大学振興部会(第7回) 議事録

1.日時

令和4年12月6日(火曜日)10時~12時

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 「出口の質保証」に関する審議
  2. 「学生保護の仕組みの整備」に関する審議
  3. その他

4.出席者

委員

(部会長)永田恭介部会長
(副部会長)吉岡知哉副部会長
(委員)越智光夫,日比谷潤子,村田治の各委員
(臨時委員)大森昭生,川嶋太津夫,小林弘祐,曄道佳明,古沢由紀子,益戸正樹の各委員

文部科学省

(事務局)池田高等教育局長,西條大臣官房審議官(高等教育・科学技術政策連携担当),伊藤文部科学戦略官,山下高等教育企画課長,柿澤高等教育政策室長,髙橋高等教育企画課課長補佐ほか

5.議事録

【永田部会長】  おはようございます。出席予定者の方々,皆さんお入りになっていますので,第7回の大学振興部会を始めます。コロナ第8波の状況です。ウェブ会議で開催せざるを得ないところがあります。ユーチューブでライブ配信しております。
 それでは事務局から事務連絡をお願いいたします。
 
【髙橋高等教育企画課課長補佐】  本日はウェブ会議及びライブ配信を円滑に行う観点から,御発言の際は挙手のボタンを押していただき,部会長から指名されましたらお名前をおっしゃってから御発言ください。また,御発言後は再度挙手のボタンを押して,表示を消していただきますようお願いいたします。また,発言時以外はマイクをミュートにしていただくなど,御配慮いただけますと幸いでございます。
 本日の会議資料は事前にメールでお送りさせていただいているとおりでございます。
 以上でございます。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。
 本日の議題は大きく分けて2つです。前回も議論いたしました「出口における質保証」という観点,前回の会議の際に出たいろいろな議論をまとめて,もう一度整理をしながら議論したいということです。
 それから後半では,今期の大学振興部会の3つ目のテーマについてです。1つ目は「文理横断」の話,それから今現在議論しているのは「出口の質保証」,もう1つ残っているのは,長いタイトルですが,「大学の『強み』と『特色』を生かした連携・統合・再編等による地域における学修者のアクセス機会の確保,学生保護の仕組みの整備,高等教育の規模の在り方」というテーマです。これは率直に言えば,今後少子化の中で大学の規模や全体像をどうするかという問題です。その中には当然ながら既に始まっている定員割れ等もあるので,これを今後どうするかという観点での議論ですが,今期の大学振興部会の残りの時間を考えると全部を議論するのもなかなか大変だということで,この中の一部に絞って今日は話をいたします。どの一部かというと,「学生保護の仕組み」という点にフォーカスして話をしてはどうかと考えています。よろしいでしょうか。
 それでは早速,最初の議題「出口における質保証」に関して,前回の議論を整理したことを事務局より御説明いただきます。よろしくお願いいたします。
 
【柿澤高等教育政策室長】  よろしくお願いいたします。高等教育政策室長の柿澤でございます。
 「出口の質保証」に関しましては,本日2点資料がございます。資料1-1,こちらが「『出口における質保証』について(審議経過メモ)」というものでございまして,前回第6回会議においても御説明を致した資料でございます。こちらは前回会議から内容は変えておりませんけれども,前回・今回の御議論を踏まえて,今後の大学分科会の審議に向けて修正を行う予定でございますので,資料1-1については説明を割愛いたします。
 次に,資料1-2を御覧いただければと思います。第6回大学振興部会を踏まえてということで,前回「出口の質保証」に関する議論のところで,永田部会長はじめ委員の方からも幾つか論点,問題提起を頂いたところでございます。
 こちら,1ページを御覧いただければと思います。「出口の質保証」に関する追加論点ということで,こちらに5点示しております。
 大学のミッションや学問分野の特性等の多様性を前提としつつも,「出口における質保証」の強化のため,各大学で取り組むべきことは何か。
 18歳人口の減少等,大学を取り巻く環境が厳しさを増す中で,「出口における質保証」ができている大学こそが評価され,生き残るような仕組みが必要ではないか。
 各大学は,例えば「卒業認定・学位授与の方針」において124単位以上の取得以外の卒業要件を設定し,当該卒業要件に係る学修成果の把握・測定を行うといった取組が求められるのではないか。
 学生自身が「何を学び,身につけることができたのか」という学修成果を実感できるようにするための努力,工夫が重要ではないか。
 大学での学びを通じて身につけた知識・技能やコンピテンシーが卒業後の受皿となる社会において役立っているかという観点から,産業界との連携・協力の下での学修成果の把握・測定等の取組が必要ではないか,というところでございます。
 2ページ目以降は,こうした追加論点に関連する政府のこれまでの提言ですとか調査結果等を御紹介しておりますけれども,何点かデータ関係を紹介いたします。
 こちらの資料1-2の6ページを御覧いただければと思います。ディプロマ・ポリシーにおける学修成果の設定状況ということですが,ここからしばらく,平成28年度に大学基準協会が実施した調査につきまして御紹介いたします。
 1つ目,28年度の段階でも,「卒業時に求める『学習成果』は設定していない」とした大学は3.4%にとどまるということでございます。また,2つ目の丸になりますが,ディプロマ・ポリシー,DPの中での学修成果の内容の設定状況については,「コミュニケーション能力,論理的思考力などの能力項目を抽象的に設定」する大学が,全学単位のDPで46.1%,学部・学科等のDPが66.2%,そのいずれにおいても最も多かったということ。一方,「能力項目の到達水準を明記し,具体的に設定」する大学は,全学単位のDPで6.8%,学部・学科等でのDPで15.9%という状況でございました。
 7ページを御覧いただければと思います。こちらは全学的に共通な学修成果と,学部・学科等の学修成果について,それぞれどのような測定方法が多く取られているのかということでございます。こちらを御覧いただきますと,全学的に共通な学修成果の測定方法といたしましては,測定の単位としてはやはり大学単位での学生調査ですとか卒業生アンケート調査,雇用先アンケート,GPAの分析・検証といったところが数字が高くなっております。数字が高くなっているところは色が塗られているところです。
 一方で,学部・学科等の学修効果の測定方法と測定単位では,個人を単位とした取組としては卒業論文・卒業研究が35.5%ということで一番高くなっていると。その他,外部試験ですとか学修ポートフォリオ等の分析・検証も行われているといった状況でございます。
 次に8ページを御覧いただければと思います。これまでも分野間の違いはございましたけれども,まず,左上のグラフになりますが,これも28年度の状況でありますので,今,取組としてはこういった取組は基本進んでいるかとは思いますけれども,28年度の状況で設置形態別に見ますと,卒業生調査あるいは雇用先調査といったところは国立大学の取組が特に高いということ。また,右上になりますけれども,医療系学部の有無と学部・学科単位の学修成果の測定内容でいいますと,外部試験,卒業生調査,学修ポートフォリオの分析,外部専門家の評価,いずれも医療系のあるところが高い数字と。また理工系学部の有無でも,卒業生調査,雇用先調査,GPAの分析・検証,外部専門家の評価といった項目について,理工系ありの大学のほうが顕著に高くなっているところでございます。
 次に9ページを御覧いただければと思います。所定の単位修得以外の卒業要件の有無というところですけれども,こちらは設定している大学が17.3%であったということで,全体としては医療系,理工系に多い傾向にあると。卒業試験の合格,医療系共用試験OSCEの合格,教員・保育士などの免許取得,TOEIC・TOEFL等の外部試験で一定点数を取ることですとか,GPAが一定水準以上であることなどを挙げている大学もあるということでございます。
 次に10ページを御覧いただければと思います。こちらは改革状況調査に基づくものですけれども,三つの方針に基づく教育の成果を点検・検証するための,学位を与える課程共通の考え方や尺度,いわゆるアセスメントプランを策定している大学の割合ですけれども,29年度から令和元年度でも,数字としては伸びてきているところがございます。
 また,11ページ目になりますけれども,課程単位での学修成果の把握に取り組む大学も年々増加しているということで,令和2年度で62.6%という数字になっております。
 この11ページのデータに関連する部分になりますけれども,ではその調査・測定を行っている事項は何かということにつきましては,12ページに3つグラフがありますが,一番上のところになりますと,コミュニケーションスキル等の「汎用的能力」が取組大学のうちの80%で一番高くなっていると。その他,「態度・志向性」「知識・理解」が69.8%,66.8%となっておると。
 また,把握の方法としては,「外部の標準化されたテスト等」「学生へのアンケート調査」といったものが多いということでございます。
 また,それをどう活用しているのかということでは,「教育課程や教育方法の改善」に活用している大学が78.5%,「履修指導やキャリア相談」が約半数となってございます。
 13ページ目以降,「教学マネジメント指針」の関連部分の抜粋等も紹介しております。
例えば14ページでございますけれども,これまでもGPAの取組が非常に重要ではないかといったことは部会の中でも御意見を頂いておりますけれども,この14ページの下から4行目ですが,「例えば,GPAを留年や退学の勧告等の基準とすることや,アドバイザー制の導入等によるきめ細かな履修指導や学修支援を併せて行うこと,教員間で成績評価結果の分布等に関する情報を共有し,これに基づくFD・SDを実施することなど,各大学の実情に応じてGPAは多様な活用が考えられることに留意する必要」といった記述も教学マネジメント指針に入っております。
 その後,少しデータのところで飛びますけれども,18ページを御覧いただければと思います。卒業生を対象としたアンケート調査,就職先からの聴取の状況ですけれども,令和2年度の状況で,卒業生を対象にアンケート等を行っている大学は64.7%,懇談会等の機会を設けて意見を収集している大学が17.2%。また,下の円グラフになりますけれども,就職先等から卒業生の評価を聞く機会を設けている大学は45.5%という形になってございます。
 一番最後19ページ,こちらは経団連のアンケート結果でございますけれども,最も重視する学生の学修経験としては「大学での学修履歴」を挙げている企業が最も多いと。83.8%でございます。ただ一方で,「学修履歴は特に問わない」としているような企業も一部見受けられると。18.9%という状況でございます。
 以上でございます。
 
【永田部会長】   ありがとうございます。
 資料1-2の説明を中心に行っていただきましたが,資料1-1のほうが我々の議論を整理しているものです。そろそろまとめなくてはいけないので,そのような視点に立ってこれを見て,過不足なく,あるいは書き過ぎてもいけない部分が多分あるかもしれません。ST比どうするのかという話もありました。だから書き過ぎてもいけないし,それから的確でないといけないと思うので,そのような形でこれを見てみたらどうかということです。
 それで,皆さんがお考えをまとめる間,私から少しだけお話をさせていただこうと思います。前文のところに丸が5つあり,背景が述べられていて,産業界という単語が出てきたり,グローバル化した社会というものが出てきたりしています。この中で「出口における質保証」を今議論しているという立てつけになっています。その後は,これまでいろいろなところで議論された内容がいろいろと情報として載っています。それで,いろいろな課題があるわけですが,どうしたらいいかという中で,具体的に例えば卒業研究,ゼミをどうするのかなど,先ほども言いました,書き過ぎてもいけないST比の問題等が出てきています。覚えていらっしゃると思いますが,産業界からのヒアリングもしました。それから,大きい大学だけではなくて,中小の大学,地方の大学からのヒアリングもさせていただいて,大森委員の大学の実例を聞いて,そこまでできたらすごいというのが皆さんのお気持ちだったかと思います。
 頭のところの現状や課題を見ているときに,「出口の保証」で,産業界からの意見は既にお聞きし書いてあります。どのようなものを産業界が望んでいるか。それだけでいいのか。あるいは地域についても,この間,大森委員からもお聞きして,地域の産業界と密接に連携して学修効果を見ていくと。これもいいと思うのです。
 そのように見ていく中で,一つ私が気になっているのは,グローバル化された社会,グローバル化した社会の中で,ヒアリングする相手がなかなかないわけです。出た学生の「出口の質保証」の中で,前文に書いたのならそれに対して何をもってして,どう対応していくのか,今まであまり議論されていなかった部分です。出たときにグローバル化した社会に対応できる人間になっていなければいけないわけですが,例えばそのようなことが抜けていると思います。
 今のものは例として述べているわけです。そうすると,単位の問題や学修成果の問題やST比やいろいろあったが,それを社会から見てみると,こことここはこのようなことが重要である。産業界から見るとこうである。グローバル化している状態の中ではどうだろうというふうに,マトリックスの中で埋まっていないところがやはりあると思います。そうしないと,前文の書き換えをするようなことになってしまうので,都合が合わないと思うわけです。
 そのような意味で,今のようなマトリックスを頭の中に書いていただいて,縦軸・横軸で欠けているものは何なのかというふうに考えてみると議論しやすいのではないかと,今思っている次第です。
 個別の案件についてはいろいろ御意見あるでしょうから,それも結構です。どこのマトリックスに入ろうが,そのような分類をしなくてもこのような問題があるのではないかというのも結構です。頭の中にそのようなことを想定しながら,先生方の御意見を聞いて,徐々に最終段階のまとめに行きたいと思っております。
 それではいかがでしょうか。御自由に御発言をお願いしたいと思います。手を挙げていただければと思いますが,いかがでしょうか。
 曄道委員,どうぞ。
 
【曄道委員】  どうもありがとうございます。
 今,永田部会長におっしゃっていただいて,産業界からの意見はかなり聞いてきたということもありましたのですが,1点だけ,1ページ目の一番下の丸にあります表現について,大学教育の立場からはちょっと気をつけておいたほうがいいかなというのは,やはり「大学での学びを通じて身につけた知識」。「知識」という言葉だけ取り出すと,この知識が社会において役立っているかという観点はちょっと誤解を生む表現で,これから我々が使うときに気をつけたほうがいいのかなと。いろいろ社会の,産業界の方々とお話をしたときに,大学で習ったことが即戦力的に使うことができますかといったような,ちょっとそういう視点が見え隠れすることを多分に経験します。
 我々は知識を伝授してその知識をもって社会の中で進んでいくということよりも,むしろそういった一つの視座から物を考える力をやはり教育しているわけなので,そういった思考力が役に立っているかといった問われ方,問いかけ方を,ここでまとめるものの中にもしっかりと入れ込んでおく必要があるのかなと思います。
 それから2点目は,これは今,永田会長がおっしゃったことですけれども,グローバル社会の中での大学教育の国際通用性のようなものが「出口保証」の中でどのように書かれるべきなのかといった御指摘だと理解しております。
 やはりその国際通用性に関して,それこそ知識もそうでしょうし,思考力もそうでしょうし,コンピテンシーもそうでしょうし,そういったもののレベル感が我々の国内での議論,特に産業界からいろいろ御指摘いただくことが中心にまとめられるとまずいのかなと。まとめられるとというのは,それだけでまとめられるとまずいのかなという気が致しますし,一方で,じゃあ,グローバル社会の中での通用性はどういうふうに可視化あるいはその保証をできるのかといったことの議論は,これからやはり大学教育の中でしっかりとした議論をしていかないと,まだまだそういった指標が見えているわけではないのかなという気が致しました。
 以上でございます。
 
【永田部会長】   私が言いたかったことでうまく伝えられなかったことをうまく解説いただき,ありがとうございます。そのほかいかがでしょうか。村田委員,どうぞ。
 
【村田委員】  今,曄道委員がおっしゃったことと少し関連して。このまとめていただいた資料1-2の一番最後の丸のところ,「大学での学びを通じて身につけた知識・技能やコンピテンシーが」とあるんですね。曄道委員がおっしゃっているように,大学の教育は,もちろん理系の場合は知識が多いんでしょうけれども,知識・技能というよりも,やはり姿勢だとか,考え方だとか,あるいは課題を見つける力だとか,課題に取り組む姿勢・方法を身につけるわけで,そういう意味ではコンピテンシーだと思うんですね。
 グローバルな話で言いますと,もともとEUはコンピテンシー中心に今やっていますし,アメリカでもCBE,competency-based educationという言葉が出てきているか,あるいは研究がされていて,これはあまりどんどん進んでいくと,単位制がどうなるのかという問題にも入ってくるんですけれども。コンピテンシーそのものをどう捉えていくのかということが大きな課題ではないのかなと。そして今,企業ももはや社内のいろんな,例えばリアセックのPROGなんかは完全にコンピテンシーを測っている,そういうものを取り入れている企業も多いわけですから。そういう形で少し考え直す部分,特にこの前文のところにはそういうことをちゃんと入れておかないと,まさに曄道委員がおっしゃったように,知識・技能ではないと思うんですよね。大学の学びあるいは価値観ということ,哲学とか出てくるかもしれませんが,そういった学びが大事なんだと。じゃあ,それをどう測っていくのか,それをどう保証していくのかということ。
 これは非常に難しい問題なんですけれども,例えば今回アンケートでもありますけれども,いろんな大学がいろんな形で今苦労しているんですが,学部の言わば各学位プログラムごとというのはどうしても専門のところになりますから,そうではなくて大学全体として,あるいはそういう学位プログラムを超えたところでどういうものを学んでいくのかという基準みたいなものをやっぱり考えていく必要があるのかなという気がします。
 そしてもう少し個別の具体的なところに落とし込むとしますと,例えばやはりルーブリックなんかをちゃんと使っていって,この授業,このゼミだったり,卒業研究だったら卒業研究ではどういったコンピテンシーが求められるのか,どういった姿勢・能力が求められるのかというようなことを今度は落とし込んでいく,そんな作業も必要なのかなと思います。そのことがまさに永田部会長のおっしゃった欧米だとかで今やられているようなグローバルな水準にもつながっていくのかなと感じました。
 以上です。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。川嶋委員,どうぞ。
 
【川嶋委員】  ありがとうございます。国際通用性のお話が出てきましたので,その観点からお話しさせていただきたいと思います。
 日本の大学教育の国際的通用性やグローバル化は随分前からいろいろ議論はされてきたところですが,大学生が英語を中心とした外国語でコミュニケーションできるというのも,一面的かと思いますが、グローバル化の観点からは今後も引き続き必要な取組かもしれません。
 質保証という観点では,「出口の質保証」はヒアリングを行い,ゼミとか卒論,卒研が日本の大学教育では重要だというお話でした。ただ、卒論、卒研に至るまでの学修の過程の国際化という点では,学修時間が欧州のECTSとかアメリカのカーネギークレジットシステムに照らすと大きく見劣りし,国際的に通用しない日本の大学教育の課題だろうと思っています。
 2012年に出た「質的転換答申」の中では,学生一人ひとりの学修時間を増加させることによって大学教育の質をさらに向上させていこうという提言をしたわけですが,これまで事務局から提供されている様々な資料を見ても,授業内学修時間と授業外学修時間の総和がほとんど変わっていない,増加していないわけで,どうやって学修時間を増やすのかこそが,国際的に通用する日本の学士課程教育に変えていくという点では非常に重要な課題かと思います。
 その背景には複数の原因があると思いますが,例えば,本来通学制の大学の学生はフルタイムなので,1週間しっかりと授業で学んで,またそのための予習復習をするのが基本的な性格なんですが,やはり生活のためとか,最近では生活よりも,友達との交流のためにお金が必要になるので、アルバイトをせざるを得なくなっている。しかし、生活費に関しては修学支援制度で一定程度の国からの支援があるので,そういう支援を受けている学生については,しっかりとフルタイムの学生としての学修をしていただきたいと思います。
 また、他の要因としては,就職活動の早期化ということもあるかもしれません。未来人材会議というものが経済産業省にあるのですが,その会議資料によると,日本の学生は他の国の大学生に比べて,大学入学後すぐに,就職を意識した活動を始めるというデータも示されております。最近出た黒川清先生の書かれた本の中には,日本の学生は大学を就職のための場所としか考えていないというような辛辣な御意見も出ておりました。
 そういう様々な大学の外側からの影響もあるのですが,大学側も果たさなければならない責任も幾つかありまして,大綱化以降,シラバスとかTAとか学生による授業評価,当時は3つの大学改革の小道具と言われていましたけれども、あるいは、先ほども柿澤室長から言及がありましたけれども,GPAとかCAP制とか,そういうものが日本の教育の質向上のための仕組みとして取り入れられてきているわけですが,それが必ずしも本来の使われ方をされていないところが,やはり国際的通用性の観点から見て非常に課題かと思います。
 先ほど,柿澤室長の説明ではGPAの使い方には大学ごとに多様であるという御発言もありましたけれども,本来GPAは,例えば進級判定,平均C以上,2.0以上ないと次の学期とか次の学年に進級できないとか,卒業できないとか,あるいはプロベーションの後,次の学期にGPA2.0以上に戻らないと退学させられるとか,そういう意味では本来は質保証の仕組みとしては非常に重要な取組なんです。
 これは先ほども御紹介があった改革状況調査によると,全国の大学の97.7%がGPAを導入していると答えているのですが,今お話ししたような進級判定,卒業判定,退学勧告などとして使われているのは,それぞれ13%,10%,34%に過ぎません。つまり、制度とか仕組みは日本の大学はほとんど取り入れているんですけれども,それがうまく機能していないところが,国際的通用性という観点からは、喫緊に解決しなければいけない課題で,これは文部科学省がどうこうというよりも,各大学の判断でどうそれを国際的通用性のある教育に変えていくかということになろうかと思います。
 2つ目の課題にあるように,今後も相当厳しい大学の環境になっていきますから,今こそ質的に転換,本当に文字どおり転換していかないと,5年後10年後15年後に,本当に後れている大学は厳しい状況に追い込まれるのではないかなと思います。
 以上です。
 
【永田部会長】 ありがとうございました。今のお話のGPAのところはちょうどよかったので使わせていただきますが,いろいろな課題があっていろいろ話しています。
 先ほどのマトリックスを頭に置いていただいたときに,縦軸が残っていまして,その縦軸というのは各大学の個性です。どこが高いとか低いとか。GPAは大学同士で比べるものではないので,その大学にいる学生たちの成績分布だと思えば,当然今おっしゃったように使っていいわけなのです。要するに,これ以下だったらもうこれ以上ついていけません,先へ進めませんと,これをハンパーしている。現実的にはGPAが,でたらめとは言いませんが,きれいな正規分布にならないで,かなり偏りが生じたり,かなりGPAでは点が低くてもそれを使って退学を勧告しないなど,それは何なのか。本当は大学各自が定めているので自由なはずなので,どこかの大学と比べてやっているわけではないのです。
 ですからその縦軸の設定がまだアンバランスなんだろうと思います。自分たちの大学ではこれをこう考えます。これだけはきちんと取ってくれないと,これ以上,大学として学位を与える条件に到達しませんということなので,そのような考えでつくっていないかもしれないという気がするのです。
 
【村田委員】  よろしいですか。
 
【永田部会長】  次も手が挙がっていますが,先にどうぞ。
 
【村田委員】  今の関係で。恐らく,今,永田部会長がおっしゃった話は,124単位が卒業要件で決まっているわけですよね。それに加えてGPAだとか,ほかの条件はといったときに,124単位は取っているんだけれど,GPAがああいったときに訴訟問題に……。
 
【永田部会長】  なりかねないです。
 
【村田委員】  なりかねないおそれがあって,各大学はちょっと及び腰というところがあるので,そこはむしろ文部科学省からそれがオーケーだということをちゃんと言っていただければ,こぞってやるんじゃないかと思います。
 
【永田部会長】 ありがとうございます。前回,前々回ぐらいにも出てきた論点の一つです。吉岡委員がおっしゃっていました。きちんと単位を取ったのに卒業できないとは何事かということです。
 
【吉岡委員】  そうです。
 
【永田部会長】  問題がありました。少し介入してしまいました。 越智委員,どうぞ。
 
【越智委員】 ありがとうございます。
 永田部会長が言われるマトリックスで考えていくというのは,誠にそのとおりだと私も思います。ただ,マトリックスをどこまで広げていくかとか,違う層のマトリックスを考える必要があるのではないのかというのを,考えざるを得ないんですね。新卒の一括採用ということになれば,そういうマトリックスが本当に重要だと思います。先ほどからグローバル化という話が出ていますけれども,リカレント教育等も考えていく。
 あるいは,ここにもありますけれども,1ページに,「ジョブ型雇用の浸透や」とあるんですけれども,このジョブ型雇用ということになると,「出口の質保証」はやっぱり4年間を通して達成されたものを評価すべきだろうと思います。今は現実的には3年生の頃からもう採用・就職活動が始まって,そこの時点で評価を受けているところがあって,ある意味,4年間で学ばせるというディプロマ・ポリシーが十分に機能しているとはちょっと考えにくいと思うんです。
 一番最後の9ページの後ろから2番目の丸,「また,近年,就職・採用活動の日程が一部で早期化し」云々というところで,この前,私が言ったところも捉えていただけているとは思いますが,新卒一括採用のマトリックスとまたちょっと違うマトリックスがあるのではないのかとも考えます。そこのところに関して,またそもそも論かとなるかも分かりませんけれども,やはりそういう視点を持ちながらそのマトリックスを考えるのが必要ではないかと考えます。
 以上です。
 
【永田部会長】 ありがとうございます。そうです。今のリカレントはいい例だったわけですが,一緒になべて考えていいのかという問題はあると思います。
 大森委員,どうぞ。
 
【大森委員】  ありがとうございます。
 冒頭御説明のあったいろんなデータはとても参考になったんですけれども,やっぱりまだ平成28年段階だと,この間もお話しした学修成果と教育成果が少し混同しているというか,どっちかというと,あのデータは教育成果を大学が把握するためにどういうふうにしていっているかという調査だったかなという感じもしたので。今後いろんな調査の時にその辺はもう少し明確になるといいなと感じたという,それは感想です。
 今,審議経過のメモのところでだんだんまとめられていく中で,部会長も前文のところのお話がありました。私も,ちょっとここの「出口の質保証」は何のためにするのかなというときに,世界の要請は絶対必要で,それは書かなければいけないと思いますけれども。
 何となく抽象的な物言いになっちゃうんですけれど,学生の顔が見えてこないというか,学生たちがこういう社会の中で生きていけるその力をつけてやっていますよということが一番大事なことのような気がして。その学生たちが生きていく社会は産業界にもすごくお世話になっていくわけで,こういうニーズもあるしねというところかなという気がしていて。そこがもうちょっと,大学の自主性というか,何か言われているからやっているというより,この学生たちを育てる責任みたいなものとか,そういうことがまずあって,で,その学生たちはこういう社会に出ていくんだから,そして産業界にはこういうニーズがあるんだからという,そういうことが欲しいなとちょっと感じたのが一点です。
 もう一点,部会長がおっしゃられたグローバル化というか国際通用性のところは結構難しくて,「出口の質保証」ではあるんだけれども,育った学生たちの国際通用性を担保していくのか,大学としての,機関としてのというか,例えば本学でもカリキュラムをつくるときにナンバリングとかをやっていくんですけれども,なかなか海外の大学とナンバーを合わせていくとか,国内でもそれが全然まだできていなくて,このレベル感みたいなもの,結局,自大学の学生の履修ツリーの参考としてナンバーができているレベルで終わっていたりするので,そういったカリキュラム・ポリシーというか,そこの中身の通用性ということなのかというのはなかなか,もう少し議論をしてみてもいいかなと感じたところです。
 すいません,明確な意見ではなく,感想レベルでしたけれども,ありがとうございます。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。古沢委員,どうぞ。
 
【古沢委員】  ありがとうございます。
 私も申し上げようと思っていたことを,今まさに御指摘があったとおりなんですけれど。やっぱり前文も含めて,もうちょっと学生の視点があったほうがいいのではないかと思っておりました。もちろん産業界とか地域への質保証も大切なんですけれど。5ページにも言及がありますけれど,「学生の成長実感」と表現されていますが,そのような意識を持てるかどうかは非常に大切なことで,その意味でも,先ほど資料にあった卒業生調査,成績含めてぜひ各大学にやっていただきたいなと思います。
 もう一つは6ページ目の「ゼミや卒論等を『出口における質保証』において有効に機能させる」という点ですけれど,こちらはもうちょっと実態把握がやはり必要かなと思うんですけれど。情報公開という点でも入学者とか広く社会,学生に対しても,どのようなゼミや卒業研究,卒論などを学生にできるチャンスがあるかとか課しているかということを情報公開していただきたいということを,もうちょっと強調していいかなと思いました。
 最後に,今ここのところの一番大きな変化はオンライン授業の急速な普及だと思うんですけれど,先日文部科学省の調査も出たところですが,実際には各大学でこの調査結果以上にオンラインの授業を取り入れている,それぞれの授業のこまを見るとあると思うんですけれど。質の問題,新しいツールだけに質が確保されているか,過度に一方通行にならないような工夫が非常に求められていると思うので,そういったことに言及があってもいいのではないかと思いました。
 以上です。
 
【永田部会長】   ありがとうございます。今,古沢委員がおっしゃったことと村田委員が最初におっしゃったことを混ぜて考えると,知識やスキルはやはり必要条件で,実は考える力が十分条件だとすると,学修成果はその後のほうがきちんと身についていないといけないとなると,それをどう測るかというか,それをどう冷静に見極めていくかというのは非常に難しいわけです。学生アンケートだけでもできないし,教育側からのアンケートだけでもできないという,非常に難しい部分だと思うのです。知識やスキルを測ることは多分できますが,それは当たり前で,その上で何をどれだけの考える力をつけましたかという問いについては非常に難しいだろうという気がして,皆さんが議論して一番悩んでいるのはいつもそこだろうと思うのです。
 吉岡委員,どうぞ。
 
【吉岡委員】  今までの皆さんのお話で大体ある種の論点は共有されているんだと思うんですけれど、知識とか技能とかということと,それから思考能力であるとかコンピテンシーと村田委員がおっしゃっていた事柄はもちろん切り離せないわけで,やはり重要なことは,知識や技能を獲得していくプロセスがそういうコンピテンシーをきちんと身につけていくというか,それとうまく結びついていることが重要で、しかも学生がそのことを自覚する,つまりこれを学んでいることが、結局は自覚的には楽しいということなのかもしれませんけれども,知識や技能を身につけていくとどういう能力が身についていくのかということが,やっぱりある程度見えるようにする必要があるのかなと思います。
 そうじゃないと,要するに学修者の視点と言い続けているわけですけれど,学修者から見て,自分が学んでいることにどういう意味があるのかが見えないと,やっぱり途中で迷ってしまうということだろうと思います。
 それを考えるのが大学の教員のプロとしての教育者だと言ってしまえばそういうことなのかもしれませんが、先ほど大森委員もおっしゃっていましたけれど,やはり科目や,あるいは川嶋委員がおっしゃっていた進級制みたいな問題,つまりここまで行けば次に進むことができるし能力が身についていくんだということをある程度分かるようにしていくことは必要かなと思いました。科目の段階づけ,秩序づけを行う。ナンバリングは一つの方法ですけれども、それが重要で,さらに言えば確かに進級制みたいなことをやればかなり明確になると思いますけれども,今から日本の大学の中に進級制を入れるのは多分難しいし,あまりそれ自体が望ましいかどうか分からないので,ちょっとそれは置いておくとしても、少なくとも科目というか,学修プロセスの秩序づけをきちんと行うのがまず第一歩かなと思いました。
 じゃあ,それをどう測るかというのは非常に難しくて,卒業生アンケートであっても,大体アンケートに答えるのはうまくいっている人間なので,本当に失敗している人間はアンケートに答えてこないのでそのパーセンテージも非常に少ないでしょうし,やったほうがいいと思うんですけれども,それだけでは判断できない。なかなか難しいなと思いました。難しいとだけ言ってもしょうがないですが。
 もう一つは,ジョブ型への転換が進んできていることは確かだと思うんですけれども、やはりちょっと気になるのは,先ほどから議論になっている,つまりジョブ型がどういうふうに捉えられているか。大学もそうですし,企業がジョブ型にどういうことをイメージしているのかがまだ共有されていない,言葉だけが動いている気がします。
 下手をすると、ジョブ型は,要するに即戦力の議論にむしろなじんでしまうことがあるかなと。そうするとますます大学が就職のための予備校であることになってしまうので,そこのところはここでのまとめには,やはり何かそこのところはそういうものじゃないということを言ったほうがいいかなと思いました。
 取りあえず以上です。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。小林委員,どうぞ。
 
【小林委員】   「出口の質保証」というときに,やはり出口の先の受け手は一体誰に対する質保証かということは常に大事だと思います。このまとめた表現の中では「産業界等」というちょっとざっくりとした言い方しかないですけれども,私は医療系に所属していますので,その時の出口の受け手はやはり患者さん,人だと患者さんですね。動物だと患獣。そういう立場がやはり大事だと思われますので,単に産業界あるいは医療界というか,病院とかそういったものだけではなくて,一般の受け手の市民の目線も一つ大事ではないかと感じました。
 あとは,学長が大学の質保証をするという先ほどの個別の大学の話もあるのですけれども,もう一つは,前回でしたかね,CATOとかJABEEとか,そういう認証機関の役割もかなり大事なところがありますので,そこそこには書かれていますけれども,その辺も少し強調していただければと思います。
 以上です。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。益戸委員,どうぞ。
 
【益戸委員】   ありがとうございます。皆さんのお話を聞いて少し感想をお話しさせていただきます。
 従来の大学・高等教育機関は学生に対して優し過ぎたのではないかと感じます。これを機会にもう少し厳しい教育のリードをする議論のきっかけになれば良いのではないかなと思いました。もちろん大学は企業にとっての就職予備校ではありません。難関大学から採用しても,その方が大学4年間ないしは大学院を含めた6年間の中でどれだけの努力をしてきたかの結果に基づいて,企業や社会での活躍のチャンスがあるのでしょう。
 企業の採用の仕方もジョブ型に変わっていくかもしれませんが,当面,ジョブ型は全体の中での一部だと思います。相当高い能力を持った方が即戦力となる事を期待しての採用です。かなりの部分は従来の一括採用,しかし中途採用は増えるでしょうから通年採用比率は高くなるかもしれません。
 企業で働く上でも,知識ではなく,知恵の勝負になった時代に,GPAは非常に重要だと思います。学生生活でどれだけ努力をしたかという数値です。先ほど座長がお話しになったように,これは大学ごとで比べるものではなく,同じ大学の中での正規分布であるべきだと思います。そうすると,自分自身も,ないしは今後の人生のためにも,どこに自分がいるのかということがはっきり分かる。大学に入ったら,もうあとはアルバイトとクラブ活動をして遊んでいればいいのだという時代はもう終わった,ということを学生にきちっと伝えることが,まず大学にとっては大切なことではないでしょうか。
 グローバル化に対しての対応はいろいろあります。語学力もありますし,多様性,議論に参加する素養のこともあります。これは先ほど永田部会長がおっしゃったように,各大学の個性という部分ではないかなと思いました。企業側もグローバル化という中で様々な対応がありますので,やはりそれに合った方を採用しようと思いますので,もっと採用候補者の幅が広くなっていくべきではないかと思います。
 以上です。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。大森委員,どうぞ。
 
【大森委員】  申し訳ありません。2回目で。
 先ほど来,いわゆるコンピテンシーをどう可視化していくのかというのは相当に難しいよねという議論で,多分,もう難しいんだと思うんですよね。教学マネジメント指針をつくっていた委員会の中では,評価のこととかが御専門の京大の松下先生がおっしゃっていたのは,やっぱりそこは間接評価じゃなくて直接評価じゃないといけませんよねと。やっぱりアンケート等は,えいやとこうじゃないかなと思ってつけるものなので,間接評価なのでと。で,直接評価は,やっぱりエビデンスとその評価基準があってつけられていくもので,その評価者は先生ということもあれば学生自身ということもある,というような議論があって。
 ちょっと手前みそですけれども,この間御報告させていただいた本学は,ポートフォリオにたまっているエビデンスをベースに,ルーブリックで学生がなぜこういう力がそこまでいったかを自分で作文を書いて評価するという,それが精いっぱいなのかという感じはしていますけれども。それで学生自身がここまでいけたという実感を持つこと,コンピテンシーを測っていくところはそこなんじゃないかなという感じはしています。それがいいと思われる方もいれば,それではまだ甘いよとおっしゃる方もいるとは思うんですけれども,ちょっと付け加えさせていただきました。
 以上です。
 
【永田部会長】   ありがとうございます。
 いろいろな意見が出てよくて,ちょうどまとめるにはいいのです。いろいろな画一的な,信じ込んだまとめ方ではなくて,今書いたことをもう一度シャッフルし直して,いろいろなところに入れ直しながら全体ができていけばいいわけで,言われたことはどれもこれも価値があることだと私は思います。
 逆に言うと,要点は絞れたかもしれません。今日の話で,根本的に最後に多分議論することになる,ここのところをどうするのだというものは比較的見えたように思います。それが今日の議論の価値だったかと思いまして,この辺りにさせていただいて,あとは事務局の文筆力というか,何というか。事務局から一言どうぞ。
 
【柿澤高等教育政策室長】  本日もこの「出口における質保証」の部分でも活発な御意見を頂きましてありがとうございます。
 今日も村田委員からも御意見がございましたし,第6回,7回あたりでも話題になりました卒業要件の部分でございますけれども,もともと大学設置基準では,4年以上の在学と124単位と定められておりましたところ,ここは質保証システム部会の提言を踏まえまして,今の書きぶりで言いますと第32条設置基準で「卒業の要件は,124単位以上を修得することのほか,大学が定めることとする」という形に,より明確化されております。
 従来からもちろんこの124単位以外の部分をディプロマ・ポリシー等にしっかり書いて,卒業要件として定めることは可能ではあったところでありますけれども,それが設置基準の改正でより明確化された部分もございますけれども,まだまだ浸透していないところもあろうかと思いますので,本日の御指摘も踏まえて,その辺りも設置基準の改正を踏まえた修正も入れていきたいと思います。
 また,今,永田部会長からお話がありましたとおり,今後こちらを修正していく過程におきましては,ちょっと前の話にはなりますけれども「文理横断・文理融合」教育のところ,実はここの部分でも,まさに今日お話に出たような大学教育の,なぜこうした「出口の質保証」が求められるのかといった課題背景みたいなところで議論が共通する部分も多々あろうかと思います。ですので,「文理融合」部分と「出口における質保証」部分,今後またこれを一つにしていく過程の中で,今日の御議論も踏まえて,例えば現状・課題のところを一緒にするのか別に書き分けるのかといったところを,これから大学分科会に向けて,部会長,副部会長とも御相談しながら作業を進めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
 
【永田部会長】  村田委員,どうぞ。
 
【村田委員】  ありがとうございます。ちょっと今日の話題とは関係ないですが,今おっしゃっていただいたことなので。
 4年間の在籍がというものがあるんですが,御存じのようにロースクールが今般,司法修習生のことで3月15日ぐらいに卒業させると。ロースクール生はそれでいけるんだけれど,じゃあ,企業が学生に対して3月20日から研修に入りますと。ロースクールはいけて,何で我々は駄目なんですかという議論になってきかねないんですね。そこはやっぱりちゃんと文部科学省として,いや,ロースクールは別なんだということをしていただかないと,ちょっと学内で大変かなと思って。これは多分全ての大学がそうだと思いますから,今日の議題とは全く関係ないですが,記録から削除してもらっても結構ですが,ちょっとお願いしたいなと思います。
 
【永田部会長】  吉岡委員,どうぞ。
 
【吉岡委員】  一番最初に永田部会長がおっしゃったグローバル対応の問題なんですけれど、いや,特に意見があるわけじゃないですけれども,やはりコロナでちょっと見えにくくなってしまったことがあって,ちゃんと考えたほうがいいかなと思いました。
 一つ,一時期のグローバル問題というのは,結局グローバル人材の育成みたいな話に絞られていて,しかもグローバル人材って何かというと,言葉ができるというふうにほとんど収れんしてしまうようなものだった。それはさすがにここ何年かの蓄積の中で,広い意味での異文化理解であるとか異文化コミュニケーションであるとか,そういうものになってきて,やっぱりそれは進化してきたと思うんですが、そもそもグローバル人材あるいはグローバル化ということについての共通理解があまりないまま,やっぱり語学の問題に絞られてしまっていた。一方でこれは私もいいことだと思いますけれども,短期間でもとにかく留学をするなり海外に出るなり,そういう実体験をして,それを問題把握能力とか問題発見能力に結びつけていこうということがあって,それが多分本来のグローバル化の道筋で大学ができることかなと思いました。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。
 
【柿澤高等教育政策室長】  もう一つ,すいません。村田委員の御指摘のところだけ一つよろしいでしょうか。
 
【永田部会長】  どうぞ。
 
【柿澤高等教育政策室長】  申し訳ありません。設置基準に関することなので,もう少し補足いたします。
 もともと設置基準では「大学に4年以上在学し」とございまして,一方で学校教育法第87条におきましては「大学の修業年限は,4年とする」とございました。ここのところについて,今回,設置基準からは「4年以上」というところを削除したわけでございますけれども。
 ここの背景のところは質保証システム部会の中でも議論がございましたけれども,例えば大学が秋入学を実施するときに,9月に入学した学生が,学期の区分に従って4年後の7月に日本の大学を卒業して海外の大学院に行きたいみたいな話のときに,大体サマースクールが7月くらいに始まるよねみたいなところもございまして,それで9月から海外の大学院だよねといったときに,そこが厳密に48か月間を表すのかというところでいうと,質保証システム部会の中でも,修業年限はおおむね4年の期間を指すものだということで,厳密に48か月の4年間を在籍することを求めるものではないということで,そうした背景で今回の改正を行ったということです。
 
【村田委員】  いや,それは分かっているんです。ロースクールは3月十何日に卒業させてほしいと言うし,法務省からの要請で仕方がないんですが。それをやっちゃうと,ほかの大学院だとか,専門だとか,ほかの学部が,いや3月15日で卒業して20日から企業が研修を求めているんだと言われたときに卒業させないといけないのかなと,そういう変な訴訟問題になりかねないようなリスクがあるので,そこの見解を少しお願いしたいなと思っている次第です。
 
【池田高等教育局長】  すいません,1点だけよろしいですか。
 
【永田部会長】  どうぞ。
 
【池田高等教育局長】  高等教育局長の池田です。
 先ほど吉岡委員がおっしゃった点は,実は教育未来創造会議の次のテーマ,第二次提言に向けた検討が今始まっておりまして,これがコロナ禍の後のグローバル化についてです。それと並行して私どもの有識者会議でも,戦略的な留学生交流をどうするかということでグローバル人材とは何かという,そこから議論を今始めておりますので,またこの大学振興部会にも適宜御紹介しながら議論していただいているところでございます。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。
 次の議題にそろそろ移りますので,最後のところ,グローバル化は学生個人がきちんとグローバル対応になっているかという問題を出口で保証しなければいけないので,保証システム自体はきちんと一定のグローバル対応をしていないと,世界の基準が我が国では全く意味ないということになってしまいます。ですから両方の意味がありまして,今後,議論するときに留意していただきたいと思います。
 それでは,また事務方からおまとめいただいて,次回以降また議論させていただきます。
 今日は少し重い話題を一つ,新たに始めたいと思っております。それは先ほども既に申し上げました,少子化という問題から発生してきている我が国全体の高等教育の規模感という問題であります。それを今から議論して,今期あと何か月しかない中でまとめるのは非常に難しい状況なので,その中から少し絞らせていただきまして,「学生保護の仕組みの整備」というところをまとめたいと思います。
 というのは,ある日突然その大学が駄目となってしまったときに,それはその大学の責任だから仕方がないというわけにはやはりいかないわけですから,これをどうするのか。また,潰れる,解体だけではなくて,統合・再編成されていったときにどのようにきちんと保証していくのか。この辺りは非常に重要で,まずこの辺りを議論することによって,このようなことで学生さんは守れる,ならば,次にこのようなことも考え得るだろうということになると思うので,今回はとりわけて「学生保護」という観点から,規模のことを考えた後々のことが影響してくる部分について考えたいと思います。
 それでは,事務局に資料を用意してもらっていますので,御説明をお願いいたします。
 
【柿澤高等教育政策室長】  ありがとうございます。
 それでは資料2-1を御覧いただければと思います。「『学生保護の仕組みの整備』に関する主な課題・論点」でございます。
 まず,基本認識といいますか,問題意識としまして,1つ目のポツ,令和3年の出生数は戦後最少の81万1,662人ということで,こちらは従来の推計よりも7年早く少子化が進行しております。これに伴いまして,大学進学者数についてもこれまでの推計を下回ることが予想されるところでございます。グランドデザイン答申を議論したときの2040年の推計大学進学者数は50万6,005人であったところでございます。
 高等教育機関を取り巻く環境が一層厳しくなる中,各設置者においては,自主的に不断の経営改善,教学の改善に努めることが重要。また,経営が悪化し,破綻が不可避と見込まれるような場合には,速やかに撤退等の経営判断を行うことが必要である。その際,在校生を全員卒業させてから学校を廃止することが学校法人としての責務であり,学生の修学機会を奪い,学校経営を途中で放棄するような事態になってはならない。
 このことを前提としつつ,実際に,資金繰りの深刻な悪化等により破綻に至るケースを念頭に,学校法人や国が取るべき措置等について検討を進め,セーフティーネットの整備を進めることが必要という形にしてございます。
 2で,主な課題・論点の類型というところでございます。非常に論点が多い課題ではございますけれども,類型化いたしますとこの5点くらいになるのではないかと。1点目は,破綻を避けるために学校法人,大学が行うべきこと。2点目は,破綻が避けられない場合に学校法人,大学が行うべきこと。3点目が,破綻リスクを低減するために国等が行うべき措置。4つ目に,破綻時に国等が学生を保護するために取るべき措置。5点目として,撤退・破綻する大学に関する手続,取扱いの検討,というところでございます。
 次のページに行きまして,後ほど資料2-2で個別に御説明いたしますが,課題・論点に関する現状をごく簡潔にまとめたものが3ポツでございます。
 まず,破綻を避けるために学校法人が行うべきことにつきましては,本日参考資料にも入れておりますけれども,日本私立学校振興・共済事業団において作成している「経営改善等のためのハンドブック」等においても,経営改善のためのポイント等が分かりやすく整理・解説されているものでございます。
 丸2,破綻が避けられない場合に学校法人が行うべきことですが,このハンドブックの中でも,撤退までの流れと留意点,破産手続等について整理・解説がなされているということでございますけれども,こうした内容についても,学生保護を徹底する観点から,さらに具体的な留意事項等を盛り込む必要があるかないか。例えば学生等に説明・報告すべき事項,留学生に対する対応,学費の取扱い等々。
 丸3としまして,破綻リスクを低減するために国等が行うべき措置といたしましては,文部科学省においては学校法人に対する経営指導,また日本私立学校振興・共済事業団においては経営相談等を実施しておりますけれども,経営改善への意欲や危機感が不足している学校法人に対する対応強化等の観点から,経営指導の一層の充実・強化が求められるのではないかといった論点もございます。
 丸4としまして,破綻時に国等が学生を保護するために取るべき措置ですけれども,実は,大学の破綻時に国等が学生を保護するために取るべき措置については,何かまとまった行政文書の中で特段の整理がされているということではございません。ただ,実際に破綻した大学に対してどう対応したのかということの前例が残っている状況でございます。
 また,日本学生支援機構においては,予期せぬ家計の急変等により緊急に奨学金が必要となった学生に対しては,緊急採用・応急採用の奨学金制度を設けておりまして,大学の破綻によるやむを得ない転学に伴う家計急変についても対象となりますので,ここの部分は既存のセーフティーネットがあるところでございます。
 こうした状況を踏まえまして,所轄庁である国がどのような役割を果たすべきかについて,具体的な検討が必要ではないかといった論点がございます。
 最後に丸5,3ページ目になりますけれども,撤退・破綻に関する高等教育行政上の手続でございますけれども,「学校の廃止の認可申請」,学部の廃止は届出になりますけれども,また「学校法人の解散の認可申請」がございます。解散の認可後は清算手続に移行することになりますけれども,大学のほうで例えば大学の廃止に向けて募集停止を行うようなケースにつきましては,通知により文部科学省に報告を依頼している状況になってございます。こうした中で,廃止に向けて募集停止した大学については,廃止の認可申請までの間は特段の高等教育行政上の手続はございませんけれども,廃止に向けたプロセスについてさらに検討すべきことはないかといったところが主な論点でございます。
 今申し上げた論点に関連する現状等の資料ですけれども,こちらはちょっと分量が多いところもございますので,資料2-2でごくかいつまんで御紹介いたします。資料2-2,横組みの資料を御覧いただければと思います。
 まず初めに,学校法人を取り巻く状況でございます。2ページを御覧いただきますと,私立大学の48%が入学定員未充足,うち19%が充足率80%未満といった状況。また,地方の中小私大の収支状況で見ますと,事業活動収支の部分で収支差額比率がマイナスの大学が約4割という状況でございます。
 3ページ,こちらはよく御案内の内容ですけれども,私立大学事業活動収入の多くは学生生徒等納付金が大きな割合を占めると。76.8%。また支出を見ますと,人件費が50%を超える一番大きな支出項目という形になってございます。
 4ページは私立大学・短期大学・高等学校の収支状況でございます。こちらは適宜御参考に御覧いただければと思います。
 5ページ目を御覧いただきまして,こちらは私立大学の規模別の入学定員・入学者数でございます。こちらを御覧いただきますと,規模の大きい大学,中規模,小規模というところで見ますと,やはり小規模大学が入学定員よりも入学者数が少ない状況が一目で見てとれる状況でございます。
 6ページ目以降は学校法人会計基準というところでございます。
 7ページを御覧いただければと思います。この辺り,ちょっと資料が多いのでごくかいつまんでになりますけれども。そもそも学校法人の仕組み自体が学校法人会計基準あるいは私立学校法等の規定に基づきまして,安定性ですとか継続性といったところについては,一般の営利法人よりも優れた仕組みになっているところがございます。
 具体的には8ページを御覧いただきますと,学校法人は学校教育を安定的に継続していくことが前提ということで,学校法人は,その諸活動の計画に基づき,必要な資産を継続的に保持しなければならない。そのために必要な金額を事業活動収入から留保したものが基本金であるということで,基本金は1号から4号までございます。こうした基本金制度が学校法人制度の安定性に寄与している部分でございます。
 9ページ目以降は学校法人会計基準の紹介等ですので,こちらは細かくなりますので割愛させていただきますけれども,後ほど何か御質問等がございましたら適宜対応したいと思います。
 それでは15ページを御覧いただければと思います。学校法人への経営指導等というところで,16ページに,経営に課題を抱える学校法人に対する取組がまとめられております。
 まず,文部科学省といたしましては,学校法人運営調査委員制度を持っております。こちらは学校法人の健全な経営の確保を目的に,管理運営組織やその活動状況,財務状況等を調査し,必要な指導・助言を行うということで,特に経営状況が厳しいと認められる一部の学校法人に対して,経営改善計画の作成,計画の実施状況の報告を求めて,経営改善の進捗状況を把握する取組を進めております。
 また一方で,右のボックスになりますけれども,日本私立学校振興・共済事業団におきましては,経営相談・自己分析の促進ということで,経営上の問題点の分析,改善策のアドバイス,また先ほども御紹介したハンドブックの作成等も行っているところでございます。また,学校法人の経営状況の自己分析の一助となる「経営判断指標」の作成・提供なども行っていると。
 また,真ん中の丸のところですが,経営力強化に向けた環境整備というところでは,これまでも長期的ビジョンを踏まえた計画策定を義務化しているとか,あるいは学部単位での設置者変更を可能とする制度改善ですとか,また,合併等を検討する学校法人のマッチングを日本私立学校振興・共済事業団による経営相談の一環として実施しているとか,また,大学間連携等の取組としては,地域連携プラットフォームのガイドラインを策定したり,また大学等連携推進法人の認定制度も創設しているということでございます。
 下のところで,経営指導の充実・強化では「経営指導強化指標」を設定しておりまして,経営悪化傾向にある学校法人を一定の基準に基づき客観的に把握する仕組みも導入しております。この経営指導強化指標は,運用資産から外部負債を引いたものがマイナスであり,かつ,経常収支差額が3年間マイナスといった指標でございます。
 学校法人運営調査委員会において,経営指導強化指標をはじめ,定員の充足状況等も勘案しまして,集中的な経営指導を実施する学校法人を決定すると。そうした法人に対しまして経営改善計画を策定させて,経営改善実績を上げるように,進捗報告等も求めながら集中的に指導・助言を行うといった取組がございます。そうした中で,改善ができない,支払い不能等のリスクが確認された学校法人に対しては,対応方策を示した上での経営上の判断(募集停止や組織廃止を含む),及びその方向性の事業報告書等への明記を求める指導通知の発出。こういった取組も進めてございます。
 こうした取組を進めることにより,学生・保護者等からの信頼を得るための経営力の一層の強化,継続的・安定的に質の高い高等教育の提供につなげていこうという仕組みでございます。
 17ページは今申し上げた経営指導の流れが書かれているところでございます。
 18ページ目は,定量的な経営判断指標に基づく経営状態の分析というところで,例えば,教育活動資金収支差額が3年のうち2年以上赤字であるで「はい」と「いいえ」,外部負債と運用資産を比較して外部負債が超過しているかといったところで,レッドゾーン,イエローゾーン,イエローゾーンの予備的段階,正常状態を色分けすると。こうした指標の活用も平成27年度から行っているところでございます。
 次に19ページを御覧いただきまして,「学校法人の経営改善等のためのハンドブック」でございます。今日は配付の参考資料の中に本体を入れていますけれども,目次を御覧いただきますと「経営悪化の認識」,兆候をどう捉えていくのかいったところから,相談先,あるいは経営状態の分析方法,SWOT分析のやり方とかも書いてあると。その上で最後のほうへ行きますと,経営改善が難しいときに撤退までの流れと留意点,破産手続といったところまで紹介されていると。
 20ページですけれども,私学経営情報センター,これも日本私立学校振興・共済事業団のサービスでございますけれども,どのような経営相談に対応しているのかというところの資料でございます。
 最後に21ページ目からは,先ほど論点の中で大学が実際に破綻した場合に国がどう対応するのかということについて,それを何らか行政文書で特段整理されているものがないと申し上げましたけれども,ただ前例はあると。前例というところがこの21ページ目からの堀越学園創造学園大学の問題でございます。ここもちょっと分量が多いので,ごくかいつまんで,22ページを御覧いただければと思います。
 学校法人堀越学園でございますけれども,平成16年の創造学園大学の開設,18年の高崎医療技術福祉専門学校の開設以来,定員未充足などにより法人の経営状況が悪化したと。19年12月以降,文部科学省として経営や管理運営の改善の指導を継続してきたということでございます。
 ただこの間に,過去の財務計算書類や創造学園大学の設置認可申請時の書類における虚偽記載,賃金の未払い,公共料金等の滞納,学校債の償還未履行や教職員の雇用をめぐる訴訟など,様々な問題が発生したところでございます。文部科学省として指導を重ねるとともに,私学助成の不交付ですとか,大学の設置認可に関する寄附行為変更不認可期間の設定などの措置も講じたと。しかしながらこの状況の改善が見られず,また24年5月以降,法人の理事の地位をめぐる関係者の対立により,法人としての意思決定も困難になる中で経営状況も悪化していったということでございます。
 てんまつといたしましては,23ページにございますけれども,矢印のところになりますが,文部科学省として,法人の運営をこれ以上学校法人堀越学園の自主性に委ねた場合,在学生の修学機会が突然失われる事態になりかねず,学校の運営の継続性に疑問がある中で新たな学生等の受入れが行われ,将来不利益を被る可能性のある学生が増えてしまうといった事態になることを強く危惧するということで,学生等に予期せぬ不利益が生じかねない状況で時間的余裕もないということで,学校法人堀越学園に対する解散命令の手続の開始に至ったという状況でございます。
 24ページ目以降は具体的にどのような法令違反があったのかですとか,転学の際のQ&A,これは文部科学省のホームページで創造学園大学の学生等に対する転学支援のQ&Aですとか,そういったものも出しましたし,また,全国の大学に対しても転学者の受入れについての配慮等を求めたりといったことも行ったことが過去の一例でございます。
 以上でございます。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。皆さん,大体頭の中に整理できたかと思います。
 ここに書いていないことで,一応事務局とも確認していて,あるリスクを避ける,あるいはリスクに陥った場合にどうするか。ここで何かこれからある一定の方向を決めていくと,当然大学設置・学校法人審議会にも反映されるわけです。既に設置されている大学をどうするかという問題なのです。リスクに陥りそうだというところの設置を認めてはいけないわけなので,多分そちらにもきちんと後で影響するだろうということです。先ほどの主な5点の中に,設置の時から考えるべきであるというのは裏にきちんと入っているという前提で話をしたいと思っております。
 まず御質問とか何かあれば事務局にお答えいただきますが,大体,議論するポイントはつかめたでしょうか。
 
【川嶋委員】  よろしいですか。ちょっと確認。
 
【永田部会長】  どうぞ。
 
【川嶋委員】   幾つかお聞きしたいと思います。説明資料の最後のほうについて伺いますが,解散命令の根拠がどういう法律に基づいているのかを教えて下さい。
 2つ目の質問は,先ほどの日本私立学校振興・共済事業団のいろいろな取組の中で,レッドゾーン,つまり一番左側の真っ赤のところで指導通知を行うという項目がありましたが,指導通知は実際,現時点でどれぐらい出されているのでしょうか。
 最後は,創造学園の店じまいの時にいろいろ対応されているようですが,一番困難な問題は何だったのか。この3つについて、もし今お分かりであれば教えてください。
 
【柿澤高等教育政策室長】  まず1点目と3点目をお答えいたします。
 まず1点目ですけれども,解散命令は私立学校法に根拠があるところでございまして。ただ,いきなり解散命令に行くというところではなくて,報告徴収や検査や措置命令といったところからこの解散命令に行くというところで,法令違反があったときの対応でございます。
 堀越の時に何が一番大変だったかというところ,当時の担当等にも話を聞いている中では,やはりまずもっては,経営状況の悪化について様々な書類の虚偽記載等もございましたので,そういったことがよりこの問題の深刻さを進行させたこともございますし,あとは法人としての意思決定がしっかりとできない状況になってしまったと。理事の地位をめぐる関係者間の対立というところで。そうなりますと,当事者として適切な意思決定も,そもそもガバナンスが効いていない状況があったところもございます。
 また,文部科学省がというところで言いますと,やはりこういう状況になりますと学生の皆さんも転学をしていく形になりますけれども,そこはかなりこの転学のQ&Aも資料2-2の27ページ辺りからかなり細かく,例えば教員免許,教職課程の取扱いで,本当はこの課程を取りたかったけれどもそこはどうするのかといったところもかなりやっておりますが。ここは文部科学省としてもそうですけれども,近隣の大学の皆様にもかなり御負担といいますか,御協力といいますか,していただいたところも困難性としてあったところでございます。
 2点目につきましては私学部から補足を致します。
 
【梅木私学経営支援企画室企画・法規係長】  私学部参事官付でございます。
 指導通知の関係につきましては,学校法人の経営指導をしている法人については,やはりいろいろと学校の経営に関することでございますので,文部科学省といたしましては,法人名はもちろんのことですけれども,数も含めて,内容も含めて非公表とさせていただいているところでございます。
 
【川嶋委員】  風評被害が及ぶということですね。分かりました。
 
【永田部会長】 何か釈然としません。違う聞き方をすればいいのでしょうか。例えば,グリーンではないのは全体でどのぐらいあるのでしょうか。要するに赤は言いにくいでしょうが,グリーンはどれだけありますかというなら,こちらは公表してもいいのでは? 公表はしませんが,我々としてこれは特例的に考えればいいのか,危機的状況としてやはり大多数を対象に考えるかというのは結構大きな問題で,そのような意味で多分,川嶋委員は今お聞きになっているのだと思うのです。言えないなら言えないで結構ですが。 
 
【柿澤高等教育政策室長】  少し,全体のところということで言いますと。
 
【永田部会長】  ええ,全体でおっしゃってください。
 
【柿澤高等教育政策室長】  資料2-2,すいません,ちょっと先ほど私が説明の中で割愛してしまったところがございます。
 先ほどのグリーン・イエロー・レッドみたいなところと一致するというわけではございませんが,例えばこの資料の4ページを御覧いただきますと,大学の収支状況,短期大学の収支状況がございます。この中で言いますと,例えば一番下の緑の1個上,「基本金組入前当年度収支差額がマイナスの学校数」がございまして,ここがどれくらいなのかというところが,例えば直近の令和2年度になりますと191校ということで31.4%。ここの推移がじゃあどうなのかというところで見ると,ここ5年くらいでここが急に上がってきているというわけではないよねというところがございます。
 一方で,これを短期大学のほうで見ますと,「基本金組入前当年度収支差額がマイナスの学校数」の割合ですけれども,直近の令和2年度で69.1%というところで,ここは例えば5年前の28年度で言うと54.2%から,60.3,63.2,68.6,69.1ということで上がってきている。このようなところは全体の状況としてございます。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。この数字そのままではないですが,結構大変かもしれません。数ではそうなっているので,ここから,我々の議論はかなり今後多くに適用していく可能性の高いものだという認識で話をしないといけないかなということでございます。
 そのほか。大森委員,どうぞ。
 
【大森委員】  すみません,質問だけですけれども。
 ただ,堀越学園は近隣大学でしたので,いろいろ我々もどうやって受け入れてあげられるかと,大分学内で議論したのは記憶に新しいところであります。それは感想です。
 質問としては,今お示しいただいた収支状況は大学・短大・高校と出していただいていますけれども,例えば本学ではこども園から小中高と全部あって,それぞれに別に会計をちゃんと立てていますので明確なんだけれども,法人でざくっとやられているところとかも,これは分けてやっているのかというのが質問の一点。
 もう一つは,これは高等教育局ではお分かりにならないかもしれないですけれども,18歳より前に15歳がもっと減っていく中で,私学高校の破綻とか撤退とかはどういうふうなスキームで,例えば初等中等のほうで議論されたりも,出来上がっているものとかがあったりするんでしょうか。ちょっと参考になる部分があるかなと思ったものですから。分からないのであれば分からないでもオーケーなんですけれども,その2点です。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。お答えできますか。
 
【柿澤高等教育政策室長】  まず,先ほど御紹介しました4ページにつきましては,当然大学だけではなくて短大・高校を持っている法人はございますけれども。大学・短期大学・高等学校のそれぞれの収支状況がこちらの4ページに示されているということ。
 また,大森委員からちょうど高校のお話が出ましたけれども,高校についてこちらを見ますと,「基本金組入前当年度収支差額がマイナスの学校数」の数と割合で見ますと,直近の数字だと42.1%はそこがマイナスになっているところはございます。最近も私立高校をめぐる問題,学校法人で報道等に出ている部分もございますけれども,こちらは当然,高等学校になりますと所轄庁は都道府県という形にはなりますが,都道府県でこうした経営改善に向けた指導ですとか,あるいは法令に基づく措置は行っていく形でございます。
 法人としては,あともう少し言いますと,大学設置法人が高校も持っているような形で法人に対する指導等が必要なケースになりますとこれは文部科学省もございますし,高校までの設置法人で都道府県所管のところであれば,まさに法人の指導監督は所轄庁である都道府県がしっかりと行っていくところでございます。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。古沢委員,どうぞ。
 
【古沢委員】  ありがとうございます。私も質問だけ手短にさせていただきます。
 さっき川嶋委員が質問された指導通知の点ですけれども,点数は非公表ということですが,差し支えなければ,例に挙げられた2件の大学以外に,実際に発出されて経営上の判断に至ったケースがあったのかどうかは,可能ならば知りたいと思います。
 もう一点,この指導通知の拘束性ですけれど,何に基づいて発出されているのかということと,もしその法人が対応しない場合,どのようなそれに対して措置が取れるのか取れないのかということをお聞きしたいと思います。
 以上です。
 
【梅木私学経営支援企画室企画・法規係長】  ありがとうございます。
 今の時点ではまだ,経営判断を迫るような,我々として流すような通知は発出していないところでございます。
 我々の指導といたしましては,資料にもございますけれども,学校法人運営調査委員制度に基づきまして調査を行っておりまして,通知に関しての何か法的な根拠はございませんで,あくまでも指導として仮に出すことになったとしても,そういった扱いになるところでございますので。仮に学校法人がその通知に従わないことになった場合につきましても,まずは指導を繰り返し行って改善を促していく形になると考えております。
 
【古沢委員】  ありがとうございました。
 
【梅木私学経営支援企画室企画・法規係長】  ほかに御質問はありましたでしょうか。失礼しました。
 
【永田部会長】  何となく釈然としないですが。村田委員,どうぞ。
 
【村田委員】  先ほど永田部会長から大学設置・学校法人審議会との絡みもありますという話があったんですが。出生数が81万人,たしかグランドデザインの時は88万人というようなことを考えていたと思うんですね。これ,1年違いますから,2040年でもほぼこの人数ですから。1割ぐらいが減ってきている話になります。
 そうすると,実は大学設置・学校法人審議会のところで新しくできた大学で入学定員の20%ぐらいしかない大学が幾つかあって,今既存の大学をどうするかという問題もあるんですが,既存の大学をどうするかという問題をしているときに,一方で新しい大学をどんどんつくっていくのはあり得ない話だと私は思っていまして。特に専門職大学ができましたから,どうしても専門学校からというのが出てきます。
 その時に,これまでは大綱化以来,いわゆる事前のチェックは緩くして,緩和して,事後的にそれを認証評価で厳しくしていこうとなっているんですが,こういった形で非常に人口の減少がなったときに,今既存の大学の存在が危うくなってくるということは,ありていに言えばそういうことですから,そういう状況の下で設置の部分で甘く従来のようにしていいのかと。むしろ新しい設置を少し考え直していくような抜本的なことを考えていかないと,一方で既存の大学をどうするかという話をしながらどんどんつくっていくなんていうのは矛盾があるわけで。そこはぜひ,これは振興部会ですから,長期のことを考えていくわけですから,まさにそこを大きく見直していく必要があるのかなと感じています。
 以上です。
 
【永田部会長】  そのとおりだと思います。ですから,ここでこれからきっと出てくるものを,どう今度は設置の時にも役立てるかということは非常に重要だと思うのです。
 小林委員,どうぞ。
 
【小林委員】 今日はあまり細かい技術的な話はしない予定であるようなので,ちょっと大きなところだけお話しさせていただいて,その後に質問があります。
 先ほどの解散の時のルールを「経営改善等のためのハンドブック」の中にも書かれていますけれども,これは今から行われる私学法には準拠していない,今現在行われている私学法の枠内での解散ルールを書かれているのですけれども,今度の改定では評議員会がこの解散の決定権を持つので,理事会で決められない。理事会で決めたことと評議員会が決めたことが合わなくなるという,今まで以上の難しさが出てくるのじゃないかと危惧します。
 学校のほうで解散を決定できなかったときに,文部科学省の解散命令はトップダウンで行えるのかどうかをちょっと伺いたいと思うのですけれども,いかがでしょうか。
 
【永田部会長】  先ほども出ているのですが,やはりその法的根拠としてということです。
 
【柿澤高等教育政策室長】  私立学校法に基づく解散命令は,法令違反が起きたときに対する対応ということでございます。私立学校法等の改正につきましては,今後そうした状況が生じれば,また「経営改善等のためのハンドブック」の部分も様々,それに伴って改訂していく必要があろうかと思っております。
 あと,先ほどの1点,古沢委員からの御質問で補足をさせていただければと思います。
 通知を出した例はないことは申し上げましたけれども,先ほどの資料2-2の16ページの仕組みのところですけれども,まさに学校法人運営調査委員制度の中でも,経営が厳しいと認められる法人に対して経営改善計画の作成とか実施状況の報告を求めると。で,改善状況を把握すると。また,日本私立学校振興・共済事業団による経営相談等の活用も進める形でございますので,経営上,様々な課題があるような法人に対しては,こうしたプロセスの中でおおむね必要な経営判断が取られるので,指導通知という形で通知を受け取るまで判断ができないような法人は今のところないと。そういう意味でございます。ですので,経営指導の取組の中で法人が経営判断としてここはこうしようみたいなところは生じていると。ただ,指導通知の発出ということではないという意味でございます。
 
【小林委員】  すみません。先ほどの質問ですけれども,つまり今18歳人口が減ってくると,法令違反をしなくても経営がうまくいかない大学に関して解散命令はできないということでしょうか。
 
【柿澤高等教育政策室長】  そのとおりでございます。
 
【永田部会長】  今,先生のおっしゃったとおりだし,もう一つ,そこで今の危ないというのは,法的に強制力はないのでしょうか。
 
【柿澤高等教育政策室長】  指導通知についてはそのとおりでございます。
 
【永田部会長】   ですよね。そのようなものは捨てておけばいいということは可能なわけですから。やはりその辺のことは真剣にもう一回考えないといけません。法的に本当に駄目になってから手を打てない状況になってしまうと,その問題は結構シリアスだと思うのです。
 そのほか前提条件として聞いておきたいことがあればお聞きします。越智委員,どうぞ。
 
【越智委員】  ありがとうございます。
 確かにこの議論も必要です。ただ,仕組みの整備になるので破綻処理の方向での話のみで進むことになると思うんですね。
 しかし一方で,コロナ禍で物価が上昇しているとか経済的困窮がある中で,能力的には本来なら大学に進めるような階層の人達をいかに守っていくか,大学に受け入れる準備をしていくかという議論と一緒に,こういうところをディスカッションする必要があるのではないかなと思いましたので,お話をさせていただきました。
 以上です。
 
【永田部会長】 ありがとうございます。この81万人対象の中で,大学進学者あるいは大学以外の高等教育への進学者,専門学校,高等専門学校等,それをどこまで文部科学省として伸びる推定をしているかという問題です。それは大学設置・学校法人審議会で新しくつくるときにも当然問題になるので,いわゆるデータ分析としては本当にその部分は必要な部分だと思います。
 そこで,今,越智委員がおっしゃったように,我々としてここまで望む,あるいは我々としてここまで推測するというときに,片や経営が悪くて壊れていくが,行きたい学生さんは実はこうなっていますと。都道府県別に言うともっと違っていて,ここではとても進学したい子が残ってしまって行けない。ここは大学が余っていて本当に門戸を広げても全然学生が来ません。やはりそこはそのような問題があると思うのです。
 我々はこれを議論したことは前にもありますが,少なくとも都道府県別に相当データを用意していただかないと,今の越智委員の質問に対しては回答しにくいと思うのです。一般論としてはできるのですが。あるところでは全然,40%を切ってしまっているような都道府県だったら,まだ伸びる可能性はあるのかというのが先に前提になります。そうすると,そのようなものを収容できるようにサポートを今度はしないといけないかもしれません。一方で,明らかにたくさん若者はいるが何をやっても入ってこない大学は,レッドカードという感じでしょうから,その辺はやはりデータベースに考えないといけないのではないか。次回,もっと詳細に入っていくときに,そのような状況をぜひとも教えていただきたいと思います。
 
【村田委員】  よろしいですか。
 
【永田部会長】  はい。
 
【村田委員】  今,永田部会長がおっしゃったことはまさにそうで,グランドデザイン答申の時に,都道府県別の専門分野がありましたよね。あれをまた出していただければと思います。
 
【永田部会長】  そう思います。
 そのほかはよろしいですか。今日はどちらかというと,このようなことを話し合うための前提としての問題点という感じになっていますが,重要なことです。そのほかよろしいですか。 益戸委員,どうぞ。
 
【益戸委員】 お話を聞いていてつくづく感じたのは、学校法人は、政府から経営や財務に対して信用されていないのではと思いました。金融機関に長く勤めていますが,企業を見る上で非常に重要なのは,やはり経営者の資質,企画力,そして財務の力です。今や一人一人個人がNISAなどを通じて将来のために準備していかなければいけないという提言すらある時代に,大学の資産運用は,細かく,リスクを取らないようなルールづくりがなされているようですね。ですから強い大学作りの大前提として,企画・財務力の強化はとても重要です。その為には、ステークホルダーに信頼されるオープンなディスクローズはとても必要だと改めて思いました。
 以上です。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。普通の感覚だと思います。そこに教育という公共性の部分が若干あって,非常に細かいことを各大学について言うのはという遠慮はあるかもしれませんが,今の益戸委員のおっしゃったことは非常に重要です。そこが普通なら公表されるべきものであって,秘匿するものではないからです。ですから,考え方を一部やはり変えていかないと,対応できなくなる可能性もあります。
 そのほかはいかがでしょうか。日比谷委員は後で御参加になったと思いますが,何かございますか。
 
【日比谷委員】  今日はちょっと入室が,あらかじめお知らせしておりますが,遅れまして失礼いたしました。
 途中からのお話を伺っているんですけれども,私,運営調査にも長く関わってきましたし,大学設置・学校法人審議会審は大学設置分科会から,今年度から学校法人分科会に移りまして,この話の全体像,特に私立大学について極めて深刻だという認識を持っております。特に運営調査で数年前に行きましたところは,これがほとんど最後の運営調査の側からは指導であるというところに私は送り込まれまして,大変に厳しい意見をたくさん申し上げまして,翌年には募集停止を自らの判断でなさったわけですけれども。
 よほど思い切らないと,なかなか最後の決断がやっぱりできない法人が多いように感じます。そうなると,入れてしまったとあえて申しますが,入っている学生をあちこちに,どこに。で,学生はそういうところに入るのが悪いというのはやはり言えませんので,どうするかという問題があるわけで。そこは情報公開をしっかりして,危なそうなところに行かないようなことを入る側も考えろと言うのかもしれませんが,高校生にやっぱりそんなことは分からないですし。やはりかなり早め早めに決断を,自主的にできればいいんですが,できないとなると,やはり何らかのことをしないと,これだけの人口減少の中で極めて深刻になると思いますので。今日は中の細かいことを議論するところではないとお話がありましたけれども,次回以降,結構シビアに議論したほうがいいというのが私の考えです。
 以上です。
 
【永田部会長】  ありがとうございます。先ほども申し上げましたが,公開されるべき情報として何を入れるのかという議論とほとんど実は同等なのです。
 それから学校法人の問題は,大学設置・学校法人審議会をやった方は皆さん御存じでしょうが,ある学校を閉じて,同じ法人が違うところに違うものを平気でつくってくることを繰り返す場合があります。高等教育を目指しているが,違うという感じがあって,何かおかしい。そのようなところが法的には実は制限できていません。例えばどこかを閉鎖した法人は,しばらく待ってから健全化してまた建てればいいというようなものはなくて,また何らかの形で建ててきたりするという状況です。そのようなものもありまして,最初に申し上げたとおり,破綻の処理だけではなくて,その破綻の処理を考えていくと,当然,設置の基準の問題にもきちんと触れるだろうとは思って,今日はどちらかというと事務方に質問をする時間になっております。
 ほか,よろしいでしょうか。川嶋委員,どうぞ。
 
【川嶋委員】  質問じゃなくてもよろしいですかね。
 
【永田部会長】  はい。
 
【川嶋委員】  二,三点,申し上げたいと思います。
 一つは,先ほど大森から高校入学の15歳人口のほうが先に減少の状況に直面するというお話があって,実はそれは私立高校だけでなくて,例えば兵庫県では,県立高校を2つの学区で3校ないし4校を1つに統合・合併する計画が具体化しています。
 ということは,18歳人口が激減する中で,今の入学定員を約60万人、また大学進学率を50%と仮定すると,大学進学者は10万人程度現在より減る勘定になって,この10万人はくしくも国立大学の現在の入学定員とほぼ同じになります。
 何が言いたいかと言いますと,今日は私立学校法人の話ですけれども,18歳人口の減少の問題は国公立大学にも非常に大きな影響を及ぼすことは明らかで,国立大学・公立大学といえども,学生が集まらなくて経営が悪化することは、将来的には十分あり得ることを念頭に,私立大学だけを対象に文部科学省というか大学分科会で議論していても,国全体の大学の課題には行き着かないのではないか、ということが一点。
 2点目は,先ほど越智委員からもお話があった潜在的な進学者の話で,これについて一つは,最近,生活保護世帯の子弟は大学に進学できないというのが厚生労働省の見解だというニュースが出ていました。その理由として、高校を卒業しても大学に進学せずに就職する人がいるから,生活保護世帯の子弟が進学するのはある意味ぜいたくだというような考え方が厚生労働省にあるようです。
家庭の経済状況にかかわらず、大学に行きたい,それだけの能力と意欲がある学生にはしっかりと国として支援していくことが重要かと思います。しかし、そのような潜在的な進学希望者が進学できても、18歳人口の激減はとても補えないと思われますので,先ほどグローバル化については今後検討するという話でしたけれども,18歳人口を補完する潜在的なマーケットである留学生あるいは社会人ですが,現状でもせいぜい3万人とか4万人ぐらいしか大学には在籍していないので,これくらいの規模では今の定員を維持することはできません。2040年代には私立大学だけではなくて国公立合わせた日本の高等教育全体大変な氷河期に入ることを前提に,今後ぜひ大きな話をしていただければと思います。
 以上です。
 
【永田部会長】  今おっしゃったのは,もともとの議論の論点全体のタイトルは「学生保護の仕組みの整備,国公私の役割等を踏まえた高等教育全体の規模の在り方」となっていますので,最終的には私立だけの話では全然なくて,国公私立,我が国の高等教育全体と考えないといけないだろうとは思います。
 今日はこの程度にしておきたいと思いますが,一つ本当にすさまじいことを申し上げます。実は私,大学入試センターの運営委員会の委員長も務めているので分かるのですが,このままではセンターはもう潰れます。つまり入試センターは受験する方の受験料で成り立っているのですが,もう大学関係者は御存じのとおり,成績通知料を750円から上げていきました。1件当たり1,500円まで上げるわけです。それでも4年後にはもう赤字に陥って,その先は入試センターが存続し得ない。何か新しい手だてを打たないといけないぐらい,強烈に減っています。現場にいるとこの激烈な減り方はよく分かるのです。
 ですからほったらかしにしていていい問題では全くなくて,だからこそ,先ほどの「出口保証」とか,いいことが書いてあって,経営面の問題と教学の改善をしない限り駄目だと書いてあるので,つまり教学の改善なしには,この話はないわけです。要するに,きちんとした立派な大学が生き残れるという前提での話です。ですから,機械的にどこかを閉鎖したらいいとか,そのような問題だけではなくて,教育の内容そのものがきちんと水準を保っていく。それこそ先ほどのことで言うと「出口保証」がどうなのかというような問題もあった上で,例えば経営面で駄目だと言うが,さきほど言ったように教学上全然不適合だというのは,これは将来性がない。では法的に手を入れられるかといったら,今は入れられません。
 そのような問題はきちんと中に内包されていることを分かって話さないと,本当に大学存続の全てなのでこれは経営の問題だけではないのです。これはタイトルを先ほど読みましたが,幾つか点でつながっていまして,それを全部話すと大変なことになるので,今たまたまこのような状況に陥ったときにはどうしますかという設定に今はしているということです。
 今日もいろいろ質問が出て,質問の中でもまだこれから資料を作らなければいけないことがたくさんあると思うので,事務局により詳細な資料の収集を頂いた上で,次回以降,またお話を続けたいと思いますが,よろしいですか。
 先生方からはそれで御異論はないと見立てましたので,それでは本日はここまでとさせていただきますが,なかなか難しい課題です。第11期中の審議は1月いっぱいか2月だと思いますので,あまり時間もなくなってきました。先ほど事務局から御提案がありましたが,「文理横断・文理融合」の話合いと今日の「出口保証」は背景とかで重なるところが多々あるので,これを一緒にまとめてもいいかどうかも含めて検討いただいて,次回以降,議論をさらに続けていきます。
 それから今日の問題は,少しずつ資料も出していただきながら,やはり議論すべきところは議論していかないといけないだろうと思います。
 それでは本日はここまでにしますが,事務局からコメント等をお願いいたします。
 
【髙橋高等教育企画課課長補佐】  事務局でございます。
 今後の日程は今,永田委員からもお話がありましたけれども,今後,まず今月12月21日,10時から12時に大学分科会を予定しております。大学振興部会の議論もまたそちらにも引き継がせていただければと思っております。
 また,この大学振興部会としましては,年明け令和5年1月13日,金曜日の10時から12時を予定しております。実施方法等はまた改めてお知らせいたしますが,本日は時間の都合上,御発言できなかった内容とか,あと質問等もあるかと思いますので,そういった点はまた事務局にお寄せください。よろしくお願いします。
 
【永田部会長】  どうもありがとうございます。
 今年の大学振興部会は今回が最後になって,次回はもう1月となります。御挨拶としては,よいお年をお迎えくださいということになります。気が早いということですが,ぜひともまたお元気に1月になってお会いできることを期待しております。
 それでは今日はこれでお開きとさせていただきます。ありがとうございました。
 
―― 了 ――
 

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