございます。一旦退出しますので,先に発言させていただきます。文言のことで恐縮ですが,20ページに「大学での学びによって自分自身の成長を実感している」学生が多いという記載と23ページに「ゼミや卒業論文・卒業研究については,学生の成長実感の低さ」という違う記載があります。1つは全国調査で,1つは個人の書籍といいますか発表からの引用だと思うのですが,これをずっと通して読んでいると,エビデンスレベルが違うため,少し違和感があります。その点はいかがでしょうか。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。
 事務局,どうでしょうか。
 
【柿澤高等教育政策室長】  エビデンスのレベルにつきましては,おっしゃるとおり全国学生調査と,また,第5回振興部会で発表を行っていただいた西野先生の研究とは,そもそも対象も規模も違うところはございます。
 一方で,卒業論文や卒業研究,ゼミナール教育等の効果といったところは,全国学生調査では,あまりそこにフォーカスを置いて聞いているところもないということがございますので,23ページでは,評価基準の曖昧さ,質の低さというところも,「必ずしも期待通りの成果を上げていないとの指摘もある」という記述にとどめた上で,注釈のところでも,そもそも人文・社会科学領域を対象にした研究であるということで,そこが全体にといいますか,具体的にはここの指摘が何に基づくのかを明示するような形で,読み手に誤解が与えられないようにと記載しているところでございます。
 
【越智委員】 ありがとうございました。全体を通して読むと,やはり,最初は「『大学での学びによって自分自身の成長を実感している』という学生も約8割に上っているなど」ということで,一定程度の評価をしていることが明らかになったとあった後に,続きを読んでいくと,個人的な評価かも分かりませんが,「学生の成長実感の低さ」という,似たような文言になっているというところについて何か注釈をつけないと,違和感があるのではないかと思いました。
 以上です。
 
【柿澤高等教育政策室長】  表現ぶり等,改めて検討させていただきます。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。脚注47の部分は,僕らもセミナーで聞いた人文・社会系の話が多いので,少し書き過ぎている感じが若干あります。課題を挙げるところでとめておけばよくて,つまり卒論・研究については,認識のずれ,評価基準の曖昧さ云々かんぬんの影響の少なさなど様々な課題も指摘されているとすれば一貫性がないわけではないだろうと思いますので,修文させていただきます。
 
【越智委員】  はい,少し抜けます。すみません。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。
 曄道委員,どうぞ。
 
【曄道委員】  ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 私,教養教育と文理横断・文理融合教育との関係性について,前回指摘をさせていただいて,11ページにあるように少し書換えていただきました。大変分かりやすくなったと思っております。ありがとうございました。
 その上で,少し細かいことにはなりますが,表現で気になるところがあるので,指摘をさせていただきたいと思います。
 まず,1点目は,この段における,その前の10ページの一番下です。一番下のポツに「教養教育に対する個々の教員の意識」に関する指摘ですが,「ややもすれば専門教育が重要で教養教育を面倒な義務と考える」という,「面倒な義務」という言葉が,何となくですが,ほかの文章とバランスを欠く過激さがあるかなという気がいたします。ここでは教養教育に対して付加的な負担感を感じる教員がいるというような意味合いだと思いますので,読み手に対して少し書換えが必要ではないかと思います。
 それから,次の11ページの上から2つ目のポツのところ,私は書き換える必要があるのではないかという印象を持っていまして,ここでは学生の側に「目的意識が明確でない」「意欲が乏しい」ということが書かれているのですが,やはり,大学教育の振興方策についての議論を我々しているので,むしろその問題は,教養教育の重要性が学生に伝わっていないという,我々の反省に立つ文章にする必要があるのではないか。それを裏返して言っているのだとは思うのですが,学生の責任ということが表に出過ぎているのではないかと思いました。
 もう1点だけ,3点目は網かけをしていただいた文章の最後のところですが,下から2行目のところから「一般教育・共通教育の目標として明確化した上で,体系的な教育課程を編成することが必要」だという指摘がありまして,ここで言っている教育課程が,いわゆるディプロマ・ポリシー等に定められる全体の教育課程の話なのか,一般教育や共通教育を体系化すべしと言っているのかが少し不明確であるので,そこを少し具体化する必要があるのではないかという印象でございます。
 以上でございます。ありがとうございました。
 
【永田部会長】  御指摘の最初のところ,確かに「面倒な義務」は激しい書き方なので訂正いたします。それから,学生の側にも,確かに先生がおっしゃるとおり,学生が悪いというのではなくて,確かに伝え切れていないという書き方のほうが多分いいだろうと思います。
 最後のところは,ディプロマ・ポリシーに定められた云々とした上で,体系的な教育課程の,2度繰り返して書くのが嫌だったのだと思います。ですから,「それらについて体系的な課程を編成し」と書き換えればよろしいかと思います。ありがとうございます。
 村田委員,どうぞ。
 
【村田委員】  ありがとうございます。私からは,高大接続の15ページで,私立大学の立場といたしまして,一言だけお願いをと思っております。
 2つ目ぐらい,「一方で,こうした世界的に見ても特異的であるとされる」云々の文章のところで,最後のほうに「例えば,選抜区分ごとの実態調査によれば,商学・経済学部」云々でという文章があり,「上述の高等学校における文系・理系のコース分けも,こうした大学入学者選抜」云々と,入試段階での文理分断の責任が私学にあるというような書き方に少しなってしまっている,事実そうかもしれませんが,少し抵抗があるのと,こう書いていただく,事実だからこうでもいいと思うのですが,と同時に,解決策として,では大学,私学の立場からいうと,数学だとか,次の情報Iにも関わるのですが,出題が独自の各大学でできない状況に,人的リソースとして無理です。そうすると,例えば,共通テストの前倒しの実施によって,数学だとか,そういうものが利用しやすい形にするような形があり得るのかと思います。これも全く別の情報なのかもしれませんが,共通テストの単価がなかなか経営的に難しい,上がっていっている状況で,そうすればもっといろいろな大学がこれを活用する形ですから,少し現実的な政策として,共通テストの前倒しによる活用みたいな言葉が少し入れば展望が出てくるのか,これだけであれば,いや,それはそうだよ,でもどうしようもないという話になってしまうので,少し考えていただければと思います。
 私からは以上です。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。具体的な「共通試験の前倒し」と書くか,「共通試験の実施に工夫を」とか,少し丸めて書くなら書けるかと思いますが,「前倒し」と書いてしまうと,前倒ししなければいけない話が出てきてしまうので,少し工夫して,先生の意図が分かるように,少し修文をします。
 
【村田委員】  よろしくお願いいたします。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。
 川嶋委員,どうぞ。
 
【川嶋委員】 川嶋です。ありがとうございます。
 まず,取りまとめの構成について工夫をお願いしたいと思います。2ページに,振興部会で審議する3つのテーマが書かれていて,「主専攻・副専攻制の活用等を含む文理横断・文理融合教育の推進」,2つ目は「『出口における質保証』の充実・強化」,3番目の「学生保護の仕組みの整備」という,3つのテーマを議論してきたわけですが,1と2は割とつながりが分かります。つまり,教育や学修のプロセスについて,もう少し学修の幅を広げられることが今後の社会で必要なのだ。さらに,そのプロセスの総括として出口において,各大学がきちんと質保証しなさいという,1と2の関係性は分かるのですが,いきなり3の「学生保護の仕組みの整備」がきてしまうと,1と2のテーマと3のテーマの間,少しつながりが悪いというか,なぜ3番目は「学生保護の仕組みの整備」なのかと,一般に疑問を持つと思います。要は,1,2と3の間に隠れたテーマというか,課題があって,要は教育をしっかりして出口を質保証しないと,今後の少子化が急速に進む中で,多くの大学が経営破綻,閉校に追い込まれますよと。だからこそ,そういう場合に備えて学生保護の仕組みを考えていかなければいけませんよという,そういうストーリーになると思うのですが,1,2と3の間の一番重要な,今後大学がどんどん厳しい状況に置かれていて,先ほど私学の経営状況のデータも出ましたが,大学廃校,統合に追い込まれる大学が出てくる。ですので,そういう場合に備えて学生をどう保護したらいいのか,そういうストーリーにしていかないと,ぱっとこの報告書を見ただけで,なぜこの3つのテーマを審議まとめで議論されてきたのかというところが,一般の人には非常に分かりにくいのではないか。だから一番肝腎のところをスキップしているので,読み手からすると,なかなかこのまとめの理解はできないかと感じました。
 要は,平成3年の大綱化以降,1と2のところは繰り返し、繰り返し指摘されてきたところです。非常に既視感が強い。書かれている内容は,大綱化以降の30年の間にしっかりと教育の向上,質の保証に取り組んでいった大学もあれば,そうでない大学もある。これは本文中にも書かれていて,大学は二極化している。その中で,今後さらに,しっかり教育と質保証に取り組まないと,氷河期の中で明確に生き残れる大学とそうではない大学が出てくる。生き残れない大学がたくさん出てきたときに,学生をどうしますか,そういうストーリーにすると,我々がこれまで議論してきたところが分かるので,一番肝要なところが今回議論に欠けていたのかなというのが,振興部会は今日で終わりですが,そこは少し残念だったなということであります。
 以上です。
 
【永田部会長】 ありがとうございます。
 初めからこの3つのテーマは出しているのですが,ここで話している委員の皆さんは分かっても,確かにこれを初めて読んだ人は,3の前に前置きがあれば,より分かりやすいというのは確かかもしれません。少し考えてみます。テーマは,まず,1と2があります。こうしたものを充実させていく中で,学生が完全にこのようなものを喪失してしまう場合もある。それに対応して,どのようにしていけばいいかというので,学生保護の観点からも必要であるみたいなのを,非常に分かりやすい文章で入れて「3.学生保護」とすればいいのか。川嶋委員,ありがとうございます。検討させてください。
 
【川嶋委員】  よろしくお願いします。
 
【永田部会長】  大森委員,どうぞ。
 
【大森委員】  ありがとうございます。大森です。3点ほど,もっと早い段階に申し上げるべきことだったかもしれないので,盛り込んでいただくかどうかは,御判断はお任せしたいと思います。
 文理融合のところで高大接続のお話が出てきて,これは非常に重要なポイントだと認識しています。ただ,高大接続と言ったときに,どうしても入試改革と同義で語られていて,それはそれで本当に大事なのですが,現場にいると,もっと学びの接続ということが今すごく盛んになってきているように実感しています。特に,高校で探究が始まったことによって,大学生と高校生,あるいは大学の教員が高校でとかということで,それは17ページに少し,連携プログラムという表現で書いていただいているのですが,それが結局入試に帰着していて,そこから総合選抜とかにつながるといいよねという書きぶりになっているのですが,せめてそこは,教育プログラムを一緒にやっていくことも有効だというような,教育プログラムとしての価値というものも分かるように,文章を切っていただいてもいいのかなと感じたというのが1点です。
 それから,2点目,学修成果の,質保証のところで,19ページ辺りから学修時間のお話が出てくるのですが,キャップ制をしっかりやっていくことの重要性,これも私は認識をしていて,そうだなと思うのですが,キャップ制をやれば学生の学修時間が伸びるかというと,やらなかったら絶対伸びないけれども,やっただけで,すごい緩い授業をやっていると,もっと楽になっていくという話で,これは授業改善とやはりセットだと思います。キャップ制で,1週間に取る授業科目数を精選した上で,授業の中でしっかりと課題も含めて,授業の在り方で,うちの大学だけの調査でいくと,やはりPBLとかあるいは,1個手前のアクティブラーニングとかの授業のほうが授業外学修時間が長いというデータがやはり出ているのですが,そういう授業改善もセットでないとということがもう少し分かりやすく,FD等の表現もあってもいいかなと思ったところです。読み落としているかもしれません。
 最後に,21ページ,短大のことを入れていただいてありがとうございます。これは,特に何ということではないのですが,感想的に言うと,最後,「授業に関する学修時間の短さ」というのが,短大は本当にキャップ制をやってられないカリキュラムになっていて,これはすごく難しいなと,卒業単位を超える単位を取らないと資格が取れないみたいなことになっていたりするので,何とも書きぶりは分からないのですが,このとおりなのだけれども,大学よりも難しいなという感想を持っています。これは最後感想です。
 ありがとうございました。以上です。
 
【永田部会長】 ありがとうございます。17ページの高大連携のところの最初が,多分いけなくて,第3番目ですか,「このほか,高大接続改革の観点からは」ではなくて,「このほか,令和4年度から」云々かんぬんと始めていけば,途中に高大連携のことを言っていることになります。初めに「高大接続」と書いてしまったがために,入試の改善のためになってしまうので,これが要らなくてそのまま通じると思います。
 それから2番目のところは一応,先生のおっしゃる意図はというか,物すごくうまくは書けていないかもしれないが,この程度の表現でもいいかということだとは思います。
 ありがとうございました。
 小林委員,どうぞ。
 
【小林委員】  ありがとうございます。まだ議論が尽くされていない一番最後の学生保護の仕組みですが,細かい話が1つ,資料の一番最後の29ページ,経営改善等のハンドブックについては,最新版が第1次改訂版なので,脚注か何かで第1次改訂版が最新版であるということを明記していただかないと,検索すると古いものが先に出てきてしまうので,注意していただく必要があるかと思います。
 それから,資料2の一番最後でも出ていたのですが,私立大学として一番気がかりなのが機関要件,学生に対する修学支援制度の中で,経営破綻に近くて学生があまり集まらない大学には,機関要件を満たさないということで,修学支援をしないという可能性が出てきているのですが,これは学生保護の観点からは逆行しているような感じがします。そこの矛盾をどのようにして解決していただくかは,やはり1つ議論としてあるのではないかと思います。つまり、学生保護の観点ということであれば,機関要件をそういう形で使うのは難しいのではないか,保護にはなっていないのではないかと思います。
 それからあと全体的に,どこで議論したのだか忘れてしまいまして,大学振興部会ではなかったかもしれませんが,大学では英語教育が2年生から全部極端に減っている,特に理系,国家試験があるところはさらに,2年生から全然やってないというような資料があったかと思うのですが,それに対して危惧を感じておりまして,最終的には海外で活躍したり留学したりするときの足かせにはなってないかというのは,一言も触れられてなかったようではあるのですが,これは振興部会で議論した話ではなかったかもしれませんが,気が付きましたので,話させていただきました。
 以上です。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。前半部分については,生煮えの議論のまま書いているので,エッセンスだけに絞って,今の学生保護と矛盾しないかというところは考えさせていただきます。
 英語の問題は,多分この部会ではないと思うので,追加するにもしようがないので,またのチャンスということにさせてください。
 吉岡委員,どうぞ。
 
【吉岡委員】  ありがとうございます。非常に丁寧に文章をつくっていただいて,非常に分かりやすくなったと思っております。したがって,今まで御発言があったことで私が考えていたこともほとんど言い尽くされているので特に付け加えることはないのですが,1つは,「出口における質保証」の議論は,実はやはり内部質保証と連携しているというか,内部質保証があってこその「出口における質保証」なので,ここのところ,何か内部質保証との連携でもないですが,そもそも出口の質保証というのは内部質保証があって初めて成立するというようなことを一言入れるといいのかと思いました。
 それからもう一つ,今の英語の問題も絡むのですが,確かにこれを全部読んでみて,国際的なあるいはグローバルな問題というのがほとんど言及されていなくて,評価のところでは書かれているのですが,確かに,考えてきた道筋の中にグローバルな問題というのはあまり入ってこないのですが,ただ,コロナ以降,グローバルの問題がだんだん消えてきてしまっているということがある。そうすると何か少し言ったほうがいいかと思ったということだけ付け加えておきます。
 あとは,「出口における質保証」のところで企業の姿勢ということを強調していただいたのは非常によかったかと思っております。
 以上です。
 
【永田部会長】 ありがとうございます。今,英語の問題と,それから吉岡委員のグローバルなステージでの活躍を考えたときにということですが,今回は実際入れるのはなかなか難しいかと思います。ただ,内部質保証については,一言どこかに入れておいたほうがいいと思います。つまり,経営破綻の前,経営破綻も内部質保証がきちんとできていればいいわけなので,つまり内部質保証がまずありきで,国際通用性のある質保証というような形で書いておけば,メモは残ると思います。ありがとうございます。工夫します。
 そのほかいかがでしょうか。今のところお手が挙がっている方はいらっしゃいません。総会があって,大学分科会があって,大学振興部会があってというつくりなので,部会で話すことは限局されていくわけです。ですので,今日出てきたポイントは,当初に組み込んでおけばもう少し全体つくれたかもしれませんが,やはりかなりフォーカスしているので,大学分科会のところには残したいと思います。特にグローバルについては,苦言を言えば,今官邸で一生懸命国際化,グローバルの話をしていますが,SGUの話をしていた頃から考えると,あまり進歩していません。
 ですから,もう少し大きなテーマとして,大学分科会で,次に申し送りするなりなんなりして話さないと,何となくまた同じことを10年間やるのかということになってしまいます。何となく認識が,コロナでみんな出戻った感じがあるので,注意してもう一度議論したほうがいいと思っています。
 全体としては,最後の書きぶりをどうするかは難しくて,課題が出てきましたというところぐらいでしか書けなくて,これを集約させるというのはほぼ不可能だと思います。今は課題と論点だけ書いていて,もう少し,何かここだけ取ってつけた感があります。これを丸くまとめた形のほうが文章として本当はいいかと。「終わりに」の代わりに書くような感じでもいいのかとは思っています。
 今,委員の皆さまからいただいた中で,私からも意見を付け加えましたが,次期の大学分科会へ送り込んでおきたいようなテーマというのが,今私は,国際化あるいは国際性というのを,やはり入れないといけないと思っています。そのほか,委員の皆さまの中でこの際,せっかくですから,ここで話した観点の中で,何かこの辺が煮えてない,もっとこのような話をしなければいけなかったかというのがあれば逆に,この修文ではなくて,これを全体読んだときに,皆さんが,これもやはり重要だというのがあれば,簡単に御意見いただけるとありがたいと思いますが,いかがでしょうか。
 前,小林委員がおっしゃった入試の問題,安西先生の中央教育審議会の答申から始まって,検討会が昨年あって,今みんなそれを見て,入試は一旦収まっていますが,実は大本の答申からいえば,ほとんど変わってなくて,英語の4技能とか情報の問題,徐々に徐々に逆戻りしたりしながら進んでいます。それで,実は全然話が進まないのは,個別入試の話が全くどこでも今はされなくなりました。安西先生の答申を読むと,高校の教育改革と接続の改革,接続の改革の後に大学のカリキュラムの改革となっていて,接続のパーツが2つありまして,共通試験とそれから個別試験です。しかし,その個別試験については,実は,総合選抜というぐらいのことしか出ていなくて,割と大切に皆さん,高大接続のことを言う割にはあまり出てこないなと思っています。取り上げるか取り上げないかは別にして,全体についていかがでしょうか。
 川嶋委員,どうぞ。
 
【川嶋委員】  今,何名かの委員のお話や,永田部会長のお話で,グローバルという話が出ましたけれども,少子化ということで言えば,今後日本人の18歳はどんどん減っていくわけですから,それをどういう形で補っていくかというのは恐らく国公立問わず経営上の非常に大きな課題だと思います。その際,日本全体として大学生集団をどういうふうに考えて構成していくか。いわゆる大学生のポートフォリオです。日本人の18歳,それから外国からの留学生,さらに社会人,大きくこの3つの要素があると思うのですが,それを日本の大学全体としてどういうポートフォリオで構成していくのか,また,個々の大学もそれぞれ,日本人の18歳,留学生,それから社会人,この3つの学生集団をどういうポートフォリオで構成していくのか。ある大学は日本人の18歳だけでという場合もあるかもしれないし,逆に社会人に特化する大学もあるでしょう。そのことを少子化という観点から今後考えていかなきゃいけないとは思うんです。その際に入試をどうするかとの問題が出てきます。現在、日本人の18歳対象の入試では,共通テストと個別テストで選抜しているんですが,例えば留学生に対する入試というのは必ずしもシステマティックに行われているわけではなくて,海外のIBのテストとか,海外の大学での入学資格、たとえば、Aレベルやバカロレアなど,それから日本留学生試験といろいろあるんですが,今後留学生を増やすとしたらどういう入試形態を日本としては考えていくのかというのは1つの論点だと思いますし,それから社会人を受け入れる際にもどういう入試をすればいいのか,こういうところは国全体としてはほとんど考えられていない観点かと思いますので,グローバル化と少子化という観点から,今後多様な学生を受け入れる際にどういう入試をしていけばいいのかというのも一つ論点になるのかなと今のお話を聞いていて思いました。
 以上です。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。100%全く同じことを室長に言いました。室長は今きっと苦笑いしていると思います。何で続けて同じことを言われなければいけないのだという感じになっているかもしれませんが,非常に危惧するところなので御指摘ありがとうございます。
 
【益戸委員】  ありがとうございます。
 同じような話だなとは思いましたが,今回の部会を通じて,私たちは学習者本位の教育とは、どういうものかについて議論を重ねてきたと思います。とすると,決してこの話というのは大学生だけではなく高校,中学に関連していく話です。現在の大学入試というのは,日本人のために、すべて平等であるという前提に基づいて行われています。一方で、難関大学を目指す進学校では,高校2年生になるともう高校の学習は終わって,3年生はひたすら受験勉強をしているとのお話も聞きました。村田委員から共通テストをもっと前倒しできないのかとのご意見もありましたが、例えば,早い段階に前倒しをして,合格が決まってしまったら,残りの高校3年生活で決まった大学の授業を受けるとか,飛び級につながるような選抜の仕方や,幅広な高大接続があって良いのではないでしょうか。前向きな大学入試につながる議論は非常に重要だと思います。
 あともう一つ,海外から留学生を採るということについても,日本語の試験なのか,英語の試験なのか,それ以外の試験を認めるのかなど,そこは自由に各大学でアドミッションポリシーに基づき、決定できれば良いと考えますが、そこまでの自由度はないような気がします。この点については,学習者本位という目線から再度考え直すということが必要ではないかなと思っています。
 以上です。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。
 似ていましたというか,ほとんど同じでした。
 吉岡委員,どうぞ。
 
【吉岡委員】  重なる意見ですけれども,高大接続の議論ってどうしても入試の話になりますし,入試も,今の御意見にあったように,特に国立大学の方々は多分そうだと思うんですが,共通テストと個別テストというテストの問題で議論されるんですが,御存じのように,既に多くの私立大学は高校からの推薦であるとか,それからAO入試であったりとか,また関係校から、ほとんど全く大学側が主導する試験なしで,高校からの推薦でという形でアドミッションが行われているわけですね。ですから,今後少子化が進んでいく中で,多分大学の戦略的には,高校生を確保するということも戦略の一つになってくる。そういう中で高大接続というのを考えていく必要があるでしょうし,今,益戸委員がおっしゃったように,AO入試とか推薦入試,あるいは関係校のような形だと,大学で学ぶことと高校の内容をつなぐことができるというメリットももちろんあるわけですね。ですから,そういう意味での高大接続,大森委員の言葉で言うと,学びの接続という部分をもう少し考えないと,入試のテストに問題を限定して,しかも科目のやり方みたいな議論になっていくというのは,それは必要ですけれども,もうちょっと広い観点で考えていく必要があるかなと。それが多分,リカレントであるとかいろんな,入試というか,入ってくる人の多様性に対応するという議論と結びつくだろうと思います。
 以上です。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。
 大森委員,どうぞ。
 
【大森委員】  ありがとうございます。
 入試の問題は本当にもう一回真剣にという気がします。アドミッションポリシーを明確にしていけば,例えば,地方の小規模大学であれば全て総合選抜で,本当にうちで学びたいという子をしっかりと面接とか,いろんなプロセスを通してマッチングをして入ってもらうというのも本当はあるべきと思っているので,それはそれです。
 私の観点は別で,別というか,先ほど川嶋委員がおっしゃったことでちょっと触発されたんですけれども,今後の大学の役割といったときに,18歳だけにフォーカスするんじゃないよねという話がここしばらくずっと出てきていて,当然最初から社会の要請として,リカレント,リスキリングという話が出てきて,それは文言のいろんなところに出てくるんだけど,実質的にそれが,特に地方で進んでない感覚があります。正直言うと,うちもなかなか進められていない,プラットフォームの中でやっとやり始まっていますけれども,ここを何かというと,学生とは何かというところの定義につながっていくような気が私はしていまして,大学院はまた別ですけれども,学部において4年間リカレントでもう一回学び直すというニーズはほぼないんだと思うんです。そうすると,履修証明等のパートタイム学生というもの,ところが,パートタイム学生は学生数に数えられないので,各大学はやっぱり18歳を求めにいくという矛盾があって,例えば,年間で一定程度単位を取る学生さんであれば,その年の学生数に数えるとか,ただ,大きな大学さんだと,それを数えられるとそういう学生がいっぱいいるからかえって困るという問題もあって,これはなかなか一律に議論できないのは承知なんですけれども,各大学が,例えば定員割れをしているところをそれで補ったらいいじゃないかという話になっても,そう単純ではないよねというところで,そこにちゃんと力を入れられる,コストをかけていけるインセンティブになる学生とは何かという議論はないとそこが進んでいかないんじゃないかなと私は感じています。
 以上です。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。だんだん本質になってきました。
 小林委員,どうぞ。
 
【小林委員】  ありがとうございました。
 村田委員がおっしゃったことでちょっと補足ですけれども,まず日本人の入試に関連しては,御存じのように,大学入試の在り方に関する検討委員会というのが28回にわたって1年以上かけて議論をし提言をまとめているときに,いろんなステークホルダーの方々,それは高校生だったり,あるいは障害者の団体だったり,受験産業ですとか,予備校とか,さらに高校の先生たちも入っていたのですけども,そこで共通テストを前倒しという話があったときに高校の先生から大反対があったのです。つまり,高校2年で終える高校もありますけど,高校3年までかけてみっちりと学習指導要綱に従って教えているところもあるので,いきなり前倒しされたら困るという,要するにそこまでに授業が終わってないということで大反対があって,それでやはり無理かなということで共通テストの日程があまり変えられなかったという事がありました。ここはかなり大きなディスカッションがあってその上でのことです。
 ただ,おっしゃるとおり,外国を見ると結構柔軟なのですよね。私はドイツで教育をしていたことがあって,今はちょっと違っているかもしれないのですけれども,そこでは共通テストで大学入学資格を取ったら5年間猶予期間があって,その間,別にほかのことをしていてもいいのですね。兵役があるから多分そのせいもあるかもしれないのですけども,それから大学を選んでマッチングをしてそこに入るといった形になっていまして,柔軟です。アメリカはもっと柔軟かもしれませんけれども。
 それから,2番目,留学生の取扱いと社会人について,改めてその仕組みについて精緻に議論を行う必要があるかと思います。今これで結論を出すというのはちょっと無理かと思いますけれども,社会人のリスキリングについて,ある大学のある学部の学部長の方とお話をしたことがあるのですけれども,入学定員が最初400人だったのを――データサイエンス関係の学部ですけれども――300人に減らしたので,これは400人も集まらないから300人に減らしたのですかと聞いたら,そうじゃなくて,社会人を400人採り始めたらしいのです。そちらのほうは学校としては儲かっていると。そういう形でどんどんやっているところもあるのですね。これは成功している事例だと思いますので,例えばそういったところの状況をみんなで共有して,社会人教育はどうあるべきか,ということを考えるという機会は,今は無理ですけれども,次の中教審では考えていただければと思います。 以上です。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。今のところお手が挙がっている方はいらっしゃいません。
 大学分科会なり新しい部会をつくってやるとしてももちろんもっと大きな議論をしてから内容は選定しなきゃいけないのですが,今,出てきたキーワードは頭に入れておかないといけません。実は最初に川嶋委員がおっしゃったポートフォリオの話ですが,これは文部科学省の教育行政の腹を決めなきゃいけないことなので,どんな議論があろうが何をしようが,我が国の将来を決める形になるので,そこはそれで大臣以下の覚悟が必要な内容だと思うのです。だからこそやりがいがあるんだと思いますが,軽々にも話せないような内容だと本当は思います。だからといって,遠回りしているといつまでたっても18歳が減ることが現実として起こるだけなので,やはりどこかではいつか本気で話さないといけないんだろうと思っています。今ここに高等教育局長がいらっしゃるので,大きなことなのだと思います。
 いろいろと御意見ありがとうございました。今日いただいた意見は真摯に検討させていただきまして,この審議内容をまとめとして,大学分科会のほうに案を出して,そこで決まることになると思います。ですから,大学振興部会として御意見は今日いただいたものまでとさせていただきます。委員の皆さまの多くは大学分科会に御参加の方々なので,またそこで最終的なまとめ案として審議をいただくということにさせていただきます。よろしいでしょうか。
 それでは,そういうこととさせていただきます。
 時間が若干残っているので,生煮えだったところについて特に,つまり学生保護の仕組みの整備というところで少し意見交換をさせていただいて,第12期につながればいいと思っております。
 既に皆さん御存じのとおり,この中には2つの要素が入っています。1つは思わぬことで,あるいは十分な検討が行かずに大学が途中でなくなってしまう。これは学生を何とかしなくてはいけないという一つの観点,それからもう一つは,初めからそのような形で大学設置をしていって,将来の保障まで今のところ取れない形で,つまり,一応内部質保証をしながら認証評価はしていますが,大本のところで考え直さなければいけないことがあるのではないか。それが大綱化して,大学がどんどんできました,定員もどんどん増えましたというものの裏返しになりますが,どのようにこれをうまく未来の日本の形に合わせていくのか,この2つがあります。今日は両方あるのだが,どちらに絞らず御意見を伺いたいと思うのです。
 これもなぜ第11期でまとまり切らなかったかというと,これまた議論がでかい内容になっているので,そうやすやすとはいかないので,先ほどの課題と議論をまとめるに当たっても役に立つと思うので,今度はここに集中して少し意見をいただければと思います。いかがでしょうか。
 益戸委員,どうぞ。
 
【益戸委員】  ありがとうございます。
 少子化,人口減少という現実は変えられないわけで,大学など教育機関に限らず,地方においては無人駅が増えているとか,バス会社が倒産をしたとか,タクシー会社の数が減ったとか,シャッター通りはさらに増えているとか,いろんな現実が起きています。この現実は、突然起こった訳ではありません。予想通り起っている事実です。2008年に、USの証券会社リーマン・ブラザーズが経営破綻しました。破綻する日を予測する事は出来ませんでしたが、一年以上前から、もしもの破綻に備えての議論は、水面下では行われていました。少子化の影響で、大学の数が減る,経営が更に厳しくなる事などは想定内のことです。今より加速する前に,大学の経営統合であるとか連携であるといったことも絡めながら,懸念があるところとは話をするべきではないでしょうか。それがこの資料3の1ページの大きな2の中のマル1,破綻を避けるために学校法人が行うべきこと,破綻が避けられない場合に学校法人が行うべきこと,この事前の相談というのは,90年代の日本の金融機関、2000年代の欧米金融機関の経営破綻を身近で経験した者としては、非常に重要であると思います。事実,企業がいきなり破綻するということはほとんどないわけで,銀行団が相談をしたり,同業界の中で吸収できないかなどの議論をしたりするのは当たり前の事です。教育機関だけ特別な訳ではありません。また、海外の教育機関が,日本のライセンスと仕組みに興味を持って日本に進出してくることということも十分考えられるのではないかと思います。
 日本の教育システムというのは,ある意味では非常に評価を受けているわけですから,日本の教育機関にとって脅威となるのか、などの検討はあっても良いと思います。
 以上です。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。
 今みたいな,思わぬ観点で,外国の大学が参入してくるというものも出てきましたが,諸外国の大手の著名大学はいろいろな国に入っています。そこでも激烈な争いが実際には展開されているので,同じことが日本で起これば同じことが起こるだろうと思います。圧倒的に,何というのでしょうか,教育システムをきちんとしてない限り戦いにならないので,今日のちょうどこの大学振興部会で話したような内容はしっかりした上でですが,今度はマスを見たときのありようをやはり考えないといけないだろう。全くおっしゃるとおりだと思います。
 要は,学生が不幸になってしまったらどうにもならなくて,結局,適正に学ぶ場所がないとか,学んでいたら急にできなくなったみたいな,そのような愚かなことをやってはいけないわけです。
 いかがでしょう。何かほかにございますでしょうか。
 吉岡委員,どうぞ。
 
【吉岡委員】 今,益戸委員がおっしゃったことは非常に重要なことだと思います。国際化ということの問題の一つの側面だというふうに思います。
 一つは,今申し上げようと思ったのは,少子化という,一般的にもちろん少子化は進んでいるんですけれども,それ以上に,やはり地方と都市部との差,先ほどシャッター街の話もありましたけども,それはどんどん進んでいる。実際に結構大きな都市だったところに行ってみると,もう本当にがらがらになっている。当然若い人はいないという状態なわけです。
 それぞれのところにあったその教育機関というのが,高等教育機関であれ,そうじゃない部分であれ,やはりどんどん経営が難しくなっている。その場合に,例えば統合すればいいというふうに必ずしもいかなくて,やっぱり地域性というのをどういうふうに考えるか。学生のことを考えると,そこにその大学があるから行けるので,それが例えば隣の町に行ってしまった,あるいは東京のほうに行ってしまった,そこに行かないと大学に進めないということになるのは,やはりこれはまずいわけです。ですから,考え方としては,そういう大学をむしろ救うように,例えば財政的に救うべきであるみたいな,そういう議論だってあり得るわけです。
 やはりそのことも考えて,実際に高校生,高校生だけじゃなくてもですけど,学生になろうとしている人たちがどういう状態になるのかということを考えながら,破綻しそうな大学がどういうふうに出てくる可能性が高いのか。経営だけではなくて,当然,経営が悪くなってくれば人が集まらなくなるわけですし,教育の質も下がってくるということが起こるでしょうから,その辺のところを考えていく必要があるかなと思いました。これは大森委員が,多分一番身にしみて感じられたことだと思いますので,手を挙げていらっしゃる大森委員に。
 
【永田部会長】  大森委員,どうぞ。
 
【大森委員】  よろしいでしょうか。すみません。
 はい,身にしみております。さっきのデータを見ても,もう本当に深刻だなというふうに思っていて,あのデータのままでいくと,本当に地方から大学がなくなるということなんだろうと思います。
 つまり,ここはどうやって図っていったらいいのかが私もまだ分からないんですけれども,大学の努力で頑張る,つまり努力不足で駄目になるということは重々あると思うんです。それは大学の責任として。なんだけれども,そこの地に大学があるということにかじりついている大学さんの価値みたいなものをどう評価していくかというか,単純にそこだけでいくと,どんどん地方からなくなっていって,みんな東京になんだけど,そうすると多分進学率がまた下がっていくんだろうなという気はしています。
 さっき小林委員がおっしゃった機関要件とも絡んでくるんですけれども,そこの地域でじゃないと本当に進学できないよねという子たちの進学先をどう,それは,国立大学や公立大学があるからいいんだと言ってもなかなか入れないので,そこをやっぱりどう捉えるかということは,何かあんまり私が言うと,だから地方の大学にお金出して守ってくださいと言っているようになっちゃうので,何か言いづらい部分はあるんですけれども,でも,やっぱりそういう観点,自然に任せてなくなるとか,なくなればいいんだで本当にいいのかというのは,ちょっと考えたいなという気持ちは一つあります。
 それからもう一つ,統合とか連携といったときに,これ,学校法人って基本的に利益を生まない法人なんですよね。だから,ちょっとしんどくなっているところを統合することによって,そこを改善すると利益がぐんと来るという,そういう話ではなくて,マイナスかとんとんかというだけで,本当に助けに入るという感覚だと思うんです。
 それは,例えば東京の余裕のある大学さんも,地方のもうやばいよねというところを本当に助けようと思われるかどうかです。そこを吸収することによってぐっともうけが出てくるということならあり得るけれども,なので統合というのも,今回,本学は本当に近くの短期大学を設置者変更で学園内に統合をして運営を始めていますけれども,案の定,定員割れをしたまま,なかなか難しいんですけれども,学校,この地域から学校なくしちゃいけないという思いだけでそれはやっているんですが,何か,多分,メリットを考えたらそれは本当はやらないほうがよかったかもしれないというところがあって,何かそこに,そういうふうなことをするときに,助けに入るほうにもメリットがあるような仕組みということも必要になるだろうと。
 それから,大学同士が連携しますといったときに,さっき益戸委員がおっしゃったように,例えば企業さんだと銀行さんが間に入っていたりとか,そういうことがあったりすると思うんですけど,お互い現場同士で話合いを始めていくんですよね。おたく,大変でしょうみたいな話から入っていくって相当に大変で,そこをコーディネートできるような仕組み,これは国の役割なのか,何かあれですけれども,もうちょっと明確にしていくということも,間に入ってくれる人みたいなものの仕組み,これもすごく重要で,お互いでやっていきなさいよというのも,結構しんどいかななんていうふうには感じています。
 ありがとうございます。以上です。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。
 文部科学省としては,当然ながら,地方・地域の高等教育の振興,その努力はしているわけです。
 もう一つ,多分努力しなければいけないのは,これが高等教育局の仕事ではないのですが,地方や地域をつくる,その中核は何かということを知らしめないといけなくて,それは人ですということを,やはりもう一度きちんと言っていかないといけないのだと思うのです。
 その人は何というのは,実はその地域の大学が生んでいますということを,文科省の行政として,総務省でも国交省でもないので,手を入れられないかもしれないですが,霞が関全部に各地域地域の国公私立大学全部が本当に大切なものなのですというイメージをどんどんつくっていかない限り,大きなムーブメントは起こらない可能性がある。我々はその下で,今,大森委員がおっしゃったようなところを今度は文部科学行政としてどうするかというのは当然あると思うのです。
 よく社会人のリカレントのときに支援しなくてはいけないというのですが,これは厚労省であるという話になってしまうのと似ています。しかし,社会人がリスキリングするのは非常に重要であるということをずっと言い続けて,何となく,少しずつ少しずつは動いているようには見えます。
 ですから,文部科学省としてやらなければいけないこととして,大学分科会の下,中央教育審議会として話すことは,我々のできる,文部科学省の施策としてできる,その中で,いかに本当にその地域中核の大学群をうまくエンカレッジするかということは,やはりきちんと考えなければいけません。
 だから,それがもう通り一遍ではいけない時代になってしまったというのは確かで,そのときには,しかし,撤退だってやっぱりやらなければいけなくて,そこは覚悟が要るわけです。何でもかんでもオーケーですというわけにはやはりいきません。
 そのような前提なのだと思うので,本当に易くない話で,今日だからこそ話しやすい状況になっていて,このまま議事録に全部,審議まとめに今日言ったこと全部書きますといったらなかなか言いにくいこともあるだろうと思うのです。
 小林委員,どうぞ。
 
【小林委員】  大森委員の補足説明になるのかもしれませんけど,コーディネーターの話ですが,実は民間のM&Aをやる会社がたくさん,私立大学についてのM&Aには興味を持っています。私も何社かとお話をしたことがあるのですけど,実は会社のM&Aをそのまま私立大学に当てはめようとしている方々が多くて,私立大学の特性を全く理解してないのです。つまり,会社だと株さえ取得すれば,あとはM&Aの仕組みに則ってやっていけばいいのですけども,大学の場合,たしか経営改善のハンドブックにも似たようなことが書いていますけれども,会社とは違います。むしろ,そういうコーディネーターとなる会社がたくさんありますので,そういった人たちを少し教育していただく,私立大学はどういうものかということを文科省で教えてあげるという,そういうことも1回やっていただいたら,かなり興味を持っているコンサルタント会社はたくさんありますので,そうすると,統合とか連携とかというのが進むのじゃないかというふうに私は思います。
 あと,全然話は違うのですけど,18歳人口の減少で,短大よりもっと厳しいのは専門学校です。文科省管轄じゃないので,地方の県知事所管にはなっていますけども,その実態があまり見えてない。専門学校の学生についても,やはり破綻してしまうと大変なことになってしまうのですけども,今,地方はそういう専門学校がどんどん淘汰されている時代になってきているので,それをどういうふうにしてコントロールするかというのも,文科省の役割ではないかもしれませんけども,ただ,県に任せておいてもいけないので,どういう仕組みがいいのかというのは検討していただければと思います。
 2点です。以上です。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。
 そのほかいかがでしょう。吉岡委員,どうぞ。
 
【吉岡委員】  今,小林委員がおっしゃったことを一つは言おうと思っていまして,特に地方の問題を考えるときに,我々はどうしても,若干視野の外になるんですけれど,専修学校が持っている意味というのは,広い意味での高等教育機関なので,考えていく必要があるだろうと。リカレントであるとかリスキリングの問題でも,実は非常に大きな機能を果たしているので,専修学校の在り方みたいなものも,ここでの議論ではないですけれども,広い意味では高等教育の在り方の中で考えなくちゃいけない。特に地方の問題を考えるときには必要かなというふうに思いました。
 もう1点は、地方の問題でこれもなかなか分かりにくいところがあるんですが,公立大学の問題というのは,やはりもう少しきちんと考えなくちゃいけないかなと。特に一時期,私立大学が公立化するという動きがあって,今どんな感じなのかよく分からないですけれども,それがその後どうなったのかということも含めて,その問題,つまり地方の,文科省が直接ではない形で行われているという部分というのを含めて,全体としては,考えていく必要があるかなというふうに思いました。
 2点,以上です。
 
【永田部会長】  益戸委員,どうぞ。
 
【益戸委員】  ありがとうございます。
 先ほどは、外資系金融機関にいた経験に基づいて発言を致しましたが、今度は,地方銀行の社外取締役の経験に基づいて発言致します。
 地域地域において求められる能力や適性は、それぞれの経済規模,歴史、文化、自然環境などで全く違います。そして変化変貌していく過程で、そこにある高等教育機関の学部・学科,専門性の在り方がマッチしなくなってきているという現実があると思います。その是正ために地域連携プラットフォームが数年前議論されて,活動し始めてきていますが,地域連携プラットフォームでの議論は、しっかりとした将来ビューを基本にしている深い議論ではなく、目先のスタートアップ増加、移住者増加など同じ様な議論が目立つ様に思えます。全てとは言いませんけれども,かなりの地域でそういうことが起こっているのではないでしょうか。
 各地域には、どうしても必要な産業と企業、そして文化がありますから,教育の視点から、将来像、地域発展の観点などを基に、てこ入れをするというのはいかがでしょうか。
 以上です。
 
【永田部会長】  お話を伺っていると,要するに,ローカルに,ナショナルに,グローバルに,日本の大学全体が,どのように実力を一番発揮し得るかということで,多分ローカルなこともあるし,ナショナルなイメージもあるし,グローバルに戦いをしなければいけない部分もあるので,出口保障が云々というレベルのもう一つ上のレベルとして,我が国の800の大学がこれからより豊かになるように,撤退とかというのはやはりネガティブな単語なので,本当にそれぞれにフィットした形にどうやって変わっていくか,そこには連携やそういうのもあるのだが,元気が湧くタイトルで考えていかないといけないと思いました。
 大森委員,どうぞ。
 
【大森委員】  何度も申し訳ありません。
 地方の話になって,さっき公立大学のというお話が出たので,前,大学分科会で地方大学の振興の議論をしたときに,永田先生もおっしゃってくださっていたんですけど,地元が,地元の大学を自分事化していくということもすごく大事で,ところが,やっぱり公立大学は県の所管で,部署があったり,総務省からのお金が県を通してということがあるんだけども,国立・私立に関しては,自分の所管ではなかなかないんですよね。協力は一生懸命やっていますけれども。そこのところが,何か仕組み,これは今回の論点じゃないのかもしれないんですけど,破綻を避けるということの一つとして,地方自治体が,自分のところにある大学を自分事化できる,思いだけではない,思いは皆さん持ってくださっていると思うんですけれども,何か仕組みみたいなことというのは必要かなと思いました。
 それからもう一つ,今,益戸委員のお話を聞いていて,本当に私も地域にいて,地域の社長さんたちと昨日もいろいろ会合があったんですけど,こういう学部があるといいんだよねみたいなお話があったりして,じゃあ,それをつくりますと簡単に言えないというところの難しさが,実はあるんですよね。
 今回の3,000億の話もあったりして,すごく魅力的ではあるんですけれども,やっぱり既存学部をクローズしていくのに相当なコストがかかるということで,新しい学部等や学びの中身をつくったときに,スクラップをするまで,これはもしかすると前向きな破綻支援なのかもしれないんですけれども,つまり,形を変えていく支援ということだと思うんですが,そこがないと,例えばうちで,その地域が求めているものをつくりましょうといって,つくるほうには支援いただいたとしても,残っているところにも学生がいて,先生がいて,これを急にさようならってするわけにもいかないということもあったりするんで,何かそういうふうに変えていくところに,段階的に何か仕組みがあって,地方の大学も変わっていける,新しい分野にというところも必要かなと今感じたところです。
 ありがとうございます。
 
【永田部会長】 ありがとうございます。
 いろいろと御意見ありがとうございました。フリーディスカッションとして,振興部会でまとめ案をつくった後に,まだまだ語り切れなかったことがたくさんあるということが分かりました。
 それをまたもっともっと前向きに,第12期できっと,文科省のほうがまたお考えいただくと思うのですが,現実は厳しいものが迫っているのも事実なので,とにかくこの国にとってよりよい形になるように,議論は続けていかなければいけないだろうと思います。
 少し早いのですが,ここまでとさせていただきまして,この後の続きは大学分科会のほうで,関連議論をさせていただきたいと思います。
 それでは,今後の予定等についてあれば,事務局,どうぞ。
 
【髙橋高等教育企画課課長補佐】  本日も活発な御議論をいただき誠にありがとうございました。ただいま部会長からお話がありましたとおり,次は大学分科会ということで,1月25日,水曜日,10時から12時の開催を予定しております。審議のまとめに向けた議論をその場でまた引き続き行っていくことを予定しております。
 本日,言いそびれたなどのお話で御発言できなかった内容などがありましたら,事務局のほうまでまた御連絡いただければと思います。
 当方からは以上でございます。
 
【永田部会長】  以上でございます。
 それでは,大学分科会でお会いすることになると思いますが,どうぞよろしくお願いいたします。今日はお開きです。
 
―― 了 ――
 
 

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